(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166116
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】床版取替え構造および床版取替え方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20231114BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076915
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509200613
【氏名又は名称】株式会社横河NSエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
(72)【発明者】
【氏名】横関 耕一
(72)【発明者】
【氏名】北市 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】竹内 大輔
(72)【発明者】
【氏名】利根川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡部 健
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA14
2D059AA16
2D059GG39
2D059GG41
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】鋼床版のたわみを抑制して橋梁としての道路面剛性を確保でき、さらに、簡単に床版の取り替え方法とすることにより交通制限を最小限に抑えることができる床版取替え構造および床版取替え方法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート床版のうち主桁上フランジ11Aの上面11aの一部を残置する工程と、横リブ33に接合しない第1縦リブ32Bを有する鋼床版3を、第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に上下方向に間隔をあけて設置する工程と、主桁11の橋軸方向Xの一部の残置コンクリート部を除去してコンクリート除去面11bを露出する工程と、主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bと第1縦リブ32Bとの間にスペーサ41を押し込み介在させる工程と、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとをスペーサ41を挟んだ状態で結合ボルト42を使用して結合する工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版の少なくも一部を鋼床版に取り替えてなる床版取替え構造であって、
前記鉄筋コンクリート床版のうち前記主桁の主桁上フランジの上面の一部が残置された残置コンクリート部と、
前記主桁上フランジの上面のうち、前記主桁の橋軸方向の一部の前記残置コンクリート部が除去されたコンクリート除去面と、
デッキプレート、および該デッキプレートの下面に設けられた複数の橋幅方向に延在する横リブおよび橋軸方向に延在する縦リブ、を備え、前記縦リブのうち前記横リブに接合される第2縦リブ同士の間に配置され前記横リブに接合しない第1縦リブを有し、前記縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置され、前記主桁上フランジを覆うように配置された鋼床版と、
前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合する結合手段と、
を備えていることを特徴とする床版取替え構造。
【請求項2】
前記結合手段は、前記主桁上フランジの前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間に押し込まれた状態で介在されるスペーサを有することを特徴とする請求項1に記載の床版取替え構造。
【請求項3】
前記スペーサは、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとの間で橋幅方向から押し込み可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の床版取替え構造。
【請求項4】
前記主桁上フランジの上面には、前記残置コンクリート部に埋設されたコンクリートずれ止め部材の一部が突設され、
前記スペーサの橋幅方向を向く側面には、前記スペーサが設置された状態で前記コンクリートずれ止め部材に干渉しないように前記橋幅方向に沿って凹む凹部が形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の床版取替え構造。
【請求項5】
前記凹部は、前記コンクリートずれ止め部材が通過可能な幅寸法に形成されたスリット形状であることを特徴とする請求項4に記載の床版取替え構造。
【請求項6】
前記主桁上フランジおよび前記第1縦リブには、同軸線上にボルト穴が設けられ、
前記スペーサには、上下方向に貫通し、前記ボルト穴と同軸に位置するボルト孔が設けられ、
前記結合手段は、前記ボルト穴および前記ボルト孔に挿通され、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合する結合ボルトであることを特徴とする請求項2又は3に記載の床版取替え構造。
【請求項7】
前記第1縦リブは、リブ下端に橋軸方向に延在する水平リブを有する逆T型に形成され、
前記スペーサは、前記水平リブと前記主桁上フランジとの間に介在されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の床版取替え構造。
【請求項8】
橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版の一部を鋼床版に取り替える床版取替え方法であって、
前記鉄筋コンクリート床版のうち前記主桁の主桁上フランジの上面の一部を残置する工程と、
デッキプレート、および該デッキプレートの下面に設けられた複数の橋幅方向に延在する横リブおよび橋軸方向に延在する縦リブ、を備え、前記縦リブのうち横リブに接合される第2縦リブ同士の間に配置され前記横リブに接合しない第1縦リブを有する前記鋼床版を、前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、前記主桁上フランジを覆うように配置する工程と、
前記主桁上フランジの上面のうち、前記主桁の橋軸方向の一部の残置コンクリート部を除去してコンクリート除去面を露出する工程と、
前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合手段を使用して結合する工程と、
を有することを特徴とする床版取替え方法。
【請求項9】
前記主桁上フランジのコンクリート除去面を露出した後に、前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間に前記結合手段であるスペーサを押し込み介在させて結合する工程を有することを特徴とする請求項8に記載の床版取替え方法。
【請求項10】
前記スペーサは、前記主桁上フランジの前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間で、橋幅方向の一方から押し込まれることを特徴とする請求項9に記載の床版取替え方法。
【請求項11】
前記主桁上フランジの上面に前記残置コンクリート部を残置する工程では、前記主桁上フランジの上面に設けられる前記鉄筋コンクリート床版を切断手段を用いて水平に切断することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の床版取替え方法。
【請求項12】
前記鋼床版を前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて配置した後に、前記鋼床版の前記横リブと前記主桁とを接合することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の床版取替え方法。
【請求項13】
前記鋼床版を前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、前記主桁上フランジの上面にコンクリート除去面を露出した後に、前記主桁上フランジおよび前記第1縦リブの同軸線上にそれぞれボルト穴を設け、
前記ボルト穴に前記結合手段である結合ボルトを挿通して、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の床版取替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床版取替え構造および床版取替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路等に使用される橋梁では、老朽化した道路の床版を取り替える必要が生じる場合がある。従来、橋梁のRC床版(鉄筋コンクリート床版)を新しい床版に取り替える場合、まず既存の鉄筋コンクリート床版を除去する。次に、主桁の主桁上フランジを完全に平滑化したうえで、スタッドを打ち直したり、また、RC床版を鋼床版と取り替える場合には主桁の主桁上フランジにボルト穴を開けたりするようにしている。
