(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016623
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォーム、ポリオール組成物及びポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20230126BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20230126BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20230126BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230126BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20230126BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
C08G18/00 K
C08G18/08 038
C08G18/28 015
C08K3/04
C08L75/04
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121098
(22)【出願日】2021-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞杉 誠
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK031
4J002CK041
4J002DA026
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
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4J002DE236
4J002DJ006
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4J002DK006
4J002FD090
4J002FD130
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4J034QB19
4J034QC01
4J034RA11
4J034RA12
4J034RA14
4J034RA15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】原料撹拌によって原料失活を生じ難く、発泡状態が良好な熱伝導性ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】ポリオール及び熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、熱伝導性フィラーとして、炭素系フィラーと、金属系フィラーとを併用する。炭素系フィラーの含有量は、ポリオール80重量部に対して20~100重量部、金属系フィラーの含有量は、ポリオール80重量部に対して10~50重量部が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール及び熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、
前記熱伝導性フィラーとして、炭素系フィラーと、金属系フィラーとを併用することを特徴とするポリウレタンフォーム。
【請求項2】
前記炭素系フィラーの含有量は、前記ポリオール80重量部に対して20~100重量部であり、
前記金属系フィラーの含有量は、前記ポリオール80重量部に対して10~50重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記ポリオール組成物にモノオールが含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム。
【請求項4】
ポリオール、熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物であって、
前記熱伝導性フィラーとして、鱗片状黒鉛と膨張化黒鉛から選択される炭素系フィラーと、金属系フィラーとを併用することを特徴とするポリオール組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のポリオール組成物を撹拌し、ポリイソシアネートを混合させて、発泡させるポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性が良好なポリウレタンフォーム、ポリオール組成物及びポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器や電気製品等には制振材や防音材としてポリウレタンフォームが使用されている。例えば、PCのハードディスクドライブや電気自動車の電気モータなどには、筐体の内部や外面にポリウレタンフォームを配置して制振や防音性を高めることが行われる。また、ハードディスクドライブや電気モータは、作動時の発熱で高温になることがあるため、ポリウレタンフォームには、外部への放熱性の観点から、良好な熱伝導性が求められる。
【0003】
ポリウレタンフォームに熱伝導性を付与する方法として、ポリウレタンフォーム原料に黒鉛などの熱伝導性フィラーを配合することが行われている。
