(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166203
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池の製造方法、及び、非水電解液二次電池の製造システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20231114BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20231114BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20231114BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231114BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/139
H01M10/0567
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077097
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107249
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 恭久
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智功
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ03
5H029CJ30
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA03
5H050GA03
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】性能のよい非水電解液二次電池を製造できる非水電解液二次電池の製造方法、及び、非水電解液二次電池の製造方法を提供する。
【解決手段】非水電解液二次電池の製造方法は、活物質を含む合材を集電体に塗布した後に合材をプレスすることによって得られる極板を備える非水電解液二次電池の製造方法であって、合材が含む活物質の比表面積と、合材の塗布量と、合材がプレスされることによる合材の密度変化率と、に基づいて、活物質の表面積を算出することと、活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる添加剤の量を算出することと、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質を含む合材を集電体に塗布した後に前記合材をプレスすることによって得られる極板を備える非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記合材が含む前記活物質の比表面積と、前記合材の塗布量と、前記合材がプレスされることによる前記合材の密度変化率と、に基づいて、前記活物質の表面積を算出することと、
前記活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる前記添加剤の量を算出することと、を含む非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記評価比が前記特定範囲に収まるように、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の濃度を調整することを含む請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項3】
添加されている前記添加剤の濃度がそれぞれ異なる第1非水電解液と第2非水電解液とを混合することによって、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の濃度を調整することを含む請求項2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記集電体に対する前記合材の目付量と、プレスされた前記合材の幅と、前記極板の全長と、に基づいて、前記集電体に対する前記合材の塗布量を算出することを含むことを特徴とする請求項3に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記極板は、負極板であり、
前記活物質は、負極活物質である請求項1から請求項4の何れか一項に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記非水電解液に添加されている前記添加剤は、リチウムビスオキサレートボラートである請求項5に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記非水電解液に添加されている前記添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムである請求項5に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項8】
活物質を含む合材が塗布された極板を備える非水電解液二次電池の製造システムであって、
処理装置と、
調整装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記合材が含む前記活物質の比表面積と、前記合材の塗布量と、前記合材がプレスされることによる前記合材の密度変化率と、に基づいて、前記活物質の表面積を算出し、
前記活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる前記添加剤の量を算出し、
前記調整装置は、
