(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166178
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】クリーニング機構を有する弁装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/22 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
F16T1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077049
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
(57)【要約】
【課題】部品の有効利用を図ることができ、かつクリーニング動作の作業性を高めることができるクリーニング機構を有する弁装置の提供。
【解決手段】
スチームトラップ90の上部本体91において、モニタリングセンサのセンサ取付け部44が形成され、初期状態においては被検出面47を覆うプラグ4が取り付けられている。スチームトラップ90には、弁口50aの詰りをクリーニングするためのクリーニング部10が設けられ、クリーニング動作を行う場合、操作者はクリーニングバー2を回転させて矢印111方向に前進させ、バー先端25を弁口50aに進入させる。クリーニング動作の際、プラグ4を回転操作の工具として転用する。すなわち、プラグ4の円柱部4bの内部に形成された六角穴41に、クリーニングバー2の操作用六角ヘッド2bを嵌め入れて回転操作する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する弁室空間を内部に有し、追加的に取り付けられる追加機器の取付け部位を外部面に有する本体であって、弁室空間と外部とを連通させる排出穴が形成された本体、
前記排出穴を閉塞または開放する弁手段、
前記排出穴に向けて、本体に配置されたクリーニング手段であって、外部からのクリーニング操作を受け、前記排出穴に侵入し又は前記排出穴から退避するクリーニング手段、
前記取付け部位を被って、前記本体に着脱可能に接続されるカバー手段であって、前記クリーニング手段に対し、前記クリーニング操作が可能なように連結することができる連結部を有するカバー手段、
を備えたことを特徴とするクリーニング機構を有する弁装置。
【請求項2】
請求項1に係るクリーニング機構を有する弁装置において、
前記クリーニング操作は、前記クリーニング手段を回転させる回転操作である、
ことを特徴とするクリーニング機構を有する弁装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係るクリーニング機構を有する弁装置において、
前記追加機器は検出器である、
ことを特徴とするクリーニング機構を有する弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るクリーニング機構を有する弁装置は、ドレン等の流体を排出するための排出口をクリーニングするクリーニング機構を有する弁装置の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を熱交換器等の供給先に向けて移送する配管系統が設置されていることがある。この蒸気は放熱によって凝縮し一部がドレン(凝縮水)に変化するため、配管内には蒸気と共にドレンが流れることになる。このようなドレンが過度に配管内に滞留した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管系統から外部に排出する必要がある。
【0003】
このために、配管系統の随所にスチームトラップ等の弁装置が設けられている。蒸気を移送する配管系統の主管には、トラップ設置用の支管が連通して延びており、この支管上にスチームトラップが設けられる。
【0004】
これらのトラップには種々の構造のものがあるが、フロート式スチームトラップは弁室内に中空のフロートを内蔵している。そして、通常においては、このフロートは弁室の底部付近に形成されたドレン排出口を塞いでいるが、弁室にドレンが流入した場合、ドレンの滞留に従ってこのフロートが浮上し、ドレン排出口を開放して自動的に開弁する。この開弁により、弁室内に滞留したドレンは、配管内の高圧を受けて自動的にドレン排出口からドレン回収管に向けて排出される。ドレンの排出後はフロートが下降して復位し、再びドレン排出口を閉塞して閉弁する。