また、熱伝導性粒子の表面にバインダーにより接着された磁性粒子を含む発泡ウレタン樹脂原料を、発泡型のキャビティに投入(注入)し、キャビティ内の磁束密度が略均一になるように磁場をかけながら発泡成形してポリウレタンフォームを製造する方法がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱伝導性フィラーの種類によっては、熱伝導性フィラーが配合されたポリウレタンフォーム原料の撹拌混合等の際に、熱伝導性フィラーから酸性物質が漏れ出してポリウレタンフォーム原料が酸性に傾くことがある。その結果、ポリウレタンフォーム原料に反応活性の低下(失活)を生じ、発泡状態の良好なポリウレタンフォームが得られなくなる場合がある。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、発泡状態が良好な熱伝導性ポリウレタンフォームの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、ポリオール及び熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むポリウレタンフォーム原料から得られるポリウレタンフォームであって、前記熱伝導性フィラーとして、炭素系フィラーと、金属系フィラーとを併用することを特徴とする。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記炭素系フィラーの含有量は、前記ポリオール80重量部に対して20~100重量部であり、前記金属系フィラーの含有量は、前記ポリオール80重量部に対して10~50重量部であることを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記ポリオール組成物にモノオールが含まれることを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、ポリオール、熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物であって、前記熱伝導性フィラーとして、鱗片状黒鉛と膨張化黒鉛から選択される炭素系フィラーと、金属系フィラーとを併用することを特徴とする。
【0010】
第5の態様は、第4の態様におけるポリオール組成物を撹拌し、ポリイソシアネートを混合させて、発泡させるポリウレタンフォームの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、ポリオール組成物に含まれる炭素系フィラーが鱗片状黒鉛と膨張化黒鉛から選択されるものであるため、反応活性の低下(失活)を生じ難く、発泡状態の良好な熱伝導性ポリウレタンフォームが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1、2、3、4と比較例1、2におけるポリウレタンフォーム原料の配合と原料性状、金型成形した成形品の物性測定結果を示す表である。
【
図2】実施例1と比較例1について、低圧注入機による循環時間を異ならせて測定した原料性状とポリウレタンフォームの物性測定の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、実施形態を説明する。本発明のポリウレタンフォームは、ポリオール及び熱伝導性フィラーを含むポリオール組成物と、ポリイソシアネートとを含むポリウレタンフォーム原料から得られる。
【0014】
ポリオールは、多価アルコール、又はこれらにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドが付加されたものであり、ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができる。例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等の何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0015】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0017】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が10~280mgKOH/g、官能基数が2~4、重量平均分子量が800~10000(より好適には2000~7000)であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。
【0018】
熱伝導性フィラーは、炭素系フィラーと金属系フィラーとが併用される。
炭素系フィラーは、黒鉛、グラフェン等の導電性炭素化合物が挙げられ、板状黒鉛、鱗片状黒鉛、粒状黒鉛、不定形状黒鉛、破砕形状黒鉛、鱗状黒鉛、膨張化黒鉛などが挙げられる。より好適には、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛及び膨張化黒鉛から選択される何れか一または複数が使用される。
鱗片状黒鉛は、六方晶系の結晶を持った板形状(グラフェン)の構造が多数重なった組成からなる。
一方、膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得られる。
【0019】
炭素系フィラーは、次の(1)に示す平均粒子径(D50)を有するもの、または(2)の粒度分布を有するものが好ましい。
