(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166323
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】広域溶存酸素および有機炭素耐性を有する脱窒菌剤とその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20231114BHJP
C02F 3/34 20230101ALI20231114BHJP
【FI】
C12N1/20 D
C02F3/34 101D
C02F3/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022173045
(22)【出願日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】202210497333.4
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522025488
【氏名又は名称】広東省科学院微生物研究所(広東省微生物分析検測中心)
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許▲マイ▼英
(72)【発明者】
【氏名】周少鋒
(72)【発明者】
【氏名】楊旭楠
(72)【発明者】
【氏名】楊永剛
(72)【発明者】
【氏名】陳杏娟
【テーマコード(参考)】
4B065
4D040
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA15X
4B065AC20
4B065CA56
4D040BB42
4D040BB82
4D040DD03
4D040DD14
4D040DD31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】広域溶存酸素および有機炭素耐性を有する脱窒菌剤とその用途を提供する。
【解決手段】菌剤は、バチルス・アミロリクファシエンスyel14およびフェーカリゲネスCHO6を含む。菌株yel14は従属栄養アンモニア酸化機能と好気性脱窒機能を兼ね,菌株CHO6は嫌気性と好気性の条件下で脱窒機能を有する。菌株yel14とCHO6を単独で廃棄物浸出液に接種した検証結果と比較すると、複合フローラCHO6-yel14はより高い脱窒機能を有する。上記菌剤を硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素を含む廃水に投入し、均一に混合することで、全窒素を効率的に除去することができる効果を達成できる。本発明の菌株yel14とCHO6からなる菌剤は,好気性と嫌気性の条件下で汚染水域中のNH
4
+-NO
3
--NO
2
--N
2の全窒素除去を達成し、操作しやすく、コストが低く、環境に優しいという利点を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)およびフェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)を含み、前記バチルス・アミロリクファシエンスはバチルス・アミロリクファシエンスyel14であり、保存番号:GDMCC No:61699、前記フェーカリゲネスはフェーカリゲネスCHO6であり、保存番号:GDMCC No:61700である、ことを特徴とする広域溶存酸素および有機炭素耐性を有する脱窒菌剤。
【請求項2】
機能性担体をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の脱窒菌剤。
【請求項3】
脱窒バイオフィルムの作製における請求項1に記載の脱窒菌剤の用途。
【請求項4】
請求項1に記載の脱窒菌剤を含有する、ことを特徴とする脱窒バイオフィルム。
【請求項5】
水域脱窒における請求項1に記載の脱窒菌剤または請求項4に記載の脱窒バイオフィルムの用途。
【請求項6】
好気性または嫌気性の条件下で水域中の窒素を除去する、ことを特徴とする請求項5に記載の用途。
【請求項7】
前記水域中の窒素には、アンモニア性窒素NH4
+-N、硝酸性窒素NO3
--Nまたは亜硝酸性窒素NO2
--N中の1つ以上が含まれる、ことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項8】
汚水脱臭および/または廃棄物浸出液脱臭における請求項1に記載の脱窒菌剤または請求項4に記載の脱窒バイオフィルムの用途。
【請求項9】
