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  • 特開-杖及び杖用の足部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166298
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】杖及び杖用の足部
(51)【国際特許分類】
   A45B 9/04 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
A45B9/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077269
(22)【出願日】2022-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】519316966
【氏名又は名称】株式会社Welloop
(74)【代理人】
【識別番号】100134061
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 公一
(72)【発明者】
【氏名】堺 裕太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 広児
(72)【発明者】
【氏名】小桑 隆
【テーマコード(参考)】
3B104
【Fターム(参考)】
3B104AA01
3B104DA01
(57)【要約】
【課題】杖を押し込んだ際の反発力を形成することが可能な杖及び杖用の足部を提供する。
【解決手段】本開示の杖1の足部30は、接地して杖を支持する複数の接地部31、32を備える。複数の接地部31,32は、杖のシャフト20と接続部50で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる第1接地部31と、シャフト20と接続部50で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる第2接地部32とを有する。杖1を側面から見た場合に、シャフト20との接続部50から第1接地部31の先端までの前方径と、シャフト20との接続部50から第2接地部32の後端までの後方径が異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地して杖を支持する複数の接地部
を備え、
前記複数の接地部は、
杖のシャフトと接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる第1接地部と、
前記シャフトと前記接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる第2接地部と、
を有し、
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から前記第1接地部の先端までの前方径と、前記シャフトとの接続部から前記第2接地部の後端までの後方径が異なる
杖用の足部。
【請求項2】
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から第1接地部先端までの前方径が、前記シャフトとの接続部から第2接地部後端までの後方径よりも長い
請求項1に記載の杖用の足部。
【請求項3】
前記第1接地部は、該第1接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第2接地部は、該第2接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第1接地部と前記第2接地部により、杖のシャフトからの荷重に対する反発機構が形成された
請求項1に記載の杖用の足部。
【請求項4】
前記第1接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続され、
前記第2接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続された
請求項1に記載の杖用の足部。
【請求項5】
請求項1に記載の杖用の足部と、
前記杖用の足部に接続されたシャフトと、
前記シャフトに接続され、使用者に把持されるためのグリップと、
を備えた杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杖及び杖用の足部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、歩行を助ける器具として杖が広く使用されている。従来の一般的な歩行用杖は棒状であり、一点で接地する一点杖又は複数の点で接地する多点杖である。このような杖は、片麻痺者にとっては歩行速度の上昇や異常歩行の軽減効果が証明されている。これは杖によって制動力と推進力を形成できるためとされている。
【0003】
また、シャフトが湾曲した杖が開示されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6786132号
【特許文献2】特許6746182号
【特許文献3】特許6746181号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一点杖は底面が一点であり、推進力の形成には好適であるが、制動力の形成には不向きである。対照的に、多点杖は接地面が広いことから制動力の形成には好適であるが、推進力の形成には不向きである。また、推進力の形成には杖を押し込む(プッシュオフ)動作が必要となるが、従来の木製やアルミ製の棒状杖では充分な反力を得ることができない。
【0006】
本発明は以上の点に鑑み、杖を押し込んだ際の反発力を形成することが可能な杖及び杖用の足部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、接地して杖を支持する複数の接地部を備え、前記複数の接地部は、杖のシャフトと接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる第1接地部と、前記シャフトと前記接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる第2接地部と、を有し、杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から前記第1接地部の先端までの前方径と、前記シャフトとの接続部から前記第2接地部の後端までの後方径が異なる杖用の足部が提供される。
【0008】
