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特開2023-166259蒸着マスク装置の製造方法、蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166259
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】蒸着マスク装置の製造方法、蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20231114BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231114BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077184
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英介
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG33
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA62
4K029BB03
4K029BC07
4K029BD01
4K029CA01
4K029DB06
4K029HA02
4K029HA03
4K029HA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蒸着工程において、基板に対するマスクの貫通孔の位置精度が低くなることを抑制する、蒸着マスク装置、その製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】蒸着マスク装置の製造方法は、第1方向D1に沿って見た場合に、開口がマスクステージ60のマスクステージ面61に重なる位置に、フレーム41を配置する工程と、前記第1方向に直交する第2方向D2においてマスク50に張力を加える工程と、前記マスクに張力が加えられた状態で、前記マスクを第1フレーム面41aに固定する工程とを備え、前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側S1とは反対側の第2側S2に位置し、前記マスクに張力を加える工程において、前記マスクは、前記マスクステージ面及び前記第1フレーム面に接触する。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着マスク装置の製造方法であって、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における第1側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記製造方法は、
前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口がマスクステージのマスクステージ面に重なる位置に、前記フレームを配置する工程と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記マスクに張力を加える工程と、
前記マスクに張力が加えられた状態で、前記マスクを前記第1フレーム面に固定する工程とを備え、
前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側とは反対側の第2側に位置し、
前記マスクに張力を加える工程において、前記マスクは、前記マスクステージ面及び前記第1フレーム面に接触する、蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項2】
前記マスクステージ面と前記第1フレーム面との間の前記第1方向に沿った距離は、0.5mm以上2.0mm以下である、請求項1に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項3】
前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、
前記マスクステージ面は、前記第1方向に沿って見た場合に、前記第1領域の全域に重なる、請求項1に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項4】
前記マスクを前記第1フレーム面に固定する工程の前に、前記マスクの位置を調整する工程を更に備える、請求項1に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項5】
前記マスクの厚みは、50μm以下である、請求項1に記載の蒸着マスク装置の製造方法。
【請求項6】
蒸着マスク装置の製造装置であって、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における第1側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記蒸着マスク装置の製造装置は、
前記第1方向に直交する第2方向において前記マスクに張力を加えるクランプと、
前記フレームを支持するフレームステージと、
前記第1方向に沿って見た場合に、前記フレームステージに支持された前記フレームの前記開口が重なるように位置するマスクステージ面を有するマスクステージと、
前記マスクを前記フレームに固定する固定機構とを備え、
前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側とは反対側の第2側に位置する、蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項7】
前記マスクステージ面と前記第1フレーム面との間の前記第1方向に沿った距離は、0.5mm以上2.0mm以下である、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項8】
前記マスクステージは、前記第1方向に沿って移動可能である、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項9】
前記フレームステージは、前記第1方向に沿って移動可能である、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項10】
前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、
前記マスクステージ面は、前記第1方向に沿って見た場合に、前記第1領域の全域に重なる、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項11】
前記マスクの位置を調整する調整機構を更に備える、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項12】
前記マスクの厚みは、50μm以下である、請求項6に記載の蒸着マスク装置の製造装置。
【請求項13】
蒸着マスク装置であって、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着マスク装置。
【請求項14】
前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、
前記第1領域は、前記マスクの撓み量が0.3mm以上4.2mm以下である領域に位置する、請求項13に記載の蒸着マスク装置。
【請求項15】
前記マスクの厚みは、50μm以下である、請求項13に記載の蒸着マスク装置。
【請求項16】
基板に蒸着材料を蒸着させる、蒸着材料の蒸着方法であって、
マスクを備える蒸着マスク装置を準備する工程と、
前記基板を準備する工程と、
前記基板を前記蒸着マスク装置の前記マスク上に設置する工程と、
前記マスク上に設置された前記基板に前記蒸着材料を蒸着させる工程と、を備え、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定された前記マスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着方法。
【請求項17】
蒸着材料を蒸着させる蒸着装置であって、
蒸着材料が収容された蒸着源と、
ヒータと、
蒸着マスク装置とを備え、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、蒸着マスク装置の製造方法、蒸着マスク装置の製造装置及び蒸着マスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやタブレットPC等の持ち運び可能なデバイスで用いられる表示装置の分野において、有機EL表示装置が注目されている。有機EL表示装置などの有機半導体デバイスの製造方法及び製造装置として、所望のパターンで配列された貫通孔が形成されたマスクを用い、所望のパターンで画素を形成する方法及び装置が知られている。例えば、まず、有機EL表示装置用の基板に、フレームに固定された状態のマスクを組み合わせる。続いて、有機材料を含む蒸着材料を、マスクの貫通孔を介して基板に付着させる。このような蒸着工程を実施することにより、マスクの貫通孔のパターンに対応したパターンで、蒸着材料を含む蒸着層を有する画素を基板上に形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5382259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蒸着材料を基板に付着させる蒸着工程においては、基板上の所望の位置に画素を形成することが求められる。このため、蒸着工程時において、基板に対するマスクの貫通孔の位置精度が低くなることを抑制することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態による、蒸着マスク装置の製造方法において、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における第1側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記製造方法は、
前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口がマスクステージのマスクステージ面に重なる位置に、前記フレームを配置する工程と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記マスクに張力を加える工程と、
前記マスクに張力が加えられた状態で、前記マスクを前記第1フレーム面に固定する工程とを備え、
前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側とは反対側の第2側に位置し、
前記マスクに張力を加える工程において、前記マスクは、前記マスクステージ面及び前記第1フレーム面に接触する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、蒸着工程時において、基板に対するマスクの貫通孔の位置精度が低くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、有機デバイスの一例を示す断面図である。
図2図2は、図1の有機デバイスを拡大して示す断面図である。
図3図3は、蒸着装置の一例を示す断面図である。
図4図4は、蒸着マスク装置の一例を示す平面図である。
図5図5は、蒸着マスク装置のマスクの中間部の一例を示す平面図である。
図6図6は、マスクの貫通孔の断面形状の一例を示す断面図である。
図7図7は、図4の蒸着マスク装置を第2方向に沿って切断した場合の一例を示す断面図である。
図8図8は、図7に示す蒸着マスク装置を拡大して示す断面図(図7のVIII部に対応する断面図)である。
図9図9は、蒸着マスク装置の製造装置の一例を示す平面図である。
図10図10は、図9の蒸着マスク装置の製造装置を第2方向に沿って切断した場合の一例を示す断面図である。
図11図11は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図であって、金属板上にレジストパターンを形成する工程を示す図である。
図12図12は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図であって、第1面エッチング工程を示す図である。
図13図13は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図であって、第2面エッチング工程を示す図である。
図14図14は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図であって、金属板から樹脂及びレジストパターンを除去する工程を示す図である。
図15図15は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図16図16は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図17図17は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図18図18は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図19図19は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図20図20は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図21図21は、蒸着マスク装置を製造する工程を示す図である。