【0003】
しかし、従来の工法には以下のような課題がある。(1)スタッドのついた鉄筋コンクリート床版を撤去してフランジを平滑化するのは非常に労力と時間を要する。(2)スタッドの間のコンクリートを除去するときは、騒音、振動、粉じんの問題が生じる可能性がある。(3)鉄筋コンクリート床版を完全に除去すると、とくに合成床版の場合は主桁上フランジで座屈を発生する可能性がある。(4)鉄筋コンクリート床版を除去すると、橋梁の死荷重が半分以下となるために、桁のたわみが減少し、元と同じ路線計画高を維持するための各種寸法調整を要する。(5)床版を今の基準に従って新設すると、元の構造よりも重量が増加する。そのために、桁や橋脚、場合によっては杭の補強が必要となる(厚さだけでなく幅も広げる必要がある)。
【0004】
このような課題を解決するための橋梁の床版取替え方法の一例として、例えば特許文献1に記載の方法が知られている。特許文献1に記載の床版取替え方法では、橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版を鋼床版に取り替えるために、鉄筋コンクリート床版を除去した位置に鋼床版を配する橋梁の床版取替方法において、前記鉄筋コンクリート床版の下方に、前記主桁に適宜な間隔に配して床版支持ブラケットを取り付け、前記主桁の上フランジに位置した部分の鉄筋コンクリート床版を除いた他の部分を除去して主桁の上フランジ部分に残留部を設け、前記除去した鉄筋コンクリート床版に替えて、前記残留部を回避して配した横リブを有する鋼床版の該横リブを配して、該横リブを前記床版支持ブラケットに載置して取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の床版取替え方法では、以下のような問題があった。
ここで、コンクリート床版が取り替えを要するほど傷んでいる橋梁の多くは交通量が多いケースであり、コンクリート床版を取り替える際に交通量を制限したり、交通止めを行う必要があった。そのため、コンクリート床版を取り替える際の交通制限にかかる必要時間が短いことが求められていた。
【0007】
また、コンクリートを跨いで縦リブを配置した場合は、どうしても縦リブの間隔が広くなってしまうために、他の場所と同じデッキプレートの板厚ではたわみ規定を満足することが困難であり、その点で改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鋼床版のたわみを抑制して道路面剛性を確保でき、さらに、簡単に床版の取り替え方法とすることにより交通制限を最小限に抑えることができる床版取替え構造および床版取替え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る床版取替え構造の態様1は、橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版の少なくも一部を鋼床版に取り替えてなる床版取替え構造であって、前記鉄筋コンクリート床版のうち前記主桁の主桁上フランジの上面の一部が残置された残置コンクリート部と、前記主桁上フランジの上面のうち、前記主桁の橋軸方向の一部の前記残置コンクリート部が除去されたコンクリート除去面と、デッキプレート、および該デッキプレートの下面に設けられた複数の橋幅方向に延在する横リブおよび橋軸方向に延在する縦リブ、を備え、前記縦リブのうち前記横リブに接合される第2縦リブ同士の間に配置され前記横リブに接合しない第1縦リブを有し、前記縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置され、前記主桁上フランジを覆うように配置された鋼床版と、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合する結合手段と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る床版取替え方法の態様8は、橋梁の主桁に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版の一部を鋼床版に取り替える床版取替え方法であって、前記鉄筋コンクリート床版のうち前記主桁の主桁上フランジの上面の一部を残置する工程と、デッキプレート、および該デッキプレートの下面に設けられた複数の橋幅方向に延在する横リブおよび橋軸方向に延在する縦リブ、を備え、前記縦リブのうち横リブに接合される第2縦リブ同士の間に配置され前記横リブに接合しない第1縦リブを有する前記鋼床版を、前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、前記主桁上フランジを覆うように配置する工程と、前記主桁上フランジの上面のうち、前記主桁の橋軸方向の一部の残置コンクリート部を除去してコンクリート除去面を露出する工程と、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合手段を使用して結合する工程と、を有することを特徴としている。
【0011】
本発明では、鋼床版の横リブが主桁の一部(例えば、主桁ウエブ)と接合され、横リブによって鋼床版の上下方向の荷重を主桁に伝達する構成となる。そして、鋼床版における横リブに接合されない縦リブの一部(第1縦リブ)のみが主桁と結合手段によって結合された構成となり、主桁上フランジと鋼床版のデッキプレートが接合されるため、従来のように主桁を跨いで縦リブを配置した場合のように板厚を大きくしないとたわみが生じるという問題の発生を抑制することができる。
また、本発明では、第1縦リブが横リブと接合されていないため、疲労の発生を抑えることができる。鋼床版の縦リブと横リブの接合部は疲労性能が弱い傾向にある。また、その疲労性能は溶接部の長さが長くなると発生応力が低減され、その結果として向上する。しかし、第1縦リブは主桁上フランジと鋼床版のデッキプレートとの間に収められる必要があり、他の縦リブよりも高さが低くなるため、横リブと溶接すると必ず疲労上の弱点となってしまう。そのため、この第1縦リブは横リブと溶接しない。通常、鋼床版に作用する荷重は縦リブから横リブに伝達され、横リブから主桁に流れるように設計される。しかし、第1縦リブについては、最終的に主桁に直接接合されるために横リブとの溶接を省略しても荷重伝達には全く問題がない。なお、縦リブの一部である第1縦リブと主桁上フランジとの結合部は、例えば合成桁の桁端近傍以外は横リブ間に一箇所程度の部分的に設ける構成であっても十分な強度と、せん断力伝達が可能である。
【0012】
また、本発明では、鋼床版を仮に配置した状態で、主桁上フランジの上面に残置される残置コンクリート部の一部を除去してコンクリート除去面を露出することができるので、簡単で短期間による施工方法により床版の取り替えることができる。さらに本発明では、主桁上フランジの上方に鋼床版を覆うように配置することができるので、除去する鉄筋コンクリート床版のうち主桁上フランジの上面に残置コンクリート部を残しておくことができる。そのため、主桁上フランジ上で全てのコンクリートを除去する必要がないことから、鉄筋コンクリート床版から鋼床版への床版取替えにかかる作業時間を低減することができる。
このように、鋼床版を仮配置した後で、その鋼床版上で車両を通行させた状態で、鋼床版の下方でコンクリート除去面を設ける作業や、結合手段で第1縦リブと主桁上フランジとを結合する作業を行うことができるので、交通制限を最小限に抑えることができる。
なお、主桁上フランジと縦リブをボルトで接合する場合も、主桁上フランジの穴あけ作業をその上方に鋼床版が設置された状態で行うことができる。主桁上フランジの穴あけにより耐荷力が低下するという危険性は、上方に鋼床版が設置されていることによって軽減されるという効果も得られる。
【0013】
このように、本発明では、従来と異なり鋼床版の横リブの端部が床版支持ブラケットを介することなく、直接、主桁ウエブに剛結合されているので、鋼床版は合理的な横リブ断面で設計することが可能となる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減することが可能となる。
また、主桁と鋼床版とが結合手段によって結合され、この結合手段が橋軸方向にせん断力を伝達するせん断力伝達部材の機能をもつことから、主桁と鋼床版との間で橋軸方向にせん断力を確実に伝達することができ、確実に鋼床版と主桁が合成化された構造とすることができる。
【0014】
また、本発明の態様2は、態様1の床版取替え構造において、前記結合手段は、前記主桁上フランジの前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間に押し込まれた状態で介在されるスペーサを有することを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明の態様9は、態様8の床版取替え方法において、前記主桁上フランジのコンクリート除去面を露出した後に、前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間に前記結合手段であるスペーサを押し込み介在させて結合する工程を有することを特徴としてもよい。
