IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オサダコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-異物除去用ローラー 図1
  • 特開-異物除去用ローラー 図2
  • 特開-異物除去用ローラー 図3
  • 特開-異物除去用ローラー 図4
  • 特開-異物除去用ローラー 図5
  • 特開-異物除去用ローラー 図6
  • 特開-異物除去用ローラー 図7
  • 特開-異物除去用ローラー 図8
  • 特開-異物除去用ローラー 図9
  • 特開-異物除去用ローラー 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166156
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】異物除去用ローラー
(51)【国際特許分類】
   A47L 25/00 20060101AFI20231114BHJP
   G01N 21/94 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
A47L25/00 A
G01N21/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076987
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】392013198
【氏名又は名称】株式会社オサダコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】長田 康
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AB01
2G051BA01
2G051CB01
2G051CB05
(57)【要約】
【課題】 除去すべき異物の検出並びに除去結果の確認及び除去の効率化、ひいては、ロールの長寿命化及び清掃や交換等のメンテナンス時期等の判断を容易に行うことができる。
【解決手段】 異物除去用ローラー10は、異物を粘着させて除去するロール1を回転自在に支持する軸部12と、この軸部12の両端を支持するフレーム部14と、このフレーム部14に連結される把持部16とを有し、フレーム部14に取り付けられたライト部20を更に有する。このライト部20は、軸部12よりも把持部16側に設置されてロール1の表面及び異物を除去すべき対象面の両方を照射して異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させ、かつ、対象面のうちの少なくとも一部にロール1の全幅と同幅以上の範囲に光を照射する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物を粘着させて除去するロールを回転自在に支持する軸部と、前記軸部の両端を支持するフレーム部と、前記フレーム部に連結される把持部とを有する異物除去用ローラーであって、前記フレーム部に取り付けられたライト部を更に有し、前記ライト部は、前記軸部よりも前記把持部側に設置されて前記ロールの表面及び前記異物を除去すべき対象面の両方を照射して前記異物の表面に反射する散乱光及び前記異物の影を発生させ、かつ、前記対象面のうちの少なくとも一部に前記ロールの全幅と同幅以上の範囲に光を照射することを特徴とする異物除去用ローラー。
【請求項2】
請求項1に記載された異物除去用ローラーであって、前記ライト部は、前記対象面に0°~30°の範囲の入射角で光を照射することを特徴とする異物除去用ローラー。
【請求項3】
請求項1に記載された異物除去用ローラーであって、前記把持部には人感センサーが設置され、前記人感センサーは前記ライト部に接続され、前記ライト部は前記人感センサーにより前記把持部への人の接触を検知したときのみ光を照射することを特徴とする異物除去用ローラー。
【請求項4】
請求項2に記載された異物除去用ローラーであって、前記把持部には人感センサーが設置され、前記人感センサーは前記ライト部に接続され、前記ライト部は前記人感センサーにより前記把持部への人の接触を検知したときのみ光を照射することを特徴とする異物除去用ローラー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された異物除去用ローラーであって、前記ライト部の前記フレーム部に対する取付角度を調整する角度調整部を有していることを特徴とする異物除去ローラー。
【請求項6】
