(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166269
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】電源用半導体装置及びスイッチトキャパシタコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20231114BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20231114BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H02M3/07
H03K17/16 H
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077200
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田古部 勲
【テーマコード(参考)】
5H730
5J055
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS05
5H730BB03
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD11
5H730FD21
5H730FG01
5J055AX25
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5J055DX22
5J055DX72
5J055EY10
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5J055EZ18
5J055EZ54
5J055EZ55
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
5J055GX09
(57)【要約】
【課題】スイッチトキャパシタコンバータにおいてノイズ発生を抑制する。
【解決手段】複数のスイッチ素子及び複数のキャパシタを有するスイッチトキャパシタコンバータに用いられる電源用半導体装置において、複数のスイッチ素子は、制御信号に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群(M1、M7)と、制御信号と位相が180°ずれた信号に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群(M2、M8)と、を有する。第1スイッチ素子群は、入力電圧を受けるよう構成された対象スイッチ素子(M1)と、非対象スイッチ素子(M7)を有する。制御信号に基づいて前記第1スイッチ素子群に属する各スイッチ素子をターンオンさせる際、対象スイッチ素子のターンオンタイミングを、非対象スイッチ素子のターンオンタイミングより遅らせる。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ素子及び複数のキャパシタを有し、前記複数のスイッチ素子を所定パターンに従ってオン、オフすることで入力電圧から出力電圧を生成するスイッチトキャパシタコンバータに用いられるよう構成された電源用半導体装置であって、
各スイッチ素子のオン又はオフを指定する制御信号を生成し、前記制御信号に基づき各スイッチ素子をオン又はオフするよう構成された制御駆動回路を備え、
前記複数のスイッチ素子は、前記制御信号に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群と、前記制御信号と位相が180°ずれた信号に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群と、を有し、
前記第1スイッチ素子群は、前記入力電圧を受けるよう構成された対象スイッチ素子と、非対象スイッチ素子を有し、
前記制御駆動回路は、前記制御信号に基づいて前記第1スイッチ素子群に属する各スイッチ素子をターンオンさせる際、前記対象スイッチ素子のターンオンタイミングを、前記非対象スイッチ素子のターンオンタイミングより遅らせる
、電源用半導体装置。
【請求項2】
前記制御信号は第1レベル又は第2レベルを有し、
前記制御駆動回路は、
前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオフさせてから、前記対象スイッチ素子をターンオンさせ、
前記制御信号における前記第2レベルから前記第1レベルへの変化に同期して、前記対象スイッチ素子及び前記非対象スイッチ素子をターンオフさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオンさせる
、請求項1に記載の電源用半導体装置。
【請求項3】
前記対象スイッチ素子は、前記入力電圧が加わる入力端子と第1端子に接続されて前記入力端子及び前記第1端子間を導通又は遮断し、
前記第1スイッチ素子群は、前記非対象スイッチ素子として、前記出力電圧が加わる出力端子と第2端子に接続されて前記出力端子及び前記第2端子間を導通又は遮断する第1特定スイッチ素子を有し、
前記第2スイッチ素子群は、前記第1端子と第3端子に接続されて前記第1端子及び前記第3端子間を導通又は遮断する第2特定スイッチ素子と、前記第2端子と前記出力電圧より低い電位を有する第4端子に接続されて前記第2端子及び前記第4端子間を導通又は遮断する第3特定スイッチ素子と、を有し、
前記複数のキャパシタは前記第1端子及び前記第2端子間に設けられる対象キャパシタを有する
、請求項2に記載の電源用半導体装置。
【請求項4】
前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して前記非対象スイッチ素子がターンオンされ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子がターンオフされることで、前記第2端子の電圧が前記出力電圧に向けて上昇し、前記第2端子の電圧の上昇が前記対象キャパシタを通じて前記第1端子の電圧を前記入力電圧に向けて上昇させ、
前記制御駆動回路は、前記第1端子の電圧が前記入力電圧にまで上昇してから前記対象スイッチ素子をターンオンさせる、又は、前記第1端子の電圧の前記入力電圧への上昇の過程において前記対象スイッチ素子をターンオンさせる
、請求項3に記載の電源用半導体装置。
【請求項5】
前記制御駆動回路は、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオフさせ、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化の後、所定時間を経てから前記対象スイッチ素子をターンオンさせる
、請求項2~4の何れかに記載の電源用半導体装置。
【請求項6】
前記制御駆動回路は、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオフさせた後、前記第1端子の電圧の前記入力電圧への上昇が完了したかを検出し、前記完了の検出後に前記対象スイッチ素子をターンオンさせる
、請求項4に記載の電源用半導体装置。
【請求項7】
前記入力端子を受けるよう構成された入力端子と、
前記出力電圧が加わるよう構成された出力端子と、を備え、
前記入力端子及び前記出力端子に対し、前記複数のスイッチ素子及び前記複数のキャパシタを有するスイッチング回路が接続され、前記複数のスイッチ素子を前記所定パターンに従ってオン、オフすることで前記入力電圧から前記出力電圧が生成されるよう、前記複数のスイッチ素子及び前記複数のキャパシタが互いに接続される
、請求項1に記載の電源用半導体装置。
【請求項8】
複数のスイッチ素子を有する、請求項1に記載の電源用半導体装置と、
複数のキャパシタと、を備える
、スイッチドキャパシタコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源用半導体装置及びスイッチトキャパシタコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置の一種としてスイッチトキャパシタコンバータがある。スイッチトキャパシタコンバータは、複数のパワートランジスタと複数のキャパシタを有し、複数のパワートランジスタのスイッチングにより入力電圧から出力電圧を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スイッチトキャパシタコンバータに分類されない電源装置と同様に、スイッチトキャパシタコンバータにおいてノイズ(放射ノイズ)の抑制は重要である。
【0005】
本開示は、ノイズの抑制に寄与する電源用半導体装置及びスイッチトキャパシタコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電源用半導体装置は、複数のスイッチ素子及び複数のキャパシタを有し、前記複数のスイッチ素子を所定パターンに従ってオン、オフすることで入力電圧から出力電圧を生成するスイッチトキャパシタコンバータに用いられるよう構成された電源用半導体装置であって、各スイッチ素子のオン又はオフを指定する制御信号を生成し、前記制御信号に基づき各スイッチ素子をオン又はオフするよう構成された制御駆動回路を備え、前記複数のスイッチ素子は、前記制御信号に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群と、前記制御信号と位相が180°ずれた信号に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群と、を有し、前記第1スイッチ素子群は、前記入力電圧を受けるよう構成された対象スイッチ素子と、非対象スイッチ素子を有し、前記制御駆動回路は、前記制御信号に基づいて前記第1スイッチ素子群に属する各スイッチ素子をターンオンさせる際、前記対象スイッチ素子のターンオンタイミングを、前記非対象スイッチ素子のターンオンタイミングより遅らせる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ノイズの抑制に寄与する電源用半導体装置及びスイッチトキャパシタコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る電源装置(スイッチトキャパシタコンバータ)の回路図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係る電源装置(スイッチトキャパシタコンバータ)の回路図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る電源装置の概略ブロック図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る電源ICの外観斜視図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る電源ICの外観斜視図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る電源ICの概略ブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態に係り、電源ICと複数のキャパシタとの接続関係を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態に係り、駆動電圧生成ブロックと複数のキャパシタとの関係を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態に係り、電源ICにて実行可能な基本スイッチング制御のタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における或る期間(P1)での各スイッチ素子の状態を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における他の期間(P2)での各スイッチ素子の状態を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における各端子電圧の波形を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における各端子電圧の波形を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における電流の流れを説明するための図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施形態に係り、基本スイッチング制御における信号波形図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態に係り、電源ICにて実行可能な改良スイッチング制御のタイミングチャートである。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に係り、改良スイッチング制御の動作に特に関与する部分の回路図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態に係り、改良スイッチング制御における信号波形図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施形態に係り、改良スイッチング制御における電流の流れを説明するための図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施形態に係り、制御駆動回路に検出回路が設けられる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0010】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。ICとは集積回路(Integrated Circuit)の略称である。グランドとは、基準となる0V(ゼロボルト)の電位を有する基準導電部を指す又は0Vの電位そのものを指す。基準導電部は金属等の導体を用いて形成されて良い。0Vの電位をグランド電位と称することもある。本開示の実施形態において、特に基準を設けずに示される電圧はグランドから見た電位を表す。
【0011】
レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは厳密には信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。
【0012】
任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジと称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミングと称する。アップエッジをライジングエッジに読み替えて良い。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジと称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミングと称する。ダウンエッジをフォーリングエッジに読み替えて良い。
【0013】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。また、特に記述なき限り、任意のMOSFETにおいて、バックゲートはソースに短絡されていると考えて良い。
【0014】
MOSFETの電気的特性にはゲート閾電圧が含まれる。Nチャネル型且つエンハンスメント型のMOSFETである任意のトランジスタについて、当該トランジスタのゲート電位が当該トランジスタのソース電位よりも高く、且つ、当該トランジスタのゲート-ソース間電圧の大きさが当該トランジスタのゲート閾電圧以上であるとき、当該トランジスタはオン状態となり、そうでないとき、当該トランジスタはオフ状態となる。Pチャネル型且つエンハンスメント型のMOSFETである任意のトランジスタについて、当該トランジスタのゲート電位が当該トランジスタのソース電位よりも低く、且つ、当該トランジスタのゲート-ソース間電圧の大きさが当該トランジスタのゲート閾電圧以上であるとき、当該トランジスタはオン状態となり、そうでないとき、当該トランジスタはオフ状態となる。任意のFETについて、ゲート閾電圧とは、所定の周辺温度環境下において、当該FETのドレイン及びソース間に所定電圧を印加している際に所定の大きさのドレイン電流を流すために必要なゲート-ソース間電圧として定義される。ゲート-ソース間電圧はソース電位から見たゲート電位に相当する。
