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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166241
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】指示値取得装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 13/22 20060101AFI20231114BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20231114BHJP
   G01D 5/16 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01D13/22 Z
G08C19/00 301F
G01D5/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077156
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】509044109
【氏名又は名称】ウイングレット・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼堂 博司
(72)【発明者】
【氏名】西野 憲次郎
【テーマコード(参考)】
2F073
2F077
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA03
2F073AA12
2F073AB01
2F073BB01
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD07
2F073EE13
2F073FF01
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG09
2F073GG01
2F073GG04
2F073GG07
2F073GG08
2F077CC02
2F077JJ01
2F077JJ09
2F077TT06
2F077VV02
2F077VV13
2F077VV22
(57)【要約】
【課題】アナログメータの指示値を取得して外部へ出力することができるとともに、引き抜き工具を用いて指針を回転軸から容易に引き抜くことを可能とし、これにより作業員の負担の軽減、及びアナログメータの損傷を抑制することが可能な指示値取得装置を提供する。
【解決手段】指示値取得装置は、引き抜き工具30を用いて回転軸23から引き抜き可能な指針24を有する圧力計に取り付けられて、指針24が指し示す指示値を出力する。指示値取得装置は、回転軸23の軸線上において、指針24に取り付けられる磁石11と、磁石11が生じる磁力を検知する磁気センサと、磁気センサが検知した磁力に基づいて指示値を出力する計測処理器と、を備えている。磁石11は、引き抜き工具30によって引き抜き方向に変位される本体部11aを有し、本体部11aには、引き抜き工具30が貫通する貫通孔11bが形成されている。
【選択図】図11D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に嵌合されるとともに、引き抜き工具を用いて前記回転軸から引き抜き可能な指針を有するアナログメータに取り付けられて、前記指針が指し示す指示値を取得して出力する指示値取得装置であって、
前記指示値取得装置は、
前記回転軸の軸線上において、前記指針に取り付けられる磁石と、
前記磁石と対向する位置に配設されて、前記磁石による磁力を検知する磁気センサと、
前記磁気センサが検知した磁力に基づいて、前記指示値を出力する計測処理器と、を有し、
前記磁石は、前記引き抜き工具によって引き抜き方向に変位される本体部を有し、前記本体部には、前記引き抜き工具が前記引き抜き方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする指示値取得装置。
【請求項2】
前記本体部は、環状体であって、前記環状体の中心軸が前記回転軸の軸線上に位置するように配置され、
前記貫通孔は、前記中心軸上に形成されており、
前記磁気センサは、トンネル磁気抵抗素子を有していることを特徴とする請求項1に記載の指示値取得装置。
【請求項3】
前記磁気センサは、前記回転軸に対する直交面を有する透明板に対して固定され、前記回転軸の軸線上に位置することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の指示値取得装置。
【請求項4】
前記指示値取得装置は、前記透明板の少なくとも一部を覆うように前記アナログメータに対して配設されるカバー部材を有し、
前記カバー部材は、前記アナログメータに対して配設された際に前記回転軸の軸線上に位置し、前記磁気センサを位置合わせ可能な切欠きを有していることを特徴とする請求項3に記載の指示値取得装置。
【請求項5】
前記計測処理器は、所定の計測期間における前記指示値の統計値を算出し、該統計値を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の指示値取得装置。
【請求項6】
前記統計値は、前記所定の計測期間における前記指示値の最小値、最大値、及び平均値を含むことを特徴とする請求項5に記載の指示値取得装置。
【請求項7】
前記計測処理器は、前記所定の計測期間において、前記指示値が、前記平均値より小さい値から前記平均値より大きい値へと変化する回数と、前記平均値より大きい値から前記平均値より小さい値へと変化する回数と、の少なくともいずれか一方を取得することを特徴とする請求項6に記載の指示値取得装置。
【請求項8】
