(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166329
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231114BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066023
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0056542
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨー、ドン ゲオン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ビーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ドン ジュン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品に関する。
【解決手段】
誘電体層を含む積層型電子部品において、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも1つ以上は、コア-インターフェースシェル-シェル構造を有し、上記コア-インターフェースシェル-シェル構造を有する誘電体結晶粒は、ペロブスカイト(ABO
3)系母材主成分、Siを含む第1副成分、並びにMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された1つ以上を含む第2副成分を含み、上記第1副成分の平均含有量は第1インターフェースシェル領域で最も高く、上記第2副成分の平均含有量は上記第2インターフェースシェル領域で最も高いことができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つ以上は、内側のコア領域、前記コア領域の少なくとも一部を覆う第1インターフェースシェル領域及び第2インターフェースシェル領域を含むインターフェースシェル領域、及び前記インターフェースシェル領域の少なくとも一部を覆うシェル領域を含むコア-インターフェースシェル-シェル構造を有し、
前記コア-インターフェースシェル-シェル構造を有する誘電体結晶粒は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分、Siを含む第1副成分、並びにMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された一つ以上を含む第2副成分を含み、前記第1副成分の平均含有量は、第1インターフェースシェル領域で最も高く、前記第2副成分の平均含有量は、前記第2インターフェースシェル領域で最も高い、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1インターフェースシェル領域の平均直径サイズは、2nm以上5nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記第1インターフェースシェル領域は、前記コア領域の表面を20%以上50%以下覆う、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第2インターフェースシェル領域の平均直径サイズは、3nm以上10nm以下である、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第2インターフェースシェル領域は、前記コア領域の表面を35%以上80%以下覆う、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材主成分は、BaTiO3、(Ba、Ca)(Ti、Ca)O3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3及びBa(Ti、Zr)O3からなる群から選択された1つ以上を含む、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記コア領域は、内側の第1コア領域及び前記第1コア領域の少なくとも一部を覆う第2コア領域を含む第1コア-第2コア構造を有し、
前記第1コア領域は正方晶系構造を有し、前記第2コア領域は前記第2副成分を含み、立方晶系構造を有する、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記コア領域の平均直径サイズは、55nm以上65nm以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1コア領域の平均直径サイズは、45nm以上55nm以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第2コア領域の平均直径サイズは、5nm以上15nm以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体結晶粒は希土類元素をさらに含む、請求項1または2に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記希土類元素は、La、Y、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された1つ以上を含む、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記希土類元素の平均含有量は、前記コア-インターフェースシェル-シェル構造を有する誘電体結晶粒のうち、シェル領域で最も高い、請求項11に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
一方、コンデンサの適用範囲が増々広がるにつれて、小型化、高容量化及び高信頼性の要求が徐々に拡大している。小型化及び高容量化を達成するために、積層セラミックキャパシタのサイズが小さくなっており、サイズが小さくても高い容量を実現するためには、積層数が多くなる必要があるため、誘電体及び内部電極の薄層化が必須に伴われる必要がある。
【0004】
