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特開2023-166336シャント装置を有する調節可能永久磁石レンズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166336
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】シャント装置を有する調節可能永久磁石レンズ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/143 20060101AFI20231114BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20231114BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20231114BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20231114BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20231114BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
H01J37/143
H01J37/12
H01J37/147 C
H01J37/153 Z
H01J37/305 B
H01L21/30 541A
H01L21/30 541W
H01L21/30 541F
G03F7/20 504
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074612
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】22172309.1
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509316578
【氏名又は名称】アイエムエス ナノファブリケーション ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー プッフベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ライトナー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック マイルホーファー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ シュペングラー
(72)【発明者】
【氏名】エルマー プラッツグマー
【テーマコード(参考)】
5C101
5F056
【Fターム(参考)】
5C101AA27
5C101EE04
5C101EE08
5C101EE12
5C101EE17
5C101EE22
5C101EE57
5C101EE64
5C101EE65
5C101EE67
5C101EE69
5C101GG15
5F056BA01
5F056CB30
5F056CB32
5F056EA04
5F056EA05
5F056EA06
5F056EA14
(57)【要約】
【課題】永久磁石を含むがレンズの光学特性を高精度で調節可能な荷電粒子レンズを提供する。
【解決手段】微調節可能な荷電粒子レンズ(10)は永久磁石(12)、ヨークボディ(25)及びシャント要素(31)を含むシャント装置(30)を含む磁気回路アセンブリ(20)を含む。該アセンブリは縦軸(cx)に沿って延在するビーム通路(11)を包囲する。シャント装置はヨークボディ内の永久磁束の脇に配設され、異なる高透磁性材料を含む複数のセクタ要素から構成され得る。永久磁石とヨークボディは、内方に向かってビーム通路内に到達する磁界(61)を生成するために、少なくとも2つのギャップ(290、291)を有する磁気回路を形成する。ビーム通路内には、前記磁界と空間的に重なる電界(65)を生成し得る静電電極を有するスリーブインサート部材(50)が挿入可能である。シャント装置は前記回路アセンブリの磁束を部分的にバイパスし、以って、磁界を所望の値に減じる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子光学システム(1)の荷電粒子ビームを修正するよう構成された荷電粒子レンズであって、
前記レンズは、主として縦軸(cx)に沿って延伸しかつ荷電粒子ビーム(100)の通過を可能にするビーム通路(11)を備え、
前記レンズは、
・少なくとも1つの永久磁石(21;210、211)、
・ヨークボディ(25;250、251)、及び
・少なくとも1つのシャント装置(30)
を含む磁気回路アセンブリ(20)を含むこと、
前記ヨークボディ(25)は少なくとも2つのヨーク要素(250、251)から構成されており、前記少なくとも2つのヨーク要素のうち、第1ヨーク要素(250)は前記ビーム通路(11)を包囲するよう配置されたインナーヨークシェル(250)を構成し、第2ヨーク要素は前記インナーヨークシェル(250)を包囲するよう配置されたアウターヨークシェル(251)を構成し、前記少なくとも2つのヨーク要素は前記縦軸(cx)の周囲に配置されており、かつ、高透磁性材料を含むこと;
前記少なくとも1つの永久磁石(21)は前記少なくとも2つのヨーク要素の間にかつ前記インナーヨークシェルの周囲に配置されており、前記少なくとも1つの永久磁石は、その2つの磁極が夫々のヨーク要素へ向けて磁気的に配向されている永久磁石材料(210、211)を含むこと;
前記磁気回路アセンブリ(20)において、前記少なくとも1つの永久磁石と前記ヨークボディは閉磁気回路を形成するが、異なるヨーク要素の対応する軸方向面間に形成される少なくとも2つのギャップ(290、291)を有し、前記少なくとも1つの永久磁石から到来する磁束密度を前記ヨークボディを通して導くよう構成され、かつ、前記少なくとも2つのギャップに、内方に向かって前記ビーム通路内に到達する磁界(61)を誘導すること、及び
前記少なくとも1つのシャント装置(30)は、少なくとも1つの透磁性シャント要素(31)を含み、かつ、前記ヨークボディの前記少なくとも2つの要素間の定義された位置に配置されており、前記少なくとも1つのシャント装置(30)は、前記磁束の定義された部分が前記磁気回路アセンブリの少なくとも一部分をバイパスすることを可能にすること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記レンズは、前記縦軸(cx)に沿って全体的に回転対称的な形状を有すること、
前記磁気回路アセンブリ(20)の構成要素、即ち、
・少なくとも1つの永久磁石(21)、
・ヨークボディ(25)、及び
・少なくとも1つのシャント装置(30)
は前記縦軸と同心に配置されており、好ましくは中空シリンダに対応する基本形状又は中空多角柱形状を有すること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素(31)は、前記縦軸(c2)に沿って積重ねられた2つ以上の層(330)及び/又は前記縦軸(c2)の周りに配置された1つ以上のセクタ(340)から構成されていること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素(31)は、透磁性材料からなる2つ以上のセクタ要素(350、351)から構成されており、前記2つ以上のセクタ要素は前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置されていること、
前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、他のセクタ要素の透磁性材料の透磁率とは異なる透磁率を有する透磁性材料を含み、かくして、磁気レンズが異なってアジマス的に変化する磁束密度を、従って前記縦軸(c2)の周りでアジマス的に変化する磁界を有することを可能にすること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項5】
請求項4に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石(21)は、前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置された少なくとも2つの副要素から構成されていること、
前記シャント装置(30)の少なくとも1つ又は前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの永久磁石副要素の夫々2つの間に配置されていること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項6】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記第2ヨーク要素(251)は、レンズアセンブリのハウジングボディ(12)を構成すること、該ハウジングボディ(12)は、他の全てのヨーク要素を含む前記レンズアセンブリの他の要素を包囲すること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項7】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石(21)は実質的に半径方向に配向された磁化を有すること、
前記少なくとも1つのシャント装置(30)は、少なくとも前記実質的に半径方向に配向された磁化に対し平行な方向に沿って高透磁率の材料を含むこと
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項8】
請求項1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石(21)は、少なくとも2つの副要素から構成されていること、即ち、
・縦軸(c1)に沿って積重ねられた2つ以上の層(220)に従ってセグメント化されていること;
及び/又は
・縦軸(c1)の周りに配置される2つ以上のセクタ(240)へ分割されていること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項9】
請求項8に記載の荷電粒子レンズにおいて、
少なくとも1つのシャント装置(30)は、前記少なくとも2つの副要素の夫々2つの間に配置されていること
を特徴とする、荷電粒子レンズ。
【請求項10】
請求項1~9の何れかに記載の荷電粒子レンズと、
前記縦軸(cx)に沿って前記ビーム通路(11)内へ挿入されたスリーブインサート部材(50)と
を含む、電磁レンズであって、
前記スリーブインサート部材(50)は、前記荷電粒子レンズのビーム通路(11)の半径(r2)よりも小さい半径(r3)を有するビーム通路(55)を包囲し、縦軸(c3)に沿って延在すること、
前記スリーブインサート部材(50)は、少なくとも部分的に導電性の部分(51a)を有するマウントボディ(51)と、少なくとも1つの導電性の電極要素(52a、53a、52b、53b)を含むこと、
前記少なくとも1つの電極要素は、前記ビーム通路内に静電界(65)を生成するために、導電性の部分(51a)の電気ポテンシャルに対する電気ポテンシャルが電源(70)を介して印加されるよう構成されていること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項11】
請求項10に記載の電磁レンズにおいて、
前記スリーブインサート部材(50)の縦軸(c3)は前記荷電粒子レンズの縦軸(cx)と一致すること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項12】
請求項10に記載の電磁レンズにおいて、
前記電極要素は、前記少なくとも2つのギャップ(290、291)の少なくとも1つにおいて、前記ビーム通路(55)内の磁界(61)と共に粒子光学レンズを形成するよう、構成されていること、
荷電粒子光学レンズの焦点距離は、前記電極要素に印加される電気ポテンシャルを修正することによって調節可能であること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項13】
請求項10に記載の電磁レンズにおいて、
前記インナーヨークシェル(250)は前記縦軸(c3)に沿って延在し、前記スリーブインサート部材(50)を周方向において包囲すること、
