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特開2023-166382細胞媒介性腫瘍溶解性ウイルス治療のための増強された系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166382
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】細胞媒介性腫瘍溶解性ウイルス治療のための増強された系
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20231114BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20231114BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20231114BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231114BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/765 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/766 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/35 20150101ALI20231114BHJP
   A61K 35/44 20150101ALI20231114BHJP
   C12N 15/39 20060101ALN20231114BHJP
   C12N 15/54 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N5/077
C12N5/071
C12N15/12
A61P35/00
A61K35/761
A61K35/765
A61K35/766
A61K35/763
A61K35/768
A61K35/35
A61K35/44
C12N15/39
C12N15/54
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023128476
(22)【出願日】2023-08-07
(62)【分割の表示】P 2021523930の分割
【原出願日】2019-11-06
(31)【優先権主張番号】62/789,458
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,550
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】318001038
【氏名又は名称】カリディ・バイオセラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Calidi Biotherapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス サンティドリアン,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ズオン ホアン
(72)【発明者】
【氏名】ドラガノフ,ドブリン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】細胞媒介性腫瘍溶解性ウイルス療法を増強するための、増強された改変ウイルス、およびそのような改変ウイルスを含む組成物を提供する。
【解決手段】組成物または組み合わせであって、
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、
(b)上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)と、を含み、
組成物が細胞およびウイルスの混合物であり、組み合わせが2つの別々の組成物であり、一方の組成物がウイルスを含み、他方の組成物が細胞を含む、組成物または組み合わせを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルスではなく、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、腫瘍細胞または免疫細胞ではなく、かつ
前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされ、前記ウイルスと前記担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現する、細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項2】
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、麻疹ウイルスではなく、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる幹細胞であり、かつ
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現する、細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項3】
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性および/または免疫特権特性を増強するために処理もしくは改変されているか、またはその両方であり、かつ任意に、前記細胞が、細胞におけるウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項4】
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルスではなく、
前記担体細胞が、幹細胞であり、
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、かつ
前記担体細胞が前記腫瘍溶解性ウイルスに感染した後、腫瘍溶解性ウイルスが6時間以上インキュベートされた、細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項5】
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項4に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項6】
ウイルスを含有する前記担体細胞が、0.001~10の感染多重度(MOI)で前記細胞を感染させることによって産生された、請求項4または請求項5に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項7】
凍結保存される、請求項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項8】
少なくとも24時間冷蔵された、請求項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項9】
前記組成物の温度が、-20℃~-80℃または約-20℃~約-80℃である、請求項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項10】
5℃~-200℃の温度で少なくとも24時間保存されており、前記担体細胞が約100または50または10未満のウイルス粒子を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、請求項1~7のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項11】
約-80℃~-200℃またはその間の温度で少なくとも24時間保存されている、請求項7、9および10のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項12】
ウイルスが、TKであるワクシニアウイルスである、請求項1~11のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項13】
ウイルスが弱毒化されている、請求項1~11のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項14】
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされ、前記ウイルスと前記担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、かつ
前記CAVESが、凍結保存されているか、または凍結保護剤を含有する組成物中にある、細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項15】
前記ウイルスがアデノウイルスではない、請求項14に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項16】
前記組成物の温度が、ちょうどまたは約-200℃~-20℃である、請求項14または請求項5に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項17】
CAVESが、凍結保存のためのDMSOおよびグリセロールの一方または両方を含む組成物中にある、請求項7または請求項14に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項18】
腫瘍溶解性ウイルスを有する前記担体細胞が、わずか最大10個のウイルス粒子/細胞の感染多重度(MOI)で前記細胞を前記ウイルスに感染させることによって産生される、請求項1~14のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項19】
前記MOIが0.001~10である、請求項18に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項20】
前記MOIが、少なくとも0.1または少なくとも0.3または少なくとも0.5である、請求項19に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項21】
前記担体細胞が、約900または約1000コピーから約10,0000または約11,000コピーまでの前記腫瘍溶解性ウイルスゲノムを含む、請求項1~19のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項22】
100未満のウイルスゲノム/細胞を含む、請求項1~19のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項23】
5℃~-200℃の温度で少なくとも24時間保存されており、前記担体細胞が、約900または約1000コピーから約10,0000または約11,000コピーまでの前記腫瘍溶解性ウイルスゲノムを含む、請求項1~22のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項24】
前記担体細胞が約100または50または10未満のウイルス粒子を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、請求項1~23のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項25】
前記担体細胞が1から200未満のウイルス粒子/細胞を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、請求項1~24のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項26】
前記担体細胞が、1個から200個未満のウイルス粒子/細胞を含有する、請求項1~24のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項27】
前記細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、
および/または前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
請求項1、2、および7~26のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項28】
前記細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、ならびに
前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
請求項1~27のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項29】
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルス増幅に許容性であり、腫瘍内で蓄積する、および/またはウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分な時間、前記対象の免疫系によって認識されない、請求項1~28のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項30】
前記担体細胞が、処理または改変された幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞から選択される、請求項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項31】
前記担体細胞が胚性上皮細胞または線維芽細胞である、請求項1~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項32】
前記担体細胞が免疫細胞である、請求項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項33】
前記免疫細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、請求項32に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項34】
前記担体細胞が、血液悪性腫瘍細胞株からの改変細胞または処理細胞である、請求項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項35】
前記細胞株が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、請求項34に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項36】
前記担体細胞が幹細胞である、請求項1~32のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項37】
前記幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される、請求項36に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項38】
前記幹細胞が間葉系細胞から選択される、請求項36に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項39】
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、請求項38に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項40】
前記細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞、成体骨髄細胞および間葉系幹細胞の中から選択される、請求項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項41】
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、請求項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項42】
前記間葉系幹細胞が脂肪間質細胞から単離される、請求項41に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項43】
担体細胞が脂肪間質細胞を含む、請求項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項44】
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されたMSCである、請求項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項45】
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、請求項1~44のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項46】
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、請求項1~45のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項47】
前記間葉系細胞が脂肪間質細胞に由来する、請求項38に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項48】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、請求項1~47のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項49】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、請求項1~48のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項50】
前記担体細胞および腫瘍溶解性ウイルスが、対象への投与前または保存前に、前記ウイルスによってコードされる前記免疫調節性もしくは治療用タンパク質が発現されるのに十分な時間、および/または前記ウイルスが少なくとも1回の複製サイクルを経るのに十分な時間、インビトロで共培養される、請求項1~49のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項51】
前記担体細胞およびウイルスが、腫瘍溶解性ウイルス免疫調節タンパク質が発現され、前記ウイルスが少なくとも1回の複製サイクルを経るのに十分な時間共培養される、請求項50に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項52】
前記細胞が、処置される前記対象にとって自家である、請求項1~51のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項53】
前記細胞が、処置される前記対象に対して同種異系である、請求項1~51のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項54】
前記ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マラバウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、請求項1~53のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項55】
前記ウイルスが麻疹ウイルスである、請求項1および3~54のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項56】
前記ウイルスがレトロウイルスである、請求項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項57】
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、請求項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項58】
前記ワクシニアウイルスがTKである、請求項57に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項59】
前記ウイルスが弱毒化されている、請求項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項60】
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項61】
前記ウイルスがACAM1000またはACAM2000である、請求項60に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項62】
前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質の発現が、前記ウイルスが前記担体細胞に感染後、前記ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または治療用タンパク質が発現される、または前記担体細胞が増殖することができる、もしくは前記ウイルスが複製することができる条件下で、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59時間超インキュベートすることによって達成された、請求項1~57のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項63】
前記ウイルスにコードされる免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質の発現が、前記担体細胞を感染後6時間または6時間超にわたって前記ウイルスと共にインキュベートすることによって達成された、請求項62に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項64】
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項63に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項65】
前記ウイルスを有する前記担体細胞を、前記タンパク質の発現および前記ウイルスの複製に十分な時間、感染後にインキュベートした、請求項1~62のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項66】
インキュベーション後、前記ウイルスを含有する前記担体細胞を-5℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、請求項62または請求項60に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項67】
前記CAVESまたは前記CAVESを含有する組成物を-5℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、請求項1~66のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項68】
前記CAVESまたは前記CAVESを含有する組成物を-80℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、請求項1~66のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項69】
前記ウイルスが、前記担体細胞表面に提示される免疫調節タンパク質を発現する、請求項1~68のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項70】
前記免疫調節性ウイルスタンパク質が、VCP(C3L)、B5R、HA(A56R)、B18R/B19RおよびB8Rの中から選択される、請求項61に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項71】
前記担体細胞が、脂肪間質細胞からの間葉系細胞である幹細胞であり、
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであり、かつ
前記ウイルスを含む前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質もしくは治療用タンパク質が発現される条件下、または前記担体細胞が増殖することができる、もしくは前記ウイルスが複製することができる条件下で前記細胞を前記ウイルスと6時間以上インキュベートすることによって産生された、
請求項1~69のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項72】
前記インキュベーションを、6時間~翌日まで、24時間まで、26時間まで、3時間まで、3日間まで、4日間まで、5日間まで、または6時間~1週間の間の任意の時間実施した、請求項71に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項73】
前記条件が、約25℃~40℃の温度での細胞培養培地中でのインキュベーションを含む、請求項62~71のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項74】
前記ウイルスが、請求項280~310のいずれかに記載のものの中から選択されるワクシニアウイルスである、請求項1~73のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項75】
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスから選択されるワクシニアウイルスであり、
a)配列番号71に示される核酸配列またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有する配列と、
b)対応するワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子または検出可能なマーカー遺伝子と、
c)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されない遺伝子座と、
d)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座と、
e)以下の1つ以上の改変:
(i)対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子、
(ii)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されない遺伝子座、および/または
(ii)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座と
を含む、請求項1~73のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項76】
前記対応する未改変ワクシニアウイルスが、配列番号70または配列番号71に示される核酸配列を含む、請求項75a)~e)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項77】
前記改変が、対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の前記遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子を含む、請求項75b)、e)および請求項76のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項78】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、請求項77に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項79】
前記治療遺伝子が、OX40LまたはCD40Lである共刺激因子である、請求項78に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項80】
前記改変が、対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の前記遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、請求項75b)およびe)、ならびに請求項76~78のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項81】
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、請求項80に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項82】
前記改変が、対応する未改変ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であるため、B8R遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
請求項75d)~f)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項83】
前記改変が、対応する未改変ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であるため、F1L遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
請求項75c)、e)、およびf)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項84】
少なくとも1つの治療遺伝子をコードする、請求項82または請求項83に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項85】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、請求項84に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項86】
少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、請求項82~85のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項87】
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、請求項86に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項88】
少なくとも1つの治療遺伝子が抗がん抗体である、請求項75b)およびf)ならびに請求項76~87のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項89】
前記抗がん抗体が抗VEGF抗体または抗CTLA-4抗体である、請求項88に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項90】
前記抗がん抗体が一本鎖抗体である、請求項88または請求項89に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項91】
前記抗体の分泌を促進するためのIgKシグナルペプチドをコードする核酸を更に含む、請求項88~90のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項92】
前記抗体の検出を容易にするためのFLAGタグをコードする核酸を更に含む、請求項88~91のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項93】
前記ウイルスが、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)、OX40Lおよび4-IBBLの中から選択される治療用生成物および/または検出可能なマーカー遺伝子をコードする遺伝子を含む、請求項75b)およびe)ならびに請求項76~87のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項94】
前記未改変ワクシニアウイルスがACAM2000またはACAM1000である、請求項74および76~93のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項95】
前記未改変ワクシニアウイルスがACAM2000である、請求項94に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項96】
前記細胞が、前記組成物が投与される対象の腫瘍に由来する、請求項3~75のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項97】
治療用生成物をコードする、請求項96に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項98】
前記治療用生成物が、サイトカイン、ケモカイン、共刺激因子、プロドラッグ活性化因子、および治療用抗体のうちの1つ以上である、請求項97に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項99】
前記治療用生成物が、GM-CSF、IL2、IL10、IL12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、TNF、MIP1a、FLt3L、IFN-b、IFN-g、CCl5、CCl2、CCl19、CXCl11、OX40L、41BBL、CD40L、B7.1/CD80、GITRL、LIGHT、CD70、BITE、ならびにVEGFA、VEGFB、PGF、VEGFR2、PDGFR、Ang-1、Ang-2、ANGPT1、ANGPT2、HGF、lacZ、シトシンデアミナーゼ酵素、およびヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体に対する一本鎖抗体のうちの1つ以上である、請求項98に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項100】
前記治療用生成物が免疫チェックポイント阻害剤である、請求項98に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項101】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、またはLAG-3に対する抗体である、請求項100に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項102】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、血管新生を阻害または減少させる治療用生成物をコードする、請求項1~96のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項103】
前記コードされた治療用生成物が、ヒトIgG1のFc部分、抗アンジオポエチン-2(ANGPT)一本鎖抗体、およびそれらの組み合わせに、任意に直接または間接的に連結されている、抗VEGFもしくは抗VEGFR一本鎖抗体、VEGFRまたはその細胞外ドメインの中から選択される、請求項97に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項104】
薬学的に許容される媒体中に請求項1~103のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を含む医薬組成物。
【請求項105】
凍結保存される、請求項104に記載の医薬組成物。
【請求項106】
希釈せずに直接投与するために製剤化される、請求項104または請求項105に記載の医薬組成物。
【請求項107】
単回投与量として製剤化される、請求項104~106のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項108】
前記薬学的に許容される媒体が非経口投与に適している、請求項104~107のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項109】
腫瘍内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、粘膜、または直腸投与用に製剤化される、請求項104~108のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項110】
全身投与用に製剤化される、請求項104~109のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項111】
前記ウイルスが、前記担体細胞表面に提示される免疫調節タンパク質を発現する、請求項1~103のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項112】
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項111に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項113】
前記免疫調節性ウイルスタンパク質が、VCP(C3L)、B5R、HA(A56R)、B18R/B19RおよびB8Rの中から選択される、請求項111または請求項112に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項114】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性のワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レンチウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マラバウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、請求項1~110のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項115】
前記ウイルスが治療用生成物をコードする、請求項1~114のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項116】
前記治療用生成物がポリペプチドまたは核酸である、請求項115に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項117】
前記治療用生成物がポリペプチドである、請求項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項118】
前記治療用生成物が二本鎖RNAである核酸である、請求項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項119】
前記細胞がT細胞である、請求項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項120】
前記治療用生成物が抗がん剤である、請求項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項121】
前記治療用生成物が抗体またはその抗原結合断片である、請求項115~120のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項122】
前記治療用生成物が、抗CTLA4、抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片である、請求項121に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項123】
前記治療用生成物が、免疫チェックポイント阻害剤または免疫経路を調節する生成物である、請求項115~121のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項124】
凍結保存組成物中にある、請求項1~123のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項125】
前記凍結保存組成物が、1つ以上のグリセロール、DMSOまたは他の凍結保存剤を含む、請求項124に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項126】
請求項1~103および111~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)またはそれらの複数を含む医薬組成物。
【請求項127】
非経口投与用に製剤化される、請求項126に記載の医薬組成物。
【請求項128】
局所投与または全身投与のために製剤化される、請求項126に記載の医薬組成物。
【請求項129】
経口、静脈内、腫瘍内、直腸、皮下または粘膜投与用に製剤化される、請求項126~128のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項130】
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置する方法であって、請求項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を投与すること、または請求項126~129のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項131】
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置する方法であって、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させることと、
b)前記ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を産生するのに十分な時間、細胞が増殖するおよび/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスとインキュベートまたは共培養することと、
c)前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置するために、前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を前記対象に投与することと、を含む、方法。
【請求項132】
前記MOIが、0.001~10、または0.1~10、または0.1、または0.3未満、または0.1未満、または0.5未満である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記担体細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれを超えてインキュベートまたは共培養される、請求項130~132のいずれかに記載の方法。
【請求項134】
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養する、請求項130~133のいずれかに記載の方法。
【請求項135】
前記細胞およびウイルスが、少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、もしくは7日間、インキュベートまたは共培養される、請求項130~134のいずれかに記載の方法。
【請求項136】
前記細胞およびウイルスをインキュベーションまたは共培養した後、得られた細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を保存する、請求項130~135のいずれかに記載の方法。
【請求項137】
保存が、-5℃~-200℃の温度で、または冷蔵庫内で、または液体窒素もしくはCO2中で実施される、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が凍結保存される、請求項136または137に記載の方法。
【請求項139】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が少なくとも24時間保存される、請求項136~138のいずれかに記載の方法。
【請求項140】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12年またはそれより長く保存される、請求項136~139のいずれかに記載の方法。
【請求項141】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、インキュベーションまたは共培養(工程b)後および投与(工程c)前に保存される、請求項131~140のいずれかに記載の方法。
【請求項142】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、約またはちょうど-5℃~-200℃の温度で冷蔵または凍結または保存される、請求項130~141のいずれかに記載の方法。
【請求項143】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、約-80℃~-200℃の温度で保存されるか、または液体窒素もしくはCO2中で保存される、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記担体細胞が免疫細胞ではなく、および/または腫瘍細胞ではない、請求項130~143のいずれかに記載の方法。
【請求項145】
前記担体細胞が、免疫細胞、または腫瘍細胞、または腫瘍細胞株、または幹細胞である、請求項130~143のいずれかに記載の方法。
【請求項146】
前記担体細胞が幹細胞である、請求項130~145のいずれかに記載の方法。
【請求項147】
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するために処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、ならびに/または
前記担体細胞が、前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するように処理および/または改変されている、請求項130~146のいずれかに記載の方法。
【請求項148】
前記担体細胞が、幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される処理または改変された担体細胞から選択される、請求項130~147のいずれかに記載の方法。
【請求項149】
前記担体細胞が胚性上皮細胞または線維芽細胞である、請求項130~147のいずれかに記載の方法。
【請求項150】
前記担体細胞が免疫細胞である、請求項130~147のいずれかに記載の方法。
【請求項151】
前記担体細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、請求項130~147のいずれかに記載の方法。
【請求項152】
前記担体細胞が、血液悪性腫瘍細胞株からの改変細胞または処理細胞であり、前記細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するために、および/または前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するために、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、請求項130~147のいずれかに記載の方法。
【請求項153】
前記担体細胞が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、請求項130~152のいずれかに記載の方法。
【請求項154】
前記担体細胞が幹細胞である、請求項130~152のいずれかに記載の方法。
【請求項155】
前記幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される幹細胞である、請求項130~154に記載の方法。
【請求項156】
幹細胞が間葉系細胞から選択される、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、請求項156に記載の方法。
【請求項158】
前記担体細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞および成体骨髄細胞、間葉系幹細胞の中から選択される、請求項130~157のいずれかに記載の方法。
【請求項159】
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、請求項130~158のいずれかに記載の方法。
【請求項160】
間葉系幹細胞が脂肪間質細胞から単離される、請求項159に記載の方法。
【請求項161】
前記担体細胞が脂肪間質細胞を含む、請求項130~160のいずれかに記載の方法。
【請求項162】
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されるMSCである、請求項130~161のいずれかに記載の方法。
【請求項163】
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、請求項130~162のいずれかに記載の方法。
【請求項164】
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、請求項130~163のいずれかに記載の方法。
【請求項165】
前記間葉系細胞が脂肪間質細胞に由来する、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、請求項130~164のいずれかに記載の方法。
【請求項167】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、請求項130~166のいずれかに記載の方法。
【請求項168】
前記細胞が、処置される対象に対して同種異系である、請求項130~167のいずれかに記載の方法。
【請求項169】
前記細胞が、処置される対象に対して自家である、請求項130~167のいずれかに記載の方法。
【請求項170】
前記ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、マラバウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、請求項130~169のいずれかに記載の方法。
【請求項171】
前記ウイルスが麻疹ウイルスである、請求項170に記載の方法。
【請求項172】
前記ウイルスがレンチウイルスであるレトロウイルスである、請求項170に記載の方法。
【請求項173】
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、請求項170に記載の方法。
【請求項174】
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項170に記載の方法。
【請求項175】
前記ウイルスがACAM1000またはACAM2000である、請求項174に記載の方法。
【請求項176】
前記ウイルスがワクシニアウイルスであり、
前記担体細胞が脂肪間質細胞由来の幹細胞である、
請求項130~175のいずれかに記載の方法。
【請求項177】
前記CAVESが、前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質を発現する、請求項130~176のいずれかに記載の方法。
【請求項178】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項130~177のいずれかに記載の方法。
【請求項179】
前記がんが血液悪性腫瘍である、請求項130~177のいずれかに記載の方法。
【請求項180】
前記対象が、肺がん、膵がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、白血病、リンパ腫および腎臓がんの中から選択される固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを有する、請求項130~179のいずれかに記載の方法。
【請求項181】
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、請求項130~181のいずれかに記載の方法。
【請求項183】
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
前記産物が抗体またはその抗原結合部分である、請求項183に記載の方法。
【請求項185】
前記対象がヒトである、請求項130~184のいずれかに記載の方法。
【請求項186】
前記対象が非ヒト動物である、請求項130~184のいずれかに記載の方法。
【請求項187】
前記対象が、農場または動物園の動物である、請求項130~184のいずれかに記載の方法。
【請求項188】
前記対象がイヌまたはネコである、請求項130~184のいずれかに記載の方法。
【請求項189】
前記対象が、ウシ、ウマ、ヤギ、ラバ、シマウマ、キリン、ゴリラ、ボノボ、ロバ、ブタ、ラマ、チンパンジーまたはアルパカである、請求項187に記載の方法。
【請求項190】
前記対象が小児ヒトである、請求項130~185のいずれかに記載の方法。
【請求項191】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が腫瘍内、静脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、関節内、または眼内注射によって投与される、請求項130~190のいずれかに記載の方法。
【請求項192】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が筋肉内または皮下投与によって投与される、請求項130~190のいずれかに記載の方法。
【請求項193】
別の抗がん処置または治療を施すことを含む、請求項130~192のいずれかに記載の方法。
【請求項194】
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、請求項193に記載の方法。
【請求項195】
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を施すことを含む、請求項194に記載の方法。
【請求項196】
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を施すことを含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、請求項130~195のいずれかに記載の方法。
【請求項197】
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、請求項196に記載の方法。
【請求項198】
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、請求項196または請求項197に記載の方法。
【請求項199】
前記処置がPD-1経路の阻害剤の投与を含む、請求項196~198のいずれかに記載の方法。
【請求項200】
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、請求項199に記載の方法。
【請求項201】
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、請求項199に記載の方法。
【請求項202】
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を投与することを含む、請求項196~198のいずれかに記載の方法。
【請求項203】
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、請求項196~198のいずれかに記載の方法。
【請求項204】
共刺激分子に対するアゴニスト抗体を投与することを含む処置を含む、請求項130~203のいずれかに記載の方法。
【請求項205】
前記共刺激分子が、CD28、OX40、CD40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、請求項204に記載の方法。
【請求項206】
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、請求項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または請求項126~129のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項207】
対象において、固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、請求項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または請求項126~129のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項208】
請求項206または請求項207に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用であって、前記細胞支援型ウイルス発現系が、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させること;および
b)前記腫瘍溶解性ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して前記CAVESを産生するのに十分な時間にわたって細胞が増殖および/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスと共にインキュベートまたは共培養すること、によって製造される、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項209】
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、請求項208に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項210】
前記担体細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上の時間インキュベートまたは共培養することによって製造された、請求項206~209のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項211】
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養した、請求項206~210のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項212】
前記細胞およびウイルスを少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、または7日間、インキュベートまたは共培養した、請求項206~211のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項213】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が使用のために保存される、請求項206~212のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項214】
