(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166117
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】可変静翼及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/56 20060101AFI20231114BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20231114BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
F04D29/56 C
F01D17/16 D
F01D9/04
F04D29/56 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076917
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 淳二
【テーマコード(参考)】
3G071
3G202
3H130
【Fターム(参考)】
3G071AB06
3G202GA07
3G202GB05
3H130AA12
3H130AB12
3H130AB27
3H130AB52
3H130AC17
3H130BA10B
3H130CA08
3H130DD09Z
3H130EA03B
(57)【要約】
【課題】漏れ流れを抑えて効率の低下を抑制する。
【解決手段】可変静翼は、翼高さ方向に延びる静翼本体と、前記翼高さ方向における前記静翼本体の端部に接続され、作動流体の流れ方向に対する前記静翼本体の角度を変更させるように回転可能とされた翼回転軸と、を備え、前記翼回転軸は、前記翼高さ方向に延びる回転軸線を中心として延びる回転軸本体と、前記回転軸線を中心として延びて前記回転軸本体と前記静翼本体とを接続し、前記翼高さ方向から見た際の外径が前記回転軸本体の外径よりも大きい拡径部とを有し、前記静翼本体は、前記翼高さ方向に延びる前縁と、前記翼高さ方向に延びる後縁と、前記翼高さ方向に延び、前記前縁と前記後縁とを繋ぐ正圧面及び負圧面と、を有し、前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記前縁及び前記後縁の少なくとも一方と重なる大きさで形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体の流れ方向に交差する翼高さ方向に延びる静翼本体と、
前記翼高さ方向における前記静翼本体の端部に接続され、前記作動流体の前記流れ方向に対する前記静翼本体の角度を変更させるように回転可能とされた翼回転軸と、を備え、
前記翼回転軸は、
前記翼高さ方向に延びる回転軸線を中心として延びる回転軸本体と、
前記回転軸線を中心として延びて前記回転軸本体と前記静翼本体とを接続し、前記翼高さ方向から見た際の外径が前記回転軸本体の外径よりも大きい拡径部とを有し、
前記静翼本体は、
前記翼高さ方向に延びる前縁と、
前記翼高さ方向に延びる後縁と、
前記翼高さ方向に延び、前記前縁と前記後縁とを繋ぐ正圧面及び負圧面と、を有し、
前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記前縁及び前記後縁の少なくとも一方と重なる大きさで形成されている可変静翼。
【請求項2】
前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記前縁と重なっている請求項1に記載の可変静翼。
【請求項3】
前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記後縁と重なっている請求項2に記載の可変静翼。
【請求項4】
前記可変静翼は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向と交差する方向に並んで複数配置可能とされ、
前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、隣り合う他の前記可変静翼の拡径部と摺接可能な大きさで形成されている請求項2に記載の可変静翼。
【請求項5】
前記回転軸線は、前記翼高さ方向から見た際に、前記前縁と前記後縁とを結ぶ翼弦の延びる翼弦方向において、前記後縁に対して前記前縁に近い位置に配置されている請求項1から請求項4の何れか一項に記載の可変静翼。
【請求項6】
前記拡径部は、前記翼高さ方向において、前記静翼本体を向く第一面を有し、
前記静翼本体の端部は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向と交差する方向から見た際に、前記前縁から前記後縁に向かって前記回転軸本体から離れるように傾斜し、
前記第一面は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向と交差する方向から見た際に、前記前縁に近い前端部から前記後縁に近い後端部との間で前記静翼本体の端部から離れるように窪んでいる請求項1から請求項4の何れか一項に記載の可変静翼。
【請求項7】
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の可変静翼と、