しかしながら、誘電体及び内部電極の厚さが薄くなるほど電界下で内部電極の劣化が発生することがあり、信頼性低下の問題が起こり得る。一方、積層型電子部品の高信頼性を達成するために、誘電体組成物に添加剤元素を添加して信頼性を向上させようとする試みがあったが、一定サイズ以下の誘電体組成物を製造する場合、目標とする高信頼性レベルを達成し難く、焼成安定性が低いことから新たな機種の開発に困難があった。
【0005】
ここで、内部電極の劣化を防止するために、焼成工程中、高温での工程時間を短く維持する高温短縮焼成を適用しているが、サイズの小さい誘電体パウダーを高温短縮焼成で行う場合、誘電体組成物の格子内部への添加剤の拡散時間が不足して信頼性が低下するという問題が依然として残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2018-0051760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体粒子に添加剤をドープまたは添加して積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0008】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体結晶粒にインターフェースシェル領域を形成することで、高温短縮焼成時の添加剤拡散を容易にし、焼成温度を下げて絶縁劣化信頼性を向上させることである。
【0009】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体結晶粒のうち正方晶系構造を有する領域を大きくして、誘電特性を向上させることである。
【0010】
但し、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、複数の誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置されて上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つ以上は、内側のコア領域、上記コア領域の少なくとも一部を覆う第1及び第2インターフェースシェル領域を含むインターフェースシェル領域及び上記インターフェースシェル領域の少なくとも一部を覆うシェル領域を含むコア-インターフェースシェル-シェル構造を有し、上記コア-インターフェースシェル-シェル構造を有する誘電体結晶粒は、ペロブスカイト(ABO3)系母材主成分、Siを含む第1副成分、並びにMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された1つ以上を含む第2副成分を含み、上記第1副成分の平均含有量は、第1インターフェースシェル領域で最も高く、上記第2副成分の平均含有量は、上記第2インターフェースシェル領域で最も高いことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のいくつかの効果の一つは、誘電体粒子に副成分添加剤をドープまたは添加して積層型電子部品の信頼性を向上させることである。
【0013】
本発明のいくつかの効果の一つは、誘電体結晶粒にインターフェースシェル領域が形成されることで、高温短縮焼成時の添加剤拡散を容易にし、焼成温度を下げて内部電極の絶縁劣化信頼性を向上させることである。
【0014】
本発明のいくつかの効果の一つは、誘電体結晶粒のうち正方晶系構造を有する領域を大きくして、誘電特性を向上させることである。
【0015】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1の内部電極の積層構造を概略的に示した分離斜視図である。
【
図4】
図3の誘電体層の一部であるP領域に含まれた複数の誘電体結晶粒を概略的に示した図面である。
【
図6】本発明の一実施形態による誘電体結晶粒の元素を測定したline-profileグラフである。
【
図7】本発明の一実施例及び比較例によるTEM-EDS分析イメージである。
【
図8】本発明の一実施例及び比較例によるTEM-EDS分析イメージである。
【
図9】比較例の信頼性評価(HALT)グラフである。
【
図10】本発明の一実施形態による積層型電子部品の信頼性評価(HALT)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図面に示された各構成のサイズ及び厚さは説明の便宜のために任意で示したため、本発明が必ずしも図示によって限定されるものではない。また、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0020】
[積層型電子部品]
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1の内部電極の積層構造を概略的に示した分離斜視図であり、
図3は、
図1のI-I'線に沿った断面図であり、
図4は、
図3の誘電体層の一部であるP領域に含まれた複数の誘電体結晶粒を概略的に示した図面であり、
図5は、誘電体結晶粒を概略的に示した図面である。
【0021】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110、及び上記本体110の外側に配置されて上記内部電極121、122と連結される外部電極131、132を含み、上記誘電体層111は複数の誘電体結晶粒20を含み、上記複数の誘電体結晶粒20の少なくとも1つ以上は、内側のコア領域21、上記コア領域21の少なくとも一部を覆う第1及び第2インターフェースシェル領域22a、22bを含むインターフェースシェル領域22、及び上記インターフェースシェル領域22の少なくとも一部を覆うシェル領域23を含むコア21-インターフェースシェル22-シェル23構造を有し、上記コア21-インターフェースシェル22-シェル23構造を有する誘電体結晶粒は、ペロブスカイト(ABO3)系母材主成分、Siを含む第1副成分、並びにMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された一つ以上を含む第2副成分を含み、上記第1副成分の平均含有量は、第1インターフェースシェル領域22aで最も高く、上記第2副成分の平均含有量は、上記第2インターフェースシェル領域22bで最も高いことができる。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体状またはこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮によって、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0025】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5及び第6面5、6を有することができる。
