(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166320
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】波長変換を用いた微細藻類反応ユニット及びこれを用いた微細藻類培養システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20231114BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022142906
(22)【出願日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2022-0056571
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520445277
【氏名又は名称】シェルパ スペース インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チャ ムン
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB04
4B029CC01
4B029DF10
4B029DG10
4B029FA01
(57)【要約】
【課題】反応容器に収容された微細藻類の種、成長段階、健康状態、目標生産物質などによって予め決定された波長帯域の光源を選択的に提供し、微細藻類の成長効率を高めたり、又は目標とする生産物質の生産量を向上できる波長変換を用いた微細藻類培養システムを提供する。
【解決手段】第1波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニットを含む第1培養セクター;第2波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニットを含む第2培養セクター;及び制御条件が達成されると、前記第1培養セクターの微細藻類を伝送管を介して前記第2培養セクターに移動させるための制御ポンプ;を含んで波長変換を用いた微細藻類培養システムを構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニットを含む第1培養セクター、
第2波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニットを含む第2培養セクター、及び、
制御条件が達成されると、前記第1培養セクターの微細藻類を伝送管を介して前記第2培養セクターに移動させるための制御ポンプ、
を含む波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項2】
前記第1波長及び第2波長は、培養対象の微細藻類の種、成長段階、健康状態、及び目標生産物質のうち少なくとも一つによって決定されることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項3】
前記微細藻類反応ユニットは、
閉鎖型ユニットであって、板型、カラム型、環型、チューブ型、及び袋型のうちいずれか一つの形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項4】
前記微細藻類反応ユニットは、
光透過性の形状層と、予め定められた帯域の波長変換素材を含む波長変換層と、を含んで構成される、請求項3に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項5】
前記波長変換層は、
波長変換素材を含む柔軟性のフィルム層と、前記形状層に付着するための粘着性の接着層と、を含む、請求項4に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項6】
前記波長変換層は、
波長変換物質が前記形状層に塗布されることによって形成される、請求項4に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項7】
前記微細藻類反応ユニットは、
光透過性の形状素材と予め定められた帯域の波長変換素材の混合物を成形加工して製作されることを特徴とする、請求項3に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項8】
前記微細藻類反応ユニットの映像を獲得するカメラ、光透過率を感知する光センサー、及び前記微細藻類反応ユニット内部の温度を測定する温度センサーのうち少なくとも一つ、及び、
前記カメラの映像、光透過率及び温度のうち少なくとも一つに基づいて前記微細藻類反応ユニット内の微細藻類の培養状態を判断し、判断された培養状態が予め設定された基準に符合すると、管理者の指示入力又は自動化されたアルゴリズムによって前記制御ポンプに移送命令を伝送するコントローラー、
をさらに含む、請求項1に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項9】
前記波長変換物質は、