前記計測処理器は、外部と通信を行い、第一の消費電力で動作する第一処理状態と、外部と通信を行わず、前記第一の消費電力よりも小さい第二の消費電力で動作する第二処理状態と、の間で状態遷移するように制御されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の指示値取得装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示値取得装置に係り、特にアナログメータの指示値を取得する指示値取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラント等で用いられる産業用の計測装置は、設備の状態を監視し、早期に異常を検出し、メンテナンスの要否を判断するために重要な役割を担ってきた。例えば、プラントの配管に設置される圧力計は、配管内を流れる流体の圧力を検知することによって、配管、及び配管内の流体の状態を監視するために広く普及している。
【0003】
また、近年、プラントにおける作業員の監視負担の軽減を図る目的で、計測装置を通信回線に接続し、計測装置の指示値を遠隔で監視可能な監視システムが注目されている。より詳細には、計測装置の指針にセンサを取り付けて、通信回線を介して接続された遠隔のサーバに対して、センサが検知した計測装置の指示値を送信する。これにより、プラントの作業員が目視によって計測装置の指示値を確認することなく、設備の状態を監視することができるため、作業員の作業負担を軽減することが可能となる。
【0004】
特許文献1には、図14に示すように、アナログメータ120の指針124が示す指示値を外部に出力可能な指針読取装置が開示されている。詳細には、アナログメータ120の指針124の回転軸の軸線上に磁石111を取付けるとともに、磁石111と対向する位置に磁気センサ112を配設する。指針124の回転とともに磁石111が生成する磁界が変化し、これを磁気センサ112によって検出して出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3161399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された技術により、アナログメータ120の指示値を外部に出力することが可能となり、監視員の負担を軽減することができる。しかしながら、プラントにおける作業員の負担を軽減するために、更なる改善が望まれていた。以下で、具体的に説明する。
【0007】
プラントで用いられるアナログメータ120は、定期的に行われる品質検査の対象とされている。そして品質検査の際には、アナログメータ120の内部構造の点検等を目的として、図15A及び図15Bに示すように、回転軸123に嵌合して固定される指針124を、引き抜き工具130を用いて引き抜く作業が必要となる。
【0008】
引き抜き工具130は、その中心において、引き抜き方向P(図15Aの上方向)に延びる固定軸131と、固定軸131の両側に、指針124と目盛板122の間に挿入される引き抜き片132bを有する環状の引き抜き部132と、を有している。
固定軸131の外周には、ねじ溝が形成されており、引き抜き部132の内部に形成されたねじ溝と螺合する。これにより、固定軸131の先端に形成された操作部131cを回転操作すると、引き抜き部132が固定軸131に対して引き抜き方向に変位するように構成されている。
【0009】
引き抜き工具130を用いて指針124を目盛板122から引き抜く際には、最初に、引き抜き部132の下端の左右に形成された引き抜き片132bが、指針124と目盛板122との間に挿通される。次に、操作部131cを回転操作することによって、固定軸131を引き抜き部132に対して下方に下降させる。これにより、固定軸131の下端は、貫通孔125aを貫通してアナログメータ120の回転軸123(図15B参照)の上端に当接する。換言すると、固定軸131の引き抜き方向の位置が位置決めされる。
【0010】
さらに操作部131cを回転操作すると、引き抜き部132が固定軸131に対して上昇する(引き抜き方向に変位する)。このとき、指針124は、引き抜き部132の下端に形成された引き抜き片132bによって下方から押し上げられ、回転軸123から引き抜かれる。このように、固定軸131を回転軸123に対して位置決めした状態で、引き抜き部132を引き抜き方向(図15Aの上方向)に変位させることによって、指針124が回転軸123から引き抜かれる。
【0011】
ところが、特許文献1に開示された技術によると、図14に示すように、指針124の上面の貫通孔125aは、磁石111によって覆われる。そのため、固定軸131の下端は、回転軸123の上端に当接せずに、磁石111に当接する。結果として、固定軸131を磁石111に当接させた状態で、操作部131cを回転操作しても、回転軸123に対して指針124を上方に変位させることができない。このとき作業員は、力ずくで指針124を回転軸123から引き抜かなければならず、作業負担が増大するばかりでなく、アナログメータ120の破損を招く虞があった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アナログメータの指示値を取得して外部へ出力することができるとともに、引き抜き工具を用いて指針を回転軸から容易に引き抜くことを可能とし、これにより作業員の負担の軽減、及びアナログメータの損傷を抑制することが可能な指示値取得装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、本発明の指示値取得装置によれば、回転軸に嵌合されるとともに、引き抜き工具を用いて前記回転軸から引き抜き可能な指針を有するアナログメータに取り付けられて、前記指針が指し示す指示値を取得して出力する指示値取得装置であって、前記指示値取得装置は、前記回転軸の軸線上において、前記指針に取り付けられる磁石と、前記磁石と対向する位置に配設されて、前記磁石による磁力を検知する磁気センサと、前記磁気センサが検知した磁力に基づいて、前記指示値を出力する計測処理器と、を有し、前記磁石は、前記引き抜き工具によって引き抜き方向に変位される本体部を有し、前記本体部には、前記引き抜き工具が前記引き抜き方向に貫通する貫通孔が形成されていることにより解決される。
【0014】
