(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166114
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】端子台アッセンブリ
(51)【国際特許分類】
H01R 9/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H01R9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076913
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和泉 海志
【テーマコード(参考)】
5E086
【Fターム(参考)】
5E086DD05
5E086DD32
5E086LL04
5E086LL13
(57)【要約】
【課題】端子台アッセンブリの端子台とブラケットとを一体とすることが可能であるとともに、端子台とブラケットとの間に無理な力が作用しない。
【解決手段】端子台アッセンブリは、複数の電線の端子を保持する端子台と、シールド部材と、シールド部材を保持する金属製であり板状のブラケットとを備え、機器筐体が有する突起に前記ブラケットが取り付けられる。前記ブラケットは、第一方向に沿って前記シールド部材を取り付けるために前記第一方向に長い形状を有し、前記端子台は、前記ブラケットと一体にするためのピンを有し、前記ブラケットは、前記ピンの外径よりも大きく前記ピンを通す穴が設けられている連結板部と、前記第一方向に直交する取り付け方向から前記突起の先部に載った状態となって前記突起に固定される固定板部と、を有し、前記固定板部は、前記先部に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器筐体に搭載されるとともに複数の電線の端子を保持する端子台と、
前記複数の電線と対向して設けられるシールド部材と、
前記シールド部材を保持する金属製であり板状のブラケットと、
を備え、
前記機器筐体が有する突起に前記ブラケットが取り付けられ、前記シールド部材が前記ブラケットを介して前記機器筐体と電気的に接続可能となる端子台アッセンブリであって、
前記端子台は、複数の前記端子を第一方向に並べて保持するために前記第一方向に長い形状を有し、
前記ブラケットは、前記第一方向に沿って前記シールド部材を取り付けるために前記第一方向に長い形状を有し、
前記端子台は、前記ブラケットと一体にするためのピンを有し、
前記ブラケットは、前記ピンの外径よりも大きく前記ピンを通す穴が設けられている連結板部と、前記第一方向に直交する取り付け方向から前記突起の先部に載った状態となって前記突起に固定される固定板部と、を有し、
前記固定板部は、前記先部に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片を有する、
端子台アッセンブリ。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記接触片を有する前記固定板部を、前記第一方向の両側それぞれに有する、請求項1に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記複数の電線に、その片側においてのみ、対向して設けられているシート形状を有し、
前記ブラケットは、シート形状である前記シールド部材の縁部に沿って設けられている取り付け板部を有する、請求項1または請求項2に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項4】
前記突起が有する前記先部は円柱形状を有し、
前記接触片は、前記先部の外周面に沿った円弧形状である円弧部と、前記円弧部の両端それぞれから直線的に延びて設けられている一対の直線部と、を有する、請求項1に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項5】
前記円弧部は、前記先部の外周面に沿って連続する円弧形状を有し、
前記直線部と前記円弧部とは連続している、請求項4に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項6】
前記端子台は、前記第一方向に延びて設けられているアームを有し、
前記ピンは、前記アームの先端に設けられている、請求項1に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項7】
