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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166239
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
A47J27/00 101D
A47J27/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077153
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平川 功
(72)【発明者】
【氏名】上田 真也
(72)【発明者】
【氏名】村井 隆男
(72)【発明者】
【氏名】東 幸靖
(72)【発明者】
【氏名】源 忠孝
(72)【発明者】
【氏名】北谷 和也
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA31
4B055BA10
4B055CA39
4B055CA90
4B055CC38
4B055CD02
4B055GB01
4B055GC40
4B055GD02
(57)【要約】
【課題】磁気検出部や磁石の個体バラツキを考慮し、且つ、磁力の温度変化による誤検知を無くすことができる加熱調理器を実現する。
【解決手段】加熱調理器(1)は、食材を収容する内鍋(21)に蓋をする蓋体(12)の開放を検知する蓋開検知センサー(50)と、蓋開検知センサー(50)の感度を、温度センサー(53)によって検出された磁石(52)の温度に応じて調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容する内鍋と、
前記内鍋に蓋をする蓋体と、
磁石と磁気検出部とを用いて前記蓋体が開いたことを検知する蓋開検知装置と、
前記蓋開検知装置の感度を調整する感度調整部と、
温度検出部と、を備え、
前記感度調整部は、
前記温度検出部によって検出された温度に応じて、前記蓋開検知装置の感度を調整する、加熱調理器。
【請求項2】
前記感度調整部は、
前記磁気検出部への供給電圧を変えることで、前記蓋開検知装置の感度を調整する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記磁石を前記磁気検出部に向かって移動させる移動機構を備え、
前記感度調整部は、
前記移動機構による前記磁石の移動量を変えることで、前記蓋開検知装置の感度を調整する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記磁気検出部と前記磁石との間に、磁性体を挿入させる挿入機構を備え、
前記感度調整部は、
前記挿入機構による前記磁性体の挿入量を変えることで、前記蓋開検知装置の感度を調整する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記蓋体の前記内鍋に対向する面に、当該内鍋に収容された食材を撹拌する撹拌部材が設けられている、請求項1~4の何れか1項に記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋開検知装置を備えた加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食材を撹拌しながら加熱調理する加熱調理器では、調理物を攪拌するための攪拌ユニットを備えているため、調理中に蓋が開いたことを検知した場合、加熱や攪拌を停止するようになっている。蓋が開いたことを検知する蓋開検知装置として、例えば特許文献1には、磁石とホールICとを用いた蓋開閉判定手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-164292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホールIC等の磁気検出部や磁石は個体バラツキがあるため、蓋と本体との間が一定の間隔以内であっても、蓋が開いたと検知することもある。このため、ホールICや磁石の個体バラツキを考慮して、各加熱調理器において、蓋開検知の感度を調整する必要がある。
【0005】
