(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166290
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】エンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機
(51)【国際特許分類】
H02P 9/08 20060101AFI20231114BHJP
H02P 101/25 20150101ALN20231114BHJP
H02P 103/10 20150101ALN20231114BHJP
【FI】
H02P9/08 B
H02P101:25
H02P103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077257
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕亮
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA02
5H590CA07
5H590CA21
5H590CA24
5H590CC08
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE02
5H590DD43
5H590DD64
5H590EA01
5H590EA07
5H590FA05
5H590HA04
5H590HA14
5H590KK04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータ機器の作動台数を順次増やした場合であっても,追加始動するモータ機器の始動電流の抑制を可能とする。
【解決手段】エンジン駆動型発電機に設けた1台のインバータ装置2に複数台のモータ機器M1~M3を接続可能とし,モータ機器M1~M3のいずれか(例えばM2)を始動対象モータ機器として始動させる際に,作動中の他のモータ機器(例えばM1)があるとき,作動中の他のモータ機器(例えばM1)に対するインバータ装置2の出力を停止して一時停止させ,始動対象モータ機器(例えばM2)と,一時停止させた他のモータ機器(例えばM1)の双方に対し,インバータ装置2より,所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行うことにより,始動電流を抑制して始動対象モータ機器を始動させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと,該エンジンにより駆動される発電機本体,前記発電機本体の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機において,
複数台のモータ機器を,1台の前記インバータ装置に接続可能とし,
複数の前記モータ機器のいずれかを始動対象モータ機器として始動させる際に,前記モータ機器のうちいずれか1台又は複数台から成る,作動中の他のモータ機器があるとき,作動中の前記他のモータ機器に対する前記インバータ装置の出力を停止して,作動中の前記他のモータ機器を一時停止させ,
前記インバータ装置から,前記始動対象モータ機器と,一時停止させた前記他のモータ機器の双方に対し,所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせて前記始動対象モータ機器を始動させると共に,一時停止させた前記他のモータ機器を再始動させることを特徴とするエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項2】
前記インバータ装置より分岐した分岐路を設け,該分岐路のそれぞれに前記モータ機器を接続すると共に,前記各分岐路を開閉可能とし,
前記インバータ装置の出力を停止した状態で,他の分岐路の開閉状態を変化させることなく維持しつつ前記始動対象モータ機器が接続された前記分岐路を閉じ,その後,前記インバータ装置に,前記低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する前記出力を行わせることを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項3】
前記モータ機器毎に運転開始条件を予め設定し,いずれかの前記モータ機器に対する前記運転開始条件が満たされたとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器とすることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項4】
前記モータ機器が,水源に設置された排水ポンプであり,前記水源の水位が所定水位となったことを前記運転開始条件として前記運転開始条件を満たした排水ポンプを前記始動対象モータ機器とする請求項3記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項5】
エンジンと,該エンジンにより駆動される発電機本体,前記発電機本体の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機において,
1台の前記インバータ装置より分岐された分岐路と,前記分岐路にそれぞれ接続された複数台のモータ機器と,
前記各分岐路を開閉する始動スイッチと,
前記始動スイッチ及び前記インバータ装置を制御する制御装置を設け,
前記制御装置が,