【0016】
この場合には、鋼床版における横リブに接合されない第1縦リブのみがスペーサを介在させて主桁と結合手段によって結合することができる。
また、本発明では、鋼床版を仮に配置した状態で、主桁上フランジの上面に残置される残置コンクリート部の一部を除去してコンクリート除去面を露出し、そのコンクリート除去面と第1縦リブとの間にスペーサを押し込むことができるので、簡単で短期間による施工方法により床版の取り替えることができる。そして、この場合には、鋼床版を仮配置した後で、その鋼床版上で車両を通行させた状態で、結合手段であるスペーサを設置して第1縦リブと主桁上フランジとを結合する作業を行うことができるので、交通制限を最小限に抑えることができる。
【0017】
また、本発明の態様3は、態様2の床版取替え構造において、前記スペーサは、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとの間で橋幅方向から押し込み可能に設けられていることを特徴としてもよい。
【0018】
また、本発明の態様10は、態様9の床版取替え方法において、前記スペーサは、前記主桁上フランジの前記コンクリート除去面と前記第1縦リブとの間で、橋幅方向の一方から押し込まれることを特徴としてもよい。
【0019】
この場合には、主桁の橋幅方向側のスペースを利用し、主桁上フランジと第1縦リブとの間にスペーサを橋幅方向から容易に押し込むことができる。そのため、スペーサを他の部位に干渉することなく設置でき、作業の効率化を図ることができる。
【0020】
また、本発明の態様4は、態様2又は態様3の床版取替え構造において、前記主桁上フランジの上面には、前記残置コンクリート部に埋設されたコンクリートずれ止め部材の一部が突設され、前記スペーサの橋幅方向を向く側面には、前記スペーサが設置された状態で前記コンクリートずれ止め部材に干渉しないように前記橋幅方向に沿って凹む凹部が形成されていることを特徴としてもよい。
【0021】
この場合には、主桁上フランジの上面に突設するコンクリートずれ止め部材に干渉させることなく、スペーサを第1縦リブと主桁上フランジとの間に押し込むことができる。
【0022】
また、本発明の態様5は、態様4の床版取替え構造において、前記凹部は、前記コンクリートずれ止め部材が通過可能な幅寸法に形成されたスリット形状であることを特徴としてもよい。
【0023】
この場合には、スペーサを、スリットの延在方向に沿って一方向に第1縦リブと主桁上フランジとの間に押し込むことができる。
【0024】
また、本発明の態様6は、態様2から態様5のいずれか一つの床版取替え構造において、前記主桁上フランジおよび前記第1縦リブには、同軸線上にボルト穴が設けられ、前記スペーサには、上下方向に貫通し、前記ボルト穴と同軸に位置するボルト孔が設けられ、前記結合手段は、前記ボルト穴および前記ボルト孔に挿通され、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合する結合ボルトであることを特徴としてもよい。
【0025】
また、本発明の態様13は、態様8から態様12のいずれか一つの床版取替え方法において、前記鋼床版を前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、前記主桁上フランジの上面にコンクリート除去面を露出した後に、前記主桁上フランジおよび前記第1縦リブの同軸線上にそれぞれボルト穴を設け、前記ボルト穴に前記結合手段である結合ボルトを挿通して、前記主桁上フランジと前記第1縦リブとを結合することを特徴としてもよい。
【0026】
この場合には、所定の位置に設置された鋼床版の第1縦リブに対してボルト穴を開けることができ、この第1縦リブのボルト穴と主桁上フランジのボルト穴の位置を現場の設置状態に合わせて安定した状態で精度よく設けることができる。そのため、結合ボルトを両ボルト穴に挿通しやすくなり、施工性を向上させることができる。
【0027】
また、本発明の態様7は、態様2から態様6のいずれか一つの床版取替え構造において、前記第1縦リブは、リブ下端に橋軸方向に延在する水平リブを有する逆T型に形成され、前記スペーサは、前記水平リブと前記主桁上フランジとの間に介在されていることを特徴としてもよい。
【0028】
この場合には、第1縦リブの水平リブが主桁上フランジと平行に配置されるので、それら水平リブと主桁上フランジとの間にスペーサを安定した姿勢で押し込むことができ、かつ安定した状態で水平リブと主桁上フランジとの間にスペーサを介在させることができる。
【0029】
また、本発明の態様11は、態様8から態様10のいずれか一つの床版取替え方法において、前記主桁上フランジの上面に前記残置コンクリート部を残置する工程では、前記主桁上フランジの上面に設けられる前記鉄筋コンクリート床版を切断手段を用いて水平に切断することを特徴としてもよい。
【0030】
このような床版取替え方法によれば、鉄筋コンクリート床版を例えば水平スライサー等の切断手段で主桁上フランジの上側で水平に切断することができるので、迅速に鉄筋コンクリート床版を除去することができ、かつ粉じんや騒音の発生を抑えることができる。
【0031】
また、本発明の態様12は、態様8から態様11のいずれか一つの床版取替え方法において、前記鋼床版を前記第1縦リブと前記主桁上フランジとの間に上下方向に間隔をあけて配置した後に、前記鋼床版の前記横リブと前記主桁とを接合することを特徴としてもよい。
【0032】
この場合には、鋼床版と横リブとを接合することで、第1縦リブと主桁上フランジとの間の上下方向の間隔を一定に保持することができる。鋼床版を設置した後のコンクリート除去面を設ける作業や、スペーサを設置する作業、結合手段で第1縦リブと主桁上フランジとを結合する作業を確実に、かつ精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の床版取替え構造および床版取替え方法によれば、鋼床版のたわみを抑制して橋梁としての道路面剛性を確保でき、さらに、簡単に床版の取り替え方法とすることにより交通制限を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態による床版取替え方法を説明するためのもので、床版取替え前の橋梁を斜め上方から見た斜視図である。ただし、片側の車線のみを示している。
【
図2】
図1に示す床版取替え前の橋梁を斜め下方から見た斜視図である。
【
図3】鋼床版を設置した状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め下方から見た斜視図、(b)は橋梁の正面図である。
【
図4】鋼床版を主桁に接合する接合部分の構成を示す橋軸方向から見た縦断面図である。
【
図5】
図4に示す接合部分の要部を拡大した縦断面図である。
【
図9】床版取替え方法の作業フローチャートである。
【
図10】横リブ取付部を示すもので、(a)は横リブ取付部の斜視図、(b)は(a)におけるA矢視図である。
【
図11】横リブ取付部を主桁ウエブに取り付けた状態を示す要部の断面図である。
【
図12】横リブ取付部を主桁ウエブに取り付けた状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め下方から見た斜視図、(b)は右側の主桁の横リブ取付部を含む断面図である。
【
図13】鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。
【
図14】鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、橋梁を斜め下方から見た斜視図である。
【
図15】鋼床版を設置した状態を示すもので、(a)は橋梁を斜め上方から見た斜視図、(b)は仮止め板を設置した状態を示す橋梁を斜め上方から見た斜視図である。
【
図16】鉄筋コンクリート床版の切断前の状態を橋軸方向から見た断面図である。
【
図17】鉄筋コンクリート床版を切断して撤去する状態を橋軸方向から見た断面図である。
【
図18】鋼床版を配置した状態を示す図であって、(a)は橋軸方向から見た図、(b)は(a)に示すII-II線矢視図であって橋幅方向から見た図である。
【
図19】
図18において残置コンクリート部のコンクリートを除去した状態を示す図であって、(a)は橋軸方向から見た図、(b)は(a)に示すIII-III線矢視図であって橋幅方向から見た図である。
【
図20】主桁上フランジ11Aを上方から見た図であって、スペーサを配置した図である。
【
図21】
図19においてスペーサを配置した状態を示す図であって、(a)は橋軸方向から見た図、(b)は(a)に示すIV-IV線矢視図であって橋幅方向から見た図である。
【
図22】横リブを主桁ウエブに剛結合した状態を示すもので、(a)は斜め下方から見た斜視図、(b)は側面図である。
【
図23】次の鋼床版を設置する方法を説明するためのもので、コンクリート除去領域を設けた状態を示す斜め上方から見た斜視図である。
【
図24】撤去開口領域を設けた状態を示す斜め下方から見た斜視図である。
【
図25】次の鋼床版を設置した状態を示す斜め上方から見た斜視図である。
【
図26】次の鋼床版を設置した状態を示す斜め下方から見た斜視図である。
