(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166140
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
B60K 17/02 20060101AFI20231114BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231114BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20231114BHJP
B60L 7/10 20060101ALI20231114BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
B60K17/02 F
B60K17/04 N
B60K17/12
B60L7/10
B60L15/20 K
B60L15/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076959
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佳宏
【テーマコード(参考)】
3D039
3D042
5H125
【Fターム(参考)】
3D039AA02
3D039AA03
3D039AB01
3D039AB26
3D039AC06
3D039AC36
3D039AC37
3D042AA01
3D042AB01
3D042BE01
5H125AA01
5H125BA04
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA08
5H125CB02
5H125CD04
5H125DD14
5H125FF01
(57)【要約】
【課題】後進時における駆動力を向上させる。
【解決手段】駆動ユニット100は、第1駆動部1と、第2駆動部2とを備える。第1駆動部1は、第1電気モータ10、及び第1トルクコンバータ11を有する。第1電気モータ1は、第1回転方向及び第2回転方向に回転するように構成される。第1トルクコンバータ11は、第1電気モータ10の第1回転方向のトルクを増幅するように構成される。第2駆動部2は、第2電気モータ20、及び第2トルクコンバータ21を有する。第2電気モータ20は、第1回転方向及び第2回転方向に回転するように構成される。第2トルクコンバータ21は、第2電気モータ20の第2回転方向のトルクを増幅するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を前進及び後進させるための駆動ユニットであって、
前記車両を前進させる第1回転方向に回転するとともに前記車両を後進させる第2回転方向に回転するように構成される第1電気モータ、及び前記第1電気モータの前記第1回転方向のトルクを増幅するように構成される第1トルクコンバータ、を有する第1駆動部と、
前記第1回転方向及び前記第2回転方向に回転するように構成される第2電気モータ、及び前記第2電気モータの前記第2回転方向のトルクを増幅するように構成される第2トルクコンバータ、を有する第2駆動部と、
を備える、
駆動ユニット。
【請求項2】
前記第1駆動部は、前記第1電気モータの前記第2回転方向のトルクを伝達するとともに前記第1電気モータの前記第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される第1クラッチを有する、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
前記第2駆動部は、前記第2電気モータの前記第1回転方向のトルクを伝達するとともに前記第2電気モータの前記第2回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される第2クラッチを有する、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記第1駆動部と前記第2駆動部とは、各電気モータと各トルクコンバータとの位置関係が異なる、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記第1駆動部と前記第2駆動部とは、各電気モータと各トルクコンバータとの位置関係が同じである、
請求項1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第1駆動部及び前記第2駆動部からのトルクを出力ユニットに伝達するように構成される動力伝達機構をさらに備え、
前記動力伝達機構は、前記第1電気モータ又は前記第2電気モータの回転を反転させて前記出力ユニットへ出力する反転ギアを有する、
請求項5に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを制御するように構成された制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1電気モータを前記第1回転方向に回転させるとともに、前記第2電気モータを前記第1回転方向に回転させる第1前進モードを実行するように構成される、
請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項8】