前記保存が、-5℃~-200℃の温度で、または冷蔵庫で、または液体窒素もしくはCO2中で行われる、請求項213に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項215】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が凍結保存される、請求項213または214に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項216】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が少なくとも24時間保存される、請求項213~215のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項217】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12年もしくはそれ以上にわたって保存される、請求項213~216のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項218】
前記得られる細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、前記担体細胞と前記腫瘍溶解性ウイルスとのインキュベーション後に保存される、請求項213~217のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項219】
前記細胞が、約またはちょうど-5℃~-200℃の温度で保存または冷蔵または凍結される、請求項206~218のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項220】
前記細胞が、約-80℃~-200℃の温度で保存されるか、または液体窒素もしくはCO2中で保存される、請求項219に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項221】
前記担体細胞が免疫細胞および/または腫瘍細胞ではない、請求項206~220のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項222】
前記担体細胞が、免疫細胞、または腫瘍細胞、または腫瘍細胞株、または幹細胞である、請求項206~220のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項223】
前記担体細胞が幹細胞である、請求項206~222のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項224】
前記担体細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変される、または処理および改変の両方がされる、ならびに/または
前記担体細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理および/または改変されている、
請求項206~223のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項225】
前記担体細胞が、幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される処理または改変された細胞から選択される、請求項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項226】
前記担体細胞が、胚性上皮細胞または線維芽細胞である、請求項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項227】
前記担体細胞が免疫細胞である、請求項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項228】
前記担体細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、請求項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項229】
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を増強するために、および/または前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するために、処理もしくは改変されているか、または処理および改変の両方されている、血液悪性腫瘍細胞株に由来する改変もしくは処理された細胞である、請求項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項230】
前記担体細胞が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、請求項206~229のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項231】
前記担体細胞が幹細胞である、請求項206~229のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項232】
前記担体細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される幹細胞である、請求項206~231のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項233】
前記幹細胞が間葉系細胞から選択される、請求項232に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項234】
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、請求項233に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項235】
前記担体細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞、成体骨髄細胞および間葉系幹細胞の中から選択される、請求項206~234のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項236】
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、請求項206~235のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項237】
前記間葉系幹細胞が、脂肪間質細胞から単離される、請求項236に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項238】
前記担体細胞が脂肪間質細胞を含む、請求項206~237のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項239】
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されたMSCである、請求項206~238のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項240】
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、請求項206~239のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項241】
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、請求項206~240のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項242】
前記間葉系幹細胞が、脂肪間質細胞に由来する、請求項241に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項243】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、請求項206~240のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項244】
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、請求項206~243のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項245】
前記細胞が処置される対象に対して同種異系である、請求項206~244のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項246】
前記細胞が処置される対象に対して自家である、請求項206~244のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項247】
ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、およびシンドビスウイルスの中から選択される、請求項206~246のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項248】
前記ウイルスが、麻疹ウイルスである、請求項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項249】
前記ウイルスが、レンチウイルスであるレトロウイルスである、請求項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項250】
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、請求項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項251】
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項252】
前記ウイルスが、ACAM1000またはACAM2000である、請求項251に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項253】
前記ウイルスのゲノムが、配列番号70または71に示されるヌクレオチドの配列を含む、請求項252に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項254】
前記ウイルスがワクシニアウイルスであり、かつ
前記担体細胞が脂肪間質細胞由来の幹細胞である、
請求項206~252のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項255】
前記担体細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートし、前記インキュベーションを、前記ウイルスが前記細胞に感染し、コードされたタンパク質を発現する条件下で行う、請求項254に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項256】
前記インキュベーションが、10、12、14、16または20時間以下である、請求項255に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項257】
前記CAVESが前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質を発現する、請求項206~254のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項258】
前記がんが固形腫瘍を含む、請求項206~257のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項259】
前記がんが血液悪性腫瘍である、請求項206~258のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項260】
前記処置される対象が、肺がん、膵がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、白血病、リンパ腫および腎臓がんの中から選択される固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを有する、請求項206~259のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項261】
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、請求項259に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項262】
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、請求項206~261のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項263】
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、請求項262に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項264】
前記産物が抗体またはその抗原結合部分である、請求項262または請求項187に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項265】
前記処置される対象がヒトである、請求項193~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項266】
前記処置される対象が非ヒト動物である、請求項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項267】
前記処置される対象が、農場または動物園の動物である、請求項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項268】
前記処置される対象が、イヌまたはネコである、請求項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項269】
前記処置される対象が、ウシ、ウマ、ヤギ、ラバ、シマウマ、キリン、ゴリラ、ボノボ、ロバ、ブタ、ラマ、チンパンジー、またはアルパカである、請求項187に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項270】
前記処置される対象が小児ヒトである、請求項206~265のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項271】
前記CAVESが、腫瘍内、静脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、関節内、または眼内注射による投与用である、請求項206~270のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項272】
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、筋肉内または皮下投与用である、請求項206~270のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項273】
別の異なる抗がん処置または治療と組み合わせた、請求項206~272のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項274】
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、請求項209に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項275】
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を含む、請求項274に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項276】
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、請求項206~275のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項277】
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含む、請求項276に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項278】
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3から選択される陰性共刺激分子に対するものである、請求項276または請求項213に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項279】
前記処置がPD-1経路の阻害剤を含む、請求項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項280】
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、請求項279に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項281】
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、請求項279に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項282】
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を含む、請求項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項283】
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する抗体を遮断することを含む、請求項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項284】
共刺激分子、CAR-Tおよび/またはTILに対するアゴニスト抗体を含む処置を含む、請求項206~283のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項285】
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD40、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、請求項284に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項286】
配列番号71に示されるヌクレオチドの配列を有するゲノムを含む、ワクシニアウイルス。
【請求項287】
対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子を含む、改変ACAM2000ウイルス。
【請求項288】
対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失されたまたは中断されたF1L遺伝子座を含み、F1L遺伝子が発現されない、改変ACAM2000ウイルス。
【請求項289】
対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失されたまたは中断されたB8R遺伝子座を含み、B8R遺伝子が発現されない、改変ACAM2000ウイルス。
【請求項290】
以下の1つ以上の改変を含む、改変ACAM2000ウイルス:
(a)対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;
(b)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されないF1L遺伝子座;および/または
(c)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座。
【請求項291】
対応する未改変ACAM2000ウイルスにおいて、以下の1つ以上の改変を含む、改変ACAM2000ウイルス:
オープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;および/または
以下の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の1つ以上における少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)。
【請求項292】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子を含む、請求項291に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項293】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
請求項292に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項294】
以下の1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175に少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、前記1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の前記切断型領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を更に含む、請求項291に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項295】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
請求項294に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項296】
前記対応する未改変ACAM2000が、配列番号70または配列番号71に示される核酸配列を含む、請求項287~295のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項297】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子を含む、請求項287、290、または296に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項298】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、請求項297に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項299】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、請求項287、290、291、296または297のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項300】
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、請求項299に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項301】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であるため、B8R遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
請求項289、290、または296のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項302】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であるため、F1L遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
請求項288、290、または296のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項303】
少なくとも1つの治療遺伝子を含む、請求項301または302に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項304】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗剤、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、請求項303に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項305】
少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、請求項301~304のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項306】
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、請求項305に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項307】
少なくとも1つの治療遺伝子が抗がん抗体である、請求項287および290~306のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項308】
前記抗がん抗体が抗VEGF抗体または抗CTLA-4抗体である、請求項307に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項309】
前記抗がん抗体が一本鎖抗体である、請求項307または請求項308に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項310】
前記抗体の分泌を促進するためのIgKシグナルペプチドをコードする核酸を更に含む、請求項307~309のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項311】
前記抗体の検出を容易にするためのFLAGタグをコードする核酸を更に含む、請求項307~309のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項312】
少なくとも1つの検出可能なマーカー遺伝子および/または治療用生成物をコードする遺伝子が、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)、OX40L、または4-IBBLである、請求項287および290~311のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項313】
チミジンキナーゼ(TK)、赤血球凝集素(HA)、インターフェロンアルファ/ベータ遮断薬受容体または免疫調節物質の中から選択される少なくとも1つの不活性化遺伝子を更に含む、請求項1に記載のACAM2000ウイルスまたは請求項387~312のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項314】
EEV(細胞外エンベロープウイルス)産生を増強するために更に改変されている、請求項1に記載のACAM2000ウイルスまたは請求項287~313のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項315】
EEV産生増強のための更なる改変が、A34Rタンパク質をコードする遺伝子における突然変異である、請求項314に記載のACAM2000ウイルスまたは改変ACAM2000ウイルス。
【請求項316】
前記突然変異が、突然変異K151Eを含むA34Rタンパク質をコードする、請求項315に記載のACAM2000ウイルスまたは改変ACAM2000ウイルス。
【請求項317】
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置する方法であって、腫瘍溶解性ウイルス、および脂肪間質細胞を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記脂肪間質細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される、方法。
【請求項318】
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置する方法であって、腫瘍溶解性ウイルス、および上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)由来の培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項319】
前記細胞および腫瘍溶解性ウイルスが、前記対象への投与前にインビトロで共培養される、請求項317または請求項318に記載の方法。
【請求項320】
前記細胞が、腫瘍溶解性ウイルス免疫調節タンパク質が発現されるのに十分な時間、またはウイルスが少なくとも一回の複製サイクルを受けるのに十分な時間、共培養される、請求項319に記載の方法。
【請求項321】
前記脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)が、上外膜脂肪間質細胞を培養して前記AD-MSCを産生することにより、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する、請求項318に記載の方法。
【請求項322】
前記細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上にわたって共培養される、請求項319または請求項320記載の方法。
【請求項323】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、請求項317~322のいずれかに記載の方法。
【請求項324】
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項323に記載の方法。
【請求項325】
前記ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項324に記載の方法。
【請求項326】
前記腫瘍が固形腫瘍である、請求項317~325のいずれかに記載の方法。
【請求項327】
前記対象が、肺がん、膵臓がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、および腎臓がんの中から選択されるがんを有する、請求項317~326のいずれかに記載の方法。
【請求項328】
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、請求項326に記載の方法。
【請求項329】
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、請求項317~328のいずれかに記載の方法。
【請求項330】
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、請求項329に記載の方法。
【請求項331】
前記産物が抗体である、請求項330に記載の方法。
【請求項332】
前記対象がヒトである、請求項317~331のいずれかに記載の方法。
【請求項333】
前記対象が小児患者である、請求項332に記載の方法。
【請求項334】
前記細胞が前記対象に対して自家である、請求項317~333のいずれかに記載の方法。
【請求項335】
前記細胞が前記対象に対して同種異系である、請求項317~333のいずれかに記載の方法。
【請求項336】
前記ウイルスが、腫瘍内注射、静脈内注射、腹腔内注射、髄腔内注射、脳室内注射、関節内注射または眼内注射によって投与される、請求項317~335のいずれかに記載の方法。
【請求項337】
前記細胞が、腫瘍内注射、静脈内注射、腹腔内注射、髄腔内注射、脳室内注射、関節内注射または眼内注射によって投与される、請求項317~336のいずれかに記載の方法。
【請求項338】
別の抗がん処置または治療を施すことを含む、請求項317~337のいずれかに記載の方法。
【請求項339】
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、請求項338に記載の方法。
【請求項340】
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を施すことを含む、請求項339に記載の方法。
【請求項341】
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を施すことを含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、請求項317~338のいずれかに記載の方法。
【請求項342】
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、請求項341に記載の方法。
【請求項343】
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、請求項341または請求項342に記載の方法。
【請求項344】
前記処置がPD-1経路の阻害剤の投与を含む、請求項341~343のいずれかに記載の方法。
【請求項345】
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、請求項344に記載の方法。
【請求項346】
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、請求項344に記載の方法。
【請求項347】
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を投与することを含む、請求項341~343のいずれかに記載の方法。
【請求項348】
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、請求項341~343のいずれかに記載の方法。
【請求項349】
共刺激分子に対するアゴニスト抗体を投与することを含む処置を含む、請求項317~348のいずれかに記載の方法。
【請求項350】
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、請求項349に記載の方法。
【請求項351】
組成物または組み合わせであって、
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、
(b)上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)と、を含み、
組成物が細胞およびウイルスの混合物であり、組み合わせが2つの別々の組成物であり、一方の組成物がウイルスを含み、他方の組成物が細胞を含む、組成物または組み合わせ。
【請求項352】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、請求項351に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項353】
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項352に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項354】
前記ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項353に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項355】
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置するために使用するための、請求項351~354のいずれかに記載の組成物または組み合わせ。
【請求項356】
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、請求項355に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項357】
対象における固形腫瘍または血液悪性腫瘍の処置に使用するための併用療法であって、
(a)幹細胞であって、
前記幹細胞が腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記幹細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、幹細胞と、
(b)前記対象においてT細胞応答を活性化する処置であって、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む処置と、を含む、併用療法。
【請求項358】
(b)において、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含む、請求項357に記載の組み合わせ。
【請求項359】
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTAおよびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、請求項358に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項360】
(b)において、前記処置がPD-1経路の阻害剤を含む、請求項357~359のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項361】
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、請求項360に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項362】
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、請求項360に記載の使用のための組み合わせ。
【請求項363】
(b)において、前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体を含む、請求項357~359のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
【請求項364】
(b)において、前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する抗体を遮断することを含む、請求項357または請求項358に記載の組み合わせ。
【請求項365】
(b)において、前記処置が共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、請求項357~364のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項366】
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、請求項365に記載の組み合わせ。
【請求項367】
(a)が(b)の後に使用するためのものである、請求項357~366のいずれかに記載の併用療法。
【請求項368】
(a)が(b)の前に使用するためのものである、請求項357~366のいずれかに記載の併用療法。
【請求項369】
前記腫瘍内の細胞のアポトーシスを誘導する処置を更に含み、前記処置が、放射線療法、化学療法、免疫療法、光線療法、またはそれらの組み合わせの中から選択される、請求項357~368のいずれか一項に記載の使用のための併用療法。
【請求項370】
アポトーシスを誘導する前記処置が放射線療法を含む、請求項369に記載の併用療法。
【請求項371】
腫瘍微小環境を改変するための処置を更に含み、前記処置がサイトカイン遮断薬を含む、請求項357~370のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項372】
前記溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ハンタウイルス、粘液腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、請求項357~371のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項373】
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項357~371のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項374】
前記幹細胞が、TLRアゴニスト静脈内免疫グロブリン(IVIG);単球馴化培地;好中球細胞外トラップ曝露末梢血単核細胞からの上清;グラム陽性菌から単離されたペプチドグリカン;マイコバクテリアから単離されたリポアラビノマンナン;酵母細胞壁から単離されたザイモサン;ポリアデニル-ポリウリジン酸;ポリ(IC);リポ多糖;モノホスホリルリピドA;フラジェリン;ガルディキモド;イミキモド;R848;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオシド;および23SリボソームRNAから選択される薬剤と組み合わせて投与されるか;または
前記幹細胞が、IVIGで前処理された単球、T細胞、T細胞刺激に曝露されたT細胞またはナチュラルキラー細胞と共培養されている、請求項357~373のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項375】
前記使用が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌を処置するためのものである、請求項357~374のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項376】
前記使用が、神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、中枢神経系腫瘍、膵臓腺癌、または黒色腫を処置するためのものである、請求項357~375のいずれかに記載の使用のための併用療法。
【請求項377】
前記幹細胞が自家である、請求項357~376のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
【請求項378】
前記幹細胞が同種異系である、請求項357~376のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
【請求項379】
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処理または改変されている、請求項1~103および111~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項380】
前記担体細胞が、c-myc、v-myc、E6/E7、hTERT、野生型または改変SV40大型腫瘍抗原、loxPおよび/またはtetRの1つ以上を発現するように改変されている、請求項379に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項381】
薬学的に許容される媒体中に請求項379または請求項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を含む医薬組成物。
【請求項382】
凍結保存される、請求項381に記載の医薬組成物。
【請求項383】
希釈せずに直接投与するために製剤化される、請求項381または請求項382に記載の医薬組成物。
【請求項384】
単回投与量として製剤化される、請求項381~383のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項385】
前記薬学的に許容される媒体が非経口投与に適している、請求項381~384のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項386】
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、請求項379または請求項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
【請求項387】
対象において、固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、請求項379または請求項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または請求項381~385のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項388】
請求項386または請求項387に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用であって、前記細胞支援型ウイルス発現系が、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させること;および
b)前記腫瘍溶解性ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して前記CAVESを産生するのに十分な時間にわたって細胞が増殖および/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記ウイルスと共にインキュベートまたは共培養すること、によって製造される、細胞支援型ウイルス発現系または前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項389】
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、請求項388に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項390】
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養した、請求項386~389のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
【請求項391】
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処置または修飾され、
前記改変された担体細胞集団の増殖が、CAVESの調製前および/または対象へのCAVESの投与前の第1の時点(複数可)で活性化され、
前記担体細胞集団の増殖が、第1の時点(複数可)の後で、前記対象への前記CAVESの投与前の第2の時点に不活性化される、請求項130~205のいずれかに記載の方法。
【請求項392】
細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を作製する方法であって、
ウイルスによる細胞の感染のための担体細胞および腫瘍溶解性ウイルスを、ウイルスがコードされたタンパク質を発現する条件下で、0.001~10のMOIで6時間以上最大48時間未満インキュベートし、それにより担体細胞は、前記ウイルスが前記担体細胞と会合することによってウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現して、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を製造すること;
前記細胞支援型ウイルス発現系細胞を回収すること;および
それらを低温で凍結保存培地中に保存して、保存された細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を製造すること、を含む、方法。
【請求項393】
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、請求項392に記載の方法。
【請求項394】
前記インキュベーション時間が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上である、請求項392または請求項393に記載の方法。
【請求項395】
前記インキュベーション時間が少なくとも6時間である、請求項394に記載の方法。
【請求項396】
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処理または改変されている、請求項392~395のいずれかに記載の方法。
【請求項397】
前記担体細胞が、c-myc、v-myc、E6/E7、hTERT、野生型または改変SV40大型腫瘍抗原、loxPおよび/またはtetRの1つ以上を発現するように改変されている、請求項396に記載の方法。
【請求項398】
前記ウイルスが、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の1つ以上をコードまたは含むように処理または改変される、請求項392~397のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
優先権の利益は、2018年11月6日出願の発明者Antonio Fernandez Santidrianおよび出願人Calidi Biotherapeutics,Inc.の「ENHANCED SYSTEMS FOR CELL-MEDIATED ONCOLYTIC VIRAL THERAPY」と題する米国仮出願第62/756,550号、ならびに2019年1月7日出願の発明者Antonio Fernandez Santidrian、Duong Hoang Nguyen、Dobrin Draganov、および出願人Calidi Biotherapeutics,Inc.の「ENHANCED SYSTEMS FOR CELL-MEDIATED ONCOLYTIC VIRAL THERAPY」と題する米国仮出願第62/789,458号に主張される。本出願はまた、発明者Antonio Fernandez Santidrian、Duong Nguyen、Dobrin Draganov、および出願人Calidi Biotherapeutics,Inc.の「ENHANCED SYSTEMS FOR CELL-MEDIATED ONCOLYTIC VIRAL THERAPY」と題する、本件と同日に出願された米国特許出願第16/676,416号に関連する。これらの出願の各々の主題および開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
電子的に提供される配列表の参照による組み込み
配列表の電子版が本明細書と共に提出され、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。電子ファイルは2019年11月6日に作成され、サイズは793キロバイトであり、2601SEQ001.txtというタイトルが付けられている。
【0003】
発明の分野
腫瘍溶解性ウイルス療法を改善するための細胞支援型ウイルス発現系、その系の使用、およびそのような処置を必要とする対象にこの系を投与することによってがんを処置する方法が提供される。
【背景技術】
【0004】
背景
送達または投与されたウイルスが腫瘍に感染し、腫瘍内で定着および/または複製する能力は、循環中和抗体、自然免疫機構および適応免疫機構、ならびにウイルスおよび/または担体細胞に対する他の排除機構によって妨げることができる。細胞は、がん治療用の腫瘍溶解性ウイルスの送達のための担体として使用されてきた。腫瘍溶解性ウイルスの治療有効性を増強する改良された系が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
概要
腫瘍溶解性ウイルスの送達のための幹細胞などの細胞の使用は、ウイルスがコードされた遺伝子を発現するおよび/または複製するのに十分な時間、細胞とウイルスをインキュベートすることによって改善することができることが本明細書で示される。インキュベーション後、細胞をその後の使用のために低温で保存することができる。長期間のインキュベーションは、ネイキッドウイルスと比較して、および十分な時間ウイルスとインキュベートされなかった細胞の以前の使用と比較して、腫瘍溶解性ウイルス療法の有効性を高める。得られた細胞は、その後の使用のために、凍結保存または低温保存などで保存することができる。より効果的な腫瘍溶解性ウイルス送達媒体を提供する得られた細胞は、全身投与ならびに腫瘍内、腹腔内および局所投与を含む他の経路を介して投与することができる。
【0006】
腫瘍溶解性ウイルス療法を増強する細胞支援型ウイルス発現系(cell-assisted viral expression system;CAVES)が本明細書で提供される。この系は、(1)ウイルス感染および複製を許容する担体細胞などの細胞;(2)腫瘍溶解性ウイルス;(3)細胞において発現されるウイルスによってコードされる少なくとも1つの発現される免疫調節遺伝子または治療遺伝子、を含む。CAVESは、ウイルスが細胞に感染し、遺伝子を発現させることができる条件下で細胞およびウイルスをインキュベートすることによって産生される。例示的な細胞は、腫瘍溶解性ウイルス療法を、この目的のための1つ以上の特徴、例えば、下記能力を有して増強する:(a)ウイルスおよびウイルスコード化タンパク質の発現を増幅する能力;(b)体液性免疫系または他の血清成分による不活化からウイルスを保護する能力;および/または(c)腫瘍内でのウイルス感染のコロニー形成および/または拡散を促進する能力。本明細書で提供される系は、任意の腫瘍溶解性ウイルス、ならびにウイルス増幅およびウイルスコード化タンパク質の発現を可能にする任意の細胞を使用して生成することができる。一般に、細胞/担体細胞は、腫瘍細胞または不活性化腫瘍細胞ではなく、限定されるものではないが、幹細胞および線維芽細胞などの細胞である。
【0007】
本明細書で提供される系は、ウイルス感染および複製を許容する細胞ならびに腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスを、ウイルス感染ならびに少なくとも1つのウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または少なくとも1つのウイルスコードおよび組換え発現治療用タンパク質の発現、ならびに任意に1つ以上の細胞/組換え細胞タンパク質の発現に十分な所定の期間、エクスビボで一緒にインキュベートすることによって生成することができる。
【0008】
標準的な送達媒体として細胞を使用せず、むしろ送達された腫瘍溶解性ウイルス療法を増強する系の一部として細胞を使用するCAVESを作製するためには、一般に2~4時間超、一般に約5もしくは6時間~72時間以上、例えば一般に少なくとも約5もしくは6時間、または約5時間もしくは6時間、あるいは約5もしくは6時間超から少なくとも約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71もしくは72時間またはそれ以上、例えば約6時間~18時間、または約12時間~48時間のインキュベーション時間を必要とする。しかしながら、この期間は、系で使用される特定の腫瘍溶解性ウイルスおよび/または担体細胞、およびそれらの組み合わせに依存する。この期間は、ウイルスによる細胞の感染、およびウイルスコード化免疫調節タンパク質またはコードされた治療用タンパク質の発現に十分な時間である。例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)ウイルス複製サイクルでは、ウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質などの組換えタンパク質を発現する時間は、一般に比較的短く、およそ2~3時間であり、ワクシニアウイルスの場合、ウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え治療用タンパク質を発現する時間は、一般に、より長く、およそ6~12時間超である。ワクシニアウイルスCAVESを調製するためには、一般に、ウイルスを細胞と共に少なくとも約6時間インキュベートする必要がある。
【0009】
投与すると、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、ウイルス感染および/または増幅に対する腫瘍許容性にかかわらず、免疫調節および/または治療用タンパク質の即時供給を提供する。ウイルスコード化免疫調節遺伝子および/または治療遺伝子の発現促進は、いくつかの利点をもたらす。これらには、ウイルスによってコードされる免疫調節物質が、患者の免疫系によるウイルスおよび/または細胞の拒絶を阻止するために投与の際に即時に作用するように、がん/腫瘍への曝露前に発現されるので、同種状況に対する改善された適応が含まれる。細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、補体の阻害作用を遮断するタンパク質の発現を促進することができる。
【0010】
自家細胞を使用して細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を産生することができるが、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、同種異系細胞を使用する方法を提供し、標準的なプロトコルで投与するために製造および保存することができる。ウイルス増幅ならびに1つ以上のウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え発現治療遺伝子の発現は、投与前または将来の投与のための保存前の所定の時間にわたってエクスビボで開始されるので、本明細書で提供される細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、患者集団を処置するために標準化することができる。細胞に感染するウイルスは、投与されるとコードされたタンパク質を発現するので、本明細書で提供される系の治療効果は、集団における患者の腫瘍微小環境の違いによって引き起こされる変動の影響を受けないか、またはあまり受けない。本明細書で提供される細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、ウイルス増幅およびウイルスコード遺伝子発現の妨げとなることができる、非許容性のがん/腫瘍、不利な微小環境および/または腫瘍内の低栄養環境に関連する困難を克服または緩和する。腫瘍におけるウイルスの放出および拡散は、事前のエクスビボでのウイルス増幅の開始ならびにウイルスコード化免疫調節および/または治療遺伝子の発現のために、投与直後に起こることができる。
【0011】
本明細書で提供される組成物および方法のいずれにおいても、CAVESを生成するために使用され、関連する方法で使用される細胞および/またはウイルスは、本明細書で提供されるように改変される。本明細書で提供される改変は、例えばコードされた治療用生成物を組み込むことによって、改善された治療上の利益をもたらすことができ、または治療有効性を改善するために免疫および他の障壁、例えば腫瘍血管遮断を克服するのを助けることができる。いくつかの態様では、細胞は条件付き不死化のために改変される、すなわち、不死化を活性化することによって大きな集団を生成するように安定に増殖させ、次いで対象への投与前に不活性化して、制御されない細胞分裂が対象において継続しないようにすることができる。例えば、細胞(「担体細胞」)は、CAVESの細胞成分を条件付き不死化に順応させるために、1つ以上の野生型または改変された(変異した、または例えば融合タンパク質として)c-myc、v-myc、E6/E7、hTERT、SV40大型腫瘍抗原、loxPおよび/またはtetRを発現するように改変することができる。そのように改変された担体細胞集団の増殖は、CAVESの調製前および/またはCAVESの対象への投与前の第1の時点(複数可)で活性化することができ、担体細胞集団の増殖は、CAVESの拡大後および対象への投与前の第2の時点で不活性化することができる。
【0012】