いずれかの前記モータ機器を始動対象モータ機器として始動させるとき,他のモータ機器が接続された前記分岐路の前記始動スイッチの動作状態を維持しつつ前記インバータ装置の出力を停止させ,この状態で前記始動対象モータ機器が接続された前記分岐路の前記始動スイッチを閉じ,その後,前記インバータ装置に,所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせて前記始動対象モータ機器を始動させる始動制御を,いずれかの前記モータ機器の始動を行う度に繰り返し行うことを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【請求項6】
前記モータ機器毎に予め運転開始条件を設定し,設定された前記運転開始条件が満たされたか否かを検知する運転条件検知装置を設け,
前記制御装置が,
いずれかの前記モータ機器に対して設定された前記運転開始条件が満たされたことを前記運転条件検知装置が検知したとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として前記始動制御を行うことを特徴とする請求項5記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項7】
前記インバータ装置に,該インバータ装置の出力を開始又は停止するスイッチを設け,
前記制御装置が,該スイッチのOFFにより前記インバータ装置の出力を停止することを特徴とする請求項5又は6記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項8】
前記モータ機器が,水源に設置された排水ポンプであり,前記運転条件検知装置として,前記水源の水位を検知するレベルセンサを設けると共に,前記制御装置が,前記水源の水位が所定水位となったことを前記レベルセンサが検知したとき,前記レベルセンサが検知した前記水源の前記水位を前記運転開始条件とする前記排水ポンプを前記始動対象モータ機器とする請求項7記載のエンジン駆動型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機に関し,より詳細にはインバータ装置を搭載することにより出力周波数を可変としたエンジン駆動型発電機の運転制御方法及び前記運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機本体と,発電機本体を駆動するエンジンを備えたエンジン駆動型発電機,特に発電機本体をエンジンと共に防音箱内に収容する等してパッケージ化して可搬性を持たせたエンジン駆動型発電機は,工事現場やイベント会場,災害の被災地等における電源として広く使用されている。
【0003】
このエンジン駆動型発電機で発生した電力によって駆動する電気機器の一例として,排水ポンプ等の三相誘導電動機を備えた電気機器(以下,このような三相誘導電動機を備える電気機器を「モータ機器」という。)がある。
【0004】
このようなモータ機器は,これを直入れ始動(全電圧始動)すると,定格電流の3~6倍(若しくはそれ以上)の始動電流が発生することから,一例として25kVAクラスのエンジン駆動型発電機では最大7.5kWのモータ機器までしか直入れ始動することができない。
【0005】
一方,一旦モータ機器が起動すると共に,モータの回転速度が増加して電流が定格電流に近付くように低下した通常運転に移行した後では,7.5kWのモータ機器に対する電源として25kVAクラスのエンジン駆動型発電機は過剰性能となる。
【0006】
その結果,通常運転時のエンジン駆動型発電機の負荷率(負荷容量/エンジン駆動型発電機の定格出力)が低下し,且つ,燃料消費率〔(燃料消費量/負荷容量)/時間〕が高まることで,エンジン駆動型発電機をモータ機器の電源として使用する場合にはランニングコストが嵩むと共に,環境に対する負荷が増大する。
【0007】
そこで,モータ機器の電源として使用する際のランニングコストの低減と,環境負荷の緩和を可能とすべく,始動電流を抑制して同クラスのエンジン駆動型発電機によって更に大型のモータ機器を始動できるようにすること,又は,同クラスのモータ機器の始動をより低出力のエンジン駆動型発電機で行うことができるようにすることが要望される。
【0008】
このような始動電流の抑制を目的として,後掲の特許文献1には,
図5に示すように出力端子台の1つである三相出力端子台151と発電機本体104との間に,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように構成したインバータ装置102を設けたエンジン駆動型発電機100が提案されている(特許文献1の
図1,請求項1参照)。
【0009】
このようにインバータ装置102によって三相出力端子台151に接続されたモータ機器(図示せず)に印加する周波数を徐々に上昇させながら始動(このように周波数を徐々に上昇させながら行う始動を,以下「ソフトスタート」という。)させることにより,始動電流の抑制が可能であり,その結果,従来のエンジン駆動型発電機では25kVAクラスのエンジン駆動型発電機で最大7.5kWのモータ機器までしか始動できなかったのに対し,インバータ装置102を使用した前述のソフトスタートによって始動を行う場合には,同じく25kVAクラスのエンジン駆動型発電機で,2倍の15kWのモータ機器を始動させることが可能となる(特許文献1の段落[0058])。
【0010】
なお,前掲の特許文献1の
図1に記載されているエンジン駆動型発電機(
図5参照)は単一のインバータ装置102を備えるものであったが,後掲の特許文献2には,