前記磁気回路の前記少なくとも2つのギャップ(290、291)は前記インナーヨークシェルの何れかの軸方向端部に配されており、各ギャップは、内方に向かって前記ビーム通路(11、55)の空間内に到達する、定義された磁界(61)を生成し、前記スリーブインサート部材の複数の電極要素(52a、53a、52b、53b)の少なくとも1つによって生成される前記静電界(65)は前記磁界と少なくとも部分的に重なるよう構成されていること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項14】
請求項10に記載の電磁レンズにおいて、
複数の電極要素の少なくとも1つは静電マルチポール電極(53)を含み、該静電マルチポール電極(53)は周方向に沿って前記縦軸(c3)の周りに均一に配置された複数の副電極(530)を含み、該複数の副電極は、各副電極に個別にポテンシャルを供給するマルチチャンネル電源ユニット(723)に接続可能であること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項15】
請求項10に記載の電磁レンズにおいて、
複数の電極要素は、前記縦軸(c3)の周りに定義された半径(r4)を有する制限開口(540)を形成するビームアパーチャ要素(54)を含むこと、
前記制限開口は、前記縦軸に沿って伝搬する荷電粒子ビーム(100)の横幅を制限するよう、構成されていること、及び、
前記ビームアパーチャ要素は、前記ビームアパーチャ要素において吸収される荷電粒子ビームの量を測定するよう構成された電流測定装置(71)に接続されていること
を特徴とする、電磁レンズ。
【請求項16】
請求項1~9の何れかに記載の荷電粒子レンズを含む荷電粒子光学装置であって、
前記装置は、前記レンズの縦軸(cx)に沿って前記レンズを通って伝搬する前記装置の荷電粒子ビーム(50;e、f)に影響を及ぼすよう構成されていること、
前記レンズは、前記装置の粒子光学システム(3、5)の部分であること
を特徴とする、荷電粒子光学装置。
【請求項17】
請求項16に記載の荷電粒子光学装置において、
前記装置は、複数の粒子光学カラムを含むマルチカラムシステム(40)として構成されていること、
各カラムは、夫々の粒子ビームを使用するよう構成されており、かつ、荷電粒子レンズ又は電磁レンズの夫々の構成を含む夫々の粒子光学システムを含むこと
を特徴とする、荷電粒子光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2022年5月9日に出願された欧州特許出願第22172309.1号についてのパリ条約上の優先権の利益を主張するものであり、当該出願の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【0002】
本発明は、ナノパターン形成を含むリソグラフィ描画等の処理目的のために使用されるよう設計された荷電粒子光学装置の荷電粒子ビームを修正するよう構成された永久磁石を含む荷電粒子レンズに関する。そのようなレンズは、荷電粒子ビーム自身の伝搬方向に対応する縦軸に沿った荷電粒子ビームのための通路を備え、かつ、通常は、当該レンズが使用される荷電粒子光学装置の光軸と同心に(concentrically)整列されることになる。
【0003】
本発明は、更に、荷電粒子レンズを含む電磁レンズ、並びに、前記のタイプのレンズを含む荷電粒子光学装置に関する。
【背景技術】
【0004】
本出願人は、1つ以上の上記のタイプのレンズを組み込み可能な荷電粒子マルチビーム装置を実現し、かつ、同時に複数の荷電粒子ビームについて適切な、対応する荷電粒子光学要素、パターン規定装置、及び描画方法を開発した;eMET(electron Mask Exposure Tool:電子マスク露光ツール)又はMBMW(multi-beam mask writer:マルチビームマスク描画機)と称される50keV電子マルチビーム描画機が製品化されており、これは、193nm液浸リソグラフィのための任意のフォトマスク、EUVリソグラフィのためのマスク及びナノインプリントリソグラフィのためのテンプレートを実現するために使用される。本出願人のシステムは、基板に対し直接的に適用される電子ビーム直接描画機(EBDW)のために使用される、PML2(Projection Mask-Less Lithography:投影マスクレスリソグラフィ)とも称されている。
【0005】
とりわけマスクレスリソグラフィ及び基板(例えばウェハ)の直接描画について、工業的な大量生産においてスループットを向上するために、荷電粒子ナノパターン形成装置を通過する荷電粒子ビームによって伝えられる電流を増大する必要がある;これは、通常、荷電粒子間のクーロン力の相互作用による解像度の制限という代償を払うものであり、他の機構を介する装置によって導入される光学収差の大きさの減少による対応する補償を必要とすることになる。このために、本出願人は、マルチカラム法と組み合わされた複数の並列光学カラムを含む荷電粒子マルチビーム装置を開発した。なお、各カラムは、eMETのようなより早期の描画機構成と比べて、減少された(「スリム」)断面直径を有する。
【0006】
そのようなマルチカラム装置(一例は以下において図15を参照して議論される)は、荷電粒子ビームによって著しくより大きな電流を可能にする一方で、シングルカラムシステムにおいて見られる電流と光学収差の間のトレードオフによる制限を克服する。これは、ターゲットへ供給される全電流が複数の光軸へと分割される一方で、解像度の制限は光軸当たりの電流の大きさによって支配されるという事実に基づく。このタイプのシングルカラムは、本出願人のUS6,768,125、EP2 187 427 A1(=US8,222,621)及びEP2 363 875 A1(=US8,378,320)のような、従来技術において周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US6,768,125
【特許文献2】EP2 187 427 A1
【特許文献3】US8,222,621
【特許文献4】EP2 363 875 A1
【特許文献5】US8,378,320
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
典型的なマルチカラムシステムは複数の光学サブカラムを含み、各サブカラムは、幅広でテレセントリックな荷電粒子ビームをパターン規定(画定)システムへ、次いで、荷電粒子投射光学系へと供給する照射システムを含み、荷電粒子投射光学系は例えば多数の静電、磁気及び/又は電磁レンズを含む。
【0009】
ハイスループットウェハ直接描画機のようなそのようなシステムを使用するために、1つの半導体ウェハの上方に相当な数のカラムを、例えば100のオーダーのカラムで、配置することが必要になろう。しかしながら、この構成は、各カラムの半径方向の寸法をウェハ全体の幅のほんの何分の一の直径に制限する;例えば典型的な300mm(12”(インチ))ウェハの場合、凡そ30mmの直径が使用され得る。他方、スリム径磁気レンズはコイル式磁気レンズによっては実現できない。なぜなら、カラム径の減少は、十分に強い磁界を生成するようコイル(複数)を駆動するために必要な大きな電流に基づく極めて大きなジュール熱発生に対応することになろうからである。しかしながら、従来のコイル式磁気レンズのために必要とされるであろう高精度センサ(複数)及び等方均一冷却装置を含む適切な温度制御システムための空間は不十分である。
【0010】
熱関連のかつ幾何学的(空間的)要求によってもたらされる上記の制限は厳しいが、本発明のあり得る形態のような、磁束を導き、従って磁界を生成するための透磁ヨークと一緒に、永久磁石に基づく磁気レンズを採用することによって克服可能ではある。しかしながら、そのような永久磁石は、製造及び組立の完了後は、あまり調整(チューニング)することができず、従って、磁気レンズにおけるそれらの使用は限定される。このことは、コイルを流れる電流を調節することによってその磁界が制御可能なコイル式磁気レンズに対する深刻な欠点を表す。とりわけ、製造及び組立に基づく目標とされた磁界(目標磁界)の精度に対する本来的な制限を考えると、磁石製造業者の正確性は、そのような磁石を含む磁気レンズの動作目的のために極めて重要である;現在の精度の制限は目標磁界に対し凡そ1%~5%のズレに相当する;磁界の強さは1Tのオーダーである。
【0011】
上記のズレは、製造の公差及び統計的不確実性に起因するが、これらは、大量生産について磁気レンズの合理的生産量を有する製造プロセスにとって事実上回避不能である。本発明は、上記レンズの組立(製造)中に磁界の調整(チューニング)を許容する付加的コンポーネントを含むことによって、これらのズレを補償するための新たなアプローチを提供する。本発明は、磁気レンズにおける使用のための永久磁石の製造における(非現実的な)精度の負担(制約)を除去し、高精度システムのために使用可能な永久磁石材料の使用範囲を実質的に増大する。というのは、本出願人の発明は所望の公称(定格)磁界強度からの実際の永久磁石(磁界強度)のズレを補償することができ、及び、システムの幾何学的パラメータが依然として仕様の範囲内にある限り、より大きいズレさえも許容できるからである。
【0012】
インサイチュで(in-situ)、即ち当該装置の運転中に、永久磁石に基づく荷電粒子レンズの調整(チューニング)は、典型的には、それらを1つ以上の付加的電気レンズと組み合わせて使用すること;即ち、永久磁石に基づく磁気レンズと微調節のための静電要素の組み合わせのような、荷電粒子電磁レンズを形成することによって、行われる。US9,165,745は、微調節のためのコイル型磁気レンズと組み合わせた永久磁石型電磁レンズを記載している。これは、磁界を調整(チューニング)することが可能であるが、本発明の複数の形態のうちの少なくとも幾つかにとって適切ではない上記の発熱(加熱)及び幾何学(空間)の問題を少なくとも有する。更に、上記の従来技術の磁気レンズの磁界は荷電粒子レンズ自体の空間への制限(閉じ込め)が不十分であるが、これは、マルチカラムシステムにおいて多数のレンズが並置されている場合に深刻な交差効果(cross-effects)を引き起こす。
【0013】
上記の観点から、本発明の目的ないし課題は、永久磁石を含むが、レンズの光学的性質を高精度で調節可能な荷電粒子レンズを提供することである。同時に、このレンズ構成において使用可能な永久磁石の範囲を大きくすることが望まれる。更に、本発明のレンズは、スリム形状を有し、かつ、レンズ自体の直近(領域)内部における磁界及び電界の制限(閉じ込め)を可能にし;かくして、クロストークが低減されたマルチカラム光学系を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の視点により、荷電粒子光学システムの荷電粒子ビームを修正するよう構成された荷電粒子レンズであって、主として縦軸に沿って延伸しかつ荷電粒子ビームの通過を可能にするビーム通路を備えたレンズが提供される。
前記レンズは、
・少なくとも1つの永久磁石、
・ヨークボディ、及び
・少なくとも1つのシャント装置
を含む磁気回路アセンブリを含むこと、
前記ヨークボディは少なくとも2つのヨーク要素から構成されており、前記少なくとも2つのヨーク要素のうち、第1ヨーク要素は前記ビーム通路(通路空間)を包囲するよう配置されたインナーヨークシェルを構成し、第2ヨーク要素は前記インナーヨークシェルを包囲するよう配置されたアウターヨークシェルを構成し、前記少なくとも2つのヨーク要素は前記縦軸の周囲に配置されており、かつ、高透磁性材料を含むこと;
前記少なくとも1つの永久磁石は前記少なくとも2つのヨーク要素の間にかつ前記インナーヨークシェルの周囲に配置されており、前記少なくとも1つの永久磁石は、その2つの磁極が夫々のヨーク要素へ向けて磁気的に配向されている永久磁石材料を含むこと;
前記磁気回路アセンブリにおいて、前記少なくとも1つの永久磁石と前記ヨークボディは閉磁気回路を形成するが、異なるヨーク要素の対応する軸方向面間に形成される少なくとも2つのギャップを有し、前記少なくとも1つの永久磁石から到来する磁束密度を前記ヨークボディを通して導くよう構成され、かつ、前記少なくとも2つのギャップに、内方に向かって前記ビーム通路内に到達する磁界を誘導すること、及び
前記少なくとも1つのシャント装置は、少なくとも1つの透磁性シャント要素を含み、かつ、前記ヨークボディの前記少なくとも2つの要素間の定義された位置に配置されており、前記少なくとも1つのシャント装置は、前記磁束の定義された(所定の)部分が前記磁気回路アセンブリの少なくとも一部分をバイパスすることを可能にすること
を特徴とする(形態1)。
本発明の第2の視点により、本発明の荷電粒子レンズと、前記縦軸に沿って前記ビーム通路(通路空間)内へ挿入(挿設)されたスリーブインサート部材とを含む、電磁レンズが提供される。前記電磁レンズにおいて、
前記スリーブインサート部材は、前記荷電粒子レンズのビーム通路の半径よりも小さい半径を有するビーム通路を包囲し、縦軸に沿って延在すること、
