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特開2023-166291エンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166291
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】エンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/08 20060101AFI20231114BHJP
   H02P 101/25 20150101ALN20231114BHJP
   H02P 103/10 20150101ALN20231114BHJP
【FI】
H02P9/08 B
H02P101:25
H02P103:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077258
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕亮
【テーマコード(参考)】
5H590
【Fターム(参考)】
5H590AA02
5H590CA07
5H590CA21
5H590CA24
5H590CC08
5H590CC24
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE02
5H590DD43
5H590DD64
5H590EA01
5H590EA07
5H590FA05
5H590HA04
5H590HA14
5H590KK04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】1台のエンジン駆動型発電機で始動時期の異なる複数台のモータ機器をいずれも始動電流を抑制した状態で始動させる。
【解決手段】モータ機器M1~M3のうち一台(例えばM1)をインバータ装置2に接続して周波数を徐々に上昇させながら始動する始動処理を行い,その後,該モータ機器M1をインバータ装置2から遮断すると共に発電機本体4に接続して発電機本体4からの出力によって運転を継続させる運転継続処理を行う。運転継続処理への移行によりインバータ装置2は出力を停止した待機状態となり,モータ機器M1の運転継続処理中に他のモータ機器(M2又はM3)を追加で始動させる場合にもインバータ装置2を使用して周波数を徐々に上昇させながら始動させることができ,いずれのモータ機器共に始動電流を抑制して始動できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと,該エンジンにより駆動される発電機本体,前記発電機本体の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機において,
1台の前記インバータ装置を介した出力を行うインバータ出力回路と,
前記インバータ装置を介することなく前記発電機本体からの出力を直接行う直接出力回路をそれぞれ設けると共に,
複数台のモータ機器のそれぞれを,前記インバータ出力回路と前記直接出力回路に接続又は遮断可能に配置し,
停止状態にある前記モータ機器のいずれかを始動対象モータ機器とし,該始動対象モータ機器を,前記直接出力回路との接続を遮断した状態で前記インバータ出力回路に接続して,前記インバータ装置に所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行わせて始動させる始動処理と,
前記インバータ装置の出力開始後,所定の条件が満たされたとき,前記インバータ出力回路と前記始動対象モータ機器の接続を遮断すると共に,該始動対象モータ機器を前記直接出力回路に接続して前記発電機本体の出力を直接印加して前記始動対象モータ機器の運転を継続させる運転継続処理を行い,
前記モータ機器のうちのいずれかを前記始動対象モータ機器として始動する毎に,前記始動処理と前記運転継続処理をそれぞれ実行することを特徴とするエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項2】
前記モータ機器毎に運転開始条件を予め設定し,いずれかの前記モータ機器に対する前記運転開始条件が満たされたとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として始動させることを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項3】
前記モータ機器毎に運転停止条件を予め設定し,前記運転継続処理が行われているモータ機器のうち,前記運転停止条件を満たしたモータ機器と前記直接出力回路間の接続を遮断して,該モータ機器を停止させる停止処理を行うことを特徴する請求項2記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項4】
前記モータ機器が,水源に設置された排水ポンプであり,前記水源の水位が所定水位となったことを前記運転開始条件として前記運転開始条件を満たした排水ポンプを前記始動対象モータ機器とすることを特徴とする請求項2又は3記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項5】
エンジンと,該エンジンにより駆動される発電機本体,前記発電機本体の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機において,
1台の前記インバータ装置を介した出力を行うインバータ出力回路と,
前記インバータ装置を介することなく前記発電機本体からの出力を直接行う直接出力回路を設けると共に,
複数台のモータ機器のそれぞれと,前記インバータ出力回路,及び,前記直接出力回路間の接続及び遮断を行うスイッチング機構と,
前記スイッチング機構と前記インバータ装置の動作を制御する制御装置を設け,
停止状態にある前記モータ機器のいずれかを始動対象モータ機器として作動させるとき,前記制御装置が,
前記スイッチング機構に,前記始動対象モータ機器と前記直接出力回路間の接続を遮断した状態で,該モータ機器を前記インバータ出力回路に接続させると共に,前記インバータ装置に,所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行わせて前記始動対象モータ機器を始動させる始動処理と,
前記インバータ装置の出力開始後,所定の条件が満たされたとき,前記スイッチング機構に前記インバータ出力回路と前記始動対象モータ機器の接続を遮断させると共に,該始動対象モータ機器を前記直接出力回路に接続させて前記発電機本体の出力を直接印加して前記始動対象モータの運転を継続させる運転継続処理を行い,
前記制御装置が,前記モータ機器のうちのいずれかを前記始動対象モータ機器として始動する毎に,前記始動処理と前記運転継続処理をそれぞれ実行することを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【請求項6】
前記モータ機器毎に予め運転開始条件を設定し,設定された前記運転開始条件が満たされたか否かを検知する運転条件検知装置を設け,
前記制御装置が,