(1)平均粒子径(D50)による好ましい範囲
平均粒子径(D50)は30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましく、90μm以上が更に好ましく、150μm以上が更に好ましい。他方、上限は400μm以下が好ましく、300μm未満がより好ましい。
【0020】
(2)篩による好ましい範囲
粒子の分級は、「JIS K0069 化学製品のふるい分け試験方法」に準拠して測定した。
ふるい残分は、目開きの大きいふるいを上段にして、複数ふるいを重ねて受け皿の上に重ね、最上段のふるいに試料を挿入して、ふるい分け試験を行い、各段のふるい上及びふるい下の質量をはかり、ふるい残分を求める。
粒子径範囲に対応するふるい残分を求め、粒子径の大きい順にふるい残分を求める。
具体的には、目開きが小さいものが下段、目開きが大きいものを上段になるように受け皿の上に積み重ねる。次に、最上段のふるいに試料を装入してふたをする。その後、振動機にて振動を与え、ふるい分けを行う。ふるい分け終了後に、各段のふるい上及びふるい下の質量を測定することによって、ふるい残分(粒度分布)を求める。
【0021】
粒子径範囲の大きい順にふるい残分を求めた後、ふるい残分を積算して、各ふるい目開き対応する積算百分率を求める。
平均粒子径、例えば平均粒子径(D50)に対応するものとして、積算分布50重量%に対応するふるい目開き(積算分布50wt%粒子径)を平均粒子径として扱う。
すなわち、複数の目開きのふるいを準備し、積算分布50重量%以上に対応するふるい目開き(積算分布50wt%以上の粒子径)と、そのふるいよりも目開きの粗いふるい目開き(積算分布50wt%未満の粒子径)に着目した。すなわち、平均粒子径に相当する積算分布50wt%粒子径は、積算分布50wt%以上の粒子径と、積算分布50wt%未満の粒子径の間の大きさに対応する。よって、平均粒子径に相当する積算分布50wt%粒子径は、積算分布50wt%以上から積算分布50wt%未満の粒子径範囲に存在する。
炭素系フィラーの平均粒子径に相当する積算分布50wt%粒子径は、以下の範囲が好ましい。
複数の目開きのふるいのうち、小側のふるい目開きは、積算分布50wt%以上に対応する粒子径(目開き)が、45μm以上が好ましく、90μm以上がより好ましく、180μm以上がさらに好ましい。
一方、複数の目開きのふるいのうち、大側のふるい目開きは、積算分布50wt%未満に対応する粒子径(目開き)が、500μm以下が好ましく、355μm以下がより好ましく、300μmがさらに好ましい。
【0022】
炭素系フィラーを、上記(1)に示す平均粒子径(D50)を有するもの、または(2)の粒度分布を有するものとすれば、ポリウレタンフォーム内に炭素系フィラーが密に分散され、熱伝導性をより高くすることができる。
炭素系フィラーの含有量は、ポリオール80重量部に対して20~100重量部であり、さらに好ましくは30~100重量部、より好ましくは50~100重量部である。炭素系フィラーの配合量が少なすぎると、ポリウレタンフォームの熱伝導性が低くなり、逆に多すぎるとポリウレタンフォームの発泡が悪くなる。
【0023】
金属系フィラーとしては、各種金属を微粒子化した導電性金属粉、軟磁性フェライト等の各種フェライト類、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、等が挙げられる。
より好適には、アルミナ、酸化マグネシウム、金属シリコン(ケイ素)、窒化ホウ素等を挙げることができる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
金属系フィラーの粒径は、5~25μmが好ましい。
金属系フィラーの含有量は、ポリオール80重量部に対して10~50重量部であり、さらに好ましくは15~30重量部、金属系フィラーの配合量が少なすぎると、ポリウレタンフォームの熱伝導性が低くなり、逆に多すぎるとポリウレタンフォームの発泡が悪くなる。
【0024】
ポリオール組成物には、触媒、発泡剤が含まれる。
触媒としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを用いることができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができる。触媒の量は、ポリオール80重量部に対して0.5~2.0重量部程度が好ましい。
【0025】
発泡剤としては、原材料の混合の観点で水が入っていることが好ましい。発泡剤(水)の量は、ポリオール80重量部に対して0.5~2.0重量部が好ましい。発泡剤(水)の量が0.5重量部未満の場合には原材料の混合、反応性が悪くなり成形不良が生じ易い。一方、2.0重量部を超えると発泡ガスが増大してポリウレタンフォームの内部にクラックが生じ、熱伝導性が低下するようになる。
【0026】
ポリオール組成物に含まれる好ましい成分として、モノオールと分散剤が挙げられる。
モノオールは1価のアルコールであり、水酸基価(OHV)が10~50mgKOH/g、重量平均分子量が300~3500、より好適には400~1000であり、単独または複数用いることができる。
モノオールの配合量は、ポリオール80重量部に対して5~20重量部が好ましい。
モノオールをポリオール組成物に配合することにより、熱伝導性フィラーの配合によるポリウレタンフォーム原料の粘度上昇を抑え、ポリウレタンフォーム原料の撹拌、混合不良を生じ難くできる。