図6に示すようにエンジン103により駆動される発電機本体104で複数台のポンプ(モータ機器)P1,P2・・・Pnを駆動するポンプ車において,前記ポンプP1,P2・・・Pnの台数に対応する台数のインバータ装置102
1,102
2・・・102
nを設ける構成が開示されている(特許文献2の
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-110098号公報
【特許文献2】特開2014-187753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
エンジン駆動型発電機では,運転開始条件が異なる複数台のモータ機器を1台のエンジン駆動型発電機に接続して使用する場合があり,この場合,各モータ機器がそれぞれ異なるタイミングで始動するため,1又は複数台のモータ機器を作動させている状態で更に追加のモータ機器を始動させる場合が生じ得る。
【0013】
このような使用例として,
図7に,3つの独立した水源(第1~第3水源)161~163と,各水源161~163内の水位の変化に応じて作動及び停止する3つの排水ポンプ(第1~第3排水ポンプ)P1~P3をそれぞれ設け,この3つの排水ポンプP1~P3に対する共通の電源としてエンジン駆動型発電機100を使用した場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図7に示した構成において,第1~第3排水ポンプP1~P3は,それぞれ第1~第3フロートスイッチF1~F3によりON,OFFが制御されており,水源161~163内の水位が所定の上限水位HLになるとフロートスイッチF1~F3がONとなり排水ポンプP1~P3が始動して排水を開始する一方,水源161~163内の排水が進んで水源161~163内の水位が下限水位LLまで低下すると,フロートスイッチF1~F3がOFFとなり排水ポンプP1~P3が停止して排水を終了するように構成されている。
【0015】
前述した第1~第3水源161~163はそれぞれ独立していて独自に水位が変化することから,第1~第3水源161~163内に配置された第1~第3排水ポンプP1~P3は,それぞれが異なる運転開始条件で始動されることとなる。
【0016】
従って,
図7の構成においてエンジン駆動型発電機100に搭載するインバータ装置102として,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように構成した前掲の特許文献1に記載のインバータ装置102を採用した場合,各排水ポンプの始動は,その始動順に応じて以下に説明するようにして行われることとなる。
【0017】
一例として,
図7(A)に示すように第2及び第3水源162,163内の水位が下限位置LLにあり第2及び第3排水ポンプP2,P3が停止している状態において,第1水源161内の水位のみが上限水位HLに達して第1フロートスイッチF1がONになると,インバータ装置102と第1排水ポンプP1が電気的に接続されてインバータ装置102より第1排水ポンプP1に対する出力が開始される。
【0018】
従って,インバータ装置102が,出力開始時における周波数変化を
図7中に波形図で示したように所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するものである場合,最初に始動される第1排水ポンプP1は,前述したソフトスタートによって始動が行われることとなるため始動電流を抑えた始動が可能となる。
【0019】
しかしながらこのインバータ装置102は,出力周波数が所定の設定周波数に到達すると,その後は設定周波数の出力を維持するように構成されている。
【0020】
そのため,
図7(B)に示すように第1水源161内の水位が一旦上限水位HLとなった後,下限水位LLに低下する前,従って,第1排水ポンプP1の通常運転が継続されているときに第2水源162内の水位が上限水位HLに至り第2フロートスイッチF2がONになると,第2排水ポンプP2には,第1排水ポンプP1に印加されている周波数と同じ周波数,すなわち,設定周波数が印加される。
【0021】
その結果,第2排水ポンプP2は直入れ始動(全電圧始動)されることとなるため,その始動には定格電流の3~6倍以上という大きな始動電流が発生することになる。
【0022】
このように,単一のインバータ装置102を介して運転開始条件が異なる複数台のモータ機器に対し電力を供給する場合,1番目に始動するモータ機器についてはソフトスタートとすることができるものの,2番目以降に始動するモータ機器の始動は直入れ始動(全電圧始動)となり,始動電流を抑制することができない。
【0023】
その結果,2台目以降のモータ機器についても始動させることができるようにするためには,結局,モータ機器の定格容量に対し過大な出力のエンジン駆動型発電機の使用が必要となる。
【0024】
なお,前掲の特許文献2に記載のポンプ車は,ポンプP1,P2・・・Pnの台数に対応した台数のインバータ装置1021,1022・・・102nを備えていることから,各インバータ装置1021,1022・・・102nに,前掲の特許文献1に記載のインバータ装置と同様,出力開始時における出力周波数を徐々に増大させる出力を行わせることで,いずれのポンプP1,P2・・・Pn共にソフトスタートとすることができ始動電流の抑制が可能となる。
【0025】