図22図22は、基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。
図23図23は、基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。
図24図24は、基板に蒸着材料を蒸着させる工程を示す図である。
図25図25は、蒸着マスク装置の変形例を示す断面図である。
図26図26は、蒸着マスク装置の変形例を示す断面図である。
図27図27は、蒸着マスク装置の変形例を示す断面図である。
図28図28は、蒸着マスク装置の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、「基板」や「基材」や「板」や「シート」や「フィルム」などのある構成の基礎となる物質を意味する用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。
【0009】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0010】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に」や「下に」、「上側に」や「下側に」、又は「上方に」や「下方に」とする場合、ある構成が他の構成に直接的に接している場合を含む。さらに、ある構成と他の構成との間に別の構成が含まれている場合、つまり間接的に接している場合も含む。また、特別な説明が無い限りは、「上」や「上側」や「上方」、又は、「下」や「下側」や「下方」という語句は、上下方向が逆転してもよい。
【0011】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上現実の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0012】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、本明細書の一実施形態は、矛盾の生じない範囲で、その他の実施形態と組み合わせられ得る。また、その他の実施形態同士も、矛盾の生じない範囲で組み合わせられ得る。
【0013】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、製造方法などの方法に関して複数の工程を開示する場合に、開示されている工程の間に、開示されていないその他の工程が実施されてもよい。また、開示されている工程の順序は、矛盾の生じない範囲で任意である。
【0014】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、「~」という記号によって表現される数値範囲は、「~」という符号の前後に置かれた数値を含んでいる。例えば、「34~38質量%」という表現によって画定される数値範囲は、「34質量%以上且つ38質量%以下」という表現によって画定される数値範囲と同一である。
【0015】
本明細書及び本図面において、特別な説明が無い限りは、本明細書の一実施形態において、有機EL表示装置を製造する際に有機材料を所望のパターンで基板上にパターニングするために用いられる蒸着マスクやその製造方法に関した例をあげて説明する。ただし、このような適用に限定されることなく、種々の用途に用いられる蒸着マスクに対し、本実施形態を適用できる。
【0016】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態のみに限定して解釈されるものではない。
【0017】
本開示の第1の態様は、蒸着マスク装置の製造方法であって、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における第1側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記製造方法は、
前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口がマスクステージのマスクステージ面に重なる位置に、前記フレームを配置する工程と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記マスクに張力を加える工程と、
前記マスクに張力が加えられた状態で、前記マスクを前記第1フレーム面に固定する工程とを備え、
前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側とは反対側の第2側に位置し、
前記マスクに張力を加える工程において、前記マスクは、前記マスクステージ面及び前記第1フレーム面に接触する、蒸着マスク装置の製造方法である。
【0018】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による蒸着マスク装置の製造方法において、前記マスクステージ面と前記第1フレーム面との間の前記第1方向に沿った距離は、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。
【0019】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造方法において、前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、前記マスクステージ面は、前記第1方向に沿って見た場合に、前記第1領域の全域に重なっていてもよい。
【0020】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造方法において、蒸着マスク装置の製造方法が、前記マスクを前記第1フレーム面に固定する工程の前に、前記マスクの位置を調整する工程を更に備えていてもよい。
【0021】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様から上述した第4の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造方法において、前記マスクの厚みは、50μm以下であってもよい。
【0022】
本開示の第6の態様は、蒸着マスク装置の製造装置であって、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における第1側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記蒸着マスク装置の製造装置は、
前記第1方向に直交する第2方向において前記マスクに張力を加えるクランプと、
前記フレームを支持するフレームステージと、
前記第1方向に沿って見た場合に、前記フレームステージに支持された前記フレームの前記開口が重なるように位置するマスクステージ面を有するマスクステージと、
前記マスクを前記フレームに固定する固定機構とを備え、
前記マスクステージ面は、前記第1フレーム面よりも、前記第1側とは反対側の第2側に位置する、蒸着マスク装置の製造装置である。
【0023】
本開示の第7の態様は、上述した第6の態様による蒸着マスク装置の製造装置において、前記マスクステージ面と前記第1フレーム面との間の前記第1方向に沿った距離は、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。
【0024】
本開示の第8の態様は、上述した第6の態様又は上述した第7の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造装置において、前記マスクステージは、前記第1方向に沿って移動可能であってもよい。
【0025】
本開示の第9の態様は、上述した第6の態様から上述した第8の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造装置において、前記フレームステージは、前記第1方向に沿って移動可能であってもよい。
【0026】
本開示の第10の態様は、上述した第6の態様から上述した第9の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造装置において、前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、前記マスクステージ面は、前記第1方向に沿って見た場合に、前記第1領域の全域に重なっていてもよい。
【0027】
本開示の第11の態様は、上述した第6の態様から上述した第10の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造装置において、蒸着マスク装置の製造装置が、前記マスクの位置を調整する調整機構を更に備えていてもよい。
【0028】
本開示の第12の態様は、上述した第6の態様から上述した第11の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置の製造装置において、前記マスクの厚みは、50μm以下であってもよい。
【0029】
本開示の第13の態様は、蒸着マスク装置であって、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着マスク装置である。
【0030】
本開示の第14の態様は、上述した第13の態様による蒸着マスク装置において、前記マスクは、前記貫通孔を含む第1領域と、前記第1領域の周囲に位置する第2領域とを含み、前記第1領域は、前記マスクの撓み量が0.3mm以上4.2mm以下である領域に位置していてもよい。
【0031】
本開示の第15の態様は、上述した第13の態様又は上述した第14の態様のそれぞれによる蒸着マスク装置において、前記マスクの厚みは、50μm以下であってもよい。
【0032】
本開示の第16の態様は、基板に蒸着材料を蒸着させる、蒸着材料の蒸着方法であって、
マスクを備える蒸着マスク装置を準備する工程と、
前記基板を準備する工程と、
前記基板を前記蒸着マスク装置の前記マスク上に設置する工程と、
前記マスク上に設置された前記基板に前記蒸着材料を蒸着させる工程と、を備え、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定された前記マスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着方法である。
【0033】
本開示の第17の態様は、蒸着材料を蒸着させる蒸着装置であって、
蒸着材料が収容された蒸着源と、
ヒータと、
蒸着マスク装置とを備え、
前記蒸着マスク装置は、
第1フレーム面と、前記第1フレーム面よりも第1方向における一方の側に位置する第2フレーム面とを有し、前記第1フレーム面から前記第2フレーム面に至る開口を含むフレームと、
貫通孔を含み、前記第1フレーム面に固定されたマスクとを備え、
前記マスクは、前記第1方向に沿って見た場合に、前記開口に重なる領域において、前記第1方向に沿って前記一方の側に撓み、
前記マスクの撓み量の最大値は、1.1mm以上15.3mm以下である、蒸着装置である。
【0034】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態のみに限定して解釈されるものではない。
【0035】
図1は、有機デバイス100の一例を示す断面図である。この有機デバイス100の後述する蒸着層130は、一実施の形態による蒸着マスク装置40(図3参照)を備える後述する蒸着装置10を用いて形成されたものである。
【0036】
有機デバイス100は、第1面111及び第1面111の反対側に位置する第2面112を含む基板110と、基板110の第1面111の面内方向に沿って並ぶ複数の素子105と、を備えていてもよい。図示はしないが、素子105は、図1の奥行方向にも並んでいてもよい。例えば、素子105は、第1面111の面内方向における2つの配列方向において周期的に並んでいてもよい。素子105は、第1電極層120と、第1電極層120上に位置する蒸着層130と、蒸着層130上に位置する第2電極層140と、を含んでいてもよい。
【0037】
図2は、図1の有機デバイス100を拡大して示す断面図である。蒸着層130は、第1電極層120上に位置する第1蒸着層131と、第1電極層120上に位置する第2蒸着層132と、を含んでいてもよい。第1蒸着層131と第2蒸着層132とは、平面視において、素子105の配列方向において隣接していてもよい。例えば、平面視において、第1蒸着層131に重なる第1電極層120と、第2蒸着層132に重なる第1電極層120とが、素子105の配列方向において隣接していてもよい。
【0038】
図示はしないが、蒸着層130は、素子105の配列方向において第1蒸着層131又は第2蒸着層132と隣接する第3蒸着層などのその他の蒸着層を含んでいてもよい。
【0039】
図2に示すように、有機デバイス100は、隣り合う2つの第1電極層120の間に位置する絶縁層160を備えていてもよい。絶縁層160は、例えばポリイミドを含んでいる。絶縁層160は、第1電極層120の端部に重なっていてもよい。
【0040】
基板110は、絶縁性を有する板状の部材であってもよい。基板110は、光を透過させる透明性を有していてもよい。基板110は、ガラスを含んでいてもよい。
【0041】