請求項5に記載された異物除去用ローラーであって、前記角度調整部は、前記ライト部及び前記フレーム部を貫通して前記軸部に螺合される固定ネジであって、前記固定ネジは、前記ライト部が前記フレーム部に対して任意の角度で配置された状態で前記ライト部を前記フレーム部に締め付けて、前記ライト部の前記フレーム部に対する取付角度を調整することを特徴とする異物除去用ローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体装置の製造現場などのように、異物の存在を回避することが必要なクリーンルームの床や壁、また、異物が付着していてはならない製品、更には、工事現場や工場等の作業場の床や壁、また、設置機器等の設備、あるいは、住宅の床や壁などの対象面に存在する塵や埃などの微細な異物を除去する異物除去用のハンドローラーの改良に関し、特に、除去すべき異物の検出並びに除去結果の確認及び除去の効率化、ひいては、ロールの長寿命化及び清掃又は交換等のメンテナンス時期等の判断を容易に行うことに関するものである。
【背景技術】
【0002】
清掃等すべき対象面に存在する塵や埃など異物は、例えば、半導体製品の製造現場であるクリーンルームや、また、半導体製品そのものなど、環境によっては、確実に除去することが望まれる。この場合、粘着テープを巻き取ったロールを回転自在に支持するローラーが使用され、このローラーにより対象面上でロールを回転させて異物を除去することが行われる。
【0003】
この場合、ローラーによる異物の除去作業は、場合によっては、特に異物の存在を確認、認識することなく、異物が存在するであろうと思われる対象面に対して、ローラーを回転させることが多い。しかし、μm単位の微細な塵や埃は、屋内の屋内の照明下では、目視によっては発見しにくいのが現実である。また、その結果、異物が存在しない箇所に不必要にローラーを転回させると、ロールとして巻き取られた粘着テープの寿命が短くなるおそれがある。
【0004】
この場合、作業者が手に持って操作する異物を除去するためのハンドローラーとは別に、対象面にライトを照射して異物を検出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、異物の検出と除去とを別作業とすると、作業者はライトにより検出された異物が存在していた位置を記憶した上で、当該箇所にローラーを充てることが必要になるなど、効率的な除去が望めない。また、その結果、同様に、無駄にロールを転回させると、粘着テープの使用可能期間が短くなるおそれがある。あるいは、ライトにより光を照射しつつ別途除去作業を行うにしても、照射と除去という異なる2つの作業を同時に別々に行うことは、作業者に著しい負担を強いる問題があった。
【0005】
また、掃除機などの吸い込みヘッドにライトを取り付けることも行われるが(例えば、特許文献2参照)、対象面の一部のみを照射するだけでは、照射方向を変えなければ異物の検出に漏れが生じるとともに、その結果、同様に、効率良く異物を除去することができない。
【0006】
何より、これまでの異物に光を照射して検出する技術においては、除去の対象となる面への光の照射のみを念頭に置いているが、これでは、ロールにより確実に異物が除去できたか、また、ロールへのμm単位の異物の付着状態を確認することができず、ロールの清掃や交換等のメンテナンス時期等を適切に判断することができない問題があった。単に吸引をするだけの掃除機であればともかく、比較的頻繁に清掃や交換することが必要となる粘着テープを使用したロールについては、このメンテナンス時期の判断も省資源化の観点からは非常に重要となる。
【0007】
更に、対象面に光を照射するにしても、屋内照明下で異物を確実に検出することができる光を確保することが必要であると同時に、一方で、作業者の目に必要以上の光が入って眩しいなどの状態が生じないことが、作業効率を高める上でも要求されていた。また、特に対象物が電子部品等の製品である場合には、光の照射により検出されたものが、異物であるのか、あるいは、傷や凹凸であるのかの判別も必要となり、傷や凹凸である場合には検査結果として不良品との判定を行う必要もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-134093号公報
【特許文献1】実開昭54-183162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題点に鑑み、特に、除去すべき異物の検出並びに除去結果の確認及び除去の効率化、ひいては、ロールの長寿命化及び清掃や交換等のメンテナンス時期等の判断を容易に行うことができる異物除去用ローラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1.異物除去用ローラー)
本発明は、上記の課題を解決するための第1の手段として、異物を粘着させて除去するロールを回転自在に支持する軸部と、この軸部の両端を支持するフレーム部と、このフレーム部に連結される把持部とを有する異物除去用ローラーであって、フレーム部に取り付けられたライト部を更に有し、このライト部は、軸部よりも把持部側に設置されてロールの表面及び異物を除去すべき対象面の両方を照射して異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させ、かつ、対象面のうちの少なくとも一部にロールの全幅と同幅以上の範囲に光を照射することを特徴とする異物除去用ローラーを提供するものである。
