(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166204
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】敷均し方法および自動化施工システム
(51)【国際特許分類】
E02F 3/85 20060101AFI20231114BHJP
E02F 3/815 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F3/815 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077100
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中居 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】若山 真則
(72)【発明者】
【氏名】佐野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 凌
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 将
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA02
2D003AB01
2D003AB04
2D003AC02
2D003BA02
2D003BA03
2D003DA04
2D003DB05
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】大粒径岩が含まれる場合でも高品質の敷均しを行うことができる敷均し方法および自動化施工システムを提供する。
【解決手段】建設機械を用いた敷均し方法であって、前記建設機械は、オペレータによる操縦なしで自動走行可能であり、対象物を検出可能なセンサ部と接続され、前記建設機械を土砂山に移動させ、前記センサ部を用いて前記土砂山に含まれる岩石の大きさを検出する岩石サイズ検出工程(ステップS3)と、予め設定したサイズよりも大きいサイズの岩石である大粒径岩が含まれている場合に、当該大粒径岩に対する作業を前記建設機械が優先的に行う優先作業工程(ステップS5,S6)と、前記土砂山を対象とした敷均し作業を前記建設機械が行う敷均し工程とを有する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械を用いた敷均し方法であって、
前記建設機械は、オペレータによる操縦なしで自動走行可能であり、対象物を検出可能なセンサ部と接続され、
前記建設機械を土砂山に移動させ、前記センサ部を用いて前記土砂山に含まれる岩石の大きさを検出する岩石サイズ検出工程と、
予め設定したサイズよりも大きいサイズの岩石である大粒径岩が含まれている場合に、当該大粒径岩に対する作業を前記建設機械が優先的に行う優先作業工程と、
前記土砂山を対象とした敷均し作業を前記建設機械が行う敷均し工程と、を有する、
ことを特徴とする敷均し方法。
【請求項2】
前記優先作業工程では、第一閾値以上かつ第二閾値よりも小さいサイズの岩石である特大岩が検出された場合に、当該特大岩に向けて前記建設機械を移動させて前記土砂山から当該特大岩を押し出して除去する、
ことを特徴とする請求項1に記載の敷均し方法。
【請求項3】
前記優先作業工程では、前記第二閾値以上のサイズの岩石である極大岩が検出された場合に、当該極大岩が含まれていることを報知する、
ことを特徴とする請求項2に記載の敷均し方法。
【請求項4】
前記敷均し工程の前工程として、前記センサ部を用いて前記土砂山のサイズを検出する土砂山サイズ検出工程をさらに有し、
前記敷均し工程では、前記土砂山サイズ検出工程での検出結果に基づいて決定した敷均しの条件に従って敷均し作業を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の敷均し方法。
【請求項5】
前記敷均し工程では、グリッドマップによって現地形と基準面との高低差を求め、レーンに含まれるマスの高低差の合計値を求めることで各レーンの走行距離を決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の敷均し方法。
【請求項6】