前記評価比が前記特定範囲に収まるように、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の量を調整する非水電解液二次電池の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池の製造方法、及び、非水電解液二次電池の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、非水電解液二次電池の製造方法が記載されている。非水電解液二次電池は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される。非水電解液二次電池は、車両の電源として使用される。
【0003】
非水電解液二次電池は、活物質層を有する極板を備える。非水電解液二次電池においては、非水電解液由来の被膜が活物質層に形成される。非水電解液二次電池においては、この被膜が適切な厚みで形成されることによって、その性能が向上することが知られている。特許文献1には、活物質層に含まれる活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比を特定範囲に収めることによって、非水電解液二次電池の性能が向上することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
極板は、活物質を含む合材を集電体に塗布した後に、合材をプレスすることによって、製造される。合材がプレスされることによって、合材に含まれる活物質の比表面積が変化する。すなわち、非水電解液二次電池の製造過程において、活物質の比表面積が変化する。しかしながら、特許文献1に記載の製造方法においては、活物質における比表面積の変化が考慮されていない。そのため、特許文献1に記載の方法では、活物質層に含まれる活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との評価比の精度が十分ではなく、性能のよい非水電解液二次電池を製造できないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する非水電解液二次電池の製造方法は、活物質を含む合材を集電体に塗布した後に前記合材をプレスすることによって得られる極板を備える非水電解液二次電池の製造方法であって、前記合材が含む前記活物質の比表面積と、前記合材の塗布量と、前記合材がプレスされることによる前記合材の密度変化率と、に基づいて、前記活物質の表面積を算出することと、前記活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる前記添加剤の量を算出することと、を含む。
【0007】
合材がプレスされると、活物質の比表面積が変化する。これは、プレスによって、活物質が割れたり崩れたりするためである。合材がプレスされると、合材の密度が変化する。したがって、活物質における比表面積の変化は、合材における密度の変化と相関がある。すなわち、合材における密度の変化率が大きいほど、活物質における比表面積の変化率が大きくなる。
【0008】
上記方法によれば、活物質の表面積を算出するにあたって、合材の密度変化率が考慮されている。すなわち、活物質の表面積を算出するにあたって、プレスによる活物質の比表面積の変化率が考慮されている。そのため、活物質の表面積が正確に算出される。これにより、活物質の表面積に対する添加剤の量を算出することによって、性能のよい非水電解液二次電池を製造できる。
【0009】
上記非水電解液二次電池の製造方法は、前記評価比が前記特定範囲に収まるように、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の濃度を調整することを含んでもよい。
非水電解液における添加剤の量は、添加剤の濃度と、非水電解液の注液量とによって決まる。非水電解液の注液量を変化させると、添加剤以外の成分量も変化するため、非水電解液二次電池に影響を及ぼすおそれがある。そのため、非水電解液における添加剤の量を変更する場合には、添加剤の濃度を変更することが好ましい。上記方法によれば、非水電解液に添加されている添加剤の濃度を調整することによって、非水電解液二次電池への影響を抑制しつつ、非水電解液における添加剤の量を変更できる。
【0010】
上記非水電解液二次電池の製造方法は、添加されている前記添加剤の濃度がそれぞれ異なる第1非水電解液と第2非水電解液とを混合することによって、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の濃度を調整することを含んでもよい。上記方法によれば、第1非水電解液と第2非水電解液とを混合することによって、非水電解液における添加剤の濃度を簡易に調整できる。
【0011】
上記非水電解液二次電池の製造方法は、前記集電体に対する前記合材の目付量と、プレスされた前記合材の幅と、前記極板の全長と、に基づいて、前記集電体に対する前記合材の塗布量を算出することを含んでもよい。
【0012】
通常、非水電解液二次電池を製造する場合には、合材の目付量、合材の幅、極板の全長を示すデータが得られる。したがって、上記構成によれば、非水電解液二次電池を製造する場合に通常得られるデータをもとに、合材の塗布量が把握できる。
【0013】
上記非水電解液二次電池の製造方法において、前記極板は、負極板であり、前記活物質は、負極活物質であってもよい。上記方法によれば、負極板に形成される被膜を適切な厚みにできる。
【0014】
上記非水電解液二次電池の製造方法において、前記非水電解液に添加されている前記添加剤は、リチウムビスオキサレートボラートであってもよい。上記方法によれば、負極板に形成される被膜を適切な厚みにできる。
【0015】
上記非水電解液二次電池の製造方法において、前記非水電解液に添加されている前記添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムであってもよい。上記方法によれば、負極板に形成される被膜を適切な厚みにできる。
【0016】