【0005】
ところで、スチームトラップの弁室内には、流入するドレンと共に錆やスケール(水垢)等の異物が混入することがある。そして、このような異物がドレン排出口に付着して堆積した場合、この異物によってドレン排出口が塞がれて詰まりが生じ、フロートが浮上しても適正にドレンを排出することができなくなる開弁不良が生じる。特にドレン排出口は、ドレンの排出効率を高めるために、口径の小さなオリフィス状に形成されていることから、異物による詰まりが生じやすい。
【0006】
また、フロートの摩耗や変形等に起因して、フロートがドレン排出口を確実に閉塞できなくなる閉弁不良を生じることもある。閉弁不良が生じた場合、ドレン排出口から蒸気が漏れ出し蒸気ロスによる損失が発生する。
【0007】
このような開弁不良や閉弁不良といった動作不良に対処するために、スチームトラップの本体部分にモニタリングセンサを取り付ける技術が知られている。このモニタリングセンサは、スチームトラップの温度や振動を常時、検出し、開弁不良で滞留したドレンによる本体部分の温度低下や、閉弁不良で生じる蒸気漏れに起因した振動を検知する。
【0008】
そして、たとえばモニタリングセンサによって開弁不良を検知した場合、ドレン排出口の詰まりを解消するためのメンテナンス作業が行われるが、このメンテナンス作業を行うためのクリーニング機構を備えたスチームトラップがある。このスチームトラップは、ドレン排出口に向けて進退可能なクリーニングバーを内蔵しており、外部から操作者がクリーニングバーを操作することによってバー先端をドレン排出口に進入させて詰まりを解消する。
【0009】
以上のようなスチームトラップに関する技術として、後記特許文献1及び特許文献2に開示された技術がある。まず、後記特許文献1に開示された流体機器10は、ケーシング11にセンサ取付部40が形成されており、このセンサ取付部40はねじ孔41を有している。そして、センサ取付部40のねじ孔41に、モニタリングセンサとしてのセンサ装置1の雄ねじ部2aが螺入されることによって、ケーシング11にセンサ装置1が取り付けられる。センサ装置1のセンサ本体2の先端2bが、被検出表面であるねじ孔41の底面42に接することによって、センサ装置1はケーシング11の振動や温度を検出する。
【0010】
センサ装置1をケーシング11に取り付けない状態においては、センサ取付部40にはプラグ45が取り付けられている。プラグ45はねじ孔41に対して着脱可能に螺合されており、センサ取付部40のねじ孔41の底面42を覆うように位置している。これによって、被検出表面である底面42にゴミや粉塵が溜まることを阻止し、センサ本体2の検出精度の低下を防止する。
【0011】
次に、後記特許文献2に開示されたフロート式弁装置においては、弁ケース5の壁面に略丸棒状の異物排除部材8が設けられている。この異物排除部材8は、弁ケース5の外部からの回転操作に従って進退移動するようになっている。異物排除部材8の回転操作は工具を用いて行われる。異物排除部材8の先端に位置する貫通部8aは、復水(ドレン)排出するための弁口6aに向けて配置されており、異物排除部材8を回転操作して異物排除部材8先端の貫通部8aを弁口6aに貫通させることによって、弁口6aに付着した付着異物Sを削ぎ落とす。これによって、弁口6aの詰まりを解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2017/073676号
【特許文献2】国際公開第2008/107967号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の特許文献1に開示された流体機器10においては、流体機器10のケーシング11にモニタリングセンサとしてのセンサ装置1を取り付けることが可能な構成を備えているが、流体機器10の設置状況や使用状況によっては、センサ装置1を取り付けないことも少なくない。この場合、ケーシング11のセンサ取付部40には、プラグ45が取り付けられたままの状態になり、プラグ45が部品として利用されないことになる。
【0014】
また、前述の特許文献2に開示されたフロート式弁装置においては、弁口6aに付着した付着異物Sを削ぎ落すクリーニング動作を行う場合、工具を用いて異物排除部材8を回転操作する必要がある。このためクリーニング動作に際して工具等を用意しておく必要があり作業が煩雑となり得る。
【0015】