【0026】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0027】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量を得ることができる限り制限されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料、またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0028】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0029】
従来の60nm級サイズのチタン酸バリウム(BaTiO3)系誘電体粒子の形成過程は、まず、Ba(OH)2を設け、Ba(OH)2にTiO2を投入して、10nm級BaTiO3シード(seed)を形成する。この後、上記BaTiO3シード(seed)に金属酸化物などの添加剤を投入した後、高温/高圧環境で粒成長させて60nm級誘電体粒子を製造することができる。従来の製造方法で製造した誘電体粒子は、正方晶系構造(tetragonal structure)のコア直径は30nm級のサイズを有し、金属イオンがドープされた領域の立方晶系構造(cubic structure)の直径は、30nm級のサイズを有するようになる。
【0030】
すなわち、従来の製造方法では、コア内部への添加剤の拡散を抑制することが容易でなく、それに応じて誘電特性の制御が容易でないという問題点があった。例えば、60nm級のBaTiO3誘電体粒子の場合、正方晶系構造(tetragonal structure)を有するコアは30nm級のレベルに留まっている。
【0031】
しかしながら、本発明の一実施形態のように、粒界抵抗を増大させることがあるSi及び酸素空孔(Oxygen vacancy)生成を抑制するアクセプタ(acceptor)元素を誘電体粒子の合成過程でそれぞれコート及びドープする場合、内部電極の劣化を防止すると同時に、誘電特性を向上させることができる効果がある。
【0032】
追加的に、上記誘電体粒子に希土類元素などの添加剤をさらに添加して焼成熱処理する場合、信頼性が向上するとともに誘電特性が増大できる誘電体結晶粒を誘電体層の内部に含むことができる。
【0033】
従来の誘電体粒子の製造方法のみでは、後述する第1インターフェースシェル22a及び第2インターフェースシェル22bを形成することが困難であり、それによる効果も実現し難い場合があり、以下でより詳細に説明する。
【0034】
図4を参照すると、誘電体層111は複数の誘電体結晶粒20を含むことができる。
図4のP領域は、任意の誘電体層111を拡大して複数の誘電体結晶粒20を概略的に示したものである。
【0035】
このとき、複数の誘電体結晶粒20、20'の少なくとも1つ以上は、内側のコア領域21、上記コア領域21の少なくとも一部を覆う第1及び第2インターフェースシェル領域22a、22bを含むインターフェースシェル領域22、及び上記インターフェースシェル領域22の少なくとも一部を覆うシェル領域23を含むコア21-インターフェースシェル22-シェル構造23を有することができる。
【0036】
より具体的には、
図5を参照すると、誘電体結晶粒20、20'のコア領域21は、内側の第1コア領域21a及び上記第1コア領域21aの少なくとも一部を覆う第2コア領域21bを含む第1コア21a-第2コア21b構造を有することができ、上記第1コア領域21aは正方晶系構造(tetragonal structure)を有し、上記第2コア領域21bは第2副成分を含み、立方晶系構造(cubic structure)を有することができる。このとき、第2コア領域21bに第2副成分が含まれることで、第2コア領域21bのペロブスカイト(ABO
3)系構造が立方晶系構造(cubic structure)となり得る。
【0037】
誘電体の母材主成分として用いるBaTiO3、(Ba、Ca)(Ti、Ca)O3、(Ba、Ca)(Ti、Zr)O3、及びBa(Ti、Zr)O3は、ABO3で表されるペロブスカイト(perovskite)系構造に該当し、熱処理工程の進行中に酸素が存在すべき位置に欠陥が生じる酸素空孔(oxygen vacancy)が発生することがある。例えば、還元雰囲気で焼成を行う場合、酸素空孔(oxygen vacancy)が発生することがあり、または脱バインダーなどによってカーボンがABO3の酸素と結合してCO2形態で蒸発する場合にも酸素空孔(oxygen vacancy)が発生する可能性がある。酸素(O)原子は-2価の電荷(charge)を帯びるようになるが、酸素が存在すべき位置に欠陥が生じると、+2価の電荷(charge)を有する酸素空孔(oxygen vacancy)が発生し、印加した電界によって酸素空孔が移動すると信頼性が低下し、酸素空孔(oxygen vacancy)が多いほど、そして温度及び電圧が高くかかるほど酸素空孔(oxygen vacancy)の移動速度及び移動量が増加して、信頼性をさらに悪化させるようになり、このような工程環境は、高温焼成で主に発生することがある。このような酸素空孔(oxygen vacancy)の問題点を解決するために、一般的に他の金属酸化物などの添加剤や副成分などをドープすることができるが、このとき、チタン(Ti)及び酸化水は同一であるが、イオン半径が異なる元素を一部置換することができる。添加される添加剤として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれに制限されるものではなく、焼成工程後の誘電体層111に含まれた複数の誘電体結晶粒20の少なくとも1つ以上は、上記添加剤を副成分として含むようになることで、立方晶系構造(cubic structure)を有することができる。