いずれかの前記モータ機器に対して設定された前記運転開始条件が満たされたことを前記運転条件検知装置が検知したとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として前記始動処理と前記運転継続処理を行うことを特徴とする請求項5記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項7】
前記モータ機器毎に予め運転停止条件を設定し,前記運転条件検知装置を,設定された前記運転停止条件が満たされたか否かを検知可能に構成すると共に,
前記制御装置が,
前記運転継続処理が行われているモータ機器のうち,前記運転停止条件を満たしたモータ機器と前記直接出力回路間の接続を遮断して,該モータ機器を停止させる停止処理を行うことを特徴とする請求項6記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項8】
前記インバータ装置に,該インバータ装置の出力を開始又は停止するスイッチを設け,
前記制御装置が,
前記スイッチング機構を操作して前記始動対象モータと前記インバータ出力回路を接続したとき,前記インバータ装置の前記スイッチをONにして前記インバータ装置に出力を開始させると共に,
前記インバータ装置の前記スイッチをOFFにした後,前記スイッチング機構を操作して前記始動対象モータと前記インバータ出力回路を遮断することで前記インバータ装置の出力を停止させることを特徴とする請求項5~7いずれか1項記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項9】
前記モータ機器が,水源に設置された排水ポンプであり,
前記運転条件検知装置として,前記水源の水位を検知するレベルセンサを設けると共に,
前記制御装置が,前記水源の水位が所定水位となったことを前記レベルセンサが検知したとき,前記レベルセンサが検知した前記水源の前記水位を前記運転開始条件とする前記排水ポンプを前記始動対象モータ機器として前記始動処理及び前記運転継続処理を行うことを特徴とする請求項6又は7記載のエンジン駆動型発電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機に関し,より詳細にはインバータ装置を搭載することにより出力周波数を可変としたエンジン駆動型発電機の運転制御方法及び前記運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機本体と,発電機本体を駆動するエンジンを備えたエンジン駆動型発電機,特に発電機本体をエンジンと共に防音箱内に収容する等してパッケージ化して可搬性を持たせたエンジン駆動型発電機は,工事現場やイベント会場,災害の被災地等における電源として広く使用されている。
【0003】
このエンジン駆動型発電機で発生した電力によって駆動する電気機器の一例として,排水ポンプ等の三相誘導電動機を備えた電気機器(以下,このような三相誘導電動機を備える電気機器を「モータ機器」という。)がある。
【0004】
このようなモータ機器は,これを直入れ始動(全電圧始動)すると,定格電流の3~6倍(若しくはそれ以上)の始動電流が発生することから,一例として25kVAクラスのエンジン駆動型発電機では最大7.5kWのモータ機器までしか直入れ始動することができない。
【0005】
一方,一旦モータ機器が起動すると共に,モータの回転速度が増加して電流が定格電流に近付くように低下した通常運転に移行した後では,7.5kWのモータ機器に対する電源として25kVAクラスのエンジン駆動型発電機は過剰性能となる。
【0006】
その結果,通常運転時のエンジン駆動型発電機の負荷率(負荷容量/エンジン駆動型発電機の定格出力)が低下し,且つ,燃料消費率〔(燃料消費量/負荷容量)/時間〕が高まることで,エンジン駆動型発電機をモータ機器の電源として使用する場合にはランニングコストが嵩むと共に,環境に対する負荷が増大する。
【0007】
そこで,モータ機器の電源として使用する際のランニングコストの低減と,環境負荷の緩和を可能とすべく,始動電流を抑制して同クラスのエンジン駆動型発電機によって更に大型のモータ機器を始動できるようにすること,又は,同クラスのモータ機器の始動をより低出力のエンジン駆動型発電機で行うことができるようにすることが要望される。
【0008】
このような始動電流の抑制を目的として,後掲の特許文献1には,図7に示すように出力端子台の1つである三相出力端子台151と発電機本体104との間に,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように構成したインバータ装置102を設けたエンジン駆動型発電機100が提案されている(特許文献1の図1,請求項1参照)。
【0009】
このようにインバータ装置102によって三相出力端子台151に接続されたモータ機器(図示せず)に印加する周波数を徐々に上昇させながら始動(このように周波数を徐々に上昇させながら行う始動を,以下「ソフトスタート」という。)させることにより,始動電流の抑制が可能であり,その結果,従来のエンジン駆動型発電機では25kVAクラスのエンジン駆動型発電機で最大7.5kWのモータ機器までしか始動できなかったのに対し,インバータ装置102を使用した前述のソフトスタートによって始動を行う場合には,同じく25kVAクラスのエンジン駆動型発電機で,2倍の15kWのモータ機器を始動させることが可能となる(特許文献1の段落[0058])。
【0010】
なお,前掲の特許文献1の図1に記載されているエンジン駆動型発電機(図7参照)は単一のインバータ装置102を備えるものであったが,後掲の特許文献2には,図8に示すようにエンジン103により駆動される発電機本体104で複数台のポンプ(モータ機器)P1,P2・・・Pnを駆動するポンプ車において,前記ポンプP1,P2・・・Pnの台数に対応する台数のインバータ装置1021,1022・・・102nを設ける構成が開示されている(特許文献2の図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-110098号公報
【特許文献2】特開2014-187753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
エンジン駆動型発電機では,運転開始条件が異なる複数台のモータ機器を1台のエンジン駆動型発電機に接続して使用する場合があり,この場合,各モータ機器がそれぞれ異なるタイミングで始動するため,1又は複数台のモータ機器を作動させている状態で更に追加のモータ機器を始動させる場合が生じ得る。
【0013】
このような使用例として,図9に,3つの独立した水源(第1~第3水源)161~163と,各水源161~163内の水位の変化に応じて作動及び停止する3つの排水ポンプ(第1~第3排水ポンプ)P1~P3をそれぞれ設け,この3つの排水ポンプP1~P3に対する共通の電源としてエンジン駆動型発電機100を使用した場合を例に挙げて説明する。
【0014】
図9に示した構成において,第1~第3排水ポンプP1~P3は,それぞれ第1~第3フロートスイッチF1~F3によりON,OFFが制御されており,水源161~163内の水位が所定の上限水位HLになるとフロートスイッチF1~F3がONとなり排水ポンプP1~P3が始動して排水を開始する一方,水源161~163内の排水が進んで水源161~163内の水位が下限水位LLまで低下すると,フロートスイッチF1~F3がOFFとなり排水ポンプP1~P3が停止して排水を終了するように構成されている。
