(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166346
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】加熱調理食品の異風味低減方法
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20231114BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20231114BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20231114BHJP
A23J 3/16 20060101ALI20231114BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20231114BHJP
A23L 13/60 20160101ALN20231114BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20231114BHJP
【FI】
A23L27/00 F
A23D7/00 504
A23J3/00 502
A23J3/16
A23L13/00 A
A23L13/60 Z
A23L17/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077279
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022077214
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾森 仁美
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 由里菜
(72)【発明者】
【氏名】大沼 諒
(72)【発明者】
【氏名】田附 裕子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B034
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG01
4B026DL03
4B026DL04
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX05
4B034LC02
4B034LK10X
4B034LK12X
4B034LK13X
4B034LK21X
4B034LK26X
4B034LP01
4B034LP11
4B042AC01
4B042AD20
4B042AD21
4B042AD36
4B042AE03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK06
4B042AK07
4B042AK08
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP14
4B042AP18
4B042AP21
4B047LB09
4B047LE02
4B047LG18
4B047LG22
4B047LG23
4B047LG24
4B047LG31
4B047LG38
4B047LP03
4B047LP05
4B047LP06
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、該加熱調理食品の全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減する方法を提供する。
【解決手段】甘味料が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散することで、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の全体の風味を損ねずに、植物性蛋白質の加熱で生じる異風味を低減させることを見出した。特に、甘味料を直接添加する場合に比べて、顕著な異風味抑制効果が得られることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmで分散することを特徴とする、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品における、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味の低減方法。
【請求項2】
該水相における甘味料の濃度が固形分換算で15~75質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該加熱調理食品における、該水相により持ち込まれる甘味料が4~1000ppmである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
該甘味料が、麦芽糖である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該甘味料が、麦芽糖である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
甘味料が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散した、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品。