【0038】
一般的に、BaTiO3系誘電体は、常温で正方晶系構造(tetragonal structure)を有するが、一部元素が置換された領域は、立方晶系構造(cubic structure)の格子構造に変形することができ、このように格子構造を変形して双極子(dipole)モーメントのある相に切り替えることで、自体誘電率を高めて、粒成長なしに小さなサイズを有すると同時に、高誘電率を確保することができる。これによって、超薄層の誘電体層を形成することができ、積層型電子部品の超小型化を達成することができる。
【0039】
一般的に、誘電率は立方晶系構造(cubic structure)を有する領域のサイズに対して、正方晶系構造(tetragonal structure)を有する領域のサイズが大きい場合に向上することが知られており、換言すると、同じサイズを有する誘電体粒子のうち、tetragonal structure size/cubic structure sizeの割合が大きい誘電体粒子であるほど誘電率が向上する。
【0040】
本明細書で誘電体結晶粒20、20'の一構成に関して説明する平均直径サイズは、SEM(Scanning Electron Microscope)またはTEM(Transmission Electron Microscope)イメージから確認できる誘電体結晶粒のコア21の中心から一直線を引いた後、一直線上に位置した各構成の最小距離と最大距離との差を測定し、このような最小距離と最大距離との差を様々な角度で測定して平均した値であることができる。但し、これに限定するものではなく、誘電体結晶粒20の各構成の特徴によって相違に測定することができる。
【0041】
本発明の一実施形態による積層型電子部品のうち、誘電体結晶粒20、20'のコア領域21の平均直径サイズは、55nm以上65nm以下であることができる。このとき、上記コア領域21のうち、第1コア領域21aの平均直径サイズは45nm以上55nm以下であることができ、上記コア21のうち、第2コア領域21bの平均直径サイズは5nm以上15nm以下であることができる。
【0042】
焼成後の誘電体結晶粒20、20'のコア領域21の平均直径サイズは、焼成前の誘電体粒子のサイズであることができるが、特にこれに制限されるものではない。但し、後述するSiを含む第1副成分によって第2コア領域21bの平均直径サイズが従来の誘電体粒子を焼成した場合より小さいことがある。
【0043】
上記第2コア領域21bの平均直径サイズが5nm以下である場合、酸素空孔(oxygen vacancy)を効果的に抑制することが困難であり、第2コア領域21bの平均直径サイズが15nm超過である場合、過度の第2副成分のドープによって、正方晶系構造(tetragonal structure)の領域が小さくなって、誘電率が低下する可能性がある。
【0044】
上記コア領域21の少なくとも一部を覆うインターフェースシェル領域22は、第1インターフェースシェル22a及び第2インターフェースシェル領域22bを含むことができる。
【0045】
より具体的には、
図5の(b)を参照すると、コア21-インターフェースシェル22-シェル23構造を有する誘電体結晶粒20'のうち、コア21領域の表面を少なくとも一部覆う第1インターフェースシェル22a及び第2コアインターフェースシェル22bは、コア21を同時に覆うことができ、本図面では、第1及び第2インターフェースシェル22a、22bが重ならない形状で示したが、これに限定されるものではなく、一部領域で重なっている形状になることができ、形成された第1及び第2インターフェースシェル22a、22bのうち、大きな領域を有するインターフェースシェルが小さい領域を有するインターフェースシェルを含む形状になることもできる。
【0046】
第1インターフェースシェル22a及び第2インターフェースシェル領域22bに最も多く含まれた副成分の含有量は互いに相違することができ、例えば、第1インターフェースシェル領域22aに含まれた副成分はSiを含む第1副成分を意味することができ、第2インターフェースシェル領域22bに含まれた副成分は、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn及びSnからなる群から選択された1つ以上を含む第2副成分を意味することができる。
【0047】
より具体的には、コア21-インターフェースシェル22-シェル23構造を有する誘電体結晶粒20、20'は、チタン酸バリウム(BaTiO3)系母材を主成分とし、Siを含む第1副成分及び上記第2副成分を含むことができる。ここで、第1副成分の平均含有量は、第1インターフェースシェル領域22aで最も高いことができ、第2副成分の平均含有量は、第2インターフェースシェル領域22bで最も高いことができる。
【0048】
焼成工程前、誘電体粒子状態の第1インターフェース領域22aにSiが含まれることで、第2インターフェース領域22bの第2副成分がコア内部に拡散することを抑制することができ、これによって比較的小さい平均直径サイズを有する第2コア領域21bが形成されることができる。これにより、第2副成分による酸素空孔の抑制効果によって信頼性を向上させるとともに、コア21の正方晶系構造(tetragonal structure)を有する第1コア領域21aのサイズを立方晶系構造(cubic structure)を有する第2コア領域22bのサイズに対して大きく維持することができ、高い誘電率を有する積層型電子部品を実現することができる。
【0049】
また、第1インターフェース領域22aに含まれたSiの含有量が高い場合、すなわち、Siを含む第1インターフェース領域21aが形成されることで、Siによる液相形成により、第1インターフェースシェル領域22bがない従来の場合よりも、同一誘電容量及びDFを実現するために、焼成温度を約5℃~約10℃程度下げることができ、焼成温度が低くなるにつれて超薄層の内部電極121、122で劣化を防止することができる効果がある。
【0050】
