IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本荘ケミカル株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-硫化リチウムの製造方法 図1
  • 特開-硫化リチウムの製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016631
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】硫化リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/24 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
C01B17/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021121110
(22)【出願日】2021-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】302069734
【氏名又は名称】本荘ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100216770
【弁理士】
【氏名又は名称】三品 明生
(74)【代理人】
【識別番号】100217364
【弁理士】
【氏名又は名称】田端 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】稲倉 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知也
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃大
(57)【要約】
【課題】硫酸リチウムを還元剤で還元して、炭酸リチウムの副生なしに、又は殆どなしに、高純度の硫化リチウムを得る方法を提供することを目的とする。
【解決手段】硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成する。ここに、硫黄としては、粉末硫黄を用いることが好ましく、硫酸リチウム1モルに対して、硫黄を0.26モル以上用いることが好ましい。還元剤としては、糖類、多価アルコール及び多孔質炭素材よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。なかでも、糖類や多価アルコールが好ましく、特に、ショ糖が好ましく用いられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成することを特徴とする硫化リチウムの製造方法。
【請求項2】
硫酸リチウム1モル部に対して、硫黄を0.26モル部以上用いる請求項1に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項3】
硫黄として粉末硫黄を用いる請求項1に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項4】
還元剤が糖類、多価アルコール及び多孔質炭素材よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記糖類がショ糖である請求項4に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項6】
前記多価アルコールがアスコルビン酸である請求項4に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項7】
前記多孔質炭素材が活性炭である請求項4に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項8】
消泡剤の存在下に硫酸リチウムを焼成する請求項1に記載の硫化リチウムの製造方法。
【請求項9】
前記消泡剤が植物油である請求項8に記載の硫化リチウムの製造方法。









【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硫化リチウムの製造方法に関し、詳しくは、還元剤を用いて硫酸リチウムを還元することによって、好ましい場合には、炭酸リチウムの副生なしに、高純度の硫化リチウムを得る硫化リチウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化リチウムは、固体電解質やリチウム電池の正極材料の原料、ポリフェニレンスルフィド樹脂の合成原料、化学薬品用の中間原料等として有用である。
【0003】
従来、硫化リチウムの製造方法として、例えば、N-メチル-2-ピロリドンのような非プロトン性有機溶媒中、水酸化リチウムと硫化水素を反応させて、硫化リチウムを得る方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、このような方法においては、硫化水素を用いるために複雑で高価な反応装置を用いる必要があり、更に、有機溶媒自体も高価であり、また、硫化リチウムの製造後、その有機溶媒の処理を要することから、製造費用が嵩む問題がある。
【0004】
炭酸リチウムを原料として、有機溶媒を用いることなく、硫化リチウムを製造する方法がこれまでに幾つか、提案されている。例えば、炭酸リチウムを流動状態で硫化水素と高温で接触させて硫化リチウムを得る方法が提案されている(特許文献2参照)。この方法は、炭酸リチウムを流動状態で硫化水素と接触させるために、複雑で高価な反応装置を必要とする。
