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特開2023-166181金属接着用ゴム組成物、ゴム-金属複合材およびそれを用いたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166181
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】金属接着用ゴム組成物、ゴム-金属複合材およびそれを用いたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C09J 107/00 20060101AFI20231114BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20231114BHJP
   C09J 109/00 20060101ALI20231114BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C09J107/00
C09J11/04
C09J109/00
B60C1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077059
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
【テーマコード(参考)】
3D131
4J040
【Fターム(参考)】
3D131AA14
3D131AA15
3D131AA17
3D131AA39
3D131AA40
3D131BA18
3D131BC36
4J040CA011
4J040CA091
4J040HA026
4J040HA132
4J040HA136
4J040JB02
4J040KA16
4J040KA42
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】タイヤのベルト層には、強い衝撃や大きな荷重がかかるため、補強材としてスチールコードのような金属製補強コードが用いられている。このようなスチールコードを被覆するゴムは、スチールコードとの良好な接着性が必要とされているが、湿熱下に長時間さらされて老化するとゴム-金属間の接着性が低下するという問題点があった。
【解決手段】天然ゴムを80質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物を0.5~20質量部配合してなる金属接着用ゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを80質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物を0.5~20質量部配合してなることを特徴とする金属接着用ゴム組成物。
【請求項2】
前記酸化物の平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の金属接着用ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム中にブラスを含む補強材を埋設させてなるゴム-金属複合材であって、
前記ゴム-金属複合材は、下記基準ゴムとの比較において、下記条件下で行った湿熱老化試験後のゴム中へのCu拡散量が基準ゴムの90質量%以下である
ことを特徴とするゴム-金属複合材。
湿熱老化試験:前記ゴム-金属複合材を温度70℃、相対湿度96%、2週間の条件下で湿熱老化させる。
基準ゴム:天然ゴム100質量部に対し酸化亜鉛を3~15質量部配合したゴム。
前記拡散量の測定方法:XRF(蛍光X線分析法)、XPS(X線光電子分光法)またはEDX(エネルギー分散型X線分光法)のいずれかにより測定する。
【請求項4】
請求項1に記載の金属接着用ゴム組成物に、ブラスを含む補強材を埋設させてなるゴム-金属複合材。
【請求項5】
請求項1に記載の金属接着用ゴム組成物に、ブラスメッキされた金属製補強コードを埋設させてなるゴム-金属複合材。
【請求項6】
請求項3に記載のゴム-金属複合材を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接着用ゴム組成物、ゴム-金属複合材およびそれを用いたタイヤに関するものであり、詳しくは、ブラスを含む補強材に対し、湿熱老化後の優れた接着性を有する金属接着用ゴム組成物、ゴム-金属複合材およびそれを用いたタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるトレッド部とから主に構成されている。タイヤの内側にはカーカス層が設けられ、カーカス層の両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
トレッド部は、キャップトレッドとアンダートレッドとからなり、このアンダートレッドとカーカス層との間に、ベルト層が配設されている。
このベルト層には、強い衝撃や大きな荷重がかかるため、補強材としてスチールコードのような金属製補強コードが用いられている。このようなスチールコードを被覆するゴムは、スチールコードとの良好な接着性が必要とされ、そのため、スチールコードにはブラスメッキを施し、ゴムには有機酸Co塩を配合する手法がある(例えば下記特許文献1参照)。