基板110の厚みは、例えば、0.1mm以上でもよく、0.3mm以上でもよく、0.5mm以上でもよい。基板110の厚みは、例えば、0.6mm以下でもよく、1.0mm以下でもよく、2.0mm以下でもよい。基板110の厚みの範囲は、0.1mm、0.3mm及び0.5mmからなる第1グループ、及び/又は、0.6mm、1.0mm及び2.0mmからなる第2グループによって定められてもよい。基板110の厚みの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。基板110の厚みの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。基板110の厚みの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.1mm以上2.0mm以下でもよく、0.1mm以上1.0mm以下でもよく、0.1mm以上0.6mm以下でもよく、0.1mm以上0.5mm以下でもよく、0.1mm以上0.3mm以下でもよく、0.3mm以上2.0mm以下でもよく、0.3mm以上1.0mm以下でもよく、0.3mm以上0.6mm以下でもよく、0.3mm以上0.5mm以下でもよく、0.5mm以上2.0mm以下でもよく、0.5mm以上1.0mm以下でもよく、0.5mm以上0.6mm以下でもよく、0.6mm以上2.0mm以下でもよく、0.6mm以上1.0mm以下でもよく、1.0mm以上2.0mm以下でもよい。
【0042】
第1電極層120は、導電性を有する材料を含んでいてもよい。例えば、第1電極層120は、金属、導電性を有する金属酸化物や、その他の無機材料などを含んでいてもよい。第1電極層120は、インジウム・スズ酸化物などの、透明性及び導電性を有する金属酸化物を含んでいてもよい。
【0043】
第1蒸着層131、第2蒸着層132及び第3蒸着層は、有機材料を含む有機層であってもよい。有機デバイス100が有機EL表示装置である場合、第1蒸着層131、第2蒸着層132及び第3蒸着層はそれぞれ、発光層であってもよい。例えば、第1蒸着層131、第2蒸着層132及び第3蒸着層はそれぞれ、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層であってもよい。
【0044】
第1蒸着層131、第2蒸着層132及び第3蒸着層はそれぞれ、対応するマスクが設置されている蒸着装置において、マスクの貫通孔を介して有機材料を基板110に蒸着させることによって形成されてもよい。
【0045】
図示はしないが、素子105は、第1電極層120と蒸着層130との間、又は蒸着層130と第2電極層140との間に位置する、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層などを含んでいてもよい。
【0046】
第2電極層140は、金属などの、導電性を有する材料を含んでいてもよい。第2電極層140を構成する材料の例としては、白金、金、銀、銅、鉄、錫、クロム、アルミニウム、インジウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロム、炭素等及びこれらの合金を挙げることができる。
【0047】
図2に示すように、第2電極層140は、隣り合う2つの蒸着層130に跨るように広がっていてもよい。図示はしないが、第2電極層140は、隣り合う2つの蒸着層130の上に位置する第2電極層140の間に隙間があるように形成されていてもよい。
【0048】
次に、基板110の第1面111に蒸着層130を形成するための蒸着装置10について説明する。図3は、蒸着装置10の一例を示す縦断面図である。
【0049】
図3に示すように、蒸着装置10は、その内部に、蒸着源6と、ヒータ8と、蒸着マスク装置40とを備えていてもよい。また、図示はしないが、蒸着装置10は、蒸着装置10の内部を真空雰囲気にするための排気手段を更に備えていてもよい。蒸着源6は、例えばるつぼであり、有機発光材料などの蒸着材料7を収容する。ヒータ8は、蒸着源6を加熱して、真空雰囲気の下で蒸着材料7を蒸発させる。蒸着マスク装置40は、るつぼ6と対向するよう配置されている。
【0050】
図3に示すように、蒸着マスク装置40は、フレーム41と、フレーム41に固定された少なくとも1つのマスク50とを備えていてもよい。フレーム41は、マスク50が固定されている第1フレーム面41aと、第1フレーム面41aの反対側に位置する第2フレーム面41bを有していてもよい。第2フレーム面41bは、第1フレーム面41aよりも、フレーム41の厚み方向である第1方向D1における一方の側(すなわち、第1側S1)に位置していてもよい。また、フレーム41は、第1フレーム面41aから第2フレーム面41bに至る第1開口(すなわち、開口)42を含んでいてもよい。
【0051】
マスク50は、平面視において第1開口42を横切るようにフレーム41の第1フレーム面41aに固定されていてもよい。また、マスク50は、第1方向D1における第1側S1とは反対側の第2側に向かって凸となるように変形した状態で、基板110に接触していてもよい。
【0052】
1つの蒸着装置10の蒸着マスク装置40のマスク50は、1種類の蒸着層130に、例えば第1蒸着層131に対応していてもよい。この場合、有機デバイス100の製造装置は、複数の蒸着装置10を備えていてもよい。例えば、有機デバイス100の製造装置は、第1蒸着層131に対応する蒸着装置10と、第2蒸着層132に対応する蒸着装置10と、第3蒸着層に対応する蒸着装置10と、を備えていてもよい。基板110を複数の蒸着装置10に順に投入して蒸着工程を実施することにより、基板110に第1蒸着層131、第2蒸着層132及び第3蒸着層を形成できる。
【0053】
蒸着マスク装置40は、図3に示すように、蒸着材料7を付着させる対象物である基板110にマスク50が対面するよう、蒸着装置10内に配置されていてもよい。マスク50は、蒸着源6から飛来した蒸着材料7を通過させる複数の貫通孔56を含んでいてもよい。以下の説明において、マスク50の面のうち、基板110の側に位置する面を第1面55aと称し、第1面55aの反対側に位置する面を第2面55bと称する。
【0054】
蒸着装置10は、図3に示すように、基板110を保持する基板ホルダ2を備えていてもよい。この基板ホルダ2は、静電気力(クーロン力)を利用して基板110を保持する静電チャックであってもよい。基板ホルダ2が静電チャックであることにより、基板110のサイズが大きくなった場合であっても、基板110が第1方向D1における第1側S1に撓んでしまうことを抑制できる。これにより、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、基板110の撓みに起因して貫通孔56の現実の位置と設計位置との差が大きくなってしまうことを抑制できる。さらに、基板ホルダ2が静電チャックであることにより、基板110のハンドリング性を向上させることができ、基板110のサイズが大きくなった場合であっても、基板110を容易に取り扱うことができる。なお、基板110のサイズは、いわゆるG6H(925mm×1500mm)、いわゆるG8.5Q(1100mm×1250mm)、いわゆるG8.5H(1250mm×2200mm)又はいわゆるG8.5F(2200mm×2500mm)であってもよい。
【0055】
基板ホルダ2は、基板110の厚み方向である第1方向D1に沿って移動可能であってもよい。また、基板ホルダ2は、マスク50の長手方向である第2方向D2(図4参照)、及びマスク50の幅方向である第3方向D3(図4参照)に沿って移動可能であってもよい。また、基板ホルダ2は、基板110の傾きを制御するよう構成されていてもよい。基板ホルダ2の平面形状は、基板110の平面形状よりも大きくなっていてもよい。これにより、基板110の全域を基板ホルダ2に密着させることができ、基板110のサイズが大きくなった場合であっても、基板110に撓みが発生することを抑制できる。なお、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3は、互いに直交していてもよい。
【0056】
蒸着装置10は、図3に示すように、蒸着マスク装置40を保持するマスクホルダ3を備えていてもよい。マスクホルダ3は、マスク50の厚み方向である第1方向D1に沿って移動可能であってもよい。また、マスクホルダ3は、第2方向D2及び第3方向D3に沿って移動可能であってもよい。例えば、マスクホルダ3は、フレーム41の外縁に取り付けられた複数のチャックを含み、各チャックは、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3に沿って独立して移動可能であってもよい。
【0057】
基板ホルダ2又はマスクホルダ3の少なくともいずれか一方を移動させることにより、基板110に対する蒸着マスク装置40のマスク50の位置を調整できる。
【0058】
蒸着装置10は、図3に示すように、基板ホルダ2よりも第1方向D1における第2側S2に配置されている磁石5を備えていてもよい。磁石5は、磁力によって蒸着マスク装置40のマスク50を基板110側に引き寄せることができる。これにより、マスク50と基板110との間の隙間をなくすことができる。このため、蒸着工程においてシャドーが発生することを抑制でき、蒸着層130の寸法精度や位置精度を高めることができる。本願において、シャドーとは、マスク50と基板110との間の隙間に蒸着材料7が入り込み、これによって蒸着層130の厚みが不均一になる現象のことである。
【0059】
次に、蒸着マスク装置40について詳細に説明する。図4は、蒸着マスク装置40をマスク50の第1面55a側から見た場合を示す平面図である。
【0060】
図4に示すように、蒸着マスク装置40のフレーム41は、第2方向D2に延びる一対の第1辺領域411と、第3方向D3に延びる一対の第2辺領域412と、を含む矩形の輪郭を有していてもよい。マスク50が固定されている第2辺領域412が、第1辺領域411よりも長くてもよい。フレーム41の第1開口42は、一対の第1辺領域411及び一対の第2辺領域412によって囲まれていてもよい。また、フレーム41には、フレーム41に対するマスク50の位置合わせを実施するためのアライメントマーク45が設けられていてもよい。このアライメントマーク45は、フレーム41のうち、第1方向D1に沿って見た場合にマスク50に重ならない位置に設けられていてもよい。図示された例では、アライメントマーク45は、フレーム41の4隅にそれぞれ1つずつ設けられている。これにより、マスク50の位置決めを行う際に、マスク50によってアライメントマーク45が隠れてしまうことを抑制でき、マスク50の位置合わせを容易に行うことができる。
【0061】
また、図4に示すように、蒸着マスク装置40は、複数のマスク50を備えていてもよい。本実施の形態において、各マスク50の形状は、第2方向D2に延びる矩形であってもよい。蒸着マスク装置40において、複数のマスク50は、マスク50の長手方向である第2方向D2に交差する方向に並んでいてもよい。すなわち、複数のマスク50は、マスク50の長手方向に直交するマスク50の幅方向である第3方向D3に並んでいてもよい。
【0062】
図4において、符号Lは、第2方向D2におけるマスク50の寸法を、すなわちマスク50の長さを表す。寸法Lは、例えば、150mm以上でもよく、400mm以上でもよく、800mm以上でもよい。寸法Lは、例えば、1000mm以下でもよく、1500mm以下でもよく、2000mm以下でもよい。寸法Lの範囲は、150mm、400mm及び800mmからなる第1グループ、及び/又は、1000mm、1500mm及び2000mmからなる第2グループによって定められてもよい。寸法Lの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。寸法Lの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。寸法Lの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、150mm以上2000mm以下でもよく、150mm以上1500mm以下でもよく、150mm以上1000mm以下でもよく、150mm以上800mm以下でもよく、150mm以上400mm以下でもよく、400mm以上2000mm以下でもよく、400mm以上1500mm以下でもよく、400mm以上1000mm以下でもよく、400mm以上800mm以下でもよく、800mm以上2000mm以下でもよく、800mm以上1500mm以下でもよく、800mm以上1000mm以下でもよく、1000mm以上2000mm以下でもよく、1000mm以上1500mm以下でもよく、1500mm以上2000mm以下でもよい。
【0063】
図4において、符号Wは、第3方向D3におけるマスク50の寸法を、すなわちマスク50の幅を表す。寸法Wは、例えば、50mm以上でもよく、100mm以上でもよく、200mm以上でもよい。寸法Wは、例えば、250mm以下でもよく、300mm以下でもよく、400mm以下でもよい。寸法Wの範囲は、50mm、100mm及び200mmからなる第1グループ、及び/又は、250mm、300mm及び400mmからなる第2グループによって定められてもよい。寸法Wの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。寸法Wの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。寸法Wの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、50mm以上400mm以下でもよく、50mm以上300mm以下でもよく、50mm以上250mm以下でもよく、50mm以上200mm以下でもよく、50mm以上100mm以下でもよく、100mm以上400mm以下でもよく、100mm以上300mm以下でもよく、100mm以上250mm以下でもよく、100mm以上200mm以下でもよく、200mm以上400mm以下でもよく、200mm以上300mm以下でもよく、200mm以上250mm以下でもよく、250mm以上400mm以下でもよく、250mm以上300mm以下でもよく、300mm以上400mm以下でもよい。
