(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166326
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び無線通信装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 21/06 20060101AFI20231114BHJP
H01P 5/19 20060101ALI20231114BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20231114BHJP
H01Q 13/08 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01P5/19 A
H01P5/12 E
H01P5/12 D
H01Q13/08
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017131
(22)【出願日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】202210498484.1
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】596039187
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】黄 傑超
(72)【発明者】
【氏名】許 向榮
(72)【発明者】
【氏名】陳 彦廷
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB06
5J021CA03
5J021FA32
5J021GA02
5J021HA10
5J021JA07
5J045AB05
5J045AB06
5J045CA01
5J045CA02
5J045CA03
5J045DA10
5J045FA02
5J045HA03
5J045JA04
5J045MA07
5J045NA01
(57)【要約】
【課題】アンテナ装置を提供する。
【解決手段】第1表面及び第2表面を含む基板と、第1表面と第2表面の間に設けられる接地層と、第1表面に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、信号受信端と複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される多分岐回路と、第2表面に設けられ、それぞれのビアを介して複数の信号放射端に接続され、ビーム成形を行うための複数のアンテナユニットと、を含み、複数の水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差は、複数のアンテナユニットのビーム角度を制御するアンテナ装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面及び第2表面を含む基板と、
前記第1表面と第2表面の間に設けられる接地層と、
前記第1表面に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、前記信号受信端と前記複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される多分岐回路と、
前記第2表面に設けられ、それぞれのビアを介して前記信号放射端に接続され、ビーム成形を行うための複数のアンテナユニットと、
を含み、
水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差に基づいて、前記アンテナユニットのビーム角度を制御するアンテナ装置。
【請求項2】
前記多分岐回路は、複数の層構造における複数の分岐ノードを有することにより、前記信号受信端と前記信号放射端の間の前記受信分岐を形成する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記層構造は、上層分岐ノードを有し、前記上層分岐ノードと前記信号放射端の間に挟まれた第1層を含み、
前記長さの差は、共有する上層分岐ノードを有し隣接する2つの信号放射端から、前記共有する上層分岐ノードまでのそれぞれ経路長さの差である請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記層構造は、中層分岐ノードを有し、前記中層分岐ノードと前記第1層の間に挟まれた第2層を更に含み、
共有する中層分岐ノードを有し隣接する2つの上層分岐ノードから、前記共有する中層分岐ノードまでのそれぞれ経路長さの差は、前記長さの差の2倍である請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記層構造は、下層分岐ノードを有し、前記下層分岐ノードと前記第2層の間に挟まれた第3層を更に含み、