本明細書で提供される系は、例えば-80℃などの凍結保存条件下で安定かつ無期限に保存することができ、投与前に必要に応じてまたは所望に応じて解凍することができる。例えば、本明細書で提供される系は、-20℃または-80℃などの保存温度で、投与のための解凍前、少なくともまたは約数時間もしくは数時間の間、1、2、3、4もしくは5時間、または少なくとも約数年の間を含む日数、例えば、限定されるものではないが、少なくとももしくは約1、2、3もしくはそれ以上の年数、例えば少なくとももしくは約1、2、3、4もしくは5時間から少なくとももしくは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、61、62、63、64、65、66、67、68、69、60、70、71もしくは72時間、または4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは30日、または1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5もしくは12ヵ月、または1、2、3、4もしくは5年以上にわたって、保存することができる。本明細書で提供される系はまた、4℃などの冷蔵条件下で安定に保存することができ、および/または処置のために投与部位まで氷上で輸送することができる。例えば、本明細書で提供される系は、4℃または氷上で少なくともまたは約数時間、例えば、限定されないが、処置のための投与前に1、2、3、4または5時間から、少なくともまたは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上にわたり保存することができる。
【0013】
本明細書で提供される細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、対象の処置のために投与する前に、免疫調節物質および/または組換え発現治療用タンパク質などの予め発現されたウイルスコード化タンパク質を含む。これにより、腫瘍微小環境が処置に対してより迅速に応答することが可能になる。本明細書で提供される系を作製するために使用されるウイルスの量は、エクスビボ増幅なしでウイルスを直接投与する場合よりも少なくすることができる。ウイルスの増幅およびウイルスコード化免疫調節物質および/または組換え発現された治療用タンパク質の発現は、腫瘍部位に投与される前に所定の時間にわたってエクスビボで行われるので、宿主の免疫細胞が細胞および/またはウイルスに対する応答を開始する前に腫瘍部位でのウイルス感染および放出が起こることができるため、同種異系細胞を使用しても、本明細書で提供される系を生成することができる。ウイルスの増幅およびウイルスコード化免疫調節物質および/または組換え発現された治療用タンパク質の発現は、腫瘍部位に投与される前に所定の時間にわたってエクスビボで行われているので、循環中により長く生存することができる細胞外エンベロープウイルス粒子(eeV)は、宿主への系の投与直後にインサイチュで製造することができる。
【0014】
そのような処置を必要とする対象に本明細書で提供される系を投与することを含む処置の方法も本明細書で提供される。この系は、単独で、または例えば、限定されるものではないが、チェックポイント阻害剤、CAR-T細胞、共刺激分子、治療用抗体、二重抗体(bi-antibodies)および抗体-薬物コンジュゲートを含む他の免疫腫瘍療法などと組み合わせて投与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概要
A.定義
B.細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)のための成分の選択
1.細胞
(i)改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために感作/保護された細胞媒体
(ii)ウイルス媒介殺傷に対する耐性のために感作された(延長された生存期間および改善された局所免疫抑制のため)
(iii)ウイルス増幅および/または免疫調節を改善するために操作された細胞媒体
(iv)血管正常化/腫瘍血管再プログラミングのための血管形成阻害剤を発現するように操作された細胞媒体
(v)条件付き細胞不死化のための導入遺伝子を発現するように操作された細胞媒体
2.ウイルス
C.CAVESの生成、製剤化、保存および輸送
D.医薬組成物、組み合わせおよびキット
1.医薬組成物
2.組み合わせ
3.キット
E.CAVESで投与される併用(追加)治療
F.治療のためのCAVESの投与様式
a.照射CAVESまたは非照射CAVESの投与
b.投与経路
c.装置
d.投与の投与量
レジメン
G.処置方法および処置と連携したモニタリング
H.処置される例示的ながんの種類
I.実施例
【0016】
A.定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開された出願および刊行物、GenBank配列、データベース、ウェブサイト、ならびに他の公開された資料は、特に明記しない限り、その全体が参照により組み込まれる。本明細書の用語について複数の定義がある場合は、この節の定義が優先する。URLまたは他のこのような識別子もしくはアドレスが言及される場合、このような識別子は変化でき、インターネット上の特定の情報は移り変わることができるが、インターネットを検索することによって等価な情報を見つけることができることが理解される。これらへの言及は、このような情報の入手可能性および一般的普及を証明している。
【0017】
本明細書中で用いる場合、「virus」(ウイルス)は、宿主細胞なしでは増殖も複製もできない感染性実体の群のいずれかを指す。ウイルスは、典型的には、タンパク質コートと、遺伝物質としてのRNAまたはDNAを含むが、半透膜は含まず、生細胞でのみ増殖および増加することができる。例としては、インフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、ポリオウイルス、セネカバレーウイルスおよびセムリキ森林ウイルスが挙げられる。
【0018】
本明細書中で用いる場合、「腫瘍溶解性ウイルス」は、腫瘍対象の腫瘍細胞において選択的に複製するウイルスを指す。これらには、ポックスウイルスなど、天然に優先的に複製して腫瘍細胞に蓄積するウイルス、およびそのように操作されたウイルスが含まれる。一部の腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞の感染後に腫瘍細胞を殺傷することができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を溶解することによって、または腫瘍細胞の細胞死を誘導することによって、腫瘍細胞の死を引き起こすことができる。例示的な腫瘍溶解性ウイルスとしては、限定されるものではないが、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ピコルナウイルス、シンドビスウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、レオウイルス、およびコクサッキーウイルスが挙げられる。
【0019】
本明細書中で用いる場合、「therapeutic virus」(治療用ウイルス)という用語は、がん、腫瘍および/または転移などの新生物疾患、または炎症または創傷などの疾患または障害の処置、あるいはそれらの診断ならびに/あるいはその両方のために投与されるウイルスを指す。一般に、本明細書の治療用ウイルスは、抗腫瘍活性および最小の毒性を示すものである。
【0020】
本明細書中で用いる場合、「vaccinia virus」(ワクシニアウイルス)または「VACV」または「VV」という用語は、ポックスウイルスファミリーに属する大きく、複雑なエンベロープウイルスを意味する。これは、およそ200のタンパク質をコードする、長さがおよそ190kbpの線状の二本鎖DNAゲノムを有する。ワクシニアウイルス株には、限定されるものではないが、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Bern、Paris、Tashkent、Tian Tan、Lister、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、CVA382、Dairen I、LIPV、LC16M8、LC16M0、ACAM、WR 65-16、Connaught、JX-594(pexastimogene devacirepvec)、GL-ONC1、vvDD TK突然変異株、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、EM-63およびNYVACワクシニアウイルス株の株、これらに由来する株またはこれらの改変型の株が含まれる。
【0021】
本明細書中で用いる場合、操作されたウイルスに関して「マーカー(marker)」または「選択マーカー(selection marker)」は、タンパク質などの化合物を指し、ウイルス内および/またはウイルス表面上のその発現および/または存在は、マーカータンパク質を含む、組換え発現された治療遺伝子または他のタンパク質を発現するウイルスなどの所望の操作された特性を有するウイルスの選択を可能にする。
【0022】
本明細書中で用いる場合、Institute of Viral PreparationsのLister株(LIVP)またはLIVPウイルス株は、Institute of Viral Preparations、モスクワ、ロシアで小牛皮への適応によって産生された弱毒化Lister株であるウイルス株(ATCCカタログ番号VR-1549)を指す(Al’tshteinら(1985)Dokl.Akad.Nauk USSR 285:696-699)。LIVP株は、例えば、Institute of Viral Preparations、モスクワ、ロシア(例えば、Kutinovaら(1995)Vaccine 13:487-493参照);FSRI SRC VB Vectorの微生物コレクション(Kozlovaら(2010)Environ.Sci.Technol.44:5121-5126)から入手することができるか、またはMoscow Ivanovsky Institute of Virology(C0355 K0602;Agranovskiら(2006)Atmospheric Environment 40:3924-3929)から入手できる。これはまた、USSRならびにアジアおよびインド全体でワクチン接種に使用されたワクチン株だったため、当業者に周知である。この株は現在、研究者によって使用されており、周知である(例えば、Altshteynら(1985)Dokl.Akad.Nauk USSR 285:696-699;Kutinovaら(1994)Arch.Virol.134:1-9;Kutinovaら(1995)Vaccine 13:487-493;Shchelkunovら(1993)Virus Research 28:273-283;Srollerら(1998)Archives Virology 143:1311-1320;Zinovievら(1994)Gene 147:209-214;およびChkheidzeら(1993)FEBS 336:340-342)参照)。LIVPウイルス株は、細胞株における反復継代を介したLIVPの増殖によって得られる任意のウイルス株またはウイルス調製物を包含する。
【0023】
本明細書中で用いる場合、「modified virus」(改変されたウイルス)は、ウイルスの親株と比較して変化したウイルスを指す。典型的には、改変されたウイルスは、ウイルスのゲノム中に1つ以上の切断、突然変異、挿入または欠失を有する。改変されたウイルスは、1つ以上の改変された内因性ウイルス遺伝子、および/または1つ以上の改変された遺伝子間領域を有することができる。例示的な改変されたウイルスは、ウイルスのゲノムに挿入された1つ以上の異種核酸配列を有することができる。改変されたウイルスは、異種遺伝子の発現のための遺伝子発現カセットの形態の1つ以上の異種核酸配列を含むことができる。
【0024】
典型的には、ウイルスのゲノムは、ヌクレオチドの置換(置き換え)、挿入(付加)または欠失(短縮)によって改変される。改変は、遺伝子工学および組換えDNA法などの本明細書で提供されるものを含む、当業者に既知の任意の方法を使用して行うことができる。したがって、改変ウイルスは、親ウイルスのゲノムと比較してそのゲノムが変化しているウイルスである。例示的な改変されたウイルスは、ウイルスのゲノムに挿入された1つ以上の異種核酸配列を有する。一般に、異種核酸は、ウイルスプロモーターまたは異種非ウイルスプロモーターの制御下で挿入することができる異種タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを含む。例えば、本明細書の改変されたウイルスは、異種遺伝子の発現のための遺伝子発現カセットの形態の1つ以上の異種核酸配列を含むことができる。
【0025】
本明細書中で用いる場合、「cell」(細胞)、「cell vehicle」(細胞媒体)、「carrier vehicle」(担体媒体)、「cell-based delivery vehicle」(細胞ベースの送達媒体)および「cell-based vehicle」(細胞ベースの媒体)と互換的に使用される「carrier cell」(担体細胞)という用語は、ウイルスが感染できるまたは感染する、あるいは例えばウイルスと表面タンパク質との間の化学的もしくは物理的相互作用を通して、または細胞の細胞質もしくは核のウイルスによる感染によって、ウイルスと会合することができるまたは会合する任意の細胞を指す。本明細書中で用いる場合、担体細胞は、腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスに感染することができ、ウイルス/腫瘍溶解性ウイルスが複製することができる細胞を指す。得られた担体細胞は、腫瘍溶解性ウイルスを含有するか、またはそれと会合している。
【0026】
本明細書中で用いる場合、「細胞支援型ウイルス発現系」または「細胞支援ウイルス増強系」(CAVES)という用語は、ウイルス、一般に腫瘍溶解性ウイルス、および会合によって発現される、免疫調節遺伝子産物または治療遺伝子産物などの少なくとも1つのウイルスコード化タンパク質、と会合する担体細胞を指す。「CAVES」という用語は、本明細書では「SNV」という用語と互換的に使用される。担体細胞は、ウイルスが細胞に感染する条件下でウイルスおよび細胞をインキュベートすることによってウイルスと会合し、ウイルスタンパク質が細胞によって発現される。ウイルスによって、担体細胞は、ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または治療遺伝子産物をその表面に含有または提示する。例示的な実施形態では、本明明細書で提供されるCAVESは、ウイルスにコードされた免疫調節または治療用タンパク質の発現を達成するための一定期間にわたるウイルスとの担体細胞のエクスビボまたはインビトロでのインキュベーションによって生成される。期間は、特定のウイルスおよび細胞の関数であり、約2時間超~72時間以上の間、一般に約3時間~約72時間の間、例えば約または少なくとも3、4、5または6時間~約または少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71または72時間以上であり、一般に、少なくとも1つのウイルスコード化免疫調節遺伝子または治療遺伝子の発現を可能にする温度、一般に約またはちょうど37℃である。そのような発現を促進するための特定の時間および温度は、系で使用される腫瘍溶解性ウイルスの種類に依存する。CAVESは、ウイルスによってコードされた生成物の発現および細胞におけるウイルスの複製によってもたらされる。本明細書のほとんどの実施形態では、CAVESの細胞は腫瘍細胞および/または免疫細胞ではない。
【0027】
本明細書中で用いる場合、「凍結保存」は、細胞、組織、または器官を非常に低温で冷却および保存してそれらの生存率を維持するプロセスを指す。典型的には、凍結保存は、約-80℃~-200℃の温度で行われる。凍結保存培地は当業者に既知である。例えば、そのような培地は、一般に、細胞を増殖させるために使用されるのと同じ処方を含有し、加えて、細胞が無血清培地中で増殖した場合、最大20%までのウシ胎児血清、ならびにDMSO(7%~10%)および/またはグリセロール(約10%)などの凍結保存剤を含むことが推奨される。得られた組成物は凍結保存されると言われる。
【0028】
本明細書中で用いる場合、「凍結保存組成物」は、凍結保存温度で少なくとも24時間保存された組成物である。
【0029】
本明細書中で用いる場合、「multiplicity of infection(感染多重度)(MOI)」は、感染中に細胞あたりに加えられるウイルス粒子の数(すなわち、100万個の細胞に加えられる100万個のウイルス粒子は1のMOIである)を指す。
【0030】
本明細書中で用いる場合、細胞の特性を変化させるよう「sensitized」(感作される)または「sensitizing a cell」(細胞を感作させる)は、一般に使用前に、細胞の特性を改変する薬剤での処理によって、例えば、遺伝子の発現を誘導することによって、細胞を処理することを指す。
【0031】
本明細書中で用いる場合、担体細胞におけるウイルスの増幅は、ウイルスが細胞内で複製してウイルスを維持する、または細胞内のウイルスの量を増加させることを意味する。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「host cell」(宿主細胞)または「target cell」(標的細胞)は、ウイルスが感染することができる細胞を意味するために互換的に使用される。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「tissue」(組織)という用語は、一般に生物内で特定の機能を実施するように作用する類似の細胞の群、集合または集合体を指す。
【0034】
本明細書中で用いる場合、「immunomodulatory protein」(免疫調節タンパク質)または「immunomodulator」(免疫調節物質)という用語は、例えば腫瘍の細胞などの標的細胞の自然免疫系および/または獲得免疫系による攻撃からウイルスを保護することができるウイルスによって発現されるタンパク質を指す。ウイルス免疫調節産物は、宿主免疫系によって課される選択的進化圧力に耐えるように進化してきた。これらの産物は、自然および適応宿主免疫応答を調節することができる。ワクシニアによってコードされる例示的な免疫調節産物としては、限定されるものではないが、例えば、VCP(C3L)、B5R、HA(A56R)、B18R/B19R、B8R、CmrCおよびCmrEが挙げられる。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「therapeutic gene product」(治療遺伝子産物)または「therapeutic polypeptide」(治療用ポリペプチド)という用語は、疾患もしくは障害の症状を改善する、または疾患もしくは障害を改善する、腫瘍溶解ウイルスなどのウイルスによってコードされる治療遺伝子によって発現される任意の異種タンパク質を指す。治療遺伝子産物には、限定されるものではないが、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する部分、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進するために活性化できる部分、または細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する別の薬剤を活性化する部分が含まれる。任意に、治療薬は、本明細書の他の場所に記載されるように、造影剤としての使用を可能にする特性などの追加の特性を示す、または明らかにすることができる。例示的な治療遺伝子産物には、例えば、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体、血管新生阻害剤、またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0036】
本明細書中で用いる場合、特定の細胞担体(本明細書では細胞媒体とも呼ばれる)と、担体細胞およびウイルスで処置されるがんを有する対象との間の「適合」は、細胞担体が、対象の免疫系を回避して、ウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分に宿主の免疫系と十分に適合性であることを意味する。担体細胞をウイルスにマッチングさせることもでき、マッチングウイルスは細胞内で複製することができる。ウイルスとマッチングした担体細胞は、ウイルスが細胞内で増幅/複製し、細胞がウイルスを対象の腫瘍に送達する場合、対象への投与について適合である。処置される対象に適合した担体細胞を同定し、マッチングする担体細胞/ウイルスの組み合わせを同定するためのアッセイは、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に提供されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0037】
本明細書の目的のために、「antibody」(抗体)(例えば、免疫応答を抑制するために枯渇または阻害されるT細胞、γδ(gd)T細胞、NK細胞、およびNKT細胞などの免疫細胞集団上で発現される抗原に向けられる抗体)の列挙には、完全長抗体および抗体フラグメントを含むその部分が含まれる。抗体フラグメントには、限定されるものではないが、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fdフラグメント、Fd’フラグメント、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖Fab(scFab)、ダイアボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、または上記のいずれかの抗原結合フラグメントが含まれる。抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体およびイントラボディ(intrabody)も含まれる。本明細書で提供される抗体は、任意の免疫グロブリン型(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgAおよびIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラス(例えば、IgG2aおよびIgG2b)のメンバーを含む。
【0038】
モノクローナル抗体などの抗体は、当業者に既知の標準的な方法を使用して調製することができる(例えば、Kohlerら、Nature 256:495-497(1975);Kohlerら、Eur.J.Immunol.6:511-519(1976);および国際公開第02/46455号参照)。例えば、動物は、抗体を分泌する体細胞を産生するための標準的な方法によって免疫化される。次いで、これらの細胞が、骨髄腫細胞への融合のために免疫された動物から取り出される。抗体を産生できる体細胞、特にB細胞を、骨髄腫細胞株との融合に使用できる。これらの体細胞は、プライミングされた動物のリンパ節、脾臓および末梢血に由来することができる。専門の骨髄腫細胞株が、ハイブリドーマ産生融合手順で使用するためにリンパ球腫瘍から開発されている(KohlerおよびMilstein、Eur.J.Immunol.6:511-519(1976);Shulmanら、Nature、276:269-282(1978);Volkら、J.Virol.、42:220-227(1982))。これらの細胞株は3つの有用な特性を有する。1つ目は、これらが、ハイブリドーマの増殖を支持する選択培地で増殖できないようにする酵素欠損を有することによって、融合していない、および同様に無期限に自己増殖する骨髄腫細胞からの融合ハイブリドーマの選択を容易にすることである。2つ目は、これらが抗体を産生する能力を有し、内因性の軽鎖または重鎖免疫グロブリン鎖を産生することができないことである。3つ目の特性は、これらが他の細胞と効率的に融合することである。ハイブリドーマおよびモノクローナル抗体を産生する他の方法は、当業者に周知である。任意のポリペプチド、例えば免疫細胞集団上の抗原マーカー、または免疫チェックポイントに対する抗体を産生することは日常的である。
【0039】
本明細書中で用いる場合、治療薬は、疾患もしくは障害の症状を改善する、または疾患もしくは障害を改善する薬剤である。治療薬、治療用化合物または治療レジメンには、処置または予防(すなわち、特定の疾患または障害を発症するリスクを減少させる)のためのワクチンを含む、従来の薬物および薬物療法が含まれ、これらは当業者に既知であり、本明細書の他の場所に記載される。新生物疾患を処置するための治療薬には、限定されるものではないが、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する部分、細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進するために活性化できる部分、または細胞増殖を阻害するもしくは細胞死を促進する別の薬剤を活性化する部分が含まれる。本明細書で提供される方法で使用するための治療薬は、例えば、抗がん剤であることができる。例示的な治療薬には、例えば、治療用ウイルスおよび細菌などの治療用微生物、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤、放射線療法、化学療法化合物またはこれらの組み合わせが含まれる。
【0040】
本明細書中で用いる場合、腫瘍細胞またはがん細胞は、増殖および分裂が調節も制御もされないために異常に分裂および複製する細胞、すなわち、制御されない増殖を受けやすい細胞を指す。腫瘍細胞は、良性細胞または悪性細胞であることができる。典型的には、腫瘍細胞は、転移として知られる過程で、体の他の部分に拡散することができる悪性細胞である。
【0041】
本明細書中で用いる場合、ウイルス調製物またはウイルス組成物は、培養系においてインビボまたはインビトロで、ウイルス株、例えば、ワクシニアウイルス株、ワクシニアウイルスクローン株、または改変されたもしくは組換えウイルス株の増殖によって得られるウイルス組成物を指す。例えば、ワクシニアウイルス調製物は、典型的には当技術分野で既知の標準的な方法を使用して培養系から精製する際に、宿主細胞におけるウイルス株の増殖によって得られるウイルス組成物を指す。ウイルス調製物は、一般に、いくつかのウイルス粒子またはビリオンで構成される。所望であれば、サンプルまたは調製物中のウイルス粒子の数を、形成された各プラークが1つの感染性ウイルス粒子を表すと仮定して、サンプル単位体積当たりのプラーク形成単位の数(pfu/mL)を計算するプラークアッセイを使用して決定することができる。調製物中の各ウイルス粒子またはビリオンは、他のウイルス粒子と比較して同じゲノム配列を有することができる(すなわち、調製物は配列が均質である)、または異なるゲノム配列を有することができる(すなわち、調製物は配列が不均質である)。クローン単離がない場合、ウイルス株の自然選択過程で起こる相同組換えイベントなどによって、ウイルスが複製する際にウイルスのゲノムの不均質性または多様性が生じることができることが当業者に理解される(Plotkin&Orenstein(編)、「Recombinant Vaccinia Virus Vaccines」in Vaccines、第3版(1999))。
【0042】
本明細書中で用いる場合、プラーク形成単位(pfu)または感染単位(IU)は、感染性ウイルスまたは生ウイルスの数を指す。したがって、これは調製物中の活性ウイルスの量を反映する。pfuは、当業者に既知の標準的なアッセイであるウイルスプラークアッセイ(プラーク形成アッセイ)またはエンドポイント希釈アッセイを使用して決定することができる。
【0043】
本明細書中で用いる場合、「targeting molecule」(標的化分子)または「targeting ligand」(標的化リガンド)は、特定の細胞、組織または臓器への局在化を指示する任意の分子シグナルを指す。標的化リガンドの例としては、限定されるものではないが、タンパク質、炭水化物、脂質または他のこのような部分を含む、限定されるものではないが、細胞表面分子に結合するタンパク質、ポリペプチドまたはこれらの部分が挙げられる。例えば、標的化リガンドは、細胞表面受容体に結合するタンパク質もしくはその部分、または標的細胞上で選択的に発現される抗原に向けられる抗体を含む。標的化リガンドには、限定されるものではないが、増殖因子、サイトカイン、接着分子、神経ペプチド、タンパク質ホルモンおよび一本鎖抗体(scFv)が含まれる。
【0044】
本明細書中で用いる場合、投与のための送達媒体は、宿主対象への送達のために、本明細書で提供されるウイルスなどの薬剤と会合する、リポソーム、ミセルまたは逆ミセルなどの脂質ベースまたは他のポリマーベースの組成物を指す。
【0045】
本明細書中で用いる場合、特定の組織へのウイルスの蓄積は、ウイルスが宿主の臓器または組織に感染するのに十分に長い、ウイルスの宿主への投与後の期間後の宿主生物の特定の組織におけるウイルスの分布またはコロニー形成を指す。当業者は、ウイルスの感染の期間は、ウイルス、感染される臓器(複数可)または組織(複数可)、宿主の免疫能、およびウイルスの投与量に応じて変化することを認識する。一般に、蓄積は、ウイルスの感染後約1日未満、約1日~約2、3、4、5、6もしくは7日、約1週間~約2、3もしくは4週間、約1ヶ月~約2、3、4、5、6ヶ月以上の時点で決定することができる。本明細書の目的のために、ウイルスは、炎症組織または腫瘍組織などの免疫特権組織に優先的に蓄積するが、ウイルスの毒性が軽度である、または許容でき、最大でも致命的でない程度まで、宿主の非腫瘍組織などの他の組織および臓器から排除される。
【0046】
本明細書中で用いる場合、「preferential accumulation」(優先的蓄積)は、第2の位置での蓄積よりも高いレベルでの第1の位置でのウイルスの蓄積を指す(すなわち、第1の位置でのウイルス粒子の濃度または力価が、第2の位置でのウイルス粒子の濃度より高い)。したがって、正常な組織または臓器に対して、炎症組織および腫瘍組織などの免疫特権組織(免疫系から保護されている組織)に優先的に蓄積するウイルスは、ウイルスが正常組織または臓器に蓄積するよりも高いレベル(すなわち、濃度またはウイルス力価)で腫瘍などの免疫特権組織に蓄積するウイルスを指す。
【0047】
本明細書中で用いる場合、活性は、本明細書で提供される化合物またはウイルスのインビトロまたはインビボ活性を指す。例えば、インビボ活性は、本明細書で提供される化合物またはウイルス(またはその組成物もしくは他の混合物)のインビボ投与後に生じる生理学的応答を指す。したがって、活性は、このような化合物、組成物および混合物の結果として生じる治療効果および医薬活性を包含する。活性は、このような活性を試験または使用するように設計されたインビトロおよび/またはインビボ系で観察することができる。
【0048】
本明細書中で用いる場合、「anti-tumor activity」(抗腫瘍活性)または「anti-tumorigenic」(抗腫瘍性)は、対象においてインビトロまたはインビボで腫瘍の形成または成長を防止または阻害するウイルス株を指す。抗腫瘍活性は、抗腫瘍活性を示す1つ以上のパラメータを評価することによって決定することができる。
【0049】
本明細書中で用いる場合、抗腫瘍活性または抗腫瘍形成能に関する「greater」(より大きな)または「improved」(改善された)活性は、ウイルス株が、参照ウイルスもしくは対照ウイルスよりも大きな程度で、またはウイルスによる処置がない場合よりも大きな程度で、対象においてインビトロまたはインビボで腫瘍の形成または成長を防止または阻害することができることを意味する。抗腫瘍活性が「greater」(より大きい)または「improved」(改善されている)かどうかは、抗腫瘍活性を示すパラメータに対するウイルス、および必要に応じて対照ウイルスまたは参照ウイルスの効果を評価することによって決定することができる。2つ以上の異なるウイルスの活性を比較する場合、インビトロアッセイで使用されるまたはインビボで投与されるウイルスの量(例えば、pfu)は同じまたは類似であり、インビトロアッセイまたはインビボ評価の条件(例えば、インビボ投与レジメン)は同じまたは類似であることが理解される。
【0050】
本明細書中で用いる場合、ウイルスに関する「toxicity」(毒性)(本明細書ではビルレンスまたは病原性とも呼ばれる)は、ウイルスの投与時の宿主に対する有害効果または毒性効果を指す。ワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスの場合、ウイルスの毒性は、宿主の生存に影響を及ぼす、または有害効果もしくは毒性効果をもたらすことができる、非腫瘍臓器または組織への蓄積に関連している。毒性は、毒性を示す1つ以上のパラメータを評価することによって測定できる。これらには、非腫瘍組織への蓄積、および体重に対する効果などの、投与された対象の生存率または健康に対する効果が含まれる。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「reduced toxicity」(減少した毒性)は、ウイルスで処置されていない宿主と比較して、または別の参照ウイルスもしくは対照ウイルスを投与された宿主と比較して、宿主へのウイルスの投与時の毒性効果または有害効果が減弱または縮小していることを意味する。毒性が減少または縮小しているかどうかは、毒性を示すパラメータに対するウイルス、および必要に応じて対照ウイルスまたは参照ウイルスの効果を評価することによって決定することができる。2つ以上の異なるウイルスの活性を比較する場合、インビトロアッセイで使用されるまたはインビボで投与されるウイルスの量(例えば、pfu)は同じまたは類似であり、インビトロアッセイまたはインビボ評価の条件(例えば、インビボ投与レジメン)は同じまたは類似であることが理解される。例えば、ウイルスと対照ウイルスまたは参照ウイルスのインビボ投与時の効果を比較する場合、対象は、同じ種、サイズ、性別であり、ウイルスは同じまたは類似の投与レジメンの下で同じまたは類似の量で投与される。特に、減少した毒性を有するウイルスは、疾患の処置などのためにウイルスを宿主に投与した際、ウイルスが、宿主に損傷もしくは危害をもたらす、または処置されている疾患よりも大きな程度に、または対照ウイルスもしくは参照ウイルスよりも大きな程度に宿主の生存に影響を及ぼす程度に宿主の非腫瘍臓器および組織に蓄積しないことを意味することができる。例えば、減少した毒性を有するウイルスには、処置の過程で対象の死をもたらさないウイルスが含まれる。
【0052】
本明細書中で用いる場合、「control」(対照)または「standard」(標準)は、試験パラメータで処置されないことを除いて、試験サンプルと実質的に同一であるサンプルを指す、またはこれが血漿サンプルである場合、目的の状態に罹患していない正常なボランティアからのものであることができる。対照は、内部対照であることもできる。例えば、対照は、既知の特性または活性を有するウイルスなどのサンプルであることができる。
【0053】
本明細書中で用いる場合、投薬レジメンは、投与される薬剤、例えば、担体細胞またはウイルスまたは他の薬剤の量、および投与サイクルの過程にわたる投与の頻度を指す。投薬レジメンは、処置される疾患または状態の関数であり、したがって、変化することができる。
【0054】
本明細書中で用いる場合、投与の頻度は、投与サイクル中に薬剤が投与される回数を指す。例えば、頻度は数日、数週間または数ヶ月であることができる。例えば、頻度は、投与サイクル中に1回、2回、3回、4回、5回、6回または7回の投与であることができる。頻度は、投与サイクル中の連続日を指すことができる。特定の頻度は、処置される特定の疾患または状態の関数である。
【0055】
本明細書中で用いる場合、「cycle of administration」(投与サイクル)は、連続投与にわたって繰り返されるウイルスの投与の投薬レジメンの繰り返されるスケジュールを指す。例えば、例示的な投与サイクルは28日サイクルである。
【0056】
本明細書中で用いる場合、免疫特権細胞および免疫特権組織は、免疫系から隔離されている固形腫瘍などの細胞および組織を指す。免疫特権細胞または組織は、炎症性免疫応答を誘発することなく抗原の導入に耐える。例えば、ウイルスの対象への投与は、対象からウイルスを排除する免疫応答を誘発する。しかしながら、免疫特権部位は免疫応答から保護または隔離されており、ウイルスが生き残り、一般的に複製することを可能にする。免疫特権組織には、腫瘍組織および他の組織などの増殖組織、ならびに他の増殖性障害、創傷に関与する細胞、ならびに炎症反応に関与する他の組織が含まれる。
【0057】
本明細書中で用いる場合、新生物としても知られる腫瘍は、細胞が異常に高速で増殖する場合に生じる異常な組織の塊である。腫瘍は、造血器腫瘍ならびに固形腫瘍を包含する。腫瘍は、正常組織との構造的組織化および機能的協調の部分的または全体的な欠如を示すことができる。腫瘍は良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であることができる。
【0058】
本明細書中で用いる場合、悪性は、腫瘍に適用される場合、増殖制御および位置制御の喪失を伴う転移能力を有する原発腫瘍を指す。
【0059】
本明細書中で用いる場合、転移は、主に病的過程に関与する部位から離れた異常細胞または新生物細胞の増殖を指す。
【0060】
本明細書中で用いる場合、悪性腫瘍は大きく3つの主要な型に分類できる。癌腫は、限定されないが、乳房、前立腺、肺、結腸および膵臓等の上皮構造から発生する悪性腫瘍である。肉腫は、結合組織、または筋肉、軟骨、脂肪もしくは骨などの間葉系細胞に由来する悪性腫瘍である。白血病およびリンパ腫は、免疫系の構成要素を含む造血構造(血球の形成に関連する構造)に発症する悪性腫瘍である。他の悪性腫瘍には、限定されるものではないが、神経系の腫瘍(例えば神経線維腫(neurofibromatomas))、胚細胞腫瘍、および芽球性腫瘍が含まれる。
【0061】
本明細書中で用いる場合、切除された腫瘍は、腫瘍のかなりの部分が切除された腫瘍を指す。切除(excision)は、外科手術によって行うことができる(すなわち、外科的に切除された腫瘍)。切除(resection)は、部分的または完全であることができる。
【0062】
本明細書中で用いる場合、疾患または障害は、例えば、感染または遺伝的欠陥から生じ、特定できる症状を特徴とする生物の病理学的状態を指す。本明細書に記載される例示的な疾患は、がんなどの新生物疾患である。
【0063】
本明細書中で用いる場合、新生物疾患は、腫瘍の発生、成長、転移および進行を含む、がんを含む任意の障害を指す。
【0064】
本明細書中で用いる場合、がんは、転移性がん、リンパ性腫瘍および血液がんを含む、任意の種類の悪性腫瘍または血液悪性腫瘍によって引き起こされる、またはこれを特徴とする疾患の用語である。例示的ながんには、限定されるものではないが、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺癌、腺腫、副腎がん、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、脳幹神経膠腫、脳がん、癌腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽細胞腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視路もしくは視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、癌腫、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、類表皮がん、食道がん、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん/眼内黒色腫、眼がん/網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胆石腫瘍、胃/胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、巨細胞腫瘍、多形性膠芽腫、神経膠腫、有毛細胞腫瘍、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞/肝臓がん、ホジキンリンパ腫、過形成、過形成性角膜神経腫瘍、上皮内がん、下咽頭がん、腸神経節性神経腫、膵島細胞腫瘍、カポシ肉腫、腎臓/腎細胞がん、喉頭がん、平滑筋腫、口唇および口腔がん、脂肪肉腫、肝臓がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、マクログロブリン血症、悪性カルチノイド、骨の悪性線維性組織球腫、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、マルファン様体型腫瘍、髄様がん、黒色腫、メルケル細胞がん、中皮腫、転移性皮膚がん、転移性頸部扁平上皮癌、口腔がん、粘膜神経腫、多発性骨髄腫、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性障害、鼻腔および副鼻腔がん、鼻咽頭がん、頸部がん、神経組織がん、神経芽細胞腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、卵巣上皮腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、副甲状腺癌、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、前立腺癌、直腸がん、腎細胞腫瘍、細網肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、セミノーマ、セザリー症候群、皮膚がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、甲状腺癌、局所皮膚病変、絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮/子宮内膜がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症またはウィルムス腫瘍が含まれる。ヒトで一般的に診断される例示的ながんには、限定されるものではないが、膀胱、脳、乳房、骨髄、子宮頸部、結腸/直腸、腎臓、肝臓、肺/気管支、卵巣、膵臓、前立腺、皮膚、胃、甲状腺または子宮のがんが含まれる。イヌ、ネコ、および他のペットで一般的に診断される例示的ながんには、限定されるものではないが、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、黒色腫、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、神経芽細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫、生殖器扁平上皮癌、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫(例えば、顆粒球肉腫)、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎腺癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫および嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、線維肉腫および肺扁平上皮癌が含まれる。フェレットなどのげっ歯類で診断される例示的ながんには、限定されるものではないが、インスリノーマ、リンパ腫、肉腫、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫、および胃腺癌が含まれる。農業家畜に罹患する例示的な新生物には、限定されるものではないが、白血病、血管外皮細胞腫およびウシの眼新生物(ウシ);包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物および肥満細胞腫(ウマ);肝細胞癌(ブタ);リンパ腫および肺腺腫症(ヒツジ);肺肉腫、リンパ腫、ラウス肉腫、細網内皮症、線維肉腫、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫およびリンパ性白血病(鳥類種);網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫(リンパ芽球性リンパ腫)、形質細胞様白血病および浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(CLA):細菌コリネバクテリウム・シュードツベルクローシス(Corynebacterium pseudotuberculosis)によって引き起こされるヒツジおよびヤギの慢性、感染性、接触伝染性疾患、ならびにヤーグジークテによって引き起こされるヒツジの接触伝染性肺腫瘍が含まれる。
【0065】
本明細書中で用いる場合、疾患または疾患過程に関与する細胞は、その存在が疾患または疾患過程に寄与する、これを悪化させる、これを引き起こす、またはその病因に関与する細胞を指す。このような細胞の阻害または殺傷は、疾患の症状を改善することができる、または疾患を改善することができる。このような細胞の例は腫瘍細胞である。腫瘍細胞を殺傷するまたはその成長もしくは増殖を阻害することが、腫瘍の処置をもたらす。他の例は、さまざまな疾患の病状に寄与する炎症反応に関与する免疫エフェクター細胞である。免疫エフェクター細胞を阻害または殺傷することによって、炎症性構成要素を有する疾患を処置することができる。
【0066】
本明細書中で用いる場合、「killing or inhibiting growth or proliferation of cells」(細胞を殺傷するまたはその成長もしくは増殖を阻害する)とは、細胞が死ぬ、または排除されることを意味する。成長または増殖を阻害することは、このような細胞の数が増加せず、減少することができることを意味する。
【0067】
本明細書中で用いる場合、「tumor cell」(腫瘍細胞)は、腫瘍の一部である任意の細胞である。典型的には、本明細書で提供される担体細胞は、腫瘍細胞に優先的に帰巣し、本明細書で提供されるウイルスは、正常細胞と比較して、対象の腫瘍細胞に優先的に感染する。
【0068】
本明細書中で用いる場合、「metastatic cell」(転移性細胞)は、転移能を有する細胞である。転移性細胞は、対象の第1の腫瘍から転移する能力を有し、対象の異なる部位で組織にコロニー形成して、その部位で第2の腫瘍を形成することができる。
【0069】
本明細書中で用いる場合、「tumorigenic cell」(腫瘍性細胞)は、対象の適切な部位に導入されると、腫瘍を形成することができる細胞である。細胞は非転移性または転移性であることができる。
【0070】
本明細書中で用いる場合、「正常細胞」は、腫瘍に由来しないが、健康な非疾患組織に由来する細胞である。
【0071】
本明細書中で用いる場合、「metastasis」(転移)は、体のある部分から別の部分へのがんの拡散を指す。例えば、転移過程では、悪性細胞は、悪性細胞が発生した原発腫瘍の部位から拡散し、リンパ管および血管に移動することができ、これが細胞を生物の他の場所の正常組織に輸送して、ここで細胞が増殖し続ける。転移によって拡散した細胞によって形成された腫瘍は、「metastatic tumor」(転移性腫瘍)、「secondary tumor」(続発性腫瘍)または「metastasis」(転移)と呼ばれる。
【0072】
本明細書中で用いる場合、抗がん剤または抗がん化合物(「anti-tumor or anti-neoplastic agent」(抗腫瘍剤または抗新生物剤)と互換的に使用される)は、抗がん処置で使用される任意の薬剤または化合物を指す。これらには、単独でまたは他の化合物と組み合わせて使用した場合に、新生物疾患、腫瘍およびがんに関連する臨床症状または診断マーカーを緩和する、減少させる、改善する、防止するまたはその寛解状態にするもしくはその寛解状態を維持することができ、本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用することができる任意の薬剤が含まれる。抗がん剤には、抗転移剤が含まれる。例示的な抗がん剤としては、限定されるものではないが、化学療法化合物(例えば、毒素、アルキル化剤、ニトロソウレア、抗がん抗生物質、代謝拮抗薬、有糸分裂阻害剤、およびトポイソメラーゼ阻害剤、サイトカイン、増殖因子、ホルモン、光増感剤、放射性核種、シグナル伝達調節剤、免疫療法剤、CAR-T細胞、チェックポイント阻害剤、CRISPR療法、抗がん抗体、抗がんオリゴペプチド、抗がんオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNAおよびsiRNAおよびshRNAなどのRNAi)、血管新生阻害剤、放射線療法、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な化学療法化合物には、限定されるものではないが、Ara-C、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、カンプトテシン、イリノテカン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、ビンクリスチン、5-フルオロウラシル、およびメトトレキサートが含まれる。
【0073】
本明細書中で用いる場合、抗がん剤または化学療法剤への言及は、別段の指示がない限り、抗がん剤もしくは化学療法剤の組み合わせ、または複数の抗がん剤もしくは化学療法剤を含む。
【0074】
本明細書中で用いる場合、対象は、診断、スクリーニング、モニタリングまたは処置が企図される動物を含む任意の生物を含む。動物には、霊長類および飼育動物などの哺乳類が含まれる。例示的な霊長類はヒトである。患者は、疾患状態に罹患している、または疾患状態が決定される、もしくは疾患状態のリスクが決定される、哺乳動物、霊長類、ヒト、または家畜の対象などの対象を指す。
【0075】
本明細書中で用いる場合、患者は、疾患または障害の症状を示すヒト対象を指す。
【0076】
本明細書中で用いる場合、症状、障害または疾患を有する対象の処置は、状態、障害または疾患の症状が改善される、または有益に変化させられる任意の処置の方法を意味する。処置は、本明細書に記載および提供される細胞支援型ウイルス発現系の任意の医薬使用を包含する。
【0077】
本明細書中で用いる場合、腫瘍または転移を含む新生物疾患を有する対象の処置は、新生物疾患を有する症状が改善される、または有益に変化させられる任意の様式の処置を意味する。典型的には、対象における腫瘍または転移の処置は、腫瘍の血管新生、腫瘍細胞分裂、腫瘍細胞移動の阻害、または基底膜もしくは細胞外マトリックスの分解を含む、腫瘍成長の遅延、腫瘍細胞の溶解、腫瘍のサイズの縮小、新たな腫瘍成長の防止、または原発性腫瘍の転移の防止をもたらす任意の様式の処置を包含する。
【0078】
本明細書中で用いる場合、治療効果は、疾患もしくは状態の症状を変化させる、典型的には向上もしくは改善する、または疾患もしくは状態を治癒する、対象の処置から生じる効果を意味する。治療有効量は、対象への投与後に治療効果をもたらす組成物、分子または化合物の量を指す。
【0079】
本明細書中で用いる場合、特定の医薬組成物の投与などによる、特定の障害の症状の改善または緩和は、組成物の投与に起因するまたは関連することができる、永続的または一時的、持続的または一過的であるかどうかにかかわらない、任意の縮小を指す。
【0080】
本明細書中で用いる場合、有効性は、ウイルスまたはウイルス組成物の投与で、ウイルスが腫瘍細胞などの増殖細胞または免疫特権細胞にコロニー形成し、複製することを意味する。腫瘍細胞におけるコロニー形成および複製は、処置が有効な処置であるまたは有効な処置となることを示す。
【0081】
本明細書中で用いる場合、細胞担体/ウイルスによる有効な処置は、これによる処置がない場合と比較して生存を増加させることができるものである。例えば、ウイルスは、疾患を安定化する、腫瘍退縮を引き起こす、疾患の重症度を減少させる、または腫瘍の転移を遅らせるもしくは減少させる場合に、有効な処置である。
【0082】
本明細書中で用いる場合、特定の疾患を処置するためのウイルスまたは化合物の有効量または治療有効量は、疾患に関連する症状を改善する、または何らかの方法で減少させる量である。量は個体ごとに異なり、限定されるものではないが、年齢、体重、患者の全体的な健康状態、および疾患の重症度を含むいくつかの因子に依存する。治療有効量は、それによると有効であるレジメンに従って、単回投与として投与することができる、または複数回投与することができる。この量は、疾患を治癒することができるが、典型的には、疾患の症状を改善するために投与される。症状の望ましい改善を達成するために、反復投与を要することができる。
【0083】
本明細書中で用いる場合、腫瘍または転移を含む新生物疾患を処置するためのウイルスまたは化合物の有効量または治療有効量は、限定されるものではないが、腫瘍成長の遅延、腫瘍細胞の溶解、腫瘍のサイズの減少、新たな腫瘍成長の防止、または原発性腫瘍の転移の防止を含む、新生物疾患に関連する症状を改善する、または何らかの方法で減少させる量である。
【0084】
本明細書中で用いる場合、疾患または状態を予防することは、疾患または状態になる確率またはその上昇を低下させることを意味する。
【0085】
本明細書中で用いる場合、「composition」(組成物)は、2つ以上の生成物または化合物の任意の混合物を指す。これは、溶液、懸濁液、液体、粉末、ペースト、水系、非水系、またはこれらの任意の組み合わせであることができる。
【0086】
本明細書中で用いる場合、製剤は、少なくとも1つの活性医薬品または治療薬と、1つ以上の賦形剤とを含有する組成物を指す。
【0087】
本明細書中で用いる場合、共製剤は、2つ以上の活性剤または医薬品または治療薬と、1つ以上の賦形剤とを含有する組成物を指す。
【0088】
本明細書中で用いる場合、組み合わせは、2つ以上の品目間または品目内の任意の会合を指す。組み合わせは、2つの組成物または2つの集合などの2つ以上の別々の品目であることができ、2つ以上の品目の単一の混合物などのその混合物、またはそれらの任意の変形であることができる。組み合わせの要素は、一般に機能的に会合または関連している。例示的な組み合わせには、限定されるものではないが、2つ以上の医薬組成物、2つ以上の有効成分、例えば2つのウイルス、またはウイルスと抗がん剤、例えば化学療法化合物、2つ以上のウイルス、ウイルスと治療薬、ウイルスと造影剤、ウイルスと複数の治療薬および/または造影剤、またはこれらの任意の会合を含有する組成物が含まれる。このような組み合わせは、キットとしてパッケージ化することができる。
【0089】
本明細書中で用いる場合、組成物は、薬学的に許容される媒体中のまたは薬学的に許容される媒体と混合された治療薬などの2つ以上の成分の混合物を指す。
【0090】
本明細書中で用いる場合、直接投与は、希釈することなく組成物を投与することを指す。
【0091】
本明細書中で用いる場合、キットは、任意に、組み合わせの使用説明書ならびに/あるいはこのような使用のための他の反応および構成要素を含む、パッケージ化された組み合わせである。
【0092】
本明細書中で用いる場合、「article of manufacture」(製造品)は、製造および販売される製品である。本出願を通して使用される場合、この用語は、担体細胞およびワクシニアウイルスを単独で、または同じもしくは別々の包装品に含有される第2の治療薬もしくは治療エネルギー源と組み合わせて含有する物品を包含することを意図している。
【0093】
本明細書中で用いる場合、装置は、特定の課題のために製造または適合されたものを指す。本明細書の例示的な装置は、表皮もしくは皮膚の表面を覆う、またはこれをコーティングする、またはこれと接触することができる装置である。このような装置の例としては、限定されるものではないが、ラップ、包帯、バインド、ドレス、縫合、パッチ、ガーゼまたはドレッシングが挙げられる。
【0094】
本明細書中で用いる場合、単数形「a」、「an」(ある)、および「the」(該)は、文脈が明瞭にそうでないことを指示するのでなければ、複数の指示対象を含む。
【0095】
本明細書中で用いる場合、範囲および量は、「about」(約)または「approximately」(およそ)の特定の値または範囲として表すことができる。「about」(約)または「approximately」(およそ)には正確な量も含まれる。したがって、「about 5 milliliters」(約5ミリリットル)は、「about 5 milliliters」(約5ミリリットル)および「5 milliliters」(5ミリリットル)も意味する。一般に、「about」(約)には、実験誤差の範囲内であると予想される量が含まれる。
【0096】
本明細書中で用いる場合、「about the same」(ほぼ同じ)は、当業者が同じである、または許容可能な誤差範囲内であると見なす量の範囲内を意味する。例えば、典型的には、医薬組成物の場合、少なくとも1%、2%、3%、4%、5%または10%以内がほぼ同じであると見なされる。このような量は、対象による特定の組成の変動に対する許容度に応じて変動することができる。
【0097】
本明細書中で用いる場合、「optional」(任意の)または「optionally」(任意に)は、後に記載される事象または状況が発生するまたは発生しないことを意味し、記載は、前記事象または状況が発生する場合およびこれが発生しない場合を含む。
【0098】
本明細書中で用いる場合、「allogeneic cell」(同種細胞)は、一般に同じ種の遺伝的に異なる個体に由来するために、特定の対象に関して遺伝的に異なる細胞である。例えば、同種幹細胞は、患者(または一卵性双生児)以外のドナーに由来する幹細胞である。
【0099】
本明細書中で用いる場合、「autologous cell」(自家細胞)は、細胞で処置される個体から得られる細胞である。例えば、autologous cell(自家細胞)は、処置される対象(すなわち、患者)から得られる。例えば、自家幹細胞は、患者に由来する幹細胞である。
【0100】
本明細書中で用いる場合、細胞媒体または担体細胞に関して「engineered」(操作された)という用語は、細胞の性能を改善または増強することができるタンパク質を発現するような、細胞の遺伝子改変を意味する。例えば、細胞を、改善されたウイルス増幅および/または改善された免疫調節のために操作することができる。
【0101】
本明細書中で用いる場合、「immunomodulation」(免疫調節)は、例えば、免疫応答を誘導、増強または抑制することによって、免疫応答が所望のレベルに改変される任意の過程を指す。
【0102】
本明細書中で用いる場合、「immune suppression」(免疫抑制)または「immunosuppression」(免疫抑制)は、免疫応答の抑制または減少を指す。
【0103】
本明細書中で用いる場合、「immune privileged」(免疫特権)または「immunoprivileged」(免疫特権)は、免疫応答を誘発せず、免疫系を回避することができる細胞または組織を指す。免疫特権細胞および組織は、腫瘍の免疫抑制特性によって免疫系から隔離されている、固形腫瘍および腫瘍微小環境などの細胞および組織を指す。結果として、腫瘍溶解性ウイルスは、免疫系から保護されているので、腫瘍微小環境で腫瘍に優先的に蓄積する。しかしながら、免疫特権組織および細胞は免疫応答から保護または隔離されており、ウイルスが生き残り、一般的に複製することを可能にする。
【0104】
本明細書中で用いる場合、「disease or disorder」(疾患または障害)は、例えば、感染または遺伝的欠陥から生じ、特定できる症状を特徴とする生物の病理学的状態を指す。
【0105】
本明細書中で用いる場合、ウイルス感染に関して「resistant」(耐性)とは、ウイルスへの曝露時に、ウイルスに感染しない、または非常に低い程度で感染する細胞を指す。
【0106】
本明細書中で用いる場合、ウイルス感染に関して「permissive」(許容性)とは、ウイルスへの曝露時に、容易に感染する細胞を指す。
【0107】
本明細書中で用いる場合、免疫学的適合性は、ウイルスを対象の腫瘍または癌性細胞に送達するのに十分な時間、対象の免疫系を回避するのに十分に対象/宿主の免疫系と適合性である細胞またはウイルスを指す。
【0108】
本明細書中で用いる場合、「co-culture」(共培養物)は、2つ以上の異なる細胞集団が培養される細胞培養物を指す。
【0109】
本明細書中で用いる場合、細胞に関する「loading」(搭載)という用語は、細胞の表面上または細胞内での細胞と、例えば、ウイルス、小分子、治療薬、および抗体またはその抗原結合断片抗体などの薬剤との間の化学的または物理的相互作用による、細胞と薬剤の会合を指すことができる。
【0110】