上記課題を解決する非水電解液二次電池の製造システムは、活物質を含む合材が塗布された極板を備える非水電解液二次電池の製造システムであって、処理装置と、調整装置と、を備え、前記処理装置は、前記合材が含む前記活物質の比表面積と、前記合材の塗布量と、前記合材がプレスされることによる前記合材の密度変化率と、に基づいて、前記活物質の表面積を算出し、前記活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる前記添加剤の量を算出し、前記調整装置は、前記評価比が前記特定範囲に収まるように、前記非水電解液に添加されている前記添加剤の量を調整する。上記構成によれば、上述した非水電解液二次電池の製造方法と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、性能のよい非水電解液二次電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】非水電解液二次電池の製造システムを示すブロック図である。
【
図4】リチウムビスオキサレートボラートが非水電解液に添加されている場合の保存劣化率と評価比との散布図である。
【
図5】
図4において密度変化率を考慮していない場合の保存劣化率と評価比との散布図である。
【
図6】フルオロスルホン酸リチウムが非水電解液に添加されている場合の保存劣化率と評価比との散布図である。
【
図7】
図6において密度変化率を考慮していない場合の保存劣化率と評価比との散布図である。
【
図8】非水電解液二次電池の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
非水電解液二次電池の製造方法及び非水電解液二次電池の製造システムについて、図を参照しながら説明する。まず、極板を備える非水電解液二次電池について説明する。非水電解液二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池である。非水電解液二次電池は、例えば、セル電池である。非水電解液二次電池は、例えば、車載用の電池パックを構成する。
【0020】
<非水電解液二次電池の構成>
図1に示すように、非水電解液二次電池10は、ケース11と、蓋12とを備える。蓋12は、ケース11の開口を塞ぐようにケース11に取り付けられる。蓋12には、注液穴13が開口する。注液穴13を通じて、ケース11内に非水電解液が注入される。注液穴13は、非水電解液の注入後に、例えば溶接によって塞がれる。
【0021】
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含まれた組成物である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどからなる群から選択される1種又は2種以上の材料を用いることができる。また、支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiIなどから選択される1種又は2種以上のリチウム化合物、すなわちリチウム塩を用いることができる。
【0022】
本例では、非水電解液において、非水溶媒としてエチレンカーボネートが採用される。非水電解液には、支持塩として添加剤が添加されている。添加剤は、例えば、リチウムビスオキサレートボラート(LiBOB)である。非水電解液におけるリチウムビスオキサレートボラートの濃度が0.001[mol/L]以上且つ0.1[mol/L]以下となるように、非水電解液にリチウムビスオキサレートボラートが添加されている。添加剤は、例えば、フルオロスルホン酸リチウムでもよい。
【0023】
非水電解液二次電池10は、2つの外部端子を備える。非水電解液二次電池10は、正極外部端子14と、負極外部端子15とを備える。正極外部端子14及び負極外部端子15は、例えば、蓋12からケース11外に向かって延びる。
【0024】
非水電解液二次電池10は、2つの集電部材を備える。非水電解液二次電池10は、正極集電部材16と、負極集電部材17とを備える。正極集電部材16及び負極集電部材17は、例えば、蓋12からケース11内に向かって延びる。正極集電部材16は、正極外部端子14と電気的に接続される。負極集電部材17は、負極外部端子15と電気的に接続される。
【0025】
非水電解液二次電池10は、電極体18を備える。電極体18は、ケース11内に位置する。電極体18は、非水電解液とともにケース11に収容される。電極体18は、正極集電部材16と負極集電部材17とに接続される。すなわち、電極体18は、正極外部端子14と負極外部端子15とに接続される。
【0026】
図2に示すように、電極体18は、2つの極板を含む。電極体18は、正極板19と、負極板20とを含む。電極体18は、さらに、セパレータ21と、セパレータ22とを含む。電極体18は、正極板19、負極板20、セパレータ21、及び、セパレータ22が積層された積層体である。正極板19、セパレータ21、負極板20、及び、セパレータ22は、この順に積層されている。
【0027】
電極体18は、例えば、正極板19、セパレータ21、負極板20、及び、セパレータ22がこの順に積層された状態で巻き重ねられることによって構成される。電極体18は、例えば、それぞれが単票状である正極板19、セパレータ21、負極板20、及び、セパレータ22がこの順に積層されることによって構成されてもよい。
【0028】
正極板19は、正極集電体23と、正極活物質層24とを含む。正極集電体23は、例えば、金属箔である。正極集電体23は、例えば、アルミニウムを含む材料で構成される。
【0029】
正極集電体23は、接続部分25を有する。接続部分25は、正極集電部材16と電気的に接続される部分である。接続部分25は、正極集電体23の端部に位置する。接続部分25は、正極集電体23において正極活物質層24が位置しない部分である。
【0030】