共有する下層分岐ノードを有し隣接する2つの中層分岐ノードから、前記共有する下層分岐ノードまでのそれぞれ経路長さの差は、前記長さの差の4倍である請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記分岐ノードは、ウィルキンソン不等分配器である請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記ウィルキンソン不等分配器は、更に前記アンテナユニットの間の電力比を制御することで前記アンテナユニットのアンテナゲインを制御するために用いられる請求項6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記水平方向に前記隣接する2つのアンテナユニットの間の位相差は、前記長さの差に比例する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記アンテナユニットのビーム角度は、前記長さの差に比例する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記水平方向に前記隣接する2つのアンテナユニットで、それぞれの幾何学的中心位置によって形成されるアンテナ距離が、前記アンテナユニットの共振帯域の中心周波数の波長の二分の一である請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記アンテナユニットの各々が垂直偏波パッチアンテナである場合、前記アンテナユニットは、列と列が垂直鏡像となるように前記第2表面に設けられ、
前記アンテナユニットの各々が水平偏波パッチアンテナである場合、前記アンテナユニットは、行と行が水平鏡像となるように前記第2表面に設けられる請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
複数のアンテナアレイを備える無線通信装置であって、
前記アンテナアレイの各々は、
第1表面及び第2表面を含む基板と、
前記第1表面と第2表面の間に設けられる接地層と、
前記第1表面に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、前記信号受信端と前記複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される多分岐回路と、
前記第2表面に設けられ、それぞれのビアを介して前記信号放射端に接続され、ビーム成形を行うための複数のアンテナユニットと、
を含み、
水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差に基づいて、前記アンテナユニットのビーム角度を制御する無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第5世代ニューラジオ(5G new radio;5G NR)技術に関し、特に、アンテナ装置及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代ニューラジオ(5G new radio;5G NR)のミリ波(mmWave)アンテナアレイ(antenna array)では、アンテナアレイにおいてビーム成形の方法を採用して各種の信号を伝送する場合が多い。しかしながら、大量のアンテナユニットを有するアンテナアレイが小さい空間に設けられるとともに多くのユーザがいる時、小さい空間で大量のビームを伝送する必要があり、これによって、ビーム角度を制御し難く、ビーム間干渉、サイドローブ干渉、高電力消費、高コストが発生するという問題を引き起こす場合が多い。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、第1表面及び第2表面を含む基板と、第1表面と第2表面の間に設けられる接地層と、第1表面に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、信号受信端と複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される多分岐回路と、第2表面に設けられ、それぞれのビアを介して複数の信号放射端に接続され、ビーム成形を行うための複数のアンテナユニットと、を含み、複数の水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差に基づいて、複数のアンテナユニットのビーム角度を制御するアンテナ装置を提供する。
【0004】
本開示は、複数のアンテナアレイを備える無線通信装置であって、複数のアンテナアレイの各々は、第1表面及び第2表面を含む基板と、第1表面と第2表面の間に設けられる接地層と、第1表面に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、信号受信端と複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される多分岐回路と、第2表面に設けられ、それぞれのビアを介して複数の信号放射端に接続され、ビーム成形を行うための複数のアンテナユニットと、を含み、複数の水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差に基づいて、複数のアンテナユニットのビーム角度を制御するために用いられる無線通信装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図3】本開示の幾つかの実施例による多分岐回路の一部の模式図である。