【0015】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。
【0016】
ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0017】
任意の回路素子、配線(ライン)、ノードなど、回路を形成する複数の部位間についての接続とは、特に記述なき限り、電気的な接続を指すと解して良い。
【0018】
図1に本開示の実施形態に係る電源装置1の回路図を示す。電源装置1はスイッチトキャパシタコンバータ(以下、SCCと称する)である。故に、電源装置1を以下SCC1と称する。
【0019】
SCC1は、主たる構成部品として、スイッチ素子M1~M8とフライングキャパシタであるキャパシタC1~C3とを備える。SCC1に対して電圧源4が接続される。電圧源4は、所定の正の直流電圧値を有する直流電圧を生成し、該直流電圧を入力電圧V
INとしてSCC1に供給する。
図1にはSCC1の負荷LDも示されている。負荷LDはSCC1に対して接続される任意の負荷である。
【0020】
図2に示す如く、スイッチ素子M1~M8はパワートランジスタにて構成される。このため、部品M1~M8はスイッチ素子M1~M8と称されることもあるし、パワートランジスタM1~M8と称されることもある。パワートランジスタM1~M8は、夫々に、Nチャネル型のMOSFETにより形成される。スイッチ素子M1の一端はパワートランジスタM1のドレインに相当し、スイッチ素子M1の他端はパワートランジスタM1のソースに相当する。同様に、スイッチ素子M2の一端はパワートランジスタM2のドレインに相当し、スイッチ素子M2の他端はパワートランジスタM2のソースに相当する。スイッチ素子M3~M8についても同様である。
【0021】
端子PINは入力端子(電圧入力端子)であって入力電圧VINを受ける。端子OUTは出力端子(電圧出力端子)であって端子OUTに出力電圧VOUTが加わる。出力電圧VOUTはSCC1の出力電圧である。端子SW1、SW2、SW3、SW6、SW7に加わる電圧を、夫々、電圧VSW1、VSW2、VSW3、VSW6、VSW7と称する。端子PIN及びOUTに対してパワートランジスタM1~M8及びキャパシタC1~C3から成るスイッチング回路が接続され、パワートランジスタM1~M8を所定パターンに従ってオン、オフすることで入力電圧VINから出力電圧VOUTが生成されるよう、パワートランジスタM1~M8及びキャパシタC1~C3が互いに接続される。
【0022】
具体的には、パワートランジスタM1のドレインは端子PINに接続される。端子PINは電圧源4の正側出力端子に接続され、電圧源4からの入力電圧VINを受ける。従ってパワートランジスタM1のドレインに入力電圧VINが加わる。パワートランジスタM1のソース、パワートランジスタM2のドレイン及びキャパシタC1の第1端は端子SW1に共通接続される。キャパシタC1の第2端、パワートランジスタM7のソース及びパワートランジスタM8のドレインは端子SW7に共通接続される。パワートランジスタM2のソース、パワートランジスタM3のドレイン及びキャパシタC2の第1端は端子SW2に共通接続される。キャパシタC2の第2端、パワートランジスタM6のソース及びパワートランジスタM5のドレインは端子SW6に共通接続される。パワートランジスタM3のソース、パワートランジスタM4のドレイン及びキャパシタC3の第1端は端子SW3に共通接続される。キャパシタC3の第2端は端子SW7に接続される。パワートランジスタM4のソースとパワートランジスタM6及びM7の各ドレインは端子OUTに共通接続される。パワートランジスタM5及びM8の各ソースは端子PGNDに共通接続される。端子PGNDはグランドに接続される。負荷LDの一端は端子OUTに接続され、負荷LDの他端は端子PGNDに接続される。
【0023】
このため、パワートランジスタM1は自身のオン、オフによって端子PIN及びSW1間を導通又は遮断する。パワートランジスタM2は自身のオン、オフによって端子SW1及びSW2間を導通又は遮断する。パワートランジスタM3は自身のオン、オフによって端子SW2及びSW3間を導通又は遮断する。パワートランジスタM4は自身のオン、オフによって端子SW3及びOUT間を導通又は遮断する。パワートランジスタM5は自身のオン、オフによって端子SW6及びPGND間を導通又は遮断する。パワートランジスタM6は自身のオン、オフによって端子OUT及びSW6間を導通又は遮断する。パワートランジスタM7は自身のオン、オフによって端子OUT及びSW7間を導通又は遮断する。パワートランジスタM8は自身のオン、オフによって端子SW7及びPGND間を導通又は遮断する。
【0024】
ここでは、SCC1を分圧器として機能させることが想定されている。具体的には、
図1及び
図2のSCC1において、出力電圧V
OUTは入力電圧V
INの1/4倍の電圧である。入力電圧V
INの値は任意であって良いが、ここでは、説明の具体化のため、入力電圧V
INは48Vであるとする。そうすると、SCC1が安定して動作している状態において、出力電圧V
OUTは12Vである。パワートランジスタM1~M8の各ゲートに加わる信号をゲート信号と称し、パワートランジスタM1~M8のゲート信号を夫々ゲート信号G1~G8と称する。
【0025】
図3はSCC1の概略的な構成ブロック図である。SCC1は、電源用半導体装置である電源IC2と、電源IC2に対して外付け接続される複数のディスクリート部品から成るディスクリート部品群3と、を備える。キャパシタC1~C3はディスクリート部品群3に含まれる。電源IC2によりパワートランジスタM1~M8が所定パターンに従ってオン、オフされることで入力電圧V
INから出力電圧V
OUTが生成される。パワートランジスタM1~M8は電源IC2に内蔵される。但し、パワートランジスタM1~M8がディスクリート部品群3に含まれるよう変形しても良い。
【0026】
図4及び
図5に電源IC2の外観斜視図を示す。電源IC2は、半導体基板上に形成された半導体集積回路を有する半導体チップCPと、半導体チップCPを収容する筐体CS(パッケージ)と、筐体CSから電源IC2の外部に対して露出する複数の外部端子と、を備えた電子部品である。半導体チップCPを樹脂にて構成された筐体CS内に封入することで電源IC2が形成される。
図4は、電源IC2の筐体CSの表面側から電源IC2を観測したときの、電源IC2の外観斜視図である。
図5は、電源IC2の筐体CSの裏面側から電源IC2を観測したときの、電源IC2の外観斜視図である。
図4及び
図5の内、
図4においてのみ半導体チップCPの概略形状を破線にて示している。筐体CSの裏面には放熱用の金属パッドPADが設けられる。
図1及び
図2に示される端子PIN、OUT、PGND、SW1、SW2、SW3、SW6及びSW7は、電源IC2に設けられる外部端子である。
【0027】
尚、
図4及び
図5に示される電源IC2の筐体の種類並びに電源IC2の外部端子の形状及び数は例示に過ぎず、それらを任意に設計可能である。
【0028】
図6に電源IC2の概略的な内部ブロック図を示す。電源IC2は制御ブロック10、駆動ブロック20、スイッチブロック30及び駆動電圧生成ブロック40を備える。スイッチブロック30はパワートランジスタM1~M8を有する。電源IC2に設けられる回路であって、制御ブロック10及び駆動ブロック20を有して構成される回路を制御駆動回路50と称する。制御ブロック10、駆動ブロック20、スイッチブロック30及び駆動電圧生成ブロック40が半導体集積回路の形態にて半導体チップCPに設けられ、従って制御駆動回路50も半導体集積回路の形態にて半導体チップCPに設けられる。
【0029】
