(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166101
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法
(51)【国際特許分類】
H04L 9/08 20060101AFI20231114BHJP
G08G 1/01 20060101ALI20231114BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20231114BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H04L9/08 B
H04L9/08 F
G08G1/01 A
G08G1/13
B60R16/023 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076889
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】二垣 良知
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181MC04
5H181MC05
5H181MC24
(57)【要約】
【課題】車載装置が中継装置により暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を復号化して車両情報の取得を可能にする。
【解決手段】情報通信機器4はペアリング要求および情報通信機器IDを、車載通信機2は車両IDをデータセンタ5宛に送信し(S6~S9)、データセンタ5はこれらに基づき車両情報リストを読み出してゲートウェイ1宛に送信し(S10~S12)、ゲートウェイ1は車両情報リストに基づいてECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを情報通信機器4宛に送信して情報通信機器4は復号化キーを受信し(S13~S15)、情報通信機器4は、ECU3から送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を受信し(S16~S19)、暗号化済みの車両情報を復号化キーを用いて復号化する(S20)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置と、
前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、
前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機と
を備える車両用通信制御システムであって、
前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、
前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果を、当該車外通信機から前記車載通信機を介して受信し、
前記中継装置は、前記所定の処理の結果に基づいて、中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを前記車載装置宛に送信し、
前記中継装置は、前記暗号化キーを用いて前記中継する車両情報を暗号化し、暗号化済みの車両情報を前記車載装置宛に中継し、
前記車載装置は、前記中継装置から受け取った前記復号化キーを用いて、前記中継装置からの前記暗号化済みの車両情報を復号化する
ことを特徴とする車両用通信制御システム。
【請求項2】
前記車載装置は、前記車両に後付け設置可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両用通信制御システム。
【請求項3】
車両に搭載される車載装置と、
前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、
前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機と
を備える車両用通信制御システムにおいて行われる車両用通信制御方法であって、
前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、
前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果を、当該車外通信機から前記車載通信機を介して受信し、
前記中継装置は、前記所定の処理の結果に基づいて、中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを前記車載装置宛に送信し、
前記中継装置は、前記暗号化キーを用いて前記中継する車両情報を暗号化し、暗号化済みの車両情報を前記車載装置宛に中継し、
前記車載装置は、前記中継装置から受け取った前記復号化キーを用いて、前記中継装置からの前記暗号化済みの車両情報を復号化する
ことを特徴とする車両用通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデータセンタなどの車外の機器(車外通信機)を利用する車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載された通信機器とデータセンタとの間で通信を行う車両用通信制御システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、CAN(Controller Area Network)などを含む車載LAN(Local Area Network)が構築されており、車載LANでは、ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの情報通信機器、および、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)それぞれがゲートウェイに接続されて、情報通信機器とECUとがゲートウェイを介して通信を行う。この場合に、車両情報(例えば、車速、吸気量など)の保護の観点から、ECUがゲートウェイを介して情報通信機器宛に車両情報を送信する際、ゲートウェイが暗号化キーを用いて車両情報を暗号化して暗号化した車両情報(以下、適宜、「暗号化済みの車両情報」と記載する。)を情報通信機器宛に送信し、情報通信機器はゲートウェイが用いた暗号化キーに対応する復号化キーを用いて暗号化済みの車両情報を復号化して車両情報を取得するようにすることが考えられる。このとき、ゲートウェイが用いた暗号化キーに対応する復号化キーを情報通信機器に事前に設定しておく必要がある。
