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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166189
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】光接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077067
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】長田 嶺
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AB01
2H137BA03
2H137BA04
2H137BA13
2H137BA15
2H137BC02
2H137BC08
2H137BC13
2H137BC32
2H137BC50
2H137BC53
2H137CC11
(57)【要約】
【課題】光ファイバの配置密度を高めつつ、光信号の分光を容易に行うことができる光接続構造を提供する。
【解決手段】光接続構造は、光信号が射出される射出端を有する第1光ファイバと、前記射出端に固定され前記第1光ファイバの開口数を縮小可能な第1GIファイバと、を有する第1ファイバユニットを複数備える第1ファイバアレイと、前記第1ファイバユニットから射出された光信号を受光可能な第2GIファイバと、前記第2GIファイバに固定された第2光ファイバと、を有する第2ファイバユニットを複数備える第2ファイバアレイと、前記第1ファイバアレイと前記第2ファイバアレイとの間に配置された分光素子と、結像光学系と、を備え、前記第1ファイバアレイから射出された光信号の各々は、前記結像光学系を構成する光学部材の全てを透過する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号が射出される射出端を有する第1光ファイバと、前記射出端に固定され前記第1光ファイバの開口数を縮小可能な第1GIファイバと、を有する第1ファイバユニットを複数備える第1ファイバアレイと、
前記第1ファイバユニットから射出された光信号を受光可能な第2GIファイバと、前記第2GIファイバに固定された第2光ファイバと、を有する第2ファイバユニットを複数備える第2ファイバアレイと、
前記第1ファイバアレイと前記第2ファイバアレイとの間に配置された分光素子と、
結像光学系と、を備え、
前記第1ファイバアレイから射出された光信号の各々は、前記結像光学系を構成する光学部材の全てを透過する、光接続構造。
【請求項2】
前記第1GIファイバの長さをLとし、
前記第1GIファイバの内部を蛇行する光信号の蛇行の周期をPとするとき、
0.20P≦L≦0.30Pが成立する、請求項1に記載の光接続構造。
【請求項3】
前記結像光学系は、前記分光素子と前記第1ファイバアレイとの間に配置されて前記第1ファイバユニットから射出された光信号のビームウェスト径を拡大する第1結像光学系と、前記分光素子と前記第2ファイバアレイとの間に配置されて前記第1ファイバユニットから射出された光信号を前記第2GIファイバに集光する第2結像光学系を備える、請求項1または2に記載の光接続構造。
【請求項4】
前記結像光学系は、前記第1ファイバユニットから射出された光信号を、ストレール比0.8以上で前記第2GIファイバに集光する、請求項3に記載の光接続構造。
【請求項5】
前記第1結像光学系が備える光学部材のうち最も前記分光素子に近い光学部材と、前記第1結像光学系および前記第2結像光学系の対称面との間の距離が、前記分光素子の長さの1/2より長い、請求項3に記載の光接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野において、ある光ファイバから光信号を射出して当該光信号を他の光ファイバに受光させる光接続構造を用いるような、光信号の伝送方法が知られている。特許文献1には、光ファイバ間における伝送損失を低減させるために、GI(Graded Index)ファイバを光ファイバの射出端に接続し、当該GIファイバによって射出光を平行光に整形(コリメート)する技術が開示されている。GIファイバを用いて射出光をコリメートする構成は、隣り合う光ファイバ間の配置間隔を短くして高密度化した場合において光ファイバ間でのクロストークを抑制できるという点でも好適である。
【0003】