【請求項9】
該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、請求項8に記載の加熱調理食品。
【請求項10】
該甘味料が、麦芽糖である、請求項9に記載の加熱調理食品。
【請求項11】
以下の工程を含む、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の製造方法。
(A)甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmとなるように分散させる工程。
(B)(A)の工程で得られた油中水型乳化組成物を配合し、該加工食品を調製する工程。
【請求項12】
該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、請求項11に記載の加熱調理食品の製造方法。
【請求項13】
該甘味料が、麦芽糖である、請求項12に記載の加熱調理食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のPlant based foods(PBF)食品に代表される、動物性成分を使用しない食品の開発において、動物性素材の代わりに植物性蛋白質素材が使用されることが多い。その際、使用される植物性蛋白質素材は、様々な形態や物性を有する植物性蛋白質素材を用いられることが多い。このような植物性蛋白質素材を含む食品は、加熱すると植物性蛋白質由来の好ましくない風味が感じられることが問題となることがある。この問題に対し、様々な検討がなされており、解決方法に甘味料によるマスキングの技術が挙げられる。
【0003】
例えば、ソーマチンを配合し、大豆蛋白臭のマスキングと、食肉の呈味感を向上させる方法(特許文献1)、モルトエキスを添加した、大豆蛋白質の不快な風味が改善された大豆蛋白質を含む食肉、又は魚肉加工食品の提供(特許文献2)、スクラロースによる蛋白素材やレトルト食品のマスキング剤の提供(特許文献3)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-004699号公報
【特許文献2】特開2010-246449号公報
【特許文献3】特開2017-205133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3においては、各種甘味料により大豆蛋白質由来の不快味のマスキングを試みたものであるが、いずれの甘味料も、大豆蛋白質の不快味の抑制効果が示されている。しかし、甘味料自身に甘味があり、配合によって不快味の抑制効果をもたらしながらも、甘すぎて、加工食品全体の風味を損ねる可能性が示されている。
【0006】
よって、本発明の目的は、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、該加熱調理食品の全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが検討を行ったところ、甘味料が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散することで、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の全体の風味を損ねずに、植物性蛋白質の加熱で生じる異風味を低減させることを見出し、本発明を完成させた。特に、甘味料を直接添加する場合に比べて、少量の甘味料で顕著な異風味抑制効果が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmで分散することを特徴とする、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品における、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味の低減方法、
(2)該水相における甘味料の濃度が固形分換算で15~75質量%である、(1)に記載の方法、
(3)該加熱調理食品における、該水相により持ち込まれる甘味料が4~1000ppmである、(1)または(2)に記載の方法、
(4)該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、(1)又は(2)に記載の方、
(5)該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、(3)に記載の方法、
(6)該甘味料が、麦芽糖である、(4)に記載の方法、
(7)該甘味料が、麦芽糖である、(5)に記載の方法、
(8)甘味料が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散した、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品、
(9)該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、(8)に記載の加熱調理食品、
(10)該甘味料が、麦芽糖である、(9)に記載の加熱調理食品、
(11)以下の工程を含む、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の製造方法、