しかしこのような従来技術では、湿熱下に長時間さらされて老化するとゴム-金属間の接着性が低下するという問題点があった。
【0003】
なお下記特許文献2には、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを80質量%以上含むジエン系ゴム100質量部に、脂肪酸鉄を0.5~10質量部配合してなり、前記脂肪酸鉄がステアリン酸鉄であるタイヤスチールコード被覆用ゴム組成物が開示されている。しかし、特許文献2に記載の発明に含まれる鉄は、MnとMgとの間のイオン化傾向を持たない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-158230号公報
【特許文献2】特許第6977243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、ブラスを含む補強材に対する湿熱老化後の接着性を改善し得る金属接着用ゴム組成物、ゴム-金属複合材およびそれを用いたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに特定のイオン化傾向を有する金属の酸化物を特定量で配合したゴム組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0007】
すなわち本発明は天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを80質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物を0.5~20質量部配合してなることを特徴とする金属接着用ゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムに特定のイオン化傾向を有する金属の酸化物を特定量で配合したので、ブラスを含む補強材に対する湿熱老化後の接着性を大幅に改善することができる。
【0009】
上述のように、タイヤ内部の金属接着用ゴムは、ブラスを含む補強材に対して強い接着性が求められるが、一方で湿熱老化によりこの接着性が顕著に低下してしまう。本発明者らの検討によれば、湿熱老化によってブラス成分のCuおよびZnがイオン化してゴム中に拡散、硫化が進行して接着性が低下することが判明した。とくにCuイオンのゴム中への拡散や硫化が接着性低下に大きく影響を及ぼす。そこで本発明では、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物(以下、特定酸化物と言うことがある)をゴムに配合することにより、Cuのイオン化よりも前に特定酸化物中の金属がイオン化してゴム中に拡散するため、Cuイオン拡散が抑制され、結果としてブラスブラスを含む補強材に対する湿熱老化後の接着性を大幅に改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、天然ゴム(NR)および/または合成イソプレンゴム(IR)を必須成分とする。NRおよび/またはIRの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたときに80質量部以上であることが必要である。NRおよび/またはIRの配合量が80質量部未満であると、破断強度が悪化し、好ましくない。なお、NRおよびIR以外にも他のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0011】
(特定酸化物)
本発明で使用される特定酸化物は、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物である。MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属としては、Mg、Ti、Zr、Mnが挙げられ、特定酸化物としては、例えばMgO、TiO、ZrO、MnO、MnO等が挙げられる。
【0012】
特定酸化物の平均粒径は、本発明の効果向上の観点から30μm以下が好ましく、0.05μm~20μmであるのがさらに好ましく、0.05μm~15μmであるのがとくに好ましい。なお該平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による拡大画像から測定した100個の粒子の平均値から算出することができる。
【0013】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、前記特定酸化物を0.5~20質量部配合してなることを特徴とする。
ジエン系ゴム100質量部に対し、特定酸化物の配合量が0.5質量部未満では、配合量が少なすぎて本発明の効果を奏することができず、逆に20質量部を超えると破断物性や熱老化物性が悪化する。
【0014】
特定酸化物の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1~15質量部が好ましく、2~10質量部がさらに好ましい。
【0015】