本明細書中で用いる場合、脂肪由来幹細胞またはADSCは、ドナーの脂肪組織から得られる間葉系幹細胞である。
【0111】
本明細書中で用いる場合、末梢血単核細胞またはPBMCは、円形の核を有する任意の末梢血細胞、例えば、リンパ球、単球またはマクロファージである。
【0112】
本明細書中で用いる場合、「L14 VV」または「CAL14 VV」は、ワクシニアウイルスのTK挿入Turbo-FP635操作LIVP株である。
【0113】
本明細書中で用いる場合、「ACAM2000」(ATCC寄託番号PTA-3321として寄託された、同じゲノム配列を有するACAM1000およびACAM2000;米国特許第6,723,325号、同第6,723,325号、同第7,115,270号および同第7,645,456号を参照)は、ワクシニアウイルスの野生型チミジンキナーゼ(TK)陽性Wyeth株である。これは、CDCから入手可能な天然痘ワクチン株である。ACAM1000は、MRC5細胞で増殖させた場合のウイルスの名称であり、ACAM2000は、ベロ細胞で増殖させた場合のウイルスの名称である。実施形態では、ACAM2000ウイルスは配列番号70に示す配列を有するものである。
【0114】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「CAL-01」または「CAL1」または「WT1」は、ACAM2000またはACAM1000から増幅または培養されるウイルスを示す。例示的な実施形態では、CAL1ウイルスは、配列番号71に示す配列を有する。
【0115】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「CAL-02」または「CAL2」は、外因性遺伝子、例えばOX40L、4-IBBL、チェックポイント阻害剤に対する一本鎖抗体、例えばCTLA-4などをコードするACAM2000またはCAL1ウイルスの組換え形態を指す。
【0116】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「CAL-03」または「CAL3」は、抗血管形成遺伝子、例えばVEGFに対する一本鎖抗体を、任意に1つ以上の他の外因性遺伝子、例えばOX40L、4-IBBL、チェックポイント阻害剤に対する一本鎖抗体、例えばCTLA-4と組み合わせて発現するACAM2000、CAL1またはCAL2ウイルスの組換え形態を指す。
【0117】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「SNV-1」または「SNV1」は、CAL-01ウイルスを幹細胞などの細胞担体とインキュベートすることによって形成されるCAVES(またはSNV)を指す。1×107pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-1a(またはSNV1a)と呼ばれる。1×106pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-1b(またはSNV1b)と呼ばれる。1×105pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-1c(またはSNV1c)と呼ばれる。
【0118】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「SNV-2」または「SNV2」は、CAL-02ウイルスを幹細胞などの細胞担体とインキュベートすることによって形成されるCAVES(またはSNV)を指す。1×107pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-2a(またはSNV2a)と呼ばれる。1×106pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-2b(またはSNV2b)と呼ばれる。1×105pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-2c(またはSNV2c)と呼ばれる。
【0119】
本明細書中で用いる場合、本明細書で互換的に使用される「SNV-3」または「SNV3」は、CAL-03ウイルスを幹細胞などの細胞担体とインキュベートすることによって形成されるCAVESまたはSNVを指す。1×107pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-3a(またはSNV3a)と呼ばれる。1×106pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-3b(またはSNV3b)と呼ばれる。1×105pfuのウイルスを細胞担体とインキュベートする場合、得られるSNVはSNV-3c(またはSNV3c)と呼ばれる。
【0120】
本明細書中で用いる場合、ウイルスプラークアッセイ(VPA)は、1ml当たりまたはサンプル当たりのプラーク形成単位(pfu)として与えられる、感染性ウイルスの量またはウイルス力価を決定するために使用されるアッセイである。
【0121】
本明細書中で用いる場合、「primed」(プライミングされた)または「protected」(保護された)細胞媒体または担体細胞は、細胞を免疫応答から保護するために、サイトカイン、例えばインターフェロン(IFN)、または同種不活化/拒絶決定因子のアンタゴニストなどの薬剤で前処理されたおよび/またはこれを搭載されたものである。
【0122】
本明細書中で用いる場合、処置は、疾患または障害の症状の改善を指す。
【0123】
本明細書中で用いる場合、予防は、疾患もしくは状態を発症するリスクを減少させるため、またはその重症度を減少させる予防的処置を指す。
【0124】
本明細書中で用いる場合、対象は、本明細書における方法および使用によって処置することができる任意の哺乳動物を指す。哺乳動物には、ヒト、他の霊長類、例えばチンパンジー、ボノボおよびゴリラ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヤギ、ならびにその他の家畜およびペットが含まれる。患者はヒト対象を指す。
【0125】
本明細書中で用いる場合、遺伝子または遺伝子座の「不活性化」は、遺伝子または遺伝子座によってコードされる1つ以上の産物の発現が、例えば10%以上、一般に50%以上、例えば約またはちょうど50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%で部分的または完全に阻害されることを意味する。不活性化は、例えば、遺伝子座の部分的もしくは完全な切断によって、および/または治療遺伝子などの外因性遺伝子の挿入によって行うことができる。
【0126】
本明細書中で用いる場合、保護基、アミノ酸および他の化合物についての略語は、特に明記しない限り、それらの一般的な使用法、認識される略語、または生化学的命名法に関するIUPAC-IUB委員会((1972)Biochem.11:1726参照)に準拠する。
【0127】
開示を明確にするために、限定としてではなく、詳細な説明を以下の小節に分ける。
【0128】
B.細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)のための成分の選択
細胞は、治療用の腫瘍溶解性ウイルスのための担体として使用されてきた。ウイルスは、細胞あたり可能な限り多くのウイルスを搭載する目的でエクスビボで細胞に搭載されると理解されていた(例えば、Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217を参照)。一般に、これを達成するために、少なくとも200以上のウイルス/細胞の感染多重度(MOI)が使用される。また、ウイルス複製の時期尚早の開始を回避するために、ウイルスは可能な限り迅速に搭載されるべきであり、これは細胞担体の生存率を低下させ、また宿主免疫系による排除をもたらす細胞表面上のウイルス抗原の早すぎる提示も増加させることが理解されていた(例えば、Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217を参照)。本明細書では、この以前の理解は正しくないことが示されている。本明細書では、細胞の感染は、低MOI、一般に10未満、例えば0.1以下、最大約1のMOI/細胞で行われるべきであり、ウイルスと細胞とのインキュベーションは、ウイルス複製が開始され、ウイルス遺伝子、例えば免疫調節遺伝子産物および治療用生成物の発現が発現されるのに十分に長く進行すべきである。一般に、本明細書で提供されるウイルスを含有する細胞は、将来の使用のために、投与時、または冷凍もしくは冷蔵による保存時に、約100個未満のウイルス粒子/細胞を含有するはずであり、ウイルスによってコードされたタンパク質を発現するはずである。ウイルスの特定の量は、選択された細胞およびウイルスに依存する。例えば、ワクシニアウイルスおよび幹細胞、例えばMSCまたは脂肪SVF由来の細胞は、少なくとも6時間、最大約35、約40または約50時間インキュベートされなくてはならない。初期MOIは、10pfu/細胞未満、例えば0.1~10、または0.01~10、または0.1~1ウイルス粒子/細胞でなくてはならない。一般に、細胞は、幹細胞または初代細胞、例えば線維芽細胞であり、不活性化がん細胞および/または免疫細胞を含むがん細胞ではない。
【0129】
1.細胞
腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、正常細胞と比較して、腫瘍細胞に優先的に感染し、蓄積し、これを殺傷する能力を有する。この能力は、ウイルスの本来の特徴(例えば、ポックスウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびムンプスウイルス)であることができるか、またはウイルスは、この特性のために改変または選択されることができる。ウイルスは、対象における抗ウイルス免疫および他の防御を回避することができるように遺伝的に弱毒化または改変することができ(例えば、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス)、その結果、それらは腫瘍細胞または腫瘍微小環境に優先的に蓄積し、および/または腫瘍細胞に対する優先性は、例えば、腫瘍特異的細胞表面分子、転写因子および組織特異的マイクロRNAを使用して、ウイルスに対して選択することができるか、またはウイルスに操作することができる(例えば、Cattaneoら、Nat.Rev.Microbiol.、6(7):529-540(2008);Dorerら、Adv.Drug Deliv.Rev.、61(7-8):554-571(2009);Kellyら、Mol.Ther.、17(3):409-416(2009);およびNaikら、Expert Opin.Biol.Ther.、9(9):1163-1176(2009)を参照)。
【0130】
腫瘍溶解性ウイルスの送達は、直接腫瘍内注射を介して行うことができる。直接的な腫瘍内送達は、正常細胞のウイルスへの曝露を最小限に抑えることができるが、例えば、腫瘍部位(例えば、脳腫瘍)へのアクセス不能に起因する、または大面積にわたって広がるいくつかの小結節の形態である腫瘍または転移性疾患に対する制限がしばしば存在する。ウイルスは、静脈内投与または腹腔内投与などによる全身または局所送達、および他のそのような経路を介して送達することができる。全身送達は、原発腫瘍部位だけでなく、播種性転移にもウイルスを送達することができる。
【0131】
しかしながら、送達様式に関係なく、腫瘍溶解性ウイルスを使用した処置の成功は、免疫応答を誘導することができ、ウイルスを中和する宿主の免疫系によって損なうことができる(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457;RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。例えば、静脈内送達されたウイルスは、補体およびさまざまな免疫細胞、ならびに抗体に曝露され、肺、脾臓および肝臓などの臓器において隔離され、その後、排除される(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。宿主の免疫系は、ウイルスを排除するように進化している。例えば、中和抗体(NAb)はウイルスに結合し、細胞表面受容体へのウイルスの付着を遮断し、ウイルス感染を阻害し、したがって投与される治療用ウイルスの治療可能性を制限する(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091-1101)。自然免疫応答に加えて、適応免疫をもたらす以前の曝露は、より特異的かつ強力であり、OVの治療能を制限することもできる。腫瘍の細胞外マトリックスおよび高い間質液圧などの物理的障壁が、ウイルス粒子の腫瘍細胞への効率的な送達を妨げることができる(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。
【0132】
ヒト個体の大多数は、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルスおよびレオウイルスを含むいくつかのウイルスに曝露されており、結果として、腫瘍溶解性ウイルス療法の治療能を低下させることができる既存の抗ウイルス免疫を示す。例えば、1970年代半ば以前に生まれたほとんどの対象は、ワクシニアウイルスを含むオルソポックスウイルスに対する既存の抗ウイルス免疫をもたらす天然痘の予防接種を受けている。対象が特定のOVに対する既存の免疫をまだ有していない場合であっても、ウイルスの初回投与は抗ウイルス免疫応答をもたらし、強力な抗腫瘍応答を達成するために通常必要とされることができる反復投与の有効性を制限する。これを回避するための戦略には、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤の使用、および免疫系を迂回してOVを腫瘍部位に送達するための担体細胞(細胞媒体)の使用が含まれる。
【0133】
シクロホスファミド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルおよびメチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウムなどの免疫抑制薬を使用した一過的免疫抑制は、臓器移植で使用されてきたが、全身投与OVの腫瘍送達の増強には限られた成功しかない(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465-1475)。免疫抑制薬の使用はまた、ウイルスの潜在的な毒性を増加させることができ、更に、腫瘍溶解を助ける免疫系によって開始される抗腫瘍応答を減少させことができる(Thorneら(2010)Molecular Therapy 18(9):1698-1705)。
【0134】
担体細胞をOVの送達に使用した。担体細胞は、ウイルスが進化して宿主内に拡散した方法を模倣することができる。例えば、ヒト免疫不全ウイルスは循環樹状細胞(DC)およびマクロファージに結合し、これらがリンパ節に移動し、ウイルスが標的:CD4T細胞に到達することを可能にすることができる。更に、細胞から細胞へと拡散することによって複製するウイルスは、中和抗体を回避することができる。臨床試験では、腫瘍溶解性レオウイルスが、静脈内投与すると、循環細胞に結合し、中和抗体の存在下でさえ、その感染力を保持し、腫瘍細胞に到達することが示された(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。細胞ベースの媒体を使用することの利点には、OVの腫瘍細胞への特異的送達、それらの治療能の増加および標的外毒性の防止、ならびにOVを既存の抗ウイルス免疫から保護する能力が含まれる。
【0135】
OVを送達するための担体細胞の有効性は、限定されるものではないが、以下を含むいくつかの因子に依存する:(1)ウイルスのエクスビボ搭載;(2)腫瘍部位でのウイルスのインビボ蓄積;および(3)腫瘍部位でのウイルス増幅/産生(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465-1475)。理想的な担体細胞は、免疫系による中和からOVを保護するだけでなく、OVを腫瘍に特異的に送達し、自身の抗腫瘍活性を有している。担体細胞は、投与するのに安全で、分離および/または製造が容易で、ウイルスによる感染を受けやすく、ウイルスが複製するのを可能にし、破壊される前に腫瘍部位でウイルスを放出するべきである。
【0136】
本明細書で提供されるCAVESの場合、担体細胞は、OVの送達に有効であることに加えて、ウイルスのエクスビボ増幅(複製)ならびに少なくとも1種のウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え発現治療用タンパク質の発現を促進することができなければならない。本明細書で提供される系では、担体細胞などの細胞を、ウイルスのエクスビボ複製(増幅)ならびに少なくとも1つのウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え発現治療用タンパク質の発現を可能にする所定の時間、ウイルスと共にインキュベートする。時間の長さは、ウイルスの複製サイクルに応じて、例えば2時間超、例えば3時間以上、4時間超、例えば6~48時間から例えば72時間以上まで変化させることができる。例えば、VSVは急速に複製するウイルスであり、感染の1~2時間後に細胞を注射すると、担体細胞を介した送達を達成することができる。ワクシニアウイルスなどの遅く複製するウイルスでは、感染および担体細胞の送達のタイミングを最適化する際の柔軟性が高い。
【0137】
本明細書で提供される系で使用される細胞は、自己または同種であることができる。自家担体細胞(処置される対象から得られた細胞)の使用は、担体細胞に対して向けられる自然および免疫応答を最小化することができるが、対象にとって厄介であり、高価であり、その入手可能性が制限される場合がある。さまざまな容易に単離可能なおよび/または市販の細胞/細胞株を含むことができる同種担体細胞は、入手可能性の容易さおよび対象に対する非侵襲性を提供するが、桁外れに大きい自然および/または適応免疫応答が、治療有効性および臨床適用性を損なうことができる。
【0138】
本明細書で提供される系は、ウイルスの治療効果に対して、すなわち、投与前のエクスビボウイルス複製および免疫調節および/または組換え発現治療用タンパク質(複数可)の発現を介して、ヘッドスタートを提供することによって宿主免疫応答を克服または緩和し、それにより、同種細胞の使用を可能にして上記系を作り出す。本明細書で提供される系で使用される細胞はまた、処置される特定の対象に対する治療有効性において免疫学的に適合性であるか、そうでなければ最適であるように適合させるか、または最適化することができる。細胞をウイルスと、更には対象とマッチングさせるための方法は、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載されている。本明細書で提供される系で使用される細胞は、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号、ならびに以下に記載されるように、免疫宿主応答を克服または緩和するように改変することもできる。改変された細胞はまた、ウイルスおよび/または処置される対象と適合させることができる。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明明細書で提供されるCAVES系を作製するために使用される担体細胞は腫瘍細胞ではない。他の実施形態では、担体細胞はがん細胞ではない。更に他の実施形態では、担体細胞は、不死化がん細胞株などのがん細胞株ではない。実施形態では、担体細胞は、間質細胞、幹細胞および線維芽細胞の中から選択される。
【0140】
例示的な細胞、例えば、本明細書で提供される系を作製するために使用することができる担体細胞を以下に記載する。
【0141】
幹細胞、免疫細胞、がん細胞株
幹細胞、免疫細胞、腫瘍/癌性細胞は、HSV-1、パルボウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ワクシニアウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびアデノウイルスなどを含む腫瘍溶解性ウイルス(OV)の送達媒体として使用することができる。これらの細胞は、OVの治療効果を増強する腫瘍ホーミング特性を示す。この腫瘍選択性は、低酸素、炎症、ならびにサイトカインおよびケモカインなどの多数の化学誘引物質分子を特徴とする腫瘍微小環境へのこれらの細胞の誘引によるものである。
【0142】
幹細胞
幹細胞は固有の腫瘍ホーミング能力を有し、これが幹細胞を腫瘍溶解性ウイルス療法の担体細胞として魅力的にしている。これは、腫瘍の制御されない成長を支持するさまざまな増殖因子、血管新生因子、サイトカインおよびケモカインに富む、腫瘍微小環境(TME)に起因する。TMEの低酸素性も、幹細胞の腫瘍への移動を促進する。幹細胞はまた、高度に免疫抑制性であり、抗原プロセシングおよび提示に必要な分子を低レベルで発現して、担持するウイルスの免疫系による認識を遅らせるので、担体細胞として使用される(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。OVのための担体細胞として使用できる幹細胞の例としては、内皮前駆細胞、神経幹細胞および間葉系幹細胞が挙げられる。
【0143】
内皮前駆細胞は、腫瘍新生血管系の部位に帰巣することが示されており、ヒト神経膠腫のマウスモデルにおいて腫瘍溶解性麻疹ウイルスを送達するために使用されている(Guoら(2008)Biochim Biophys Acta 1785(2):217-231)。これらの細胞はインビボで急速に分裂するが、不死ではなく、新たな細胞を臨床サンプルから繰り返し単離しなければならない(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。
【0144】
ニューロンおよびグリア細胞を含む神経系のさまざまな異なる細胞に分化する神経幹細胞(NSC)は、治療薬を脳腫瘍に送達するための担体細胞として調査された最初の幹細胞であった(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457)。NSCは、神経膠腫細胞における低酸素誘導因子(HIF)によって媒介される間質細胞由来因子-1(SDF-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の発現により、神経膠芽腫腫瘍に対する強い向性を示す(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。NSCは、例えば、IL-4、IL-12、IL-23、シトシンデアミナーゼ、抗血管新生タンパク質トロンボスポンジン、およびアデノウイルスなどのOVの神経膠腫への送達に使用されてきた。NSCは、胎児の脳組織または外科手術中の成人の脳の脳室周囲帯から単離しなければならず、このことは担体細胞としての有用性にとって不利である。
【0145】
成人のヒト骨髄は、骨髄幹細胞が容易に獲得され、免疫拒絶を排除する自家移植のために患者自身から供給できるため、幹細胞の代替供給源として使用されてきた(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457)。利用可能なさまざまな骨髄幹細胞の中でも、間葉系幹細胞(MSC)は、患者から容易に単離され、インビトロで増殖され、OVの複製および免疫系による即時中和からの保護を支持し、容易に操作することができ、炎症性サイトカインの腫瘍関連発現のために、インビボで腫瘍に本質的に帰巣するので、担体細胞として魅力的である。MSCは、独立型抗がん剤としてさえも使用できる。例えば、研究により、IFN-βを発現するMSCの腫瘍ホーミング能力および腫瘍溶解効果が実証された(Nakashimaら(2010)Cytokine Growth Factor Rev.21(2-3):119-126)。
【0146】
MSCは低レベルのMHCクラスI分子を発現し、細胞表面上でMHCクラスII分子を発現しないので、同種移植が可能である。MSCは、T細胞増殖および単球の樹状細胞(DC)への分化を阻害でき、CD4+Tヘルパー細胞によって産生されるインターフェロンγおよび腫瘍壊死因子の発現を抑制することができる(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。MSCはまた、腫瘍溶解性ウイルス送達に対する物理的障壁を克服するのを助けることができるプロテアーゼの分泌を介して細胞外マトリックスを分解することができる(Ramirezら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:149-155)。MSCを使用する別の利点は、ウイルス感染後に凍結でき、解凍時に活性ウイルス複製および抗腫瘍活性を保持し、保存を可能にすることである(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。骨髄に加えて、MSCは脂肪組織、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨および羊水からも単離でき、脂肪組織のアクセスが容易で、豊富なために、脂肪組織が最も魅力的な供給源である(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457;Nakashimaら(2010)Cytokine Growth Factor Rev.21(2-3):119-126)。
【0147】
MSCは、膵臓がん、脳がん、腎細胞癌、神経膠芽腫および卵巣がんを処置するための腫瘍溶解性アデノウイルスの担体として、ならびに卵巣がんおよび肝細胞癌を処置するための麻疹ウイルスの担体としての役立ってきた(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。例えば、MSCは、進行性転移性神経芽細胞腫の小児を処置するための腫瘍溶解性アデノウイルスICOVIR-5の担体として使用されてきた(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457;Ramirezら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:149-155)。
【0148】
しかしながら、MSCを使用することの1つの欠点は、腫瘍成長を促進する能力であり、これは、乳がん、子宮内膜腫瘍および神経膠腫のモデルで実証されている。この潜在的な失敗の原因を克服するために、MSCを、例えば自殺遺伝子を保有することによって、OVの送達時に確実に自身を破壊するように操作することができる(Kerriganら(2017)Cytotherapy 19(4):445-457)。
【0149】
担体細胞として使用することができる幹細胞(自己または同種)の例としては、例えば、幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞が挙げられる。
【0150】
間葉系細胞としては、限定されるものではないが、例えば、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する間葉系幹細胞が挙げられる。
【0151】
脂肪間質血管細胞群に由来する細胞集団
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される系および方法において使用される担体細胞は、脂肪組織間質血管細胞群(SVF)から新たに単離され、および/または、SVF由来の培養された脂肪由来間葉系間質/幹細胞(AD-MSC)である。当業者に既知であり、本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスのいずれかは、そのような細胞と組み合わせて、本明細書で提供されるCAVES系を生成し、および/または本明細書で提供される方法でそれらを使用することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはワクシニアウイルス(VACV)である。実施形態では、VACVは、配列番号70に示される配列を有するACAM2000であるか、または配列番号71に示される配列を有するCAL1ウイルスである。
【0152】
ウイルスを保護し、送達し、増幅する、ならびに自然および適応免疫バリアを克服するこれらの担体細胞の能力を、健康なドナー由来のヒト血清または末梢血単核細胞の存在下でVACVに感染したこれらの細胞のエクスビボ共培養のフローサイトメトリー、顕微鏡法およびウイルスプラークアッセイによって分析した。統計学的に有意な相関を確立し、重要な免疫細胞集団の活性に対する幹細胞の効果を評価するために、比較分析を行った。SVF細胞は、血清不活性化からVACVを保護することができることが見出された。細胞選別は、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)が腫瘍細胞への腫瘍溶解性ウイルスの送達に最も効率的なSVF細胞の一次集団であることを実証した。これは、自己環境において、また同種環境においても腫瘍溶解性ウイルス療法を増強するためのツールとしてのそれらの臨床使用を検証することを実証する。
【0153】
送達媒体としての培養AD-MSC(CD34+SA-ASCに由来する)は、本明細書において、血清不活性化から保護すること、ならびに自己および同種の状況においてヒトPBMCの存在下でウイルスを増幅することが実証されている。これは、それらの固有の免疫抑制特性および同種異系拒絶の回避に関連することができる。本明細書では、これらの細胞が、自然(NK)免疫細胞および適応(T)免疫細胞の両方に由来する抗ウイルス応答を阻害することによって一過性の免疫抑制を提供し、したがってウイルス腫瘍溶解および抗腫瘍免疫の生成を増強することが示される。
【0154】
本明細書において記載または提供されるいずれかのものを含む、当業者に既知の腫瘍溶解性ウイルスと共に担体細胞として使用するためのSA-ASCおよび周皮細胞が本明明細書で提供される。これらには、限定されるものではないが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、おたふく風邪ウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ハンタウイルス、粘液腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスが含まれる。ウイルスの例は、ワクシニアウイルス、例えばACAM1000およびACAM2000であって、その例は配列番号70に示される配列であり、またはCAL1であって、その例は配列番号71に示される配列であり、またはマイナーバリエーション(ITRを除くゲノムにおける85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える配列同一性、および複製中のITRの組換えによる場合により低い配列同一性)である。SA-ASC(CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)、SA-ASCおよび/または周皮細胞および/またはそのような細胞を培養することによって産生されたAD-MSCを、少なくとも1つの免疫調節性または組換えの治療用タンパク質がSA-ASC、周皮細胞またはAD MSC担体細胞の表面または内部の腫瘍溶解性ウイルスによって発現されて、本明明細書で提供されるCAVES系を産生するのに十分な期間、一緒にインキュベートすることができる。
【0155】
ウイルス感染および/または複製を促進する脂肪SVFからの細胞集団の選別は、例えば、そのような感染に適した温度、例えば室温(約20℃)またはそれより高い32~42℃、例えば35~40℃、典型的には37℃で、腫瘍溶解性ウイルス、例えばACAM1000、ACAM2000またはCAL1と共にSVFをインキュベートすることによって行うことができる。適切なMOI、一般に低MOI、例えば約0.001~10、例えば0.01~1.0、または1.0以下のMOIでのウイルスの細胞への搭載は、例えば20RPMで、約20分~約5時間、一般に約30分~約2時間、連続回転で行うことができる。複数の実施形態では、インキュベーションは、約1時間である。SVF細胞またはその亜集団もしくはそれから産生されたMSCに腫瘍溶解性ウイルスを搭載させた後、細胞を、異なる細胞集団に対する細胞表面マーカーに対する抗体のパネル、例えばCD235a、CD45、CD34、CD31およびCD146で標識し、ヨウ化プロピジウム(PI)などの適切な染色剤で生存率について染色することができる。次いで、細胞表面マーカーの発現に基づいて、フローサイトメトリーによってSVF細胞を選別することができる。脂肪SVFでは、7つの異なる細胞集団:赤血球(CD235a+);培養中の主要なMSC前駆体である上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-);培養中のMSC前駆体でもある周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-);顆粒球(CD235a-/CD45中/高、側方散乱(SSC)高);リンパ球(CD235a-/CD45高、SSC低);単球(CD235a-/CD45高SSC培地);および内皮前駆細胞(CD235a-/CD45-/CD34+/CD146+/CD31+)を同定し、選別した。主な細胞集団の組成(%)は、実施例4に記載されている。
【0156】
ウイルス感染を測定するために、次に、SVFから選別された個々の細胞集団を適切なレシピエント細胞単層、例えばA549腫瘍細胞単層に播種し、プラーク形成を可能にする期間、例えば1~5日間、例えば1~3日間または3日間または約3日間インキュベートすることができる。細胞単層に形成されたプラーク数は、固定し、クリスタルバイオレットなどの適切な染色剤で染色して、腫瘍溶解性ウイルスを保有している各選別された集団からの細胞の数を決定することによって測定することができる。脂肪SVFでは、5つの異なる細胞集団:赤血球、SA-ASC、周皮細胞、顆粒球およびリンパ球が、ACAM2000またはCAL1などのワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスを保有していることが分かった。ワクシニアウイルス(例えば、ACAM2000またはCAL1)を保有する3つのSVF画分からの主な細胞集団をSA-ASC(MSC前駆体)および周皮細胞として同定した。これらの細胞集団はまた、ウイルス増幅を促進することができる。
【0157】
したがって、本明細書では、腫瘍溶解性ウイルスを有する担体細胞として使用するための赤血球、SA-ASC、周皮細胞、顆粒球およびSVF由来のリンパ球も提供される。実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスはワクシニアウイルス(VACV)である。更なる実施形態では、VACVは、配列番号70に示される配列を有するACAM2000であるか、または配列番号71に示される配列を有するCAL1ウイルスである。実施形態では、赤血球、SA-ASC、周皮細胞、顆粒球およびリンパ球を、少なくとも1つの免疫調節性または組換えの治療用タンパク質がSA-ASCまたは周皮細胞担体細胞の表面または内部で腫瘍溶解性ウイルスによって発現されるのに十分な期間一緒にインキュベートし、それによって本明明細書で提供されるCAVES系を生成することができる。
【0158】
免疫細胞
がん部位への輸送によって腫瘍から放出される「危険信号」に応答する免疫細胞は、OVの担体細胞として調査されてきた。免疫細胞には、例えば、限定されるものではないが、腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞、腫瘍特異的抗原を標的化するTCRトランスジェニック細胞;NKT細胞、リンパ球、単球、マクロファージ、肥満細胞、顆粒球、樹状細胞(DC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、骨髄由来サプレッサー細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、およびサイトカイン誘導キラー(CIK)細胞が含まれる。免疫細胞は、全身を循環し、腫瘍を認識できるため、担体細胞として魅力的である(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。また、OVのための担体として免疫細胞を使用すると、直接的な細胞傷害性の形で、または適応抗腫瘍免疫応答をプライミングすることによって、追加の抗腫瘍活性を提供する(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091-1101)。
【0159】
例えば、腫瘍抗原特異的T細胞は直接的抗がんエフェクター機能を示し、活性化T細胞はOVの腫瘍への送達において広く調査されてきた。ウイルス感染の炎症誘発性がT細胞のサイレンシングおよび不活化を防ぐことができるため、養子移入T細胞にOVを搭載すると、腫瘍微小環境の免疫抑制性と戦うのを助けることができることが示されている(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。CCL3、CCL21およびCXCL10(IP-10)などのケモカインの腫瘍内発現は、養子T細胞の腫瘍特異的輸送を増強する。T細胞を、CXCR2などのケモカイン受容体を発現するように遺伝子操作して、これらを腫瘍に向けることもできる(Guoら(2008)Biochim Biophys Acta 1785(2):217-231)。研究により、水疱性口内炎ウイルス、レオウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルスおよびレトロウイルス粒子が、T細胞の表面に付着することができ、受動的に、または担体と腫瘍細胞との間の細胞シナプスを介して腫瘍細胞に送達できることが実証されている(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。OVのための担体としてT細胞を使用することの利点にもかかわらず、患者からの高度に腫瘍特異性の抗原に対してT細胞集団を生じることは依然として極めて高価で困難であり、それらの使用を制限している(Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667-1676)。
【0160】
リンホカイン活性化キラー細胞(LAK細胞)は、卵巣がんの処置においてIL-2と組み合わせて使用されている。未成熟樹状細胞(iDC)、LAK細胞およびこれらの共培養物(LAKDC)が、卵巣がんの処置でレオウイルスの担体として試験され、レオウイルス搭載LAKDCが、中和抗体からレオウイルスを保護し、炎症誘発性サイトカイン環境を誘導し、自然および適応抗腫瘍免疫応答を生じることができることが示された(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091-1101)。DC細胞はまた、黒色腫を処置するためのレオウイルスの担体としても使用されてきた(Jenningsら(2014)Int.J.Cancer 134:1091-1101)。
【0161】
CIK細胞は、OVのための担体として使用できる別の種類の免疫細胞である。腫瘍抗原特異的T細胞は1つの抗原を認識するが、CIK細胞は、さまざまな腫瘍細胞でアップレギュレートされるNKG2Dリガンドを認識し、より多用途になっている。CIK細胞はまた、患者からの単離およびエクスビボでの増殖が容易であり、高力価のウイルスを産生することができ、麻疹およびワクシニアウイルスを腫瘍に送達するために使用されてきた(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56;Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667-1676;PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660-665)。しかしながら、CIK細胞を使用する1つの欠点は、その作製に、インビボでサイトカインを使用して初代白血球を増殖させる必要があることである(Kimら(2015)Viruses 7:6200-6217)。
【0162】
マクロファージは、OVのための担体細胞の更に別の潜在的なクラスを表す。腫瘍は通常、単球走化性タンパク質-1、マクロファージコロニー刺激因子およびVEGFを分泌するので、単球が自然に腫瘍部位に移動し、低酸素領域に局在化し、腫瘍関連マクロファージに分化し、これが腫瘍成長阻害を増強することができる(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。結果として、マクロファージは腫瘍溶解性アデノウイルスおよび麻疹ウイルスの送達について前臨床的に調査されてきた。論じられる他の種類の免疫細胞に加えて、骨髄由来サプレッサー細胞も、腫瘍溶解性VSVを送達するための担体細胞として調査されてきた。
【0163】
がん細胞
安全のために通常、投与前にγ線照射で不活化されるがん細胞も、OVのための担体細胞として使用されてきた。γ線照射は腫瘍形成能を防ぐことができるが、ウイルス産生を維持する。別の安全対策には、がん細胞が対象内に無期限に留まらないことを確保するために、チミジンキナーゼなどの自殺遺伝子を発現するようにOVを操作することが含まれる(すなわち、殺傷され、もはや不死でないようにする)。あるいは、典型的にはレシピエントの免疫系によって排除される同種がん細胞を使用することができる(PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660-665)。
【0164】
がん細胞は大量に入手でき、正常細胞よりも高いレベルのウイルス感染力および増幅を示すことができる(Guoら(2010)Gene Ther.17(12):1465-1475;RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。更に、転移性疾患で見られるように、一部の腫瘍細胞は一定の臓器に特異的に移動する。例えば、骨髄腫細胞は高レベルのケモカイン受容体CXCR4を発現し、骨髄転移をもたらし、腫瘍溶解性麻疹ウイルスの送達に使用されてきた(RoyおよびBell(2013)Oncolytic Virotherapy 2:47-56)。さまざまな形質転換細胞株が、免疫正常動物および免疫不全動物で腫瘍溶解性パルボウイルス、麻疹ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルスを送達することが示されている。例えば、VSVまたはアデノウイルスに感染した癌細胞は、ウイルスをマウスの肺転移に有効に送達するために使用されてきた(Willmonら(2009)Molecular Therapy 17(10):1667-1676;PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660-665)。しかしながら、固形腫瘍に由来する細胞は、直径が大きいため、IV投与後にマウスの肺に蓄積することが示されている。結果として、造血/血液起源のがん細胞が、体内により広く分布し、OVを肺の外側の解剖学的位置に送達できるため、より良い代替手段となることができる(PowerおよびBell(2007)Mol.Ther.15(4):660-665)。
【0165】
担体細胞として使用できる同種ヒト血液悪性腫瘍細胞株の例としては、白血病細胞(例えば、KASUMI-1、HL-60、THP-1、K-562、RS4;11、MOLT-4、CCRF-CEM、JVM-13、31E9、ARH-77、MoB、JM1、NALM-1、ProPak-X.36など);T細胞白血病細胞(例えば、HM-2、CEM-CM3、Jurkat/JurkatクローンE6-1、J.CaM1.6、BCL2 Jurkat、BCL2 S87A Jurkat、BCL2 S70A Jurkat、Neo Jurkat、BCL2 AAA Jurkat、J.RT3-T3.5、J45.01、J.γ1、J.γ1.WT、JK28、P116、P116.cl39、A3、JX17、D1.1、I 9.2、I 2.1など);骨髄単球性白血病細胞(例えば、MV-4-11);リンパ腫細胞(例えば、HT、BC-3、CA46、Raji、Daudi、GA-10-Clone-4、HH、H9);非ホジキンリンパ腫細胞(例えば、SU-DHL-1、SU-DHL-2、SU-DHL-4、SU-DHL-5、SU-DHL-6、SU-DHL-8、SU-DHL-10、SU-DHL-16、NU-DUL-1、NCEB-1、EJ-1、BCP-1、TUR、U-937など);バーキットリンパ腫細胞(例えば、Ramos/RA 1、Ramos.2G6.4C10、P3HR-1、Daudi、ST486、Raji、CA46、バーキットリンパ腫患者からのヒトガンマヘルペスウイルス4/HHV-4頬腫瘍、DG-75、GA-10、NAMALWA、HS-Sultan、Jiyoye、NC-37、20-B8、EB2、1G2、EB1、EB3、2B8、GA-10クローン20、HKB-11/腎臓-B細胞ハイブリッド);びまん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞(例えば、Toledo、Pfeiffer);マントル細胞リンパ腫細胞(例えば、JeKo-1、JMP-1、PF-1、JVM-2、REC-1、Z-138、Mino、MAVER-1);AML細胞(例えば、AML-193、BDCM、KG-1、KG-1a、Kasumi-6、HL-60/S4);CML細胞(例えば、K562、K562-r、K562-s、LAMA84-r、LAMA84-s、AR230-r、AR230-s);ALL細胞(例えば、N6/ADR、RS4;11、NALM6クローンG5、Loucy、SUP-B15、CCRF-SB);赤白血病細胞(例えば、IDH2-突然変異株-TF-1同質遺伝子細胞株);骨髄単芽球性白血病細胞(例えば、GDM-1);悪性非ホジキンNKリンパ腫細胞(例えば、NK-92、NK-92MI);骨髄腫/形質細胞腫細胞(例えば、U266B1/U266、HAA1、SA13、RPMI8226、NCI-H929、MC/CAR);多発性骨髄腫細胞(例えば、MM.1R、IM-9、MM.1S);およびマクロファージ細胞株(例えば、MD、SC、WBC264-9C)が挙げられる。
【0166】
市販の同種細胞株には、例えば、APCETH-201、APCETH-301(APCETH)、Cx601(TIGENIX)、TEMCELL、MSC-100-IV、Prochymal(MESOBLAST)などの間葉系幹細胞;例えば、ToleraCyte(Fate Therapeutics)などの人工多能性幹細胞(iPSC);線維芽細胞、例えば、CCD-16Lu、WI-38;腫瘍関連線維芽細胞、例えば、Malme-3M、COLO 829、HT-144、Hs 895.T、hTERT PF179T CAF;内皮細胞、例えば、HUVEC、HUVEC/TERT 2、TIME;胚性上皮細胞、例えば、HEK-293、HEK-293 STF、293T/17、293T/17 SF、HEK-293.2sus;胚性幹細胞、例えば、hESC BG01V;および上皮細胞、例えば、NuLi-1、ARPE-19、VK2/E6E7、Ect1/E6E7、RWPE-2、WPE-stem、End1/E6E7、WPMY-1、NL20、NL20-TA、WT 9-7、WPE1-NB26、WPE-int、RWPE2-W99、BEAS-2Bが含まれる。
【0167】
自家または同種全腫瘍細胞ワクチンには、例えば、Cell Genesys/BioSante/Aduro Biotech製のGVAX Prostate(PC3/LNCaPに基づく);GVAX Pancreas;GVAX Lung;およびGVAX Renal CellなどのGM-CSF分泌全腫瘍細胞ワクチン(GVAX)が含まれる。
【0168】
同種ヒト腫瘍細胞株には、例えば、NCI-60パネル(BT549、HS 578T、MCF7、MDA-MB-231、MDA-MB-468、T-47D、SF268、SF295、SF539、SNB-19、SNB-75、U251、Colo205、HCC 2998、HCT-116、HCT-15、HT29、KM12、SW620、786-O、A498、ACHN、CAKI、RXF 393、SN12C、TK-10、UO-31、CCRF-CEM、HL-60、K562、MOLT-4、RPMI-8226、SR、A549、EKVX、HOP-62、HOP-92、NCI-H226、NCI-H23、NCI-H322M、NCI-H460、NCI-H522、LOX IMVI、M14、MALME-3M、MDA-MB-435、SK-MEL-2、SK-MEL-28、SK-MEL-5、UACC-257、UACC-62、IGROV1、OVCAR-3、OVCAR-4、OVCAR-5、OVCAR-8、SK-OV-3、NCI-ADR-RES、DU145、PC-3)が含まれる。他の同種ヒト腫瘍細胞株には、例えば、線維肉腫細胞株(HT-1080);肝癌細胞株(Hih-7);前立腺癌細胞株(LAPC4、LAPC9、VCaP、LuCaP、MDA PCa 2a/2b、C4、C4-2、PTEN-CaP8、PTEN-P8);乳がん細胞株(HCC1599、HCC1937、HCC1143、MDA-MB-468、HCC38、HCC70、HCC1806、HCC1187、DU4475、BT-549、Hs 578T、MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-157、MDA-MB-453、HCC1599、HCC1937、HCC1143、MDA-MB-468、HCC38、HCC70、HCC1806、HCC1187、DU4475、BT-549、Hs 578T、MDA-MB-231、MDA-MB-436、MDA-MB-157、MDA-MB-453、BT-20、HCC1395、MDA-MB-361、EMT6、T-47D、HCC1954);頭頸部がん細胞株(A-253、SCC-15、SCC-25、SCC-9、FaDu、Detroit 562);肺がん細胞株(NCI-H2126、NCI-H1299、NCI-H1437、NCI-H1563、NCI-H1573、NCI-H1975、NCI-H661、Calu-3、NCI-H441);膵臓がん細胞株(Capan-2、Panc 10.05、CFPAC-1、HPAF-II、SW1990、BxPC-3、AsPC-1、MIA PaCa-2、Hs 766T、Panc 05.04、PL45);卵巣がん細胞株(PA-1、Caov-3、SW626、SK-OV-3);骨がん細胞株(HOS、A-673、SK-PN-DW、U-2 OS、Saos-2);結腸がん細胞株(SNU-C1、SK-CO-1、SW1116、SW948、T84、LS123、LoVo、SW837、SNU-C1、SW48、RKO、COLO 205、SW1417、LS411N、NCI-H508、HT-29、Caco-2、DLD-1);胃がん細胞株(KATOIII、NCI-N87、SNU-16、SNU-5、AGS、SNU-1);婦人科系がん細胞株(SK-LMS-1、HT-3、ME-180、Caov-3、SW626、MES-SA、SK-UT-1、KLE、AN3-CA、HeLa);肉腫細胞株(SW684、HT-1080、SW982、RD、GCT、SW872、SJSA-1、MES-SA/MX2、MES-SA、SK-ES-1、SU-CCS-1、A-673、VA-ES-BJ、Hs 822.T、RD-ES、HS 132.T、Hs 737.T、Hs 863.T、Hs 127.T、Hs 324.T、Hs 821.T、Hs 706.T、Hs 707(B).Ep、LL 86/LeSa、Hs 57.T、Hs 925.T、GCT、KHOS-312H、KHOS/NP R-970-5、SK-LMS-1、HOS);黒色腫細胞株(SK-MEL-1、A375、G-361、SK-MEL-3、SH-4、SK-MEL-24、RPMI-7951、CHL-1、Hs 695T、A2058、VMM18、A375.S2、Hs 294T、VMM39、A375-P、VMM917、VMM5A、VMM15、VMM425、VMM17、VMM1、A375-MA1、A375-MA2、SK-MEL-5、Hs 852.T、LM-MEL-57、A101D、LM-MEL-41、LM-MEL-42、MeWo、LM-MEL-53、MDA-MB-435S、C32、SK-MEL-28、SK-MEL-2、MP38、MP41、C32TG、NM2C5、LM-MEL-1a、A7/M2A7);扁平上皮癌細胞株(SiHa、NCI-H520、SCC-15、NCI-H226、HCC1806、SCC-25、FaDu、SW 954、NCI-H2170、SCC-4、SW 900、NCI-H2286、NCI-H2066、SCC-9、SCaBER、SW579、SK-MES-1、2A3、UPCI:SCC090、UPCI:SCC152、CAL 27、RPMI 2650、UPCI:SCC154、SW756、NCI-H1703、ME-180、SW962);肝細胞癌細胞株(Hep G2、Hep 3B2.1-7/Hep 3B、C3A、Hep G2/2.2.1、SNU-449、SNU-398、SNU-475、SNU-387、SNU-182、SNU-423、PLC/PRF/5);膀胱がん細胞株(5637、HT-1197、HT-1376、RT4、SW780、T-24、TCCSUP、UM-UC-3);腎細胞がん細胞株(ACHN、786-O/786-0、769-P、A-498、Hs 891.T、Caki-2、Caki-1);胚性癌腫/精巣奇形腫細胞株(NTERA-2 cl.D1、NCCIT、Tera-2、Tera-1、Cates-1B);神経膠芽腫細胞株(LN-229、U-87 MG、T98G、LN-18、U-118 MG、M059K、M059J、U-138 MG、A-172);星細胞腫細胞株(SW1088、CCF-STTG1、SW1783、CHLA-03-AA);脳がん細胞株(PFSK-1、Daoy);甲状腺癌細胞株(TT、MDA-T68、MDA-T32、MDA-T120、MDA-T85、MDA-T41)および中皮腫細胞株(NCI-H28、NCI-H226、NCI-H2452、NCI-H2052、MSTO-211H)が含まれる。
【0169】
適合細胞
本明細書で提供される系で使用される任意の細胞、例えば上記の細胞は、ウイルスおよび/またはウイルス療法が施される対象とマッチングの適合性、すなわち細胞および/または関連するウイルスに対する自然免疫応答および/または適応免疫応答を克服または改善する細胞の能力について試験することができる。対象に適合する細胞の選択は、本明細書で提供される系の治療有効性を更に増加させることができる。最適な細胞-ウイルスの組み合わせ(例えば、ウイルス増幅を促進する細胞の能力)および対象に適合する細胞をスクリーニングする方法は、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載されている。改善された細胞送達のために1つ以上の方法で感作および/または操作された改変細胞媒体も本明細書で提供される(例えば、下記の節を参照)。
【0170】
改善された送達および/またはマッチング能力を有する改変細胞媒体
腫瘍溶解性ウイルスの対象への送達を促進する、および/または対象とのマッチングを改善するようにその特性が改変される細胞媒体(担体細胞)も本明細書で提供される。本明細書で提供される細胞媒体(例えば、幹細胞、免疫細胞、がん細胞)のいずれも、このように改変できる。このような特性は、限定されるものではないが、細胞送達媒体におけるウイルス増幅の改善された促進、細胞媒体および/またはウイルスに対する免疫応答を回避する改善された能力、ならびに/あるいは改善された免疫抑制を含むことができる。実施形態では、免疫調節能力(例えば、免疫応答の回避、免疫応答の抑制)が、局所的および/または一過的であることができ、腫瘍または他の癌性細胞におけるウイルスの送達、蓄積および感染を促進するのに必要な程度まで存在する。
【0171】
いくつかの態様では、本明細書で提供される改変細胞媒体を、特定の対象および/または特定のがん/腫瘍型への腫瘍溶解性ウイルスの送達のための細胞媒体としての適合性を確認するために、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載されているようなマッチングアッセイを使用してスクリーニングすることができる。実施形態では、複数の/パネルの改変された細胞媒体を、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載されているマッチングアッセイによってスクリーニングすることができ、それらのマッチング能力の順にランク付けすることができる。いくつかの例では、細胞媒体のパネルが、改変されていない細胞媒体を含むことができる。
【0172】
簡潔には、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載されているように、担体細胞を対象に適合させる方法は、以下の1つ以上の工程を実行することを含む:
【0173】
1.細胞媒体、腫瘍溶解性ウイルスおよび対象に由来する細胞を含有する共培養物中で、以下:
(a)細胞媒体が存在しないことを除いて他の点では同等の条件と比較して、T細胞活性化のための1つ以上のマーカーのレベルの低下;
(b)細胞媒体が存在しないことを除いて他の点では同等の条件と比較して、NK細胞活性化のための1つ以上のマーカーのレベルの低下;および
(c)細胞媒体が存在しないことを除いて他の点では同等の条件と比較して、NKT細胞活性化のための1つ以上のマーカーのレベルの低下、の1つ以上を検出することによって、細胞媒体が、対象において免疫バリアを克服するかどうかを判断する工程であって、(a)、(b)および(c)の1つ以上が満たされる場合に細胞媒体が対象と適合している工程。
【0174】
2.(a)ウイルスおよび細胞媒体を対象に由来する細胞と一緒にインキュベートしたときに得られるウイルス増幅の量を測定する工程;
(b)対象に由来する細胞の不在下を除いて、ウイルスおよび細胞媒体を同等の条件下でインキュベートした場合に得られるウイルス増幅の量を測定する工程;および
(c)(a)および(b)で測定された量を比較する工程であって、(a)で測定された増幅量が(b)で測定された増幅量の少なくとも20%である場合、細胞媒体は対象と適合する、工程。
【0175】
3.1つ以上の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)および/またはキラー細胞阻害受容体(KIR)遺伝子座における細胞媒体および対象における同一の対立遺伝子を同定する工程、ならびに、例えば、対立遺伝子の50%以上が同一である場合、細胞媒体を対象に対する適合として同定する工程。
【0176】
本明細書で提供される改変された細胞媒体は、以下に記載されるように、この節および本明細書の他の場所に示される1つ以上の改変を含むことができる:
【0177】
(i)改善されたウイルス増幅および/または免疫調節のために感作/保護された細胞媒体