ロータ本体、及び前記ロータ本体の軸線方向及び周方向に配列された複数の動翼を含むロータと、
前記ロータの外側に配置された内側ケーシングと、
前記内側ケーシングの外側に配置された外側ケーシングと、
前記翼回転軸と接続され、前記翼回転軸を回転させる回転駆動部と、を備え、
前記可変静翼は、前記内側ケーシング及び外側ケーシングに対して回転可能に配置されている圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変静翼及び圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機には、軸線を中心として回転するロータと、ロータを覆うケーシングと、複数の静翼列と、を備えたものがある。ロータは、軸線を中心とするロータ本体と、このロータ本体に取り付けられている複数の動翼列と、を有する。複数の動翼列は、軸線が延びている方向である軸線方向に並んでいる。各動翼列は、軸線を中心とする周方向に並ぶ複数の動翼を有する。複数の静翼列は、ケーシングに取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の下流側に配置されている。各静翼列は、いずれも、周方向に並ぶ複数の静翼を有する。圧縮機の中には、静翼が回転可能とされた構造を有する圧縮機がある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の圧縮機は、作動流体の主流の流れ方向に対して静翼本体の角度を変化させるように回転可能に構成された可変静翼を有している。この可変静翼は、回転軸に接続される静翼本体において、回転軸の外側に突出する径方向端面に隣接する翼面に曲面部が設けられている。曲面部の曲率半径は、回転軸から離れるにつれて徐々に小さくなるように形成されている。特許文献1の可変静翼では、この曲面部によって、翼面の圧力差が大きい回転軸の近傍での作動流体の流れの乱れが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、可変静翼を圧縮機に適用する場合、静翼本体と、回転軸を介して静翼本体を支持する内側ケーシングや外側ケーシングとの間には、微小な隙間が形成されている。この隙間で漏れ流れが生じると、その周辺を流れる作動流体の流れが乱され、渦が発生する。このように、隙間での漏れ流れが生じることで、圧力損失が大きくなり、圧縮機の効率が低下してしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、漏れ流れを抑えて効率の低下を抑制することが可能な可変静翼及び圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る可変静翼は、作動流体の流れ方向に交差する翼高さ方向に延びる静翼本体と、前記翼高さ方向における前記静翼本体の端部に接続され、前記作動流体の前記流れ方向に対する前記静翼本体の角度を変更させるように回転可能とされた翼回転軸と、を備え、前記翼回転軸は、前記翼高さ方向に延びる回転軸線を中心として延びる回転軸本体と、前記回転軸線を中心として延びて前記回転軸本体と前記静翼本体とを接続し、前記翼高さ方向から見た際の外径が前記回転軸本体の外径よりも大きい拡径部とを有し、前記静翼本体は、前記翼高さ方向に延びる前縁と、前記翼高さ方向に延びる後縁と、前記翼高さ方向に延び、前記前縁と前記後縁とを繋ぐ正圧面及び負圧面と、を有し、前記拡径部は、前記翼高さ方向から見た際に、前記前縁及び前記後縁の少なくとも一方と重なる大きさで形成されている。
【0008】
本開示に係る圧縮機は、上記したような可変静翼と、ロータ本体、及び前記ロータ本体の軸線方向及び周方向に配列された複数の動翼を含むロータと、前記ロータの外側に配置された内側ケーシングと、前記内側ケーシングの外側に配置された外側ケーシングと、前記翼回転軸と接続され、前記翼回転軸を回転させる回転駆動部と、を備え、前記可変静翼は、前記内側ケーシング及び外側ケーシングに対して回転可能に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の可変静翼及び圧縮機によれば、漏れ流れを抑えて効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態に係る圧縮機の主要部(吸込口側の上半分)の断面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態の可変静翼の要部拡大断面図である。
【
図3】
図2のIII-III矢視図で可変静翼の説明する模式図である。
【
図4】本開示の第一実施形態の第一変形例の可変静翼を示す、
図3に相当する矢視図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の第二変形例の可変静翼を示す、
図3に相当する矢視図である。
【
図6】本開示の第二実施形態の可変静翼の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、添付図面を参照して、本開示による可変静翼及び圧縮機を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
(圧縮機の構成)