また、このような光接続構造において、光信号のモニタ等を行うために、光信号を分光して光接続構造の外部に取り出すことが求められる場合がある。特許文献1には、光信号を射出する光ファイバと光信号を受光する光ファイバとの間にパッシブデバイス(分光素子)を配置する構成が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-47993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、複数の光ファイバの配置間隔を短くして高密度化するうえでは、GIファイバを用いるのが好ましい。一方、当該GIファイバを一般的なシングルモードファイバに用いた場合、GIファイバから射出される射出光の伝送距離(レイリー長)は非常に短くなる。このため、現実的には、GIファイバの射出端間の距離は約1mm程度しか確保することができず、射出端間に分光素子を配置するのは困難であった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされ、光ファイバの配置密度を高めつつ、光信号の分光を容易に行うことができる光接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の態様1は、光信号が射出される射出端を有する第1光ファイバと、前記射出端に固定され前記第1光ファイバの開口数を縮小可能な第1GIファイバと、を有する第1ファイバユニットを複数備える第1ファイバアレイと、前記第1ファイバユニットから射出された光信号を受光可能な第2GIファイバと、前記第2GIファイバに固定された第2光ファイバと、を有する第2ファイバユニットを複数備える第2ファイバアレイと、前記第1ファイバアレイと前記第2ファイバアレイとの間に配置された分光素子と、結像光学系と、を備え、前記第1ファイバアレイから射出された光信号の各々は、前記結像光学系を構成する光学部材の全てを透過する、光接続構造である。
【0008】
また、本発明の態様2は、態様1の光接続構造において、前記第1GIファイバの長さをLとし、前記第1GIファイバの内部を蛇行する光信号の蛇行の周期をPとするとき、0.20P≦L≦0.30Pが成立する、光接続構造である。
【0009】
また、本発明の態様3は、態様1又は態様2の光接続構造において、前記結像光学系は、前記分光素子と前記第1ファイバアレイとの間に配置されて前記第1ファイバユニットから射出された光信号のビームウェスト径を拡大する第1結像光学系と、前記分光素子と前記第2ファイバアレイとの間に配置されて前記第1ファイバユニットから射出された光信号を前記第2GIファイバに集光する第2結像光学系を備える、光接続構造である。
【0010】
また、本発明の態様4は、態様3の光接続構造において、前記結像光学系は、前記第1ファイバユニットから射出された光信号を、ストレール比0.8以上で前記第2GIファイバに集光する、光接続構造である。
【0011】
また、本発明の態様5は、態様3又は態様4の光接続構造において、前記第1結像光学系が備える光学部材のうち最も前記分光素子に近い光学部材と、前記第1結像光学系および前記第2結像光学系の対称面との間の距離が、前記分光素子の長さの1/2より長い、光接続構造である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記態様によれば、光ファイバの配置密度を高めつつ、光信号の分光を容易に行うことが可能な光接続構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る光接続構造を示す図である。
図2】本実施形態に係る光接続構造を伝搬する光信号の一部を取り出して示す図である。
図3A】本実施形態に係る第1ファイバユニットを示す図である。
図3B】蛇行ピッチPを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る光接続構造について図面に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る光接続構造1は、第1ファイバアレイ10と、第2ファイバアレイ20と、結像光学系30と、分光素子40と、を備える。結像光学系30および分光素子40は、第1ファイバアレイ10と第2ファイバアレイ20との間に配される。本実施形態においては、第1ファイバアレイ10から光信号(光線R)が射出される。射出された光信号は、結像光学系30および分光素子40を透過して、第2ファイバアレイ20に受光される。
【0015】
(方向定義)
