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  • 特開-缶詰用加温装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166137
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】缶詰用加温装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/24 20060101AFI20231114BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A47J36/24
H05B6/10 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076951
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 圭司
(72)【発明者】
【氏名】松井 康至
(72)【発明者】
【氏名】木下 幸次
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 邦一
【テーマコード(参考)】
3K059
4B055
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB23
3K059AD03
3K059CD72
4B055AA50
4B055BA31
4B055CA71
4B055CB02
4B055DB03
4B055DB14
(57)【要約】
【課題】簡便且つ安全に、缶詰を直接温めることが可能な加温装置を提供することである。
【解決手段】缶詰を載置する支持基板と、該支持基板に発熱手段及び温度制御手段を備えて成る缶詰の加温装置であって、前記温度制御手段により、缶詰の加熱面の温度を50~100℃の範囲に制御することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶詰を載置する支持基板と、該支持基板に発熱手段及び温度制御手段を備えて成る缶詰の加温装置であって、前記温度制御手段により、缶詰の加熱面の温度を50~100℃の範囲に制御することを特徴とする加温装置。
【請求項2】
前記支持基板上の缶詰の加温域が、縦10cm横10cmの範囲内にある請求項1記載の加温装置。
【請求項3】
前記温度制御手段が、非接触型の温度センサと、温度センサで検知した温度に応じて発熱手段による加温を制御する制御装置とから成り、缶詰の加熱面の温度が100℃になった時点で加熱を停止し、停止後30秒経過し、缶詰の加熱面の温度が70℃以上である場合に加熱を終了する請求項1又は2記載の加温装置。
【請求項4】
前記支持基板上に、缶詰の加温面に直接接触するように伝熱体が設置されている請求項1又は2記載の加温装置。
【請求項5】
前記発熱手段が、高周波誘導加熱方式による請求項1又は2記載の加温装置。
【請求項6】
前記伝熱体が、磁性体から成る請求項4記載の加温装置。
【請求項7】
高さが85mm以下の缶詰用である請求項1又は2に記載の加温装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を内容物とする缶詰を加熱するための加熱装置に関し、より詳細には、缶の材質や形状の制限なく、適切な温度範囲に内容物を安全且つ手軽に加温可能な缶詰用加温装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋プラスチック問題等の観点から、リサイクル性に優れた金属製缶を使用している缶詰めが見直されている。加えて感染症の世界的な流行により、所謂巣ごもり需要や密を避けたキャンプを楽しむ人口の増加により、気軽に喫食でき、しかも長期保存も可能な食品缶詰の需要が高まっている。また缶詰によっては温めて食することに適した内容物もあり、缶詰を容易に食するために缶体を直火で加熱する消費者もいる。
【0003】
一般に、缶詰に使用される金属製缶の缶胴及び缶蓋の表面には、金属材料の腐食等を防止するために、エポキシフェノール系塗料等の熱硬化型塗料から成る塗膜や、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂から成る樹脂被覆が形成されていると共に、缶蓋の巻締部にはウレタン樹脂等から成るシーリングコンパウンドが使用されている。そのため、缶詰の供給者からは、上記塗膜や樹脂被覆、或いはシーリングコンパウンドが内容物に溶出することを懸念し、内容物を温める際は、缶詰のまま温める場合は湯煎で、或いは内容物を別容器に移して温めることを呼び掛けている。しかしながら、その準備や後片付けは消費者にとっては非常に煩わしいものであり、手軽に温めて喫食できることが望まれている。
【0004】
簡単且つ手軽に缶詰を温める方法として、一般に普及している卓上の調理用加熱器(例えば下記特許文献1等)や、飲料を入れたカップ等を保温するための小型の保温装置(例えば下記特許文献2等)を使用することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-2676455号公報