正極活物質層24は、正極集電体23上に位置する。正極活物質層24は、正極集電体23の全長にわたって位置する。正極活物質層24の全長は、正極集電体23の全長と一致し、正極板19の全長と一致する。正極活物質層24の幅は、正極集電体23の幅よりも小さい。これにより、接続部分25が確保される。
【0031】
正極活物質層24は、例えば、正極集電体23の片面に位置する。正極活物質層24は、正極集電体23の両面に位置してもよい。正極活物質層24は、正極活物質を含む。正極活物質層24は、正極活物質を含む合材を正極集電体23に塗布することによって形成される。
【0032】
正極活物質は、例えば、リチウムを吸蔵、及び、放出可能な材料である。正極活物質は、例えば、リチウム含有複合酸化物である。リチウム含有複合酸化物は、リチウムと、リチウム以外の他の金属元素とを含む酸化物である。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)などである。また、正極活物質は、これらを任意の割合で混合した材料で構成されてもよい。
【0033】
負極板20は、負極集電体26と、負極活物質層27とを含む。負極集電体26は、例えば、金属箔である。負極集電体26は、例えば、銅を含む材料で構成される。
負極集電体26は、接続部分28を有する。接続部分28は、負極集電部材17と電気的に接続される部分である。接続部分28は、負極集電体26の端部に位置する。接続部分28は、負極集電体26において負極活物質層27が位置しない部分である。
【0034】
負極活物質層27は、負極集電体26上に位置する。負極活物質層27は、負極集電体26の全長にわたって位置する。負極活物質層27の全長は、負極集電体26の全長と一致し、負極板20の全長と一致する。負極活物質層27の幅は、負極集電体26の幅よりも小さい。これにより、接続部分28が確保される。
【0035】
負極活物質層27は、例えば、負極集電体26の片面に位置する。負極活物質層27は、負極集電体26の両面に位置してもよい。負極活物質層27は、負極活物質を含む。負極活物質層27は、負極活物質を含む合材を負極集電体26に塗布することによって形成される。
【0036】
負極活物質は、例えば、リチウムを吸蔵、及び、放出可能な材料である。負極活物質は、例えば、炭素材料である。負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛である。
【0037】
セパレータ21及びセパレータ22は、例えば、樹脂製の不織布である。例えば、多孔性ポリエチレン膜、多孔性ポリオレフィン膜、多孔性ポリ塩化ビニル膜などの多孔性ポリマー膜、及び、イオン導電性ポリマー電解質膜などが、セパレータ21及びセパレータ22として使用される。
【0038】
<非水電解液二次電池の製造システム>
次に、非水電解液二次電池10を製造する製造システムについて説明する。
図3に示すように、製造システム30は、混錬装置31を備える。混錬装置31は、活物質を混錬する装置である。これにより、混錬装置31は、合材を作製する。混錬装置31は、正極活物質を混錬することによって、正極合材を作製する。混錬装置31は、正極活物質の他に、導電剤、正極溶媒、正極結着剤、増粘剤などを併せて混錬してもよい。混錬装置31は、負極活物質を混錬することによって、負極合材を作製する。混錬装置31は、負極活物質の他に、分散剤、負極溶媒、負極結着剤、増粘剤などを併せて混錬してもよい。これにより、ペースト状の合材が作製される。導電剤は、合材に導電性を付与するための材料である。分散剤は、活物質を均一に分散させるための材料である。結着剤は、活物質同士の結着力を高めるための材料である。
【0039】
正極合材は、正極活物質の他に、導電剤、正極溶媒、正極結着剤、増粘剤などを含むことがある。導電剤は、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛である。正極溶媒は、例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)溶液である。正極結着剤は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロオロエチレン、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0040】
負極合材は、負極活物質の他に、分散剤、負極溶媒、負極結着材、増粘剤を含むことがある。分散剤は、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。負極溶媒は、例えば、水である。負極結着剤は、例えば、スチレンブタジエンラバー(SBR)である。
【0041】
製造システム30は、塗布装置32を備える。塗布装置32は、合材を集電体に塗布する装置である。塗布装置32は、予め定められた目付量で合材を集電体に塗布する。目付量は、塗布装置32を制御することによって変更される。塗布装置32は、例えば、スリットコーター、ダイコーターなどである。塗布装置32は、正極合材を正極集電体23に塗布する。塗布装置32は、負極合材を負極集電体26に塗布する。塗布装置32が集電体に合材を塗布することによって、所定厚みの合材層が集電体上に形成される。
【0042】
製造システム30は、プレス装置33を備える。プレス装置33は、集電体に塗布された合材をプレスする装置である。プレス装置33は、合材が予め定められた厚みになるように、合材をプレスする。プレス装置33は、例えば、ローラーによって合材をプレスする。プレス装置33が集電体上の合材層をプレスすることによって、合材層の厚みが変化、すなわち合材が圧縮される。その結果、合材の体積、合材の密度などが変化する。
【0043】
プレス装置33は、合材をプレスすることによって、集電体上に活物質層を形成する。プレス装置33は、正極集電体23に塗布された正極合材をプレスすることによって、正極活物質層24を有する正極板19を製造する。プレス装置33は、負極集電体26に塗布された負極合材をプレスすることによって、負極活物質層27を有する負極板20を製造する。