図5の(a)及び(b)を参照して説明すると、以下のとおりである。上記コア領域21の少なくとも一部を覆うインターフェースシェル領域22は、第1インターフェースシェル領域22a及び第2インターフェースシェル領域22bを含むことができ、第1インターフェースシェル22a及び第2インターフェースシェル22bは、それぞれコア領域21の表面を覆うことができるが、コア領域21の表面を同時に覆うことが好ましい。
【0051】
このとき、第1インターフェースシェル領域22aの平均直径サイズは、2nm以上5nm以下であることができる。ここで、第1インターフェースシェル領域22aの平均直径サイズは、第1インターフェースシェル領域22aの平均厚さを意味することができる。
【0052】
ここで、第1インターフェースシェル領域22aの直径サイズは、誘電体結晶粒20'のコアの中心から一直線上に位置したコア21の外側から近い第1インターフェースシェル領域22aの地点と、コア21から離れた第1インターフェースシェル領域22aの地点の直径を意味することができる。第1インターフェースシェル22aは、コア21の表面を覆うことができ、一定の面積を有する場合、様々な角度で測定した第1インターフェースシェル領域21aの直径を測定して平均した値であり、上記平均値は、第1インターフェースシェル領域22aの平均直径サイズを意味することができる。このような測定方法は、後述する第2インターフェースシェル領域22bの直径サイズ及び平均直径サイズにも適用することができる。
【0053】
また他の方法では、第1インターフェース領域22a及び第2インターフェース領域22bの平均直径サイズは、Gaussian fitting方法を用いて求めることができる。ここで、Gaussian fitting方法は、ガウス関数を用いてFWHM(Full Width at Half Maximum)を求めることができる公式に該当する。TEMにおいて、第1及び第2インターフェースシェル領域22a、22bをそれぞれline profile raw dataを用いてデータを得た後、下記(数1)式に該当するGaussian fitting数式を適用してノイズを除去し、導出されるグラフのピーク(peak)値の範囲を測定して求めたサイズを10個のline profile raw dataに拡張して求めた平均値であることができ、dataのサンプルが多いほど求めようとする平均値を導出する上で好ましい。
【0054】
インターフェースシェル22は、TEM-EDSイメージから確認できるように、一定の直径サイズを有することができ、より具体的な平均直径サイズ(厚さ)は、Gaussian fittingを介して具体的に測定することができる。
【0055】
【数1】
(y0=base、xc=x value at center、A=area、w=FWHM)
【0056】
一方、第1インターフェースシェル領域22aの平均直径サイズが2nm未満である場合、十分な粒界抵抗効果を実現することが困難であり、第1インターフェースシェル領域22aの平均直径サイズが5nm超過である場合、粒界抵抗効果は増大することができるが、誘電率が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0057】
一方、第1インターフェースシェル領域22aは、上記コア領域の表面を20%以上50%以下覆うことができる。第1インターフェースシェル領域22aが覆うコア領域21の表面が20%未満である場合、十分な粒界抵抗効果を実現し難く、第1インターフェースシェル領域22aが覆うコア領域の表面が50%超過である場合、粒界抵抗効果は増大することができるが、誘電率が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0058】
また、第2インターフェースシェル領域22bの平均直径サイズは、3nm以上10nm以下であることができる。ここで、第2インターフェースシェル領域22bの平均直径サイズは、第2インターフェースシェル領域22bの平均厚さを意味することができる。
【0059】
第2インターフェースシェル領域22bの平均直径サイズが3nm未満である場合、十分な酸素空孔の抑制効果を実現することが困難であり、第2インターフェースシェル領域22bの平均直径サイズが10nm超過である場合、酸素空孔の抑制効果は増大することができるが、誘電率が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0060】
一方、第2インターフェースシェル領域22bは、上記コア領域21の表面を35%以上80%以下覆うことができる。第2インターフェースシェル領域22bが覆うコア領域21の表面が35%未満である場合、十分な酸素空孔の抑制効果を実現し難く、第2インターフェースシェル領域22bが覆うコア領域21の表面が80%超過である場合、酸素空孔の抑制効果は増大することができるが、誘電率が低下するという問題点が発生する可能性がある。
【0061】
本発明の一実施形態によると、第1及び第2インターフェースシェル領域22a、22bの平均直径サイズが大きくなるほど、コア領域21の表面を覆う割合は増加する傾向を示したが、特にこれに制限されるものではなく、平均直径サイズが小さい場合でもコア21を覆う領域が大きいことができ、逆に平均直径サイズが大きい場合でもコア21を覆う領域が小さいことができる。
【0062】
また、誘電体結晶粒のシェル領域23は、インターフェースシェル領域22の少なくとも一部を覆うことができ、インターフェースシェル22の外側から結晶粒界(grain boundary)までの領域を意味することができる。
【0063】
誘電体結晶粒20には、La、Y、Ac、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択された1つ以上を含む希土類元素が含まれることができ、より具体的には、上記希土類元素の平均含有量は、コア21-インターフェースシェル22-シェル23構造を有する誘電体結晶粒20、20'のうち、シェル領域23で最も高いことができる。これは、第1インターフェースシェル22aによってコア21内部への拡散が抑制されたものと見なすことができ、これにより、希土類元素による信頼性が向上すると同時に、誘電特性がさらに向上することができる。
【0064】
