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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166208
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】色素増感太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/20 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H01G9/20 203B
H01G9/20 303A
H01G9/20 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077106
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中村 やよい
(72)【発明者】
【氏名】加藤 諒祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 君平
(57)【要約】
【課題】ユニット間の電極を導電性を持たせた封止材によって導電接続させつつ、製造の容易な色素増感太陽電池を提供すること。
【解決手段】色素増感太陽電池は、第1のユニットと第2のユニットを備える。第1のユニットは、第1の基板に形成された第1の電極と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、第1の電極と第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する。第2のユニットは、第1の基板に形成された第2の電極と、第2の基板に形成された第2の対向電極と、第2の電極と第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する。第1の電極と第2の対向電極とは、紫外線硬化樹脂を含む封止材に形成された導通部によって導電接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板に形成された第1の電極と、前記第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、前記第1の電極と前記第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する第1のユニットと、
前記第1の基板に形成された第2の電極と、前記第2の基板に形成された第2の対向電極と、前記第2の電極と前記第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する第2のユニットと、
を具備し、
前記第1の電極と前記第2の対向電極とは、紫外線硬化樹脂を含む封止材に形成された導通部によって導電接続されている、
色素増感太陽電池。
【請求項2】
前記封止材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間に前記第1のユニットと前記第2のユニットを囲むように設けられ、前記第1の基板と前記第2の基板とともに前記第1のユニット及び前記第2のユニットを封止しており、
前記導通部は、前記封止材の少なくとも一部に混入された導電粒子によって形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の対向電極は、それぞれ、2つ以上の導通部によって導電接続されている、
請求項2に記載の色素増感太陽電池。
【請求項4】
前記封止材は、
前記第1の基板と前記第2の基板との間であって前記第1のユニットと前記第2のユニットの外周に形成された第1の封止材と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間であって前記第1のユニットと前記第2のユニットの境界位置に形成された第2の封止材と、
を含み、
前記導通部は、前記第2の封止材の少なくとも一部に混入された導電粒子によって形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項5】
それぞれが前記第1のユニットと前記第2のユニットとを含み、前記第1のユニットと前記第2のユニットの配列方向と直交する方向に並べて配置された複数の色素増感太陽電池モジュールを具備し、
前記封止材は、
前記第1の基板と前記第2の基板との間であって前記複数の色素増感太陽電池モジュールの外周に形成された第1の封止材と、
それぞれの色素増感太陽電池モジュールの境界位置に形成された第2の封止材と、
を含み、
前記導通部は、前記第2の封止材の少なくとも一部に混入された導電粒子によって形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項6】
それぞれが前記第1のユニットと前記第2のユニットとを含み、前記第1のユニットと前記第2のユニットの配列方向と直交する方向に並べて配置された複数の色素増感太陽電池モジュールを具備し、
前記封止材は、前記第1の基板と前記第2の基板との間であって前記複数の色素増感太陽電池モジュールを囲むように形成されている、
請求項1に記載の色素増感太陽電池。
【請求項7】