【0005】
そこで、硫酸リチウムを還元剤と混合し、この混合物を反応容器中にて窒素ガス雰囲気下に焼成して、硫化リチウムを得る方法が提案されている(特許文献3及び4参照)。この方法によれば、理論上は、硫酸リチウム1モルに炭素(還元剤)2モルを反応させれば、硫化リチウム1モルが生成すると共に、炭酸ガス2モルが発生する。
【0006】
しかし、実際には、上記方法においては、反応は理論どおりには進行せず、亜硫酸ガスや一酸化炭素ガスが発生し、しかも、得られた硫化リチウムは副生物として炭酸リチウムを含むことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-330312号公報
【特許文献2】特開2013-75816号公報
【特許文献3】特開2013-227180号公報
【特許文献4】特開2016-216349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、硫化リチウムの製造における上述した問題を解決するためになされたものであって、硫酸リチウムを還元剤で還元して、炭酸リチウムの副生なしに、又は殆どなしに、高純度の硫化リチウムを得る方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成することを特徴とする硫化リチウムの製造方法が提供される。
【0010】
本発明においては、硫黄としては、粉末硫黄を用いることが好ましく、硫酸リチウム1モルに対して、硫黄を0.26モル以上用いることが好ましい。
【0011】
還元剤としては、糖類、多価アルコール及び多孔質炭素材よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。なかでも、糖類や多価アルコールが好ましく、特に、ショ糖が好ましく用いられる。
【0012】
還元剤として、糖類や多価アルコールのような有機化合物を用いるときは、硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に消泡剤の存在下に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に加熱することが望ましい。
【0013】
上記消泡剤には植物油が好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従って、硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成することによって、炭酸リチウムの副生なしに、又は殆どなしに、高純度の硫化リチウムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】は実施例1~5において得られた硫化リチウムの粉末X線回折パターンである。
図2】は比較例1~3において得られた硫化リチウムの粉末X線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による硫化リチウムの製造方法は、硫酸リチウムを硫黄及び還元剤と共に不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成することを特徴とする。
【0017】
本発明において用いる硫酸リチウムは、無水物でもよく、1水和物であってもよい。いずれであっても、通常、市販品を用いることができる。
【0018】
本発明においては、硫酸リチウムは、硫黄や還元剤と混合して、混合物を得る際に、得られる混合物が均一であるように、例えば、ハンマーミル等を用いて、粉砕して用いることが望ましい。但し、粉砕物の平均粒子径は特に限定されるものではない。上記ハンマーミルは、特に限定されるものではなく、例えば、ホソカワミクロン株式会社製のバンタムミルAP-B等を用いることができる。
【0019】
本発明によれば、硫酸リチウムを硫黄や還元剤と混合し、得られた混合物を焼成する。
この混合のための手段は、特に限定されるものではなく、例えば、宝工機株式会社製のマイクロスピードミキサー等を用いることができる。
【0020】
このように、本発明によれば、硫酸リチウムを還元剤と共に焼成して還元する際に硫黄が共存することによって、炭酸リチウムの副生なしに、又は殆どなしに、高純度の硫化リチウムを得ることができる。
【0021】
硫黄には、ゴム状、結晶状、粉末状等、種々の形態のものが知られている。本発明においては、用いる硫黄は、硫酸リチウムや還元剤との混合が容易であるように、粉末硫黄が好ましく用いられる。しかし、本発明において用いる硫黄は、粉末硫黄に限定されるものではない。
【0022】
本発明においては、硫黄は、硫酸リチウム1モル部に対して、0.26モル部以上を用いる。硫黄の使用量が硫酸リチウム1モル部に対して0.26モル部よりも少ないときは、得られる硫化リチウムに炭酸リチウムが含まれる。硫黄の不存在下、硫化リチウムを還元剤と共に焼成するときは、得られる硫化リチウムにより多量の炭酸リチウムが含まれる。
【0023】
硫黄の使用量の上限は特に限定されるものではないが、余りに多量に用いても、それに見合う効果もないので、通常、硫酸リチウム1モル部に対して1.0モル部である。
【0024】
還元剤には、糖類、多価アルコール及び多孔質炭素材よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく用いられる。糖類としては、例えば、フルクトース等の単糖類や、ショ糖(スクロース)、ラクトース等の二糖類を好ましい例として挙げることができる。なかでも、本発明においては、ショ糖が特に好ましい。
