(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166179
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】インバータ装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/538 20070101AFI20231114BHJP
【FI】
H02M7/538
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077052
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】522181924
【氏名又は名称】株式会社WINSER
(74)【代理人】
【識別番号】100110788
【弁理士】
【氏名又は名称】椿 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100124589
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優
(72)【発明者】
【氏名】秋田 一男
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA09
5H770DA45
5H770JA16X
5H770QA25
(57)【要約】
【課題】高い変換効率を有するインバータ装置を提供する。
【解決手段】インバータ装置1は、入力端子11および12と、1次側コイル21および22と、切替部30と、電源コイル50と、2次側コイル23とを備える。切替部30は、1次側コイル21に直流電圧を印加し、かつ1次側コイル22に直流電圧を印加しない第1の状態と、1次側コイル21に直流電圧を印加せず、1次側コイル22に直流電圧を印加する第2の状態との間で直流電圧の印加状態を交互に切り替える。1次側コイル21のインピーダンスZT1、1次側コイル22のインピーダンスZT2、電源コイル50のインピーダンスZL、および2次側コイル23のインピーダンスZT3は、式(1)、(2)、および(3)を満たす。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流電圧の供給を受ける第1および第2の入力端子の各々と、
前記第1の入力端子に電気的に接続された一端を有する第1および第2の1次側コイルの各々と、
前記第1の1次側コイルに前記直流電圧を印加し、かつ前記第2の1次側コイルに前記直流電圧を印加しない第1の状態と、前記第1の1次側コイルに前記直流電圧を印加せず、前記第2の1次側コイルに前記直流電圧を印加する第2の状態との間で前記直流電圧の印加状態を交互に切り替える切替部と、
前記第1の入力端子と前記第1および第2の1次側コイルの各々の前記一端との間、および前記第2の入力端子と前記第1および第2の1次側コイルの各々の他端との間のうち少なくとも一方に設けられた電源コイルと、
前記第1の状態と前記第2の状態との間で前記直流電圧の印加状態を切り替えた場合に、交流電圧を発生する2次側コイルとを備え、
前記第1の1次側コイルのインピーダンスZT1、前記第2の1次側コイルのインピーダンスZT2、前記電源コイルのインピーダンスZL、および前記2次側コイルのインピーダンスZT3は、下記式(1)、(2)、および(3)を満たす、インバータ装置。
ZL+ZT1≧ZT3≧ZL ・・・(1)
ZL+ZT2≧ZT3≧ZL ・・・(2)
0.95×ZT1≧ZT2≧0.95≧1.05×ZT1 ・・・(3)
【請求項2】
前記第1の1次側コイルの前記一端から前記他端までの長さLGT1、および前記第2の1次側コイルの前記一端から前記他端までの長さLGT2は、下記式(4)を満たす、請求項1に記載のインバータ装置。
0.95×LGT1≧LGT2≧0.95≧1.05×LGT1 ・・・(4)
【請求項3】
前記第1および第2の1次側コイルの各々の導線が巻き回されたボビンをさらに備え、
前記第1および第2の1次側コイルの各々の導線は、同一の巻回し方向に沿って一対で前記ボビンに巻き回される、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記ボビンは、互いに異なる第1、第2、第3、および第4のボビン端子の各々を含み、
前記第1の1次側コイルの前記一端は、前記第1のボビン端子に固定され、
前記第2の1次側コイルの前記一端は、前記第2のボビン端子に固定され、
前記第1の1次側コイルの前記他端は、前記第3のボビン端子に固定され、
前記第2の1次側コイルの前記他端は、前記第4のボビン端子に固定され、
前記第2のボビン端子は、前記第1のボビン端子から所定の距離だけ前記巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられ、
前記第4のボビン端子は、前記第3のボビン端子から前記所定の距離だけ前記巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられる、請求項3に記載のインバータ装置。
【請求項5】
前記切替部は、
前記第2の入力端子に電気的に接続された電源側端子と、
前記第1の1次側コイルの前記他端に電気的に接続された第1のコイル側端子と、
前記第1の2次側コイルの前記他端に電気的に接続された第2のコイル側端子と、
前記電源側端子と前記第1のコイル側端子との間に設けられた第1のスイッチと、
前記電源側端子と前記第2のコイル側端子との間に設けられた第2のスイッチと、
前記第1および第2のスイッチの各々を制御する制御部とを含む、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記切替部は、
前記第2の入力端子に電気的に接続された電源側端子と、
前記第1の1次側コイルの前記他端に電気的に接続された第1のコイル側端子と、
前記第1の2次側コイルの前記他端に電気的に接続された第2のコイル側端子と、
発振回路または交流電源からなる制御部と、
前記制御部の出力に基づいて、前記電源側端子と前記第1のコイル側端子との導通を制御する第1のトランジスタと、