上記構成によれば、指針に取り付けられる磁石と、磁石と対向する位置に配設される磁気センサと、磁気センサが検知した磁力に基づいてアナログメータの指示値を出力する計測処理器によって、アナログメータの指示値を取得して外部に出力することができる。また、磁石は、引き抜き工具によって引き抜き方向に変位する本体部を有し、本体部には、引き抜き工具が貫通する貫通孔が形成されている。これにより、引き抜き工具は、貫通孔を介して磁石を貫通し、引き抜き方向に位置決めされた状態で磁石及び指針を引き抜き方向に変位させることができ、指針を回転軸から容易に引き抜くことが可能となる。そのため、プラントにおける作業員の作業負担の軽減、及びアナログメータの損傷を抑制することが可能となる。
【0015】
また、前記本体部は、環状体であって、その中心軸が前記回転軸の軸線上に位置するように配置され、前記貫通孔は、前記環状体の前記中心軸上に形成されており、前記磁気センサは、トンネル磁気抵抗素子を有していると好適である。
上記構成によれば、磁石は、その中心軸が回転軸の軸線上に位置する環状体からなるため、軽量であって、指針の回転運動に対して高い追従性能を有する。また、磁気センサは、トンネル磁気抵抗素子からなり、磁石によって生じる磁力を高感度かつ高精度で検出することができる。そのため、指針の回転運動とともに変化する指示値を、正確に取得することが可能となる。
【0016】
また、前記磁気センサは、前記回転軸に対する直交面を有する透明板に対して固定され、前記回転軸の軸線上に位置すると好適である。
上記構成によれば、回転軸の軸線上に位置する磁石に対して、磁気センサが正対する位置関係に配置させることとなるため、磁気センサは、磁石が生じる磁力を正確に検知することができる。そのため、アナログメータの指示値を高精度に取得することが可能となる。
【0017】
また、前記指示値取得装置は、前記透明板の少なくとも一部を覆うように前記アナログメータに対して配設されるカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記アナログメータに対して配設された際に前記回転軸の軸線上に位置し、前記磁気センサを位置合わせ可能な切欠きを有していると好適である。
上記構成によれば、アナログメータの透明板に取り付けられるカバー部材によって、磁気センサを、磁石に対して正対する位置に容易に配置することができる。そのため、磁気センサは、磁石が生じる磁力を正確に検知することができ、アナログメータの指示値を高精度に取得することが可能となる。
【0018】
また、前記計測処理器は、所定の計測期間における前記指示値の統計値を算出し、該統計値を出力すると好適である。
上記構成によれば、計測処理器は、取得した指示値から統計値を算出して出力することにより、指示値が有する統計的性質を出力しながらも、計測処理器と外部機器との間の通信データ量を削減し、通信処理に要する負担を軽減することが可能となる。
【0019】
また、前記統計値は、前記所定の計測期間における前記指示値の最小値、最大値、及び平均値を含むと好適である。
上記構成によれば、計測処理器は、取得した指示値から最小値、最大値、及び平均値を取得して出力することにより、指示値が有する統計的性質を出力しながらも、計測処理器と外部機器との間の通信データ量を削減し、通信処理に要する負担を軽減することが可能となる。
【0020】
また、前記計測処理器は、前記所定の計測期間において、前記指示値が、前記平均値より小さい値から前記平均値より大きい値へと変化する回数と、前記平均値より大きい値から前記平均値より小さい値へと変化する回数と、の少なくともいずれか一方を取得すると好適である。
上記構成によれば、指示値が平均値を交差する回数を計数するという簡単な方式によって指示値の周波数特性を取得することができ、処理負担を軽減することが可能となる。
【0021】
また、前記計測処理器は、外部と通信を行い、第一の消費電力で動作する第一処理状態と、外部と通信を行わず、前記第一の消費電力よりも小さい第二の消費電力で動作する第二処理状態と、の間で状態遷移するように制御されると好適である。
上記構成によれば、計測処理器が外部との通信を行わない期間には、低消費電力で動作する(スリープ状態となる)ため、消費電力を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の指示値取得装置によれば、アナログメータの指示値を取得し、外部に出力することができるとともに、引き抜き工具を用いて指針を回転軸から容易に引き抜くことができ、これにより作業員の負担の軽減、及びアナログメータの損傷を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】指示値監視システムの全体構成を例示する図である。
図2A】圧力計に指示値取得装置を取り付けた状態の正面図である。
図2B】圧力計に指示値取得装置を取り付けた状態の背面図である。
図3】圧力計と指示値取得装置の分解斜視図である。
図4】圧力計と指示値取得装置の横断面図である。
図5】指示値取得装置の構成を示す図である。
図6】指示値取得装置が取得した圧力波形を例示する図である。
図7】指示値取得装置の通信タイミングと状態制御の説明図である。
図8】指示値取得処理の流れを示す図である。
図9】引き抜き工具の斜視図である。
図10A】引き抜き工具で指針を引き抜く前の状態を示す図である。
図10B】引き抜き工具で指針を引き抜いた状態を示す図である。
図11A】引き抜き工具を使用する前の状態を示す図である。
図11B】回転軸の軸線上に引き抜き工具を位置させた状態を示す図である。
図11C】回転軸に固定軸の先端を当接させた状態を示す図である。
図11D】回転軸から指針を引き抜いた状態を示す図である。
図12A】圧力計にカバー部材を取り付けた状態を示す図である。
図12B】カバー部材に磁気センサを取り付けた状態を示す図である。
図13A】磁石の取付位置の変形例を示す図である。
図13B】回転軸に対する指針の取付方法を示す図である。
図14】従来の指針に対する磁石の取付方法を示す図である。
図15A】回転軸から指針を引き抜く前の状態を示す図である。