【0027】
分散剤としては、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤等を挙げることができる。分散剤は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。分散剤を配合する場合、ポリオール80重量部に対して1.0~3.0重量部程度が好ましい。
分散剤をポリオール組成物に配合することにより、熱伝導性フィラーの配合によるポリウレタンフォーム原料の粘度上昇を抑え、ポリウレタンフォーム原料の撹拌、混合不良を生じ難くできる。
【0028】
ポリオール組成物には、その他の助剤を加えてもよい。助剤として、は、整泡剤、破泡剤、着色剤、難燃剤等を上げることができる。
整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。
【0029】
破泡剤としては、炭化水素系、エステル系、シリコーン系を挙げることができ、それらの二種類以上を使用してもよい。
炭化水素系の破泡剤としては、ポリブテン等のオイル類を挙げることができる。エステル系の破泡剤としては、ダイマー酸ジエステル等を挙げることができる。シリコーン系の破泡剤としては、シクロペンタシロキサン等を挙げることができる。
【0030】
着色剤としては、カーボン顔料等、ポリウレタンフォームの用途等に応じたものを使用できる。
難燃剤としては、リン系、ポリリン酸アンモニウム等の粉体難燃剤や、リン酸エステル系難燃剤等の液体難燃剤があり、何れか一方あるいは両方の併用であってもよい。
【0031】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0032】
イソシアネートインデックス(INDEX)は75~120が好ましい。イソシアネートインデックスは、[(ポリウレタンフォーム原料中のイソシアネート当量/ポリウレタンフォーム原料中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0033】
ポリウレタンフォームの製造は、ポリオール組成物を撹拌し、ポリイソシアネートを混合させて発泡させることにより行われる。ポリウレタンフォームの製造に使用される装置として注入機がある。注入機は、ポリオール組成物を含むA液を、ポリイソシアネートを含むB液とは分離した状態で循環させて撹拌し、発泡させる際にA液とB液をミキシングヘッドに供給して混合し、ミキシングヘッドのノズルから吐出して発泡させる装置である。注入機には、ミキシングヘッドに供給したA液とB液を高圧で衝突させて混合する高圧注入機と、ミキシングヘッドに供給したA液とB液を攪拌翼などによって機械的に混合する低圧注入機がある。
【0034】
また、所定形状に成形したポリウレタンフォームの成形体を製造する場合、ポリオール組成物を撹拌し、ポリイソシアネートを混合させたポリウレタンフォーム原料を、金型に投入(注入)し、発泡させた後に金型を開けて成形体を取り出すモールド発泡成形法が好ましい。金型のキャビティは、ポリウレタンフォームの用途に応じた製品形状とされる。
【0035】
本発明のポリウレタンフォームの密度(JIS K 7222)は、モールド発泡させた成形体については0.20~1.20g/cm3程度が好ましい。
【0036】
本発明のポリウレタンフォームの熱伝導率(熱線法を用いて熱伝導率を測定する京都電子工業社製測定器 QTM500を使用し測定)は、モールド発泡させた成形体については0.10W/m・K以上が好ましい。
【実施例0037】
以下の原料を用いて実施例1、2、3、4及び比較例1、2のポリウレタンフォームをオープン発泡で製造し、原料性状と成形品物性を測定、確認した。
【0038】
・ポリオール:ポリエーテルポリオール、Mw5000、水酸基価34mgKOH/g、官能基数3、品番;サンニックスFA-703、三洋化成工業株式会社
・触媒:品番;DABCO 33LSI、EVONIK社
・整泡剤:シリコーン整泡剤、品番;B8738LF2、EVONIK社
・破泡剤:ダイマー酸ジエステル、品番;ADDITIVE T、日立化成ポリマー株式会社
・発泡剤:水
【0039】
膨張黒鉛:平均粒子径(D50)300μm、品番;SYZR502FP、三洋貿易株式会社
鱗片状黒鉛:積算分布50wt%以上に対応する粒子径(目開き)が180μm、積算分布50wt%未満に対応する粒子径(目開き)が300μmであり、積算分布50wt%に対応する粒子径範囲が180μm以上300μmである。品番;CRC-80N、東日本カーボン株式会社
膨張化黒鉛1、平均粒子径(D50)200μm、品番;AED-200、富士黒鉛工業株式会社
膨張化黒鉛2、平均粒子径(D50)100μm、品番;AED-100、富士黒鉛工業株式会社
金属シリコン、平均粒子径20μm、品番;#200、キンセイマテック株式会社
モノオール:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、Mw600~1000、水酸基価42mgKOH/g、官能基数1、品番;ニューポール50HB-400、三洋化成工業株式会社
分散剤:不飽和ポリアミノアマイドと低分子量ポリエステル酸の塩、品番;ANTI-TERRA-U100、株式会社BYK ポリイソシアネート1:クルードMDI、NCO%=31.5%、品番;ルプラネートM5S、BASFINOACポリウレタン株式会社
ポリイソシアネート2:プレポリマー系MDI、NCO%=27%、品番;M249、住化コベストロウレタン株式会社