前記ピンの中心線の方向は、前記取り付け方向と同じである、請求項1に記載の端子台アッセンブリ。
【請求項8】
前記端子台を、第二端子台とした場合、
前記機器筐体に直接的に取り付けられる第一端子台を、さらに有し、
前記第二端子台は、前記第一端子台に固定され、
前記ブラケットが有する前記固定板部は、前記第一端子台から前記第一方向にはみ出した位置まで、延びて設けられている、請求項1に記載の端子台アッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子台アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
車両などにおいて電気機器同士を電気的に接続するために、端子台アッセンブリが用いられる。例えば、電気機器としてのモータとインバータとを接続するために、そのモータのケース(機器筐体)に端子台アッセンブリが搭載され、その端子台アッセンブリから延びる電線が、インバータ側の端子台に接続される。特許文献1に、前記のような端子台アッセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7は、従来の端子台アッセンブリ90の概略構成を示す説明図である。端子台アッセンブリ90は、複数の電線95の端子94を保持する端子台91と、複数の電線95のための編組から成るシールド部材92と、シールド部材92を保持する金属製のブラケット93とを備える。端子台91は、機器筐体であるケース99に搭載され、ブラケット93がケース99の一部98に、例えばボルト100によって固定される。なお、
図7ではシールド部材92を二点鎖線で示し、ケース99を破線で示す。シールド部材92はブラケット93を介してケース99と電気的に接続可能となり、ブラケット93を含む構成が接地(アース)として機能する。
【0005】
端子台91は、ブラケット93と一体にするためのピン96を有し、ブラケット93の一部にピン96を通す穴97が設けられている。端子台91とブラケット93とが一体となることで、端子台アッセンブリ90をケース99に搭載する組み立て作業において、その取り扱いが容易となり、作業効率が良い。
【0006】
しかし、前記組み立て作業において、ケース99上において、ブラケット93よりも先に端子台91の変位が拘束された状態となることがある。そして、ブラケット93が、その両側部において、ケース99の一部98にボルト100によって取り付けられる。その取り付けの際、端子台91の変位が拘束された状態で、例えば最初に用いる1つのボルト100の締め付けトルクによってブラケット93が変位すると、ピン96に大きなせん断力(無理な力)が作用する。そのため、ピン96が破断する可能性がある。
【0007】
そこで、本開示では、端子台とブラケットとを一体とすることが可能であるとともに、端子台とブラケットとの間に無理な力が作用しない端子台アッセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の端子台アッセンブリは、機器筐体に搭載されるとともに複数の電線の端子を保持する端子台と、前記複数の電線と対向して設けられるシールド部材と、前記シールド部材を保持する金属製であり板状のブラケットと、を備え、前記機器筐体が有する突起に前記ブラケットが取り付けられ、前記シールド部材が前記ブラケットを介して前記機器筐体と電気的に接続可能となる端子台アッセンブリであって、前記端子台は、複数の前記端子を第一方向に並べて保持するために前記第一方向に長い形状を有し、前記ブラケットは、前記第一方向に沿って前記シールド部材を取り付けるために前記第一方向に長い形状を有し、前記端子台は、前記ブラケットと一体にするためのピンを有し、前記ブラケットは、前記ピンの外径よりも大きく前記ピンを通す穴が設けられている連結板部と、前記第一方向に直交する取り付け方向から前記突起の先部に載った状態となって前記突起に固定される固定板部と、を有し、前記固定板部は、前記先部に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の端子台アッセンブリによれば、端子台とブラケットとを一体とすることが可能であるとともに、端子台とブラケットとの間に無理な力が作用しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、端子台アッセンブリの平面図である。
【
図2】
図2は、端子台アッセンブリの正面図である。
【
図3】