ここで、本実施形態では、結像光学系30の光軸Oと平行な方向をZ方向、軸方向Z、または長手方向Zと称する。軸方向Zにおける寸法を、単に「長さ」と称する。軸方向Zに沿って、第1ファイバアレイ10から第2ファイバアレイ20に向かう向きを、+Zの向きまたは右方と称する。+Zの向きとは反対の向きを、-Zの向きまたは左方と称する。軸方向Zに垂直な断面を、横断面と称する。結像光学系30の光軸Oに直交する方向を、径方向と称する。径方向に沿って、光軸Oに接近する向きを、径方向内側と称し、光軸Oから離反する向きを、径方向外側と称する。軸方向Zから見て、光軸Oまわりに周回する方向を、周方向と称する。
【0016】
図1および図2に示すように、第1ファイバアレイ10は、複数の第1ファイバユニット11を備える。複数の第1ファイバユニット11は、軸方向Zと垂直な方向に配列されている。各第1ファイバユニット11は、第1光ファイバ12および第1GIファイバ13を有する(図3Aも参照)。図示は省略するが、各第1ファイバユニット11は、例えばフェルール等の保持部材によって保持されていてもよい。
【0017】
本実施形態に係る第1光ファイバ12は、いわゆるシングルモードファイバであり、図3Aに示すように、コア12cおよびクラッド12dを有する。コア12cの屈折率は、クラッド12dの屈折率よりも大きい。光信号は、コア12cとクラッド12dとの間の界面で全反射を繰り返しながら、第1光ファイバ12(コア12c)の内部を進行する。第1光ファイバ12は、第1光ファイバ12の内部を進行してきた光信号が射出される射出端12aを有する。
【0018】
図3Aに示すように、第1GIファイバ13は、第1光ファイバ12の射出端12aに固定される。第1GIファイバ13を第1光ファイバ12の射出端12aに固定する方法としては、例えば融着を採用することができる。本実施形態に係る第1GIファイバ13は、第1光ファイバ12の射出端12aに固定される固定端13bと、固定端13bとは反対側に位置する射出端13aと、を有する。第1GIファイバ13の射出端13aは、第1ファイバユニット11の先端(第1ファイバユニット11の射出端)でもある。第1光ファイバ12の射出端12aから射出された光信号は、固定端13bから第1GIファイバ13に進入する。
【0019】
第1GIファイバ13は、横断面における中心から径方向外側に向かって漸次屈折率が小さくなる屈折率構成を有する部材である。第1GIファイバ13がこのような屈折率構成を有していることにより、固定端13bから第1GIファイバ13に進入した光信号(光線R)は、第1GIファイバ13の内部を蛇行する(図3Bも参照)。なお、図3Bにおいては、光線Rが蛇行する様子を見やすくするために、第1GIファイバ13が本来の射出端13aの位置よりも右方に延びる仮想的な状況を図示している。また、図3Bにおいては、図3Aに図示された光線Rのうち一部のみを図示している。以下、第1GIファイバ13の内部を蛇行する光信号(光線R)の蛇行の周期を、蛇行周期(蛇行ピッチ)Pと称する。
【0020】
図3Aおよび図3Bに示すように、固定端13bにおいて、第1GIファイバ13に進入してきた複数の光線Rが進行する方向は、互いに平行ではない。一方、第1GIファイバ13の内部を光線Rが蛇行することで、固定端13bからP/4の地点においては、複数の光線Rの進行が互いに平行となる。そこで、本実施形態においては、第1GIファイバ13の射出端13aの位置を、固定端13bからP/4の地点に設定している。つまり、本実施形態に係る第1GIファイバ13の長さLは、P/4に設定されている。これにより、光信号に含まれる複数の光線Rは、第1GIファイバ13によって互いに平行に整形(コリメート)されたうえで、第1GIファイバ13の射出端13a(すなわち、第1ファイバユニット11)から射出される。つまり、本実施形態に係る第1GIファイバ13は、第1光ファイバ12の開口数を縮小可能な部材である。
【0021】
なお、第1GIファイバ13の長さLはちょうどP/4でなくてもよい。この場合においても、第1GIファイバ13は第1光ファイバ12の開口数を縮小可能である。ただし、長さLは例えば0.20P≦L≦0.30Pの範囲内であることが望ましい。この構成によれば、第1光ファイバ12の開口数をより確実に縮小することができる。また、第1GIファイバ13の長さLは、P/4の奇数倍であってもよい。あるいは、第1GIファイバ13の長さLは、P/4の奇数倍±0.05Pの範囲内であってもよい。
【0022】
図1および図2に示すように、第2ファイバアレイ20は、複数の第2ファイバユニット21を備える。複数の第2ファイバユニット21は、軸方向Zと垂直な方向に配列されている。図示は省略するが、各第2ファイバユニット21は、例えばフェルール等の保持部材によって保持されていてもよい。