【0044】
製造システム30は、乾燥装置34を備えてもよい。乾燥装置34は、合材を乾燥させる装置である。乾燥装置34は、例えば、合材に温風を吹き付けることによって合材を乾燥させてもよいし、合材を真空中に位置させることによって合材を乾燥させてもよい。乾燥装置34は、例えば、正極板19を乾燥させる。これにより、正極活物質層24に含まれる溶媒が蒸発する。乾燥装置34は、例えば、負極板20を乾燥させる。これにより、負極活物質層27に含まれる溶媒が蒸発する。乾燥装置34は、プレス装置33によって合材がプレスされる前に極板を乾燥させてもよいし、合材がプレスされた後に乾燥されてもよい。
【0045】
製造システム30は、組立装置35を備える。組立装置35は、非水電解液二次電池10を組み立てる装置である。組立装置35は、正極板19、負極板20、セパレータ21、及び、セパレータ22を積層させることによって、電極体18を製造する。組立装置35は、電極体18をプレスする。これにより、扁平状の電極体18が得られる。組立装置35は、電極体18を正極集電部材16と負極集電部材17とに取り付ける。組立装置35は、電極体18をケース11に収容する。組立装置35は、ケース11に蓋12を取り付ける。このようにして、組立装置35は、非水電解液二次電池10を組み立てる。
【0046】
製造システム30は、調整装置36を備える。調整装置36は、非水電解液における添加剤の量を調整する装置である。非水電解液における添加剤の量は、非水電解液における添加剤の濃度と、非水電解液の液量とによって決まる。調整装置36は、例えば、非水電解液における添加剤の濃度を調整することによって、非水電解液における添加剤の量を調整する。具体的には、調整装置36は、添加剤の濃度がそれぞれ異なる複数の非水電解液を混合することによって、混合した非水電解液における添加剤の濃度を調整する。調整装置36は、非水電解液の液量を調整することによって、非水電解における添加剤の量を調整してもよい。
【0047】
調整装置36は、複数のタンクを備える。調整装置36は、例えば、第1タンク37と、第2タンク38とを備える。調整装置36は、3つ以上のタンクを備えてもよい。第1タンク37は、相対的に添加剤の濃度が高い第1非水電解液を収容する。第2タンク38は、相対的に添加剤の濃度が低い第2非水電解液を収容する。第1非水電解液における添加剤の濃度は、第2非水電解液における添加剤の濃度よりも高い。第2非水電解液における添加剤の濃度は、0%でもよい。調整装置36は、第1非水電解液と第2非水電解液とを混合する。これにより、添加剤の濃度が所望の濃度である非水電解液が作製される。
【0048】
製造システム30は、注液装置39を備える。注液装置39は、ケース11に非水電解液を注入する装置である。注液装置39は、組立装置35が組み立てた非水電解液二次電池10に、注液穴13を通じて、調整装置36が作製した非水電解液を注入する。これにより、非水電解液二次電池10が完成する。
【0049】
製造システム30は、処理装置40を備える。処理装置40は、製造システム30に関する情報を処理する装置である。処理装置40は、製造システム30を統括的に制御してもよい。処理装置40は、コンピュータプログラムにしたがって各種処理を実行する1つ以上のプロセッサで構成されてもよい。処理装置40は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路などの1つ以上の専用のハードウェア回路で構成されてもよい。処理装置40は、プロセッサ、ハードウェア回路の組み合わせを含む回路として構成されてもよい。プロセッサは、CPU、ならびに、RAM及びROMなどのメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0050】
処理装置40は、例えば、非水電解液二次電池10の製造に関するデータを記憶する。処理装置40は、例えば、非水電解液二次電池10の製造に関するデータを、製造システム30を構成するそれぞれの装置から取得する。処理装置40は、例えば、処理装置40のユーザーが非水電解液二次電池10の製造に関するデータを入力することによって、非水電解液二次電池10の製造に関するデータを取得する。
【0051】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、例えば、負極板20に関するデータを記憶する。処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、例えば、正極板19に関するデータを記憶してもよい。処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、例えば、正極板19及び負極板20の双方に関するデータを記憶してもよい。
【0052】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関する種々のデータを、データレイクとして蓄積する。処理装置40は、データレイクとして蓄積した種々のデータを集約させることによって、非水電解液二次電池10の製造履歴を示すデータマートを生成する。
【0053】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータの一例として、例えば、材料データ41を記憶する。材料データ41は、活物質に関するデータである。材料データ41は、活物質の比表面積を示すデータを含む。詳しくは、材料データ41は、混錬装置31に投入される活物質の比表面積を示すデータを含む。処理装置40は、例えば、製造システム30を構成する装置から材料データ41を取得してもよいし、処理装置40のユーザーが材料データ41を処理装置40に入力することによって材料データ41を取得してもよい。