【0040】
実施例1、2、3、4及び比較例1、2について説明する。
図1の配合でポリウレタンフォーム原料を調製し、A液の原料性状として原料失活と粘度を測定した。
原料失活は、ラボミキサーによる撹拌前と15分撹拌後のA液についてpHをJIS 1557-5:2007に基づき測定し、また、15分撹拌したA液にポリイソシアネートを混合したポリウレタンフォーム原料の発泡状態を目視で観察することにより判断した。使用したラボミキサーの回転羽根は直径80mm、回転数は2000rpmである。
【0041】
粘度は、A液について、20℃、30℃、40℃の粘度を、B型粘度計(TVB-15、東機産業社製)を使用し測定した。
【0042】
また、
図1の配合のA液とポリイソシアネートをラボミキサーで攪拌した後、150×400×t10mmまたは150×100×t10mm金型に投入し、発泡させてポリウレタンフォームを成形した。ここでのA液とポリイソシアネートの撹拌時間は、原料失活を測定した際の撹拌時間よりも短い10秒にしてA液のpH変化を少なくし、比較例1、2についても発泡成形可能にした。
【0043】
ポリウレタンフォームについては、成形品の物性として、密度、熱伝導率、熱伝導性を調べた。
密度(g/cm3)は、JIS K 7222に基づいて測定した。
熱伝導率(W/m・K)は、熱線法を用いて熱伝導率を測定する測定器(QTM500、京都電子工業社製)を使用し測定を行った。
熱伝導性は、熱伝導率/密度[(W/m・K)/(g/cm3)]を算出した。
【0044】
・実施例1
実施例1は、炭素系フィラーとして鱗片状黒鉛を使用した例であり、ポリオール80重量部、触媒0.50重量部、整泡剤0.20重量部、発泡剤0.75重量部、鱗片状黒鉛60重量部、金属シリコン15重量部、モノオール20重量部、分散剤1.5重量部を配合した。
【0045】
実施例1の原料性状は、A液のpHが撹拌前8.98、撹拌後8.93であり、撹拌前後でA液のpH変化(酸性化)が殆ど無かった。また、ポリウレタンフォームの硬化不良が無く、発泡成形が可能であった。
A液の粘度(mPa・s)については、20℃で12000、30℃で8900、40℃では4200であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.48、熱伝導率(W/m・K)が0.34、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が0.71であった。
このように実施例1では、A液の撹拌前後でpHが殆ど変化なく(酸性化が殆どなく)、良好に発泡成形することができ、良好な熱伝導性を有する。
【0046】
・実施例2
実施例2は、実施例1における鱗片状黒鉛を60重量部から70重量部に、金属シリコン(ケイ素)を15重量部から18重量部に、発泡剤を0.75重量部から1.40重量部にそれぞれ増やした例である。
【0047】
実施例2の原料性状は、A液のpHが撹拌前8.94、撹拌後8.92であり、撹拌前後でA液のpH変化(酸性化)が殆ど無く、実施例1と同様のpH値であった。また、ポリウレタンフォームの硬化不良が無く、発泡成形が可能であった。
A液の粘度(mPa・s)については、20℃で16000、30℃で9300、40℃では4600であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.24、熱伝導率(W/m・K)が0.13、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が、0.54であった。
このように実施例2では、A液の撹拌前後でpHが殆ど変化なく(酸性化が殆どなく)、良好に発泡成形することができ、良好な熱伝導性を有する。
【0048】
・実施例3
実施例3は、炭素系フィラーとして膨張化黒鉛を使用した例であり、ポリオール100重量部、触媒0.70重量部、整泡剤1.00重量部、破泡剤10重量部、発泡剤0.70重量部、膨張化黒鉛1を37重量部、金属シリコン45重量部を配合した。
【0049】
実施例3の原料性状は、A液のpH、粘度の測定は行わなかったが、ポリウレタンフォームの硬化不良が無く、発泡成形が可能であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.89、熱伝導率(W/m・K)が1.44、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が1.62であった。
このように実施例3では、良好に発泡成形することができ、良好な熱伝導性を有する。
【0050】
・実施例4
実施例4は、炭素系フィラーとして膨張化黒鉛を使用した例であり、ポリオール100重量部、触媒0.70重量部、整泡剤1.00重量部、破泡剤10重量部、発泡剤0.70重量部、膨張化黒鉛2を25重量部、金属シリコン30重量部を配合した。
【0051】
実施例4の原料性状は、A液のpH、粘度の測定は行わなかったが、ポリウレタンフォームの硬化不良が無く、発泡成形が可能であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.73、熱伝導率(W/m・K)が0.75、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が1.03であった。
このように実施例4では、良好に発泡成形することができ、良好な熱伝導性を有する。
【0052】
・比較例1