【0015】
前述した第1~第3水源161~163はそれぞれ独立していて独自に水位が変化することから,第1~第3水源161~163内に配置された第1~第3排水ポンプP1~P3は,それぞれが異なる運転開始条件で始動されることとなる。
【0016】
従って,図9の構成においてエンジン駆動型発電機100に搭載するインバータ装置102として,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように構成した前掲の特許文献1に記載のインバータ装置102を採用した場合,各排水ポンプの始動は,その始動順に応じて以下に説明するようにして行われることとなる。
【0017】
一例として,図9(A)に示すように第2及び第3水源162,163内の水位が下限位置LLにあり第2及び第3排水ポンプP2,P3が停止している状態において,第1水源161内の水位のみが上限水位HLに達して第1フロートスイッチF1がONになると,インバータ装置102と第1排水ポンプP1が電気的に接続されてインバータ装置102より第1排水ポンプP1に対する出力が開始される。
【0018】
従って,インバータ装置102が,出力開始時における周波数変化を図9中に波形図で示したように所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するものである場合,最初に始動される第1排水ポンプP1は,前述したソフトスタートによって始動が行われることとなるため始動電流を抑えた始動が可能となる。
【0019】
しかしながらこのインバータ装置102は,出力周波数が所定の設定周波数に到達すると,その後は設定周波数の出力を維持するように構成されている。
【0020】
そのため,図9(B)に示すように第1水源161内の水位が一旦上限水位HLとなった後,下限水位LLに低下する前,従って,第1排水ポンプP1の通常運転が継続されているときに第2水源162内の水位が上限水位HLに至り第2フロートスイッチF2がONになると,第2排水ポンプP2には,第1排水ポンプP1に印加されている周波数と同じ周波数,すなわち,設定周波数が印加される。
【0021】
その結果,第2排水ポンプP2は直入れ始動(全電圧始動)されることとなるため,その始動には定格電流の3~6倍以上という大きな始動電流が発生することになる。
【0022】
このように,単一のインバータ装置102を介して運転開始条件が異なる複数台のモータ機器に対し電力を供給する場合,1番目に始動するモータ機器についてはソフトスタートとすることができるものの,2番目以降に始動するモータ機器の始動は直入れ始動(全電圧始動)となり,始動電流を抑制することができない。
【0023】
その結果,2台目以降のモータ機器についても始動させることができるようにするためには,結局,モータ機器の定格容量に対し過大な出力のエンジン駆動型発電機の使用が必要となる。
【0024】
なお,前掲の特許文献2に記載のポンプ車は,ポンプP1,P2・・・Pnの台数に対応した台数のインバータ装置1021,1022・・・102nを備えていることから,各インバータ装置1021,1022・・・102nに,前掲の特許文献1に記載のインバータ装置と同様,出力開始時における出力周波数を徐々に増大させる出力を行わせることで,いずれのポンプP1,P2・・・Pn共にソフトスタートとすることができ始動電流の抑制が可能となる。
【0025】
しかしながら,この構成では高価なインバータ装置1021,1022・・・102nをポンプP1,P2・・・Pnの台数分搭載する必要があると共に,各インバータ装置1021,1022・・・102nの動作をそれぞれ個別に制御する複雑な制御を可能とする高性能な電子制御装置が必要となることから,これらの機器の搭載がエンジン駆動型発電機の製造コストを上昇させる結果,市場における価格競争力を低下させる。
【0026】
なお,上記の例では,運転開始条件が異なる複数台のモータ機器の例として,それぞれ独立した水源内の水位の変化に応じて始動及び停止する複数台の排水ポンプを例に挙げ,これらを始動させる際の問題を説明した。
【0027】
しかしながら,前述した問題は,図9を参照して説明したエンジン駆動型発電機の使用例に限定されず,異なる運転開始条件を有する複数のモータ機器に対する共通の電源としてエンジン駆動型発電機を使用する場合に同様に生じ得る問題であり,例えば,単一の水源の水位の上昇に応じて作動させる排水ポンプの台数を増加させるようにした排水システム,室温の上昇に応じて作動させる換気ファン(モータ機器)の台数を増加させるようにした空調システム,消費側における圧縮気体の消費量の増大に対応して作動させるモータ駆動型圧縮機の台数を増加させるようにした圧縮気体供給システム等,所謂『台数制御』が行われる各種システムにおいても同様に生じ得る。
【0028】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,運転開始条件の異なる複数台のモータ機器の始動を1台のインバータ装置によって行う場合であっても,全てのモータ機器を,始動電流を抑制した状態で始動させることが可能であり,従って,従来の同クラスのエンジン駆動型発電機よりも大型のモータ機器を始動させることができるエンジン駆動型発電機の運転制御方法及び該運転制御方法を実行可能なエンジン駆動型発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0030】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機1の運転制御方法は,
エンジン3と,該エンジン3により駆動される発電機本体4,前記発電機本体4の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置2を備えたエンジン駆動型発電機1において,
1台の前記インバータ装置2を介した出力を行うインバータ出力回路7と,
前記インバータ装置2を介することなく前記発電機本体4からの出力を直接行う直接出力回路8をそれぞれ設けると共に,
複数台のモータ機器M1~M3のそれぞれを,前記インバータ出力回路7と前記直接出力回路8に接続又は遮断可能に配置し,
停止状態にある前記モータ機器M1~M3のいずれか(例えば第2モータ機器M2)を始動対象モータ機器とし,該始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)を,前記直接出力回路8との接続を遮断した状態で前記インバータ出力回路7に接続して,前記インバータ装置2に所定の低周波数(一例としてゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行わせて始動させる始動処理と,
前記インバータ装置2の出力開始後,所定の条件(例えばインバータ装置2の出力開始から所定時間の経過や,インバータ装置2による設定周波数の出力等)が満たされたとき,前記インバータ出力回路7と前記始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)の接続を遮断すると共に,該始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)を前記直接出力回路8に接続して前記発電機本体4の出力を直接印加して前記始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)の運転を継続させる運転継続処理を行い,