そこで、本願に係るクリーニング機構を有する弁装置は、部品の有効利用を図ることができ、かつクリーニング動作の作業性を高めることができるクリーニング機構を有する弁装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願に係るクリーニング機構を有する弁装置は、
流体が流入する弁室空間を内部に有し、追加的に取り付けられる追加機器の取付け部位を外部面に有する本体であって、弁室空間と外部とを連通させる排出穴が形成された本体、
前記排出穴を閉塞または開放する弁手段、
前記排出穴に向けて、本体に配置されたクリーニング手段であって、外部からのクリーニング操作を受け、前記排出穴に侵入し又は前記排出穴から退避するクリーニング手段、
前記取付け部位を被って、前記本体に着脱可能に接続されるカバー手段であって、前記クリーニング手段に対し、前記クリーニング操作が可能なように連結することができる連結部を有するカバー手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願に係るクリーニング機構を有する弁装置においては、カバー手段は、本体に形成された取付け部位を被って、本体に着脱可能に接続される。そして、このカバー手段は、クリーニング手段に対し、クリーニング操作が可能なように連結することができる連結部を有している。
【0018】
このため、部品としてのカバー手段の有効利用を図ることができ、かつカバー手段を用いてクリーニング操作を行うことができるためクリーニング動作の作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本願に係るクリーニング機構を有する弁装置の第1の実施形態を示すスチームトラップ90の断面図であり、初期状態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すクリーニング部10近傍の拡大断面図である。
【
図4】
図1に示すプラグ4を六角穴41側から見た図である。
【
図5】
図1に示すスチームトラップ90の断面図であり、クリーニング動作時の断面図である。
【
図6】
図1に示すスチームトラップ90にモニタリングセンサ3を取り付けた状態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るクリーニング機構を有する弁装置の下記の要素に対応している。
【0021】
蒸気、ドレン7・・・流体
モニタリングセンサ3・・・追加機器、検出器
プラグ4・・・カバー手段
クリーニング部10・・・クリーニング手段
フロート30・・・弁手段
六角穴41・・・連結部
センサ取付け部44・・・取付け部位
弁口50a・・・排出穴
上部本体91及び下部本体92・・・本体
外表面91c・・・外部面
弁室95・・・弁室空間
【0022】
[第1の実施形態]
本願に係るクリーニング機構を有する弁装置の第1の実施形態を、スチームトラップを例に説明する。
【0023】
(スチームトラップの概要の説明)
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレン(蒸気の凝縮水)が滞留し、蒸気の移送の障害になる。
【0024】
このような事態を回避するために、配管には随所に多数のスチームトラップが設けられている。
図1は本実施形態におけるスチームトラップ90の断面図である。このスチームトラップ90は、上部本体91及び下部本体92によって本体を構成している。上部本体91と下部本体92とはボルト94によって固定され、内部に気密性を保った弁室95を形成する。上部本体91の上方には、接続口91a、91bが横方向の同軸上に形成されている。
【0025】
配管の主管(図示せず)には支管81が連通して設けられており、この支管81に、上部本体91に形成された接続口91aが接続される。そして、接続口91aから弁室95内に蒸気やドレンが矢印101方向に流入する。なお、弁室95の上部には網状のストレーナ80が設けられており、蒸気やドレンはこのストレーナ80を透過して弁室95に流入する。ストレーナ80を透過することによって、蒸気やドレンに混入している異物がストレーナ80で捕捉される。
【0026】
弁室95の下方には弁座50が固定して取り付けられており、この弁座50には弁口50aが形成されている。この弁口50aは、弁座50の後方に形成されている中間室53に通じており、さらに中間室53は上部本体91及び下部本体92に連続的に形成されている排出路52に連通している。
【0027】
上部本体91の上方に形成された接続口91bにはドレン回収管82が接続され、このドレン回収管82に排出路52が連通する。これによって、弁室95内に滞留したドレン7を、弁口50aからドレン回収管82に向けて矢印102方向に排出可能である。