図15B】回転軸から指針を引き抜いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1図13Bを参照しながら、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る指示値取得装置10について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。つまり、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0025】
本発明の指示値取得装置10は、圧力計20に取り付けられて、圧力計20の指示値を監視装置MNに出力するために用いられる。圧力計20は、計測対象の圧力値を指示する指針24を有している。指針24は、後述する引き抜き工具30を用いることによって圧力計20から引き抜くことができる。これにより、プラントにおいて圧力計20の検査を行う作業員(検査員)の作業負担を軽減することが可能となる。
【0026】
<指示値監視システム1の全体構成>
図1は、指示値監視システム1の全体構成を示す図である。図1に示すように、指示値監視システム1は、圧力計20に取り付けられた指示値取得装置10と、指示値取得装置10が取得した指示値を監視する監視装置MNと、指示値を中継する中継器GWと、から主に構成されている。中継器GWと監視装置MNは、インターネット等の公衆に利用可能な通信回線NWを介して接続されている。
【0027】
圧力計20は、プラント内の配管に取り付けられて、配管、及び配管の内部を流れる流体の異常を検出するために用いられる。図1において、3つの圧力計20が図示されているが、圧力計20の数はこれに限定されない。例えば、4つ以上の圧力計20がプラント内の配管に取り付けられて、異常を検出するために用いられていてもよい。本実施形態において、プラントの状態を監視するアナログメータとして、圧力計20を例として説明するが、これに限定されない。例えば、温度計、湿度計、振動計に対して本発明を適用してもよい。
【0028】
指示値取得装置10は、プラントに予め設置された圧力計20に取り付けられる。指示値取得装置10は、圧力計20の指針24が指示する指示値を取得するとともに、取得した指示値を、中継器GWを介して監視装置MNに対して出力する。換言すると、指示値取得装置10は、プラントの作業員に代わって圧力計20の指示値を読み取り、監視装置MNに計測データとして記憶させる。これにより、プラントの作業員の作業負担を軽減することが可能となる。また、プラントに新しい圧力計20(スマートメータ)を導入することなく、既存の圧力計20に指示値取得装置10を取り付けることによって、容易に安価な指示値監視システム1を構築することが可能となる。
【0029】
指示値取得装置10は、後述するように、角度検知器12によって圧力計20の指示値を取得する。取得された指示値は、無線通信、例えばLPWA(Low Power Wide Area)通信によって中継器GWに送信される。ただし、指示値取得装置10は、Wi-Fi(登録商標)、又はLTEに対応した通信インターフェースによって監視装置MNに対して指示値を送信することとしてもよい。
【0030】
中継器GWは、指示値取得装置10と監視装置MNの間の無線通信信号を中継する。中継器GWは、プラント内に設置される複数の圧力計20の指示値を受信し、監視装置MNへ中継する。また中継器GWは、監視装置MNから指示値取得装置10に対する設定情報を含む制御信号を受信し、指示値取得装置10へ中継する。
【0031】
監視装置MNは、プラントから送信される指示値を蓄積し、プラントの管理者に対して監視データとして提供する。監視装置MNは、プラントで取得された指示値を蓄積するストレージサーバとして機能するとともに、プラントの管理者に対して監視データを提供する監視サーバとして機能する。これにより、プラント管理者は、プラントの設備の異常の有無やメンテナンスの要否を的確に判断することが可能となる。
【0032】
<圧力計20>
最初に、圧力計20について説明する。図3は、圧力計20及び指示値取得装置10の構成を示す部分分解斜視図である。図3に示すように、圧力計20は、本体部21と、目盛板22と、回転軸23と、指針24と、固定部材25と、を有している。また、外枠27、及び外枠27に保持された透明板26が、目盛板22及び指針24を視認可能に本体部21の正面側に取り付けられる。
【0033】
本体部21は、弾性式の圧力測定手段であるブルドン管である。本体部21の内部には、計測対象となる流体の圧力を受けて、回転軸23を機械的に回転させる周知の回転機構が収容されている。本体部21の正面側には、目盛が印字された目盛板22が取り付けられている。目盛板22の中心から回転軸23が突出している。
回転軸23を中心に回転する指針24は、固定部材25によって回転軸23に対して固定されている。より詳細には、固定部材25の中心に形成された嵌合孔25aを、指針24を介して回転軸23に嵌合させることで、指針24が回転軸23に対して嵌合されて、取り付けられる。
【0034】
圧力計20のメンテナンス作業が行われる際には、本体部21に対して外枠27を回転させることによって、外枠27と透明板26が本体部21から取り外される。次に、後述する引き抜き工具30を用いて指針24が回転軸23から引き抜かれる。これにより、指針24の交換作業や本体部21に対するメンテナンス作業が可能となる。
【0035】
<指示値取得装置10>
次に、指示値取得装置10について説明する。図2A及び図2Bは、圧力計20と、圧力計20に取り付けられた状態の指示値取得装置10の外観を示している。図2Aは正面図であり、図2Bは背面図である。図3に示すように、指示値取得装置10は、磁石11と、角度検知器12と、接続ケーブル13と、計測処理器14と、から主に構成されている。
【0036】
磁石11は、指針24の正面側に取り付けられる。磁石11は、環状体からなる磁石本体11a(本体部に相当する)を有している。換言すると、磁石11は、内周面と外周面を有しており、中心には貫通孔11bが形成されている。磁石11の中心軸は、回転軸23の軸線上に位置している。磁石11は、強力な磁界を生成するネオジム磁石であるが、これに限定されない。磁石11は、ネオジム磁石以外の永久磁石であってもよく、サマリウムコバルト磁石(サマコバ磁石)やフェライト磁石であってもよい。