前記制御部の出力に基づいて、前記電源側端子と前記第2のコイル側端子との導通を制御する第2のトランジスタとを含む、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記第1および第2の1次側コイルの各々と、前記2次側コイルとは互いに絶縁されている、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記第1の1次側コイルの前記他端に接続された一端を有する第1の出力コイルと、
前記第2の1次側コイルの前記他端に接続された一端を有する第2の出力コイルとをさらに備え、
前記直流電圧の印加状態が前記第1および第2の状態のいずれである場合にも、前記2次側コイルは、前記第1および第2の1次側コイル、ならびに前記第1および第2の出力コイルにより構成される、請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記第1の1次側コイル、前記第2の1次側コイル、および前記2次側コイルのうち少なくともいずれか1つが発生した熱に基づいて起電力を発生する熱変換材料をさらに備え、
前記熱変換材料は、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子との間に、発生した起電力を印加する、請求項1に記載のインバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置に関する。より特定的には、本発明は、高い変換効率を有するインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインバータ装置は、たとえば下記特許文献1などに開示されている。下記特許文献1には、直流電源と、交互にオン駆動されて直流電源からインダクタンス素子に交互に電流を流す一対のスイッチング素子と、そのスイッチング動作によりインダクタンス素子に発生する起電力を入力される圧電トランスと、この圧電トランスの出力に接続される負荷とを備えるインバータ装置が開示されている。インダクタンス素子の直流電源に接続されていない側の端子と、直流電源の少なくとも一端との間にコンデンサが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインバータ装置には、変換効率が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、その目的は、高い変換効率を有するインバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の局面に従うインバータ装置は、直流電源の直流電圧の供給を受ける第1および第2の入力端子の各々と、第1の入力端子に電気的に接続された一端を有する第1および第2の1次側コイルの各々と、第1の1次側コイルに直流電圧を印加し、かつ第2の1次側コイルに直流電圧を印加しない第1の状態と、第1の1次側コイルに直流電圧を印加せず、第2の1次側コイルに直流電圧を印加する第2の状態との間で直流電圧の印加状態を交互に切り替える切替部と、第1の入力端子と第1および第2の1次側コイルの各々の一端との間、および第2の入力端子と第1および第2の1次側コイルの各々の他端との間のうち少なくとも一方に設けられた電源コイルと、第1の状態と第2の状態との間で直流電圧の印加状態を切り替えた場合に、交流電圧を発生する2次側コイルとを備え、第1の1次側コイルのインピーダンスZT1、第2の1次側コイルのインピーダンスZT2、電源コイルのインピーダンスZL、および2次側コイルのインピーダンスZT3は、下記式(1)、(2)、および(3)を満たす。
【0007】
上記インバータ装置において好ましくは、第1の1次側コイルの一端から他端までの長さLGT1、および第2の1次側コイルの一端から他端までの長さLGT2は、下記式(4)を満たす。
【0008】
上記インバータ装置において好ましくは、第1および第2の1次側コイルの各々の導線が巻き回されたボビンをさらに備え、第1および第2の1次側コイルの各々の導線は、同一の巻回し方向に沿って一対でボビンに巻き回される。
【0009】
上記インバータ装置において好ましくは、ボビンは、互いに異なる第1、第2、第3、および第4のボビン端子の各々を含み、第1の1次側コイルの一端は、第1のボビン端子に固定され、第2の1次側コイルの一端は、第2のボビン端子に固定され、第1の1次側コイルの他端は、第3のボビン端子に固定され、第2の1次側コイルの他端は、第4のボビン端子に固定され、第2のボビン端子は、第1のボビン端子から所定の距離だけ巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられ、第4のボビン端子は、第3のボビン端子から所定の距離だけ巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられる。
【0010】
上記インバータ装置において好ましくは、切替部は、第2の入力端子に電気的に接続された電源側端子と、第1の1次側コイルの他端に電気的に接続された第1のコイル側端子と、第1の2次側コイルの他端に電気的に接続された第2のコイル側端子と、電源側端子と第1のコイル側端子との間に設けられた第1のスイッチと、電源側端子と第2のコイル側端子との間に設けられた第2のスイッチと、第1および第2のスイッチの各々を制御する制御部とを含む。
【0011】
上記インバータ装置において好ましくは、切替部は、第2の入力端子に電気的に接続された電源側端子と、第1の1次側コイルの他端に電気的に接続された第1のコイル側端子と、第1の2次側コイルの他端に電気的に接続された第2のコイル側端子と、発振回路または交流電源からなる制御部と、制御部の出力に基づいて、電源側端子と第1のコイル側端子との導通を制御する第1のトランジスタと、制御部の出力に基づいて、電源側端子と第2のコイル側端子との導通を制御する第2のトランジスタとを含む。
【0012】
上記インバータ装置において好ましくは、第1および第2の1次側コイルの各々と、2次側コイルとは互いに絶縁されている。
【0013】
上記インバータ装置において好ましくは、第1の1次側コイルの他端に接続された一端を有する第1の出力コイルと、第2の1次側コイルの他端に接続された一端を有する第2の出力コイルとをさらに備え、直流電圧の印加状態が第1および第2の状態のいずれである場合にも、2次側コイルは、第1および第2の1次側コイル、ならびに第1および第2の出力コイルにより構成される。