無機蛍光体、量子点、及びペロブスカイトのうち少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の波長変換を用いた微細藻類培養システム。
【請求項10】
培養対象の微細藻類の種、成長段階、健康状態、及び目標生産物質のうち少なくとも一つによって予め決定された波長帯域の光を選択的に透過させる波長変換物質が用いられる、波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項11】
前記微細藻類反応ユニットは、
閉鎖型ユニットであって、板型、カラム型、環型、チューブ型、及び袋型のうちいずれか一つの形状を有することを特徴とする、請求項10に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項12】
前記微細藻類反応ユニットは、
光透過性の形状層と、予め定められた帯域の波長変換素材を含む波長変換層と、を含んで構成される、請求項11に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項13】
前記波長変換層は、
波長変換素材を含む柔軟性のフィルム層と、前記形状層に付着するための粘着性の接着層と、を含む、請求項12に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項14】
前記波長変換層は、
波長変換物質が前記形状層に塗布されることによって形成される、請求項12に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項15】
前記微細藻類反応ユニットは、
光透過性の形状素材と予め定められた帯域の波長変換素材の混合物を成形加工して製作されることを特徴とする、請求項11に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【請求項16】
前記波長変換物質は、
無機蛍光体、量子点、及びペロブスカイトのうち少なくとも一つであることを特徴とする、請求項10に記載の波長変換を用いた微細藻類反応ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換を用いた微細藻類培養技術に関し、より詳細には、反応容器に収容された微細藻類の種、成長段階、健康状態、目標生産物質などによって予め決定された波長帯域の光源を選択的に提供することによって微細藻類の成長効率を高めたり、又は目標とする生産物質の生産量を向上できる微細藻類反応ユニット及びこれを用いた微細藻類培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機能的多様性によって光合成微生物や微細藻類に対する関心が高まっており、多様な分野でその研究の範囲が拡大されている。微細藻類は、光合成能力を保有することによって、地球温暖化などの環境問題によって最近大きな関心の対象となっている二酸化炭素の節減に関する研究に活発に使用されており、化石燃料の枯渇に備えた持続可能なエネルギー源として注目されるバイオディーゼル、バイオエタノール及び水素ガスなどのバイオエネルギーの生産と関連する研究にも活用されている。
【0003】
しかし、微細藻類を用いた量的に意味のある二酸化炭素の除去や、バイオエネルギーなどの有用な産物の大量生産のためには、必ずしも微細藻類の培養が大規模的且つ高濃度で行わなければならない。したがって、規模の大きい培養設備の構築と関連する技術が必須的に要求されている実情にある。
【0004】
特に、微細藻類の培養において、光波長(light wavelength)及び光度(light intensity)を考慮して微細藻類を培養しなければならないので、光波長は何よりも重要である。光波長の場合、特定の光波長や領域を供給することによって、菌体の濃度及び微細藻類から生産する代謝産物の濃度を向上させることができる。
【0005】
しかし、微細藻類の培養装置に光波長を生成するために備えられた装置は、生産費の面でも最も高い比重を占めており、初期設置費用及び維持補修の面で短所を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1188745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、反応容器に収容された微細藻類の種、成長段階、健康状態、目標生産物質などによって予め決定された波長帯域の光源を選択的に提供し、微細藻類の成長効率を高めたり、又は目標とする生産物質の生産量を向上できる波長変換を用いた微細藻類培養システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例に係る波長変換を用いた微細藻類培養システムは、第1波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニット(algae reacting units)を含む第1培養セクター(first grow sector)と、第2波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニットを含む第2培養セクター(second grow sector)と、制御条件が達成されると、前記第1培養セクターの微細藻類を伝送管を介して前記第2培養セクターに移動させるための制御ポンプ(control pump)とを含むことができる。