前記岩石サイズ検出工程の前工程として、前記センサ部を用いて前記土砂山の位置を検出する土砂山位置検出工程をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の敷均し方法。
【請求項7】
敷均しを行う自動化施工システムであって、
オペレータによる操縦なしで自動走行可能である建設機械と、
対象物を検出可能なセンサ部と、
前記建設機械による施工を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記建設機械を土砂山に移動させ、前記センサ部を用いて前記土砂山に含まれる岩石の大きさを検出させる岩石サイズ検出処理部と、
予め設定したサイズよりも大きいサイズの岩石である大粒径岩が含まれている場合に、当該大粒径岩に対する作業を前記建設機械に優先的に行わせる優先作業部と、
前記土砂山を対象とした敷均し作業を前記建設機械に行わせる敷均し制御部と、を有する、
ことを特徴とする自動化施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行可能な建設機械を用いた敷均し方法および自動化施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザなどの建設機械を自動走行させて土砂の敷均しを行う技術がある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、ブレードが抱えている土砂の量を検出するセンサを設け、土砂がなくなった場合にブルドーザの走行を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される技術では、敷均しを行う土砂に大粒径の岩石(例えば、数十センチメートル以上の岩石であり、以下では「大粒径岩」と称す)が含まれている場合を想定していないので、土砂に大粒径岩が含まれている状況では高品質な敷き均しを行えないという問題があった。例えば、ブルドーザでの撒き出しの後工程で振動ローラを用いて転圧を行う場合、振動ローラが大粒径岩に乗り上げてしまい、盛り立て密度が低くなるといった問題が発生する。ここで、大粒径岩が含まれる土砂は、例えば原石山において発破掘削されたダムの盛り立て材などである。
このような観点から、本発明は、大粒径岩が含まれる場合でも高品質の敷均しを行うことができる敷均し方法および自動化施工システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る敷均し方法は、建設機械を用いた敷均し方法であって、前記建設機械は、オペレータによる操縦なしで自動走行可能であり、対象物を検出可能なセンサ部と接続される。この敷均し方法は、岩石サイズ検出工程と、優先作業工程と、敷均し工程とを有する。岩石サイズ検出工程では、前記建設機械を土砂山に移動させ、前記センサ部を用いて前記土砂山に含まれる岩石の大きさを検出する。優先作業工程では、予め設定したサイズよりも大きいサイズの岩石である大粒径岩が含まれている場合に、当該大粒径岩に対する作業を前記建設機械が優先的に行う。敷均し工程では、前記土砂山を対象とした敷均し作業を前記建設機械が行う。
本発明に係る敷均し方法においては、大粒径岩が含まれる場合に大粒径岩に対して優先的に作業を行い、その後に敷均し作業を行うので、高品質の敷均しを行うことができる。
前記優先作業工程では、第一閾値以上かつ第二閾値よりも小さいサイズの岩石である特大岩が検出された場合に、当該特大岩に向けて前記建設機械を移動させて前記土砂山から当該特大岩を押し出して除去するのがよい。例えば、除去した特大岩を設計面よりも低い凹部に優先して落とすようにし、特大岩が表面に露出し難くする。
また、前記優先作業工程では、前記第二閾値以上のサイズの岩石である極大岩が検出された場合に、当該極大岩が含まれていることを報知するのがよい。その後、何らかの方法(例えば作業員がバックホーなどの建設機械を用いて)で極大岩を排除する。
【0006】
前記敷均し工程の前工程として、前記センサ部を用いて前記土砂山のサイズを検出する土砂山サイズ検出工程を有してもよい。その場合、前記敷均し工程では、前記土砂山サイズ検出工程での検出結果に基づいて決定した敷均しの条件に従って敷均し作業を行うのがよい。
このようにすると、土砂山のサイズの検出結果に基づいて敷均し作業を行うので作業の効率化を図ることができる。
前記敷均し工程では、例えばグリッドマップによって現地形と基準面との高低差を求め、レーンに含まれるマスの高低差の合計値を求めることで各レーンの走行距離を決定する。