前記モータ機器M1~M3のうちのいずれかを前記始動対象モータ機器として始動する毎に,前記始動処理と前記運転継続処理をそれぞれ実行することを特徴とする(請求項1)。
【0031】
上記構成の運転制御方法において,前記モータ機器M1~M3毎に運転開始条件を予め設定し,いずれかの前記モータ機器M1~M3に対する前記運転開始条件が満たされたとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として始動させるように構成するものとしても良い(請求項2)。
【0032】
この場合,更に前記モータ機器M1~M3毎に運転停止条件を予め設定し,前記運転継続処理が行われているモータ機器のうち,前記運転停止条件を満たしたモータ機器M1~M3と前記直接出力回路8間の接続を遮断して,該モータ機器を停止させる停止処理を行うように構成するものとしても良い(請求項3)。
【0033】
なお,前記モータ機器M1~M3を,水源61~63に設置された排水ポンプP1~P3とし,前記水源61~63の水位が所定水位となったことを前記運転開始条件として前記運転開始条件を満たした排水ポンプP1~P3を前記始動対象モータ機器とするように構成するものとしても良い(請求項4)。
【0034】
また,上記運転制御方法を実行する本発明のエンジン駆動型発電機1は,
エンジン3と,該エンジン3により駆動される発電機本体4,前記発電機本体4の出力を直流に変換した後,任意周波数の交流に変換して出力するインバータ装置2を備えたエンジン駆動型発電機1において,
1台の前記インバータ装置2を介した出力を行うインバータ出力回路7と,
前記インバータ装置2を介することなく前記発電機本体4からの出力を直接行う直接出力回路8を設けると共に,
複数台のモータ機器M1~M3のそれぞれと,前記インバータ出力回路7,及び,前記直接出力回路8間の接続及び遮断を行うスイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)と,
前記スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)と前記インバータ装置2の動作を制御する制御装置9を設け,
停止状態にある前記モータ機器M1~M3のいずれか(例えば第2モータ機器M2)を始動対象モータ機器として作動させるとき,前記制御装置9が,
前記スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)に,前記始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)と前記直接出力回路8間の接続を遮断(図1の例では第2運転継続スイッチSW2bのOFFにより遮断)した状態で,該モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)を前記インバータ出力回路7に接続(図示の例では第2始動スイッチSW2aのONにより接続)させると共に,前記インバータ装置2に,所定の低周波数(一例としてゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行わせて前記始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)を始動させる始動処理と,
前記インバータ装置2の出力開始後,所定の条件(インバータ装置2の出力開始から所定時間の経過や,インバータ装置2による設定周波数の出力等)が満たされたとき,前記スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)に前記インバータ出力回路7と前記始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)の接続を遮断(図示の例では第2始動スイッチSW2aのOFFにより遮断)させると共に,該始動対象モータ機器(ここでは第2モータ機器M2)を前記直接出力回路8に接続(図示の例では第2運転継続スイッチSW2bのONにより接続)させて前記発電機本体4の出力を直接印加して前記始動対象モータ(ここでは第2モータ機器M2)の運転を継続させる運転継続処理を行い,
前記制御装置9が,前記モータ機器M1~M3のうちのいずれかを前記始動対象モータ機器として始動する毎に,前記始動処理と前記運転継続処理をそれぞれ実行することを特徴とする(請求項5)。
【0035】
上記構成のエンジン駆動型発電機1において,
前記モータ機器M1~M3毎に予め運転開始条件を設定し,設定された前記運転開始条件が満たされたか否かを検知する運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設け,
前記制御装置9が,
いずれかの前記モータ機器M1~M3に対して設定された前記運転開始条件が満たされたことを前記運転条件検知装置(一例としてフロートスイッチF1~F3)が検知したとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として前記始動処理と前記運転継続処理を行うように構成するものとしても良い(請求項6)。
【0036】
この場合,更に,前記モータ機器M1~M3毎に予め運転停止条件を設定し,前記運転条件検知装置(一例としてF1~F3)を,設定された前記運転停止条件が満たされたか否かを検知可能に構成すると共に,
前記制御装置9が,
前記運転継続処理が行われているモータ機器のうち,前記運転停止条件を満たしたモータ機器と前記直接出力回路8間の接続を遮断(図示の例では運転継続スイッチSW1b,SW2b,Sw3bのOFFにより遮断)して,該モータ機器を停止させる停止処理を行うようにするものとしても良い(請求項7)。
【0037】
前記インバータ装置2に,該インバータ装置2の出力を開始又は停止するスイッチ23を設け,
前記制御装置9が,
前記スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)を操作して前記始動対象モータと前記インバータ出力回路を接続(図示の例では,始動スイッチSW1a,SW2a,SW3aのONにより接続)したとき,前記インバータ装置2の前記スイッチ23をONにして前記インバータ装置2に出力を開始させると共に,
前記インバータ装置2の前記スイッチ23をOFFにした後,前記スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a;運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)を操作して前記始動対象モータと前記インバータ出力回路7を遮断(図示の例では,始動スイッチSW1a,SW2a,SW3aのOFFにより遮断)することで前記インバータ装置2の出力を停止させるようにしても良い(請求項8)。
【0038】
なお,前記モータ機器M1~M3を,水源61~63に設置された排水ポンプP1~P3とすることができ,この場合,前記運転条件検知装置として,前記水源の水位を検知するレベルセンサ(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設けると共に,
