(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166345
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】有機気相ジェットプリンティングシステム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20231114BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231114BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20231114BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
C23C14/24 A
H10K59/10
H10K71/16
C23C14/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023076957
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】63/339940
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/311519
(32)【優先日】2023-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ・ホーソン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・クイン
(72)【発明者】
【氏名】ケント・クオン・グェン
(72)【発明者】
【氏名】スリラム・クリシュナスワミ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・マグロウ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・トート
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB03
3K107BB06
3K107BB08
3K107CC45
3K107FF15
3K107GG02
3K107GG32
3K107GG34
4K029BA62
4K029CA01
4K029DB12
4K029DB14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来のOVJP堆積システムよりも、必要とされるプリントヘッドがはるかに少ない有機蒸気ジェット堆積(OVJP)のための方法、システム、及びデバイスが提供される。
【解決手段】開示されたOVJPシステムは、従来のシステムよりも半分又はそれ以下の数のOVJPプリントヘッドを含み、基板とプリントヘッドの相対的な移動を提供し、基板の全面にわたって迅速かつ包括的な材料の堆積を可能にする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に向かって実質的に一次垂直方向に材料を排出するように構成された1以上のOVJPプリントヘッドをそれぞれ含む1以上のOVJPプリントバーであって、各OVJPプリントヘッドが、前記基板に対向する前記プリントヘッドの表面上に水平距離Wに亘って配置された複数のアパーチャを含む1以上のOVJPプリントバーと;
前記1以上のOVJPプリントバーの下に前記基板を保持するように構成されるフロートテーブルと、
を含み、
前記フロートテーブルは、システムの動作中に前記一次垂直方向に垂直な平面内の2つの水平軸方向のそれぞれにおいて少なくともWの距離を移動できることを特徴とする有機気相ジェットプリンティング(OVJP)システム。
【請求項2】
前記フロートテーブルが、前記2つの水平軸方向のそれぞれにおいて少なくとも10Wの距離を移動できる、請求項1に記載のOVJPシステム。
【請求項3】
基板に向かって実質的に一次垂直方向に材料を排出するように構成された1以上のOVJPプリントヘッドをそれぞれ含む1以上のOVJPプリントバーであって、各OVJPプリントヘッドが、前記基板に対向する前記プリントヘッドの表面上に水平距離Wを亘って配置された複数のアパーチャを含む1以上のOVJPプリントバーと;
前記1以上のOVJPプリントバーの下に前記基板を保持するように構成されるフロートテーブルと、
を含み、
前記フロートテーブルが、システムの動作中に前記一次垂直方向に垂直な平面内の第1の軸方向に移動でき、
前記1以上のOVJPプリントバーが、前記第1の軸方向及び前記一次垂直方向に対して垂直な第2の軸方向において少なくともWに等しい距離を移動できることを特徴とする有機気相ジェットプリンティング(OVJP)システム。
【請求項4】
複数のOVJPプリントバーのそれぞれの高さが調節可能である、及び/又は
前記複数のOVJPプリントバーの各OVJPプリントバー上の前記1以上のOVJPプリントヘッドの高さが、各OVJPプリントバーの高さとは独立して調節可能である、
請求項1又は3のいずれかに記載のOVJPシステム。
【請求項5】
前記1以上のOVJPプリントバーが、前記基板の50%以下に材料を堆積させるのに十分な総数のOVJPプリントヘッドを含む、請求項3に記載のOVJPシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2022年5月9日出願の米国特許仮出願第63/339,940号に対する優先権の利益を主張し、上記出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、有機発光ダイオードを含む有機発光デバイスを作製するため等の、有機気相ジェットプリンティング(OVJP)を実施するデバイス及び技術、並びにそれらを含むデバイス及び技術に関する。
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、多くの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を発する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。幾つかのOLEDの材料及び構成は、参照によりその全体が組み込まれる特許文献1、特許文献2、及び特許文献3において記載されている。
【0005】
燐光発光性分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。若しくは、OLEDは、白色光を照射するように設計することができる。従来の、白色バックライトからの液晶ディスプレイ発光は、吸収フィルターを用いてフィルタリングされ、赤色、緑色、及び青色発光を生成する。同様の技術は、OLEDでも用いられることができる。白色OLEDは、単層のEMLデバイス又は積層体構造のいずれかであることができる。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0006】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び低分子有機材料を含む。「低分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「低分子」は実際にはかなり大型であってもよい。低分子は、幾つかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「低分子」クラスから分子を排除しない。低分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。低分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又は燐光性低分子発光体であってよい。デンドリマーは「低分子」であってもよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーは全て低分子であると考えられている。
【0007】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第1の層が第2の層「の上に配置されている」と記述される場合、第1の層のほうが基板から遠くに配置されている。第1の層が第2の層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第1の層と第2の層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0008】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送されることができ、且つ/又は該媒質から堆積されることができるという意味である。
【0009】
配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0010】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第1のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第2のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0011】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるように、第1の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第1の仕事関数は第2の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0012】
層、材料、領域、及びデバイスは、それらが発する光の色に関連して本明細書に記載されることができる。一般に、本明細書において使用される場合、特定の色の光を生成すると記述される発光領域は、積層体内で相互に配置された1以上の発光層を含むことができる。
【0013】
本明細書において使用される場合、「赤色」層、材料、領域、又はデバイスとは、約580nm~700nmの範囲で発光するか、その領域で発光スペクトルのピークが最も高いものを指す。同様に、「緑色」層、材料、領域、デバイスとは、約500nm~600nmの範囲において、発光するか、ピーク波長を有する発光スペクトルを有するものを指す。「青色」層、材料、又はデバイスとは、約400nm~500nmの範囲において、発光するか、ピーク波長を有する発光スペクトルを有するものを指す。「黄色」層、材料、領域、又はデバイスとは、約540nm~600nmの範囲において、ピーク波長を有する発光スペクトルを有するものを指す。幾つかの配置においては、別々の領域、層、材料、領域、又はデバイスが、別々の「濃い青色」と「薄い青色」の光を提供することができる。本明細書において使用される場合、別々の「薄い青色」と「濃い青色」を提供する配置において、「濃い青色」成分とは、「薄い青色」成分のピーク発光波長よりも少なくとも約4nm小さいピーク発光波長を持つものを指す。通常、「薄い青色」成分は、約465nm~500nmの範囲でピーク発光波長を有し、「濃い青色」成分は、約400nm~470nmの範囲でピーク発光波長を有するが、これらの範囲は、幾つかの構成によって異なる場合がある。同様に、色変化層は、別の色の光を、その色に特定された波長を有する光に変換又は変更する層を指す。例えば、「赤色」のカラーフィルターは、約580nm~700nmの範囲の波長を有する光をもたらすフィルターを指す。一般に、色変化層には、不要な波長の光を除去してスペクトルを変更させるカラーフィルターと、高エネルギーの光子を低エネルギーに変換する色変化層の2つのクラスがある。「色の」成分とは、活性化又は使用されると、前述のように特定の色を有する光を生成又は放出する成分を指す。例えば、「第1の色の第1の発光領域」と「前記第1の色とは異なる第2の色の第2の発光領域」は、デバイス内で活性化されると、前述のように2つの異なる色を発する2つの発光領域を記述する。
【0014】
本明細書において使用される場合、発光材料、層、及び領域は、同じ又は異なる構造によって最終的に放射される光とは対照的に、材料、層、又は領域によって最初に生成された光に基づいて、互いに、及び他の構造から区別されることができる。通常、最初の光の発生は、光子の放出をもたらすエネルギーレベルの変化の結果である。例えば、有機発光材料は、最初に青色光を生成することができ、これはカラーフィルター、量子ドット、又はその他の構造によって赤色光又は緑色光に変換されることができ、それによって完全な発光積層体又はサブピクセルは、赤色光又は緑色光を発する。この場合、前記サブピクセルが、「赤色」又は「緑色」成分であっても、最初の発光材料又は層は「青色」成分と呼ばれることがある。