さらに、磁石は高温になると磁力の低下が生じるため、低温時では遊びの範囲内で蓋開検知しない距離としているところを、蓋開と誤検知してしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明の一態様は、磁気検出部や磁石の個体バラツキを考慮し、且つ、磁力の温度変化による誤検知を無くすことができる加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、食材を収容する内鍋と、前記内鍋に蓋をする蓋体と、磁石と磁気検出部とを用いて前記蓋体が開いたことを検知する蓋開検知装置と、前記蓋開検知装置の感度を調整する感度調整部と、温度検出部と、を備え、前記感度調整部は、前記温度検出部によって検出された温度に応じて、前記蓋開検知装置の感度を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、磁気検出部や磁石の個体バラツキを考慮し、且つ、磁力の温度変化による誤検知を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の蓋閉状態の概略断面図である。
図2図1に示す加熱調理器の蓋開状態の概略断面図である。
図3図1に示す加熱調理器における蓋を規定の検知限界で開いた状態の概略断面図である。
図4図1に示す加熱調理器の概略制御ブロック図である。
図5図1に示す加熱調理器で実行する蓋開検知センサーの感度を調整する処理の流れを示すフローチャートである。
図6】蓋開検知センサーの感度調整方法の一例を示す説明図である。
図7】蓋開検知センサーの感度調整方法の他の例を示す説明図である。
図8】蓋開検知センサーの感度調整方法のその他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、本実施形態の熱調理器の蓋閉状態の概略断面図である。図2は、本実施形態の加熱調理器の蓋開状態の概略断面図である。
【0012】
(加熱調理器の概要)
図1および図2に示すように、加熱調理器1は、調理器本体部11と蓋体12とを備えている。調理器本体部11と蓋体12とは後部の回転支持部13によって連結されている。したがって、蓋体12は回転支持部13を中心として回転し、調理器本体部11に対して開閉自在となっている。
【0013】
調理器本体部11は内鍋(食材収容部)21を有し、内鍋21は、調理器本体部11の内部の凹部に出し入れ自在に収納されている。
【0014】
蓋体12は、図1に示す閉状態において、ロック機構(図示せず)により閉状態に保持される。蓋体12は、ロック機構(図示せず)を解除することで、図2に示すように、開状態となる。
【0015】
蓋体12は、外蓋32と内蓋33とを有する。外蓋32は、蓋体12の筐体部となっており、主として樹脂にて形成されている。内蓋33は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料により円板状に形成され、蓋体12を閉じたときに、内鍋21の蓋となり、内鍋21の上面を塞ぐようになっている。
【0016】
内蓋33には、撹拌装置41が着脱自在に設けられている。撹拌装置41は、回転して内鍋21内の食材を撹拌する撹拌部材42および撹拌アーム43を有している。撹拌アーム43は、図1に示す蓋体12が閉状態のときには、内鍋21の下方へ延びて、内鍋21内の食品Fを撹拌可能な状態となる。一方、撹拌アーム43は、図2に示す蓋体12が開状態のときには、撹拌部材42側に収納された状態となる。撹拌アーム43の撹拌部材42への収納は、蓋体12が開状態になったことを検知したときに行われる。加熱調理器1は、蓋体12の開状態を検知する蓋開検知センサー(蓋開検知装置)50を備えており、蓋開検知センサー50の検知信号によって撹拌装置41の駆動モータを駆動させることで、撹拌アーム43が撹拌部材42に収納された状態にする。
【0017】
蓋開検知センサー50は、図1に示すように、ホールIC(磁気検出部)51と磁石52とで構成されている。ホールIC51は、蓋体12の回転支持部13と接続される位置とは反対側の端部に設けられ、磁石52は、調理器本体部11の回転支持部13と接続される位置とは反対側の端部に設けられている。図1に示すように、蓋体12が閉じた状態で、ホールIC(磁気センサー)51と磁石52とは対向するようになっている。
【0018】
ホールIC51は、図1に示すように、蓋体12が閉じた状態では、磁石52の磁界によって生じるホール電圧が高く、図2に示すように、蓋体が開いた状態では、磁石52の磁界によって生じるホール電圧が低くなる。従って、蓋開検知センサー50は、ホールIC51のホール電圧が所定値以下になったときに蓋体12が開いた状態、蓋開状態であると検知する。