(A)甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmとなるように分散させる工程、
(B)(A)の工程で得られた油中水型乳化組成物を配合し、該加工食品を調製する工程、
(12)該甘味料が、麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、或いはショ糖からなる群より選ばれる1以上である、(11)に記載の加熱調理食品の製造方法、
(13)該甘味料が、麦芽糖である、(12)に記載の加熱調理食品の製造方法、
に関するものである。
【0009】
換言すれば、本発明は、
(1)糖が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmで分散することを特徴とする、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品における、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味の低減方法、
(2)該水相における糖の濃度が固形分換算で30~75質量%である、(1)に記載の方法、
(3)該加熱調理食品における、該水相により持ち込まれる糖が5~1000ppmである、(1)または(2)に記載の方法、
(4)糖が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散した、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品、
(5)以下の工程を含む、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の製造方法、
(A)糖が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmとなるように分散させる工程、
(B)(A)の工程で得られた油中水型乳化組成物を配合し、該加工食品を調製する工程、
に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品における、全体の風味が良好でありながら、植物性蛋白質素材の加熱による異風味の低減が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
(加熱調理食品)
本発明の加熱調理食品は、植物性蛋白質素材を含む必要がある。ここで言う植物性蛋白質素材とは、組織状植物性蛋白質素材及び粉末状植物性蛋白質素材から選ばれる1以上を指す。本発明の効果を最大限に得るには、組織状植物性蛋白質素材を含むことが望ましい。
【0013】
ここで言う組織状植物性蛋白質素材とは、植物由来の蛋白質素材を配合し、エクストルーダー等の組織化装置を用いて高温高圧下に組織化して得られるもので、粒状や繊維状、フレーク状、スライス肉状、膜状などの形状がある。植物由来の蛋白質素材には、大豆、エンドウ、緑豆、ヒヨコ豆、菜種、綿実、落花生、ゴマ、サフラワー、ヒマワリ、コーン、紅花等の油糧種子由来の蛋白質素材、あるいは米、大麦、小麦等の穀物種子由来の蛋白質素材等が挙げられる。また、蛋白質素材とは、上記植物の粉砕物、抽出蛋白、濃縮蛋白、分離蛋白等である。例えば、米グルテリン、大麦プロラミン、小麦プロラミン、小麦グルテン、全脂大豆粉、脱脂大豆粉、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、分離エンドウ蛋白、分離緑豆蛋白等が挙げられる。なお、水戻し済みで流通する製品も存在するが、本発明には乾燥品(水分10質量%以下)を用いることが好ましい。また、豆腐を圧搾することで組織化した大豆素材も、本発明に好適である。本発明には大豆を主原料とする組織状大豆蛋白が好適である。組織状植物性蛋白質素材は、所望の商品形態に応じ、任意の形状や大きさの製品を適宜選択し使用することができる。大豆ミート、大豆パフと言われる商品形態も使用することができる。
組織状植物性蛋白質素材中の蛋白質含量は、該素材の乾燥重量中、少なくとも30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%である。蛋白質含量が好ましい範囲であることで、本発明の効果を最大限に得ることができる。
【0014】
本発明の加熱調理食品は、粉末状植物性蛋白質素材を含む態様も望ましい。ここで言う粉末状植物性蛋白質素材とは、前述の植物由来の蛋白質素材を粉末化したもので、蛋白質を脱脂後の固形分あたり50質量%以上含むものである。本発明には大豆が好適である。市販の粉末状植物性蛋白を適宜選択して使用することができる。また、粉末状植物性蛋白は、生地中での分散性を高めるために、あらかじめ油脂を添加して粉末化したものも使用することができる。また、エマルションカード等、生地同士のつなぎの機能を付与した水中油型乳化物も使用することができる。ここでいうエマルションカードとは、粉末状植物性蛋白、水、油脂を含有し、均質化した乳化物をさす。何れの場合も、粉末状大豆蛋白が好適である。
【0015】
本発明に係る植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品は、該加熱調理食品中に植物性蛋白質素材を1質量%以上配合されれば、本発明の効果を得ることができる。より好ましくは5質量%以上、7質量%以上、10質量%以上、13質量%以上、又は15質量%以上で、本発明の効果を最大限に発揮することができる。