【0005】
ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの情報通信機器には、車両メーカが部品メーカに対してゲートウェイが車両情報を暗号化する際に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを開示して開発される情報通信機器(純正品)や、販売後の車両にユーザが後付けする情報通信機器(サードパーティー製の製品(社外品))などがあり、社外品を後付けするユーザも多い。このため、情報通信機器に対して製品の相違(純正品、社外品など)の影響を抑えて車両にて同等の機能を実現したいというニーズが高まっている。
【0006】
しかしながら、純正品にはゲートウェイが車両情報を暗号化する際に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを事前に設定することが可能であるため、純正品は例えばゲートウェイにより暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を復号化して車両情報を取得することができる。一方で、社外品を開発する社外品メーカに対して機密性の高い車両情報の提供を最小限に抑えたい、また、社外メーカに対して暗号化キーに対する復号化キーを開示したくないという要望があることから、社外品にはゲートウェイが車両情報を暗号化する際に用いる暗号化キーに対応する復号化キーが事前に設定し得ない場合もあるため、社外品は例えばゲートウェイにより暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を復号化できずに車両情報を取得することができず、純正品と比べて機能面で劣ってしまう。
【0007】
本発明の目的は、中継装置が車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーが開示されなくても、車両に搭載される車載装置が中継装置により暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を復号化して車両情報の取得を可能にする車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用通信制御システムは、車両に搭載される車載装置と、前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機とを備える車両用通信制御システムであって、前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果を、当該車外通信機から前記車載通信機を介して受信し、前記中継装置は、前記所定の処理の結果に基づいて、中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを前記車載装置宛に送信し、前記中継装置は、前記暗号化キーを用いて前記中継する車両情報を暗号化し、暗号化済みの車両情報を前記車載装置宛に中継し、前記車載装置は、前記中継装置から受け取った前記復号化キーを用いて、前記中継装置からの前記暗号化済みの車両情報を復号化することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、車外通信機により車載装置識別情報に基づいて所定の処理が行われて当該所定の処理の結果が車載通信機を介して中継装置に送信され、中継装置は所定の処理の結果に基づいて中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを車載装置宛に送信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して暗号化キーに対応する復号化キーに関する情報を開示することなく、また、中継装置に対する暗号化キーの事前設定や車載装置に対する復号化キーの事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は、中継装置から送られてくる暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を、当該暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化して車両情報を取得することができる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【0010】
また、前記車載装置は、前記車両に後付け設置可能であるとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、車載装置が車両に後付け設置された場合であっても、車載装置は、中継装置から送られてくる暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を、当該暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化して車両情報を取得することができる。
【0012】