【0028】
弁座50に形成された弁口50aは、通常時においては、弁室95内に配置されたフロート30によって閉塞されており蒸気漏れが生じないようになっている。フロート30は中空の球状体として構成され、弁室95内において浮動可能に位置し、フロート30の球面が弁口50aの周縁に当接することによって弁口50aを閉塞する。弁室50内に滞留したドレン7の水位が基準レベルL1にあるとき、フロート30は
図1に示す状態(下降状態)に位置し、弁口50aを閉塞する。
【0029】
弁室95にドレンが流入してドレン7の水位が上昇し、開放レベルL2に達したとき、フロート30はこれにともなって矢印103方向に浮上し(浮上状態)、弁口50aを開放する。なおフロート30の浮上は、弁室95の上部に配置された前述のストレーナ80によって規制される。
【0030】
弁口50aが開放されたことによって、弁室95内に滞留したドレン7は、配管内の高圧に基づく勢いに従い、弁口50aから中間室53及び排出路52を通して矢印102方向に抜け、ドレン回収管82に排出される。排出後は、弁室95内のドレン7の水位が下がるため、これに伴ってフロート30も下降し、ドレン7の水位が基準レベルL1に戻ったとき、フロート30は
図1に示す状態に復位して弁口50aを閉塞する。
【0031】
以上のように、スチームトラップ90においては、弁室95内のドレン7の滞留量に従ってフロート30が浮上と下降を繰り返し、弁口50aを開閉して適宜、ドレン7をドレン回収管82に排出する。なお、弁口50aは常にドレン7に水没した状態にあるため、配管系統を移送される蒸気がスチームトラップ90から漏れ出すことはない。
【0032】
弁室95内の下部にはカーブを描くように屈曲させたバイメタル85が設けられている。バイメタル85は、膨張係数の異なる2枚の合金薄板を張り合わせた感温部材であり、周辺温度が高温のときは端部85aが下降して
図1に示す状態に収まるが、周辺温度が低温になったときはこれに反応して形状が変化し、端部85aが斜め左方向に移動してフロート30を押し上げることにより、ドレン7の水位にかかわらず強制的に弁口50aを開放するようになっている(
図6参照)。
【0033】
このバイメタル85は、低温のエアーやドレン7を適切に弁口50aから排出するために設けられている。たとえば、設備の稼働を開始した初期段階においては、弁室95内には低温のエアーが充満しているため、バイメタル85はフロート30を押し上げ弁口50aを強制的に開放した状態にある。このため、蒸気移送が開始されるとこの初期のエアーは弁口50aから適正に排出され、エアーバインディング(空気障害)が回避される。また、弁室95内に流入してくる低温のドレン7も同様に弁口50aから適正に排出される。
【0034】
そして、続いて弁室95に高温の蒸気が流入したとき、バイメタル85は高温に反応して変形し、端部85aが下降して
図1に示す状態に至る。これによって、以後、フロート30はバイメタル85の干渉を受けずに、前述のように滞留するドレン7の水位に従って上昇、下降を繰り返す。
【0035】
(モニタリングセンサ3の取り付けの説明)
スチームトラップ90の弁室95には、流入するドレンと共に錆やスケール等の異物が混入して流入することがある。前述のように、蒸気やドレンに混入している異物はストレーナ80で捕捉されるが、細かい異物はストレーナ80を透過して弁室95に侵入する。そして、このような異物が弁口50aに付着して堆積した場合、この異物によって弁口50aが塞がれて詰まりが生じ、フロート30が浮上しても適正にドレン7をドレン回収管82に向けて排出することができなくなる開弁不良が生じる。
【0036】
また、フロート30の摩耗や変形等に起因して、フロート30の球面が弁口50aを確実に閉塞できなくなる閉弁不良を生じることもある。閉弁不良が生じた場合、弁口50aから蒸気が漏れ出し蒸気ロスによる損失が発生する。
【0037】
このような開弁不良や閉弁不良といった動作不良の発生の有無は、スチームトラップの設置個所や使用状況の影響を受ける。このため、たとえば多数のスチームトラップを配管系統の随所に設ける際、動作不良の発生をモニタリングする必要がある箇所については、
図6に示すようにスチームトラップ90の上部本体91に追加的にモニタリングセンサを取り付けることがある。また、スチームトラップを設置した後、使用の経過に応じて事後的にモニタリングセンサを取り付けることもある。