【0016】
本発明の加熱調理食品は、畜肉または動物脂を含んでも良い。ここでいう畜肉とは、牛、豚、鶏、馬、羊、鹿、猪、七面鳥、鴨、駝鳥、鯨などの鳥獣肉を指し、これらを単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。ここでは鳥獣は陸上動物でも水生動物でも良いが、陸上動物が好ましい。また、使用する肉の部位は特に限定されない。ミンチ状に加工した畜肉も使用することができる。畜肉を該加工食品に使用する場合、その使用量は該加工食品中30質量%以下が好ましい。より好ましくは20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、又は0質量%である。畜肉の使用量は、製品に求められる品質やコンセプトに応じて適宜決定すれば良い。本発明の趣旨から、畜肉は使用しない態様が望ましい。
また、ここでいう動物脂とは上記の鳥獣肉から単離或いは抽出された油脂を指す。動物脂を該加工食品に使用する場合、その使用量は該加工食品中30質量%以下が好ましい。より好ましくは20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0質量%である。畜肉或いは動物脂の使用量は製品に求める品質やコンセプトに応じて適宜決定すれば良い。例えば、ミートレス加工食品或いは完全ミートレス加工食品とするならば、該畜肉及び該動物脂は全く使用しない。なお、本発明の趣旨から、動物脂は使用しない態様が望ましい。また本発明において、畜肉を含まない加工食品をミートレスの加工食品、動物性原料を使用しない加工食品を動物性原料不使用の加工食品と言う。
【0017】
本発明に係る「加熱で生じる異風味」とは、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品を加熱した時に生じる植物性蛋白質素材由来の好ましくない風味を指す。例えば、大豆蛋白質素材を含む加熱調理食品の場合、好ましくない風味を大豆臭さやえぐみと称されることがある。本発明は、甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmで分散することを特徴とする、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、該加熱調理食品の全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減することができる。なお、ここでいう加熱とは、該加熱調理食品の製造過程における焼成、フライ、オーブン、蒸し等調理時の加熱、レトルト殺菌や蒸煮殺菌等の加熱を指す。
【0018】
甘味料は、飲食品に直接添加した場合に食品の異風味を抑制する効果を有することが知られている。一方で、甘味料は甘みを付与する効果も持ち合わせている。甘味料の種類や使用量によっては、異風味を抑制させても、過度の甘みを感じる場合がある。本発明では、甘味料を水相に溶解させ、その水相を油相中に粒子径50~2000nmで分散させることで、甘味料を直接添加する場合と比較して、少量の甘味料で顕著な異風味抑制効果が得られる。
【0019】
本発明において、甘味料が溶解した水相が油相中に分散している必要がある。ここでいう甘味料とは、単糖類であるグルコース、果糖、二糖類である麦芽糖、ショ糖を始めとする糖、マルチトール等の糖アルコール、スクラロース、羅漢果抽出物、ステビア等を始めとする高甘味度甘味料を挙げることができ、これらを含む糖蜜や果糖ブドウ糖液糖も使用することができる。該甘味料は天然物より抽出したもの、人工に合成したもの、何れも含む。より好ましくは麦芽糖、羅漢果抽出物、グルコース、ショ糖、さらに好ましくは麦芽糖、羅漢果抽出物、さらにより好ましくは麦芽糖である。適当な甘味料を使用することで、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減することができる。
【0020】
本発明でいう油相は、油脂及び油脂に溶解する成分から構成されるものである。具体的には、本発明の加熱調理食品中の、油脂原料の一部ないし全部から構成されるものである。例えば、該加熱調理食品がハンバーグである場合、ハンバーグに使用される豚脂、牛脂などの動物脂や植物油脂を油相として使用することができる。また、ミートレス或いは動物性原料不使用の加熱調理食品の場合は、油相は植物油脂、植物由来であって油脂に溶解する成分が該当する。なお、植物油脂は特に限定されず、通常食用で用いられる油脂を使用することができる。油相に構成される油脂の種類は、所望の商品形態に応じて1種或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
なお、油相には、本発明の効果を妨げない範囲で、油溶性成分を溶解することができるが、具体的には油溶性乳化剤や色素、香料等を挙げることができる。特に、本発明においては水相が油相中に微分散した、いわゆる油中水型の乳化構造をとっていることから、該乳化構造を安定させる働きのある油溶性乳化剤を使用することが好ましい。ここでいう油溶性乳化剤とは、HLBが7以下の、油脂に溶解する乳化剤であり、具体的にはポリグリセリンエステル、シュガーエステル、ソルビタンエステル、モノグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1以上が好ましい。より好ましくはポリグリセリンエステル、シュガーエステル、蒸留モノグリセリドが好ましく、さらに好ましくはポリグリセリンエステルが好ましい。そのうち、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルが最も好ましい。なお、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルはPGPRと略されることがある。