それぞれの前記色素増感太陽電池モジュールについての前記導通部が前記第1のユニットと前記第2のユニットの配列方向と直交する方向に並べて前記封止材に形成されている、請求項6に記載の色素増感太陽電池。
【請求項8】
それぞれの前記色素増感太陽電池モジュールについての前記導通部が前記第1のユニットと前記第2のユニットの配列方向と平行な方向に並べて前記封止材に形成され、
前記第1の対向電極と前記第2の対向電極とは、層間絶縁膜を介して前記第2の基板に形成され、
前記第1の対向電極と前記第2の対向電極とは、前記第2の基板に形成された導電膜とコンタクトを介して接続され、
前記導電膜は、前記導通部に接続される、
請求項6に記載の色素増感太陽電池。
【請求項9】
前記導通部は、前記封止材に導電粒子を混入することによって形成され、
前記導電粒子の粒径は、前記第1の基板と前記第2の基板の間隔に対して0μm以上、5μm以下の長さを有する、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の色素増感太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、IoT(Internet of Things)デバイス用の電源及びエナジーハーベスティング素子として期待されている。太陽電池は、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、有機系太陽電池に大別される。有機系太陽電池の中で、色素増感太陽電池(Dye sensitized Solar Cell: DSC)が知られている。色素増感太陽電池は、光を吸収するための色素と、電解液とを用いた酸化還元反応によって発電する。色素増感太陽電池に用いられる電解液には、固体型電解液と液体型電解液とがある。
【0003】
色素増感太陽電池は、複数の色素増感太陽電池のユニットが直列接続されたモジュールとして用いられ得る。複数のユニットを直列接続するために、それぞれのユニットに設けられた電極が導電性を持たせた封止材を用いて導電接続されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-093252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ユニット間の電極を導電性を持たせた封止材によって導電接続させつつ、製造の容易な色素増感太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様の色素増感太陽電池は、第1のユニットと第2のユニットを備える。第1のユニットは、第1の基板に形成された第1の電極と、第1の基板と対向して配置される第2の基板に形成された第1の対向電極と、第1の電極と第1の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第1の光吸収層と、第1の電解液と、第1の触媒層とを有する。第2のユニットは、第1の基板に形成された第2の電極と、第2の基板に形成された第2の対向電極と、第2の電極と第2の対向電極との間に形成された、電子捕集剤と色素とを含む第2の光吸収層と、第2の電解液と、第2の触媒層とを有する。第1の電極と第2の対向電極とは、紫外線硬化樹脂を含む封止材に形成された導通部によって導電接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ユニット間の電極を導電性を持たせた封止材によって導電接続させつつ、製造の容易な色素増感太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図3図3は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。
図4図4は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図5図5は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図6図6は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図7図7は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図8図8は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図9図9は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図10図10は、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図11A図11Aは、変形例における電極と対向電極との接続構造を示す上面図である。
図11B図11Bは、図11Aの領域Aの構造を示す断面図である。
図11C図11Cは、図11Aの領域Bの構造を示す断面図である。
図12A図12Aは、変形例における色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。
図12B図12Bは、変形例における色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。図1は、一実施形態に係る色素増感太陽電池の構成の一例を示す図である。実施形態に係る色素増感太陽電池1は、複数の色素増感太陽電池のユニットU1、U2、U3、U4が直列接続されて構成される色素増感太陽電池モジュールである。図1では、ユニットの数は、4つである。ユニットの数は、4つに限定されるものではない。