請求項1に記載の脱窒菌剤を窒素含有廃水に直接投入し、または請求項1に記載の脱窒菌剤と機能性担体を混合して窒素含有廃水を処理するための生化学反応器に投入する、ことを特徴とする水域脱窒方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境微生物学の技術分野に関し、具体的には、バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)yel14およびフェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)CHO6の選別・育種、ならびにこれらの2つの微生物からなる細菌システムとその水域脱窒における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
急速な工業化・都市化に伴い、水域の窒素汚染問題はますます深刻化している。窒素循環は多くの物質循環過程と密接に関係しており、水域の富栄養化の程度を決定する重要な要因であるため、汚染水域からの脱窒の効率化は大きな関心事である。生物学的脱窒技術は、その経済的・環境的な利点から、現在では水質汚染管理における一般的な手法となっている。従来の生物学的脱窒プロセスでは、好気の条件下で独立栄養細菌のアンモニア酸化細菌と硝酸化細菌がアンモニアを硝酸塩に酸化し、無酸素条件下で脱窒細菌が硝酸塩を窒素ガスに還元して脱窒を実現する。しかし、汚染水域の溶存酸素濃度は通常大きく変動し、微生物の機能活動を阻害するさまざまな有害汚染物質が含まれていることが多いため、水域からアンモニアや硝酸性窒素を効果的に除去することは困難である。水域からの脱窒は、水質汚濁防止の焦点と困難な課題となっている。
【0003】
研究の進みに伴い、従属栄養性アンモニア酸化細菌、嫌気性アンモニア酸化細菌、好気性脱窒細菌など、さまざまな新規脱窒機能性微生物が発見された。これらの新しい脱窒機能性微生物は、一般的な解毒機能性微生物と比較して、汚染水域の処理において適用範囲が広く、実用性がより明らかである。従来のアンモニア酸化プロセスと比較して、従属栄養アンモニア酸化細菌は有機炭素源の存在下でアンモニア性窒素を亜硝酸性窒素に酸化することができるので、汚染水域によく見られる有機炭素源によるアンモニア酸化の阻害を克服でき、従来の脱窒プロセスと比べて、好気性脱窒細菌は高い溶存酸素条件で脱窒を実行できるので、従来の脱窒細菌が硝酸塩を窒素に還元するために無酸素状態である必要があるというデメリットを克服することができる。この2種類の機能性細菌を組み合わせることで、汚染水域の処理でよく見られる有機炭素源によるアンモニア酸化の阻害や溶存酸素による脱窒プロセスの阻害を克服し、より柔軟で効率的な全窒素除去を達成することが期待されている。しかし、現在までに従属栄養性アンモニア酸化細菌と好気性脱窒細菌はほとんど得られておらず、従属栄養性アンモニア酸化と好気性脱窒の両方の機能を兼ね備えた微生物はまだ報告されていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、汚染水域中の有機炭素と溶存酸素が生物学的脱窒活性を阻害する水汚染処理課題を解決し、溶存酸素および有機炭素耐性を有する脱窒機能性菌剤を提供して、水域中のアンモニア性窒素と全窒素を効率的に除去することができる。
【0005】
本発明は、まず従属栄養アンモニア酸化機能と好気性脱窒機能を兼ねるバチルス・アミロリクファシエンスyel14、および嫌気性と好気性の条件下で脱窒機能を有するフェーカリゲネスCHO6を分離する。
【0006】
本発明は、これらの2つの機能性菌を利用して、嫌気性と好気性の条件下で汚染水域中のアンモニア性窒素と全窒素を効率的に除去できる機能性菌剤を開発した。
【0007】
本発明は、開発した脱窒菌剤の廃棄物浸出液のような高濃度アンモニア性窒素廃水に対する脱窒能力を検証した。
【0008】
本発明で分離したバチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)yel14およびフェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)CHO6は、2021年5月27日に広東省微生物菌種保存センター(CGMCC)に保存され、住所:広東省広州市先烈中路100号大院59ビルディング5階、郵便番号:510070、保存番号はそれぞれ:GDMCC No:61699とGDMCC No:61700である。
【0009】
本発明で提供されるフェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)CHO6は、広東省広州市石井河の水域沈殿物から由来し、分離方法としては、菌群SB8を単細胞スクリーナーで可視化して分離・選別して得られた単細胞を、液体培地に接種して20日間培養したものであり、培地成分:グルコース(10g/L)、NaHCO3(2.52g/L)、KH2PO4(0.5g/L)、NH4Cl(1g/L)、MgCl2・6H2O(0.06g/L)、CaCl2・6H2O(0.06g/L)、K2SO4(3.48g/L)およびFeSO4・7H2O(0.05g/L)、溶媒は水であった。液体培地で増殖した菌液を採取し、上記培地の寒天の固形平板上で培養したところ、不規則な丸いコロニーができ、不透明で白色であり、好気性と嫌気性の環境下でも生存できる。本菌は、16S rRNA遺伝子配列決定によって、Alcaligenes faecalis NBRC 13111と99.41%の類似性を有するため、Alcaligenes faecalis CHO6と命名された。