本明細書で提供されるCAVES系を生成するための、および本明細書で提供される方法で使用するための改変細胞媒体(担体細胞)は、以下の1つ以上の実施形態を含むことができる。実施形態では、細胞媒体を以下のうちの1つ以上で前処理/搭載することによって、そのウイルス増幅能力を増強するように、細胞媒体を感作させることができる:IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、GM-CSF、増殖因子、RTK/mTORアゴニスト、wntタンパク質リガンドおよびGSK3阻害剤/アンタゴニスト(例えば、チデグルシブ、バルプロ酸(Valporic acid))。他の実施形態では、例えば、細胞媒体を、IFN I型/II型受容体を妨害する、および/または限定されるものではないが、IFNAR1/IFNAR2シグナル伝達、IFNGR1/IFNGR2シグナル伝達、STAT1/2シグナル伝達、Jak1シグナル伝達(例えば、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ(Baracitinib))、Jak2シグナル伝達(例えば、SAR302503、LY2784544、CYT387、NS-018、BMS-911543、AT9283)、IRF3シグナル伝達、IRF7シグナル伝達、IRF9シグナル伝達、TYK2シグナル伝達(例えば、BMS-986165)、TBK1シグナル伝達(例えば、BX795、CYT387、AZ13102909)を含む下流シグナル伝達を妨害する小分子またはタンパク質阻害剤で前処理/搭載することによって、抗ウイルス状態の誘導を遮断するように細胞媒体を感作させることができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、IFNシグナル伝達/応答性を妨害する/調節解除するためのHDAC阻害剤で前処理/搭載することができ;このような阻害剤は、限定されるものではないが、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸(Valporic acid)、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、スルフォラファンおよび/またはトリコスタチンを含むことができる。他の実施形態では、細胞媒体を、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および/または抗ウイルス防御経路のアンタゴニストで前処理/搭載することができ;このようなアンタゴニストは、限定されるものではないが、K1、E3L、K3Lタンパク質(ワクシニア)、NS1/NS2タンパク質(インフルエンザ)、NS3-4A(C型肝炎)、NPおよびZタンパク質(アレナウイルス)、VP35(エボラウイルス)、US11、ICP34.5、ICP0(HSV)、M45(MCMV)およびXタンパク質(BDV:ボルナ病ウイルス)のうちの1つ以上を含むことができる。実施形態では、細胞をウイルス起源のMHCアンタゴニスト、例えば、A40R MHCIアンタゴニスト(ワクシニア)、NefおよびTAT(HIV)、E3-19K(アデノウイルス)、ICP47(HSV-1/2)、CPXV012およびCPXV203(牛痘)、ORF66(VZV)、EBNA1、BNLF2a、BGLF5、BILF1(EBV)、US2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10、US11/gp33(hCMV)、Rh178/VIHCE(RhCMV)、U21(HHV-6/7)、LANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1、kK5/MIR2(KSHV)、mK3(MHV-68)、UL41/vhs(a-ヘルペスウイルス、HSV、BHV-1、PRV)、UL49.5(バリセロウイルス、BHV-1、EHV-1/4、PRV)ならびにm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40(mCMV)のうちの1つ以上で前処理/搭載することなどによって、細胞媒体を同種不活化/拒絶決定因子から保護することができる。
【0179】
実施形態では、改変された細胞媒体を、ウイルス起源のB2Mアンタゴニスト、例えば、UL18(HCMV)で前処理/搭載することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、MIC-AおよびMIC-B(NKG2Dリガンド)のアンタゴニスト、例えば、kK5(KHSV)で前処理/搭載することができる。いくつかの実施形態では、細胞媒体を、限定されるものではないが、免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤(例えば、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSP1-2/CrmA)、IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト(例えば、ワクシニアウイルスコード化N1)、IL-1およびTLRアンタゴニスト(例えば、IL-18結合タンパク質、A46R、A52R)、IL-1βアンタゴニスト(例えば、B15R/B16R)、TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE)、IFNα/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R)ならびにIFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8Rを含むウイルス起源の1つ以上の免疫抑制因子で前処理/搭載することができる。実施形態では、細胞媒体を、TAP1/2および/またはタパシンの小分子阻害剤で前処理/搭載することができる。
【0180】
実施形態では、改変された細胞媒体を、例えば、細胞媒体を補体因子(例えば、C1、C2、C3、C4、C5、MBL)の小分子阻害剤で前処理/搭載することによって、補体から保護することができ;このような阻害剤は、限定されるものではないが、VCP(ワクシニアウイルス補体制御タンパク質)、B5R(ワクシニアウイルス補体阻害剤)、scFv抗CD1q/CD1r/CD1s、抗C3、抗C5(例えば、エクリズマブ)、補体ファミリーのペプチドC3阻害剤(例えば、Cp40)、ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質(例えば、s/mCR1(CD35)、s/mCR2(CD21)、s/mCD55、s/mCD59)、ヒト補体因子Hおよび誘導体、コブラ毒因子ならびに補体阻害活性を有する1つ以上の誘導体を含むことができる。
【0181】
上記の実施形態では、細胞にこれらの因子を搭載または処理する代わりに、ウイルスを改変してこれらの産物を発現させることができ、または本明細書の方法により、ウイルスは、担体細胞とインキュベートした場合に担体細胞においてこれらの産物を発現する。
【0182】
感作された細胞媒体は、当技術分野で既知の方法によって作製できる。例えば、細胞媒体を、細胞バンキング、ウイルス感染または対象への投与前に10分~48時間以上、例えば、細胞バンキング、ウイルス感染または対象への投与前に、約もしくは少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55もしくは60分間または約もしくは少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上、インキュベートすることによって増感剤、例えばタンパク質または小分子アゴニスト/アンタゴニストで前処理することができる。タンパク質/脂質不溶性小分子の細胞への搭載を増強するために、リポフェクタミンまたは代替のタンパク質トランスフェクション試薬、例えば、Xfect(Takara)、Pierce Pro-Ject(ThermoFisher)、Pro-DeliverIN(OZ Biosciences)、TurboFect(Fermentas)などを使用できる。
【0183】
(ii)ウイルス媒介殺傷に対する耐性のために感作された(延長された生存期間および改善された局所免疫抑制のため)
いくつかの実施形態では、改変された細胞媒体を、細胞媒体をウイルス媒介殺傷に対して耐性にする1つ以上の薬剤で前処理/搭載することができる。例えば、いくつかの実施形態では、細胞媒体を、I型および/またはII型インターフェロンで前処理することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、抗ウイルス状態のアゴニスト/誘導物質(例えば、STING、PKR、RIG-I、MDA-5)で前処理することができる。このような「protected」(保護された)細胞媒体を作製するために、任意の自家または同種細胞媒体を、インターフェロンI型(例えば、IFNα/β)および/またはII型(例えば、IFNγ)ならびに/あるいはSTING、PKR、RIG-I、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM-2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)経路のアゴニストで、ウイルス感染なしでまたはウイルス感染の前に、30分~最大48時間以上、例えば約もしくは少なくとも30分または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上処理することができる。
【0184】
これらの「protected」(保護された)細胞媒体は、このように保護されておらず、ウイルスを含む、マッチング/感作/操作された細胞媒体と同時に別々の組成物として投与することができ;保護された細胞媒体は、延長された生存期間および/または改善された局所免疫抑制を提供することができる。いくつかの実施形態では、保護された細胞媒体を、例えば、このように保護されておらず、ウイルスを含む、マッチング/感作/操作された細胞媒体の投与の前後約もしくは少なくとも10、15、20、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間または1、2、3、4もしくは5日以内に投与することができる。
【0185】
(iii)ウイルス増幅および/または免疫調節を改善するために操作された細胞媒体
いくつかの態様では、本明細書で提供される系および方法で使用するための改変細胞媒体は、遺伝子の一過性または永続的な発現または抑制のために操作され、ウイルス増幅および/または免疫調節の改善を促進する。細胞媒体を、以下の1つ以上の実施形態で操作することができる。本明細書で提供される細胞媒体のいずれも、本明細書で提供される細胞媒体を感作させる、保護するおよび/または操作するための実施形態の1つまたは組み合わせを使用して改変することができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、インターフェロン(IFN)によって誘導される抗ウイルス状態に応答しないように操作することができる。例えば、細胞媒体を、例えば、I型/II型インターフェロン受容体発現;IFNα/β、IFNγ受容体発現;IFNAR1/IFNAR2受容体発現;IFNGR1/IFNGR2受容体発現;STAT1/2受容体発現;Jak1/2受容体発現;IRF3受容体発現;IRF7受容体発現;IRF9受容体発現;TYK2キナーゼ発現およびTBK1キナーゼ発現のうちの1つ以上の抑制などのIFN I型/II型受容体および/または下流シグナル伝達の一過的または永続的な(例えば、遺伝子座の切除)抑制のために操作することができる。
【0187】
実施形態では、細胞媒体を、限定されるものではないが、PKR、RIG-I、MDA-5、cGAS、STING、TBK1、IRF3、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3およびDAI(ZBP1)のうちの1つ以上を含むサイトゾルウイルスDNA/RNA感知および抗ウイルス防御機構の要素の一過的または永続的な抑制のために操作することができる。他の実施形態では、細胞媒体を、例えば、STING、PKR、RIG-1、MDA-5、OAS-1/2/3、AIM2、MAVS、RIP-1/3、DAI(ZBP1)によって媒介されるウイルス感知および抗ウイルス防御経路のアンタゴニストの一過的または永続的な発現のために操作することができ;これらは、限定されるものではないが、K1、E3L、K3L(ワクシニア);NS1/NS2(インフルエンザA);NS3-4A(C型肝炎);NP、Zタンパク質(アレナウイルス);VP35(エボラウイルス);US11、ICP34.5、ICP0(HSV);M45(MCMV);およびXタンパク質(BDV:ボルナ病ウイルス)のうちの1つ以上を含むことができる。
【0188】
いくつかの態様では、改変細胞媒体は、T細胞およびNKT細胞による同種認識を回避するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下の発現の一過的または永続的な抑制のために操作することができる:MHCクラスI分子(HLA-A、B、C);MHCクラスII分子(HLA-DP、DQ、DR);MHC様分子(CD1a/b/c/d);またはMHCクラスI、MHCクラスII、MHC様分子の転写もしくは発現の調節因子(例えば、TAP1/2、タパシン、ベータ2ミクログロブリン、CIITA、RFXANK、RFX5およびRFXAP)。他の例では、細胞媒体を、以下の一過的または永続的な発現のために操作することができる:ウイルス起源のB2Mアンタゴニスト(例えば、UL18(HCMV);および/またはウイルス起源のMHCアンタゴニスト(例えば、A40R MHCI(ワクシニア);Nef、TAT(HIV);E3-19K(アデノウイルス);ICP47(HSV-1/2);CPXV012、CPXV203(牛痘);EBNA1、BNLF2a、BGLF5、BILF1(EBV);ORF66(VZV);US2/gp24、US3/gp23、US6/gp21、US10、US11/gp33(hCMV);rh178/VIHCE(RhCMV);U21(HHV-6/7);LANA1、ORF37/SOX、kK3/MIR1、kK5/MIR2(KHSV);mK3(MHV-68);UL41/vhs(a-ヘルペスウイルス、HSV、BHV-1、PRV);UL49.5(バリセロウイルス、BHV-1、EHV-1/4、PRV);およびm4/gp34、m6/gp48、m27、m152/gp40(mCMV)のうちの1つ以上)。
【0189】
実施形態では、細胞媒体を、NK細胞による同種認識を回避するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上の発現の一過的または永続的な抑制のために操作することができる:膜結合MICA/B(NKG2Dリガンド);膜結合PVR(DNAM-1リガンド);膜結合ネクチン-2(DNAM-1リガンド)。他の例では、細胞媒体を、以下の一過的または永続的な発現のために操作することができる:MIC-AおよびMIC-B(NKG2Dリガンド)のアンタゴニスト(例えば、kK5(KHSV));NKG2D受容体の拮抗薬(例えば、牛痘OMCP);NKp30、NKp44、NKp46受容体を標的化するNCRのアンタゴニスト(例えば、HA(血球凝集素-ワクシニアおよび他のウイルス));NK抑制性受容体(KIR)のリガンド(例えば、HLA-Bw4;HLA-C2);およびNK抑制性受容体(NKG2a/CD94)のリガンド(例えば、単独のまたはHLA-E結合ペプチドを作製し、HLA-E表面発現を安定化させるために21M HLA-Bリガンドと組み合わせたHLA-Eおよび誘導体)。
【0190】
一定の実施形態では、細胞媒体を、ヒトまたはウイルス起源の免疫抑制因子を発現するように操作することができる(例えば、同種抗細胞媒体または抗ウイルス免疫応答を防止/阻害するため)。これは、細胞ゲノムおよび/またはウイルスゲノムにそれらをコードすることによって達成することができる。ヒト起源の因子には、限定されるものではないが、IDO、アルギナーゼ、TRAIL、iNOS、IL-10、TGFβ、VEGF、FGF-2、PDGF、HGF、IL-6、sMICA、sMICB、sHLA-G、HLA-E、PD-L1、FAS-L、B7-H4、ならびにNKおよび/またはNKT細胞を標的化するまたは枯渇させる一本鎖抗体(scFv)が含まれる。ウイルス起源の因子には、限定されるものではないが、エクトロメリア/ワクシニアウイルスSPI-2/CrmA(免疫FAS/TNF/グランザイムB誘導アポトーシスの阻害剤);ワクシニアウイルスにコードされるN1(IL-1/NFkB/IRF3アンタゴニスト);HA(NKp30、NKp44、NKp46を標的化するNCRアンタゴニスト);IL-18結合タンパク質;A40R;A46R;A52R;B15R/B16R;TNFα遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスCmrC/CmrE);IFNα/β遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB18R/B19R);IFNγ遮断薬(例えば、ワクシニアウイルスB8R);およびその他のIL-1/IL-1β/NFKB/IRF3/NCR/MHCI/TLR/NKG2Dアンタゴニストが含まれる。
【0191】
いくつかの実施形態では、細胞媒体を、他の方法では不許容性の細胞媒体および/または腫瘍細胞のウイルス感染を促進するがんまたは幹細胞由来因子を発現するように操作することができる。例えば、細胞媒体を、以下のうちの1つ以上を発現するように操作することができる:がん関連抗原(例えば、がん精巣抗原(MAGE-A1、MAGE-A3、MAGE-A4、NY-ESO-1、PRAME、CT83、SSX2、BAGEファミリー、CAGEファミリー);癌胎児性抗原(AFP、CEA);癌遺伝子/腫瘍抑制因子(myc、Rb、Ras、p53、テロメラーゼ);分化抗原(MELAN、チロシナーゼ、TRP-1/2、gp100、CA-125、MUC-1、ETA);GM-CSF;IL-10;TGFβ;VEGF;FGF-2;PDGF;HGF;IL-6;増殖因子;RTK/mTORアゴニスト;およびwntタンパク質リガンド。
【0192】
実施形態では、改変された細胞媒体を、限定されるものではないが、以下のうちの1つ以上を含む、補体および/または中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することができる:補体因子(C1、C2、C3、C4、C5、MBL)のタンパク質アンタゴニスト;ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP);ワクシニアウイルス補体阻害剤(B5R);scFv抗CD1q/CD1r/CD1s;抗C3、抗C5(例えば、エクリズマブ);コンプスタチンファミリーのペプチドC3阻害剤(例えば、Cp40);ヒト可溶性膜(s/m)タンパク質(例えば、s/mCR1(CD35)、s/mCR2(CD21)、s/mCD55、s/mCD59);ヒト補体因子Hおよび誘導体、ならびにコブラ毒因子および補体抑制活性を有する誘導体。
【0193】
(iv)血管正常化/腫瘍血管再プログラミングのための血管形成阻害剤を発現するように操作された細胞媒体
いくつかの実施形態では、細胞媒体は、(例えば、腫瘍血管系を再プログラミング/修復、安定化および/または正常化する腫瘍血管に対する)血管新生阻害剤をコードするように操作することができる。そのような阻害剤の詳細は、以下の「2.ウイルス」の部に記載され、本明細書で提供されるCAVESの成分であるウイルスのそのような改変が記載されている。いかに記載されるように、血管新生阻害剤は、腫瘍細胞とその局所細胞環境との相互作用によって開始されるシグナルのカスケードのバランスを回復させることによって、血管正常化を誘導し、腫瘍血管系を修復することができる(腫瘍血管再プログラミング)。これは、腫瘍灌流の増強および腫瘍内の低酸素の減少をもたらすことができ、次に原発性腫瘍成長、腹水および転移の改善された減少をもたらすことができる。
【0194】
本明細書で提供されるCAVES組成物ならびに関連する使用方法および処置の方法は、血管新生促進因子をダウンレギュレートするおよび/または抗血管新生因子をアップレギュレートするものを含む、血管新生を阻害する分子をコードする細胞媒体を含むことができる。あるいは、または更に、本明細書で提供されるCAVES組成物は、血管新生阻害剤および/または血管新生阻害剤をコードするウイルスと組み合わせて投与することができる。
【0195】
(v)条件付き細胞不死化のための導入遺伝子を発現するように操作された細胞媒体
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるCAVES組成物および関連する方法のための細胞媒体は、条件付き細胞不死化(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Wallら、Cell Gene Therapy Insights,2(3):339-355(2016)による総説およびそこに引用されている参考文献を参照)のための導入遺伝子をコードするように操作することができる。条件付き不死化は、導入遺伝子が活性であるとき、例えばオペレーターの制御下で、目的の標的細胞を得るために安定で一貫した様式で臨床量に増殖させることができる細胞を作製するための誘導性導入遺伝子技術を使用するが、必要に応じて不活性化可能であるため、それらは正常な有糸分裂後の状態に戻る。これにより、恒常的不死化細胞を投与することからのがんのリスクを最小化または排除しながら、処置を必要とする対象への一貫して再現性のある安定な規模拡大可能な細胞製剤(例えば、CAVES)の安全な送達が可能になる。対象への投与のためにスケーラブルで費用対効果が高いが安全な方法で一貫した品質の多数の細胞媒体を得る能力は、例えば、本明明細書で提供されるCAVESなどの細胞ベースの組成物における臨床使用のための「既製の」同種細胞を開発するために望ましい。
【0196】
細胞の条件付き不死化は、当業者に既知の方法を使用して行うことができ、例えば、細胞の種類およびそれが得られる種に応じて変化させることができる。例えば、p53経路およびpRB経路のストレス活性化は、マウスにおける老化の一般的な原因であり、最適な培地および酸素条件下でマウス細胞を成長させることにより、これらの遺伝子を阻害またはサイレンシングし、それによりストレスを緩和することができる。一方、ヒト細胞は、p53およびpRB遺伝子のサイレンシングに加えて、例えばテロメラーゼ再構成によるテロメア維持も必要とする。細胞分裂のために制御可能に(条件付きで)活性化/不活性化することができる例示的な遺伝子としては、例えば、癌遺伝子およびテロメラーゼが挙げられる。条件付き不死化のための例示的な技術としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる。
【0197】
E6/E7
ヒトパピローマウイルス16型(HPV16)、E6およびE7由来の腫瘍タンパク質は、p53およびpRBなどの腫瘍抑制因子を不活性化することによって細胞不死化を媒介することにおいて協働する。したがって、条件付き不死化は、増殖が望まれる場合にはこれらの腫瘍抑制因子の条件付き不活性化によって達成することができ、その後、増殖が停止される場合にはそれらの活性化によって達成することができる(例えば、治療として投与する前に;例えば、Storeyら、Oncogene,11:653-661(1995)を参照)。
【0198】
Myc遺伝子
c-myc遺伝子は、そのウイルスホモログv-mycと共に、様々な細胞機能にわたって調節制御を及ぼす。特に、それは細胞周期侵入および細胞分裂を駆動し、安定な不死化細胞株を作製するための魅力的な標的となる。myc遺伝子を構成的に発現させるmyc遺伝子の突然変異は、発癌性形質転換に関連し、がんをもたらす。したがって、好ましくはオペレーターの制御下でのc-mycの制御された発現が、条件付き不死化のために望まれる。
【0199】
条件付き不死化技術c-MycERTAMは、c-mycおよび突然変異株マウスエストロゲン受容体(G525R)のN末端切断型ホルモン結合ドメインを含有するキメラタンパク質をコードする融合遺伝子である。突然変異株G525Rは、もはや17β-エストラジオールおよびエストロゲンに結合することができないが、合成エストロゲン様アゴニストである4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)の存在下での活性化に応答する。したがって、4-OHTの存在下で細胞を培養すると、c-myc活性およびその後の細胞分裂が促進されるが、4-OHTの不在下では、細胞は非活性化状態に戻り、正常細胞と同様に成熟/分化を受けることができる。
【0200】
c-MycERTAMの合成は細胞の表現型に影響せず、この条件付き不死化技術は、皮質神経上皮からのヒト幹細胞株の開発に使用されており、これは虚血性脳卒中、四肢虚血の前臨床動物試験で調査されており、現在、脳卒中障害(第1相および第2相)の処置としての臨床試験および臨床的四肢虚血の第1相試験で調査されている。
【0201】
myc癌遺伝子の中でも、鳥類ウイルスホモログv-mycは、ヒト神経幹細胞(hNSC)を効果的に不死化することも証明されている。トリ骨髄細胞腫症ウイルスゲノムにコードされるp110gag-mycタンパク質は、分化後に自然にダウンレギュレートされる。その細胞対応物と同様に、v-mycを形質導入されたhNSCの成長および分化は、増殖因子による分裂促進刺激に依存する。新生仔マウスにおける24~48時間の生着後の鳥類v-mycの自発的下方制御が観察され、条件付き不死化細胞媒体としての有望性を示した。確立されたv-myc hNSC細胞株は、それらの腫瘍指向特性のために、選択的遺伝子治療のための送達媒体としての可能性を示している。シトシンデアミナーゼを発現するように遺伝子改変されたhNSC株(HB1.F3.CD)の前臨床試験は、5-フルオロシトシンの化学療法剤5-フルオロウラシルへの腫瘍部位変換をもたらした。現在、この抗がん戦略の投与量および副作用を研究するために第1相臨床試験が進行中である(ID:13401 NCI-2013-02346 13401)。
【0202】
感温性シミアンウイルスSV40 T抗原
SV40はアカゲザル由来の二本鎖DNAウイルスである。SV40は多数の抗原を有し、その中には大型腫瘍抗原(Tag)がある。Tagは、細胞がS期に入り、ウイルスDNA複製を促進するDNA損傷応答を受けることを誘導する細胞シグナル伝達経路を調節する。Tagはまた、p53およびpRBファミリーのタンパク質、細胞周期進行およびアポトーシスに関与する強力な腫瘍抑制因子に結合して不活性化し、ウイルス複製を許容する理想的な環境を作り出す。齧歯類細胞に関する初期の研究は、Tagがこれらの細胞を不死化し、無限の増殖能を獲得することを示した。その後のTagの不活性化は、細胞周期のG1期およびG2期における増殖能の急速かつ不可逆的な喪失をもたらし、Tagが増殖状態を維持するために連続的に必要とされることを実証した。これらの特質により、Tagは制御可能な細胞株を開発するための理想的な候補となった。
【0203】
Tagの不活性化は、1975年に最初に単離され、許容温度(33.5℃)で野生型として挙動することが見出されたが、39℃の非許容温度では生物学的に不活性であった大きなTagの温度感受性突然変異株(SV40 tsA58)を使用して達成された。したがって、許容温度で細胞を増殖させ、次いで細胞の温度を非許容温度まで上昇させることによって分化を促進することによって、条件付き不死化を達成することができる。ReNeuron Ltd.(UK)/University College Londonによる前臨床試験は、SV40大型腫瘍抗原を使用して条件付き不死化されたヒト胎児網膜細胞株(hRPC)を使用して、網膜色素変性症の処置のために実施されている。
【0204】
テロメラーゼ
ヒト体細胞では、各細胞分裂を伴う、染色体の末端における短い反復配列であるテロメアの漸進的短縮が有糸分裂時計であると提案されている。ヒトテロメアは、染色体の末端に位置するTTTAGGの複数のタンデム反復配列を含む。ヒトテロメアは、その長さを維持するために酵素テロメラーゼに依存するが、ヒト体細胞はテロメラーゼをテロメアを維持するのに十分なレベルで発現しないので、各細胞分裂で約50塩基対短縮する。まとめると、テロメラーゼ活性の欠如に関連するテロメア喪失は、老化前の分裂数の制限を担う有糸分裂時計である。
【0205】
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素の触媒サブユニットhTERTは、6bpリピートの合成を触媒してテロメアを伸長させる。初代ヒト細胞におけるテロメラーゼの基礎レベルは無制限の寿命には十分ではないので、外因性hTERTの形質導入は寿命の延長をもたらすことができる。
【0206】
hTERTを用いたテロメラーゼ活性の再構成は、初代ヒト細胞の不死化に十分であるともともと提案されていたが、テロメラーゼ単独の再構成では不十分な場合があることが分かり、これらの例では、p16およびpRBなどの調節経路の二次不活性化が必要であった。
【0207】
上記の研究では構成的活性化が評価されたが、テロメラーゼは、他の条件付き導入遺伝子と組み合わせて、条件付き不死性を支持することに成功したことが証明されている(O’Hareら、Proc.Natl Acad.Sci.USA,98(2):646-651(2001))。例えば、SV40のU19 Tag突然変異株は、SV40複製起点に結合するのを欠損しており、U19 Tagをコードする組換えレトロウイルスで送達された場合、野生型Tagよりも齧歯類細胞を不死化するのにより効率的であった。tsA58(温度感受性Tag突然変異、上記の説明を参照)およびU19突然変異の両方を組み込んだベクターを構築して、インビトロ分化が可能なマウスオリゴデンドロサイト前駆細胞株を作製した(Almazanら、Brain Res.、579:234-245(1992))。U19tsA58 Tagは、オリゴデンドロサイトに分化することができるラット新生視神経から条件付き不死細胞株を作製することができることが見出された(Barnettら、Eur.J.Neurosci.、5:1247-1260(1993))。U19tsA58 Tagもまた、嗅球および粘膜固有層からの候補の再生嗅神経鞘細胞の不均一性を研究するために使用した(Franceschiniら、Dev.Biol.、173(27):327-343(1996))。O’Hareらによる研究は、hTERTまたはU19tsA58 Tag単独の異所性発現は、新たに単離されたヒト細胞の不死化には不十分であるが、遺伝子の組み合わせは、それらが導入された順序に関係なく、不死細胞株の効率的な生成をもたらしたことを示した(O’Hareら、Proc.Natl Acad.Sci.USA,98(2):646-651(2001))。
【0208】
Cre-loxP系
バクテリオファージp1 Creは、loxPと呼ばれる特定の部位での組換えを促進する酵素である。二つの33bpのloxP配列が配向されると、組換えが起こり、その結果、介在配列が切断されて除去される。Cre-loxPによる可逆的不死化の適用は、自己細胞療法および同種細胞療法の両方に有望である。生検および初代培養物を、loxP部位に隣接する組換え癌遺伝子で不死化することができる。その後、Creによるトランスフェクションは不死化遺伝子の切除をもたらす。癌遺伝子除去後、細胞は初代培養集団と同一であるはずであるが、数が増加している。
【0209】
Cre-loxP系は、不死化遺伝子としてhTERTおよびTagを有するラット副腎細胞からヒト肝細胞および筋原性細胞に適用されている(上記の考察を参照)。導入遺伝子を欠失していなくてもよい任意の細胞を排除するために、組換えのための陰性対照に、Creトランスフェクション後にガンシクロビル(GCV)の存在下で難治性不死化細胞の小部分を死滅させるための単純ヘルペスウイルス1-チミジンキナーゼ(HSV-TK)自殺遺伝子を含めた。タモキシフェン依存性Creリコンビナーゼもまた、癌遺伝子の制御された切除を達成するために組み込まれている。
【0210】
Tet-OnおよびTet-Off
条件付き不死化は、転写調節系の使用によっても達成されている。最も広く使用されているのは、原核生物テトラサイクリン抑制系を使用して誘導されたものである。転写調節系は、抗生物質(テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)の不在下でテトラサイクリンオペレーター(tetO)と呼ばれる配列に結合するtetリプレッサー(tetR)タンパク質を利用する。抗生物質が存在する場合、それはリプレッサーに結合し、それによってリプレッサーのtetOへの結合を阻害する。
【0211】
条件付き不死化に利用可能な最初の系は「Tet-Off」と呼ばれ、HeLa細胞で開発された。この系では、tetリプレッサー結合部位は、リプレッサーの結合が転写を立体的に遮断するように、プロモーターと転写開始部位との間に挿入される。しかしながら、立体障害は、tetRのtetOへの結合を防止する少量のテトラサイクリンおよびドキシサイクリンの添加によって克服され、それによってレポーター遺伝子発現が誘導される。
【0212】
代替として、「Tet-On」系を、tetRを単純ヘルペスウイルス(HSV)由来のウイルス粒子タンパク質16(VP16)のC末端活性化ドメインと融合することによって作製し、それにより、tetO配列に融合したプロモーターを刺激するハイブリッド転写活性化因子(tTA)を作製した。4つのアミノ酸の改変により、テトラサイクリンまたはドキシサイクリンの存在下でのみtetOに結合する逆テトラサイクリントランスアクチベーター(rtTA)が得られた。癌遺伝子(c-MycおよびTag)およびテロメラーゼ(hTERT)を、マウス胚線維芽細胞(MEF)、マウス腎臓細胞(293T)、マウス胚性幹細胞およびヒト内皮細胞について、Tetベースの不死化システムで最初に試験した。更に、間葉系間質細胞(MSC)は、テトラサイクリン誘導性システムで不死化されている。テトラサイクリン誘導性hTERT発現MSC細胞株は多分化能を保持することが見出され、不死化はテロメア伸長に依存していた。条件付き不死化MSC株を、ドキシサイクリン/テトラサイクリン誘導(Tet-On)系と組み合わせたTag-hTERTのレンチウイルストランスフェクションによって作製した(Kochら、Genome Res.、2013;23:248-259(2013))。これらの細胞を使用して、老化関連DNAメチル化(SA-DNAm)の変化を研究し、老化の兆候なしに80日間培養で維持することができた。培地中のドキシサイクリンを除去すると、直ちに増殖が停止し、老化関連β-ガラクトシダーゼが更に発現した。細胞が抗生物質に曝露され、SA-DNAmの影響を受けなかった場合、テロメア長は有意に増加した。
【0213】
細胞媒体を改変する方法
上記の操作された細胞媒体を作製するためなどの、細胞を操作するいくつかの方法が当技術分野で既知である。このような方法には、限定されるものではないが、以下が含まれる:
【0214】
(a)CRISPR-CAS9標的化抑制(永続的な遺伝子/遺伝子座の欠失)。細胞媒体を、CAS9タンパク質と目的の遺伝子に特異的なガイドRNA(gRNA)の両方を発現するDNAプラスミドでトランスフェクトすることができる。ゲノムのgRNA-CAS9媒介切断は、ドナーDNAプラスミドを使用して修復でき、これにより、標的化遺伝子が特異的に欠失し、遺伝子にコードされたタンパク質が永続的かつ完全に失われる。タンパク質発現の喪失は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、またはウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0215】
(b)CRISPR-CAS9標的化発現(永続的な遺伝子/遺伝子座の挿入)
この方法を使用して、目的の遺伝子を細胞媒体ゲノムの特定の位置に挿入することができる。細胞媒体を、CAS9タンパク質と特定の挿入位置に特異的なガイドRNA(gRNA)の両方を発現するDNAプラスミドでトランスフェクトすることができる。ゲノムのgRNA-CAS9媒介切断は、ドナーDNAプラスミドを使用して修復でき、このプラスミドは、DNA切断/二本鎖切断の位置の両側に細胞媒体ゲノムの配列が隣接する目的の挿入遺伝子を有し、ランダムではなく、特定のゲノム位置への目的の遺伝子の相同組換え媒介挿入を引き起こす。成功した挿入およびタンパク質発現は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、または例えば、ウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0216】
(c)RNA干渉(shRNA/マイクロRNAのレトロウイルス/レンチウイルス/トランスポゾン媒介形質導入)(永久遺伝子抑制)目的の特定の遺伝子/タンパク質を標的とするshRNA/マイクロRNAを設計し、細胞媒体ゲノムへの安定な組み込みのためにレトロウイルス/レンチウイルス/トランスポゾンベクターにクローニングすることができる。細胞媒体をベクターで形質導入することができ、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して、形質導入された細胞を選択することができる。目的の遺伝子のshRNA媒介抑制は、例えばノーザンブロットおよびタンパク質アッセイを使用して評価できる。
【0217】
(d)レンチウイルス/γ-レトロウイルス媒介ランダム/マルチコピー遺伝子挿入
細胞媒体ゲノムへの安定なランダム組込みのために、目的の特定の遺伝子/タンパク質を、レトロウイルスまたはレンチウイルスベクターに設計および/またはクローニングすることができる。細胞媒体をウイルスベクターで形質導入することができ、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して、形質導入された細胞を選択することができる。目的の遺伝子のshRNA媒介抑制は、ノーザンブロット、ならびに例えばウエスタンブロットおよびフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して評価される。
【0218】
(e)トランスポゾン媒介ランダム/マルチコピー遺伝子挿入
目的の特定の遺伝子/タンパク質を、PiggyBac(SBI System Biosciences)または等価なものなどの哺乳動物トランスポゾンベクター系に設計および/またはクローニングすることができる。細胞媒体を、逆方向末端反復(ITR)配列およびトランスポサーゼベクターが隣接する目的の遺伝子(cDNA)を含むトランスポゾンベクターでコトランスフェクトすることができる。トランスポサーゼ酵素は、目的の遺伝子のTTAA染色体組込み部位への移入を媒介することができる。形質導入された細胞を、任意に、ベクターにコードされた選択マーカーを使用して選択することができる。挿入およびタンパク質発現は、PCR(DNAレベル)、ノーザンブロット/FISH(RNAレベル)、または例えば、ウエスタンブロットもしくはフローサイトメトリーなどの任意のタンパク質アッセイを使用して検証できる。
【0219】
(f)目的のタンパク質の発現の一過的遺伝子抑制は、例えば、RNA干渉を介して達成することができる。siRNA/マイクロRNAを、当技術分野で既知の確立された方法論、例えば:塩化カルシウムトランスフェクション;リポフェクション;Xfect;電気穿孔;ソノポレーションおよび細胞圧搾(例えば、siRNAを導入するため)のいずれかによって細胞媒体にトランスフェクトすることができる。
【0220】
(g)一過的遺伝子発現は、例えば、目的の遺伝子を、所望の産物をコードするプラスミドDNAを有する細胞媒体にトランスフェクトすることができる適切な哺乳動物プラスミド発現ベクターにクローニングすることによって達成することができる。あるいは、目的の遺伝子/タンパク質をコードするmRNAを細胞媒体に直接トランスフェクトすることができる。トランスフェクションは、確立された方法論、例えば:塩化カルシウムトランスフェクション;リポフェクション;Xfect;電気穿孔;ソノポレーションおよび細胞圧搾(例えば、siRNAを導入するため)のいずれかを使用して実施することができる。
【0221】
2.ウイルス
上記のように選択および/または改変された担体細胞を、腫瘍溶解特性を有すると特定された任意のウイルスを用いたウイルス療法に使用することができる。本明細書で提供される方法、組み合わせおよび組成物で使用することができる例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、以下の通りである:
【0222】
ウイルスの種類
腫瘍溶解性ウイルスは、主に腫瘍細胞特異的複製を特徴とし、腫瘍細胞溶解および効率的な腫瘍退縮をもたらす。腫瘍溶解性ウイルスは、循環腫瘍細胞などの転移性腫瘍細胞を含む腫瘍細胞にコロニー形成または蓄積し、そこで複製することによって処置を行う。方法、組成物および組み合わせは、任意の抗がんワクチンまたはウイルスを用いて実施することができる。例えば、腫瘍溶解性ウイルスは、限定されるものではないが、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルスおよびシンドビスウイルスなどの任意の天然に存在するまたは操作された組換えウイルスであることができる。多くの場合、腫瘍選択性は、ワクシニアウイルスおよびその他の腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルスの固有の特性である。一般に、腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍または腫瘍細胞で複製して、溶解をもたらすことによって処置を行う。
【0223】
いくつかの実施形態では、病原性ウイルスに由来する弱毒化株が、生ワクチンの製造に使用される。ワクシニアウイルスの非限定的な例としては、限定されるものではないが、Lister(Elstreeとしても知られている)、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、Dairen、Ikeda、LC16M8、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Tashkent、Tian Tan、Wyeth、Dryvax、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、Dairen I、LIPV、LC16M0、LIVP、WR 65-16、EM63、Bern、Paris、CVA382、NYVAC、ACAM2000、ACAM1000、およびConnaught株が挙げられる。ウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスのクローン株であることができる。発色団産生酵素をコードするヌクレオチドの配列を、未改変腫瘍溶解性ウイルスのゲノム内の非必須遺伝子もしくは領域にもしくはその代わりに挿入することができる、または未改変腫瘍溶解性ウイルスのゲノム内の異種遺伝子産物をコードする核酸にもしくはその代わりに挿入する。
【0224】
いくつかの実施形態では、本発明において細胞と共におよび方法において使用されるワクシニアウイルスが、弱毒化ニューヨーク市保健局(NYCBOH)株である。いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスのNYCBOH株が、ATCC VR-118またはCJ-MVB-SPXであることができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、コペンハーゲン、ウエスタンリザーブまたは改変ワクシニアAnkara(MVA)から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスが、これらの株のうちの1つ以上に存在するいずれの遺伝子も欠損していない。
【0226】
いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが複製能力のあるウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが複製欠損である。いくつかの実施形態では、ウイルスまたはワクチンが弱毒化されていない。他の実施形態では、ウイルスまたはワクチンが弱毒化されている。
【0227】
他の未改変腫瘍溶解性ウイルスには、GLV-1h68、JX-594、JX-954、ColoAd1、MV-CEA、MV-NIS、ONYX-015、B18R、H101、OncoVEX GM-CSF、Reolysin、NTX-010、CCTG-102、Cavatak、OncorineおよびTNFeradeと呼ばれるウイルスの中から選択されるものを含む、当業者に既知の任意のものが含まれる。
【0228】
本明細書で提供される方法で使用するための腫瘍溶解性ウイルスには、当業者に周知のいくつかが含まれ、例えば、水疱性口内炎ウイルス、例えば、米国特許第7,731,974号、同第第7,153,510号、同第6,653,103号および米国特許出願公開第2010/0178684号、同第2010/0172877号、同第2010/0113567号、同第2007/0098743号、同第20050260601号、同第20050220818号および欧州特許第1385466号、同第1606411号および同第1520175号参照;単純ヘルペスウイルス、例えば、米国特許第7,897,146号、同第7731,952号、同第7,550,296号、同第7,537,924号、同第6,723,316号、同第6,428,968号ならびに米国特許出願公開第2011/0177032号、同第2011/0158948号、同第2010/0092515号、同第2009/0274728号、同第2009/0285860号、同第2009/0215147号、同第2009/0010889号、同第2007/0110720号、同第2006/0039894号および同第20040009604号参照;レトロウイルス、例えば、米国特許第6,689,871号、同第第6,635,472号、同第6,639,139号、同第5,851,529号、同第5,716,826号、同第5,716,613号および米国特許出願公開第20110212530号参照;およびアデノ随伴ウイルス、例えば、米国特許第8,007,780号、同第7,968,340号、同第7,943,374号、同第7,906,111号、同第7,927,585号、同第7,811,814号、同第7,662,627号、同第7,241,447号、同第7,238,526号、同第7,172,893号、同第7,033,826号、同第7,001,765号、同第6,897,045号および同第6,632,670号参照が含まれる。
【0229】
ニューカッスル病ウイルス
ニューカッスル病ウイルス(NDV)は、家禽に感染し、一般にヒトに対して非病原性であるが、インフルエンザ様症状を引き起こすことができる、マイナス極性の一本鎖RNAゲノムを有する鳥類パラミクソウイルスである(Tayebら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:49-62;Chengら(2016)J.Virol.90:5343-5352)。その細胞質複製、宿主ゲノムの組込みおよび組換えの欠如、ならびに高いゲノム安定性により、NDVおよび他のパラミクソウイルスは、レトロウイルスまたは一部のDNAウイルスなどの他の腫瘍溶解性ウイルスに対してより安全で魅力的な代替を提供する(Matveevaら(2015)Molecular Therapy-Oncolytics 2,150017)。NDVは腫瘍選択性を示し、腫瘍細胞での複製が正常細胞の10,000倍であり、直接的な細胞変性効果および免疫応答の誘導により腫瘍溶解を引き起こす(Tayebら(2015;Lamら(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology,Article ID 718710)。NDVの腫瘍選択性の機構は完全には明らかではないが、インターフェロン産生の欠陥および腫瘍細胞におけるIFNシグナル伝達への応答により、ウイルスが複製および拡散することが可能になる(Chengら(2016);Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21-30)。がん細胞に対するパラミクソウイルスの高い親和性はまた、シアル酸を含むがん細胞表面でのウイルス受容体の過剰発現によることができる(Chengら(2016);Matveevaら(2015);Tayebら(2015))。
【0230】
非操作NDV株は、ニワトリでの病原性に基づいて、長潜伏期性(非病原性)、亜病原性(中程度)または短潜伏期性(病原性)に分類され、短潜伏期性および亜病原性株は、複数のヒトがん細胞で複製(およびこれを溶解)することができるが、長潜伏期性株はできない(Chengら(2016);Matveevaら(2015))。NDV株はまた、溶解性または非溶解性に分類され、溶解性株のみが生存可能で感染性の子孫を産生することができる(Gintingら(2017);Matveevaら(2015))。他方、非溶解性株の腫瘍溶解効果は、主に、抗腫瘍活性をもたらす免疫応答を刺激する能力に起因する(Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21-30)。腫瘍療法で一般的に使用される亜病原性溶解株には、PV701(MK107)、MTH-68/Hおよび73-Tが含まれ、一般的に使用される長潜伏期性非溶解性株にはHUJ、UlsterおよびHitchner-B1が含まれる(Tayebら(2015);Lamら(2011);Freemanら(2006)Mol.Ther.13(1):221-228)。
【0231】
腫瘍溶解性ウイルスとしてのNDVの使用は、アデノウイルスおよびNDVが子宮癌に直接注射され、部分的な壊死を引き起こした1950年代初頭に最初に報告された。おそらくウイルスに対する中和抗体の産生による腫瘍溶解活性の抑制が原因で、腫瘍再成長が観察された(Lamら(2011)Journal of Biomedicine and Biotechnology,Article ID 718710)。最近では、NDV株PV701が、第1相試験で結腸直腸がんに対する活性を示し(Laurieら(2006)Clin.Cancer Res.12(8):2555-2562)、NDV株73-Tが、線維肉腫、骨肉腫、神経芽細胞腫および子宮頸がんを含むさまざまなヒトがん細胞株に対するインビトロ腫瘍溶解活性、ならびにヒト神経芽細胞腫、線維肉腫異種移植片、および結腸がん、肺がん、乳がんおよび前立腺癌異種移植片を含むいくつかのがん異種移植片を有するマウスにおけるインビボ治療効果を実証した(Lamら(2011))。NDV株MTH-68/Hは、PC12、MCF7、HCT116、DU-145、HT-29、A431、HELAおよびPC3細胞を含む腫瘍細胞株の有意な退縮をもたらし、吸入によって投与された場合に進行がん患者で有利な応答を実証した(Lamら(2011))。非溶解性株Ulsterは、結腸癌に対する細胞傷害性効果を実証し、溶解性株Italienはヒト黒色腫を有効に殺傷した(Lamら(2011))。長潜伏期性NDV株HUJは、患者に静脈内投与した場合、再発性多形性膠芽腫に対する腫瘍溶解活性を実証し、長潜伏期性株LaSotaは、結腸直腸がん患者の生存期間を延長し(Lamら(2011);Freemanら(2006)Mol.Ther.13(1):221-228)、非小細胞肺癌(A549)、神経膠芽腫(U87MGおよびT98G)、乳腺腺癌(MCF7およびMDA-MB-453)および肝細胞癌(Huh7)細胞株に感染し、これらを殺傷することができた(Gintingら(2017)Oncolytic Virotherapy 6:21-30)。
【0232】
遺伝子操作されたNDV株も腫瘍溶解療法について評価されてきた。例えば、IFNアンタゴニストであるインフルエンザNS1遺伝子が、NDV株Hitchner-B1のゲノムに導入され、さまざまなヒト腫瘍細胞株およびB16黒色腫のマウスモデルで増強された腫瘍溶解効果をもたらした(Tayebら(2015))。NDVの抗腫瘍/免疫刺激効果は、ウイルスゲノムへのIL-2またはGM-CSF遺伝子の導入によって増強された(Lamら(2011))。
【0233】
遊離ウイルスの使用に加えて、研究では、がん治療のためのNDV腫瘍溶解産物、NDV感染細胞ベースの媒体、および他の非がん剤との併用療法の使用が評価された。いくつかの臨床試験で、NDV腫瘍溶解産物が、悪性黒色腫に対する腫瘍溶解活性を実証した(Lamら(2011))。NDV感染細胞ベースの担体の使用も実証されている。NDVに感染した自家腫瘍細胞株が、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、腎臓がん、頭頸部がんおよび神経膠芽腫に対して使用された(Lamら(2011))。NDV株MTH-68/Hに感染した骨髄、脂肪および臍帯由来のMSCは、ウイルスを、共培養したA172およびU87神経膠腫細胞および神経膠腫幹細胞に送達し、神経膠腫細胞における用量依存的細胞死、神経膠腫幹細胞における低レベルのアポトーシスおよび自己再生の阻害、ならびにネイキッドウイルスによる直接感染よりも高レベルのアポトーシスをもたらした(Kazimirskyら(2016)Stem Cell Research&Therapy 7:149)。腫瘍内NDV注射と全身CTLA-4抗体投与を使用した併用療法は、事前に確立された遠隔腫瘍の効率的な拒絶をもたらした(Matveevaら(2015))。
【0234】
マラバウイルス
マラバウイルスは、ブラジルで最初にアマゾンバエ(Amazonian phlebotomine)から分離され、南アメリカ以外ではこれまで検出されていない。系統学的に、マラバウイルスは、ラブドウイルス科のベシキュロウイルス属に属し、原型的な水疱性口内炎ウイルス(VSV)と遺伝的に異なるが、いくらかの相同性を共有する。(Polら、Oncolytic Virother.、7:117-128(2018)およびそこに引用されている参考文献を参照(それらの内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる))
【0235】
腫瘍溶解性マラバウイルスについてスクリーニングされた20株のラブドウイルスの中で、最も広い腫瘍親和性を示した。ウイルスは、試験された様々ながん型に由来する全てのヒトおよびマウス細胞株(すなわち、乳がん、脳がん、結腸がん、皮膚がん、肺がん、卵巣がん、乳がん、前立腺癌および腎臓がん)において、溶解サイクル(lytic cycle)を完了する唯一の候補であった。マラバウイルス(VSVなど)は、標的細胞への侵入のために遍在性低密度リポタンパク質受容体(LDLR)を利用するが、これに限定されず、感染した広範囲の悪性細胞宿主について1つの説明を提供する。これと一致して、LDLRの発現低下は、卵巣がん患者の腹水に由来するいくつかの細胞株におけるマラバウイルス侵入および死滅に対する感受性の低下と関連していた。
【0236】
悪性細胞におけるマラバウイルス複製を増強するために、そのゲノムを遺伝子操作した。MおよびGタンパク質の配列におけるL123WおよびQ242R置換にそれぞれ翻訳される2つの単一突然変異を導入した。インビトロでは、得られた株(MG1と命名)は、野生型(wt)およびマラバウイルスの他の突然変異株と比較して、より速い複製、より大きなバーストサイズ、および腫瘍細胞における殺傷効力の増加を示した。逆に、MG1は正常な初代細胞において強く減弱し、その癌選択性を確認した(Brunら、Mol.Ther.18(8):1440-1449(2010))。
【0237】
インビトロでは、MG1腫瘍溶解活性は、ヒト、イヌおよびマウス起源の複数の接着性がん細胞株(例えば、中枢神経系がん、肉腫、乳がんおよび結腸がんの起源)に対して検証されている。更に、MG1は、ステージにかかわらず、卵巣がん細胞に感染し、複製し、細胞死を誘導することができることが見出された(Tongら、Mol.Ther.Oncolytics,2():15013)。エクスビボでは、MG1株は、前立腺癌、頭頸部扁平上皮癌、または肉腫に由来する切除組織に対して増殖性感染および有意な細胞変性効果を示すことが分かった。インビボでは、MG1を全身に安全に送達することができ、限局性だけでなく播種性癌性病変の処置も可能になる。MG1の腫瘍溶解活性が、複数の同系マウス腫瘍モデルにおいて、また、免疫不全マウスに移植されるヒトがん細胞株または患者由来腫瘍を使用する異種移植片モデルにおいて確認された(例えば、マウスにおいて:結腸がん(CT26、CT26lacZ)、白血病(L1210)、肺がん(TC1)、乳腺癌(EO771、EMT6、4T1)、前立腺癌(TRAMP-C2)、肉腫(S180)、皮膚がん(B16F10、B16F10Ova、B16lacz);ヒトにおいて:乳がん(HCI-001、HCI-003)および卵巣がん(ES2、OVCAR4)。
【0238】
マラバベシキュロウイルスのMG1株の活性は、直接的な細胞傷害性だけでなく、自然および適応抗腫瘍免疫の両方の誘導にも依存する。したがって、マラバウイルスは、選択的腫瘍破壊腫瘍溶解性ウイルスおよび免疫刺激T細胞ワクチンの両方として機能することができる。健康な細胞が影響を受けないままにして、Marabaプラットフォームはがん細胞を直接攻撃し、腫瘍微小環境を変化させて、がんを標的ワクチン誘導性免疫応答の影響を受けやすくする。この技術は、臨床段階の免疫腫瘍学企業であるTurnstone Biologics(オンタリオ州オタワ)によって開発され、最近、最大3つのTurnstoneの次世代腫瘍溶解性ウイルス免疫療法をライセンスするための独占的オプションに関する研究、オプションおよびライセンス契約をAbbVie(イリノイ州ノースシカゴ)と締結した。
【0239】
パルボウイルス
H-1パルボウイルス(H-1PV)は、パルボウイルス(Parvoviridae)科に属する小さな非エンベロープ一本鎖DNAウイルスであり、その天然の宿主はラットである(Angelovaら(2017)Front.Oncol.7:93;Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVは、ヒトに対して非病原性であり、その好ましい安全性プロファイル、ヒトにおける既存のH-1PV免疫の欠如、および宿主細胞ゲノム組込みの欠如により、腫瘍溶解性ウイルスとして魅力的である(Angelovaら(2015))。H-1PVは、乳がん、胃がん、子宮頸がん、脳がん、膵臓がんおよび結腸直腸がんの前臨床型を含む固形腫瘍とリンパ腫および白血病を含む血液悪性腫瘍の両方に対する広範な腫瘍抑制能を実証した(Angelovaら(2017)Front.Oncol.7:93;Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVは、腫瘍関連抗原の提示の増加、樹状細胞の成熟、および炎症誘発性サイトカインの放出を介して抗腫瘍応答を刺激する(Moehlerら(2014)Frontiers in Oncology 4:92)。H-1PVはまた、細胞複製および転写因子の利用可能性、NS1パルボウイルスタンパク質と相互作用する細胞タンパク質の過剰発現、ならびに正常細胞ではなく腫瘍細胞でのNS1の機能的調節に関与する代謝経路の活性化に起因すると考えられる腫瘍選択性を示す(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVの無害な性質のため、野生型株がしばしば使用され、遺伝子操作による弱毒化の必要性を否定する(Angelovaら(2015))。
【0240】
研究によって、ヒト神経膠腫細胞の腫瘍溶解性H-1PV感染が効率的な細胞殺傷をもたらし、高悪性度神経膠腫幹細胞モデルも溶解性H-1PV感染に許容性であることが示された。腫瘍細胞照射の直後にウイルスを施用した場合、神経膠腫細胞の殺傷増強が観察され、このプロトコルが切除不能な再発性神経膠芽腫に有用となることができることを示している(Angelovaら(2017)Front.Oncol.7:93;Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。脳内または全身H-1PV注射は、同所性RG-2腫瘍を有する免疫適格性ラット、ならびにヒトU87神経膠腫を移植された免疫不全動物において、毒性副作用なしに神経膠腫の退縮をもたらした(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。Del H-1PVは、感染力が高く、ヒト形質転換細胞株に拡散する適合性変異株であり、膵臓がんおよび子宮頸癌の異種移植モデルにおいてインビボで腫瘍溶解効果を実証した(Geissら(2017)Viruses 9,301)。H-1PVはまた、5つのヒト骨肉腫細胞株(CAL 72、H-OS、MG-63、SaOS-2、U-2OS)のパネル(Geissら(2017)Viruses 9,301)およびヒト黒色腫細胞(SK29-Mel-1、SK29-Mel-1.22)(Moehlerら(2014)Frontiers in Oncology 4:92)に対する腫瘍溶解活性も実証した。別の研究では、子宮頸癌異種移植片を有するヌードラットが、H-1PVによる処置後に用量依存的な腫瘍成長停止および退縮を実証した(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。H-1PVの腫瘍内および静脈内投与も、免疫不全マウスのヒト乳癌異種移植片における有意な成長抑制を実証した(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。ヒト胃癌またはヒトバーキットリンパ腫を有するマウスへの腫瘍内H-1PV注射は、腫瘍退縮および成長抑制をもたらした(Angelovaら(2015)Frontiers in Bioengineering and Biotechnology 3:55)。
【0241】
再発性多形性膠芽腫患者における腫瘍溶解性H-1PV(ParvOryx01)の最初の第I/IIa相臨床試験は2015年に完了し(臨床試験NCT01301430)、好ましい無増悪生存期間、臨床的安全性、および腫瘍内または静脈内注射による患者の忍容性を実証した(Angelovaら(2017);Geissら(2017)Viruses 9,301;Geletnekyら(2017)Mol.Ther.25(12):2620-2634)。この試験は、H-1PVが用量依存的に血液脳関門を通過し、主にCD8+およびCD4+Tリンパ球による白血球浸潤を特徴とする免疫原性抗腫瘍応答、ならびにパーフォリン、グランザイムB、IFNγ、IL-2、CD25およびCD40Lを含む免疫細胞活性化のいくつかのマーカーの局所処置された腫瘍での検出を確立する能力を実証した(Geletnekyら(2017)Mol.Ther.25(12):2620-2634)。