【0010】
図1に示すように、色素増感太陽電池1のそれぞれのユニットU1、U2、U3、U4は、第1の基板11と第2の基板12との間に1次元方向に並べて形成される。第1の基板11は、ガラス基板等の透明基板である。第2の基板12は、第1の基板11と対向するように配置される。第2の基板12は、第1の基板11と同様に、ガラス基板等の透明基板である。
【0011】
第1の基板11のそれぞれのユニットの位置には、電極13が形成されている。電極13の間隔は、例えば隣接する電極間でのリーク電流等の影響がない程度の間隔である。電極13は、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。それぞれの電極13は、対応するユニットのアノード電極として用いられる。また、色素増感太陽電池1における端のユニットであるユニットU1及びU4のうちの一方のユニット、図1ではユニットU1に形成される電極13は、色素増感太陽電池1の外部に引き出されている。引き出された電極13には、端子131が形成されている。端子131からは配線が引き出されている。この配線は、図示しない負荷の一端に接続される。
【0012】
第2の基板12のそれぞれのユニットの位置には、対向電極14が形成されている。対向電極14の間隔は、例えば隣接する電極間でのリーク電流等の影響がない程度の間隔である。対向電極14は、電極13と同様、酸化インジウム錫(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)といった透明導電酸化膜(TCO)によって形成される。それぞれの対向電極14は、対応するユニットのカソード電極として用いられる。また、色素増感太陽電池1における端のユニットであるユニットU1及びU4のうちのもう一方のユニット、図1ではユニットU4に形成される対向電極14は、色素増感太陽電池1の外部に引き出されている。引き出された対向電極14には、端子141が形成されている。端子141からは配線が引き出されている。この配線は、図示しない負荷のもう一端に接続される。
【0013】
それぞれのユニットのアノード電極を構成する電極13の上には電子輸送層15が形成されている。電子輸送層15は、酸化チタン(TiO)の金属酸化膜で構成される。電子輸送層15は、金属よりも高抵抗なTCOで構成される電極13による損失を抑制するために設けられ得る。また、電子輸送層15が形成されることにより、電子輸送層15の上にさらに形成される光吸収層16の密着性が向上する。なお、電子輸送層15は、電極13よりも薄く形成されることが望ましく、例えば10nm以下の薄い層であることが望ましい。
【0014】
それぞれの電子輸送層15の上には、光吸収層16が形成されている。光吸収層16は、電子捕集剤に色素が吸着されて構成された層である。電子捕集剤は、例えば微小な酸化物半導体、例えば酸化チタン(TiO)の集積体である。色素は、例えばルテニウム(Ru)色素(RU)(N719色素等)等である。電子捕集剤は、酸化チタンに限らず、例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化インジウム及びその複合体等であってもよい。また、色素は、N719色素に限らない。例えば、ルテニウム系色素として、N3色素、BlackDyeや、純粋有機色素として、D149、キサンテン、PVK、メロシアニン、オキサジン等が用いられてもよい。
【0015】
それぞれのユニットのカソード電極を構成する対向電極14の上には触媒層17が形成されている。触媒層17は、例えば白金層である。なお、触媒層17は、対向電極14よりも薄く形成されることが望ましく、例えば10nm以下の薄い層であることが望ましい。
【0016】
それぞれのユニットの光吸収層16と触媒層17との間には、電解液18が充たされている。電解液18の溶媒としては、例えばアセトニトリル、メトキシアセトニトリル、炭酸エチレン等が用いられ得る。電解液18の溶質としては、例えばヨウ素(I)、1,2-ジメチル-3-n-プロピルイミダゾリウムアイオダイド(DMPImI)、ヨウ化リチウム(LiI)、4-tert-ブチルピリジン(TBP)等が用いられ得る。
【0017】
また、ユニットU1、U2、U3、U4を囲むように色素増感太陽電池1の最外周には封止材19が設けられている。さらに、封止材19は、それぞれのユニットU1とユニットU2の間の境界位置、ユニットU2とユニットU3の間の境界位置、ユニットU3とユニットU4の間の境界位置にも設けられている。封止材19は、アクリル樹脂等の紫外線硬化樹脂によって構成される。封止材19は、第1の基板11と第2の基板12とを貼り合わせるとともに、電解液18の外部への漏れ出しを防止する。つまり、電解液18は、第1の基板11と、第2の基板12と、封止材19とによって封止されている。
【0018】
図2は、実施形態における電極13と対向電極14との接続構造を示す上面図である。図2は、図1のII-II線で色素増感太陽電池1を切断して上から見た上面図である。図2に示すように、電極13及び対向電極14は、図1において見える色素増感太陽電池の向きを正面としたときに、正面から奥に向けて延びる長辺を有する略矩形の平板電極である。
【0019】