【0010】
本発明で提供されたバチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)yel14は、貴州省六盤水市の廃棄物プラスチックゴミ袋から分離され、増殖用の培地はポテト培地(PDB,24g/L)であった。その形態学と生理学的特徴:本菌が30℃、48 h培養した後、不規則な楕円形のコロニーができ、黄色みを帯びて不透明であり、コロニー表面に水滴が付着した。本菌は好気性、一部嫌気性の条件下でも生存でき、増殖pHが6.5~8.5である。本菌は、16S rRNA配列決定およびBLAST分析によって、Bacillus amyloliquefaciens MPA菌株と99.78%の類似性を有するため、Bacillus amyloliquefaciens yel14と命名された。
【0011】
本発明は、2つの菌株の通常培地での脱窒能力が検証され:
Alcaligenes faecalis CHO6をそれぞれR
2A(12g/L)+NO
2
-(17.5 mM)+NH
4
+(3.5 mM)とR
2A(12g/L)+NO
3
-(16 mM)の培地に接種し、好気性培養(180rpm、30℃)と嫌気性培養(30℃、99.99% N
2で満たされた嫌気性箱)を実行してその硝化能力、脱窒能力と窒素除去能力を検証した。その結果から分かるように、R
2A(12g/L)+NO
2
-(17.5 mM)+NH
4
+(3.5 mM)培地で10日間培養した後、菌株CHO6の好気性脱窒能力と嫌気性脱窒能力が同等であり、約25%(
図2)であった。R
2A(12g/L)+NO
3
-(16 mM)培地での脱窒能力が最も顕著であり、好気性と嫌気性の条件下で、それぞれ66%と71%の脱窒能力が得られた(
図2)。さらに窒素イオン含有化合物を分析すると、好気性と嫌気性の条件下でも、菌株CHO6がR
2A(12g/L)+NO
2
-(17.5 mM)+NH
4
+(3.5 mM)培地中のNO
2
-を脱窒作用により全部除去でき(
図3中の<1>、<2>)、対照組と比較すると、NH
4
+は顕著に変化しなかった。R
2A(12g/L)+NO
3
-(16 mM)培地で、菌株CHO6は高い脱窒能力を有し、脱窒でほぼすべてのNO
3
-を除去することができる(
図4中の<1>、<2>)。
【0012】
Bacillus amyloliquefaciens yel14をそれぞれPDB(24g/L)+NO
2
-(13.2 mM)+NH
4
+(3.3 mM)とPDB(24g/L)+NO
3
-(11.8 mM)の培地に接種し、好気性培養(180rpm、30℃)と嫌気性培養(30℃、99.99% N
2で満たされた嫌気性箱)を実行した。菌株yel14はPDB(24g/L)+NO
2
-(13.2 mM)+NH
4
+(3.3 mM)では好気性脱窒能力を持たず、嫌気性脱窒がわずか11.42%であった(
図2)。同様に、菌株yel14がPDB(24g/L)+NO
3
-(11.8 mM)培地で好気性脱窒能力を持たず、嫌気性脱窒能力がわずか7.37%であった(
図2)。菌株yel14の脱窒能力が非常に低く、これは、体系中の窒素イオン含有化合物が窒素ガスに変換されず、イオン形式で変換することからである可能性がある。具体的には、菌株yel14をPDB(24g/L)+NO
2
-(13.2 mM)+NH
4
+(3.3 mM)で好気性培養するとき、培地に存在しないNO
3
-(1.248 mM)を生成でき(
図3中の<3>)、嫌気性条件下で培養するとき、47%のNH
4
+(
図3中の<6>)をNO
3
-(0.447 mM)(
図3中の<4>)とNO
2
-(2.683 mM)(
図3中の<5>)に変換できる。PDB(24g/L)+NO
3
-(11.8 mM)では、菌株yel14の好気性脱窒能力が高く、94.8%に達したが、嫌気性脱窒能力が非常に低く、大量のNO
2
-(2.98 mM)が蓄積され(
図4中の<3>、<4>)、これは、体系中の全窒素(TN)が除去されないからである可能性がある。
【0013】
要約に、好気性または嫌気性の条件下で、Alcaligenes faecalis CHO6は高い脱窒能力(NO3
-とNO2
-除去)を有するが、アンモニア酸化能力を持たない。Bacillus amyloliquefaciens yel14は好気性の条件下で一定の脱窒能力(NO3
-除去)を有するが、嫌気性の条件下で、その脱窒能力が非常に低く、大量のNO2
-が蓄積された。さらに、菌株yel14は嫌気性の条件下で、47%のNH4
+をNO2
-とNO3
-に変換できる。したがって、菌株CHO6とyel14を混和して培養し、菌株yel14により廃棄物浸出液中のNH4
+をNO2