また、本発明に係る車両用通信制御方法は、車両に搭載される車載装置と、前記車両に搭載され、前記車載装置と通信可能に接続される中継装置と、前記車両に搭載され、前記中継装置と通信可能に接続されるとともに、車両外に設置されている車外通信機と通信可能な車載通信機とを備える車両用通信制御システムにおいて行われる車両用通信制御方法であって、前記車載装置は、当該車載装置を識別するための車載装置識別情報を前記中継装置および前記車載通信機を介して前記車外通信機宛に送信し、前記中継装置は、前記車外通信機が行う前記車載装置識別情報に基づく所定の処理の結果を、当該車外通信機から前記車載通信機を介して受信し、前記中継装置は、前記所定の処理の結果に基づいて、中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを前記車載装置宛に送信し、前記中継装置は、前記暗号化キーを用いて前記中継する車両情報を暗号化し、暗号化済みの車両情報を前記車載装置宛に中継し、前記車載装置は、前記中継装置から受け取った前記復号化キーを用いて、前記中継装置からの前記暗号化済みの車両情報を復号化することを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、車外通信機により車載装置識別情報に基づいて所定の処理が行われて当該所定の処理の結果が車載通信機を介して中継装置に送信され、中継装置は所定の処理の結果に基づいて中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを車載装置宛に送信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して暗号化キーに対応する復号化キーに関する情報を開示することなく、また、中継装置に対する暗号化キーの事前設定や車載装置に対する復号化キーの事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は、中継装置から送られてくる暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を、当該暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化して車両情報を取得することができる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車外通信機により車載装置識別情報に基づいて所定の処理が行われて当該所定の処理の結果が車載通信機を介して中継装置に送信され、中継装置は所定の処理の結果に基づいて中継する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを車載装置宛に送信する。このため、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置を開発するメーカに対して暗号化キーに対応する復号化キーに関する情報を開示することなく、また、中継装置に対する暗号化キーの事前設定や車載装置に対する復号化キーの事前設定をメモリに対して行うことなく、車載装置は、中継装置から送られてくる暗号化キーを用いて暗号化された暗号化済みの車両情報を、当該暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化して車両情報を取得することができる。また、車外通信機により車載装置が車両情報の取得を可能にするか否かに関わる所定の処理が行われることにより、車載装置が車両の販売後または車両の開発完了後などに開発された車載装置であっても中継装置に接続された機器から車両情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用通信制御システムの構成を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1の車両用通信制御システムにおいて行われる情報通信機器がECUから情報を取得する通信シーケンスを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
1.車両用通信制御システムのシステム構成
本発明の一実施形態に係る車両用通信制御システムSのシステム構成について
図1を参照しつつ説明する。
【0018】
車両Mには、CANなどを含む車載LANが構築されている。
図1に示す車両用通信制御システムSは、車両Mに搭載されるシステムであり、CANなどを含む車載LANに含まれる、ゲートウェイ1と、車載通信機2と、ECU3と、情報通信機器4とを備える。情報通信機器4は後述するように本実施形態では社外品であり、情報通信機器4とゲートウェイ1とは社外品を接続する情報バスBにより接続されている。また、
図1に示すデータセンタ5は、車両Mの外部に設置されている機器であり、車両用通信制御システムSが備える車載通信機2と例えば無線通信を含んで通信可能になっている。なお、ゲートウェイ1は、本発明の「中継装置」に相当し、車載通信機2は、本発明の「車載通信機」に相当し、情報通信機器4は、本発明の「車載装置」に相当し、データセンタ5は、本発明の「車外通信機」に相当する。
【0019】
ゲートウェイ1は、通信プロトコルが異なるネットワーク間などの通信を中継する機能を備えるものである。本実施形態のゲートウェイ1には、車載通信機2、ECU3、および、情報通信機器4が接続されている。本実施形態では、ゲートウェイ1は、暗号化キーを用いてECU3から送信されてくる車両情報を暗号化し、暗号化した車両情報(暗号化済みの車両情報)を情報バスBに出力して情報通信機器4宛に送信する。
【0020】
また、ゲートウェイ1は、データセンタ5から車載通信機2を介して後述する車両情報リストを受信する。そして、ゲートウェイ1は、車両情報リストにECU3から送信されてくる車両情報が含まれているか否かを確認し、車両情報リストにECU3から送信されてくる車両情報が含まれていることを確認した場合、ECU3から送られてくる車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを情報バスBに出力して情報通信機器4宛に送信する。
【0021】
車載通信機2は、例えば、車専用の通信機であるDCM(Data Communication Module)により構築されており、ゲートウェイ1に接続されているとともに、車両Mの外部に設置されているデータセンタ5などと通信を行うものである。
【0022】