制御ブロック10は、パワートランジスタM1~M8のオン、オフを指定する制御信号CNTを生成し、生成した制御信号CNTを駆動ブロック20に出力する。駆動ブロック20はパワートランジスタM1~M8の各ゲートに接続され、制御信号CNTに基づいてパワートランジスタM1~M8のゲートを駆動することでパワートランジスタM1~M8をオン又はオフさせる。即ち、駆動ブロック20は制御信号CNTに基づいてゲート信号G1~G8を生成及び出力し、これにより制御信号CNTの指定内容に従ってパワートランジスタM1~M8の状態を個別にオン状態又はオフ状態とする。駆動電圧生成ブロック40は、パワートランジスタM1~M8を駆動するための電圧である駆動用電圧を生成する。駆動ブロック20は、駆動用電圧を用いてパワートランジスタM1~M8の状態を個別にオン状態又はオフ状態とする。
【0030】
図7に示されるゲートドライバ21~28が駆動ブロック20に設けられる。
図7に示される端子BST1~BST4、BST6及びBST7は、電源IC2に設けられる外部端子である。
図7において、キャパシタC
BST1~C
BST4、C
BST6及びC
BST7は、ディスクリート部品群3に含まれるブートストラップキャパシタである。
【0031】
電源IC2の外部において、キャパシタCBST1~CBST4、CBST6及びCBST7の第1端は、夫々、端子BST1~BST4、BST6及びBST7に接続される。電源IC2の外部において、キャパシタCBST1~CBST3、CBST6及びCBST7の第2端は、夫々、端子SW1~SW3、SW6及びSW7に接続され、キャパシタCBST4の第2端は端子OUTに接続される。フライングキャパシタであるキャパシタC1~C3も電源IC2の外部に設けられ、電源IC2の外部において、キャパシタC1が端子SW1及びSW7に接続され、キャパシタC2が端子SW2及びSW6に接続され、且つ、キャパシタC3が端子SW3及びSW7に接続される。
【0032】
ゲートドライバ21は、端子BST1及びSW1並びにパワートランジスタM1のゲートに接続され、端子BST1及びSW1間の電圧に基づいてゲートG1を生成及び出力する。ゲートドライバ22は、端子BST2及びSW2並びにパワートランジスタM2のゲートに接続され、端子BST2及びSW2間の電圧に基づいてゲートG2を生成及び出力する。ゲートドライバ23は、端子BST3及びSW3並びにパワートランジスタM3のゲートに接続され、端子BST3及びSW3間の電圧に基づいてゲートG3を生成及び出力する。ゲートドライバ26は、端子BST6及びSW6並びにパワートランジスタM6のゲートに接続され、端子BST6及びSW6間の電圧に基づいてゲートG6を生成及び出力する。ゲートドライバ27は、端子BST7及びSW7並びにパワートランジスタM7のゲートに接続され、端子BST7及びSW7間の電圧に基づいてゲートG7を生成及び出力する。
【0033】
ゲートドライバ24は、端子BST4及びOUT並びにパワートランジスタM4のゲートに接続され、端子BST4及びOUT間の電圧に基づいてゲートG4を生成及び出力する。ゲートドライバ25は、内部電源電圧VREGが加わる端子、端子PGND並びにパワートランジスタM5のゲートに接続され、グランド電位を基準に内部電源電圧VREGに基づいてゲートG5を生成及び出力する。ゲートドライバ28は、内部電源電圧VREGが加わる端子、端子PGND並びにパワートランジスタM8のゲートに接続され、グランド電位を基準に内部電源電圧VREGに基づいてゲートG8を生成及び出力する。
【0034】
図8に示す如く、駆動電圧生成ブロック40は、端子BST1~BST4、BST6、BST7、SW1~SW3、SW6、SW7及びOUTに接続され、キャパシタC
BST1~C
BST4、C
BST6及びC
BST7と共にブートストラップ回路を構成することで、上述の駆動用電圧(パワートランジスタM1~M8を駆動するための電圧)を生成する。ブートストラップ回路自体は公知技術に属するため、その内部の詳細な回路構成及び動作の説明を省略する。
【0035】
駆動用電圧は、端子SW1の電位から見た端子BST1の電圧である第1ブート電圧、端子SW2の電位から見た端子BST2の電圧である第2ブート電圧、端子SW3の電位から見た端子BST3の電圧である第3ブート電圧、端子OUTの電位から見た端子BST4の電圧である第4ブート電圧、端子SW6の電位から見た端子BST6の電圧である第6ブート電圧、及び、端子SW7の電位から見た端子BST7の電圧である第7ブート電圧を含み、ここでは更に内部電源電圧VREGを含むと考える。尚、内部電源電圧VREGは入力電圧VIN又は出力電圧VOUTに基づき生成される正の直流電圧である。
【0036】
第1、第2、第3、第4、第6、第7ブート電圧は、夫々、パワートランジスタM1、M2、M3、M4、M6、M7のゲート閾電圧より大きい。内部電源電圧VREGはパワートランジスタM5及びM8の各ゲート閾電圧より大きい。各パワートランジスタのゲート閾電圧は正の電圧値(例えば0.5V)を有する。
【0037】
ゲート信号G1~G8は夫々にハイレベル又はローレベルの信号レベルを持つ。ハイレベルのゲート信号G1、G2、G3、G4、G6、G7は、夫々、端子BST1、BST2、BST3、BST4、BST6、BST7の電位を有する。ローレベルのゲート信号G1、G2、G3、G4、G6、G7は、夫々、端子SW1、SW2、SW3、OUT、SW6、SW7の電位を有する。ハイレベルのゲート信号G5及びG8は内部電源電圧VREGの電位を有する。ローレベルのゲート信号G5及びG8はグランド電位を有する。
【0038】
故に、パワートランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8は、夫々、ゲート信号G1、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8がハイレベルを有するときオン状態である。パワートランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7、M8は、夫々、ゲート信号G1、G2、G3、G4、G5、G6、G7、G8がローレベルを有するときオフ状態である。
【0039】
図9に基本スイッチング制御SC1のタイミングチャートを示す。電源IC2は基本スイッチング制御SC1を実行できて良い。この際、基本スイッチング制御SC1は制御ブロック10及び駆動ブロック20の協働により実現されると解される。基本スイッチング制御SC1において、制御ブロック10は、制御信号CNT(
図6参照)として制御信号CNT1及びCNT2を生成し駆動ブロック20に出力する。基本スイッチング制御SC1において、制御信号CNT1及びCNT2は、交互にハイレベル、ローレベルの信号レベルを持つ周波数f
SWの矩形波信号である。周波数f
SWはパワートランジスタM1~M8のスイッチング周波数に相当する。
【0040】
即ち、基本スイッチング制御SC1において、制御信号CNT1は交互にハイレベル、ローレベルとなり、制御信号CNT1の1周期における制御信号CNT1のハイレベル期間の長さ及び制御信号CNT1のローレベル期間の長さは互いに等しい。故に制御信号CNT1のデューティは50%である。制御信号CNT1の1周期の逆数が周波数fSWである。基本スイッチング制御SC1において、制御信号CNT2も交互にハイレベル、ローレベルとなる。但し、制御信号CNT1と制御信号CNT2とは、位相が180°互いにずれている。故に、基本スイッチング制御SC1において、制御信号CNT1がハイレベルであるとき、制御信号CNT2はローレベルであり、且つ、制御信号CNT1がローレベルであるとき、制御信号CNT2はハイレベルである。制御信号CNT1がハイレベルであって且つ制御信号CNT2がローレベルである期間を期間P1と称し、制御信号CNT1がローレベルであって且つ制御信号CNT2がハイレベルである期間を期間P2と称する。基本スイッチング制御SC1では期間P1及びP2が交互に繰り返し訪れ、期間P1及びP2の繰り返し周波数が周波数fSWである。
【0041】