-とNO3
-に変換した後、菌株CHO6の脱窒作用によりN2に変換して、脱窒目的を達成する。
【0014】
本発明はバチルス・アミロリクファシエンスyel14とフェーカリゲネスCHO6の廃棄物浸出液における好気性、嫌気性および室温静置培養のときの脱窒状況を検証した。
【0015】
菌株CHO6、yel14とその1:1で複合したコロニーCHO6-yel14をそれぞれ廃棄物浸出液(恵州廃棄物埋立地、成熟型、>10年)に接種し、なんの栄養液も添加しなかった。その結果から分かるように、菌株CHO6とyel14を単独で廃棄物浸出液に接種して培養する状況と比較すると、複合フローラCHO6-yel14は好気性と嫌気性の条件下で、良好な脱窒効果を有し、それぞれ廃棄物浸出液中の470.5 mg/Lと724.8 mg/Lの全窒素を除去できる(
図5中の<1>、<3>)。イオンクロマトグラフィーで測定したところ、複合したコロニーCHO6-yel14は高アンモニア性窒素の廃棄物浸出液に対してより良好なアンモニア性窒素除去能力と適応能力を有し、好気性、室温静置と嫌気性の条件下でそれぞれ44.4%、37.53%と38.95%のアンモニア性窒素除去率に達した(
図6中の<1>、<2>、<3>)。
【0016】
したがって、本発明の第1目的は、バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)とフェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)を含む広域溶存酸素および有機炭素耐性を有する脱窒菌剤を提供することである。
【0017】
好ましくは、前記バチルス・アミロリクファシエンスはバチルス・アミロリクファシエンスyel14であり、保存番号:GDMCC No:61699、前記フェーカリゲネスはフェーカリゲネスCHO6であり、保存番号:GDMCC No:61700である。
【0018】
好ましくは、前記の脱窒菌剤は機能性担体をさらに含む。
【0019】
本発明の第2目的は、脱窒バイオフィルムの作製における前記脱窒菌剤の用途を提供することである。
【0020】
本発明の第3目的は、前記の脱窒菌剤を含有する脱窒バイオフィルムを提供することである。
【0021】
本発明の第4目的は、水域脱窒における前記の脱窒菌剤または脱窒バイオフィルムの用途を提供することである。
【0022】
好ましくは、好気性または嫌気性の条件下での水域中の窒素除去における前記の脱窒菌剤または脱窒バイオフィルムの用途。
【0023】
好ましくは、前記水域中の窒素には、アンモニア性窒素NH4
+-N、硝酸性窒素NO3
--Nまたは亜硝酸性窒素NO2
--N中の1つ以上が含まれる。
【0024】
本発明の第5目的は、汚水脱臭および/または廃棄物浸出液脱臭における前記の脱窒菌剤または脱窒バイオフィルムの用途を提供することである。
【0025】
本発明の第6目的は、前記の脱窒菌剤を窒素含有廃水に直接投入し、または生化学反応器で前記の脱窒菌剤と窒素含有廃水を混合して処理する、水域脱窒方法を提供することである。好ましくは、前記の脱窒菌剤と一定量の機能性担体を混合した後窒素含有廃水を処理するための生化学反応器に投入する。
【0026】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0027】
本発明は、バチルス・アミロリクファシエンスyel14とフェーカリゲネスCHO6を用いて、嫌気性と好気性の条件下でも汚染水域中のアンモニア性窒素と全窒素を効率的に除去できる機能性菌剤を開発し、汚染水域中の溶存酸素および有機炭素による生物学的脱窒の阻害を効果的に克服することができる。本発明で開発した菌剤は嫌気性と好気性の条件下で廃棄物浸出液中のアンモニア性窒素と全窒素を効率的に除去でき、菌株yel14とCHO6を単独で廃棄物浸出液に接種して培養する状況と比較すると、複合フローラCHO6-yel14は好気性と嫌気性の条件下でも、より良好な脱窒効果を有し、2つの菌株の相乗的な脱窒作用により、大きな工学的応用および幅広い市場応用展望を持っている。
【0028】
Bacillus amyloliquefaciens yel14は、2021年5月27日に広東省微生物菌種保存センター(GDMCC)に保存され、住所:広東省広州市先烈中路100号大院59ビルディング5階、郵便番号:510070、保存番号:GDMCC No:61699。
【0029】
Alcaligenes faecalis CHO6は2021年5月27日に広東省微生物菌種保存センター(GDMCC)に保存され、住所:広東省広州市先烈中路100号大院59ビルディング5階、郵便番号:510070、保存番号:GDMCC No:61700。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6とバチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14の廃棄物浸出液での脱窒過程を示す概略図である。