【0038】
追加的に取り付けるモニタリングセンサ3は、上部本体91の外表面91c(
図1)の温度や振動を常時、検出して中央制御装置(図示せず)に向けて検出信号を無線によって送信する。すなわち、弁室95は通常、蒸気熱を受けて高温であるが、弁口50aが詰まることによって開弁不良が生じた場合は、弁室95にドレン7が滞留したままになって上部本体91の外表面91cの温度は低下する。モニタリングセンサ3がこの温度低下を検出することによって中央制御装置は開弁不良を認識する。
【0039】
また、フロート30の摩耗や変形等によって閉弁不良が生じている場合は、弁室95からドレン7が完全に排出された後に蒸気が流入して充満し、弁口50aから蒸気が漏れ出す。このため、蒸気の漏洩音が発生し、モニタリングセンサ3が漏洩音による外表面91cの振動を検出することによって中央制御装置は閉弁不良を認識する。
【0040】
図1に示すように、スチームトラップ90の上部本体91の外表面91cには、モニタリングセンサ3を取り付けるためのセンサ取付け部44が設けられている。センサ取付け部44はスチームトラップ90の外表面91cから突出するように上部本体91に一体的に形成されている。
【0041】
そして、センサ取付け部44内には上部が開口した円柱状の取付け空間45が形成されている。この取付け空間45は、センサ取付け部44及び外表面91cに形成された凹部であり、弁室95とは連通していない独立の空間である。そして、取付け空間45の内周面には取付け雌ネジ部46が形成されており、取付け空間45の底面部分は被検出面47として構成される。
【0042】
スチームトラップ90の初期状態においては、
図1に示すようにセンサ取付け部44には、被検出面47を覆ってプラグ4が取り付けられている。このプラグ4は、
図3及び
図4に示すように、略円盤形状のプラグヘッド4aを備えており、プラグヘッド4aの側周には規則的な凹凸が形成されている(
図4参照)。そしてプラグ4には、プラグヘッド4aよりも径が小さい円柱部4bを備えており、円柱部4bの内部には、プラグヘッド4aの反対側の後端面に向けて開口した六角穴41が形成されている(
図3参照)。
【0043】
そして、円柱部4bの外周面にはプラグ雄ネジ部42が形成されている。このプラグ雄ネジ部42は、前述の取付け雌ネジ部46に螺合可能な形状、大きさを備えており、プラグ雄ネジ部42と取付け雌ネジ部46との螺合によって、プラグ4がセンサ取付け部44に取り付けられている。
【0044】
一方、モニタリングセンサ3は、
図6に示すように先端部に検出ヘッド部3aを有しており、この検出ヘッド部3aの外周面にはセンサ雄ネジ部3bが形成されている。このセンサ雄ネジ部3bは、前述の取付け雌ネジ部46に螺合可能な形状、大きさを備えている。なお、図において、螺合部分より上部のモニタリングセンサ3については、断面図ではなく側面図として表されている。
【0045】
モニタリングセンサ3をスチームトラップ90に取り付ける場合、まずセンサ取付け部44に螺入されて接続されているプラグ4を回転操作して緩め、センサ取付け部44から取り外す。そして、センサ取付け部44の取付け雌ネジ部46に、モニタリングセンサ3のセンサ雄ネジ部3bを螺入して取り付ける。
【0046】
センサ雄ネジ部3bと取付け雌ネジ部46とを限界位置まで螺合させた場合、モニタリングセンサ3の検出ヘッド部3aの先端面は、上部本体91側の被検出面47に接触する。これによってモニタリングセンサ3は、上部本体91の温度や振動を常時、検出することができるようになる。
【0047】
初期状態において、プラグ4がセンサ取付け部44に取り付けられていることによって、被検出面47がプラグ4によって覆われる。このため、被検出面47にゴミや粉塵等の異物が付着しない状態を保持することができ、モニタリングセンサ3の取付後において高い検出精度を確保することができる。なお、スチームトラップ90にモニタリングセンサ3が取り付けられず、センサ取付け部44にプラグ4が取り付けられたままの状態でスチームトラップ90が使用される場合も少なくない。
【0048】
(クリーニング部10の構成の説明)
本実施形態においては、スチームトラップ90の弁口50aが異物によって塞がれて詰まり状態が生じた場合に対処するために、クリーニング部10が設けられている。以下にこのクリーニング部10の構成を
図2に基づいて説明する。
【0049】