【0022】
本発明でいう水相は、水、前述の甘味料、及び水に溶解する成分から構成されるものである。また、水相には本発明の効果を妨げない範囲で、水溶性成分を溶解することができる。具体的には、水溶性乳化剤や色素、香料等を挙げることができる。
【0023】
本発明において、甘味料が溶解した水相における甘味料の濃度は固形分換算で15~75質量%であることが好ましい。より好ましくは20~70質量%、30~70質量%、35~70質量%、40~68質量%である。水相における甘味料の濃度が適当であると、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減することができる。
【0024】
本発明において、甘味料が溶解した水相は油相中に分散している必要があるが、このときの水相の粒子径は50~2000nmである必要がある。この値は、より好ましくは55~1200nm、60~800nm、60~700nm、又は65~650nmである。油相中の水相の粒子径が適当であると、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品での加熱で生じる異風味を低減することができる。なお、水相の粒子径の測定方法は次の通りである。油中水型乳化組成物10μLをヘキサン2mLに希釈し、ゼータサイザーナノS(マルバーン社製)で測定して得られる(温度20℃、平衡時間240秒、ガラスセル使用)。
【0025】
本発明の加熱調理食品において、該水相により該加熱調理食品に持ち込まれる甘味料の量は4~1000ppmが好ましい。より好ましくは4.5~900ppm、5~800ppm、10~700ppm、15~600ppm、30~500ppm、50~400ppm、50~350ppmである。該水相により該加熱調理食品に持ち込まれる甘味料の量が適当であると、植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、全体の風味を損ねることなく、植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味を低減することができる。
【0026】
本発明の加熱調理食品において、加熱調理食品の原材料として、甘味料を直接含んでもよい。一部の甘味料には植物性蛋白質素材の不快味をマスキングする効果が知られており、マスキング剤として、また呈味感を付与するものとして、本発明の油中水型乳化組成物と併用しても本発明の効果を得ることができる。
【0027】
(その他原料)
本発明の加熱調理食品は、公知の材料や食品添加物を利用することができる。例えば、野菜、植物油脂、澱粉、調味料(塩、胡椒、砂糖、醤油など)、加工澱粉、卵黄、卵白、乳化剤、香辛料、香料、呈味剤、マスキング剤、その他の公知の添加物などを、本発明の効果を妨げない範囲で、適宜使用することができる。ミートレス或いは動物性原料不使用の加熱調理食品とするならば、植物性の原料を使用する。
【0028】
本発明に係る加熱調理食品の具体例として、ハンバーグ、パティ、ミートボール、ナゲット、つくね、ハム、サラミ、ソーゼージ、餃子、焼売、肉まん、小籠包、メンチカツ、コロッケ、フランクフルト、アメリカンドック、ミートパイ、ラビオリ、ラザニア、ミートローフ、ロールキャベツ、ピーマンやレンコンなどの肉詰め等、ミンチなどの畜肉、畜肉様加工食品、並びに、チャーシュー、焼き肉のような薄切り肉、唐揚げなどの畜肉様加工食品が挙げられる。また、牛丼、すき焼き、かつとじ、親子丼等の調味液、ラーメン、スープ等の出汁等も本発明に係る加熱調理食品である。また、カレー、キーマカレー、パスタソース、これらソースの素、即席調理用の調味液の素、中華だしやブイヨン等の粉末・顆粒出汁等も挙げられる。これら加熱調理食品は、冷凍品、冷蔵品、乾燥品、レトルト品の形態も含む。近年盛んに開発されている代替肉食品は、本発明の効果を最大限付与することができる。
さらに、各種菓子類、デザート、グラノーラ等のシリアル食品等にも、主に組織状植物性蛋白質素材が利用され、このような食品にも本発明の効果を付与することができる。また、クッキー、パイ、ビスケット等の焼菓子類、ベーカリー類等には、主に粉末状植物性蛋白質素材が利用され、このような食品にも本発明の効果を付与することができる。
【0029】
また、本発明は植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味が低減された植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品としてとらえることもできる。具体的には、甘味料が溶解した水相が、油相中に粒子径50~2000nmで分散することが特徴である。
【0030】