このようにすると、現地形に基づいた施工を行うことができるので、より高品質かつ高効率な敷均しを行うことができる。
また、前記岩石サイズ検出工程の前工程として、前記センサ部を用いて前記土砂山の位置を検出する土砂山位置検出工程を有してもよい。
【0007】
本発明に係る自動化施工システムは、敷均しを行う自動化施工システムである。この自動化施工システムは、オペレータによる操縦なしで自動走行可能である建設機械と、対象物を検出可能なセンサ部と、前記建設機械による施工を制御する制御装置と、を備える。
前記制御装置は、岩石サイズ検出処理部と、優先作業部と、敷均し制御部とを有する。岩石サイズ検出処理部は、前記建設機械を土砂山に移動させ、前記センサ部を用いて前記土砂山に含まれる岩石の大きさを検出させる。優先作業部は、予め設定したサイズよりも大きいサイズの岩石である大粒径岩が含まれている場合に、当該大粒径岩に対する作業を前記建設機械に優先的に行わせる。敷均し制御部は、前記土砂山を対象とした敷均し作業を前記建設機械に行わせる。
本発明に係る自動化施工システムにおいては、大粒径岩が含まれる場合に優先的に作業を行うので、高品質の敷均しを行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大粒径岩が含まれる場合でも高品質の敷均しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動化施工システムの全体図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るブルドーザの側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るブルドーザが備える制御装置のブロック図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る自動化施工システムに係る敷均し方法の工程を示すフローチャートである。
【
図4B】本発明の実施形態に係る自動化施工システムに係る敷均し方法の工程を示すフローチャートである。
【
図5】岩石サイズ検出工程および優先作業工程のイメージ図である。
【
図7】土砂山の立米数の情報を基にして各レーンの走行距離(前移動量)を決める場合を説明するための図であり、(a)は土砂山の平面図であり、(b)は土砂山の正面図である。
【
図8】グリッドマップに基づいて各レーンの走行距離(前移動量)を決める場合を説明するための図である。
【
図9】土砂山の荒崩しを行う場合におけるブレードの位置の一例である。
【
図11】本発明の実施形態に係る自動化施工システムに係る敷均し方法の効果を説明するための図であり、(a)は敷均し前の状態を示し、(b)は敷均し完了後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
≪実施形態に係る自動化施工システムの構成≫
実施形態に係る自動化施工システム100の全体図を
図1に示す。
図1に示す自動化施工システム100は、ブルドーザ1をオペレータによる操縦なしで走行させて、敷均しを自動で行う次世代型の自動化施工システムである。自動化施工システム100は、主に、施工現場を自動走行するブルドーザ1と、施工現場から離れた場所にある管理室内に設置された管理用パソコン(PC:Personal Computer)2と、を備えて構成されている。なお、ブルドーザ1は、建設機械の一例である。
ブルドーザ1および管理用パソコン2は、無線通信を用いて通信可能である。また、ブルドーザ1は、測位用衛星3から発信される電波(測位用信号)を受信可能である。なお、自動化施工システム100の構成はここで示すものに限定されず、例えば、ブルドーザ1が管理用パソコン2の機能を有していてもよい(つまり、管理用パソコン2を含めてブルドーザ1であってもよい)。
【0012】
<測位用衛星>
測位用衛星3は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)で使用される衛星であって、自身の位置情報(軌道位置情報)や時刻情報を、ブルドーザ1に対して周期的に送信する。測位用衛星3は、例えば、GPS(Global Positioning System)衛星、GLONASS(Global Navigation Satellite System)衛星、Galileo衛星、準天頂衛星などであってよい。測位用衛星3から送信される情報は、ブルドーザ1において、例えば、位置(緯度、経度、標高)の制御に使用される。