【
図4】本開示の別の幾つかの実施例によるウィルキンソン不等分配器を有する多分岐回路の模式図である。
【
図5】本開示の別の幾つかの実施例による無線通信装置の上面透視図である。
【
図6】本開示の別の幾つかの実施例による垂直偏波無線通信装置の模式図である。
【
図7】本開示の別の幾つかの実施例による水平偏波無線通信装置の模式図である。
【
図8】本開示の幾つかの実施例による水平偏波無線通信装置のアンテナゲインの模式図である。
【
図9】本開示の幾つかの実施例による垂直偏波無線通信装置のアンテナゲインの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1及び
図2を参照されたい。
図1は、本開示の無線通信装置100の上面透視図であり、
図2は、本開示の無線通信装置100の側面透視図であり、且つ
図1の無線通信装置100における端点Aから端点Aまでの線分に沿った側面透視図である。本実施例において、無線通信装置100は、基板Sと、接地層Gと、多分岐回路CCTと、複数のアンテナユニットANTと、を備える。
【0007】
注意すべきこととして、ビーム幅(Beamwidth)が11度であるとともにメインビーム(Main Beam)のアンテナゲインが15dB以上であるというニーズを満たすように、本実施例において複数のアンテナユニットANTの数が16であり且つ複数のアンテナユニットANTの各列の数が8であるという設置形態を採用しているが、他のビーム幅及びアンテナゲインのニーズに応じて複数のアンテナユニットANTの数及び各列の数を調整してもよい。
【0008】
また、基板Sは、互いに対応する第1表面S1と第2表面S2を含む。接地層Gは、第1表面S1と第2表面S2の間に設けられる。幾つかの実施例において、基板Sは、絶縁の材質で製造されたプリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)であってよく、基板Sの材質は、テフロン(PTFE)又はエポキシ樹脂(FR4)などのPCBの製造によく用いられる材質であってよい。幾つかの実施例において、接地層Gは、銅箔などの金属材質で製造されてよい。
【0009】
なお、多分岐回路CCTは、第1表面S1に設けられ、信号受信端と複数の信号放射端を含み、信号受信端と複数の信号放射端との間に複数の受信分岐が形成される。幾つかの実施例において、多分岐回路は、信号受信端と複数の信号放射端の間における複数の受信分岐を形成するように複数の層構造の複数の分岐ノードを有する。
【0010】
幾つかの実施例において、複数の分岐ノードは、複数のアンテナユニットANTの間の隔離度(Isolation)を改善して複数のアンテナユニットANTのアンテナゲインを制御し、更にサイドローブ(Sidelobe)による干渉を減少するための複数のウィルキンソン不等分配器(Unequal Wilkinson Power Divider)であってよい。幾つかの実施例において、複数のウィルキンソン不等分配器は、更に複数のアンテナユニットANTの間の複数の電力比を制御することで複数のアンテナユニットANTのアンテナゲインを制御するために用いられる。
【0011】
また、複数のアンテナユニットANTは、第2表面S2に設けられ、それぞれのビアVIAを介して複数の信号放射端に接続され、ビーム成形(Beamforming)を行うために用いられる。幾つかの実施例において、各アンテナユニットANTの受信点FPは、対応するビアVIAを介して対応する信号放射端に接続されてよい。
【0012】
また、水平方向(即ち、+x方向)における隣接する2つのアンテナユニットANTの受信分岐の経路長さの差に基づいて、複数のアンテナユニットANTのビーム角度(Beam Angle)θ(即ち、複数のアンテナユニットANTの生成したビームの方向と第2表面S2の法線方向との間の夾角)を制御するために用いられる。幾つかの実施例において、アンテナユニットANTは、パッチアンテナ(patch antenna)又は他のアンテナアレイ(antenna array)に適用可能なアンテナであってよい。換言すれば、複数のアンテナユニットANTは、1つ又は複数のアンテナアレイを構成することができ、アンテナアレイはパッチアンテナアレイであってよい。
【0013】
幾つかの実施例において、複数のアンテナユニットANTの各々が垂直偏波パッチアンテナである場合、複数のアンテナユニットANTは、列と列が垂直鏡像となるように第2表面S2に設けられる。また、複数のアンテナユニットANTの各々が水平偏波パッチアンテナである場合、複数のアンテナユニットANTは、行と行が水平鏡像となるように第2表面S2に設けられる。
【0014】