【0014】
上記インバータ装置において好ましくは、第1の1次側コイル、第2の1次側コイル、および2次側コイルのうち少なくともいずれか1つが発生した熱に基づいて起電力を発生する熱変換材料をさらに備え、熱変換材料は、第1の入力端子と第2の入力端子との間に、発生した起電力を印加する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高い変換効率を有するインバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図2】第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2の巻線方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態の第1の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態の第2の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態の第3の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態の第4の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図7】本発明の第2の実施の形態におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態の第1の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態の第2の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【
図10】本発明の一実施例におけるインピーダンスZT3と、インバータ装置1の変換効率との関係を示す図である。
【
図11】本発明の一実施例におけるインピーダンスZT2と、インバータ装置1の変換効率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0018】
[第1の実施の形態]
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【0020】
図1を参照して、本実施の形態におけるインバータ装置1(インバータ装置の一例)は、入力端子11および12(第1および第2の入力端子の一例)と、コイル(チョークコイル)21および22と、切替部30(切替部の一例)と、電源コイル50(電源コイルの一例)と、コイル(チョークコイル)23と、出力端子92および93とを主に備えている。
【0021】
入力端子11および12の各々は、直流電源E(直流電源の一例)の直流電圧の供給を受ける。入力端子11は直流電源Eの正端子に接続される。入力端子12は直流電源Eの負端子に接続される。
【0022】
コイル21は、一端211および他端212を含んでいる。コイル22は、一端221および他端222を含んでいる。コイル21の一端211およびコイル22の一端221は、端子91において互いに電気的に接続されている。端子91は、電源コイル50を介して入力端子11に電気的に接続されている。これにより、コイル21の一端211およびコイル22の一端221の各々は、入力端子11に電気的に接続されている。
【0023】
切替部30は、第1の状態と第2の状態との間で直流電源Eの直流電圧の印加状態を交互に切り替える。直流電圧の印加状態は、発生させる交流電圧に対応する所定の時間が経過する度に周期的に切り替えられる。第1の状態は、直流電源Eの直流電圧をコイル21に印加し、かつ直流電源Eの直流電圧をコイル22に直流電圧を印加しない状態である。第2の状態は、直流電源Eの直流電圧をコイル21に印加せず、かつ直流電源Eの直流電圧をコイル22に印加する状態である。
【0024】
切替部30は、任意の構成を有していればよく、たとえば以下の構成を有している。切替部30は、電源側端子31(電源側端子の一例)と、コイル側端子32および33(第1および第2のコイル側端子の一例)と、スイッチ34および35(第1および第2のスイッチの一例)と、制御部36(制御部の一例)とを含んでいる。
【0025】
電源側端子31は、入力端子12に電気的に接続されている。コイル側端子32は、コイル21の他端212に電気的に接続されている。コイル側端子33は、コイル22の他端222に電気的に接続されている。
【0026】
スイッチ34は、電源側端子31とコイル側端子32との間に設けられている。スイッチ35は、電源側端子31とコイル側端子33との間に設けられている。
【0027】
制御部36は、スイッチ34および35の各々を制御する。制御部36は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)などを含んでいる。第1の状態では、制御部36はスイッチ34をオンし、かつスイッチ35をオフする。第2の状態では、制御部36はスイッチ34をオフし、かつスイッチ35をオンする。
【0028】
電源コイル50は、入力端子11と、コイル21の一端211およびコイル22の一端221との間に設けられている。電源コイル50は、1次側のショートを防止する役割を果たす。
【0029】
コイル23は、第1の状態と第2の状態との間での直流電源Eの直流電圧の印加状態を切り替えた場合に、交流電圧を発生する。コイル23は、一端231および他端232を含んでいる。コイル23の一端231は、出力端子92に電気的に接続されている。コイル23の他端232は、出力端子93に電気的に接続されている。コイル21および22の各々と、コイル23とは互いに絶縁されている。
【0030】
出力端子92および93の各々は、負荷LDに電気的に接続される。出力端子92および93は、負荷LDに対して交流電圧を印加する。
【0031】