リング形状を有するネオジム磁石を採用することによって、磁石11を軽量化することができ、指針24の動きに影響を与えることなく、十分な追従性をもって回転することが可能となる。また、リング形状を有する磁石11の内側に形成された貫通孔11bは、後述する引き抜き工具30の固定軸31が貫通する。すなわち、貫通孔11bは、回転軸23の軸線上に延びる引き抜き方向Pに引き抜き工具30が貫通可能となるように形成されている。
【0037】
角度検知器12は、図2A及び図3に示すように、回転軸23の軸線に対して直交面を有する透明板26に取り付けられる。角度検知器12は、ケース体12aと、ケース体12aに収容された磁気センサ12bと、角度変換ユニット12cと、を有している(図5参照)。ケース体12aは、略直方体形状を有する樹脂製の筐体である。ケース体12aは、透明板26に対して接着剤、又は両面テープによって固着することができる。
【0038】
図4に示すように、磁気センサ12bは、ケース体12aの先端部に収容されて、回転軸23の軸線上において磁石11と正対するように配置される。磁気センサ12bは、磁石11が生成する磁力及び磁界を検出する。磁気センサ12bは、トンネル磁気抵抗素子である。磁気センサ12bが磁石11と正対するように配置されるとともに、トンネル磁気抵抗素子を採用することによって、磁石11が生成する磁力及び磁界を高感度かつ高精度で検出することができる。
【0039】
図2A及び図4に示すように、ケース体12aの先端部には、磁気センサ12bの収容位置を外部から確認するための位置マーカー12dが形成されている。位置マーカー12dが回転軸23の軸線上に位置するようにケース体12aを透明板26に対して固定することによって、ケース体12a内に収容された磁気センサ12bを磁石11と正対配置させることが可能となる。なお、位置マーカー12dの形状は、図2Aに示す形状に限定されない。ケース体12aの外部から磁気センサ12bの収容位置を確認することができればよく、位置マーカー12dは十字形状を有していてもよい。これにより、磁気センサ12bの位置を容易に確認することが可能となる。
角度変換ユニット12cは、磁気センサ12bの検出値を角度信号に変換し、接続ケーブル13を介して計測処理器14に出力する。
【0040】
図2B及び図3に示すように、計測処理器14は、圧力計20の本体部21の背面側に固定され、接続ケーブル13を介して角度検知器12と電気的に接続している。計測処理器14は、ケース体14aを有し、ケース体14aの内部に空中線14bと、後述する計測ユニット141と、無線通信ユニット142と、電源ユニット143と、を収容している(図5参照)。ケース体14aは、略直方体形状を有する樹脂製の筐体である。ケース体14aは、本体部21の背面に接着剤、又は両面テープによって固着することができるが、これに限定されない。
【0041】
空中線14bは、中継器GWとの間で無線通信信号を送受信する。図2A及び図2Bに示すように、空中線14bは、本体部21と前後方向に重ならない位置に配置されている。これにより、空中線14bの送信利得、及び受信利得が低下することを抑制することができ、計測処理器14と中継器GWとの間に安定した無線通信チャンネルを確保することが可能となる。
【0042】
<計測処理器14の構成>
次に、計測処理器14の構成について説明する。図5は、計測処理器14の構成を示している。計測処理器14は、計測ユニット141と、無線通信ユニット142と、電源ユニット143と、を主な構成ユニットとして搭載している。
計測ユニット141は、プロセッサと、揮発性メモリと、不揮発性メモリと、を有している。プロセッサが不揮発性メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、計測ユニット141は、取得部141a、統計値算出部141b、周波数解析部141c、及び状態制御部141dとして機能する。
【0043】
取得部141aは、角度検知器12が出力する角度信号を取得し、圧力信号に変換する。角度信号から圧力信号への変換は、予め設定された所定の関係式によって変換することができる。所定の関係式とは、例えば線形一次式である。また関係式は、線形一次式によって得られる値に対して補正値を加算してもよい。取得部141aは、得られた圧力信号を統計値算出部141bに出力する。
取得部141aは、磁気センサ12bが検出した磁力信号を取得し、磁力信号を圧力信号に変換してもよい。この場合、取得部141aは、ADC(アナログデジタル変化器)と、フィルタ回路と、を有していると好適である。
【0044】
統計値算出部141bは、取得部141aが出力する圧力信号の統計値を算出する。具体的には、統計値算出部141bは、所定の計測期間における圧力信号の最大値と、最小値と、平均値と、を算出する。
図6は、取得部141aが取得した圧力信号と、統計値算出部141bが出力する統計値と、の関係を示している。図6に示すように、統計値算出部141bは、計測対象期間Tmにおける最大値Pmaxと、最小値Pminと、平均値Paveと、を出力する。このように圧力信号の統計値を算出することによって、取得したデータ(圧力信号)が有する特性を失うことなくデータ量を削減することが可能となる。また、統計値として最小値、最大値、及び平均値を算出することによって、監視対象である圧力計20の異常の有無やメンテナンスの必要性を、的確に判断することが可能となる。なお、統計値算出部141bが算出する統計値は、最小値、最大値、及び平均値に限定されない。統計値算出部141bは、最小値、最大値、及び平均値に代えて、又はこれに加えて、中間値、又は標準偏差を取得して出力してもよい。
【0045】
周波数解析部141cは、取得部141aが出力する圧力信号の周波数パラメータを算出する。詳細には、所定の計測期間における平均値を算出し、圧力信号が平均値と交差する交差点(クロスポイント)の出現回数を計数する。図6は、取得部141aが取得した圧力信号と、周波数解析部141cが取得するクロスポイントの関係を示している。図6に示すように、周波数解析部141cは、圧力信号が平均値より小さい値から平均値より大きい値へと変化する点C1と、平均値より大きい値から平均値より小さい値へと変化する点C2と、を取得する。そして周波数解析部141cは、C1及びC2の総出現回数を、圧力信号の周波数パラメータとして出力する。
