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  • 特開-バイオガスエンジンシステム 図1
  • 特開-バイオガスエンジンシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166115
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】バイオガスエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20231114BHJP
   B09B 3/65 20220101ALI20231114BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F02D19/02 A
B09B3/65 ZAB
C10L3/08
F02D19/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076914
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】小杉 恭士
【テーマコード(参考)】
3G092
4D004
【Fターム(参考)】
3G092AB06
3G092BA05
3G092EA08
3G092EA11
4D004AA01
4D004BA03
4D004CA18
4D004CB04
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA20
(57)【要約】
【課題】アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を、簡便に抑制できるバイオガスエンジンシステムを提供すること。
【解決手段】バイオガスエンジンシステム1は、バイオガスを発生させるバイオガス発生部2とバイオガスを燃焼させるバイオガスエンジン3とバイオガスの燃焼ガスを外部へ排出する燃焼ガス排出ライン4と燃焼ガスをバイオガス発生部2に供給する燃焼ガス供給ライン5と燃焼ガス排出ライン4および燃焼ガス供給ライン5を切り替える切替ユニット6とバイオガス発生部3内のpH値を測定するpHセンサー7と切替ユニット6およびバイオガスエンジン3の駆動を制御する制御ユニット8とを備える。制御ユニット8はpHセンサー7により測定されるpH値が第1閾値を超える場合に、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるようにバイオガスエンジン3の駆動を制御するとともに燃焼ガス供給ライン5を開放するように切替ユニット6を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、
前記バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、
前記バイオガスエンジンから発生する前記バイオガスの燃焼ガスを、外部へ排出するための燃焼ガス排出ラインと、
前記燃焼ガスを、前記バイオガス発生部に供給するための燃焼ガス供給ラインと、
前記燃焼ガス排出ラインおよび前記燃焼ガス供給ラインを切り替える切替ユニットと、
前記バイオガス発生部内のpH値を測定するpHセンサーと、
前記pHセンサーにより測定されるpH値に基づいて、前記切替ユニットおよび前記バイオガスエンジンの駆動を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、第1閾値を超える場合に、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、前記燃焼ガス供給ラインを開放するように、前記切替ユニットを制御する、バイオガスエンジンシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、前記第1閾値よりも低い第2閾値を下回る場合に、理論空燃比となるように、前記バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、前記燃焼ガス供給ラインを閉鎖するように、前記切替ユニットを制御する、請求項1に記載のバイオガスエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオガスエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオガスエンジンが注目されている。バイオガスエンジンは、バイオガスとして、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)の発酵によって生じるバイオガスを、燃料として使用するエンジンである。
【0003】
一方、有機性廃棄物を発酵すると、有機性廃棄物が分解されてバイオガスが生成するとともに、副生成物として、アンモニアが発生する場合がある。このようなアンモニアは、有機性廃棄物を分解する微生物の活性を低下させるため、有機性廃棄物の発酵速度を低下させる。そのため、アンモニアを除去するシステムが検討されている。
【0004】
このようなシステムとして、例えば、固形有機性廃棄物のメタン発酵により生成する生成ガスを、酸(例えば、硫酸)と接触させてアンモニアを分解除去するアンモニア除去手段を備える廃棄物処理装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-276880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、特許文献1の廃棄物処理装置によれば、アンモニアを分解除去するために、酸を投入するため、排水の量が多くなる。そのため、処理コストが高くなるという不具合がある。
【0007】