第1の状態では、制御部36は、スイッチ34をオンし、スイッチ35をオフする。これにより、コイル21には直流電圧が印加され、コイル22には直流電圧が印加されなくなる。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が増加し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が減少する。第1の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を正とし、他端232を負とする誘起電圧がコイル23に発生する。その結果、出力端子92から出力端子93へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0032】
第2の状態では、制御部36は、スイッチ34をオフし、スイッチ35をオンする。これにより、コイル21には直流電圧が印加されなくなり、コイル22には直流電圧が印加される。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が減少し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が増加する。第2の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を負とし、他端232を正とする誘起電圧がコイル23に発生する。その結果、出力端子93から出力端子92へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0033】
負荷LDに印加する交流電圧の周波数は、スイッチの能力、スイッチングトランジスタの能力、トランスの能力、チョークコイルの性能、チョークコイルの巻線、配線の表皮効果によるインピーダンスの上昇などの影響を考慮して設計されればよい。
【0034】
コイル23は、コイル21および22とともにトランスTを構成している。トランスTにおける1次側コイルは、コイル21または22である。トランスTにおける2次側コイルはコイル23である。すなわち、第1の状態では、コイル21に直流電圧が印加されるので、コイル21が1次側コイルとなる。第2の状態では、コイル22に直流電圧が印加されるので、コイル22が1次側コイルとなる。コイル23は、コイル21および22の各々によってもたらされた磁場の変化により誘起電圧を発生するので、2次側コイルとなる。
【0035】
ここで、第1の状態で直流電圧が印加される1次側コイルを第1の1次側コイルT1(第1の1次側コイルの一例)と表す。第2の状態で直流電圧が印加される1次側コイルを第2の1次側コイルT2(第2の1次側コイルの一例)と表す。2次側コイルを2次側コイルT3(2次側コイルの一例)と表す。本実施の形態では、第1の1次側コイルT1はコイル21であり、第2の1次側コイルT2はコイル22であり、2次側コイルT3はコイル23である。
【0036】
第1の1次側コイルT1のインピーダンスをインピーダンスZT1と表す。第2の1次側コイルT2のインピーダンスをインピーダンスZT2と表す。電源コイル50のインピーダンスをインピーダンスZLと表す。2次側コイルT3のインピーダンスをインピーダンスZT3と表す。この場合、インピーダンスZT1、ZT2、ZL、およびZT3は、下記式(1)、(2)、および(3)を満たす。これにより、高い変換効率を有するインバータ装置1を実現することができる。
【0037】
ZL+ZT1≧ZT3≧ZL ・・・(1)
【0038】
ZL+ZT2≧ZT3≧ZL ・・・(2)
【0039】
0.95×ZT1≧ZT2≧0.95≧1.05×ZT1 ・・・(3)
【0040】
ところで、1次側コイルT1、第2の1次側コイルT2、電源コイル50、および2次側コイルT3の各々は、いずれもコイル(インダクタ)である。このため、インピーダンスZT1、ZT2、ZL、およびZT3の各々の関係は、実質的に1次側コイルT1、第2の1次側コイルT2、電源コイル50、および2次側コイルT3の各々のインダクタンスの関係に相当する。具体的には、第1の1次側コイルT1のインダクタンスをインダクタンスLT1と表す。第2の1次側コイルT2のインダクタンスをインダクタンスLT2と表す。電源コイル50のインダクタンスをインダクタンスLLと表す。2次側コイルT3のインダクタンスをインダクタンスLT3と表す。この場合、インダクタンスLT1、LT2、LL、およびLT3は、下記式(1A)、(2A)、および(3A)を満たす。下記式(1A)は式(1)をインダクタの関係式に書き換えたものである。下記式(2A)は式(2)をインダクタの関係式に書き換えたものである。下記式(3A)は式(3)をインダクタの関係式に書き換えたものである。
【0041】
LL+LT1≧LT3≧LL ・・・(1A)
【0042】
LL+LT2≧LT3≧LL ・・・(2A)
【0043】
0.95×LT1≧LT2≧0.95≧1.05×LT1 ・・・(3A)
【0044】
図1において入力側と出力側とのインピーダンス整合を図る場合、一般的には、入力側を電源コイル50、出力側を第1の1次側コイルT1または第2の1次側コイルT2と見なして、ZL=ZT1またはZL=ZT2という式が成り立つように、インピーダンス整合が図られる。同様に、入力側を2次側コイルT3、出力側を負荷LDと見なして、ZT3=ZLDという式(ZLDは、負荷LDのインピーダンス)が成り立つように、インピーダンス整合が図られる。
【0045】
本願発明者は、インバータ装置1において、1次側のショートを防止するための電源コイル50が直流電源Eに電気的に接続されている点に着目した。そして、電源コイル50のインピーダンスZLが直流電源Eの内部インピーダンス(電源インピーダンス)に相当すると見なすことができることに思い至った。
【0046】
また本願発明者は、インバータ装置1全体として見た場合に、インバータ装置1全体の入力側の主なインピーダンスは直流電源Eの内部インピーダンスであり、インバータ装置1全体の出力側の主なインピーダンスは2次側コイルT3のインピーダンスである着目した。
【0047】
これら2つの着目に基づき、本願発明者は、直流電源Eの内部インピーダンスである電源コイル50のインピーダンスZLと、2次側コイルT3のインピーダンスZT3とを整合させる(つまり、「ZT3=ZL」)と、変換効率が向上することを見出した。
【0048】