【0009】
前記第1波長及び第2波長は、培養対象の微細藻類の種(species)、成長段階(growth step)、健康状態(health status)、及び目標生産物質(target material)のうち少なくとも一つによって決定され得る。
【0010】
前記微細藻類反応ユニットは、閉鎖型ユニット(closed type unit)であって、板型(plate type)、カラム型(column type)、環型(annular type)、チューブ型(tubular type)、及び袋型(sack type)のうちいずれか一つの形状を有することができる。
【0011】
前記微細藻類反応ユニットは、光透過性の形状層(shaping layer)と、予め定められた帯域の波長変換素材を含む波長変換層(wavelength converting layer)とを含んで構成され得る。
【0012】
前記波長変換層は、波長変換素材を含む柔軟性の(flexible)フィルム層(film layer)と、前記形状層に付着するための粘着性の(sticky)接着層(bonding layer)とを含むことができる。
【0013】
前記波長変換層は、波長変換物質が前記形状層に塗布されることによって形成され得る。
【0014】
前記微細藻類反応ユニットは、光透過性の形状素材と予め定められた帯域の波長変換素材の混合物を成形加工して製作され得る。
【0015】
前記微細藻類反応ユニットの映像を獲得するカメラ、光透過率を感知する光センサー、及び前記微細藻類反応ユニットの内部の温度を測定する温度センサーのうち少なくとも一つと、前記カメラの映像、光透過率及び温度のうち少なくとも一つに基づいて前記微細藻類反応ユニット内の微細藻類の培養状態を判断し、判断された培養状態が予め設定された基準に符合すると、管理者の指示入力又は自動化されたアルゴリズムによって前記制御ポンプに移送命令を伝送するコントローラーとをさらに含むことができる。
【0016】
前記波長変換物質は、無機蛍光体、量子点、及びペロブスカイト(perovskite)のうち少なくとも一つであり得る。
【0017】
本発明の第2実施例に係る波長変換を用いた微細藻類反応ユニットには、培養対象の微細藻類の種、成長段階、健康状態、及び目標生産物質のうち少なくとも一つによって予め決定された波長帯域の光を選択的に透過させる波長変換物質が用いられ得る。
【0018】
前記微細藻類反応ユニットは、閉鎖型ユニットであって、板型、カラム型、環型、チューブ型、及び袋型のうちいずれか一つであり得る。
【0019】
前記微細藻類反応ユニットは、光透過性の形状層と、予め定められた帯域の波長変換素材を含む波長変換層とを含んで構成され得る。
【0020】
前記波長変換層は、波長変換素材を含む柔軟性のフィルム層と、前記形状層に付着するための粘着性の接着層とを含むことができる。
【0021】
前記波長変換層は、波長変換物質が前記形状層に塗布されることによって形成され得る。
【0022】
前記微細藻類反応ユニットは、光透過性の形状素材と予め定められた帯域の波長変換素材の混合物を成形加工して製作され得る。
【0023】
前記波長変換物質は、無機蛍光体、量子点、及びペロブスカイトのうち少なくとも一つであり得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の実施例によると、反応容器に収容された微細藻類の種、成長段階、健康状態、目標生産物質などによって予め決定された波長帯域の光源を選択的に提供し、微細藻類の成長効率を高めたり、又は目標とする生産物質の生産量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】微細藻類の成長と光波長との関係を説明するための図である。
【
図2】第1実施例の微細藻類が培養される反応ユニットの形態を説明するための図である。
【
図3】
図2に例示した反応ユニットを種類別に示した図である。
【
図4】
図2に例示した反応ユニットを種類別に示した図である。
【
図5】
図2に例示した反応ユニットを種類別に示した図である。
【
図6】波長変換を用いた微細藻類培養システムを説明するための概略図である。
【
図7】
図6に示した培養セクターの変形した例を示した図である。
【
図8】本発明のシステムにおいて微細藻類の成長段階の順に提供される光波長帯域を示した図である。
【
図13】光波長帯による微細藻類の成長とアスタキサンチンの生産との関係を示した図である。
【