【0054】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータの一例として、例えば、塗工データ42を記憶する。塗工データ42は、塗布装置32による合材の塗布に関するデータである。塗工データ42は、塗布装置32によって塗布される合材の目付量を示すデータを含む。処理装置40は、例えば、塗布装置32から塗工データ42を取得してもよいし、処理装置40のユーザーが塗工データ42を処理装置40に入力することによって塗工データ42を取得してもよい。
【0055】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータの一例として、例えば、プレスデータ43を記憶する。プレスデータ43は、プレス装置33による合材のプレスに関するデータである。プレスデータ43は、プレス装置33によってプレスされた合材の幅を示すデータを含む。プレスされた合材の幅は、集電体上に形成される活物質層の幅である。プレスデータ43は、プレス装置33によってプレスされた後の合材の厚みを示すデータを含む。処理装置40は、例えば、プレス装置33からプレスデータ43を取得してもよいし、処理装置40のユーザーがプレスデータ43を処理装置40に入力することによってプレスデータ43を取得してもよい。
【0056】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、材料データ41、塗工データ42、及び、プレスデータ43以外のデータを記憶してもよい。処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、混錬装置31による活物質の混錬に関する混錬データを記憶してもよい。処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータとして、組立装置35による非水電解液二次電池10の組立に関する組立データを記憶してもよい。
【0057】
非水電解液二次電池10の製造に関するデータは、混錬装置31によって作製された合材の密度を示すデータを含む。すなわち、非水電解液二次電池10の製造に関するデータは、プレス装置33によってプレスされる前の合材の密度を示すデータを含む。非水電解液二次電池10の製造に関するデータは、極板の全長を示すデータを含む。
【0058】
極板の全長を示すデータは、電極体18における極板の全長を示す。すなわち、極板の全長を示すデータは、正極板19の全長、負極板20の全長、又は、その双方を示す。極板が巻き重ねられることによって電極体18が構成される場合では、極板の全長を示すデータは、1枚の極板の長さを示す。単票状の極板が複数枚重ねられることによって電極体18が構成される場合では、極板の全長を示すデータは、1枚ごとの極板の長さと極板の枚数を乗算することによって得られる長さを示す。
【0059】
処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータから、非水電解液二次電池10に注液される非水電解液における添加剤の適切な量を算出する。処理装置40は、材料データ41、塗工データ42、及び、プレスデータ43などに基づいて、非水電解液における添加剤の適切な量を算出する。処理装置40は、例えば、非水電解液における添加剤の適切な濃度を算出する。処理装置40は、非水電解液の適切な液量を算出してもよい。処理装置40は、非水電解液における添加剤の適切な濃度と、非水電解液の適切な液量とを算出してもよい。
【0060】
非水電解液二次電池10においては、非水電解液の副反応によって、活物質層に被膜が形成される。すなわち、正極活物質層24に、非水電解液由来の被膜が形成されることがある。負極活物質層27に、非水電解液由来の被膜が形成されることがある。この被膜が適切な厚みで形成されることによって、性能のよい非水電解液二次電池10が得られる。この被膜については、後で説明する。
【0061】
処理装置40は、範囲データ44を記憶する。範囲データ44は、活物質層に含まれる活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比の特定範囲を示すデータである。範囲データ44は、活物質層に被膜が適切な厚みで形成される評価比の条件を示すデータである。すなわち、範囲データ44は、被膜が適切な厚みで形成されるために、非水電解液における添加剤の適切な量を示すともいえる。
【0062】
<被膜>
次に、活物質層に形成される被膜について、負極板20を例に説明する。なお、正極板19についても概ね同様のことがいえる。
【0063】
非水電解液二次電池10においては、負極活物質層27の表面に、SEI(Solid Electrolyte Interphase)被膜が形成される。SEI被膜は、非水電解液が分解されることによって形成される。SEI被膜が形成されることによって、非水電解液のさらなる分解が抑制される。SEI被膜が形成されることによって、リチウムイオンの移動が補助される。すなわち、SEI被膜は、非水電解液二次電池10の性能向上に寄与する。
【0064】
SEI被膜が薄い場合、非水電解液のさらなる分解が抑制されないおそれがある。SEI被膜が厚い場合、リチウムイオンの移動を妨げるおそれがある。したがって、性能のよい非水電解液二次電池10を得るためには、適切な厚みのSEI被膜を活物質層に形成させる必要がある。
【0065】
SEI被膜の厚みは、非水電解液に添加されている添加剤の量に影響される。例えば、非水電解液にリチウムビスオキサレートボラートが添加されている場合では、非水電解液に含まれるリチウムビスオキサレートボラートの量、詳しくはそのホウ素量がSEI被膜の厚みに影響する。例えば、非水電解液にフルオロスルホン酸リチウムが添加されている場合では、非水電解液に含まれるフルオロスルホン酸リチウムの量、詳しくはその硫黄量がSEI被膜の厚みに影響する。非水電解液に含まれる添加剤の量が多いほど、SEI被膜の厚みが増す。
【0066】