さらには、本発明は植物性蛋白質素材の加熱で生じる異風味が抑制された植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品の製造方法ととらえることもできる。具体的には、甘味料が溶解した水相を、油相中に粒子径50~2000nmで分散することが特徴である。
【0031】
本発明の具体的な方法を説明する。
本発明において、甘味料を水に溶解し、水相を調製する。ここで使用する甘味料の種類や、水相における甘味料の濃度は、これまで述べた通りである。また油相を調製するが、油相は本発明に係る植物性蛋白質素材を含む加熱調理食品において、原材料である油脂の全部または一部を用いる。必要に応じ、油相に油溶性乳化剤等を溶解する。
次に、得られた水相を、油相に分散し、油中水型乳化組成物を調製する。分散には、各種の方法を使用することができる。具体的には、高圧ホモゲナイザーや超音波乳化機、湿式ジェットミルとも言われる2液衝突型の乳化装置を用いることができる。適当な乳化装置を使用することで、所定の油中水型乳化組成物を得ることができる。なお、高圧ホモゲナイザーを使用する場合の一般的な乳化条件は、30~40MPaで10~30パスの処理である。これにより、油相における水相の粒子径を50~2000nmにすることができる。なお、油中水型乳化組成物を調製する際に、使用する植物油脂が固形であれば、事前に油脂を融解してから油中水型乳化組成物を調製することができる。
【0032】
該油中水型乳化組成物は、該加熱調理食品における他の原材料と混合し、該加熱調理食品を所定の方法にて調製する。以下、実施例により、より詳細に発明の実施態様を説明する。
なお、該油中水型乳化組成物が常温で固形であって、畜肉加工食品或いは畜肉様加工食品に使用する際は、これら加工食品を調製する直前にロボクープ、チョッパー、サイレントカッター等の細断機で小片化して配合することもできる。小片状の形状は最長辺が15mm以下であれば特に制限はない。具体的には、円柱状、立方体状、円状、半円状、多角錐、多角柱等の多面体、スライス状等が挙げられる。
【実施例0033】
以降に本発明をより詳細に説明する。なお、文中「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準を意味する。
【0034】
<検討1>油中水型乳化組成物の調製
表1-1~1-3の配合に従い、油中水型乳化組成物を調製した。調製方法は次の方法とした。水相及び油相に分類される原材料類をそれぞれ混合し、水相及び油相を調製した。油相を撹拌し、そこへ水相を徐々に添加し、略乳化物を調製した。高圧ホモゲナイザー(30~40MPa×10~30パス)に略乳化物を供し、各油中水型乳化組成物を得た。なお、水相の粒子径の測定は以下の方法に従って測定した。
【0035】
(水相の粒子径の測定方法)
油中水型乳化組成物10μLをヘキサン2mLに希釈し、ゼータサイザーナノS(マルバーン株式会社製)で測定した。測定条件は、温度20.0℃、平衡時間240秒、ガラスセル使用、測定角度173°、ポジショニング法:最適ポジション選択、自動減衰の選択あり、とした。油中水型乳化組成物1~14の水相の粒子径は84.9~510nm範囲であった。
【0036】
【0037】
【0038】
(表1-3)
・植物油脂Aは「パームエースN」(融点13℃以下、不二製油株式会社製)を使用した。
・乳化剤は「ポエムPR-100」(理研ビタミン株式会社製、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、HLB:1)を使用した。
・麦芽糖は「マルスターMS720N」(三和澱粉工業株式会社製、麦芽糖水あめ)を使用した。
・ブドウ糖は「D―グルコース」(和光純薬工業社製)を使用した。
・ショ糖は「グラニュー糖」(和田製糖株式会社製)を使用した。
・果糖は「D―フルクトース」(和光純薬工業社製)を使用した。
・スクラロースは「スクラロース」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用した。
・マルチトースは「レシス」(三菱商事ライフサイエンス株式会社製)を使用した。
・羅漢果抽出物は「サンナチュレM50」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用した。
・ステビア/羅漢果混合抽出物は「サンナチュレMSR」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を使用した。
【0039】
<検討2>
組織状大豆蛋白質素材を用いて、レトルト加熱による異風味の抑制効果について検討した。調製方法は次の通りとした。表2-1~2-4の配合に従って、組織状大豆蛋白質素材A(「ベジテックスSHF」不二製油株式会社製)と水を鍋に入れ、1時間水戻しした。加水した組織状大豆蛋白質素材に、各油中水型乳化組成物或いは植物油脂Aと麦芽糖、スクロースを添加し、混合した。混合物をレトルト袋に全量充填し、121℃で10分間レトルト殺菌した。
【0040】
(官能評価)
レトルト殺菌を施したサンプルを喫食し、「大豆臭」と「全体の甘み」を以下の基準に従い評価し、平均点を算出した。官能評価は熟練したパネラー5名にて行い、合議により評価し、両項目共に合格品質を満たしたものを、全体の甘みが自然で、かつ大豆蛋白質素材を加熱して生じる異風味の低減効果を有すると判断した。結果を表2-1~2-4に纏めた。
【0041】
(評価基準)
植物性蛋白質素材のみの参考例1をコントロールとし、以下の評価基準で評価した。