前記制御装置9が,前記水源61~63の水位が所定水位となったことを前記レベルセンサ(フロートスイッチF1~F3)が検知したとき,前記レベルセンサ(フロートスイッチF1~F3)が検知した前記水源61~63の前記水位を前記運転開始条件とする前記排水ポンプP1~P3を前記始動対象モータ機器として前記始動処理及び前記運転継続処理を行うようにしても良い(請求項9)。
【発明の効果】
【0039】
以上で説明した本発明の運転制御方法では,インバータ装置2に接続されてインバータ装置2を介した出力を行うインバータ出力回路7と,インバータ装置2を介することなく発電機本体4に接続されて,発電機本体4からの出力を直接行う直接出力回路8を設け,始動対象モータ機器の始動を,前記直接出力回路8との接続を遮断した状態で前記インバータ出力回路7に接続して,前記インバータ装置2に所定の低周波数(一例としてゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行わせて始動させる始動処理により行うことで,始動対象モータ機器の始動を,始動電流の抑制が可能なソフトスタートとすることができた。
【0040】
一方,前記インバータ装置2の出力開始後,所定の条件(インバータ装置2の出力開始から所定時間の経過,又は,インバータ装置2による設定周波数の出力等)が満たされたとき,前記インバータ出力回路7と前記始動対象モータ機器の接続を遮断すると共に,該始動対象モータ機器を前記直接出力回路8に接続して前記発電機本体4の出力を直接印加して前記始動対象モータ機器の運転を継続させる運転継続処理に移行することで,始動後,定格又は定格に近い状態での運転(通常運転)に移行したモータ機器に対する電力の供給を,発電機本体4より直接行えるようにした。
【0041】
これにより,1台又は複数台モータ機器が既に運転されている状態であっても,インバータ装置2を新たに追加始動させる始動対象モータ機器の始動に使用することができ,複数台のモータ機器の全てを,始動電流の抑制が可能なソフトスタートによって始動させることができた。
【0042】
その結果,本発明の運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機では,従来の同クラスのエンジン駆動型発電機に比較してより大型のモータ機器を始動させることができた。
【0043】
前記モータ機器M1~M3毎に運転開始条件を予め設定し,いずれかの前記モータ機器に対する前記運転開始条件が満たされたとき,該運転開始条件を満たしたモータ機器を前記始動対象モータ機器として始動させる構成,及び,前記モータ機器M1~M3毎に運転停止条件を予め設定し,前記運転継続処理が行われているモータ機器のうち,前記運転停止条件を満たしたモータ機器M1~M3と前記直接出力回路間の接続を遮断して,該モータ機器を停止させるようにした構成では,例えば水源61~63の水位の変化に応じて,モータ機器である排水ポンプP1~P3を順次作動させる自動制御等に本発明のエンジン駆動型発電機を好適に使用することができた。
【0044】
同様に,例えば室温の変化に応じて作動させるファン(モータ機器)の台数を増減させる空調システム,圧縮気体の消費量の変化に応じて作動させるモータ駆動型圧縮機の台数を増減させる圧縮気体供給システム等,所謂『台数制御』が行われる各種システムのように,一台又は複数台のモータ機器の作動中に追加で新たなモータ機器を始動させることがある各種システムにおける電源として,本発明のエンジン駆動型発電機を好適に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明のエンジン駆動型発電機の概略説明図。
図2】本発明のエンジン駆動型発電機を複数台の排水ポンプに対する共通の電源として使用した例を示した説明図(排水ポンプが全て停止している状態)。
図3】本発明のエンジン駆動型発電機を複数台の排水ポンプに対する共通の電源として使用した例を示した説明図(第1排水ポンプP1が始動処理されている状態)。
図4】本発明のエンジン駆動型発電機を複数台の排水ポンプに対する共通の電源として使用した例を示した説明図(第1排水ポンプP1を始動処理から運転継続処理に移行している状態)。
図5】本発明のエンジン駆動型発電機を複数台の排水ポンプに対する共通の電源として使用した例を示した説明図(第1排水ポンプP1が運転継続処理されている状態で,第2排水ポンプP2の始動処理を開始している状態)。
図6】本発明のエンジン駆動型発電機を複数台の排水ポンプに対する共通の電源として使用した例を示した説明図(第2排水ポンプP2を始動処理から運転継続処理に移行している状態)。
図7】インバータ装置を備えた従来のエンジン駆動型発電機の説明図(特許文献1の図1に対応)。
図8】インバータ装置を備えた従来のエンジン駆動型発電機の説明図(特許文献2の図3に対応)。
図9】単一のインバータ装置に始動開始条件の異なる複数のモータ機器を接続した場合を想定した説明図であり,(A)は第1排水ポンプP1の始動時,(B)は第2排水ポンプの始動時。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機の構成例について説明する。
【0047】
図1中の符号1は,本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,エンジン3,前記エンジン3によって駆動される発電機本体4,この発電機本体4に出力線5を介して接続されたインバータ装置2,該インバータ装置に接続された,インバータ装置2を介した出力を取り出すためのインバータ出力回路7,及び,発電機本体4に接続されて前記インバータ装置2を介することなく前記発電機本体4からの出力を直接取り出すための直接出力回路8を有すると共に,複数台のモータ機器M1~M3のそれぞれと,前記インバータ出力回路7と前記直接出力回路8間の連通及び遮断を行う,スイッチング機構(始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a,及び運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)を備えている。
【0048】
エンジン駆動型発電機1の主要な構成部材の一つである前述の発電機本体4は,既知の各種型式のものを使用可能であり,本実施形態にあっては一例として励磁機42を備えた自励式の三相交流発電機(三相200V)を発電機本体4として使用している。
【0049】
このような励磁機42を備えた発電機本体4では,主発電機41から出力される電圧が設定値となるように,自動電圧調整器(AVR)43によって出力電圧の増減に応じて励磁機42へ供給する励磁電流が制御されている。
【0050】
発電機本体4を駆動する前述のエンジン3は,発電機本体4において所定の商用周波数(50Hz又は60Hz)が得られるように一定の回転速度で運転できるように構成されており,一例として,本実施形態の構成において,エンジン3の回転速度を1500min-1に設定した場合,発電機本体4からは50Hzの周波数の出力が得られるように構成されていると共に,エンジン3の回転数を1800min-1に設定する場合には,発電機本体4からは60Hzの周波数の出力が得られるように構成されている。
【0051】