しかしながら,この構成では高価なインバータ装置1021,1022・・・102nをポンプP1,P2・・・Pnの台数分搭載する必要があると共に,各インバータ装置1021,1022・・・102nの動作をそれぞれ個別に制御する複雑な制御を可能とする高性能な電子制御装置が必要となることから,これらの機器の搭載がエンジン駆動型発電機の製造コストを上昇させる結果,市場における価格競争力を低下させる。
【0026】
なお,上記の例では,運転開始条件が異なる複数台のモータ機器の例として,それぞれ独立した水源内の水位の変化に応じて始動及び停止する複数台の排水ポンプを例に挙げ,これらを始動させる際の問題を説明した。
【0027】
しかしながら,前述した問題は,
図7を参照して説明したエンジン駆動型発電機の使用例に限定されず,異なる運転開始条件を有する複数のモータ機器に対する共通の電源としてエンジン駆動型発電機を使用する場合に同様に生じ得る問題であり,例えば,単一の水源の水位の上昇に応じて作動させる排水ポンプの台数を増加させるようにした排水システム,室温の上昇に応じて作動させる換気ファン(モータ機器)の台数を増加させるようにした空調システム,消費側における圧縮気体の消費量の増大に対応して作動させるモータ駆動型圧縮機の台数を増加させるようにした圧縮気体供給システム等,所謂『台数制御』が行われる各種システムにおいても同様に生じ得る。
【0028】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,運転開始条件の異なる複数台のモータ機器に対し1台のインバータ装置を介して電力を供給する場合であっても,全てのモータ機器を,始動電流を抑制した状態で始動させることが可能であり,従って,従来の同クラスのエンジン駆動型発電機よりも大型のモータ機器を始動させることができるエンジン駆動型発電機の運転制御方法及び該運転制御方法を実現するエンジン駆動型発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0030】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機1の運転制御方法は,
エンジン3と,該エンジン3により駆動される発電機本体4,前記発電機本体4の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置2を備えたエンジン駆動型発電機1において,
複数台のモータ機器M1~M3を,1台の前記インバータ装置2に接続可能とし,
複数の前記モータ機器M1~M3のいずれか(例えばM2)を始動対象モータ機器として始動させる際に,前記モータ機器のうちいずれか1台又は複数台から成る,作動中の他のモータ機器(例えばM1)があるとき,作動中の前記他のモータ機器(例えばM1)に対する前記インバータ装置2の出力を停止して,作動中の前記他のモータ機器(例えばM1)を一時停止させ,
前記インバータ装置2から,前記始動対象モータ機器(例えばM2)と,一時停止させた前記他のモータ機器(例えばM1)の双方に対し,所定の低周波数(一例としてゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせて前記始動対象モータ機器(例えばM2)を始動させると共に,一時停止させた前記他のモータ機器(例えばM1)を再始動させることを特徴とする(請求項1)。
【0031】
前記インバータ装置2より分岐した分岐路71~73を設け,該分岐路71~73のそれぞれに前記モータ機器M1~M3を接続すると共に,始動スイッチSW1~SW3を設ける等して前記各分岐路71~73を開閉可能とし,
前記インバータ装置2の出力を停止した状態で,他の分岐路の開閉状態を変化させることなく維持しつつ前記始動対象モータ機器(例えばM2)が接続された前記分岐路(例えば第2分岐路72)を,例えば始動スイッチSW2のONにより閉じ,その後,前記インバータ装置2に,前記低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する前記出力を行わせるように構成するものとしても良い(請求項2)。
【0032】
前記モータ機器M1~M3毎に運転開始条件を予め設定し,いずれかの前記モータ機器に対する前記運転開始条件が満たされたとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器とするものとしても良い(請求項3)。
【0033】
なお,前記モータ機器M1~M3を,水源61~63に設置された排水ポンプP1~P3とすることができ,前記水源61~63の水位が所定水位となったことを前記運転開始条件として前記運転開始条件を満たした排水ポンプP1~P3を前記始動対象モータ機器とするものとしても良い(請求項4)。
【0034】
また,上記運転制御方法を実行する本発明のエンジン駆動型発電機1は,
エンジン3と,該エンジン3により駆動される発電機本体4,前記発電機本体4の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置2を備えたエンジン駆動型発電機1において,
1台の前記インバータ装置2より分岐された分岐路71~73と,前記分岐路71~73にそれぞれ接続された複数台のモータ機器M1~M3と,
前記各分岐路71~73を開閉する始動スイッチSW1~SW3と,
前記始動スイッチSW1~SW3及び前記インバータ装置2を制御する制御装置9を設け,
前記制御装置9が,