ここで、端子131と接続されていないユニットU4、U3、U2の電極13の短辺の少なくとも一部は、それぞれのユニットの奥側に位置する封止材19に形成される導通部19aの下端部まで引き出されている。例では、ユニットU4、U3、U2の電極13の短辺の右端部分が、長辺と平行な方向である長手方向に引き出されていてそれぞれのユニットの奥側に位置する封止材19に形成される導通部19aの下端部に当接している。
【0020】
また、端子141と接続されていないユニットU3、U2、U1の対向電極14の短辺の少なくとも一部は、左隣のユニットの奥側に位置する封止材19に形成される導通部19aの上端部まで引き出されている。例では、ユニットU3、U2、U1の対向電極14の短辺の右端部分が長手方向に引き出されている。さらに、この右端部分は、封止材19の位置において左方向に折り曲げられ、それぞれのユニットの左隣のユニットU4、U3、U2の奥側に位置する封止材19に形成される導通部19aの上端部に当接している。
【0021】
実施形態において、導通部19aは、シールインクロス方式で封止材19に形成されている。具体的には、導通部19aは、アクリル樹脂等の紫外線硬化樹脂によって構成される封止材19における電極13と対向電極14との接続箇所に導電粒子を混入することによって形成される。導電粒子は、金属粒子であり得る。
【0022】
そして、ユニットU4から引き出された電極13とユニットU3から引き出された対向電極14とは、導通部19aを介して導電接続される。同様に、ユニットU3から引き出された電極13とユニットU2から引き出された対向電極14とは、封止材19の導通部19aを介して導電接続される。また同様に、ユニットU2から引き出された電極13とユニットU1から引き出された対向電極14とは導通部を介して導電接続される。これにより、ユニットU4、ユニットU3、ユニットU2、ユニットU1は、直列接続され得る。
【0023】
ここで、図2では、ユニットU4、U3、U2の電極13の奥側の短辺の一部がそれぞれのユニットの奥側の位置の封止材19に形成される導通部19aの下端部まで引き出され、ユニットU3、U2、U1の対向電極14の奥側の短辺の一部が奥側の位置の封止材19に形成される導通部19aの上端部まで引き出されている。これに対し、ユニットU4、U3、U2の電極13の正面側の短辺の一部がそれぞれのユニットの正面側の位置の封止材19に形成される導通部19aの下端部まで引き出され、ユニットU3、U2、U1の対向電極14の正面側の短辺の一部がそれぞれのユニットの正面側に位置する封止材19に形成される導通部19aの上端部まで引き出されてもよい。
【0024】
また、導通部19aに混入される導電粒子は、第1の基板11と第2の基板12とのセルギャップを形成するための役割を有していてもよい。この場合、導電粒子の粒径は、例えば目的とするセルギャップの値の0μm~+5μmといった値を有していてよい。導電粒子の粒径がセルギャップの値以上であるのは、第1の基板11と第2の基板12との貼り合わせの際の押圧力が考慮されるためである。
【0025】
図3は、1つのユニットにおける発電原理を説明するための図である。ここで、図3は、例えばユニットU4を示している。しかしながら、ユニットU1、U2、U3も同様の発電原理に従って発電する。また、以下の例では電子捕集剤は酸化チタン(TiO)であり、色素はルテニウム(Ru)色素であり、電解液18はヨウ素(I)電解液であるとする。
【0026】
まず、色素増感太陽電池1に光が入射すると、その光は基板に形成された色素16aによって吸収される。色素16aは、光を吸収することによって励起する。反応式は、例えば以下の式(1)で示される。
Ru→Ru+e (1)
【0027】
励起された色素16aから放出された電子(e)は、例えば多孔質の酸化チタン(TiO)で構成される電子捕集剤16bに注入される。電子捕集剤16bに注入された電子は、ユニットU4のアノード電極である電極13に移動する。
【0028】
一方、電子(e)を失った色素16aは、電解液18中の例えばヨウ化物イオン(I)から、電子を供給される。電解液18中のヨウ化物イオン(I)は、電子(e)を色素16bに供給すると三ヨウ化物イオン(I )になる。反応式は、例えば以下の式(2)、式(3)で示される。
Ru+e→Ru (2)
3I→I +2e (3)
【0029】
このような酸化反応によって生じた三ヨウ化物イオン(I )は、ユニットU4のカソード電極である対向電極14から電子(e)を受け取ろうとする。このとき、対向電極14と電極13との間には、電位差が発生する。対向電極14と電極13との間に負荷が接続されていれば、電極13まで移動した電子は、負荷を通って対向電極14まで移動する。そして、対向電極14に達した電子は、三ヨウ化物イオン(I )によって吸収される。このような還元反応により、三ヨウ化物イオン(I )はヨウ化物イオン(I)に戻る。反応式は、例えば以下の式(4)で示される。
+2e→3I (4)
以上の酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池1のユニットは発電する。このような酸化還元反応が起きるためには、励起状態の色素16aのエネルギー準位は、電子捕集剤16bのエネルギー準位よりも高く、かつ、基底状態の色素16aのエネルギー準位は、電解液18のエネルギー準位より低いという関係を要する。