圧縮機1は、多量の作動流体Aを内部に取り入れて圧縮する。圧縮機1は、例えば、ガスタービンに適用される軸流圧縮機である。
図1に示すように、圧縮機1は、ロータ2と、ケーシング3と、複数の可変静翼機構4と、を有する。
【0013】
なお、以下の説明の都合上、圧縮機1の軸線Oが延びている方向を軸線方向Daとする。また、軸線方向Daは、圧縮機1において作動流体Aの流れ方向である。さらに、作動流体Aの流れ方向の上流側Dauを軸線方向Daの上流側Dau(一方側、第一側)とする。また、作動流体Aの流れ方向の下流側Dadを軸線方向Daの下流側Dad(他方側、第二側)とする。また、軸線Oを基準とした圧縮機1の径方向を単に径方向Drとする。また、この径方向Drで軸線Oに近づく側を径方向Drの内側Driとする。この径方向Drで径方向Drの内側Driとは反対側を径方向Drの外側Droとする。また、軸線Oを中心とした圧縮機1の周方向を単に周方向Dcとする。
【0014】
ロータ2は、ロータ本体21と、複数の動翼列22と、を有する。ロータ本体21は、軸線Oを中心として軸線方向Daに延びている。ロータ本体21は、軸線Oを中心とする柱状の部材である。ロータ本体21は、軸受(図示せず)によって、ケーシング3に対して回転可能に支持されている。
【0015】
複数の動翼列22は、ロータ本体21に取り付けられている。複数の動翼列22は、軸線方向Daに間隔を空けて配置されている。複数の動翼列22は、いずれも、周方向Dcに並ぶ複数の動翼25を有する。ここで、複数の動翼列22のうち、最も軸線方向Daの上流側Dauの動翼列22を第一動翼列221とする。この第一動翼列221に対して軸線方向Daの下流側Dadに配置されている動翼列22を第二動翼列222とする。このように、本実施形態では、軸線方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かって順に、第一動翼列221、第二動翼列222、第三動翼列223、及び第四動翼列224が配置されている。
【0016】
動翼25は、動翼列22毎に複数配置されている。複数の動翼25は、ロータ本体21に固定されている。ロータ本体21に固定された複数の動翼25は、動翼列22毎に周方向Dcに並んでいる。動翼25は、ロータ本体21の外周面から突出するように配置されている。
【0017】
ケーシング3は、内側ケーシング31と、外側ケーシング32と、ストラット33とを有する。内側ケーシング31は、軸線Oを中心として筒状に形成されている、内側ケーシング31は、ロータ本体21の一部を径方向Drの外側Droから覆っている。内側ケーシング31は、軸線方向Daに離れて複数配置されている。外側ケーシング32は、軸線Oを中心として筒状に形成されている。外側ケーシング32は、内側ケーシング31及びロータ本体21を径方向Drの外側Droから覆っている。
【0018】
外側ケーシング32と内側ケーシング31との間には、作動流体Aが流通する筒状の主流路Sが形成されている。つまり、外側ケーシング32の内周面321及び内側ケーシング31の外周面311は、主流路Sの一部を画成する流路形成面となっている。径方向Drの内側Driを向く外側ケーシング32の内周面321は、動翼25や後述する可変静翼5が配置されている位置と重なる領域において、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かうにしたがって、径方向Drの内側Driに向かうように傾斜している。外側ケーシング32の内周面321は、軸線方向Daから見た際に、凹面状に湾曲している。径方向Drの外側Droを向く内側ケーシング31の外周面311は、動翼25や可変静翼5が配置されている位置と重なる領域において、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かうにしたがって、径方向Drの外側Droに向かうように傾斜している。内側ケーシング31の外周面311は、軸線方向Daから見た際に、凸面状に湾曲している。
【0019】
ストラット33は、内側ケーシング31と外側ケーシング32との間で周方向Dcに複数並んでいる。複数のストラット33は、内側ケーシング31と外側ケーシング32とを接続している。
【0020】
また、ケーシング3は、吸込口35と、吐出口(不図示)と、を有する。吸込口35は、ケーシング3の軸線方向Daの上流側Dauの端に、開口して形成されている。吸込口35は、主流路Sと連通している。吸込口35は、主流路S内に作動流体A(例えば、外気)を供給する。吐出口は、ケーシング3の軸線方向Daの下流側Dadの端に、開口して形成されている。吐出口は、主流路Sと連通している。吐出口は、主流路S内を流通して圧縮された作動流体Aをケーシング3の外部に排出する。
【0021】
(可変静翼機構の構成)
複数の可変静翼機構4は、各動翼列22に対応するように、各動翼列22に対して軸線方向Daの上流側Dauに配置されている。つまり、本実施形態の圧縮機1では、可変静翼機構4として、第一動翼列221の軸線方向Daの上流側Dauに配置された第一可変静翼機構41、第二動翼列222の軸線方向Daの上流側Dauに配置された第二可変静翼機構42、第三動翼列223の軸線方向Daの上流側Dauに配置された第三可変静翼機構43、及び第四動翼列224の軸線方向Daの上流側Dauに配置された第四可変静翼機構44が配置されている。