本発明は、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を、簡便に抑制できるバイオガスエンジンシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部と、前記バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジンと、前記バイオガスエンジンから発生する前記バイオガスの燃焼ガスを、外部へ排出するための燃焼ガス排出ラインと、前記燃焼ガスを、前記バイオガス発生部に供給するための燃焼ガス供給ラインと、前記燃焼ガス排出ラインおよび前記燃焼ガス供給ラインを切り替える切替ユニットと、前記バイオガス発生部内のpH値を測定するpHセンサーと、前記pHセンサーにより測定されるpH値に基づいて、前記切替ユニットおよび前記バイオガスエンジンの駆動を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、第1閾値を超える場合に、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、前記バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、前記燃焼ガス供給ラインを開放するように、前記切替ユニットを制御する、バイオガスエンジンシステムである。
【0009】
このような構成によると、pHセンサーにより測定されるpH値が、第1閾値を超える場合に、制御ユニットは、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、燃焼ガス供給ラインを開放するように、切替ユニットを制御する。
【0010】
理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジンの駆動を制御すると、バイオガスエンジンから発生するバイオガスの燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)が増加する。
【0011】
そして、このような燃焼ガスは、燃焼ガス供給ラインを介して、バイオガス発生部に供給される。
【0012】
バイオガス発生部に輸送された燃焼ガスは、窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)を多く含み、それらから発生する水素イオンによって、バイオガス発生部内のアンモニアを中和することができる。そのため、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。その結果、バイオガス発生部からの排水の量を増やすことなく、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。
【0013】
本発明[2]は、前記制御ユニットは、前記pHセンサーにより測定されるpH値が、前記第1閾値よりも低い第2閾値を下回る場合に、理論空燃比となるように、前記バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、前記燃焼ガス供給ラインを閉鎖するように、前記切替ユニットを制御する、上記[1]に記載のバイオガスエンジンシステムを含んでいる。
【0014】
このような構成によると、pHセンサーにより測定されるpH値が、第2閾値を下回る場合に、理論空燃比となるように、バイオガスエンジンの駆動を制御するとともに、燃焼ガス供給ラインを閉鎖するように、切替ユニットを制御する。
【0015】
これにより、バイオガス発生部内のpH値が低下し続けることを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバイオガスエンジンシステムによれば、バイオガス発生部からの排水の量を増やすことなく、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のバイオガスエンジンシステムの一実施形態を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すバイオガスエンジンシステムの動作のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.バイオガスエンジンシステムの構成
図1を参照して、本発明のバイオガスエンジンシステムの一実施形態を詳述する。
【0019】
バイオガスエンジンシステム1は、例えば、発電装置100(図1破線参照)に接続される動力源である。バイオガスエンジンシステム1は、有機性廃棄物を発酵させ、バイオガスを発生させるバイオガス発生部2と、バイオガスを燃焼させるバイオガスエンジン3と、バイオガスエンジン3から発生するバイオガスの燃焼ガスを、外部へ排出するための燃焼ガス排出ライン4と、燃焼ガスを、バイオガス発生部2に供給するための燃焼ガス供給ライン5と、燃焼ガス排出ライン4および燃焼ガス供給ライン5を切り替える切替ユニット6と、バイオガス発生部2内のpH値を測定するpHセンサー7と、pHセンサー7により測定されるpH値に基づいて、切替ユニット6およびバイオガスエンジン3の駆動を制御する制御ユニット8とを備える。
【0020】
詳しくは、バイオガスエンジンシステム1は、pHセンサー7を備えるバイオガス発生部2と、燃焼ガス排出ライン4および切替ユニット6を備えるバイオガスエンジン3と、
燃焼ガス供給ライン5と、制御ユニット8とを備える。
【0021】
<バイオガス発生部>
バイオガス発生部2は、有機性廃棄物(例えば、生ごみ、下水、家畜排泄物および食品廃棄物)を発酵(メタン発酵)させ、バイオガスを発生させるために備えられている。
【0022】
バイオガス発生部2は、発酵槽10と、バイオガス輸送ライン11と、バイオガス貯留槽12と、pHセンサー7とを備える。
【0023】
発酵槽10は、有機性廃棄物を発酵させるためのタンクである。発酵槽10は、耐熱耐圧容器からなる。発酵槽10には、有機性廃棄物を発酵可能な微生物が、投入されている。