(大豆臭について)
3点以上を合格品質とした。
1点:参考例1よりも強い大豆臭やえぐみが感じられた。
2点:参考例1と同等の大豆臭やえぐみが感じられた。
3点:参考例1と同様の大豆臭やえぐみが感じられたが、その強度が参考例1の80%であった。
4点:参考例1と同様の大豆臭やえぐみが感じられたが、その強度が参考例1の50%であった。
5点:参考例1と同様の大豆臭やえぐみが感じられたが、その強度が参考例1の30%以下であった。
(全体の甘みについて)
喫食した際に感じる甘みについて評価し、2点以上を合格品質とした。
1点:参考例1と同様の甘みを有し、その強度が参考例1の150%以上であった。
2点:参考例1と同様の甘みを有し、その強度が参考例1の120%以上であったが、喫食可能なレベルであった。
3点:参考例1と同等の甘みを有し、その強度が参考例1の100%以上120%未満の範囲であった。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
参考例1に対して、水相に甘味料を含まない油中水型乳化組成物1を配合した比較例1は参考例1と同等の大豆臭の強度であった。水相に甘味料を含む油中水型乳化組成物3~6を配合した実施例1~実施例4において、大豆臭の低減が見られ、その強度は参考例1よりも用量依存的に低減した。全体の甘みは参考例1と同等であった。油中水型乳化組成物2を配合した比較例2においても、大豆臭の低減は見られたが、その効果は弱かった。また、甘味料の種類を検討したが、何れの甘味料を含む油中水型乳化組成物で、全体の風味を損ねることなく、大豆臭の低減が認められた(実施例5~実施例7)。中でも、果糖と麦芽糖で大豆臭の低減効果が強く、麦芽糖が最も良かった。一方で、実施例2及び実施例7に持ち込まれた甘味料の10倍量の甘味料をそれぞれ植物油脂と共に直接添加したが、参考例1と同等の大豆臭を有し、大豆臭の低減は認められなかった(比較例3、比較例4)。そして、参考例1よりも甘みが強く感じられる傾向にあった。さらに、実施例2に持ち込まれた甘味料の30倍量の麦芽糖を直接添加した場合に(比較例5)、実施例2と同等の大豆臭の低減効果が認められた。しかしながら、直接添加した場合に甘みが参考例1や実施例2よりも強く感じられた。また実施例2に持ち込まれた甘味料の100倍量の麦芽糖を直接添加した場合には(比較例6)、大豆臭の低減効果は参考例1よりも弱いながらも認められたが、全体の甘みが参考例1よりもかなり強かった。
また、参考例1に対して、水相にスクラロース、マルチトール、羅漢果抽出物、ステビア/羅漢果混合抽出物を含む油中水型乳化組成物10~13を配合した実施例8~実施例11においても大豆臭の低減が見られ、その強度は参考例1よりも80%以下であった。中でも、羅漢果抽出物が良好であった。全体の甘みは参考例1と同等であった。粒子径が異なっても、大豆臭の低減が見られ、また全体の甘みも同等であった(実施例12)。
【0047】
<検討3>牛丼風の検討
牛丼風での異風味の抑制効果について検討した。
【0048】
表3の配合に従い、牛丼風を調製した。調味料類、スライスした玉ねぎ、2倍加水した組織状大豆蛋白質素材B(「ベジプラス2900」不二製油株式会社製)を鍋に添加し、歩留まりが90%になるまでコンロ加熱した。これに、油中水型乳化組成物4或いは植物油脂B(「ユニショートMJ」、融点26℃、不二製油株式会社製)を添加し、オーブンにて融解させ(90℃×30分間)、その後一晩冷蔵保存した(4℃で12時間)。冷蔵保存した牛丼風をレトルトパックに50g入れて、121℃で30分レトルト殺菌した。
官能評価の方法は検討2と同様の方法とし、参考例2をコントロールとした(パネラー5名)。結果を表3に示した。
【0049】
【0050】
参考例2に対し、油中水型乳化組成物4を配合した実施例13では、大豆臭が参考例2の50%に低減され、全体の甘みのバランスも良かった。
【0051】
<検討4>ミートレスハンバーグの検討
ミートレスハンバーグでの異風味の抑制効果について検討した。
【0052】
表4の配合に従い、ミートレスハンバーグを調製した。すなわち、エマルションカードを先に調製し、そこに5倍加水した組織状大豆蛋白質素材C(「アペックス650」、不二製油株式会社製)及び3倍加水した組織状大豆蛋白質素材D(「アペックス350」、不二製油株式会社製)を添加して、ケンミックス(アイコープレミア KMM770(愛工舎製作所社製))にて1分間混合し(ダイアル:MIN)、そこに調味料・香辛料を加えて1分間混合し、玉ねぎを加えて30秒間混合し、そこにパン粉、澱粉、砂糖、植物油脂B、油中水型乳化組成物4を加えて30秒間混合した。混合した生地を1個50gに成型し、300℃で4.5分間焼成した(芯温80℃、スチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン社製))。焼成したミートレスハンバーグを一晩冷蔵保管した後(4℃、12時間)、冷凍庫に保管した。
なお、エマルションカードの調製方法は、水4.5部と組織状大豆蛋白質素材1部(「フジプロFR」、不二製油株式会社製)を1500rpmで1.5分間撹拌し(ロボクープ(株式会社エフ・エム・アイ社製))、そこに菜種油1部を加えて4分間撹拌し、さらに乾燥卵白1部を加えて1分間撹拌したものを使用した。
また、植物油脂B、油中水型乳化組成物4は使用するまで冷凍庫に保管し、ミートレスハンバーグに配合する前に、ロボクープにて8mm角に粉砕してから使用した。