前記制御部は、前記第1電気モータを前記第1回転方向に回転させるとともに、前記第2電気モータを停止する第2前進モードを実行するように構成される、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項9】
前記制御部は、前記第1電気モータを空転させるとともに、前記第2電気モータを前記第1回転方向に回転させる第3前進モードを実行するように構成される、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項10】
前記制御部は、前進且つ減速時において、前記第1電気モータを回生させるとともに、前記第2電気モータを停止する第1制動モードを実行する、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項11】
前記制御部は、前進且つ減速時において、前記第1電気モータを回生させるとともに、前記第2電気モータを前記第2回転方向に回転させる第2制動モードを実行する、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項12】
前記制御部は、前記第1電気モータを前記第2回転方向に回転させるとともに、前記第2電気モータを前記第2回転方向に回転させる第1後進モードを実行する、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【請求項13】
前記制御部は、前記第1電気モータを停止するとともに、前記第2電気モータを前記第2回転方向に回転させる第2後進モードを実行する、
請求項7に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、電気モータを駆動源として走行する。特許文献1に記載の駆動ユニットは、電気モータを正回転させることによって前進し、電気モータを逆回転させることによって後進する。また、この駆動ユニットは、電気モータからのトルクを増幅させるために、トルクコンバータを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上術したような電気自動車では、前進時における駆動力を確保することができる。しかしながら、商用車などでは、後進時においても駆動力が要求される。
【0005】
そこで、本発明の課題は、後進時における駆動力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る駆動ユニットは、車両を前進及び後進させるように構成されている。この第1態様に係る駆動ユニットは、第1駆動部と、第2駆動部とを備える。第1駆動部は、第1電気モータ、及び第1トルクコンバータを有する。第1電気モータは、第1回転方向及び第2回転方向に回転するように構成される。なお、第1回転方向は、車両を前進させる回転方向であり、第2回転方向は車両を後進させる回転方向を意味する。第1トルクコンバータは、第1電気モータの第1回転方向のトルクを増幅するように構成される。第2駆動部は、第2電気モータ、及び第2トルクコンバータを有する。第2電気モータは、第1回転方向及び第2回転方向に回転するように構成される。第2トルクコンバータは、第2電気モータの第2回転方向のトルクを増幅するように構成される。
【0007】
この構成によれば、第1電気モータの第1回転方向のトルクは、第1トルクコンバータによってトルク増幅される。このため、前進時において駆動力を向上させることができる。また、第2電気モータの第2回転方向のトルクは、第2トルクコンバータによってトルク増幅される。これにより、後進時においても駆動力を向上させることが可能である。
【0008】
第2態様に係る駆動ユニットは、第1態様に係る駆動ユニットにおいて、第1駆動部が第1クラッチを有する。第1クラッチは、第1電気モータの第2回転方向のトルクを伝達するとともに、第1電気モータの第1回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される。
【0009】
第3態様に係る駆動ユニットは、第1又は第2態様に係る駆動ユニットにおいて、第2駆動部が第2クラッチを有する。第2クラッチは、第2電気モータの第1回転方向のトルクを伝達し、第2電気モータの第2回転方向のトルクの伝達を遮断するように構成される。
【0010】
第4態様に係る駆動ユニットは、第1から第3態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、第1駆動部と第2駆動部とは、各電気モータと各トルクコンバータとの位置関係が異なる。
【0011】
第5態様に係る駆動ユニットは、第1から第3態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、第1駆動部と第2駆動部とは、各電気モータと各トルクコンバータとの位置関係が同じである。
【0012】
第6態様に係る駆動ユニットは、第5態様に係る駆動ユニットにおいて、動力伝達機構をさらに備える。動力伝達機構は第1駆動部及び第2駆動部からのトルクを出力ユニットに伝達するように構成される。動力伝達機構は、反転ギアを有する。反転ギアは、第1電気モータ又は第2電気モータの回転を反転させて出力ユニットへ出力する。
【0013】