【0022】
ここで、
図1から
図3を参照して、可変静翼機構4の構成について説明する。
図1に示すように、可変静翼機構4は、ケーシング3に取り付けられている。本実施形態の可変静翼機構4は、複数の可変静翼5と、回転駆動部8と、を有する。
【0023】
(可変静翼の構成)
可変静翼5は、内側ケーシング31及び外側ケーシング32に対して回転可能に配置されている。複数の可変静翼5は、周方向Dcに並んで、複数配置されている。可変静翼5は、各動翼25の軸線方向Daの上流側Dauに配置されている。本実施形態の可変静翼5は、静翼本体51と、二つの翼回転軸6とを有する。
【0024】
静翼本体51は、翼形状断面を有して翼高さ方向D1に延びる三次元翼である。静翼本体51は、作動流体Aが流通する主流路S内に配置されている。
図2及び
図3に示すように、静翼本体51は、2つの縁である前縁511及び後縁512と、翼面である正圧面515及び負圧面516とを有している。
【0025】
なお、本実施形態における翼高さ方向D1は、作動流体Aの流れ方向である軸線方向Daに直交(交差)する方向であって、圧縮機1における径方向Drである。また、後述する翼弦方向D2は、本実施形態における翼高さ方向D1と直交する方向であって、翼断面において前縁511と後縁512とを結ぶ翼弦の延びる方向を含み、翼高さ方向D1から見た際の前縁511の最も先端と後縁512の最も後端とを結んだ仮想線と平行な方向とする。翼弦方向D2は、圧縮機1における軸線方向Daと一致する場合もある。また、流れ方向及び翼高さ方向D1と直交(交差)する方向が圧縮機1における周方向Dcである。
【0026】
前縁511は、翼高さ方向D1に延びている。前縁511は、正圧面515と負圧面516とが接続される翼弦方向D2の前方側の端部である。後縁512は、翼高さ方向D1に延びている。後縁512は、正圧面515と負圧面516とが接続される翼弦方向D2の後方側の端部である。正圧面515は、翼高さ方向D1から見た際に、腹側の翼面であって、凹面状に形成されている。負圧面516は、翼高さ方向D1から見た際に、背側の翼面であって、凸面状に形成されている。したがって、静翼本体51は、正圧面515と負圧面516とが前縁511と後縁512とを介して連続してなる翼型断面を有している。
【0027】
また、
図1に示すように、径方向Drにおける静翼本体の端部52、53は、翼回転軸6に接続されている。翼回転軸6は、一つ一つの静翼本体51に接続されている。径方向Drの外側Droにおける静翼本体の端部52は、周方向Dcから見た際に、前縁511から後縁512に向かって、翼回転軸6から離れるように傾斜している。本実施形態の径方向Drの外側Droにおける静翼本体の端部52は、周方向Dcから見た際に、外側ケーシング32の内周面321と平行になるように傾斜している。径方向Drの内側Driにおける静翼本体の端部53は、周方向Dcから見た際に、前縁511から後縁512に向かって、翼回転軸6から離れるように傾斜している。本実施形態の径方向Drの内側Driにおける静翼本体の端部53は、周方向Dcから見た際に、内側ケーシング31の外周面311と平行になるように傾斜している。
【0028】
翼回転軸6は、軸線方向Da(作動流体Aの主流の流れ方向)に対する静翼本体51の角度を変更させるように回転可能とされている。本実施形態の可変静翼5は、翼回転軸6として、径方向Drの外側Droの静翼本体の端部52に接続される外側翼回転軸61と、径方向Drの内側Driの静翼本体の端部53に接続される内側翼回転軸62とを有する。内側翼回転軸62及び外側翼回転軸61は、翼高さ方向D1に延びる同じ回転軸線Arを中心として延びている。回転軸線Arは、翼高さ方向D1から見た際に、翼弦方向D2において、後縁512に対して前縁511に近い位置に配置されている。
【0029】
外側翼回転軸61は、回転軸線Arを中心として外側ケーシング32に対して回転可能に配置されている。本実施形態の外側翼回転軸61は、内側翼回転軸62とは異なる形状で形成されている。外側翼回転軸61は、回転軸線Arを中心として翼高さ方向D1に延びる円柱状の部材である。外側翼回転軸61は、外側ケーシング32を貫通するように延びている。
【0030】
図2に示すように、内側翼回転軸62は、回転軸線Arを中心として内側ケーシング31に対して回転可能に配置されている。内側翼回転軸62は、内側ケーシング31の外周面311から窪む孔に収まるように、内側ケーシング31の内部に収容されている。本実施形態の内側翼回転軸62は、回転軸本体71と、拡径部72と、外側円板部73とを有している。回転軸本体71は、回転軸線Arを中心として翼高さ方向D1に延びている。回転軸本体71は、回転軸線Arを中心とする円形断面を有している。
【0031】
拡径部72は、回転軸線Arを中心として翼高さ方向D1に延びている。拡径部72は、回転軸本体71と静翼本体51とを接続している。拡径部72は、回転軸本体71と静翼本体51と一体に形成されている。拡径部72は、回転軸本体71よりも大きな回転軸線Arを中心とする円形断面を有している。つまり、拡径部72は、翼高さ方向D1から見た際の外径が回転軸本体71の外径よりも大きく形成されている。拡径部72の側面の位置は、