図14】本発明の第2実施例に係る波長変換を用いた微細藻類培養システムを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のいくつかの実施例を図面を用いて詳細に説明する。ただし、これは、本発明を特定の実施例に対して限定しようとするものではなく、本発明の技術的思想を含む全ての変形(transformations)、均等物(equivalents)及び代替物(substitutions)は、本発明の範囲に含まれるものと理解しなければならない。
【0027】
本明細書において、単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有さない限り、複数の表現を含む。
【0028】
本明細書において、一つの構成が一つのサブ構成を「備える(have)」又は「含む(comprise)」と記載した場合、特に反対の記載がない限り、他の構成を除外するのではなく、他の構成をさらに含み得ることを意味する。
【0029】
本明細書において、「…ユニット(Unit)」、「…モジュール(Module)」及び「コンポーネント(Component)」という用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアの結合で具現されることもある。
【0030】
図1は、微細藻類の成長と光波長との関係を説明するための図である。
【0031】
光度(又は光波長)は、微細藻類栽培の主要制限要素の一つであり、光源の持続時間及び強度は、微細藻類の光合成に直接的な影響を及ぼし、微細藻類の生化学的組成及びバイオマス生産量に影響を及ぼす。
【0032】
微細藻類の成長に対する光波長は、微細藻類の種又は成長段階によって異なり、これは、代謝経路、色素沈着、多様な種、及び成長段階によって光受容体が異なるためである。
【0033】
微細藻類の光酸化及び成長抑制を避けるためには、微細藻類用生物反応器で適切な光強度及び持続時間が必要である。非常に低いか、又は非常に高い光度では、微細藻類が効率的に成長できない。
【0034】
光生物反応器において、光度は、光生物反応器内での位置又は深さによって多様に適用される。光生物反応器で光源と最も遠く離れた位置、すなわち、深い位置では光度の照射量が減少するようになる。例えば、このような現象は、下層の藻類に透過される光源の量が、上層によって光が遮断されることから減少する現象と類似する。これを自体陰影効果とも言うが、自体陰影による光抑制を避けるためには、適切な光源の透過及び光源の均一な分布が必要である。
【0035】
光源(例えば、太陽光)は、藻類細胞においてバイオマスの最終収率、炭水化物の合成及び蓄積に直接的な影響を及ぼし、全ての細胞に同一の強度を提供するためには光の均一な分布が必要である。
【0036】
本実施例は、上記で説明したように、全ての細胞に均一な光源を分布させて提供し、自体陰影による光抑制を避け、微細藻類の成長段階、微細藻類の種、及び目標生産物質によって必要とする光波長帯を提供するためのものである。
【0037】
図2は、第1実施例の微細藻類が培養される反応ユニットの形態を説明するための図である。
【0038】
図2で説明する各反応ユニットA~Dは、全て閉鎖型で形成される。閉鎖型反応ユニットは、二酸化炭素又は養分を必要によって注入するなどの環境の制御が可能であるので、微細藻類の培養効率が高いという利点を有する。また、閉鎖型反応ユニットは、内部が外部から遮断され、各汚染物質が反応ユニットの内部に浸透することを防止することができる。
【0039】
図2の(A)は、カラム型反応ユニットを示した図であって、カラム型反応ユニットは、以下では、反応ユニットの種類のうち代表として再度説明する。
【0040】
図2の(B)及び
図3に示すように、板型反応ユニット10a、10bは、一定の面積を有して四角形又は多角形のプレートの形態で形成され得る。
【0041】
板型反応ユニット10a、10bは、横方向及び縦方向に複数個存在し得る。また、複数の反応ユニット10a、10bは、縦方向又は横方向に分類され、複数の培養セクターをなすことができる。例えば、第1培養セクターには第1反応ユニット10aが含まれ、第2培養セクターには第2反応ユニット10bが含まれる。
【0042】
培養セクターを複数個で形成する理由は、微細藻類の種、成長段階、健康状態、及び目標生産物質によって微細藻類を異なる培養セクターに収容し、培養セクター別に異なる光波長を提供するためである。以下では、これに対して具体的に説明する。
【0043】
参考までに、各反応ユニット10a、10bは、それぞれ隣り合う各反応ユニット10a、10bと伝送管(図示せず)を介して連結され得る。また、各培養セクターは、隣り合う各培養セクターと伝送管を介して連結され得る。伝送管には、流体の移動を防止したり、又は流体を移動させる制御バルブ(図示せず)が備えられてもよい。
【0044】
図2の(C)及び
図4に示すように、環型反応ユニット20a、20bは、一定の長さを有して形成され、一端又は両端が環状に折り曲げられるように形成される。
【0045】
環型反応ユニット20a、20bは、地面と水平な方向に配置されてもよく、複数の層で積層されてもよい。このように積層された各反応ユニットは、積層群別に一つの培養セクター20a又は20bを形成し、培養セクターの個数はいずれか一つに限定しない。
【0046】