【特許文献2】特表昭58-501309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、卓上の調理用加熱器は、調理用の鍋を載置して加熱することを目的とするものであることから、加熱面が大きく、缶詰を加熱するには過剰な性能であると共に、持ち運びも不便である。また誘導加熱方式の調理器(IH調理器)では、使用し得る容器の材質が限定的であると共に、加熱面が平坦であることが必要であることから容器の形状も限定的であり、缶の材質や形状によっては、載置しても正常に作動しないおそれがある。
また小型の保温装置は、陶器製のカップ等の保温に特化されたものであり、缶詰の加熱のためにそのまま使用することは困難である。
従って本発明の目的は、簡便且つ安全に、缶詰を直接温めることが可能な加温装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、缶詰を載置する支持基板と、該支持基板に発熱手段及び温度制御手段を備えて成る缶詰の加温装置であって、前記温度制御手段により、缶詰の加熱面の温度を50~100℃の範囲に制御することを特徴とする加温装置が提供される。
【0008】
本発明の加温装置においては、
(1)前記支持基板上の缶詰の加温域が、縦10cm横10cmの範囲内にあること、
(2)前記温度制御手段が、非接触型の温度センサと、温度センサで検知した温度に応じて発熱手段による加温を制御する制御装置とから成り、缶詰の加熱面の温度が100℃になった時点で加熱を停止し、停止後30秒経過し、缶詰の加熱面の温度が70℃以上である場合に加熱を終了すること、
(3)前記支持基板上に、缶詰の加温面に直接接触するように伝熱体が設置されていること、
(4)前記発熱手段が、高周波誘導加熱方式によること、
(5)前記伝熱体が、磁性体からなること、
(6)高さが85mm以下の缶詰用であること、
が好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の缶詰用加温装置においては、一般的な市販の缶詰であれば、その材質や形状、容量にかかわらず、缶詰を載置し所定の操作を行うだけで缶詰を直接温めることが可能である。
このことは後述する実施例の結果からも明らかであり、本発明の加温装置を用いて缶詰を温めると、2分程度で50~100℃の目的温度に到達することから、缶詰の内容物を別容器に移し替えて、電子レンジで加温するのに要する時間と手間とほぼ同等の時間内で加温することができる。
また缶内の食品の初期温度や熱容量にかかわらず、湯煎に相当する適切な温度に温度制御が可能であり、製缶に使用されている塗料や樹脂成分の溶出のおそれもない。
さらに食品を内容物とする缶詰用に特化されているため、小型で持ち運びも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の加温装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の缶詰用加温装置は、前述した通り、市販の食品缶詰を加温するための装置であり、支持基板に備えられた発熱手段及び温度制御手段によって、支持基板に載置された缶詰の加温面の温度が50~100℃の範囲となるように温度制御されている。これにより、湯煎によって缶詰を温めた場合と同等の加温を手間なく行うことが可能となる。また100℃を超える過剰な加熱が抑止されていることから、安全であると共に缶体からの溶出分のおそれもない。
図1に示す本発明の加温装置の一例は、上面に位置する支持基板2を有する筐体1に、支持基板2上に加温域を形成する伝熱体3が設置されている。支持基板上に伝熱体が形成されていることによって、缶詰の加温面を直接伝熱体で加温することが可能となり、効率よく缶詰を加温することができる。支持基板2の筐体内側の面には伝熱体3を発熱させるための発熱手段4が設置されている。図に示す発熱手段4は、発振器4aと高周波誘導加熱コイル4bとから成っている。この発熱手段4は、缶詰の加温面の温度を検知する温度センサ5a及び温度センサ5aで検知した温度に応じて発熱手段4による加温を制御する制御装置5bから成る温度制御手段5を備えている。
【0012】
本発明の加温装置において、発熱手段としては、アルミニウム製缶も直接加熱可能である点で電熱ヒータであってもよいが、好適には高周波誘導加熱によることが温度制御の観点から望ましい。
高周波発振器は、これに限定されないが、100~1200W相当の出力を有することが好ましい。
また発熱手段による加熱領域は、一般の食品缶詰用途に限定されていることから、支持基板上に縦10cm横10cmの範囲内に形成されていることが好適である。すなわち、市販の食品缶詰は一般に底面の大きさが、丸型,楕円型,角型問わず縦10cm横10cmの範囲内に収まるものが殆どであり、市販の食品缶詰であれば載置して十分加温可能であると共に、加温に使用されない余剰部分が少ないため熱効率に優れ、しかも装置をコンパクトにすることも可能になり、持ち運びも容易となる。
【0013】
また図1に示すように支持基板上に伝熱体を設ける場合には、伝熱体が食品缶詰の底面に直接接触できるように直径5cmよりも大きく底面の範囲より小さいことが好適である。伝熱体は平板状であることが形状の異なる種々の缶詰めに対応できることから好適であるが、例えば、3ピース缶のように、缶底部においても巻締部を有し、加熱面に凹部が形成されている場合には、凹部形状に合致する凸部が形成されていてもよい。
伝熱体は、伝熱性に優れた金属から形成されていることが好適であり、アルミニウムや銅などを好適に使用できる。