【0019】
なお、加熱調理器1の構造上の遊びや、調理時の振動等による蓋体12と調理器本体部11との乖離程度では蓋体12が開いたと検知しないように、ホールIC51のホール電圧の所定値を設定する。例えば、図3に示すように、蓋体12が調理器本体部11に対して距離Dまでの間であれば、蓋体12が開いたと検知しないようにする。つまり、蓋体12を距離Dだけ開いた状態でのホールIC51のホール電圧を予め測定しておき、この測定値を蓋開検知の閾値とする。距離Dは、蓋体12が開放されたと検知されない検知限界の距離とする。なお、距離Dは、通常の家庭用の調理器の大きさであれば、例えば1cmとすればよいが、加熱調理器1の大きさやホールIC51の性能等に応じて適宜設定されるものであり、1cmに限定されるものではい。このように、蓋体12と調理器本体部11との間の距離がD以内であれば、蓋体12が開いても、ホールIC51による蓋開検知は行われず、一方、蓋体12と調理器本体部11との間の距離がDを超えれば、ホールIC51による蓋開検知が行われる。
【0020】
ところで、ホールIC51の感度や磁石52の磁力に個体バラツキがあるため、同じ距離Dであっても、ホールIC51のホール電圧にバラツキが生じる。しかも、磁石52は温度変化によって磁力も変化する。通常、磁石は、温度が高くなると磁力が弱くなり、温度が低くなると元の磁力に戻る。そこで、ホールIC51の個体のバラツキおよび磁石52の温度による磁力変化を考慮して、ホールIC51の感度を調整する必要がある。以下、ホールIC51の感度を調整する方法について説明する。
【0021】
(制御部)
図4は、加熱調理器1が備える制御ブロック図である。加熱調理器1は、図4に示すように、制御部60を備えている。制御部60は、感度調整部60aおよび調整量補正部60bを含み、ホールIC51、温度センサー(温度検出部)53、モータ54、データベース55が接続されている。感度調整部60aは、蓋開検知センサー50の感度を調整量に基づき調整する。調整量の求め方は後述する。調整量補正部60bは、感度調整部60aで感度の調整に使用する調整量を補正する。具体的には、調整量補正部60bは、温度センサー53によって検出された磁石52の温度に応じて、感度調整部60aで使用する調整量を補正する。温度センサー53は、磁石52に近接して設けられ、検出した温度を磁石52の温度として制御部60に出力する。従って、磁石52の温度を正確に検出するには、温度センサー53を設ける位置を、磁石52にできるだけ近づけるのが好ましい。モータ54は、制御部60からの制御信号に基づき回転制御され、後述する歯車62を駆動する。DB(データベース)55は、ホールIC51の感度の調整量を格納する。この場合、調整量は、調整量補正部60bによって補正される際の磁石52の温度と紐付けてデータベース55に格納される。以下、ホールIC51の感度調整について説明する。
【0022】
(ホールIC51の感度調整処理)
図5は、ホールIC51の感度調整の流れを示すフローチャートである。
【0023】
まず、ホールIC51の感度調整の準備として、温度により調整補正値を決定する(ステップS11)。この調整補正値は、調整量補正部60bにおいて使用される補正値であり、ホールIC51の感度の調整量を補正する補正値である。また、温度は、磁石52の温度(周辺の温度)、すなわち、温度センサー53が検出した温度である。つまり、調整補正値は、ホールIC51の感度の調整量を、磁石52の温度変化に伴い変化する磁力を考慮して補正する補正値である。調整補正値は、例えば磁石52の温度が高ければ磁力が弱くなるため、ホールIC51の感度を上げるように調整量を補正する補正値となる。
【0024】
次に、蓋体12を規定の検知限界の間隔で開く(ステップS12)。ここでは、図3に示すように、蓋体12と調理器本体部11との間の距離がDになるまで蓋体12を開く。この状態で、ホールIC51の感度調整を開始する(ステップS13)。ステップS14以降の処理は、ホールIC51の感度の調整量を求めるための処理である。この調整量は、ステップS11において決定した調整補正値によって補正される。
【0025】