【
図2】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6とバチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14のそれぞれのPDB培地とR
2A培地での脱窒能力の検証を示す。
【
図3】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6とバチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14の亜硝酸塩除去能力とアンモニア酸化能力の検証を示す。
【
図4】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6とバチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14の脱窒能力の検証を示す。
【
図5】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6、バチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14および2種類の菌を1:1で複合した後廃棄物浸出液での脱窒能力の検証を示す。
【
図6】フェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6、バチルス・アミロリクファシエンスBacillus amyloliquefaciens yel14および2種類の菌を1:1で複合した後廃棄物浸出液でのアンモニア性窒素除去能力の検証を示す。
【
図7】フローサイトメトリーで可視化してフェーカリゲネスAlcaligenes faecalis CHO6を選別する場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の目的、技術手段および有益な技術的効果をより明確にするために、以下、実施例と併せて、本発明をより詳細に説明する。なお、本明細書で説明される実施例は本発明を解釈する目的のみであり、本発明の保護範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例で具体的な条件が示されていない試験方法は、通常の一般的な条件に従い、または各メーカーが推奨する条件に従ったものである。
実施例1
【0032】
Alcaligenes faecalis CHO6とBacillus amyloliquefaciens yel14の具体的な分離・選別・育種過程は以下のとおりであり:
(1)Alcaligenes faecalis CHO6の分離・培養:
【0033】
本発明で提供されるAlcaligenes faecalis CHO6は、工業的に汚染された広東省広州市石井河の水域沈殿物から由来し、分離方法としては、コロニーSB8(平板上で増殖可能な単コロニー、このコロニーは従来技術で得られ、Qian Y.F., Xu M.Y., et al.Synergistic interactions of Desulfovibrio and Petrimonas for sulfate-reduction coupling polycyclic aromatic hydrocarbon degradation.J.Hazard.Mater.、2021、407という文献に掲載されている)を単細胞スクリーナーで(長春長光辰英生物科学機器有限公司)可視化して棒状微生物を選別して得られた単細胞であり(
図7)、液体培地で20日間培養した後、菌液の濁りを観察し(30℃,10%H
2+10%CO
2+80%N
2の嫌気性箱)、濁った菌液を上記培地の寒天固形平板上でスクライブし、同定した。Alcaligenes faecalis CHO6のコロニーは不規則な丸い形状であり、不透明で白色であり、好気性と嫌気性の環境下でも生存できる。本菌は、16S rRNA遺伝子配列決定により、Alcaligenes faecalis NBRC 13111と99.41%の類似性を有するため、Alcaligenes faecalis CHO6と命名され、Alcaligenes faecalis CHO6の16S rRNA配列はSEQ ID NO.1に示される。上記液体培地成分:グルコース(10g/L)、NaHCO
3(2.52g/L)、KH
2PO
4(0.5g/L)、NH
4Cl(1g/L)、MgCl
2・6H
2O(0.06g/L)、CaCl
2・6H
2O(0.06g/L)、K
2SO
4(3.48g/L)、FeSO
4・7H
2O(0.05g/L)、溶媒は水であり、培地の固形平板は液体培地に質量%1.5%寒天を添加したものである。培地の調製方法は、各成分を水に加え、攪拌して溶解し、減菌することで得られる。
【0034】
(2)Bacillus amyloliquefaciens yel14の分離・培養:
【0035】