図3は、端子台アッセンブリの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、端子台アッセンブリの一部を示す説明図である。
【
図5】
図5は、端子台アッセンブリの別の一部を示す説明図である。
【
図6】
図6は、固定板部を下から見た拡大図である。
【
図7】
図7は、従来の端子台アッセンブリの概略構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本実施形態の端子台アッセンブリは、機器筐体に搭載されるとともに複数の電線の端子を保持する端子台と、前記複数の電線と対向して設けられるシールド部材と、前記シールド部材を保持する金属製であり板状のブラケットと、を備え、前記機器筐体が有する突起に前記ブラケットが取り付けられ、前記シールド部材が前記ブラケットを介して前記機器筐体と電気的に接続可能となる端子台アッセンブリであって、前記端子台は、複数の前記端子を第一方向に並べて保持するために前記第一方向に長い形状を有し、前記ブラケットは、前記第一方向に沿って前記シールド部材を取り付けるために前記第一方向に長い形状を有し、前記端子台は、前記ブラケットと一体にするためのピンを有し、前記ブラケットは、前記ピンの外径よりも大きく前記ピンを通す穴が設けられている連結板部と、前記第一方向に直交する取り付け方向から前記突起の先部に載った状態となって前記突起に固定される固定板部と、を有し、前記固定板部は、前記先部に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片を有する。
【0012】
本実施形態の端子台アッセンブリによれば、端子台のピンが、ブラケットが有する連結板部の穴に挿入され、端子台とブラケットとは一体となる。穴はピンの外径よりも大きく、端子台とブラケットとは相対的に変位可能な状態で一体となる。端子台とブラケットとが一体となることで、端子台アッセンブリは扱いやすくなり、端子台アッセンブリを機器筐体に搭載する作業が容易となる。
【0013】
ブラケットは、その固定板部において、機器筐体の突起に取り付けられる。その取り付けの際に、ブラケットが例えば前記第一方向の成分を有して変位しようとしても、ブラケットの接触片が突起の先部に接触することで、ブラケットは変位不能となる。機器筐体上で端子台の変位が拘束された状態にあっても、ブラケットも機器筐体の突起に対して変位不能であることから、端子台のピンに大きなせん断力(無理な力)が作用せず、端子台の破断が防止される。
【0014】
(2)好ましくは、前記ブラケットは、前記接触片を有する前記固定板部を、前記第一方向の両側それぞれに有する。この構成により、第一方向の両方向について、ブラケットが変位不能となる。固定板部を中心とするブラケットの揺動変位についても不能となる場合がある。このため、例えばボルトによって、固定板部が突起に固定される場合に、そのボルトの締め付けトルクによってブラケットが揺動変位しない。
【0015】
(3)好ましくは、前記シールド部材は、前記複数の電線に、その片側においてのみ、対向して設けられているシート形状を有し、前記ブラケットは、シート形状である前記シールド部材の縁部に沿って設けられている取り付け板部を有する。この場合、ブラケットは、シート形状であるシールド部材を全周から囲む形状を有していなくてもよく、構成の簡素化が可能となる。
【0016】
(4)好ましくは、前記(1)から(3)のいずれか一つに記載の端子台アッセンブリにおいて、前記突起が有する前記先部は円柱形状を有し、前記接触片は、前記先部の外周面に沿った円弧形状である円弧部と、前記円弧部の両端それぞれから直線的に延びて設けられている一対の直線部と、を有する。この場合、ブラケットの接触片が突起の先部に嵌ることで、ブラケットは変位不能となる。直線部によって、ブラケットの剛性が高まる。
【0017】
(5)好ましくは、前記(4)の端子台アッセンブリにおいて、前記円弧部は、前記先部の外周面に沿って連続する円弧形状を有し、前記直線部と前記円弧部とは連続している。この場合、ブラケットの剛性がより一層高まる。
【0018】
(6)好ましくは、前記(1)から(5)のいずれか一つに記載の端子台アッセンブリにおいて、前記端子台は、前記第一方向に延びて設けられているアームを有し、前記ピンは、前記アームの先端に設けられている。この場合、アームは片持ち梁状であり、そのアームの先端にピンが設けられている。このような構造であっても、端子台アッセンブリを機器筐体に搭載する作業の際、端子台のピンおよびアームに無理な力が作用せず、端子台の破断が防止される。