図2の(D)及び
図5に示すように、反応ユニット30a、30bは、チューブ型で形成される。チューブ型反応ユニット30a、30bは、両端が互いに連結された円形の形態で形成される。チューブ型反応ユニット30a、30bは、複数の層で積層され得る。このように積層された各反応ユニットは、積層群別に一つの培養セクター30a又は30bを形成し、培養セクターの個数はいずれか一つに限定しない。
【0047】
この他にも、反応ユニットは、袋と類似する形態を有する袋型(図示せず)で形成されてもよく、外部との接触が不可能な閉鎖された形態であればいずれの形態で形成されても構わない。
【0048】
図6は、波長変換を用いた微細藻類培養システムを説明するための概略図である。
【0049】
図6に示すように、システムは、複数の培養セクター110、120、130、140及び制御ポンプ(図示せず)を含む。
【0050】
培養セクターは、少なくとも二つ以上備えられてもよく、本実施例では、微細藻類の成長段階の4つの例を挙げて説明するので、4個の培養セクター110、120、130、140が備えられたことを例に挙げて説明する。微細藻類の成長段階の数によって培養セクター110、120、130、140の個数が変更され得る。また、培養セクター110、120、130、140別に異なる種の微細藻類が収容されてもよく、微細藻類の種の数によって培養セクター110の個数が変更されてもよい。
【0051】
以下では、説明の便宜のために、各培養セクターを第1培養セクター110、第2培養セクター120、第3培養セクター130、及び第4培養セクター140と定義して説明する。
【0052】
第1培養セクター110には、第1波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニット101を含む。第2培養セクター120には、第2波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニット102を含む。第3培養セクター130には、第3波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニット103を含む。第4培養セクター140には、第4波長の波長変換物質が用いられた各微細藻類反応ユニット104を含む。
【0053】
各培養セクター110、120、130、140には、各微細藻類反応ユニット101、102、103、104が含まれてもよく、各反応ユニット101、102、103、104には微細藻類及び培養液が収容される。ここで、培養セクター110、120、130、140には、培養対象、すなわち、微細藻類の種別に異なるものが収容されてもよく、微細藻類の成長段階別に異なるものが収容されてもよく、健康状態によって異なるものが収容されてもよく、目標生産物質によって異なるものが収容されてもよい。
【0054】
例えば、第1培養セクター110には、成長段階1に該当する微細藻類が収容され、第2培養セクター120には、成長段階2に該当する微細藻類が収容され、第3培養セクター130には、成長段階3に該当する微細藻類が収容され、第4培養セクター140には、成長段階4に該当する微細藻類が収容され得る。
【0055】
参考までに、微細藻類の目標生産物質は、アスタキサンチン(astaxanthin)であり得る。例えば、微細藻類に供給される太陽光の波長帯のうち赤色光と青色光の照射比率を1:3とする場合は、55.1mg/Lのアスタキサンチンの生産量を得ることができ、赤色光と青色光の照射比率を2:2とする場合は、50.3mg/Lの生産量を得ることができ、赤色光と青色光の照射比率を3:1とする場合は、36.3mg/Lの生産量を得ることができる。すなわち、培養セクター110別に異なる目標物質を生産するための微細藻類を収容し、培養セクター110別に異なる光波長帯を照射し、目標とする生産物質の生産量を向上させることができる。
【0056】
反応ユニット101、102、103、104は、各培養セクター110、120、130、140別に同一の形状に形成され、第1培養セクター110に含まれた反応ユニット101を代表として説明する。
【0057】
反応ユニット101は、カラム型で形成され得る。参考までに、反応ユニット101は、上述したように、板型、環型、チューブ型、及び袋型で形成されてもよい。
【0058】
カラム型反応ユニット101は、地面から垂直の方向に配置され、上部又は下部が支持フレーム(図示せず)によって支持される。
【0059】
反応ユニット101は、支持フレーム1によって複数個が一方向に整列・配置され得る。ここで、予め定められた反応ユニット101の個数で培養セクター110、120、130、140が構成される。例えば、培養セクター110、120、130、140別に3個ずつの反応ユニット101が含まれ得る。
【0060】
反応ユニット101は、光透過性の形状層と、予め定められた帯域の波長変換素材を含む波長変換層とを含む。参考までに、波長変換層は、各培養セクター110別に異なる帯域の波長変化素材を含むことができる。
図6において、波長変換層がフィルムタイプで形成されたことを例に挙げて説明する。