(その他成分)
本発明のゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;各種オイル;老化防止剤;可塑剤、脂肪酸コバルトなどのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0016】
なお、脂肪酸コバルトを使用する場合、本発明の効果向上の観点から、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、コバルト量として0.05~0.5質量部であるのが好ましい。脂肪酸コバルトとしては、例えばステアリン酸コバルト、パルミチン酸コバルト、オクテン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ホウ酸三ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト等が挙げられる。
また、加硫剤として硫黄を使用する場合、本発明の効果向上の観点から、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、4~10質量部であるのが好ましい。
【0017】
本発明のゴム-金属複合材は、前記本発明のゴム組成物に、ブラスを含む補強材を埋設させてなる。補強材としては、例えばブラス粉末、ブラス箔、ブラスメッキされた金属製補強コード等が挙げられる。金属製補強コードの用途としては、例えば、ベルトコンベアー、ホース、タイヤ等の用途が挙げられる。タイヤ用途の場合、金属製補強コードは、アンダートレッドに埋設されるベルト、カーカス、ビード(ビードコアおよびそれに収納されるスチールコードを含む)が挙げられる。また、金属製補強コードはブラスめっきされる。
【0018】
本発明のゴム-金属複合材は、例えば、前記の各種成分をバンバリーミキサーやロールミキサーなどの汎用の混合機を用いて混合しゴム組成物を調製し、これに金属製補強コードを埋設させ、常法にしたがって例えば加硫することにより、得ることができる。
【0019】
また、本発明のゴム-金属複合材をタイヤ用途として使用する場合、その製造方法はとくに制限されず、公知技術にしたがい、タイヤを製造することができる。タイヤとしては、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。
【0020】
また本発明のゴム-金属複合材は、下記基準ゴムとの比較において、下記条件下で行った湿熱老化試験後のゴム中へのCu拡散量が基準ゴムの90質量%以下であることができる。
前記湿熱老化試験としては、0.1mm厚のブラス箔(Cu:Zn=65:35(質量比))を5mm四方に切断したものを用いて、厚さ3mmの未加硫ゴムを挟んで170℃で10分間加硫し、ゴム-金属複合材を得て、これを湿熱老化チャンバーに温度70℃、相対湿度96%、2週間の条件下におき、湿熱老化させるというものである。
基準ゴムとしては、天然ゴム100質量部に対し酸化亜鉛を3~15質量部、具体的には8~15質量部配合したゴムであることができ、とくに、天然ゴム100質量部に対し酸化亜鉛を8質量部、硫黄を7質量部配合したゴムである。一般的にタイヤ用途の金属接着用ゴム組成物は、上記各成分の他に例えばカーボンブラック、脂肪酸コバルト、老化防止剤、加硫促進剤等を含むものであるが、これらの他の成分はCu拡散量に影響を及ぼしにくい。
Cu拡散量の測定方法としては、XRF(蛍光X線分析法)、XPS(X線光電子分光法)またはSEM-EDX(エネルギー分散型X線分光法)のいずれかが挙げられる。Cu拡散量は、XRF、XPS、EDXのいずれの分析方法を採用しても、再現性良く同様の結果が得られる。以下に、XRF、XPS、SEM-EDXの測定条件を記載する。
【0021】
XRF:HORIBA社製の蛍光X線分析装置 MESA-50を用いて測定した。湿熱老化前後のゴム-金属複合材からブラス箔表面のゴムを剥離して、ブラス箔に面していた部分のゴム側の剥離面のCu成分を定量することでゴムへのCu成分の拡散量を見積もった。
【0022】
XPS:走査型X線光電子分光分析装置(XPS/ESCA)PHI X-toolを用いて測定した。湿熱老化前後のゴム-金属複合材からブラス箔表面のゴムを剥離して、ブラス箔に面していた部分のゴム側の剥離面のCu成分を定量することでゴムへのCu成分の拡散量を見積もった。
【0023】
SEM-EDX:日立ハイテク社製SU3900を用いて測定した。湿熱老化前後のゴム-金属複合材からブラス箔表面の断面をFIB(集束イオンビーム)で露出させて、ブラス箔表面からゴム側へのCu成分の侵入深さを求めることでゴムへのCu成分の拡散量を見積もった。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0025】
基準例、実施例1~9、比較例1~5
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却し、未加硫ゴムを得た。
【0026】
前記未加硫ゴムを用い、下記の湿熱老化試験およびゴム中へのCu拡散量の測定を行った。