【0015】
幾つかの場合においては、発光領域、サブピクセル、色変化層等の成分の色を1931CIE座標で記述することが好ましいこともある。例えば、黄色の発光材料は、複数のピーク発光波長を有し、前述のように、1つは「緑色」領域のエッジ内又はその近く、もう1つは「赤色」領域のエッジ内又はその近くにあることができる。したがって、本明細書において使用される場合、各色の用語は、1931CIE座標色空間における形状にも対応する。1931CIE色空間における形状は、2つのカラーポイントと追加の内部ポイントとの間の軌跡をたどることによって構築される。例えば、赤色、緑色、青色、黄色の内部形状パラメーターは、以下のように定義される。
【0016】
OLEDに関する更なる詳細、及び前記した定義は、参照によりその全体が組み込まれる特許文献4にみることができる。
【発明の概要】
【0017】
一実施形態によれば、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)も提供される。前記OLEDは、アノードと、カソードと、前記アノードと前記カソードとの間に配置された有機層と、を含むことができる。一実施形態によれば、前記有機発光デバイスは、消費者製品、電子部品モジュール、及び/又は照明パネルから選択される1以上のデバイスに組み込まれる。
【0018】
基板に向かって実質的に一次垂直方向に材料を排出するように構成された1以上のOVJPプリントヘッドをそれぞれ含む1以上のOVJPプリントバーであって、各OVJPプリントヘッドが、前記基板に対向する前記プリントヘッドの表面上に水平距離Wを亘って配置された複数のアパーチャを含む1以上のOVJPプリントバーと;前記1以上のOVJPプリントバーの下に前記基板を保持するように構成されるフロートテーブルと、を含み、前記フロートテーブルは、システムの動作中に前記一次垂直方向に垂直な平面内の2つの水平軸方向(horizontal dimensions)のそれぞれにおいて少なくともWの距離を移動できる、又は前記フロートテーブルが、システムの動作中に前記一次垂直方向に垂直な平面内の第1の軸方向(first dimension)に移動でき、前記1以上のOVJPプリントバーが、前記第1の軸方向及び前記一次垂直方向に対して垂直な第2の軸方向(second dimension)において少なくともWに等しい距離を移動できる、有機気相ジェットプリンティング(OVJP)システムが提供される。OVJPプリントバーは、水平に所定の位置に固定されることができ、プリントヘッドは2つの水平軸方向においてW以下の距離を移動することができる、及び/又はプリントバーは2つの水平軸方向においてW以下の距離を移動することができる。前記フロートテーブルは、前記2つの水平軸方向のそれぞれにおいて少なくとも10Wの距離を移動することができる。前記フロートテーブルは、基板への材料の堆積中に、基板がOVJPデバイスを介して移動するときに、移動方向に平行な2つの水平軸方向のうちの1つで、基板のエッジ寸法の少なくとも2倍に等しい距離を移動することができる。また、前記フロートテーブルは、前記2つの水平軸方向のそれぞれにおいて、基板のエッジ寸法に少なくとも等しい距離を移動することができる。前記フロートテーブルは、圧力真空(PV)フロートテーブル又はその他の適切な基板支持機構を含むことができる。複数のOVJPプリントバーのそれぞれの高さは調節可能である場合がある、及び/又は各プリントバー上のプリントヘッドの高さは、それが配置されているプリントバーの高さとは独立して調節可能である場合がある。システムは、基板の50%以下に材料を堆積させるのに十分な総数のOVJPプリントヘッドを含むことができる。プリントヘッドの総数は、単一のプリントバーに配置されることができる、又は全てのプリントバーに配置される総数は、基板の50%以下を覆うのに十分であることができる、又は複数のOVJPプリントバーのそれぞれは、基板の50%以下に材料を堆積させるのに十分な総数のOVJPプリントヘッドを含むことができる。基板に対するプリントヘッドの角度と、フロートテーブルの主運動方向に垂直な軸方向における各プリントヘッドの位置は、独立して制御することができる。デバイスは、OVJPプリントバーの下の基板の相対位置を決定するように配置及び構成された1以上のセンサと、前記センサによって得られたデータに基づいて各OVJPプリントヘッドの位置及び/又は角度を調節するように配置及び構成されたコントローラとを含むことができる。各OVJPプリントヘッドは、そのプリントヘッドに固有の材料源チャンバーに統合的に接続及び/又は流体連通することができる。プリントヘッドは、材料の流れが1以上の排出を介して除去される前に1以上のOVJPプリントバーの下の材料の流れから有機材料を除去するように配置及び構成された冷却粒子フィルターを含むことができる。OVJPプリントヘッドは、2mm以上の最小長さを有する送達アパーチャを含むことができる。プリントヘッドに密閉されたマニホールドは、1以上のOVJPプリントヘッドに供給源材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【0020】
【
図2】
図2は、別の電子輸送層を有さない、反転された有機発光デバイスを示す。
【0021】
【
図3】
図3は、PVテーブル上で縦方向に移動している基板の全横軸方向にわたってプリントヘッドが装着された静的プリントヘッドガントリー(gantry)を含む従来のOVJPシステム構造を示す。1色のみのプリントヘッドが示される。
【0022】
【
図4】
図4は、本明細書で開示されるOVJPシステムを示し、静的プリントヘッドと、X軸方向及びY軸方向で基板を移動するように構成されたPVテーブルを含む。
【0023】
【
図5A】
図5Aは、本明細書で開示されるOVJPシステムを示し、本システムでは、プリントヘッドは静的ガントリー上で横方向に移動し、PVテーブルは縦方向に移動可能である。
【0024】
【
図5B】
図5Bは、本明細書で開示されるOVJPシステムを示し、本システムでは、プリントエンジンは静的ガントリー上で独立して移動し、PVテーブルは縦方向に移動可能である。
【0025】
【
図6】
図6は、本明細書で開示されるOVJPシステムを示し、本システムでは、プリントヘッドは、縦方向に移動するガントリー上で横方向に移動可能である。
【0026】
【
図7A】
図7Aは、本明細書に開示されるエッジオン(edge-on)OVJPプリントダイアセンブリの高レベル構造を示す。ノズルの長さは、ダイが作られるウエハの厚みによって制限される。
【
図7B】
図7Bは、本明細書に開示される面内のOVJPプリントダイアセンブリの高レベル構造を示し、OVJPノズルをエッジオンの場合よりもはるかに長く作ることができる。
【0027】
【
図8】
図8は、従来のOVJPシステム構造において、プリントヘッドを互いに及びプリントバーに位置合わせするために使用される独立型構成ステーションの例を示す。
【0028】
【
図9】
図9は、本明細書に開示される個々の回転及び横方向の位置調節を有するOVJPプリントヘッドの例を示す。
【0029】
【
図10】
図10は、本明細書に開示されるOVJPシステムのために、プリントヘッドを互いに位置合わせさせるための移動光学距離センサに基づくシステムの例を示す。
【0030】
【
図11】
図11は、本明細書に開示された実施形態に従って光学距離センサを登録するシステム位置合わせカメラの例を示す。
【0031】
【
図12A】
図12Aは、従来のOVJPシステム構造で使用される有機ガス分配構成の例を示し、外部の大容量供給源、長い供給及び排出ライン、及び多数の分岐を持つマニホールドを必要とする。
【
図12B】
図12Bは、本明細書に開示された実施形態による分配構成の例を示し、プリントヘッド又はバーは、専用及び/又は統合された有機材料供給源を使用する。
【0032】
【
図13】
図13は、本明細書に開示された固定ガントリーシステムの例を示し、2つの異なる方向のパネルタイプを有するMMG基板レイアウト上に材料を堆積させる。この例は、横向きの55インチパネルのセットと縦向きの65インチパネルのセットを示す。
図13Aは、55インチパネルをプリントするために使用される軌道を示し、PVテーブルは縦方向に前後に走査し、横方向に進行する。
図13Bは、65インチパネルの軌道を示し、PVテーブルが横方向に前後に走査し、縦方向に進行する。
【0033】
【
図14】
図14は、本明細書に開示された実施形態に従って、個々のラインに対応する一連のデポジタと排出アパーチャとの間に配置された追加のノズルを備えた面内ダイを示す。これらのノズルは、排出の閉じ込め効果がダイ全体で走査方向に均一であることを保証するために、追加のチャンバー圧力メイクアップガス(make-up gas)を供給する。同様の構成は、エッジオンダイにも使用できる。
【
図15】
図15は、ダイを囲むプリントヘッドの底部に位置する能動的に冷却されるプレートであるプリントヘッド冷却プレートに実装され、プリントプロセス中に基板の温度を制御するために使用される、追加のノズル(又はジェット)を示す。示される2つのダイは、
図14に示されるようにX方向にずらして配置され、ダイはマニホールドにクランプ(clamp)又は結合される。
【0034】
【
図16A】
図16Aは、本明細書に開示される実施形態に従って、一方の側のマニホールドブロックと他方の側のヒートスプレッダから形成されたマニホールドアセンブリに一体化されたプリントダイ上のエッジを示す。
【
図16B】
図16Bは、本明細書に開示される実施形態に従って、一体化した(monolithic)マニホールドアセンブリに取り付けられた面内ダイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。幾つかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0036】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号明細書において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0037】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「燐光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151~154、1998;(「Baldo-I」)及びBaldoら、「Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4~6(1999)(「Baldo-II」)。燐光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5~6段において更に詳細に記述されている。
【0038】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第1の導電層162及び第2の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6~10段において更に詳細に記述されている。
【0039】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板-アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p-ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号明細書において開示されている通りの、50:1のモル比でm-MTDATAにF4-TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n-ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を有するMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。バリア層170は、単層又は多層のバリアであることができ、デバイスの他の層を覆ったり囲んだりすることができる。バリア層170は、基板110を囲むこともでき、及び/又はデバイスの基板と他の層との間に配置されることもできる。バリアは、封止材、封止層、保護層、又は透過バリアと呼ばれることもあり、通常、水分、周囲の空気、及びその他の同様の材料が、デバイスの他の層への透過に対して、保護を提供する。バリア層材料及び構造の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,537,688号明細書、米国特許第6,597,111号明細書、米国特許第6,664,137号明細書、米国特許第6,835,950号明細書、米国特許第6,888,305号明細書、米国特許第6,888,307号明細書、米国特許第6,897,474号明細書、米国特許第7,187,119号明細書、及び米国特許第7,683,534号明細書に提供される。