前記スリーブインサート部材は、少なくとも部分的に導電性の部分を有する(導電性である)マウントボディと、少なくとも1つの導電性の電極要素を含むこと、
前記少なくとも1つの(導電性の)電極要素は、前記ビーム通路内に静電界を生成するために、導電性の部分の電気ポテンシャルに対する(を基準とする)電気ポテンシャルが電源を介して印加されるよう構成されていること
を特徴とする(形態10)。
本発明の第3の視点により、本発明の荷電粒子レンズ(又は本発明の電磁レンズ)を含む荷電粒子光学装置が提供される。前記荷電粒子光学装置は、
前記レンズの縦軸に沿って前記レンズを通って伝搬する前記装置の荷電粒子ビームに影響を及ぼすよう構成されていること、
前記レンズは、前記装置の粒子光学システムの部分であること
を特徴とする(形態16)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(形態1)上記本発明の第1の視点参照。
(形態2)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記荷電粒子レンズは、前記縦軸に沿って全体的に回転対称的な形状を有すること、
前記磁気回路アセンブリの構成要素、即ち、
・少なくとも1つの永久磁石、
・ヨークボディ、及び
・少なくとも1つのシャント装置
は前記縦軸と同心(コアキシャル)に配置されており、好ましくは中空シリンダに対応する基本形状又は中空多角柱形状を有することが好ましい。
(形態3)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素は、前記縦軸に沿って積重ねられた(上下に配置された)2つ以上の層及び/又は前記縦軸の周りに配置された1つ以上のセクタから構成されていることが好ましい。
(形態4)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素は、透磁性材料からなる2つ以上のセクタ要素から構成されており、前記2つ以上のセクタ要素は前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に(方位に)配置されていること、
前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、他のセクタ要素の透磁性材料の透磁率とは異なる透磁率を有する透磁性材料を含み、かくして、(前記)磁気レンズが異なってアジマス(ないし方位)的に(アジマス(ないし方位)に応じて)変化する磁束密度を、従って前記縦軸の周りでアジマス(ないし方位)的に(アジマス(ないし方位)に応じて)変化する磁界を有することを可能にすることが好ましい。
(形態5)形態4に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は、前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置された少なくとも2つの副要素から構成されていること、
前記シャント装置(複数)の少なくとも1つ又は前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの永久磁石副要素の夫々2つの間に配置されていることが好ましい。
(形態6)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記第2ヨーク要素は、前記レンズアセンブリのハウジングボディを構成すること、該ハウジングボディは、他の全てのヨーク要素を含む(前記)レンズアセンブリの他の要素を包囲する(取り囲む)ことが好ましい。
(形態7)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は実質的に半径方向に配向された磁化を有すること、
前記少なくとも1つのシャント装置は、少なくとも前記実質的に半径方向に配向された磁化に対し平行な方向に沿って高透磁率の材料を含むことが好ましい。
(形態8)形態1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は、少なくとも2つの副要素から構成されていること、即ち、
・縦軸に沿って積重ねられた2つ以上の層に従ってセグメント化されていること;
及び/又は
・縦軸の周りに配置される2つ以上のセクタへ分割されていることが好ましい。
(形態9)形態8に記載の荷電粒子レンズにおいて、
少なくとも1つのシャント装置は、前記少なくとも2つの副要素の夫々2つの間に配置されていることが好ましい。
(形態10)上記本発明の第2の視点参照。
(形態11)形態10に記載の電磁レンズにおいて、
前記スリーブインサート部材の縦軸は前記荷電粒子レンズの縦軸と一致する(重なる)ことが好ましい。
(形態12)形態10に記載の電磁レンズにおいて、
前記(少なくとも1つの)電極要素は、前記少なくとも2つのギャップの少なくとも1つにおいて、前記ビーム通路内の磁界と共に(in conjunction with)粒子光学レンズを形成するよう、構成されていること、
(前記)荷電粒子光学レンズの焦点距離は、前記電極要素に印加される電気ポテンシャルを修正(変化)することによって調節可能であることが好ましい。
(形態13)形態10に記載の電磁レンズにおいて、
前記インナーヨークシェルは前記縦軸に沿って延在し、前記スリーブインサート部材を周方向において包囲すること、
前記磁気回路の前記少なくとも2つのギャップは(夫々)前記インナーヨークシェルの何れかの軸方向端部に配されており、各ギャップは、内方に向かって前記ビーム通路の空間内に到達する、定義された(所定の)磁界を生成し、前記スリーブインサート部材の複数の(前記少なくとも1つの)電極要素の少なくとも1つによって生成される前記静電界は前記磁界と少なくとも部分的に重なるよう構成されていることが好ましい。
(形態14)形態10に記載の電磁レンズにおいて、
複数の(前記少なくとも1つの)電極要素の少なくとも1つは静電マルチポール電極を含み、該静電マルチポール電極は周方向に沿って前記縦軸の周りに均一に(一定間隔で)配置された複数の副電極を含み、該複数の副電極は、各副電極に個別にポテンシャルを供給するマルチチャンネル電源ユニットに接続可能であることが好ましい。
(形態15)形態10に記載の電磁レンズにおいて、
複数の(前記少なくとも1つの)電極要素は、前記縦軸の周りに定義された(所定の)半径を有する制限開口を形成するビームアパーチャ要素を含むこと、
前記制限開口は、前記縦軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームの横幅を制限するよう、構成されていること、及び、
前記ビームアパーチャ要素は、前記ビームアパーチャ要素において吸収される荷電粒子ビームの量を測定するよう構成された電流測定装置に接続されていることが好ましい。
(形態16)上記本発明の第3の視点参照。
(形態17)形態16に記載の荷電粒子光学装置において、
前記装置は、複数の粒子光学カラムを含むマルチカラムシステムとして構成されていること、
各カラムは、夫々の粒子ビームを使用するよう構成されており、かつ、荷電粒子レンズ又は電磁レンズの夫々の構成(instance)を含む夫々の粒子光学システムを含むことが好ましい。
【0016】
上記の目的は、荷電粒子光学装置の荷電粒子ビームを修正する(例えば成形する、合焦(focus)/脱焦(defocus)する、又はその他の操作をする)よう構成されたレンズによって達成される。該レンズは主として縦軸に沿って延伸しかつ該荷電粒子ビームの通過を可能にするビーム通路を備え、更に、該レンズは、少なくとも1つの永久磁石、高透磁率の少なくとも2つの要素から構成されるヨークボディ、及び、少なくとも1つのシャント装置((磁束)分路装置)を含む磁気回路アセンブリを含む。
【0017】
ヨークボディは、ビーム通路を包囲するよう配置され、インナーヨークシェルを構成可能な第1ヨーク要素と、インナーヨークシェルを包囲するよう配置され、アウターヨークシェルを構成可能な第2ヨーク要素を含む(ここで、用語「インナー」及び「アウター」はレンズアセンブリ内部及び中心軸における夫々の相対的位置に関する);これらのヨーク要素は縦軸の周囲に配置されており、かつ、強磁性体又は強磁性材料のような高透磁性材料から適切に作られる。
【0018】
少なくとも1つの永久磁石は、少なくとも2つのヨーク要素の間に、即ちインナーヨークシェルの周囲にかつアウターヨークシェルの内部に配置され、かつ、その2つの磁極が主として夫々のヨーク要素へ向けて磁気的に配向されている永久磁石材料を含む。
【0019】
永久磁石とヨークボディは閉磁気回路を形成するが、異なるヨーク要素の対応する面間に形成されビーム通路に開口する(例えば軸方向端部の各々において、インナーヨークシェルの(軸方向端)面と当該面に夫々対応するアウターヨークシェルの面の間に位置付けられる)少なくとも2つのギャップを有する;従って、磁気回路は、永久磁石によって生じる磁束をヨークボディを通して導き、ビーム通路内にも到達する磁界をギャップ(複数)に誘導する。縦軸に沿ってビーム通路内で伝搬する荷電粒子ビームのための磁気レンズを形成するために使用されるのは、ギャップ(複数)からのこの磁界である。当該磁気レンズの形成は、典型的には、目標値の上下の1%~5%の範囲内の磁界精度を達成する。
【0020】
(少なくとも1つの)シャント装置は、これは高磁性材料を含むが、ヨークボディの要素(複数)間の定義された(所定の)位置に、例えば上記の2つのヨーク要素の間の適切な部位に、配置され、そこで、磁束の定義された(所定の)部分をギャップ(複数)から離れるようバイパスさせることができる。これにより、ギャップに到達しかつ荷電粒子ビーム通路の内部に磁気レンズ効果を生成する磁界を減少することができる。そのようなシャント化レンズの精度は、磁界の所望値に対し0.1%~0.5%の範囲内であり得、そのため、シャント装置を備えない同じ磁気レンズの性能と比べて、ほぼ一桁より大きい効率で、即ち設計光学特性、例えば焦点距離、により近い、磁気レンズの形成をもたらす。予期したよりもより大きい磁化へのズレはギャップ内の磁束をある程度減じることによって補償できる(即ち磁化の上限側では磁化の精度に対する要求は緩い)一方で、該シャント装置は磁束を増大することはできず、従って、(磁化の精度に対する要求が厳しい)磁化の下限側では(磁気回路の構成要素の)製造歩留まり(manufacturing yield)を制限することになる。
【0021】
本発明の基礎をなす技術的解決策において、ヨーク要素(複数)と少なくとも1つの永久磁石は、一緒に、ビーム通路のそばに位置付けられる少なくとも2つのギャップを有する、任意的に3つ以上のギャップも有し得る閉磁気回路を形成する;というのは、これらのギャップは、定義された(定められた)磁束密度、従ってビーム通路内へ到達する磁界を誘導するために役立ち、磁気レンズとして作用するからである。少なくとも1つのシャント装置は(磁気回路において、図6参照)磁石及びギャップに対して平行にかつヨーク要素(複数)の部分(複数)で形成される少なくとも磁気リラクタンスと直列に配置されることが望まれる。それ(該装置)は、各レンズの設計値(複数)からの磁界(複数)のズレを減少するよう設計(構成)された位置において保持される。シャント装置は、透磁性材料からなる、シャント要素を含み、かつ、レンズアセンブリ内の定義された位置においてシャント要素を支持及び安定化しようとするホルダと関連付けられる。それ(該装置)は、ヨーク要素間の空間に、好ましくはシャントされるべきレンズの少なくとも1つの永久磁石の付近に(隣接して)、取り付けられる。
【0022】
更に、好適な形態(複数)では、少なくとも1つのシャント要素は、有利には、透磁性材料からなる2つ以上のセクタ要素から構成され得、該2つ以上のセクタ要素は縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置され得る。セクタ要素(複数)は、異なる透磁性材料で具現化(構成)され得る;とりわけ、該2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、他のセクタ要素(複数)の透磁性材料の透磁率とは異なる透磁率を有する透磁性材料を含み得る。この変形形態は、磁気レンズが、アジマス座標に沿って(即ち異なる角度において)異なって(differentially)変化する磁束密度を有すること、従って、縦軸の周りでアジマス(方位)的に(アジマス(方位)に応じて)変化する(azimuthally varying)磁界を有することを可能にする。とりわけ、この構成は、磁気マルチポール(多重極)のように作用するよう構成される、上記のギャップの少なくとも1つにおいて縦軸の周りでアジマス(方位)的に(アジマス(方位)に応じて)変化する磁界を生成するために使用可能である。