はじめに、ホールIC51の感度を上げる(ステップS14)。ホールIC51の感度を最初は最低の感度とし、そこから感度を段階的あるいは連続的に上げる。例えば、感度を数値で表し、数値が大きくなると感度も高くなることを示した場合、最低の感度を“0”とすれば、次の感度を“1”、その次の感度を“2”というように、感度を上げる。ホールIC51の感度の上げ方は種々の方法で実現できる。なお、ホールIC51の感度の上げ方についての詳細は後述する。
【0026】
ステップS15では、ステップS14において設定された感度のホールIC51によって、蓋開検知を行う。ここで、ホールIC51によって蓋開検知が行えなければ(NO)、ホールIC51の感度はまだ低いと判断し、ステップS13に移行し、ホールIC51の感度を上げる。一方、ホールIC51によって蓋開検知が行えれば(YES)、ホールIC51の感度は適正であると判断し、ステップS16に移行する。
【0027】
ステップS16では、ホールIC51の感度の調整量を記憶する。この調整量は、ステップS15において蓋開検知を行えるホールIC51の感度に調整したときの調整量を示し、ステップS11において決定した調整補正値によって補正された調整量である。つまり、制御部60の感度調整部60aによって、ホールIC51の感度、すなわち蓋開検知センサー50の感度を温度センサー53によって検出された温度センサー53の温度に応じて調整されることになる。調整量は、調整補正値を決定する際の磁石52の温度に紐付けて、データベース55に格納する。このように、ホールIC51の感度の調整量を温度と紐付けてデータベース55に格納しておけば、磁石52の温度を検出するだけで、ホールIC51の感度を適切に調整することを可能にする。
【0028】
従って、複数の温度で決定した調整補正値を用いて補正したホールIC51の感度の調整量を、それぞれの調整補正値を決定した温度に紐付けてデータベース55に格納するのが好ましい。つまり、上記ステップS12~S16までの処理を、ステップS11の温度を変えて行う。この温度は、加熱調理器1が実際に調理をしている際の磁石52の温度を想定することが好ましい。これにより、磁石52の温度と、この温度に紐付いた調整量のデータベースが構築されるので、加熱調理器1を実際に使用するときには、温度センサー53によって磁石52の温度を検出するだけで、ホールIC51の感度を適切に調整することができる。従って、蓋開検知の誤検知を大幅に軽減することが可能となる。
【0029】
以下、図5に示すステップS13におけるホールIC51の感度の上げ方について説明する。
【0030】
(ホールIC51の感度の上げ方(1))
図6は、ホールIC51の感度の上げ方を、ホールIC51に供給する電圧によって行う例について説明する図である。ここでは、ホールIC51への供給電圧を変えることで、ホールIC51の感度を調整する例について説明する。
【0031】
図6に示すように、制御部60は、ホールIC51に供給する電圧を、ホールIC51が最低の感度となる電圧から段階的あるいは連続的に上げて、ホールIC51からの信号を受信する。制御部60は、ホールIC51からの信号が磁石52の磁力を検知したことを示す信号である場合、そのときにホールIC51に供給した電圧を、ホールIC51の感度の調整量としてデータベース55に格納する。調整量は、既に調整補正値によって補正されているため、この調整補正値を決める際の磁石52の温度に紐付けられてデータベース55に格納される。
【0032】
上記のホールIC51の感度の上げ方であれば、ホールIC51に供給する電圧を変えるだけでよいため、既存の装置がそのまま使うことができる。
【0033】
(ホールIC51の感度の上げ方(2))
図7は、ホールIC51の感度の上げ方を、磁石52の移動量で行う例について説明する図である。ここでは、磁石52の移動量を変えることで、ホールIC51の感度を調整する例について説明する。
【0034】
図7に示すように、磁石52をホールIC51に向かって移動させる移動機構を構成するギア61と、このギア61に歯合する歯車62とを備えている。ギア61は、表面に歯車62が歯合する鋸歯状に形成された板状部材からなり、調理器本体部11内で矢印方向(上下方向)に移動するように設けられている。ギア61の先端(調理器本体部11の開口に近い側の端部)に磁石52が固定されている。つまり、ギア61を上方に移動させることで、蓋体12を閉じる方向に移動させた状態であれば、磁石52をホールIC51側に移動させることができる。歯車62は、制御部60によって駆動制御されているモータ54によって回転する。従って、歯車62に歯合しているギア61は、歯車62の回転力が伝わり、調理器本体部11内で上下方向に移動できるようになっている。