【
図27】他方側の車線の鉄筋コンクリート床版の一部除去した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。
【
図28】他方側の車線の鉄筋コンクリート床版の一部を除去した状態を示すもので、コンクリート除去領域における正断面図である。
【
図29】他方側の車線側に鋼床版を設置した状態を示すもので、橋梁を斜め上方から見た斜視図である。
【
図30】他方側の車線側に鋼床版を設置した状態を示すもので、当該鋼床版における正断面図である。
【
図31】鋼床版と鉄筋コンクリート床版との間に仮止め板を仮設して、仮舗装を施した状態を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態による床版取替え構造および床版取替え方法について、図面に基づいて説明する。
【0036】
図1および
図2に示すように、本第1実施形態による床版取替え構造は、橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版3(
図3(a)、(b)、および
図15(a)、(b)参照))に取り替える構造である。つまり、第1実施形態による床版取替え構造1(
図4参照)は、橋幅方向(
図1においてX方向)に隣り合う主桁11、11の間隔が3m程度あり、橋幅方向Xに鉄筋コンクリート床版14の一部を切断して、新設の鋼床版3に取り替える場合に適用される。
【0037】
図1および
図2は鋼床版3に取替える前の橋梁10(ただし、片側の車線(図に示すものの場合、片側2車線)のみ)を示すもので、
図1は斜め上方から見た斜視図、
図2は斜め下方から見た斜視図である。
図1および
図2に示すように、橋梁(橋梁の構造)10は、主桁11、横桁12、対傾構13および鉄筋コンクリート床版14を備えている。
【0038】
主桁11は、H形鋼またはI形鋼によって形成され、橋軸方向(
図1においてZ方向)に延在して設けられている。なお、図に示すものの場合、両車線合わせて全部で6本の主桁が設けられている中で、片側の車線の3本のみが示されている。これらの主桁11は、橋幅方向X(橋軸方向Zと直交する水平方向)に所定間隔で配置されている。主桁11は、主桁上フランジ11Aと、主桁ウエブ11Bと、主桁下フランジ11Cと、を有している。なお、主桁11は、図示しない橋台や橋脚の間に架設されている。
【0039】
横桁12は、H形鋼またはI形鋼によって形成され、橋幅方向Xに延在し、かつ隣り合う主桁11,11間に架設されている。横桁12の端部は、主桁ウエブ11Bに溶接やボルト止め等によって結合されている。横桁12は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、
図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋幅方向Xに延在する2本の横桁12が設けられている。
【0040】
対傾構13は、風や地震等の横荷重に抵抗するためのもので、上弦材、下弦材、縦材および斜材等からなるトラス構造となっている。対傾構13は隣り合う主桁11,11間に架設され、ガセット等によって主桁11に結合されている。また、対傾構13は、橋軸方向Zに所定間隔で複数配置されているが、
図2では橋梁10の一部を図示しているので、橋幅方向Xに延在する2つの対傾構13が設けられ、これら対傾構13が橋軸方向Zに離間し、かつ横桁12を挟む位置に設けられている。
【0041】
鉄筋コンクリート床版14は、内部に鉄筋が縦横に配筋されており、当該鉄筋コンクリート床版14の下面から突出する凸条(ハンチ部)14aが橋軸方向Zに延在している。本実施形態において凸条14aは、橋幅方向Xに所定間隔で3つ形成されている。これら3つの凸条14aは、3本の主桁11の直上に位置しており、主桁上フランジ11Aに設置固定されている。主桁上フランジ11Aの上面11a(
図4参照)には、図示しないスタッドが橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにそれぞれ所定間隔で複数立設され、これらスタッドが鉄筋コンクリート床版14のコンクリートと結合されている。
また、鉄筋コンクリート床版14は、橋幅方向Xの両端部にそれぞれ地覆14bが設けられ、一方の端部に高欄14cが設けられている。さらに、鉄筋コンクリート床版14の上面には、アスファルト等で形成された舗装部15が地覆14b,14b間において施工されている。
【0042】
次に、鉄筋コンクリート床版14を撤去した後に新設される鋼床版3の構成について具体的に説明する。
鋼床版3は、
図3(a)、(b)に示すように、デッキプレート31と、デッキプレート31の下面31aに溶接等によって接合された複数の縦リブ32と、縦リブ32に直角に配置された横リブ33と、を備えている。
デッキプレート31の上面31bには、予め舗装部34が施工されている。橋幅方向Xにおいてデッキプレート31の外周縁部31cは、舗装部34の外周縁部34aより外側に突出している。
【0043】
複数の縦リブ32は、それぞれ橋軸方向Zに延在するとともに、橋幅方向Xにおいて所定間隔で平行に設けられている。
図4および
図5に示すように、これら複数の縦リブ32のうち主桁上フランジ11Aを橋幅方向Xに挟むようにして配置される2つの縦リブ32(
図4および
図5に示す符号32A)の間には、主桁上フランジ11Aに結合される第1縦リブ32Bが配置されている。第1縦リブ32Bは、リブ下端に橋軸方向Zに延在する水平リブ32Cを有する逆T型に形成されている。
【0044】
一対の縦リブ32A、32A同士の橋幅方向Xの離間寸法は、少なくとも主桁上フランジ11Aの幅寸法よりも大きい。横リブ33のうち一対の縦リブ32A、32A同士の間には、横リブ33が配置されていない部分がある。すなわち、第1縦リブ32Bは、横リブ33に接合されて状態で設けられている。ここで、
図4~
図7に示す符号40は、結合部である。なお、複数の縦リブ32のうち横リブ33に接合されるものが第2縦リブであり、横リブ33に接合されないものが上記第1縦リブ32Bとなる。
【0045】
横リブ33は、
図3(b)および
図4に示すように、デッキプレート31の下面31a側において、橋幅方向Xに延びて配設され、かつ橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11aのウエブ面と対向して設けられている。
具体的には、デッキプレート31の下面31aには、橋幅方向Xに延在する2つの横リブ33(33A,33B)が主桁11を挟んで溶接等によって接合されている。
【0046】
図4および
図5に示すように、鋼床版3における橋幅方向Xの紙面右側の横リブ33Aおよび紙面左側の横リブ33Bは、それぞれ主桁11から一定距離までは下端部が略水平方向に形成され、さらに主桁11から離れた位置においては、この主桁11から離れるに従って漸次、下端部がデッキプレート31側に近づくように傾斜した態様の板体状に形成されている。これは、横リブ33A、33Bとしての必要高さよりも、主桁11への接合部のための必要高さが大きいためにこのような形状となっている。そのため、接合部近傍での高さで一様の高さにしてもよい。そして、横リブ33A、33Bにおける下方に突出する部分が突出部33cとなる。
そして、横リブ33A、33Bの橋幅方向Xの一端面(つまり、主桁11側の端面)の一部が直近(紙面右側)の主桁ウエブ11Cの右側のウエブ面と対向している。なお、横リブ33A、33Bの下端面にはフランジ33bが固定されている。
【0047】
横リブ33A、33Bは、デッキプレート31の短辺の長さ方向(橋軸方向Z)の略中央部に配置されている。これら横リブ33A、33Bに対して縦リブ32が直交して配置され、それらの交差部が溶接されている。なお、橋軸方向Zの鋼床版3同士の接合部での発生応力を減少させるには、デッキプレート31の長さ方向の略1/3の部分に配置することも有効な手段である。なお、斜橋に適用した場合は、横リブ33Bに対して縦リブ32が直交していない場合もある。
【0048】
また、横リブ33A、33Bの両端部33dは、それぞれ主桁11の主桁ウエブ11Cのウエブ面と橋幅方向Xに対向している。右側の横リブ33Aは、デッキプレート31の橋幅方向Xの略中央部に配置され、左側の横リブ33Bの延長上に配置されている。
【0049】
次に、実施形態において、鉄筋コンクリート床版14を鋼床版3に取り替える床版取替え構造1について、図面に基づいて説明する。
図5乃至
図7に示すように、床版取替え構造1は、鉄筋コンクリート床版14のうち主桁11の主桁上フランジ11Aの上面11aの一部が残置された残置コンクリート部21(
図18(a)、(b)参照)と、主桁上フランジ11Aの上面11aのうち、主桁11の橋軸方向Xの一部の残置コンクリート部21が除去されたコンクリート除去面11b(
図19(a)、(b)参照)と、第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に上下方向に間隔をあけて設置され、主桁上フランジ32を覆うように配置された鋼床版3と、主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bと第1縦リブ32Bとの間に押し込まれた状態で介在されたスペーサ41と、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとをスペーサ41を挟んだ状態で結合する結合ボルト42(結合手段)と、を備えている。