【0242】
H-1PVはまた、ゲムシタビンに耐性の細胞を含む、インビトロでの高度に侵攻性の膵管腺癌(PDAC)細胞の効率的な殺傷を実証し、H-1PVの腫瘍内注射は、PDACの同所性ラットモデルにおいて腫瘍退縮および動物生存の延長をもたらした(Angelovaら(2017);Angelovaら(2015))。選択的腫瘍標的化および毒性の欠如を含む同様の結果が、免疫不全ヌードラットPDACモデルで観察された(Angelovaら(2015))。H-1PVと細胞増殖抑制剤(シスプラチン、ビンクリスチン)または標的化(スニチニブ)薬の組み合わせは、ヒト黒色腫細胞におけるアポトーシスの相乗的誘導をもたらす(Moehlerら(2014))。H-1PVと、HDAC阻害剤であるバルプロ酸の組み合わせは、子宮頸部細胞および膵臓細胞に対する相乗的な細胞傷害性をもたらし(Angelovaら(2017))、ゲムシタビンの治療効率は、2段階プロトコルでH-1PVと組み合わせた場合に有意に改善された(Angelovaら(2015))。他のウイルスと同様に、H-1PVも抗がん分子を発現するように操作することができる。例えば、研究によって、アポプチンを発現するパルボウイルスH1由来ベクターが、野生型H-1PVよりもアポトーシスを誘導する能力が高いことが示された(Geissら(2017))。
【0243】
他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、パルボウイルスの治療能は、パルボウイルスを認識する細胞表面受容体の遍在的発現による非特異的取り込み、および反復投与後の中和抗体の発生によって制限される。H-1PVは、細胞ベースの媒体と組み合わせると、これらの潜在的な課題を回避して、抗腫瘍効果を実証した。ある研究では、自家MH3924Aラットヘパトーマ細胞が、H-1PVの標的化送達、および同じ細胞によって形成される転移の抑制に使用された(Raykovら(2004)Int.J.Cancer 109:742-749)。ヘパトーマ細胞は、H-1PV感染の24時間後にγ線照射によって不活化されたが、これは子孫ウイルスの収量を2分の1以下にしか減少させなかった。直接ウイルス注射と比較して、媒体細胞ベースの療法は、転移の抑制の改善およびより少ない中和抗体の産生をもたらし、腫瘍溶解性パルボウイルスを全身送達するための担体細胞の使用を支持する(Raykovら(2004))。
【0244】
麻疹ウイルス
麻疹ウイルス(MV)は、パラミクソウイルス(Paramyxoviruses)のファミリーに属するマイナスセンスゲノムを有するエンベロープ一本鎖RNAウイルスである(Arefら(2016)Viruses 8:294;Hutzenら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:109-118)。その非セグメント化ゲノムは安定であり、突然変異して病原性型に戻るリスクが低く、細胞質での複製により、感染細胞での挿入DNA突然変異誘発のリスクがない(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。MVは、1954年にEdmonstonと呼ばれる患者から最初に分離され、優れた安全性プロファイルを備えた生ワクチンへと開発され、これは、複数のインビトロ継代後の弱毒化により、50年間で世界中の10億人以上の個体を保護した(Arefら(2016)Viruses 8:294;Hutzenら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:109-118)。MV-Edmとして示されるこの株の誘導株は、腫瘍溶解療法の研究で最も一般的に使用されているMV菌株である。Schwarz/Moraten麻疹ワクチン株は、Edm誘導株よりも弱毒化され、免疫原性が高いため、より安全で免疫調節性が高くなっている(Veinaldeら(2017)Oncoimmunology 6(4):e1285992)。野生型MVの腫瘍溶解効果は、1970年代に記述され、急性リンパ芽球性白血病、バーキットリンパ腫およびホジキンリンパ腫の患者の改善が報告されている(Arefら(2016))。
【0245】
MVは、標的細胞への侵入に3つの主要な受容体を使用する:CD46、ネクチン-4およびシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。活性化B細胞およびT細胞、未成熟胸腺細胞、単球ならびに樹状細胞で発現されるSLAMが野生型株の主な受容体であるが、弱毒化された腫瘍選択的MV-Edm株は、多くの腫瘍細胞で過剰発現される補体活性化の調節因子であるCD46受容体を主に標的化する(Arefら(2016);Hutzenら(2015);Jacobsonら(2017)Oncotarget 8(38):63096-63109;Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。呼吸上皮で主に発現されるネクチン-4は、野生型株と弱毒化MV株の両方によって使用される(Arefら(2016);Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、腫瘍細胞のIFN抗ウイルス応答の欠陥も、MVの腫瘍選択性を促進する(Arefら(2016);Jacobsonら(2017)Oncotarget 8(38):63096-63109。MVは、多発性骨髄腫(NCT02192775、NCT00450814)、頭頸部がん(NCT01846091)、中皮腫(NCT01503177)および卵巣がん(NCT00408590、NCT02364713)を含むいくつかのがんの処置のための臨床試験で研究されている。
【0246】
MVは、例えば、IL-13、INF-β、GM-CSFおよびヘリコバクター・ピロリ(Heliobacter pylori)好中球活性化タンパク質(NAP)をコードする遺伝子を含む免疫刺激遺伝子および免疫調節遺伝子を発現するように遺伝子操作されてきた(Arefら(2016),Hutzenら(2015);Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。腫瘍溶解性MVと抗CTLA4および抗PD-L1抗体を使用した併用療法は、黒色腫マウスモデルで有効であったことが示されている(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。広範なワクチン接種または以前の自然感染のために、ほとんどの患者はMVに対する以前の免疫を有しており、これがその治療能を妨げる。これを回避するために、MVが間葉系幹細胞などの担体細胞で腫瘍に送達され、宿主中和抗体を有効に回避し、急性リンパ芽球性白血病、肝細胞癌および卵巣癌の前臨床モデルで有効であることが分かっている(Arefら(2016))。U-937単球細胞株、未成熟および成熟初代樹状細胞、PMBC、活性化T細胞、初代CD14+細胞、多発性骨髄腫MM1細胞株ならびに血管内皮前駆細胞(blood outgrowth endothelial cell)を含む他のいくつかの細胞担体が、MVの送達についての結果を実証している(Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。臨床試験(NCT02068794)は、再発性卵巣がん患者の処置における腫瘍溶解性MV感染間葉系幹細胞の使用を研究してきた。既存の免疫を克服するための別の戦略には、MV療法とシクロホスファミドなどの免疫抑制剤の組み合わせが含まれる(Hutzenら(2015))。
【0247】
MV-CEA
腫瘍マーカーである癌胎児抗原(CEA)を発現するように遺伝子操作されたMV-CEAは、がん細胞の感染後に患者の血流にCEAを放出し、CEAレベルの検出、よってインビボウイルス感染の追跡を可能にする(Arefら(2016);Hutzenら(2015))。MV-CEAの治療能は前臨床的に実証されており、卵巣がんの処置に関する第I相臨床試験(NCT00408590)で調査された。
【0248】
MV-NIS
MV-NISは、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)を発現するように操作されている、Edmonstonワクチン系統の別の追跡可能な腫瘍溶解性MVであり、MV-CEA構築物のようなヌクレオカプシド(N)遺伝子の上流の代わりに、MVゲノムのヘマグルチニン(H)遺伝子の下流でのNIS導入遺伝子の配置により、MV-CEAと比較して優れたウイルス増幅を示す(Arefら(2016);Galanisら(2015)Cancer Res.75(1):22-30)。123I、124I、125I、131Iおよび99mTcなどの放射性同位元素は、MV-NIS感染細胞で発現されるNISを介して輸送され、例えば、PET、SPECT/CTおよびγカメラなどを使用した非侵襲的イメージングを可能にする(Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。NISの発現は、放射性ウイルス療法のためのI-131などのβ放出放射性同位元素の腫瘍細胞への侵入を促進することによって腫瘍溶解性MVの有効性を改善することもでき、多発性骨髄腫、多発性膠芽腫、頭頸部がん、甲状腺未分化がんおよび前立腺癌モデルで前臨床的に結果を実証している(Arefら(2016);Hutzenら(2015);Msaouelら(2013))。多発性骨髄腫(NCT00450814、NCT02192775)、中皮腫(NCT01503177)、頭頸部がん(NCT01846091)、およびウイルス感染MSCを使用した卵巣がん(NCT02068794)におけるMV-NISの使用を調査するために、いくつかの第I/II相臨床試験を実施した。
【0249】
レオウイルス
レオウイルスとして一般的に知られている呼吸器腸オーファンウイルスは、ヒトに対して非病原性であるレオウイルス(Reoviridae)科の非エンベロープ二本鎖RNAウイルスである。野生型レオウイルスは環境全体に遍在しており、一般集団で70~100%の血清陽性をもたらす(Gongら(2016)World J.Methodol.6(1):25-42)。レオウイルスには、1型Lang、2型Jones、3型Abneyおよび3型Dearing(T3D)の3種の血清型がある。T3Dは、前臨床および臨床研究で最も一般的に使用されている天然に存在する腫瘍溶解性レオウイルス血清型である。
【0250】
腫瘍溶解性レオウイルスは、がん細胞に特徴的な活性化Rasシグナル伝達により、腫瘍選択的である(Gongら(2016));Zhaoら(2016)Mol.Cancer Ther.15(5):767-773)。Rasシグナル伝達経路の活性化は、ウイルスタンパク質合成の防止を通常担うタンパク質であるdsRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)のリン酸化を阻害することによって、細胞の抗ウイルス応答を破壊する(Zhaoら(2016))。Ras活性化はまた、ウイルス脱殻および脱集合を増強し、ウイルス子孫産生および感染力を増強し、アポトーシス増強を通して子孫の放出を促進する(Zhaoら(2016))。全てのヒト腫瘍のおよそ30%が異常なRasシグナル伝達を示すと推定されている(Zhaoら(2016))。例えば、悪性神経膠腫の大部分は活性化Rasシグナル伝達経路を有し、レオウイルスはインビトロで悪性神経膠腫細胞の83%、ならびにインビボでヒト悪性神経膠腫モデルで、およびエクスビボで神経膠腫標本の100%で抗腫瘍活性を実証している(Gongら(2016)World J.Methodol.6(1):25-42)。更に、膵臓腺癌はRas突然変異の発生率が非常に高く(およそ90%)、レオウイルスはインビトロで試験した膵臓細胞株の100%で強力な細胞傷害性を示し、インビボで皮下腫瘍マウスモデルの100%で退縮を誘導した(Gongら(2016))。
【0251】
レオウイルスは、結腸がん、乳がん、卵巣がん、肺がん、皮膚がん(黒色腫)、神経がん、血液がん、前立腺癌、膀胱がんおよび頭頸部がんを含む範囲の悪性腫瘍にわたって前臨床的に広範な抗がん活性を実証している(Gongら(2016))。レオウイルス療法は現在、放射線療法、化学療法、免疫療法および外科手術と組み合わせて試験された。レオウイルスと放射線療法の組み合わせは、インビトロでの頭頸部、結腸直腸および乳がん細胞株、ならびにインビボでの結腸直腸がんおよび黒色腫モデルの処置に有益であることが分かっている(Gongら(2016))。レオウイルスおよびゲムシタビン、ならびにレオウイルス、パクリタキセルおよびシスプラチンの組み合わせが、マウス腫瘍モデルで成功することが分かっている(Zhaoら(2016))。B16黒色腫マウスモデルの前臨床研究は、腫瘍溶解性レオウイルスと抗PD-1療法の組み合わせが、レオウイルス単独と比較して抗がん有効性を改善することを示した(Gongら(2016);Zhaoら(2016);Kempら(2015)Viruses 8,4)。
【0252】
レオウイルスを用いた多数の臨床試験が行われている。Reolysin(登録商標)レオウイルス Oncolytics Biotech Inc.)は、単独で悪性腫瘍に対して抗がん活性を示し、他の治療薬と組み合わせて抗がん活性を示した。例えば、再発性悪性神経膠腫の処置のためのReolysin(登録商標)レオウイルスの第I相臨床試験(NCT00528684)では、レオウイルスの忍容性が良好であることが分かり、第I/II相試験は、Reolysin(登録商標)が、プラチナ製剤化学療法に反応しなかった卵巣上皮癌、原発性腹膜がんおよび卵管がんの患者で正常細胞を損傷することなく腫瘍細胞を殺傷することができることを示した(NCT00602277)。Reolysin(登録商標)レオウイルスの第II相臨床試験は、これが肺に転移性の骨および軟部組織肉腫の患者の処置に安全で有効であることを示した(NCT00503295)。FOLFIRIおよびベバシズマブと組み合わせたReolysin(登録商標)レオウイルスは、転移性結腸直腸がんを有する患者について臨床試験中である(NCT01274624)。化学療法薬ゲムシタビンと組み合わせたReolysin(登録商標)レオウイルスの第II相臨床試験が、進行性膵臓腺癌の患者で行われ(NCT00998322)、第II相臨床試験では、転移性去勢抵抗性前立腺癌においてドセタキセルと組み合わせたReolysin(登録商標)レオウイルスの治療能が調査され(NCT01619813)、第II相臨床試験では、進行性/転移性乳がん患者でReolysin(登録商標)レオウイルスとパクリタキセルの組み合わせが調査された(NCT01656538)。第III相臨床試験では、プラチナ製剤難治性頭頸部がんにおけるパクリタキセルおよびカルボプラチンと組み合わせたReolysin(登録商標)レオウイルスの有効性が調査され(NCT01166542)、この併用療法を使用した第II相臨床試験が、非小細胞肺がん(NCT00861627)および転移性黒色腫(NCT00984464)の患者で行われた。再発性または難治性の多発性骨髄腫患者における、カルフィルゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせたReolysin(登録商標)レオウイルスの第I相臨床試験が進行中である(NCT02101944)。
【0253】
集団の大部分に中和抗体が存在するため、レオウイルスの全身投与は治療能が限られており、レオウイルスとシクロスポリンAまたはシクロホスファミドなどの免疫抑制剤の同時投与でこれを克服できる(Gongら(2016))。レオウイルスのIV投与前にGM-CSFを投与すると、B16黒色腫腫瘍が有意に減少し、マウスの生存期間が延長された(Kempら(2015)Viruses 8,4)。担体細胞はまた、既存の免疫からウイルスを保護することにおける成功を実証している。例えば、リンホカイン活性化キラー細胞(LAK)およびDCが、卵巣がんのモデルでレオウイルスのための細胞担体として使用され、中和抗体からウイルスを保護した(Zhaoら(2016))。NK細胞を含むPMBCは、レオウイルスを輸送するだけでなく、レオウイルスによって刺激されて腫瘍標的を殺傷することも示されている(Zhaoら(2016))。別の研究は、DCとT細胞の両方が、ヒト血清の不在下、インビトロでレオウイルスの有効な担体であるが、DCのみが、中和血清の存在下でウイルスを黒色腫細胞に送達することを示した(Ilettら(2011)Clin.Cancer Res.17(9):2767-2776)。DCはまた、リンパ節B16tk黒色腫転移を有するマウスでレオウイルスを送達することができたが、ニートレオウイルスは完全に無効であった(Ilettら(2009)Gene Ther.16(5):689-699)。
【0254】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科のベシクロウイルス(Vesiculovirus)属のメンバーである。そのゲノムは、マイナスセンス極性を有する一本鎖RNAを含み、11,161ヌクレオチドを含み、ヌクレオカプシドタンパク質(N)、リンタンパク質(P)、マトリックスタンパク質(M)、糖タンパク質(G)および大きなポリメラーゼタンパク質(L)の5つの遺伝子をコードする(Bishnoiら(2018)Viruses 10(2),90)。VSVは昆虫媒介生物によって感染し、疾患はウマ、ウシおよびブタを含む自然の宿主に限定され、ヒトでは軽度で無症候性の感染である(Bishnoiら(2018)Viruses 10(2),90)。VSVは、感染細胞におけるアポトーシスの強力かつ迅速な誘導因子であり、化学療法抵抗性腫瘍細胞を感作させることが示されている。VSVは腫瘍血管系に感染し、腫瘍への血流の喪失、血液凝固および新生血管系の溶解をもたらすことが示されている。このウイルスはまた、低酸素組織における細胞変性効果および細胞溶解の複製および誘導が可能である。更に、WT VSVは、さまざまな組織培養細胞株で高力価に増殖し、大規模なウイルス産生を促進し、小さくて操作が容易なゲノムを有し、宿主細胞形質転換のリスクなしに細胞質で複製する(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017)Journal of General Virology 98:2895-2911)。これらの因子が、このウイルスがヒトに対して病原性ではなく、一般にVSVに対する既存のヒト免疫がないという事実と共に、このウイルスをウイルス腫瘍療法の優れた候補にしている。
【0255】
VSVは遍在的に発現される細胞表面分子に付着して「汎親和性」になることができるが、WT VSVはI型IFN応答に感受性であるので、腫瘍のI型IFNシグナル伝達の欠陥または阻害に基づいて腫瘍選択性を示す(FeltおよびGrdzelishvili(2017))。VSVは、正常細胞の感染力のために、神経病原性を引き起こすことができるが、マトリックスタンパク質および/または糖タンパク質を修飾することによって弱毒化することができる。例えば、マトリックスタンパク質を欠失させることができる、またはマトリックスタンパク質の51位のメチオニン残基を欠失させる、もしくはアルギニンで置換することができる(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017))。別のアプローチは、VSVの糖タンパク質をリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の糖タンパク質(rVSV-GP)に置き換える(Bishnoiら(2018);FeltおよびGrdzelishvili(2017))。VSVを、ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)などの自殺遺伝子を含むように、またはIL-4、IL-12、IFNβなどの免疫刺激性サイトカイン、もしくは顆粒球-マクロファージ-コロニー刺激因子1(GM-CSF1)などの共刺激因子を発現するように遺伝子改変して、腫瘍溶解活性を増強することもできる(Bishnoiら(2018)。NISおよびIFNβをコードするVSV-IFNβ-ナトリウム・ヨウ素共輸送体(VSV-IFNβ-NIS)は、いくつかの第I相臨床試験で試験されている(例えば、試験NCT02923466、NCT03120624およびNCT03017820についてClinicalTrials.govを参照)。
【0256】
水疱性口内炎ウイルス(VSV)は、さまざまなマウスがんモデルに静脈内(IV)投与すると、有効な腫瘍溶解性治療薬となる。ある研究では、VSV-GPが、免疫不全マウスモデルにおいて、皮下移植G62ヒト神経膠芽腫細胞の腫瘍内処置、ならびに同所性U87ヒト神経膠腫細胞の静脈内処置で成功した。VSV-GPの腫瘍内注射は、頭蓋内CT2Aマウス神経膠腫細胞に対しても有効であった(Muikら(2014)Cancer Res.74(13):3567-3578)。VSV-GPが検出可能な中和抗体応答を誘発せず、この遺伝子改変腫瘍溶解性ウイルスがヒト補体に非感受性であり、実験期間中安定なままであることが分かった(Muikら(2014))。別の例では、VSV-GPの腫瘍内投与が、マウスモデルに移植されたヒトA375悪性黒色腫細胞、ならびにマウスB16黒色腫細胞株に有効に感染し、これらを殺傷することが分かった(Kimpelら(2018)Viruses 10,108)。腫瘍溶解性ウイルスの静脈内注射は成功せず、腫瘍内投与群でさえ、I型IFN応答のために腫瘍が全て最終的に成長した(Kimpelら(2018))。別の研究では、A2780ヒト卵巣がん細胞を含む皮下異種移植マウスモデルがVSV-GPの腫瘍内注射で処置され、腫瘍の寛解が神経毒性なしで最初に観察されたが、寛解は一時的であり、腫瘍は再発した。これは、I型IFN応答によるものであることが分かり、VSV-GPをJAK1/2阻害剤であるルキソリチニブと組み合わせることによって、抗ウイルス状態の逆転が観察された(Doldら(2016)Molecular Therapy-Oncolytics 3,16021)。I型IFN応答の阻害は、通常、安全上の懸念から、インビボで野生型VSVの弱毒化変異株では不可能であり、代替解決策が必要になる。
【0257】
研究によって、液性免疫が、抗ウイルス抗体を生じさせ、VSVの治療能を制限することが示されている。転移性腫瘍を有する動物への担体細胞でのVSVの反復投与は、ネイキッドビリオンの注射と比較してはるかに高い治療有効性をもたらすことが分かり(Powerら(2007)Molecular Therapy 15(1):123-130)、担体細胞が循環抗体を回避する能力を実証している。同系CT26マウス結腸癌細胞はVSVに容易に感染し、マウスの肺腫瘍に感染するためのVSVの送達で、静脈内投与後、肺腫瘍に迅速に蓄積したが、周囲の正常な肺組織には蓄積せず、ウイルスを放出し、24時間以内に溶解を受けるまで残り(Powerら(2007)、VSVの細胞媒介送達が免疫学的に不適合な細胞(Powerら(2007))を使用して達成することができることを示している。L1210マウス白血病細胞も、VSVを肺腫瘍、ならびにマウスの後側腹部に位置する皮下腫瘍に送達した(Powerら(2007)。これらのVSV感染白血病細胞を腫瘍のないマウスに投与した場合、正常組織で検出可能なウイルス複製はなく、腫瘍選択性を示した。
【0258】
別の研究では、マトリックスタンパク質のメチオニン51を欠いているため、IFNをコードするmRNAの核内輸送を遮断できないVSV-δ51が、B16ova腫瘍によって発現されるオボアルブミン抗原のSIINFEKLエピトープに特異的にトランスジェニックT細胞受容体を発現するOT-I CD8+T細胞に搭載された(Qiaoら(2008)Gene Ther.15(8):604-616)。この腫瘍溶解性ウイルス/細胞ベースの媒体の組み合わせが、免疫適格性C57B1/6マウスの肺のB16ova腫瘍に対して使用され、ウイルスまたはT細胞単独の使用と比較して有意な治療有効性の増加をもたらした。OT-I細胞内でVSVの検出可能な複製はなかったが、感染したT細胞をB16ova細胞と共培養した後、ウイルスが放出され、有効に感染し、腫瘍細胞内で複製され、腫瘍細胞を殺傷した。T細胞へのVSVの搭載は、インビトロでT細胞活性化を増加させ、インビボでT細胞の腫瘍への輸送を増加させることが示された(Qiaoら(2008))。
【0259】
アデノウイルス
アデノウイルス(Ads)は、1953年にWallace Roweおよび同僚らによって最初に発見され、1956年には子宮頸がんの処置について試験された、線状ゲノムを有する非エンベロープds-DNAウイルスである(Choiら(2015)J.Control.Release 10(219):181-191)。ヒトAdsは環境に遍在しており、交差感受性に基づいて57の血清型(Ad1~Ad57)、およびビルレンスと組織向性に基づいて7つのサブグループ(A~G)に分類される。アデノウイルス血清型5(Ad5)は、腫瘍溶解性ウイルス療法に最も一般的に使用されるアデノウイルスである。ヒトでの感染症は軽度で風邪様症状をもたらし(Yokodaら(2018)Biomedicines 6,33)、全身投与は肝臓向性をもたらし、肝毒性をもたらすことができるが(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837)、Adsは治療目的のために安全であると見なされている。Adsは、コクサッキーウイルスおよびアデノウイルス受容体(CAR)に付着し、引き続いて細胞表面上のαvβ3およびαvβ5インテグリンとアデノウイルスペントンベースのArg-Gly-Aspトリペプチドモチーフ(RGD)との間の相互作用によって細胞に侵入する(Jiangら(2015)Curr.Opin.Virol.13:33-39)。CARはほとんどの正常細胞の表面で発現されるが、発現はがん細胞の種類によって極めて可変性である。他方、RGD関連インテグリンはがん細胞によって高度に発現されるが、正常細胞でははるかに低レベルで発現される(Jiangら(2015))。結果として、Adsは通常、RGDモチーフを介してがん細胞に標的化される。
【0260】
Adsは、形質転換細胞での高い形質導入効率、宿主ゲノムへの組込みの欠如/挿入突然変異の欠如、ゲノム安定性、大きな治療遺伝子をゲノムに挿入する能力、およびウイルスプロモーターのがん組織選択的プロモーターによる置換などの遺伝子操作を介した腫瘍選択性の能力のために、腫瘍溶解性ウイルスとして魅力的である(Yokodaら(2018)Biomedicines 6,33;Choiら(2015)J.Control.Release 10(219):181-191)。
【0261】
腫瘍特異的プロモーターを用いた腫瘍溶解性Adsの例としては、前立腺特異抗原プロモーターの制御下でのアデノウイルス初期領域1A(E1A)遺伝子による前立腺癌処置のためのCV706、およびE1A遺伝子発現の調節のためにテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)プロモーターを使用するOBP-301が挙げられる(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837)。腫瘍選択性を誘導する別の方法は、AdゲノムのE1領域に突然変異を導入することであり、ここでは、欠落している遺伝子が、網膜芽細胞腫(Rb)経路の異常またはp53突然変異などの、腫瘍細胞に一般的に見られる遺伝子突然変異によって機能的に補完される(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837)。例えば、腫瘍溶解性Ads ONYX-015およびH101は、p53を不活化するE1B55K遺伝子の欠失を有する。これらの突然変異株は、正常なアポトーシス防御経路を遮断できず、欠陥p53腫瘍抑制経路で新生物細胞の感染を介して腫瘍選択性をもたらす(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837;Uusi-Kerttulaら(2015)Viruses 7:6009-6042)。E1AΔ24は、E1A遺伝子に24bpの突然変異を含み、Rb結合ドメインを破壊し、Rb経路突然変異を伴うがん細胞でウイルス複製を促進する腫瘍溶解性Adである。ICOVIR-5は、E2FプロモーターによるE1A転写制御、E1AのΔ24突然変異、およびアデノウイルスファイバーへのRGD-4C挿入を組み合わせた腫瘍溶解性Adである(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837;Uusi-Kerttulaら(2015))。デルタ24-RGD、またはDNX-2401は、RGDモチーフの挿入によってΔ24骨格が改変された腫瘍溶解性Adであり、インビトロおよびインビボで腫瘍溶解性効果の増強を実証した(Jiangら(2015))。
【0262】
腫瘍選択性を改善するための代替戦略は、細胞外マトリックス(ECM)を標的化することによって、固形腫瘍の物理的障壁を克服することを伴う。例えば、VCN-01は、腫瘍におけるウイルスの拡散を増強するためにインビボでヒアルロニダーゼを発現する腫瘍溶解性Adである。Adsはまた、ECMを破壊するためにリラキシンを発現するように操作されている(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837;ShawおよびSuzuki(2015)Curr.Opin.Virol.21:9-15)。シトシンデアミナーゼ(CD)およびHSV-1チミジンキナーゼ(TK)などの自殺遺伝子を発現するAdsは、GM-CSFを発現するONCOS-102などの免疫刺激性サイトカインを発現するAdsと同様に、インビボで増強された抗腫瘍有効性を有する(Yamamotoら(2017)Cancer Sci.108:831-837;ShawおよびSuzuki(2015)Curr.Opin.Virol.21:9-15)。抗CTLA4抗体を発現するΔ24ベースの腫瘍溶解性Adは、前臨床試験における結果を示した(Jiangら(2015))。
【0263】
アデノウイルスH101(Oncorine(登録商標)アデノウイルス)は、2005年に進行性上咽頭がんの患者を処置するために、化学療法と組み合わせて中国で臨床使用が承認された最初の腫瘍溶解性Adであった。多くの臨床試験が、多種多様ながんを処置するための腫瘍溶解性アデノウイルスの使用を調査してきた。例えば、進行中および過去の臨床試験には、転移性膵臓がんの患者におけるIL-12をコードするAd5(NCT03281382);膵臓腺癌、卵巣がん、胆管がんおよび結腸直腸がんの患者におけるTMX-CD40Lおよび41BBLを発現する免疫刺激性Ad5(LOAd703)(NCT03225989);膵臓がん患者におけるゲムシタビンおよびnab-パクリタキセルと組み合わせたLOAd703(NCT02705196);ヒトPH20ヒアルロニダーゼ(VCN-01)をコードする腫瘍溶解性アデノウイルスを膵臓腺癌を含む進行性固形腫瘍の患者においてゲムシタビンおよびAbraxane(登録商標)と組み合わせて使用した(NCT02045602;NCT02045589);肝細胞癌の患者における、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーターを含む、腫瘍選択性を有する腫瘍溶解性AdであるTelomelysin(登録商標)(OBP-301)(NCT02293850);肝細胞癌の患者における肝動脈化学塞栓術(TACE)と組み合わせたE1B遺伝子欠失Ad5(NCT01869088);膀胱がんの患者における、GM-CSFを発現し、E1Aの発現を駆動するがん特異的E2F-1プロモーターを含む腫瘍溶解性AdであるCG0070(NCT02365818;NCT01438112);結腸がん、非小細胞肺がん、膀胱がんおよび腎細胞がんの患者における、Ad11p/Ad3キメラグループB腫瘍溶解性ウイルスであるEnadenotucirev(Colo-Ad1)(NCT02053220);ならびに神経膠芽腫の患者におけるテモゾロミド(NCT01956734)またはIFNγ(NCT02197169)と組み合わせたDNX-2401(Ad5 E1AΔ24RGD)を伴う研究が含まれる。CAR-T細胞は、多くの場合、T細胞遊走が不十分であることおよび固形腫瘍の免疫抑制環境などの要因のために、治療剤として、特に固形腫瘍に対してわずかに有効であることができる。マウスの神経芽腫腫瘍モデルにおいて、ケモカインRANTESおよびサイトカインIL-15を備えた腫瘍溶解性AdウイルスAd5Δ24と共にCAR-T細胞を使用する併用療法は、腫瘍部位へのCAR-T細胞の遊走および生存を増加させることが分かった。アデノウイルスは、腫瘍細胞に対する強力な用量依存的細胞傷害効果を有し、CAR-T細胞を損傷することなく、CAR-T細胞に曝露された腫瘍細胞におけるカスパーゼ経路を加速した(Nishioら、Cancer Res.、74(18):5195-5205(2014))。更に、RANTESおよびIL-15の腫瘍内放出は、CAR-T細胞を腫瘍部位に引き付け、それらの局所生存をそれぞれ促進し、それにより、CAR-T単独による処置と比較して腫瘍搭載マウスの全生存を増加させた(Nishioら、Cancer Res.、74(18):5195-5205(2014))。
【0264】
他の腫瘍溶解性ウイルスと同様に、Adsは中和抗体の発達により、全身投与した場合に低い治療有効性に悩まされ、血清有病率が高いため、一部の集団の90%もがAdsに対する事前免疫を有していると推定される(Uusi-Kerttulaら(2015)Viruses 7:6009-6042)。更に、Adsの非特異的肝臓隔離は、肝毒性をもたらす(Choiら(2015))。PEG、正に帯電したアルギニングラフト生体還元性ポリマー(ABP)、PAMAMG5およびその他のナノ材料などのポリマーを使用して、ウイルスカプシドタンパク質を隠し、抗ウイルス免疫応答および非特異的肝臓蓄積を軽減し、腫瘍蓄積を増加させることができる(Choiら(2015))。免疫系を回避するための他のアプローチは、腫瘍溶解性Adsを送達するための担体媒体細胞の使用を伴う。例えば、T細胞が、同所性神経膠腫幹細胞(GSC)ベースの異種移植マウスモデルで、インビトロおよびインビボで神経膠芽腫細胞にデルタ24-RGD Adを送達するために使用された(Balversら(2014)Viruses 6:3080-3096)。ウイルス搭載T細胞の全身投与は、腫瘍内ウイルス送達をもたらした(Balversら(2014))。担体/媒体細胞によるAdの送達を調査する臨床試験には、悪性神経膠腫を処置するための腫瘍溶解性Adを搭載した神経幹細胞(NCT03072134);転移性乳がんの患者におけるHer2を発現するAdに感染した自家樹状細胞(NCT00197522);ならびに転移性および難治性の固形腫瘍を有する小児および成人におけるICOVIR5に感染した自家間葉系幹細胞(MSC)(NCT01844661)の使用が含まれる。
【0265】
ポリオウイルス
ポリオウイルス(PV)は、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のエンテロウイルス(Enterovirus)属に属し、プラスセンス一本鎖RNAゲノムを有する。PV感染は、脊髄および運動ニューロンに対するPVの向性のために、重度の神経学的症候群の急性灰白髄炎もたらす(BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359-365)。PVは、活発な抗ウイルスIFN応答の存在下で堅牢な複製能力および細胞傷害性を保持し、免疫刺激ウイルス細胞傷害性効果を増幅するための数ラウンドのウイルス複製を可能にするため、臨床応用に有用である(BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359-365)。PVはまた、宿主細胞ゲノムに組み込まれない(Yla-Peltoら(2016)Viruses 8,57)。
【0266】
PV宿主細胞侵入は、PV受容体(PVR)としても知られるIgスーパーファミリー細胞接着分子CD155および神経膠芽腫などの固形腫瘍で広く過剰発現されるネクチン様分子5(Necl5)によって媒介される(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81-85)。CD155はまた、結腸直腸がん、肺腺癌、乳がんおよび黒色腫でも発現され、マクロファージおよび樹状細胞などの抗原提示細胞(APC)でも発現される(Brownら(2014)Cancer 120(21):3277-3286)。
【0267】
PVの配列内リボソーム進入部位(IRES)は、PV RNAゲノムの翻訳開始を促進することを担い、PVの神経病原性に関与している。Sabin血清型に由来する弱毒生PVワクチンは、IRESに重大な弱毒化点突然変異を有する(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81-85)。同族PV IRESがヒトライノウイルス2(HRV2)のもので置き換えられた1型(Sabin)弱毒生PVワクチンである高度に弱毒化されたポリオ/ライノウイルス組換えPVSRIPOは、親PVと比較して神経毒性/神経病原性を示さないが、GBM細胞に対するがん細胞の細胞傷害性および特異性を保持している(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81-85;BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359-365)。PVSRIPOは、バルク腫瘍の直接溶解ではなく、抗腫瘍免疫応答を誘発することによって腫瘍退縮を引き起こし、再発性神経膠芽腫(GBM)の処置に使用されてきた(NCT01491893)(BrownおよびGromeier(2015)Curr.Opin.Virol.13:81-85;BrownおよびGromeier(2015)Discov.Med.19(106):359-365)。第1b相臨床試験は、小児の再発性悪性神経膠腫を処置するためのPVSRIPOの使用を調査し(NCT03043391)、第2相臨床試験が、再発性悪性神経膠腫を有する成人患者で、単独でおよび化学療法薬ロムスチンと組み合わせたPVSRIPOの使用を調査した(NCT02986178)。
【0268】
単純ヘルペスウイルス
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、ヘルペスウイルス(Herpesviridae)科に属し、ウイルス複製に必須ではない多くの遺伝子を含む大きな線状二本鎖DNAゲノムを有するので、遺伝子操作の理想的な候補となっている。他の利点には、広範囲の細胞型に感染する能力、アシクロビルおよびガンシクロビルなどの抗ウイルス薬に対する感受性、ならびに挿入突然変異の欠如が含まれる(Sokolowskiら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:207-219;Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。HSVには、HSV I型(HSV-1)とII型(HSV-2)の2種類があり、腫瘍溶解性HSVの大部分はHSV-1に由来する。ヒトでは、HSV-1は単純疱疹疾患を引き起こし、細胞表面上のネクチン、糖タンパク質およびヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)に結合することによって、上皮細胞、ニューロンおよび免疫細胞に感染する(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048-1054)。
【0269】
現在までに、多くの異なる腫瘍溶解性HSV-1ウイルスが作製されている。例えば、HSV-1は、乳がんおよび卵巣がん、胃癌および神経膠芽腫などのHER-2を過剰発現する腫瘍を標的化する抗HER-2抗体トラスツズマブを発現するように操作されている。トラスツズマブをコードする遺伝子が、HSV-1 gD糖タンパク質遺伝子内の2つの領域に挿入され、2つの腫瘍溶解性HSV、R-LM113およびR-LM249が生み出された。R-LM113およびR-LM249は、ヒト乳がんおよび卵巣がん、ならびにHER2+神経膠芽腫のマウスモデルに対する前臨床活性を実証した。R-LM249は、間葉系幹細胞(MSC)を担体細胞として使用して全身投与され、マウスモデルにおいて卵巣がんおよび乳がんの肺および脳転移に対して治療効果を発揮した(Campadelli-Fiumeら(2016)Viruses 8,63)。別の腫瘍溶解性HSV-1、dlsptk HSV-1は、チミジンキナーゼ(TK)のウイルス相同体をコードするユニークなlong 23(UL23)遺伝子の欠失を含み、hrR3 HSV-1突然変異株は、遺伝子UL39によってコードされる、ICP6としても知られているリボヌクレオチドレダクターゼ(RR)の大きなサブユニットのLacZ挿入突然変異を含む。結果として、dlsptkおよびhrR3 HSV-1突然変異株は、それぞれTKおよびRRを過剰発現するがん細胞でのみ複製できる(Sokolowskiら(2015)Oncolytic Virotherapy 4:207-219)。
【0270】
HF10は、UL43、UL49.5、UL55、UL56および潜伏関連転写物をコードする遺伝子を欠き、UL53およびUL54を過剰発現する、自然突然変異腫瘍溶解性HSV-1である。HF10は、高い腫瘍選択性、高いウイルス複製、強力な抗腫瘍活性、および好ましい安全性プロファイルを実証した(Eissaら(2017)Front.Oncol.7:149)。HF10を調査する臨床試験には、難治性頭頸部がん、皮膚の扁平上皮癌、乳がんおよび悪性黒色腫の患者における第I相試験(NCT01017185)、ならびに切除不能な膵臓がんの患者における化学療法(ゲムシタビン、Nab-パクリタキセル、TS-1)と組み合わせたHF10の第I相試験(NCT03252808)が含まれる。HF10は抗CTLA-4抗体イピリムマブとも組み合わせられて、ステージIIIb、IIIcまたはIVの切除不能または転移性黒色腫の患者の治療有効性を改善した(NCT03153085)。第II相臨床試験は、切除可能なステージIIIb、IIIcおよびIVの黒色腫の患者におけるHF10と抗PD-1抗体ニボルマブの組み合わせ(NCT03259425)、ならびに切除不能または転移性黒色腫の患者におけるイピリムマブとの組み合わせ(NCT02272855)を調査した。パクリタキセルとHF10の併用療法は、いずれかの処置単独と比較して、腹膜結腸直腸がんモデルで優れた生存率をもたらし、HF10とエルロチニブの併用処置は、HF10またはエルロチニブ単独のいずれかよりもインビトロおよびインビボで膵臓異種移植片に対する改善された活性をもたらした(Eissaら(2017)Front.Oncol.7:149)。
【0271】
以前はOncoVEXGM-CSFとして知られていたタリモジーン・ラハーパレプベック(Imlygic(登録商標)、T-VEC)は、HSV-1のJS1株から作製され、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM-CSF)を発現するように遺伝子操作された、進行性黒色腫を処置するためのFDA承認腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルスである(Arefら(2016)Viruses 8:294)。T-VECでは、GM-CSF発現が抗腫瘍細胞傷害性免疫応答を増強し、感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)遺伝子の両コピーの欠失が、正常組織での複製を抑制し、ICP47遺伝子の欠失が、MHCクラスI分子の発現を増加させ、感染細胞上での抗原提示を可能にする(Eissaら(2017))。T-VECは、がん細胞の表面上にあるネクチンに結合することによって腫瘍選択性を示し、破壊された発癌性および抗ウイルス性のシグナル伝達経路、特にプロテインキナーゼR(PKR)およびI型IFN経路を利用することによって腫瘍細胞で優先的に複製する。正常細胞では、PKRがウイルス感染によって活性化され、次いで、これが真核生物開始因子-2Aタンパク質(eIF-2A)をリン酸化し、これを不活化し、今度は細胞タンパク質合成を阻害し、細胞増殖を遮断し、ウイルス複製を防止する。野生型HSVは、eIF-2Aを脱リン酸化するホスファターゼを活性化するICP34.5タンパク質の発現により、抗ウイルス応答を回避し、感染細胞でのタンパク質合成を回復させる。したがって、ICP34.5の欠失は、正常細胞におけるT-VECのウイルス複製を排除する。しかしながら、がん細胞のPKR-eIF-2A経路が破壊され、継続的な細胞増殖および阻害されないウイルス複製を可能にする(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048-1054;Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。GM-CSFの発現は、樹状細胞蓄積を引き起こし、抗原提示を促進し、T細胞応答をプライミングすることによって、T-VECの免疫原性を改善する(KohlhappおよびKaufman(2016)Clin.Cancer Res.22(5):1048-1054)。
【0272】
T-VECは、乳がん、結腸直腸腺癌、黒色腫、前立腺癌および神経膠芽腫を含むさまざまながん細胞株で優先的複製を示している。臨床試験には、例えば、膵臓がん(NCT03086642、NCT00402025)、再発性乳がん(NCT02658812)、小児の進行性非CNS腫瘍(NCT02756845)、非黒色腫皮膚がん(NCT03458117)、筋層非浸潤性膀胱移行上皮癌(NCT03430687)、および悪性黒色腫(NCT03064763)におけるT-VEC、ならびに転移性トリプルネガティブ乳がんおよび肝転移を伴う転移性結腸直腸がんの患者におけるアテゾリズマブと組み合わせた(NCT03256344)、トリプルネガティブ乳がんの患者におけるパクリタキセルと組み合わせた(NCT02779855)、難治性リンパ腫または進行性/難治性非黒色腫皮膚がんの患者におけるニボルマブと組み合わせた(NCT02978625)、進行性頭頸部がんの患者におけるシスプラチンおよび放射線療法と組み合わせた(NCT01161498)、および肝腫瘍(NCT02509507)、頭頸部癌(NCT02626000)、肉腫(NCT03069378)および黒色腫(NCT02965716、NCT02263508)の患者におけるペンブロリズマブと組み合わせたT-VECを調査するものが含まれる。
【0273】
GM-CSFに加えて、IL-12、IL-15、IL-18、TNFα、IFNα/βおよびfms様チロシンキナーゼ3リガンドをコードするものを含む、他の多数の免疫刺激遺伝子が腫瘍溶解性HSVに挿入され、治療有効性の増加をもたらしている(Sokolowskiら(2015);Yinら(2017))。
【0274】
別の腫瘍溶解性HSV-1、R3616は、ICP34.5をコードするRL1(γ134.5としても知られている)遺伝子の両コピーの欠失を含み、PKR経路が破壊されたがん細胞を標的化する。NV1020(またはR7020)は、UL55、UL56、ICP4、RL1およびRL2遺伝子の欠失を含むHSV-1突然変異株であり、減少した神経毒性およびがん選択性をもたらす。NV1020は、頭頸部扁平上皮癌、類表皮癌および前立腺腺癌のマウスモデルで結果を示した(Sokolowskiら(2015))。NV1020は、肝臓に転移する結腸直腸がんの処置について調査されている(NCT00149396およびNCT00012155)。
【0275】
G207(またはMGH-1)は、RL1(γ134.5)欠失およびUL39神経毒性遺伝子へのLacZ不活化挿入を有する別のHSV-1突然変異株である。G207を使用した臨床研究には、進行性または再発性テント上脳腫瘍の小児における単独でのまたは単回放射線投与と合わせたG207の調査(NCT02457845)、再発性脳腫がん(神経膠腫、星細胞腫、神経膠芽腫)の患者におけるG207の安全性および有効性の調査(NCT00028158)、ならびに悪性神経膠腫患者におけるG207投与とそれに続く放射線療法の効果の調査(NCT00157703)が含まれる。
【0276】
G207は、ICP47をコードする遺伝子に更なる欠失を含むG47Δを作製するために使用された。他のHSV-1由来腫瘍溶解性ウイルスには、RL1の欠失を含むが、インタクトなUL39遺伝子を有し、活発に分裂している細胞で選択的に複製するHSV1716、ならびにUL48およびRL2遺伝子の挿入を有し、最初期遺伝子ウイルス遺伝子の発現の喪失およびがん細胞の選択性が得られるKM100突然変異株が含まれる(Sokolowskiら(2015);Yinら(2017)Front.Oncol.7:136)。
【0277】
集団の大部分はHSV-1に対する既存の免疫を有するので、腫瘍溶解性HSVを送達するための担体細胞の使用はそれらの治療能を改善することができる。例えば、ヒト腹膜中皮細胞(MC)が、HF10のための担体細胞として使用され、インビトロおよび卵巣がんのマウス異種移植モデルでの卵巣がん細胞の効率的な殺傷をもたらした(Fujiwaraら(2011)Cancer Gene Therapy 18:77-86)。
【0278】
腫瘍溶解性ウイルスはHSV-2にも由来している。例えば、FusOn-H2は、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ(PK)ドメインをコードするICP10遺伝子のN末端領域の欠失を有するHSV-2腫瘍溶解性ウイルスである。このPKは、GTPアーゼ活性化タンパク質Ras-FAPのリン酸化を担っており、Ras/MEK/MAPK分裂促進経路を活性化し、効率的なHSV-2複製に必要なc-Fosを誘導および安定化する。正常細胞は通常、不活化Rasシグナル伝達経路を有する。したがって、FusOn-H2は、活性化Rasシグナル伝達経路を有する腫瘍細胞でのみ複製することによって腫瘍選択性を示す(Fuら(2006)Clin.Cancer Res.12(10):3152-3157)。FusOn-H2は、膵臓がん異種移植片(Fuら(2006)Clin.Cancer Res.12(10):3152-3157)、シクロホスファミドと組み合わせてルイス肺癌異種移植片、ならびに同系マウス乳腺腫瘍および神経芽細胞腫(Liら(2007)Cancer Res.67:7850-7855)に対する活性を実証した。
【0279】
ポックスウイルス
ワクシニアウイルス
ワクシニアウイルスの例としては、限定されるものではないが、Lister(Elstreeとしても知られている)、ニューヨーク市保健局(NYCBH)、Dairen、Ikeda、LC16M8、ウエスタンリザーブ(WR)、コペンハーゲン(Cop)、Tashkent、Tian Tan、Wyeth、Dryvax、IHD-J、IHD-W、Brighton、Ankara、改変ワクシニアAnkara(MVA)、Dairen I、LIPV、LC16M0、LIVP、WR 65-16、EM63、Bern、Paris、CVA382、NYVAC、ACAM2000、ACAM1000およびConnaught株が挙げられる。ワクシニアウイルスは、創傷およびがん遺伝子療法での使用に特に適したものとなるさまざまな特徴を有する腫瘍溶解性ウイルスである。例えば、ワクシニアは細胞質ウイルスであるため、ライフサイクル中にそのゲノムを宿主ゲノムに挿入することはない。宿主の転写機構を必要とする他の多くのウイルスとは異なり、ワクシニアウイルスは、ウイルスゲノムにコードされている酵素を使用して、宿主細胞の細胞質における自身の遺伝子発現を支持することができる。ワクシニアウイルスはまた、宿主および細胞の種類の範囲が広い。特に、ワクシニアウイルスは、腫瘍および/または転移を含み、同様に創傷組織および細胞を含む免疫特権細胞または免疫特権組織に蓄積することができる。しかし、他の腫瘍溶解性ウイルスとは異なり、ワクシニアウイルスは、典型的には、対象の免疫系の活動によってウイルスが投与される対象から排除できるため、アデノウイルスなどの他のウイルスよりも毒性が低くなる。したがって、ウイルスは、典型的には、対象の免疫系の活動によってウイルスが投与される対象から排除することができるが、それにもかかわらず、このような免疫特権領域はから宿主の免疫系から隔離されているため、ウイルスが腫瘍などの免疫特権細胞および組織において蓄積、生存および増殖することができる。
【0280】
ワクシニアウイルスは、異種遺伝子を挿入することによって容易に改変することもできる。これにより、ウイルスの弱毒化をもたらす、および/または治療用タンパク質の送達を可能にすることができる。例えば、ワクシニアウイルスゲノムは外来遺伝子の大きな環境収容力を有し、最大25kbの外因性DNAフラグメント(ワクシニアゲノムサイズのおよそ12%)を挿入できる。ワクシニア株のいくつかのゲノムは完全に配列決定されており、多くの必須遺伝子および非必須遺伝子が特定されている。異なる株間の高い配列相同性により、あるワクシニア株からのゲノム情報を、他の株で改変ウイルスを設計および作製するために使用することができる。最後に、遺伝子工学による改変ワクシニア株の製造技術は十分に確立されている(Moss(1993)Curr.Opin.Genet.Dev.3:86-90;BroderおよびEarl、(1999)Mol.Biotechnol.13:223-245;Timiryasovaら(2001)Biotechniques 31:534-540)。
【0281】
さまざまなワクシニアウイルスが抗腫瘍活性を示すことが実証されている。例えば、ある研究で、非転移性結腸腺癌細胞を有するヌードマウスに、ワクシニア増殖因子の欠失およびチミジンキナーゼ遺伝子座に挿入された増強緑色蛍光タンパク質を有することによって改変されたワクシニアウイルスのWR株が全身注射された。この改変ウイルスには外因性治療遺伝子が欠如しているにもかかわらず、ウイルスは1つの完全な応答を含む抗腫瘍効果を有することが観察された(McCartら(2001)Cancer Res.1:8751-8757)。別の研究では、黒色腫患者における第III相臨床試験で、ワクシニア黒色腫腫瘍溶解産物(VMO)が黒色腫陽性リンパ節の近くの部位に注射された。対照として、ニューヨーク市保健局株ワクシニアウイルス(VV)が黒色腫患者に投与された。VMOで処置された黒色腫患者は、未処置の患者よりも生存率が高かったが、VV対照で処置された患者と同様であった(Kimら(2001)Surgical Oncol.10:53-59)。
【0282】
ワクシニアウイルスのLIVP株も、腫瘍の診断および治療、ならびに創傷および炎症を起こした組織および細胞の処置に使用されてきた(例えば、Zhangら(2007)Surgery 142:976-983;Linら(2008)J.Clin.Endocrinol.Metab.93:4403-7;Kellyら(2008)Hum.Gene Ther.19:774-782;Yuら(2009)Mol.Cancer Ther.8:141-151;Yuら(2009)Mol.Cancer 8:45;米国特許第7,588,767号;米国特許第8,052,968号および米国特許出願公開第2004/0234455号を参照)。例えば、静脈内投与された場合、LIVP株は、インビボで様々な遺伝子座の内部腫瘍に蓄積することが実証されており、限定されるものではないが、乳房腫瘍、甲状腺腫瘍、膵臓腫瘍、胸膜中皮腫の転移性腫瘍、扁平上皮癌、肺癌および卵巣腫瘍を含むさまざまな組織起源のヒト腫瘍を有効に処置することが実証されている。弱毒化形態を含むワクシニアのLIVP株は、ワクシニアウイルスのWR株よりも低い毒性を示し、処置された腫瘍を有する動物モデルの増加した、より長い生存をもたらす(例えば、米国特許出願公開第2011/0293527号を参照)。ワクシニアウイルスのWyeth株、例えばJX-594も低い毒性を示し、がんの処置に使用されている。
【0283】
ワクシニアは細胞質ウイルスであるため、ライフサイクル中にそのゲノムを宿主ゲノムに挿入することはない。ワクシニアウイルスは、単一の連続ポリヌクレオチド鎖で構成される、長さおよそ180,000塩基対の線状二本鎖DNAゲノムを有する(Baroudyら(1982)Cell 28:315-324)。この構造は、10,000塩基対の逆方向末端反復(ITR)が存在するためである。ITRはゲノム複製に関与している。ゲノム複製は自己プライミングを伴い、高分子量コンカテマー(感染細胞から隔離された)の形成をもたらし、その後、これが切断および修復されてウイルスゲノムを形成する(例えば、Traktman,P.、第27章、Poxvirus DNA Replication、775~798頁、DNA Replication in Eukaryotic Cells、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996))。ゲノムはおよそ250個の遺伝子を含む。一般に、非セグメント化非感染性ゲノムは、中央に位置する遺伝子がウイルス複製に必須である(したがって保存されている)が、2つの末端近くの遺伝子が宿主範囲およびビルレンスなどのより周辺の機能に影響を及ぼすように配置される。ワクシニアウイルスは、一般原則として重複しないセットに配置されたオープンリーディングフレーム(ORF)を使用することによって、差次的遺伝子発現を実践する。
【0284】
ワクシニアウイルスは、広範な宿主および細胞の種類の範囲、ならびに低い毒性を含む、がん遺伝子療法およびワクチン接種に使用するためにさまざまな特徴を有する。例えば、ほとんどの腫瘍溶解性ウイルスは自然病原体であるが、ワクシニアウイルスは天然痘ワクチンとして広範に適用されているという独特の歴史があり、ヒトにおける安全性の確立された実績をもたらしている。ワクシニア投与に関連する毒性は、症例の0.1%未満で発生し、免疫グロブリン投与で有効に対処できる。更に、ワクシニアウイルスは、外来遺伝子の大きな環境収容力(最大25kbの外因性DNAフラグメント、ワクシニアゲノムサイズのおよそ12%をワクシニアゲノムに挿入できる)、および他の株の改変ウイルスを設計および作製するための異なる株間での高い配列相同性を有する。遺伝子工学による改変ワクシニア株の製造技術は十分に確立されている(Moss(1993)Curr.Opin.Genet.Dev.3:86-90;BroderおよびEarl(1999)Mol.Biotechnol.13:223-245;Timiryasovaら(2001)Biotechniques 31:534-540)。ワクシニアウイルス株は、他の臓器に感染することなく、固形腫瘍に特異的にコロニー形成することが示されている(例えば、Zhangら(2007)Cancer Res.67:10038-10046;Yuら(2004)Nat.Biotech.22:313-320;Heoら(2011)Mol.Ther.19:1170-1179;Liuら(2008)Mol.Ther.16:1637-1642;Parkら(2008)Lancet Oncol.9:533-542を参照)。
【0285】
ACAM2000
例示的な実施形態では、本明明細書で提供され、関連する方法で使用されるCAVES系で使用するためのワクシニアウイルスは、米国で認可されているクローン単離DryvaxワクチンであるACAM2000ワクシニアウイルス株である。ACAM2000は、配列番号70に示される配列を有する。それを増殖させた後、ACAM2000は、6塩基短い左ITR、197塩基短い右ITR、および位置32の単一SNP(非コード領域およびITR配列の一部)を含む配列番号70の変異株である、配列番号71に示される配列(本明細書では「CAL1」または「WT1」と呼ばれる)を有する。ワクシニアウイルスを含有する例示的なCAVES系は、腫瘍溶解性ウイルスとしてACAM2000もしくはCAL1またはその改変株、ならびに間葉系幹細胞、脂肪間質細胞、線維芽細胞、および脂肪間質細胞の亜集団、例えば上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)などの幹細胞を含有する。
【0286】
実施形態では、ACAM2000ウイルスまたはCAL1ウイルスは、弱毒化のために、例えばF1Lおよび/またはB8R遺伝子座の弱毒化などの全身投与にとってより安全になるように、および/または治療遺伝子および/または選択マーカーなどのマーカーを発現するように改変される。
【0287】
コクサッキーウイルス