【0046】
従来から、計測データ(圧力信号等)の周波数特性を得る方式として、FFT(Fast Fourier Transform)が一般的に利用されている。FFT処理を実行することにより、計測データを時間領域から周波数領域に変換し、計測データの周波数スペクトルを周波数パラメータとして取得することができる。
これに対して、本実施形態における周波数解析部141cは、平均値に対するクロスポイントを計数することによって圧力信号の周波数パラメータを取得する。これにより、FFTよりも少ない計算資源(プロセッサの処理能力、又は揮発性メモリの記憶容量)で圧力信号の周波数パラメータを得ることが可能となり、計測処理器14の小型化、及び消費電力の抑制が可能となる。
【0047】
なお、周波数解析部141cが出力する値は、C1とC2の総出現回数に限定されない。例えば、周波数解析部141cは、総出現回数を2で割った値を出力してもよい。また、周波数解析部141cは、平均値より小さい値から平均値より大きい値へと変化する点C1、又は平均値より大きい値から平均値より小さい値へと変化する点C2のいずれか一方の出現回数のみを取得して出力してもよい。
【0048】
図5に戻って、状態制御部141dは、計測処理器14を、第一の消費電力で動作する通信フェーズと、第一の消費電力より小さい第二の消費電力で動作する休止フェーズと、の間で状態遷移するように制御する。計測処理器14は、通信フェーズにおいて、中継器GWと無線通信を行う。そして計測処理器14は、休止フェーズにおいて、中継器GWと無線通信を行わない。通信フェーズは第一処理状態に相当し、休止フェーズは第二処理状態に相当する。
なお、第一の消費電力、及び第二の消費電力は、一定の値である必要はない。すなわち、第一の消費電力、及び第二の消費電力は、計測処理器14が実行する処理に応じて所定の変動幅を有する電力消費量である。
【0049】
図7は、計測処理器14と中継器GWとの間の通信タイミングと、計測処理器14の状態遷移のタイミングを示している。図7に示すように、計測処理器14は、通信フェーズが到来すると、上述した統計値の取得、及び周波数解析を行い、中継器GWに向けて統計値及び周波数パラメータを送信出力する(Tx)。送信タイミングから所定時間が経過すると、計測処理器14は、中継器GWからACK信号、又は制御信号を受信することができる(Rx)。図6において、受信タイミングが2回示されているが、受信タイミングは1回でもよい。
【0050】
休止フェーズにおいて、計測処理器14は、中継器GWとの間で無線通信を行わない。休止フェーズにおいて、計測処理器14は、無線通信ユニット142に対する電源供給を遮断する。これにより、計測処理器14は、休止フェーズにおいて、通信フェーズよりも低い消費電力で動作することが可能となる。
なお、状態制御部141dを、計測ユニット141とは別体のユニット上に実装し、休止フェーズにおいて計測ユニット141に対する電源供給を遮断することとしてもよい。これにより、休止フェーズにおける消費電力を、さらに抑制することが可能となる。
【0051】
図5に戻って、無線通信ユニット142は、LoRaWAN(登録商標)規格に準拠した通信装置であって、監視装置MNと双方向の無線通信を行うために用いられる無線通信回路である。無線通信ユニット142は、統計値算出部141bが算出した統計値(最小値、最大値、及び平均値)、及び周波数解析部141cが取得した周波数パラメータを、中継器GWを介して監視装置MNに対して送信するが、これに限定されない。例えば、無線通信ユニット142は、電源ユニット143の電源電圧を送信してもよい。
また、無線通信ユニット142は、計測処理器14に対する設定情報を含む制御信号を、中継器GWを介して監視装置MNから受信する。設定情報には、サンプリング数や、図6を参照して上述した計測対象期間Tmを含むことができる。
【0052】
なお、無線通信ユニット142は、LoRaWAN規格に準拠した通信装置であるとして説明したが、これに限定されない。無線通信ユニット142は、SIGFOX(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、又はLTEに準拠した無線装置であってもよい。
【0053】
電源ユニット143は、上述した計測ユニット141及び無線通信ユニット142が必要とする電力を供給する。電源ユニット143は、容量の大きい塩化チオニルリチウム電池を有している。これにより、電池交換に係る作業員の作業負担を軽減することが可能となる。ただし、上述した計測ユニット141及び無線通信ユニット142が必要とする電力を供給することができればよく、例えばアルカリ電池や二酸化マンガンリチウム電池を採用してもよい。また電源ユニット143は、外部から給電することによって充電可能な二次電池を有していてもよい。
【0054】
<指示値取得処理の流れ>
次に、計測処理器14によって実行される指示値取得処理の流れについて説明する。
図8は、上述した通信フェーズにおいて計測ユニット141及び無線通信ユニット142によって実行される指示値取得処理の流れを示している。図8に示すように、最初に、計測ユニット141は角度検知器12が出力する角度信号を取得したか否かを判定する(ステップS10)。角度信号を取得したと判定されなかった場合(ステップS10:No)、計測ユニット141は、角度信号を取得するまで待機する。
一方、角度信号を取得したと判定された場合(ステップS10:Yes)、計測ユニット141は、所定の変換式に基づいて角度信号を圧力信号に変換する(ステップS11)。
【0055】
次に、計測ユニット141は、予め定められた計測期間における圧力信号の最小値と最大値を取得する(ステップS12)。計測期間は、例えば5秒間とすることができるが、これに限定されない。計測期間は、監視装置MNから送信される設定情報によって変更可能であると好適である。