図3に示すように、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511の径方向Drの最も内側Driの端部の位置と重なっている。また、拡径部72は、静翼本体51が接続される第一面723を有している。第一面723は、周方向Dcから見た際に、前縁511に近い前端部721から後縁512に近い後端部722に向かって回転軸本体71から離れるように傾斜している。より具体的には、第一面723は、圧縮機1が定格運転される際の位置(角度)に静翼本体51が位置している状態で、周方向Dcから見た際に、内側ケーシング31の外周面311と平行となるように、軸線方向Daの上流側Dauから下流側Dadに向かうにしたがって、径方向Drの外側Droに向かうように直線状をなすように傾斜している。そのため、第一面723は、圧縮機1が定格運転される際の位置(角度)に静翼本体51が位置している状態で、内側ケーシング31の外周面311と平滑な面を構成するように形成されている。内側ケーシング31の外周面311は、軸線方向Daから見た際に、凸面状に湾曲している。
【0032】
外側円板部73は、回転軸線Arを中心として翼高さ方向D1に延びている。外側円板部73は、翼高さ方向D1において拡径部72とは反対側で回転軸本体71に接続している。外側円板部73は、回転軸本体71と一体に形成されている。外側円板部73は、回転軸本体71よりも大きく、拡径部72よりも小さな回転軸線Arを中心とする円形断面を有している。つまり、外側円板部73は、翼高さ方向D1から見た際の外径が回転軸本体71の外径よりも大きく、かつ、拡径部72よりも小さく形成されている。
【0033】
回転駆動部8は、翼回転軸6を回転させる。回転駆動部8は、翼回転軸6と接続されている。本実施形態の回転駆動部8は、各可変静翼機構4において複数の外側翼回転軸61に接続されている。回転駆動部8は、外側翼回転軸61を回転軸線Ar周りに回転させることで、間接的に内側翼回転軸62も回転軸線Ar周りに回転させる。さらに、回転駆動部8は、複数の外側翼回転軸61を同じ回転角で回転させる。これにより、周方向Dcに並ぶ複数の静翼本体51の回転角が変化し、周方向Dcで隣り合う二つの静翼本体51の間における流路面積が変化する。
【0034】
(作用効果)
上記構成の可変静翼5及び圧縮機1では、翼高さ方向D1から見た際に、翼回転軸6が、静翼本体51と重ならない程度の大きさで形成されている場合、翼回転軸6と重なっていない静翼本体51の前縁511や後縁512周辺では、静翼本体の端部52、53と内側ケーシング31や外側ケーシング32との間には、数mm程度の微小な隙間が形成されてしまう。この隙間での漏れ流れが生じると、その周辺を流れる作動流体Aの流れが乱され、渦が発生する。
【0035】
ところが、拡径部72によって、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511と内側翼回転軸62とが重なっている。そのため、前縁511周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間に隙間が生じていない状態となっている。そのため、内側ケーシング31の前縁511周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧力損失を抑えられる。その結果、可変静翼5での圧力損失による圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0036】
また、翼回転軸6に対して、翼弦方向D2に静翼本体51が突出した構造では、前縁511や後縁512のように翼回転軸6に固定されていない離れた位置での振動が大きくなってしまう。その結果、前縁511や後縁512での振動応力が増加する可能性がある。これは、圧縮機1のサイズが大きくなって、静翼本体51が大きくなるほど顕著となる。しかしながら、本実施形態では、静翼本体の端部53の前縁511と拡径部72とが接続されていることで、前縁511での振動を抑えることができる。
【0037】
また、作動流体Aの流れの乱れは、内側ケーシング31及び外側ケーシング32の両方で生じるが、流れている作動流体Aの流量の多い内側ケーシング31の前縁511周辺の方が顕著に生じる。そのため、内側ケーシング31の前縁511周辺では、隙間の影響が大きくなってしまう。本実施形態では、拡径部72によって、前縁511周辺で、静翼本体51と内側ケーシング31との間に隙間が生じていない状態となっている。そのため、内側ケーシング31の前縁511周辺での作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、前縁511周辺での隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0038】
また、内側翼回転軸62の回転軸線Arは、翼高さ方向D1から見た際に、翼弦方向D2において、後縁512に比べて前縁511に近い位置に配置されている。つまり、翼弦方向D2において、内側翼回転軸62は、後縁512に対して前縁511に近い位置に配置される。そのため、拡径部72によって、内側ケーシング31の前縁511周辺での作動流体Aの流れの乱れを重点的に抑えることができる。これにより、前縁511周辺での隙間での漏れ流れの発生をより高い精度で抑え、圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0039】
