(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166164
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】機能性担体の製造方法、機能性担体、炭酸ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
C01F 11/02 20060101AFI20231114BHJP
C01F 5/14 20060101ALI20231114BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20231114BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20231114BHJP
B01J 20/04 20060101ALI20231114BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C01F11/02 A ZAB
C01F5/14
B01D53/62
B01D53/81
B01J20/04 A
B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077009
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】521233563
【氏名又は名称】株式会社Eプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】廣田 武次
【テーマコード(参考)】
4D002
4G066
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002DA04
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA12
4D002EA06
4D002GA01
4D002GB08
4G066AA12B
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066CA35
4G066FA02
4G066FA22
4G066FA31
4G066FA34
4G066FA37
4G066FA38
4G076AA10
4G076BA42
4G076CA02
(57)【要約】
【課題】本発明は、酸ガスに対する良好な処理能を有する新規な機能性担体の製造方法、前記機能性担体の製造方法によって製造された機能性担体、及び前記機能性担体を用いた炭酸ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 アルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする原料を鉄鋼材料からなる容器内に収容し、加熱することによって、二酸化炭素に対する処理能を有する機能性担体を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを処理するための機能性担体を製造する方法であって、
アルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする原料を鉄鋼材料からなる容器内に収容する収容工程と、
前記原料が収容された前記容器を加熱する加熱工程と、
を実行することを特徴とする機能性担体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性担体の製造方法において、
前記加熱工程の実行時、前記容器を200℃以上の温度にて加熱する機能性担体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機能性担体の製造方法において、
前記加熱工程の実行時、前記容器を永久磁石又は電磁石によって生じさせた磁場に晒しながら加熱する機能性担体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の機能性担体の製造方法において、
前記加熱工程の実行時、前記容器を20mT以上の磁束密度を有する磁場に晒しながら加熱する機能性担体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の機能性担体の製造方法において、
アルカリ土類金属の水酸化物として、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを用いる機能性担体の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の機能性担体の製造方法によって製造されたことを特徴とする機能性担体。
【請求項7】
炭酸ガスを処理するための炭酸ガス処理方法であって、
請求項6に記載の機能性担体と二酸化炭素とを接触させる接触工程を実行することによって、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成することを特徴とする炭酸ガス処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の炭酸ガス処理方法において、
前記接触工程の実行前に、前記機能性担体に5重量%以下の水分を含ませる加水工程を実行する炭酸ガス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸ガスを処理するための機能性担体の製造方法、前記機能性担体の製造方法によって製造された機能性担体、前記機能性担体を用いた炭酸ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化現象は種々の要因によって引き起こされている現象であるが、産業活動に伴って大気中に排出された炭酸ガス(CO2)などの温室効果ガスが大きな要因とする説が主流となっている。そのため、炭酸ガスの排出量の削減が国際的な課題とされている。又、排出された炭酸ガスを回収する手段についても開発が進められている。