比較例1は、実施例1の鱗片状黒鉛に代えて膨張黒鉛を100重量部配合し、金属シリコンを25重量部、分散剤を3.0重量部とし、他を実施例1と同様にした例である。
比較例1の原料性状は、A液のpHが撹拌前9.40、撹拌後5.43であり、15分の撹拌によってA液のpH値が大きく低下し、酸性化した。また、ポリウレタンフォームの硬化不良が有り、発泡成形が不可であった。
A液の粘度(mPa・s)については、20℃で20000、30℃で9300、40℃では4900であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.51、熱伝導率(W/m・K)が0.32、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が、0.63であった。比較例1では、熱伝導性フィラーの配合量が実施例1よりも増大しているにもかかわらず、熱伝導性が低下した。
このように比較例1では、A液の撹拌によってpH値が大きく低下(酸性化)し、原料失活が発生した。
【0053】
・比較例2
比較例2は、実施例2の鱗片状黒鉛に代えて膨張黒鉛を100重量部配合し、金属シリコンを25重量部、発泡剤を1.70重量部とし、他を実施例2と同様にした例である。
比較例2の原料性状は、A液のpHが撹拌前9.21、撹拌後5.56であり、15分の撹拌によってA液のpH値が大きく低下し、酸性化した。また、ポリウレタンフォームの硬化不良が有り、発泡成形が不可であった。
A液の粘度(mPa・s)については、20℃で21000、30℃で13000、40℃では7400であった。
ポリウレタンフォームは、密度(g/cm3)が0.24、熱伝導率(W/m・K)が0.10、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が、0.42であった。比較例2では、熱伝導性フィラーの配合量が実施例2よりも増大しているにも増加しているにもかかわらず、熱伝導性が低下した。
このように比較例2では、A液の撹拌によってpH値が大きく低下(酸性化)し、原料失活が発生した。
【0054】
製造現場では、注入機にA液を収容して循環させ、発泡させるタイミングでA液とB液(ポリイソシアネート)をミキシングヘッドに供給して混合させ、ノズルから吐出させた後、再び次の発泡タイミングまでA液を循環させるため、A液の原料失活及び粘度上昇の影響が大きくなる。
【0055】
そこで、実施例1と比較例1のA液について、注入機内で循環させ、注入機内での循環時間の違いによる原料性状を測定し、またA液をB液と混合して上面が開放された容器に吐出し、発泡(オープン)させたポリウレタンフォーム成形品の物性を測定した。A液のpH、粘度測定は、粘度測定時に注入機からA液のみを取り出して測定した。注入機は、日本ソセー工業株式会社製の低圧注入機を使用した。測定結果を
図2に示す。
【0056】
・実施例1
実施例1では、循環時間が0分、60分、180分の各時間におけるA液のpH、粘度(20℃)、硬化不良の有無、成形可否、成形品の密度(g/cm3)、熱伝導率(W/m・K)、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]を測定した。
【0057】
実施例1は、循環時間0~180分の間において、A液のpH値が8.92~8.94、粘度(mPa・s)が13000~54000、硬化不良無、成形可であり、ポリウレタンフォームの密度(g/cm3)が0.48、熱伝導率(W/m・K)が0.33~0.41、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が、0.69~0.85であった。
【0058】
実施例1では、循環時間が0分~180分の間において、A液のpH値が8.92~8.94であって殆ど変化がなく、原料失活を生じず、良好に発泡成形でき、熱伝導性も良好であった。
【0059】
・比較例1
比較例1では、循環時間が0分、5分、10分、20分、60分の各時間におけるA液のpH、粘度(20℃)、硬化不良の有無、成形可否、成形品の密度(g/cm3)、熱伝導率(W/m・K)、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]を測定した。
【0060】
比較例1は、A液のpH値が、循環時間0分における8.52から循環時間60分における3.84に大きく低下(酸性化)し、粘度(mPa・s)が、循環時間0分における27000から循環時間60分における88000へ大きく増加した。
また、比較例1は、循環時間0分では硬化不良無、成形可であり、ポリウレタンフォームの密度(g/cm3)が0.48、熱伝導率(W/m・K)が0.31、熱伝導性[(W/m・K)/(g/cm3)]が、0.65であったが、循環時間5分以上では、硬化不良有、成形不可となり、成形できないため、密度、熱伝導率及び熱伝導性を測定できなかった。
【0061】
このように、比較例1では、循環時間が0分ではポリウレタンフォームを成形できたが、循環時間5分以上では原料失活を生じ、良好に発泡成形できなかった。実際の製造現場では、発泡(吐出)のタイミング間も原料の循環が行われるため、比較例1の原料では良好な発泡成形品を製造できなくなる。
【0062】
このように、本発明は、発泡状態が良好な熱伝導性ポリウレタンフォームが得られる。
なお、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。