本発明の一態様によると、上述の杖用の足部と、前記杖用の足部に接続されたシャフトと、前記シャフトに接続され、使用者に把持されるためのグリップと、を備えた杖が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、杖を押し込んだ際の反発力を形成することが可能な杖及び杖用の足部を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態における杖の斜視図である。
図2】本実施の形態における杖の左側面図である。
図3】本実施の形態における杖の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
1.概要
本実施の形態の杖は、杖の下端部である足部が前方への推進力形成のために最適な形状をした機構を有する。例えば、杖は、矢状面(横から見た面)上においてシャフトとの接続部から前方が後方より長い形状を有する。また、杖の材料は、カーボン性素材が望ましい。
【0013】
2.全体構成
図1は、本実施の形態における杖の斜視図である。本実施の形態の杖1は、グリップ10と、シャフト20と、足部30とを備える。グリップ10は、使用者が手で杖を持つ部分である。グリップ10は、例えば、持ち手、握りと称される場合もある。グリップ10は、第1接続部40を介してシャフト20と連結される。シャフト20は、グリップ10と足部30との間に連結される部分である。シャフト20は、例えば、柄、支柱と称される場合もある。足部30は、地面等に接地する部分である。足部30は、シャフト20と連結される。足部30は、後述する構成以外にも、単に地面に接地する部分を表してもよい。例えば、足部30は、シャフト20と一体化していてもよいし、シャフトの下部に取り付けられるゴム又は他の弾性体などでもよい。足部30は、例えば接地部と称される場合もある。また、シャフト20は、後述する構成以外にも、公知の形状でもよいし、適宜の形状でもよい。
【0014】
本実施の形態では、グリップ10、シャフト20及び足部30が互いに接続されて杖1を構成する。このような接続は、例えば、グリップ10、シャフト20及び足部30が別々の要素として構成され、互いに連結して杖1を構成してもよいし、グリップ10、シャフト20及び足部30を一体的に構成してもよい。また、グリップ10、シャフト20及び足部30のうち2つを一体的に構成し、他の1つと連結してもよい。各部の詳細な構成は後述する。
【0015】
なお、以下の説明において、各方向を以下のように定義する。使用者が杖1を把持して歩行する方向を歩行方向又は前後方向とし、歩く方向を前方向、その逆を後方向とする。水平な地面に対して鉛直方向を上下方向とし、地面側を下方向、その逆を上方向とする。なお、杖1は使用中に傾くが、上下を反転して使用することはないため、杖1の上側とは、杖1の長手方向におけるグリップ側に相当し、杖1の下側とは、杖1の長手方向における足部側に相当する。また、上述の前後方向及び鉛直方向に直交する方向を横方向(左右方向)とする。杖1を持つ手が右手か左手かによって方向が違う場合があるため、杖1を持つ手を想定して手の親指側を親指方向(杖の内側ともいう)とし、手の小指側を小指方向(杖の外側ともいう)とする。杖1を持つ手が左右逆になれば、親指方向(内側)と小指方向(外側)は逆向きとなる。つまり、杖1(特にグリップ10)は、右手用と左手用を提供することができる。杖1を持つ手に関係がない場合は、単に横方向又は左右方向という場合もある。
【0016】
(グリップ10と第1接続部40の構成)
本実施形態において、グリップ10の形状は適宜の構成でもよいが、図示及び以下に説明するような形状でもよく、杖1は第1接続部40を備えても良い。図1に例示するグリップ10は、杖1の使用者が把持するものである。第1接続部40は、シャフト20とグリップ10を接続する第1接続部であって、板状又は扁平状である。第1接続部40の素材は、例えばカーボンである。例えば、使用者が杖1を握る際に、第1接続部40は使用者の持ち手の第2指と第3指の間を通る。第1接続部40の水平方向断面の長軸が、使用者が杖を使用して歩行する際の歩行方向に対して垂直である。換言すると、該長軸は、横方向(左右方向)に延びる。また、第1接続部40の水平方向断面の短軸は、歩行方向に沿っている。なお、上記長軸の向きは、歩行方向に対して厳密に垂直である必要はなく、例えば、プラスマイナス30度程度の幅があってもよい。すなわち、上記長軸と歩行方向との角度は、60度~120度のいずれかの角度でもよいし、75~105度のいずれかの角度でもよい。
【0017】
第1接続部40の水平方向断面の長軸は、例えば、15mmから20mmの範囲の長さであり、該断面の短軸は10mm以下の長さである。グリップ10は、第1接続部40から歩行方向前方よりも、第1接続部40から歩行方向後方の方が長い(図2参照)。杖1の使用者は、杖の外側から第2指と第3指の間に第1接続部40を通し、親指を歩行方向側にし、手の平をグリップ10の外側から上側に付けるようにしてグリップ10を把持する。
【0018】
(シャフト20の構成)
シャフト20の形状は、例えば、板状のシャフトが前方に凸になるように湾曲して構成される。なお、板状であれば水平方向の断面の形状は矩形状であるが、これ以外にも、水平方向の断面の形状が楕円状又は扁平状などでもよい。また、シャフト20は、従来の杖のように、断面が円形の(つまり円柱状の)シャフトでもよい。
【0019】
(足部30の構成)
足部30は、地面又は床と接して杖を支持する接地部を備える。ここで、地面又は床とは、屋外、屋内を問わず、杖1を使用して歩行する環境における歩行路面である。例えば、杖を突く際には、足部の複数の接地部がほぼ同時に接地してもよいし、例えば以下のように接地してもよい。杖を突く初期段階(初期接地)には、足部30の後方が接地し、使用者の体重がかかる中期段階(例えば、立脚中期)には、足部の前方及び後方の双方が接地し、杖を地面から離す終期段階(例えば、立脚終期)には、足部の前方(つま先に相当)が接地してもよい。
【0020】
足部30は、接地して杖を支持する複数の接地部を有する。複数の接地部は、第1接地部31と第2接地部32を含む。第1接地部31は、杖のシャフト20と第2接続部50で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる。第2接地部32は、シャフト20と第2接続部50で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる。杖を側面から見た場合に、シャフト20との第2接続部50から第1接地部31先端までの前方径と、シャフト30との第2接続部50から第2接地部32後端までの後方径が異なる。例えば、杖を側面から見た場合に、シャフト20との第2接続部50から第1接地部31の先端までの前方径が、シャフト20との第2接続部50から第2接地部32後端までの後方径よりも長い。