基本スイッチング制御SC1において、制御信号CNT1はゲートドライバ21、23、25及び27に対する制御信号として機能し、制御信号CNT2はゲートドライバ22、24、26及び28に対する制御信号として機能する。
【0042】
期間P1において、ゲートドライバ21、23、25、27はハイレベルの制御信号CNT1に基づき夫々ハイレベルのゲート信号G1、G3、G5、G7をパワートランジスタM1、M3、M5、M7のゲートに供給する。期間P1において、ゲートドライバ22、24、26、28はローレベルの制御信号CNT2に基づき夫々ローレベルのゲート信号G2、G4、G6、G8をパワートランジスタM2、M4、M6、M8のゲートに供給する。このため、基本スイッチング制御SC1に係る期間P1において、
図10に示す如く、パワートランジスタM1、M3、M5及びM7はオン状態に制御される一方、パワートランジスタM2、M4、M6及びM8はオフ状態に制御される。
【0043】
期間P2において、ゲートドライバ21、23、25、27はローレベルの制御信号CNT1に基づき夫々ローレベルのゲート信号G1、G3、G5、G7をパワートランジスタM1、M3、M5、M7のゲートに供給する。期間P2において、ゲートドライバ22、24、26、28はハイレベルの制御信号CNT2に基づき夫々ハイレベルのゲート信号G2、G4、G6、G8をパワートランジスタM2、M4、M6、M8のゲートに供給する。このため、基本スイッチング制御SC1に係る期間P2において、
図11に示す如く、パワートランジスタM1、M3、M5及びM7はオフ状態に制御される一方、パワートランジスタM2、M4、M6及びM8はオン状態に制御される。
【0044】
図12及び
図13に基本スイッチング制御SC1における各端子の電圧波形を示す。
図12には、基本スイッチング制御SC1における電圧V
SW1及びV
SW3の波形が矩形波状の実線波形で示され、基本スイッチング制御SC1における電圧V
SW2及びV
SW6の波形が矩形波状の破線波形で示される。
図13には、基本スイッチング制御SC1における電圧V
SW1、V
SW3及びV
SW7の波形が矩形波状の実線波形で示され、基本スイッチング制御SC1における電圧V
SW2の波形が矩形波状の破線波形で示される。
図12及び
図13は、SCC1の出力電圧V
OUTが安定化された後の各端子電圧を表している。SCC1の出力電圧V
OUTが安定化された後、出力電圧V
OUTは電圧(V
IN×1/4)と実質的に一致する。
【0045】
基本スイッチング制御SC1に係る期間P1において、電圧VSW1は入力電圧VINと実質的に一致し、電圧VSW2及びVSW3は電圧(VIN×1/2)と実質的に一致し、電圧VSW6は0Vと実質的に一致し、電圧VSW7は電圧(VIN×1/4)と実質的に一致する。基本スイッチング制御SC1に係る期間P2において、電圧VSW1及びVSW2は電圧(VIN×3/4)と実質的に一致し、電圧VSW3及びVSW6は電圧(VIN×1/4)と実質的に一致し、電圧VSW7は0Vと実質的に一致する。
【0046】
図14及び
図15を参照して、基本スイッチング制御SC1における電流の流れを説明する。電圧源4から端子P
INに供給される電流を入力電流I_inと称する。入力電流I_inは、パワートランジスタM1がオンであるときにパワートランジスタM1のチャネルを通じ端子SW1に向けて流れる。
図14において、Cp2はパワートランジスタM2に付加される寄生容量を表す。寄生容量Cp2はパワートランジスタM2のドレイン及びソース間に付加される。
【0047】
図15には、基本スイッチング制御SC1において制御信号CNT1のアップエッジが生じる時刻T
A1の周辺の信号波形が示されている。
図15では、上から下に向けて、制御信号CNT1、電圧V
SW1、電圧V
SW2、入力電流I_inの波形が示される。基本スイッチング制御SC1では、時刻T
A1における制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM1、M3、M5及びM7のターンオンとパワートランジスタM2、M4、M6及びM8のターンオフが同時に行われる。
【0048】
時刻TA1における制御信号CNT1のアップエッジに同期したパワートランジスタM1のターンオンに伴い、時刻TA1から時刻TA2にかけて電圧VSW1が電圧(VIN×3/4)から入力電圧VINに向けて上昇する。時刻TA1における制御信号CNT1のアップエッジ(換言すれば制御信号CNT2のダウンエッジ)に同期したパワートランジスタM2のターンオフに伴い、時刻TA1から時刻TA2にかけて電圧VSW2が電圧(VIN×3/4)から電圧(VIN×1/2)に向けて低下する。このため、時刻TA1及びTA2間において寄生容量Cp2が電圧(VIN×1/2)分だけ充電され、その充電に必要な電流が入力電流I_inに含まれる。即ち、時刻TA1及びTA2間において入力電流I_inにより寄生容量Cp2が電圧(VIN×1/2)分だけ充電される。
【0049】
時刻TA1を起点とする電圧VSW1の上昇及び電圧VSW2の低下が時刻TA2にて完了する。時刻TA2の後、入力電流I_inはキャパシタC1に向けて流れ、キャパシタC1の充電に供される。時刻TA2の後の入力電流I_inは、端子OUTに電荷を移動させるための電流であって、所望電圧にて出力電圧VOUTを安定化させるために本来必要な電流であり、負荷LDの消費電流に応じて変化する。
【0050】
時刻TA1及びTA2間における寄生容量Cp2への充電電流は相応に大きく、寄生容量Cp2への充電電流が入力配線を通じて流れることで比較的大きなノイズ(放射ノイズ)が発生する。入力配線とは、電圧源4と端子PINとを接続する配線を指す。入力配線に高周波の大電流が流れることはノイズの増大要因となる。電圧源4及び端子PIN間の距離が大きく、入力配線が長くなる場合にはノイズの影響も増大する。
【0051】
このようなノイズの低減に寄与するスイッチング制御として、改良スイッチング制御SC2を提案する。SCC1に設けられる複数のスイッチ素子(M1~M8)は、制御信号CNT1に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群と、制御信号CNT2に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群と、を有する。換言すれば、SCC1に設けられる各スイッチ素子(M1~M8)は、制御信号CNT1に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群、及び、制御信号CNT2に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群の何れかに属する。具体的には、スイッチ素子M1、M3、M5及びM7が第1スイッチ素子群に属し、スイッチ素子M2、M4、M6及びM8が第2スイッチ素子群に属する。換言すれば、第1スイッチ素子群はスイッチ素子M1、M3、M5及びM7を有し、第2スイッチ素子群はスイッチ素子M2、M4、M6及びM8を有する。
【0052】
改良スイッチング制御SC2では、制御信号CNT1に基づいて第1スイッチ素子群に属する各スイッチ素子をターンオンさせる際、スイッチ素子M1のターンオンタイミングを、スイッチ素子M3、M5及びM7のターンオンタイミングより遅らせる。この点を除き、改良スイッチング制御SC2は基本スイッチング制御SC1と同様であって良い。スイッチ素子M1は対象スイッチ素子の例であり、スイッチ素子M3、M5及びM7は非対象スイッチ素子の例である。
【0053】
図16に改良スイッチング制御SC2のタイミングチャートを示す。本開示に係る電源IC2において、実際には基本スイッチング制御SC1ではなく改良スイッチング制御SC2が実行される。改良スイッチング制御SC2は制御ブロック10及び駆動ブロック20の協働により実現されると解される。尚、基本スイッチング制御SC1又は改良スイッチング制御SC2を選択的に実行可能となるよう、電源IC2が形成されていても良い。改良スイッチング制御SC2において、制御ブロック10は、制御信号CNT(