(第一実施形態の第一変形例)
次に、本開示に係る可変静翼5の第一実施形態の第一変形例について説明する。なお、以下に説明する第一実施形態の第一変形例においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第一実施形態の第一変形例は、翼回転軸6Aの拡径部72Aの形状が第一実施形態と異なっている。
【0040】
具体的には、拡径部72Aは、第一実施形態のように、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511のみと重なっている形状に限定されるものではない。拡径部72Aは、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511及び後縁512の少なくとも一方と重なっていればよい。したがって、翼高さ方向D1から見た際に、後縁512のみと重なっていてもよく、前縁511及び後縁512の両方と重なっていてもよい。第一実施形態の第一変形例の内側翼回転軸62では、
図4に示すように、拡径部72Aは、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511及び後縁512の両方と重なっていてもよい。このような状態でも、拡径部72Aは、回転軸本体71よりも大きな回転軸線Arを中心とする円形断面を有している。
【0041】
このように、拡径部72Aによって、翼高さ方向D1から見た際に、後縁512と内側翼回転軸62とが重なっている。そのため、後縁512周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間に隙間が生じていない状態となっている。そのため、内側ケーシング31の後縁512周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧力損失を抑えられる。
【0042】
さらに、第一変形例の拡径部72Aによって、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511及び前延の全領域が内側翼回転軸62と重なっている。そのため、前縁511から後縁512までの全領域で、静翼本体51と内側ケーシング31との間に隙間が生じていない状態となっている。そのため、前縁511から後縁512までの全領域で、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生をより効果的に抑え、圧力損失を最大限抑えられる。その結果、可変静翼5での圧力損失による圧縮機1の効率低下を大きく抑制することができる。
【0043】
(第一実施形態の第二変形例)
次に、本開示に係る可変静翼5の第一実施形態の第二変形例について説明する。なお、以下に説明する第一実施形態の第二変形例においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第一実施形態の第二変形例は、翼回転軸6Bの拡径部72Bの形状が第一実施形態と異なっている。
【0044】
具体的には、第一実施形態の第二変形例の内側翼回転軸62では、
図5に示すように、拡径部72Bは、第一実施形態のように、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511のみと重なっている。ただし、拡径部72Bは、翼高さ方向D1から見た際に、隣り合う他の可変静翼5の拡径部72Bと摺接可能な大きさで形成されている。つまり、拡径部72Bは、隣り合う他の可変静翼5の拡径部72Bと干渉しない範囲で、最大限大きく形成されている。拡径部72Bは、翼高さ方向D1から見た際に、翼弦方向D2において、前縁511を超えた位置まで広がっている。
【0045】
このように、拡径部72Bによって、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511だけでなく、非常に大きな範囲で静翼本体51と内側翼回転軸62とが重なっている。そのため、静翼本体51と内側ケーシング31との間に隙間が生じていない領域が非常に大きくなる。そのため、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが広い範囲で生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を大きく抑え、圧力損失を大きく抑えられる。
【0046】
なお、拡径部72、72A、72Bは、翼高さ方向D1から見た際に、必ず前縁511と重なっている構造に限定されるものではない。拡径部72は、翼高さ方向D1から見た際に、前縁511及び後縁512の少なくとも一方と重なる大きさで形成されていればよい。したがって、例えば、拡径部72は、翼高さ方向D1から見た際に、後縁512のみに重なっていてもよい。
【0047】
(第二実施形態)
次に、本開示に係る可変静翼5の第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、翼回転軸6Cの拡径部72C周辺の形状が第一実施形態と異なっている。
【0048】
第二実施形態の拡径部72Cでは、