第7態様に係る駆動ユニットは、第1から第6態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、制御部をさらに備える。制御部は、第1電気モータ及び第2電気モータを制御するように構成される。制御部は、第1前進モードを実行する。第1前進モードは、第1電気モータを第1回転方向に回転させるとともに、第2電気モータを第1回転方向に回転させる。
【0014】
第8態様に係る駆動ユニットは、第7態様に係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第2前進モードを実行する。第2前進モードは、第1電気モータを第1回転方向に回転させるとともに、第2電気モータを停止する。
【0015】
第9態様に係る駆動ユニットは、第7又は第8態様に係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第3前進モードを実行する。第3前進モードは、第1電気モータを空転させるとともに、第2電気モータを第1回転方向に回転させる。
【0016】
第10態様に係る駆動ユニットは、第7から第9態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第1制動モードを実行する。第1制動モードは、前進且つ減速時において、第1電気モータを回生させるとともに、第2電気モータを停止する。
【0017】
第11態様に係る駆動ユニットは、第7から第10態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第2制動モードを実行する。第2制動モードは、前進且つ減速時において、第1電気モータを回生させるとともに、第2電気モータを第2回転方向に回転させる。
【0018】
第12態様に募る駆動ユニットは、第7から第11態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第1後進モードを実行する。第1後進モードは、後進時において、
第1電気モータを第2回転方向に回転させるとともに、第2電気モータを第2回転方向に回転させる。
【0019】
第13態様に募る駆動ユニットは、第7から第12態様のいずれかに係る駆動ユニットにおいて、制御部は、第2後進モードを実行する。第2後進モードは、第1電気モータを停止するとともに、第2電気モータを第2回転方向に回転させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、後進時においても駆動力を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】駆動ユニットのトルク伝達経路を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、駆動ユニットの実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は駆動ユニットのトルク伝達経路を示すブロック図、
図2は駆動ユニットの概略図である。なお、以下の説明において、第1回転方向とは、車両が前進するときの各部材の回転方向であり、第2回転方向とは、車両が後進するときの各部材の回転方向である。また、車両の前後方向とは、運転者が座席に座った状態を基準とした前後である。具体的には、
図2の左右方向が前後方向である。車両の前方とは、運転者が座席に座った状態を基準とした前である。具体的には、
図2の左が前方である。
【0023】
[駆動ユニット]
駆動ユニット100は、車両に搭載される。駆動ユニット100は、車両を前進及び後進させるように構成されている。
図1及び
図2に示すように、車両に搭載された駆動ユニット100は、第1駆動部1、第2駆動部2、動力伝達機構3、及び制御部4を有している。駆動ユニットは、出力ユニット5を駆動するように構成されている。なお、出力ユニット5は、デファレンシャルギヤ51、一対のドライブシャフト52、及び駆動輪53を有している。出力ユニット5は、駆動輪53のみを有していてもよい。
【0024】
[第1駆動部]
第1駆動部1は、出力ユニット5を駆動するように構成されている。第1駆動部1は、第1電気モータ10、第1トルクコンバータ11、第1クラッチ12、及び第1伝達シャフト13を有している。第1駆動部1は、車両の前方から第1電気モータ10、第1トルクコンバータ11の順に配置される。
【0025】
第1電気モータ10は、第1回転方向に回転するように構成される。また、第1電気モータ10は、第2回転方向にも回転するように構成される。第1電気モータ10が第1回転方向に回転することによって車両は前進し、第1電気モータ10が第2回転方向に回転することによって車両は後進する。第1電気モータ10の第1回転方向のトルクは、第1トルクコンバータ11を介して第1伝達シャフト13に伝達され、第1電気モータ10の第2回転方向のトルクは第1クラッチ12を介して第1伝達シャフト13に伝達される。
【0026】
第1電気モータ10は、第1モータケース101、第1モータステータ102、及び第1ロータ103を有している。第1モータケース101は、車体フレームなどに固定されており、回転不能である。
【0027】