【0040】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることができる。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0041】
図1及び
図2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び
図2に関して記述されている異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0042】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号明細書において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号明細書において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び
図2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号明細書において記述されているメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号明細書において記述されているくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0043】
明細書に開示される幾つかの実施形態では、それぞれ
図1~
図2に示される発光層135及び発光層220等の発光層又は材料は、量子ドットを含むことができる。当業者の理解に従って明示的に又は文脈によって反対のことが示されない限り、本明細書に開示される「発光層」又は「発光材料」は、量子ドット又は同等の構造を含む有機発光材料及び/又は発光材料を含むことができる。一般に、発光層は、ホストマトリックス内に発光材料を含む。このような発光層は、別の発光材料や他の発光体によって放出された光を変換する量子ドット材料のみを含むこともできれば、別の発光物質や他の発光体を含むこともでき、電流の印加から直接それ自身が発光することもできる。同様に、色変化層、カラーフィルター、アップコンバージョン層、又はダウンコンバージョン層、又は構造は、量子ドットを含む材料を含むことができるが、そのような層は、本明細書に開示されるような「発光層」とは見なされない場合がある。一般に、「発光層」又は材料は、注入された電荷に基づいて初期光を放出するものであり、それ自体はデバイス内で初期光を放出しないが、発光層によって発光された初期光の吸収と低エネルギー発光へのダウンコンバージョンに基づき異なるスペクトル成分の変化した光を再発光する、カラーフィルター又は他の色変化層等の別の層によって、前記初期光は変化させることができる。本明細書に開示される幾つかの実施形態においては、色変化層、カラーフィルター、アップコンバージョン層、及び/又はダウンコンバージョン層は、OLEDデバイスの電極の上又は下等、OLEDデバイスの外側に配置されることができる。
【0044】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号明細書及び同第6,087,196号明細書において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号明細書において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号明細書及び同第6,468,819号明細書において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、低分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3~20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける低分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0045】
本発明の実施形態にしたがって製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号明細書、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を含む前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。非ポリマー材料に対するポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作製され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0046】
幾つかの実施形態においては、アノード、カソード、又は有機発光層の上に配置された新たな層の少なくとも1つが、エンハンスメント層として機能する。エンハンスメント層は、非放射的に発光体材料に結合し、発光体材料から励起状態エネルギーを非放射モードの表面プラズモンポラリトンに伝達する表面プラズモン共鳴を示すプラズモン材料を含む。エンハンスメント層は、有機発光層から閾値距離以内に設けられ、発光体材料は、エンハンスメント層の存在により総非放射性崩壊速度定数及び総放射性崩壊速度定数を有し、閾値距離では、総非放射性崩壊速度定数は、総放射性崩壊速度定数に等しい。幾つかの実施形態においては、OLEDは、更に、アウトカップリング層を含む。幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、有機発光層の反対側のエンハンスメント層の上に配置される。幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、エンハンスメント層から発光層の反対側に配置されるが、依然として、エンハンスメント層の表面プラズモンモードからエネルギーをアウトカップリングする。アウトカップリング層は、表面プラズモンポラリトンからのエネルギーを散乱させる。幾つかの実施形態においては、このエネルギーは、光子として自由空間に散乱される。他の実施形態においては、エネルギーは、表面プラズモンモードから、デバイスの他のモード、例えば、有機導波路モード、基板モード、又は別の導波モード等に散乱されるがこれらに限定されない。エネルギーがOLEDの非自由空間モードに散乱される場合、他のアウトカップリングスキームを組み込んでそのエネルギーを自由空間に取り出すことができる。幾つかの実施形態においては、1以上の介在層を、エンハンスメント層とアウトカップリング層との間に配置することができる。介在層の例としては、有機、無機、ペロブスカイト、酸化物を含む誘電体材料であることができ、これらの材料の積層体及び/又は混合物を含むことができる。
【0047】
前記エンハンスメント層は、発光体材料が存在する媒体の有効特性を変更し、発光率の低下、発光ライン形状の変更、角度による発光強度の変化、発光体材料の安定性の変化、OLEDの効率の変化、及びOLEDデバイスの効率ロールオフの低下のいずれか又は全てをもたらす。カソード側、アノード側、又は両側にエンハンスメント層を配置すると、前記した効果のいずれかを利用するOLEDデバイスが得られる。本明細書に記載され、図示される様々なOLEDの例に示される特定の機能層に加えて、本開示に係るOLEDは、OLEDにしばしば見られる他の機能層のいずれかを含むことができる。
【0048】
前記エンハンスメント層は、プラズモン材料、光学活性メタ材料、又はハイパーボリックメタ材料で構成することがきる。本明細書で使用されるとき、プラズモン材料は、誘電率の実部が、電磁スペクトルの可視又は紫外領域でゼロを横切る材料である。幾つかの実施形態では、プラズモン材料は、少なくとも1つの金属を含む。そのような実施形態においては、金属は、Ag、Al、Au、Ir、Pt、Ni、Cu、W、Ta、Fe、Cr、Mg、Ga、Rh、Ti、Ru、Pd、In、Bi、Ca、これらの材料の合金又は混合物、及びこれらの材料の積層体の少なくとも1つを含むことができる。一般に、メタ材料は、異なる材料で構成される媒体であり、媒体が全体として、その各材料部分の合計とは異なる動作をする。特に、光学活性メタ材料は、負の誘電率と負の透磁率の両方を有する材料と定義される。一方、ハイパーボリックメタ材料は、誘電率又は透磁率が異なる空間方向に対して異なる符号を有する異方性媒体である。光学活性メタ材料とハイパーボリックメタ材料は、光の波長の長さスケールで伝搬方向に均一に見える媒体であるという点で、分布ブラッグ反射器(「DBR」)等の他の多くのフォトニック構造体と厳密に区別される。当業者が理解できる用語を使用すると、伝播方向におけるメタ材料の誘電率は、有効媒質近似で記述することができる。プラズモン材料とメタ材料は、光の伝搬を制御する方法を提供し、様々な方法でOLED性能を向上させることができる。
【0049】
幾つかの実施形態においては、前記エンハンスメント層は平坦層として設けられる。他の実施形態においては、エンハンスメント層は、周期的、準周期的、若しくはランダムに配置される波長サイズのフィーチャ(feature)、又は周期的、準周期的、若しくはランダムに配置されるサブ波長サイズのフィーチャを有する。幾つかの実施形態においては、波長サイズのフィーチャ及びサブ波長サイズのフィーチャは、シャープなエッジを有する。
【0050】
幾つかの実施形態においては、前記アウトカップリング層は、周期的、準周期的、若しくはランダムに配置される波長サイズのフィーチャ、又は周期的、準周期的、若しくはランダムに配置されるサブ波長サイズのフィーチャを有する。幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、複数のナノ粒子から構成することができ、他の実施形態においては、アウトカップリング層は、材料の上に配置された複数のナノ粒子から構成される。これらの実施形態においては、アウトカップリングを、複数のナノ粒子のサイズを変えること、複数のナノ粒子の形状を変えること、複数のナノ粒子の材料を変えること、材料の厚みを調整すること、材料の屈折率又は複数のナノ粒子上に配置される更なる層の屈折率を変えること、エンハンスメント層の厚みを変えること、及び/又はエンハンスメント層の材料を変えることの少なくとも1つによって調節可能であり得る。デバイスの複数のナノ粒子は、金属、誘電体材料、半導体材料、金属の合金、誘電体材料の混合物、1以上の材料の積層体又は層、及び/又はあるタイプの材料のコアであって、別のタイプの材料のシェルでコーティングされたものの少なくとも1つから形成することができる。幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、少なくとも金属ナノ粒子から構成され、前記金属は、Ag、Al、Au、Ir、Pt、Ni、Cu、W、Ta、Fe、Cr、Mg、Ga、Rh、Ti、Ru、Pd、In、Bi、Ca、これらの材料の合金又は混合物、及びこれらの材料の積層体からなる群から選択される。複数のナノ粒子は、それらの上に配置された更なる層を有することができる。幾つかの実施形態においては、発光の偏光を、アウトカップリング層を使用して調節することができる。アウトカップリング層の次元と周期性を変えることで、空気に優先的にアウトカップリングされる偏光のタイプを選択できる。幾つかの実施形態においては、アウトカップリング層は、デバイスの電極としても機能する。
【0051】
蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)は、遅延蛍光によって25%のスピン統計限界を超えることができると考えられている。本明細書において使用される場合、遅延蛍光には、P型遅延蛍光とE型遅延蛍光の2種類がある。P型遅延蛍光は、三重項-三重項消滅(TTA)から発生する。
【0052】
一方、E型遅延蛍光は、2つの三重項の衝突に依存せず、むしろ三重項状態と一重項励起状態との間の熱因子に依存する。E型遅延蛍光を発生させることができる化合物は、非常に小さな一重項-三重項ギャップを有する必要がある。熱エネルギーは、三重項状態から一重項状態への遷移を活性化することができる。このタイプの遅延蛍光は、熱活性化遅延蛍光(TADF)としても知られている。TADFの特徴は、熱エネルギーの増加により温度が上昇すると遅延成分が増加することである。逆項間交差速度が十分に速く、三重項状態からの非放射減衰を最小化できれば、逆占有(back populated)一重項励起状態の割合は、潜在的に75%に達することができる。全一重項割合は100%であり、電気的に生成された励起子のスピン統計限界をはるかに超えることができる。