希土類元素はチタン酸バリウム(BaTiO3)系の元素位置を効果的に置換することができ、酸素空孔の欠陥濃度の減少に効果的であり、過度の結晶粒成長を抑制して信頼性低下を防止することができる。
【0065】
図6は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒の一結晶粒界(grain boundary)から他の結晶粒界(grain boundary)までの第1副成分であるSi、第2副成分であるSn、希土類元素であるDy元素含有量を測定したline-profileグラフである。
【0066】
まず、Sn元素含有量を確認すると、約17.11nmから約19.97nm領域にピーク(peak)が形成されたことが確認でき、これによってコア21領域の一外側に第2インターフェースシェル領域22bが形成されたことが分かる。Si元素含有量を確認すると、約84.00nmから約88.42nmの領域にピーク(peak)が形成されたことが確認でき、これによってコア領域21の他の外側に第1インターフェースシェル領域22aが形成されたことが分かる。
【0067】
図7及び
図8は、本発明の一実施例及び比較例の誘電体結晶粒を撮影したTEM-EDSイメージである。
【0068】
より具体的には、
図7の(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒であり、Siを含む第1インターフェースシェル領域22aがコア領域21の表面を20%以上50%以下覆う場合のTEM-EDSイメージである。矢印で示したように、一定の厚さの第1インターフェース領域22aがあることが確認できる。
図7の(b)は、比較例の誘電体結晶粒として、従来の製造方法で製造した誘電体粒子を焼成した場合のTEM-EDSイメージである。従来の製造方法で製造した誘電体粒子を生成した後に、Siを添加剤として添加したが、第1インターフェース領域22aが形成されなかったことが確認できる。
図7の(c)は、比較例の誘電体結晶粒として、第1インターフェースシェル領域22aがコア領域21の表面を20%未満覆う場合のTEM-EDSイメージである。矢印で示した領域に第1インターフェースシェル領域22aが薄くあることが確認できるが、
図7の(a)のように明確に形成されておらず、これから粒界抵抗効果が十分に発揮されないことが予想される。
【0069】
図8の(a)は、本発明の一実施形態による誘電体結晶粒のSi、Sn、Dy元素を撮影したTEM-EDSイメージであり、Siイメージは
図7の(a)と同一である。Snを含む第2インターフェースシェル領域22bがコア領域21の表面を覆っており、第1インターフェースシェル領域22aと類似した領域に形成され、一定の厚さを有して形成されたことが確認でき、希土類元素であるDyがコア21の内部に拡散されないままシェル領域23に主に含まれていることが確認できる。
図8の(b)は、比較例の誘電体結晶粒であり、Siイメージは
図7の(b)と同一である。Snがコア領域21を囲んだ形態で形成されているが、一定の厚さに形成されていないため、第2インターフェースシェル領域22bを明確に区別し難く、これからコア21内部への拡散が発生して正方晶系構造(cubic structure)を有する領域が比較的大きいことが予想でき、希土類元素であるDyが含まれていることが確認できる。
【0070】
一方、誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、より好ましくは0.4μm以下であることができる。ここで、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができる。
【0071】
誘電体層111の平均厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0072】
誘電体層111の平均厚さtdは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージから1つの誘電体層を長さ方向に等間隔である30つの地点でその厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30つの地点は、活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さtdをさらに一般化することができる。ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0073】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される活性部Acと、活性部の第1方向の両端面に形成された上部及び下部カバー部112、113を含むことができ、活性部Acの第3方向の両側面上には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0074】
活性部Acは、積層型電子部品の容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0075】
カバー部112、113は、活性部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び活性部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0076】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111を活性部Acの上下面にそれぞれ第1方向(厚さ方向)に積層して形成することができ、基本的には、物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0077】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同一材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0078】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の平均厚さtcは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0079】