【0023】
本実施形態において、各第2ファイバユニット21の構成は、第1ファイバユニット11の構成と基本的には同一である。すなわち、各第2ファイバユニット21は、第2GIファイバ23と、第2GIファイバ23の一端に固定された第2光ファイバ22と、を有する。第2光ファイバ22の構成は第1光ファイバ12の構成と基本的に同一であり、第2GIファイバ23の構成は第1GIファイバ13の構成と基本的に同一である。
【0024】
図1および図2に示すように、各第2GIファイバ23は、第1ファイバユニット11から射出された光信号を受光する。なお、図2においては、第1ファイバユニット11と第2ファイバユニット21(第2GIファイバ23)との対応関係を見やすくするために、図1に図示された光線Rのうち一部のみを図示している。第2GIファイバ23に受光された各光信号は、第2GIファイバ23の内部を透過したのちに、第2光ファイバ22に進入する。第2光ファイバ22に進入した光信号は、第2光ファイバ22のコア(不図示)とクラッド(不図示)との間の界面での全反射を繰り返し、第2光ファイバ22の内部を進行する。
【0025】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る結像光学系30は、第1結像光学系31および第2結像光学系32を備える。第1結像光学系31は、第1ファイバアレイ10と分光素子40との軸方向Zにおける間に配される。第2結像光学系32は、第2ファイバアレイ20と分光素子40との軸方向Zにおける間に配される。以下、第1結像光学系31と第2結像光学系32との間に位置する空間を、分光素子挿入部Gと称する場合がある。
【0026】
本実施形態において、第1結像光学系31および第2結像光学系32は、軸方向Zに垂直な対称面Sについて互いに面対称(鏡像対称)な構成を有する。より具体的に、本実施形態に係る第1結像光学系31は2つの光学部材(レンズ)L1、L2から構成されており、第2結像光学系32は2つの光学部材(レンズ)L3、L4から構成されている。つまり、本実施形態に係る結像光学系30は、4つのレンズL1~L4から構成されている。図1および図2に示すように、第1ファイバユニット11から射出された各光信号は、結像光学系30を構成する光学部材の全て(レンズL1~L4の全て)を透過する。言い換えれば、第1ファイバアレイ10から射出される光信号の全てが、同一のレンズL1~L4を透過する。
【0027】
本実施形態において、各レンズL1~L4は、共通の光軸を有する。当該共通の光軸が、先述した結像光学系30の光軸Oである。本実施形態において、各レンズL1~L4は、軸方向Zに向く凸面Cと、凸面Cとは反対側に向く平坦面Fと、を有する。第1結像光学系31において、レンズL1およびレンズL2は、レンズL1の凸面CとレンズL2の凸面Cとが互いに向かい合うように配置されている。レンズL1、L2は、いわゆるテレセントリック光学系を構成している。同様に、第2結像光学系32において、レンズL3およびレンズL4は、レンズL3の凸面CとレンズL4の凸面Cとが互いに向かい合うように配置されている。レンズL3、L4も、いわゆるテレセントリック光学系を構成している。
【0028】
第1結像光学系31は、各第1ファイバユニット11から射出された光信号のビームウェスト径を拡大する役割を有する。つまり、図2に示すように、分光素子挿入部Gにおける各光信号のビームウェスト径は、第1GIファイバ13の射出端13a(第1ファイバユニット11の射出端)における各光信号のビームウェスト径よりも大きい。なお、本実施形態において、分光素子挿入部Gにおける各光信号のビームウェストは、対称面S上に位置する。したがって、本実施形態において、「分光素子挿入部Gにおける各光信号のビームウェスト径」は、「対称面Sにおける各光信号のビーム径」と捉えることもできる。
【0029】
第2結像光学系32は、各第1ファイバユニット11から射出された光信号を第2GIファイバ23に集光する役割を有する。つまり、第2結像光学系32は、第1結像光学系31によってビームウェスト径が拡大された光信号に対し、そのビームウェスト径を再び縮小するように作用する。
【0030】
ここで、仮に分光素子挿入部Gにおける各光信号の進行方向が平行であったとすると、進行方向に直交する方向(以下、直交方向という)において各光信号が重なった場合、クロストークの発生要因となる。したがってこの場合、直交方向における各光信号の相対位置の精度が、クロストークを回避するために重要である。そして、直交方向における装置(光接続構造1)の寸法を小さくすると、直交方向における各光信号の相対位置の精度を維持することが難しくなる。つまり、分光素子挿入部Gにおける各光信号の進行方向が平行な場合、クロストークを回避しながら装置を小型化することが難しい。