本発明で提供されるBacillus amyloliquefaciens yel14は、貴州省六盤水市の廃棄物プラスチックゴミ袋から分離され、分離した培地はポテト培地(PDB, 24g/L、広東環凱微生物科技有限公司より提供)。廃棄物プラスチック上のコロニーを滅菌水に加え、ピペットで5回往復させた後、50μLをPDB平板上に塗布し(質量%1.5%の寒天を含む)、30℃の恒温箱で1週間培養した後、単コロニーを選択してさらに純化させた。Bacillus amyloliquefaciens yel14のコロニーは不規則な楕円形であり、黄色みを帯びて不透明であり、コロニー表面に水滴が付着した。本菌は好気性、一部嫌気性の条件下でも生存でき、生長pHが6.5~8.5である。本菌株が16S rRNA遺伝子配列決定およびBLAST分析により、Bacillus amyloliquefaciens MPA菌株と99.78%の類似性を有するため、Bacillus amyloliquefaciens yel14と命名され、Bacillus amyloliquefaciens yel14の16S rRNA配列はSEQ ID NO.2に示される。得られた微生物のアンモニア酸化能力、脱窒能力を検証した。多くの微生物の検証では、最終的にBacillus amyloliquefaciens yel14は良好なアンモニア酸化機能を有することが発見し、次の実験候補株として選定された。
【0036】
バチルス・アミロリクファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)yel14は2021年5月27日に広東省微生物菌種保存センター(GDMCC)に保存され、住所:広東省広州市先烈中路100号大院59ビルディング5階、郵便番号:510070、保存番号:GDMCC No:61699である。
【0037】
フェーカリゲネス(Alcaligenes faecalis)CHO6は2021年5月27日に広東省微生物菌種保存センター(GDMCC)に保存され、住所:広東省広州市先烈中路100号大院59ビルディング5階、郵便番号:510070、保存番号:GDMCC No:61700である。
実施例2
【0038】
Alcaligenes faecalis CHO6とBacillus amyloliquefaciens yel14の通常培地での脱窒能力が検証され:
【0039】
2種類の菌株が異なる培地から分離されるので、R2AとPDB培地という2種類の異なる基礎培地を選定して脱窒能力を検証した。体積%が1%の接種量で、Alcaligenes faecalis CHO6を1リットルの培地R2A(12g/L)+NO2
-(17.5 mM)+NH4
+(3.5 mM)に接種してそのNH4
+酸化能力とNO2
-の還元能力を検証し、1リットルの培地R2A(12g/L)+ NO3
-(16 mM)に接種して菌株CHO6の脱窒能力を検証した。それぞれ好気性(180rpm、30℃)条件下と嫌気性(30℃、99.99%N2で満たされた嫌気性箱)条件下でCHO6の脱窒能力を検証する必要がある。その中で、NO3
-、NO2
-とNH4
+のイオン濃度は、イオンクロマトグラフィー(Thermo Scientific)で測定され、全窒素(TN)はTOCメーター(島津製作所)で測定された。
【0040】
体積%が1%の接種量で、Bacillus amyloliquefaciens yel14を1リットルの培地PDB(24g/L)+NO2
-(13.2 mM)+ NH4
+(3.3 mM)とPDB(24g/L)+ NO3
-(11.8 mM)にそれぞれ接種し、同時に好気性培養(180rpm、30℃)と嫌気性培養(30℃、99.99% N2で満たされた嫌気性箱)を行い、yel14の脱窒能力を検証した。
【0041】
菌株CHO6またはyel14が接種されていない対応の培地をブランク対照組(CK)とした。
【0042】
結果によると、菌株CHO6をR
2A(12g/L)+NO
2
-(17.5 mM)+NH
4
+(3.5 mM)培地で10日間培養した後、菌株CHO6の好気性脱窒能力と嫌気性脱窒能力が同等であり、好気性脱窒能力と嫌気性脱窒能力がそれぞれ25.32%と26.35%であった(
図2)。R
2A(12g/L)+ NO
3
-(16 mM)培地で10日間培養した後、菌株CHO6の脱窒能力が最も顕著であり、好気性と嫌気性の条件下で、それぞれ66%と71%の脱窒能力に達した(
図2)。さらに、窒素イオン含有化合物を分析すると、好気性と嫌気性の条件下でも、菌株CHO6はR
2A(12g/L)+NO
2
-(17.5 mM)+NH
4
+(3.5 mM)培地中のNO
2
-を脱窒作用により全部除去できる(
図3中の<1>、<2>)、対照組と比較すると、NH
4
+が顕著に変化しなかった。R
2A(12g/L)+ NO
3
-(16 mM)培地では、菌株CHO6が高い脱窒能力を有し、脱窒過程によりほぼ全部のNO
3