【0025】
多価アルコールとしては、例えば、アスコルビン酸やポリビニルアルコールを好ましい例として挙げることができるが、特に、アスコルビン酸が好ましく用いられる。多孔質炭素材の好ましい具体例として、例えば、活性炭を挙げることができる。
【0026】
還元剤は、硫酸リチウム(Li2SO4)中のO2に対する還元剤中の炭素原子のモル比(C/O2)にて、好ましくは、1.60以上にて用いられる。以下において、簡単のために、硫酸リチウム(Li2SO4)中のO2に対する還元剤中の炭素原子のモル比(C/O2)を還元剤の炭素比率という。
【0027】
硫酸リチウムを還元剤と共に焼成して硫化リチウムを得る場合に、還元剤の炭素比率が1.60よりも小さいときは、炭酸リチウムが副生するおそれがあるからである。一方、還元剤の炭素比率が1.80よりも大きいときは、焼成物中の炭素の残存量が多くなることがある。従って、本発明においては、必ずしも、限定されるものではないが、還元剤の炭素比率は1.60~1.80の範囲であることが好ましい。
【0028】
本発明においては、硫酸リチウムを硫黄や還元剤と混合し、得られた混合物を焼成する際、用いる還元剤によっては、例えば、還元剤としてショ糖を用いて、上記混合物を焼成するときに、還元剤が発砲することがある。
【0029】
そこで、上記混合物を還元剤として例えばショ糖を用いて焼成するときに、消泡剤が存在することが好ましい。この消泡剤としては、動物油脂及び植物油脂が好ましく用いられ、特に好ましくは、植物油脂が用いられ、最も好ましくは、植物油が用いられる。
【0030】
上記植物油としては、例えば、菜種油、キャノーラ油、大豆油、コーン油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、米油、ぶどう油等を挙げることができ、特に、食用の植物油が好ましく用いられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明においては、上記植物油に代えて、単一の植物油を高度に精製して得られるサラダ油も消泡剤として好ましく用いられる。サラダ油は2種類以上の植物油を含む調合サラダ油であってもよい。
【0032】
消泡剤の使用量も、特に、限定されるものではないが、通常、用いる硫酸リチウムが無水又は1水和物であっても、用いる量の0.1~1重量%の範囲でよい。
【0033】
本発明によれば、このようにして、硫酸リチウム、硫黄及び還元剤と、必要に応じて消泡剤を混合して均一な混合物を得、次いで、この混合物を不活性雰囲気下又は還元性雰囲気下に焼成する。
【0034】
本発明において、上記焼成温度は、850~950℃の範囲が好ましく、特に、870~930℃の範囲が好ましい。上記焼成温度での焼成時間は、未反応の硫酸リチウムが残存しないように、通常、5~10時間の範囲が適当である。このような焼成において、常温から焼成温度までの昇温時間と焼成温度から常温までの降温時間もまた、特に、制限されるものではないが、通常、いずれも、3~10時間程度であり、好ましくは、4~8時間程度である。
【0035】
上記焼成の終了後、得られた焼成物、即ち、硫化リチウムは、不活性ガス雰囲気中で粉砕した後、篩分けを行って、粉末として得ることができる。
【実施例0036】
以下、本発明による硫化リチウムの製造を実施例に基づいて説明する。以下において使用した無水硫酸リチウムは純度96.0重量%である。
【0037】
以下において、粉砕後の無水硫酸リチウムの平均粒子径は、Microtrac社のMT3300EX IIを用いて、レーザー回折・散乱法による乾式測定にて体積基準粒度分布を求め、これより平均粒子径を体積基準にて求めた。
【0038】
得られた硫化リチウムの粉末X線回折は、株式会社リガク製X線回折装置UltimaIVを用いて測定した。
測定条件
ターゲット:Cu-Kα
管電圧:40kV
管電流:40mA
操作速度:4°/分
【0039】
実施例1
ホソカワミクロン株式会社製のハンマーミル「バンタムミルAP-B」にて平均粒子径(D50)40μmに粉砕した無水硫酸リチウム276.7g(2.42モル)と粉末硫黄26.3g(0.82モル、無水硫酸リチウム1モル部に対して0.34モル部)を宝工機株式会社製のマイクロスピードミキサーに仕込み、5分間の混合操作を2回行った。
【0040】
次いで、上記ミキサーにショ糖223.3g(0.65モル、還元剤の炭素比率1.62)とキャノーラ油(昭和産業株式会社製、以下、同じ。)0.8gを加え、5分間の混合操作を2回行った。
【0041】
得られた混合物をアルミナ製るつぼに充填し、このるつぼを金属容器に収め、この金属容器を電気炉に格納した。電気炉内を窒素ガス雰囲気とした後、常温から5時間を要して、電気炉温度を930℃とし、電気炉温度をこの温度に6時間保持し、この後、6時間を要して、電気炉温度を常温まで冷却し、このようにして、窒素ガス雰囲気下、上記混合物を焼成した。
【0042】
焼成の終了後、上記るつぼを電気炉から取り出して、密閉容器に保管し、次いで、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に移し、ここで焼成物を上記るつぼから取り出し、共立理工株式会社製小型粉砕機SK-M10サンプルミルにて粉砕し、目開き1mmの篩にて篩分けして、硫化リチウムを粉末として得た。
【0043】
実施例2
実施例1において、粉末硫黄の量を15.7g(0.49モル、無水硫酸リチウム1モル部に対して0.27モル部)とした以外は同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。