コクサッキーウイルス(CV)は、エンテロウイルス(Enterovirus)属およびピコルナウイルス(Picornaviridae)科に属し、宿主細胞ゲノムに組み込まれないプラスセンス一本鎖RNAゲノムを有する。CVは、マウスにおける高価に基づいてA群とB群に分類され、ヒトで軽度の上気道感染症を引き起こすことができる(Bradleyら(2014)Oncolytic Virotherapy 3:47-55)。腫瘍溶解性ウイルス療法のためのコクサッキーウイルスとしては、限定されるものではないが、弱毒化コクサッキーウイルスB3(CV-B3)、CV-B4、CV-A9およびCV-A21が挙げられる(Yla-Peltoら(2016)Viruses 8,57)。CV-A21は、黒色腫、乳がん、結腸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん、膵臓がんおよび肺がんを含む腫瘍細胞、ならびに多発性骨髄腫および悪性神経膠腫ではるかに高いレベルで発現されるICAM-1(またはCD54)およびDAF(またはCD55)受容体を介して細胞に感染する。CV-A21は、インビトロで悪性骨髄腫、黒色腫、前立腺癌、肺がん、頭頸部がんおよび乳がん細胞株に対して、ならびにインビボでヒト黒色腫異種移植片を有するマウスで、ならびにマウスにおける原発性乳癌腫瘍およびその転移に対して、前臨床抗がん活性を示している(Yla-Peltoら(2016);Bradleyら(2014))。CV-A21の誘導株であるCV-A21-DAFvは、CAVATAK(商標)としても知られており、DAFを発現するICAM-1ネガティブ横紋筋肉腫(RD)細胞でCV-A21を連続継代することによって、野生型Kuykendall株から作製され、親株と比較して増強された腫瘍溶解特性を有する。CAVATAK(商標)はDAF受容体にのみ結合し、がん細胞に対する増強された向性に寄与することができる(Yla-Peltoら(2016))。
【0288】
CV-A21はまた、塩酸ドキソルビシンと組み合わせて研究されており、ヒト乳がん、結腸直腸がんおよび膵臓がん細胞株に対して、ならびにヒト乳がんの異種移植マウスモデルにおいて、単独処置と比較して増強した腫瘍溶解効率を示している(Yla-Peltoら(2016))。集団のかなりの部分がCVに対する中和抗体を既に発達させているため、CV-A21療法は、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤と組み合わされており(Bradleyら(2014))、本明細書に記載されるように、媒体細胞を介した送達に使用することができる。
【0289】
臨床試験では、ステージIIIcまたはIVの悪性黒色腫の患者におけるCAVATAK(商標)ウイルスと呼ばれるウイルス(NCT01636882;NCT00438009;NCT01227551)、および筋層非浸潤性膀胱がんの患者における単独でのまたは低用量マイトマイシンCと組み合わせたCAVATAK(商標)(NCT02316171)の使用が調査された。臨床試験はまた、黒色腫、乳がんおよび前立腺癌を含む固形腫瘍の処置におけるCV-A21の静脈内投与の効果も研究している(NCT00636558)。非小細胞肺がん(NCT02824965、NCT02043665)および膀胱がん(NCT02043665)の患者を処置するための単独でのまたはペンブロリズマブと組み合わせたCAVATAK(商標)もまた、ブドウ膜黒色腫および肝転移の患者(NCT03408587)および進行性黒色腫の患者(NCT02307149)におけるイピリムマブと組み合わせたCAVATAK(商標)ウイルスと同様に;ならびに進行性黒色腫の患者におけるペンブロリズマブと組み合わせたCAVATAK(商標)ウイルス(NCT02565992)と同様に、臨床試験中である。
【0290】
セネカバレーウイルス
セネカバレーウイルス(SVV)は、ピコルナウイルス(Picornaviridae)科のセネカウイルス(Senecavirus)属のメンバーであり、プラスセンス一本鎖RNAゲノムを有し、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、髄芽腫、ウィルムス腫瘍、神経膠芽腫および小細胞肺がんを含む神経内分泌がんに選択的である(Milesら(2017)J.Clin.Invest.127(8):2957-2967;Qianら(2017)J.Virol.91(16):e00823-17;Burke,M.J.(2016)Oncolytic Virotherapy 5:81-89)。研究により、炭疽毒素受容体1(ANTXR1)がSVVの受容体として特定され、これは、正常細胞と比較して腫瘍細胞の表面上で頻繁に発現されるが、以前の研究で、シアル酸が、小児神経膠腫モデルにおけるSVV受容体の構成要素であることができることも示されている(Milesら(2017))。SVV分離株001(SVV-001)は、静脈内投与後に固形腫瘍を標的化し、これに浸透できる強力な腫瘍溶解性ウイルスであり、挿入突然変異の欠如、ならびにがん細胞に対する選択的向性、ならびにヒトおよび動物における非病原性のために魅力的である。更に、ヒトでの以前の曝露はまれであり、既存の免疫率が低い(Burke,M.J.(2016)Oncolytic Virotherapy 5:81-89)。
【0291】
SVV-001は、小細胞肺がん、副腎皮質癌、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫およびユーイング肉腫細胞株に対するインビトロ活性、ならびに小児GBM、髄芽腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫および神経芽細胞腫の同所性異種移植マウスモデルにおけるインビボ活性を示している(Burke(2016))。Neotropix(登録商標)によって開発された腫瘍溶解性SVV-001であるNTX-010は、単独でまたはシクロホスファミドと組み合わせて、再発/難治性固形腫瘍の小児患者を処置するために実行可能で許容できることが分かっているが、中和抗体の発達によりその治療有効性が制限された(Burkeら(2015)Pediatr.Blood Cancer 62(5):743-750)。臨床試験には、神経内分泌特徴を有する固形腫瘍の患者におけるSV-001(NCT00314925)、再発もしくは難治性神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、網膜芽細胞腫、副腎皮質癌またはカルチノイド腫瘍の患者におけるシクロホスファミドと組み合わせたNTX-010/SVV-001(NCT01048892)、および化学療法後の小細胞肺がんの患者におけるNTX-010/SVV-001(NCT01017601)を使用した研究が含まれる。
【0292】
ウイルスを改変する方法
上記のような細胞媒体を操作する方法を含む、ウイルスを操作するいくつかの方法は、当技術分野で既知である。遺伝子工学による改変ワクシニア株の生産技術は十分に確立されている(Moss,Curr.Opin.Genet.Dev.3(1993),86-90;BroderおよびEarl、Mol.Biotechnol.13(1999)、223-245;Timiryasovaら、Biotechniques 31(2001)、534-540)。腫瘍溶解性ウイルスを操作する方法としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
【0293】
(1)相同組換えは、導入遺伝子を挿入したい場所のレシピエントウイルスDNAに相同な2つのDNA領域に隣接する導入遺伝子を含むドナーベクターの使用を必要とする(Kaufman,H.L.,F.J.KohlhappおよびA.Zloza,Oncolytic viruses:a new class of immunotherapy drugs.Nat Rev Drug Discov,(2015)14(9):642-62)。次いで、組換えウイルスを、TK陽性/陰性、ベータ-ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFPもしくはeGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)もしくはTurboFP635などの優性選択マーカー、またはホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)による一過性の優性選択(TDS)によるものを含むいくつかのアプローチによって選択することができる。
【0294】
P1バクテリオファージに由来するCRE/loxシステムは、細胞のDNA中の特定の部位で欠失、挿入、転座および逆位を行うために使用される部位特異的リコンビナーゼ技術である(Kleinstiver,B.P.,ら、High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects.Nature 529(7587):490-495(2016))。このツールは、真核生物と原核生物の両方で機能し、十分に確立されており、様々なトランスジェニック動物モデルを作成している(Ran,F.A.,ら、Double nicking by RNA-guided CRISPR Cas9 for enhanced genome editing specificity.Cell,2013.154(6):p.1380-9)。この系は、任意の標的DNAに容易に組み込むことができる34bpの特異的loxP配列を必要とする部位特異的Creリコンビナーゼ(約1kb)に基づく。Cre/lox組換え系の利点の1つは、細胞環境にかかわらず効率的な組換えのための追加の補因子または配列エレメントの必要性がないことである(Schaefer,K.A.,ら、Unexpected mutations after CRISPR-Cas9 editing in vivo.Nat Methods,2017.14(6):p.547-548)。分析は、m2、m3、m7、m11、lox5171などのloxP配列の突然変異がそれら自体と容易に組み換わるが、野生型部位との組換えが著しく低いことを示した。したがって、これらの配列を、リコンビナーゼ媒介カセット交換(RMCE)による遺伝子挿入のために、高い効率忠実度で、かつ部位特異的に使用することができる(Oberstein,A.,ら、Site-specific transgenesis by Cre-mediated recombination in Drosophila.Nat Methods,(2005)2(8):583-5)。Nakanoと同僚らは、RMCEを使用して、核Creリコンビナーゼおよび適合しないloxPおよびloxP 2272系を使用して、複製中のアデノウイルスゲノム中の特定の遺伝子を目的の遺伝子で置き換えることにより、アデノウイルスベクターを作製できることを実証した(Kuhn,R.and R.M.Torres,Cre/loxP recombination system and gene targeting.Methods Mol Biol,2002.180:p.175-204)。
【0295】
(2)CRISPR/Cas9は、新しい組換えワクシニアウイルスを作製するために使用されている。CRISPR/Cas9は、Cas9プロテアーゼがシグナルガイドRNAによってマークされたDNAゲノムの所定の部位で切断する能力のために、様々な生物からゲノムを編集する方法として最近登場した(Wyatt,L.S.,P.L.EarlおよびB.Moss、Generation of Recombinant Vaccinia Viruses.Curr Protoc Mol Biol,2017.117:p.16.17.1-16.17.18)。Cas9による二本鎖切断を標的DNAに導入すると、所望の遺伝子の挿入が容易になる。Yuanと同僚らは、相同組換えアプローチと比較して、CRISPR/Cas9系を使用することにより、新しい組換えウイルスの作製(50回超)における効率の改善を示した(Falkner,F.G.and B.Moss,Transient dominant selection of recombinant vaccinia viruses.J Virol,1990.64(6):p.3108-11)。哺乳動物細胞におけるオフターゲット誘導突然変異を克服するために、Cas9ヌクレアーゼにおけるいくつかの突然変異が導入されている:より正確な切断をもたらす、N497A、R661A、Q695AおよびQ926A(Cas9高忠実度)(Mali,P.,K.M.EsveltおよびG.M.Church,Cas9 as a versatile tool for engineering biology.Nat Methods,2013.10(10):p.957-63)または一本鎖切断を提供する、D10A変異Cas9(Yuan,M.,ら、A Simple and Efficient Approach to Construct Mutant Vaccinia Virus Vectors.J Vis Exp,2016(116)。
【0296】
操作されたウイルス
実施形態では、本明明細書で提供されるCAVES系は、遺伝子操作された腫瘍溶解性ウイルスを使用して生成することができる。腫瘍溶解性ウイルスは、当技術分野で既知の方法または本明細書で提供される方法によって操作することができる。ウイルスを、限定されるものではないが、EGFP、EmGFP、mNeonGreen、EBFP、TagBFP、EYFP、TPet、GFP、BFPまたはTurboFP635を含む選択マーカーの組換え発現、および/またはサイトカイン(GM-CSF、IL2、IL10、IL12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、TNF、MIP1a、FLt3L、IFN-b、IFN-g)、ケモカイン(CCl5、CCl2、CCL19、CXCL11、RANTES)、共刺激薬(OX40L、41BBL、CD40L、B7.1/CD80、GITRL、LIGHT、CD70)、BITE、治療抗体、免疫チェックポイント阻害剤、一本鎖抗体(例えばVEGF、例えばVEGFA、VEGFB、PGF、VEGFR2、PDGFR、Ang-1、Ang-2、ANGPT1、ANGPT2、HGFに対するもの)、および免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM-3、プロドラッグ活性化剤(lacZ、シトシンデアミナーゼ酵素)、ヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体-hNISおよびアクアポリン1-AQP1に対するもの)を含む治療用タンパク質の組換え発現のために操作することができる。ウイルスを、異なるウイルスプロモーター(例えば、Pel、pL)の下で上記の組換えタンパク質の1、2種またはそれ以上を発現するように操作することができる。ウイルスは、例えば、血管新生の調節因子および免疫系共刺激因子またはチェックポイントに対する治療用タンパク質の組み合わせ、例えば、抗VEGFAおよびVEGFBおよびPGF;抗VEGFおよび抗ANGPT2;抗VEGF、抗ANGPT-2および抗CTL4;抗VEGFおよびOX40L;抗VEGF、抗ANGPT2および抗PD-1を発現するように操作することができる。
【0297】
操作されたワクシニアウイルス
複数の実施形態では、操作されたウイルスは、操作されたワクシニアウイルスである。実施形態では、ワクシニアウイルスはACAM2000およびその誘導体、例えばウイルスを増殖させることによって産生されるものである。実施形態では、ワクシニアウイルスは、配列番号70(ACAM2000)または配列番号71(CAL1)に示される配列を含むゲノムを有するものである。ACAM2000ゲノムDNAの配列決定分析により、ウイルス構造、酵素、免疫調節タンパク質、および未同定の機能を有するタンパク質をコードする241個の異なるオープンリーディングフレーム(ORF)が同定された。特定の実施形態では、選択マーカーおよび/または治療遺伝子は、当業者に周知の非必須遺伝子座に挿入することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスの元の特性を変化させることなく、ORF_157とORF_158との間の遺伝子間領域に挿入が行われる。OFR_174およびORF_175の遺伝子間領域または切断型ORF(例えば、72、73、156、157、157、159、160、174、175)などの他の遺伝子座もまた、元のウイルス特性を変化させることなく導入遺伝子を挿入するために採用することができる。ウイルスは、チミジンキナーゼ(TK)、赤血球凝集素(HA)、インターフェロンアルファ/ベータブロッカー受容体、および他の免疫調節物質などの遺伝子の不活性化によって更に弱毒化することができる。いくつかの実施形態では、F1L遺伝子座またはその一部は、目的の選択もしくは検出可能なマーカーおよび/または治療遺伝子で置き換えられてもよく、または中断されてもよい(すなわち、内因性ミトコンドリアアポトーシスの強力な阻害剤であるF1L機能の排除)。他の実施形態では、抗インターフェロンガンマ遺伝子B8Rまたはその一部は、目的の選択マーカーおよび/または治療遺伝子で置き換えられる。弱毒化ウイルスは、治療遺伝子などの外因性遺伝子を保有するための媒体であることに加えて、全身投与にとってより安全な場合がある。
【0298】
いくつかの実施形態では、ワクシニアまたはACAM2000は、EEV(細胞外エンベロープウイルス)産生を増強するために改変される。一実施形態では、EEV産生の増強は、A34Rタンパク質のアミノ酸151においてグリシンをグルタミン酸で置換する(K151E)ことによって達成される。ワクシニアウイルスは、細胞内成熟ウイルス(IMV)、細胞内エンベロープウイルス(IEV)、細胞関連エンベロープウイルス(CEV)および細胞外エンベロープウイルス(EEV)と呼ばれる各感染細胞から4つの異なるタイプのウイルス粒子を産生する。EEVは、固形腫瘍を局所的におよび局部的または遠隔腫瘍部位に迅速かつ効率的に拡大するように最適化されている。K151E突然変異は、放出されたウイルスの感染力を維持しながらEEV放出を増加させる。
【0299】
改変されていないACAM2000ウイルスおよび/または当業者に既知の1つ以上の他の改変を含む改変ACAM2000ウイルスが本明細書で提供される。本明細書に記載されるおよび/または当業者に既知の治療遺伝子および/または選択マーカーのいずれかの1つ以上を導入して、本明明細書で提供される操作されたACAM2000ウイルスを生成することができる。実施形態では、未改変ACAM2000ウイルスは配列番号70に示す配列を有するものである。他の実施形態では、未改変ACAM2000ウイルスは配列番号71に示す配列を有するものである。任意の改変ACAM2000ウイルスまたは未改変ACAM2000ウイルスを使用して、本明細書で提供されるCAVES系を作製することができる。
【0300】
例示的な免疫調節物質および治療用タンパク質
本明細書で提供されるCAVES系は、少なくとも1種のウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え治療用タンパク質の発現に十分な時間、腫瘍溶解性ウイルスを適切な担体細胞とインキュベートすることによって生成される。例示的なウイルス免疫調節物質および治療用タンパク質を以下に記載および提供する。
【0301】
免疫調節物質
ワクシニアウイルス(VACV)を含むウイルスは、腫瘍微小環境における初期抗ウイルス応答を遮断し、感染細胞を補体およびナチュラルキラー(NK)細胞による中和から保護するいくつかの宿主域免疫調節物質をコードする。これらの免疫調節物質は、細胞内(非分泌)または細胞外(分泌)であることができる。例えば、感染細胞は、補体、インターフェロン(IFN)、サイトカインおよびケモカインに結合してその機能を破壊し、セマフォリンシグナル伝達を妨害するタンパク質を分泌する。分泌された(細胞外)免疫調節物質は、白血球上のケモカインとそれらの宿主受容体との間の相互作用を防止し、感染および炎症の領域への白血球の移動を妨げることができる。細胞外免疫調節物質はまた、例えば、ウイルス感染細胞におけるTNF-α誘導性アポトーシスを中断させることによって、炎症促進性サイトカイン誘導性抗ウイルス状態を打ち消すことができる。細胞内免疫調節物質は、アポトーシスを阻害し、IFNの抗ウイルス効果を調節し、自然免疫シグナル伝達および宿主遺伝子転写を妨害する。例えば、細胞内免疫調節物質は、インターフェロンならびに炎症促進性ケモカインおよびサイトカインの産生をもたらすシグナル伝達経路を阻害する(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。異なるワクシニア株は異なる免疫調節物質をコードするため、各ウイルス株は宿主細胞と異なって相互作用する。本明細書のウイルスは、細胞内および/または細胞外免疫調節物質を発現してそれらのビルレンスを高めるように遺伝子操作することができ、あるいは免疫調節タンパク質をコードする遺伝子の欠失によって弱毒化することができる。
【0302】
本明細書のウイルスによって発現することができる細胞外ポックスウイルス免疫調節物質としては、ケモカイン阻害剤/結合タンパク質A41;TNF阻害剤/結合タンパク質CrmB、CrmC、CrmDおよびCrmE;MHC様TNF-α阻害剤TPXV2;IL-18結合タンパク質C12;白血球動員を防止するVACV CCケモカイン阻害剤(vCCI);IFN-γのその受容体への結合を遮断するIFN-γ結合タンパク質(IFN-γBP);IL-1β結合タンパク質B15;I型IFN結合タンパク質B18;II型IFN結合タンパク質B8;補体制御タンパク質VCP(C21/B27);ならびにセマフォリン7A模倣A39(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Sumnerら(2016)Vaccine 34:4827-4834;Nicholsら(2017)Viruses 9,215;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)が挙げられる。
【0303】
本明細書のウイルスによって発現することができる細胞内ポックスウイルス免疫調節物質としては、ヘマグルチニン(HA、A56);チミジンキナーゼ(TK);B5(ウイルスの播種を促進する);N1(アポトーシスのBcl-2様阻害剤およびNF-κB/IRF3活性化の阻害剤);B14およびA52(NF-κBのBcl-2様阻害剤);K7(NF-κBおよびIFN-βのBcl-2様阻害剤);F1およびM11(Bcl-2様抗アポトーシス薬);E3(PKR活性化の阻害剤、dsRNA結合タンパク質);K3(eIF2αのPKR媒介リン酸化を阻害する);C4(NF-κB活性化の阻害剤);C6(IRF3/7およびJAK/STAT阻害剤);VH1(STAT1を脱リン酸化し、IFN誘導遺伝子の発現を遮断する);A35(MHCクラスII抗原提示の阻害剤);カスパーゼ活性を阻害するB13(SPI-2/CrmA)およびB22(SPI-1);N2(IRF3阻害剤);D9およびD10(脱キャップ酵素);C16(DNA感知の阻害剤および低酸素応答の促進剤);A49、K1およびM2(NF-κB活性化の阻害剤);タンパク質169(翻訳阻害剤);vGAAP(アポトーシス阻害剤);A44(3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ);ならびにA46(TLRシグナル伝達、NF-κB、IRF3およびMAPK阻害剤)(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Sumnerら(2016)Vaccine 34:4827-4834;Nicholsら(2017)Viruses 9,215;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)が挙げられる。
【0304】
VCP(C3L)
ワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP;C3L、C21Lによってコードされる)は、ワクシニアウイルスに感染した細胞から分泌される主要なタンパク質であり、非感染細胞の表面のヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)と相互作用する。VCPはまた、HSPGとは無関係に、VACV感染細胞の表面上に発現することができる。VCPの表面発現は、ワクシニアウイルス感染細胞および細胞外エンベロープウイルス(EEV)粒子の表面に存在する別のウイルスタンパク質A56(赤血球凝集素としても知られる)との相互作用に依存している。VCPは、不可逆的であるC3およびC5コンバターゼの減衰を加速することによって、ならびにC3bおよびC4bの第I因子媒介切断および不活性化の補因子として作用することによって、古典的および代替的な補体経路の活性化を阻害する(Girgisら(2008)J.Virol.82(8):4205-4214;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。VCPをコードするC21L遺伝子を欠く欠失突然変異株は、ウサギにおいて弱毒化され、CD4+およびCD8+T細胞の浸潤の増加、ウイルス力価の減少、ならびにVACVに対する抗体の増加に関連していた(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0305】
研究は、細胞表面上に発現させる膜貫通ドメインを含むようにVCPを操作すると、補体媒介性溶解から細胞を保護することができることを示しており、VCPの存在下での溶解の3倍の減少を実証している(Rosengardら(1999)Mol.Immunol.36(10):685-697)。ワクシニア感染細胞を溶解から保護することにより、表面結合VCPはウイルス産生を延長し、ウイルス力価の増加をもたらす。細胞表面上の補体活性化の減少はまた、局所炎症および免疫系活性化を減少させるC3aおよびC5aなどの炎症促進性ペプチドの産生を減少させる(Girgisら(2008)J.Virol.82(8):4205-4214)。
【0306】
B5
補体タンパク質ファミリーのメンバーであるB5(B5Rによってコードされる)は、細胞外エンベロープウイルス(EEV)の外エンベロープに存在するI型内在性膜糖タンパク質であり、EEVの形成に必要であり、ウイルスの播種を促進する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0307】
チミジンキナーゼ(TK)
初期VACV J2R遺伝子によってコードされるVACVチミジンキナーゼ(TK)は、ウイルスゲノムから欠失されると弱毒化ワクシニアウイルス株(Yakubitskiyら(2015)Acta Naturae 7(4):113-121)をもたらすビルレンス因子である。
【0308】
HA(A56)
ワクシニアウイルス(VACVまたはVV)などのオルソポックスファミリーメンバーに対する免疫防御において重要な役割を果たすナチュラルキラー(NK)細胞は、阻害性および活性化性のシグナル伝達受容体を介して調節される。活性化シグナル伝達受容体には、NKG2D、ならびにNKp46、NKp44およびNKp30などの天然細胞傷害性受容体(NCR)が含まれる。NCRは、NK細胞の抗ウイルス活性および抗腫瘍活性のための重要な活性化受容体である(Jarahianら(2011)PLoS Pathogens 7(8):e1002195)。
【0309】
A56としても知られる赤血球凝集素(HA)(A56Rによってコードされる)は、宿主細胞へのウイルス付着を媒介し、感染細胞の融合を阻害し、感染力のタンパク質分解活性化を促進するタンパク質である(Yakubitskiyら(2015)Acta Naturae 7(4):113-121)。VACV感染細胞の表面上の後期生成物として発現されるHAは、活性化受容体NKp30およびNKp46に対するウイルスリガンドである。HA/A56は、NKp30によって引き起こされる活性化を遮断することが示されており、その結果、HA発現が顕著であるVACV発現の後期時点で感染細胞のNK溶解に対する感受性が低下する。したがって、HAはNCRの保存されたリガンドであり、感染の後期段階でのNKp30媒介性活性化に対するその遮断効果を介して免疫回避をもたらす(Jarahianら(2011)PLoS Pathogens 7(8):e1002195)。
【0310】
VACVゲノムからのA56Rの欠失は、親株と比較して、マウスのLD50を40倍減少させた。したがって、VACVにおけるHA遺伝子の不活性化は、有意な減弱をもたらす(Yakubitskiyら(2015)Acta Naturae 7(4):113-121)。
【0311】
B18
VACVタンパク質B18(B18Rによってコードされる)は、I型インターフェロンに結合し、溶液中で「デコイIFN受容体」としての活性を示し、グリコサミノグリカン(GAG)を介して細胞表面と会合すると、非感染細胞によって産生されるI型IFN、特にIFN-αを捕捉する可溶性細胞外免疫調節タンパク質である。B18が細胞表面に結合し、非感染細胞におけるIFN媒介抗ウイルス状態の誘導を妨げる場合、細胞はウイルス感染および複製に対して感受性のままである(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0312】
B8
B8(B8Rによってコードされる)は、IFN-γと細胞外で結合する可溶性VACVデコイII型IFN受容体である。IFN-γ受容体の細胞外ドメインのホモログであるB8の欠失は、マウス感染研究において、野生型VACVと比較して、VACVの減弱をもたらした(Yakubitskiyら(2015)Acta Naturae 7(4):113-121)。細胞IFN-γRとは異なり、B8はIFN-γの不在下で二量体化することができる(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0313】
B15
VACVタンパク質B15(B15Rによってコードされる)は、感染細胞によって分泌され、IL-1βに高親和性で結合し、その天然受容体への結合を妨げる可溶性IL-1Rである。研究により、B15R遺伝子を欠くウイルスは、ビルレンスの低下を示すことが示されている(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0314】
A39/A39R
A39/A39Rは、糖質ホスファチジルイノシトール連結細胞表面セマフォリンとアミノ酸配列が類似する分泌免疫調節糖タンパク質である。A39Rは感染の後期に発現され、マウス皮内モデルにおいて炎症誘発性特性を有し、感染の転帰に影響を及ぼすことが示されている(Gardnerら(2001)J.Gen.Virol.82:2083-2093)。
【0315】
CrmA/B13/SPI-2
サイトカイン応答調節因子A(CrmA)(B13/B13Rまたはセリンプロテイナーゼ阻害剤2(SPI-2)としても知られる)は、ウイルス感染過程の初期に発現され、宿主細胞の内部に留まるオルソポックスウイルスタンパク質である。CrmAはカスパーゼ-1に結合し、ポックスウイルス感染の制御に重要な炎症促進性サイトカインであるIL-1βへのIL-1β切断を遮断する。複数のカスパーゼ(例えば、カスパーゼ1、カスパーゼ8)の活性化を阻害することによって、CrmA/B13もアポトーシスを阻害する。B13は更に、成熟IL-18の形成を阻害する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Nicholsら(2017)Viruses 9,215)。
【0316】
SPI-1/B22R
ワクシニアウイルスSPI-1(B22またはB22Rとしても知られる)は、カスパーゼ活性を阻害するSPI-2/CrmAと同様の細胞内免疫調節タンパク質である。研究は、SPI-1/B22R遺伝子を欠く変異VACVがA549細胞においてより低いウイルス複製を示したことを示した。感染細胞はTNF誘導性アポトーシスに感受性であり、SPI-1がビルレンスにおいて重要な役割を果たすことを示している(Nicholsら(2017)Viruses 9,215)。
【0317】
ウイルスTNF受容体(vTNFR)
ウイルスTNF受容体(vTNFR)は、TNFαに結合し、その天然受容体への結合を妨げ、その抗ウイルス効果を軽減する可溶性の分泌デコイ受容体である。サイトカイン応答調節因子B(CrmB)、CrmC、CrmDおよびCrmE(A53)を含むvTNFRは、細胞TNF受容体TNFR1およびTNFR2の細胞外ドメインを模倣し、それらのリガンド親和性およびオルソポックスウイルスにおける発現が異なる。研究により、vTNFRが組換えVACVのビルレンスを増強することが示されている。例えば、CrmEを欠くVACV株のUSSR突然変異株は弱毒化されたが、CrmEを発現するVACV WRの組換え株はビルレンスの増加を示した(Nicholsら(2017)Viruses 9,215;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134)。
【0318】
C12
C12(C12Lによってコードされる)は、溶液中のIL-18に結合し、その天然受容体IL-18Rとの相互作用を妨げる可溶性オルソポックスウイルスタンパク質である。C12は、IFN-γのIL-12誘導産生を阻害することによってVACVのビルレンスを増加させ、これはNK細胞およびVACV特異的CD8T細胞応答を阻害する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。C12L遺伝子の欠失は、ウイルスの弱毒化をもたらし、IL-18およびIFN-γのレベルが増加し、マウスの鼻腔内感染後のNK細胞の細胞傷害性およびCTL応答が増強されることが示されている(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0319】
VACV CCケモカイン阻害剤(vCCI)
ケモカインは、白血球を感染および炎症部位に動員する小さな化学誘引性サイトカインである。ケモカインは、隣接する内皮細胞の表面上のGAGに結合し、濃度勾配を作り出し、それらのケモカイン受容体に結合することによって循環白血球を動員する。感染の初期段階中にウイルス感染細胞によって分泌されるVACVケモカイン結合タンパク質(vCKBP)としても知られるVACV CCケモカイン阻害剤(vCCI)は、CCケモカインに結合し、それらがそれらの受容体に結合するのを妨げる。これは、感染部位への白血球の動員を防ぎ、炎症を軽減する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0320】
A41
ほとんどのウイルス性CCケモカイン阻害剤は、それらの受容体結合部位でケモカインに結合し、それらとの相互作用および炎症部位への白血球の動員を妨げるが、A41(A41Lによってコードされる)は、受容体結合部位ではなく、それらのGAG結合部位でケモカインに結合する細胞外VACV免疫調節タンパク質である(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134)。A41はまた、感染の初期段階中に感染細胞によって分泌されるが、vCCIよりも低い親和性でケモカインに結合し、ケモカインがそれらのそれぞれのケモカイン受容体に結合するのを妨げない。代わりに、A41は、白血球の動員に重要な内皮細胞表面のケモカイン濃度勾配を破壊する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0321】
VH1
VACV VH1は、脱リン酸化によって転写因子STAT1(シグナル伝達・転写活性化因子1)およびSTAT2を阻害し、全てのIFN受容体からのシグナル伝達を阻害し、抗ウイルス遺伝子の発現を防止する細胞内免疫調節タンパク質(ホスファターゼ)である(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0322】
K3
K3は、eIF2αのPKR媒介リン酸化を阻害するVACV細胞内免疫調節タンパク質である。ウイルス感染細胞では、STAT1は、VACV転写中に産生されるdsRNAを検出するdsRNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の発現を誘導し、宿主タンパク質翻訳因子eIF2α(真核生物翻訳開始因子2アルファ)をリン酸化して阻害し、感染細胞における宿主およびウイルスタンパク質の合成を停止させ、アポトーシスをもたらす。K3は、eIF2αのN末端の88アミノ酸のウイルス模倣物であり、リン酸化不可能な擬似基質として作用することによってPKRに結合し、PKRによるeIF2αのリン酸化を阻害することによってPKR誘導性アポトーシスを防止する(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。
【0323】
N1
B細胞リンパ腫2(Bcl-2)タンパク質は、アポトーシス促進性または抗アポトーシス性であることができ、ミトコンドリアからのアポトーシス促進性分子の放出を調節する。ヘルペスウイルス、アデノウイルスおよびVACVを含むいくつかのウイルスは、宿主細胞死を回避するために抗アポトーシスBcl-2およびBcl-2様タンパク質を発現する。例えば、N1(N1Lによってコードされる)は、細胞内免疫調節物質として機能し、抗アポトーシスBcl-2タンパク質と構造が類似しているVACVビルレンス因子である。N1は、アポトーシス促進性タンパク質のBH3モチーフに結合し、VACV感染細胞のアポトーシスを阻害する。N1は、Bid、Bad、BakおよびBaxなどの宿主アポトーシス促進性Bcl-2タンパク質と相互作用することが示されており、IκBキナーゼ(IKK)複合体およびTANK結合キナーゼ1(TBK1)に結合し、核因子(NF)-κBおよびIRF3の活性化を阻害することによって自然免疫シグナル伝達経路を阻害することが示されている(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134)。
【0324】
F1
F1(F1Lによってコードされる)は、ポックスウイルスBcl-2様ファミリータンパク質であり、ウイルス感染細胞のアポトーシスを阻害するVACV細胞内免疫調節物質である。F1はアポトーシス促進性Bcl-2タンパク質のBH3モチーフに結合し、細胞質ゾルに見られるN1とは異なり、ミトコンドリア膜に局在し、そこでミトコンドリア膜でアポトーシスを開始するBakおよびBaxなどの宿主アポトーシス促進性Bcl-2タンパク質と相互作用する(Baharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134)。F1はまた、カスパーゼ-1の上流活性化因子であるNLRP-1に結合することによって炎症応答を低下させ(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)、カスパーゼ9に結合して阻害する(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0325】
NF-κB経路を阻害するBcl-2様タンパク質
核因子(NF)-κBは、感染に対する自然免疫応答および適応免疫応答を刺激する転写因子複合体である。TNFαおよびIL-1などの炎症促進性サイトカインに対する受容体、ならびに病原体関連分子パターン(PAMP)を認識するToll様受容体(TLR)は、NF-κB活性化をもたらすシグナル伝達経路を活性化する。VACVは、NF-κBシグナル伝達経路を阻害するN1、A52、B14およびK7を含むいくつかのBcl-2様タンパク質をコードする。N1はアポトーシスを阻害するが、BH3結合溝を欠くA52、B14およびK7は阻害しない。B14は、NF-κB活性化を阻害し、IKKβに結合し、そのリン酸化およびIκBαのリン酸化を防止することによってIKK複合体で作用する。A52およびK7は、(TRAF6およびIRAK2への結合を介して)TLR誘導シグナル伝達ならびにTLRおよびIL-1β媒介NF-κB活性化を阻害することによって、B14の上流のシグナル伝達を阻害する。K7(K7Lによってコードされる)はまた、ヒトDEADボックスRNAヘリカーゼ3(DDX3)と複合体を形成し、IFN-βプロモーター誘導に拮抗し、炎症促進性サイトカイン産生を阻害するBaharら(2011)J.Struct.Biol.175(2-2):127-134;Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0326】
A46
A46(A46Rによってコードされる)は、TLRの細胞質尾部と会合するToll/IL-1R(TIR)ドメイン含有アダプター分子(例えば、MyD88、MAL、TRIFおよびTRAM)に結合する細胞内VACV免疫調節タンパク質である。これは、次に、MAPキナーゼ、NF-κBおよびIRF3の活性化を阻害し、IFN-βの誘導を阻害する(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392)。VACV WR A46R欠失突然変異株は、対照ウイルスと比較して弱毒化されることが見出された(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0327】
NF-κB活性化を阻害する他のタンパク質
A49は、リン酸化IκBα(κBの阻害剤)を、その認識および分解を妨げることによって安定化し、その結果、IκBαが細胞質中のNF-κBに結合したままである細胞内VACVタンパク質である。細胞内VACVタンパク質C4は、IKK複合体またはその下流でNF-κB活性化を阻害するが、機構は不明のままである。VACVタンパク質E3(E3Lによってコードされる)は、PKR依存性および非依存性の機構によって、およびRNAポリメラーゼIII-dsDNA感知経路に拮抗することによってNF-κB活性化を阻害する。E3は、細胞パターン認識受容体(PRR)に結合してdsRNAを捕捉し、細胞がウイルスdsRNAを同定するのを妨げる。E3に加えて、VACV脱キャップ酵素D9およびD10は、ウイルスmRNAを脱キャップすることによってdsRNAの蓄積を防止し、PKRおよびdsRNA誘導抗ウイルス経路の活性化を防止する。VACVタンパク質K1は、IκBαの分解を防止することによってNFκB活性化を阻害する。タンパク質M2は、ホルボールミリステートアセテートによって誘導される細胞外シグナル調節キナーゼ2(ERK2)のリン酸化を低下させ、p65核移行を妨げる(Smithら(2013)Journal of General Virology 94:2367-2392;Nicholsら(2017)Viruses 9,215;Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0328】
C6
C6(C6Lによってコードされる)は、上流キナーゼTANK結合キナーゼ1(TBK1)およびIKKεを活性化するのに必要なアダプタータンパク質に結合することによって、ビルレンスを増強し、IRK3およびIRF7の活性化を阻害する細胞内免疫調節タンパク質である。これはI型IFN産生の阻害をもたらす。C6はまた、I型IFNがそれらの受容体に結合した後にJAK/STATシグナル伝達経路の活性化を阻害し、インターフェロン刺激遺伝子(ISG)の転写を妨げる。C6Lの欠失は、CD8およびCD4T細胞応答を増強することが示されている(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0329】
C16
細胞内免疫調節タンパク質であるC16は、DNA-PK複合体(DNAセンサー)のサブユニットであるタンパク質Ku70およびKu80に結合することにより、IRF3依存性自然免疫をもたらすDNAセンシングを阻害する。C16はまた、酸素センサーのプロリルヒドロキシラーゼドメイン含有タンパク質2(PHD2)に結合し、低酸素誘導性転写因子(HIF)-1αのヒドロキシル化を妨げる。これは、HIF-1αのユビキチン化および分解を防ぎ、安定化されたHIF-1αは、低酸素応答をもたらす遺伝子の転写を誘導する。C16の欠失は、CD8+およびCD4+T細胞のより速い肺動員および活性化をもたらすことが示されている(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0330】
N2
タンパク質N2は、未知の機構によってIRF3活性化を阻害するBcl-2倍を有する細胞内免疫調節タンパク質である。VACV株WRからのN2の欠失は、ビルレンスの減少および肺細胞浸潤の増加をもたらした(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0331】
タンパク質169
タンパク質169は、キャップ依存性およびキャップ非依存性翻訳(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)の開始を阻害することによって免疫応答を抑制する細胞内免疫調節タンパク質である。
【0332】
タンパク質A35
A35Rによってコードされるタンパク質A35は、MHCクラスII分子を介したT細胞への抗原提示を制限する細胞内免疫調節タンパク質である。A35R欠失突然変異株は弱毒化され、より低いVACV特異的抗体、IFN-γ分泌の減少および脾細胞による溶解の減少をもたらした(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0333】
タンパク質A44
タンパク質A44は、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(3β-HSD)であり、ビルレンスを促進する細胞内免疫調節物質である。タンパク質A44を欠くVACV株WR突然変異株は、炎症応答の増強、IFN-γレベルの増加、CD8+およびCD4+T細胞の迅速な動員、ならびにVACV感染細胞に対するより強い細胞溶解性T細胞応答をもたらした(Albarnazら(2018)Viruses 10,101)。
【0334】
vGAAP
ウイルスのゴルジ抗アポトーシスタンパク質(vGAAP)は、主にゴルジに局在し、アポトーシスを阻害する疎水性タンパク質である。VACV vGAAPは、スタウロスポリン、TNFα/シクロヘキシミド(CHX)、Fas抗体、ドキソルビシン、シスプラチンおよびC2セラミドによって誘導される内因性および外因性の両方のアポトーシス経路、ならびにBaxの過剰発現によって誘導されるアポトーシスを阻害する。vGAAPは、Ca2+の漏出をもたらし、ゴルジ装置におけるその濃度を低下させ、Ca2+の放出によって媒介されるアポトーシス経路に影響を及ぼすイオンチャネルを形成する(Nicholsら(2017)Viruses 9,215)。
【0335】
治療用タンパク質
本明細書で提供されるCAVESを生成するために使用される腫瘍溶解性ウイルスは、組換え治療用タンパク質を発現するように操作することもできる。例示的な治療用タンパク質を以下に記載し、これらのタンパク質は、本明細書で提供されるCAVES系との併用療法として、別々に投与することもできる。
【0336】
免疫チェックポイント
免疫チェックポイントは、免疫系の調節および自己免疫の予防に関与し、刺激経路および阻害経路を含む。ウイルス感染は、免疫および炎症経路および応答を刺激するが、腫瘍は、例えば、阻害性免疫チェックポイント経路を活性化して抗腫瘍免疫応答を阻害することによって、免疫系を回避するように進化している。望ましい免疫賦活性抗腫瘍応答を誘導するか、または腫瘍免疫回避を促進する免疫チェックポイント経路を阻害する分子をコードする遺伝子を付加することによる、本明細書のウイルスの改変は、ウイルスの抗腫瘍活性を改善することができる。これは、共刺激経路のアゴニズム、共阻害経路のアンタゴニズム、またはその両方によって達成することができる。例えば、本明細書のウイルスは、抗腫瘍免疫応答を改善するために、共刺激分子、または共刺激分子のアゴニスト、または腫瘍が免疫回避に使用する免疫チェックポイント経路の阻害剤を発現するように改変することができる。
【0337】
免疫チェックポイント阻害剤
免疫チェックポイント阻害剤は、自己寛容の維持に重要であるが、免疫系による検出を回避する手段として腫瘍によって過剰発現されることができる免疫抑制アンタゴニストである(Meyersら(2017)Front.Oncol.7:114)。プログラム細胞死タンパク質1(PD-1;CD279としても知られる)およびその同族リガンドであるプログラム死リガンド1(PD-L1;B7-H1およびCD274としても知られている)は、免疫応答をダウンレギュレートすることによって機能する多数の阻害性「免疫チェックポイント」の2つの例である。例えば、T細胞上のPD-1のアップレギュレーション、および抗原提示細胞(APC)と腫瘍細胞の両方で発現されるPD-L1へのその結合は、CD8T細胞シグナル伝達経路を妨害し、CD8T細胞の増殖およびエフェクター機能を損ない、T細胞寛容を誘導する。抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、ピジリズマブ)および抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、BMS-936559、アベルマブ(MSB0010718C)およびデュルバルマブ)は、抗腫瘍効果を増強するために本明細書中のウイルスによって発現されることができる。
【0338】
別の阻害性免疫チェックポイントは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4;CD152としても知られる)であり、これはT細胞上に発現され、CD80またはCD86などのAPC上の共刺激受容体に結合してこれを阻害し、同じ受容体に結合するが親和性が低い共刺激クラスター分化28(CD28)を打ち負かす。これはCD28からの刺激シグナルを遮断するが、CTLA-4からの阻害シグナルは伝達され、T細胞活性化を妨げる(Phanら(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:8372-8377を参照)。CTLA-4の阻害は、CD4Tヘルパー細胞によって媒介される免疫応答を増強し、Tregの免疫抑制効果の阻害をもたらす(Pardoll,D.M.(2012)Nat.Rev.Cancer 12(4):252-264)。イピリムマブおよびトレメリムマブなどの抗CTLA-4抗体は、抗腫瘍効果を増強するために本明細書のウイルスによってコードすることができる。
【0339】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG3;CD223としても知られている)は、MHCクラスIIライゲーション後にT細胞およびNK細胞によって発現される別のT細胞関連阻害分子であり、T細胞機能に対して負の調節効果を有する。LAG-3に対するモノクローナル抗体を使用して、LAG-3を阻害することができる。更に、共刺激分子をアップレギュレートし、IL-12産生を増加させ、腫瘍免疫応答を増強するLAG-3の可溶性形態であるLAG-3-Ig融合タンパク質(IMP321、Immuntep(登録商標))は、臨床試験において腫瘍反応性T細胞を増加させることが示されている(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0340】
T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3(A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)としても知られる、TIM-3)は、NK細胞およびマクロファージ上に発現され、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の増殖を誘導することによって免疫抑制を促進するT細胞の直接的負の調節因子である。MBG453などのTIM-3に対するモノクローナル抗体は、T細胞増殖およびサイトカイン産生を増加させることができる(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39。
【0341】
プログラム死-1ホモログ(PD-1H)としても既知のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)は、T細胞の活性化および増殖ならびにサイトカイン産生を抑制する。研究により、VISTAの遮断はTIL活性化を増加させ、腫瘍特異的T細胞応答を増強することが示されている。VISTA(例えば、JNJ-61610588)および阻害剤(例えば、経口阻害剤CA-170)に対するモノクローナル抗体が臨床試験で調査されている(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0342】
B7-H3(CD276としても既知)は、APC、NK、B細胞およびT細胞上に発現し、T細胞の活性化および増殖、ならびにサイトカイン産生を阻害する。B7-H3は、黒色腫、NSCLC、前立腺、膵臓、卵巣および結腸直腸がんを含むいくつかの種類のがんで過剰発現される。B7-H3に対するヒト化モノクローナル抗体であるエノブリツズマブ(MGA271)、および放射性ヨウ素で標識された抗B7-H3抗体である8H9は、抗腫瘍活性を示した(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0343】
Bリンパ球およびTリンパ球アテニュエーター(BTLA、またはCD272)は、そのリガンド、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)によって結合されると、B細胞およびT細胞の活性化、増殖、ならびにサイトカイン産生を阻止する、リンパ球の大部分によって発現される阻害性受容体である(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0344】
キラー細胞免疫グロブリン様受容体(CD158としても知られるKIR)は、NKおよびT細胞によって発現され、リンパ球活性化、細胞傷害活性およびサイトカイン放出を減少させる。KIRに対する抗体としては、リリルマブおよびIPH4102(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)が挙げられる。
【0345】
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)は、免疫抑制に関与し、メラノーマ、慢性リンパ性白血病、卵巣がん、CMCおよび肉腫を含むいくつかの腫瘍型において過剰発現されるトリプトファン分解酵素である。IDO阻害剤は、免疫チェックポイント療法に使用することができ、BMS-986205、インドキシモドおよびエパカドスタット(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)を含む。
【0346】
更に、アデノシン受容体A2aRはT細胞応答を阻害し、その欠失は感染に対する炎症応答を増強することが示されている。A2aRは、アデノシン結合を遮断する抗体によって、またはアデノシン類縁体によって阻害することができる(Pardoll,D.M.(2012)Nat.Rev.Cancer 12(4):252-264)。
【0347】
本明細書のウイルスによるがん免疫療法の標的となることができる他の阻害性免疫チェックポイント分子としては、限定されるものではないが、シグナル調節タンパク質α(SIRPα)、プログラム死リガンド2(PD-L2)、インドールアミン2、3-ジオキシゲナーゼ(IDO)1および2、ガレクチン-9、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)、ヘルペスウイルス侵入メディエーター(HVEM)、CTNNB1(β-カテニン)、TIM1、TIM4、CD39、CD73、B7-H4(VTCN1とも呼ばれる)、B7-H6、CD47、CD48、CD80(B7-1)、CD86(B7-2)、CD112、CD155、CD160、CD200、CD244(2B4)、ならびに癌胎児抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1、またはCD66a)が挙げられる。
【0348】
免疫チェックポイント阻害剤は、応答する患者において抗がん療法の成功を実証しているが、多くの患者は、おそらくTMEにおける活性な腫瘍特異的T細胞の欠如のために応答しない。腫瘍溶解性ウイルス療法は抗腫瘍適応免疫を誘導するので、腫瘍溶解性ウイルス療法は免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせられてきた。例えば、T-VECとCTLA-4の阻害の組み合わせは、メラノーマの処置をもたらすことが示されている(Meyersら(2017)Front.Oncol.7:114)。
【0349】
本明細書に記載のウイルスおよび本明明細書で提供されるワクシニアウイルスは、免疫チェックポイントの阻害剤を発現するように操作することができる。そのような阻害標的としては、限定されるものではないが、CTLA-4、PD-1、PD-L1、TIM-3およびLAG-3が挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤としては、例えば、抗PD-1抗体(例えば、ペンブロリズマブ、ニボルマブ)、抗PD-L1抗体(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブ)、抗CTLA-4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗TIM-3抗体(例えば、MBG453)、および抗LAG-3抗体(例えば、レラトリマブ/BMS-986016)などの抗体が挙げられる。
【0350】
共刺激分子
阻害経路は免疫系を減弱させるが、共刺激分子は腫瘍細胞に対する免疫応答を増強する。したがって、共刺激経路は腫瘍細胞によって阻害され、腫瘍形成を促進する。本明細書に記載および提供されるウイルスは、共刺激分子、例えば、CD27、CD70、CD28、CD30、CD40、CD40L(CD154)、CD122、CD137(4-1BB)、4-1BBL、OX40(CD134)、OX40L(CD252)、CD226、グルココルチコイド誘発TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、ヘルペス-ウイルス侵入メディエーター(HVEM)、LIGHT(TNFSF14としても知られている)、B7-H2、および誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278としても知られる)を発現するように操作することができる。例えば、マウス腫瘍における4-1BBLの発現は免疫原性を増強し、OX40Lの発現が増加した樹状細胞(DC)の腫瘍内注射は、マウスモデルにおいて腫瘍拒絶をもたらすことができることが示されている。研究はまた、組換えGITRを発現するアデノウイルスのB16黒色腫細胞への注射がT細胞浸潤を促進し、腫瘍体積を減少させることを示した。
【0351】
4-1BB、OX40およびGITRなどの分子に対する刺激抗体もまた、免疫系を刺激するためにウイルスによってコードすることができる。例えば、アゴニスト性抗4-1BBモノクローナル抗体は、抗腫瘍CTL応答を増強することが示されており、アゴニスト性抗OX40抗体は、移植可能な腫瘍モデルにおいて抗腫瘍活性を増加させることが示されている。更に、アゴニスト性抗GITR抗体は、抗腫瘍応答および免疫を増強することが示されている(Peggsら(2009)Clinical and Experimental Immunology 157:9-19)。
【0352】
OX40(CD134)はTNF受容体スーパーファミリーのメンバーであり、そのリガンド(OX40L)と共に、T細胞の活性化、増強、増殖および生存、ならびにNK細胞機能の調節をもたらす。アゴニスト性モノクローナル抗体を使用してOX40を活性化し、免疫系による抗腫瘍活性を増加させることができる。これらは、例えば、MOXR0916、PF-04518600(PF-8600)、MEDI6383、MEDI0562、MEDI6469、INCAGN01949およびCSK3174998(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)を含む。
【0353】
グルココルチコイド誘発TNFRファミリー関連タンパク質(GITR)は、T細胞およびNK細胞によって発現され、その発現がT細胞活性化後に増加する共刺激細胞表面受容体である。そのリガンドであるGITRLは、APCおよび内皮細胞によって発現され、免疫系のアップレギュレーション、白血球の接着および遊走において役割を果たす。アゴニスト性GITR抗体としては、TRX-518、BMS-986156、AMG228、MEDI1873、MK-4166、INCAGN01876およびGWN323(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)が挙げられる。