【0019】
(7)好ましくは、前記(1)から(6)のいずれか一つに記載の端子台アッセンブリにおいて、前記ピンの中心線の方向は、前記取り付け方向と同じである。この場合、端子台とブラケットとが、ピンと穴との隙間の範囲で前記取り付け方向の直交方向について変位可能となる。しかし、機器筐体の突起の先部にブラケットの固定板部が載った状態になると、ブラケットは変位不能となる。
【0020】
(8)好ましくは、前記(1)から(7)のいずれか一つに記載の端子台アッセンブリにおいて、前記端子台アッセンブリは、前記端子台を、第二端子台とした場合、前記機器筐体に直接的に取り付けられる第一端子台を、さらに有し、前記第二端子台は、前記第一端子台に固定され、前記ブラケットが有する前記固定板部は、前記第一端子台から前記第一方向にはみ出した位置まで、延びて設けられている。この場合、ブラケットは、第一端子台を跨いだ状態となって機器筐体の突起に固定される。ブラケットの機器筐体への固定作業が容易となる。
【0021】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0022】
〔端子台アッセンブリの全体構成〕
図1は、端子台アッセンブリ10の平面図である。
図2は、端子台アッセンブリ10の正面図である。
図3は、端子台アッセンブリ10の分解斜視図である。端子台アッセンブリ10は、複数の電気機器同士を電線15により接続するために用いられる。前記複数の電気機器としては、車載のモータおよびインバータなどである。本実施形態の端子台アッセンブリ10は、前記モータのケースに搭載される。そのケースを機器筐体7と呼んで説明する。本実施形態では、端子台アッセンブリ10に3相(3本)の電線15が接続されているが、電線15の数は変更可能である。
【0023】
端子台アッセンブリ10は、第一端子台11、第二端子台12、シールド部材13、およびブラケット14を備える。第一端子台11は、機器筐体7に直接的に取り付けられる。第一端子台11は、その四隅においてボルト(図示せず)によって、機器筐体7に固定される。
図2および
図3では、機器筐体7を二点鎖線で示す。第二端子台12は、第一端子台11に取り付けられる。第二端子台12は、第一端子台11を介して、機器筐体7に搭載される。機器筐体7は2つの突起8を有する。突起8にブラケット14はボルト80により固定される。機器筐体7のうち、突起8を含む部分は少なくとも金属製である。
【0024】
シールド部材13は、3本の電線15と対向して設けられる。シールド部材13は、金属製であり、素線を編んで構成した編組により構成されている。シールド部材13は、矩形のシート形状を有しており、3本の電線15の片側においてのみ設けられている。ブラケット14は、金属製であり板状の部材である。ブラケット14はシールド部材13を保持する。シールド部材13を保持するための構造については、後に説明する。
【0025】
〔第一端子台11および第二端子台12について〕
第一端子台11および第二端子台12は、樹脂製であり、熱可塑性樹脂を用いた射出成形により成形される。第一端子台11は、コネクタ接続部17を有する。コネクタ接続部17に、図示しない別の機器から延びて設けられている電線の相手コネクタが接続される。コネクタ接続部17は、第一端子台11の幅方向の一方側(
図1および
図2において左側)に偏って設けられている。第一端子台11と第二端子台12とを合体させた状態で、3本の電線15および端子16は、第一端子台11の幅方向の中央に位置する。第一端子台11は、第二端子台12に含まれる3本の電線15の端子16と電気的に接続される端子ブロック81を有する。
【0026】
第二端子台12は、3本の電線15の3つの端子16を保持する。第二端子台12は、3つの端子16を保持するハウジング部30を有する。端子16は樹脂製であるハウジング部30にインサート成形されており、端子16とハウジング部30とは一体となる。ハウジング30が第一端子台11に嵌合し、第二端子台12は第一端子台11に固定される。3つの端子16は、一方向(第一方向)に並んで設けられている。3つの端子16から延びる3本の電線15が、一方向(第一方向)に並んで設けられている。第二端子台12(ハウジング部30)は、3つの端子16を第一方向に並べて保持するために、前記第一方向に長い形状を有する。
【0027】