【0023】
シャント要素及び/又はそのセクタ要素(複数)は、それらをヨーク要素間に配置可能にし、及び、磁気回路の磁束を計算値へと減じることを可能にする特定の形状及びサイズを有し得る;換言すれば、磁気回路内の磁束の幾らか(some)のためのバイパスを形成し、従って、レンズの磁界の幾らかを減じることによって、磁気回路アセンブリを調整(チューニング)するよう構成される。シャント要素の位置は磁束密度の局所的調整(チューニング)を可能にする;実際、非対称的な位置又は材料特性は、例えば装置を縦軸に沿ってシフトすることによる、磁気回路アセンブリの非対称性の打ち消し及び調整(チューニング)のために利用可能である。従って、所望の公称値からの強度及び部分的には更に方向におけるズレは減少可能である;かくして、初期設計に従うその特定の性質は達成され得るが、それでなければ、永久磁石の製造プロセス及びその内在的(immanent)公差に適合しないかもしれない。
【0024】
本発明は、上記のシャント装置を用いて磁束を調節することによって、荷電粒子レンズに組み込み可能な、現在製造されているような永久磁石の使用を可能にする。そのため、ギャップの位置におけるレンズ効果を定義する(定める)磁界は微調整される(fine-tuned)ことができる。従って、本発明は、永久磁石材料及び要素の製造の精度の制限(減少)をもたらすことを可能にし、その効果(影響)の制限に明確に役立つ。本発明は、漂遊磁界の減少ももたらす。
【0025】
更に、本発明に関し、以下に示すような、適切であれば組み合わせ可能な幾つかの任意的な発展形態が考えられる。
【0026】
例えば、1つのヨーク要素は、磁気回路の他の部分(部品)、他のヨーク要素(複数)、更には(少なくとも1つの)永久磁石及び(少なくとも1つの)シャント装置、を取り囲むレンズのハウジングボディ(筐体)を具現化(構成)し得る。一般的に、磁気回路の幾つかの部分(部品)は、レンズ、及び少なくとも1つの永久磁石及び/又は少なくとも1つのシャント装置、これらは全てインナーヨークシェルの周囲に配置されるが、のハウジングを構成するために使用され得、及び/又は、すべてのヨーク要素はレンズのハウジングボディの部分であり得る。
【0027】
セクタ化された(複数のセクタに分割された)要素(複数)の場合、少なくとも1つの永久磁石も、縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置された少なくとも2つの副要素から構成され得る。これは、セクタ(化)シャント要素(複数)のアジマス効果(作用)を増強するだけではなく、セクタ(化)シャント要素(複数)とセクタ(化)磁石(複数)との間の協働(cooperative)効果(作用)を招く(もたらす)ことになる。この相互作用を更に増強及び変調(調節)する(modulate)ために、上記永久磁石副要素(複数)の夫々2つの間に配置される1つ以上のシャント装置を有することは、更に有利であり得る;とりわけ、(1つの)シャント装置及び/又はその(1つの)セクタ要素は、関連する永久磁石副要素(複数)の(アジマス)位置間の(1つの)アジマス位置に配置され得る。
【0028】
1つ以上のシャント装置をその夫々の定義された位置において支持するために、ヨークボディの内部に適切なホルダ(複数)が設けられる。更に、(少なくとも1つの)シャント装置及び/又はその(少なくとも1つの)シャント要素は複合構造であり得る、例えば縦軸の周りに配置された1つ以上のセクタから構成され及び/又は縦軸に沿って積重ねられる2つ以上の層へとセグメント化され得る。上記副要素(セクタ、セグメント及び/又は層)も、磁束減少の局所的勾配を形成するために、様々な(varying)透磁性材料から形成されることができる。
【0029】
多くの典型的形態では、(少なくとも1つの)永久磁石は実質的に半径方向に配向された磁化を有し得る;対応する態様で、(少なくとも1つの)シャント装置は、実質的に半径方向に配向された好ましい磁化の軸線を有する高透磁率の材料を含み得る。ここで、「実質的に半径方向に(substantially radial)」という表現は、配向が、永久磁石又はシャント装置を通りヨーク要素に至る磁束が概ね半径方向に沿って流れる(相対的に内側のヨーク要素から相対的の外側のヨーク要素へ又はその逆方向へ流れる)よう、「動作上(実効的に)半径方向(operationally radial)」である場合を含むために使用されている。
【0030】
有利な一発展形態では、(少なくとも1つの)永久磁石及び/又は(少なくとも1つの)シャント要素は、縦軸に沿って積重ねられた2つ以上の層からも構成され得る;更に、(少なくとも1つの)永久磁石を縦軸の周りに周方向に沿って配置された3つ以上のセクタから具現化(構成)することも好適であり得、この場合、好ましくは、磁石セクタ(複数)は、縦軸についての(中心とするないし頂点とする)セクタ(複数)を形成する実質的に楔形要素である。両方の場合において、夫々2つの副要素、即ち層又はセクタ、の間には、1つ以上のシャント装置が配され得る。
【0031】
多くの実施形態では、少なくとも1つのシャント装置は、円形状又は楕円、卵形又はより一般的な形状(即ち一般的中空シリンダ又は中空多角柱)のような他の形状のリングであり得る;リング形状は、2つ以上(例えば4つ、6つ、8つ)の副要素、縦軸の周りに周方向に沿って配置されかつ当該形状を形成する複数のセクタからも構成され、及び/又は縦軸に沿った複数のセグメントからも構成され得る。ヨーク要素の内部のある空間のセクタのみを満たす、従って磁束を局所的に逸らす(進路変更させる)特定形状のシャント装置も、非対称性を調節するために使用され得る;当該装置は、構築されたシャント装置の変化する(varying)透磁率を可能にするよう複数の異なる材料からも構成され得る。シャント装置の回転対称性についての当該非対称性は、シャント装置による磁界の変化が縦軸の周りで変化する場合、レンズにおけるアセンブリ(複数)のような磁気マルチポール(多重極)を構成するためにも使用され得る。これの代わりに又はこれと組み合わせて、シャント装置(又は副要素の幾つか又は全て)は、縦軸に沿って積重ねられる2つ以上の層(セグメント)から構成され得る。
【0032】
本発明の更なる一視点は、本発明に応じた荷電粒子レンズと、縦軸に沿ってビーム通路内へ挿入されたスリーブインサート部材とを含む電磁レンズであって、該スリーブインサート部材がビーム通路開口のより小さい部分を包囲するが、縦軸に沿ってその両端間に延在する、電磁レンズに関し;好ましくは、少なくともヨーク要素のギャップと重なる。このスリーブインサート部材は少なくとも1つの導電性の電極要素を含み、該電極要素には、夫々の電気ポテンシャルが、そのビーム通路内に電界を生成するよう、電源を用いて印加可能である。有利には、電極要素は、通路開口内の(少なくとも1つの)ギャップにおける磁界との組み合わせで粒子光学レンズを形成するよう構成され得る。なお、当該粒子光学レンズの光学パラメータ、例えば焦点距離、は、電極要素へ印加される電気ポテンシャルを修正(変化)することによって一層更に調節可能である。
【0033】
好適な1つの幾何学的レイアウトによれば、ヨークボディは、上記ビーム通路の2つの軸方向端部の間に延在し、従って、それを形成し得る;とりわけ、第1要素、例えばインナーヨークシェルは、通路の中心部分の始めから終わりまで延在し得るが、両端部において第2要素、例えばアウターヨークシェルへ向かって上記ギャップを開いた状態に維持する。なお、該アウターヨークシェルはインナーヨークシェルを半径方向及び軸方向において取り囲み、好ましくはその両側に延在する;従って、ヨーク要素は、同心円状に入れ子状に配置された、2つの中空シリンダの幾何学的構造体(geometry)を形成し得る。従って、インナーヨークシェルは、スリーブインサート部材の少なくとも部分(複数)を包囲する;磁気回路のギャップ(複数)は、夫々、内方に向かって通路開口内に到達し、スリーブインサート部材の電極要素によって生成される電界と重なることになる磁界を誘導し、これにより、電磁レンズの形成が可能になる。そのような超微調整型電磁レンズは、設計(目標)特性に関し1ppm~5ppmの精度範囲にまで精度を高めることができる。例えば、そのような電磁レンズの焦点距離は、電極要素に印加される電気ポテンシャルを修正することによって、運転中に、即ち、荷電粒子ビームが通過している時間中に、調節可能である。
【0034】
多くの形態では、スリーブインサート部材は、電極(複数)が夫々限定された形状及び範囲を有する導電性コーティングとして具現化(構成)されるセラミック体を含み得る。
【0035】
電極要素は、しばしば、少なくとも1つの単レンズを形成するよう(機械的及び電気的に)構成され得る;更に、本発明の多くの形態では、電極要素(複数)の少なくとも1つは、縦軸の周りに周方向に沿って均一に(一定間隔で)配置される複数の副電極を含む静電マルチポール電極を含み得る。これにより、レンズは、当該電極要素(複数)を横断(縦断)する荷電粒子ビームを偏向又は成形することができるが、この要素の副電極に印加される電気ポテンシャルはマルチポール電界を形成するよう定義され得る。
【0036】
本発明のレンズの多くの形態では、とりわけレンズがパターン定義(画定)システム(PD)と関連付けて(接続されて)使用されることが意図される場合、電極要素(複数)の間に、縦軸の周りに定義された半径を有する制限開口を形成するビームアパーチャ要素が設けられ得るが、該制限開口は通路を通って伝搬する荷電粒子ビームの横幅を制限する。この制限開口は、パターン定義システムにおいて意図的に偏向された粒子を含む粒子を収集(回収)するために動作可能にされる、較正アパーチャとして使用され得る;粒子が荷電粒子ビームのターゲットに到達することを阻止することが意図されている。更に、例えばビームアパーチャ要素は電流測定装置に接続され得るが、該装置はビームアパーチャ要素において吸収される荷電粒子の量を測定するために使用され得る。そのようなビームアパーチャ要素の前方において、即ち上流側において、複数の異なる適切な静電ポテンシャルを副電極(複数)に印加すること、従ってアパーチャにわたって(across)ビームをスキャンすることによって、縦軸に関してビームの横断位置を決定するよう構成された静電マルチポール電極を有すると有利である。
【0037】
好ましくは、荷電粒子レンズは、上記縦軸に沿って全体的に回転対称な形状を有し得る。この場合、磁気回路アセンブリの要素(複数)は当該縦軸とコアキシャルに(同心に)配置され、好ましくは、中空シリンダに対応する基本形状又は中空多角柱形状を有する。
【0038】
US9,165,745に示されているような既知の磁気レンズとは異なり、本発明の電磁レンズは、ハウジングボディにおける複数の「エアギャップ」のみを除き完全に閉じた磁気ループ(閉回路)を有するが、これらは、光軸の所望の領域(複数)に磁界を配することを可能にし、そのため、荷電粒子マルチビームナノパターン形成(パターニング)装置において採用されるような電磁レンズのパフォーマンス(性能)に対し不利に作用する(アンペアの周回路の法則に従うシングルギャップシステムに存在する)漂遊磁界による影響を小さくする。従って、既述の従来技術のシステムに存在する漂遊磁界を最小化するためには、(少なくとも)2つのギャップを設けることは極めて有利である。尤も、ギャップの個数は、レンズの個別の適用に応じて、3つ又は4つ以上のようなより大きい数でもよいことは明らかであろう。
【0039】
少なくとも上記の理由(複数)のために、本発明及び(例えば基板の直接描画のための)マルチカラムマルチビーム荷電粒子パターン形成システムのような描画機ツールにおけるその適用は、集積回路のための高スループットの工業プロセスの発展に対し顕著なインパクトを与えることが期待される、磁気的要素、電気的要素及び較正要素のユニークな組み合わせを提供する。本発明は、描画機ツールの、とりわけマルチカラムマルチビームマスク描画機の制御のためのレイアウト、構築、微調整、更には超微調整をも顕著に容易にする。
【0040】
本発明の更なる一視点は、本発明に応じた荷電粒子レンズを含む(本発明に応じた電磁レンズを含む)荷電粒子光学装置に向けられており、その光軸に沿って該レンズを通って伝搬する当該装置の荷電粒子ビームに影響を及ぼすよう構成されているが、当該レンズは磁気レンズに適切な当該装置の粒子光学システムの部分である。とりわけ、本装置は、好ましくは、複数の荷電粒子光学カラムを含むマルチカラムシステムとして具現化(構成)され得る。但し、各カラムは夫々の粒子ビームを使用し、かつ、本発明の夫々のレンズを含む夫々の光学システムを含む。
【0041】