【0011】
(2.対象面に対する光の入射角)
また、本発明は、上記の課題を解決するための第2の手段として、上記第1の解決手段において、ライト部は、対象面に0°~30°の範囲の入射角で光を照射することを特徴とする異物除去用ローラーを提供するものである。
【0012】
(3.人感センサー)
本発明は、上記の課題を解決するための第3の手段として、上記第1の解決手段において、把持部には人感センサーが設置され、この人感センサーはライト部に接続され、ライト部は人感センサーにより把持部への人の接触を検知したときのみ光を照射することを特徴とする異物除去用ローラーを提供するものである。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するための第4の手段として、上記第2の解決手段において、把持部には人感センサーが設置され、この人感センサーはライト部に接続され、ライト部は人感センサーにより把持部への人の接触を検知したときのみ光を照射することを特徴とする異物除去用ローラーを提供するものである。
【0014】
(4.角度調整部)
本発明は、上記の課題を解決するための第5の手段として、上記第1乃至第4のいずれかの解決手段において、ライト部のフレーム部に対する取付角度を調整する角度調整部を有していることを特徴とする異物除去ローラーを提供するものである。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決するための第6の手段として、上記第5の解決手段において、角度調整部は、ライト部及びフレーム部を貫通して軸部に螺合される固定ネジであって、この固定ネジは、ライト部がフレーム部に対して任意の角度で配置された状態でライト部をフレーム部に締め付けて、ライト部のフレーム部に対する取付角度を調整することを特徴とする異物除去用ローラーを提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、ローラー自体がフレーム部に取り付けられたライト部を有するため、異物の検出と除去作業をローラーのみで同時に行うことができるので、簡易にかつ効率的に除去作業を行うことができる実益がある。
【0017】
本発明によれば、上記のように、ライト部は、軸部よりも把持部側に設置されてロールの表面及び異物を除去すべき対象面の両方を照射して異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させるため、この散乱光及び影のコントラストにより、屋内照明下においてもμm単位の微細な異物を確実に検出することができ、その結果、異物が検出された箇所にのみ効率的にロールを転回さて異物を除去することができるため、ロールを無駄に転回させる必要がなくなり、ロールの寿命を長期化することができる実益がある。
【0018】
また、この場合、本発明によれば、対象面が、床や壁ではなく特に電子部品等の製品の表面である場合には、その表面に傷が存在する場合にも、光の照射により乱反射が生じるため、微細な傷であっても検出することができ、当該箇所にロールを転回しても除去されなければ、製品に存在する不良であると判定することができ、単に異物の除去のみならず、製品検査の一工程としても使用することができる実益がある。
【0019】
本発明によれば、上記のように、特に、異物を除去すべき対象面のみならず、ロールの表面にも光を照射して、ロールに付着している異物をも検出することができるため、異物をロールにより確実に除去することができたかを確認することができると共に、ロールへのμm単位の微細な異物の付着状態を確認して、ロールの清掃や交換等のメンテナンス時期を容易に判断することができる実益がある。
【0020】
本発明によれば、上記のように、対象面のうちの少なくとも一部にロールの全幅と同幅以上の範囲に光を照射しているため、異物を漏れなく確実に検出して効率的に除去することができる実益がある。
【0021】
また、本発明によれば、上記のように、ライト部は、対象面に0°~30°の範囲の入射角で光を照射するため、後述する実験の結果、適切に広範囲にわたって異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させることができ、異物の検出を効果的に行うことができると共に、作業者がこの照射範囲を上方から視認することにより、光が作業者の目に直接入らず、作業者が眩しき感じることもなく、作業効率を高めることができると同時に、作業者に健康上の影響を与えることがない実益がある。なお、この場合、ライト部が照射する光の対象面に対する入射角とは、光はレンズなどを通じて拡散して照射されるが、特に光源の設定された向き(光軸)の対象面に対する角度を指す。また、入射角が0°となる場合は、当該光軸が対象面と平行である状態を指すが、拡散する光によって最も広く対象面を照射することができると共に、より一層、効率的に異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させることができる。