【0050】
上述したように、鋼床版3は、デッキプレート31の下面31a側において橋幅方向Xに配設され、橋幅方向Xの一端面または両端面の少なくとも一部が直近の主桁11の主桁ウエブ11Cのウエブ面と対向する構造的に連続した横リブ33を有し、横リブ33が当該横リブ33の橋幅方向Xの端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11Cに剛結合された構成となっている。
【0051】
残置コンクリート部21は、
図6に示すように、主桁11上に設けられる鉄筋コンクリート床版14(
図15(a)、(b)参照)を除去したときにほぼ一定の厚さに残置される部分である。残置コンクリート部21は、例えばコンクリートカッタ等を使用して鉄筋コンクリート床版14内に埋設されている定着鉄筋や主桁上フランジ11Aの上面11aに設けられるスタッド43(後述する)と共に略水平方向に沿って切断し、上側の鉄筋コンクリート(
図17参照)を取り除いたときに残置されたものである。そのため、主桁上フランジ11A上の残置コンクリート部21内には、切断後のスタッド43の根元(基端部43a)が埋設された状態となっている。
【0052】
ここで、主桁上フランジ11Aの上面11aには、取り替え前の鉄筋コンクリート床版14とのずれ止めとして機能する複数のスタッド43(コンクリートずれ止め部材)が溶接によって突設されている(
図16、
図17参照)。スタッド43は、主桁上フランジ11Aの上面11aにおいて、橋幅方向Xに2列、橋軸方向Zに多数が配列されている。これらスタッド43は、上述したように、床版取替え構造1として、そのスタッド43の頭部(上側部分)が切断されて一部(基端部43a)が主桁上フランジ11Aの上面11aに残されている。
【0053】
主桁上フランジ11Aの上面11aのコンクリート除去面11bは、主桁11の橋軸方向Xの一部の残置コンクリート部21が除去されることによって上面11aが露出した部分である。残置コンクリート部21の位置は、例えば、主桁上フランジ11Aにおける横リブ33、33間の一箇所に設けられていればよい。コンクリート除去面11bは、第1縦リブ32Bとの結合部40に位置している。鋼床版3における第1縦リブ32Bの位置が、鋼床版3の橋幅方向Xの略中央であるので、コンクリート除去面11bは主桁上フランジ11Aの軸方向(橋幅方向X)の中央位置となる。
【0054】
図7および
図8に示すように、スペーサ41は、主桁11上の所定高さの位置に鋼床版3が配置された状態で、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bの水平リブ32bとの間で橋幅方向Xから押し込み可能に設けられている。スペーサ41は、所定の厚みを有する鋼材から形成されている。スペーサ41の厚みは、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bの水平リブ32bとの上下方向の離間寸法と一致するように設定されている。上記の離間寸法は、鋼床版3やデッキプレート31の各部位の寸法や主桁11の寸法から決まる寸法である。
スペーサ41は、本実施形態において平面視して矩形をなしているが、とくに限定されるものではない。
【0055】
スペーサ41は、橋幅方向Xを向く側面には、スペーサ41が設置された状態でスタッド43に干渉しないように橋幅方向Xに沿って凹む凹部41aが形成されている。凹部41aは、スタッド43が通過可能な幅寸法に形成されたスリット形状である。この凹部41aは、上下方向に貫通し、後述するフランジボルト穴11cおよび水平リブ32Cのリブボルト穴32cと同軸に位置するボルト孔の機能をもつ。
【0056】
主桁上フランジ11Aには、コンクリート除去面11bの位置において当該主桁上フランジ11Aを厚さ方向に貫通する複数のフランジボルト穴11cが設けられている。フランジボルト穴11cは、本実施形態において、橋幅方向Xおよび橋軸方向Zのそれぞれで2つ配列されている。また、第1縦リブ32Bには、水平リブ32Cにおいて上記のフランジボルト穴11cと上下方向の同軸線上にリブボルト穴32cが設けられている。すなわち、リブボルト穴32cは、本実施形態において、橋幅方向Xおよび橋軸方向Zのそれぞれで2つ配列されている。
【0057】
結合ボルト42は、フランジボルト穴11c、リブボルト穴32c、およびスペーサ41の凹部41aに主桁上フランジ11Aの下方より挿通され、主桁締結用縦リブ32Bの水平リブ32Cの上方よりナット44で締め付けることにより主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとを結合する。
【0058】
次に、上述した構成の橋梁10の主桁11に支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版3に取り替える床版取替え方法について、
図9の施工フローを参照しながら詳細に説明する。
【0059】
先ず、準備工程(
図9の第1工程S1)として、橋梁10の下に、図示しない全面吊足場を設置し、この全面吊足場から、新設の鋼床版3の設置(取替え)の際に干渉する部材の撤去、改良、仕上げ(一部グラインダー作業)を行う。なお、検査等のためなどに全面足場が予め設置されている場合は、その足場を使って同じ作業を行うことができる。
【0060】
次に、
図4に示すように、主桁ウエブ11Cの上部に横リブ取付部16を高力ボルト45によってボルト結合する。この場合、鉄筋コンクリート床版14の下面側で作業を行って横リブ取付部16を主桁ウエブ11Cにボルト結合する(第2工程S2)。
【0061】
横リブ取付部16は、
図10(a)、(b)、および
図11に示すように、断面T形に形成され、矩形板状の固定プレート16aと、この固定プレート16aの幅方向中央部に、当該固定プレート16aの板面から直角方向に突設させた矩形板状の連結プレート16bとを有している。固定プレート16aと連結プレート16bとは上下方向の長さが等しくなっており、連結プレート16bの固定プレート16aからの突出長さは、後述する鋼床版3の横リブ33の端面に連結プレート16bの先端面が当接可能となるような長さに設定されている。この横リブ取付部16は、横リブ33を構造的に連続化させるための部材であり、引張ボルト接合によって主桁ウエブ11Cに取り付けられ、また、鋼床版3の横リブ33とは2面せん断の摩擦接合により接続される。
また、固定プレート16aにはボルト孔16cが複数設けられ、連結プレート16bにはボルト孔16dが複数設けられている。
【0062】
横リブ取付部16は、新設の鋼床版3を取り替える部位の下方に位置する主桁ウエブ11Cのウエブ面に固定プレート16aを当接させてボルト結合することによって取り付ける。本実施形態では、
図12(a)において右側の主桁11と中央部の主桁11との間において鉄筋コンクリート床版14の一部を鋼床版3に取り替えるので、
図11に示すように、右側の主桁11の主桁ウエブ11Cの両ウエブ面に、当該主桁ウエブ11Cの厚さ方向の中央部を境として横リブ取付部16を略左右対称的に取り付け、中央部の主桁11の主桁ウエブ11Cの、右側の主桁11側を向くウエブ面に横リブ取付部16を取り付ける。
【0063】
なお、
図11において、右側の横リブ取付部16の方が左側の横リブ取付部16より上下方向の長さが長く、かつ、右側の横リブ取付部16の下端が左側の横リブ取付部16の下端より下方に突出している。これは、横リブ33Aの主桁ウエブ11C側の端部の上下方向の長さが、横リブ33Bの主桁ウエブ11C側の端部の上下方向の長さより長く、かつ、横リブ33Aの下端が横リブ33Bの下端より下方に突出していることによるものである(
図3(b)参照)。したがって、横リブ33Aの主桁ウエブ11C側の端部の上下方向の長さと、横リブ33Bの主桁ウエブ11C側の端部の上下方向の長さとが等しい場合、右側の横リブ取付部16の上下方向の長さと左側の横リブ取付部16の上下方向の長さとが等しくてもよい。
【0064】
また、右側の主桁ウエブ11Cのウエブ面に横リブ取付部16を結合する場合、ウエブ面の塗装を剥離したうえで、高力ボルトによる通常の摩擦接合によって結合する。つまり、
図11に示すように、主桁ウエブ11Cには、前記ボルト孔16cと対応した位置にボルト孔11fが設けられ、ボルト孔11fと、主桁ウエブ11Cの両ウエブ面にそれぞれ当接された横リブ取付部16,16の固定プレート16aのボルト孔16c,16cに高力ボルト18を挿通し、当該高力ボルト18にナット44を螺合して締め付けることによって、主桁ウエブ11Cのウエブ面に横リブ取付部16を結合する。
【0065】
このとき、横リブ取付部16の固定プレート16aには、あらかじめ工場で孔あけ加工がなされ、ボルト孔16cが設けられている一方で、主桁ウエブ11Cには、結合作業を行う前の段階ではボルト孔11fは設けられていない。横リブ取付部16を適切な位置に仮設置し、そのボルト孔16cをテンプレートとして、主桁ウエブ11Cに現場で図示しない携帯式ボール盤のような器具を用いて穴あけ加工を行う。結合作業時においては、各部材間で位置ずれが生じる可能性がありボルト孔16cの位置を調節する必要があるが、この方式によって横リブ取付部16と主桁ウエブ11Cとのボルト孔の相対的な位置調節が可能となる。