【0035】
制御部60は、ホールIC51の感度調整を行う際には、最初に、ホールIC51の感度が最低となるように、磁石52をホールIC51から最も遠ざかる位置までギア61を歯車62によって動かすようにモータ54を制御する。制御部60は、モータ54を駆動制御して、磁石52をホールIC51に向かって段階的または連続的に近づくように移動機構によって移動させて、ホールIC51からの信号を受信する。制御部60は、ホールIC51からの信号が磁石52の磁力を検知したことを示す信号である場合、そのときに磁石52の移動距離を、ホールIC51の感度の調整量としてデータベース55に格納する。磁石52の移動距離は、ギア61に歯合している歯車62の回転数、すなわちモータ54の回転数で表現できるものであるので、データベース55には、調整量としてモータ54の回転数が格納される。調整量は、既に調整補正値によって補正されているため、この調整補正値を決める際の磁石52の温度に紐付けられてデータベース55に格納される。
【0036】
(ホールIC51の感度調整(3))
図8は、ホールIC51の感度の上げ方を、磁石52の移動量で行う例について説明する図である。ここでは、ホールIC51と磁石52との間への磁性体の挿入量を変えることで、ホールIC51の感度を調整する例について説明する。
【0037】
図8に示すように、ホールIC51と磁石52との間に磁性体64を挿入するための挿入機構を構成するギア63と、このギア63に歯合する歯車62とを備えている。ギア63は、表面に歯車62が歯合する鋸歯状に形成された板状部材からなり、調理器本体部11内で矢印方向(左右方向)に移動するように設けられている。ギア63の先端(磁石52側)に磁性体64が固定されている。つまり、ギア63を右側に移動させることで、磁性体64を磁石52とホールIC51との間に挿入させることができる。歯車62は、制御部60によって駆動制御されているモータ54によって回転する。従って、歯車62に歯合しているギア63は、歯車62の回転力が伝わり調理器本体部11内で左右方向に移動できるようになっている。ここで、磁性体64は、磁石52の磁力をホールIC51に透過させない材質で形成されていればよく、例えば鉄やパーマロイ等がある。
【0038】
制御部60は、ホールIC51の感度調整を行う際には、最初に、ホールIC51の感度が最低となるように、磁石52とホールIC51との間で、磁石52のホールIC51に対向する面を全て覆う位置まで磁性体64を移動するようにモータ54を制御する。制御部60は、モータ54を駆動制御して、磁性体64を左側、すなわち、磁石52のホールIC51に対向する面を露出する側に段階的または連続的に移動させて、ホールIC51からの信号を受信する。制御部60は、ホールIC51からの信号が磁石52の磁力を検知したことを示す信号である場合、そのときの磁性体64の移動距離を、ホールIC51の感度の調整量としてデータベース55に格納する。磁性体64の移動距離は、ギア63に歯合している歯車62の回転数、すなわちモータ54の回転数で表現できるものであるので、データベース55には、調整量としてモータ54の回転数が格納される。調整量は、既に調整補正値によって補正されているため、この調整補正値を決める際の磁石52の温度に紐付けられてデータベース55に格納される。
【0039】
加熱調理器1は、調理中高温になるため、磁石52の磁力が弱くなるが、磁石52の温度を考慮してホールIC51の感度の調整を行うので、蓋開検知を常に適切に行うことができる。特に、撹拌装置を備えた加熱調理器では、調理中に蓋が開放されないことが好ましいため、本実施形態で説明したようなホールIC51の感度を磁石52の温度を考慮して調整するが好適である。
【0040】
なお、本実施形態では、磁石52の温度を温度センサー53によって直接検出する例について説明したが、これに限定されるものではなく、磁石52の温度を、加熱調理器1の他の部分の温度から推定するようにしてもよい。例えば、加熱調理器1の蓋体12側に温度センサー53を設けて、蓋体12の温度から磁石52の温度を推定するようにしてもよい。このように、磁石52の温度を推定する場合であっても、推定された磁石52の温度に応じてホールIC51の感度を調整するようにすればよい。