ECU3は、例えば、ボディECU、VSC(Vehicle Stability Control) ECU、メータECU、ステレオカメラECU、EFI(Electronic Fuel Injection) ECUなどであり、ゲートウェイ1に接続されている。本実施形態では、ECU3は、所定の周期(例えば、10msの周期)で行う定期処理において車両情報をゲートウェイ1へ送信する。定期処理においてECU3により送信される車両情報はゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化され、暗号化済みの車両情報は情報バスBに出力されて情報通信機器4宛に送信される。このため、情報通信機器4が、ECU3により定期処理において送信される車両情報を取得するには、ゲートウェイ1が車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを必要とする。なお、ボディECU、VSC ECU、メータECU、ステレオカメラECU、EFI ECUは一般的なものであり、その詳細な説明は省略する。
【0023】
情報通信機器4は、例えば、ディスプレイオーディオ(D/A)やナビなどの車載装置であり、ゲートウェイ1に接続されている。本実施形態の情報通信機器4は、販売後の車両Mにユーザが後付けする後付け機器(社外品)である。
【0024】
情報通信機器4が車両Mに後付けされた時点では、情報通信機器4には、ゲートウェイ1がECU3により定期処理において送信されて受信する車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーの設定が行われていない。このため、情報通信機器4が車両Mに後付けされた時点では、情報通信機器4は、定期処理において、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を復号化できず、車両情報を取得することができない。
【0025】
本実施形態では、情報通信機器4が、定期処理においてECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)の復号化を可能にするために、次の処理が行われる。
【0026】
情報通信機器4は、情報通信機器4が車両Mに後付けされた後、例えばペアリングスイッチの操作(データセンタ5に対して情報通信機器4および車両Mに関わるデータベースを用いた照合を要求する操作)を検出すると、ゲートウェイ1および車載通信機2を介して、ペアリング要求(データセンタ5に対する認証の要求)および情報通信機器IDをデータセンタ5宛に送信する。ペアリング要求および情報通信機器IDが、情報通信機器4からゲートウェイ1および車載通信機2を介して、データセンタ5宛に送信される際に、車載通信機2は車両IDをデータセンタ5宛に送信する。これにより、データセンタ5は、ペアリング要求と情報通信機器IDと車両IDとを受信することになる。ここで、情報通信機器IDは、情報通信機器4を識別するためのIDであり、本発明の「車載装置識別情報」に相当する。また、車両IDは、車両MのVIN(Vehicle Identification Number:車両識別番号)である。
【0027】
なお、情報通信機器4は、ペアリングスイッチの操作の検出に基づきペアリング要求および情報通信機器IDをデータセンタ5宛に送信するとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、暗号化済みの車両情報を復号化できなかったことに基づきペアリング要求および情報通信機器IDをデータセンタ5宛に送信するようにしてもよい。
【0028】
データセンタ5は、後述するように、データセンタ5が備えるメモリ(不図示)に車両IDと情報通信機器IDと車両情報リスト(車両IDの車両に搭載された情報通信機器IDの情報通信機器に公開を許可する車両情報を列挙したリスト)とを対応付けたデータベースを記憶している。データセンタ5は、ペアリング要求と情報通信機器IDと車両IDとを受信した場合、受信したペアリング要求に応じて、データベースから受信した情報通信機器IDと受信した車両IDとに対応付けた車両情報リストを読み出し、読み出した車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1宛に送信する。なお、ペアリング要求に応じてデータベースから情報通信機器IDと車両IDとに対応付けた車両情報リストを読み出す処理が、本発明の「所定の処理」に相当する。
【0029】
なお、データセンタ5は、車両IDと情報通信機器IDと車両情報リストとを対応付けたデータベースをメモリ(不図示)に記憶するとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、車両IDと情報通信機器IDとを対応付けたデータベースをメモリ(不図示)に記憶するようにしてもよい。この場合、データセンタ5は、ペアリング要求に応じて、データベースに情報通信機器IDと車両IDとが対応付けて記憶されているか否かを確認して、データベースに情報通信機器IDと車両IDとが対応付けて記憶されていることを確認できた場合に車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1宛に送信する。
【0030】
ゲートウェイ1は、車載通信機2を介してデータセンタ5から車両情報リストを受信する。
【0031】
ゲートウェイ1は、定期処理においてECU3から送信されて受信する車両情報が車両情報リストに含まれているか否かを確認する。そして、ゲートウェイ1は、定期処理においてECU3から送信されて受信する車両情報が車両情報リストに含まれていることを確認できた場合、当該車両情報の暗号化に用いる暗号キーに対応する復号化キーを情報バスBに出力して情報通信機器4宛に送信する。
【0032】
情報通信機器4は、ゲートウェイ1から情報バスBに出力されて情報通信機器4宛に送信された復号化キーを受信する。
【0033】
以上が、情報通信機器4が、定期処理においてECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)の復号化を可能にする当該暗号キーに対応する復号化キーの取得に関わる一連の処理である。