【0022】
更に、本発明によれば、上記のように、作業者が握る把持部には人感センサーが設置され、この人感センサーはライト部に接続され、ライト部は人感センサーにより把持部への人の接触を検知したときのみ光を照射するため、作業者はスイッチの操作等をすることなく光を照射することができるため、異物の除去作業を簡易に行うことができると共に、作業が終了すれば自動的に消灯するため、電源を無駄遣いせず、長持ちさせることができる実益がある。
【0023】
加えて、本発明によれば、上記のように、ライト部のフレーム部に対する取付角度を調整する角度調整部を有しているため、例えば、比較的狭い場所にローラーを挿入する必要があり、把持部を対象面と平行に近い状態、あるいは、対象面よりも上方に向けて挿入しなければならない場合や、作業者の目線よりも高い箇所に対して作業をする必要がある場合など、光の対象面に対する入射角を適切に確保することが困難な場合でも、作業者に無理な姿勢を強要することなく、入射角を適切に調整して、異物を効果的に検出することができる実益がある。
【0024】
この場合、特に、本発明によれば、上記の通り、この角度調整部は、ライト部及びフレーム部を貫通して軸部に螺合される固定ネジであって、この固定ネジは、ライト部がフレーム部に対して任意の角度で配置された状態でライト部をフレーム部に締め付けて、ライト部のフレーム部に対する取付角度を調整するため、簡易な構成及び簡易な操作で短時間で角度を調整することができる実益がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の異物除去用ローラーの斜視図である。
図2】本発明の異物除去用ローラーの正面図である。
図3】本発明の異物除去用ローラーの別角度からの斜視図である。
図4】本発明の異物除去用ローラーが対象面に対して光を照射する状態を示す概略斜視図である。
図5】本発明の異物除去用ローラーに用いられる角度調整部の拡大斜視図である。
図6】本発明の異物除去用ローラーに用いられるライト部により対象面に対して光の入射角を15°として照射した場合の照射状態を示す図である。
図7】本発明の異物除去用ローラーに用いられるライト部により対象面に対して光の入射角を20°として照射した場合の照射状態を示す図である。
図8】本発明の異物除去用ローラーに用いられるライト部により対象面に対して光の入射角を25°として照射した場合の照射状態を示す図である。
図9】本発明の異物除去用ローラーに用いられるライト部により対象面に対して光の入射角を30°として照射した場合の照射状態を示す図である。
図10】本発明の異物除去用ローラーに用いられるライト部により対象面に対して光の入射角を35°として照射した場合の照射状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明すると、図1乃至図3は、本発明の異物除去ローラー10を示し、この異物除去用ローラー10は、図1乃至図3に示すように、異物を粘着させて除去するロール1を回転自在に支持する軸部12と、この軸部12の両端を支持するフレーム部14と、このフレーム部14に連結される把持部16とを有する。
【0027】
この異物除去用ローラー10は、主に、異物の存在を回避することが必要なクリーンルームの床や壁、また、異物が付着していてはならない製品、具体的には、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、セラミックフィルム、液晶・電子材料、高機能性フィルム、印刷材料及び各種箔、半導体製品等、多岐にわたる生産ラインのクリーニングに使用することができる。もちろん、これらの生産ラインに限られず、更には、工事現場や工場等の作業場の床や壁、また、設置機器等の設備、あるいは、住宅の床や壁などの対象面に存在する異物を除去することにも使用することができる。
【0028】
また、この異物除去用ローラー10により、除去すべき異物としては、製品の製造工程において摩擦などにより不可避的に発生しうるパーティクル、塵や埃などのμm単位の微細な異物が挙げられ、例えば、30μm以上、特に望ましくは、10μm以上の大きさの異物の検出及び除去をすることに使用される。
【0029】
(1.ロール)
この異物除去ローラー10に使用されるロール1としては、転回して粘着により異物を除去することができれば、特に限定はないが、例えば、軸部12が貫通する中空部を有する円筒状のラバーに粘着パッドや粘着テープを巻き取ったロール等を使用することができる。この場合、粘着パッドや粘着テープの粘着面は、使用前においては、保護シートにより保護されており、使用に際して、この保護シートを剥がして粘着面を露出させて、当該粘着面を対象面上に転回させることにより、異物をロール1に粘着させて除去する。この保護シートとしては、上層の粘着パッドや粘着テープの裏面(粘着面とは反対側の面)をもって、保護シートとすることもできる。