【0013】
<管理用パソコン>
管理用パソコン2は、施工管理者により操作されるものである。施工管理者は、管理用パソコン2に、ブルドーザ1の制御に必要な情報を登録する。例えば、施工管理者は、管理用パソコン2に、施工を行う施工エリア100Aに関する施工エリア情報(例えば、施工エリア100Aの境界を特定する座標など)や施工条件に関する施工条件情報(例えば、設計面や仕上がり厚さ(層厚)の情報)などを予め登録する。
施工エリア100Aには、ブルドーザ1の制御に使用されるローカル座標系xyzが設定されている。xy平面は、例えば水平面に平行であり、z軸は鉛直方向を指している。なお、ローカル座標系xyzを用いずにグローバル座標系XYZを用いてブルドーザ1の制御を行ってもよい。グローバル座標系XYZにおいて、X座標値は緯度であり、Y座標値は経度であり、Z座標値は高度である。
【0014】
施工管理者は、管理用パソコン2に施工エリア情報や施工条件情報を登録した後に、施工開始の指示を入力する。これにより、ブルドーザ1による自動化施工が開始される。自動化施工が行われている期間、管理用パソコン2は、施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報をブルドーザ1から周期的に受信し、これらの情報を画面に表示する。
施工管理者は、管理用パソコン2に表示される施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報を確認することで、施工の進捗やブルドーザ1の状況を把握することが可能である。なお、施工管理者は、施工開始の指示を行った後は、原則としてブルドーザ1に対して指示を行わない。
【0015】
<ブルドーザ>
図2を参照して(適宜、
図1を参照)、ブルドーザ1の構成について説明する。
図2は、実施形態に係るブルドーザ1の側面図である。ブルドーザ1は、主に、車体10と、走行装置20と、ブレード30と、制御装置40と、を備える。なお、ここで示すブルドーザ1の構成はあくまで例示である。
走行装置20は、ブルドーザ1を走行させるための機構であり、車体10の下部に設置される。ここでの走行装置20は、前後方向に長尺な支持フレーム21と、車輪22と、履帯23とを主に備える。車輪22は、支持フレーム21の前後端に軸支される。車輪22は、スプロケットやアイドラなどとも呼ばれる。スプロケットは、動力軸に繋がっている歯車状の車輪であり、履帯23と噛みあって動力を伝達する。アイドラは、スプロケットの反対側の端に位置する車輪である。履帯23は、環状(無端状)を呈し、車輪22に掛け回されている。履帯23が周回移動することによって、ブルドーザ1が前後何れかの方向に進行する。
【0016】
ブレード30は、前方向に土砂を押し出すためのものである。ブレード30は、排土板などとも呼ばれる。ブレード30の前面側の構造は様々であるが、例えば後方に凹んだ形状であって下端に切刃を有し、また左右両端縁に囲い片を有している。ブレード30は、揺動アーム31の先端にピン連結されている。揺動アーム31は、基端が支持フレーム21の中間部に揺動可能に取付けられ、先端がブレード30の背面側の下部に取り付けられている。また、ブレード30は、チルトシリンダ32のロッド先端に背面側の上部でピン連結されている。チルトシリンダ32は、揺動アーム31の中間部に揺動可能に取り付けられ、斜め上向きに配置される。また、ブレード30は、リフトシリンダ33のロッド先端に背面側の上部でピン連結されている。リフトシリンダ33は、車体10の前部に揺動可能に取り付けられ、斜め下向きに配置される。揺動アーム31、チルトシリンダ32およびリフトシリンダ33は、左右に設けられ対になっている。この構成により、ブレード30は、リフトシリンダ33の伸縮動作により上下方向に移動し、チルトシリンダ32の伸縮動作により傾き角を変更する。
【0017】
図2に示す制御装置40は、ブルドーザ1の全体の動作(特に、自動走行に関する動作)を制御する。制御装置40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御装置40は、ブルドーザ1に予め内蔵されたものであってもよいし、後から取り付けられたもの(例えば、PC)であってもよい。例えば、前者は、自動走行可能に製造されたブルドーザを想定し、後者は、搭乗して操縦可能なブルドーザを自動走行可能なように改造したものを想定している。