【0031】
これに対して、本実施形態では、図1および図2に示すように、分光素子挿入部Gにおける各光信号の進行方向が、射出源の第1ファイバユニット11によって異なる。例えば、図2に示すように、ある第1ファイバユニット11を射出源とする光信号R1の進行方向と、他の第1ファイバユニット11を射出源とする光信号R2の進行方向とは、互いに異なる。この構成によれば、分光素子挿入部Gにおいて各光信号の進行方向が平行である場合と比較して、光信号のクロストークを抑制しつつ、直交方向における光接続構造1の寸法を小さくすることができる。
【0032】
結像光学系30は、各第1ファイバユニット11から射出された光信号を、例えばストレール比0.8以上で第2GIファイバ23に集光するように構成されていてもよい。本実施形態においては、結像光学系30が対称面Sについて面対称な構成を有しているため、光信号のディストーションや像面湾曲を抑制し、ストレール比を高めることができる。言い換えれば、結像光学系30が面対称な構成を有しているため、収差補正を行ってストレール比を高めることができる。なお、ストレール比を高めるための結像光学系30の具体的な構成は適宜変更可能である。例えば、結像光学系30は凹レンズ等の光学部材を備えていてもよい。この場合、結像光学系30によって球面収差補正を行うことができる。
【0033】
なお、上記の説明においては、第1ファイバアレイ10から光信号が射出されて第2ファイバアレイ20が当該光信号を受光すると説明したが、第1ファイバアレイ10および第2ファイバアレイ20の各々が光信号の射出および受光の双方を行ってもよい。本実施形態においては、第1ファイバアレイ10および第2ファイバアレイ20が同一の構成を有し、結像光学系30が対称面Sについて面対称な構成を有しているため、第2ファイバアレイ20から光信号を射出し、第1ファイバアレイ10に当該光信号を受光させることが可能である。
【0034】
分光素子40は、分光素子挿入部Gに配置される。分光素子40は、分光素子挿入部Gを進行する各光信号の一部を分光して光接続構造1の外部に取り出すための素子である。分光素子40の例としては、ハーフミラー、ダイクロイックミラー、および偏光ビームスプリッター等が挙げられる。光接続構造1が分光素子40を有していることにより、ユーザは、分光素子40によって分光された光信号を介して、分光素子挿入部Gを進行する各光信号をモニタすることができる。なお、本実施形態においては、第1結像光学系31が備える光学部材のうち最も分光素子40に近い光学部材であるレンズL2と、対称面Sと、の間の軸方向Zにおける距離D2は、分光素子40の長さD1の1/2より長い。これにより、分光素子挿入部Gに分光素子40を確実に配置することができる。
【0035】
次に、以上のように構成された光接続構造1の作用について説明する。
【0036】
光通信分野において、ある光ファイバから光信号を射出して当該光信号を他の光ファイバに受光させる光接続構造を用いるような、光信号の伝送方法が知られている。特許文献1には、光ファイバ間における伝送損失を低減させるために、GIファイバを光ファイバの射出端に接続し、当該GIファイバによって射出光を平行光に整形する技術が開示されている。GIファイバを用いて射出光をコリメートする構成は、隣り合う光ファイバ間の配置間隔を短くして高密度化した場合において光ファイバ間でのクロストークを抑制できるという点でも好適である。
【0037】
また、このような光接続構造において、光信号のモニタ等を行うために、光信号を分光して光接続構造の外部に取り出すことが求められる場合がある。特許文献1には、光信号を射出する光ファイバと光信号を受光する光ファイバとの間にパッシブデバイス(分光素子)を配置する構成が、開示されている。しかしながら、GIファイバを一般的なシングルモードファイバに用いた場合、GIファイバから射出される射出光の伝送距離は非常に短くなる。このため、現実的には、GIファイバの射出端間の距離は約1mm程度しか確保することができず、射出端間に分光素子を配置するのは困難であった。