ここで、本開示の端子台アッセンブリ10の方向について定義する。3つ(複数)の端子16が並ぶ方向(前記第一方向)を幅方向と定義する。第一端子台11が上側の端子台であり、第二端子台12が下側の端子台であるとして上下方向を定義する。なお、この上下方向は、端子台アッセンブリ10を説明するために定義する方向であり、機器筐体7に端子台アッセンブリ10が実際に搭載された状態での鉛直上下方向と一致していなくてもよい。幅方向と上下方向との双方に直交する方向を前後方向と定義する。電線15は、前後方向に延びて設けられている。各図にXYZ直交座標を示す。X方向は幅方向であり、Y方向は前後方向であり、Z方向は上下方向である。
【0028】
第二端子台12は、第二端子台12とブラケット14とを一体にするためのピン36,39を有する。具体的に説明すると、第二端子台12は一対のアーム31,32を有する。アーム31,32は、ハウジング部30から幅方向の両側にそれぞれ延びて設けられている。第一アーム31の先端に第一ピン39が設けられている。第二アーム32の先端に第二ピン36が設けられている。第一アーム31、第二アーム32、第一ピン39、および第二ピン36は、ハウジング部30と一体成型されており、樹脂製である。
【0029】
図4は、端子台アッセンブリ10の一部(幅方向の一方側)を示す説明図である。
図5は、端子台アッセンブリ10の別の一部(幅方向の他方側)を示す説明図である。
図4に示すように、ブラケット14に、第一ピン39を通す第一穴40が設けられている。第一穴40は、第一ピン39(ピン本体部39a)の外径(横断面)よりも大きい。第一ピン39は、その中心線に沿って外径が同じ形状(半割の円形)であるピン本体部39aと、ピン本体部39aよりも外径が拡大している係止部39bとを有する。係止部39bは、第一穴40よりも拡大しているとともに弾性的に変形可能である。本実施形態では、ピン本体部39aおよび係止部39bが二分割形状となっていることから、第一ピン39が全体として弾性変形可能である。第一ピン39を第一穴40に貫通させる際、係止部39bが拡大形状から縮小し、貫通の後、係止部39bは弾性復元力によって拡大形状に戻る。係止部39bにより第一ピン39はブラケット14から抜け止めされる。
【0030】
図5に示すように、ブラケット14に、第二ピン36を通す第二穴41が設けられている。第二穴41の内径は、第二ピン36の外径よりも大きい。第二ピン36は、その中心線に沿って横断面が第二穴41と同じ形状(円形)である。
第一ピン39および第二ピン36により、ブラケット14と第二端子台12とは、上下方向について相対的に変位可能であるが、相互間で分離不能となる(一体となる)。ピン39,36と穴40,41とが接触する範囲で、ブラケット14と第二端子台12とは、幅方向および前後方向について僅かに変位可能となる。
【0031】
〔シールド部材13およびブラケット14について〕
図3に示すように、ブラケット14は、幅方向(X方向)に沿ってシールド部材13の縁部13eを取り付けるために、幅方向に長い形状を有する。ブラケット14は金属製(例えばステンレス製)である。ブラケット14は、取り付け板部20と連結板部21と固定板部22とを有する。取り付け板部20は、シールド部材13の縁部13eを取り付けるための部分である。取り付け板部20は、シールド部材13の縁部13eに沿って設けられており、幅方向に長い。取り付け板部20は、シールド部材13の縁部13eの下に位置するベース片82と、ベース片82との間で前記縁部13eを上から挟むための折り曲げ片83とを有する。ブラケット14は、連結板部21において折り曲げ部を有するが板状であり、シート形状であるシールド部材13を全周から囲む形状を有していない。
【0032】
シールド部材13は、3本の電線15よりも下側であって、これら電線15を基準として幅方向の他方側(
図1および
図2において右側)に偏って、ブラケット14に設けられている。
図1および
図2において、3本の電線15の束の幅方向の中心を通る中心線を「L1」として示し、シールド部材13の幅方向の中心を通る中心線を「L2」として示している。前記中心線L1と前記中心線L2とが幅方向に一致していない。
【0033】
図3に示すように、連結板部21は、取り付け板部20の幅方向両側に設けられている。幅方向一方側の連結板部21に、第一ピン39を通す第一穴40が設けられている。幅方向他方側の連結板部21に、第二ピン36を通す第二穴41が設けられている。
【0034】