【0018】
図2に示すように、ブルドーザ1は、ここまで説明した構成要素の他に、通信アンテナ11と、測位用受信機12,13と、センサ部14とを有する。
通信アンテナ11は、管理用パソコン2(
図1参照)との通信を行うものである。具体的には、ブルドーザ1の制御装置40は、通信アンテナ11を介して管理用パソコン2からブルドーザ1の制御に必要な情報を受信する。また、制御装置40は、通信アンテナ11を介して管理用パソコン2に対して、施工進捗情報やブルドーザ1の機体情報を送信する。
【0019】
測位用受信機12,13は、測位用衛星3(
図1参照)から発信される電波(測位用信号)を受信するものである。測位用受信機12,13は、例えば測位用衛星3から軌道位置情報や時刻情報などを受信し、これらの情報を用いて自身の位置を計算する。測位用受信機12は、ブルドーザ1の基準となる位置に設置され、測位用受信機12によって計算された位置情報は主にブルドーザ1全体の位置制御に使用される。測位用受信機13は、ブレード30の基準となる位置に設置され、測位用受信機13によって計算された位置情報は主にブレード30の位置制御に使用される。測位用受信機12,13によって計算された位置情報は、制御装置40に送られる。なお、測位用衛星3から発信される電波を受信できない場所においては、ブルドーザ1にプリズムを設けてトータルステーションで自動追尾することで、ブルドーザ1の位置情報を計算しても良い。
【0020】
センサ部14は、ブルドーザ1が置かれている環境に関する情報(例えば、周囲の情報)を取得する装置である。センサ部14により検出された情報は、自動運転の制御や監視に利用される。センサ部14は、検出した情報を制御装置40に送信する。本実施形態でのセンサ部14は、ステレオカメラ15と、LiDAR(Light Detection and Ranging)16とを含んで構成される。なお、ここで示すセンサ部14の構成は例示であり、ステレオカメラ15やLiDAR16に代えて、またはステレオカメラ15やLiDAR16に加えて他の種類のセンサを用いることもできる。なお、ステレオカメラ15およびLiDAR16の何れか一方のみを用いることもできる。センサ部14は、施工現場に配置されていてもよい(つまり、センサ部14がブルドーザ1に搭載されていなくてもよい)。ブルドーザ1にセンサ部14を搭載しない場合、例えば何らかの設置手段(例えば、脚部)を用いて施工現場に設置したり、空中を移動可能な飛行体(例えば、ドローン)に搭載することが可能である。センサ部14は、例えば検出した情報を無線通信によって制御装置40に送信する。
【0021】
ステレオカメラ15は、複数のカメラを備えている(本実施形態では左右に並べて配置した二台を想定)。ステレオカメラ15は、人間が対象物を見る原理と同じようにして、複数のカメラを用いて対象物を複数の異なる方向から同時に撮影する。その為、ステレオカメラ15によれば、撮影した画像から奥行き方向の情報を計測することが可能である。ステレオカメラ15は、ブルドーザ1の前方を撮影可能な位置に設置される。
LiDAR16は、レーザセンサ(距離センサ)の技術を用いて周囲の物体の形状を検出する装置である。LiDAR16は、周囲に多数のレーザ光を照射し、物体に当たって反射したレーザ光を受光する。これにより、LiDAR16は、周囲の物体の表面の形状を、表面を覆い尽くすような点の座標の集合(点群データ)として取得する。LiDAR16は、ブルドーザ1の前方を検出可能な位置に設置される。
【0022】
図3を参照して、制御装置40が有する主な機能について説明する。
図3は、ブルドーザ1が備える制御装置40のブロック図である。制御装置40は、土砂山位置検出処理部41と、岩石サイズ検出処理部42と、優先作業制御部43と、土砂山サイズ検出処理部44と、敷均し制御部45とを有する。これらの機能は、例えばプログラムの実行処理によって実現される。
なお、
図3に示す制御装置40の各機能は、説明の便宜上分けたものであり、本発明を限定するものではない。また、ブルドーザ1以外の装置(例えば、管理用パソコン2)が制御装置40の一部の機能を有する構成であってもよい。その場合、管理用パソコン2は、ブルドーザ1から必要な情報を取得し、リアルタイムで計算を行う。そして、無線通信を介してブルドーザ1に対して走行ルートなどを送信する。ここでは各機能の概要のみ説明し、後記する「実施形態に係る自動化施工システムに係る敷均し方法」でこれらの機能の詳細を説明する。