図6に示すように、第一面723Cが、周方向Dcから見た際に、前端部721から後端部722との間で静翼本体の端部53から離れるように窪んでいる。第一面723Cは、仮想直線VLよりも窪んでいる。仮想直線VLは、内側ケーシング31の外周面311が窪んでいないと仮定した場合での周方向Dcから見た際の内側ケーシング31の外周面311の位置に相当する仮想線である。本実施形態の第一面723Cは、回転軸線Arでの仮想直線VLからの窪み量ΔDが最も大きい三次元曲面として形成されている。第一面723Cは、圧縮機1が定格運転される際の位置(角度)に静翼本体51が位置している状態に対して、例えば、15°~25°程度回転した状態で、仮想直線VLとの側面との間に生じる段差ΔHを低減するように窪んでいる。回転軸線Arでの仮想直線VLからの窪み量ΔDは、段差ΔHよりも大きく形成されている。また、周方向Dcから見た際に、軸線方向Daの下流側Dadでは、内側ケーシング31の外周面311も仮想直線VLよりも窪んでいる。内側ケーシング31の外周面311は、拡径部72Cに対して軸線方向Daの下流側Dadにおいて、周方向Dcから見た際に、圧縮機1が定格運転される際の位置(角度)に静翼本体51が位置している状態での第一面723Cを延長したように窪んでいる。
【0049】
一般的に、圧縮機1が定格運転される際の開度(角度)に静翼本体51が位置するに翼回転軸6が回転された状態では、内側翼回転軸62の頂面となる第一面723は、内側ケーシング31の外周面311と平滑に近い状態となっている。つまり、圧縮機1が定格運転されている間、第一面723は、内側ケーシング31の外周面311に対して凹凸がほとんど無い状態となっている。一方で、圧縮機1の始動時や停止時のように、定格運転以外の状態では、開度(角度)が変更されるため、翼回転軸6が定格運転時とは異なる角度で回転された状態となる。第一面723は、前端部721と後端部722とで翼高さ方向D1の大きさが異なっている。そのため、翼回転軸6の回転に伴って、内側ケーシング31の外周面311に対して前端部721が窪む一方で、後端部722が突出してしまう。特に、本実施形態では、拡径部72の径が大きいため、前端部721と後端部722とで翼高さ方向D1の大きさの差が大きくなっている。つまり、第一面723が内側ケーシング31の外周面311に対して凹凸が大きい状態となってしまう場合が考えられる。
【0050】
ところが、第二実施形態では、拡径部72Cの第一面723Cが窪んでいる。そのため、内側ケーシング31の外周面311に対する第一面723Cの凹凸を低減することができる。これにより、定格運転とは異なる開度で運転する際の可変静翼5での翼面マッハ数を低減できる。その結果、低大気温度や高流量で圧縮機1を運転した場合の効率を大きく向上することができる。
【0051】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
なお、動翼列22や可変静翼機構4の数は、実施形態に限定されるものではない。動翼列22や可変静翼機構4の数は、1つ以上であればよい。したがって、動翼列22や可変静翼機構4の数は、一つのみでもよく、本実施形態の四つ以上あってもよい。
【0053】
また、本実施形態では、内側翼回転軸62及び外側翼回転軸61は、異なる形状とされている。しかしながら、内側翼回転軸62及び外側翼回転軸61は、異なる形状であることに限定されるものではなく、互いに同じ形状であってもよい。ただし、少なくとも内側翼回転軸62が、拡径部72を有することが好ましい。
【0054】
<付記>
各実施形態に記載の可変静翼5及び圧縮機1は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)第1の態様に係る可変静翼5は、作動流体Aの流れ方向に交差する翼高さ方向D1に延びる静翼本体51と、前記翼高さ方向D1における前記静翼本体の端部52、53に接続され、前記作動流体Aの前記流れ方向に対する前記静翼本体51の角度を変更させるように回転可能とされた翼回転軸6Bと、を備え、前記翼回転軸6Bは、前記翼高さ方向D1に延びる回転軸線Arを中心として延びる回転軸本体71と、前記回転軸線Arを中心として延びて前記回転軸本体71と前記静翼本体51とを接続し、前記翼高さ方向D1から見た際の外径が前記回転軸本体71の外径よりも大きい拡径部72とを有し、前記静翼本体51は、前記翼高さ方向D1に延びる前縁511と、前記翼高さ方向D1に延びる後縁512と、前記翼高さ方向D1に延び、前記前縁511と前記後縁512とを繋ぐ正圧面515及び負圧面516と、を有し、前記拡径部72は、前記翼高さ方向D1から見た際に、前記前縁511及び前記後縁512の少なくとも一方と重なる大きさで形成されている。
【0056】
これにより、前縁511及び後縁512の少なくとも一方の周辺では、静翼本体51とケーシング3との間に隙間が生じていない状態となっている。そのため、ケーシング3の前縁511及び後縁512の少なくとも一方の周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧力損失を抑えられる。その結果、可変静翼5での圧力損失による圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0057】