【0061】
反応ユニット101の光透過性形状層は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリ塩化ビニル(PVC)ガラスなどの材質のうちいずれか一つの材質からなり得る。反応ユニット101の形状層の材質によって上部及び下部が支持フレーム1に固定されてもよく、下部及び上部のうちいずれか一つのみが支持フレーム1に固定されてもよい。例えば、反応ユニット101は、ポリ塩化ビニル(PVC)で形成される場合、支持フレーム1の上部にのみ固定されてもよく、上部及び下部に固定されてもよい。
【0062】
反応ユニット101の波長変換層は、フィルム層101a及び接着層を含む。
【0063】
フィルム層101aは、波長変換素材を含み、柔軟性の材質で形成される。フィルム層101aの波長変換素材(物質)は、無機蛍光体、量子点、及びペロブスカイトのうち少なくとも一つであり得る。
【0064】
フィルム層101aに含まれた量子点は、光源(例えば、太陽光)を照射すると、粒子の大きさ、形状及び材料によって特定の光を放出する。すなわち、フィルム層101aは、量子点を用いて入射された光源を多様な波長帯に変換して放出する。
【0065】
例えば、フィルム層101aは、量子点を通じて赤色、青色、及び緑色のうち少なくとも一つの光源を放出することができる。例えば、フィルム層101aは、量子点を通じて、上述したように、微細藻類の成長段階によって第1波長帯域乃至第4波長帯域のうち一つの光源を放出することができる。反応ユニット101には、収容された微細藻類の種、健康状態、及び目標生産物質によって第1波長帯域乃至第4波長帯域のうちいずれか一つの波長帯域の光源を放出するためのフィルム層101aが形成されてもよい。
【0066】
第1培養セクター110の反応ユニット101に形成されたフィルム層101aには、第1波長帯域を変換する量子点が含まれ、第2培養セクター120の反応ユニット102に形成されたフィルム層102aには、第2波長帯域を変換する量子点が含まれ、第3培養セクター130の反応ユニット103に形成されたフィルム層103aには、第3波長帯域を変換する量子点が含まれ、第4培養セクター140の反応ユニット104に形成されたフィルム層104aには、第4波長帯域を変換する量子点が含まれ得る。
【0067】
接着層は、反応ユニット101の形状層に波長変換層を付着させるためのものである。接着層の一面には粘着性の物質が形成される。
【0068】
一例として、反応ユニット101の波長変換層としては、フィルム層101aと接着層の代わりに、上述した波長変換物質(素材)が塗料/顔料の形態で形成され、反応ユニット101の形状層の表面に塗布されてもよい。
【0069】
他の一例として、反応ユニット101は、製造段階で予め定められた帯域の波長変換素材の混合物が含まれた状態で成形加工して製作されてもよい。例えば、反応ユニット101の製造組成物がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)ガラスなどの一つであるとき、該当の組成物と予め定められた帯域の波長変換素材とを混合して製造することもできる。
【0070】
第1培養セクター110乃至第4培養セクター140は、伝送管Pを介して互いに連結される。伝送管Pの予め指定された位置には、流体の移動を調節する制御バルブ(図示せず)が備えられてもよい。伝送管Pの一側には制御ポンプが備えられる。
【0071】
各培養セクター110、120、130、140での微細藻類の移動順序を見ると、第3培養セクター130の反応ユニット103に収容された微細藻類は、制御ポンプの動作によって伝送管Pを介して第4培養セクター140の反応ユニット104に移動する。続いて、第2培養セクター120の反応ユニット102に収容された微細藻類は、制御ポンプの動作によって伝送管Pを介して第3培養セクター130の反応ユニット103に移動する。次に、第1培養セクター110の反応ユニット101に収容された微細藻類は、制御ポンプの動作によって伝送管Pを介して第2培養セクター120の反応ユニット102に移動する。
【0072】
参考までに、第4培養セクター140の反応ユニット104には、バンパー容器(図示せず)が含まれたバンパーセクター(図示せず)が連結され得る。例えば、第3培養セクター130の反応ユニット103に収容された微細藻類が第4培養セクター140に移動する前に、第4培養セクター140の反応ユニット104に収容された微細藻類は、バンパーセクターのバンパー容器に移動し、第4培養セクター140の反応ユニット104は、第3培養セクター130の反応ユニット103から微細藻類が移動する前まで空の状態で維持される。
【0073】
制御ポンプは、予め設定された周期で動作してもよく、管理者の指示によって動作してもよく、自動化されたアルゴリズムによって動作してもよい。
【0074】
支持フレーム1は、複数の反応ユニット101を支持する。支持フレーム1によって支持される各反応ユニット101は、複数の培養セクター110、120、130、140に区画され得る。