SEI被膜は、負極活物質層27に含まれる負極活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる場合に、適切な厚みで形成される。評価比は、添加剤の量を、負極活物質の表面積で除算した値である。本例では、特定範囲は、添加剤がリチウムビスオキサレートボラートである場合に、1.2×10-6[mol/m2]より大きく、且つ、2.2×10-6[mol/m2]より小さい範囲である。特定範囲は、極板を構成する材料の選択、非水電解液を構成する材料の選択などによって、変化する。
【0067】
非水電解液二次電池10においては、負極活物質層27に含まれる負極活物質の表面積と非水電解液に含まれる添加剤の量との評価比が特定範囲に収まることによって、性能が向上する。負極活物質の表面積は、負極活物質の比表面積と、負極活物質の量とを乗算することによって、算出される。処理装置40は、非水電解液二次電池10の製造に関するデータ、すなわち、材料データ41、塗工データ42、及び、プレスデータ43などから、負極活物質の表面積を算出する。処理装置40は、合材の目付量と、合材の幅と、合材の全長、すなわち極板の全長と、を乗算することによって、合材の量を算出する。合材の量から負極活物質の量が把握できる。
【0068】
負極活物質においては、プレスされることによって、その比表面積が変化する。具体的には、プレスによって負極活物質の比表面積が増加する。これは、プレスによって負極活物質が割れたり崩れたりするためである。そのため、負極活物質の表面積を精度よく算出するためには、プレスによる比表面積の増加を考慮する必要がある。
【0069】
合材がプレスされると、合材の密度が変化する。具体的には、合材がプレスされることによって、合材の密度が大きくなる。合材の密度変化と負極活物質における比表面積の変化とには、相関がある。合材の密度が大きくなるほど、比表面積が大きくなる。したがって、負極活物質における比表面積の変化率は、合材の密度変化率に置き換えられる。
【0070】
負極活物質の表面積を算出するにあたり、合材の密度変化率を考慮することによって、プレスによって変化する負極活物質における比表面積の変化が考慮される。これにより、合材の密度変化率を考慮しない場合と比べて、負極活物質の表面積が精度よく算出される。
【0071】
<非水電解液二次電池の特性と評価比との相関関係>
次に、非水電解液二次電池10の特性と評価比との相関関係について、負極板20を例に説明する。なお、正極板19についても概ね同様のことがいえる。
【0072】
図4から
図7は、負極活物質の表面積と非水電解液における添加剤の量との評価比と、保存劣化率との相関を示す散布図である。
図4及び
図5に示す散布図は、添加剤がリチウムビスオキサレートボラートである場合の相関を示す。
図6及び
図7に示す散布図は、添加剤がフルオロスルホン酸リチウムである場合の相関を示す。
図4及び
図6に示す散布図において、縦軸は、保存劣化率を示す。
図4及び
図6に示す散布図において、横軸は負極合材の密度変化率を考慮した評価比を示す。
図5及び
図7に示す散布図において、縦軸は、保存劣化率を示す。
図5及び
図7に示す散布図において、横軸は負極合材の密度変化率を考慮しない評価比を示す。保存劣化率は、例えば、日数経過に対する電気容量の劣化具合を示す。
【0073】
図4に示すように、負極合材の密度変化率を考慮したうえで負極活物質の表面積を算出した場合、評価比と保存劣化率との相関係数の絶対値は、0.53である。
図5に示すように、負極合材の密度変化率を考慮せずに負極活物質の表面積を算出した場合、評価比と保存劣化率との相関係数の絶対値は、0.45である。
【0074】
図6に示すように、負極合材の密度変化率を考慮したうえで負極活物質の表面積を算出した場合、評価比と保存劣化率との相関係数の絶対値は、0.28である。
図7に示すように、負極合材の密度変化率を考慮せずに負極活物質の表面積を算出した場合、評価比と保存劣化率との相関係数の絶対値は、0.17である。
【0075】
図4から
図7に示すように、負極合材の密度変化率を考慮する場合、負極合材の密度変化率を考慮しない場合と比べて、相関係数の絶対値が高くなる。評価比と保存劣化率との相関係数の絶対値が1に近いほど、両者の線形的な関係が強い。評価比と保存劣化率との線形的な関係が強いほど、非水電解液二次電池10の評価指標として優れている。評価比と保存劣化率との線形的な関係が強いほど、添加剤の量に対する非水電解液二次電池10の特性変化が精度よく評価できている。したがって、評価比を算出するにあたり、負極合材の密度変化率を考慮することによって、非水電解液二次電池10の性能を精度よく評価できる。
【0076】
<非水電解液二次電池の製造方法>
次に、製造システム30による非水電解液二次電池10の製造方法について説明する。
図8に示すように、製造システム30は、ステップS11において、活物質を混錬する。すなわち、製造システム30において、混錬装置31が活物質を混錬する。これにより、合材が作製される。このとき、処理装置40は、例えば、材料データ41を取得する。
【0077】
製造システム30は、ステップS12において、合材を集電体に塗布する。すなわち、製造システム30において、塗布装置32が合材を集電体に塗布する。このとき、処理装置40は、例えば、塗工データ42を取得する。
【0078】
製造システム30は、ステップS13において、集電体に塗布された合材をプレスする。すなわち、製造システム30において、プレス装置33が合材をプレスする。これにより、極板が製造される。このとき、処理装置40は、例えば、プレスデータ43を取得する。
【0079】
製造システム30は、ステップS13の直前、又は、ステップS13の直後に、合材を乾燥させてもよい。すなわち、製造システム30において、乾燥装置34が合材を乾燥させてもよい。
【0080】