カバー部112、113の平均厚さtcは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて、1つのカバー部112、113を長さ方向に等間隔である30つの地点でその厚さを測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である30つの地点は、上部カバー部112、113で指定されることができる。また、このような平均値の測定を上部及び下部カバー部112、113に拡張して平均値を測定すると、カバー部112、113の平均厚さtdをさらに一般化することができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0080】
一方、マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1マージン部114及び第6面6に配置された第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110の第3方向(幅方向)の両側面に配置されることができる。
【0081】
マージン部114、115は、
図2に示したように、本体110の厚さ及び幅方向(W-T方向)の断面(cross-section)に基づいて、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両側面と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0082】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0083】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部114、115が形成されるところを除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成することで形成されたものであることができる。上述したように、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層111または2つ以上の誘電体層111を活性部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0084】
第1及び第2マージン部114、115の平均幅は、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1及び第2マージン部114、115の平均幅は30μm以下であり、超小型製品においてより好ましくは20μm以下であることができる。
【0085】
マージン部114、115の平均幅は、本体110の幅及び厚さ方向(W-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて1つのマージン部114、115を厚さ方向に等間隔である10つの地点でその幅を測定した平均値を測定することができる。上記等間隔である10つの地点は、第1マージン部114で指定することができる。また、このような平均値の測定を第1及び第2マージン部114、115に拡張して平均値を測定すると、マージン部114、115の平均幅をさらに一般化することができる。ここで、マージン部114、115の平均幅は、マージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0086】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに向かい合うように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0087】
第1内部電極121は第4面4から離隔して、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3から離隔して、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極131が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0088】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0089】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0090】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法やグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0091】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは、特に限定する必要はない。
【0092】
但し、一般的に内部電極121、122の厚さを0.6μm未満の薄層に形成する場合、特に内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがある。しかしながら、本発明の一実施形態によって誘電体結晶粒20に第1インターフェースシェル22aが含まれることで、比較的低い温度で焼成工程を行うことができ、内部電極121、122の劣化を防止して、内部電極121、122の平均厚さteが0.4μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0093】
内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、スキャンされたイメージにおいて1つの内部電極121、122を長さ方向に等間隔である30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30つの地点は、活性部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。ここで、内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0094】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0095】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4に配置されることができる。より具体的には、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2電極層131a、132aを含むことができる。