【0066】
また、中央部の主桁ウエブ11Cのウエブ面に横リブ取付部16を結合する場合も同様にして行う。
また、中央部の主桁ウエブ11Cの反対側(左側の主桁11側)のウエブ面には、中央部の主桁11と左側の主桁11とに支持されて敷設されている鉄筋コンクリート床版14の一部を新設の鋼床版3に取り替える際に、同様にして横リブ取付部16を取り付ける。
なお、横リブ取付部16を主桁11に取り付けた後、
図13に示すように、必要に応じて、上部交通の車線規制を行う(第3工程S3)。車線規制を行う場合、路面の幅方向(橋幅方向X)の中央部に仮設ガード17を橋軸方向Zに所定間隔で立設する。
図13は、右側の1車線を規制したものを示していて、仮設ガード17より左側が車両通行帯であり、右側が工事帯となっている。
【0067】
次に、工事帯において、
図13および
図14に示すように、鉄筋コンクリート床版14の一部を撤去する。このとき、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11Aの上面11a側に設けられている部分(残置コンクリート部21)を残した状態で鉄筋コンクリート床版14を撤去する(第4工程S4)。
【0068】
すなわち、
図13および
図15(a)、(b)に示すように、橋幅方向Xの右側に位置する主桁11と中央部に位置する主桁11との間に位置する鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおける所定部位を、後述する鋼床版3の平面視形状や大きさ(この実施形態の場合、平面視略矩形状)に応じて、コンクリートカッタによって切断し、撤去する。
この際、上述したように主桁上フランジ11Aの上面11a側に設けられている残置コンクリート部21以外の部分を除去する。本実施形態では、上述したように、主桁11の主桁上フランジ11Aの上面11aに所定厚さの残置コンクリート部21を残置する。
【0069】
図16および
図17に示すように、これは例えば宮地エンジニアリング株式会社のM-SR工法のように、鉄筋コンクリート床版14と主桁上フランジ11Aの上面11aとの間を狙って、主桁上フランジ11Aと平行に不図示の水平スライサー(切断手段)を水平に進行させて鉄筋コンクリート床版14を主桁上フランジ11Aから上方に切り離す。
すなわち、本実施形態では、鉄筋コンクリート床版14のうち主桁上フランジ11Aの上面11aの一部を残置する。主桁上フランジ11Aの上面11aに残置された残置コンクリート部21には、主桁上フランジ11A上に突設されているスタッド43の基端部43aがコンクリートに埋設された状態で残置されている。これは、主桁上フランジ11Aの上面11aから全ての鉄筋コンクリート床版14のコンクリートを除去することが手間と時間を要することから、残置コンクリート部21を残すことにより作業の効率化を図ることができる。
【0070】
また、鉄筋コンクリート床版14の撤去領域(後述する床版撤去領域R)において、
図15(a)、(b)に示す舗装部15の一部を橋軸方向Zに沿って除去し、床版撤去領域Rに沿う縁部を露出させる。
このようにして鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視略矩形状に切断することで、矩形状の床版撤去領域Rが形成されることになる。この床版撤去領域Rの平面視における橋軸方向Zの長さは、取り替えられる新設の鋼床版3の平面視における橋軸方向Zの長さより若干長く設定される。また、
図13に示すように、鉄筋コンクリート床版14の所定部位を平面視で略矩形状に切断する場合、右側の地覆14bおよび高欄14cを含めて切断するので、コンクリート除去領域Rの橋幅方向Xの外側(右側)が開放されている。
【0071】
次に、
図18(a)、(b)に示すように、床版撤去領域Rに新設の鋼床版3を仮置きの状態で配置する(第5工程S5)。このとき、鋼床版3を主桁上フランジ11Aや残置コンクリート部21を上方から覆うように配設する。つまり、鋼床版3の第1縦リブ32Bの水平リブ32Cを主桁上フランジ11Aの直上に間隔をあけて配設する。鋼床版3は、第1縦リブ32Bの橋幅方向Xの両側に位置する縦リブ32A、32A間に残置コンクリート部21を有する主桁上フランジ11Aが配置された状態で仮置きされる。
【0072】
次に、第5工程S5の後、既設の鉄筋コンクリート床版14と鋼床版3との連結およびその後の舗装を行う工程(第6工程S6)と、上部交通の車線規制を解放する工程(第7工程S7)と、を行う。
【0073】
鋼床版3の横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11Cに剛結合する(第6工程S6)。
図22(a)、(b)に示すように、横リブ33A,33Bを、これらの横リブ33A,33Bにおける橋幅方向Xの端部の一端面を主桁ウエブ11Cのウエブ面と対向させた状態において、横リブ33A,33Bの橋幅方向Xの端部33e,33eを直近の主桁ウエブ11C,11Cに剛結合する。これによって、鋼床版3の床版作用に伴う交通荷重起因の発生応力を低減することができる。すなわち、同じ高さの横リブ33でも、主桁ウエブ11C,11Cに剛結合することで鋼床版3に発生する応力が小さくなり,疲労寿命を十分に確保することが可能となる。
【0074】
次に、
図23に示すように、鋼床版3と、この鋼床版3に橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板(図示省略)を架け渡し、この仮止め板の上面側において、鋼床版3の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する。仮止め板は、一時的に鉄筋コンクリート床版14と鋼床版3との間、あるいは隣接する鋼床版3、3間を連続させることにより、道路の陥没状態を抑止して車両の通行を可能にする機能を有している。
【0075】
次に、
図19(a)、(b)および
図20に示すように、主桁上フランジ11Aの上面11aのうち、主桁11の橋軸方向Xの一部の残置コンクリート部21を除去して主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bを露出する(第8工程S8)。主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bの橋軸方向Z(主桁11の延長方向)の位置は、隣り合う横リブ33、33間の少なくとも一箇所配置されていればよい。すなわち、コンクリート除去面11bは、横リブ33、33間の中央でもよいし、いずれか一方の横リブ33寄りにずれた位置であってもかまわない。コンクリート除去面11bは、主桁上フランジ11Aの上面11aの幅方向全体で、橋軸方向Zの所定の長さの範囲に形成される。橋軸方向Zの長さは、
図20に示すように、主桁締結用縦リブ32Bの水平リブ32Cと主桁上フランジ11Aとの間に介在されるスペーサ41が配置可能で、スペーサ41の橋軸方向Zの長さD2よりも大きい長さに設定されている。
【0076】
コンクリート除去面11bは、残置コンクリート部21のコンクリートが残らないように除去される。このとき、残置コンクリート部21内に埋設されているスタッド43の基端部43aはそのまま残した状態とする。つまり、コンクリート除去面11bは、残置コンクリート部21のコンクリートのみが除去された状態となる。
【0077】
そして、鋼床版3を第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、主桁上フランジ11Aの上面11aにコンクリート除去面11bを露出した後に、主桁上フランジ11Aおよび第1縦リブ32Bの同軸線上にそれぞれフランジボルト穴11c、リブボルト穴23cをドリル等の穴あけ手段を使用して設ける(
図7参照)。
【0078】
次に、
図20および
図21(a)、(b)に示すように、主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bと第1縦リブ32Bの水平リブ32Cとの間にスペーサ41を押し込み介在させる(第9工程S9)。スペーサ41は、主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bと第1縦リブ32Bの水平リブ32Cとの間で、橋幅方向Xの一方から押し込まれる。スペーサ41の厚みは、主桁上フランジ11Aの上面11a(ここではコンクリート除去面11b)と水平リブ32Cの下面32bとの間の上下方向の離間寸法に一致している。そのため、スペーサ41をコンクリート除去面11bと水平リブ32Cとの間に横から叩き込むようにして押し込むことで、この間に押し込まれたスペーサ41は上下方向に押圧された状態で介在される。
さらに、スペーサ41は、一対の凹部41aの内側で主桁上フランジ11Aのコンクリート除去面11bに突設しているスタッド43を回避するように配置される。
【0079】
次に、
図5、
図6、
図7および