【0023】
土砂山位置検出処理部41は、センサ部14を用いて土砂山の位置(例えばxyz座標値)を検出させる。
岩石サイズ検出処理部42は、土砂山位置検出処理部41によって検出された土砂山にブルドーザ1を移動させる。また、岩石サイズ検出処理部42は、センサ部14を用いて土砂山に含まれる岩石の大きさを検出させる。
優先作業制御部43は、予め設定したよりも大きいサイズの岩石が土砂山の中に含まれている場合に、当該岩石に対する作業を優先的に行うように制御する。
土砂山サイズ検出処理部44は、センサ部14を用いて土砂山のサイズ(例えば土砂山の高さ、左右幅、奥行き、推定立米数など)を検出させる。
敷均し制御部45は、土砂山を対象とした敷均し作業を制御する。
【0024】
≪実施形態に係る自動化施工システムに係る敷均し方法≫
図4Aおよび
図4Bを参照して(適宜、
図1ないし
図3を参照)、自動化施工システム100に係る敷均し方法について説明する。
図4Aおよび
図4Bは、自動化施工システム100に係る敷均し方法の工程を示すフローチャートである。
(土砂山位置検出工程)
最初に、ブルドーザ1は、センサ部14を用いて、土砂山の位置を遠方より検出する(ステップS1)。土砂山位置検出処理部41は、例えば、施工エリア100Aの全体を見渡せる場所にブルドーザ1を移動させた後でセンサ部14に検出動作を行わせ、土砂山の位置を検出する。センサ部14のLiDAR16を用いることで、より遠くの土砂山の検出を行えるので望ましい。このような理由から、土砂山の位置の検出はLiDAR16を用いるのが望ましいが、ステレオカメラ15などの他の手段を用いて土砂山の位置の検出を行うこともできる。土砂山位置検出処理部41は、LiDAR16によって取得した点群データから、例えば土砂山の裾野や中央の位置(座標)を算出する。
【0025】
(岩石サイズ検出工程)
次に、ブルドーザ1は、ステップS1で検出した土砂山の前に移動する(ステップS2)。岩石サイズ検出処理部42は、例えば、ステップS1で検出した位置(土砂山の裾野や中央の位置(座標)など)を基にしてブルドーザ1の向きを変更し、当該位置にブルドーザ1を接近させる。これにより、センサ部14によって土砂山の詳細を検出しやすい位置にブルドーザ1が移動する。
続いて、ブルドーザ1は、センサ部14を用いて、土砂山内に含まれる大粒径岩8(
図5参照)の検出を行う(ステップS3)。岩石サイズ検出工程のイメージを
図5に示す。大粒径岩8は、予め決められたサイズ(例えば、直径)よりも大きな岩石であって、そのサイズは例えば敷均しの品質との関係で決定される。大粒径岩8は、例えば数十センチメートル以上の岩石である。大粒径岩8の検出は、品質管理や施工管理上の理由から使用できないまたは使用に注意を要する岩石を検出することを目的とするものであり、この目的を達成できるのであればサイズ以外の要素(例えば、形状)を考慮して検出を行ってもよい。この検出では、土砂山の表面に露出している大粒径岩8が検出対象となり、例えば大粒径岩8の座標値(xyz値)および最大径を検出する。
【0026】
センサ部14のステレオカメラ15を用いると、精度が良くかつ広範囲(広い画角)の検出を行えるので望ましい。ステレオカメラ15を用いて大粒径岩8を検出する場合、岩石サイズ検出処理部42は、例えばステレオカメラ15で撮影された画像を、画像認識技術を用いて画像処理することで、土砂山に含まれる大粒径岩8を検出する。人工知能技術(例えばCNN(Convolutional Neural Network))を用いて大粒径岩8の形状を学習し、学習済みモデルによって大粒径岩8を検出してもよい。また、LiDAR16の座標情報とステレオカメラ15の片側(つまり単眼カメラ)のRGB情報(色情報)とを組み合わせたラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法を用いて大粒径岩8の検出を行ってもよい。また、Difference of Normal 法、Difference of Curvatures 法、マルチスケール法などの特徴検出方法によって、LiDAR16の座標情報から大粒径岩8の検出を行ってもよい。
【0027】
(優先作業工程)
優先作業工程では、大粒径岩8(