【0030】
なお、ロール1は、異物の粘着後も、繰り返し対象面上を転回するため、一度、ロール1に付着した異物が、対象面に再転写されない程度の粘着力は必要である。ただし、対象面が、例えば、可撓性を有するフィルム状の製品であるか、また、構造物の床面や設置機器の表面等の定型性を有するものであるか等、また、凹凸が存在する対象面であるか等の対象面の性質、状態に応じて、また、除去すべき異物の性質(紙であるか、金属であるか等)に応じて、ラバーの硬度や粘着パッド、粘着テープの粘着力を適切に設定することができる。更に、この異物を粘着したロール1を、ロール1のよりも粘着力が強い転写シート上に転回させて、ロール1に付着した異物を除去してロール1を清掃することもできる。また、このロール1は、作業者が把持部16を手で握って操作をするため、重量及び操作性の観点からは、その全幅としては、150mmが望ましく、最大でも300mm程度までにすることが好ましい。もちろん、フレーム部14も、このロール1の全幅に併せた大きさに設定する。また、ロール1の直径(粘着パッドなどを巻き取る円筒状のラバーの直径)は、30mm程度とすることが望ましい。
【0031】
(2.軸部)
このロール1を回転自在に支持する軸部12は、ある程度の軽量性を有しつつ充分な強度を有するステンレス等の金属製又はポリアセタール樹脂等の樹脂製の中空パイプを使用することができる。この軸部12は、ロール1の中空部に挿入されてロール1を異物除去用ローラ10及び対象面に対して回転自在に支持するが、この場合、軸部12自体はフレーム部14に固定して支持され、この軸部12に対してロール1を回転させることもできるし、軸部12にロール1を固定した上で(軸部12をロール1と共に回転可能とした上で))、軸部12をフレーム部に対して回転可能に取り付けることにより、ロール1を回転自在に支持することもできる。
【0032】
(3.フレーム部)
この軸部12の両端を支持するフレーム部14は、図1乃至図3に示すように、ロール1とほぼ同じ長さの梁部14Aと、この梁部14Aの両端から伸びて軸部12の両端を挟むことができる2つの支持部14Bとから成る略コの字状の形状を有する。このフレーム部14は、図1乃至図3に示すように、ロール1に跨がるように設置されて、特に、図5に示すように、2つの支持部14Bを各々貫通して軸部12に螺合される固定ネジ18により、軸部12を支持する。なお、このフレーム部14も、アルミニウム等の金属製の材料又はABS樹脂等の樹脂製の材料から形成することができる。
【0033】
(4.把持部)
把持部16は、作業者が、異物除去用ローラー10を手で把持して操作する部位であり、図1乃至図3に示すように、フレーム部14の梁部14Aに連結される。この把持部16葉、図1乃至図3に示すように、人の掌よりも長いポール状に形成されるが、その際、作業者が握り易いように、テーパ面16aが形成されている。なお、この把持部16は、作業者が違和感なく握ることができれば、他の、例えば、断面が円形又は楕円形である円柱状の形状とすることもできる。また、この把持部16は、メンテナンス性を考慮して、フレーム部14の梁部14Aに対して着脱自在に取り付けることが望ましい。なお、この把持部16は、フレーム部14と同様のアルミニウム等の金属製材料又はABS樹脂等の樹脂製材料から形成することができる。
【0034】
(5.ライト部)
本発明の異物除去用ローラー10は、更に、図1乃至図5に示すように、フレーム部14に取り付けられたライト部20を更に有する。このように、異物除去用ローラー10自体がフレーム部14に取り付けられたライト部20を有するため、異物の検出と除去作業を異物除去用ローラー10のみで同時に行うことができるので、簡易にかつ効率的に除去作業を行うことができる。
【0035】
このライト部20は、図1及び図2に示すように、ライト本体20Aと、このライト本体20Aをフレーム部14に取り付けるための取付片20とから成っている。この取付片20Aは、ライト本体20Aの両端から延びるようにして設けられ、ライト部20は、図1乃至図5に示すように、この2つの取付片20Bを、フレーム部14の支持部14の更に外側からフレーム部14を跨がるようにして配置されて、固定ネジ18によりフレーム部14と共に軸部12に締め付けられることにより、フレーム部14に取り付けられる。
【0036】
この場合、特に、このライト部20は、図1乃至図5に示すように、軸部12よりも把持部16側(把持部16を握って把持部16側から異物除去用ローラー10を押した場合のロール1の進行方向とは反対側)に設置されてロール1の表面及び異物を除去すべき対象面の両方を照射して異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させる。具体的には、図1乃至図5に示すように、取付片20Bは、ライト本体20Aの真下に向けてではなく、ライト本体20から斜め前方に(ロール1側に)延びるように形成され、ライト本体20Aの照射面をロール1側に向けた状態で取付片20Bをフレーム部14に取り付けることにより、光源であるライト本体20Aを軸部12よりも把持部16側に設置することができる。