したがって、本実施の形態によれば、ZT3≧ZLとすることにより、直流電源Eの内部インピーダンスであるインピーダンスZLと、2次側コイルT3のインピーダンスZT3とが整合するので、変換効率を向上することができる。
【0049】
一方、本願発明者は、2次側コイルのインピーダンスZT3が(Z+ZT1)という値または(Z+ZT2)という値を越えると、インピーダンスZT3の増加に伴い効率が著しく低下することを見出した。このため、「Z+ZT1≧ZT3」および「Z+ZT2≧ZT3」とすることで、変換効率を向上することができる。
【0050】
加えて、第1の1次側コイルT1のインピーダンスZT1と、第2の1次側コイルT2のインピーダンスZT2とが式(3)を満たすことにより、第1の状態において直流電圧が印加される1次側コイルのインピーダンスと、第2の状態において直流電圧が印加される1次側コイルのインピーダンスとがほぼ等しくなる。これにより、直流電圧の印加状態が第1の状態であるか第2の状態であるかに関わらず、インバータ装置1全体として見た場合の入力側のインピーダンスと、インバータ装置1全体として見た場合の出力側のインピーダンスとを整合させることができる。その結果、変換効率を向上することができる。
【0051】
第1の1次側コイルT1のインピーダンスZT1と、第2の1次側コイルT2のインピーダンスZT2とが式(3)を満たすようにするための1つの方法として、第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2の各々の導線の材料および太さをほぼ同一とした上で、第1の1次側コイルT1の巻回された導線の長さと第2の1次側コイルT2の巻線の長さとをほぼ等しくすればよい。具体的には、第1の1次側コイルT1の一端から他端までの長さ(第1の1次側コイルT1の巻線の長さ)を長さLGT1と表し、第2の1次側コイルT2の一端から他端までの長さ(第2の1次側コイルT2の巻線の長さ)を長さLGT2と表す。この場合、長さLGT1および長さLGT2は、下記の式(4)を満たすことが好ましい。
【0052】
0.95×LGT1≧LGT2≧0.95≧1.05×LGT1 ・・・(4)
【0053】
長さLGT1および長さLGT2が式(4)を満たすために(言い換えれば、長さLGT2と長さLGT1とを同一に近づけるために)、第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2の巻線方法として、たとえば次の巻線方法が用いられてもよい。
【0054】
図2は、第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2の巻線方法の一例を模式的に示す断面図である。
図2では、第1の1次側コイルT1がコイル21として示されており、第2の1次側コイルT2がコイル22として示されている。
【0055】
図2を参照して、トランスTは、ボビン70(ボビンの一例)と、コア79とを含んでいる。ボビン70には、コイル21の導線213およびコイル22の導線223の各々が巻き回される。ボビン70は、コア79を受け入れるための中空部分を有している。コイル21の導線213およびコイル22の導線223の各々は、矢印D1で示す同一の巻回し方向に沿って一対でボビン70に巻き回される。一対の導線213および223は、対PRとして示されている。また、導線213および223は、矢印D2で示すように、ボビン70の延在方向の一端(
図2中下端)から他端(
図2中上端)に向かって交互に配置される。導線213および223は、他端において折り返し、巻回された導線213および223を覆うように、ボビン70の延在方向の他端から一端に向かって交互に配置される。導線213および223は互いに接触している(密着巻きで巻き回される)ことが好ましい。
【0056】
加えて、ボビン70が複数のボビン端子(ここではボビン端子71~76(第1、第2、第3、および第4のボビン端子の一例))を含んでいる場合、コイル21および22の各々の端部は、次の方法でボビン端子に電気的に接続されることが好ましい。
【0057】
ここでは、複数のボビン端子71~76の各々は、矢印D1で示す巻き回し方向に沿ってこの順序で等間隔に配置されているものとする。コイル21の一端211(つまり、導線213の巻始め)はボビン端子71に固定され、コイル21の他端212(つまり、導線213の巻終わり)がボビン端子74に固定されるものとする。この場合、コイル22の一端221が固定されるボビン端子は、コイル21の一端211が固定されるボビン端子71から所定の距離dtだけ矢印D1で示す巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられたボビン端子73であり、コイル22の他端222が固定されるボビン端子は、コイル21の他端212が固定されるボビン端子74から所定の距離dtだけ矢印D1で示す巻回し方向の下流側に離れた位置に設けられたボビン端子76であることが好ましい。
【0058】
なお、第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2の巻線方法は任意の方法であればよく、スペース巻きや斜行巻きなどの方法が用いられてもよい。またボビン70はセパレート構造などを有していてもよい。第1の1次側コイルT1および第2の1次側コイルT2は、セパレート構造のボビンに対し互いに分離した状態で巻き回されてもよい。
【0059】
[第1の実施の形態の変形例]
【0060】
図3~
図6は、それぞれ本発明の第1の実施の形態の第1~第4の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【0061】
図3を参照して、第1の実施の形態の第1の変形例におけるインバータ装置1は、熱変換材料80(熱変換材料の一例)をさらに備えている点で、
図1に示す構成と異なっている。熱変換材料80は、温度差を起電力に変換する材料よりなっており、たとえば半導体材料よりなっている。熱変換材料80は、トランスTの付近に設けられている。熱変換材料80は、第1の1次側コイルT1(ここではコイル21)、第2の1次側コイルT2(ここではコイル22)、および2次側コイルT3(ここではコイル23)のうち少なくともいずれか1つが発生した熱に基づいて起電力を発生する。熱変換材料80は、入力端子11と入力端子12との間に、発生した起電力を印加し、それによって直流電源Eを充電する。