【0030】
ここで、図1に示す色素増感太陽電池1では、複数のユニットが直列接続されている。この場合において、ユニットU4に光が入射した場合、図3を参照して説明した原理に従って色素から電子が放出される。色素から放出された電子は、電子捕集剤に受け渡され、その後にアノード電極に移動する。ここで、ユニットU4のアノード電極である電極13は、導通部19aを介してユニットU3のカソード電極である対向電極14と接続されている。したがって、ユニットU4のアノード電極に移動した電子は、ユニットU3のカソード電極に移動する。このユニットU3のカソード電極に移動した電子は、ユニットU3における還元反応に用いられる。
【0031】
同様に、ユニットU3における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU3のアノード電極からユニットU2のカソード電極に移動する。そして、ユニットU2のカソード電極に移動した電子は、ユニットU2における還元反応に用いられる。また、同様に、ユニットU2における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU2のアノード電極からユニットU1のカソード電極に移動する。そして、ユニットU1のカソード電極に移動した電子は、ユニットU1における還元反応に用いられる。
【0032】
さらに、ユニットU1における酸化反応に伴って色素から放出された電子は、ユニットU1のアノード電極に移動する。ユニットU1のアノード電極は、負荷に接続される。したがって、ユニットU1のアノード電極まで移動した電子は、負荷を介してユニットU4のカソード電極まで移動する。そして、ユニットU4のカソード電極に移動した電子は、ユニットU4における還元反応に用いられる。
【0033】
以上のようなそれぞれのユニットでの酸化還元反応が繰り返されることにより、色素増感太陽電池1は発電する。色素増感太陽電池1は、図3で示した単一のユニットよりも高い発電効率を有する。
【0034】
以上説明したように実施形態によれば、複数の色素増感太陽電池のユニットによって構成される色素増感太陽電池において、それぞれのユニットのアノード電極とカソード電極の短辺の一部が封止材まで引き出され、引き出されたアノード電極とカソード電極とがシールインクロス方式で封止材に形成される導通部を介して導電接続される。つまり、実施形態によれば、複数の太陽電池のユニットの導電接続のための導通部が封止材の外側に形成されない。したがって、小型な色素増感太陽電池が提供され得る。また、導通部の形成は、封止材の形成の際に導電粒子を混入させることによって実施される。したがって、封止材の形成のプロセスと同一のプロセス内で導通部が形成され得る。
【0035】
さらに、実施形態では、封止材の材料にアクリル樹脂等の紫外線硬化樹脂が用いられる。このため、色素増感太陽電池の製造に際して加熱が不要である。したがって、色素増感太陽電池の各要素の材料に熱に弱い材料が使用され得る。したがって、材料の選択の幅が広がる。これにより、製造の容易な色素増感太陽電池が提供される。
【0036】
[変形例]
以下、変形例を説明する。図2では、1つの電極13及び1つの対向電極14については、一方の短辺だけから電極の引き出しがされている。これに対し、図4に示すように、1つの電極13及び1つの対向電極14について、両方の短辺から電極の引き出しがされてもよい。1つの電極について2箇所を導通部19aに接続させることにより、直列抵抗の低下による発電効率向上の効果が期待される。また、導通部19aと接続される奥側と正面側の電極の一方が破断する等しても、もう一方が接続されていれば発電が行われ得る。このように、電極の両方の短辺から引き出しがされることにより、冗長設計効果も期待され得る。なお、電極からの引き出しの数は2つでなくてもよい。例えば、1つの電極について3箇所以上から電極の引き出しがされ、引き出された電極が封止材19に形成された3箇所以上の導通部19aによって導電接続されてもよい。
【0037】
また、電極の引き出しは、必ずしも短辺から行われる必要はない。例えば、図5に示すように、隣接するユニットにおける右側のユニットの電極13の右側の長辺が右方向に引き出されるとともに左側のユニットの対向電極14の左側の長辺が左方向に引き出されて、これらの引き出された電極が隣接するユニットの境界位置に設けられた封止材19に形成された導通部19aと接続される構造であってもよい。図5の構成の場合、図2の構成に比べて電極と導通部との接触面積が大きくなるので、直列抵抗の低下による発電効率向上の効果が期待される。
【0038】
また、図6は、4つのユニットU11、U12、U13、U14から構成される第1の色素増感太陽電池モジュールM1と、4つのユニットU21、U22、U23、U24から構成される第2の色素増感太陽電池モジュールM2とがユニットの配列方向と直交する方向に並べて配置された多段構造の色素増感太陽電池における電極の引き出し例を示す図である。多段構造の色素増感太陽電池では、第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2のそれぞれのユニットの境界位置にだけでなく、第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界位置にも封止材19が設けられ得る。この場合には、図6に示すように、電極13及び対向電極14のそれぞれの短辺からの電極の引き出しは、色素増感太陽電池の外周に位置する封止材19に向けてではなく、内側に位置する封止材19に向けて行われ得る。