前述したインバータ装置2は,発電機本体4からの交流を直流に変換するコンバータ部21と,コンバータ部21で得た直流を任意の周波数の交流に変換するインバータ部22,及びインバータ装置2の出力を開始又は停止するスイッチ23を備え,例えば既知のPWM(パルス幅変調)方式等によって,操作盤等に設けたダイヤルスイッチ等から成る周波数設定手段(図示せず)によって設定された任意周波数の交流出力を発生することができるように構成されていると共に,出力周波数が比較的低いときには出力電圧が低く,出力周波数が比較的高いときには出力電圧が高くなるように,周波数の増減にあわせて出力電圧も変化するように設定されている。
【0052】
このインバータ装置2は,電子制御装置等で構成される制御装置9のインバータ制御部91によりその動作が制御されており,制御装置9からの出力開始指令を受けて,出力開始時には所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させる出力を行うように構成されており,必要に応じて前記設定周波数に至り一定の周波数の出力を維持するように構成されている。
【0053】
前述の設定周波数は,操作盤(図示せず)等に設けた周波数設定手段(図示せず)を操作することにより調整可能できるようにしても良く,好ましくは発電機本体4の出力周波数と一致させる。本実施形態にあっては,このような出力周波数の設定を可能とすべく,一例としてエンジンの回転速度を一定とした状態で設定周波数を所定の範囲で可変とできるように設定した。
【0054】
以上のように構成されたインバータ装置2にはインバータ出力回路7が接続されており,このインバータ出力回路7に設けられた分岐路71~73のそれぞれに対し第1~第3モータ機器M1~M3が,後述するスイッチング機構(スイッチング機構に設けられた始動スイッチSW1a,SW2a,SW3a)を介して接続可能に構成されている。
【0055】
また,前述の発電機本体4とインバータ装置2を接続する前述の出力線5には,インバータ装置2を介することなく発電機本体4の出力を直接取り出すための直接出力回路8が接続されており,この直接出力回路8に設けられた分岐路81~83のそれぞれに対しモータ機器M1~M3が,後述するスイッチング機構(スイッチング機構に設けられた運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3b)を介して接続可能に構成されている。
【0056】
各モータ機器M1~M3と前記インバータ出力回路7に設けた分岐路71~73間の接続及び遮断,及び,前記直接出力回路8に設けた分岐路81~83間の接続及び遮断は,前述したスイッチング機構により行われる。
【0057】
このスイッチング機構は,第1モータ機器M1をインバータ出力回路7の第1分岐路71に対し接続又は遮断する第1始動スイッチSW1aと,第1モータ機器M1を直接出力回路8の第1分岐路81に対し接続又は遮断する第1運転継続スイッチSW1b,第2モータ機器M2をインバータ出力回路7の第2分岐路72に対し接続又は遮断する第2始動スイッチSW2aと,第2モータ機器M2を直接出力回路8の第2分岐路82に対し接続又は遮断する第2運転継続スイッチSW2b,及び,第3モータ機器M3をインバータ出力回路7の第3分岐路73に対し接続又は遮断する第3始動スイッチSW3aと,第3モータ機器M3を直接出力回路8の第3分岐路83に対し接続又は遮断する第3運転継続スイッチSW3bにより構成されている。
【0058】
これらのスイッチ(SW1a,SW2a,SW3a,SW1b,SW2b,SW3b)は,それぞれ独立して動作可能に構成されており,これにより,各モータ機器M1~M3をインバータ出力回路7に接続して行う始動処理,直接出力回路8に接続して行う運転継続処理,及び,モータ機器M1~M3をインバータ出力回路7と直接出力回路8のいずれにも接続せずに停止させる停止処理を行うことができるように構成されている。
【0059】
スイッチング機構に設けた各スイッチ(SW1a,SW2a,SW3a,SW1b,SW2b,SW3b)は,オペレータが手動で操作するものとしても良いが,好ましくはこれらのスイッチ(SW1a,SW2a,SW3a,SW1b,SW2b,SW3b)をコンダクタ(電磁開閉器)により構成する等して制御装置9のスイッチング制御部92からの電気信号によって自動で制御するように構成しても良い。
【0060】
なお,図1の例では,インバータ制御部91とスイッチング制御部92を共通の制御装置9によって実現する構成例を示したが,インバータ制御部91とスイッチング制御部92は,それぞれ別に設けた制御装置によって実現するものとしても良い。
【0061】
このように,制御装置9のスイッチング制御部92によって各スイッチ(SW1a,SW2a,SW3a,SW1b,SW2b,SW3b)の動作を制御する場合,前述した3台のモータ機器M1~M3のそれぞれについて運転開始条件と,運転停止条件を予め設定しておくと共に,始動制御と運転継続制御の切り換え条件を予め設定しておき,更に,運転開始条件及び運転停止条件が満たされているか否かを検知する運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~F3)を設け,運転条件検知装置が検知した条件に基づき,制御装置9のスイッチング制御部92が各スイッチ(SW1a,SW2a,SW3a,SW1b,SW2b,SW3b)を自動で開閉制御できるようにするものとしても良い。
【0062】
これにより,運転条件検知装置(実施例においてフロートスイッチF1~F3)がいずれかのモータ機器(例えば第1モータ機器M1)の運転開始条件が満たされたことを検知すると,制御装置9はこのモータ機器(ここでは第1モータ機器M1)を始動対象モータ機器として所定の始動処理を実行する。
【0063】
この始動処理は,制御装置9のスイッチング制御部92が始動対象モータ機器(ここでは第1モータ機器M1)に対応する始動スイッチ(ここでは第1始動スイッチSW1a)をONにして始動対象モータ機器(ここでは第1モータ機器M1)をインバータ出力回路7に接続すると共に,制御装置9のインバータ制御部91がインバータ装置2に,所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から所定の設定周波数に徐々に周波数を上昇させる出力を行わせることにより実行される。
【0064】
そして,例えば,インバータ装置2の出力開始後所定時間の経過や,インバータ装置2による設定周波数の出力等,始動対象モータ機器(ここでは第1モータ機器M1)の始動が完了したことを示す所定の切り換え条件が満たされると,制御装置9のインバータ制御部91はインバータ装置2の出力を停止させると共に,スイッチング制御部92が該当する始動スイッチ(ここでは第1始動スイッチSW1a)をOFFにし,更に,対応する運転継続スイッチ(ここでは第1運転継続スイッチSW1b)をONにして,始動対象モータ機器(ここでは第1モータ機器M1)に対し発電機本体4の出力を直接入力する,運転継続処理を開始する。
【0065】
その後,運転継続処理中のモータ機器(ここでは第1モータ機器M1)の運転停止条件が満たされたことを運転条件検知装置(ここでは第1フロートスイッチF1)が検知すると,制御装置9のインバータ制御部91がインバータ装置2のスイッチ23をOFFにしてインバータ装置2の出力を停止すると共に,制御装置9のスイッチング制御部92が対応する運転継続スイッチ(ここでは第1運転継続スイッチSW1b)をOFFにして,対応するモータ機器(ここでは第1モータ機器M1)を停止させる停止処理を行う。