【0003】
炭酸ガスを回収する手段としては、大気中の二酸化炭素を吸着し、吸着した二酸化炭素を光分解する吸着分解触媒が開発されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
又、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と二酸化炭素とを接触させたり、水酸化カルシウムの飽和水溶液(石灰水)中に二酸化炭素を通過させたりして、炭酸カルシウム(CaCO3)として回収する手段も良く知られた化学変化である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光分解による二酸化炭素の分解は、紫外線領域の光エネルギーが必要であり、夜間や暗所では、効率よく二酸化炭素を分解することができない。
【0007】
一方、水酸化カルシウムを用いた二酸化炭素の回収は、水酸化カルシウムに対する二酸化炭素の吸収量が低く(2~3mol/kg程度)、多量の二酸化炭素を処理することができないため実用的とはいえない。
【0008】
本発明は、前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、炭酸ガスに対する良好な処理能を有する新規な機能性担体の製造方法、前記機能性担体の製造方法によって製造された機能性担体、及び前記機能性担体を用いた炭酸ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決する本発明の機能性担体の製造方法は、炭酸ガスを処理するための機能性担体を製造する方法であって、アルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする原料を鉄鋼材料からなる容器内に収容する収容工程と、前記原料が収容された前記容器を加熱する加熱工程と、を実行することを特徴とする(以下、「本発明製造方法」と称する。)。
【0010】
前記本発明製造方法においては、前記加熱工程の実行時、前記容器を200℃以上の温度にて加熱することが好ましい態様となる。
【0011】
前記本発明製造方法においては、前記加熱工程の実行時、前記容器を永久磁石又は電磁石によって生じさせた磁場に晒しながら加熱することが好ましい態様となる。
【0012】
前記本発明製造方法においては、前記加熱工程の実行時、前記容器を20mT以上の磁束密度を有する磁場に晒しながら加熱することが好ましい態様となる。
【0013】
前記本発明製造方法においては、アルカリ土類金属の水酸化物として、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを用いることが好ましい態様となる。
【0014】
前記技術的課題を解決する本発明の機能性担体は、前記本発明製造方法によって製造されたことを特徴とする(以下、「本発明担体」と称する。)。
【0015】
前記技術的課題を解決する本発明の炭酸ガス処理方法は、炭酸ガスを処理するための炭酸ガス処理方法であって、前記本発明担体と二酸化炭素とを接触させる接触工程を実行することによって、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成することを特徴とする(以下、「本発明処理方法方」と称する。)。
【0016】
前記本発明処理方法においては、前記接触工程の実行前に、前記本発明担体に5重量%以下の水分を含ませる加水工程を実行することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、二酸化炭素に対する良好な処理能を有する機能性担体を製造することができ、又、炭酸ガスを好適に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、本発明製造方法の実行時に使用される容器を示す斜視図であり、
図1(b)は、前記容器に永久磁石を張り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<本発明製造方法>
前記本発明製造方法は炭酸ガスを処理するための本発明担体を製造する方法であり、「収容工程」と、「加熱工程」と、を実行する。
【0021】
‐収容工程‐
前記収容工程では、アルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする原料を鉄鋼材料からなる容器内に収容する。本実施形態においては、アルカリ土類金属の水酸化物を、
図1(a)に示すステンレス製の容器本体(縦700mm×横500mm×深さ50mm)2及び前記容器本体2の開口部を覆うステンレス製の蓋3からなる容器1に収容することによって、前記収容工程を実行した。
【0022】
‐加熱工程‐
前記加熱工程では、前記原料が収容された前記容器1を加熱する。本実施形態においては、前記容器1を電気炉内で加熱することによって前記加熱工程を実行した。
【0023】
[実施例1~6(水酸化カルシウム)]
アルカリ土類金属の水酸化物として市販の水酸化カルシウム(奥多摩工業株式会社製、商品名「タマカルク」)を用い、下記表1に示す条件にて前記本発明方法を実行した。なお、実施例4~6では、
図1(b)に示すように、16kgの吸着力を有する永久磁石(サマリウムコバルト磁石)4を前記容器本体2の底面側と前記蓋3の表面とに複数個(一~五個)張り付けた状態で前記加熱工程を実行した。これによって前記容器1内に収容された原料は、貼り付けた前記永久磁石4の数に応じて生じた磁場に晒された状態で加熱されることになる。この状態の前記容器1を電気炉にて30分加熱することによって、本発明担体を得た。
【0024】
【0025】
[比較例1]
前記本発明製造方法を実行していない市販の水酸化カルシウム(奥多摩工業株式会社製、商品名「タマカルク」)を比較例1に係る担体として用いた。
【0026】
<本発明方法(炭酸ガスの処理)>