図6参照)として制御信号CNT1及びCNT2を生成し駆動ブロック20に出力する。改良スイッチング制御SC2における制御信号CNT1及びCNT2は、基本スイッチング制御SC1における制御信号CNT1及びCNT2と同じものである。故に、改良スイッチング制御SC2において、制御信号CNT1及びCNT2は交互にハイレベル、ローレベルの信号レベルを持つ周波数f
SWの矩形波信号であり、制御信号CNT1と制御信号CNT2とは位相が180°互いにずれている。周波数f
SWはパワートランジスタM1~M8のスイッチング周波数に相当する。
【0054】
上述したように、制御信号CNT1がハイレベルであって且つ制御信号CNT2がローレベルである期間を期間P1と称し、制御信号CNT1がローレベルであって且つ制御信号CNT2がハイレベルである期間を期間P2と称する。基本スイッチング制御SC1と同様、改良スイッチング制御SC2では期間P1及びP2が交互に繰り返し訪れ、期間P1及びP2の繰り返し周波数が周波数fSWである。
【0055】
制御信号CNT1のアップエッジタイミングと制御信号CNT2のダウンエッジタイミングは同じであり、制御信号CNT1のダウンエッジタイミングと制御信号CNT2のアップタイミングは同じであるので、制御信号CNT1のアップエッジタイミング及びダウンエッジタイミングに着目して改良スイッチング制御SC2を説明する。
【0056】
改良スイッチング制御SC2では、制御信号CNT1のアップエッジに同期してゲート信号G3、G5及びG7にアップエッジを生じさせることでパワートランジスタM3、M5及びM7を同時にターンオンさせ、且つ、制御信号CNT1のアップエッジに同期して(換言すれば制御信号CNT2のダウンエッジに同期して)ゲート信号G2、G4、G6及びG8にダウンエッジを生じさせることでパワートランジスタM2、M4、M6及びM8を同時にターンオフさせる。
【0057】
改良スイッチング制御SC2では、制御信号CNT1のアップエッジタイミングから遅延時間tdが経過したタイミングにてゲート信号G1にアップエッジを生じさせることでパワートランジスタM1をターンオンさせる。
【0058】
このため、改良スイッチング制御SC2に係る期間P1は、パワートランジスタM3、M5及びM7がオン且つパワートランジスタM1、M2、M4、M6及びM8がオフとなる前段期間と、パワートランジスタM1、M3、M5及びM7がオン且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8がオフとなる後段期間とで構成され、遅延時間td分の前段期間の後に後段期間が訪れる。遅延時間tdは期間P1よりも十分に短く、例えば、制御信号CNT1の位相の1°分程度の時間である。
【0059】
改良スイッチング制御SC2では、制御信号CNT1のダウンエッジに同期してゲート信号G1、G3、G5及びG7にダウンエッジを生じさせることでパワートランジスタM1、M3、M5及びM7を同時にターンオフさせ、且つ、制御信号CNT1のダウンエッジに同期して(換言すれば制御信号CNT2のアップエッジに同期して)ゲート信号G2、G4、G6及びG8にアップエッジを生じさせることでパワートランジスタM2、M4、M6及びM8を同時にターンオンさせる。
【0060】
このため、改良スイッチング制御SC2に係る期間P2では、基本スイッチング制御SC1に係る期間P2と同様、パワートランジスタM1、M3、M5及びM7がオフ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8がオンである。
【0061】
図17に、SCC1の回路の内、改良スイッチング制御SC2の動作に特に関与する部分の回路図を示す。
図1及び
図2等には示されていないが、SCC1において端子OUTとグランドとの間には出力キャパシタC
OUTが設けられる。即ち、出力キャパシタC
OUTの一端は端子OUTに接続され、出力キャパシタC
OUTの他端はグランド(従って端子PGND)に接続される。出力キャパシタC
OUTの両端間に出力電圧V
OUTが加わる。
【0062】
図18には、改良スイッチング制御SC2において制御信号CNT1のアップエッジが生じる時刻T
B1の周辺の信号波形が示されている。
図18では、上から下に向けて、制御信号CNT1、電圧V
SW1、電圧V
SW2、電圧V
SW7、入力電流I_inの波形が実線波形として示される。
図18には更に、ゲート信号G1及びG7の波形が破線波形として示される。但し、
図18のタイミングチャートにおいて、後述の時刻T
B3に至るまでゲート信号G1のレベルは電圧V
SW1のレベルと一致するため、電圧V
SW1の波形とゲート信号G1の波形が互いに重なり合う(重なり合う様子は
図18では明らかでない)。また、
図18のタイミングチャートにおいて、時刻T
B1に至るまでゲート信号G7のレベルは電圧V
SW7のレベルと一致するため、電圧V
SW7の波形とゲート信号G7の波形が互いに重なり合う(重なり合う様子は
図18では明らかでない)。
【0063】
時刻TB1において制御信号CNT1にアップエッジが生じる。時刻TB1での制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせるべくゲート信号G3、G5及びG7がローレベルからハイレベルに向けて上昇し、その上昇の過程でパワートランジスタM3、M5及びM7がターンオンする。時刻TB1での制御信号CNT1のアップエッジに同期して(換言すれば制御信号CNT2のダウンエッジに同期して)パワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせるべくゲート信号G2、G4、G6及びG8がハイレベルからローレベルに向けて低下し、その低下の過程でパワートランジスタM2、M4、M6及びM8がターンオフする。
【0064】
時刻T
B1での制御信号CNT1のアップエッジに同期したパワートランジスタM7のターンオン及びパワートランジスタM8のターンオフに伴い、電圧V
SW7が0Vから出力電圧V
OUTに向けて上昇する。時刻T
B1での制御信号CNT1のアップエッジに同期したパワートランジスタM2のターンオフ及びパワートランジスタM3のターンオンに伴い、電圧V
SW2が電圧(V
IN×3/4)から電圧(V
IN×1/2)に向けて低下する。時刻T
B1より後の時刻T
B2は、電圧V
SW7の出力電圧V
OUTへの上昇及び電圧V
SW2の電圧(V
IN×1/2)への低下が完了した時刻を表す。尚、上述したように、出力電圧V
OUTは電圧(V
IN×1/4)に相当する(
図13等参照)。
【0065】
時刻T
B1での制御信号CNT1のアップエッジを契機にパワートランジスタM2がターンオフする一方で電圧V
SW7が電圧(V
IN×1/4)分だけ上昇する。電圧V
SW7の上昇はキャパシタC1を通じて端子SW1の電圧V
SW1を上昇させる。この段階においてパワートランジスタM1はオフ状態であるため、電圧V
SW1を上昇させるための電荷は、
図19の折れ線610の如く、出力キャパシタC
OUTから端子OUT、パワートランジスタM7のチャネル、及び、キャパシタC1を通じ、端子SW1に向けて供給され、寄生容量Cp2の充電に供される。電圧V
SW7の上昇に連動して電圧V
SW1が時刻T
B2にて入力電圧V
INに達する。
【0066】
時刻TB2においてゲート信号G1はローレベルであり、ゲート信号G1のローレベルは端子SW1の電圧VSW1に一致する。時刻TB2の後の時刻TB3において、駆動ブロック20はゲート信号G1をローレベルからハイレベルに上昇させる。この上昇には一定の時間を要するが、ここでは時刻TB3にてゲート信号G1にアップエッジが生じ、時刻TB3にてパワートランジスタM1がターンオンすると考える。そうすると、時刻TB1から時刻TB3までの時間は上述の遅延時間tdに相当する。時刻TB3の後の入力電流I_inは、端子OUTに電荷を移動させるための電流であって、所望電圧にて出力電圧VOUTを安定化させるために本来必要な電流であり、負荷LDの消費電流に応じて変化する。
【0067】
時刻T
B3の段階では寄生容量Cp2の充電が完了している。このため、基本スイッチング制御SC1とは異なり、改良スイッチング制御SC2では、寄生容量Cp2を充電するための入力電流I_in(