【0039】
図6の第1の色素増感太陽電池モジュールM1においては、ユニットU14の電極13の正面側の短辺が正面側に引き出されるとともに、ユニットU13の対向電極14の正面側の短辺が正面側に引き出され、これらの電極が第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界に位置する封止材19に形成された導通部19aに当接している。同様に、ユニットU13の電極13の正面側の短辺が正面側に引き出されるとともに、ユニットU12の対向電極14の正面側の短辺が正面側に引き出されている。また、ユニットU12の電極13の正面側の短辺が正面側に引き出されるとともに、ユニットU11の対向電極14の正面側の短辺が正面側に引き出されている。そして、これらの電極が第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界に位置する封止材19に形成された導通部19aに当接している。これにより、ユニットU11-U14は、直列接続されている。
【0040】
また、図6の第2の色素増感太陽電池モジュールM2においては、ユニットU24の対向電極14の奥側の短辺が奥側に引き出されるとともに、ユニットU23の電極13の奥側の短辺が奥側に引き出され、これらの電極が第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界に位置する封止材19に形成された導通部19aに当接している。同様に、ユニットU23の対向電極14の奥側の短辺が奥側に引き出されるとともに、ユニットU22の電極13の奥側の短辺が奥側に引き出されている。また、ユニットU22の対向電極14の奥側の短辺が奥側に引き出されるとともに、ユニットU21の電極13の奥側の短辺が奥側に引き出されている。そして、これらの電極が第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界に位置する封止材19に形成された導通部19aに当接している。これにより、ユニットU21-U24は、直列接続されている。
【0041】
さらに、ユニットU11の電極13の正面側の短辺が正面側に引き出されるとともに、ユニットU21の対向電極14の奥側の短辺が奥側に引き出されている。そして、これらの電極が第1の色素増感太陽電池モジュールM1と第2の色素増感太陽電池モジュールM2との境界に位置する封止材19に形成された導通部19aに当接している。これにより、ユニットU11とユニットU21は、直列接続されている。すなわち、第1の色素増感太陽電池モジュールM1のそれぞれのユニットと第2の色素増感太陽電池モジュールM2のそれぞれのユニットとは直列接続される。
【0042】
図6では、色素増感太陽電池モジュールの外側でなく、内側に導通部19aが形成されることにより、小型な色素増感太陽電池が提供され得る。ここで、図6では、色素増感太陽電池は、4つのユニットU11、U12、U13、U14から構成される第1の色素増感太陽電池モジュールM1と、4つのユニットU21、U22、U23、U24から構成される第2の色素増感太陽電池モジュールM2との2段構造を有している。しかしながら、色素増感太陽電池モジュールを構成するユニットの数は4つに限定されるものではないし、色素増感太陽電池モジュールの数も2つに限定されるものではない。
【0043】
また、前述した例では、ユニットの境界に封止材19が設けられている。これに対し、図7図8図9に示すように、ユニットの境界に封止材19が設けられていなくてもよい。図7は、図2と対応する構成である。また、図8は、図5と対応する構成である。また、図9は、図6と対応する構成である。図7図8図9の構成の場合、電界液18は、すべてのユニットで共通化される。ただし、ユニットの境界に封止材19が設けられていないため、図8の構成及び図9の構成については、ユニット間の電極の接続部分にだけ導通部19aとしての封止材が設けられる。この導通部19aとしての封止材は、色素増感太陽電池1の外周に形成される封止材19と同一のプロセスで形成され得る。このように、図7図8図9の構成であっても、図2図5図6と同様の効果が得られる。
【0044】
また、図6では、多段構造を有する色素増感太陽電池モジュールにおけるユニット間の導通のための電極の引き出しは、必ずしも色素増感太陽電池モジュールの境界位置に設けられた封止材19に向けて行われる必要はない。例えば、図10に示すように、多段構造を有する色素増感太陽電池モジュールにおけるユニット間の導通のための電極の引き出しは、色素増感太陽電池の外周に設けられた封止材19に向けて行われてもよい。図10では、4つの色素増感太陽電池モジュールM1-M4によって構成される4段構造の色素増感太陽電池が示されている。
【0045】
図10では、4つの色素増感太陽電池モジュールを囲むように形成される封止材19の奥側の辺に導通部19a及び19bが形成されている。導通部19aと導通部19bとは長手方向に並べて形成される。そして、最も奥側に配置された第1の増感太陽電池モジュールの電極13と対向電極14とは、最も奥側の位置に形成される導通部19aに接続されている。また、次に奥側の位置に第2の色素増感太陽電池モジュールM2の電極13と対向電極14とは、次に奥側の位置に形成される導通部19bに接続されている。