幾つかの実施例において、水平方向に隣接する2つのアンテナユニットANTの間の位相差は、長さの差に比例する。幾つかの実施例において、複数のアンテナユニットANTのビーム角度θは、長さの差に比例する。幾つかの実施例において、水平方向に隣接する2つのアンテナユニットANTの幾何学的中心位置によって形成されるアンテナ距離が、複数のアンテナユニットANTの共振帯域の中心周波数の波長の二分の一である。
【0015】
本開示の無線通信装置100によれば、多分岐回路CCTにおける受信分岐の経路長さを利用して無線通信装置100のビーム方向を調整することができる。また、無線通信装置100には大量のアンテナユニットが採用されていることによっても、メインビームのビーム幅を大幅に低減し、小さい空間で多くのビームを使用する必要があることによって引き起こされるビーム間の干渉を解決することができる。
【0016】
以下、実際の例をもって無線通信装置100を更に説明する。
【0017】
図3を併せて参照されたい。
図3は、本開示の幾つかの実施例による多分岐回路CCTの一部の模式図であり、多分岐回路CCTの一部は
図1における多分岐回路CCTの上半分である。
図3に示すように、多分岐回路CCTの一部は、信号受信端INと8個の信号放射端OUT1~OUT8を含み、信号受信端INと信号放射端OUT1~OUT8の間に、複数の受信分岐を形成するように3つの層構造ST1~ST3の7個の分岐ノードND1~ND7を有する。幾つかの実施例において、分岐ノードND4~ND7は上層分岐ノードである。分岐ノードND2~ND3は中層分岐ノードである。また分岐ノードND1は下層分岐ノードである。
【0018】
更に、信号受信端INから信号放射端OUT1まで、順に分岐ノードND1、ND2及びND4を経由して1番目の受信分岐を形成することができる。信号受信端INから信号放射端OUT2まで、順に分岐ノードND1、ND2及びND4を経由して2番目の受信分岐を形成することができる。このように類推し、信号受信端INと信号放射端OUT3~OUT8の間に3番目~8番目の受信分岐を形成することができる。
【0019】
一方、層構造ST1について、1番目の受信分岐の経路長さと2番目の受信分岐の経路長さとの間の長さの差はΔLであり、2番目の受信分岐の経路長さと3番目の受信分岐の経路長さとの間の長さの差もΔLである。このように類推し、他の隣接する2つの受信分岐の経路長さの差も全てΔLである。換言すれば、1番目~8番目の受信分岐の経路長さは、等差数列を形成することができる。
【0020】
一例として、層構造ST1について、分岐ノードND4から信号放射端OUT1までの経路長さ及び分岐ノードND4から信号放射端OUT2までの経路長さにより1つの長さの差を算出することができ、この長さの差はΔLである。また、分岐ノードND5から信号放射端OUT3までの経路長さ及び分岐ノードND5から信号放射端OUT4までの経路長さにより1つの長さの差を算出することができ、この長さの差もΔLである。このように類推し、放射端OUT5と放射端OUT6に対応する長さの差及び放射端OUT7と放射端OUT8に対応する長さの差も全てΔLである。
【0021】
また、層構造ST2について、信号受信端INから分岐ノードND4までの順に分岐ノードND1及びND2を経由した経路長さと、信号受信端INから分岐ノードND5までの順に分岐ノードND1及びND2を経由した経路長さとの間の長さの差は、ΔLの2倍であり、信号受信端INから分岐ノードND5までの順に分岐ノードND1及びND2を経由した経路長さと、信号受信端INから分岐ノードND6までの順に分岐ノードND1及びND3を経由した経路長さとの間の長さの差も、ΔLの2倍である。このように類推し、層構造ST2において、他の隣接する経路の経路長さの差も全てΔLの2倍である(同じく1つの等差数列を形成する)。
【0022】
一例として、層構造ST2について、分岐ノードND2から分岐ノードND4までの経路長さ及び分岐ノードND2から分岐ノードND5までの経路長さにより1つの長さの差を算出することができ、この長さの差はΔLの2倍である。また、分岐ノードND3から分岐ノードND6までの経路長さ及び分岐ノードND3から分岐ノードND7までの経路長さにより1つの長さの差を算出することができ、この長さの差もΔLの2倍である。
【0023】
なお、層構造ST3について、信号受信端INから分岐ノードND1を経由してノードND2までの経路長さと、信号受信端INから分岐ノードND1を経由して分岐ノードND3までの経路長さとの間の長さの差は、ΔLの4倍である。
【0024】
一例として、層構造ST3について、分岐ノードND1から分岐ノードND2までの経路長さ及び分岐ノードND1から分岐ノードND3までの経路長さにより1つの長さの差を算出することができ、この長さの差はΔLの4倍である。
【0025】
このようにして、アンテナ設計上のニーズに応じて層構造ST1に対応する長さの差の数値ΔLを利用して複数のアンテナユニットANTのビーム角度θを調整することができる。
【0026】