【0066】
本発明のエンジン駆動型発電機1では,制御装置9がいずれかのモータ機器M1~M3を始動対象モータ機器として始動させる度に前述した始動処理と運転継続処理を実行することで,いずれのモータ機器M1~M3の始動共に,始動電流を抑制した状態で行うソフトスタートとすることが可能となる。
【0067】
このように,各モータ機器の始動がソフトスタートによって行われる様子を,更に図2図6を参照して詳しく説明する。
【0068】
図2図6に示す構成例は,それぞれが独立した水源である第1~第3水源61~63内の水を排水する第1~第3排水ポンプP1~P3を前述したモータ機器M1~M3とした例であり,第1水源61内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第1排水ポンプP1の運転開始条件,第2水源62内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第2排水ポンプP2の運転開始条件,第3水源63内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第3排水ポンプP3の運転開始条件として設定している。
【0069】
そして,いずれかの排水ポンプP1~P3に対し設定された前記運転開始条件が満たされたとき,運転開始条件を満たした排水ポンプを始動対象モータ機器として,これにインバータ装置2からの出力を印加して行うソフトスタートによって始動させ(始動処理),該インバータ装置2の出力開始から所定時間が経過した時,始動対象モータ機器とインバータ装置との接続を遮断すると共に発電機本体4の出力を始動対象モータ機器に直接印加して運転を継続する,運転継続処理を実行するように構成している。
【0070】
また,図2図6に示した例では,一旦始動されて前述した運転継続処理が行われている排水ポンプP1~P3は,排水ポンプP1~P3毎に設定した運転停止条件を満足することで停止するように構成されており,本実施形態では,第1水源内61の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第1排水ポンプP1の運転停止条件,第2水源62内の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第2排水ポンプP2の運転停止条件,第3水源63内の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第3排水ポンプP3の運転停止条件としてそれぞれ設定した。
【0071】
そして,第1~第3水槽内61~63の水位を検知するレベルセンサ,図示の例では第1~第3フロートスイッチF1~F3を運転条件検知装置として第1~第3水源61~63内にそれぞれ配置し,第1~第3水源61~63内の水位が所定の上限水位HL以上となったことを第1~第3フロートスイッチF1~F3が検知すると,この検知信号を受信した制御装置9がスイッチング機構とインバータ装置を操作して該当する排水ポンプを始動させると共に,第1~第3水源61~63内の水位が所定の下限水位LL以下となったことを第1~第3フロートスイッチF1~F3が検知すると,この検知信号を受信した制御装置9がスイッチング機構とインバータ装置2を制御して対応する排水ポンプを停止するように構成した。
【0072】
上記構成の図2図6に示したエンジン駆動型発電機1において,一例として第1水源61,第2水源62の順に順次水位が上昇して上限水位HLとなることで,先ず,第1排水ポンプP1を始動させ,その後,第1排水ポンプP1の運転継続中に更に第2排水ポンプP2を追加して始動させる場合を例に挙げて各排水ポンプP1,P2の始動から継続運転までの処理を説明すると,以下の通りである。
【0073】
図2に示すように,第1~第3水源61~63内の水位がいずれも上限水位HL未満(図示の例では下限水位LL)で,かつ,第1~第3排水ポンプP1~P3の全てが停止している状態では,インバータ装置2のスイッチ23はOFFで,インバータ装置2からの出力が行われていない状態にあると共に,スイッチング機構を構成する第1~第3始動スイッチSW1a,SW2a,SW3aと第1~第3運転継続スイッチSW1b,SW2b,SW3bはいずれもOFFとなっており,第1~第3排水ポンプP1~P3はインバータ出力回路7及び直接出力回路8のいずれからも遮断された状態にある。
【0074】
図2に示した前述の状態から,図3に示すように第1水源61の水位が上昇して上限水位HLに至ると,第1フロートスイッチF1がこの水位上昇を検知して制御装置9に対し検知信号を出力する。
【0075】
第1フロートスイッチF1の検知信号を受信した制御装置9のスイッチング制御部92は,第1始動スイッチSW1aをONにして第1排水ポンプP1をインバータ出力回路7の第1分岐路71に接続すると共に,制御装置9のインバータ制御部91はインバータ装置2のスイッチ23をONにして,インバータ装置2に所定の低周波数から所定の設定周波数に徐々に周波数を増大させると共に設定周波数で一定に維持する出力を行わせる,始動処理を実行する。
【0076】
これにより,第1排水ポンプP1が始動電流を抑制した状態でソフトスタートされる。
【0077】
制御装置9のインバータ制御部91は,タイマのカウントによりインバータ装置2が出力を開始してから所定時間の経過をカウントすると,第1排水ポンプP1が安定した運転状態に移行したものと判断し,図4に示すようにインバータ装置2のスイッチ23をOFFにして,インバータ装置2の出力を停止することで,インバータ装置2を,停止中の他の排水ポンプP2,P3を始動させる時まで待機状態とする。
【0078】
このようにしてインバータ装置2の出力を停止させた状態で,制御装置9のスイッチング制御部92は,第1始動スイッチSW1aをOFFにすると共に第1運転継続スイッチSW1bをONにして第1排水ポンプP1を直接出力回路8の第1分岐路81に接続して,第1排水ポンプP1に発電機本体4の出力を直接印加して運転を継続する運転継続処理を実行する。
【0079】
なお,本実施形態では,前述した始動処理から運転継続処理への切り換えを,インバータ装置2が出力を開始してから所定の時間が経過したことを条件として行うものとしたが,例えばインバータ装置2の出力周波数が設定周波数に上昇したとき,又は,設定周波数に上昇して所定時間が経過したときに始動処理から継続処理に切り換えるものとしても良く,第1排水ポンプP1の始動が完了したとき,好ましくは始動の完了後,通常運転に移行して安定状態となったときに切り換えを行うものであれば,種々の構成変更が可能である。
【0080】
このようにして第1排水ポンプP1が運転継続処理されている状態にあるときに,図5に示すように第2水源62内の水位が上昇して所定の上限水位HL以上に上昇すると,この水位上昇を検知した第2フロートスイッチF2は,制御装置9に対し検知信号を出力する。
【0081】
第2フロートスイッチF2からの検知信号を受信した制御装置9のスイッチング制御部92は,第2始動スイッチSW2aをONにして第2排水ポンプP2をインバータ出力回路7の第2分岐路72に接続すると共に,制御装置9のインバータ制御部91は,インバータ装置2のスイッチ23をONにして,インバータ装置2に所定の低周波数から所定の設定周波数まで徐々に周波数を上昇させると共に設定周波数で一定に維持する出力を行わせる,始動処理を実行する。