以下において、本発明を更に説明するために、図面に示されているような、例示的かつ非限定的な実施形態ないし実施例について議論する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の第1形態に応じた荷電粒子レンズの一例。ここで、(紙面左側の)(A)は荷電粒子レンズの縦断面図であり、(B)は中心軸の位置において(A)の縦座標の関数として測定された、シャント装置がない場合(破線)とある場合(実線)における、磁界の軸方向成分の大きさの一例をプロットしたものである。
図2図1(A)の磁気レンズをシャント((磁束)分路)するよう構成された、シャント要素及びホルダを含む、対称的なリング形状のシャント装置の一形態の一例;(A)は該装置の一部切断切開図であり、(B)は、シャント装置を図1(A)のレンズ内に取り付け可能にする仕方を説明する断面図である。
図3】複数の積み重ね層から構成されたシャント要素の一形態の一例。
図4】複数のセクタから構成されたシャント要素の一形態の一例。
図5】シャント要素が中心軸に関し非対称的な性質を有することを可能にする、変化する(異なる)透磁率の材料(複数)を含む複数のセクタから構成されたシャント要素の一形態の一例。
図6】本発明の夫々の形態に応じた模式的磁気回路図の3つの例;(A)と(B)は対称的にシャントされた(対称シャント化)磁気回路の例を示し、(C)は非対称的にシャントされた(非対称シャント化)磁気回路の例を示す。
図7】本発明の他の一形態に応じた荷電粒子レンズの一例。該レンズは、その縦座標に関し非対称的に配置されたシャント装置を有する。ここで、(紙面左側の)(A)は荷電粒子レンズの縦断面図であり、(B)は中心軸の位置において(A)の縦座標の関数として測定された、シャント装置がない場合(破線、62)、対称的シャント装置を有する場合(実線、61)及び非対称的シャント装置がある場合(点線、63)における、磁界の軸方向成分の大きさの一例をプロットしたものである。
図8】半径方向(ラジアル)磁化を有する複数のリング要素から構成された永久磁石の一形態の一例の斜視図(A)及び縦断面図(B)。
図9】永久磁石の幾つかの形態の各例の横断面図。これらのうち幾つか((B)から(D))はセクタ化されている(複数のセクタに分割されている)好ましい磁化のバリエーションである。
図10】スリーブインサート部材を含む本発明の更なる一形態に応じた荷電粒子レンズの一例。(紙面左側の)(A)は荷電粒子レンズとその内部にある電気的スリーブインサート部材の縦断面図であり、これは静電レンズシステムを構成する;(B)は中心軸の位置において(A)の縦座標の関数として測定された、当該シャントされた磁気レンズの磁界(実線)及び電界(破線)の軸方向成分の大きさの一例をプロットしたものである。
図11図10(A)のレンズの一形態におけるスリーブインサート部材に接続された電圧供給装置及びその要素の一例の模式的概観。
図12】8つの副電極を有するマルチポール電極の一例の横断面図。
図13】本発明の一形態の電磁レンズの一例のスリーブインサート部材の要素としての較正アパーチャ及び前置(上流側:preceding)マルチポールの拡大詳細図。
図14】本発明の荷電粒子レンズの一例が組み込まれたスリムカラム型描画機ツールの一例の縦断面図。
図15】本発明のレンズの複数の構成(具現化物:instances)が組み込まれたマルチカラム描画機ツールの一例。(A)は該マルチカラム描画機ツールの縦断面図;(B)は当該レンズを含みかつマルチレンズホルダ装置の一形態の一例を含む部分の詳細図である。
【実施例0043】
以下に与えられる本発明の例示的実施形態(実施例)(複数)の詳細な議論は本発明の基本的思想、具現化及び更なる有利な展開を開示する。本発明の特定の適用に好適であると認められるようなここで議論される実施形態(複数)の幾つか又は全てを任意に組み合わせることは当業者には明らかなはずである。この開示全体において、「有利な」、「例示的な」、「典型的な」、「好ましくは」又は「好ましい」のような用語は、本発明又はその一実施形態に特に好適である(但し不可欠ではない)要素又は寸法を表し、当業者によって好適であると認められる場合であれば、明示的に必須とされない限り、修正可能である。本発明は、本発明の説明の目的のために与えられかつ単に本発明の好適な具体化例(複数)を提示するに過ぎない以下において議論される例示的実施形態(複数)に限定されるものではないことは当然である。この開示の範囲内において、「上」又は「下」のような垂直方向に関する用語は、中心軸(ないし縦軸)に沿って下方に(「垂直に」)進行すると考えられる、電磁レンズを横断する粒子ビームの方向に関して理解されるべきものである。この縦軸は、一般的には、X方向及びY方向と交差するZ方向によって特定される(同視される)。
【0044】
荷電粒子レンズ
【0045】
図1(A)は本発明の第1形態に応じた荷電粒子レンズ10の一例を縦断面図で即ちその中心軸cxを通る断面に沿って示す。より良好な明確性のために、構成要素は寸法どおりには示されていない。本レンズは、図14の描画機ツール1又は図15のマルチカラム描画機ツール40のレンズ10を具現化するために使用され得(下記参照)、この場合、対物レンズとして使用されるが、例えば本出願人のUS9,443,699及びUS9,495,499に開示されているような、シングルカラム又はマルチカラムアーキテクチャを具現化し得る他の多くの粒子光学装置における使用に好適であることは明らかであろう。なお、これらの文献の開示は引用を以って本開示に組み込まれているものとする。
【0046】
荷電粒子レンズ10は、アセンブリを横断する荷電粒子ビーム100のためのビーム通路11と、磁気回路アセンブリ20とを含み、磁気回路アセンブリ20は、少なくとも1つの永久磁石210、211、少なくとも2つのギャップ290、291を有するヨークボディ25及びシャント装置30を含む。上記の磁石は、典型的には凡そ1Tの残留磁気と、
として記号で表される磁束とを有する、永久磁石材料から作製される;ヨークボディ25は2つのヨーク要素250、251を含み、これらのうち、アウターヨークシェル251はレンズのためのハウジングボディ12としても役立ち(機能し)、(両者は)高透磁性材料で作られる;ヨーク要素(複数)は2つの異なる軸方向位置に少なくとも2つのギャップ290、291を形成し、該ギャップにおいて、磁気回路アセンブリを通って流れる磁束はビーム通路11内に到達する磁界を誘導することになる;そして、最後に、シャント装置30は、高透磁性材料で作られる少なくとも1つのシャント要素31と、これらのヨーク要素間の空間においてシャント要素を位置付ける(位置決めする)よう構成された専用ホルダ32とを含む。シャント要素は、磁束
の定義された(所定の)部分である、フラックス(磁束)

のバイパスを可能にする。磁気レンズ効果の強さに依存して、荷電粒子ビーム100は上記ビーム通路11内にクロスオーバーxoも形成し得る、即ち、ビームは中心軸cxを横断しつつ最小横幅を達成する;点線は、(図14の描画機ツール1又は図15のマルチカラム描画機ツール40のような)例示的粒子ビーム露光システムに配された場合にレンズを通って伝搬する際の荷電粒子ビームの包絡線を象徴的に示す。
【0047】
典型的形態(複数)では、荷電粒子レンズ10は、以下のような例示的寸法:凡そ50mm~100mmの全高h1及び、典型的には全高h1より小さい、凡そ10mm~100mmの内部高h2を有し得る;これにより(アウターヨークシェルとも称される)最外ヨーク要素251がレンズアセンブリのためのハウジング及びシールドボディとして役立つ設計が可能になる。並びに、凡そ10mm~20mmの外半径r1を有し得る、これにより図15のマルチカラム描画機ツール40における配設が可能になる。及び、凡そ0.1mm~5mmの即ち荷電粒子ビーム通路を可能にするために十分広いアパーチャ半径r2を有し得る。更に、更なるインサート部材を許容し得る(以下の図10参照)。これらの磁石、ギャップ及びシャント装置は、典型的には、凡そ1mm~5mmの厚みを有し、ヨーク要素(複数)はほぼ同じ寸法の半径方向厚みを有し得る。該要素(複数)のサイズは夫々の適用及び荷電粒子装置にとって適切であるように選択されるが、図示の例では、幾何学的寸法は典型的には数ミリメートルのオーダーである。
【0048】
荷電粒子レンズ10は、通常、その中心軸cxが露光システムの光軸c5と一致するように(図14参照)、粒子ビーム露光システムに配置される;尤も、本発明の荷電粒子レンズの適用に依存して他の相対的配置も選択可能であることは、当業者であれば分かるはずである。
【0049】
磁気回路及びシャント装置
【0050】
本発明に応じ、磁気回路アセンブリ20及び対応する磁気レンズは、少なくとも1つのシャント装置30を含み、シャント装置30は、該アセンブリ内の専用ホルダ32(図2)に配されるシャント要素31を含む。シャント装置は、初期磁束
の定義された部分
がギャップ290、291をバイパスすることを可能にし、これらのギャップにおける磁束密度の減少を可能にする。(1つの)シャント要素は、高透磁性材料で作製され、典型的には、(シャント)装置の直近(近傍)におけるヨーク要素250、251の大きさと同じオーダーである。本発明に応じたシャント装置は、これらのギャップにおける磁界の減少を可能にする。その効果(結果)は、磁気レンズの中心軸cxに沿った磁界Bzの軸方向成分を示す図1(B)にプロットされている:実線61はシャントされた要素(レンズ)についてのものであり、破線62は寸法は同じであるがシャントされていないレンズについてのものである。これによれば、磁界強度の最大値の減少と共に、磁界がギャップの領域に制限されていることが認められるが、ここで、磁気レンズが形成される。従来の永久磁石レンズは、そのようなシステムに配設される永久磁石の製造範囲(条件)のために、目標磁界強度の1%~5%の範囲内の精度を達成することができる。本発明に応じたシャント装置を使用することによって、この範囲を、目標効果の0.1%~0.5%の範囲内の精度へと小さくすることができ、これにより、一桁だけより小さい所望磁界からのずれ、従って、顕著により良好なパフォーマンス(性能)が提供される。
【0051】
図2はシャント装置30の例示的形態の一例を示す。該シャント装置30はホルダ32に配置されたシャント要素31を含み得、シャント要素31及びホルダ32はリング形状の要素であり(図2(A)参照)、共通の中心軸c2を有し、該中心軸c2は好ましくはレンズアセンブリの中心軸cxと一致する。シャント装置は、典型的には、2つ以上の永久磁石210、211の直近かつヨーク要素250、251の間に配設される(図2(B)参照);なお、シャント装置は、その位置は寧ろカプセル化(密閉)されるため、レンズの組立中に配される必要があり得る;それにも拘らず、シャント装置は、適切な技術的解決策、例えば部分的な分解、が使用される場合、或いは、当該装置がレンズ内部の交換可能なモジュール(複数)で構成されている場合(以下参照)、最初の組立後に付加されることも可能である。
【0052】
図3図5を参照すると、本発明の幾つかの形態では、シャント装置30のシャント要素31は、例えば完全なレンズアセンブリの中心軸cxと一致する(重なる)ことができる共通の軸c2に沿って又はその周りに配置される複数の副要素330、340、350から構成され得る。これらの副要素は複数の層(レイヤ)330(図3)であり得、この場合、シャント要素31は積層体として構築される。或いは、これらの副要素は複数のセクタ340(図4)であり得、この場合、シャント要素は複合リング状要素として構築される。セクタ350~354は、異なる高透磁率を有する異なる材料から構成されることもあり得る(図5);これにより、変化する磁気抵抗を有するシャント要素、従って、組み立てられたシャント要素31において磁束密度の局所的変化が可能になる。シャント要素の透磁率のそのような変化は、そのような方位(アジマス)依存性を意図的に導入するために使用され得る当該磁気レンズアセンブリにおける磁気マルチポールと関連付けられ得る;これは、例えば、マルチポールのような特徴を与える永久磁石に対し対抗作用するために使用され得る。他方、領域(複数)が遥かにより小さい透磁率、例えば
を有するとすれば、シャント要素は「スパース(sparse)」として記載されることができる。一般的には、これらのセクタは、中心軸c2の周りに均一に分配(一定間隔で配置)される必要はない。
【0053】
磁気回路アセンブリは磁気回路図(図6(A)~(C))で表すことができるが、これらは、本発明の一般化された一ケース、即ち、レンズの各副要素(sub-component)が本質的に一定の性質、例えば要素厚み、磁気的性質(透磁率)を有する回転対称システムに対する見通しを与える。その場合、長さ
、主横断面
及び一定の透磁率
を有する或る要素(添字
)の磁気抵抗
は、
として計算することができる。ここで、