いずれかの前記モータ機器(例えばM2)を始動対象モータ機器として始動させるとき,他のモータ機器(例えばM1,M3)が接続された前記分岐路71,73の始動スイッチSW1,SW3の動作状態を維持しつつ前記インバータ装置2の出力を停止させ,この状態で前記始動対象モータ機器(例えばM2)が接続された前記分岐路(例えば第2分岐路72)の前記始動スイッチ(例えば第2始動スイッチSW2)を閉じ,その後,前記インバータ装置2に,所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせて前記始動対象モータ機器(例えばM2)を始動させる始動制御を,いずれかの前記モータ機器の始動を行う度に繰り返し行うことを特徴とする(請求項5)。
【0035】
上記構成のエンジン駆動型発電機1において,前記モータ機器M1~M3毎に予め運転開始条件を設定し,設定された前記運転開始条件が満たされたか否かを検知する運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設け,
前記制御装置9が,
いずれかの前記モータ機器M1~M3に対して設定された前記運転開始条件が満たされたことを前記運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~3)が検知したとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器M1~M3を前記始動対象モータ機器として前記始動制御を行うものとしても良い(請求項6)。
【0036】
なお,前述したインバータ装置2の出力停止は,インバータ装置2に,該インバータ装置2の出力を開始又は停止するスイッチ23を設け,
前記制御装置9が,該スイッチ23をOFFとすることにより行うようにするものとしても良い(請求項7)。
【0037】
更に,前記モータ機器M1~M3を,水源61~63に設置された排水ポンプP1~P3とし,前記運転条件検知装置として,前記水源61~63の水位を検知するレベルセンサ(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設けると共に,前記制御装置9が,前記水源61~63の水位が所定水位となったことを前記レベルセンサ(実施例においてフロートスイッチF1~F3)が検知したとき,前記レベルセンサ(実施例においてフロートスイッチF1~F3)が検知した前記水源61~63の前記水位を前記運転開始条件とする前記排水ポンプを前記始動対象モータ機器とするものとしても良い(請求項8)。
【発明の効果】
【0038】
以上で説明した本発明の運転制御方法では,1台のインバータ装置2に接続されている複数台のモータ機器のうちの一部が作動している状態で,新たに始動対象モータ機器を始動させてモータ機器の作動台数を増やした場合であっても,始動対象モータ機器を直入れ始動させることなくソフトスタートで始動させることが可能となり,始動電流の大幅な抑制が可能となった。
【0039】
その結果,同程度の出力を有する従来のエンジン駆動型発電機に比較して,より定格容量の大きなモータ機器を始動させることができ,高効率かつ低燃費でモータ機器に対する電力の供給を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明のエンジン駆動型発電機の概略説明図。
【
図2】第1~第3排水ポンプの全てが停止した状態から第1排水ポンプを始動するまでの説明図であり,(A)は全ての水源の水位が下限水位であって全ての排水ポンプが停止した状態,(B)は第1フロートスイッチが上限水位を検知した状態,(C)は第1フロートスイッチの検知信号に基づき制御装置が第1始動スイッチをONにした状態,(D)はインバータ装置が出力を開始して第1排水ポンプを始動させている状態。
【
図3】第1排水ポンプの作動中で,かつ,第2,第3排水ポンプが停止した状態から第2排水ポンプを始動するまでの説明図であり,(A)は第2フロートスイッチが上限水位を検知した状態,(B)は第2フロートスイッチの検知信号に基づき制御装置がインバータ装置の出力を停止して第1排水ポンプを一時停止させた状態,(C)は制御装置が第2始動スイッチをONにした状態,(D)はインバータ装置が出力を開始して第1排水ポンプの再始動と第2排水ポンプの新規始動を同時に行っている状態。
【
図4】第1排水ポンプ及び第2排水ポンプの作動中で,かつ,第3排水ポンプが停止した状態から第3排水ポンプを始動するまでの説明図であり,(A)は第3フロートスイッチが上限水位を検知した状態,(B)は第3フロートスイッチの検知信号に基づき制御装置がインバータ装置の出力を停止して第1及び第2排水ポンプを一時停止させた状態,(C)は制御装置が第3始動スイッチをONにした状態,(D)はインバータ装置が出力を開始して第1及び第2排水ポンプの再始動と第3排水ポンプの新規始動を同時に行っている状態。
【
図5】インバータ装置を備えた従来のエンジン駆動型発電機の説明図(特許文献1の
図1に対応)。
【
図6】インバータ装置を備えた従来のエンジン駆動型発電機の説明図(特許文献2の
図3に対応)。
【
図7】単一のインバータ装置に始動開始条件の異なる複数のモータ機器を接続した場合を想定した説明図であり,(A)は第1排水ポンプP1の始動時,(B)は第2排水ポンプの始動時。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機の構成例について説明する。
【0042】
図1中の符号1は,本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,エンジン3,前記エンジン3によって駆動される発電機本体4,この発電機本体4に出力線5を介して接続されたインバータ装置2,該インバータ装置より分岐(図示の例では,インバータ装置2に接続された主回路7より分岐)された分岐路71~73を備え,この分岐路71~73のそれぞれに,モータ機器M1~M3を接続することができるように構成されている。