図15の時刻T
A1及びT
A2間の入力電流I_inに相当)が流れない又は抑制される。結果、基本スイッチング制御SC1との比較においてノイズの発生量を低減することができる。
【0068】
尚、SCC1の出力電圧VOUTは負荷LDに供給されるための電圧であるため、基本的に、負荷LDは端子OUT及び出力キャパシタCOUTの近くに配置され、負荷LDと端子OUT及び出力キャパシタCOUTとを接続する配線(以下、出力配線と称する)は短い。これに対し、電圧源4及びSCC1間の配線(入力配線)は、電圧源4、SCC1及び負荷LDが組み込まれる装置の形状等に依存して長くなることもある。即ち、入力配線は出力配線よりも長いことが多い。このため、入力配線での発生ノイズの抑制が肝要となり、実際、装置の規格試験では入力配線からの放射ノイズ量が重視又は評価される。また、端子PINの近くに入力電圧VINを受ける入力キャパシタ(不図示)が設けられることが想定されるが、入力電圧VINが比較的高いこともあって、入力キャパシタの容量は出力キャパシタCOUTの容量よりも小さいことが多い。故に、寄生容量Cp2の充電電流を入力配線ではなく出力配線を通じて供給した方がノイズ抑制にとって有利である。
【0069】
以下、複数の実施例の中で、SCC1に関わる幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0070】
<<第1実施例>>
第1実施例を説明する。
図18の例に係る制御駆動回路50(
図6参照)は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、端子SW1における電圧V
SW1が入力電圧V
INにまで上昇してからパワートランジスタM1をターンオンさせている。
【0071】
但し、制御駆動回路50(
図6参照)は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、端子SW1における電圧V
SW1が入力電圧V
INへ上昇する過程においてパワートランジスタM1をターンオンさせても良い。この場合、時刻T
B1の後であって且つ時刻T
B2に至る前に、駆動ブロック20は、ゲート信号G1のローレベルからハイレベルへの上昇を開始させてパワートランジスタM1をターンオンさせることになる。これによっても、基本スイッチング制御SC1と比べて、寄生容量Cp2を充電するための入力電流I_inは小さくなるため、発生ノイズは低減される。
【0072】
<<第2実施例>>
第2実施例を説明する。第2実施例に係る遅延時間tdは予め設定された時間(即ち所定時間)である。即ち、第2実施例に係る制御駆動回路50は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせる一方、制御信号CNT1のアップエッジタイミングより所定時間である遅延時間tdを経てからパワートランジスタM1をターンオンさせる。
【0073】
遅延時間tdを適切に設定しておけば、第2実施例に係る制御駆動回路50は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、電圧VSW1が入力電圧VINにまで上昇してからパワートランジスタM1をターンオンさせることになる。
【0074】
時刻TB1の後、電圧VSW1が入力電圧VINに達するまでに要する時間を、例えば電源IC2又はSCC1の設計段階において評価し、評価結果に基づき遅延時間tdを設定すれば良い。この際、SCC1の効率向上等を図るため、電圧VSW1が入力電圧VINに達した後、極力はやくパワートランジスタM1がターンオンされるよう遅延時間tdを設定しておくことが好ましい。
【0075】
但し、電圧VSW1が入力電圧VINに達した後にパワートランジスタM1がターンオンされることを目指して遅延時間tdを設定した場合でも、各部品の特性ばらつき又はSCC1の周辺温度等に依存して、電圧VSW1が入力電圧VINに達するまでに要する時間と比べて、遅延時間tdが短くなることもある。即ち結果的に、第2実施例に係る制御駆動回路50は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、端子SW1における電圧VSW1が入力電圧VINへ上昇する過程においてパワートランジスタM1をターンオンさせる場合もある。
【0076】
<<第3実施例>>
第3実施例を説明する。制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、電圧V
SW1の入力電圧V
INへの上昇が完了したかを検出するようにしても良く、当該検出を行うための検出回路60を制御駆動回路50に設けておいて良い(
図20参照)。
【0077】
検出回路60は端子PIN及びSW1に接続されて入力電圧VIN及び電圧VSW1を受ける。検出回路60は入力電圧VIN及び電圧VSW1間の差の大きさ(|VIN-VSW1|)を所定の微小な閾値thと比較し、前者が後者(th)より大きい時には“0”の値を持つ信号S60を出力し、前者が後者(th)より小さいときには“1”の値を持つ信号S60を出力する。信号S60の値における“0”から“1”に切り替わりは、電圧VSW1の入力電圧VINへの上昇が完了したことを表す(当該完了が検出されたことを表す)。
【0078】
第3実施例に係る制御駆動回路50は、制御信号CNT1のアップエッジに同期してパワートランジスタM3、M5及びM7をターンオンさせ且つパワートランジスタM2、M4、M6及びM8をターンオフさせた後、信号S60の値が“0”から“1”に切り替わると、電圧VSW1の入力電圧VINへの上昇が完了したと判断してパワートランジスタM1をターンオンさせる(即ち当該完了の検出後にパワートランジスタM1をターンオンさせる)。
【0079】
<<第4実施例>>
第4実施例を説明する。第4実施例では上述の各事項に対する変形技術等を説明する。
【0080】
任意の信号又は電圧に関して、上述の主旨を損なわない形で、それらのハイレベルとローレベルの関係は上述したものの逆とされ得る。
【0081】
各実施形態に示されたFET(電界効果トランジスタ)のチャネルの種類は例示である。上述の主旨を損なわない形で、任意のFETのチャネルの種類はPチャネル型及びNチャネル型間で変更され得る。例えば、パワートランジスタM1~M8をPチャネル型のMOSFETにて形成することもできる。
【0082】
不都合が生じない限り、上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタを、不都合が生じない限り、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0083】
本実施形態では、8つのスイッチ素子(M1~M8)と3つのフライングキャパシタ(C1~C3)を
図1の接続関係で接続して構成されるSCCを例に挙げた。しかしながら、周知の如く、SCCにおけるスイッチ素子の数及びフライングキャパシタの数、並びに、複数のスイッチ素子及び複数のフライングキャパシタの接続関係は、様々であって、上述したものに本開示技術は限定されない。入力電圧(V
IN)を受ける入力端子及び出力電圧(V
OUT)が加わる出力端子に対し、複数のスイッチ素子及び複数のフライングキャパシタから成るスイッチング回路を接続し、複数のスイッチ素子を所定パターンに従ってオン、オフすることで入力電圧(V
IN)から出力電圧(V
OUT)が生成されるよう、複数のスイッチ素子及び複数のフライングキャパシタが互いに接続されておれば良い。
【0084】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【0085】
<<付記>>
上述の実施形態にて具体的構成例が示された本開示について付記を設ける。
【0086】