第1モータステータ102は、第1モータケース101の内周面に固定されている。第1モータステータ102は回転不能である。第1ロータ103は、回転軸O周りに回転する。第1ロータ103は、径方向において、第1モータステータ102の内側に配置される。すなわち、第1電気モータ10は、いわゆるインナーロータ型である。
【0028】
第1トルクコンバータ11は、第1電気モータ10のトルクが入力される。第1トルクコンバータ11は、第1電気モータ10の第1回転方向のトルクを増幅するように構成されている。すなわち、第1電気モータ10が第1回転方向に回転したとき、第1トルクコンバータ11は、その第1回転方向のトルクを増幅して第1伝達シャフト13へと伝達する。なお、第1トルクコンバータ11は、第1電気モータ10の第2回転方向のトルクを増幅しない。第1トルクコンバータ11は、増幅したトルクを第1伝達シャフト13へと出力する。
【0029】
第1トルクコンバータ11は、第1カバー110、第1インペラ111、第1タービン112、及び第1ステータ113、を有している。また、第1トルクコンバータ11は、第1電気モータ10からのトルクを第1タービン112に直接伝達するロックアップクラッチ115を有している。そして、第1タービン112から出力されたトルクは第1伝達シャフト13に伝達される。
【0030】
第1クラッチ12は、第1トルクコンバータ11内に配置されている。第1クラッチ12は、第1電気モータ10の第2回転方向のトルクを第1伝達シャフト13へ伝達する。一方で、第1クラッチ12は、第1電気モータ10における第1回転方向のトルクの第1伝達シャフト13への伝達を遮断する。すなわち、第1電気モータ10が第2回転方向に回転したとき、第1クラッチ12がその第2回転方向のトルクを第1伝達シャフト13へと伝達する。そして、第1電気モータ10が第1回転方向に回転したとき、第1トルクコンバータ11がその第1回転方向のトルクを第1伝達シャフト13へと伝達する。なお、第1クラッチ12は、例えばワンウェイクラッチによって構成される。
【0031】
[第2駆動部]
第2駆動部2は、出力ユニット5を駆動するように構成されている。第2駆動部2は、第1駆動部1と車両の前後方向に沿って配列される。本実施形態では、第1駆動部1の回転軸と、第2駆動部2の回転軸とは同軸上に配置されている。第2駆動部2は、第2電気モータ20、第2トルクコンバータ21、第2クラッチ22、及び第2伝達シャフト23を有している。第2駆動部2は、車両の前方から第2トルクコンバータ21、第2電気モータ20の順に配置される。つまり、第1駆動部1と第2駆動部2とで、電気モータ10,20とトルクコンバータ11,21との位置関係が異なる。
【0032】
第2電気モータ20は、第1回転方向及び第2回転方向に回転するように構成される。第2電気モータ20が第1回転方向に回転することによって車両は前進し、第2電気モータ20が第2回転方向に回転することによって車両は後進する。なお、車両の前方(
図2の左側)から見て、第1電気モータ10の第1回転方向と、第2電気モータ20の第1回転方向とは、同じ方向となる。例えば、
図2の左側から見て、第1電気モータ10が時計周りに回転すると車両は前進するように構成した場合、第2電気モータ20も
図2の左側から見て時計回りに回転すると車両は前進する。
【0033】
第2電気モータ20の第2回転方向のトルクは、第2トルクコンバータ21を介して第2伝達シャフト23に伝達され、第2電気モータ20の第1回転方向のトルクは第2クラッチ22を介して第2伝達シャフト23に伝達される。
【0034】
第2電気モータ20は、第2モータケース201、第2モータステータ202、及び第2ロータ203を有している。第2電気モータ20の構造は、第1電気モータ10と実質的に同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0035】
第2トルクコンバータ21は、第2電気モータ20のトルクが入力される。第2トルクコンバータ21は、第2電気モータ20の第2回転方向のトルクを増幅するように構成されている。すなわち、第2電気モータ20が第2回転方向に回転したとき、第2トルクコンバータ21は、その第2回転方向のトルクを増幅して第2伝達シャフト23へと伝達する。なお、第2トルクコンバータ21は、第2電気モータ20の第1回転方向のトルクを増幅しない。
【0036】
第2トルクコンバータ21は、第2インペラ211、第2タービン212、第2ステータ213、第2クラッチ22を有している。なお、第2トルクコンバータ21は、第1トルクコンバータ11とは異なり、ロックアップクラッチを有していないが、ロックアップクラッチを有していてもよい。第2タービン212からの出力は第2伝達シャフト23に伝達される。
【0037】
第2クラッチ22は、第2トルクコンバータ21内に配置されている。第2クラッチ22は、第2電気モータ20の第1回転方向のトルクを第2伝達シャフト23へ伝達する。一方で、第2クラッチ22は、第2電気モータ20における第2回転方向のトルクの第2伝達シャフト23への伝達を遮断する。すなわち、第2電気モータ20が第1回転方向に回転したとき、第2クラッチ22がその第1回転方向のトルクを出力ユニット5へと伝達する。そして、第2電気モータ20が第2回転方向に回転したとき、第2トルクコンバータ21がその第2回転方向のトルクを第2伝達シャフト23へと伝達する。なお、第2クラッチ22は、例えばワンウェイクラッチによって構成される。