【0053】
【0054】
(風味の評価方法)
冷凍したハンバーグを電子レンジ(500ワット、2分間)で温めて、解凍及び加熱し、喫食して評価した。官能評価は、検討2の方法と同様の方法とし、参考例3をコントロールとした(パネラー7名)。結果を表4に纏めた。
【0055】
参考例3に対し、油中水型乳化組成物4を配合した実施例14では、大豆臭が参考例3の30%以下にまで低減されていた。全体の甘みでは、参考例3よりも甘みが感じられたが、違和感がなく十分に喫食出来るレベルであった。実施例15は、実施例14の配合から砂糖の配合を除いたが、大豆臭は実施例14と同等でありながら、甘さは参考例3と同等レベルで全体の甘みが良好であった。
【0056】
<検討5>蒲鉾様食品の検討
水産動物由来の素材不使用の蒲鉾様食品での異風味の抑制効果について検討した。
【0057】
先に、検討1と同じ調製方法で油中水型乳化組成物15を調製した。配合は植物油脂A99.86%、乳化剤0.056%、水0.014%、麦芽糖0.07%とした。油中水型乳化組成物15の水相の粒子径は450nmであった。なお、水相の粒子径は、検討1に記載の「水相の粒子径の測定方法」に従って測定した。
・植物油脂Aは「パームエースN」(融点13℃以下、不二製油株式会社製)を使用した。
・乳化剤は「ポエムPR-100」(理研ビタミン株式会社製、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、HLB:1)を使用した。
・麦芽糖は「マルスターMS720N」(三和澱粉工業株式会社製、麦芽糖水あめ)を使用した。
【0058】
次に、表5の配合に従い、植物油脂A或いは油中水型乳化組成物15、冷水、粉末状大豆蛋白質素材、タピオカ澱粉をロボクープに入れて2分間撹拌混合した(回転数1500rpm)。その後、糖類、調味料、食塩を添加してさらに1分間撹拌混合し、蒲鉾様食品の生地を得た。
・粉末状大豆蛋白質素材:不二製油株式会社製「フジプロFM」
・タピオカ澱粉:グリコ栄養食品株式会社製「RK-08」
【0059】
得られた蒲鉾様食品の生地を下記2種類の方法で成型、加熱調理した。
<1>得られた蒲鉾様食品の生地をケーシングチューブ(φ35mm)に充填し、95℃で20分間蒸し加熱して、蒲鉾様食品を得た。その後、氷冷後、冷凍保存した。
<2>得られた蒲鉾様食品の生地をφ75mm、高さ10mmに成型し、160℃で1分間、続いて140℃で1分間加熱(連続フライ)して、揚げ蒲鉾様食品を得た。
【0060】
【0061】
(風味の評価方法)
<1>で得られた蒲鉾様食品を解凍し、喫食して評価した。また<2>で得られた揚げ蒲鉾様食品を電子レンジ(500ワット、2分間)で温めて、解凍及び加熱し、喫食して評価した。官能評価は、検討2と同じ方法とし、参考例4をコントロールとした(パネラー6名)。結果を表5に纏めた。
【0062】
参考例4に対し、油中水型乳化組成物15を配合した実施例16の蒲鉾様食品では、大豆臭が参考例4の50%以下にまで低減されていた。全体の甘みは参考例4と同等であった。揚げ蒲鉾様食品でも、蒲鉾様食品と同様の甘みの傾向が認められ、参考例4よりも大豆臭が30%以下にまで低減されており、全体の甘みは参考例4と同等であった。
【0063】
<検討6>鶏団子の検討
表6の配合に従い、大豆蛋白質素材を配合した鶏団子を調製した。すなわち、エマルションカードを先に調製し、そこにミンチ状の鶏むね肉(φ4mm)を添加して、ケンミックスにて1分間混合した(ダイアル:MIN)。そこに3倍加水した組織状大豆蛋白質素材E(「ニューフジニック52S」不二製油株式会社製)、調味料・香辛料、食塩を加えて1分間混合し、みじん切りした玉ねぎを加えて30秒間混合し、そこにパン粉、澱粉、植物油脂B或いは油中水型乳化組成物16を加えて1分間混合した。混合した生地を1個15gに成型し、90℃で12分間蒸煮した(スチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン社製))。蒸煮した鶏団子は放冷した後に冷凍庫に保管した。
なお、検討1と同じ調製方法で油中水型乳化組成物16を調製した。油中水型乳化組成物4の植物油脂Aを植物油脂Bに変更した以外は油中水型乳化組成物4の配合と同じとしたものを、油中水型乳化組成物16とした。油中水型乳化組成物16の水相の粒子径は462nmであった。なお、水相の粒子径は、検討1に記載の「水相の粒子径の測定方法」に従って測定した。
なお、エマルションカードの調製方法は、水4.5部と組織状大豆蛋白質素材1部(「フジプロFR」、不二製油株式会社製)を1500rpmで1.5分間撹拌し(ロボクープ(株式会社エフ・エム・アイ社製))、そこに菜種油1部を加えて4分間撹拌し、さらに乾燥卵白1部を加えて1分間撹拌したものを使用した。また、植物油脂B、油中水型乳化組成物16は使用するまで冷凍庫に保管し、鶏団子に配合する前に、ロボクープにて8mm角に粉砕してから使用した。
風味の評価方法は検討2と同様の方法とし、参考例5との比較で評価した(パネラー5名)。結果を表6に示した。
【0064】
【0065】
鶏肉と組織状大豆蛋白質素材を配合した鶏団子において、参考例5に対し、油中水型乳化組成物16を配合した実施例17の鶏団子では、大豆臭が参考例4の50%以下にまで低減されていた。全体の甘みは参考例5と同等であった。