図5参照)が含まれている場合に、大粒径岩8に対する作業をブルドーザ1に優先的に行わせる。ステップS3で大粒径岩8を検出しなかった場合(ステップS4a)、「優先作業工程」を行わずにステップS7に処理を進める。一方、ステップS3で大粒径岩8を検出した場合、岩石の大きさによって優先して行う作業が異なる。
第一閾値以上かつ第二閾値よりも小さいサイズの岩石である特大岩8A(
図5参照)が検出された場合(ステップS4b)、
図5の符号Kで示すように、優先作業制御部43はブルドーザ1を特大岩8Aに向かって押土制御し、土砂山から特大岩8Aを押し出して除去する(ステップS5)。例えば、特大岩8Aを設計面よりも低い凹部に優先して落とすようにする。第二閾値は、例えば設計図書等に書かれた上限値である。このような基準で検出された特大岩8Aは、設計図書で規定された使用可能範囲に含まれるものの、比較的大きい岩である。第一閾値は、例えば敷均しの品質との関係でサイズが決定され、数十センチメートルである。全ての特大岩8Aの処理が完了した後で、ステップS7に処理を進める。
第二閾値以上のサイズの岩石である極大岩(図示せず)が検出された場合(ステップS4c)、優先作業制御部43は、例えばブルドーザ1の作業を一時中断させ、管理者にエラーを通知するなどして極大岩が含まれていることを報知する(ステップS6)。極大岩は設計図書等に書かれた上限値を超える岩であり、盛り立てに使うことができないので何らかの方法(例えば作業員がバックホーなどの建設機械を用いて)で極大岩を排除する。全ての極大岩の処理が完了した後で、作業員が作業の再開命令をブルドーザ1に送信し、優先作業制御部43は、ステップS7に処理を進める。
【0028】
(土砂山サイズ検出工程)
次に、ブルドーザ1は、土砂山のサイズに関する情報(例えば土砂山の高さ、左右幅、奥行き、推定立米数など)を検出する(ステップS7)。土砂山サイズ検出処理部44は、例えば、
図6の符号Aで示す「重心」、符号Bで示す「中央」、符号「C」で示す頂点(最高点)、符号「D」で示す「裾野中央点」、符号「E」で示す「裾野左端点」、符号「F」で示す「裾野右端点」を検出する。
図6は、土砂山サイズ検出工程のイメージ図である。なお、岩石サイズ検出工程のタイミングで土砂山のサイズを検出してもよい。
【0029】
(敷均し工程)
次に、ブルドーザ1は、土砂山を対象とした敷均し作業を行う(ステップS8)。敷均し制御部45は、例えば、ステップS7で検出した土砂山のサイズに関する情報を基にして、敷均し回数、横移動量、前移動量などを決定し、決定した条件に従って押土制御を行う。例えば、土砂山の左右幅が大きい場合にはレーン数を増やしたり、立米数が大きい場合にはレーンの走行距離(前移動量)を長くしたりする。
【0030】
図7を参照し、土砂山の立米数の情報を基にして、各レーンLの走行距離(前移動量)を決める場合を説明する。
図7(a)は土砂山の平面図であり、
図7(b)は土砂山の正面図である。各レーンLの幅は、ブルドーザ1の幅に対応している。
図7に示す土砂山には、頂点を構成する第一凸部T1が正面側に存在し、頂点よりも低い第二凸部T2が右側に存在する。第二凸部T2は、第一凸部T1よりも前後方向の距離が長く、第二凸部T2の立米数は第一凸部T1の立米数よりも大きくなっている。この場合、例えばレーンL4の走行距離(前移動量)を最も長くする。このような制御を行う場合、土砂山を俯瞰的に見ることが可能なように、センサ部14の設置位置を高くするのがよい。
【0031】
また、
図8に示すように、現地形をグリッドマップM(等間隔で区切られた格子状のマス単位で標高を表したもの)のような形で検出し、このグリッドマップMに基づいてレーン数や各レーンの走行距離(前移動量)を決定してもよい。エリアによって仕上がり厚さ(層厚)が決まっており、例えば層厚が「0.5m」の場合を想定し、
図8に示すドットが最も荒いマスM1が「0m(設計面)」、ドットが無いマスM0が「-0.5m」、ドットが二番目に細かいマスM2が「+0.25m」、ドットが最も細かいマスM3が「+0.5m」だとする。この場合、例えば一番左のレーンL1では一番奥のマスまでブルドーザ1を走行させ、それ以外のレーンL2~L4では一番奥のマスよりも少し奥まで走行させるといった形で押土距離を可変制御する。つまり、グリッドマップMを用いて現地形と設計面(基準面)との高低差をマスごとに求め、レーンLに含まれるマスの高低差の合計値を求めることで、各レーンLの走行距離を決定する。このようにすると、層厚と1つのマスの大きさを設定すれば、その情報を基にレーン数と押土距離を自動で認識し、適切な敷き均しが可能となる。