【0064】
図4に示すように、マスク50は、フレーム41に重なっている一対の端部51と、端部51の間に位置する中間部52とを有していてもよい。このうち端部51は、フレーム41に固定される部分である。端部51は、溶接などによってフレーム41に固定されていていてもよい。
【0065】
中間部52は、少なくとも1つの有効領域(すなわち、第1領域)53と、有効領域53の周囲に位置する周囲領域(すなわち、第2領域)54とを有していてもよい。図4に示す例において、中間部52は、第2方向D2に沿って所定の間隔を空けて配列された複数の有効領域53を含んでいる。また、図4に示す例において、周囲領域54は、複数の有効領域53を囲んでいる。周囲領域54は、有効領域53を支持するための領域であってもよく、基板110へ蒸着されることを意図された蒸着材料が通過する領域ではなくてもよい。一方、有効領域53は、マスク50のうち、基板110の表示領域に対面する領域であってもよい。
【0066】
有効領域53は、平面視において矩形の輪郭を有してもよい。なお、図示はしないが、各有効領域53は、有機EL表示装置の表示領域の形状に応じて、様々な形状の輪郭を有していてもよい。例えば各有効領域53は、円形又は楕円形の輪郭を有していてもよく、六角形又は八角形といった多角形の輪郭を有していてもよい。また、各々の有効領域53は、互いに異なる形状の輪郭を有していてもよく、例えば円形、楕円形、又は六角形若しくは八角形といった多角形の輪郭をそれぞれが有していてもよい。
【0067】
また、マスク50には、フレーム41に対するマスク50の位置合わせを実施する際の基準となる基準領域58が設けられていてもよい。基準領域58は、有効領域53内に位置していてもよく、周囲領域54内に位置していてもよい。また、基準領域58は、例えば、有効領域53内に位置するとともに、貫通孔56を含むように設けられていてもよい。例えば、1つの基準領域58が、1つ又は複数の貫通孔56を含んでいてもよい。
【0068】
図5は、マスク50の中間部52の一例を示す平面図である。中間部52の有効領域53は、複数の貫通孔56を含んでいてもよい。複数の貫通孔56は、有効領域53において、第2方向D2及び第3方向D3に沿ってそれぞれ所定のピッチで規則的に配列されていてもよい。そして、中間部52の各貫通孔56を透過して基板110に付着した蒸着材料が、基板110上の蒸着層130を構成してもよい。
【0069】
マスク50を用いて有機EL表示装置などの有機デバイスを作製する場合、1つの有効領域53は、1つの有機EL表示装置の表示領域に対応してもよい。このため、図4に示す蒸着マスク装置40によれば、有機EL表示装置の多面付蒸着が可能である。なお、1つの有効領域53が複数の表示領域に対応する場合もある。また、図示はしないが、マスク50の幅方向においても所定の間隔を空けて複数の有効領域53が配列されていてもよい。
【0070】
図6は、マスク50の一例を示す断面図である。図6に示すように、複数の貫通孔56は、マスク50の第1面55aから、第2面55bへ貫通している。図示された例では、後に詳述するように、第1方向D1における第1側S1となる金属板55の第1面550aに第1凹部561がエッチングによって形成され、第1方向D1における第2側S2となる金属板55の第2面550bに第2凹部562が形成される。第1凹部561は、第2凹部562に接続され、これによって第2凹部562と第1凹部561とが互いに通じ合うように形成される。貫通孔56は、第2凹部562と、第2凹部562に接続された第1凹部561とによって構成されている。
【0071】
隣り合う二つの第1凹部561は、互いから離間していてもよい。同様に、隣り合う二つの第2凹部562が、互いから離間していてもよい。すなわち、隣り合う二つの第2凹部562の間に金属板55の第2面550bが残存していてもよい。以下の説明において、金属板55の第2面550bの有効領域53のうちエッチングされずに残っている部分のことを、トップ部565とも称する。このようなトップ部565が残るようにマスク50を作製することにより、マスク50に十分な強度を持たせることができる。これにより、例えば搬送中などにマスク50が破損してしまうことを抑制できる。なおトップ部565の幅βが大きすぎると、蒸着工程においてシャドーが発生し、これによって蒸着材料7の利用効率が低下することがある。従って、トップ部565の幅βが過剰に大きくならないようにマスク50が作製されることが好ましい。
【0072】
図3に示すようにして蒸着マスク装置40が蒸着装置10に収容された場合、図6に二点鎖線で示すように、マスク50の第1面55aが、基板110に対面し、マスク50の第2面55bが、蒸着材料7を保持したるつぼ6側に位置する。したがって、蒸着材料7は、次第に開口面積が小さくなっていく第2凹部562を通過して基板110に付着する。
【0073】
図6に示すように、蒸着材料7は、るつぼ6から基板110に向けてマスク50の第1面55aの法線方向である第1方向D1に沿って移動するだけでなく、当該第1方向D1に対して大きく傾斜した方向に移動することもある。なお、図6において、蒸着材料7の移動方向の一例を、第2面55b側から第1面55aへ向かう矢印Aで示している。このとき、マスク50の厚みが大きいと、斜めに移動する蒸着材料7が、トップ部565、第2凹部562の壁面562a、又は第1凹部561の壁面561aに引っ掛かり易くなり、この結果、貫通孔56を通過できない蒸着材料7の比率が多くなる。従って、蒸着材料7の利用効率を高めるためには、マスク50の厚みt1を小さくし、これによって、第2凹部562の壁面562aや第1凹部561の壁面561aの高さを小さくすることが好ましいと考えられる。すなわち、マスク50を構成するための金属板55として、マスク50の強度を確保できる範囲内で可能な限り厚みt1の小さな金属板55を用いることが好ましいと言える。このため、マスク50の厚みt1は、50μm以下であることが好ましい。マスク50の厚みt1を50μm以下にすることにより、蒸着材料7のうち、貫通孔56を通過する前に貫通孔56の壁面562aに引っ掛かる蒸着材料7の比率を小さくできる。これにより、蒸着材料7の利用効率を高めることができる。
【0074】
一方、マスク50の厚みt1が小さくなり過ぎると、マスク50の強度が低下し、マスク50に損傷や変形が生じやすくなる。このため、マスク50の厚みt1は、8μm以上であることが好ましい。マスク50の厚みt1を8μm以上にすることにより、マスク50の強度を確保し、マスク50に損傷や変形が生じることを抑制できる。ここで、厚みt1は、周囲領域54の厚み、すなわちマスク50のうち第1凹部561及び第2凹部562が形成されていない部分の厚みである。従って厚みt1は、金属板55の厚みであると言うこともできる。
【0075】
金属板55の厚み(すなわち、マスク50の厚み)t1は、例えば、8μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、13μm以上であってもよく、15μm以上であってもよい。また、金属板55の厚みt1は、例えば、20μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。金属板55の厚みt1の範囲は、8μm、10μm、13μm及び15μmからなる第1グループ、及び/又は、20μm、30μm、40μm及び50μmからなる第2グループによって定められてもよい。金属板55の厚みt1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。金属板55の厚みt1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。金属板55の厚みt1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、8μm以上50μm以下であってもよく、8μm以上40μm以下であってもよく、8μm以上30μm以下であってもよく、8μm以上20μm以下であってもよく、8μm以上15μm以下であってもよく、8μm以上13μm以下であってもよく、8μm以上10μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であってもよく、10μm以上40μm以下であってもよく、10μm以上30μm以下であってもよく、10μm以上20μm以下であってもよく、10μm以上15μm以下であってもよく、10μm以上13μm以下であってもよく、13μm以上50μm以下であってもよく、13μm以上40μm以下であってもよく、13μm以上30μm以下であってもよく、13μm以上20μm以下であってもよく、13μm以上15μm以下であってもよく、15μm以上50μm以下であってもよく、15μm以上40μm以下であってもよく、15μm以上30μm以下であってもよく、15μm以上20μm以下であってもよく、20μm以上50μm以下であってもよく、20μm以上40μm以下であってもよく、20μm以上30μm以下であってもよく、30μm以上50μm以下であってもよく、30μm以上40μm以下であってもよく、40μm以上50μm以下であってもよい。
【0076】
金属板55の厚みt1を測定する方法としては、接触式の測定方法を採用する。接触式の測定方法としては、ボールブッシュガイド式のプランジャーを備える、ハイデンハイン社製の長さゲージHEIDENHAIM-METROの「MT1271」を用いる。
【0077】
また、図6において、貫通孔56の最小開口面積を持つ部分となる接続部563と、第2凹部562の壁面562aの他の任意の位置と、を通過する直線Mが、マスク50の第1面55aの法線方向である第1方向D1に対してなす最小角度が、符号θ1で表されている。斜めに移動する蒸着材料7を、壁面562aに到達させることなく可能な限り基板110に到達させるためには、角度θ1を大きくすることが有利となる。角度θ1を大きくする上では、マスク50の厚みt1を小さくすることの他にも、上述のトップ部565の幅βを小さくすることも有効である。
【0078】
図6において、符号αは、有効領域53において、金属板55の第1面550aのうちエッチングされずに残っている部分(以下、リブ部とも称する)の幅を表している。リブ部の幅α及び貫通部564の寸法rは、有機デバイスの寸法及び表示画素数に応じて適宜定められる。リブ部の幅αは、例えば、5μm以上でもよく、10μm以上でもよく、20μm以上でもよい。リブ部の幅αは、例えば、25μm以下でもよく、30μm以下でもよく、40μm以下でもよい。リブ部の幅αの範囲は、5μm、10μm及び20μmからなる第1グループ、及び/又は、25μm、30μm及び40μmからなる第2グループによって定められてもよい。リブ部の幅αの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。リブ部の幅αの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。リブ部の幅αの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、5μm以上40μm以下でもよく、5μm以上30μm以下でもよく、5μm以上25μm以下でもよく、5μm以上20μm以下でもよく、5μm以上10μm以下でもよく、10μm以上40μm以下でもよく、10μm以上30μm以下でもよく、10μm以上25μm以下でもよく、10μm以上20μm以下でもよく、20μm以上40μm以下でもよく、20μm以上30μm以下でもよく、20μm以上25μm以下でもよく、25μm以上40μm以下でもよく、25μm以上30μm以下でもよく、30μm以上40μm以下でもよい。
【0079】
貫通部564の寸法rは、例えば、10μm以上でもよく、15μm以上でもよく、25μm以上でもよい。寸法rは、例えば、40μm以下でもよく、50μm以下でもよく、55μm以下でもよい。寸法rの範囲は、10μm、15μm及び25μmからなる第1グループ、及び/又は、40μm、50μm及び55μmからなる第2グループによって定められてもよい。寸法rの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。寸法rの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。寸法rの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、10μm以上55μm以下でもよく、10μm以上50μm以下でもよく、10μm以上40μm以下でもよく、10μm以上25μm以下でもよく、10μm以上15μm以下でもよく、15μm以上55μm以下でもよく、15μm以上50μm以下でもよく、15μm以上40μm以下でもよく、15μm以上25μm以下でもよく、25μm以上55μm以下でもよく、25μm以上50μm以下でもよく、25μm以上40μm以下でもよく、40μm以上55μm以下でもよく、40μm以上50μm以下でもよく、50μm以上55μm以下でもよい。貫通部564の寸法rを測定する測定器としては、新東Sプレシジョン製AMIC-1710を用いる。
【0080】
なお、図6においては、隣り合う二つの第2凹部562の間に金属板55の第2面550bが残存している例を示したが、これに限られることはない。図示はしないが、隣り合う2つの第2凹部562が接続されるようにエッチングが実施されてもよい。すなわち、隣り合う2つの第2凹部562の間に、金属板55の第2面550bが残存していない場所が存在していてもよい。
【0081】