また、計測ユニット141は、計測期間における指示値の平均値を算出する(ステップS13)。
【0056】
続いて、計測ユニット141は、ステップS13で算出した平均値に対する交差回数(クロスポイントの出現回数)をカウントする(ステップS14)。より具体的には、圧力信号が平均値より小さい値から大きい値へと変化する点、及び圧力信号が平均値より大きい値から小さい値へと変化する点を交差点(クロスポイント)として検出し、検出されたクロスポイントを計数する。なお、指示値が平均値より小さい値から大きい値へと変化する点、及び指示値が平均値より大きい値から小さい値へと変化する点のいずれか一方のみを検出してもよい。
【0057】
最後に、無線通信ユニット142は、最小値、最大値、平均値、及び交差回数を含む計測値を、中継器GWを介して監視装置MNに送信して(ステップS15)、指示値取得処理を終了する。なお、無線通信ユニット142は、計測値とともに電源ユニット143が出力する電源電圧を監視装置MNに送信してもよい。プラントの管理者は、監視装置MNにアクセスすることによって、プラントの状態を把握し、メンテナンスの要否を判定することが可能となる。
【0058】
<引き抜き工具30>
次に、圧力計20のメンテナンスを行うために、圧力計20の回転軸23から指針24を引き抜く際に用いられる引き抜き工具30について、図9図10A及び図10Bを参照して説明する。図9は、引き抜き工具30の斜視図を示している。図10Aは、指針24を回転軸23から引き抜く前の状態を示している。図10Bは、指針24を回転軸23から引き抜いた後の状態を示している。図10A及び図10Bにおいて、圧力計20は、プラントの配管から取り外されて横置きされた状態を示している。
【0059】
図9に示すように、引き抜き工具30は、引き抜き方向Pに延びる固定軸31と、固定軸31に対して引き抜き方向Pに変位可能な引き抜き部32と、から主に構成されている。
固定軸31は、長尺形状を有し、先端部31aと、螺合部31bと、操作部31cと、を有している。先端部31aは、固定軸31の一方の端部に位置し、後述するように圧力計20の回転軸23に当接する。先端部31aは、テーパー形状を有しており、先端に向かうとともに細径となる。先端部31aは、後述するように、固定部材25の嵌合孔25aに挿入可能な寸法を有している。
【0060】
螺合部31bは、先端部31aから引き抜き方向Pに延びて、先端部31aと操作部31cを接続している。螺合部31bの外周には、ねじ加工が施されており、後述する引き抜き部32に形成されたねじ孔32dと螺合可能な径寸法を有している。
【0061】
操作部31cは、先端部31aとは反対側の端部に位置している。操作部31cの外周面には、滑り止め効果を得るためのローレット加工が施されている。これにより、操作部31cを操作する際に操作部31cを指で確実に挟持して回転操作することが可能となる。操作部31cを回転操作することによって、固定軸31に対して引き抜き部32を引き抜き方向Pに変位させることができる。
【0062】
引き抜き部32は、リング形状を有し、切欠部32aと、切欠部32aの両側に位置する一対の引き抜き片32bと、一対の腕部32cと、ねじ孔32dと、を有している。切欠部32aは、引き抜き部32の下端部に形成されている。切欠部32aは、図10Bに示すように、指針24の回転軸23に対して固定する固定部材25を嵌入することができる位置及び形状に形成されている。
【0063】
一対の引き抜き片32bは、切欠部32aの左右において、切欠部32aに隣接して設けられている。引き抜き片32bは、図10A及び図10Bに示すように、圧力計20の目盛板22と、指針24との間の隙間に進入可能な厚さ寸法を有し、指針24を回転軸23から引き抜く際に、指針24を下方から上方に向けて押圧する。
【0064】
一対の腕部32cは、一対の引き抜き片32bから左右に広がるように湾曲しながら引き抜き方向Pに延びて、切欠部32aと対向する位置において互いに接続している。腕部32cは、下方から上方に向かうにつれて肉厚となり、最も肉厚となる箇所にねじ孔32dが形成されている。
【0065】
ねじ孔32dは、引き抜き部32の引き抜き方向Pの端部に位置し、引き抜き部32を上下に貫通するように形成されている。ねじ孔32dには、上述した固定軸31が貫通される。ねじ孔32dの内周に形成されたねじ溝によって、引き抜き部32は、固定軸31に対して相対的に回転し、引き抜き方向Pに変位する。
【0066】
<指針24の引き抜き方法>
次に、指針24の引き抜き方法について、図11Aから図11Dを参照して説明する。図11Aから図11Dは、引き抜き工具30を用いて指針24を回転軸23から引き抜く手順を示している。図11Aから図11Dにおいて、圧力計20は、プラントの配管から取り外されて横置きされた状態を示している。
図11Aは、圧力計20の要部を拡大した側面図を示している。図11Aに示すように、圧力計20の目盛板22の中心には、中心孔22aが形成されており、中心孔22aから回転軸23が突出している。指針24は、回転軸23に対して固定部材25を介して固定されて、回転軸23を中心に回転する。固定部材25には、指示値取得装置10の磁石11が固定されている。
【0067】
次に、図11Bは、圧力計20に対して引き抜き工具30が取り付けられた状態を示している。すなわち、引き抜き工具30の切欠部32aに固定部材25を嵌入させるとともに、目盛板22と指針24との間に引き抜き片32bが位置している状態を示している。このとき、回転軸23の軸線方向、すなわち引き抜き方向Pに引き抜き工具30の固定軸31の長手方向が延びている。
【0068】
続いて、図11Cは、操作部31cを回転操作することによって固定軸31が降下させ、先端部31aが回転軸23の上端に当接した状態を示している。詳細に説明すると、図11Bに示した状態から、一方の手で引き抜き部32の腕部32cを固定し、他方の手で操作部31cを回転操作することによって、先端部31aが引き抜き部32に対して下方に変位する。