【0053】
E型遅延蛍光特性は、エキシプレックス系又は単一化合物に見られることができる。理論に縛られることなく、E型遅延蛍光は、発光材料が小さな一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔES-T)を有することを必要とすると考えられている。有機、非金属含有、供与体-受容体発光材料はこれを達成できるかもしれない。これらの材料における発光は、供与体-受容体電荷移動(CT)型の発光として特徴付けられることが多い。これらの供与体-受容体型化合物におけるHOMOとLUMOの空間的分離は、多くの場合小さなΔES-Tをもたらす。これらの状態は、CT状態を伴うことがある。多くの場合、供与体-受容体発光材料は、アミノ誘導体又はカルバゾール誘導体等の電子供与体部分と、N-含有六員環芳香族環等の電子受容体部分を接続することによって構築される。
【0054】
本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、種々の電気製品又は中間部品に組み込まれることができる多種多様な電子部品モジュール(又はユニット)に組み込まれることができる。このような電気製品又は中間部品としては、エンドユーザーの製品製造者によって利用されることができるディスプレイスクリーン、照明デバイス(離散的光源デバイス又は照明パネル等)が挙げられる。このような電子部品モジュールは、駆動エレクトロニクス及び/又は電源を任意に含むことができる。本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、組み込まれた1以上の電子部品モジュール(又はユニット)を有する多種多様な消費者製品に組み込まれることができる。OLEDの有機層に本開示の化合物を含むOLEDを含む消費者製品が開示される。このような消費者製品は、1以上の光源及び/又は1以上のある種のビジュアルディスプレイを含む任意の種類の製品を含む。このような消費者製品の幾つかの例としては、フラットパネルディスプレイ、曲がったディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、丸めることができるディスプレイ、折り畳むことができるディスプレイ、伸ばすことができるディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ウェアラブルデバイス、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、対角で2インチ未満のディスプレイマイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、バーチャルリアリティ又は拡張現実ディスプレイ、車両、共に並べた多重ディスプレイを含むビデオウォール、劇場又はスタジアムのスクリーン、及び看板を含む。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本開示にしたがって製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、18℃~30℃、より好ましくは室温(20~25℃)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されているが、この温度範囲外、例えば、-40℃~80℃で用いることもできる。
【0055】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0056】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、可撓性があること、丸めることができること、折り畳むことができること、伸ばすことができること、曲げることができることからなる群から選択される1以上の特性を有する。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、透明又は半透明である。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、カーボンナノチューブを含む層を更に含む。
【0057】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、遅延蛍光発光体を含む層を更に含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、RGB画素配列又は白色及びカラーフィルター画素配列を含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、モバイルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又はウェアラブルデバイスである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、10インチ未満の対角線又は50平方インチ未満の面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、少なくとも10インチの対角線又は少なくとも50平方インチの面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、照明パネルである。
【0058】
前記発光領域の幾つかの実施形態においては、前記発光領域は、ホストを更に含む。
【0059】
幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光性ドーパントであることができる。幾つかの実施形態においては、前記化合物は、リン光、蛍光、熱活性化遅延蛍光、即ちTADF(E型遅延蛍光とも呼ばれる)、三重項-三重項消滅、又はこれらのプロセスの組合せを介して発光を生成することができる。
【0060】
本明細書中に開示されるOLEDは、消費者製品、電子部品モジュール、及び照明パネルの1以上に組み込まれることができる。前記有機層は、発光層であることができ、幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光ドーパントであることができ、他の実施形態においては、前記化合物は、非発光ドーパントであることができる。
【0061】
前記有機層は、ホストを含むことができる。幾つかの実施形態においては、2以上のホストが好ましい。幾つかの実施形態においては、用いられたホストは、a)双極性、b)電子輸送性、c)正孔輸送性又はd)電荷輸送に殆ど役割を果たさないワイドバンドギャップ材料であることができる。幾つかの実施形態においては、ホストは金属錯体を含むことができる。前記ホストは、無機化合物であることができる。
他の材料との組合せ
【0062】
有機発光デバイスの特定の層に有用であるとして本明細書に記載されている材料は、デバイスに存在する多種多様な他の材料と組み合わせて用いられることができる。例えば、本明細書に開示されている発光ドーパントは、多種多様なホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極、及び存在し得る他の層と組み合わせて用いられることができる。以下に記載又は参照されている材料は、本明細書に開示されている化合物と組み合わせて有用であることができる材料の非限定的な例であり、当業者であれば、組み合わせて有用であることができる他の材料を特定するために容易に文献を参照することができる。
【0063】
様々な材料が、本明細書に開示されている様々な発光層及び非発光層、並びに配置に用いられることができる。好適な材料としては、参照によりその全体が組み込まれている米国特許出願公開第2017/0229663号に開示されている。
伝導性(導電性)ドーパント:
【0064】
電荷輸送層は、伝導性ドーパントでドープされ、電荷キャリアの密度を大きく変え、それによりその伝導性を変えることとなる。伝導性は、マトリックス材料中の電荷キャリアを生成することで、又はドーパントのタイプに応じて増加され、半導体のフェルミ準位における変化も達成することができる。正孔輸送層は、p型伝導性ドーパントでドープされることができ、n型伝導性ドーパントは、電子輸送層中に用いられる。
HIL/HTL:
【0065】
本開示において使用される正孔注入/輸送材料は特に限定されず、その化合物が正孔注入/輸送材料として典型的に使用されるものである限り、任意の化合物を使用してよい。
EBL:
【0066】
電子ブロッキング層(EBL)は、発光層から出る電子及び/又は励起子の数を減らすために使用されることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して、大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接した発光体よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接したホストの1以上よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。一態様においては、EBL中に用いられる前記化合物は、下記に記載されるホストの1つとして用いられる、同じ分子又は同じ官能基を含む。
ホスト:
【0067】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光材料として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、金属錯体をドーパント材料として用いたホスト材料を含むことができる。ホスト材料の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントのものより大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用することができる。三重項基準を満たす限り、任意のホスト材料を任意のドーパントと共に使用することができる。
HBL:
【0068】
正孔ブロッキング層(HBL)を使用して、発光層から出る正孔及び/又は励起子の数を低減させることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接した発光体よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接したホストの1以上よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。
ETL:
【0069】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含み得る。電子輸送層は、真性である(ドープされていない)か、又はドープされていてよい。ドーピングを使用して、伝導性を増強することができる。ETL材料の例は特に限定されず、電子を輸送するために典型的に使用されるものである限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用してよい。
電荷発生層(CGL)
【0070】
タンデム型、又は積層型のOLED中で、CGLは、性能において重要な役割を果たし、それぞれ、電子及び正孔の注入ためのn-ドープ層及びp-ドープ層からなる。電子及び正孔は、前記CGL及び電極から供給される。前記CGL中の消費された電子及び正孔は、それぞれカソード及びアノードから注入された電子及び正孔によって再び満たされ、その後バイポーラ電流が徐々に安定した状態に達する。典型的なCGL材料は、輸送層で用いられるn型及びp型伝導性ドーパントを含む。
【0071】
ディスプレイパネルのようなOLEDデバイスを製造するために使用される従来のシステム及び技術は、大型パネルアクティブマトリクスTVのような一部の用途に対しては、非効率的で過度に複雑な場合がある。本明細書に開示される実施形態は、システムの複雑さを軽減し、OVJP堆積システムの信頼性及び横方向位置精度を向上させることができるシステム及び技術を提供するだけでなく、マルチモデルガラス(MMG)配置のように、別々の基板上でも単一の基板上でも、複数のテレビモデル、ディスプレイパネルサイズ等の処理を容易にし、可能にする。
【0072】