次に、蒸着マスク装置40のマスク50及びフレーム41の材料について説明する。マスク50及びフレーム41の主要な材料としては、ニッケルを含む鉄合金を用いることができる。鉄合金は、ニッケルに加えてコバルトを更に含んでいてもよい。例えば、マスク50の金属板55の材料として、ニッケル及びコバルトの含有量が合計で28質量%以上且つ54質量%以下であり、且つコバルトの含有量が0質量%以上且つ6質量%以下である鉄合金を用いることができる。これにより、マスク50及びフレーム41の熱膨張係数と、ガラスを含む基板110の熱膨張係数との差を小さくできる。このため、基板110上に形成される蒸着層130の寸法精度や位置精度が、マスク50、フレーム41、基板110などの熱膨張に起因して低下することを抑制できる。
【0082】
金属板55におけるニッケル及びコバルトの含有量は、合計で28質量%以上且つ38質量%以下であってもよい。この場合、ニッケル若しくはニッケル及びコバルトを含む鉄合金の具体例としては、インバー材、スーパーインバー材、ウルトラインバー材などを挙げることができる。インバー材は、34質量%以上且つ38質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物とを含む鉄合金である。スーパーインバー材は、30質量%以上且つ34質量%以下のニッケルと、コバルトと、残部の鉄及び不可避の不純物と含む鉄合金である。ウルトラインバー材は、28質量%以上且つ34質量%以下のニッケルと、2質量%以上且つ7質量%以下のコバルトと、0.1質量%以上且つ1.0質量%以下のマンガンと、0.10質量%以下のシリコンと、0.01質量%以下の炭素と、残部の鉄及び不可避の不純物とを含む鉄合金である。
【0083】
金属板55におけるニッケル及びコバルトの含有量は、合計で38質量%以上且つ54質量%以下であってもよい。この場合、ニッケル若しくはニッケル及びコバルトを含む鉄合金の具体例としては、低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。低熱膨張Fe-Ni系めっき合金は、38質量%以上且つ54質量%以下のニッケルと、残部の鉄及び不可避の不純物とを含む鉄合金である。
【0084】
なお、蒸着処理の際に、マスク50、フレーム41及び基板110の温度が高温には達しない場合は、マスク50及びフレーム41の熱膨張係数を、基板110の熱膨張係数と同等の値にする必要は特にない。この場合、マスク50を構成する材料として、上述の鉄合金以外の材料を用いてもよい。例えば、クロムを含む鉄合金など、上述のニッケルを含む鉄合金以外の鉄合金を用いてもよい。クロムを含む鉄合金としては、例えば、いわゆるステンレスと称される鉄合金を用いることができる。また、ニッケルやニッケル-コバルト合金など、鉄合金以外の合金を用いてもよい。
【0085】
ところで、図7及び図8に示すように、マスク50は、第1方向D1に沿って見た場合に、フレーム41の第1開口42に重なる領域において、第1方向D1に沿って一方の側(すなわち、第1側S1)に撓んでいてもよい。ここで、図7は、図4の蒸着マスク装置40を第2方向D2に沿って切断した場合の一例を示す断面図である。また、図8は、図7のVIII部を示す拡大図である。
【0086】
マスク50の第1方向D1に沿った撓み量daの最大値da1(図7参照)は、1.1mm以上15.3mm以下であってもよい。撓み量daの最大値da1が1.1mm以上であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側(すなわち、第1方向D1における第2側S2)に引き寄せた際に、マスク50のうち、基板110の第1面111に接触する領域の面積を大きくできる。この場合、マスク50の有効領域53の全域が基板110に接触し得る。この結果、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。これにより、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。また、撓み量daの最大値da1が15.3mm以下であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110の第1面111に接触させた際に、マスク50にシワが生じてしまうことを抑制できる。
【0087】
また、撓み量daの最大値da1は、例えば、1.1mm以上でもよく、1.7mm以上でもよく、3.0mm以上でもよく、3.7mm以上でもよい。撓み量daの最大値da1は、例えば、10.2mm以下でもよく、11.3mm以下でもよく、13.8mm以下でもよく、15.3mm以下でもよい。撓み量daの最大値da1の範囲は、1.1mm、1.7mm、3.0mm及び3.7mmからなる第1グループ、及び/又は、10.2mm、11.3mm、13.8mm及び15.3mmからなる第2グループによって定められてもよい。撓み量daの最大値da1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。撓み量daの最大値da1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。撓み量daの最大値da1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.1mm以上15.3mm以下でもよく、1.1mm以上13.8mm以下でもよく、1.1mm以上11.3mm以下でもよく、1.1mm以上10.2mm以下でもよく、1.1mm以上3.7mm以下でもよく、1.1mm以上3.0mm以下でもよく、1.1mm以上1.7mm以下でもよく、1.7mm以上15.3mm以下でもよく、1.7mm以上13.8mm以下でもよく、1.7mm以上11.3mm以下でもよく、1.7mm以上10.2mm以下でもよく、1.7mm以上3.7mm以下でもよく、1.7mm以上3.0mm以下でもよく、3.0mm以上15.3mm以下でもよく、3.0mm以上13.8mm以下でもよく、3.0mm以上11.3mm以下でもよく、3.0mm以上10.2mm以下でもよく、3.0mm以上3.7mm以下でもよく、3.7mm以上15.3mm以下でもよく、3.7mm以上13.8mm以下でもよく、3.7mm以上11.3mm以下でもよく、3.7mm以上10.2mm以下でもよく、10.2mm以上15.3mm以下でもよく、10.2mm以上13.8mm以下でもよく、10.2mm以上11.3mm以下でもよく、11.3mm以上15.3mm以下でもよく、11.3mm以上13.8mm以下でもよく、13.8mm以上15.3mm以下でもよい。
【0088】
また、図8に示すように、有効領域(すなわち、第1領域)53は、マスク50の第1方向D1に沿った撓み量daが0.3mm以上4.2mm以下である領域に位置していてもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daが0.3mm以上であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側に引き寄せた際に、マスク50の有効領域53の全域を基板110に接触させることができる。これにより、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。このため、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。また、有効領域53が位置する領域の撓み量daが4.2mm以下であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110の第1面111に接触させた際に、マスク50にシワが生じてしまうことを抑制できる。とりわけ、マスク50の有効領域53にシワが生じてしまうことを抑制できるため、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。
【0089】
有効領域53が位置する領域の撓み量daは、例えば、0.3mm以上でもよく、0.4mm以上でもよく、0.7mm以上でもよく、1.0mm以上でもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daは、例えば、2.8mm以下でもよく、3.2mm以下でもよく、3.8mm以下でもよく、4.2mm以下でもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daの範囲は、0.3mm、0.4mm、0.7mm及び1.0mmからなる第1グループ、及び/又は、2.8mm、3.2mm、3.8mm及び4.2mmからなる第2グループによって定められてもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。有効領域53が位置する領域の撓み量daの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.3mm以上4.2mm以下でもよく、0.3mm以上3.8mm以下でもよく、0.3mm以上3.2mm以下でもよく、0.3mm以上2.8mm以下でもよく、0.3mm以上1.0mm以下でもよく、0.3mm以上0.7mm以下でもよく、0.3mm以上0.4mm以下でもよく、0.4mm以上4.2mm以下でもよく、0.4mm以上3.8mm以下でもよく、0.4mm以上3.2mm以下でもよく、0.4mm以上2.8mm以下でもよく、0.4mm以上1.0mm以下でもよく、0.4mm以上0.7mm以下でもよく、0.7mm以上4.2mm以下でもよく、0.7mm以上3.8mm以下でもよく、0.7mm以上3.2mm以下でもよく、0.7mm以上2.8mm以下でもよく、0.7mm以上1.0mm以下でもよく、1.0mm以上4.2mm以下でもよく、1.0mm以上3.8mm以下でもよく、1.0mm以上3.2mm以下でもよく、1.0mm以上2.8mm以下でもよく、2.8mm以上4.2mm以下でもよく、2.8mm以上3.8mm以下でもよく、2.8mm以上3.2mm以下でもよく、3.2mm以上4.2mm以下でもよく、3.2mm以上3.8mm以下でもよく、3.8mm以上4.2mm以下でもよい。
【0090】
次に、図9及び図10により、上述の蒸着マスク装置40を製造するための製造装置について説明する。図9は、蒸着マスク装置40を製造するための製造装置(すなわち、蒸着マスクの製造装置)70の一例を示す平面図である。図10は、図9の製造装置70を第2方向D2に沿って切断した場合の一例を示す断面図である。
【0091】
図9及び図10に示す製造装置70は、第1方向D1及び第2方向D2においてマスク50に張力を加えた状態でマスク50をフレーム41の所定の位置に固定するための装置である。製造装置70は、マスク50内の基準領域58の位置をフレーム41に対して相対的に調整することにより、フレーム41に対するマスク50の位置合わせを実施してもよい。フレーム41の位置は、フレーム41のアライメントマーク45によって定められてもよい。
【0092】
図9及び図10に示すように、製造装置70は、クランプ71、フレームステージ72、マスクステージ60及び固定機構73を備えていてもよい。また、製造装置70は、マスク50の位置を調整する調整機構74を更に備えていてもよい。
【0093】
クランプ71は、少なくとも第2方向D2において、マスク50に張力を加える器具である。クランプ71は、マスク50の厚み方向である第1方向D1、長手方向である第2方向D2及び幅方向である第3方向D3においてマスク50に張力を加えるように構成されていてもよい。
【0094】
図9に示すように、マスク50の一方の端部51を第1のクランプ71が掴み、マスク50の他方の端部51を第2のクランプ71が掴んでもよい。第1のクランプ71と第2のクランプ71の間の距離を変化させることにより、第2方向D2においてマスク50に加えられる張力Tを調整できる。また、第1のクランプ71及び第2のクランプ71のうちの少なくとも一方の第1方向D1における位置を変化させることにより、第1方向D1においてマスク50に加えられる張力Tを調整できる。さらに、クランプ71は、マスク50の幅方向である第3方向D3に沿って移動可能であってもよい。このように、クランプ71が移動可能であることにより、フレーム41に対するマスク50の位置の調整を、クランプ71を移動させることによって実施できる。
【0095】
1つの端部51に固定されるクランプ71の数は、1であってもよく、2以上であってもよい。例えば図9に示すように、製造装置70は、一方の端部51にそれぞれ固定されている2つの第1のクランプ71を含んでいてもよい。また、製造装置70は、他方の端部51にそれぞれ固定されている2つの第2のクランプ71を含んでいてもよい。各クランプ71がマスク50に加える張力Tは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0096】
フレームステージ72は、フレーム41を支持するための器具である。図9及び図10に示すように、このフレームステージ72は、平面視において略矩形の枠状に形成されていてもよい。また、フレームステージ72には、平面視でフレーム41の第1開口42に重なる第2開口72aが設けられていてもよい。図示された例では、平面視において、第2開口72aを画定する輪郭は、第1開口42を画定する輪郭と一致している。なお、図示はしないが、平面視において、第2開口72aを画定する輪郭が、第1開口42を画定する輪郭よりも大きくなっていてもよく、小さくなっていてもよい。また、図示はしないが、平面視において、第2開口72aを画定する輪郭と、第1開口42を画定する輪郭とが、互いに重なっていてもよい。
【0097】
また、フレームステージ72は、平面視において、フレーム41よりも大きい寸法を有していてもよく、平面視において、フレームステージ72を画定する輪郭は、フレーム41を画定する輪郭を取り囲んでいてもよい。このフレームステージ72は、フレームステージ72の各辺がフレーム41の各辺(すなわち、一対の第1辺領域411及び一対の第2辺領域412)に対応するようにして、フレーム41を支持していてもよい。