図20に示すように、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bの水平リブ32Cとをスペーサ41を挟んだ状態で結合ボルト42を使用して結合する(第10工程S10)。つまり、主桁上フランジ11Aに設けたフランジボルト穴11cに下方から結合ボルト42を挿通して、さらにその結合ボルト42で水平リブ32Cに設けたリブボルト穴32cを挿通して、水平リブ32Cの上方からナット44で締め付ける。このときの結合ボルト42は、スペーサ41の凹部41aを通過する。これにより主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとが結合される。
【0080】
すなわち、前述の鉄筋コンクリート床版14の撤去工程(第4工程S4)によって、鋼床版3が配設されている撤去開口領域Rを囲む鉄筋コンクリート床版14の周縁部分のうち、橋幅方向Xに隣り合う部分は、主桁11の主桁上フランジ11Aの上面11a側において舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋幅方向Xにおいて撤去開口領域Rに隣接する縁部が露出した状態となっている。また、主桁11,11間に位置し、橋軸方向Zに隣り合う部分の鉄筋コンクリート床版14は、橋幅方向Xに沿って舗装部15の一部が除去されて、鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zにおいて撤去開口領域Rに隣接する縁部が露出した状態となっている。
そして、デッキプレート31の外周縁部31cと鉄筋コンクリート床版14の橋軸方向Zに沿う外周縁部とに隙間を跨ぐようにして、仮止め板55(
図25参照)を架け渡して固定したうえで、仮止め板の上面側に、仮舗装部を鋼床版3の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する。
【0081】
このようにして、1つの鋼床版3の取り替えが終了した後、一時交通規制を解除して、工事帯を通行可能とする(第7工程S7)。
【0082】
2つめの鋼床版3の取り替えを行う場合、基本的に上述した工程を順次繰り返すことによって行う。ただし、各工程の詳細な説明は省略する。
まず、
図24および
図25に示すように、工事帯において、先に取り換えた(新設した)鋼床版3と橋軸方向Zにおいて隣接する鉄筋コンクリート床版14の一部のうち、橋軸方向Zの所定の幅内において主桁上フランジ11Aの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の一部に撤去開口領域Rを設けるとともに、当該撤去開口領域Rにおいて主桁上フランジ11Aの上面11aに残置コンクリート部21を残置する。また、主桁ウエブ11Cの上部に横リブ取付部16を高力ボルトによってボルト結合する。
【0083】
次に、
図26に示すように、撤去開口領域Rに次に新設する鋼床版3を配設する。このとき、主桁上フランジ11Aの上方に対向する位置に第1縦リブ32Bの水平リブ32Cが配置された状態となる。
次に、鋼床版3の横リブ33を当該横リブ33の端部において、当該端部に直近の主桁ウエブ11Cに、横リブ取付部16によって剛結合する。
【0084】
また、この段階において、隣り合う鋼床版3,3同士はパネル間継手(図示省略)を使用して高力ボルトによって接合する。このパネル間継手は、2面せん断のボルト摩擦接合によって隣接する鋼床版3,3同士を一体化するものである。このパネル間継手によって、鋼床版3のデッキプレート31の橋軸方向Z(
図27参照)および橋軸直角方向の接合と、縦リブ32が2面せん断のボルト摩擦接合によって接合される。なお、パネル間継手を設ける場合には、先だって存在する仮止め板が存在する場合には、その仮止め板は撤去する。
【0085】
また、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版3,3同士を接合するパネル間継手は、デッキプレート31の上面側に設けられて、鋼床版3の長辺方向(橋幅方向X)に延在する第1継手プレートと、デッキプレート31の下面側において橋幅方向Xに隣り合う縦リブ32,32間にそれぞれ設けられて、第1継手プレートより短い複数の第2継手プレートと、を備えている。そして、第1継手プレートと第2継手プレートとによって、隣り合う鋼床版3,3のデッキプレート31,31が挟み付けられ、高力ボルトによって締結することで、鋼床版3,3同士が接合されている。
【0086】
また、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版3,30の縦リブ32,32同士を接合するパネル間継手は、2枚の第3継手プレートを備えている。第3継手プレートは橋軸方向Zに隣り合う鋼床版3,3の接合部を跨ぐようにして配置されている。そして、第3継手プレートによって、橋軸方向Zに隣り合う鋼床版3,3の縦リブ32,32がそれぞれ挟み付けられ、高力ボルトによって締結することで、鋼床版3,3同士が接合されている。
【0087】
また、橋幅方向Xに隣り合う鋼床版3,3同士を接合するパネル間継手は、2枚の継手プレート(図示省略)を備えている。この継手プレートは橋幅方向Xに隣り合う鋼床版3,3の接合部を跨ぐように配置されるとともに、鋼床版3の短辺方向に沿って延在している。そして、継手プレートによって、橋幅方向Xに隣り合う鋼床版3,3のデッキプレート31,31がそれぞれ挟み付けられ、高力ボルトによって締結することで、鋼床版3,3同士が接合されている。
【0088】
最後に、今回取り替えた鋼床版3と、この鋼床版3に橋幅方向Xおよび橋軸方向Zにおいて隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55(
図25参照)を架け渡し、この仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版3の上面に予め設けられている舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部15とほぼ面一に施工する。
【0089】
このようにして次の(2つめの)鋼床版3を取り替えた後、同様にして必要な数の鋼床版3を次々に取り替えることによって、橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版3を新設する。以上のようにして、片側2車線のうち一方側の車線について橋軸方向Zにおいて所望な距離だけ新な鋼床版3を新設する。
【0090】
また、一方側の車線について橋軸方向Zに所望な距離だけ鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版3を新設した後、
図28に示すように、片側2車線のうちの他方側の車線(
図28において左側の車線)についても同様にして既設の鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版3を新設する。
図28では、一方側の車線において取り替えた鋼床版3が2枚記載されているが、実際は橋軸方向Zにおいて鋼床版3は所定数だけ連続して施工(新設)されている。
なお、他方側の車線において、鋼床版3を新設する場合、一方側の車線において、鋼床版3を新設した場合と同様にして鋼床版3を新設するので、以下ではその方法を簡単に説明する。
【0091】
片側2車線のうちの他方側の車線において、鉄筋コンクリート床版14に替えて新たな鋼床版3を新設する場合、準備工程として、全面足場の設置や干渉する部材の撤去を行った後、鉄筋コンクリート床版14の下面側で、所定の主桁11の主桁ウエブ11Cの上部に横リブ取付部16を高力ボルトによってボルト結合する作業を行う。
そして、他方側の車線について上部交通を規制(図示せず)した後、
図28および
図29に示すように、他方側の車線の鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部のうち、主桁11の主桁上フランジ11Aの上面側に設けられている部分以外を除去することで、鉄筋コンクリート床版14の少なくとも一部にコンクリート除去領域Rを設けるとともに、このコンクリート除去領域Rにおいて主桁上フランジ11Aの上面11aに残置コンクリート部21を残置する。
【0092】
次に、
図30および
図31に示すように、撤去開口領域Rに新設の鋼床版3を配設する。次に、横リブ33を当該横リブ33の橋幅方向Xの両端部において、当該両端部に直近の主桁ウエブ11Cに横リブ取付部16によって剛結合する。なお、予め主桁ウエブ11Cに横リブ取付部16をボルト結合しておく。また、横リブ取付部16に横リブ33をボルト結合する場合、横リブ取付部16と横リブ33の端部とをスプライスプレート46によって挟み付けるとともに高力ボルトによって締結する。
【0093】
次に、鋼床版3と、当該鋼床版3に隣り合う鉄筋コンクリート床版14との間に仮止め板55を架け渡し、仮止め板55の上面側に、仮舗装部56を鋼床版3の上面側の舗装部34および鉄筋コンクリート床版14上の舗装部とほぼ面一に施工する。また、前記鋼床版(他方側の車線の鋼床版)30と、一方側の車線に設置されている鋼床版3との間にはパネル間継手を取り付けて相互に接合し、パネル間継手の上面側に、仮舗装部56を橋幅方向Xに隣り合う鋼床版3の上面側の舗装部34とほぼ面一に施工する。
そして、橋梁において予定していた区間において鋼床版3の取り替えが終了することによって、工事全体を終了する。