本開示の一側面に係る電源用半導体装置は、複数のスイッチ素子(M1~M8)及び複数のキャパシタ(C1~C3)を有し、前記複数のスイッチ素子を所定パターンに従ってオン、オフすることで入力電圧(VIN)から出力電圧(VOUT)を生成するスイッチトキャパシタコンバータ(1)に用いられるよう構成された電源用半導体装置(2)であって、各スイッチ素子のオン又はオフを指定する制御信号(CNT1)を生成し、前記制御信号に基づき各スイッチ素子をオン又はオフするよう構成された制御駆動回路(50)を備え、前記複数のスイッチ素子は、前記制御信号(CNT1)に基づいてオン、オフが制御される第1スイッチ素子群(M1、M3、M5、M7)と、前記制御信号と位相が180°ずれた信号(CNT2)に基づいてオン、オフが制御される第2スイッチ素子群(M2、M4、M6、M8)と、を有し、前記第1スイッチ素子群は、前記入力電圧を受けるよう構成された対象スイッチ素子(M1)と、非対象スイッチ素子(M3、M5、M7)を有し、前記制御駆動回路は、前記制御信号に基づいて前記第1スイッチ素子群に属する各スイッチ素子をターンオンさせる際、前記対象スイッチ素子(M1)のターンオンタイミングを、前記非対象スイッチ素子(M3、M5、M7)のターンオンタイミングより遅らせる構成(第1の構成)である。
【0087】
これにより、対象スイッチ素子に繋がる寄生容量への充電電流を、対象スイッチ素子がターンオンする前に、非対象スイッチ素子を通じて供給するといったことが可能となる。つまり、対象スイッチ素子に繋がる寄生容量への充電電流が対象スイッチ素子を通じて供給されることが抑制される。結果、入力電圧が加わる配線(入力配線)に上記充電電流が流れることによるノイズ(放射ノイズ)が抑制される。
【0088】
上記第1の構成に係る電源用半導体装置において、前記制御信号は第1レベル又は第2レベルを有し、前記制御駆動回路は、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子(M3、M5、M7)をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子(M2、M4、M6、M8)をターンオフさせてから、前記対象スイッチ素子(M1)をターンオンさせ、前記制御信号における前記第2レベルから前記第1レベルの変化に同期して、前記対象スイッチ素子及び前記非対象スイッチ素子をターンオフさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオンさせる構成(第2の構成)であっても良い。
【0089】
尚、第1レベル、第2レベルは例えば夫々ハイレベル、ローレベルに対応するが、それらの関係は逆であっても良い。
【0090】
上記第2の構成に係る電源用半導体装置において、前記対象スイッチ素子(M1)は、前記入力電圧が加わる入力端子(PIN)と第1端子(SW1)に接続されて前記入力端子及び前記第1端子間を導通又は遮断し、前記第1スイッチ素子群は、前記非対象スイッチ素子として、前記出力電圧が加わる出力端子(OUT)と第2端子(SW7)に接続されて前記出力端子及び前記第2端子間を導通又は遮断する第1特定スイッチ素子(M7)を有し、前記第2スイッチ素子群は、前記第1端子(SW1)と第3端子(SW2)に接続されて前記第1端子及び前記第3端子間を導通又は遮断する第2特定スイッチ素子(M2)と、前記第2端子(SW7)と前記出力電圧より低い電位を有する第4端子(PGND)に接続されて前記第2端子及び前記第4端子間を導通又は遮断する第3特定スイッチ素子(M8)と、を有し、前記複数のキャパシタは前記第1端子及び前記第2端子間に設けられる対象キャパシタ(C1)を有する構成(第3の構成)であっても良い。
【0091】
これにより、第2特定スイッチ素子に付加される寄生容量への充電電流を、対象スイッチ素子がターンオンする前に、出力端子から第1特定スイッチ素子及び対象キャパシタを通じて供給するといったことが可能となる。つまり、上記寄生容量への充電電流が対象スイッチ素子を通じて供給されることが抑制される。結果、入力電圧が加わる配線(入力配線)に上記充電電流が流れることによるノイズ(放射ノイズ)が抑制される。
【0092】
尚、上述の実施形態において、上記第4端子は端子PGNDに対応するが、出力電圧より低い電位を有する端子であれば任意である。
【0093】
上記第3の構成に係る電源用半導体装置において(
図18、
図19参照)、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して前記非対象スイッチ素子がターンオンされ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子がターンオフされることで、前記第2端子の電圧(V
SW7)が前記出力電圧に向けて上昇し、前記第2端子の電圧の上昇が前記対象キャパシタ(C1)を通じて前記第1端子の電圧(V
SW1)を前記入力電圧に向けて上昇させ、前記制御駆動回路は、前記第1端子の電圧が前記入力電圧にまで上昇してから前記対象スイッチ素子をターンオンさせる、又は、前記第1端子の電圧の前記入力電圧への上昇の過程において前記対象スイッチ素子をターンオンさせる構成(第4の構成)であっても良い。
【0094】
これにより、入力電圧が加わる配線(入力配線)に上記充電電流が流れることによるノイズ(放射ノイズ)が抑制される。
【0095】
上記第2~第4の構成の何れかに係る電源用半導体装置において、前記制御駆動回路は、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオフさせ、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化の後、所定時間を経てから前記対象スイッチ素子をターンオンさせる構成(第5の構成)であっても良い。
【0096】
所定時間を適切に設定しておくことで、例えば、第1端子の電圧が入力電圧にまで上昇してから対象スイッチ素子をターンオンさせることが可能となる。
【0097】
上記第4の構成に係る電源用半導体装置において、前記制御駆動回路は、前記制御信号における前記第1レベルから前記第2レベルへの変化に同期して、前記非対象スイッチ素子をターンオンさせ且つ前記第2スイッチ素子群における各スイッチ素子をターンオフさせた後、前記第1端子の電圧の前記入力電圧への上昇が完了したかを検出し、前記完了の検出後に前記対象スイッチ素子をターンオンさせる構成(第6の構成)であっても良い。
【0098】
これにより、第1端子の電圧が入力電圧にまで上昇してから対象スイッチ素子をターンオンさせるというシーケンスを確実に担保できる。
【0099】
上記第1~第6の構成の何れかに係る電源用半導体装置において、前記入力端子を受けるよう構成された入力端子(PIN)と、前記出力電圧が加わるよう構成された出力端子(OUT)と、を備え、前記入力端子及び前記出力端子に対し、前記複数のスイッチ素子及び前記複数のキャパシタを有するスイッチング回路が接続され、前記複数のスイッチ素子を前記所定パターンに従ってオン、オフすることで前記入力電圧から前記出力電圧が生成されるよう、前記複数のスイッチ素子及び前記複数のキャパシタが互いに接続される構成(第7の構成)であっても良い。
【0100】
本開示の一側面に係るスイッチドキャパシタコンバータは、複数のパワートランジスタを有する、上記第1~第7の構成の何れかに係る電源用半導体装置と、複数のキャパシタを備える構成(第8の構成)である。
【符号の説明】
【0101】
1 SCC(スイッチドキャパシタコンバータ)
2 電源IC
3 ディスクリート部品群
4 電圧源
C1~C3 キャパシタ(フライングキャパシタ)
M1~M8 パワートランジスタ(スイッチ素子)
LD 負荷
PIN、SW1~SW3、SW6、SW7、OUT、PGND 端子
G1~G8 ゲート信号
CS 筐体
CP 半導体チップ
PAD 放熱パッド
VIN 入力電圧
VOUT 出力電圧
VSW1~VSW3、VSW6、VSW7 電圧
10 制御ブロック
20 駆動ブロック
21~28 ゲートドライバ
30 スイッチブロック
40 駆動電圧生成ブロック
50 制御駆動回路
60 検出回路
CBST1~CBST4、CBST6、CBST7 キャパシタ(ブートストラップキャパシタ)
BST1~BST4、BST6、BST7 端子
CNT、CNT1、CNT2 制御信号
Cp2 寄生容量