下部本体92の底部に設けられている弁座50には、中心線が基準線L5に沿うように筒状保持部55が螺入されて固定されている。基準線L5は、弁口50aの中心線に一致する仮想線である。弁座50の後端面と筒状保持部55の先端面との間の空間が中間室53である。そして、さらに筒状保持部55には、押圧部56が螺入されている。そして、押圧部56の先端側に設けられたシール57を、押圧部56が加圧することによって、中間室53からのドレンの漏れを防止している。
【0050】
これら筒状保持部55、押圧部56及びシール57の中心に形成された貫通孔には、略円柱形状のクリーニングバー2が貫通して配置されている。クリーニングバー2の軸線は、基準線L5に一致している。クリーニングバー2の略中間部にはバー雄ネジ部2Gが形成されており、このバー雄ネジ部2Gは、筒状保持部55の中心孔内面に形成された雌ネジ部に螺合している。
【0051】
クリーニングバー2のバー先端25は細く形成されており、弁口50aに向けて配置されている。このバー先端25の直径は、弁口50aの内径よりもやや小さく形成されている。また、バー先端25に連続して前進ストッパー21が形成されている。この前進ストッパー21は傾斜面として構成される。なお、弁座50には弁口50aの内側に、前進ストッパー21に対応させて斜壁50bが形成されている。さらに、クリーニングバー2の中間部には、クリーニングバー2のバー径よりも大きい径を有する後退ストッパー22が一体的に固定されている。
【0052】
クリーニングバー2の後端部分は押圧部56から突出している。そして、この後端部近傍には操作用六角ヘッド2bが形成されており、この操作用六角ヘッド2bのさらに後端側に位置する後端面には操作用溝2aが形成されている。操作用溝2aが形成されている後端部の径は、操作用六角ヘッド2bの径よりもやや小さい。なお、操作用六角ヘッド2bは、前述のプラグ4の六角穴41に嵌合可能な形状、大きさを備えている。
【0053】
クリーニングバー2を操作し正回転させれば、バー雄ネジ部2Gと筒状保持部55との螺合に従って、クリーニングバー2は矢印111方向に前進する。この場合、クリーニングバー2の前進ストッパー21が、弁座50内側に形成された斜壁50bに当接した時点で、クリーニングバー2の矢印111方向への動きは限界に達し、これ以上前進することができなくなる。
【0054】
また、クリーニングバー2を逆回転させれば、クリーニングバー2は矢印112方向に後退する。この場合、クリーニングバー2の後退ストッパー22が筒状保持部55の先端面55aに当接した時点で、クリーニングバー2の矢印112方向への動きは限界に達し、これ以上後退することができなくなる。
【0055】
(クリーニング動作の説明)
次に、スチームトラップ90の弁口50aに詰まり状態が発生した場合のクリーニング動作を
図5に基づいて説明する。弁口50aに詰まり状態が発生していると判断した場合、操作者は
図2に示す状態(初期状態)から、クリーニングバー2を回転操作して弁口50aをクリーニングする。
【0056】
クリーニングバー2の回転操作に際しては、プラグ4を回転操作の工具として転用する。すなわち、弁口50aのクリーニング動作を行う場合、操作者はまずセンサ取付け部44に取り付けられているプラグ4を逆回転させて緩め、センサ取付け部44から取り外す。
【0057】
そして、プラグ4の円柱部4bの内部に形成されている六角穴41に、クリーニングバー2の後端部分を挿入して、六角穴41に操作用六角ヘッド2bを嵌め入れて連結する(
図5)。すなわち、六角穴41と操作用六角ヘッド2bとを嵌合させた状態にする。この状態でプラグ4を正回転させ、クリーニングバー2を矢印111方向に前進させる。操作者はクリーニングバー2の前進ストッパー21が、弁座50内側に形成された斜壁50bに当接し、クリーニングバー2が前進できなくなる限界位置に達するまで正回転を続ける。
【0058】
クリーニングバー2の回転と前進により、バー先端25も回転しながら弁口50aに進入する。クリーニングバー2の前進ストッパー21が斜壁50bに当接して限界位置に達したとき、バー先端25は弁口50aから弁室95に向けて突出している。このバー先端25の突出によって、弁口50aに付着した異物は削ぎ落とされ、弁室95に押し入れられる。
【0059】
ここで、前述のようにバー先端25の直径は弁口50aの内径よりもやや小さく形成されている。このため、バー先端25が弁口50aに進入している状態(
図3)においても、バー先端25と弁口50aの内径との間には隙間が生じるようになっており、弁室95内の高圧の勢いに従って、ドレン7とともに異物がこの隙間から中間室53側に一気に流入し、排出路52を通じて矢印102方向に排出されて弁口50aの詰まり状態が徐々に解消する。