製造システム30は、ステップS14において、非水電解液二次電池10を組み立てる。すなわち、製造システム30において、組立装置35が非水電解液二次電池10を組み立てる。具体的には、組立装置35は、極板から電極体18を製造する。組立装置35は、電極体18と蓋12とを接続する。組立装置35は、電極体18をケース11に収容する。組立装置35は、蓋12をケース11に溶接する。このとき、処理装置40は、例えば、組立データを取得してもよい。
【0081】
製造システム30は、ステップS15において、評価比が特定範囲に収まる添加剤の量を計算する。処理装置40は、材料データ41、塗工データ42、プレスデータ43などに基づいて、活物質層に含まれる活物質の表面積を計算する。処理装置40は、計算した活物質の表面積と、範囲データ44が示す特定範囲とから、添加剤の適切な量、例えば添加剤の適切な濃度を計算する。
【0082】
製造システム30は、ステップS15において、非水電解液における添加剤の量、例えば添加剤の濃度を調整する。すなわち、製造システム30において、調整装置36が第1非水電解液と第2非水電解液とを混合する。調整装置36は、処理装置40が算出した添加剤の濃度となる非水電解液を作製する。
【0083】
製造システム30は、ステップS16において、非水電解液を注液する。すなわち、製造システム30において、調整装置36によって作製された非水電解液を注液装置39が非水電解液二次電池10に注入する。これにより、非水電解液二次電池10が製造される。
【0084】
製造された非水電解液二次電池10には、活性化処理が施される。すなわち、非水電解液二次電池10に充電が施される。これに伴い、非水電解液二次電池10内において非水電解液が分解される。その結果、活物質層の表面に被膜が形成される。このとき、添加剤が適切な濃度で非水電解液に含まれていることによって、活物質層の表面に適切な厚みの被膜が形成される。
【0085】
<効果>
次に、上記実施例の効果について説明する。
(1)非水電解液二次電池10の製造方法は、合材が含む活物質の比表面積と、集電体に対する合材の塗布量と、合材がプレスされることによる合材の密度変化率と、に基づいて、活物質の表面積を算出することを含む。非水電解液二次電池10の製造方法は、活物質の表面積と非水電解液に添加されている添加剤の量との比である評価比が特定範囲に収まる添加剤の量を算出することを含む。
【0086】
合材がプレスされると、活物質の比表面積が変化する。これは、プレスによって、活物質が割れたり崩れたりするためである。合材がプレスされると、合材の密度が変化する。したがって、活物質における比表面積の変化は、合材における密度の変化と相関がある。すなわち、合材における密度の変化率が大きいほど、活物質における比表面積の変化率が大きくなる。
【0087】
上記方法によれば、活物質の表面積を算出するにあたって、合材の密度変化率が考慮されている。すなわち、活物質の表面積を算出するにあたって、プレスによる活物質の比表面積の変化率が考慮されている。そのため、活物質の表面積が正確に算出される。これにより、活物質の表面積に対する添加剤の量を算出することによって、性能のよい非水電解液二次電池10を製造できる。
【0088】
(2)非水電解液二次電池10の製造方法は、評価比が特定範囲に収まるように、非水電解液に添加されている添加剤の濃度を調整することを含む。
非水電解液における添加剤の量は、添加剤の濃度と、非水電解液の注液量とによって決まる。非水電解液の注液量を変化させると、添加剤以外の成分量も変化するため、非水電解液二次電池10に影響を及ぼすおそれがある。そのため、非水電解液における添加剤の量を変更する場合には、添加剤の濃度を変更することが好ましい。
【0089】
上記方法によれば、非水電解液に添加されている添加剤の濃度を調整することによって、非水電解液二次電池10への影響を抑制しつつ、非水電解液における添加剤の量を変更できる。
【0090】
(3)非水電解液二次電池10の製造方法は、添加されている添加剤の濃度がそれぞれ異なる第1非水電解液と第2非水電解液とを混合することによって、非水電解液に添加されている添加剤の濃度を調整することを含む。上記方法によれば、第1非水電解液と第2非水電解液とを混合することによって、非水電解液における添加剤の濃度を簡易に調整できる。
【0091】
(4)非水電解液二次電池10の製造方法は、集電体に対する合材の目付量と、プレスされた合材の幅と、極板の全長と、に基づいて、集電体に対する合材の塗布量を算出することを含む。
【0092】
通常、非水電解液二次電池10を製造する場合には、合材の目付量、合材の幅、極板の全長を示すデータが得られる。したがって、上記構成によれば、非水電解液二次電池10を製造する場合に通常得られるデータをもとに、合材の塗布量が把握できる。
【0093】
(5)極板は、負極板20であり、活物質は、負極活物質である。上記方法によれば、負極板20に形成される被膜を適切な厚みにできる。
(6)非水電解液に添加されている添加剤は、リチウムビスオキサレートボラートである。上記方法によれば、負極板20に形成される被膜を適切な厚みにできる。
【0094】
(7)非水電解液に添加されている添加剤は、フルオロスルホン酸リチウムである。上記方法によれば、負極板20に形成される被膜を適切な厚みにできる。
<変更例>
上記実施例は、以下のように変更して実施できる。上記実施例及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0095】
・調整装置36は、3つ以上の非水電解液を混合してもよい。
・処理装置40とは異なる別の装置が非水電解液二次電池10の製造に関するデータを記憶していてもよい。処理装置40とは異なる別の装置がデータレイク、データマートを記憶していてもよい。処理装置40は、データマートを参照することによって、添加剤の適切な濃度を算出する。
【符号の説明】
【0096】
10…非水電解液二次電池
30…製造システム
36…調整装置
40…処理装置
41…材料データ
42…塗工データ
43…プレスデータ