【0034】
情報通信機器4は、定期処理においてECU3により送信された車両情報を取得する場合、次の処理を行う。定期処理においてECU3により送信された車両情報はゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化され、情報通信機器4は、暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を受信する。情報通信機器4は、ペアリング要求に対応してゲートウェイ1から取得した復号化キーを用いて、暗号化済みの車両情報を復号化して車両情報を取得する。
【0035】
データセンタ5は、上述したように、車両Mの外部に設置されている機器である。本実施形態では、データセンタ5が備えるメモリ(不図示)には、車両Mなどの車両に搭載された情報通信機器4などの情報通信機器に対して公開する車両情報を列挙した車両情報リストが事前に記憶されている。具体的には、データセンタ5が備えるメモリ(不図示)には、車両IDと情報通信機器IDと車両情報リストとを対応付けたデータベースが記憶されている。
【0036】
データセンタ5は、車両IDと情報通信機器IDとペアリング要求とを受信し、受信したペアリング要求に応じて、データベースから受信した車両IDと情報通信機器IDとに対応付けた車両情報リストを読み出して、読み出した車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1宛に送信する。
【0037】
なお、情報通信機器4がデータセンタ5のデータベースに情報通信機器IDが存在しない情報通信機器である場合、データセンタ5は認証失敗、または、公開を許可する車両情報が列挙されていない車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1宛に送信する。ゲートウェイ1は、認証失敗、または、公開を許可する車両情報が列挙されていない車両情報リストを受信し、この場合、ECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを情報バスBに出力して情報通信機器4宛に送信しない。このため、情報通信機器4は、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済み車両情報)を復号化できず、車両情報を取得できないようになっている。
【0038】
2.車両用通信制御システムの通信シーケンス
図1の車両用通信制御システムSにおいて行われる情報通信機器4がECU3から情報を取得する通信シーケンスについて
図2を参照しつつ説明する。
【0039】
図2の通信シーケンスが開始された時点では、情報通信機器4には、ゲートウェイ1がECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーが設定されていない。
【0040】
定期処理において、ECU3は車両情報をゲートウェイ1へ送信し、ゲートウェイ1はECU3から車両情報を受信する(ステップS1)。ゲートウェイ1は、受信した車両情報を、暗号化キーを用いて暗号化する(ステップS2)。ゲートウェイ1は、暗号化した車両情報(暗号化済みの車両情報)を情報バスBに出力し(ステップS3)、暗号化済みの車両情報は情報バスBから情報通信機器4に入力される(ステップS4)。情報通信機器4は、ゲートウェイ1が車両情報の暗号化に用いた暗号化キーに対応する復号化キーを有していないので、暗号化済みの車両情報を復号化できず、車両情報を取得できない(ステップS5)。
【0041】
情報通信機器4は、ペアリング要求および情報通信機器4を識別するための情報通信機器IDをデータセンタ5宛に送信する。ペアリング要求および情報通信機器IDは、情報通信機器4から情報バスBに出力され(ステップS6)、情報バスBからゲートウェイ1に入力され(ステップS7)、ゲートウェイ1から車載通信機2へ送信されて車載通信機2により受信される(ステップS8)。
【0042】
ゲートウェイ1からペアリング要求および情報通信機器IDが送られてきた車載通信機2は、当該ペアリング要求および当該情報通信機器IDに加えて、車両Mを識別するための車両IDをデータセンタ5宛に送信する。ペアリング要求、車両IDおよび情報通信機器IDは、車載通信機2からデータセンタ5へ送信されてデータセンタ5により受信される(ステップS9)。
【0043】
データセンタ5は、ステップS9で車両IDと情報通信機器IDとペアリング要求とを受信し、受信したペアリング要求に応じて、データベースから受信した車両IDと情報通信機器IDとに対応付けた車両情報リスト(車両IDの車両に搭載された情報通信機器IDの情報通信機器に公開を許可する車両情報を列挙したリスト)を読み出す(ステップS10)。
【0044】
データセンタ5は、ステップS10でデータベースから読み出した車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1宛に送信する。車両情報リストは、データセンタ5から車載通信機2へ送信されて車載通信機2により受信され(ステップS11)、車載通信機2からゲートウェイ1へ送信されてゲートウェイ1により受信される(ステップS12)。
【0045】
ゲートウェイ1は、ステップS12で受信した車両情報リストにECU3からの車両情報が含まれているかを確認する(ステップS13)。
図2の通信シーケンスでは、ステップS12で受信した車両情報リストにECU3からの車両情報が含まれていることを確認する。
【0046】
ゲートウェイ1は、車両情報リストにECU3からの車両情報が含まれていることを確認できた場合、ECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを情報バスBに出力し(ステップS14)、復号化キーは情報バスBから情報通信機器4に入力される(ステップS15)。これにより、情報通信機器4は、ECU3から送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を、当該暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化して車両情報を取得可能になる。