注意すべきこととして、信号放射端OUT1~OUT8の放射信号の位相(Phase)は、別の等差数列を形成可能である。また、隣接する2つの信号放射端の間の位相差は、上記長さの差に比例する。
【0027】
上記設置形態によれば、複数のアンテナユニットANTのビーム角度θ、アンテナ距離d及び上記した層構造ST1に対応する長さの差の数値ΔLの関係は、以下の式(1)に示す通りである。
ΔL=d×sinθ......式(1)
【0028】
式(1)から分かるように、大きいビーム角度θが必要とされる場合、長さの差の数値ΔLをより大きくするように多分岐回路CCTにおける線路の長さを調整することができる。逆に、小さいビーム角度θが必要とされる場合、長さの差の数値ΔLをより小さくするように多分岐回路CCTにおける線路の長さを調整することができる。換言すれば、必要に応じて長さの差の数値ΔL(任意の正の数であってよい)を選択することができ、よって長さの差の数値ΔLを利用して無線通信装置100のビーム角度を調整することができ、ΔLが特に制限されていない。
【0029】
図4を併せて参照されたい。
図4は、本開示の別の幾つかの実施例によるウィルキンソン不等分配器を有する多分岐回路CCT’の模式図である。
図4に示すように、
図3の多分岐回路CCTにおける各分岐ノードにはウィルキンソン不等分配器を採用してウィルキンソン不等分配器を有する多分岐回路CCT’の回路構造を形成し、ウィルキンソン不等分配器の2つの放射端の間の隔離度を改善し、更に2つの放射端の間の電力差を調整することができる。注意すべきこととして、多分岐回路CCT’の層構造ST1~ST3における経路長さの間の関係は多分岐回路CCTと同じである。従って、ここで更に説明しない。
【0030】
サイドローブとメインビームの間の電力差を18dB以上に設定するために、多分岐回路CCT’における信号放射端OUT1を基準とし、多分岐回路CCT’における信号放射端OUT1~OUT8の電力を以下の表(1)に示す通りに設定することができる。
【表1】
【0031】
表(1)から分かるように、信号放射端OUT1~OUT8の間には所定の電力比が存在する。それにより、これらの電力比に基づいて多分岐回路CCT’におけるウィルキンソン不等分配器の2つの放射端の間の電力差を調整することができる。
【0032】
なお、上記表(1)に基づき、ウィルキンソン不等分配器を採用することにより、分岐ノードND4の2つの放射端の間の電力差は1.12dBに調整可能であり、分岐ノードND5の2つの放射端の間の電力差は1.16dBに調整可能であり、分岐ノードND2の2つの放射端の間の電力差は3.59dBに調整可能であり、分岐ノードND1の2つの放射端の間の電力差は0dBに調整可能である。このように類推し、同じように分岐ノードND7、ND6及びND3の2つの放射端の間の電力差を調整することができる。
【0033】
上記設置形態によれば、複数のアンテナユニットANTのメインビームとサイドローブの間の電力差は18dB以上に増加可能であり、よって複数のアンテナユニットANTのアンテナゲインが15dB以上に制御され、更にサイドローブ干渉が減少される。
【0034】
図5を併せて参照されたい。
図5は、本開示の別の幾つかの実施例による無線通信装置100の上面透視図である。
図5に示すように、
図5の無線通信装置100の上半分の多分岐回路CCT’(1列目のアンテナユニットANTに対応する)は、
図4に示される多分岐回路CCT’であり、
図5と
図1の間の相違点は多分岐回路CCTにおける分岐ノードND1~ND7のみにあるため、他の同じ内容について繰り返して説明しない。
【0035】
図6を併せて参照されたい。
図6は、本開示の別の幾つかの実施例による垂直偏波無線通信装置100の模式図である。
図6に示すように、1列目~2列目のアンテナユニットANTは、垂直偏波ビーム角度が-5度のアンテナアレイであり、3列目~4列目のアンテナユニットANTは、垂直偏波ビーム角度が-16度のアンテナアレイであり、5列目~6列目のアンテナユニットANTは、垂直偏波ビーム角度が5度のアンテナアレイであり、7列目~8列目のアンテナユニットANTは、垂直偏波ビーム角度が16度のアンテナアレイである。
【0036】
また、1列目のアンテナユニットANTを基準とし、2列目のアンテナユニットANTを列と列が垂直鏡像となるように設置してよい。換言すれば、1列目のアンテナユニットANTの受信点FPは、1列目のアンテナユニットANTの上縁に近接し、2列目のアンテナユニットANTの受信点FPは、2列目のアンテナユニットANTの下縁に近接する。このように類推し、各アンテナアレイは、同じ設置形態を有してよい。
【0037】
図7を併せて参照されたい。
図7は、本開示の別の幾つかの実施例による水平偏波無線通信装置100の模式図である。
図7に示すように、1列目~2列目のアンテナユニットANTは、水平偏波ビーム角度が-5度のアンテナアレイであり、3列目~4列目のアンテナユニットANTは、水平偏波ビーム角度が-16度のアンテナアレイであり、5列目~6列目のアンテナユニットANTは、水平偏波ビーム角度が5度のアンテナアレイであり、7列目~8列目のアンテナユニットANTは、水平偏波ビーム角度が16度のアンテナアレイである。