【0038】
[動力伝達機構]
動力伝達機構3は、第1駆動部1及び第2駆動部2からのトルクを出力ユニット5に伝達するように構成されている。また、動力伝達機構3は、第1駆動部1からのトルクと、第2駆動部2からのトルクと、を合成して出力ユニット5へと伝達するように構成されている。動力伝達機構3は、第1ギヤ列31と、第2ギヤ列32と、出力シャフト35とを有している。
【0039】
第1ギヤ列31は、第1駆動部1からのトルクを伝達する。第1ギヤ列31は、第1入力ギヤ31a、及び第1出力ギヤ31bを有している。第1入力ギヤ31aは、第1出力ギヤ31bと噛み合う。第1入力ギヤ31aは、第1伝達シャフト13に取り付けられる。第1出力ギヤ31bは、出力シャフト35に取り付けられる。
【0040】
第2ギヤ列32は、第2駆動部2からのトルクを伝達する。第2ギヤ列32は、第2入力ギヤ32a、及び第2出力ギヤ32bを有している。第2入力ギヤ32aは、第2出力ギヤ32bと噛み合う。第2入力ギヤ32aは、第2伝達シャフト23に取り付けられる。第2出力ギヤ32bは、出力シャフト35に取り付けられる。
【0041】
第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比と同じである。第1ギヤ列31及び第2ギヤ列32のギヤ比は、ともに1よりも大きい。すなわち、動力伝達機構3は、減速機として機能している。なお、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比と異なっていてもよい。この場合、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比よりも大きいことが好ましい。なお、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比よりも小さくてもよい。
【0042】
[制御部]
制御部4は、第1電気モータ10、第2電気モータ20を制御するように構成される。制御部4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備えるコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)によって構成されている。ROMには、種々の演算をするためのプログラムが記憶されている。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを実行する。
【0043】
まずは、前進時における制御部4の動作について説明する。制御部4は、前進時において、第1前進モード、第2前進モード、第3前進モード、第1制動モード、及び第2制動モードを実行する。
【0044】
まず、第1前進モードについて説明する。制御部4は、第1前進モードにおいて、第1駆動部1及び第2駆動部2の両方を駆動させて車両を前進させる。詳細には、制御部4は、第1電気モータ10を第1回転方向に回転させるとともに、第2電気モータ20を第1回転方向に回転させる。
【0045】
これにより、第1電気モータ10のトルクは、第1トルクコンバータ11によって増幅されて、出力ユニット5へと伝達される。また、第2電気モータ20のトルクは、第2クラッチ22を介して、出力ユニット5へと伝達される。なお、第2電気モータ20のトルクは、第2トルクコンバータ21によって増幅されない。すなわち、第2電気モータ20は、出力ユニット5へ直結される。
【0046】
以上のように、第1前進モードは、制御部4が第1電気モータ10と第2電気モータ20との両方のモータを使用するため、車両への荷物の積載量が多い時の発進時など、高負荷での走行に適している。
【0047】
次に、第2前進モードについて説明する。制御部4は、第2前進モードにおいて、第1駆動部1のみを駆動させ、第2駆動部2は駆動させない。詳細には、制御部4は、第1電気モータ10を第1回転方向に回転させるとともに、第2電気モータ20を停止する。
【0048】
これにより、第1電気モータ10のトルクは、第1トルクコンバータ11により増幅されて、出力ユニット5へと伝達される。
【0049】
このような第2前進モードは、制御部4が第1電気モータ10のみを使用するため、車両への荷物の積載量が少ない時の発進時など、第1前進モードよりも負荷の少ない、中負荷での走行に適している。
【0050】
続いて、第3前進モードについて説明する。制御部4は、第3前進モードにおいて、第2駆動部2のみを駆動させ、第1駆動部1を駆動させない。詳細には、制御部4は、第2電気モータ20を第1回転方向に回転させるとともに、第1電気モータ10を空転させる。
【0051】
これにより、第2電気モータ20のトルクは、第2クラッチ22を介して、出力ユニット5へと伝達される。第2電気モータ20のトルクは、第2トルクコンバータ21により増幅されない。すなわち、第2電気モータ20は、出力ユニット5へ直結される。
【0052】
以上のように、第3前進モードは、制御部4が第2電気モータ20のみを使用し且つ第2電気モータ20のトルクは増幅されないため、定常走行時など、第2前進モードよりも負荷の少ない、低負荷での走行に適している。
【0053】