【0024】
発酵槽10は、バイオガスを輸送可能なバイオガス輸送口13と、後述する燃焼ガスを供給可能な燃焼ガス供給口14と、発酵槽10に供給された後述する燃焼ガスを排出可能な燃焼ガス排出口15とを備える。
【0025】
バイオガス輸送ライン11は、バイオガスを発酵槽10からバイオガス貯留槽12に輸送するための管である。バイオガス輸送ライン11のバイオガス輸送方向における上流側端部は、発酵槽10のバイオガス輸送口13に接続されている。また、バイオガス輸送ライン11のバイオガス輸送方向における下流側端部は、バイオガス貯留槽12の後述するバイオガス供給口16に接続されている。また、図示しないが、バイオガス輸送ライン11の流れ方向途中には、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、バイオガスを発酵槽10からバイオガス貯留槽12に輸送可能とされている。
【0026】
また、図示しないが、バイオガス輸送ライン11の流れ方向途中には、バイオガスを任意の方法で前処理するための処理装置が介在されている。処理装置としては、脱硫装置および脱シロキサン装置が挙げられる。
【0027】
バイオガス貯留槽12は、バイオガスを一時的に貯留する貯留タンクである。バイオガス貯留槽12は、耐熱耐圧容器からなる。
【0028】
バイオガス貯留槽12は、バイオガスを供給可能なバイオガス供給口16と、バイオガスを排出可能なバイオガス排出口17とを備える。
【0029】
バイオガス貯留槽12のバイオガス供給口16には、バイオガス輸送ライン11のバイオガス輸送方向における下流側端部が接続されている。これにより、発酵槽10で生成したバイオガスが、バイオガス貯留槽12に輸送され、一時的に貯留される。また、バイオガス貯留槽12のバイオガス排出口17には、バイオガス供給ライン21(後述)のバイオガス供給方向における上流側端部が接続されている。これにより、バイオガス貯留槽12内のバイオガスが、任意のタイミングで、バイオガスエンジン3に供給可能とされている。
【0030】
pHセンサー7は、発酵槽10内に設けられ、発酵槽10内のpH値を測定する公知のpHセンサーである。
【0031】
<バイオガスエンジン>
バイオガスエンジン3は、エンジン20と、バイオガス供給ライン21と、空気供給ライン22と、燃焼ガス排出ライン4と、触媒ユニット23と、切替ユニット6とを備える。
【0032】
エンジン20として、例えば、公知のレシプロエンジンが挙げられる。エンジン20は、バイオガスが供給されて駆動する。
【0033】
バイオガス供給ライン21は、エンジン20にバイオガスを供給するための管である。バイオガス供給ライン21のバイオガス供給方向における上流側端部は、バイオガス貯留槽12のバイオガス排出口17に接続されている。バイオガス供給ライン21のバイオガス供給方向における下流側端部は、エンジン20に接続される。
【0034】
バイオガス供給ライン21の流れ方向途中には、図示しないが、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、バイオガスをバイオガス貯留槽12からエンジン20に供給可能とされている。
【0035】
空気供給ライン22は、エンジン20に空気を供給するための管である。空気供給ライン22の空気供給方向における上流側端部は、外部(外気)に開放されている。空気供給ライン22の空気供給方向における下流側端部は、エンジン20に接続される。
【0036】
空気供給ライン22の流れ方向途中には、図示しないが、ポンプおよび弁が介在されている。そして、ポンプの駆動および弁の開閉により、空気を大気からエンジン20に供給可能とされている。つまり、バイオガス供給ライン21および空気供給ライン22によって、バイオガスおよび空気からなる混合気が、エンジン20に供給可能とされている。
【0037】
燃焼ガス排出ライン4は、バイオガスエンジン3から発生するバイオガスの燃焼ガスを、外部へ排出するため管である。燃焼ガス排出ライン4の燃焼ガス排出方向における上流側端部は、エンジン20に接続される。燃焼ガス排出ライン4の燃焼ガス排出方向における下流側端部は、外部(外気)に開放されている。
【0038】
触媒ユニット23は、燃焼ガスを浄化する公知の燃焼ガス浄化用触媒を格納する貯留タンクである。
【0039】
触媒ユニット23は、燃焼ガス排出ライン4における燃焼ガス排出方向の途中に介在する。また、触媒ユニット23は、切替ユニット6よりも燃焼ガス排出方向の下流側に設けられている。
【0040】
切替ユニット6は、バイオガスエンジン3から発生する燃焼ガスの流路を、燃焼ガス排出ライン4または燃焼ガス供給ライン5(後述)に切り替える電磁弁である。
【0041】
切替ユニット6は、燃焼ガス排出ライン4における燃焼ガス排出方向の途中に介在する。
【0042】
<燃焼ガス供給ライン>
燃焼ガス供給ライン5は、バイオガスエンジン3から発生する燃焼ガスを、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に供給するための管である。
【0043】
燃焼ガス供給ライン5の燃焼ガス供給方向における上流側端部は、切替ユニット6に接続される。燃焼ガス排出ライン4の燃焼ガス供給方向における下流側端部は、外部(外気)に開放されている。
【0044】
燃焼ガス供給ライン5は、発酵槽10を貫通する。詳しくは、燃焼ガス供給ライン5は、発酵槽10における燃焼ガス供給口14から、発酵槽10の内部に侵入し、発酵槽10における燃焼ガス排出口15から、発酵槽10の外部に露出する。
【0045】