ここで、磁石11は、リング形状を有しており、中心に貫通孔11bが形成されている。換言すると、磁石11の磁石本体11aには、引き抜き工具30が引き抜き方向Pに貫通する貫通孔11bが形成されている。したがって、固定軸31は、磁石11の貫通孔11b及び固定部材25の嵌合孔25aを貫通して下方に変位し、回転軸23に当接する。固定軸31は、先端部31aが回転軸23の上端に当接すると、これ以上、圧力計20に対して下方に変位することはできない。換言すると、圧力計20に対する固定軸31の引き抜き方向Pの位置が固定される。
【0069】
図11Dは、指針24が回転軸23から引き抜かれた状態を示している。詳細に説明すると、図11Cに示した状態から、さらに操作部31cを回転操作することによって、引き抜き部32が、固定軸31に対して相対的に上方に変位する。このとき、引き抜き片32bは、指針24の下面を、下方から上方に向けて押し上げるように押圧する。これにより、指針24及び固定部材25は回転軸23から引き抜かれる。
以上により、操作部31cを回転操作することによって指針24を回転軸23から容易に引き抜くことが可能となり、作業員の負担が軽減されるとともに、指針24を強引に引き抜くことによる圧力計20の損傷を抑制することが可能となる。
【0070】
本発明の一実施形態に係る指示値取得装置10について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0071】
<変形例1>
上述した実施形態では、角度検知器12は、圧力計20の透明板26に対して、接着剤、又は両面テープによって直接、固着されることとして説明したが、これに限定されない。例えば、角度検知器12は、専用の取付け治具を用いて透明板26に対して固着されてもよい。これにより、角度検知器12を正確に位置合わせされた状態で透明板26に対して固着することが可能となる。
【0072】
図12Aは、圧力計20の外枠27及び透明板26に対してカバー部材40を取り付けた状態を示している。図12Aに示すように、カバー部材40は、中央部41と、周縁部42と、を有している。
【0073】
中央部41は、透明板26の前面の少なくとも一部を被覆するカバー部41aと、カバー部41aを切り欠くことによって形成された第一案内部41bと、第二案内部41cと、を有している。第一案内部41bは、透明板26の外縁から内側に向けて延びている。第二案内部41cは、第一案内部41bと接続し、カバー部材40の略中心に位置している。
【0074】
角度検知器12を透明板26に固着する際には、角度検知器12のケース体12aの被接着面に両面テープを貼着し、ケース体12aの先端が第二案内部41cの切欠きに嵌合するように位置させる。これにより、図12Bに示すように、角度検知器12の先端部が透明板26の中心に位置合わせされる。これにより、結果として磁気センサ12bを磁石11に対して正対する位置に配置することができ、磁石11の磁界を高精度に検知することが可能となる。
【0075】
周縁部42には、外枠27の外縁に嵌合可能な嵌合部42aが形成されている。換言すると、カバー部材40の全周に亘って形成されている嵌合部42aを外枠27の外縁に嵌合することによって、カバー部材40を圧力計20に対して正確に位置合わせした状態で固定することができる。
カバー部材40は、角度検知器12を透明板26に対して固着した後に取り外される。
【0076】
なお、第一案内部41b及び第二案内部41cの形状は、図12A及び図12Bに示す形状に限定されない。ケース体12aに収容された磁気センサ12bを、磁石11に対して正対する位置に容易に位置合わせすることができればよい。
【0077】
<変形例2>
上述した実施形態では、磁石11は、指針24の正面側、すなわち透明板26側に取り付けられることとして説明したが、これに限定されない。図13Aに示すように、磁石11を、指針24の目盛板22側に取り付けてもよい。
このように磁石11を目盛板22側に取り付けた場合であっても、上述した実施形態と同様に、引き抜き工具30を用いることにより、磁石11及び指針24を引き抜くことができる。
【0078】
この場合、回転軸23に対する指針24の取付作業は、図13Bに示すように、金槌HMを用いて固定部材25を打ち込むことによって行うことができる。このとき、指針24の目盛板22側に磁石11が位置するため、指針24を目盛板22に対して略平行な状態を維持したまま、回転軸23に対して嵌合させることが可能となる。そのため、回転軸23に対する指針24の取り付け作業を容易に行うことができるとともに、指針24を回転軸23に対して取り付ける際に回転軸23を損傷させてしまう事態の発生を防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 指示値監視システム
10 指示値取得装置
11 磁石
11a 磁石本体(本体部)
11b 貫通孔
12 角度検知器
12a ケース体
12b 磁気センサ
12c 角度変換ユニット
12d 位置マーカー
13 接続ケーブル
14 計測処理器
14a ケース体
14b 空中線
141 計測ユニット
141a 取得部
141b 統計値算出部
141c 周波数解析部
141d 状態制御部
142 無線通信ユニット
143 電源ユニット
20 圧力計
21 本体部
22 目盛板
22a 中心孔
23 回転軸
24 指針
25 固定部材
25a 嵌合孔
26 透明板
27 外枠
30 引き抜き工具
31 固定軸
31a 先端部
31b 螺合部
31c 操作部
32 引き抜き部
32a 切欠部
32b 引き抜き片
32c 腕部
32d ねじ孔
40 カバー部材
41 中央部
41a カバー部
41b 第一案内部
41c 第二案内部
42 周縁部
42a 嵌合部
111 磁石
112 磁気センサ
120 アナログメータ
122 目盛板
123 回転軸
124 指針
125a 貫通孔
130 引き抜き工具
131 固定軸
131c 操作部
132 引き抜き部
132b 引き抜き片
GW 中継器
NW 通信回線
MN 監視装置
HM 金槌
P 引き抜き方向
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B