ブラケット14は、固定板部22を、幅方向の両側それぞれに有する。固定板部22は、連結板部21から延びて設けられている。両側の固定板部22は、機器筐体7の一部である2つの突起8にボルト80によって固定される。
図1に示すように、ブラケット14は幅方向(X方向)に長く、連結板部21において、前後方向(Y方向)の一方に折れ曲がり形状を有する。幅方向両側の固定板部22は、相互間の幅方向の間隔を広げるように延びて設けられている。幅方向両側の固定板部22は、第一端子台11から幅方向にはみ出した位置まで、延びて設けられている。このため、ブラケット14は、第一端子台11を幅方向に跨いだ状態となって、機器筐体7の突起8に固定される。
【0035】
固定板部22は、突起8の先部9に載った状態となって突起8に固定される(
図2参照)。上から下に向かう方向(上下方向)が、突起8に対するブラケット14の取り付け方向となる。固定板部22は、幅方向(X方向)に直交する取り付け方向から突起8の先部9に載った状態となって突起8に固定される。突起8にブラケット14が取り付けられることで、シールド部材13がブラケット14を介して機器筐体7と電気的に接続可能となる。シールド部材13は、機器筐体7を通じて基準電位点と電気的に接続される。
【0036】
突起8に、上面で開口するねじ穴85(
図3参照)が設けられている。ねじ穴85にボルト80が締め付けられ、これによりブラケット14が機器筐体7に固定される。固定板部22の平板部84に、ボルト80のねじ軸部が貫通する穴86が設けられている。
【0037】
図6は、固定板部22を下から見た拡大図である。
図6において、突起8を二点鎖線で示す。前記のとおり、突起8に対するブラケット14の取り付け方向は、上から下に向かう方向(上下方向)である。固定板部22は、取り付けの際に、突起8の先部9に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片23を有する。接触片23は、ブラケット14の幅方向両側における一対の固定板部22それぞれに設けられている(
図3参照)。本実施形態では、接触片23は、突起8の先部9に対して前後方向および幅方向に接触可能である。
【0038】
図6において、突起8の先部9は円柱形状を有する。その先部9に対して接触片23が前後方向および幅方向に接触するために、接触片23は、円弧部24と一対の直線部25とを有する。円弧部24および直線部25は、固定板部22のうち、突起8の上面に載る平板部84から直角に折れ曲がった形状を有する。円弧部24は、先部9の外周面に沿った円弧形状を有する。直線部25は、円弧部24の両端それぞれから直線的に延びて設けられている。円弧部24は、先部9の中心を基準として180度の範囲に設けられている。円弧部24は、先部9の外周面に沿って連続する円弧形状を有する。直線部25と円弧部24とは連続している。
【0039】
ブラケット14の接触片23の機能について説明する(
図1、
図2および
図3参照)。
第一ピン39および第二ピン36の中心線の方向は、突起8に対するブラケット14の取り付け方向(上下方向)と同じである。ブラケット14の幅方向両側の固定板部22が、突起8に載る前の状態で、ブラケット14は、第二端子台12に対して前記取り付け方向の直交方向(幅方向および前後方向)について変位可能となる。なお、ブラケット14が変位可能となる範囲は、第一ピン39と第一穴40との隙間の範囲、および、第二ピン36と第二穴41との隙間の範囲である。
【0040】
ブラケット14の固定板部22が突起8に載った状態になると、ブラケット14の幅方向一方側(
図1において左側)の固定板部22において、接触片23のうち、円弧部24の一部24pと、その反対の片側の直線部25との間に、幅方向について、先部9は介在した状態となる。ブラケット14の幅方向他方側(
図1において右側)の固定板部22において、接触片23のうち、円弧部24の一部24qと、その反対の片側の直線部25との間に、幅方向について、先部9は介在した状態となる。このため、ブラケット14の幅方向の変位が規制される。
【0041】
ブラケット14の幅方向両側の固定板部22それぞれにおいて、接触片23のうち、円弧部24の他部24rと、その反対の片側の直線部25との間に、前後方向について、先部9は介在した状態となる。このため、ブラケット14の前後方向の変位が規制される。
以上より、ブラケット14が突起8の先部9に載った状態で、ブラケット14の幅方向および前後方向の変位が接触片23によって規制される。その結果、ピン39,36にせん断力(無理な力)が作用しない。
【0042】