以前に開示されるように、OLEDパネル及び同様のデバイスの製造に適したOVJPプロセスは、一般にSiダイに画定されるプリントノズルを介して、加熱した混合ガス中のOLED材料をレセプター基板上に分配することを含む。基板は一般的にガラスであるが、金属、プラスチック、又はそれらの組合せ、又はその他の材料である、又はそれらを含むことができる。基板は、パッシブ又はアクティブマトリックスディスプレイバックプレーン等の既存の構造を含むことができる。加熱された混合ガスは、一般に、OLED材料を含む昇華/蒸発源にH2、He、N2、Ar等のキャリアガスを流すことによって得られる。OVJPは、気相蒸着、真空熱蒸着(VTE)、原子層蒸着(ALD)等の他の堆積技術とは異なり、通常、これらの技術で知られている堆積システムは、OVJPの技術や材料に適さず、OVJPの技術や材料に容易に適応させることはできない。例えば、ALDは、少なくとも2つの別々の前駆体が必要であり、それぞれが基板表面に自己制御(self-limiting)単分子層を形成する。前駆体は交互に基板に送達され、前駆体の対に晒された後、表面に1つの原子層を形成する。対照的に、OVJPは比較的低温の基板上で気体の有機材料が凝縮する凝縮プロセスである。他の例として、OVJPは基板上に堆積させる有機材料を昇華/蒸発させ輸送するために比較的高温を使用するが、基板上に堆積させた有機材料の損傷を防ぐために比較的低温の基板を使用する。OVJPの有機昇華源の温度は、通常200℃~450℃の範囲であり、これは化学気相成長(CVD)や類似の技術に使用されるよりもはるかに高い範囲である。CVDはまた、必要な化学反応を基板表面で発生させるために、供給源材料の温度よりも著しく高い基板温度を使用する。OVJPは、OVJPデポジタで非常に小さなノズル幅と比較的小さなノズルから基板への分離を使用し、どちらも他のスプレー又はノズル系堆積技術では通常達成できない、OVJPによって達成可能な精密堆積プロファイルに貢献する。更に、ブランケット層堆積技術とは対照的に、OVJPは材料の非常に正確な堆積を可能にし、一般的に大規模なブランケット堆積には使用されない。OVJPプロセスは、通常、10Torrから1Atm(760Torr)の圧力を使用し、通常は真空チャンバー内で実行される。材料源は、真空チャンバー内に配置されることも、外部に配置されることもできる。
【0073】
OVJPシステムは、1以上のOVJPプリントヘッドを含み、前記1以上のOVJPプリントヘッドは、基板上に堆積される有機材料を含む高温ガスを、ヘッドに組み込まれた1以上のノズルを介して基板上の個別の場所(例えば、ピクセル又はサブピクセル領域)に搬送する。基板は、通常、パッシブ又はアクティブマトリックスのバックプレーン部品等の既存の構造を含む。本明細書に示され説明されるように、OVJPシステムは、通常、多数のOVJPプリントノズルを含み、それらは通常、ディスプレイバックプレーンのパターンに一致するパターンに配置される。実際に、これはノズルの配置が得られたディスプレイ上のピクセルと同じピッチを有することを意味する。ノズルは、例えば、プリントダイを通る一連のチャネルによって提供されることができ、それぞれのチャネルは、動作中に材料が放出されるアパーチャで終わる。本明細書で記載される「プリントダイ」は、ノズルを画定するアパーチャで終わる堆積及び排出チャネルを含む部品を指す。プリントダイは、通常、MEMSプロセスを使用して製造されるが、付加製造、レーザードリル、又はアブレーション等の他の技術を使用することもできる。ノズルは、「プリントヘッド」と呼ばれるアセンブリに統合され、これは、供給源からダイ及びマニホールドへのガス分配、プリントダイが互いに相対的に移動する際に基板に対して一定のギャップを維持するフライト制御(flight control)機構、及び幾つかの実施形態では部品の冷却を含む。OVJPプリントヘッドは、1以上のプリントダイを含むことができる。また、OVJPプリントヘッドは、プリントダイ内の様々なチャネル、そして最終的にはプリントダイの底(即ち、基板向き)側のノズルとプリントヘッドに材料を分配するプリントマニホールドを含むことができる。プリントマニホールドは、通常、プリントダイが取り付けられている金属やシリコン等の材料のブロックである。マニホールドは、プリントダイをプリントヘッドアセンブリに接続することもできる。OVJPプリントエンジンは、通常、プリントダイ、ガス送達マニホールド、及び関連するガスライン、z軸位置決め(z-positioning)又はフライハイト(fly height)調節システム、及び幾つかの場合では、基板上に堆積させるOLED材料を生成するために使用される供給源等の材料昇華供給源を含む。本明細書に開示されている幾つかの配置は、以下に詳細に説明されるように、統合された昇華供給源を使用する。同様に、「プリントバー」は、複数のプリントヘッド又はプリントエンジンを含むことができる。動作中、本明細書に開示された実施例は、様々な実施例で説明され示されるように、個々のプリントバー、プリントエンジン、及び/又はプリントヘッドの位置決めの独立した調節を可能にする。一般に、特定の配置に基づいて不可能でない限り、本明細書に開示された配置がプリントヘッドの配置又は移動を指す場合、プリントヘッドを備えた単一の制御可能ユニットに追加の部品を有するプリントエンジンで同じ配置を使用することができる。
【0074】
OVJPシステムでは、一般的に、加熱されたガスと有機材料の混合物は、それぞれ有機蒸気源と排出アセンブリに接続されたシステムガスラインとの間で密閉的に輸送され、分配されることが望ましい。したがって、各プリントヘッドのプリントマニホールドを使用して、ガスを入口からプリントダイへ、及びプリントダイから出口へ送ることができる。また、(低温での)凝縮や(高温での)分解を防ぐために、ガス温度を適切な範囲に維持し、更に、敏感なシステム部品や基板をプリントヘッドマニホールドで発生する熱から保護することも望ましい。
【0075】
また、プリントダイを、望ましいプロセス条件に対応する基板の垂直距離(「フライハイト」)内に維持することも好ましい。OVJPのフライハイトは、通常20~60μmの範囲である。幾つかの配置では、各プリントヘッド上の垂直アクチュエータ及び距離センサを使用する閉ループシステムを使用して、基板上の所望のフライハイトを維持することができる。
【0076】
適切なプリントダイの配置、製造技術等の例は、それぞれの内容が参照により全体に組み込まれている米国特許第9,583,707号、第10,704,144号、第11,104,988号、第11,220,737号、第11,267,012号、第11,588,140号、及び内容が参照により完全に組み込まれている米国特許出願公開第2021/0280785号に提供されている。本明細書に開示されている実施形態での使用に特に適していることができるプリントダイの配置の例示的な例は、米国特許第11,267,012号における
図4及び関連する本文、及び米国特許第10,704,144号における
図5~6及び関連する本文に記載され示されているが、他の配置を使用することもできる。例えば、米国特許第11,267,012号の
図4は、1以上の排出チャネル402に隣接する、又は囲まれた供給チャネルを有するノズルアセンブリ400の断面図を示す。堆積される送達ガス輸送材料は、送達チャネル401のアパーチャから排出される。基板上に堆積しない材料305は、排出チャネル402を通じて除去される。閉じ込めガス403は、ノズルの下の位置かつノズル及び/又は排出チャネル402に隣接する位置から、ノズル、周囲供給源等の供給源からノズルの送達チャネルの開口部から排出される材料の流れに反対する方向に提供されることができる。閉じ込めガスは、堆積ゾーンの外側から内側に流れ、余剰材料を排出チャネル402に導くことができる。排出チャネル402は通常、真空源に接続される。排出チャネル402は、材料が堆積される定められた領域において、基板上の堆積材料の均一性を改善するために、送達チャネル401に対して角度を付けてもよい。排出チャネル402は、部分的又は完全に送達チャネル401を囲むことができる。幾つかの構成では、ノズルブロックの平面エッジとノズルブロック内のチャネルによってノズルのアパーチャが画定され、ノズルブロックの下面を超える追加に減少させた(tapered)又は延長された物理的部分を必要としないようにすることができる。ノズルのアパーチャは、例えば、送達チャネルセパレータ404によって、分岐される、又は分割される。別の例として、米国特許第10,704,144号の
図5~6は、マイクロノズルアレイの周りの1以上のシールドガス流を使用する「DEC」タイプのプリントダイ(「ノズルブロック」)の図を示す。OVJP堆積チャンバー内の周囲ガスは、通常、比較的停滞している。流れるシールドガスは、堆積チャンバー内の水とO
2のレベルが0.001ppm未満になるように精製されたものを使用することができる。この配置では、堆積ノズルの前及び/又は後ろに取り付けられたシールドガスチャネル501は、チャンバー内に存在することができる残留ガスからノズルアレイを分離する精製ガス流を生成する。ノズルアレイ間に取り付けられたシールドガスチャネル502は、閉じ込めガスの供給源を提供して、正確なパターン化を達成し、隣接するアレイからの蒸気が一緒に出る(bleeding)のを防ぐ。米国特許第10,704,144号の
図6は、
図6の基板垂直方向からのプリントダイの図を示す。デポジタは、一体化したノズルブロック内のチャネルの終端に単一又は複数のアパーチャを含む。送達アパーチャ603は、不活性送達ガス内に含まれる1以上の有機蒸気の混合物を送達する。排出アパーチャ604は、デポジタと基板との間の領域からガスを引き出す排出チャネルと連通している。任意の閉じ込めチャネル605は、デポジタ面のくぼみによって形成される。これらのチャネルは、閉じ込めガスがノズルブロックの端から、有機蒸気の広がりをブロックするために必要とされるデポジタの正中線に向かって流れるための、低い抵抗経路を提供する。この配置における閉じ込め流は、チャンバー周囲とは対照的にシールドガス流からのデポジタを囲むガス周囲によって供給される。或いは、1以上の閉じ込めアパーチャ606を介して閉じ込めガスを供給することができる。
【0077】
図3は、基板305を保持する移動圧力真空(PV)テーブル315を含むOVJPシステム構造を示す。
図3における図は、堆積システムの上から、即ち、この図からプリントヘッド330の下(遠い側)に配置された基板305とPVテーブル315と、プリントヘッド330を見下ろす。静的ガントリー320は、共通のプリントバー340上に配置されたOVJPプリントヘッド330を保持する。基板305及び/又はPVテーブル315は、Y方向310にYステージトラック350又は同様の配置を介してプリントヘッド330の下に移動させることができる。例えば、プリントヘッド330の下の第1の位置に基板を移動させて堆積を開始し、プリントヘッド330が材料を基板に堆積させて一連のプリントライン355を形成する間にY方向に移動させることができる。この構成では、プリントヘッド330は、フライト制御と堆積開始と停止のために垂直方向のみ、即ち基板305に向けて及び基板305から離れて移動する。その結果、移動方向310に対して垂直に測定した基板305の幅全体をプリントヘッド330で覆われる必要があり、比較的多数のプリントヘッドを必要とする。
【0078】
プリントダイは一般的に約30~100mmの幅を有し、OVJPノズルは一般的に長さの75%まで延びているが、これは、ディスプレイ製造に使用される基板のサイズ、並びに異なる色のサブピクセル(例えば、RGB配列の赤、緑、青のサブピクセル)に異なるヘッドが使用されるという事実に関連して比較的制限され、このような構造は一般的に多数のプリントヘッドを必要とする。例えば、対角線55インチのGen8.5ディスプレイパネルに堆積するには、一般的なOVJPシステムは、少なくとも96個のプリントヘッドを使用し、同数のダイとフライト制御機構を備えている。各フライト制御機構は、通常、フライト制御機構毎に少なくとも2つのギャップセンサと関連する垂直アクチュエータを含む。このような多数のプリントヘッドのフライハイトを制御することは、特に複雑であることがあるので、システムの信頼性を確保することは、部品の数のせいで困難であることがある。更に、従来のOVJPプリントヘッドは通常、基板に対して横方向に移動できないため、システムへの一体化前に、プリントバーレベルで互いに非常に正確に位置を合わせる必要がある。これは、高精度のステージを移動する高精度の位置測定機能と、各ヘッドの高精度の調節機能を含む個別の位置合わせアセンブリが必要である。
【0079】