(2)第2の態様に係る可変静翼5は、(1)の可変静翼5であって、前記拡径部72は、前記翼高さ方向D1から見た際に、前記前縁511と重なっている。
【0058】
これにより、ケーシング3の前縁511周辺での作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、前縁511周辺での隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0059】
(3)第3の態様に係る可変静翼5は、(1)又は(2)の可変静翼5であって、前記拡径部72は、前記翼高さ方向D1から見た際に、前記後縁512と重なっている。
【0060】
これにより、ケーシング3の後縁512周辺では、静翼本体51と内側ケーシング31との間では、作動流体Aの流れの乱れが生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を抑え、圧力損失を抑えられる。
【0061】
(4)第4の態様に係る可変静翼5は、(1)から(3)の何れか一つの可変静翼5であって、前記可変静翼5は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向D1と交差する方向に並んで複数配置可能とされ、前記拡径部72は、前記翼高さ方向D1から見た際に、隣り合う他の前記可変静翼5の拡径部72と摺接可能な大きさで形成されている。
【0062】
これにより、静翼本体51とケーシング3との間に隙間が生じていない領域が非常に大きくなる。そのため、静翼本体51とケーシング3との間では、作動流体Aの流れの乱れが広い範囲で生じなくなる。これにより、隙間での漏れ流れの発生を大きく抑え、圧力損失を大きく抑えられる。
【0063】
(5)第5の態様に係る可変静翼5は、(1)から(4)の何れか一つの可変静翼5であって、前記回転軸線Arは、前記翼高さ方向D1から見た際に、前記前縁511と前記後縁512とを結ぶ翼弦の延びる翼弦方向D2において、前記後縁512に対して前記前縁511に近い位置に配置されている。
【0064】
これにより、翼弦方向D2において、翼回転軸6Bは、後縁512に対して前縁511に近い位置に配置される。そのため、拡径部72によって、内側ケーシング31の前縁511周辺での作動流体Aの流れの乱れを重点的に抑えることができる。これにより、前縁511周辺での隙間での漏れ流れの発生をより高い精度で抑え、圧縮機1の効率低下を抑制することができる。
【0065】
(6)第6の態様に係る可変静翼5は、(1)から(5)の何れか一つの可変静翼5であって、前記拡径部72は、前記翼高さ方向D1において、前記静翼本体51を向く第一面723を有し、前記静翼本体の端部52、53は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向D1と交差する方向から見た際に、前記前縁511から前記後縁512に向かって前記回転軸本体71から離れるように傾斜し、前記第一面723は、前記流れ方向及び前記翼高さ方向D1と交差する方向から見た際に、前記前縁511に近い前端部721から前記後縁512に近い後端部722との間で前記静翼本体の端部52、53から離れるように窪んでいる。
【0066】
これにより、ケーシング3の外周面に対する第一面723の凹凸を低減することができる。これにより、定格運転とは異なる開度で運転する際の可変静翼5での翼面マッハ数を低減得きる。その結果、低大気温度や高流量で圧縮機1を運転した場合の効率を大きく向上することができる。
【0067】
(7)第7の態様に係る圧縮機1は、(1)から(6)の何れか一つの可変静翼5と、ロータ本体21、及び前記ロータ本体21の軸線方向Da及び周方向Dcに配列された複数の動翼25を含むロータ2と、前記ロータ2の外側Droに配置された内側ケーシング31と、前記内側ケーシング31の外側Droに配置された外側ケーシング32と、前記翼回転軸6Bと接続され、前記翼回転軸6Bを回転させる回転駆動部8と、を備え、前記可変静翼5は、前記内側ケーシング31及び外側ケーシング32に対して回転可能に配置されている。
【符号の説明】
【0068】
1…圧縮機
2…ロータ
21…ロータ本体
22…動翼列
221…第一動翼列
222…第二動翼列
223…第三動翼列
224…第四動翼列
25…動翼
3…ケーシング
31…内側ケーシング
311…(内側ケーシングの)外周面
32…外側ケーシング
321…(外側ケーシングの)内周面
33…ストラット
S…主流路
35…吸込口
4…可変静翼機構
41…第一可変静翼機構
42…第二可変静翼機構
43…第三可変静翼機構
44…第四可変静翼機構
5…可変静翼
51…静翼本体
511…前縁
512…後縁
515…正圧面
516…負圧面
52、53…静翼本体の端部
6、6A、6B、6C…翼回転軸
61…外側翼回転軸
62…内側翼回転軸
Ar…回転軸線
71…回転軸本体
72、72A、72B、72C…拡径部
721…前端部
722…後端部
723、723C…第一面
73…外側円板部
8…回転駆動部
A…作動流体
O…軸線
Da…軸線方向
Dau…上流側
Dad…下流側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dro…外側
Dri…内側
D1…翼高さ方向
D2…翼弦方向