また発熱手段が高周波誘導加熱による場合には、高周波誘導により加熱されず且つ耐熱性を有する物質(例えばセラミック等)に厚さ1mm程度の金属円板を重ねたものが望ましい。缶詰の底面に接触させた前記金属円板が高周波誘導加熱により発熱し、その熱を缶詰の加熱面に伝えることにより、高周波誘導加熱による加熱が困難なアルミニウム製缶などにも対応することが可能となる。このような金属としては、これに限定されないが、鉄、ニッケル、コバルトなどから選ばれた1種以上を50%以上含む金属や合金を例示できる。
伝熱体の厚みは、その材質等によって一概に規定できないが、5~10mmの範囲にあることが好適である。
【0014】
本発明の加温装置は、温度制御手段を備えていることが重要であり、これにより、缶詰の加温面を50~100℃の範囲に加温することが可能となる。
温度制御手段は、温度センサと、温度センサで検知した温度に応じて発熱手段による加温を制御する制御装置とを備えている。温度センサは、従来公知のものを使用することができ、これに限定されないが、熱電対やサーミスタ等の接触型の温度センサや、赤外線センサ等を用いた非接触型の温度センサを使用できるが、種々の形態の缶詰に対応可能である点で非接触型の温度センサを使用することが好適である。
本発明の加温装置においては、前述した通り、缶詰を湯煎した場合と同様の50~100℃の温度範囲に加熱することが好適であるが、缶詰の加熱面の温度が100℃になった時点で加熱を一旦停止するように制御されていることが望ましい。これにより缶詰の過加熱を防止できる。また、より好適には、100℃で加熱を停止した後、30秒経過した時点で缶詰の加熱面の温度が70℃以上である場合には、加熱を完全に終了するように制御されていることが望ましい。これにより缶詰の過加熱を予防し、安全性を確保することができる。
【0015】
本発明の加温装置で加温される缶詰は、食品を内容物とするものであり、飲料缶等に比べて缶高さが低いことから、缶詰の缶底部からの加温でも、缶内の食品を短時間で上方まで充分に加温すること可能であり、特に缶高さが85mm以下にある缶詰を好適に加熱できる。また缶体がスチール製であり、且つ缶底が平坦な2ピース缶の場合には、高周波誘導加熱により直接缶体を加熱できることから、効率的である。スチール製の缶体の場合には、缶底部の厚みが0.1~0.5mmの範囲にあることが好ましい。これにより高周波誘導加熱により効率よく加温できる。
また前述した通り、アルミニウム製缶や底部が平坦でない3ピース缶であっても、支持基板上に伝熱体を設置することにより効率よく加温することができる。すなわち、アルミニウム製缶の缶詰めであっても、伝熱体を設置することにより、高周波誘導加熱により加熱することが可能になり、3ピース缶の缶詰めであっても、缶底部の形状に合致した形状の伝熱体を設置することにより、効率よく缶詰を加温することができる。
【実施例0016】
(実施例1~4)
図1に概略図を示した加温装置において、高周波誘導加熱による発熱手段(高周波発振器の発振周波数は20~90kHz、出力は100~800W、加熱コイルと伝熱体の距離は10mm)を使用した。出力を350Wに設定し、缶詰は蓋を開けた状態で、缶底部の温度が常温から表1に示す温度になるまで加熱した。目的温度に達するまでの所要時間及びその時の内容物の温度を測定すると共に、缶底部の状態を観察した。結果を表1に示す。
尚、伝熱体は、厚み5mmの陶磁器に厚み1mmのステンレス(SUS304)を重ねた直径55mmの円板Aを使用し、缶底が3ピース缶の場合は、さらに巻締部で区画される缶底部分の大きさのスチール製の円板Bを重ねて使用した。
加熱に用いた缶詰は、缶A(口径60mm、缶高さ30mm、缶底部厚み0.2mmのスチール製3ピース缶(缶底部に巻締部有り))、缶B(口径75mm、缶高さ33mm、缶底部厚み0.2mmのスチール製2ピース缶(缶底に底上げ有り))、缶C(口径80mm、缶高さ40mm、缶底部厚み0.3mmのアルミニウム製2ピース缶(缶底が平坦))、缶D(口径75mm、高さ32mm、缶底部厚み0.2mmのアルミニウム製2ピース缶(缶底に底上げあり))の4種の缶体に、内容物として、缶Aにはツナ、缶B及びDには焼き鳥、缶Cには水を充填したものを用いた。
【0017】
【表1】
【0018】
(比較例1)
実施例3で用いた缶詰及び加熱装置を用い、缶底の温度が110℃になるまで加熱した。缶の状態を観察したが、缶底部の塗料の一部に微かな変色が認められた。
【0019】
(比較例2)
実施例4で用いたアルミニウム製缶詰について、伝熱体を用いない以外は実施例4と同様にして加温したが、缶詰は加温されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の加温装置は、食品を内容物とする缶詰を50~100℃に効率よく加温することができるため、温めて食することが望まれている食品、例えば、焼き鳥や、イワシの蒲焼等の総菜を内容物とする缶高さ85mm以下の缶詰の加温に好適に利用できる。また小型で持ち運びも容易であることから、個食やキャンプ等にも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0021】
1 筐体、2 支持基板、3 伝熱体、4 発熱手段、5 温度制御手段。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
【特許文献1】特開平6-267645号公報
【特許文献2】特表昭58-501309号公報