次に、前進時における制動モードについて説明する。まず、第1制動モードについて説明する。制御部4は、前進且つ減速時において、第1制動モード及び第2制動モードを実行するように構成されている。第1制動モードでは、制御部4は、第1電気モータ10を回生させるとともに、第2電気モータ20を停止する。
【0054】
詳細には、制御部4は、第1電気モータ10を出力ユニット5からのトルクによって回転可能な状態とする。これにより、出力ユニット5からの第1回転方向のトルクが第1クラッチ12を介して第1電気モータ10へと伝達されると、第1電気モータ10が回転して回生ブレーキが作動する。
【0055】
なお、第2駆動部2では、第2クラッチ22は、出力ユニット5からの第1回転方向のトルクを伝達しない。また、第2電気モータ20を停止しているため、第2トルクコンバータ21では、出力ユニット5からの第1回転方向のトルクによって、第2タービン212のみが回転し、第2インペラ211は回転しない。
【0056】
次に第2制動モードについて説明する。第2制動モードにおいて、制御部4は、第1電気モータ10を回生させるとともに、第2電気モータ20を第2回転方向に回転させる。詳細には、制御部4は、出力ユニット5からのトルクによって第1電気モータ10が回転可能な状態とする。これにより、出力ユニット5からの第1回転方向のトルクが第1クラッチ12を介して、第1電気モータ10へと伝達されると、第1電気モータ10が回転して回生ブレーキが作動する。
【0057】
また、制御部4が第2電気モータ20を第2回転方向に回転させることにより、第2トルクコンバータ21を流体式リターダとして用いることができる。
【0058】
以上の第2制動モードは、車両への荷物の積載量が多い時の降坂時など、第1制動モードよりも強い制動力が必要な際に適している。
【0059】
次に、後進時における制御部4の動作について説明する。制御部4は、後進時において、第1後進モード、第2後進モード、第3後進モード、及び第3制動モードを実行する。
【0060】
まず、第1後進モードについて説明する。制御部4は、第1後進モードにおいて、第1駆動部1及び第2駆動部2の両方を駆動させて車両を後進させる。詳細には、制御部4は、第1電気モータ10を第2回転方向に回転させるとともに、第2電気モータ20を第2回転方向に回転させる。
【0061】
これにより、第1電気モータ10のトルクは、第1クラッチ12を介して、出力ユニット5へと伝達される。なお、第1電気モータ10のトルクは、第1トルクコンバータ11によりトルクが増幅されない。すなわち、第1電気モータ10は、出力ユニット5へ直結される。また、第2電気モータ20のトルクは、第2トルクコンバータ21によりトルクが増幅されて、出力ユニット5へと伝達される。
【0062】
次に、第2後進モードについて説明する。制御部4は、第2後進モードにおいて、第2駆動部2のみを駆動させ、第1駆動部1は駆動させない。詳細には、制御部4は、第2電気モータを第2回転方向に回転させるとともに、第1電気モータ10を停止する。
【0063】
これによって、第2電気モータ20のトルクは、第2トルクコンバータ21によって増幅されて、出力ユニット5へと伝達される。なお、出力ユニット5からの第2回転方向のトルクは、第1クラッチ12によって遮断され、第1電気モータ10へと伝達されない。
【0064】
続いて、第3後進モードについて説明する。制御部4は、第3後進モードにおいて、第1駆動部1のみを駆動させ、第2駆動部2を駆動させない。詳細には、制御部4は、第1電気モータ10を第2回転方向に回転させるとともに、第2電気モータ20を空転させる。
【0065】
これにより、第1電気モータ10のトルクは、第1クラッチ12を介して、出力ユニット5へと伝達される。なお、第1電気モータ10のトルクは、第1トルクコンバータ11によって増幅されない。すなわち、第1電気モータ10は、出力ユニット5へ直結される。また、出力ユニット5からの第2回転方向のトルクは、第2クラッチ22を介して、第2電気モータ20へと伝達される。
【0066】
次に、後進時における制動モードである第3制動モードについて説明する。制御部4は、後進且つ減速時において、第3制動モードを実行するように構成されている。制御部4は、第3制動モードにおいて、第1電気モータ10を停止するとともに第2電気モータ20を回生させる。
【0067】
詳細には、制御部4は、第2電気モータ20を出力ユニット5からのトルクによって回転可能な状態とする。これにより、出力ユニット5からのトルクは、第2クラッチ22を介して、第2電気モータ20へと伝達されると、第2電気モータ20が回転して回生ブレーキが作動する。
【0068】
なお、第1駆動部1では、第1クラッチ12は、出力ユニット5からの第2回転方向のトルクを伝達しない。また、第1電気モータ10を停止しているため、第1トルクコンバータ11では、出力ユニット5からの第2回転方向のトルクによって、第1タービン112のみが回転し、第1インペラ111は回転しない。
【0069】
[動作]
以上のように構成された駆動ユニット100では、車両の発進時に、制御部4が、第1前進モード、又は第2前進モードを実行する。なお、運転手が操作することによって第1前進モード又は第2前進モードが選択される。
【0070】