そして、発酵槽10の内部に配置される燃焼ガス供給ライン5には、分離膜30が設けられている。分離膜30は、燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)を分離可能な公知の分離膜である。これにより、燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)が、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に供給可能とされている。
【0046】
制御ユニット8は、バイオガスエンジンシステム1における電気的な制御を実行するユニット(例えば、ECU:Electronic Control Unit)であり、演算処理部およびメモリなどを備えるマイクロコンピュータから構成されている。
【0047】
制御ユニット8は、図1において破線で示すように、pHセンサー7に電気的に接続されるとともに、バイオガスエンジン3(具体的には、バイオガス供給ライン21および空気供給ライン22に設けられたポンプ(図示せず)および弁(図示せず))および切替ユニット6に電気的に接続されている。これにより、詳しくは後述するが、pHセンサー7により測定されるpH値に基づいて、バイオガスエンジン3および切替ユニット6を作動可能としている。
【0048】
2.バイオガスエンジンシステムの動作
図2を参照して、バイオガスエンジンシステム1の動作について、詳述する。
【0049】
バイオガスエンジンシステム1の動作は、制御ユニット8によって制御される。制御ユニット8は、詳しくは後述するが、定常運転モードおよびpH低減運転モードの切り替えを実行するプログラムをメモリに備えており、そのプログラムが、演算処理部によって実行されることにより、バイオガスエンジンシステム1が、以下のように、駆動される。
【0050】
すなわち、バイオガスエンジンシステム1では、まず、定常運転モードを実施する(S1)。詳しくは、制御ユニット8は、バイオガス供給ライン21から供給されるバイオガスと、空気供給ライン22から供給される空気との混合気が、理論空燃比となるように、バイオガスエンジン3を駆動させるとともに、燃焼ガス供給ライン5を閉鎖して、燃焼ガス排出ライン4を開放するように、切替ユニット6を制御する。これによって、定常運転モードを実施する。
【0051】
次いで、制御ユニット8は、pHセンサー7により測定されるpH値が、予め設定された第1閾値を超えるか否かを判断する(S2)。
【0052】
第1閾値は、例えば、pH7.4である。
【0053】
pHセンサー7により測定されるpH値が、第1閾値を超えていない場合(S2のNo)には、制御ユニット8は、S1に戻って、定常運転モードを実施する。
【0054】
一方、定常運転モードが続くと、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)において、副生成物として、アンモニアが発生し続けるので、その結果、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10内)のpH値が上昇する。
【0055】
そして、pHセンサー7により測定されるpH値が、第1閾値を超えた場合(S2のYes)には、pH低減運転モードを実施する(S3)。詳しくは、制御ユニット8は、上記混合気において、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジン3を駆動させるとともに、燃焼ガス排出ライン4を閉鎖して、燃焼ガス供給ライン5を開放するように、切替ユニット6を制御する。これによって、pH低減運転モードを実施する。
【0056】
理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジン3の駆動を制御すると、バイオガスエンジン3から発生するバイオガスの燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)が増加する。
【0057】
そして、このような燃焼ガスは、燃焼ガス供給ライン5を介して、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に供給される。
【0058】
バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に輸送された燃焼ガスは、窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)を多く含み、それらから発生する水素イオンによって、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10)のアンモニアを中和することができる。そのため、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10)のpH値が下降する。
【0059】
次いで、制御ユニット8は、pHセンサー7により測定されるpH値が、予め設定された第2閾値を下回るか否かを判断する(S4)。
【0060】
第2閾値は、第1閾値よりも低い。具体的には、第2閾値は、例えば、pH6.8である。
【0061】
pHセンサー7により測定されるpH値が、第2閾値を下回らない場合(S4のNo)には、制御ユニット8は、S3に戻って、pH低減運転モードを実施する。これによって、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10)のpH値が、下降し続ける。
【0062】
一方、pHセンサー7により測定されるpH値が、第2閾値を下回った場合(S4のYes)には、定常運転モードを実施(S5)する。これによって、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10)のpH値は、再び、上昇に転じる。
【0063】
このようなバイオガスエンジンシステム1は、停止信号が入力されるまで、上記した動作を繰り返す。
【0064】
3.作用効果