【0062】
図4および
図5を参照して、第1の実施の形態の第2および第3の変形例におけるインバータ装置1は、切替部30の構成が
図1に示す構成と異なっている。切替部30は、電源側端子31と、コイル側端子32および33と、制御部37(制御部の一例)と、トランジスタ38および39(第1および第2のトランジスタの一例)と、負荷40および41とを含んでいる。
【0063】
電源側端子31は、入力端子12に電気的に接続されている。コイル側端子32は、コイル21の他端212に電気的に接続されている。コイル側端子33は、コイル22の他端222に電気的に接続されている。
【0064】
制御部37は、発振回路または交流電源よりなっている。制御部37は、端子Qおよび-Qを含んでいる。制御部37は、端子Qと端子-Qとの間に交流電圧を発生させる。
【0065】
トランジスタ38および39の各々は、たとえばN型バイポーラトランジスタよりなっている。トランジスタ38は、制御部37の出力に基づいて、電源側端子31とコイル側端子32との導通を制御する。トランジスタ38のベースは負荷40を介して制御部37の端子Qに電気的に接続されている。トランジスタ38のコレクタは、コイル側端子32に電気的に接続されている。トランジスタ38のエミッタは、電源側端子31に電気的に接続されている。
【0066】
トランジスタ39は、制御部37の出力に基づいて、電源側端子31とコイル側端子33との導通を制御する。トランジスタ39のベースは負荷41を介して制御部37の端子-Qに電気的に接続されている。トランジスタ39のコレクタは、コイル側端子33に電気的に接続されている。トランジスタ39のエミッタは、電源側端子31に電気的に接続されている。
【0067】
第1の状態では、制御部37は、端子Q側が正、端子-Q側が負となるような交流電圧を発生させる。これにより、トランジスタ38がオンし、トランジスタ39がオフする。コイル21には直流電圧が印加され、コイル22には直流電圧が印加されなくなる。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が増加し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が減少する。第1の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を正とし、他端232を負とする誘起電圧がコイル23に発生する。その結果、出力端子92から出力端子93へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0068】
第2の状態では、制御部37は、端子Q側が負、端子-Q側が正となるような交流電圧を発生させる。これにより、トランジスタ38がオフし、トランジスタ39がオンする。コイル21には直流電圧が印加されなくなり、コイル22には直流電圧が印加される。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が減少し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が増加する。第2の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を負とし、他端232を正とする誘起電圧がコイル23に発生する。その結果、出力端子93から出力端子92へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0069】
制御部37は、
図4に示すように発振回路よりなっていてもよいし、
図5に示すように交流電源よりなっていてもよい。
【0070】
図6を参照して、第1の実施の形態の第4の変形例におけるインバータ装置1は、電源コイル50の接続位置が
図1の構成と異なっている。電源コイル50は、入力端子12と、コイル21の他端212およびコイル22の他端222の各々との間に設けられている。
【0071】
なお、第1の実施の形態の第1~第4の変形例の各々のインバータ装置1における上述以外の構成は、
図1に示す第1の実施の形態のインバータ装置の構成と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0072】
第1の実施の形態の第1~第4の変形例におけるインバータ装置においても、
図1に示すインバータ装置と同様に、高い変換効率を有するインバータ装置を実現することができる。加えて、
図4に示す第1の実施の形態の第1の変形例におけるインバータ装置によれば、直流電源Eが充電池である場合に、直流電源Eを充電することができ、さらなる高効率化を図ることができる。
【0073】
[第2の実施の形態]
【0074】
図7は、本発明の第2の実施の形態におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【0075】
図7を参照して、本実施の形態におけるインバータ装置1は、トランスTの構成が
図1の構成と異なっている。コイル(チョークコイル)21~24により構成されている。
【0076】
コイル23は、一端231および他端232を含んでいる。コイル24は、一端241および他端242を含んでいる。コイル23の一端231は、コイル21の他端212に電気的に接続されている。コイル23の他端232は、出力端子92に電気的に接続されている。コイル24の一端241は、コイル22の他端222に電気的に接続されている。コイル24の他端242は、出力端子93に電気的に接続されている。
【0077】
第1の状態では、制御部36は、スイッチ34をオンし、スイッチ35をオフする。これにより、コイル21には直流電圧が印加され、コイル22には直流電圧が印加されなくなる。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が増加し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が減少する。第1の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を正とし、他端232を負とする誘起電圧がコイル23に発生する。また、一端241を負とし、他端242を正とする誘起電圧がコイル24に発生する。その結果、端子91から、コイル21、コイル23、出力端子92、負荷LD、出力端子93、コイル24、およびコイル22をこの順序で経由して、端子91に戻るという向きの電流が発生する。つまり、出力端子92から出力端子93へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0078】