制御部4は、例えば、車速に基づき第3前進モードを実行する。例えば、車速が第1閾値になると、制御部4は、第1前進モードから第3前進モードへ切り替わる。また、車速が第2閾値になると、制御部4は、第2前進モードから第3前進モードへ切り替わる。なお、第2閾値は、第1閾値よりも小さい。
【0071】
車両の減速時には、制御部4は、第1制動モード又は第2制動モードを実行する。制御部4は、例えば、アクセル開度に基づき第1制動モードを実行する。また、制御部4は、例えば、第1制動モードでの減速後、運転手が操作することによって、第1制動モードから第2制動モードへ切り替わる。
【0072】
同様に、車両の後進時には、運転手の操作、又は走行条件などに基づいて、制御部4は、第1後進モード、第2後進モード、又は第3制動モードを選択して実行する。
【0073】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、以下の各変形例は、基本的には同時に適用することができる。
【0074】
(a)上記実施形態では、第1駆動部1と第2駆動部2とで、電気モータ10,20とトルクコンバータ11,21との位置関係が異なるように配置されたが、第1駆動部1と第2駆動部2の各部材の配列はこれに限定されない。第1駆動部1と第2駆動部2とで、電気モータ10,20とトルクコンバータ11,21との位置関係が同じになるように配置しても良い。例えば、
図3に示すように、第1駆動部1は、車両の前方(
図3の左側)から第1電気モータ10、第1トルクコンバータ11の順に配置される。第2駆動部2は、車両の前方から第2電気モータ20、第2トルクコンバータ21の順に配置される。
【0075】
なお、この変形例では、第1駆動部1と第2駆動部2とは、車両の幅方向(
図3の上下方向)に沿って配列されている。第1駆動部1の回転軸O1は、第2駆動部2の回転軸O2とは別軸上に配置されている。好ましくは、第1駆動部1の回転軸O1は、第2駆動部2の回転軸O2と実質的に平行に延びている。
【0076】
この変形例において、動力伝達機構3は、反転ギヤ34を有している。例えば、第2ギヤ列32が、反転ギヤ34を有している。なお、第2ギヤ列32ではなく第1ギヤ列31が反転ギヤ34を有していてもよい。また、この変形例では、第1ギヤ列31及び第2ギヤ列32は、上記実施形態のように別々の出力ギヤ31b、32bを有するのではなく、共通する出力ギヤ33を有している。
【0077】
反転ギヤ34は、第2入力ギヤ32aと出力ギヤ33との間に配置されている。反転ギヤ34は、第2入力ギヤ32aと出力ギヤ33とに噛み合う。
【0078】
第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比は異なる。例えば、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比よりも小さい。なお、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比よりも大きくてもよい。また、第1ギヤ列31のギヤ比は、第2ギヤ列32のギヤ比と同じであってもよい。
【0079】
この変形例では、車両の前方から見て、第1電気モータ10の第1回転方向と、第2電気モータ20の第1回転方向とは、異なる方向となる。具体的には、第1電気モータ10の第1回転方向が
図3の左側から見て時計回りである場合、第2電気モータ20の第1回転方向は
図3の左側から見て反時計回りとなる。このため、例えば、第1電気モータ10が時計周りに回転すると車両が前進するように構成した場合、第2電気モータ20が
図3の左側から見て反時計回りに回転すると車両は前進する。
【0080】
(b)上記実施形態では、第1クラッチ12及び第2クラッチ22は、ワンウェイクラッチによって構成されているが、第1クラッチ12及び第2クラッチ22の構成はこれに限定されない。例えば、第1クラッチ12及び第2クラッチ22は、電子的に制御されるように構成されていてもよい。
【0081】
(c)上記実施形態では、運転手が操作することによって第1前進モード、又は第2前進モードを選択したが、走行条件などに基づいて制御部4が第1前進モード、又は第2前進モードを選択してもよい。
【0082】
(d)上記実施形態では、第3前進モードは、制御部4は、車速に基づき第3前進モードを実行したが、制御部4は、運転手の操作に基づき、第3前進モードを実行してもよいし、その他の走行条件などに基づいて制御部4が第3前進モードを実行してもよい。
【0083】
(e)上記実施形態では、制御部4は、アクセル開度に基づき第1制動モードを実行したが、運転手の操作に基づき、第1制動モードを実行してもよいし、その他の走行条件などに基づいて第1制動モードを実行してもよい。また、上記実施形態では、制御部4は、運転手に操作に基づき、第1制動モードから第2制動モードへ切り替えたが、走行条件などに基づいて前記切替を実行してもよい。例えば、制御部4は、第1制動モードでの減速後、所定の速度になったと判断すると第2制動モードに切り替えてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 :第1駆動部
10 :第1電気モータ
11 :第1トルクコンバータ
12 :第1クラッチ
2 :第2駆動部
20 :第2電気モータ
21 :第2トルクコンバータ
22 :第2クラッチ
3 :動力伝達機構
34 :反転ギヤ
4 :制御部
5 :出力ユニット