更に、このスタイルのOVJP構造は、基本的に特定のパネル/基板サイズ又は比較的小さなサイズ範囲専用であり、製造可能なディスプレイパネルの種類とサイズを制限する。1つのディスプレイサイズから別のディスプレイサイズに変更する(異なる基板又はMMGレイアウトの共通基板上にあるかどうかにかかわらず)ことは、一般的に、全てのプリントヘッドを交換する必要がある。なぜならば、ディスプレイサイズが異なるとピクセルピッチが異なり、プリントヘッドの間隔がディスプレイピッチに一致するように選択されるためである。実際には、位置合わせアセンブリに事前に構成されているプリントバー全体を交換することによって行うことができる。しかしながら、このような変更は、一般的に、プリントヘッドの温度を下げ、堆積チャンバーの通気を行い、新しいプリントバーを取り付けて位置合わせし、システムの圧力を超高真空(UHV)圧力まで下げてシステム内の残留水蒸気と酸素を除去し、最後にヘッドをプロセス温度まで上昇させるために、システムの中断期間が大幅に必要になる。レイアウトを切り替えるときにも、基板の回転が必要になる場合がある。
【0080】
従来のOVJP堆積システム構造のもう1つの潜在的な欠点は、キャリアガスと有機材料蒸気を必要な多数のプリントヘッドに供給するために、材料供給源は比較的大きくする必要があり、それによってヘッドからある程度離れた場所に配置し、通常は真空チャンバー又は同様のエンクロージャーの外側に配置する必要があることである。供給源とプリントヘッドとの間の距離が大きくなるほど、冷たい部分、関連する凝縮、及びその他の望ましくない影響を避けることがより困難になる。ガスを均一にし、有機材料蒸気を複数のプリントヘッドに同時に供給することも課題である。
【0081】
最後に、従来のシステム構造で使用されるプリントダイのノズルの長さは、ダイ設計の結果として比較的短いサイズに制限され、その結果、システムの達成可能なスループットを制限することがある。
【0082】
本明細書で開示される実施形態は、以前のOVJPシステムのこれら及びその他の欠点に対処する。本開示によって提供される特徴は、基板及び/又はOVJPプリントヘッドの双方向相対運動;個々のプリントヘッドの独立した位置合わせ及び/又はリアルタイム位置調節;モデル変更とMMG処理を容易にするマルチダイ型プリントバー構成;各プリントヘッド専用の近接源;より長いアパーチャを有するプリントダイの設計と配置;及び新しいプリントダイ構成に対応するプリントヘッドの設計を含む。
【0083】
本明細書に開示された実施形態は、同等又は同じサイズの基板のために、基板上にピクセル及びピクセル型構造を堆積するために必要なプリントヘッドの数を減らすことによって、システムの複雑さを軽減することができる。このような削減を達成する実施形態は、1以上の個別のプリントヘッド又は複数のプリントヘッドを搭載する1以上のプリントバーを有する実施形態を含むことができる。プリントヘッドの数の削減は、プリントヘッドが基板の幅全体に延びないため、
図3に示されるような従来の構造のように、プリントヘッドと基板の相対的な動きが一方向だけにはならなくなることを意味する。幾つかの実施形態では、プリントヘッドは2次元で基板に対して移動可能である。本明細書に開示されているように、相対運動は、本明細書では走査方向又はY方向(典型的には基板パネルの短い端部に平行)として参照される、
図3に示すような移動方向330と、走査方向に垂直なX方向又は「進行」方向(典型的には基板パネルの長い端部に平行)の両方で提供されることができる。単一パネルレイアウトのステージ動作パターンは、Y方向(
図3に示すような従来構造のように)の走査動作とX方向の進行動作であることができる。更に、通常は複数の走査を使用して必要な全てのラインをプリントするため、Y動作を担当するステージは、従来の構造よりも大幅に高速になることがある。従来の走査動作速度が通常は10~50mm/sからであるのに対し、2つの100mmヘッド(色当たり)システムでは、走査動作を16倍速く、即ち150~750mm/sの範囲で使用する。
【0084】
本明細書に開示されている実施形態では、1以上のOVJPプリントバー(それぞれが1以上のOVJPプリントヘッド又はプリントエンジンを含む)が基板を保持するフロートテーブルの上に配置され、2つは、2つの水平方向の各軸方向、即ち、プリントバーの下に配置されているときに基板に平行な1以上の平面内で、互いに相対的に移動可能である。相対的な動きは、フロートテーブルが2つの垂直な水平方向に、即ち、基板の平面に平行な平面内で自由に移動できるようにすることによって達成されることができ、一方、OVJPプリントバーは、基板との正確な位置合わせを達成するために、水平方向に所定の位置に固定されるか、又は細かい移動のためにのみ水平方向に移動できる。或いは、フロートテーブルは、1つの水平方向に移動可能であるが、プリントバーは第1の水平方向に垂直な第2の水平方向に完全な範囲の動きで移動可能であり、2つの水平方向は基板の平面に平行な平面を画定する。一般的に、本明細書で開示される配置は、1以上のOVJPプリントヘッドを含む1以上のOVJPプリントバーを含む。従来のOVJP堆積システムと同様に、OVJPプリントヘッドは、基板上に堆積される材料をジェットで基板に向かって垂直方向に排出するように構成されている(即ち、基板に対して垂直又は実質的に垂直である)。基板を保持するために、PVテーブル又は「フロートテーブル」をOVJPプリントヘッドの下に配置することができる。本明細書で使用されるように、基板及び/又はPVテーブルは、重力の方向に対する互いの向きに関係なく、OVJPプリントヘッドから排出された材料のジェットの経路に配置されている場合、OVJPプリントヘッドの「下」に配置されていると記述することができる。即ち、プリントヘッドは上方向に材料を排出し、基板は重力の方向に対してプリントヘッドの「上」に配置されることができる。このような配置では、基板は、本明細書で記載されるように、OVJPプリントヘッドの「下」に配置されていると依然として考えられる。
【0085】
図4は、複数のプリントヘッドを保持する、
図3に示されるような静的ガントリーの下で、PVテーブルがX方向とY方向の両方に移動する実施形態を示す。この配置では、
図3に関して説明されたように、可動式PVテーブル410が基板305を保持する。
図3に関して説明されたように、1以上のプリントヘッド330を含むプリントバーが静的ガントリー320上に配置されている。PVテーブル410は、Yステージトラック450だけでなくXステージトラック475を介してプリントヘッド330の下で移動可能であり、これによりPVテーブル410と基板305をプリントヘッド330の下の平面内での移動を可能にする。例えば、基板は、「走査」方向と呼ばれる第1の方向310に、プリントヘッド330の下の第1の位置まで移動して、堆積を開始することができる。PVテーブルは、第1の方向410に設定された距離を移動することができ、その後PVテーブルは、第1の方向410を反転する前に、「進行」方向と呼ばれる第2の方向412に設定された距離移動することができる。このようにして、プリントヘッドは、基板上に任意の所望の堆積の任意の数の平行線を形成するためにプロセスが繰り返されている間、固定又は実質的に固定された位置に保持されることができる。
【0086】
この構成では、
図3の配置と同様に、プリントヘッド330は、フライト制御及び堆積の開始と停止のために、垂直方向、即ち基板305に向けて及び基板から遠ざかる方向にのみ移動することができる。幾つかの構成では、プリントバー及び/又はプリントヘッドの位置を比較的短い距離にわたって調節して、以下に更に詳細に開示されるように、微細な位置合わせ制御を提供することができる。微細な位置合わせは、例えば、堆積プロセス中にプリントヘッドが位置合わせから外れて移動していることを示す位置合わせフィードバックループ(feedback loop)に基づいて、堆積が開始される前又は堆積中に実行されることができる。本明細書に開示されたこの構成及び他の構成では、フライハイトはヘッド単位又はバー単位で制御されることができる。即ち、各プリントバー上の各プリントヘッドの高さは、同じバー上の他のプリントヘッド及び他のプリントバー上のプリントヘッドとは独立して調節することができ、及び/又は各プリントバーの高さは、他のプリントバーの高さとは独立して調節することができる。PVテーブル410のX運動412に対応するために、
図4に示されるシステムは、
図3に示されるように、従来の構造よりも大幅に広くすることができる。例えば、2つのプリントヘッド配置では、システムは、
図3の対応する配置の約1.5倍のサイズであることができる。前述のように、この配置のプリントヘッドは、PVテーブルの上の比較的静止したガントリーに取り付けられたプリントエンジンに含まれることができる。
【0087】
図5Aは、PVテーブル510がY方向に走査し、プリントヘッドがX方向に進行する別の配置を示す。このような配置は、「分割軸」構造と呼ばれることができる。この配置は、
図3に示されるように、PVテーブル510に同じYステージ350を使用することができる。
図4のシステムとは対照的に、PVテーブルは、単一の水平方向310に移動し、プリントヘッド530(又は、前に開示されたプリントヘッドを含むプリントバー又はプリントエンジン)は、第2の水平方向575に移動するプリントヘッドステージ535に配置されるため、プリントヘッド530をX方向に進行させることができる。
図3~4の配置と同様に、本明細書で開示されているように、プリントヘッド及び/又はプリントバーは、フライハイト制御を介して基板に向かって垂直に移動することもできる。
【0088】
図5Bは、PVテーブルがY方向に走査し、プリントエンジンがX方向に進行する配置の別の例の上面図を示しており、各プリントエンジンの独立した回転/シータ制御を備えている。各プリントエンジンは、X方向(ページ上で垂直方向)に基板の幅全体を覆うことができる。図に示されるように、TACTの改善のために、1つの基板パネルに同時に堆積する複数のプリントエンジンが存在することができる。また、図に示されるように、Y方向に沿って配置された複数の静止プリントガントリーであることもできる。各プリントエンジンは、垂直(z)方向の基板上のプリントエンジンの垂直距離及び/又はシータY回転位置をアクティブに制御することができる。プリントダイの前後のオフセットフライハイトセンサを使用して、監視することができる。
【0089】
図5A~5Bに示されるシステムは、
図3に示されるシステムとほぼ同じ幅を有するが、有機ガスの生成及び/又は分配システムに大幅な変更を必要とする。そのため、材料供給源は、プリントヘッド530と連動して移動することができる、及び/又はプリントヘッド530を介して堆積される材料を送るために使用されるガス分配チューブは、供給源に対するヘッドの動きを適応させる。これは、ベローズ(bellows)や当技術分野で知られている他の構造によって行うことができるが、このアプローチで凝縮を回避し、超高真空を達成することは困難であることがある。幾つかの実施形態では、参照によりその全体が組み込まれる2023年5月3日出願の米国特許出願第18/311,550号(整理番号UDC-OVJP-1005-US)に開示されているような接続を使用することができる。
【0090】
図6は、前に開示されたようにプリントエンジンに組み込まれることができるプリントヘッド530が、比較的静止したPVテーブルの上、Y方向610に走査するプリントガントリー625上でX方向575に進行する配置を示す。システムの物理的構造に関して、この配置は、
図3の従来の配置から最も根本的に逸脱していることがある。有機ガス分配と走査構造に対する課題は、
図5に示した分割軸の場合よりも増幅される。なぜならば、
図5の分割軸の場合とは対照的に、キャリアガスと排出管は、ガントリーが基板全体を移動するため基板の長さと幅を移動するのに対し、分割軸動作では、基板の幅を移動するだけでよいためである。しかしながら、PVテーブル610上の基板は静的であるため、システムのフットプリントは大幅に小さくなることがある。
【0091】
図4~6のプリントヘッド及び/又は基板の動きの程度を、個々のOVJPプリントヘッドの寸法の点で、及びそれに対して記述すると便利なことがある。OVJPプリントヘッドの寸法は、プリントヘッドと基板との間の相対的な動きを実行して、プリントライン355の複数のセットを基板上に堆積させることができるため、有用な手段を提供する。OVJPプリントヘッドは、通常、プリントダイの底面に複数のアパーチャを含み、材料、排出、及び場合によっては閉じ込め材料が流れることを可能にする。ダイは通常、Si又は同様の材料の一体化したブロックであるが、他の配置も可能である。ダイは、材料フローチャネルを複数層の材料でエッチングすることによって製造され、その後接合されて、一体化したダイを形成する。
図7Aは、エッジオンOVJPプリントダイアセンブリの高レベル構造の例を示す。
図7Bは、面内のプリントダイアセンブリの高レベル構造を示す。この場合、ノズルは、ダイが作られるウエハの厚みによってノズルの長さが制限されるエッジオン配列よりも、はるかに長くすることができる