【0043】
このエンジン駆動型発電機1の主要な構成部材の一つである前述の発電機本体4は,既知の各種型式のものを使用可能であり,本実施形態にあっては一例として励磁機42を備えた自励式の三相交流発電機(三相200V)を発電機本体4として使用している。
【0044】
このような励磁機42を備えた発電機本体4では,主発電機41から出力される電圧が設定値となるように,自動電圧調整器(AVR)43によって出力電圧の増減に応じて励磁機42へ供給する励磁電流が制御されている。
【0045】
発電機本体4を駆動する前述のエンジン3は,発電機本体4において所定の商用周波数(50Hz又は60Hz)が得られるように一定の回転速度で運転できるように構成されており,一例として,本実施形態の構成において,エンジン3の回転速度を1500min-1に設定した場合,発電機本体4からは50Hzの周波数の出力が得られるように構成されていると共に,エンジン3の回転数を1800min-1に設定する場合には,発電機本体4からは60Hzの周波数の出力が得られるように構成されている。
【0046】
前述したインバータ装置2は,発電機本体4からの交流を直流に変換するコンバータ部21と,コンバータ部21で得た直流を任意の周波数の交流に変換するインバータ部22,及びインバータ装置2の出力を開始又は停止するスイッチ23を備え,例えば既知のPWM(パルス幅変調)方式等によって,操作盤等に設けたダイヤルスイッチ等から成る周波数設定手段(図示せず)によって設定された任意周波数の交流出力を発生することができるように構成されていると共に,出力周波数が比較的低いときには出力電圧が低く,出力周波数が比較的高いときには出力電圧が高くなるように,周波数の増減にあわせて出力電圧も変化するように設定されている。
【0047】
このインバータ装置2は,電子制御装置等で構成される制御装置9のインバータ制御部91によりその動作が制御されており,制御装置9からの出力開始指令を受けて,出力開始時には所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から所定の設定周波数に徐々に周波数を上昇させた後,該設定周波数に至り一定の周波数を維持する出力を行うように構成されている。
【0048】
前述の設定周波数は,操作盤(図示せず)等に設けた周波数設定手段(図示せず)を操作することにより調整可能に構成されており,エンジン駆動型発電機1の用途や,接続する機器との関係において各種の値を取り得るように構成されている。
【0049】
この設定周波数は,商用周波数(50Hz又は60Hz)と一致させても良く,又は,商用周波数(50Hz又は60Hz)に対して高く,又は低く設定できるようにしても良く,本実施形態にあっては,一例としてエンジンの回転速度を一定とした状態で設定周波数を所定の範囲で可変とできるように設定した。
【0050】
以上のように構成されたインバータ装置2には,該インバータ装置2(図示の例ではインバータ装置2に接続された主回路7)より分岐された複数の分岐路71~73が設けられており,この分岐路71~73のそれぞれにモータ機器M1~M3が接続されている。
【0051】
各分岐路(第1~第3分岐路)71~73には,各分岐路71~73を開閉する始動スイッチSW1~SW3,本実施形態ではコンダクタ(電磁開閉器)が設けられており,始動スイッチSW1~SW3のONにより分岐路71~73が閉じてインバータ装置2とモータ機器M1~M3が電気的に接続されてモータ機器M1~M3の始動が可能となると共に,始動スイッチSW1~SW3のOFFにより分岐路71~73が開いてインバータ装置2とモータ機器M1~M3間の接続を遮断することができるように構成されている。
【0052】
この始動スイッチSW1~SW3は,オペレータが手動で操作するものとしても良いが,好ましくは前述した3台のモータ機器M1~M3のそれぞれについて運転開始条件を予め設定しておくと共に,運転開始条件が満たされているか否かを検知する運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設け,運転条件検知装置によっていずれかのモータ機器M1~M3に対して設定された運転開始条件が満たされたことが検知されたとき,この検知信号に基づき制御装置9のモータ機器制御部92が,運転開始条件を満たしたモータ機器M1~M3が接続された分岐路71~73に設けられている始動スイッチSW1~SW3をOFFの状態からONの状態に自動で切り替えるように構成するものとしても良い。
【0053】
一例として
図2~
図4は,それぞれが独立した第1~第3水源61~63内の水を排水する第1~第3排水ポンプP1~P3を前述したモータ機器M1~M3として各分岐路71~73に接続した構成で,第1水源61内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第1排水ポンプP1の運転開始条件,第2水源62内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第2排水ポンプP2の運転開始条件,第3水源63内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第3排水ポンプP3の運転開始条件として設定し,いずれかの排水ポンプP1~P3に対し設定された前記運転開始条件が満たされたとき,運転開始条件を満たした排水ポンプを始動対象モータ機器として自動で始動させることができるように構成したものである。