【0037】
従って、ライト部20は、異物を除去すべき対象面のみならず、ロール1の表面にも光を照射することができる。これにより、異物をロール1により確実に除去することができたかを確認することができると共に、ロール1へのμm単位の微細な異物の付着状態を確認して、ロール1の清掃や交換等のメンテナンス時期を容易に判断することができる。
【0038】
また、このライト部20は、特に、図4に示すように、対象面のうちの少なくとも一部にロール1の全幅と同幅以上の範囲に光を照射する。この場合、ライト本体20Aは、特に図1及び図4に示すように、ロール1とほぼ同じ長さを有し、ロール1の全幅と同幅以上の範囲に光を照射できるように、複数の光源20aが設置されている。具体的には、図示の実施の形態では、5つの光源20aが設置され、各光源20aから照射される光が、少なくともロール1の全幅と同幅の範囲に照射される。これにより、一部のみを照射する場合と異なり、光の向きを変えることなく、前方に存在する異物を漏れなく確実に検出して効率的に除去することができる。
【0039】
この場合、図示の実施の形態では、これらの5つの光源20aから照射された光(特に最も外側の2つの光源20aにより照射された光)は拡散するため、ライト本体20Aの両端付近には、光源を設けていないが、少なくともロール1の全幅と同幅に光を照射することができれば、図示の実施形態と異なり、ライト本体20Aの全幅に亘って連続して配置された光源20aとすることもできる。
【0040】
また、この光源としては、LEDを使用することができ、ライト本体20Aの前面に設置された円形のレンズにより拡散して、少なくともロール1の全幅と同幅に光を照射することができる。また、この光源20aにより照射される光としては、最大光束が180lm程度、ピーク波長が約520nm前後のグリーンライトを使用することが望ましい。これは、シアン、ライム、ミント、PCA等の様々な色調の光を照射して視認により確認した結果、グリーンが本発明の異物除去用ローラー10の使用が想定される屋内照明下において、対象面に光を照射することにより、異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させるのに最も適した色調だったからである。その結果、この散乱光及び影のコントラストにより、屋内照明下においてもμm単位の微細な異物を確実に検出することができ、その結果、異物が検出された箇所にのみ効率的にロール1を転回さて異物を除去することができるため、ロール1を無駄に転回させる必要がなくなり、ロール1の寿命を長期化することができる。なお、図示の実施の形態では、5つの光源20aを、各レンズの中心間の間隔が20mmとなるように配置している。
【0041】
また、対象面が、床や壁ではなく特に電子部品等の製品の表面である場合には、その表面に傷が存在する場合にも、光の照射により乱反射が生じるため、微細な傷であっても検出することができ、当該箇所にロール1を転回しても除去されなければ、製品に存在する不良であると判定することができ、単に異物の除去のみならず、製品検査の一工程としても使用することができる。
【0042】
なお、この場合、白書のLEDを用い、レンズとしてグリーンレンズを使用して、光を調合することができる。また、作業者が手に把持して操作するという異物除去用ローラー10の性質上、外部電源を使用するよりも、乾電池などの内部に設置された電源を使用することが、作業性を高める上で望ましい。この電源は、例えば、ライト本体20Aの内部のほか、開閉自在に形成された把持部16の内部などに配置することもできる。
【0043】
(6.対象面に対する光の入射角)
また、このライト部20は、対象面に0°~30°の範囲の入射角で光を照射することが好ましい。この場合、異物に光を照射して異物に反射する散乱光と影によるコントラストを明確に発生させるためには、最も望ましくは、対象面に真横から水平に光を照射することである。しかし、ロール1の表面にも光を照射するためには、対象面と同様の高さに光軸を設定することは難しい。このため、まずは、現実的な仕様に合わせ、直径30mmのロール1の斜め後方にライト部20を設置し、光源20aの発光面から対象面までの高さを50mm似設定した上で、様々な角度で光を照射して、照射範囲並びに散乱光及び影のコントラストの発生状態を上方から視認して確認した。その結果を、図6乃至図10に示す。
【0044】
なお、本発明において、ライト部20が照射する光の対象面に対する入射角とは、光はレンズなどを通じて拡散して照射されるが、特に光源の設定された向き(光軸)の対象面に対する角度を指す。この場合、ライト部20の光軸が対象面よりも上方に位置する状態において、この入射角が0°となる場合とは、当該光軸が対象面と平行である状態を指すが、拡散する光によって最も広く対象面を照射することができると共に、より一層、効率的に異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させることができるベストモードといえる。このため、その他の角度での適切な範囲を探るべく、入射角を15°(図6)、20°(図7)、25°(図8)、30°(図9)、35°(図10)に設定して、光の照射範囲並びに散乱光及び影のコントラストの発生状態を上方から視認して確認した。