【0047】
定期処理において、ECU3は車両情報をゲートウェイ1へ送信し、ゲートウェイ1はECU3から車両情報を受信する(ステップS16)。ゲートウェイ1は、受信した車両情報を、暗号化キーを用いて暗号化する(ステップS17)。ゲートウェイ1は、暗号化した車両情報(暗号化済みの車両情報)を情報バスBに出力し(ステップS18)、暗号化済みの車両情報は情報バスBから情報通信機器4に入力される(ステップS19)。情報通信機器4は、ゲートウェイ1が車両情報の暗号化に用いた暗号化キーに対応する復号化キーを有しているので、暗号化済みの車両情報を、ゲートウェイ1が車両情報の暗号化に用いた暗号化キーに対応する復号化キーを用いて、復号化して車両情報を取得する(ステップS20)。
【0048】
3.効果
上記した実施形態によれば、情報通信機器4はペアリング要求および情報通信機器IDをゲートウェイ1および車載通信機2を介してデータセンタ5宛に送信し、この際、車載通信機2は車両IDをデータセンタ5宛に送信する。データセンタ5は、車両IDおよび情報通信機器IDに対応付けられた車両情報リストをデータベースから読み出して、読み出した車両情報リストを、車載通信機2を介してゲートウェイ1に送信する。ゲートウェイ1は、ECU3からの車両情報が車両情報リストに含まれている場合には、ECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを、情報バスBを用いて情報通信機器4宛に送信し、情報通信機器4はECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーに対応する復号化キーを受信する。これにより、情報通信機器4は、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を、暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化でき、車両情報を取得することができる。
【0049】
また、情報通信機器4が社外品などの車両Mに後付け設置可能な後付け品であっても、情報通信機器4は、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を、暗号化キーに対応する復号化キーを用いて復号化でき、車両情報を取得することができる。
【0050】
また、データセンタ5のデータベースに情報通信機器IDが存在しない情報通信機器の場合、当該情報通信機器は、ECU3からの情報の暗号化に用いた暗号化キーに対応する復号化キーをゲートウェイ1から受け取ることができないので、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を復号化できず、車両情報を取得することができない。このように、データセンタ5のデータベースに情報通信機器IDが存在しない情報通信機器(例えば、車両Mの車両メーカなどに認証されていない情報通信機器)が車両情報を取得できず、車両情報の保護が図られる。
【0051】
また、情報通信機器4が車両Mの販売後または車両Mの開発完了後などに開発された社外品などの情報通信機器であっても、データセンタ5のデータベースに車両IDと情報通信機器IDと車両情報リストとを対応付けて記憶することにより、情報通信機器4は、ECU3により送信され、ゲートウェイ1により暗号化キーを用いて暗号化された車両情報(暗号化済みの車両情報)を復号化するための復号化キーを取得して、車両情報の取得が可能になる。
【0052】
また、ECU3は、所定の周期で行う定期処理において車両情報を送信することにより、情報通信機器4などはよりリアルタイムな車両情報を利用することができる。
【0053】
また、情報通信機器4はECU3からの車両情報を取得する際に情報送信を行わないため、情報通信機器4による情報バスBなどの通信バスの占有を緩和することができる。
【0054】
また、社外品などの情報通信機器4への車両情報の提供を、情報通信機器4の開発メーカに対する情報の開示を抑えて実現することができる。
【0055】
また、情報通信機器4に関して純正品と同等の機能を実現できる社外品を充実させることができ、車両用通信制御システムSを搭載する車両Mそのものの魅力を向上させることができる。
【0056】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態において、ゲートウェイ1がECU3からの車両情報の暗号化に用いる暗号化キーを例えば定期的に変更し、
図2のステップS6からステップS14の処理の対象となった情報通信機器4に関して、再度
図2のステップS6からステップS14の処理の対象とするようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態において、ゲートウェイ1は、例えば、車両情報単位で暗号化キーおよび復号化キーを設定するようにしてもよく、情報を提供する側のECU単位で暗号化キーおよび復号化キーを設定するようにしてもよく、情報を受け取る側の情報通信機器単位で暗号化キーおよび復号化キーを設定するようにしてもよく、車両単位で暗号化キーおよび復号化キーを設定するようにしてもよい。例えば、車両単位で暗号化キーおよび復号化キーを設定する場合は、ある車両で取得した復号化キーを他のある車両での流用を防ぐことが可能になる。
【0059】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0060】
本発明は、例えばデータセンタなどの車外の機器(車外通信機)を利用する車両用通信制御システム、および、車両用通信制御方法に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
S:車両用通信制御システム
M:車両
1:ゲートウェイ
2:車載通信機
3:ECU
4:情報通信機器
5:データセンタ