湿熱老化試験:0.1mm厚のブラス箔(Cu:Zn=65:35(質量比))を5mm四方に切断したものを用いて、厚さ3mmの未加硫ゴムを挟んで170℃で10分間加硫し、ゴム-金属複合材を得て、これを湿熱老化チャンバーに温度70℃、相対湿度96%、2週間の条件下におき、湿熱老化させた。
基準例の基準ゴムとの比較において、上記条件下で行った湿熱老化試験後のゴム中へのCu拡散量を、上記測定条件に準じたSEM-EDXにより測定した。具体的には、ゴム-金属複合材の断面をFIBにて露出させて、ブラス箔側からのゴム中へのCuの拡散量を元素マッピングにより測定した。結果は基準例の値を100として指数表示した。この値が小さいほどゴム中へのCu拡散量が少ないことを意味する。
【0027】
引抜力:ASTM D-2に準拠してコードを引抜き、その引抜時の引抜力を調べた。なお、サンプルは湿熱老化試験を行わないサンプルと(老化前)、湿熱老化試験を行ったサンプル(老化後)を用いた。結果は基準例の値を100として指数表示した。この値が大きいほど、ゴムに対する接着性が優れている。
ゴム付着量:ASTM D-2229に準拠して試験を行なった。12.7mm間隔で平行に並べたブラスめっきスチールコードを各例のゴム組成物で被覆すると共に、埋め込み長さ12.7mmで埋め込み、160℃×20分間の加硫条件で加硫接着して接着サンプルを作製した。なお、接着サンプルは湿熱老化試験を行わない接着サンプルと(老化前)、湿熱老化試験を行った接着サンプル(老化後)を用いた。この接着サンプルからスチールコードを引抜き、ゴム付着量(%)を測定した。結果は基準例の値を100として指数表示した。この値が大きいほど、ゴムに対する接着性が優れている。
結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製NIPOL BR1220)
*3:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シースト300)
*4:酸化亜鉛(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種)
*5:アルミナ1(日本軽金属株式会社製AA-100、平均粒径=80μm)
*6:アルミナ2(日本軽金属株式会社製AA-101、平均粒径=12μm)
*7:MgO(宇部マテリアルズ株式会社製RF-10CS、平均粒径=4~10μm)
*8:TiO(テイカ株式会社製MT-700B、平均粒径=0.08μm)
*9:ZrO(新日本電工株式会社製H4Typical、平均粒径=13μm)
*10:MnO(東ソー株式会社製CMO、平均粒径=10μm)
*11:ステアリン酸コバルト(DIC株式会社製)
*12:老化防止剤(フレキシス製サントフレックス6PPD)
*13:加硫促進剤DCBS(大内新興化学工業株式会社製ノクセラーDZ)
*14:硫黄(アクゾノーベル株式会社製クリステックスHT OT 20)
【0030】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを80質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物を0.5~20質量部配合してなるものであるので、基準例に比べて、ゴム中へのCu拡散量が基準ゴムの90質量%以下であり、湿熱老化後であっても接着性が大幅に改善することが分かった。
比較例1および2は、特定酸化物を配合していないので、湿熱老化後の接着性が劣る結果となった。
比較例3および4は、アルミナを配合した例であるので、湿熱老化後の接着性が劣る結果となった。
比較例5は、NRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、老化前の接着性が劣る結果となった。
【0031】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:天然ゴムおよび/または合成イソプレンゴムを80質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、MnとMgとの間のイオン化傾向を有する金属(ただし、Alを除く)の酸化物を0.5~20質量部配合してなることを特徴とする金属接着用ゴム組成物。
発明[2]:前記酸化物の平均粒径が30μm以下であることを特徴とする発明1に記載のゴム組成物。
発明[3]:ゴム中にブラスを含む補強材を埋設させてなるゴム-金属複合材であって、
前記ゴム-金属複合材は、下記基準ゴムとの比較において、下記条件下で行った湿熱老化試験後のゴム中へのCu拡散量が基準ゴムの90質量%以下である
ことを特徴とするゴム-金属複合材。
湿熱老化試験:前記ゴム-金属複合材を温度70℃、相対湿度96%、2週間の条件下で湿熱老化させる。
基準ゴム:天然ゴム100質量部に対し酸化亜鉛を3~15質量部配合したゴム。
前記拡散量の測定方法:XRF(蛍光X線分析法)、XPS(X線光電子分光法)またはEDX(エネルギー分散型X線分光法)のいずれかにより測定する。
発明[4]:発明1または2に記載の金属接着用ゴム組成物に、ブラスを含む補強材を埋設させてなるゴム-金属複合材。
発明[5]:発明3~5のいずれかに記載のゴム-金属複合材を用いたタイヤ。