【0098】
フレームステージ72は、第1方向D1に沿って移動可能であってもよい。これにより、フレーム41の第1フレーム面41aの第1方向D1における位置を容易に調整できる。また、フレームステージ72は、第2方向D2及び第3方向D3に沿って移動可能であってもよい。
【0099】
マスクステージ60は、マスク50を支持するための器具である。このマスクステージ60は、第1方向D1に沿って見た場合に、フレームステージ72に支持されたフレーム41の第1開口42が重なるように位置する第1マスクステージ面(すなわち、マスクステージ面)61を有していてもよい。図示された例では、マスクステージ60の第1マスクステージ面61は、第1方向D1に沿って見た場合に、フレーム41の第1開口42及びフレームステージ72の第2開口72aに重なるように位置している。
【0100】
図10に示すように、第1マスクステージ面61は、第1フレーム面41aよりも、第2側S2に位置していてもよい。この第1マスクステージ面61は、マスク50をフレーム41に固定する際に、マスク50の第2面55bに接触することにより、マスク50を第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形させる役割を果たす。これにより、マスク50が蒸着工程において基板110に接触する状態と同様に、マスク50が第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形した状態で、マスク50をフレーム41に固定できる。すなわち、フレーム41に固定する際のマスク50の形状を、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけることができる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。このような第1マスクステージ面61は平坦面であってもよい。この場合、第1方向D1及び第2方向D2に沿った断面において、第1マスクステージ面61の輪郭は、第2方向D2に沿って延びていてもよい。また、第1方向D1及び第2方向D2に沿った断面において、第1マスクステージ面61の輪郭は、マスク50の有効領域53における第1面55aの輪郭及びフレーム41の第1フレーム面41aの輪郭に対して平行であってもよい。
【0101】
第1マスクステージ面61と、フレーム41の第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d1は、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。第1マスクステージ面61と第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d1が0.5mm以上であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側(すなわち、第1方向D1における第2側S2)に引き寄せた際に、マスク50の所望の領域を基板110の第1面111に接触させることができる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。これにより、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。また、第1マスクステージ面61と第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d1が2.0mm以下であることにより、マスク50のうち、磁石5の磁力によって基板110側に引き寄せられる領域の面積が大きくなり過ぎることを抑制できる。このため、磁石5の磁力によってマスク50を基板110の第1面111に接触させた際に、マスク50にシワが生じてしまうことを抑制できる。
【0102】
距離d1は、例えば、0.5mm以上でもよく、0.8mm以上でもよく、1.0mm以上でもよく、1.5mm以上でもよい。距離d1は、例えば、1.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよく、1.8mm以下でもよく、2.0mm以下でもよい。距離d1の範囲は、0.5mm、0.8mm、1.0mm及び1.5mmからなる第1グループ、及び/又は、1.0mm、1.5mm、1.8mm及び2.0mmからなる第2グループによって定められてもよい。距離d1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。距離d1の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。距離d1の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.5mm以上2.0mm以下でもよく、0.5mm以上1.8mm以下でもよく、0.5mm以上1.5mm以下でもよく、0.5mm以上1.0mm以下でもよく、0.5mm以上0.8mm以下でもよく、0.8mm以上2.0mm以下でもよく、0.8mm以上1.8mm以下でもよく、0.8mm以上1.5mm以下でもよく、0.8mm以上1.0mm以下でもよく、1.0mm以上2.0mm以下でもよく、1.0mm以上1.8mm以下でもよく、1.0mm以上1.5mm以下でもよく、1.5mm以上2.0mm以下でもよく、1.5mm以上1.8mm以下でもよく、1.8mm以上2.0mm以下でもよい。
【0103】
図9に示すように、第1マスクステージ面61は、第1方向D1に沿って見た場合に、有効領域53の全域に重なっていてもよい。この場合、図10に示すように、マスク50の中間部52の有効領域53が、マスク50の端部51よりも第1方向D1における第2側S2に位置し得る。すなわち、中間部52の有効領域53における第1面55aの全体が、端部51における第1面55aよりも第1方向D1における第2側S2に位置し得る。この場合においても、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側に引き寄せた際に、マスク50の有効領域53の全域が基板110に接触し得る。これにより、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。
【0104】
このような第1マスクステージ面61を有するマスクステージ60は、第1方向D1に沿って移動可能であってもよい。これにより、マスクステージ60の第1マスクステージ面61の第1方向D1における位置を容易に調整できる。また、マスクステージ60は、第2方向D2及び第3方向D3に沿って移動可能であってもよい。
【0105】
なお、上述したように、マスクステージ60及びフレームステージ72は、それぞれ第1方向D1に沿って移動可能であってもよい。このため、マスクステージ60及び/又はフレームステージ72が第1方向D1に沿って移動した場合、第1マスクステージ面61は、第1フレーム面41aよりも第1側S1に位置してもよい。
【0106】
固定機構73は、マスク50の端部51をフレーム41に固定するための機構である。この固定機構73は、第2方向D2に延びるレール75に取り付けられていてもよい。例えば、固定機構73は、レール75に沿って移動可能であってもよい。また、固定機構73は、レール以外の部材に取り付けられていてもよい。
【0107】
固定機構73は、マスク50の第1面55a側から端部51に向けてレーザー光を照射するレーザー装置を含んでいてもよい。端部51にレーザー光を照射して端部51の一部を溶融させることにより、端部51をフレーム41に溶接できる。図9において、符号59は、端部51のうちフレーム41に溶接されている溶接領域を表している。
【0108】
レーザー光としては、例えば、YAGレーザー装置によって生成されるYAGレーザー光を用いることができる。YAGレーザー装置としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)にNd(ネオジム)を添加した結晶を発振用媒質として備えたものを用いることができる。
【0109】
調整機構74は、カメラ76、算出機構77及び制御機構78を有していてもよい。
【0110】
カメラ76は、マスク50の基準領域58を検出するためのものである。カメラ76としては、例えば下記の仕様のものを用いることができる。
・解像度:2448×2048
・画素サイズ:3.45μm
【0111】
カメラ76は、レール75に沿って移動可能であってもよい。また、レール75は、第3方向D3に沿って移動可能であってもよい。図9に示す例においては、カメラ76はマスク50よりも第1方向D1における第1側S1に配置されており、カメラ76は、第1側S1からマスク50の基準領域58を検出するように構成されている。なお、図示はしないが、カメラ76がマスク50よりも第1方向D1における第2側S2に配置され、カメラ76が第2側S2からマスク50の基準領域58を検出するように構成されていてもよい。
【0112】
算出機構77は、マスク50の基準領域58の現実の位置が設計位置からずれている場合に、ずれを減少させるようにクランプ71の設定を算出する機構である。例えば、算出機構77は、カメラ76によって検出された基準領域58の位置と、基準領域58の設計位置との差を減少させるように、第2方向D2又は第3方向D3における位置を算出してもよい。また、算出機構77は、カメラ76によって検出された基準領域58の位置と、基準領域58の設計位置との差を減少させるように、クランプ71によって第2方向D2においてマスク50に加えられる張力Tを算出してもよい。
【0113】
基準領域58の設計位置に関する情報は、コンピュータ79のハードディスク装置やメモリ等の記録装置に予め保管されていてもよい。基準領域58の設計位置は、フレーム41のアライメントマーク45を基準として表される座標系に基づいて定められていてもよい。
【0114】
算出機構77は、コンピュータ79によって実現されていてもよい。例えば、コンピュータ79を算出機構77として機能させるためのプログラムをコンピュータ79にインストールすることにより、コンピュータ79が算出機構77として機能してもよい。
【0115】
制御機構78は、算出機構77の算出結果に基づいてクランプ71を制御する機構である。例えば、制御機構78は、算出機構77によって算出されたクランプ71の位置へクランプ71を移動させるよう、クランプ71を駆動する駆動機構に指令を送ってもよい。また、制御機構78は、算出機構77によって算出された張力Tを実現するよう、クランプ71を駆動する駆動機構に指令を送ってもよい。
【0116】
制御機構78は、算出機構77と同様に、コンピュータ79によって実現されていてもよい。例えば、コンピュータ79を制御機構78として機能させるためのプログラムをコンピュータ79にインストールすることにより、コンピュータ79が制御機構78として機能してもよい。
【0117】
プログラムは、コンピュータ79の出荷時に予めコンピュータ79にインストールされていてもよい。または、プログラムは、コンピュータ79の出荷後に、プログラムを格納した、コンピュータ79が読み取り可能な非一過性の記録媒体を利用することによって、コンピュータ79にインストールされてもよい。記録媒体のタイプが特に限られることはなく、磁気ディスクや光ディスク等の携帯型の記録媒体や、ハードディスク装置やメモリ等の固定型の記録媒体など、様々なものが考えられる。また、プログラムは、インターネット等の通信回線を介して頒布されてもよい。なお、プログラムが通信回線を介して頒布される場合、頒布のためのサーバには、少なくとも一時的に、本実施の形態によるプログラムが格納された記録媒体が存在することになる。
【0118】
次に、図11乃至図21により、蒸着マスク装置40を製造する方法について説明する。
【0119】
まず、マスク50を準備する。本実施の形態においては、複数枚のマスク50に対応する多数の貫通孔56を金属板55に形成する。言い換えると、金属板55に複数枚のマスク50を割り付ける。その後、金属板55のうち1枚分のマスク50に対応する複数の貫通孔56が形成された部分を金属板55から分離する。このようにして、枚葉状のマスク50を得ることができる。
【0120】
この際、まず、金属板55の第1面550a上及び第2面550b上に感光性レジスト材料を含むレジスト膜を形成する。続いて、レジスト膜を露光及び現像する。これにより、図11に示すように、金属板55の第1面550a上に第1レジストパターン551aを形成し、金属板55の第2面550b上に第2レジストパターン551bを形成できる。
【0121】
次に、図12に示すように、金属板55の第1面550aのうち第1レジストパターン551aによって覆われていない領域を、第1エッチング液を用いてエッチングする第1面エッチング工程を実施する。これによって、金属板55の第1面550aに多数の第1凹部561が形成される。第1エッチング液としては、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いてもよい。
【0122】
次に、図13に示すように、金属板55の第2面550bのうち第2レジストパターン551bによって覆われていない領域をエッチングし、第2面550bに第2凹部562を形成する第2面エッチング工程を実施する。第2面エッチング工程は、第1凹部561と第2凹部562とが互いに通じ合い、これによって貫通孔56が形成されるようになるまで実施される。第2エッチング液としては、上述の第1エッチング液と同様に、例えば塩化第2鉄溶液及び塩酸を含むものを用いる。なお、第2面エッチング工程の際、図13に示すように、第2エッチング液に対する耐性を有した樹脂552によって第1凹部561が被覆されていてもよい。