〔第二端子台12とブラケット14との連結構造について〕
端子台アッセンブリ10を機器筐体7に搭載する前、第二端子台12とブラケット14とは予め組み立てられていて一体となっている。その一体とするための構造について説明する。
図2および
図4に示すように、ハウジング部30のうち、端子16の一部を覆う第一樹脂部87から、第一アーム31は幅方向一方側に延びて設けられている。第一アーム31が繋がる第一樹脂部87は、幅方向一方側の端子16と電線15との接続部分を覆う樹脂部である。第一アーム31の先端から、第一ピン39が下に向かって突出する。
【0043】
図2および
図5に示すように、ハウジング部30のうち、別の端子16の一部を覆う第二樹脂部88から、第二アーム32は幅方向他方側に延びて設けられている。第二アーム32は、ハウジング部30から連続する基部33と、ハウジング部30と反対側の先部35と、基部33と先部35とを繋ぐ中間部34を有する。前記別の端子16の一部を覆う第二樹脂部88から、基部33は幅方向他方側に延びて設けられている。第二アーム32が繋がる第二樹脂部88は、軸方向他方側の端子16と電線15との接続部分を覆う樹脂部である。中間部34は、基部33から下に延びて設けられている。先部35は、中間部34の下部34bから幅方向他方側に延びて設けられている。先部35が、上に向かって突出する第二ピン36を有する。
【0044】
第二ピン36を第二穴41に貫通させた状態で、第一ピン39を第一穴40に貫通させる。前記のとおり、第一ピン39を第一穴40に貫通させる際、係止部39bを縮小させ、貫通の後、係止部39bは弾性復元力によって拡大形状となる。これにより第一ピン39はブラケット14に対して抜け止めされる。第二端子台12とブラケット14との組み立て体において、第二端子台12に対して、ブラケット14が下に脱落しようとすると、第二アーム32にブラケット14の連結板部21が接触し、その脱落を防ぐことができる。前記組み立て体において、ブラケット14に対して、第二端子台12が下に脱落しようとすると、第一アーム31がブラケット14の連結板部21に接触し、その脱落を防ぐことができる。
【0045】
〔本実施形態の端子台アッセンブリ10について〕
図1、
図2、
図3に示す本実施形態の端子台アッセンブリ10は、3本の電線15の端子16を保持する第二端子台12と、前記3本の電線15と対向して設けられるシールド部材13と、シールド部材13を保持する金属製であり板状のブラケット14とを備える。機器筐体7が有する突起8にブラケット14が取り付けられる。これにより、シールド部材13がブラケット14を介して機器筐体7と電気的に接続される。
【0046】
第二端子台12は、3本の端子16を幅方向(X方向)に並べて保持するために、幅方向に長い形状を有する。ブラケット14は、幅方向に沿ってシールド部材13を取り付けるために、幅方向に長い形状を有する。第二端子台12は、ブラケット14と一体にするための第一ピン39および第二ピン36を有する。ブラケット14は、連結板部21と固定板部22とを有する。幅方向一方の連結板部21に、第一ピン39を通す第一穴40が設けられている。幅方向他方の連結板部21に、第二ピン36を通す第二穴41が設けられている。
【0047】
第二端子台12のピン39,36がブラケット14の穴40,41に挿入され、第二端子台12とブラケット14とは一体となる。このため、端子台アッセンブリ10は扱いやすくなり、端子台アッセンブリ10を機器筐体7に搭載する作業が容易となる。ブラケット14は、その固定板部22において、機器筐体7の突起8に取り付けられる。上から下に向かうブラケット14の取り付け方向から、そのブラケット14は突起8の先部9に載った状態となって、その後、固定板部22は突起8に固定される。固定板部22は、先部9に対して前記取り付け方向の直交方向について接触可能である接触片23を有する。
【0048】
機器筐体7へのブラケット14の取り付けの際に、ブラケット14が突起8の先部9に載った状態になると、ブラケット14が例えば幅方向の成分を有して変位しようとしても、接触片23が突起8の先部9に接触することで、ブラケット14は変位不能となる。このため、第二端子台12の前記ピン36,39に大きなせん断力(無理な力)が作用せず、第二端子台12の破断が防止される。
【0049】