【0092】
図7A及び7Bは、3つのOVJPプリントヘッドを含むOVJPプリントダイのセグメントを示す。各プリントヘッドは、両側に排出アパーチャ710の排出口を持つデポジタ又は送達アパーチャ720を含む。他のOVJPプリントヘッドの配置には、異なる数又はアパーチャの配置、及び/又は異なる種類のアパーチャを含むことができる。例えば、閉じ込めガス流を送達するための閉じ込めアパーチャは、排出アパーチャ710の両側に配置されることができる。別の例として、排出アパーチャ710の対の間に複数のオフセット送達アパーチャ720が配置されることができる。各プリントヘッドは、前に開示されたように、プリントライン355の一つをプリントするために一緒に機能するアパーチャのセットを含む。即ち、OVJPプリントヘッドは、個別のプリント領域、通常は材料の島又はラインを基板上に堆積させるために連動して動作するプリントダイにおけるアパーチャによって画定されることができる。OVJPプリントヘッドは、
図7A~7Bに示されるように、それぞれ最も外側のアパーチャの最外端からプリントヘッドのアパーチャにわたって測定された幅Wによって特徴づけられることができる。
図7A~7Bに示される例では、排出アパーチャ710は、各プリントヘッドの各側面の最外端を画定し、Wは、左の排出アパーチャの左端(最外端)から右の排出アパーチャの右端(最外端)まで測定されることを意味する。OVJPプリントヘッドで追加又は異なるアパーチャが使用されている場合、Wは左端アパーチャの左端から右端アパーチャの右端まで測定される。本明細書に記載されているOVJPプリントバー、プリントガントリー、又はPVテーブルの動きについては、可動部品が、関連する方向に少なくともWの範囲、好ましくは少なくとも2W、5W、10W、又はそれ以上の範囲を移動できることが望ましいことがある。逆に、部品が特定の水平方向に「固定」されていると記述されている場合、部品はその方向には移動できないか、又は最小限の量でしか移動できないことがある、又は、例えば細かい位置合わせ調節を行うために、W未満の距離を移動できることがある。例えば、
図4に示される配置では、プリントバー又は静的ガントリー320が所定の位置に固定されていることがあるが、OVJPプリントヘッド330は、細かい位置合わせ制御を可能にするために、1以上の水平方向にW以下の距離を移動できる。Wは、単一のプリントヘッドに対応する「ターゲット」領域の任意の部分内にOVJPプリントヘッドを配置することを可能にするのに十分であるため、プリントヘッド(又は、他の配置では、精密な位置合わせの目的でのみ移動可能な類似の部品)がWを超える距離にわたって調節可能である必要がない場合がある。
図4等の配置では、プリントヘッドは、PVテーブル410の利用可能な動きに対応する各方向310、412においてW以下の距離を移動することができる。PVテーブル自体は、基板の大部分にわたってプリントヘッドによる堆積を可能にするために、W、2W、5W、10W、又はそれ以上の距離を移動することができる。幾つかの配置では、PVテーブルは、材料が堆積される基板の同じ寸法に対応する距離を介して各方向に移動できることがある。即ち、PVテーブルは、処理対象の基板のY軸方向(Y dimension)と少なくとも等しい距離をY方向310に移動でき、基板のX軸方向(X dimension)と少なくとも等しい距離をX方向412に移動できる。通常、PVテーブルは、プリントヘッド330が基板の全幅に及ぶことが多いため、基板のX軸方向よりも大きい又は僅かに大きいX方向412の距離を移動する必要はないが、幾つかの配置では、PVテーブル410は、基板のX軸方向の最大2倍の距離を移動できる場合がある。
【0093】
別の例として、
図5A~5Bに示される配置では、PVテーブルは、Y方向310に少なくともW、2W、5W、10Wの距離を移動することも、基板のY軸方向に対応する距離、又は基板のY軸方向の2倍、3倍、4倍、5倍以上の距離を移動することもできる。プリントヘッドステージ535は、X方向575に少なくともW、2W、5W、10Wの距離を移動することができるので、プリントヘッド530をX方向に移動させることができる。一般的に、プリントヘッド530は基板の全幅に及ぶため、通常、プリントヘッドステージは、基板のX軸方向よりも大きく、又は僅かに遠くまで移動する必要はない。
【0094】
別の例として、
図6の配置では、PVテーブルは、精密な位置合わせのためにWまでの距離だけ、2つの水平軸方向575、610で移動可能である。プリントガントリー625又はプリントヘッド530は、一方の軸方向575ではW、2W、3W、4W、5W、10Wの距離、他方の水平方向610では少なくとも基板のY軸方向に等しい距離又はY軸方向の2倍の距離を移動可能である。
【0095】
幾つかの配置では、プリントバー又はプリントバーガントリーは、W、2W、3W、4W、5W、10W以上のように、より大きな距離を移動することができる一方で、プリントバー上のプリントヘッドは、基板/PVテーブルに対して、又は相互に、細かい位置決めと位置合わせを可能にするために、1つ又は2つの水平方向にW以下の距離を移動することができる。また、プリントヘッドは、正確な位置合わせを可能にするために、本明細書に開示されているように回転可能である。
【0096】
より一般的には、OVJPプリントヘッド及び/又はPVテーブルの粗い全体的な動きとは独立して、基板との更なる位置合わせのためにOVJPプリントヘッドを調節することもできる。従来のOVJP構造では、個々のプリントヘッドの回転とX位置は、システムのセットアップ時に調節する必要がある。この調節には通常、複雑で高精度な位置合わせ手順と対応する機器が必要である。このような位置合わせを行うシステムの1つが、構成ステーションであり、構成ステーションには、プリントヘッドを搭載したプリントバーが装着されているガントリー、ヘッドの下を移動し個々のプリントダイの位置と回転を測定するデジタルカメラ等の高解像度センサ、及び各ヘッドの高精度な調節機能を含む。
図3は、従来のOVJP堆積構造で使用されるこのようなシステムの例を示す。調節は、位置センサからのデータをフィードバックとして使用して、手動又は自動で行うことができる。位置合わせ後、ヘッドの回転とX位置は固定され、プリントヘッドの相対位置と回転の残余誤差は、ディスプレイバックプレーン上のピクセルに対するプリントラインの位置に反映される場合がある。
【0097】
本明細書に開示された実施形態の利点は、ヘッド数の削減により、特に個別に制御されるプリントヘッドの場合に、このような複雑な位置合わせ体系を回避できることである。複数のプリントヘッドが1つのユニットとして制御されるプリントバーの場合、各バーのヘッドは、バー全体が位置合わせされる前に相互に事前に位置合わせされることがある。本明細書に開示された実施形態における位置合わせは、
図9に示されるように、各プリントヘッドのX方向の位置合わせ及び角度θによる回転制御のための独立した制御によって行われることができる。追加されたシステムの複雑さは、従来のシステム構造よりもはるかに低くなっている。このような位置合わせは、前に開示されたような細かい位置合わせ制御に対応することができる。
【0098】
プリントヘッドの相互の位置合わせは、プリントダイ上の基準を検出するように構成されたセンサを使用することによって達成することができる。光学センサ、特に三角測量センサ、干渉センサ、又は色共焦点センサは、この目的に最も適していることがある。このセンサは、
図10に示されるように、プリントヘッドが向いているX方向に移動するステージに設置されることができる。本明細書に開示される
図4の固定ガントリー/移動PVテーブル配置及び
図5A~5Bの分割軸構造において、この軸はそれ自体がテーブルスキャン/Y軸に取り付けられてもよいが、
図6に示すような移動ガントリー/固定テーブル配置に固定することができる。センサをプリントヘッドに沿って移動させ、基準を検出することは、ダイのX位置を決定することができ、それに基づいて更なる位置合わせ調節を行うことができる。プリントヘッドの基準をY方向に移動することで、プリントヘッドの回転を決定することができ、同様に調節することができる。
【0099】
本明細書に開示されたシステムの動作において、プリントヘッドのX位置と回転は、基板の位置と向きに基づいて全体的に調節することができる。後者は、例えば、基板のいずれかの側の基準の位置を検出する高解像度位置合わせカメラを使用して検出することができる。プリントヘッド(又はプリントバー全体)の位置を基板の位置に結びつけるために、
図11に示されるように、位置合わせカメラを使用してプリントヘッドの位置合わせセンサを画像化することができる。アラインメントカメラが通常、システムの真空エンクロージャーの外側の固定位置に配置されている
図4及び
図5の移動テーブル及び分割軸構造では、これは、センサをカメラのX、Y位置に移動し、センサの光スポットの位置を捉えることによって達成されることができる。
図6の移動ガントリー構造にプリントダイセンサーの位置を登録するために、カメラをY方向に移動することができる。移動カメラは、OVJPシステムが動作する真空チャンバーの外側に配置されることができるが、これは、チャンバー内に別のステージとより大きなビューポートが必要になることがある。或いは、カメラを真空チャンバー内に配置し、例えばガントリーに取り付けて移動させることもできる。しかし、このような配置では、超高真空(UHV)条件への到達がより困難になることがある。
【0100】
本明細書で開示されている個々の調節機能は、初期位置合わせで全体の基板基準を使用して、各プリントヘッド及び/又はバー及び/又はプリントエンジンを基板(又はバックプレーン等の基板上の特徴)に位置合わせすることを可能にするだけでなく、例えば、基板パネルの端部を基準として使用する等、位置合わせに対するリアルタイムの補正を可能にすることができる。後者は、直線性等のステージエラーの補正を可能にするが、これは計測ベースのルックアップテーブル(look-up table)を使用して行うこともできる。パネル端部の検出は、高解像度カメラを使用して行うこともできる。更に、新しいシステム構造の個々のプリントヘッド/バー調節機能により、真空を制動することなく、プリントヘッド位置の再度の位置合わせを行うことができる。
【0101】
本明細書に開示された実施形態は、従来のOVJPシステムよりも大幅に少ない数のプリントヘッドを使用することができるため、個々に制御されたプリントヘッド又はバー毎に専用の昇華源を使用することが実行可能である。このような供給源は、従来のOVJPシステム構造で使用されるものよりもはるかにコンパクトであることができる。なぜならば、専用の供給源構成は、流れの分割が少なくて済むか、又は必要とせず、供給源はプリントヘッドの近くに配置されることもでき、ガス送達では曲げが少なくて済むか、又は必要としないからである。これにより、それらから発生することがあるデッドゾーン、コールドスポット、及び/又は凝縮/粒子化の可能性が低下する。
図12A及び12Bは、従来の構造(
図12A)におけるガス分配と、本明細書に開示された実施形態で使用可能な専用供給源構成(
図12B)との違いを示す。特に、ガス分配マニホールドは必要なく、各プリントヘッド又はプリントバーは、供給源が接続されているプリントヘッド又はプリントバーにのみ堆積される材料を提供する専用の材料供給源を有する。
図12Bに示されるようなコンパクトな昇華供給源も、供給しているプリントヘッドと連動して移動するのにより適している。したがって、幾つかの構成では、それぞれのプリントヘッドと物理的に統合された供給源を使用することができる。即ち、プリントヘッドと同じ真空エンクロージャー内に存在し、材料供給源と関連するプリントヘッドとの間に走行ライン(run line)、ベローズ等を必要としない。供給源が真空エンクロージャー内に配置できない場合、特に持続的なUHV環境が必要とされる堆積のために、静的供給源に基づく構成が好ましい。(供給源の動きに対応するガスフィードスルーは、この要件を満たすことができない可能性がある)。これはまた、供給源とプリントヘッドとを接続するガスラインは、エンクロージャーの真空側のプリントヘッド/バーの動きに対応できる十分な柔軟性を有する部分が必要であることを意味する。即ち、各ガスラインは、関連するプリントバー又はプリントヘッドの動きの方向と最大距離に対応する十分な柔軟性を有する必要である。前に開示されたように、このような動きは、関連するOVJPプリントヘッドの幅W及び/又は処理される基板のエッジ寸法の点から測定されることができる。幾つかの構成では、個々のベローズが使用されることができるが、幾つかの材料やプロセスパラメータでは、必要な長さにわたってデッドゾーンや密閉性を回避することが困難なことがある。