【0054】
また,前述した始動開始条件を満たして作動を開始した排水ポンプP1~P3は,その後,排水ポンプP1~P3毎に設定された運転停止条件を満たすまで運転を継続するように構成されており,本実施形態では,第1水源内61の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第1排水ポンプP1の運転停止条件,第2水源62内の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第2排水ポンプP2の運転停止条件,第3水源63内の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第3排水ポンプP3の運転停止条件としてそれぞれ設定した。
【0055】
そして,第1~第3水源内61~63の水位を検知するレベルセンサ,図示の例では第1~第3フロートスイッチF1~F3を運転条件検知装置として第1~第3水源61~63内にそれぞれ配置し,第1~第3水源61~63内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第1~第3フロートスイッチF1~F3が検知すると,この検知信号を受信した制御装置9のインバータ制御部91が,インバータ装置2に設けたスイッチ23がOFFのときにはOFFの状態を維持し,ONになっているときはこれをOFFに切り替えて,インバータ装置2の出力を停止する。
【0056】
このようにして,インバータ装置2からの出力が停止している状態で,制御装置9のモータ機器制御部92は始動スイッチSW1~SW3のうち,上限水位HLが検知された水源61~63内に設置されている排水ポンプP1~P3が接続されている分岐路71~73に設けられている始動スイッチを閉じる(ON)と共に,他の始動スイッチをそのままの作動状態に維持する。
【0057】
その後,制御装置9のインバータ制御部91がインバータ装置2に出力の開始を指令することで,インバータ装置2のスイッチ23がONになって,インバータ装置2が所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行うよう構成されている。
【0058】
制御装置9は,第1~第3フロートスイッチF1~F3の検知信号に基づき第1~第3排水ポンプP1~P3のいずれかの始動が行われる毎に上記の動作を繰り返し行う。
【0059】
従って,第1水源61,第2水源62,及び第3水源63の順に,順次水位が上昇して上限水位HLとなることで,第1排水ポンプP1,第2排水ポンプP2,及び第3排水ポンプP3の順に順次始動させて1台から3台まで排水ポンプの作動数を増大させた場合,各排水ポンプP1~P3の始動は以下のようにして行われる。
【0060】
第1~第3水源61~63内の水位がいずれも上限水位HL未満で,かつ,第1~第3排水ポンプP1~P3の全てが停止している状態では,インバータ装置2のスイッチ23はOFFで,インバータ装置2からの出力は行われていない〔
図2(A)参照〕。
【0061】
この状態から第1水源61の水位が上昇して上限水位HLに至ると,第1フロートスイッチF1がこの水位上昇を検知して制御装置9に対し検知信号を出力する〔
図2(B)参照〕。
【0062】
第1フロートスイッチF1の検知信号を受信した制御装置9は,インバータ制御部91にインバータ装置2のスイッチ23をOFFのまま維持させてインバータ装置2の出力を停止した状態で,モータ機器制御部92に第1分岐路71に設けた第1始動スイッチSW1をON操作させる〔
図2(C)参照〕。
【0063】
その後,制御装置9のインバータ制御部91は,インバータ装置2のスイッチ23をONにしてインバータ装置2に所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせることにより,第1排水ポンプP1を始動させる〔
図2(D)〕。
【0064】
このように,第1排水ポンプP1に対しては,所定の低周波数から設定周波数まで徐々に周波数を上昇させながら始動する,ソフトスタートが行われることで,始動電流を抑制した始動が可能となる。
【0065】
始動後,通常運転に移行した第1排水ポンプP1の運転が継続されている状態にあるときに,第2水源62内の水位が上昇して所定の上限水位HL以上に上昇すると,この水位上昇を検知した第2フロートスイッチF2は,制御装置9に対し検知信号を出力する〔
図3(A)参照〕。
【0066】
第2フロートスイッチF2からの検知信号を受信した制御装置9のインバータ制御部91は,インバータ装置2のスイッチ23をOFFにしてインバータ装置2の出力を停止する〔
図3(B)参照〕。
【0067】
このようにインバータ装置2のスイッチ23をOFFにすることで,第1始動スイッチSW1はONの状態を維持しているものの,第1排水ポンプP1に対する給電が停止することで,作動中であった第1排水ポンプは一時的に停止する。
【0068】
このようにインバータ装置2からの出力を停止させた状態で制御装置9のモータ機器制御部92は第2始動スイッチSW2をONに切り替える〔
図3(C)参照〕。
【0069】
第1排水ポンプP1を作動させるためにインバータ装置2が行っていた設定周波数の出力は,第2始動スイッチSW2をONに切り替える前に停止させていることから,第2始動スイッチSW2をONにしても未始動の第2排水ポンプP2に対する電力の供給は行われない。