本実施形態では、第二端子台12が第一端子台11に取り付けられ、その第一端子台11が機器筐体7に固定される。その後、ブラケット14が突起8に固定される。機器筐体7上で、ブラケット14よりも先に、第二端子台12の変位が拘束された状態となる。機器筐体7上で第二端子台の変位が先に拘束された状態にあっても、接触片23によれば、ブラケット14も機器筐体7の突起8に対して変位不能となる。
例えばボルト80によって、固定板部22が突起8に固定される際に、そのボルト80の締め付けトルクによってブラケット14が、その突起8を中心として揺動しようとする。本実施形態によれば、前記のとおり、接触片23によって、ブラケット14は突起8に対して変位不能である。このため、前記ピン36,39に大きなせん断力(無理な力)が作用しない。
【0050】
第二端子台12は、幅方向両側に延びて設けられている第一アーム31および第二アーム32を有する。第一ピン39は第一アーム31の先端に設けられている。第二ピン36は第二アーム32の先端に設けられている。第一アーム31および第二アーム32は片持ち梁状であり、これらアーム31,32の先端にピン39,36が設けられている。このような構造であっても、端子台アッセンブリ10を機器筐体7に搭載する作業の際、前記のとおり、ピン39,36およびアーム31,32に無理な力が作用しないので、第二端子台12の破断が防止される。
【0051】
ブラケット14は、接触片23を有する固定板部22を、幅方向の両側それぞれに有する。このため、ボルト80によるブラケット14の取り付けを、幅方向一方側において先に行う場合でも、または、幅方向他方側において先に行う場合でも、そのボルト80の締め付けトルクによってブラケット14が揺動変位しない。また、ブラケット14が突起8に取り付けられた後において、仮にブラケット14が前後方向または幅方向に変位しようとしても、その変位が接触片23によって規制され、ピン36,39にせん断力が作用しない。
【0052】
図6に示すように、突起8の先部9は円柱形状を有する。接触片23は、先部9の外周面に沿った円弧形状である円弧部24と、一対の直線部25とを有する。直線部25それぞれは、円弧部24の両端それぞれから直線的に延びて設けられている。このため、ブラケット14の前後方向および幅方向の変位を効果的に規制することが可能となる。さらに、固定板部22の平板部84が薄くても、直線部25によって剛性が高まる。
【0053】
接触片23は塑性変形により成形される。その成形の容易性のために、円弧部24と直線部25との間にスリットが設けられていてもよく、または、円弧部24の途中にスリットが設けられていてもよい。しかし、本実施形態では、接触片23はスリットが設けられないで成形されている。つまり、円弧部24は、先部9の外周面に沿って連続する円弧形状を有する。直線部25と円弧部24とは連続している。この構成により、固定板部22の剛性がより一層高まる。
【0054】
〔その他〕
前記実施形態では、機器筐体7が有する突起8は円柱形状を有しており、その形状にあわせて、ブラケット14の接触片23は円弧部24を有する。接触片23の形状は、突起8の形状に応じて変更可能である。接触片23は、円弧部24と、対向する2つの直線部25とを有する形態について説明したが、一方の直線部25または双方の直線部25を省略してもよい。接触片23は、突起8の先部9に対して前記取り付け方向(上から下に向かう方向)の直交方向について接触可能となる形状を有していればよい。
【0055】
前記実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、前記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0056】
7 機器筐体
8 突起
9 先部
10 端子台アッセンブリ
11 第一端子台
12 第二端子台
13 シールド部材
13e 縁部
14 ブラケット
15 電線
16 端子
17 コネクタ接続部
20 取り付け板部
21 連結板部
22 固定板部
23 接触片
24 円弧部
24p 一部
24q 一部
24r 他部
25 直線部
30 ハウジング部
31 第一アーム
32 第二アーム
33 基部
34 中間部
34b 下部
35 先部
36 第二ピン
39 第一ピン
39a ピン本体部
39b 係止部
40 第一穴
41 第二穴
81 端子ブロック
82 ベース片
83 折り曲げ片
84 平板部
85 ねじ穴
86 穴
87 第一樹脂部
88 第二樹脂部
90 端子台アッセンブリ
91 端子台
92 シールド部材
93 ブラケット
94 端子
95 電線
96 ピン
97 穴
98 一部
99 ケース
L1 中心線
L2 中心線