【0082】
その結果,第2排水ポンプP2を,始動電流を抑制したソフトスタートによって始動させることができる。
【0083】
第2排水ポンプP2の始動後,インバータ装置2が出力を開始してから所定の時間が経過すると,図6に示すように制御装置9のインバータ制御部91がインバータ装置2のスイッチ23をOFFにしてインバータの出力を停止させて待機状態とする点,及び,インバータ装置2の出力停止後,制御装置9のスイッチング制御部92が第2始動スイッチSW2aをOFFにすると共に第2運転継続スイッチSW2bをONにして第2排水ポンプP2を直接出力回路8の第2分岐路82に接続し,発電機本体4の出力を第2排水ポンプP2に対し直接印加して運転継続を行う,運転継続処理を実行する点は,第1排水ポンプP1に対する処理と同様である。
【0084】
前述した始動処理と運転継続処理は,第3排水ポンプP3を始動させる際にも同様にして行われ,その結果,第1~第3排水ポンプP1~P3のいずれ共に,始動電流を抑制したソフトスタートで始動させることができる。
【0085】
なお,図示は省略するが,以上のようにして第1排水ポンプと第2排水ポンプの運転が継続して行われることにより各水源61,62内の排水が進み,第1水源61の水位が所定の下限水位LL以下に低下すると,これを検知した第1フロートスイッチの検知信号を受信した制御装置9のスイッチング制御部92は,第1運転継続スイッチSW1bをOFFにして第1排水ポンプP1と直接出力回路8の第1分岐路81間の連通を遮断して,第1排水ポンプP1を停止させる停止処理を行う。
【0086】
また,第2水源62内の排水が進んで第2水源62の水位が第1水源61に遅れて所定の下限水位LL以下に低下すると,これを検知した第2フロートスイッチF2の検知信号を受信した制御装置9のスイッチング制御部92は,第2運転継続スイッチSW2bをOFFにして第2排水ポンプP2と直接出力回路8の第2分岐路82間の連通を遮断して,第2排水ポンプP2を停止させる停止処理を行う。
【0087】
そして,第1~第3水源61~63のいずれかの水位が再び所定の上限水位HL以上に上昇すると,前述した処理が繰り返し行われる。
【0088】
このように,本発明の運転制御方法では,始動対象とした排水ポンプP1~P3の始動処理のときにのみ各排水ポンプP1~P3に対しインバータ装置2の出力を印加し,始動対象とした排水ポンプP1~P3の始動が完了すると,発電機本体4の出力を直接印加することによりモータ機器の運転を継続する,運転継続処理に移行する。
【0089】
その結果,1台のインバータ装置2によって運転開始条件,従って,始動タイミングが異なる複数台の排水ポンプ(モータ機器)を始動させる場合に,1台又は複数台の排水ポンプ(モータ機器)の作動中に,新たに排水ポンプ(モータ機器)を追加で始動させる場合であっても,ソフトスタートによって始動電流を抑制した状態で始動させることができた。
【0090】
このように,いずれの排水ポンプ(モータ機器)共に始動電流を抑制したソフトスタートが可能であることから,本発明の運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機では,従来の同クラスのエンジン駆動型発電機に比較してより消費電力の大きな排水ポンプ(モータ機器)を始動させることが可能である。
【0091】
後掲の表2は,後掲の表1に示す性能のエンジン駆動型発電機とモータ機器を使用して,本発明の運転制御方法でモータ機器の始動を行った場合(実施例)と,従来の方法で始動を行った場合(比較例1,2)とで,始動可能なモータ機器の台数がどのように相違するかを比較した結果を示したものである。
【0092】
なお,表1に示すように発電機本体にインバータ装置のみを接続した場合のインバータ装置の出力上限値は37kWであるが,本発明の方法では,運転継続処理において直接出力回路8を介して発電機本体にインバータ装置と並列に定格11kW,又は22kWの負荷を接続することになり,この場合のインバータ装置の出力上限値はそれぞれ29kWと18kWとなる。
【0093】
また,比較例1は,3台のモータ機器に対し,インバータ装置を介さずに発電機本体からの出力(50Hz,200V)を直接入力して始動させた場合を想定したもので,1台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)した後,1台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま,2台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)し,更に,1台目及び2台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま3台目のモータ機器を直入れ始動(全電圧始動)する場合を想定したものである。
【0094】
また,比較例2は,3台のモータ機器をいずれもインバータ装置からの出力によって始動させたものであり,1台目のモータ機器を所定の低周波数から設定周波数に徐々に出力周波数を上昇させるソフトスタートで始動させた後,1台目のモータ機器を停止させることなく通常運転させたまま,2台目のモータ機器に対し,インバータ装置が1台目のモータ機器に対し出力している設定周波数,設定電圧(50Hz,200V)をそのまま印加して直入れ始動(全電圧始動)し,1台目及び2台目のモータ機器を通常運転させたまま3台目のモータ機器にインバータ装置が出力している設定周波数,設定電圧(50Hz,200V)を直接印加して直入れ始動(全電圧始動)させた場合を想定したものである。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表2に示したように,比較例1,比較例2の方法でモータ機器を始動させた場合には,いずれの方法で始動させた場合共に,2台目以降のモータ機器については始動させることができないが,本発明の運転制御方法でモータ機器を始動させる場合,3台のモータ機器の全てを始動させることができた。
【符号の説明】
【0098】
1 エンジン駆動型発電機
2 インバータ装置
21 コンバータ部
22 インバータ部
23 スイッチ
3 エンジン
4 発電機本体
41 主発電機
42 励磁機
43 自動電圧調整器(AVR)
5 出力線
61~63 第1~第3水源
7 インバータ出力回路
71~73 (第1~第3)分岐路
8 直接出力回路
81~83 (第1~第3)分岐路
9 制御装置
91 インバータ制御部
92 スイッチング制御部
100 エンジン駆動型発電機
102,1021,1022,102n インバータ装置
103 エンジン
104 発電機本体
151 三相出力端子台
161~163 第1~第3水源
SW1a,SW2a,SW3a (第1~第3)始動スイッチ
SW1b,SW2b,SW3b (第1~第3)運転継続スイッチ
P1~P3,Pn (排水)ポンプ
F1~F3 運転条件検知装置(第1~第3フロートスイッチ)
M1~M3 モータ機器
HL 上限水位
LL 下限水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9