第2の状態では、制御部36は、スイッチ34をオフし、スイッチ35をオンする。これにより、コイル21には直流電圧が印加されなくなり、コイル22には直流電圧が印加される。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が減少し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が増加する。第2の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を負とし、他端232を正とする誘起電圧がコイル23に発生する。また、一端241を正とし、他端242を負とする誘起電圧がコイル24に発生する。その結果、端子91から、コイル22、コイル24、出力端子93、負荷LD、出力端子92、コイル23、およびコイル21をこの順序で経由して、端子91に戻るという向きの電流が発生する。つまり、出力端子93から出力端子92へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0079】
コイル23および24は、コイル21および22とともにトランスTを構成している。トランスTにおける1次側コイルは、コイル21または22である。トランスTにおける2次側コイルは、直流電源Eの直流電圧の印加状態が第1および第2の状態のいずれである場合にも、コイル21~24により構成される。すなわち、第1の状態では、コイル21に直流電圧が印加されるので、コイル21が1次側コイルとなる。第2の状態では、コイル22に直流電圧が印加されるので、コイル22が1次側コイルとなる。コイル21~24は、コイル21および22の各々によってもたらされた磁場の変化により誘起電圧を発生するので、2次側コイルとなる。
【0080】
本実施の形態では、第1の1次側コイルT1はコイル21であり、第2の1次側コイルT2はコイル22であり、2次側コイルT3はコイル21~24である。したがって、2次側コイルT3のインピーダンスZT3に相当するのは、コイル21~24の各々のインダクタンスの合計値である。第1の1次側コイルT1のインピーダンスZT1、第2の1次側コイルT2のインピーダンスZT2、電源コイル50のインピーダンスZL、および2次側コイルT3のインピーダンスZT3は、式(1)、(2)、および(3)を満たす。これにより、高い変換効率を有するインバータ装置1を実現することができる。
【0081】
なお、本実施の形態のインバータ装置1における上述以外の構成は、
図1に示す第1の実施の形態のインバータ装置の構成と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0082】
本実施の形態におけるインバータ装置においても、
図1に示すインバータ装置と同様に、高い変換効率を有するインバータ装置1を実現することができる。
【0083】
[第2の実施の形態の変形例]
【0084】
図8および
図9は、それぞれ本発明の第2の実施の形態の第1および第2の変形例におけるインバータ装置1の構成を示す回路図である。
【0085】
図8および
図9を参照して、第2の実施の形態の第1および第2の変形例におけるインバータ装置1は、切替部30の構成が
図7に示す構成と異なっている。切替部30は、電源側端子31と、コイル側端子32および33と、制御部37と、トランジスタ38および39と、負荷40および41とを含んでいる。
【0086】
電源側端子31は、入力端子12に電気的に接続されている。コイル側端子32は、コイル21の他端212に電気的に接続されている。コイル側端子33は、コイル22の他端222に電気的に接続されている。
【0087】
制御部37は、発振回路または交流電源よりなっている。制御部37は、端子Qおよび-Qを含んでいる。制御部37は、端子Qと端子-Qとの間に交流電圧を発生させる。
【0088】
トランジスタ38および39の各々は、たとえばN型バイポーラトランジスタよりなっている。トランジスタ38は、制御部37の出力に基づいて、電源側端子31とコイル側端子32との導通の有無を制御する。トランジスタ38のベースは負荷40を介して制御部37の端子Qに電気的に接続されている。トランジスタ38のコレクタは、コイル側端子32に電気的に接続されている。トランジスタ38のエミッタは、電源側端子31に電気的に接続されている。
【0089】
トランジスタ39は、制御部37の出力に基づいて、電源側端子31とコイル側端子33との導通の有無を制御する。トランジスタ39のベースは負荷41を介して制御部37の端子-Qに電気的に接続されている。トランジスタ39のコレクタは、コイル側端子33に電気的に接続されている。トランジスタ39のエミッタは、電源側端子31に電気的に接続されている。
【0090】
第1の状態では、制御部37は、端子Q側が正、端子-Q側が負となるような交流電圧を発生させる。これにより、トランジスタ38がオンし、トランジスタ39がオフする。コイル21には直流電圧が印加され、コイル22には直流電圧が印加されなくなる。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が増加し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が減少する。第1の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を正とし、他端232を負とする誘起電圧がコイル23に発生する。また、一端241を負とし、他端242を正とする誘起電圧がコイル24に発生する。その結果、端子91から、コイル21、コイル23、出力端子92、負荷LD、出力端子93、コイル24、およびコイル22をこの順序で経由して、端子91に戻るという向きの電流が発生する。つまり、出力端子92から出力端子93へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0091】