【0046】
同様に、図10では、4つの色素増感太陽電池モジュールを囲むように形成される封止材19の正面側の辺に導通部19c及び19dが形成されている。導通部19a及び19bと同様に、導通部19cと導通部19dも長手方向に並べて形成される。そして、最も正面側に配置された第4の増感太陽電池モジュールの電極13と対向電極14とは、最も正面側の位置に形成される導通部19cに接続されている。また、次に正面側の位置に配置された第3の色素増感太陽電池モジュールM3の電極13と対向電極14とは、次に正面側の位置に形成される導通部19dに接続されている。
【0047】
図10の構造であっても導通部19a、19b、19c、19dは、封止材19と同一のプロセスで形成され得る。ここで、色素増感太陽電池モジュールの数は4つに限定されるものではない。また、図10の例では、第1の色素増感太陽電池モジュールM1のそれぞれのユニットと第2の色素増感太陽電池モジュールM2のそれぞれのユニットとを奥側の導通部19a、19bによって導通させ、第3の色素増感太陽電池モジュールM3のそれぞれのユニットと第4の色素増感太陽電池モジュールM4のそれぞれのユニットとを正面側の導通部19c、19dによって導通させている。これに対し、導通部は、封止材における1つの辺にまとめて形成されてもよい。
【0048】
また、図10では、導通部19a及び19b並びに導通部19c及び19dは、長手方向に並べて形成されている。これに対し、図11Aに示すように、導通部19a及び19b並びに導通部19c及び19dは、短手方向に並べて形成されてもよい。この場合、導通部まで引き出される異なる色素増感太陽電池モジュールの電極同士が接触しないように迂回させる必要がある。図11Bは、図11Aの領域Aの構造を示す断面図である。また、図11Cは、図11Aの領域Bの構造を示す断面図である。
【0049】
図11Aの例では、対向電極14は、図11B及び図11Cに示すように第2の基板12には形成されておらず、第2の基板12に形成された層間絶縁膜14aの上に形成されている。そして、第2の基板12には、導電膜14bが形成されている。導電膜14bは、例えばモリブデン(MO)系金属膜、クロム(Cr)系金属膜といった金属膜であり得る。
【0050】
図11Bに示すように、第1の色素増感太陽電池モジュールM1のユニットU14の対向電極14は、コンタクト14cを介して導電膜14bに接続されている。導電膜14bの少なくとも一部は、封止材19の奥側の辺まで引き出され、封止材19の奥側に形成される導通部19bに当接している。また、第1の色素増感太陽電池モジュールM1のユニットU13の電極13の少なくとも一部は、封止材19の奥側の辺まで引き出され、封止材19の奥側に形成される導通部19bに当接している。これにより、ユニットU14とユニットU13とが導電接続される。
【0051】
また、図11Cに示すように、第2の色素増感太陽電池モジュールM2のユニットU24の対向電極14の一部14dは、封止材19の奥側の辺まで引き出され、封止材19の奥側に形成される導通部19aに当接している。また、第2の色素増感太陽電池モジュールM2のユニットU23の電極13の少なくとも一部13aは、封止材19の奥側の辺まで引き出され、封止材19の奥側に形成される導通部19aに当接している。つまり、ユニットU24及びユニットU23は、ユニットU14及びユニットU13と異なる層で導通部19aに当接する。したがって、異なるモジュール間での電極の接触が起こらずにそれぞれのユニットの導電接続が実現される。
【0052】
図11Aに示す構成では、導通部を長手方向に並べて配置する必要がない。したがって、封止材19の長手方向の厚さは、図10に比べて薄くなる。
【0053】
また、以上説明した実施形態及びその変形例では、アノード基板とカソード基板に1つずつ端子が形成されている。これに対し、端子は、アノード基板とカソード基板の一方にまとめて形成されてもよい。例えば、図12Aで示すように、カソード基板における両端の対向電極14が引き出され、それぞれの対向電極14に端子141が形成されてもよい。この場合に、端子141が形成される対向電極14と電極13との導通には、例えば色素増感太陽電池1の最外周に形成された封止材19が用いられてよい。前述したように、封止材19にアクリル樹脂等の紫外線硬化樹脂に導電粒子が混入されることによって、封止材19は、端子141のための対向電極14と電極13との導通部として機能し得る。同様に、例えば、図12Bで示すように、アノード基板における両端の電極13が引き出され、それぞれの電極13に端子131が形成されてもよい。この場合も、端子131が形成される電極13と対向電極14との導通には、例えば色素増感太陽電池1の最外周に形成された封止材19が用いられてよい。
【0054】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0055】
1 色素増感太陽電池、11 第1の基板、12 第2の基板、13 電極、14 対向電極、15 電子輸送層、16 光吸収層、16a 色素、16b 電子捕集剤、17 触媒層、18 電解液、19 封止材、19a,19b,19c,19d 導通部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B