【0070】
その後,制御装置9のインバータ制御部91がインバータ装置2のスイッチ23をONにして,インバータ装置2に所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせる〔
図3(D)参照〕。
【0071】
これにより,第1排水ポンプP1と第2排水ポンプP2の双方に対するインバータ装置2からの出力が開始され,一時的に停止された第1排水ポンプP1がソフトスタートによって始動電流が抑制された状態で再始動されると共に,第2排水ポンプが新たにソフトスタートにより始動電流が抑制された状態で追加始動される。
【0072】
更に,第1排水ポンプ及び第2排水ポンプが通常運転されている状態で第3水源内の水位が所定の上限水位HL以上に上昇すると,第3フロートスイッチF3がこの水位上昇を検知すると共に,制御装置9が第3フロートスイッチF3からの検知信号を受信する〔
図4(A)参照〕。
【0073】
第3フロートスイッチF3からの検知信号を受信した制御装置9のインバータ制御部91は,インバータ装置2のスイッチ23をOFFにし,インバータ装置2の出力を停止して第1排水ポンプP1と第2排水ポンプP2を一時的に停止させる〔
図4(B)参照〕。
【0074】
この状態で制御装置9のモータ機器制御部92は第3分岐路73に設けた第3始動スイッチSW3をONに切り替え〔
図4(C)参照〕,その後,インバータ装置2のスイッチをONにしてインバータ装置2に所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させて該設定周波数で一定に維持する出力を行わせる〔
図4(D)参照〕。
【0075】
これにより,一時的に停止されていた第1排水ポンプP1と第2排水ポンプP2が,ソフトスタートにより始動電流を抑制した状態で再始動されると共に,第3排水ポンプP3がソフトスタートによって始動電流を抑制した状態で新たに追加始動される。
【0076】
このように,本発明のエンジン駆動型発電機では,単一のインバータ装置2に対し運転開始条件の異なる複数台のモータ機器(一例として排水ポンプ)を接続した場合であっても,いずれのモータ機器共に始動電流を抑制した始動が可能である。
【0077】
以下の表2は,表1に示す性能のエンジン駆動型発電機とモータ機器を使用して,本発明の運転制御方法でモータ機器の始動を行った場合(実施例)と,従来の方法で始動を行った場合(比較例1,2)とで,始動可能なモータ機器の台数がどのように相違するかを比較した結果を記載したものである。
【0078】
なお,比較例1は,3台のモータ機器に対し,インバータ装置を介さずに発電機本体からの出力(50Hz,200V)を直接入力して始動させた場合を想定したもので,1台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)した後,1台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま,2台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)し,更に,1台目及び2台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま3台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)する場合を想定したものである。
【0079】
また,比較例2は,3台のモータ機器をいずれもインバータ装置からの出力によって始動させる場合を想定したものであり,1台目のモータ機器を所定の低周波数から設定周波数に徐々に出力周波数を上昇させるソフトスタートで始動させた後,1台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま,2台目のモータ機器に対し,インバータ装置が1台目のモータ機器に対し出力している設定周波数,設定電圧(50Hz,200V)をそのまま印加して直入れ始動(全電圧始動)し,1台目及び2台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま3台目のモータ機器にインバータ装置が出力している設定周波数,設定電圧(50Hz,200V)を直接印加して直入れ始動(全電圧始動)させた場合を想定したものである。
【0080】
【0081】
【0082】
表2に示したように,比較例1,比較例2の方法でモータ機器を始動させた場合には,いずれの方法で始動させた場合共に,2台目以降のモータ機器については始動させることができないが,本発明の運転制御方法でモータ機器を始動させる場合,3台のモータ機器の全てを始動させることができた。
【符号の説明】
【0083】
1 エンジン駆動型発電機
2 インバータ装置
21 コンバータ部
22 インバータ部
23 スイッチ
3 エンジン
4 発電機本体
41 主発電機
42 励磁機
43 自動電圧調整器(AVR)
5 出力線
61~63 第1~第3水源
7 主回路
71~73 第1~第3分岐路
9 制御装置
91 インバータ制御部
92 モータ機器制御部
100 エンジン駆動型発電機
102,1021,1022,102n インバータ装置
103 エンジン
104 発電機本体
151 三相出力端子台
161~163 第1~第3水源
P1~P3,Pn (排水)ポンプ
F1~F3 運転条件検知装置(第1~第3フロートスイッチ)
M1~M3 モータ機器
SW1~SW3 始動スイッチ