【0038】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係る光接続構造1においては、光信号を射出する第1ファイバアレイ10と分光素子40との間に、光信号のビームウェスト径を拡大する第1結像光学系31が配置されている。一般に、ビームウェスト径が大きくなるほど、光信号のレイリー長は大きくなる。したがって、第1ファイバアレイ10から射出された光信号のビームウェスト径を第1結像光学系31が拡大することで、光信号の伝送距離を伸ばし、分光素子40を配置するスペース(分光素子挿入部G)を確保することができる。したがって、分光素子40を用いて容易に光信号の分光を行うことができる。また、本実施形態に係る光接続構造1において、第1ファイバアレイ10から射出された各光信号は、結像光学系30を構成するレンズL1~L4の全てを透過する。この構成によれば、例えばファイバユニット11、21毎に独立にレンズ等の光学部材が配置されている場合と比較して、光ファイバ12、22の配置密度を高めることができる。さらに、各第1光ファイバ12の射出端12aに第1GIファイバ13が固定されていることにより、結像光学系30の小径化を実現しやすくなる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る光接続構造1は、光信号が射出される射出端12aを有する第1光ファイバ12と、射出端12aに固定されて第1光ファイバ12の開口数を縮小可能な第1GIファイバ13と、を有する第1ファイバユニット11を複数備える第1ファイバアレイ10と、第1ファイバユニット11から射出された光信号を受光可能な第2GIファイバ23と、第2GIファイバ23に固定された第2光ファイバ22と、を有する第2ファイバユニット21を複数備える第2ファイバアレイ20と、第1ファイバアレイ10と第2ファイバアレイ20との間に配置された分光素子40と、結像光学系30と、を備え、第1ファイバアレイ10から射出された光信号の各々は、結像光学系30を構成するレンズL1~L4の全てを透過する。
【0040】
この構成によれば、光ファイバ12、22の配置密度を高めるとともに、光信号の分光を容易に行うことができる。
【0041】
また、第1GIファイバ13の長さをLとし、第1GIファイバ13の内部を蛇行する光信号の蛇行の周期をPとするとき、0.20P≦L≦0.30Pが成立してもよい。この構成によれば、第1光ファイバ12の開口数をより確実に縮小し、結像光学系30の小径化をより実現しやすくなる。
【0042】
また、結像光学系30は、分光素子40と第1ファイバアレイ10との間に配置されて第1ファイバユニット11から射出された光信号のビームウェスト径を拡大する第1結像光学系31と、分光素子40と第2ファイバアレイ20との間に配置されて第1ファイバユニット11から射出された光信号を第2GIファイバ23に集光する第2結像光学系32と、を備える。この構成により、第1ファイバアレイ10から射出された各光信号を、より確実に第2ファイバアレイ20に伝送することができる。
【0043】
また、結像光学系30は、第1ファイバユニット11から射出された光信号を、ストレール比0.8以上で第2GIファイバ23に集光してもよい。この構成によれば、ファイバアレイ10、20間における伝送損失を抑制することができる。
【0044】
また、第1結像光学系31が備える光学部材のうち最も分光素子40に近い光学部材と、第1結像光学系31および第2結像光学系32の対称面Sとの間の距離が、分光素子40の長さD1の1/2より長い。この構成により、第1結像光学系31と第2結像光学系32との間に分光素子40を確実に配置することができる。
【0045】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0046】
例えば、前記実施形態において結像光学系30はレンズL1~L4によって構成されていたが、結像光学系30の構成はこれに限られない。光信号のビームウェスト径を拡大可能であれば、第1結像光学系31を構成する光学部材は適宜変更可能である。同様に、第2GIファイバ23に光信号を集光可能であれば、第2結像光学系32を構成する光学部材は適宜変更可能である。なお、結像光学系30は第2結像光学系32を備えていなくてもよい。この場合においても、ユーザは、分光素子40を用いて第1ファイバアレイ10から射出された各光信号をモニタすることが可能である。
【0047】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…光接続構造 10…第1ファイバアレイ 11…第1ファイバユニット 12…第1光ファイバ 12a…射出端 20…第2ファイバアレイ 21…第2ファイバユニット 22…第2光ファイバ 23…第2GIファイバ 30…結像光学系 31…第1結像光学系 32…第2結像光学系 L1~L4…レンズ(光学部材)
図1
図2
図3A
図3B