は真空の透磁率である。
【0054】
永久磁石は、一定の磁束
を導入し得るが、要素
を通る磁束

から導き出すことができる。ここで、
は磁束
が蒙ることになる全(磁気)抵抗である。
【0055】
更に、上記要素
内における磁界
は、これは磁束密度として定義されるが、
として計算され得る。ここで、材料が「真空」である場合、最終的には、上記の方程式(複数)を組み合わせ、真空
内における磁界
を与えることができる。
【0056】
従って、真空ギャップ290、291について、磁界の強さ
はアセンブリの全(磁気)抵抗
を増大することによって小さくされ得ることを導き出すことができるが、これがシャント装置30の目的である―しかしながら、この単純化された方程式を導き出すためになされる仮定及び単純化は精度(正確性)を制限するであろうが、寧ろ、依存関係の推定(estimate)を与えることに注意すべきである。
【0057】
可能なシャント方法の3つの例示的なケースが図示されているが、これに関し、本発明に応じた荷電粒子レンズの適用に依存して他の相対的配置も選択され得ることは当業者には明らかなはずである。図6(A)~(C)には、より良好な明確性及び可読性のために、磁気回路の構成要素は図1(A)の対応する構成要素についてのものと同じ図面参照符号で示されており(例えば、250及び251はヨーク要素を指す)、以下において、磁束
及び磁気抵抗
のような磁気的な量は図面参照符号を添字として使用して示されている。更に、ヨーク要素250及び251は、図6(A)~(C)の磁気回路では、夫々追加添字a~dで示された4つの部分(即ち250a~250d及び251a~251d)に分割されている;更に、真空ギャップ290、291は、ジグザグの抵抗の記号で表された磁気抵抗に対応する。
【0058】
図6(A)に示された例示的磁気回路20aは、ほぼ同じ初期磁束(即ち
及び
)を有する2つの永久磁石210、211と、ほぼ同じ横断面A及び透磁率μ(即ち
及び
)を有する2つのヨーク要素250、251、ほぼ同じサイズ(即ち
及び
この結果
が得られる)を有する2つのギャップ290、291及び磁気抵抗R31を有するシャント要素31を有する1つのシャント装置30を含む。シャント装置30は磁石間に対称的に配置されているが、ヨーク要素(複数)内における位置についても対称的であり、これによって、
及び同様に

並びに
及び
の値が与えられる。ここで、総和(summation;Σ)は
についてのものである。真空ギャップ290における磁界の推定値は
で得られる。ここで、
であり、主(primary)透磁率
、横断面
及び長さ
を有するシャント装置30の磁気抵抗
は、
として計算される。
【0059】
上記において、記号
は、凡そ2%又は5%等の許容量(tolerance)のような、所定の許容量の範囲内で等しいことを示すことが意図されている。
【0060】
多くの形態では、対称的なレンズアセンブリは特に重要である。半径方向に(放射状に)対称的な磁気レンズ構造の各磁界は軸方向成分と半径方向成分を含む、即ち、
である;これに関し、半径方向成分
は重要性は小さく、その結果、磁界(例えば
)の軸方向成分
がレンズ効果のために使用される。中心軸cxの位置における磁界の軸方向成分の強さ61が縦座標の関数として図1(B)に示されている(実線);軸方向磁界
のピーク値の典型的な値は、荷電粒子が電子である適用においては、0.1Tのオーダーである。既述のように、磁気回路は、(比較的)高い磁界強度を有するギャップ290、291に近い2つの領域を生成することになるが、これらは、ビーム通路11内に明確に定義された(well-defined)焦点距離(複数)及び光学収差(複数)を有する2つの続いて配された(consecutive)磁気レンズとして動作する。共通のヨークボディ25を介した2つのレンズの磁気的結合は他の任意の領域における漂遊磁界の効果を強く低減するが、その他の点では、従来のレイアウトの粒子レンズにおける永久磁石(の作用)と必然的に関連付けられるであろう。
【0061】
他の例示的一形態では、図6(B)に示されているように、磁気回路20bは、1つの永久磁石210と、2つのヨーク要素250、251と、2つのギャップ290、291と、2つのシャント要素31a、31bを含む2つのシャント装置とを含む。各シャント要素31a、31bの(磁気)抵抗は、この場合も、
として計算することができる(xはa又はbを表す)。そして、このアセンブリは、この場合も、
及び、更には、

並びに、最後に
及び
であれば、対称的であることが可能である。ここで、総和(summation;Σ)は
についてのものである;これに対し、例えばシャント装置(要素)の(磁気)抵抗(複数)が等しくない場合、即ち
の場合、非対称的である。そして、ギャップ290、219における磁界がシャント装置によって対称的に減じられない場合、非対称的にシャントされた(非対称シャント化)レンズが得られることになる(以下参照)。
【0062】
更に、図6(C)に示されている他の例示的一形態では、そのような非対称的効果は非対称的永久磁石、即ち
の調整のために使用され得る。例えば、少なくとも1つのシャント装置30は、主として
(即ちギャップ290を通る磁束)について
のバイパスを可能にするが、
(即ち他のギャップ291の磁束)に対しては限定的な影響を及ぼす回路の位置において磁気回路アセンブリ20cに配設され得る。
【0063】
本発明の幾つかの形態では、磁気レンズの縦方向の対称性に関しシャント装置の非対称的位置(図7(A)参照)を有することは有用であり得る。非対称的なシャントレイアウトの利点について、図6(C)の回路図20cを用いて説明する。シャント装置30は、レンズの縦方向の対称性に関し対称的な位置に配置されず、少なくとも2つのギャップの一方の近くに(例えばギャップ290の近くに)配置される1つのシャント要素31を含む。この場合、シャント(作用)は、当該ギャップ290における磁界強度のより大きい減少をもたらすことになる。このことは、更に、その効果(結果)を図7(A)の磁気レンズ装置の中心軸cxに沿った磁界の軸方向成分として示す図7(B)のグラフに示されている;即ち、実線61は(図1(B)に相当する)対称的にシャントされた(対称シャント化)レンズについてのものであり、破線62は寸法は同じであるがシャントされていない(非シャント化)レンズについてものであり、点線63は本発明のこの形態の非対称シャント化レンズについてのものである。磁界強度の減少は、シャント装置のより近くにあるギャップにおいてより大きく、また、他方のギャップにおいても磁界は減じられているが、その程度はより小さいことが理解できる。この非対称的シャント(作用)は、シャント(作用)を目的とされた(意図された)ギャップ290に局在(局所)化する効果を誘導する(引き起こす)ために、及び/又は、例えば上側磁石210がより大きい磁化、即ち目標値からの遥かに大きなズレを有し、その結果、上側ギャップ290が本発明に応じたシャント(作用)によって補正されないとした場合に意図されたものよりもより大きい磁界を生成する場合に、使用される永久磁石(複数)の予期せぬ固有の非対称性に対し対抗作用するために、利用可能である。
【0064】
マルチプル永久磁石210、211は多くの好適な形態において使用され得る。例えば、これらは、好ましくは、システムの縦軸に沿って積み重なる(上下に並ぶ)状態で配置され得るが、この場合、これらの形態の幾つかでは、幾つかのホルダ装置上のマルチプルシャント装置30が使用され得、当該装置(複数)はレンズの縦軸に沿ってマルチプル永久磁石(複数)の間の位置に配置され得る(図1(A)、図10(A))。
【0065】
永久磁石
【0066】
永久磁石210、211は、磁気回路アセンブリ20において具現化される磁気回路における磁束Φのソース(磁束源)として機能する。
【0067】
図8は、(例えば図1(A)の永久磁石210、211の1つとしての)本発明に応じたレンズの磁気回路アセンブリの一構成要素としての使用に好適な永久磁石21の好ましい一形態を示す。磁石は、回転対称磁石に関し主半径方向磁化を有する。図8において、(A)は模式的斜視図であり、(B)は磁石21の縦軸c1に沿った模式的断面図である。
【0068】
多くの形態では、図9(A)~(D)を参照すると、そのような磁石は複数のセクタ部分から構成されることが有用であり得る。図9(A)~(D)は、夫々の模式的横断面図において正味のラジアル磁化を有するリング状磁石21の4つの例示的バリエーションを示す。なお、リング状磁石の構成要素(複数)は、より良好な明確性のために、図9(B)~(D)においては分解されて示されている。このラジアル磁化方向(複数)は、磁石の何れかの磁極から磁束を取り込み、該磁束をヨーク要素(複数)間のギャップ290、291の設計された(意図された)位置へ向けるヨーク要素(複数)の好ましい位置(複数)、即ちそのようなリング状磁石の内側及び外側、も与える(図1(A)参照)。磁石要素の各々は、図9(A)~(D)に破線の矢印で示されているように、当該主として半径方向に配向された磁化を有することになり、そのため、例えば、「北」極Nはリング状磁石の内部空間へ向かって形成され、他方、(リング状磁石の)外側は磁化の「南」極Sを有する。図示のようなラジアル磁化を有する永久磁石要素は市場で入手可能であり、焼結NdFeB、SmCo又はフェライトのような強磁性材料で作製される。図9(B)~(D)の複合磁石の磁石要素240、241、242は接着又は締付又はその他の適切な手段で結合される。各リング状磁石を形成する磁石要素の個数は、複合要素の寸法(とりわけ高さ及び半径)及び永久磁石21の所望の寸法に依存して任意の数、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、6つ又は7以上であり得る。
【0069】
更に、再び図8を参照すると、多くの形態では、永久磁石21は、リング形状の部品として具現化(構成)され、共通の縦軸c1に沿って積重ねられた複数の層のリング形状セグメント磁石220を含み得る。そのようなセグメント型磁石では、各層ないし各セグメントは、n層からなる磁石の全磁束
に対し一部分
を構成する。
【0070】
ハウジングボディ
【0071】
多くの形態では、ヨークボディ25はレンズ10のハウジング12としても機能する。ヨークボディは、インナーヨーク要素250とアウターヨーク要素251とから構成され、インナーヨーク要素は、アパーチャ半径r2と、少なくとも積重ねられた永久磁石及びシャント装置の高さを上回るために十分な長さh2とを有する中空シリンダとしてしばしばかつ典型的に具現化(構成)され;アウターヨーク要素251は、この場合、アパーチャ半径r2と、各ヨーク要素の厚み及び該ヨーク要素間に配設される磁石の厚みをカバーするために十分な幅の外半径r1とを有する高さh1のシリンダ状に対称的な形状を有するようにも具現化(構成)され得る。該アウターヨークは有利には両側(double)「コ字」型の縦断面(図1(A))を有し得る;換言すれば、アウターヨークは、インナーヨーク要素の中空シリンダとコンセントリック(同心)であり得る中空シリンダとして形成される中心ボディ部分を含み、更に、中央孔を有するディスク状形状の2つの終端部分を有する。そのため、ヨーク要素(複数)の中空空間は、縦軸cxに沿って半径r2及び高さh1のビーム通路11を包囲する。磁気回路のギャップ290、291は、インナーヨーク要素の軸方向外側端面(複数)と、アウターヨーク要素のこれらに対応する軸方向内側面(複数)との間に設けられるが、これらは、磁気回路20の夫々のポール(磁極)ピースを代表する。中空シリンダの半径方向厚みは、典型的には、但し一般性を失うことなく、数ミリメートルのオーダーであり、アセンブリの高さは数十ミリメートルのオーダーである。レンズのハウジングボディを形成するインナーヨーク要素及びアウターヨーク要素は、それらの形状のために、磁石によって生成される磁束を増強し、集束することができる。最も外側のヨーク要素は、空間的形状及び材料が半径r1と高さh1の寸法の範囲内に磁束を蓄積することになるため、半径方向及び軸方向における磁束に対するシールドとしても機能する。
【0072】
電気的インレー(インサート部材)
【0073】
図10に示されているような本発明の更なる一視点に応じ、荷電粒子レンズ10は、好都合には、光軸cxに沿ってビーム通路11内に挿入されるスリーブインサート部材ないしインレー50(図10(A))を含み得る。これに応じて、インレーの物理的寸法は、例えばレンズの半径r2及び高さh1以内のような、上記において議論した寸法に対して適切に選択される。インレーは、ビーム通路内のシャントされた磁界61(図10(B)の実線)に重なる調節可能な電界65(図10(B)の破線)を生成するよう採用される1つ又は幾つかの電気的活性(active)要素を含む、複数のビーム制御要素52~54を含み得る。電界の軸方向成分(即ち縦方向に沿った)Eの強さは、10V/mのオーダーのピーク値の典型的な値を有するであろう。