【0021】
例えば、第1接地部31は、該第1接地部31の接地面と第2接続部50の間が下に凸に湾曲し、第2接地部32は、第2接地部32の接地面と第2接続部50の間が下に凸に湾曲する。このような構成の第1接地部31と第2接地部32により、杖のシャフト20からの荷重に対する反発機構が形成される。なお、第1接地部31の接地面と第2接地部32の接地面は必ずしも分離してなくてもよく、第1接地部31と第2接地部32は連続する接地面を有しても良い。
【0022】
第1接地部31は扁平状であり、板状のシャフト20と連続して接続される。また、第2接地部32は扁平状であり、板状のシャフト20と連続して接続される。
【0023】
(効果)
前述の構造により、杖を押し込んだ際の反発力を形成することができる。これにより従来までに使用されていた杖が有していた推進機能を大きく飛躍することが可能となる。また、杖を必要とする高齢者や障害者(特に片麻痺者)は、自己身体のみで不足している推進機能を杖の使用により代償している。そのため、歩行速度の低下や四肢や体幹が異常な運動を示す。本杖を使用することで高い推進力を形成することができ、自然な歩行速度への速度上昇や歩行中の異常運動の軽減を図ることができる。
【0024】
(構成例)
上述の構成は、以下のように表すこともできる。
【0025】
[構成例1]
接地して杖を支持する複数の接地部
を備え、
前記複数の接地部は、
杖のシャフトと接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる第1接地部と、
前記シャフトと前記接続部で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる第2接地部と、
を有し、
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から前記第1接地部の先端までの前方径と、前記シャフトとの接続部から前記第2接地部の後端までの後方径が異なる
杖用の足部。
【0026】
[構成例2]
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から第1接地部先端までの前方径が、前記シャフトとの接続部から第2接地部後端までの後方径よりも長い
構成例1に記載の杖用の足部。
【0027】
[構成例3]
前記第1接地部は、該第1接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第2接地部は、該第2接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第1接地部と前記第2接地部により、杖のシャフトからの荷重に対する反発機構が形成された
構成例1又は2に記載の杖用の足部。
【0028】
[構成例4]
前記第1接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続され、
前記第2接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続された
構成例1乃至3のいずれかに記載の杖用の足部。
【0029】
[構成例5]
構成例1乃至4のいずれかに記載の杖用の足部と、
前記杖用の足部に接続されたシャフトと、
前記シャフトに接続され、使用者に把持されるためのグリップと、
を備えた杖。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、杖の製造販売及び杖用の構成要素の製造販売に利用可能である。また、本発明の杖は、高齢者や障害者、特に片麻痺者の歩行用杖として好適なものである
【符号の説明】
【0031】
1 杖
10 グリップ
20 シャフト
30 足部
40 第1接続部
50 第2接続部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地して杖を支持する複数の接地部
を備え、
前記複数の接地部は、
杖のシャフトと接続部で接続され、該接続から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる第1接地部と、
前記シャフトと前記接続部で接続され、該接続から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる第2接地部と、
を有し、
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から前記第1接地部の先端までの前方径と、前記シャフトとの接続部から前記第2接地部の後端までの後方径が異なり、
前記第1接地部は、該第1接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第2接地部は、該第2接地部の接地面と前記接続部の間が下に凸に湾曲し、
前記第1接地部の接地面と前記第2接地部の接地面が接地することで、杖の前記シャフトからの荷重に対する反発機構が形成された杖用の足部。
【請求項2】
杖を側面から見た場合に、前記シャフトとの接続部から第1接地部先端までの前方径が、前記シャフトとの接続部から第2接地部後端までの後方径よりも長い
請求項1に記載の杖用の足部。
【請求項3】
前記第1接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続され、
前記第2接地部は扁平状であり、板状の前記シャフトと連続して接続された
請求項1に記載の杖用の足部。
【請求項4】
請求項1に記載の杖用の足部と、
前記杖用の足部に接続されたシャフトと、
前記シャフトに接続され、使用者に把持されるためのグリップと、
を備えた杖。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
足部30は、接地して杖を支持する複数の接地部を有する。複数の接地部は、第1接地部31と第2接地部32を含む。第1接地部31は、杖のシャフト20と第2接続部50(特許請求の範囲の「接続部」に相当)で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向前側に延びる。第2接地部32は、シャフト20と第2接続部50で接続され、該接続部分から杖を使用した際の歩行方向逆側に延びる。杖を側面から見た場合に、シャフト20との第2接続部50から第1接地部31先端までの前方径と、シャフト30との第2接続部50から第2接地部32後端までの後方径が異なる。例えば、杖を側面から見た場合に、シャフト20との第2接続部50から第1接地部31の先端までの前方径が、シャフト20との第2接続部50から第2接地部32後端までの後方径よりも長い。