【0096】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0097】
外部電極131、232は、導電性金属及びガラス(glass)を含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極を含むことができる。
【0098】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成するか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。電極層131a、132aに含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0099】
めっき層131b、132bは実装特性を向上させる役割を果たし、導電性金属または焼成電極を含む電極層131a、132a上に配置されることができる。
【0100】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであることができ、複数層で形成されることができる。
【0101】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、めっき層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0102】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0103】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層111及び内部電極121、122の厚さを薄くして積層数を増加させることが好ましい。また、誘電体層111及び内部電極121、122の薄層化に伴う電界下で内部電極の劣化防止の効果を実現することができる本発明の効果は、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性及び単位体積当たりの容量向上の効果がより顕著になる。
【0104】
以下では、本発明の一実施例と比較例について特性評価を行ったことを詳細に説明する。
【0105】
図9及び
図10は、比較例及び本発明の一実施形態の超加速寿命試験(HALT、Highly Accelerated Life Test)のグラフである。
【0106】
より具体的には、
図9は、比較例のHALTグラフであり、(a)は温度条件115℃、電圧条件1.2Vrで72時間進行したものであり、MTTF(Mean Time To Failure)は39.6時間である。(b)は温度条件115℃、電圧条件1.5Vrで72時間進行したものであり、MTTFは16.2時間である。同一比較例の初期IR値は5.66×10^6であり、IR劣化程度を意味する傾き値である(log(初期IR/後期IR))は3.16と測定された。
【0107】
図10は、本発明の一実施形態のHALTグラフであり、実験条件は
図9と同一である。すなわち、(a)は温度条件115℃、電圧条件1.2Vrで72時間進行したものであり、MTTFは22.5時間である。(b)は温度条件115℃、電圧条件1.5Vrで72時間進行したものであり、MTTFは22.5時間である。同一実施例の初期IR値は8.28×10^6であり、IR劣化程度を意味する傾き値である(log(初期IR/後期IR))は2.53と測定された。
【0108】
まとめると、比較例及び実施例を同一条件で実験した場合、(a)条件でのMTTFは39.6時間から57.9時間に約46%改善されたことが確認でき、(b)条件でのMTTFは16.2時間から22.5時間に約39%改善されたことが確認できる。初期IR値も5.66×10^6から8.28×10^6に改善され、IR劣化程度の把握のための傾き値(log(初期IR/後期IR))も3.16から2.53に改善されて、同一温度及び電圧条件を同一時間に進行したとき、IR劣化が減少することが確認できる。
【0109】
一方、下記の表1は、誘電体粒子の製造過程で投入したSi含有量に応じた積層型電子部品で検出されたSi含有量、MTTF、誘電率を測定したデータである。添加剤に含まれたSiの影響で初期投入したSiよりもさらに多いSiが検出された。Siが増加するほど粒界抵抗が増加して、MTTFが増加する傾向を示したが、誘電率が低くなることが確認できる。
【0110】
検出されたSi含有量は、誘電体結晶粒の第1インターフェース領域でTEMを用いてdetectingされたSi含有量に対するデータを意味する。
【0111】
MTTFは、温度条件125℃、電圧条件1.2Vrで超加速寿命試験(HALT)を行った場合の絶縁破壊平均時間を意味する。
【0112】
【0113】
誘電体粒子の形成時に、第1インターフェースシェルとなり得るSiの含有量が増加するほど、焼成後に誘電体結晶粒の第1インターフェースシェルで検出されたSiの含有量が増加することが確認でき、MTTFが増加したことが確認できる。但し、Siが過度に添加された場合、誘電率が減少したことが確認できる。これにより、優れたMTTF及び誘電率を有する積層型電子部品の第1インターフェースシェル領域で検出されるSiの好ましい含有量は1500ppm以下であることを確認することができ、より好ましくは1243ppm以下である。
【0114】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではない。よって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0115】
20 誘電体結晶粒
21 コア
21a、21b 第1及び第2コア
22 インターフェースシェル
22a、22b 第1及び第2インターフェースシェル
23 シェル
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層