図4に示されるような移動ガントリー/静的基板構成は、プリントヘッド/バーに統合された供給源を使用することが好ましい場合がある。真空エンクロージャーに配置された移動供給源は、キャリアガス供給ラインにも真空側の柔軟性を有する必要があるが、これらのライン上の温度均一性はそれほど重要ではない。どちらの場合も(真空チャンバー内に配置された統合移動供給源又は外部に配置された静的供給源を有する移動ヘッド)、柔軟なラインは、その開示内容が参照により全体に組み込まれている米国特許第10,566,534号に記載されているような別の差動的に排出されるエンクロージャー(differentially pumped enclosure)に配置されることができる。
【0102】
本明細書に開示される実施形態は、複数のディスプレイサイズをプリントするのに適したプリントバーの使用を可能にすることもできる。従来のOVJP配置におけるノズルピッチは、通常、プリントされたOLEDラインを堆積するためのディスプレイバックプレーンのピクセルピッチと一致するので、従来のシステム構造では、異なる単一のパネルサイズレイアウト間の切り替えは、一般に、システム内の全てのプリントヘッドの交換を伴う。より具体的には、通常、プリントヘッドを搭載するプリントバー全体を1つのプリントダイ型と交換し、プリントヘッドを搭載するプリントバーを別のプリントダイ型と交換する必要がある。これは、異なるタイプのプリントヘッドを有する冗長なガントリーを使用することによって回避でき、その場合、レイアウトを変更するときにガス供給をあるタイプのプリントヘッドから別のタイプのプリントヘッドに切り替える必要がある。パネルの向きが異なるレイアウト(縦方向対横方向)間の切り替えは、ガラス基板の回転も必要であるため、システムは両方のガラスの向きに対応できるように設計する必要がある。
【0103】
本明細書に開示される実施形態では、プリントガントリーは、異なるパネルサイズ専用のプリントヘッドを搭載することができる。あるタイプのプリントヘッドから別のタイプのプリントヘッドに共通の供給源を切り替えることも可能であるが、時間がかかる。プリントに使用されないプリントヘッドは、リフトオフ(lift-off)高さ(即ち、それ以上では堆積が起こらないギャップ;典型的には約200μm)を超えて持ち上げられることができる。使用されていない、持ち上げられたプリントヘッドは、堆積に使用されている場合と同じように、アクティブなプリントヘッドと連動して移動することができる。前述のように、各ヘッドは、専用の材料供給源を有することができる。別の配置では、ガントリーの1以上の側面の専用領域に未使用のヘッドを「置く」ことによって、異なるタイプのプリントヘッド間でシステムを切り替えることができる。従来のシステムとは対照的に、異なる向きを有するレイアウト間の切り替えは、必ずしもガラス回転を必要としない。代わりに、回転したレイアウト及び走査方向のためにプリントヘッドは、単に90度回転させることができる。
【0104】
マルチモデルガラス(MMG)レイアウト、即ち、共通の基板上に複数のパネルタイプを使用するレイアウトは、基板の使用率を最適化することを目的としている。MMGレイアウトは、
図13A~13Bに示されるように、本明細書に開示される実施形態と同様の方法で処理されることができる。この例では、2つの異なる方向のパネルタイプを有するMMG基板レイアウトに材料が堆積される。
図13A~13Bの例は、横向きの55インチパネルのセットと縦向きの65インチパネルのセットを示す。
図13Aは、55インチパネルをプリントするために使用される軌道を示し、PVテーブルは縦方向に前後に走査し、横方向に進行する。
図13Bは、65インチパネルの軌道を示し、PVテーブルは図のように横方向に前後に走査し、縦方向に進行する。同様のプロセスは、他の基板サイズ、レイアウト、及びMMG配置にも使用できる。プリントガントリーは、材料を堆積する対応するパネルの向きに従って、異なるプリントヘッドタイプを搭載することができる。通常、異なるパネルタイプは順番に処理され、未使用のヘッドはリフトオフの高さより上に持ち上げられる。異なるパネルタイプ間の移行時には、原則として、最初のパネルタイプに使用されるプリントヘッドを持ち上げ、2番目のパネルタイプに使用されるプリントヘッドを、異なるパネルタイプ間のスペース内で下げる必要がある。これは、例えばフォトリソグラフィ(マスキングの後に選択的エッチングを行う)によって余分なプリント材料を除去する場合には回避できる。同じタイプのパネル間、又はプリントスキャンの最初又は最後に不要なプリントラインを除去するために、同様の方法が使用されることができる。
【0105】
従来のOVJP堆積システムの代わりに、本明細書に開示される実施形態を使用する際の1つの課題は、スループットに関連する。堆積線の高さHlineがR*(Ldep/Vscan)に等しいので、例えば従来の走査速度の16倍のはるかに高いステージ走査速度Vscanを維持するには、成長速度R又はデポジタノズルの長さLdepのいずれかを増加させる必要がある。堆積速度は、主に堆積される材料を昇華させるために使用される温度に依存するが、通常、この温度を任意の高い値に増加させることはできない。理由としては、材料が特定の閾値を超えて分離し、損傷又は使用できない堆積をもたらすためである。したがって、非現実的な供給源温度を必要とせずに走査速度の増加に対応する最も効果的な方法は、デポジタノズルの長さ、即ち、プリントヘッドアパーチャのY軸寸法を増やすことである。例えば、プリントヘッドのノズルアパーチャを16倍に増やして補うことができる。
【0106】
本明細書に開示される実施形態では、様々なOVJPプリントヘッドのノズル設計を使用できる。それらの中で最も一般的なのは、
図7A及び7Bに関して記載されるようなエッジオン及び面内設計である。エッジオンダイは、複数の接着されたプレートの垂直方向の積層体から作られ、その中でガス分配チャネルはダイの短いエッジに沿って配置されたアパーチャにつながり、ダイの面内で画定される。通常、このような配置は、フォトリソグラフィを使用して製造されるが、レーザーアブレーション等の他の製造方法も可能である。エッジオンダイでは、ノズルの長さは個々のダイの厚みによって決定される。Siダイでは、それらが作られるウエハの厚みに相当し、通常は0.5mmである。従来のOVJPシステムでは、典型的には二つの個別のダイから作られたダイが使用され、総デポジタ長は約400μmである。エッジオンダイのノズルの長さの実質的な増加は、従来の構造と同じ成長率とスループットを維持するために積層体内の個別のダイ数の対応する増加につながり、ダイの位置合わせ及び接着信頼性に関連する問題を引き起こすことがある。3つの個別のダイを含むエッジオンダイアセンブリを使用することもできるが、スループット改善の余地は限られているかもしれない(同じ供給源条件での従来の2つのダイアセンブリのエッジオンアセンブリと比較して1.5倍)。
【0107】
面内ダイはまた、複数の接着されたプレート(通常は2~3)からなり、ガス分配チャネルが画定される。しかしながら、エッジオンダイとは対照的に、積層体は水平方向に向けられ、ノズルは
図7Bに示されるようにダイの面のオリフィスからなる。これにより、長いデポジタノズルをより簡単に製造することを可能にする。例えば、1、2、3、4、5、又は6mmの長さの送達アパーチャは、リソグラフィ技術を使用して実現可能である。
【0108】
プリントヘッドの開口部が長い場合に考えられる問題の1つは、チャンバー周囲から排出アパーチャへ(通常はデポジタアパーチャのいずれか一方に配置される)のガス供給が、プリントヘッドの幅(短軸)に沿って均一でない場合があることである。ダイの幅が比較的大きいため、ダイの中心、即ち排出チャネルに達するチャンバーガス(典型的には、N
2、Ar等の不活性ガス)が少なくなることがある。排出ガスは堆積物の閉じ込めの原因となるため、この不均一性はライン幅の望ましくない増加につながることがある。この問題を軽減する一つの方法は、
図14に示されるように、隣接するプリントヘッドアパーチャ群間に追加の閉じ込め(又は「メイクアップ(make-up”)」)ガス供給オリフィスを使用することである。これは面内ダイの配置を示すが、エッジオンダイにも同様の配置を使用することができる。これらのオリフィスによって供給される追加のガス流は、排出ノズルに供給されるガス流の均一性を回復することができる。プリントヘッドのアパーチャのセット間に配置されたアパーチャを使用する配置では、メイクアップアパーチャは単一の堆積されたフィーチャのみに関連付けられていないため、Wは、介在する閉じ込め/メイクアップのアパーチャを除いて、送達アパーチャと排気アパーチャとの間を測定されることができる。即ち、各メイクアップアパーチャは、2つの送達アパーチャの材料の形状と流れに影響を与える。更に、個々のプリントヘッド又はプリントバーが正確な位置合わせを達成するために移動する必要がある距離は、周囲のプリントヘッドアパーチャが適切に位置合わせされるときに適切に位置合わせされるため、メイクアップアパーチャの存在によって影響されない。
【0109】
閉じ込めの均一性問題に対処する別の方法は、
図15に示されるように、「閉じ込めプレート」に追加のメークアップガスジェットを使用することである。閉じ込めプレートは、プリントヘッドの下部に配置され、プリントヘッドを囲むアクティブな冷却チャネルを有するプレートであり、これにより基板の温度を制御することができる。しかしながら、どの配置が使用されるかにかかわらず、追加のガスはプリントヘッドアセンブリを通過するので、周囲のガスや圧力構成等、閉じ込めガスがチャンバーによって直接提供される他の構成とは対照的に、経路に沿って加熱される。したがって、これは、基板の温度に影響を与えることがあり、その場合は、PVテーブル又は基板ホルダーに追加の冷却又はその他の温度制御を含めることが好ましい場合がある。
【0110】
一般に、プリントダイは、プリントマニホールドによってプリントヘッドに統合されることができる。これらのマニホールドは、ダイとシステムガスライン(一方の側の昇華源ともう一方の排出アセンブリに接続されている)との間で有機ガスを密閉的に搬送及び分配し、ガス温度を適切な範囲に維持して凝縮(下端)又は分解(上端)を防止する。したがって、マニホールドには通常、有機ガスがダイとの間で均一に分配されることを保証するチャネル構造と、高精度で制御できる加熱構造とを含む。マニホールドは、500℃以上のOVJPプロセス温度に適合し、高い熱伝導率を有し、ダイ材料とよく一致する熱膨張係数を有する材料で作られるべきである。本明細書に開示される実施形態で使用する適切な材料としては、W、Mo、AlN、及び(ポリ)Siが挙げられる。
【0111】
図16Aに示されるように、エッジオンダイアセンブリと共に使用されるマニホールドは、有機ガスの均一な加熱を容易にし、送達入口ビアと排出出口ビアがプリントダイの反対側にある場合に適切なガスの干渉を確保するために、ダイの両面に取り付けられる。マニホールドへのダイの密閉取り付けは、機械的なクランピング(clamping)及び封止、又はロウ付けやガラスフリット接着(glass-frit bonding)等の接着技術を介して達成することができる。面内ダイの場合、
図16Bに示されるように、マニホールドはダイの片側、より具体的には上面のみに取り付けられる。この場合、クランプは基板上の小さな隙間にヘッドを配置する機能を妨げるため、ダイクランピングは不可能であり、そのため、取り付けは接着技術に依存する。
【0112】
前に開示されたように、本明細書に開示されたOVJPプリントバー及び配置は、従来のOVJP堆積システムより少ないプリントヘッドを使用することができる。例えば、
図4~6に示されたシステムのいずれかで使用されるOVJPプリントバー又はプリントバーのセットは、1回のパスで、即ち進行方向に移動することなく、基板の半分以上材料を堆積するのに十分な数のプリントバーを使用することができる。プリントラインが基板全体にわたって必要な場合、そのような配置は、2回の走査を実行することによって行うことができ、その間の進行距離は各走査で堆積された材料の幅に等しい。特定の数のプリントヘッドを複数のプリントバーに配置することも、各プリントバーが基板の半分以上を堆積するのに十分な同じ数のプリントヘッドを有することもできる。
【0113】
本明細書に開示される実施形態は、プリントエンジンと真空源との間の排出ラインの前に有機物を除去するプリントエンジンの一部としての冷却粒子フィルターを含むことができる。
【0114】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなく他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【外国語明細書】