バイオガスエンジンシステム1によれば、バイオガス発生部2からの排水の量を増やすことなく、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。
【0065】
詳しくは、有機性廃棄物を発酵すると、有機性廃棄物が分解されてバイオガスが生成するとともに、副生成物として、アンモニアが発生する場合がある。このようなアンモニアは、有機性廃棄物を分解する微生物の活性を低下させるため、有機性廃棄物の発酵速度を低下させる。そのため、アンモニアを除去するシステムが検討される。
【0066】
アンモニアを除去するシステムとして、例えば、上記特許文献1の廃棄物処理装置のように、アンモニアを分解除去するために、酸を投入することも検討される。
【0067】
しかし、酸を投入すると、排水の量が多くなるため、処理コストが高くなるという不具合がある。
【0068】
一方、バイオガスエンジンシステム1では、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)において、副生成物として、アンモニアが発生すると、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10内)のpH値が高くなる。
【0069】
上記pH値は、pHセンサー7により測定され、上記pH値が、第1閾値を超える場合に、制御ユニット8は、理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジン3の駆動を制御するとともに、燃焼ガス供給ライン5を開放するように、切替ユニット6を制御する(pH低減運転モード)。
【0070】
理論空燃比よりも空気の混合比が多くなるように、バイオガスエンジン3の駆動を制御すると、バイオガスエンジン3から発生するバイオガスの燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)が増加する。
【0071】
そして、このような燃焼ガスは、燃焼ガス供給ライン5を介して、バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に供給される。
【0072】
バイオガス発生部2(具体的には、発酵槽10)に輸送された燃焼ガスは、窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)を多く含む。そして、下記式(1)および下記式(2)に示すように、窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)から発生する水素イオンが、バイオガス発生部2内(具体的には、発酵槽10内)のアンモニアを中和する。
NO+HO→HNO=H+NO (1)
SO+HO→HSO=2H+SO 2- (2)
【0073】
これにより、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。その結果、バイオガス発生部2からの排水の量を増やすことなく、アンモニアによる有機性廃棄物の発酵阻害を抑制できる。
【0074】
また、バイオガスエンジンシステム1では、pHセンサー7により測定されるpH値が、第2閾値を下回る場合には、理論空燃比となるように、バイオガスエンジン3の駆動を制御するとともに、燃焼ガス供給ライン5を閉鎖するように、切替ユニット6を制御する(定常運転モード)。
【0075】
これにより、バイオガス発生部2内のpH値が低下し続けることを抑制できる。換言すれば、第1閾値および第2閾値により設定範囲内において、定常運転モードおよびpH低減運転モードを切り替えることができる。
【0076】
4.変形例
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0077】
上記した説明では、pH低減運転モードにおいて、燃焼ガス供給ライン5を開放するように、切替ユニット6を制御するが、このとき、燃焼ガス排出ライン4は、開放されていても、閉鎖されていてもよい。好ましくは、バイオガス発生部2に、燃焼ガスを効率的に供給する観点から、燃焼ガス排出ライン4を閉鎖する。
【0078】
また、燃焼ガス排出ライン4の開度および燃焼ガス供給ライン5の開度を調整するように、切替ユニット6を制御することもできる。
【0079】
また、上記した説明では、発酵槽10の内部において、燃焼ガス供給ライン5には、分離膜30が設けられているが、燃焼ガスにおける窒素酸化物(NO)および硫黄酸化物(SO)を分離可能なな手段であれば、これに限定されない。
【0080】
また、上記した説明では、触媒ユニット23は、切替ユニット6よりも燃焼ガス排出方向の下流側に設けられているが、触媒ユニット23は、切替ユニット6よりも燃焼ガス排出方向の上流側に設けることもできる。好ましくは、バイオガス発生部2に、燃焼ガスを効率的に供給する観点から、触媒ユニット23は、切替ユニット6よりも燃焼ガス排出方向の下流側に設けられる。
【0081】
また、上記した説明では、2つの閾値(第1閾値および第2閾値)によって、定常運転モードおよびpH低減運転モードを切り替えるが、1つの閾値(第1閾値)によって、定常運転モードおよびpH低減運転モードを切り替えることもできる。
【0082】
具体的には、pHセンサー7により測定されるpH値が、第1閾値を超える場合に、pH低減運転モードに切り替え、pHセンサー7により測定されるpH値が、第1閾値以下である場合に、定常運転モードを切り替えることもできる。
【0083】
好ましくは、定常運転モードおよびpH低減運転モードが、頻繁に切り替わることによる運転効率の低下を抑制する観点から、2つの閾値(第1閾値および第2閾値)によって、定常運転モードおよびpH低減運転モードを切り替える。
【符号の説明】
【0084】
1 バイオガスエンジンシステム
2 バイオガス発生部
3 バイオガスエンジン
4 燃焼ガス排出ライン
5 燃焼ガス供給ライン
6 切替ユニット
7 pHセンサー
8 制御ユニット
図1
図2