第2の状態では、制御部37は、端子Q側が負、端子-Q側が正となるような交流電圧を発生させる。これにより、トランジスタ38がオフし、トランジスタ39がオンする。コイル21には直流電圧が印加されなくなり、コイル22には直流電圧が印加される。一端211から他端212に向かってコイル21に流れる電流量が減少し、一端221から他端222に向かってコイル22に流れる電流量が増加する。第2の状態におけるコイル21および22の各々に流れる電流量の変化に起因する磁場の変化により、一端231を負とし、他端232を正とする誘起電圧がコイル23に発生する。また、一端241を正とし、他端242を負とする誘起電圧がコイル24に発生する。その結果、端子91から、コイル22、コイル24、出力端子93、負荷LD、出力端子92、コイル23、およびコイル21をこの順序で経由して、端子91に戻るという向きの電流が発生する。つまり、出力端子93から出力端子92へ向かう電流が負荷LDに流れる。
【0092】
制御部37は、
図8に示すように発振回路よりなっていてもよいし、
図9に示すように交流電源よりなっていてもよい。
【0093】
図9を参照して、第2の実施の形態の第2の変形例におけるインバータ装置1は、さらに、電源コイル50の接続位置が
図7の構成と異なっている。電源コイル50は、入力端子12と、コイル21の他端212およびコイル22の他端222の各々との間に設けられている。
【0094】
なお、第2の実施の形態の第1および第2の変形例の各々のインバータ装置1における上述以外の構成は、
図7に示す第2の実施の形態のインバータ装置の構成と同様であるため、同一の部材には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0095】
第2の実施の形態の第1および第2の変形例におけるインバータ装置においても、
図7に示すインバータ装置と同様に、高い変換効率を有するインバータ装置1を実現することができる。
【0096】
[実施例]
【0097】
本願発明者は、2次側コイルT3(コイル23)として互いに異なる複数のインピーダンスZT3を有する複数のコイルの各々を用いて、
図1に示す複数のインバータ装置1の各々を作製した。1次側コイルT1(コイル21)の巻線の長さと1次側コイルT2(コイル22)の巻線の長さとを同じにすることで、インピーダンスZT1とインピーダンスZT2とが同じ値に設定された。次に、作成した複数のインバータ装置1の各々の変換効率を測定した。
【0098】
図10は、本発明の一実施例におけるインピーダンスZT3と、インバータ装置1の変換効率との関係を示す図である。
【0099】
図10を参照して、インバータ装置1の変換効率は、2次側コイルT3のインピーダンスZT3が、電源コイル50のインピーダンスZLの値以上になると急激に高くなった。インバータ装置1の変換効率は、2次側コイルT3のインピーダンスZT3の値が、電源コイル50のインピーダンスZLと1次側コイルT1のインピーダンスZT1との和(ZL+ZT1)の値以下の範囲で高くなった。この範囲でのインバータ装置1の最大効率は99.5%以上であった。
【0100】
次に本願発明者は、1次側コイルT2(コイル22)として互いに異なるインピーダンスZT2を有する複数のコイルを用いて、
図1に示す複数のインバータ装置1の各々を作製した。インピーダンスZT2は、1次側コイルT2の巻線の長さを変更することで調整された。2次側コイルT3(コイル23)のインピーダンスZT3は、電源コイル50のインピーダンスZLと同じ値(つまり、ZT3=ZL)に設定された。次に、作成した複数のインバータ装置1の各々の変換効率を測定した。
【0101】
図11は、本発明の一実施例におけるインピーダンスZT2と、インバータ装置1の変換効率との関係を示す図である。
【0102】
図11を参照して、インバータ装置1の変換効率は、1次側コイルT2のインピーダンスZT2がインピーダンスZT1と同じ値である場合に極大値となり、インピーダンスZT1の95%以上105%(つまり、0.95×ZT1≦ZT2≦1.05×ZT1)の範囲で高くなった。
【0103】
以上の結果から、インピーダンスZT1、ZT2、ZL、およびZT3が式(1)、(2)、および(3)を満たすことで、インバータ装置の変換効率が向上することが分かった。
【0104】
[その他]
【0105】
上述の実施の形態および変形例は適宜組み合わせることができる。たとえば、
図3に示すインバータ装置1における切替部30として、
図4または
図5に示す切替部30が用いられてもよい。
図3に示すインバータ装置1における電源コイル50が、
図6に示す位置に設けられてもよい。さらに、
図7に示す第2の実施の形態のインバータ装置1に、
図3に示す熱変換材料80が追加されてもよい。
【0106】
上述の実施の形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 インバータ装置(インバータ装置の一例)
11,12 入力端子(第1および第2の入力端子の一例)
21~24 コイル
30 切替部(切替部の一例)
31 電源側端子(電源側端子の一例)
32,33 コイル側端子(第1および第2のコイル側端子の一例)
34,35 スイッチ(第1および第2のスイッチの一例)
36,37 制御部(制御部の一例)
38,39 トランジスタ(第1および第2のトランジスタの一例)
40,41,LD 負荷
50 電源コイル(電源コイルの一例)
70 ボビン(ボビンの一例)
71~76 ボビン端子(第1、第2、第3、および第4のボビン端子の一例)
79 コア
80 熱変換材料(熱変換材料の一例)
91 端子
92,93 出力端子
211,212,221,222,231,232,241,242 コイルの端部
213,223 コイルの導線
E 直流電源(直流電源の一例)
T トランス
T1 1次側コイル(第1の1次側コイルの一例)
T2 1次側コイル(第2の1次側コイルの一例)
T3 2次側コイル(2次側コイルの一例)