-を除去できる(99%)(
図4中の<1>、<2>)。
【0043】
菌株yel14をPDB(24g/L)+NO
2
-(13.2 mM)+ NH
4
+(3.3 mM)で10日間培養した後、好気性脱窒能力を持たず、好気性脱窒効率がゼロであり、嫌気性脱窒がわずか11.42%であった(
図2)。同様に、菌株yel14をPDB(24g/L)+ NO
3
-(11.8 mM)培地で10日間培養した後、好気性脱窒能力を持たず、好気性脱窒能力もゼロであり、嫌気性脱窒能力がわずか7.37%であった(
図2)。菌株yel14の脱窒能力が非常に低く、これは、体系中の窒素イオン含有化合物が窒素ガスに変換されず、イオン形式で変換することからである可能性がある。具体的には、菌株yel14をPDB(24g/L)+NO
2
-(13.2 mM)+NH
4
+(3.3 mM)で好気性培養するとき、培地に存在しないNO
3
-(1.248 mM)を生成でき(
図3中の<3>)、嫌気性条件下で培養するとき、47%のNH
4
+(
図3中の<6>)をNO
3
-(0.447 mM)(
図3中の<4>)とNO
2
-(2.683 mM)(
図3中の<5>)に変換できる。PDB(24g/L)+NO
3
-(11.8 mM)では、菌株yel14の好気性脱窒能力が高く、94.8%に達したが、嫌気性脱窒能力が非常に低く、大量のNO
2
-(2.982 mM)が蓄積され(
図4中の<3>、<4>)、これは、体系中の全窒素(TN)が除去されないからである可能性がある。
【0044】
要約すると、Alcaligenes faecalis strain CHO6は好気性または嫌気性の条件下で高い脱窒機能(NO
3
- とNO
2
-除去)を有するが、アンモニア酸化能力を持たなく、Bacillus amyloliquefaciens strain yel14は好気性の条件下でのみ一定のNO
3
-脱窒作用(NO
3
-除去)を有し、嫌気性の条件下ではほとんど脱窒機能を有さないが、本菌はアンモニア酸化能力を有し、NH
4
+をNO
2
-またはNO
3
-に変換できる(
図2~4)。
実施例3
【0045】
Alcaligenes faecalis strain CHO6とBacillus amyloliquefaciens strain yel14を廃棄物浸出液に応用し、具体的には以下のように実施し:
【0046】
恵州廃棄物浸出液処理場(広東省恵州市恵城区永聯路、成熟型、>10年)から原液を採集し、-4℃の低温倉庫に保存して用意する。Alcaligenes faecalis CHO6とBacillus amyloliquefaciens yel14の複合効果を検証するために、それぞれ菌株CHO6とyel14を対数増殖期まで培養し、1:1の体積比で複合したコロニーCHO6-yel14を1リットルの廃棄物浸出液原液に接種して、接種量が1体積%であった。菌株CHO6またはyel14が接種されていない廃棄物浸出液をブランク対照組(CK)とし、設置培養方法は以下のとおりであり:
好気性培養:CK(3組)、CHO6(3組)、yel14(3組)、CHO6-yel14(3組)、180rpm、30℃加振器、
室温静置培養:CK(3組)、CHO6(3組)、yel14(3組)、CHO6-yel14(3組)、
嫌気性培養:CK(3組)、CHO6(3組)、yel14(3組)、CHO6-yel14(3組)、30℃、99.99% N2で満たされた嫌気性培養箱。
培養時間が10日間であった。
【0047】
菌株CHO6とyel14の廃棄物浸出液での脱窒過程が
図1に概略的に示される。結果によると、上記3つの培養条件下で、菌株CHO6、yel14とコロニーCHO6-yel14は廃棄物浸出液で一定の脱窒能力およびアンモニア性窒素除去能力を有する。菌株CHO6とyel14を廃棄物浸出液に単独で接種して培養する場合と比較すると、複合フローラCHO6-yel14は良好な脱窒効果を有し、好気性、室温静置と嫌気性の条件下でそれぞれ廃棄物浸出液中の470.5 mg/L、241.67 mg/Lと724.83 mg/Lの全窒素を除去できる(
図5中の<1>、<2>、<3>)。イオンクロマトグラフィー測定により、複合フローラCHO6-yel14は高アンモニア性窒素の廃棄物浸出液環境ではより高いアンモニア性窒素除去能力と適応能力を有し、好気性、室温静置と嫌気性の条件下でそれぞれ44.4%、37.53%と38.95%のアンモニア性窒素除去率に達した(
図6中の<1>、<2>、<3>)。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上記好ましい実施形態は本発明の制限として理解されなく、本発明の保護範囲は特許請求の範囲に従うべきである。当業者にとって、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、多くの改良と装飾を加えることができ、これらの改良と装飾も本発明の保護範囲に含まれるものとする。