【0123】
その後、図14に示すように、金属板55から樹脂552を除去する。樹脂552は、例えばアルカリ系剥離液を用いることによって、除去できる。アルカリ系剥離液が用いられる場合、図14に示すように、樹脂552と同時にレジストパターン551a、551bも除去される。なお、樹脂552を除去した後、樹脂552を剥離させるための剥離液とは異なる剥離液を用いて、樹脂552とは別途にレジストパターン551a、551bを除去してもよい。
【0124】
その後、金属板55のうち1枚分のマスク50に対応する複数の貫通孔56が形成された部分を金属板55から分離することにより、マスク50を得ることができる。
【0125】
また、マスク50を準備することと並行して、フレーム41を準備する。この際、まず、図示しない金属板を準備する。次に、この金属板に対して切削等の機械加工を施すことにより、第1開口42を有するフレーム41が得られる。なお、フレーム41は、鋳型や3Dプリンターを用いて作製されてもよい。
【0126】
次に、フレーム41を配置する配置工程を実施する。配置工程は、第1方向D1に沿って見た場合に、フレーム41の第1開口42がマスクステージ60の第1マスクステージ面61に重なる位置に、フレーム41を配置する工程である。
【0127】
配置工程では、まず、製造装置70を準備する。次に、図15に示すように、製造装置70のフレームステージ72上にフレーム41が配置される。この際、マスクステージ60は、第1マスクステージ面61が第1フレーム面41aよりも第2側S2に位置するように、第1方向D1において予め位置決めされていてもよい。この場合、第1マスクステージ面61と第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d1(図10参照)が、0.5mm以上2.0mm以下となるように、マスクステージ60が第1方向D1において位置決めされていてもよい。なお、図示はしないが、フレーム41をフレームステージ72上に配置した後に、マスクステージ60の第1方向D1における位置決めが行われてもよい。この場合、例えば、マスクステージ60及び/又はフレームステージ72を第1方向D1に移動させることにより、第1マスクステージ面61が第1フレーム面41aよりも第2側S2に位置付けられてもよい。
【0128】
次に、第2方向D2においてマスク50に張力を加える引張工程を実施する。引張工程では、例えば、まず、クランプ71(図9参照)によってマスク50を掴み、クランプ71が第2方向D2においてマスク50に張力を加えてもよい。
【0129】
次いで、図16に示すように、第2方向D2においてマスク50に張力を加えた状態で、クランプ71を第1方向D1における第1側S1に移動させてもよい。ここで、上述したように、マスクステージ60の第1マスクステージ面61は、フレーム41の第1フレーム面41aよりも第2側S2に位置し得る。このため、図17に示すように、クランプ71を第1方向D1における第1側S1に移動させることにより、マスク50が第1マスクステージ面61に接触し得る。
【0130】
そして、図18に示すように、クランプ71を第1方向D1における第1側S1に更に移動させることにより、マスク50は、フレーム41の第1フレーム面41aに接触し得る。このようにして、引張工程において、マスク50は、第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触し得る。これにより、フレーム41に固定する際のマスク50の形状を、後述する蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけることができる。すなわち、後述する固定工程において、マスク50が蒸着工程において基板110に接触する状態と同様に、マスク50が第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形した状態で、マスク50をフレーム41に固定できる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。なお、図示はしないが、上述した配置工程においてマスクステージ60の第1方向D1における位置決めを行うことなく、マスク50を第1フレーム面41aに接触させた後に、マスクステージ60の第1方向D1における位置決めが行われてもよい。この場合、例えば、マスクステージ60を第1方向D1の第2側に移動させることにより、第1マスクステージ面61が第1フレーム面41aよりも第2側S2に位置付けられてもよい。
【0131】
また、図19に示すように、例えば、第2方向D2においてマスク50に張力を加えた状態で、クランプ71をフレーム41の第1フレーム面41aよりも第1方向D1における第1側S1に移動させてもよい。これにより、マスク50の端部51において、マスク50がフレーム41に密着する。このため、マスク50とフレーム41との間の溶接強度を高めることができる。なお、この際、例えば、図示しない治具により、マスク50の端部51がフレーム41の第1フレーム面41aに押しつけられてもよい。これにより、マスク50の端部51をフレーム41により密着させることができる。
【0132】
次に、マスク50をフレーム41の第1フレーム面41aに固定する。
【0133】
ここで、マスク50をフレーム41に固定する前に、マスク50の位置を調整する調整工程を実施してもよい。調整工程は、検出工程、算出工程及び制御工程を含んでいてもよい。この際、例えば、まず、検出工程を実施する。検出工程は、第1方向D1及び第2方向D2において張力を加えられた状態のマスク50の基準領域58(図9参照)の位置を、カメラ76を用いて検出する工程である。
【0134】
次に、算出工程を実施する。算出工程は、マスク50の基準領域58の現実の位置が設計位置からずれている場合に、上述の算出機構77を用いて、ずれを減少させるようにクランプ71の設定を算出する工程である。算出工程は、検出工程によって検出される基準領域58を用いてクランプ71の設定を算出してもよい。例えば、検出された基準領域58の位置と、基準領域58の設計位置との間の、第2方向D2及び/又は第3方向D3における差を減少させるように、第1方向D1、第2方向D2及び/又は第3方向D3におけるクランプ71の位置が算出されてもよい。また、検出された基準領域58の位置と、基準領域58の設計位置との間の、第2方向D2及び/又は第3方向D3における差を減少させるように、クランプ71によって第1方向D1及び/又は第2方向D2においてマスク50に加えられる張力Tが算出されてもよい。
【0135】
続いて、制御工程を実施する。制御工程は、算出工程の結果に基づいて、制御機構78を用いてクランプ71を制御する工程である。
【0136】
上述の検出工程、算出工程及び制御工程を実施することにより、フレーム41に対するマスク50の位置合わせを実施できる。上述の検出工程、算出工程及び制御工程は、2回以上繰り返して実施されてもよい。
【0137】
なお、第2方向D2におけるマスク50の位置を調整する工程と、第3方向D3におけるマスク50の位置を調整する工程とが、同時に実施されてもよく、別々に実施されてもよい。「同時」とは、1回の調整において、第2方向D2におけるマスク50の位置及び第3方向D3におけるマスク50の位置の両方が考慮されることを意味する。「別々」とは、1回の調整において、第2方向D2におけるマスク50の位置又は第3方向D3におけるマスク50の位置のいずれかが考慮されることを意味する。第2方向D2におけるマスク50の位置を調整する工程及び第3方向D3におけるマスク50の位置を調整する工程が別々に実施される場合、両者の順序は任意である。例えば、第2方向D2におけるマスク50の位置を調整する工程を実施した後、第3方向D3におけるマスク50の位置を調整する工程を実施してもよい。若しくは、第3方向D3におけるマスク50の位置を調整する工程を実施した後、第2方向D2におけるマスク50の位置を調整する工程を実施してもよい。
【0138】
調整工程の後、固定機構73を用いて、マスク50に張力が加えられた状態で、マスク50の端部51をフレーム41の第1フレーム面41aに固定する固定工程を実施する。これにより、蒸着マスク装置40を得ることができる。
【0139】
ここで、マスク50を第1フレーム面41aに固定する際、マスク50は、第1方向D1に沿って見た場合に、第1マスクステージ面61が有効領域53の全域に重なった状態で、第1フレーム面41aに固定されることが好ましい。これにより、後述するように、蒸着工程の際に、有効領域53の全域を基板110の接触させることができる。
【0140】
そして、図20に示すように、マスク50の端部51をフレーム41の第1フレーム面41aに固定した後、端部51のうち溶接領域59よりも外側に位置する領域を部分的に除去してもよい。「外側」とは、フレーム41の第1開口42から遠ざかる側である。
【0141】
その後、蒸着マスク装置40が製造装置70から取り外される。このようにして、図21に示すように、蒸着マスク装置40が得られる。この際、マスクステージ60の第1マスクステージ面61がマスク50の第2面55bから離れることにより、フレーム41に固定されたマスク50が第1方向D1に沿って撓む。
【0142】
次に、蒸着マスク装置40を備える蒸着装置10を利用して有機デバイス100を製造する方法について説明する。ここでは、基板110に蒸着材料7を蒸着させる、蒸着材料7の蒸着方法について、図22乃至図24を参照して説明する。
【0143】
まず、上述した工程により得られた蒸着マスク装置40を準備する。すなわち、図22に示すように、当該蒸着マスク装置40、蒸着材料7が収容されたるつぼ6及びヒータ8を備える蒸着装置10を準備する。この際、蒸着マスク装置40は、マスクホルダ3を用いて蒸着源6の上方に設置されてもよい。
【0144】
また、基板110を準備する。このとき、第1電極層120及び絶縁層160などの層が形成されている基板110を準備してもよい。また、基板110を蒸着装置10の内部に搬入する。基板110を蒸着装置10の内部に搬入する前に、基板110に洗浄などの前処理が施されてもよい。
【0145】
次に、図23に示すように、基板110を蒸着マスク装置40のマスク50上に設置する。このとき、基板ホルダ2を用いて基板110を蒸着マスク装置40のマスク50に対向させてもよい。この際、基板ホルダ2を第2方向D2及び第3方向D3において移動させて、マスク50に対する基板110の位置を調整してもよい。例えば、マスク50のアライメントマーク(図示せず)又はフレーム41のアライメントマーク45と、基板110のアライメントマーク(図示せず)とが重なるように、基板110を第2方向D2及び第3方向D3において移動させてもよい。第2方向D2及び第3方向D3における基板110の位置の調整の際、基板110の第1面111はフレーム41の第1フレーム面41aに接触していないことが好ましい。
【0146】
この場合、基板110の第1面111と、フレーム41の第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d2は、0.5mm以上2.0mm以下であってもよい。第1面111と第1フレーム面41aとの間の第1方向D1に沿った距離d2が0.5mm以上であることにより、第2方向D2及び第3方向D3における基板110の位置の調整の際に、基板110がフレーム41に接触することを抑制できる。また、距離d2が2.0mm以下であることにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側(すなわち、第1方向D1における第2側S2)に引き寄せやすくできる。
【0147】
距離d2は、例えば、0.5mm以上でもよく、0.8mm以上でもよく、1.0mm以上でもよく、1.5mm以上でもよい。距離d2は、例えば、1.0mm以下でもよく、1.5mm以下でもよく、1.8mm以下でもよく、2.0mm以下でもよい。距離d2の範囲は、0.5mm、0.8mm、1.0mm及び1.5mmからなる第1グループ、及び/又は、1.0mm、1.5mm、1.8mm及び2.0mmからなる第2グループによって定められてもよい。距離d2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。距離d2の範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。距離d2の範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、0.5mm以上2.0mm以下でもよく、0.5mm以上1.8mm以下でもよく、0.5mm以上1.5mm以下でもよく、0.5mm以上1.0mm以下でもよく、0.5mm以上0.8mm以下でもよく、0.8mm以上2.0mm以下でもよく、0.8mm以上1.8mm以下でもよく、0.8mm以上1.5mm以下でもよく、0.8mm以上1.0mm以下でもよく、1.0mm以上2.0mm以下でもよく、1.0mm以上1.8mm以下でもよく、1.0mm以上1.5mm以下でもよく、1.5mm以上2.0mm以下でもよく、1.5mm以上1.8mm以下でもよく、1.8mm以上2.0mm以下でもよい。
【0148】
また、第2方向D2及び第3方向D3における基板110の位置の調整の際、基板110の第1面111はマスク50の第1面55aに接触していないことが好ましい。これにより、基板110に傷が発生してしまうことを抑制できる。
【0149】