【0041】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器は、食材を収容する内鍋(21)と、前記内鍋(21)に蓋をする蓋体(12)と、磁石(52)と磁気検出部(ホールIC51)とを用いて前記蓋体(12)が開いたことを検知する蓋開検知装置(蓋開検知センサー50)と、前記蓋開検知装置(蓋開検知センサー50)の感度を調整する感度調整部(60a)と、温度検出部(温度センサー53)と、を備え、前記感度調整部(60a)は、前記温度検出部(温度センサー53)によって検出された温度に応じて、前記蓋開検知装置(蓋開検知センサー50)の感度を調整する。
【0042】
上記構成によれば、温度検出部が検出した温度に応じて、磁気検出部の感度を調整しているので、温度変化によって磁石の磁力が変化しても、蓋開検知を正しく行うことができる。
【0043】
本発明の態様2に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記感度調整部(60a)は、前記磁気検出部(ホールIC51)への供給電圧を変えることで、前記蓋開検知装置(蓋開検知センサー50)の感度を調整してもよい。
【0044】
上記の構成によれば、感度調整部が、磁気検出部への供給電圧を変えることで、蓋開検知装置の感度を調整しているので、感度調整用の機器を別途する必要はなく、既存の機器で感度調整を行うことができる。
【0045】
本発明の態様3に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記磁石(52)を前記磁気検出部(51)に向かって移動させる移動機構(ギア61、歯車62)を備え、前記感度調整部(60a)は、前記移動機構(ギア61、歯車62)による前記磁石(52)の移動量を変えることで、前記蓋開検知装置(ホールIC51)の感度を調整してもよい。
【0046】
上記構成によれば、磁石を磁気検出部に向かって移動させるだけで、磁気検出部が検出できる磁石の磁力を容易に変化させることができる。例えば、磁石を磁気検出部に近づければ、磁気検出部が検出する磁気の磁力が強く、磁石を磁気検出部から遠ざければ、磁気検出部が検出する磁気の磁力が弱くなる。このことを利用し、温度上昇により磁石の磁力が弱くなったときに、磁石を磁気検出部に近づけるようにすれば、磁気検出部は磁石の磁力を検出することができる。
【0047】
本発明の態様4に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記磁気検出部(ホールIC51)と前記磁石(52)との間に、磁性体(64)を挿入させる挿入機構(ギア63,歯車62)を備え、前記感度調整部(60a)は、前記挿入機構(ギア63,歯車62)による前記磁性体(64)の挿入量を変えることで、前記蓋開検知装置(蓋開検知センサー50)の感度を調整してもよい。
【0048】
上記構成によれば、磁気検出部と磁石との間における磁性体の挿入量によって、磁気センサーの感度調整を行うことができる。つまり、磁性体の挿入量が多ければ、磁石の表面が磁性体で覆われる面積が大きくなり、磁気検出部に伝わる磁力が小さくなり、一方、磁性体の挿入量が少なければ、磁石の表面が磁性体で覆われる面積が小さくなり、磁気検出部に伝わる磁力が大きくなるので、磁性体の挿入量に応じて、磁石から磁気検出部に伝わる磁力の大きさを可変にできる。従って、磁性体の挿入量を変えるだけで、磁気検出部の感度調整を行うことができる。
【0049】
本発明の態様5に係る加熱調理器は、上記態様1~4の何れか1態様において、前記蓋体(12)の前記内鍋(21)に対向する面に、当該内鍋(21)に収容された食材を撹拌する撹拌部材(撹拌装置41)が設けられていてもよい。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 加熱調理器
11 調理器本体部
12 蓋体
13 回転支持部
21 内鍋
32 外蓋
33 内蓋
41 撹拌装置
42 撹拌部材
43 撹拌アーム
50 蓋開検知センサー(蓋開検知装置)
51 ホールIC(磁気検出部)
52 磁石
53 温度センサー
54 モータ
55 データベース(DB)
60 制御部
60a 感度調整部
60b 調整量補正部
61 ギア(移動機構)
62 歯車(移動機構)
63 ギア(移動機構)
64 磁性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8