【0074】
インレーの多くの形態では、ビーム制御要素52~54は、一般的に、電気的活性要素として役立つ(機能する)リング形状の構成要素であり、中心軸c3に沿って積重ねるように配置され、それらの幾何学的軸はレンズの中心軸cxに対し同心かつ平行に配向される。本発明の多くの形態では、すべての制御要素は共通の内半径r2を有することが有用である;そのため、これらは、レンズを縦断しかつ荷電粒子レンズの運転中に荷電粒子ビーム100のためのチャンネルとして役立つ(機能する)通路孔55を定義する。更に、ビーム較正のためにより小さいアパーチャ(孔)54(以下参照)を挿入(導入)することも有用であり得る。
【0075】
図10(A)に示した形態では、ビーム制御要素(複数)は2つの単レンズ(Einzel lenses)と、2つのマルチポール電極53a、53b―すべて導電性材料で作られる―を具現化(構成)する。例えば、マルチポール電極の各々は、等しい弧長を有する複数のセクション、例えば、一般性を喪失することなく、4つ、6つ又は8つのセクション(図12参照)から構成される、複合金属リングとして具現化(構成)可能である;これらの(半径方向の)厚みは典型的には2mm未満であり、それらの長さは5mm~20mmである。更に、好ましくは、導電性リング形状アパーチャ54が2つのマルチポール電極53a、53bの間に配設される;この構成要素は、ここでは、「較正アパーチャ」と称される。電気的活性要素は、好ましくは、図11に示されているようなそれらの独自の電源ユニット722a、722b、723a、723bに接続され得るが、そのため、それらの電気ポテンシャルは個別に調節可能である;一バリエーションでは、電源(複数)は、個別供給電圧(複数)を提供する共通のマルチチャンネル電源装置70において組み合わせられ得る。較正アパーチャは、電源装置70又は別個の専用電気制御装置71によって制御され得る。最後に、電気的活性要素は、互いに対し電気的に分離されており、フィールド(電界)終端キャップ51aと称される要素によって両端において終端処理されるが、その電気ポテンシャルは「ローカルアース」即ち基準点を表す。フィールド終端キャップは、電界をインレーの通路空間に制限する(閉じ込める)ために役立つ(機能を有する);従って、フィールド終端キャップは、(他の粒子光学カラム400、図15参照、のような)周囲の構成要素に対するインレーの明確に定義された(定められた)「フィールド(電界)境界」を提供する。フィールド終端キャップと他の電気的構成要素との間のインレー取付ボディ51上のある空間は電気的に絶縁性であることも可能であり、これは、例えば、真空、又は、セラミックスのような非導電性の、好ましくは電圧耐性の、材料を用いるフィラー材料によって具現化(構成)される。
【0076】
本発明の多くの形態では、インレー50の種々の要素52~54は、中空シリンダ形状(例えば内半径r3、外半径r2及び高さh1)のマウントボディ51によって支持されかつ一緒に保持されるが、これは、一般的には、例えばセラミック又はプラスチックのような電気的絶縁材料で作製可能である;しかしながら、少なくとも荷電粒子ビームに面する部分51aは、帯電(チャージアップ)を回避するために、導電性材料で被覆(カバー)されかつ「ドレイン」に接続され得る。電極要素は、例えば、ボディ内において結合されかつ一緒に保持される個別のリング形状要素52a、52b、53a、53b、54として、又は、夫々限定された形状及び面積(領域)を有するよう、リングボディの内周面に形成される導電性コーティング(複数)51aとして具現化(構成)され得る。
【0077】
インレーによって、(永久磁石及びシャント装置の製造の精度で制限され、組立正確性の制限を受ける)光学特性、例えば荷電粒子レンズの焦点距離、の精度は、目標値の上下1ppm~5ppmの精度に到達可能である―従って、「超高精度」調整(チューニング)が可能である。本発明の幾つかの形態は、電界はレンズの使用中に分解なしでppm(百万分率)レジームの精度で調節及び制御可能である、即ち「インサイチュ・チューニング」可能であるので、例えば磁石の経時劣化(時効)効果に関する制限を克服するために使用可能な組込型修正手段も含み得る。更に、ビーム制御要素の電圧は、例えば収差、像面等のような光学的性質に関し、粒子ビーム露光装置1の性質を変化するために、システムの他の光学的及び電気的活性要素と組み合わせて調節されることが可能である。
【0078】
図12は、インレーのマルチポール電極の一例の横断面を示す。マルチポール電極は複数のロッド(ないし湾曲した帯状部材)530を含み、これらのロッド530は、それらの各自の外部電源ユニット70によって個別の電気ポテンシャルで制御可能である。更に、これらを付加的な静電レンズとして挙動(動作)させるために、グローバルオフセット電圧が印加され得る。個別のロッドに異なる電圧を印加することによって、光軸の夫々対応する横断部分(transversal section)で交差する粒子ビームを整形する目的で、二重極、四重極又はより高次の静電界の種々のフィールド(電界)構成を具現化することができる。図10の形態に照らした典型的適用に関し、ロッド(複数)に印加される電圧(複数)は、典型的には、数10ボルトまでのオーダーである。そのようなビーム整形は、磁気的不均一性、機械的製造及び/又は組立正確性(精度)のような、光学システムの不完全性に起因するエラーを補償するために使用可能である。これに関し、マルチポールは、二重極(ダイポール)として使用される場合、光軸c3に対するビーム位置を補正することができるが、X軸及びY軸(図12)によって定義される面におけるその方向(複数)は、少なくとも4つの異なる電圧即ち+V1(紙面の右側で(線状)ハッチングされたロッド)、-V1(紙面の左側で(線状)ハッチングされたロッド)、+V2(紙面の上側で(格子状)ハッチングされたロッド)及び-V2(紙面の下側で(格子状)ハッチングされたロッド)がこれらのロッドに印加されるのであれば、任意とすることができる。更に、マルチポールが四重極又はより高次の多極として使用される場合、二重極の場合と同様の仕方で個別ロッドに適切な電圧を印加することにより、当該マルチポールによって非点収差又は他のより高次の歪曲を補償することができる。
【0079】
なお、任意のマルチポール電極が、適用(対象)に依存して、(準)静的要素として又は動的、即ち時間変化する電圧を有する、要素としても使用可能であることに注意すべきである。ビーム制御要素の上記の使用は例示的な適用(複数)として記載されたものであり、本発明によって達成可能な機能に対する制限として記載されたものではないことは、当業者であれば分かるはずである。
【0080】
図11及び図13を参照すると、既述のように、本発明の幾つかの形態では、インレー50は、粒子ビーム120の逸れた部分を偏向させる(除去する)ためのストップ要素として作動し(機能し)、「較正アパーチャ(calibration aperture)」と称される受動要素54を含み得る。図13は較正アパーチャの一例の縦断面を拡大して詳細に示す。較正アパーチャは、軸c3に沿って半径r4を有するアパーチャである較正ボア541を包囲する本体540を含む。アパーチャは、該アパーチャの外側を進行するビームの部分120を吸収し、該アパーチャの内側のビーム部分110のみを通過させることによって、荷電粒子レンズを縦断するビーム100のサイズを限定(制限)する機能を有する。本発明の好ましい一形態では、前置される(上流側の)インレー要素(複数)の1つ、例えばマルチポール電極53aは、例えばダイポール電界(electric dipole field)を形成するマルチプル電極の選択された電極に印加される電圧を変化することによって、縦軸に対する、ビームの横方向位置を変化させることができる。マルチポールは、ビームアラインメントのためにも使用可能である。荷電粒子レンズ10は、有利には、較正アパーチャ54の縦方向における部位に、又はその近傍に(例えば10mm以下)、クロスオーバーcx[xo]を形成するよう、構成される。このため、ビーム径は該アパーチャ付近で最も小さい。
【0081】
本発明の多くの形態では、とりわけ、マルチビーム描画ツール、例えばシングルカラムツール1又はマルチカラムツール40(後者については下記参照)として使用される粒子ビーム装置において、荷電粒子ビームは、パターン規定(画定)システム4、43によって導入される、付加的な横方向の逸れを伴わずにe又は伴ってf(図14)、当該パターン規定システムを選択的に通り抜けることが可能な、複数のビームレットへ分割される。そのような逸れは、(所定の)ビームレット(複数)がターゲットに到達することを阻止するために、従って、個別の(discrete)描画パターンを規定(画成)するために、導入される。逸らされたビームレットは、較正ボア541を通り抜けるのではなく、較正ボア541の脇の(から外れた)、「較正アパーチャ」の本体540の領域に到達し、そこで吸収されることになる;ビーム120の吸収は、構成要素における帯電(electric charge-up)の発生を引き起こすであろうが、これは、例えば吸収されるビームの量のモニタリングを可能にする測定装置714への、ビームアパーチャの電気的接続によって、除去、即ち排出(drained off)され得る(図11)。
【0082】
リソグラフィ装置
【0083】
図14はシングルカラム描画機ツール1の一例の模式的縦断面図である。該ツールは、本発明のレンズの例示的一形態を含み;例えば当該ツールの対物レンズ10として本発明の一形態に応じた荷電粒子レンズを含んでいる。描画機ツールは、電子又はイオン(例えば正電荷のイオン)であり得る荷電粒子ビームを使用する。描画機ツール1は、マルチカラム荷電粒子光学系のための真空ハウジング480、マルチカラム荷電粒子光学系が取り付けられるベース部材470を含む。X-Yステージ460、例えばレーザ干渉計制御式エアベアリング真空ステージの上部には、ターゲット450が、好ましくはリソグラフィ目的のためのマスク又は直接描画機ツールの場合のシリコンウェハが、適切な操作システムを用いて取り付けられる。そして、ターゲットは、これは例えばレジスト層を含むが、描画機の荷電粒子ビームによって露光され得る。
【0084】
この形態のシングルカラム光学系は、好ましくは、中心軸c5と、荷電粒子源7を含む照明光学系3と、幅の広いテレセントリックな荷電粒子ビームibをパターン規定(画定)システム4へ供給するコンデンサ8(但しパターン規定システム4はビームを複数のアパーチャのみを通過させるよう適合化されており、該複数のアパーチャは当該アパーチャ(ビーム成形装置)を通り抜けるサブビーム(「ビームレット」)(複数)の形状を規定する)と、典型的には縮小を行い、更にはエネルギを与える荷電粒子投射光学系5(該投射光学系5は複数の続いて配設された荷電粒子レンズから構成され、該荷電粒子レンズは好ましくは静電及び/又は磁気レンズ(複数)を、場合によっては他の粒子光装置を含む)とを含む。図14に示した形態では、投射光学系は、例えば第1荷電粒子レンズ9、例えば静電液浸レンズを含み、他方、第2レンズ10は、これは第1レンズの下流に配置されるが、本発明の一形態に応じた荷電粒子レンズ(例えば図10(A))を用いて具現化(構成)される。該荷電粒子レンズ10の内部には、「較正アパーチャ」54が、象徴的に示されているように、具現化(構成)されている;上記のように、パターン規定装置4によって偏向されたビームの或る部分fは吸収され、他方、他の部分eは光学カラムを妨げられることなく縦断し、パターンをターゲット450に露光する。
【0085】
パターン規定装置4は、粒子ビームから、ターゲットに転写されるべきパターンの情報を含む複数のいわゆるビームレットを形成する機能を有する。パターン規定装置4及びその制御装置404の構造、運転及びデータ処理については、本出願人のUS9,443,699及びUS9,495,499に開示されているが、これらの文献の内容はこの引用を以って本開示に含まれているものとする。
【0086】
図15(A)及び(B)はマルチカラム描画機ツール40の一例を示す。該ツール40は、各カラムに、本発明のレンズの例示的一形態の各構成(具現化物:instance)を含む;例えば当該ツールにおける対物レンズとして本発明の一形態に応じた荷電粒子レンズを含む。描画機ツールは、電子又はイオン(例えば正電荷のイオン)であり得る複数の荷電粒子ビームを使用する。マルチカラム描画機ツール40の模式的縦断面図を示す図15(A)において見出すことができるように、描画機ツール40は、マルチカラム荷電粒子光学系のための真空ハウジング48、マルチカラム荷電粒子光学系が取り付けられるベース部材47を含む。X-Yステージ46、例えばレーザ干渉計制御式エアベアリング真空ステージのベースの上部には、ターゲット45が、好ましくはリソグラフィ目的のためのマスク又は直接描画機ツールの場合のシリコンウェハが、適切な操作システムを用いて取り付けられる。そして、ターゲットは、これは例えばレジスト層を含むが、描画機の荷電粒子ビームによって露光され得る。