【0044】
実施例3
実施例1において、粉末硫黄の量を55.6g(1.73モル、無水硫酸リチウム1モル部に対して0.72モル部))とした以外は同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。
【0045】
実施例4
実施例1において、ショ糖の使用量を220.5g(0.64モル、還元剤の炭素比率は1.60)とした以外は、同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。
【0046】
実施例5
実施例1において、無水硫酸リチウム276.7g(2.42モル)、粉末硫黄26.3g(0.82モル、無水硫酸リチウム1モル部に対して0.34モル部)、還元剤ショ糖に代えて、L-アスコルビン酸230.6g(1.31モル、還元剤の炭素比率は1.62)及びキャノーラ油0.8gを用いた以外は、同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。
【0047】
比較例1
実施例1において、粉末硫黄の量を15.5g(0.48モル、無水硫酸リチウム1モル部に対して0.20モル部)とした以外は同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。X線回折による分析の結果、(002)面に炭酸リチウムのピークがみられた。
【0048】
比較例2
実施例1において、ショ糖の使用量を206.8g(0.60モル、還元剤の炭素比率は1.50)とした以外は同様にして、硫化リチウムを粉末として得た。X線回折による分析の結果、(002)面と(110)面と(-311)面に炭酸リチウムのピークがみられた。
【0049】
比較例3
実施例1と同様にして、平均粒子径(D50)40μmに粉砕した無水硫酸リチウム276.7g(2.42モル)とショ糖223.3g(0.65モル、還元剤の炭素比率は1.62)を仕込み、5分間の混合操作を2回行った。次いで、上記混合物にキャノーラ油0.8gを加えて再度、5分間の混合操作を2回行った。
【0050】
得られた混合物をアルミナ製るつぼに充填し、このるつぼを金属容器に収め、この金属容器を実施例1と同じ電気炉に格納した。電気炉内を窒素ガス雰囲気とした後、常温から5時間を要して、電気炉温度を930℃とし、電気炉温度をこの温度に6時間保持し、この後、6時間を要して、電気炉温度を常温まで冷却し、このようにして、窒素ガス雰囲気下、上記混合物を焼成した。
【0051】
焼成の終了後、上記るつぼを電気炉から取り出して、密閉容器に保管し、次いで、アルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に移し、ここで焼成物を上記るつぼから取り出し、実施例1と同様にして、粉砕し、目開き1mmの篩にて篩分けして、硫化リチウムを粉末として得た。X線回折による分析の結果、(002)面と(110)面に炭酸リチウムのピークがみられた。
【0052】
表1に上記実施例及び比較例におけるX線回折による分析の結果を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の粉末X線回折パターンの解析において、硫化リチウムに対する炭酸リチウムの相対強度は、硫化リチウムに基づく回折強度をa(cps)とし、炭酸リチウムに基づく回折強度をb(cps)とするとき、(b/a)×100として求めた値である。
【0055】
得られた硫化リチウムの粉末X線回折パターンの解析において、実施例1~5のいずれにおいても、得られた硫化リチウムには炭酸リチウムに基づく回折ピークはみられなかった(N.D.)。
【0056】
比較例1は、硫黄/硫酸リチウムモル比が0.26よりも小さい場合であって、得られた硫化リチウムには炭酸リチウムに基づく回折ピークがみられた。比較例2は還元剤の炭素比率が1.60よりも小さい場合であって、得られた硫化リチウムには炭酸リチウムに基づく回折ピークがみられた。比較例3は、硫黄の不存在下に硫酸リチウムを還元剤と共に焼成した場合であって、得られた硫化リチウムにはいずれも、比較例1及び2に比べて、炭酸リチウムに基づく回折ピークがより強い強度でみられた。
【0057】
図1に実施例1~5において得られた硫化リチウムの回折角度2θが20~38°の範囲のX線回折パターンを示し、同様に、図2に比較例1~3において得られた硫化リチウムの回折角度2θが20~38°の範囲のX線回折パターンを示す。
【0058】
硫化リチウムの(111)面の回折角度は26.98°、炭酸リチウムの(002)面の回折角度は31.78°、炭酸リチウムの(110)面の回折角度は21.33°である。
【0059】
図2に示すように、比較例1~3において得られた硫化リチウムのX線回折パターンにおいては、炭酸リチウムに基づく(002)面と(110)面に基づく回折ピークがみられるが、図1に示すように、実施例1~5において得られた硫化リチウムのX線回折パターンにおいては、炭酸リチウムに基づく(002)面と(110)面に基づく回折ピークはいずれもみられなかった。
【0060】
また、炭酸リチウムの(-311)面の回折角度は36.96°である。比較例1~3において得られた硫化リチウムのX線回折パターンにおいては、炭酸リチウムに基づく上記(-311)面に基づく回折ピークがみられるが、図1に示すように、実施例1~5において得られた硫化リチウムのX線回折パターンにおいては、上記(-311)面に基づく回折ピークはみられなかった。





図1
図2