【0075】
例えば、
図7に示すように、支持フレーム1、2、3、4が複数個で構成された場合、支持フレーム1、2、3、4のそれぞれに複数の反応ユニット101、102、103、104が支持され、支持フレーム1別に培養セクター110、120、130、140が区画されてもよい。このとき、第1伝送管P1は、同一の培養セクターに含まれた各反応ユニット101、102、103、104を連結し、第2伝送管P2は第1伝送管P1を連結する。
【0076】
制御ポンプが動作すると、微細藻類は、第1伝送管P1及び第2伝送管P2を介して培養セクター110、120、130、140の間に移動する。
【0077】
図8は、本発明のシステムで微細藻類の成長段階の順に提供される光波長帯域を示した図で、
図9乃至
図12は、成長段階別の光波長帯域の拡大図である。
【0078】
実施例1において、微細藻類の成長段階は、4段階(STEP1~4)に分類して定義する。
【0079】
成長段階1では、微細藻類に初期適応のための光波長帯域を提供し、成長段階2では、バイオマス生産性の向上のための光波長帯域を提供し、成長段階3では、自体陰影による光阻害を防止する光波長帯域を提供し、成長段階4では、特定の成分/色素を強化する光波長帯域を提供する。
【0080】
成長段階別の光波長帯域は、上述した培養セクター別の反応ユニットに形成された波長変換物質(素材)、すなわち、量子点を用いて入射された光源を多様な波長帯に変換した後で反応ユニットの内部に提供する。
【0081】
図8及び
図9に示すように、微細藻類の成長段階1では、微細藻類細胞の初期適応のために、光の衝撃を避け、遅延段階を短縮するための適切な光波長帯域を提供する。
【0082】
成長段階1では、400nm乃至700nmの赤色光波長帯を提供することができ、より具体的には、450nm乃至470nmの青色光波長帯、530nm乃至560nmの緑色光波長帯、650nm乃至670nmの赤色光波長帯を提供することもできる。
【0083】
図8及び
図10に示すように、微細藻類の成長段階2では、バイオマス生産性の向上のための光波長帯域を提供する。この段階で提供される光波長帯域は、成長率及び微細藻類の代謝に重要な役割をする。
【0084】
成長段階2で青色光波長帯を受けた微細藻類は、細胞分裂過程の遅延により、細胞の大きさが赤色光波長帯を受けた微細藻類より大きいことが示された。
【0085】
成長段階2では、350nm乃至800nmの赤色光波長帯を提供することができ、より具体的には、350nm乃至400nmのUV光波長帯、450nm乃至470nmの青色光波長帯、650nm乃至670nmの赤色光波長帯、710nm乃至750nmの遠赤色光波長帯を提供することもできる。
【0086】
図8及び
図11に示すように、微細藻類の成長段階3では、自体陰影による光阻害を防止する光波長帯を提供する。
【0087】
成長段階3では、微細藻類の成長により、反応ユニット内で上位レイヤーに位置した微細藻類によって自体陰影処理が施され、下位レイヤーに位置した微細藻類においては、光源の浸透量が減少し得る。成長段階3では、このような自体陰影処理を防止するために、反応ユニットの内部に深く浸透可能な光波長帯を提供する。
【0088】
成長段階3では、350nm乃至800nmの赤色光波長帯を提供することができ、より具体的には、350nm乃至400nmのUV光波長帯、450nm乃至470nmの青色光波長帯、530nm乃至560nmの緑色光波長帯、650nm乃至670nmの赤色光波長帯、710nm乃至750nmの遠赤色光波長帯を提供することもできる。
【0089】
成長段階4では、微細藻類の特定の成分/色素を強化するための光波長帯を提供する。
【0090】
例えば、緑藻類は、葉緑素-aと葉緑素-bを3:1の比率で含有している。葉緑素-aは、430nm(青色/紫色光)及び660nm(深い赤色光)で吸収ピークを有しており、葉緑素-bは、460nm(青色光)及び630nm(赤色光)で吸収ピークを有する。
【0091】
すなわち、成長段階4では、微細藻類が有している色素によってその色素を強化するための光波長帯を提供することによって、目標生産物質の生産効率を向上させることができる。
【0092】
例えば、微細藻類の種がヘマトコッカスプルビアリス(Haematococcus pluvialis)で、目標生産物質がアスタキサンチンである場合、成長段階4では、青色光波長帯を提供するときに、さらに高いアスタキサンチンの数値を得ることができる。
【0093】
図13は、光波長帯による微細藻類の成長とアスタキサンチンの生産との関係を示した図である。
【0094】
図13に示すように、微細藻類の種がヘマトコッカスプルビアリスであるとき、赤色光と青色光の照射比率を1:3とする場合は、55.1mg/Lのアスタキサンチンの生産量を得ることができ、赤色光と青色光の照射比率を2:2とする場合は、50.3mg/Lの生産量を得ることができ、赤色光と青色光の照射比率を3:1とする場合は、36.3mg/Lの生産量を得ることができる。赤色と青色の光波長帯の混合(1:3の比率)で得た最大バイオマスは1.48g/Lで、その次に、青色及び赤色の光波長がそれぞれ1.36g/L及び1.06g/Lである。