【0060】
この後、操作者は、プラグ4を逆回転させクリーニングバー2を矢印112方向に後退させる。バー先端25が弁口50aから退去した時点で、弁口50aは完全に開放され、これによってドレン7や異物はさらに勢いよく中間室53側に流入して排出される。この後も操作者は引き続きプラグ4を逆回転させてクリーニングバー2を矢印112方向に後退させ、クリーニングバー2の後退ストッパー22が筒状保持部55の先端面55aに当接し初期状態(
図1)に復位した時点でクリーニング動作を終了する。
【0061】
クリーニング動作を終了した後、操作者はクリーニングバー2の操作用六角ヘッド2bからプラグ4を抜き取り、上部本体91のセンサ取付け部44に取り付けて初期状態に復帰させる。なお、前述のように、プラグ4のプラグヘッド4aの側周には規則的な凹凸が形成されているため(
図4参照)、操作者は容易かつ確実にプラグ4を回転操作(正回転操作及び逆回転操作)することができる。
【0062】
スチームトラップ90にモニタリングセンサ3が取り付けられており、センサ取付け部44からプラグ4が取り外されている場合は、クリーニング動作の際、操作者がプラグ4を入手できないことがある。このようなときは、操作者はクリーニングバー2の後端に形成されている操作用溝2aにドライバー等の工具を嵌め入れてクリーニングバー2を回転させ、クリーニング動作を行う。
【0063】
[その他の実施形態]
前記実施形態においては、本願に係るクリーニング機構を有する弁装置を、スチームトラップ90に適用した例を掲げたが、他の流体トラップ(たとえばエアートラップ)やその他の弁装置に適用することもできる。また、前記実施形態においては、フロート式のスチームトラップ90を例に掲げ、弁手段としてフロート30を例示したが、ディスク式スチームトラップ、バイメタル式スチームトラップ等、フロート式以外のスチームトラップに適用してもよい。
【0064】
また、前記実施形態においては、追加機器としてモニタリングセンサ3を例示したが、これに限定されるものではなく、本体(上部本体91及び下部本体92等)に対して追加的に取り付けられるものであれば他の機器でもよい。
【0065】
さらに、前記実施形態においては、上部本体91の上面である外表面91cに取付け部位としてのセンサ取付け部44が形成されている例を示したが、追加機器(モニタリングセンサ3等)を取り付けることが可能である限り上面以外の部分(たとえば側面や底面)に取付け部位を形成してもよい。また、前記実施形態においては、排出穴として弁口50aを例示したが、弁室空間(弁室95等)と外部とを連通させるものであれば他の構成を採用することもできる。
【0066】
さらに、前記実施形態においては、クリーニング手段としてクリーニングバー2を備えたクリーニング部10を例示したが、外部からのクリーニング操作を受け、排出穴(弁口50a等)に進入し又は排出穴から退避するものであれば、他の構成を用いてもよい。また、クリーニング操作としてクリーニングバー2を回転操作してクリーニングバー2を前進又は後退させる例を示したが、他の構成を採用することもできる。たとえば、クリーニングバー2等に対し、クリーニング操作として直線方向への力を加えてクリーニングバー2等を前進させる構成でもよい。
【0067】
また、前記実施形態においては、連結部を有するカバー手段として六角穴41が形成されたプラグ4を例示したが、取付け部位(センサ取付け部44等)を被って、本体(上部本体91及び下部本体92等)に着脱可能に接続され、クリーニング手段(クリーニング部10等)に対し、クリーニング操作が可能なように連結することができる連結部(六角穴41等)を有している限り他の形状、構造のものを採用してもよい。
【0068】
たとえば、前記実施形態において示したクリーニングバー2の操作用溝2aに嵌合する形状の突起をカバー手段(プラグ4等)の連結部として構成することもできる。また、クリーニングバー2等に凹部を形成し、この凹部に嵌合可能な凸部をカバー手段(プラグ4等)の連結部として採用してもよい。
【0069】
なお、以上に述べた各実施形態を任意に組み合わせ、新たな実施形態とすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
3:モニタリングセンサ 4:プラグ 7:ドレン 10:クリーニング部
30:フロート 41:六角穴 44:センサ取付け部 50a:弁口
91:上部本体 91c:外表面 92:下部本体 95:弁室