【0094】
他方側の車線においても、同様の工程により施工する。
上述した床版取替え方法を順次、行うことにより橋梁の床版を鉄筋コンクリート床版14から鋼床版3に取り替えることができる。
【0095】
以上説明した床版取替え構造および床版取替え方法によれば、鋼床版3の横リブ33が主桁11の一部(例えば、主桁ウエブ11C)と接合され、横リブ33によって鋼床版3の上下方向の荷重を主桁11に伝達する構成となる。そして、鋼床版3における横リブ33に接合されない縦リブ32の一部(第1縦リブ32B)のみがスペーサ41を介在させて主桁11と結合手段によって結合された構成となり、主桁上フランジ11Aと鋼床版3のデッキプレート31が接合されるため、従来のように主桁を跨いで縦リブを配置した場合のように板厚を大きくしないとたわみが生じるという問題の発生を抑制することができる。
【0096】
また、本実施形態では、第1縦リブ32Bが横リブ33と接合されていないため、疲労の発生を抑えることができる。鋼床版3の縦リブと横リブの接合部は疲労性能が弱い傾向にある。また、その疲労性能は溶接部の長さが長くなると発生応力が低減され、その結果として向上する。しかし、第1縦リブ32Aは主桁上フランジ11と鋼床版3のデッキプレート31との間に収められる必要があり、他の縦リブよりも高さが低くなるため、横リブ33と溶接すると必ず疲労上の弱点となってしまう。そのため、この第1縦リブ32Aは横リブ33と溶接しない。通常、鋼床版に作用する荷重は縦リブから横リブに伝達され、横リブから主桁に流れるように設計される。しかし、第1縦リブ32Aについては、最終的に主桁11に直接接合されるために横リブ33との溶接を省略しても荷重伝達には全く問題がない。なお、縦リブ21の一部である第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの結合部40は、例えば合成桁の桁端近傍以外は横リブ間に一箇所程度の部分的に設ける構成であっても十分な強度と、せん断力伝達が可能である。
【0097】
また、本実施形態では、鋼床版3を仮に配置した状態で、主桁上フランジ11Aの上面11aに残置される残置コンクリート部21の一部を除去してコンクリート除去面11bを露出し、そのコンクリート除去面11bと第1縦リブ32Bとの間にスペーサ41を押し込むことができるので、簡単で短期間による施工方法により床版の取り替えることができる。
さらに本実施形態では、主桁上フランジ11Aの上方に鋼床版3を覆うように配置することができるので、除去する鉄筋コンクリート床版14のうち主桁上フランジ11Aの上面11aに残置コンクリート部21を残しておくことができる。そのため、主桁上フランジ11A上で全てのコンクリートを除去する必要がないことから、鉄筋コンクリート床版14から鋼床版3への床版取替えにかかる作業時間を低減することができる。
このように、鋼床版3を仮配置した後で、その鋼床版3上で車両を通行させた状態で、鋼床版3の下方でコンクリート除去面11bを設ける作業や、スペーサ41を設置する作業、結合ボルト42で第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとを結合する作業を行うことができるので、交通制限を最小限に抑えることができる。
【0098】
このように、本実施形態では、従来と異なり鋼床版3の横リブ33の端部が床版支持ブラケットを介することなく、直接、主桁ウエブ11Cに剛結合されているので、鋼床版3は合理的な横リブ断面で設計することが可能となる。その結果、従来のような床版支持ブラケットを用いた場合と比較して構造重量を低減することが可能となる。
また、主桁11と鋼床版3とが結合ボルト42によって結合され、この結合ボルト42が橋軸方向Xにせん断力を伝達するせん断力伝達部材の機能をもつことから、主桁11と鋼床版3との間で橋軸方向Zにせん断力を確実に伝達することができ、確実に鋼床版3と主桁11が合成化された構造とすることができる。
【0099】
また、本実施形態では、スペーサ41が主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとの間で橋幅方向Xから押し込み可能に設けられているので、主桁11の橋幅方向側のスペースを利用し、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとの間にスペーサ41を橋幅方向Xから容易に押し込むことができる。そのため、スペーサ41を他の部位に干渉することなく設置でき、作業の効率化を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態では、スペーサ41の橋幅方向Xを向く側面には、スペーサ41が設置された状態でスタッド43に干渉しないように橋幅方向Xに沿って凹む凹部41aが形成されている。このような構成とすることにより、主桁上フランジ11Aの上面11aに突設するスタッド43に干渉させることなく、スペーサ41を第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に押し込むことができる。
【0101】
また、本実施形態では、スペーサ41の凹部41aはスタッド43が通過可能な幅寸法に形成されたスリット形状となっている。これにより、スペーサ41を、スリットの延在方向に沿って一方向に第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に押し込むことができる。
【0102】
また、本実施形態では、鋼床版3を第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に上下方向に間隔をあけて設置し、主桁上フランジ11Aの上面11aにコンクリート除去面11bを露出した後に、主桁上フランジ11Aおよび第1縦リブ32Bの同軸線上にそれぞれフランジボルト穴11c、リブボルト穴32cを設け、ボルト穴11c、32cに結合ボルト42を挿通して、主桁上フランジ11Aと第1縦リブ32Bとを結合する。これにより、所定の位置に設置された鋼床版3の第1縦リブ32Bに対してリブボルト穴32cを開けることができ、このリブボルト穴32cと主桁上フランジ11Aのボルト穴11cの位置を現場の設置状態に合わせて安定した状態で精度よく設けることができる。そのため、結合ボルト42を両ボルト穴11c、32cに挿通しやすくなり、施工性を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態では、第1縦リブ32Bの水平リブ32Cが主桁上フランジ11Aと平行に配置されるので、それら水平リブ32Cと主桁上フランジ11Aとの間にスペーサ41を安定した姿勢で押し込むことができ、かつ安定した状態で水平リブ32Cと主桁上フランジ11Aとの間にスペーサ41を介在させることができる。
【0104】
また、本実施形態では、鉄筋コンクリート床版14を例えば水平スライサー等の切断手段で主桁上フランジ11Aの上側で水平に切断することができるので、迅速に鉄筋コンクリート床版14を除去することができ、かつ粉じんや騒音の発生を抑えることができる。
【0105】
また、本実施形態では、鋼床版3を第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間に上下方向に間隔をあけて配置した後に、鋼床版3の横リブ33と主桁11とを接合することができる。このように、鋼床版3と横リブ33とを接合することで、第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとの間の上下方向の間隔を一定に保持することができる。鋼床版3を設置した後のコンクリート除去面11bを設ける作業や、スペーサ41を設置する作業、結合ボルト42で第1縦リブ32Bと主桁上フランジ11Aとを結合する作業を確実に、かつ精度よく行うことができる。
【0106】
上述のように本実施形態による床版取替え構造および床版取替え方法では、鋼床版3のたわみを抑制して橋梁としての道路面剛性を確保でき、さらに、簡単に床版の取り替え方法とすることにより交通制限を最小限に抑えることができる。
【0107】
以上、本発明による床版取替え構造および床版取替え方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、工期に余裕がある場合は、鋼床版の設置前に横リブ取付部16を形成する前にコンクリート除去面11bを露出する作業を行うことができる。そうすることで、道路の復旧までの時間はより多く費やすものの、トータルの作業時間が低減され、工事コストを抑えることができる。
【0108】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 床版取替え構造
10 橋梁
11 主桁
11C 主桁ウエブ
11A 主桁上フランジ
11a 上面
11c フランジボルト穴
14 鉄筋コンクリート床版
21 残置コンクリート部
30 鋼床版
32 縦リブ
32B 第1縦リブ
32C 水平リブ
32c リブボルト穴
33(33A,33B) 横リブ
34 舗装部
40 結合部
41 スペーサ
41a 凹部
42 締結ボルト(結合手段)
43 スタッド(コンクリートずれ止め部材)
43a 基端部
X 橋幅方向
Z 橋軸方向