続いて、蒸着マスク装置40のマスク50上に設置された基板110に蒸着材料7を蒸着させる蒸着工程を実施する。このとき、蒸着マスク装置40のマスク50の貫通孔56を介して、蒸着材料7を基板110に蒸着させてもよい。この際、例えば、図24に示すように、基板ホルダ2よりも第1方向D1における第2側S2に磁石5が配置される。このように磁石5を設けることにより、磁力によってマスク50が基板110側に引き寄せられる。これにより、マスク50の第1面55aが、基板110の第1面111に接触する。そして、マスク50は、第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形した状態で、基板110に密着する。
【0150】
ここで、上述したように、フレーム41に固定する際のマスク50の形状は、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけられている。これにより、蒸着マスク装置40を基板110に対して所望の位置に設置できる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。また、フレーム41に固定する際のマスク50の形状が、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけられているため、マスク50が基板110に接触する際に発生し得るマスク50の歪みや変形を抑制できる。このため、基板110に対して蒸着材料7を蒸着させる際に、マスク50と基板110との密着性を向上させることもできる。
【0151】
次に、蒸着装置10の内部が高真空状態となるように、蒸着装置10の内部を図示しない排気手段により排気する。次いで、ヒータ8が、るつぼ6を加熱して蒸着材料7を蒸発させる。そして、るつぼ6から蒸発して蒸着マスク装置40に到達した蒸着材料7が、マスク50の貫通孔56を通って基板110に付着する(図3参照)。
【0152】
このようにして、マスク50の貫通孔56の位置に対応した所望のパターンで、蒸着材料7が基板110に蒸着される。これにより、基板110に蒸着層130を形成できる。
【0153】
以上説明したように、本実施の形態によれば、蒸着マスク装置40の製造方法が、第1方向D1に沿って見た場合に、第1開口42がマスクステージ60の第1マスクステージ面61に重なる位置に、フレーム41を配置する工程と、第2方向D2においてマスク50に張力を加える工程と、マスク50に張力が加えられた状態で、マスク50を第1フレーム面41aに固定する工程とを備えている。また、第1マスクステージ面61が、第1フレーム面41aよりも、第2側S2に位置し、マスク50に張力を加える工程において、マスク50が、第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触する。これにより、マスク50をフレーム41に固定する際に、マスク50を第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形させることができる。このため、フレーム41に固定する際のマスク50の形状を、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけることができる。すなわち、マスク50が蒸着工程において基板110に接触する状態と同様に、マスク50が第1方向D1における第2側S2に向かって凸となるように変形した状態で、マスク50をフレーム41に固定できる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。これにより、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。
【0154】
また、上述したように、基板ホルダ2が静電チャックであり得る。このため、マスク50に対する基板110の位置を調整する場合に、基板110の第1面111がフレーム41の第1フレーム面41aに接触しないように、第1面111と第1フレーム面41aとの間に隙間が設けられ得る。本実施の形態によれば、第1面111と第1フレーム面41aとの間に隙間が設けられている場合であっても、フレーム41に固定する際のマスク50の形状を、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけることができる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。
【0155】
また、本実施の形態によれば、第1マスクステージ面61が、第1方向D1に沿って見た場合に、有効領域53の全域に重なっている。この場合、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側に引き寄せた際に、マスク50の有効領域53の全域が基板110に接触し得る。これにより、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。
【0156】
また、本実施の形態によれば、蒸着マスク装置40の製造方法が、マスク50を第1フレーム面41aに固定する固定工程の前に、マスク50の位置を調整する調整工程を更に備えている。これにより、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を更に減少させることができる。
【0157】
また、本実施の形態によれば、蒸着マスク装置40の製造装置70は、第2方向D2においてマスク50に張力を加えるクランプ71と、フレーム41を支持するフレームステージ72と、第1方向D1に沿って見た場合に、フレームステージ72に支持されたフレーム41の第1開口42が重なるように位置する第1マスクステージ面61を有するマスクステージ60と、マスク50をフレーム41に固定する固定機構73とを備えている。また、第1マスクステージ面61は、第1フレーム面41aよりも、第2側S2に位置している。これにより、フレーム41に固定する際のマスク50の形状を、蒸着工程におけるマスク50の形状に近づけることができる。このため、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。これにより、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。
【0158】
また、本実施の形態によれば、マスクステージ60が、第1方向D1に沿って移動可能である。これにより、マスクステージ60の第1マスクステージ面61の第1方向D1における位置を容易に調整できる。
【0159】
また、本実施の形態によれば、フレームステージ72が、第1方向D1に沿って移動可能である。これにより、フレーム41の第1フレーム面41aの第1方向D1における位置を容易に調整できる。
【0160】
さらに、本実施の形態によれば、蒸着マスク装置40において、マスク50が、第1方向D1に沿って見た場合に、第1開口42に重なる領域において、第1方向D1に沿って第1側S1に撓み、マスク50の撓み量daの最大値da1が、1.1mm以上15.3mm以下である。これにより、磁石5の磁力によってマスク50を基板110側(すなわち、第1方向D1における第2側S2)に引き寄せた際に、マスク50のうち、基板110の第1面111に接触する領域の面積を大きくできる。この場合、マスク50の有効領域53の全域が基板110に接触し得る。この結果、基板110と組み合わされている状態のマスク50において、貫通孔56の現実の位置と設計位置との差を減少させることができる。これにより、貫通孔56を介して基板110に蒸着される蒸着材料によって構成される蒸着層130の位置精度を高くできる。また、磁石5の磁力によってマスク50を基板110の第1面111に接触させた際に、マスク50にシワが生じてしまうことを抑制できる。
【0161】
なお、上述した一実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、その他の実施形態について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した一実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した一実施形態において得られる作用効果がその他の実施形態においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0162】
上述した実施の形態においては、第1マスクステージ面61が平坦面である例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、第1マスクステージ面61が、湾曲面であってもよい。この場合、図25に示すように、第1方向D1及び第2方向D2に沿った断面において、第1マスクステージ面61の輪郭は、第1方向D1の第2側S2に向かって凸となる円弧形状をもっていてもよい。本変形例では、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、マスク50に局所的に力が加わることを抑制できる。このため、マスク50が損傷を受けてしまうことを抑制できる。
【0163】
また、図26に示すように、マスクステージ60が、第2方向D2において第1マスクステージ面61の両側に位置する第2マスクステージ面62を更に有していてもよい。図26に示す例においては、第2マスクステージ面62は、フレーム41に近づくにつれて第1方向D1の第1側S1に傾斜している。本変形例においても、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、マスク50に局所的に力が加わることを抑制できる。このため、マスク50が損傷を受けてしまうことを抑制できる。
【0164】
また、図27に示すように、第1方向D1及び第2方向D2に沿った断面において、第2マスクステージ面62の輪郭は、少なくとも部分的にマスク50に向かって凸となる円弧形状を有していてもよい。この場合、円弧形状の曲率半径Rは、1.0mm以上であることが好ましく、3.0mm以上であることがより好ましい。曲率半径Rを1.0mm以上とすることにより、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、マスク50に局所的な力が加わることを抑制できる。また、曲率半径Rを3.0mm以上とすることにより、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、マスク50に局所的な力が加わることを更に抑制できる。
【0165】
また、円弧形状の曲率半径Rは、6.0m以下であることが好ましく、4.0mm以下であることがより好ましい。曲率半径Rを6.0mm以下とすることにより、第1マスクステージ面61と第2マスクステージ面62とを滑らかに接続できる。これにより、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、第1マスクステージ面61と第2マスクステージ面62との接続箇所において、マスク50に局所的な力が加わることを抑制できる。また、曲率半径Rを4.0mm以下とすることにより、引張工程において、マスク50を第1マスクステージ面61及び第1フレーム面41aに接触させた場合に、第1マスクステージ面61と第2マスクステージ面62との接続箇所において、マスク50に局所的な力が加わることを更に抑制できる。
【0166】
曲率半径Rは、例えば、1.0mm以上でもよく、2.0mm以上でもよく、3.0mm以上でもよく、3.5mm以上でもよい。曲率半径Rは、例えば、3.5mm以下でもよく、4.0mm以下でもよく、5.0mm以下でもよく、6.0mm以下でもよい。曲率半径Rの範囲は、1.0mm、2.0mm、3.0mm及び3.5mmからなる第1グループ、及び/又は、3.5mm、4.0mm、5.0mm及び6.0mmからなる第2グループによって定められてもよい。曲率半径Rの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の1つと、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の1つとの組み合わせによって定められてもよい。曲率半径Rの範囲は、上述の第1グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。曲率半径Rの範囲は、上述の第2グループに含まれる値のうちの任意の2つの組み合わせによって定められてもよい。例えば、1.0mm以上6.0mm以下でもよく、1.0mm以上5.0mm以下でもよく、1.0mm以上4.0mm以下でもよく、1.0mm以上3.5mm以下でもよく、1.0mm以上3.0mm以下でもよく、1.0mm以上2.0mm以下でもよく、2.0mm以上6.0mm以下でもよく、2.0mm以上5.0mm以下でもよく、2.0mm以上4.0mm以下でもよく、2.0mm以上3.5mm以下でもよく、2.0mm以上3.0mm以下でもよく、3.0mm以上6.0mm以下でもよく、3.0mm以上5.0mm以下でもよく、3.0mm以上4.0mm以下でもよく、3.0mm以上3.5mm以下でもよく、3.5mm以上6.0mm以下でもよく、3.5mm以上5.0mm以下でもよく、3.5mm以上4.0mm以下でもよく、4.0mm以上6.0mm以下でもよく、4.0mm以上5.0mm以下でもよく、5.0mm以上6.0mm以下でもよい。
【0167】
また上述の本実施の形態においては、蒸着マスク装置40が、複数のマスク50を備えている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図28に示すように、蒸着マスク装置40が、格子状に配置された複数の有効領域53を有する単一のマスク50を備えていてもよい。
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