【0032】
なお、土砂山の高さ情報に基づいて、土砂山の荒崩しを行ってもよい。荒崩しは、例えば土砂山の高さが予め設定した値よりも高い場合に行う。押土した場合におけるブルドーザ1の負荷は、土砂山の高さに応じて上昇するので、土砂山が高いことはスタック(足滑り)が発生する原因となる。荒崩しでのブレード30の位置の目安は、例えばブレード30上端と土砂山の高さが一致する程度とするのがよい(
図9参照)。
図9は、土砂山の荒崩しを行う場合におけるブレード30の位置の一例である。ブレード30より高い部分の土砂は、ブレード30上部から土砂が漏れてブレード30と車体10の間に入り込み、車体10のエンジンルーム他を傷つける恐れがある。また、ブルドーザ1の大きさ(「xxトン級(xxには自然数が入る)」という表現)が、施工の規模に対して極端に乖離するものを使用することは少ない。その為、荒崩しでのブレード30の位置は、土砂山の高さを目安にすることが現実的である。ブレード30の位置は、測位用受信機13で検出可能であり、例えば測位用受信機13でブレード30の下端の位置を検出する場合、測位用受信機13で検出した位置にブレード30の高さ寸法を加えることでブレード30の上端の位置を算出できる。
【0033】
また、土砂山を高さ方向に輪切りにすることで層を設定し、高い層から順番に押土して荒崩しを行ってもよい(
図10参照)。この制御は、土砂山が比較的高い場合(例えば、ブルドーザ1の高さよりも土砂山の高さが高い場合)を想定している。
図10に示す土砂山では、例えば最初に一番上の層N3を押土し、次にその下の層N2を押土し、最後に一番下の層N1を押土する。
【0034】
(敷均し確認工程)
図4Bに示すように、ブルドーザ1は、敷均しの完了を確認するために、土砂山のセンシングを再び行う(ステップS9)。ステップS9で敷均し完了を確認できた場合(ステップS10a)、敷均し制御部45は、当該土砂山を対象とした敷均し作業を完了し、ステップS11に処理を進める。一方、ステップS9で均し残しが確認された場合(ステップS10b)、敷均し制御部45は、処理をステップS8に戻して再び敷均し作業を行う。
【0035】
(次の土砂山のセンシング工程)
敷均し完了を確認できた場合(ステップS10a)、ブルドーザ1は、次の土砂山のセンシング開始位置に移動し(ステップS11)、次に敷均しを行う新たな土砂山の位置を遠方より検出する(ステップS12)。土砂山位置検出処理部41は、例えば、事前に設定した分だけ斜め後ろの位置(例えば、横方向は一つの山分、後方向は任意)にブルドーザ1を移動させて、移動後の位置で次の土砂山を検出させる。ステップS12で次の土砂山を検出した場合、岩石サイズ検出処理部42は、ブルドーザ1を次の土砂山の前に移動させて(ステップS2)、次の土砂山を対象とした敷均しを行う。一方、ステップS12で次の土砂山を検出しなかった場合、設定された個数の土砂山の敷均しが完了したとして作業を完了する(ステップS13)。
【0036】
以上のように、実施形態に係る自動化施工システム100においては、大粒径岩8が含まれる場合に大粒径岩8に対して優先的に作業を行い、その後に敷均し作業を行うので、高品質の敷均しを行うことができる。
例えば、
図11(a)に示すように、設計面よりも低い凹部に特大岩8Aを優先して落とすことで、
図11(b)に示すように、粒径の小さい岩や細粒分が特大岩8Aの上に撒き出されるようになり、特大岩8Aが表面に露出し難くなるので、仕上がり面を平らにすることができる。
図11は、実施形態に係る自動化施工システム100に係る敷均し方法の効果を説明するための図であり、(a)は敷均し前の状態を示し、(b)は敷均し完了後の状態を示す。
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ブルドーザ(建設機械)
2 管理用パソコン
3 測位用衛星
8 大粒径岩
8A 特大岩
10 車体
11 通信アンテナ
12,13 測位用受信機
14 センサ部
15 ステレオカメラ
16 LiDAR
20 走行装置
30 ブレード
40 制御装置
41 土砂山位置検出処理部
42 岩石サイズ検出処理部
43 優先作業制御部
44 土砂山サイズ検出処理部
45 敷均し制御部
100 自動化施工システム
L1~L5,L レーン
M グリッドマップ