【0087】
この形態のマルチカラム光学系は、複数のサブカラム400(図示のカラムの個数は、より良好な明確性のために図においては減少されており、実際の具現化におけるマルチカラム装置に存在する遥かにより多くの個数のカラムを代表している)を含む。好ましくは、サブカラム(複数)は、同じ構成を有し、かつ、互いに平行な軸(複数)c5が並置されるように設置されている。各サブカラムは、荷電粒子源41を含み、幅の広いテレセントリックな荷電粒子ビームをパターン規定(画定)システム43へ供給する照明システム42(但しパターン規定システム43はビームを複数のアパーチャのみを通過させるよう適合化されており、該複数のアパーチャは当該アパーチャ(ビーム成形装置)を通り抜けるサブビーム(「ビームレット」)(複数)の形状を規定する)と、典型的には縮小を行い、更にはエネルギを与える荷電粒子投射光学系44(該投射光学系44は複数の続いて配設された荷電粒子レンズから構成され、該荷電粒子レンズは好ましくは静電及び/又は磁気レンズ(複数)を、場合によっては他の粒子光装置を含む)とを有する。図15に示した形態では、投射光学系は、例えば第1荷電粒子レンズ44a、例えば静電液浸レンズを含み、他方、第2レンズ10は、これは第1レンズの下流に配置されるが、本発明の一形態に応じた荷電粒子レンズ(例えば図1(A))を用いて具現化(構成)される。
【0088】
図15(B)は、第2レンズとして使用されるレンズ(複数)10の一例とそれらの支持要素の一例とを詳細図に示す。サブカラム(複数)の各第2レンズ10は、好ましくは、適切な固定手段49bによってカラム基底プレート47又は真空チャンバの特定フランジ48に取り付けられる基準プレート49に取り付けられる。基準プレート49は、軽量、高弾性率及び高熱伝導性の利点を有する酸化ケイ素又は酸化アルミニウムに基づくセラミック材料のような、低い熱膨張性を有する適切な基礎材料から製造され、及び、(静電荷を流出させることによって)帯電を回避するために、少なくともその関連する部分において、導電性コーティング(被膜)によって適切に被覆され得る。更に、基準プレート49は、各サブカラムのレンズ10のビーム通路11と重なる(合致する)アパーチャ(複数)49aを含み得る。
【0089】
上記の実施形態の全部又は一部は以下の付記として記載可能であるが、それらに限定されない。
[付記1]荷電粒子光学システムの荷電粒子ビームを修正するよう構成された荷電粒子レンズ。
前記レンズは、主として縦軸に沿って延伸しかつ荷電粒子ビームの通過を可能にするビーム通路を備える;
前記レンズは、
・少なくとも1つの永久磁石、
・ヨークボディ、及び
・少なくとも1つのシャント装置
を含む磁気回路アセンブリを含む;
前記ヨークボディは少なくとも2つのヨーク要素から構成されており、前記少なくとも2つのヨーク要素のうち、第1ヨーク要素は前記ビーム通路(通路空間)を包囲するよう配置されたインナーヨークシェルを構成し、第2ヨーク要素は前記インナーヨークシェルを包囲するよう配置されたアウターヨークシェルを構成し、前記少なくとも2つのヨーク要素は前記縦軸の周囲に配置されており、かつ、高透磁性材料を含む;
前記少なくとも1つの永久磁石は前記少なくとも2つのヨーク要素の間にかつ前記インナーヨークシェルの周囲に配置されており、前記少なくとも1つの永久磁石は、その2つの磁極が夫々のヨーク要素へ向けて磁気的に配向されている永久磁石材料を含む;
前記磁気回路アセンブリにおいて、前記少なくとも1つの永久磁石と前記ヨークボディは閉磁気回路を形成するが、異なるヨーク要素の対応する軸方向面間に形成される少なくとも2つのギャップを有し、前記少なくとも1つの永久磁石から到来する磁束密度を前記ヨークボディを通して導くよう構成され、かつ、前記少なくとも2つのギャップに、内方に向かって前記ビーム通路内に到達する磁界を誘導する;
前記少なくとも1つのシャント装置は、少なくとも1つの透磁性シャント要素を含み、かつ、前記ヨークボディの前記少なくとも2つの要素間の定義された位置に配置されており、前記少なくとも1つのシャント装置は、前記磁束の定義された(所定の)部分が前記磁気回路アセンブリの少なくとも一部分をバイパスすることを可能にする。
[付記2]上記の、とりわけ付記1に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記レンズは、前記縦軸に沿って全体的に回転対称的な形状を有する;
前記磁気回路アセンブリの構成要素、即ち、
・少なくとも1つの永久磁石、
・ヨークボディ、及び
・少なくとも1つのシャント装置
は前記縦軸と同心(コアキシャル)に配置されており、好ましくは中空シリンダに対応する基本形状又は中空多角柱形状を有する。
[付記3]上記の、とりわけ付記1又は2に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素は、前記縦軸に沿って積重ねられた2つ以上の層及び/又は前記縦軸の周りに配置された1つ以上のセクタから構成されている。
[付記4]上記の、とりわけ付記1~3の何れかに記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つのシャント要素は、透磁性材料からなる2つ以上のセクタ要素から構成されており、前記2つ以上のセクタ要素は前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置されている;
前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、他のセクタ要素の透磁性材料の透磁率とは異なる透磁率を有する透磁性材料を含み、かくして、(前記)磁気レンズが異なってアジマス(方位)的に(アジマス(方位)に応じて)変化する(varying)磁束密度を、従って前記縦軸の周りでアジマス(方位)的に(アジマス(方位)に応じて)変化する(varying)磁界を有することを可能にする。
[付記5]上記の、とりわけ付記4に記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は、前記縦軸の周りにおいて夫々異なるアジマス位置に配置された少なくとも2つの副要素から構成されている;
前記シャント装置の少なくとも1つ又は前記2つ以上のセクタ要素の少なくとも1つは、前記少なくとも2つの永久磁石副要素の夫々2つの間に配置されている。
[付記6]上記の、とりわけ付記1~5の何れかに記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記第2ヨーク要素は、前記レンズアセンブリのハウジングボディを構成する;該ハウジングボディは、他の全てのヨーク要素を含む(前記)レンズアセンブリの他の要素を包囲する。
[付記7]上記の、とりわけ付記1~6の何れかに記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は実質的に半径方向に配向された磁化を有する;
前記少なくとも1つのシャント装置は、少なくとも前記実質的に半径方向に配向された(好ましい)磁化に対し平行な方向に沿って高透磁率の材料を含む。
[付記8]上記の、とりわけ付記1~7の何れかに記載の荷電粒子レンズにおいて、
前記少なくとも1つの永久磁石は、少なくとも2つの副要素から構成されている、即ち、
・縦軸に沿って積重ねられた2つ以上の層に従ってセグメント化されている;
及び/又は
・縦軸の周りに配置される2つ以上のセクタへ分割されている。
[付記9]上記の、とりわけ付記8に記載の荷電粒子レンズにおいて、
少なくとも1つのシャント装置は、前記少なくとも2つの副要素の夫々2つの間に配置されている。
[付記10]上記の、とりわけ付記1~9の何れかに記載の荷電粒子レンズと、
前記縦軸に沿って前記ビーム通路(通路空間)内へ挿入されたスリーブインサート部材と
を含む、電磁レンズ。
前記スリーブインサート部材は、前記荷電粒子レンズのビーム通路の半径よりも小さい半径を有するビーム通路を包囲し、縦軸に沿って延在する;
前記スリーブインサート部材は、少なくとも部分的に導電性の部分を有するマウントボディと、少なくとも1つの導電性の電極要素を含む;
前記少なくとも1つの電極要素は、前記ビーム通路内に静電界を生成するために、導電性の部分の電気ポテンシャルに対する(を基準とする)電気ポテンシャルが電源を介して印加されるよう構成されている。
[付記11]上記の、とりわけ付記10に記載の電磁レンズにおいて、
前記スリーブインサート部材の縦軸は前記荷電粒子レンズの縦軸と一致する(重なる)。
[付記12]上記の、とりわけ付記10又は11に記載の電磁レンズにおいて、
前記(少なくとも1つの)電極要素は、前記少なくとも2つのギャップの少なくとも1つにおいて、前記ビーム通路内の磁界と共に(荷電)粒子光学レンズを形成するよう、構成されている;
(前記)荷電粒子光学レンズの焦点距離は、前記電極要素に印加される電気ポテンシャルを修正(変化)することによって調節可能である。
[付記13]上記の、とりわけ付記10~12の何れかに記載の電磁レンズにおいて、
前記インナーヨークシェルは前記縦軸に沿って延在し、前記スリーブインサート部材を周方向において包囲する;
前記磁気回路の前記少なくとも2つのギャップは(夫々)前記インナーヨークシェルの何れかの軸方向端部に配されており、各ギャップは、内方に向かって前記ビーム通路の空間内に到達する、定義された(所定の)磁界を生成し、前記スリーブインサート部材の複数の(前記少なくとも1つの)電極要素の少なくとも1つによって生成される前記静電界は前記磁界と少なくとも部分的に重なるよう構成されている。
[付記14]上記の、とりわけ付記10~13の何れかに記載の電磁レンズにおいて、
複数の(前記少なくとも1つの)電極要素の少なくとも1つは静電マルチポール電極を含む;
該静電マルチポール電極は周方向に沿って前記縦軸の周りに均一に(一定間隔で)配置された複数の副電極を含み、該複数の副電極は、各副電極に個別にポテンシャルを供給するマルチチャンネル電源ユニットに接続可能である。
[付記15]上記の、とりわけ付記10~14の何れかに記載の電磁レンズにおいて、
複数の(前記少なくとも1つの)電極要素は、前記縦軸の周りに定義された(所定の)半径を有する制限開口を形成するビームアパーチャ要素を含む;
前記制限開口は、前記縦軸に沿って伝搬する荷電粒子ビームの横幅を制限するよう、構成されている;
前記ビームアパーチャ要素は、前記ビームアパーチャ要素において吸収される荷電粒子ビームの量を測定するよう構成された電流測定装置に接続されている。
[付記16]付記1~9の何れかに記載の荷電粒子レンズ又は付記10~15の何れかに記載の電磁レンズを含む荷電粒子光学装置。
前記装置は、前記レンズの縦軸に沿って前記レンズを通って伝搬する前記装置の荷電粒子ビームに影響を及ぼすよう構成されている;
前記レンズは、前記装置の粒子光学システムの部分である。
[付記17]上記の、とりわけ付記16に記載の荷電粒子光学装置において、
前記装置は、複数の粒子光学カラムを含むマルチカラムシステムとして構成されている;
各カラムは、夫々の粒子ビームを使用するよう構成されており、かつ、荷電粒子レンズ又は電磁レンズの夫々の構成(instance)を含む夫々の粒子光学システムを含む。
【0090】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(「非選択」を含む。)が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0091】
更に、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を実施形態及び図示の実施例に限定することは意図していない。
【0092】
更に、上記の各文献の全内容は引照を以って本書に繰り込みここに記載されているものとする。
【符号の説明】
【0093】
1 荷電粒子光学系
10 荷電粒子レンズ
11 ビーム通路
20 磁気回路アセンブリ
21 永久磁石
25 ヨークボディ
30 シャント装置
31 透磁性シャント要素
61 磁界
100 荷電粒子ビーム
210、211 永久磁石材料
250 インナーヨークシェル
251 アウターヨークシェル
290、291 ギャップ
cx 縦軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【外国語明細書】