【0045】
その結果、図6乃至図9に示すように、15°~30°までの範囲であれば、確認作業に適した広範な範囲で、かつ、散乱光及び影のコントラストの発生を適切に確認することができたが、図10に示すように、35°では、照射範囲が狭くなり、コントラストの発生状態も必ずしも良好とはいえない結果となった。このため、対象面に0°~30°の範囲の入射角で光を照射することが好ましいといえ、作業者が手を延ばして一度にロール1を転がすことができる範囲が200mm程度であることを考えると、より望ましくは、15°~25°であるということができる。
【0046】
このように対象面に対する光の入射角を設定すると、適切に広範囲にわたって異物の表面に反射する散乱光及び異物の影を発生させることができ、異物の検出を効果的に行うことができると共に、作業者がこの照射範囲を上方から視認することにより、光が作業者の目に直接入らず、作業者が眩しき感じることもなく、作業効率を高めることができると同時に、作業者に健康上の影響を与えることがないということができる。
【0047】
(7.人感センサー)
また、把持部16には図示しない人感センサーが設置されている。この人感センサーはライト部20に電気的に接続され、ライト部20は人感センサーにより把持部16への人の接触を検知したときのみ光を照射する。このため、作業者はスイッチの操作等をすることなく作業のために把持部16を握るだけで光が自動的に照射されるため、異物の除去作業を簡易に行うことができると共に、作業が終了して把持部16から手を離せば自動的に消灯するため、電源を無駄遣いせず、長持ちさせることができる。
【0048】
また、この人感センサーとしては、例えば、フィルムタイプや基板タイプのタッチセンサーや、赤外線方式の人感センサーを使用することができる。これらの人感センサーを、異物除去用ローラー10の操作の際に、作業者の手が必ず触れる把持部16の上面に設置することにより、適切にライト部20を作動させることができる。なお、人感センサーを用いることなく、スイッチによりライト部20をオン・オフとすることもできるのはもちろんである。
【0049】
(8.角度調整部)
また、本発明の異物除去用ローラー10は、特に、図5に示すように、ライト部20のフレーム部14に対する取付角度を調整する角度調整部22を有している。このため、例えば、比較的狭い場所に異物除去用ローラー10を挿入する必要があり、把持部16を対象面と平行に近い状態、あるいは、対象面よりも上方に向けて挿入しなければならない場合や、作業者の目線よりも高い箇所に対して作業をする必要がある場合など、対象面に対する光の入射角を適切に確保することが困難な場合でも、作業者に無理な姿勢を強要することなく、対象面に対する光の入射角を上記のように適切に調整して、異物を効果的に検出することができる。
【0050】
この角度調整部22としては、具体的には、特に図5に示すように、フレーム部14を軸部12に取り付けるための固定ネジ18をそのまま使用することができる。すなわち、ライト部20及びフレーム部14を貫通して軸部12に螺合される固定ネジ18を角度調整部としても使用することができ、この固定ネジ18は、ライト部20がフレーム部14に対して任意の角度で配置された状態でライト部20をフレーム部14に締め付けて、ライト部20のフレーム部14に対する取付角度を調整することができる。これにより、簡易な構成及び簡易な操作で短時間で角度を調整することができる。
【0051】
なお、角度調整部22の形態は、図示の固定ネジ18に限定されるものではなく、他に、例えば、ライト部20を、フレームに対して揺動自在に取り付けた上で、その揺動を規制するストッパーとすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、異物の存在を回避することが必要なクリーンルームの床や壁、また、異物が付着していてはならない工業製品等の多岐にわたる生産ラインのクリーニングや、工事現場や工場等の作業場の床や壁、また、設置機器等の設備、あるいは、住宅の床や壁などの対象面に存在する異物を除去することに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 ロール
10 異物除去用ローラー
12 軸部
14 フレーム部
14A 梁部
14B 支持部
16 把持部
16a 把持部のテーパー面
18 固定ネジ
20 ライト部
20A ライト本体
20B 取付片
22 角度調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10