前記実施例1~6にて得られた本発明担体、及び比較例1に係る担体を下記に示す手順からなる処理試験に供した。
【0027】
‐処理試験‐
(1)容量5リットルのテトラバッグを用意し、各担体の粉砕物200gを各々前記テトラバッグに入れる。
(2)各テトラバッグ内に、3リットルずつ炭酸ガス(二酸化炭素濃度:99.5%)を注入する。
(3)炭酸ガスの注入後、各テトラバックを室内(25℃)に静置し、定期的に各テトラバッグ内の二酸化炭素濃度をガス検知管にて測定する。
(4)テトラバック内の二酸化炭素濃度が0%となった時点で、テトラバック内に3リットルの炭酸ガスを再度注入する作業を繰り返すことによって、各担体における単位重量当たりの二酸化炭素処理量を確認する。
【0028】
係る処理試験の結果を下記表2に示す。なお、表中、「加水工程実行」と付記されている列は、前記処理試験の際、各担体に霧吹きにて1~2重量%の水分を含ませる加水工程を実行した場合の結果である。
【0029】
【0030】
表2に示す結果より、本発明製造方法にて得られた実施例1~6に係る本発明担体は、炭酸ガスに対する良好な処理能を有することが確認された。又、処理試験後の各担体にはいずれも炭酸カルシウムの存在が確認された。更に、本発明方法の実行時において本発明担体(及び市販の水酸化カルシウム)に対して加水工程を実行した場合、炭酸ガスに対する処理能が向上することが確認された。
【0031】
[実施例7~12(水酸化マグネシウム)]
アルカリ土類金属の水酸化物として市販の水酸化マグネシウム(林純薬工業社製)を用い、前記実施例1~6と同様の条件で本発明製造方法を実行することによって実施例7~12に係る本発明担体を得た。
【0032】
[比較例2]
前記本発明製造方法を実行していない水酸化マグネシウムを比較例2に係る担体として用いた。
【0033】
実施例7~12にて得られた本発明担体、及び比較例2に係る担体を、前記処理試験に供した結果を下記表3に示す。
【0034】
【0035】
表3に示す結果より、本発明製造方法にて得られた実施例7~12に係る本発明担体は、炭酸ガスに対する良好な処理能を有することが確認された。又、処理試験後の各担体にはいずれも炭酸マグネシウムの存在が確認された。更に、本発明方法の実行時において本発明担体(及び市販の水酸化マグネシウム)に対して加水工程を実行した場合、炭酸ガスに対する処理能が向上することが確認された。
【0036】
ここで、本発明製造方法により得られた本発明担体が二酸化炭素に対する良好な処理能力を獲得する理由については現段階において明らかではない。但し、本発明製造方法における加熱工程の実行中に容器1に0.1~0.5μA程度の微弱な電流が生じていることが確認されており、この電流が、前記加熱工程の実行中に前記容器を磁場に晒すと1~1.5μAに増加することも確認されている。あくまでも予想に過ぎないがこの発生した電流が原料中のアルカリ土類金属の水酸化物に対し、二酸化炭素に対する活性を向上させているのかもしれない。
【0037】
又、本実施形態においては、アルカリ土類金属の水酸化物として水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムを用いているが、アルカリ土類金属の水酸化物はこれらに限られない。本発明において「アルカリ土類金属」とはラジウムを除く周期表二属の五元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)を意味する。水酸化カルシウムと水酸化マグネシウム以外のアルカリ土類金属の水酸化物を原料とした場合についても、本発明製造方法により得られた本発明担体が二酸化炭素に対する良好な処理能力を獲得することが実験室レベルで確認されている。但し、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムは他のアルカリ土類金属の水酸化物と比較して安価で大量に入手することが容易であり、又、得られた本発明担体の二酸化炭素処理量が高いことが確認されている。これより本発明においては、アルカリ土類金属の水酸化物として水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。
【0038】
なお、本発明において「アルカリ土類金属の水酸化物を主成分とする原料」とは、原料中にアルカリ土類金属以外の他の成分が含まれていても良いことを意味する。他の成分としては、水や活性炭等の吸着材を例として挙げることができる。
【0039】
又、本実施形態においては、200~500℃の加熱温度にて加熱工程を実行しているが、加熱温度が高すぎると原料中のアルカリ土類金属の水酸化物が熱分解する場合がある。そのため、加熱温度の上限は原料中のアルカリ土類金属の水酸化物の熱分解温度以下とすることが好ましい。
【0040】
更に、本実施形態では、前記加熱工程の実行時に前記容器を20~100mTの磁束密度を有する磁場に晒しているパターンも行っているが、磁場の磁束密度が大きくなるほど得られる本発明担体の炭酸ガスに対する処理能が向上する傾向が確認されている。又、永久磁石を電磁石に替えても同様の結果が得られることも確認されている。
【0041】
加えて、本実施形態では、処理試験の際に本発明担体に水分を含ませる加水工程を実行するパターンも行っているが、0.1重量%程度の極少量の水を本発明担体に含ませるだけで本発明担体の炭酸ガスに対する処理能が向上することが確認されている。但し、本発明担体に含ませる水が多すぎると二酸化炭素に対する接触面積が減じられるため、前記加水工程において本発明担体に含ませる水分量は5重量%以下とすることが好ましい。
【0042】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、炭酸ガスをはじめとする種々の気体成分の処理に用いられる新規材料として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 容器
2 容器本体
3 蓋
4 永久磁石