【0038】
また、1行目~4行目のアンテナユニットANTを基準とし、8行目~5行目のアンテナユニットANTを行と行が水平鏡像となるように設置してよい。換言すれば、1行目~4行目のアンテナユニットANTの受信点FPは、それぞれ1行目~4行目のアンテナユニットANTの左側に近接し、8行目~5行目のアンテナユニットANTの受信点FPは、それぞれ8行目~5行目のアンテナユニットANTの右側に近接する。このように類推し、各アンテナアレイは、同じ設置形態を有してよい。
【0039】
一方、無線通信装置100が水平方向で45度カバーする必要があり、8人のユーザがいて、アンテナゲインを15dB以上にする必要がある場合、上記
図6と
図7のアンテナアレイを同時に採用し、且つ各アンテナアレイに
図5の多分岐回路を採用してよい。それにより、水平及び垂直偏波方向に4個のビームを生成して8個のビームを生成することができ、各ビームのビーム幅は約11度であり、各アンテナアレイのアンテナゲインは約15dBである。また、無線通信装置100の垂直偏波と水平偏波の間の交差偏波(Cross Polarization)は25dBより大きくなる。このようにして、ビーム幅が狭く、サイドローブ干渉が少なく、電力消費が少なく、コストが低い効果を同時に達成することができる。
【0040】
図8を併せて参照されたい。
図8は、本開示の幾つかの実施例による水平偏波無線通信装置100のアンテナゲインの模式図である。
図8に示すように、曲線CH1_HM1は、
図7における3列目~4列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH1_HM2は、
図7における5列目~6列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH2_HM1は、
図7における1列目~2列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH2_HM2は、
図7における7列目~8列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインである。
【0041】
図8から分かるように、各アンテナアレイのアンテナゲインも約15dBであり、各アンテナアレイの水平偏波ビーム方向もそれぞれ-16度、-5度、5度及び16度であり、サイドローブとメインビームの間の電力差も18dBより大きい。
【0042】
図9を併せて参照されたい。
図9は、本開示の幾つかの実施例による垂直偏波無線通信装置100のアンテナゲインの模式図である。
図9に示すように、曲線CH1_VM1は、
図6における3列目~4列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH1_VM2は、
図6における5列目~6列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH2_VM1は、
図6における1列目~2列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインであり、曲線CH2_VM2は、
図6における7列目~8列目のアンテナユニットANTのアンテナゲインである。
【0043】
図9から分かるように、各アンテナアレイのアンテナゲインは約15dBであり、各アンテナアレイの垂直偏波ビーム方向はそれぞれ-16度、-5度、5度及び16度であり、サイドローブとメインビームの間の電力差は18dBより大きい。
【0044】
以上を纏めると、本開示の無線通信装置は、水平方向に隣接する2つのアンテナユニットの受信分岐の経路長さの差に基づいて、アンテナユニットのビーム角度を制御するとともに、大量のアンテナユニットを採用してビーム幅を減少することができる。また、多分岐回路の有する複数の層構造の複数の分岐ノードの間の電力比を調整してアンテナユニットのアンテナゲインを制御し、更にサイドローブ干渉を減少することもできる。一方、このような設置形態によれば、電力消費とコストも大幅に削減される。
【0045】
本開示は、実施例により前述の通りに開示されたが、実施例が本開示を限定するものではなく、当業者であれば、本開示の精神と範囲から逸脱しない限り、何らかの変更や修飾を加えることができる。従って、本開示の保護範囲は、下記特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0046】
100 無線通信装置
CCT 多分岐回路
G 接地層
S 基板
VIA ビア
ANT アンテナユニット
θ ビーム角度
S1 第1表面
S2 第2表面
FP 受信点
A 端点
ST1~ST3 層構造
OUT1~OUT8 信号放射端
ND1~ND7 分岐ノード
IN 信号受信端
ΔL 層構造ST1に対応する長さの差の数値
CCT’ ウィルキンソン不等分配器を有する多分岐回路
CH1_HM1、CH1_HM2、CH2_HM1、CH2_HM2、CH1_VM1、CH1_VM2、CH2_VM1、CH2_VM2 曲線