【0095】
図14は、本発明の第2実施例に係る波長変換を用いた微細藻類培養システムを説明するための概略図である。
【0096】
図14を参照すると、システムは、複数の反応ユニットを含む複数の培養セクター、制御ポンプP及びコントローラー300を含む。そして、システムは、カメラC、光センサーS1及び温度センサーS2のうち少なくとも一つを含む。
【0097】
実施例2の各反応ユニット、各培養セクター及び制御ポンプPは、実施例1と同一であるので、重複する説明を省略し、カメラC、光センサーS1、温度センサーS2及びコントローラー300について説明する。
【0098】
実施例2では、第1培養セクター210及び第2培養セクター220が備えられたことを例に挙げて説明するが、培養セクターの個数は限定しない。
【0099】
カメラCは、微細藻類が収容された反応ユニットを撮影する。カメラCは、反応ユニットのそれぞれを近接撮影できる個数(例えば、反応ユニットの個数)で設置されてもよく、培養セクターのそれぞれを撮影できる個数(例えば、培養セクターの個数)で設置されてもよい。好ましくは、カメラCの設置費用を節減するために、カメラCが培養セクターの個数と同一の個数で設置されてもよく、一つのカメラCが設置されてもよい。
【0100】
光センサーS1は、反応ユニット別の光透過率を感知する。
【0101】
温度センサーS2は、反応ユニット内部の温度を測定する。
【0102】
コントローラー300は、カメラCの映像、光透過率及び温度のうち少なくとも一つに基づいて前記微細藻類反応ユニット内の微細藻類の培養状態を判断する。
【0103】
例えば、コントローラー300は、カメラCの映像を通じて反応ユニット内部の色相を判別し、反応ユニット内部の色相が予め設定された基準に符合すると、管理者の指示入力又は自動化されたアルゴリズムによって制御ポンプP(図示せず)に移送命令を伝送する。
【0104】
ここで、予め設定された基準は、微細藻類の成長段階の変化、健康状態などであり得る。例えば、コントローラー300は、カメラCの映像で第1培養セクター210に含まれた反応ユニットの内部色相が変化すると、該当の反応ユニットの微細藻類が成長したと判断し、制御ポンプPを制御することによって、第1培養セクター210に含まれた反応ユニット内部の微細藻類を第2培養セクター220に含まれた反応ユニットの内部に移送させる。
【0105】
参考までに、微細藻類が第1培養セクター210から第2培養セクター220に伝送される伝送管に制御バルブが備えられた場合、コントローラー300は、制御ポンプPと制御バルブの動作を連動させて制御することもできる。
【0106】
第1培養セクター210に含まれた反応ユニット内部の微細藻類を第2培養セクター220に含まれた反応ユニットの内部に移送させる予め設定された基準についてさらに説明すると、コントローラー300は、光センサーS1の測定値で光透過率が変化すると、該当の反応ユニットの微細藻類が成長したと判断することもできる。また、コントローラー300は、反応ユニット内部の温度が変化すると、該当の反応ユニットの微細藻類が成長したと判断することもできる。
【0107】
一方、第1培養セクター210及び第2培養セクター220に含まれた反応ユニットには、微細藻類を培養するための養液を供給する養液供給機(図示せず)がさらに備えられ得る。
【0108】
前記養液供給機は、コントローラー300によって制御され得る。
【0109】
コントローラー300は、予め設定された基準に符合した反応ユニットに養液を供給する。例えば、コントローラー300で養液供給機を制御するための予め設定された符合は、カメラCで撮影された映像で反応ユニット内部の色相が変化したり、光センサーS1で測定された光透過率が変化したり、温度センサーS2で測定された反応ユニット内部の温度が変化することであり得る。
【0110】
例えば、コントローラー300は、反応ユニット内部の色相値が+1になると、微細藻類が成長したと判断し、反応ユニット内部の色相値が-1になると、反応ユニット内部の養液が不足すると判断することもできる。
【0111】
以上では、本発明に関するいくつかの実施例を参照して説明したが、該当の技術分野で通常の知識を有する者であれば、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更可能であることを理解できるだろう。
【0112】
本発明は、次のR&Dプロジェクト遂行中に導出されたものである。
-プロジェクト固有番号:1545024479
-プロジェクト番号:421008-04
-部処名:農林畜産食品部、科学技術情報通信部、農村進興庁
-研究管理専門機関:農林食品技術企画評価院、財団法人スマートファーム研究開発事業団
-研究事業名:スマートファーム多部処パッケージ革新技術開発事業
-研究課題名:輸出用高温多湿型スマート温室パッケージモデル開発
-寄与率:1/1
-プロジェクト遂行機関:(株)シェルパスペース
-研究期間:2022.1.1~2022.12.31