【0354】
誘導性T細胞共刺激因子(ICOS;CD278としても知られる)は、主にCD4T細胞によって発現され、増殖およびサイトカイン産生の共刺激因子である。ICOSのアゴニスト抗体としては、JTX-2011、GSK3359609およびMEDI-570(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)が挙げられる。
【0355】
4-1BB(CD137)は、そのリガンドである4-1BBLに結合して免疫細胞の増殖および活性化を引き起こす、T細胞、NK細胞およびAPCによって発現される誘導性共刺激受容体である。抗4-1BBアゴニストは、免疫媒介抗腫瘍活性を増加させることが示されており、ウトミルマブ(PF-05082566)およびウレルマブ(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)が挙げられる。
【0356】
CD27は、そのリガンドであるCD70に結合した後、T細胞のエフェクター細胞およびメモリー細胞への活性化および分化ならびにB細胞のブーストをもたらすTNF受容体ファミリーのメンバーである。アゴニストCD-70抗体としては、ARGX-110およびBMS-936561(MDX-1203)が挙げられ、アゴニストCD27抗体としては、バリルマブ(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)が挙げられる。
【0357】
CD40はTNF受容体ファミリーの別のメンバーである。CD40はAPCおよびB細胞によって発現され、そのリガンドであるCD154(CD40L)は活性化T細胞によって発現される。CD40とCD154との間の相互作用は、B細胞を刺激してサイトカインを産生させ、T細胞活性化および腫瘍細胞死をもたらす。CD40に対するモノクローナル抗体としては、CP-870893(アゴニスト)、APX005M(アゴニスト)、ADC-1013(アゴニスト)、ルカツムマブ(アンタゴニスト)、Chi Lob 7/4(アゴニスト)、ダセツズマブ(部分アゴニスト)、SEA-CD40(アゴニスト)およびRO7009789(アゴニスト)が挙げられる(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0358】
他の発現産物
免疫調節タンパク質、免疫チェックポイント阻害剤および共刺激分子(およびそれらのアゴニスト)に加えて、本明細書のウイルスは、それらの抗腫瘍効果を増強するために他の分子、例えば、プロスタグランジンE2/COX-2阻害剤、栄養枯渇酵素(例えば、アルギナーゼ、アルギニンデシミナーゼ、アスパラギナーゼ)、サイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、TNF-α、TGF-β)、ケモカイン(例えば、CCL2、CCL5、CCL19、CXCL11、RANTES)、BiTE(例えば、ブリナツモマブ(MT-103)、ソリトマブ(MT110)、MT-111、BAY2010112(AMG112)、カツマキソマブ)、腫瘍ネオ抗原および腫瘍関連抗原(例えば、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、がん精巣抗原(CTA)、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)、E6/E7、SV40、MART-1、PRAME、CT83、SSX2、BAGEファミリー、CAGEファミリー、上皮性腫瘍抗原(ETA)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、メラノーマ関連抗原(MAGE)、チロシナーゼ、CD19、GP100、テロメラーゼ、サイクリンB1、サバイビン、メソテリン、EPHA2、HER2)、血管新生阻害剤、例えば、腫瘍血管リプログラミングのための(例えば、ベバシズマブ、ゲフィチニブ、サリドマイド(Immunoprin)、レナリドミド、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))、テムシロリムス(Torisel(登録商標))、パゾパニブ、カボザンチニブ、エベロリムス、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、レゴラフェニブ、バンデタニブ、タニビルマブ、オララツズマブ(Lartruvo(登録商標))、ネスバクマブ、AMG780、MEDI3617、バニシズマブ、リロツムマブ(AMG102)、フィクラツズマブ、TAK-701、オナルツズマブ(MetMab)、エミベツズマブ、アフリベルセプト、イマチニブ)、および他の治療用抗体(例えば、アレムツズマブ(Campath(登録商標))、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(登録商標))、オファツムマブ(Arzerra(登録商標))、リツキシマブ(Rituxan(登録商標)/MabThera(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、ブレンツキシマブベドチン(Adcetris(登録商標))、トシツモマブ、ダラツムマブ(Darzalex(登録商標))、ジヌツキシマブ(Unituxin(登録商標))、エロツズマブ(Empliciti(商標))、ネシツムマブ(Portrazza(商標))、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))およびペルツズマブ(Perjeta(登録商標)))などを発現するように操作することができる。ウイルスは、レポーター遺伝子およびイメージング分子、例えば、限定されるものではないが、蛍光タンパク質、発光タンパク質、NISおよびアクアポリン1を発現するように改変することができる。
【0359】
プロスタグランジンE2遮断
シクロオキシゲナーゼ(COX-2)を介したプロスタグランジンE2(PGE2)の産生は、MDSC腫瘍浸潤、免疫抑制表現型の維持、およびCTL活性の阻害をもたらすことが示されている。COX-2/PGE2経路の遮断は、腫瘍免疫応答を増強することが示されている。例えば、プロスタグランジン不活性化酵素ヒドロキシプロスタグランジン脱水素酵素15-(NAD)(HPGD)を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスは、非毒性様式で腫瘍におけるMDSCの数の減少をもたらした。HPGDの発現は、T細胞の誘引を増強し、抗PD-1抗体を含む種々の免疫療法に対して耐性腫瘍を感作することが見出された。別の研究では、COX-2活性を遮断するためのアスピリンの使用は、抗PD-1療法に対して腫瘍を感作することが示された。PGE2枯渇抗体、例えばセレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ならびにPGE2受容体EP2およびEP4のアゴニストもまた、がん免疫療法を増強するためのPGE2阻害/遮断に使用することができる(Houら(2016)Cancer Cell 30:108-119;Miaoら(2017)Oncotarget 8(52):89802-89810)。
【0360】
栄養素枯渇酵素
がんは制御不能な成長を特徴とし、腫瘍細胞には特定の栄養要求性があり、正常細胞よりも栄養要求性が高い結果として、栄養枯渇酵素を抗がん治療に使用することができる。例えば、腫瘍細胞を、アスパラギン、アルギニンおよびグルタミンを枯渇させることができ、カスパーゼ依存性アポトーシスまたは自己貪食細胞死をもたらす。
【0361】
アスパラギナーゼ
アスパラギンは、細胞呼吸およびタンパク質合成に関与し、神経内分泌組織において神経伝達物質としても作用する。研究により、アスパラギンが、がん細胞のアポトーシスを抑制することができることも示されている。アスパラギナーゼは、アスパラギンをアスパラギン酸に変換する酵素である。L-アスパラギナーゼによるL-アスパラギンの枯渇はアポトーシスを誘導することができ、いくつかのがんの処置に有用となる。例えば、アスパラギナーゼは、ALL細胞が合成することができない細胞外アスパラギンを枯渇させる小児急性リンパ芽球性白血病(ALL)の処置に使用される。治療用アスパラギナーゼは、大腸菌(E.coli)またはルウィニア・クリサンテミ(Erwinia chrysanthemi)に由来することができ、PEG化製剤としても存在する。しかしながら、細菌由来アスパラギナーゼは、しばしば、局所的な発疹から生命を脅かすアナフィラキシーにまで及ぶことができる抗アスパラギナーゼ抗体の生成に起因する有害な免疫反応をもたらす。これらの有害反応は、成人における治療を著しく妨げる。PEG化アスパラギナーゼは、より長い血清半減期を有し、より低頻度の用量を投与することを可能にし、細菌性アスパラギナーゼ製剤よりも少ない有害反応をもたらす(FungおよびChan(2017)Journal of Hematology&Oncology 10:144;Koprivnikarら(2017)OncoTargets and Therapy 10:1412-1422)。
【0362】
L-アスパラギナーゼは、治療のために赤血球(RBC)に搭載させることができ、この製剤は、いくつかの初期段階の臨床試験で試験されている。酵素はRBCにカプセル化されたままであり、抗体の結合を妨げ、身体からのクリアランスを遅らせ、有害反応のリスクを低下させる。RBC封入アスパラギナーゼを投与された患者は、大腸菌アスパラギナーゼを注射された患者よりもアレルギー反応が少ないことが研究により示されている(Koprivnikarら(2017)OncoTargets and Therapy 10:1412-1422)。
【0363】
細菌L-アスパラギナーゼはまた、L-グルタミンをL-グルタメートに分解し、グルタミン枯渇をもたらすことが示されている。がん細胞は、ヌクレオチドおよびグルタチオンの合成、他のアミノ酸の合成、またはエネルギーのためのATPの生成に使用することができるグルタミンに対する高い需要を有する。グルタミン枯渇は、がん細胞におけるMYC媒介性アポトーシスをもたらす(FungおよびChan(2017)Journal of Hematology&Oncology 10:144)。
【0364】
アルギニン枯渇
アルギニンは、ナノモル濃度で腫瘍形成性であることができる一酸化窒素(NO)などのがん関連因子の前駆体である。アルギニン枯渇剤には、PEG化アルギニンデイミナーゼ(ADI)およびPEG化アルギナーゼIが含まれる。ADIはアルギニンをシトルリンに変換する。これはヒト細胞によって産生されず、微生物に由来し、有害な免疫応答をもたらすことができる外来タンパク質となる。例えばADI-PEG20を生成するためのPEG化は、免疫原性を低下させ、半減期を増加させることが示されている。ADI-PEG20は、前臨床試験において、腫瘍成長を効果的に抑制し、種々のがん型においてアポトーシスおよびオートファジーを誘導することが見出された。更に、黒色腫、肝細胞癌および中皮腫の処置のためにADI-PEG20を使用する臨床研究は、それが患者において忍容性が良好であることを示している(FungおよびChan(2017)Journal of Hematology&Oncology 10:144)。
【0365】
アルギニンをオルニチンに変換するPEG化ヒトアルギナーゼI(PEG-ARG I)は、がんの処置のために臨床研究中である。PEG-ARG Iを使用した前臨床試験は、それが腫瘍細胞増殖を抑制し、肝細胞癌においてアポトーシスを誘導する;急性骨髄性白血病(AML)細胞において壊死性細胞死を誘導する;ALL細胞のアポトーシスを誘導する;マウスの皮下移植黒色腫を抑制する;前立腺癌細胞においてオートファジーを誘導する;膵臓がん細胞においてアポトーシスを誘導し、皮下移植された膵臓がんマウスモデルにおいて腫瘍成長を抑制する;および中皮腫細胞の増殖を抑制し、インビボで中皮腫細胞のアポトーシスを誘導することを示した。肝細胞癌の処置におけるPEG化アルギナーゼIの使用を調査する臨床試験は、薬物が良好に忍容され、患者の血清に中和抗体が検出されないことを示した(FungおよびChan(2017)Journal of Hematology&Oncology 10:144)。
【0366】
サイトカインおよびケモカイン
いくつかの実施形態では、本明細書のウイルスは、限定されないが、GM-CSF、IL-2、IL-7、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、TNF-αおよびTGF-βを含むサイトカインを発現して免疫系を刺激するように操作することができる。サイトカインは、腫瘍部位で免疫エフェクター細胞および間質細胞を刺激し、細胞傷害性細胞による腫瘍細胞認識を増強する。いくつかの実施形態では、ウイルスは、例えばRANTES、CCL2、CCL5、CCL19およびCXCL11などのケモカインを発現するように操作することができる。ケモカインは、免疫細胞の炎症部位への遊走、ならびに免疫細胞の成熟および適応免疫応答の生成に関与する。
【0367】
GM-CSF
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、がんの処置において、例えばシプロイセル-T(前立腺癌用)などのがんワクチンにおいて使用されている。GM-CSFを発現する腫瘍溶解性ウイルス、例えばtalimogene laherparepvec(T-VEC、Imlygic(登録商標))およびJX-594もまた、がんの処置をもたらすことが示されている。単剤GM-CSFは、転移性病変への直接注射後に黒色腫において抗腫瘍活性を示す。GM-CSFは、単球のDCへの分化を促進し、ウイルス誘導性腫瘍溶解後のDC表面上の抗原提示を促進し、NK細胞の動員および腫瘍特異的細胞傷害性T細胞の誘導をもたらす(Meyersら(2017)Front.Oncol.7:114;Lee,S.and Margolin,K.(2011)Cancers 3:3856-3893)。
【0368】
インターロイキン(IL)
がんの処置のために承認された最初のサイトカインであったインターロイキン-2(IL-2)は、CTL増殖の活性化および促進、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の生成、Treg細胞の増殖および増殖の促進、TILの刺激、ならびにT細胞、B細胞およびNK細胞の増殖および分化の促進を含むいくつかの機序による免疫系の活性化に関与している。組換えIL-2(rIL-2)は、転移性腎細胞癌(RCC)および転移性黒色腫(Sheikhiら(2016)Iran J.Immunol.13(3):148-166)の処置についてFDAに承認されている。
【0369】
IL-10は、IFNγ、TNFα、IL-1βおよびIL-6などの炎症促進性サイトカインの分泌の阻害、ならびにT細胞機能の阻害をもたらすMHC分子および共刺激分子の発現の阻害をもたらすサイトカインである。研究により、IL-10がCD8の活性化および増殖を誘導し、抗腫瘍効果をもたらすことが示されている。黒色腫患者においてペンブロリズマブ(抗PD-1抗体)と組み合わせてPEG化組換えヒトIL-10であるAM0010を使用した研究(Marin-Acevedoら(2018)Journal of Hematology&Oncology 11:39)。
【0370】
抗原提示細胞によって分泌されるIL-12は、NK細胞およびT細胞によるIFN-γの分泌を促進し、腫瘍血管新生を阻害し、NK、CD8T細胞およびCD4T細胞の活性化および増殖をもたらし、CD4Th0細胞のTh1細胞への分化を促進し、腫瘍細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を促進する(Sheikhiら(2016)Iran J.Immunol.13(3):148-166)。IL-12は、黒色腫、結腸癌、乳癌および肉腫のマウスモデルにおいて抗腫瘍効果を示すことが示されている(Lee,S.and Margolin,K.(2011)Cancers 3:3856-3893)。
【0371】
IL-15は、NKおよびCD8T細胞を活性化することによって抗腫瘍免疫を増強し、メモリーT細胞を活性化することによって長期抗腫瘍免疫を誘導する(Sheikhiら(2016)Iran J.Immunol.13(3):148-166)。
【0372】
IL-21は、活性化されたCD4T細胞によって産生され、CD4およびCD8T細胞の増殖を促進し、CD8T細胞およびNK細胞の細胞傷害性を増強する。IL-21は、メラノーマのマウスモデルにおいて抗腫瘍効果を示している(Lee,S.and Margolin,K.(2011)Cancers 3:3856-3893)。
【0373】
インターフェロン(IFN)
IFN-αおよびIFN-βを含むI型インターフェロン(IFN)は、ほとんど全ての細胞型によって分泌され、腫瘍に対する抗増殖効果およびアポトーシス促進効果を有する強力な免疫調節物質である。I型IFNは、腫瘍細胞表面上のMHCクラスI分子の発現を誘導し、DC成熟を媒介し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、NKおよびマクロファージを活性化し、腫瘍新生血管に対して抗血管形成効果を有することができ、腫瘍細胞に対して細胞増殖抑制およびアポトーシス効果を発揮することができる(Lee,S.and Margolin,K.(2011)Cancers 3:3856-3893)。
【0374】
IFN-α(Intron(登録商標)/Roferon(登録商標)-A)は、有毛細胞白血病、悪性黒色腫、AIDS関連カポジ肉腫および濾胞性非ホジキンリンパ腫の処置に承認されており、慢性骨髄性白血病(CML)、腎細胞癌、神経内分泌腫瘍、多発性骨髄腫、非濾胞性非ホジキンリンパ腫、デスモイド腫瘍および皮膚T細胞リンパ腫の処置にも使用されている。
【0375】
II型IFNであるIFN-γは、NK細胞、NKT、CD4+T細胞、CD8+T細胞、APCおよびB細胞によって分泌される。IFN-γはマクロファージを活性化し、APC上のMHCクラスIおよびII分子の発現を誘導し、CD4+T細胞のTh1分化を促進し、JAK/STATシグナル伝達経路を活性化する。更に、IFN-γは抗血管新生特性を有し、いくつかの悪性細胞に対して細胞傷害性であることが示されており、IL-2およびIL-12などの他のサイトカインによって媒介される抗腫瘍活性を調節することができる(Lee,S.and Margolin,K.(2011)Cancers 3:3856-3893)。
【0376】
TNF-α
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)は、活性化マクロファージ、T細胞およびNK細胞によって産生され、腫瘍細胞表面受容体への結合によるアポトーシスの誘導、T-Reg細胞の遮断、ならびにマクロファージおよびNK細胞の活性化、腫瘍血管系の破壊および血管新生の防止、好中球および単球の誘引および刺激、腫瘍関連マクロファージのM1抗腫瘍段階への促進、ならびに好酸球様細胞によるIL-13発現の下方制御および腫瘍誘導単球の免疫抑制表現型への分化の阻害を介して抗腫瘍活性を示す。全身投与されたTNF-αを使用する臨床試験は、用量制限毒性によって制限されたが、TNF-αを腫瘍内投与した研究は、例えば、カポジ肉腫および肝転移の処置に成功している(Josephsら(2018)J.Transl.Med.16:242)。
【0377】
TGF-β
TGF-βは、T-ヘルパー17(Th17)、Th9および常在メモリーT細胞(Trm)などの炎症性T細胞の分化を促進し、CD4+およびCD8+のT細胞の生存を促進することができるサイトカインである(DahmaniおよびDelisle(2018)Cancers 10,194)。
【0378】
二重特異性T細胞誘導(BiTE(登録商標))
二重特異性T細胞誘導(BiTE(登録商標))構築物は、がん免疫療法に使用される人工二重特異性モノクローナル抗体のクラスであり、一方のscFvが細胞傷害性T細胞の表面のCD3に結合し、他方が特定の腫瘍関連抗原に結合するように、2つの一本鎖可変断片(scFv)を連結することによって形成される。したがって、BiTE(登録商標)はT細胞を腫瘍細胞に標的化し、MHCクラスIまたは共刺激分子とは無関係にT細胞活性化、サイトカイン産生および腫瘍細胞傷害性を刺激する。臨床試験中のBiTE(登録商標)としては、非ホジキンリンパ腫および急性リンパ芽球性白血病の処置のために調査されており、CD19を対象とするブリナツモマブ(MT-103);胃腸がんおよび肺がんの処置について研究されており、EpCAM抗原を対象とするソリトマブ(MT110);癌胎児性抗原(CEA)を標的とし、胃腸腺癌の処置において研究されているMT-111;ならびに前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とし、前立腺癌の処置のために研究されているBAY2010112(AMG112)が挙げられる。カツマキソマブ(Removab(登録商標))は、CD3およびEpCAMを標的とする二重特異的ラット-マウスハイブリッドモノクローナル抗体であり、悪性腹水の処置に使用されている。開発中の他のBiTE(登録商標)には、EGFR、EphA2、Her2、ADAM17/TACE、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)を標的とするものが含まれる(Huehlsら(2015)Immunol.Cell Biol.93(3):290-296)。
【0379】
腫瘍関連抗原および腫瘍ネオ抗原
がんワクチンによって標的化することができる腫瘍関連抗原(TAA)は、腫瘍細胞において過剰発現されるが、正常組織によっても発現される。結果として、TAAを標的とする療法は、低い治療効率、中枢性および末梢性免疫寛容ならびに自己免疫をもたらすことができる。一方、腫瘍特異的ネオ抗原は、腫瘍細胞におけるランダムな体細胞の突然変異に由来し、非癌性細胞には見られない。したがって、腫瘍ネオ抗原を標的とするがんワクチンは、特異性、有効性および安全性を高める可能性があり、黒色腫、膵臓がん、結腸直腸がん、肉腫、乳がんおよび肺がんを含むいくつかの種類のがんの処置における前臨床および初期臨床試験で結果を実証している(Guoら(2018)Front.Immunol.9:1499;BendjamaおよびQuemeneur(2017)Human Vaccines&Immunotherapeutics 13(9):1997-2003)。
【0380】
ネオ抗原ベースのワクチンには、ペプチドベース、核酸(mRNA/DNA)ベース、ヒト細胞ベース(例えば、インビトロ/エクスビボでパルスされた樹状細胞)および生ベクターベース(ウイルスまたは細菌)ワクチンが含まれる。生ベクターは、抗原提示細胞(APC)をより効率的に標的化することができ、樹状細胞ベースのワクチンよりも調製が容易で費用がかからない魅力的な送達系を提示する。例えば、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)の弱毒化形態は、ネオ抗原ワクチン送達のためにAdvaxis(ニュージャージー州プリンストン)によって開発されている。アデノウイルス(例えば、Exovax;NousCom、スイス、バーゼル)、αウイルス、ポックスウイルスおよびレンチウイルス(例えば、ZVex(登録商標);ImmuneDesign、ワシントン州シアトル)もまた、ネオ抗原ワクチンの送達に使用されている。改変ウイルスアンカラ(MVA)などのポックスウイルスは、遺伝子操作に適した大きなゲノムを有し、多数のタンパク質抗原の挿入を可能にする。例えば、MVAベースのワクチンには、ヒトパピローマウイルス由来のE6抗原およびE7抗原を標的とし、高悪性度子宮頸部上皮内新生物を処置するために使用されたTG4001(Tipapkinogene sovacivec)が含まれる。他のMVAベースの腫瘍ネオ抗原ワクチンには、サイトカイン(LFA-3、ICAM-1およびB7.1)を刺激することに加えて、非小細胞肺がんの処置に成功したTG4010(Mesmulogene ancovacivec)、および前立腺特異的抗原(PSA)を発現し、前立腺癌の処置をもたらすことが示されているProstvac(登録商標)(Rilimogene galvacirepvec)が含まれる(BendjamaおよびQuemeneur(2017)Human Vaccines&Immunotherapeutics 13(9):1997-2003)。
【0381】
本明細書に記載および提供されるウイルスは、腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(ネオ抗原)をコードすることができ、それには、限定されるものではないが、例えば、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、がん精巣抗原(CTA)、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)、E6/E7、SV40、MART-1、PRAME、CT83、SSX2、BAGEファミリー、CAGEファミリー、上皮腫瘍抗原(ETA)、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、メラノーマ関連抗原(MAGE)、TACE/ADAM17、チロシチロシナーゼ、CD19、GP100、テロメラーゼ、サイクリンB1、サバイビン、メソテリン、EPHA2、B細胞抗原(BMCA)およびHER2が含まれる。
【0382】
血管形成阻害剤/腫瘍血管再プログラミング/血管正常化
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるウイルスは、(例えば、腫瘍血管のリプログラミングのため)血管新生阻害剤をコードすることができる。血管形成は、がんの進行の周知の一因であり、血管形成阻害剤は、特に他の抗がん治療と組み合わせて使用される場合、がん治療中の新たな血管の形成を防止するために使用することができ、それによって腫瘍への栄養素および/または酸素の供給を遮断する。血管形成活性化因子として作用し、血管形成阻害剤によって標的化することができるタンパク質としては、血管内皮増殖因子(VEGF;例えば、(VEGFA、VEGFB)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR2)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF、FGF2)、アンギオゲニン、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-α、TGF-β、腫瘍壊死因子(TNF)-α、血小板由来内皮増殖因子、顆粒球コロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-8(IL-8)、肝細胞増殖因子(HGF)、アンジオポエチン(例えば、ANGPT-1、ANGPT-2)、胎盤由来増殖因子(PDGF)およびPDGF受容体(PDGFRa)、ならびに上皮増殖因子(EGF)(Rajabi,M.and Mousa,S.A.(2017)Biomedicines 5,34;Kongら(2017)Int.J.Mol.Sci.18,1786)が挙げられる。
【0383】
研究は、血管形成を遮断することに加えて、血管形成阻害剤を使用するがん免疫療法が、腫瘍血管系の安定化および/または正常化に対するそれらの効果によって増強することができることを示している(そのような用量は、血管形成を遮断する用量よりも低いことができる)(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、Huangら、Cancer Res.、73(10):2943-2948(2013);Matuszewskaら、Clin.Cancer Res.、25(5):1624-1638(2019);Lanitisら、Curr.Opin.Immunol.、33:55-63(2015);およびBykovら、Clin.Cancer Res.、25(2):1446-1448(2019)を参照)。酸素および栄養要求を満たすために、腫瘍は、低酸素、癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子の喪失に応答してVEGFなどの因子を分泌することによって血管新生のバージョンを開始する。結果として生じる血管は、不規則な分岐、基底膜の完全性の喪失、および血管周囲細胞の不十分または欠如などの構造異常によって特徴付けられ、腫瘍コアへのがん治療の送達において非効率性をもたらす。更に、腫瘍における限られた血管灌流は、腫瘍微小環境における低酸素および酸性度を選択し、治療薬の有効性を制限し、転移を悪化させることができる(例えば、Matuszewskaら、Clin.Cancer Res.、25(5):1624-1638(2019)およびそこに引用されている参考文献を参照)。更に、血管を裏打ちする内皮細胞は、T細胞活性を抑制し、それらを破壊の標的とし、接着分子の調節解除を介してそれらが腫瘍に侵入するのを阻止することができる(Lanitisら、Curr.Opin.Immunol.、33:55-63(2015)。
【0384】
最近の研究は、OV(腫瘍溶解性ウイルス)療法の有効性が、血管新生をダウンレギュレート/阻害および/または抗血管新生をアップレギュレートすることによって増加することができることを実証している。単剤としてのOV療法の投与は腫瘍増殖を減少させるのに有効であることができるが、ウイルスの投与は血管遮断を開始する。以前は、遮断は、ウイルスの捕捉を促進することによって直接腫瘍溶解を最大化する潜在的な利点と見なされていた。しかしながら、OV療法は、最適な有効性のために複数回用量で投与されることが多く、血管破壊が誘発されると、その後の用量のOVの取り込みを損なうことができる。更に、腫瘍部位への免疫細胞の送達を損なうことができる(例えば、Matuszewskaら、Clin.Cancer Res.、25(5):1624-1638(2019)およびそこに引用されている参考文献を参照)。Matuszewskaら(Clin.Cancer Res.、25(5):1624-1638(2019)は、卵巣がんのインビボマウスモデルにおいて、腫瘍溶解性ウイルス(NDV;ニューカッスル病ウイルス)を抗血管新生タンパク質である3TSRタンパク質と同時投与すると、腫瘍灌流が増強され、血管構造が正常化し、腫瘍内の低酸素が減少し、その結果、いずれかの処置単独と比較した場合、原発性腫瘍の成長、腹水および転移の改善された減少がもたらされることを見出した。
【0385】
本明細書で提供されるCAVES組成物ならびに関連する使用方法および処置方法は、血管新生促進因子をダウンレギュレートするおよび/または抗血管新生因子をアップレギュレートするものを含む、血管新生を阻害する分子をコードするウイルスを含むことができる。あるいは、または更に、本明細書で提供されるCAVES組成物は、血管新生阻害剤と組み合わせて投与することができる。血管新生阻害剤は、腫瘍細胞とその局所細胞環境との相互作用によって開始されるシグナルのカスケードのバランスを回復させることによって、血管正常化を誘導し、腫瘍血管系を修復することができる(腫瘍血管再プログラミング)。
【0386】
成長中の血管系の内皮細胞を標的とする血管新生の直接阻害剤には、アンジオスタチン、エンドスタチン、アレスチン、カンスタチンおよびタンスタチンが含まれる。腫瘍細胞または腫瘍関連間質細胞を標的とする間接的血管新生阻害剤は、血管新生促進タンパク質の発現または活性を遮断することによって作用する。例えば、ゲフィチニブは、結腸がん、乳がん、卵巣がんおよび胃がんの処置に使用される小分子EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。ベバシズマブ(Avastin(登録商標))は、VEGFに対する組換えヒト化モノクローナル抗体であり、腫瘍由来VEGF-Aを遮断し、新たな血管の発生を防ぎ、腫瘍増殖阻害をもたらす。他の血管新生阻害剤としては、サリドマイド(Immunoprin)、イマチニブ、レナリドマイド、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))、テムシロリムス(Torisel(登録商標))、パゾパニブ、カルボザンチニブ、エベロリムス、ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))、レゴラフェニブ、バンデタニブ、タニビルマブ、オララツズマブ(Lartruvo(登録商標))、ネスパクマブ、AMG780、MEDI3617、バニシズマブ、リロツムマブ(AMG102)、フィクラツズマブ、TAK-701、オナルツズマブ(MetMab)、エミベツズマブおよびアフリベルセプト(Eylea、Zaltrap(登録商標))が挙げられる(Rajabi,M.and Mousa,S.A.(2017)Biomedicines 5,34;Kongら(2017)Int.J.Mol.Sci.18,1786)。
【0387】
VEGFは、新生物組織における強力な血管新生活性化因子であり、腫瘍血管新生において重要な役割を果たす。例えば、研究により、以下のことが示されている:VEGF受容体(VEGFR)は、白血病、非小細胞肺がん(NSCLC)、胃がんおよび乳がんにおいて発現される;高レベルのVEGF mRNAは、NSCLCにおける5年生存率の低下と相関する;乳がんにおけるVEGF-A発現は、乳がん細胞の増殖、生存および転移を促進する;胃がんにおけるVEGF-AおよびVEGF-Cの過剰発現は予後不良と関連しているが、VEGF-AおよびVEGF-Cのサイレンシングは増殖および腫瘍増殖を有意に阻害する。VEGF-AおよびVEGFR-2複合体の形成を阻害する組換えヒト化免疫グロブリンG(IgG)抗体であるベバシズマブ(Avastin(登録商標))は、化学療法と組み合わせた転移性結腸直腸がんの処置について2004年にFDAによって承認され、転移性非扁平上皮NSCLC、転移性腎細胞癌、乳がん、上皮卵巣がんおよび神経膠芽腫を含む様々な他のがんを処置するために使用されている。アフリベルセプト(Zaltrap(登録商標))は、VEGF-A、VEGF-BおよびP1GFの活性を阻害するFc融合タンパク質であり、オキサリプラチンでの処置に抵抗性であるか、または処置後に進行した転移性結腸直腸がんの処置のために2012年にFDAに承認された。ラムシルマブ(Cyramza(登録商標))は、VEGFR-2とVEGFリガンドとの相互作用を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体であり、進行性の胃または胃食道接合部腺癌および転移性NSCLCの処置について2014年にFDAに承認された。タニビルマブは、VEGFR-2に結合し、VEGF-A、VEGF-CおよびVEGF-D(Kongら(2017)Int.J.Mol.Sci.18,1786)などのリガンドとのその相互作用を遮断する完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0388】
腫瘍血管新生の促進に加えて、VEGFは免疫抑制性であり、T細胞の機能を阻害し、TregおよびMDSCの動員を増加させ、DCの分化、成熟および活性化を防止することができる。VEGFAは、PD-1、CTLA-4、TIM-3およびLAG-3などの阻害性チェックポイントの発現を増強することが見出され、これはVEGFR2に対する抗体によって逆転された。したがって、VEGF/VEGFRを標的とすることによって抗腫瘍免疫を増強することができる。例えば、VEGF/VEGFRを標的化することは、TMEにおけるT細胞浸潤を促進することが示されている。ベバシズマブによる治療は、転移性結腸直腸がんを有する患者においてB細胞区画およびT細胞区画を増加させ、転移性NSCLCを有する患者において細胞傷害性Tリンパ球応答を改善することが見出された。ベバシズマブはまた、DCの数を増加させ、それらの活性化を促進することが見出された。アキシチニブ(VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3の小分子阻害剤)は、MDSCの数および抑制能を低下させ、抗原提示表現型へのMDSCの分化を誘導することが見出された。とりわけ、VEGFR2、VEGFR3およびPDGFRβを標的とするマルチキナーゼ阻害剤であるソラフェニブは、DCの分化を回復させることが見出された。VEGFR1、VEGFR2、VEGFR3、血小板由来増殖因子受容体αおよびβ、幹細胞因子受容体ならびにFlt3を遮断するチロシンキナーゼ阻害剤であるスニチニブは、マウスにおいて、IL-10、Foxp3、PD-1、CTLA-4およびBRAFの発現を減少させ、CD4およびCD8TILの割合を増加させ、Tregの数を減少させ、腫瘍細胞に対する細胞傷害性T細胞活性を増加させることが見出された。スニチニブはまた、様々な腫瘍モデルにおいてMDSCの数を減少させることが見出された。したがって、スニチニブを使用して、TMEを改変し、サイトカインおよび共刺激分子の発現プロファイルを変化させ、良好なT細胞活性化およびTh1応答をもたらすことができる。腫瘍溶解性レオウイルスと組み合わせたスニチニブは、腎細胞癌の前臨床マウスモデルにおいて腫瘍量を有意に減少させ、寿命を延ばすことが示されたが、スニチニブと腫瘍溶解性VSVとの組み合わせは、マウスにおいて前立腺、乳房および腎臓の悪性腫瘍を排除することが見出された(Meyersら(2017)Front.Oncol.7:114;Yangら(2018)Front.Immunol.9:978)。これらの結果は、腫瘍溶解性ウイルスと血管新生阻害剤を含む併用療法が抗がん治療効果を改善することができることを示している。
【0389】
PDGF/PDGFRシグナル伝達は、血管新生、腫瘍成長および患者生存率の低下に関連し、PDGFRおよび/またはPDGF過剰発現は、例えば、結腸直腸がん、前立腺癌および神経膠芽腫で観察される。PDGFRを標的とする小分子には、PDGFRおよび他のキナーゼ(VEGFRおよびFGFRなど)の活性化を阻害するイマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブおよびパゾパニブが含まれる。これらの分子は、転移性結腸直腸がん、転移性腎細胞がんおよび消化管間質腫瘍の処置に承認されている。PDGFおよびPDGFRを標的とする抗体には、PDGFRαを標的とし、軟部組織肉腫の処置に対してFDAによって承認されているオララツズマブ(Lartruvo(商標))(Kongら(2017)Int.J.Mol.Sci.18,1786)が含まれる。
【0390】
運動性および形態形成因子である肝細胞増殖因子(HGF)は、c-METと相互作用し、胚発生、上皮分岐形態形成、創傷治癒および腫瘍発生などの様々な生物学的応答をもたらす。したがって、HGF/c-METシグナル伝達は、がん治療の標的である。完全ヒトモノクローナル抗体であるリロツムマブは、HGFに結合し、c-METとの相互作用を遮断し、腫瘍増殖阻害、腫瘍退縮、アポトーシスおよび細胞増殖の抑止などの抗腫瘍効果をもたらす。HGFに対する他のヒト化モノクローナル抗体には、フィクラツズマブおよびTAK-701(L2G7)が含まれ、c-METに対するヒト化モノクローナル抗体には、オナルツズマブ(MetMab)およびエミベツズマブ(LY-2875358)が含まれる(Kongら(2017)Int.J.Mol.Sci.18,1786)。
【0391】
他の治療用抗体
モノクローナル抗体を使用して、がん細胞によって発現される抗原をがん治療のために標的化することができる。特定の実施形態では、本明細書のウイルスは、上記の血管新生阻害剤、BiTEおよび免疫チェックポイント阻害剤/刺激剤に加えて、例えば、限定するものではないが、アレムツズマブ(カムパス(登録商標);抗CD52)、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標);抗HER2)、セツキシマブ(アービタックス(登録商標);抗EGFR)、パニツムマブ(ベクティビックス(登録商標);抗EGFR)、オファツムマブ(アルゼラ(登録商標);抗CD20)、リツキシマブ(リツキサン(登録商標)/マブセラ(登録商標);抗CD20)、ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標);抗CD33)、ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス(登録商標);抗CD30)、トシツモマブ(抗CD20)、ダラツムマブ(ダルザレックス(登録商標);抗CD38);ジヌツキシマブ(ユニツキシン(登録商標);抗GD2);エロツズマブ(エムプリシティ(商標);抗SLAMF7);ネシツムマブ(ポルトラッザ(Portrazza)(商標);抗EGFR);オビヌツズマブ(ガザイバ(登録商標);抗CD20);およびペルツズマブ(パージェータ(登録商標);抗HER2)などのヒト化またはキメラモノクローナル抗体を含む他の治療用抗がん抗体を発現するように操作することができる。
【0392】
モノクローナル抗体は、単独および併用療法で、いくつかの種類のがんの処置に成功している。例えば、IDEC-C2BBとしても知られるリツキシマブは、FDAによって承認される最初のモノクローナル抗体であり、非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病の処置に使用されている。トラスツズマブは、HER2乳がんを処置するために使用されるFDA承認モノクローナル抗体である。更に、セツキシマブは、結腸直腸がん、転移性NSCLCおよび頭頸部がんの処置に使用される;パニツムマブは、転移性結腸直腸がんの処置に使用される;アレムツズマブは、慢性リンパ性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫およびT細胞リンパ腫の処置に使用される;オファツムマブは、CLLの処置に使用される;ゲムツズマブオゾガマイシンは急性骨髄性白血病の処置に使用される;ブレンツキシマブベドチンは、再発性または難治性ホジキンリンパ腫、全身性未分化大細胞リンパ腫および皮膚T細胞リンパ腫の処置に使用される;トシツモマブは、ヨウ素標識トシツモマブ(Bexxar)と組み合わせて、化学療法およびリツキシマブ抵抗性非ホジキンリンパ腫の処置に使用される;ダラツムマブは、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫およびマントル細胞リンパ腫の処置に使用される;ジヌツキシマブは小児神経芽腫の処置に使用される;エロツズマブは多発性骨髄腫の処置に使用される;ネシツムマブは、転移性扁平上皮NSCLCの処置に使用される;オビヌツズマブは、慢性リンパ性白血病および濾胞性リンパ腫の処置に使用される;ならびにペルツズマブは、HER2乳がんの処置に使用される。
【0393】
他の抗体としては、TACE外部ドメインを標的とし、頭頸部扁平上皮癌におけるがん細胞の増殖および運動性を阻害することが示されたD1(A12);カテプシンSに対する抗体(これは、インビボにおいて血管形成および転移を抑制することが示されている)であるFsn0503h;浸潤、転移および腫瘍増殖を阻害し、アポトーシスを誘導することが示されているウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)に対する抗体である、ATN-658(NevesおよびKwok(2015)BBA Clinical 3:280-288)が挙げられる。
【0394】
レポーター遺伝子
特定の実施形態では、ウイルスは、例えば蛍光タンパク質(例えば、GFP、YFP、RFP、TurboFP635);発光タンパク質(例えば、ルシフェラーゼ);および放射性核種を含む、磁気共鳴、超音波または断層撮影の造影剤などのイメージング分子/薬剤を含むレポーター遺伝子を発現するように操作することができる。本明細書のウイルスはまた、ヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体(hNIS)またはアクアポリン1(AQP1)を発現するように操作することもでき、これはPET、SPECT/CT、γカメラまたはMRIなどの深部組織非侵襲性イメージング技術を介してウイルスの検出を容易にする。
【0395】
NIS
Na/I共輸送体(NIS)は、ヨウ化物アニオンの細胞内、例えば甲状腺および他の組織、例えば唾液腺、胃、腎臓、胎盤、泌乳乳腺および小腸内への輸送を媒介する膜貫通糖タンパク質である。123I、124I、125I、131Iおよび99mTcなどの放射性同位元素は、ウイルスによってコードされる場合、感染細胞の表面で発現されるNISを介して輸送され、例えば、PET、SPECT/CTおよびγカメラなどを使用した非侵襲的イメージングを可能にする(Msaouelら(2013)Expert Opin.Biol.Ther.13(4))。
【0396】
NISは、放射性標識された基質を蓄積し、シグナルを濃縮および増幅し、他の遺伝子の送達をモニターするために使用することができ、腫瘍で発現すると、診断シンチグラフィーイメージングを使用して腫瘍サイズをモニターするために使用することができるので、レポーター遺伝子として有用である。例えば、ヒトNIS(hNIS)を発現するアデノウイルスがラットの鼻腔内から肺へと送達されると、124IPETシグナルが投与後17日間まで検出可能であった。NISを発現するレンチウイルスベクターを使用して、99mTcO4 または124I(Portulanoら(2014)Endocr.Rev.35(1):106-149)を使用する単一光子放射型コンピュータ断層撮影(PET)画像化で移植ラット心臓由来幹細胞を検出した。
【0397】
NIS発現ウイルスは、腫瘍溶解療法と放射線療法とを組み合わせるために使用することができ、これは前臨床的に腫瘍溶解効果を高めることが示されている。例えば、CMVプロモーター下でNISを発現するアデノウイルスベクターを肝臓癌搭載ラットの門脈に注射し、131I療法後、腫瘍成長の強力な阻害および生存期間の延長が観察された。膵癌を有するマウスへのMUC1プロモーター下でNISを発現するアデノウイルスベクターの投与は、131I処置後に有意な腫瘍退縮をもたらした(Portulanoら(2014)Endocr.Rev.35(1):106-149)。ヒトNIS遺伝子(VV-NIS)をコードするワクシニアウイルスは、子宮内膜がん、膵臓がん、悪性胸膜中皮腫、結腸直腸がん、甲状腺未分化がん、前立腺癌、胃がんの処置およびモニタリングのために研究されている。VV-NISはまた、124ImicroPETイメージングを用いたマウスモデルにおいて乳がんの陽性手術マージンを同定するためのレポーター遺伝子として使用されている(Raveraら(2017)Annu Rev Physiol.79:261-289)。
【0398】
I-131による放射線ウイルス療法のためのNIS(MV-NIS)を発現する腫瘍溶解性麻疹ウイルス(MV)はまた、多発性骨髄腫、多形性膠芽腫、頭頸部がん、未分化甲状腺癌、卵巣がん、膵臓がん、中皮腫、肝細胞癌、骨肉腫、子宮内膜がんおよび前立腺癌モデルにおいて前臨床的に結果を実証している。いくつかの第I/II相臨床試験が、多発性骨髄腫(NCT00450814、NCT02192775)、中皮腫(NCT01503177)、頭頸部がん(NCT01846091)、およびウイルス感染MSCを使用した卵巣がん(NCT02068794)におけるMV-NISの使用を調査した。
【0399】
アクアポリン1(AQP1)
アクアポリンは、細胞内の原形質膜を横切る水の輸送を媒介する内在性膜タンパク質である。ヒトアクアポリン1(AQP1)は、拡散強調MRI用の遺伝的にコードされたレポーターとして使用することができ、その非毒性、無金属性、および感受性のために有利である。自己レポーター遺伝子であるため、免疫原性のリスクはない。研究により、AQP1が腫瘍異種移植片における遺伝子発現イメージングを可能にすることが示されている(Mukherjeeら(2016)Nature Communications 7:13891)。
【0400】
C.CAVESの生成、製剤化、保存および輸送
本明細書で提供されるCAVES系は、改変された担体細胞を含む本明細書で提供される担体細胞のいずれかを、少なくとも1種のウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え治療用タンパク質が発現されるように、細胞の搭載、感染、およびウイルスの複製に適した時間および温度で、組換え治療用タンパク質を発現するように操作されたものなどの改変されたウイルスを含む本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスのいずれかとインキュベートすることによって生成することができる。複数の実施形態では、インキュベーション時間は、ウイルスコード化免疫調節性および/または組換え治療用タンパク質を発現するのに必要な時間、例えば、EEV粒子を含む子孫ウイルス粒子を生成するのに必要な時間よりも長くすることができる。インキュベーション温度は、例えば室温または32~42℃、例えば35~40℃であることができる。実施形態では、インキュベーション温度は、37℃である。細胞へのウイルスの搭載は、0.001~200、300、400または1000以上のMOIであることができる。実施形態では、MOIは、約0.001~10、例えば0.01~1.0、または1.0のMOIである。
【0401】
CAVESの生成には、一般に、2時間超、一般に約3時間~72時間以上、例えば一般に少なくとももしくは約3、4、5もしくは6時間、または約4時間超から少なくとももしくは約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71または72時間以上のインキュベーション時間が必要であり、例えば、約6時間~18時間、または約12時間~48時間である。そのような発現を促進する時間および温度は、系で使用される腫瘍溶解性ウイルスおよび/または細胞、例えば担体細胞、またはそれらの組み合わせの種類に依存することができる。例えば、VSVウイルス複製サイクルでは、ウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質などの組換えタンパク質を発現するのにかかる時間は、一般に2~3時間程度と比較的短いが、ワクシニアウイルスの場合、ウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え治療用タンパク質を発現するのにかかる時間は、一般に6~12時間以上と、より長い。腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアである実施形態では、インキュベーション時間は、少なくともまたは約7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71もしくは72時間またはそれ以上、例えば約6時間~18時間、または約12時間~48時間、または約30~36時間であることができる。いくつかの実施形態では、ワクシニアウイルスは、配列番号70に示される配列を有するACAM2000である。他の実施形態では、ワクシニアウイルスは、配列番号71に示される配列を有するCAL1である。腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルス、例えば配列番号70に記載の配列を有するACAM2000または配列番号71に記載の配列を有するCAL1であるいくつかの実施形態では、担体細胞は、幹細胞またはSVFに由来する細胞、例えばMSC、SA-ASCまたは周皮細胞である。
【0402】
本明細書で提供される系は、凍結または凍結保存(例えば、-20から-80℃)下で安定かつ無期限に保存することができ、投与前に必要に応じて解凍することができる。例えば、本明細書で提供される系は、-80℃で、投与のための解凍前、少なくともまたは約数時間、例えば1、2、3、4もしくは5時間、または少なくとも約数年または約数年の間、例えば、少なくとももしくは約1、2、3もしくはそれ以上の年数、例えば少なくとももしくは約1、2、3、4もしくは5時間から少なくとももしくは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、61、62、63、64、65、66、67、68、69、60、70、71もしくは72時間、または4、5、6、7、8、9、10、15、20、25もしくは30日、または1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5もしくは12ヵ月、または1、2、3、4もしくは5年以上にわたって、保存することができる。本明細書で提供される系はまた、例えば0~5℃、例えば4℃の冷蔵条件下で安定に保存することができ、および/または処置のために投与部位まで氷上で輸送することができる。例えば、本明細書で提供される系は、4℃または氷上で少なくともまたは約数時間、例えば、処置のための投与前に1、2、3、4または5時間から、少なくともまたは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47もしくは48時間以上にわたり保存することができる。
【0403】
D.医薬組成物、組み合わせおよびキット
本明細書で提供されるCAVES系を含有する医薬組成物、組み合わせおよびキットが本明細書で提供される。医薬組成物は、担体細胞のいずれかおよび本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルスのいずれかを含有するCAVESと、薬学的担体とを含むことができる。医薬組成物は、室温~約37℃、冷蔵温度、例えば0~5℃、例えば4℃、または凍結もしくは凍結保存条件下、例えば-20~-80℃であることができる。実施形態では、医薬組成物は、-80℃である。組み合わせとしては、例えば、担体細胞、腫瘍溶解性ウイルス;ならびに腫瘍溶解性ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節性および/または組換え治療用タンパク質を含むことができる。組み合わせは、本明細書で提供される担体細胞のいずれか、腫瘍溶解性ウイルス、ウイルスコード化免疫調節タンパク質および/または組換え治療用タンパク質、ならびに検出可能な化合物;CAVESおよび追加の治療化合物;CAVESおよびウイルス発現調節化合物、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。キットは、本明細書で提供される1つ以上の医薬組成物または組み合わせ、および1つ以上の構成要素、例えば使用説明書、医薬組成物もしくは組み合わせを対象に投与するための装置、治療用もしくは診断用化合物を対象に投与するための装置、または対象のウイルスを検出するための装置を含むことができる。
【0404】
医薬組成物、組み合わせまたはキットに含有される担体細胞は、本明細書で提供される任意の担体細胞を含むことができる。医薬組成物、組み合わせまたはキットに含有される腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書で提供される任意のウイルスを含むことができる。
【0405】
1.医薬組成物
CAVESを含有する医薬組成物であって、本明細書で提供される担体細胞のいずれか、本明細書で提供される腫瘍溶解性ウイルス、ならびに少なくとも1種の発現されたウイルスコード化免疫調節性および/または組換えの治療用タンパク質と、適切な医薬担体とを含む医薬組成物である。薬学的に許容される担体は、ウイルスのための媒体担体または媒体として作用する固体、半固体または液体の材料を含む。本明細書で提供される医薬組成物は、さまざまな形態、例えば、固体、半固体、水性、液体、粉末または凍結乾燥形態で製剤化することができる。本明細書で提供されるCAVES系における任意の担体細胞(プライミングされた細胞、感作された細胞、操作された細胞を含む)または腫瘍溶解性ウイルスを含有する例示的な医薬組成物には、限定されるものではないが、無菌注射溶液、無菌包装粉末、点眼剤、錠剤、丸剤、散剤、ロゼンジ、サシェ、カシェ、エリキシル、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアゾール(固体または液体媒体として)、軟膏、軟および硬ゼラチンカプセル、ならびに坐剤が含まれる。
【0406】
適切な医薬担体の例は当技術分野で既知であり、限定されるものではないが、水、緩衝液、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、さまざまな種類の湿潤剤、滅菌溶液、アルコール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ゼラチン、グリセリン、炭水化物、例えばラクトース、スクロース、デキストロース、アミロースまたはデンプン、ソルビトール、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ならびに粉末などが挙げられる。本明細書で提供される医薬組成物は、例えば、抗酸化剤、保存剤、鎮痛剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、希釈剤、賦形剤、増量剤、滑剤、可溶化剤、安定剤、等張化剤、媒体、粘度剤、香味剤、甘味剤、エマルジョン、例えば油/水エマルジョン、乳化剤および懸濁化剤、例えばアカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、セルロース、コレステロール、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、オクトキシノール9、オレイルアルコール、ポビドン、プロピレングリコールモノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリルアルコール、トラガカント、キサンタンガムおよびこれらの誘導体、溶媒、ならびに種々雑多な成分、例えば、限定されるものではないが、結晶セルロース、微結晶セルロース、クエン酸、デキストリン、液体グルコース、乳酸、ラクトース、塩化マグネシウム、メタリン酸カリウム、デンプンなどを含む他の添加剤を含有することができる。このような担体および/または添加剤は、従来の方法によって製剤化することができ、適切な用量で対象に投与することができる。脂質、ヌクレアーゼ阻害剤、ポリマーおよびキレート剤などの安定剤は、組成物を体内での分解から保護することができる。医薬組成物に使用するための他の適切な製剤は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2005、第21版、Gennaro&Gennaro編、Lippencott Williams and Wilkins)に見ることができる。
【0407】
注射または粘膜送達のための本明細書で提供されるCAVES系を含む医薬製剤は、典型的には、注射もしくは粘膜投与に適した緩衝液で提供されるウイルスの水溶液、または注射もしくは粘膜投与に適した緩衝液で再構成するためのウイルスの凍結乾燥形態を含む。このような製剤は、任意に、本明細書に記載される、または当技術分野で既知の1つ以上の薬学的に許容される担体および/または添加剤を含有することができる。経口投与用の液体組成物は、一般に、水溶液、適切に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、およびコーン油、綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油などの食用油を含む風味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシルおよび同様の医薬媒体を含む。
【0408】
本明細書で提供される医薬組成物は、当技術分野で既知の手順を使用することによって、本明細書に記載されるCAVES系の迅速放出、徐放または遅延放出を提供するように製剤化することができる。錠剤などの固体組成物を調製するために、本明細書で提供されるCAVES系を医薬担体と混合して、固体組成物を形成する。任意に、錠剤または丸剤をコーティングする、または配合して、対象において長期作用の利点を与える剤形を提供する。例えば、錠剤または丸剤は、内側投薬構成要素と外側投薬構成要素を含有し、後者が前者を覆うエンベロープの形態である。2つの成分を、例えば、胃内での崩壊に耐え、内部構成要素がインタクトで十二指腸に入ること、または放出を遅らせることを可能にするよう働く腸溶性層によって分離することができる。このような腸溶性層またはコーティングには、例えば、いくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とシェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物を含む、さまざまな材料が使用される。
【0409】
吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性溶媒もしくは有機溶媒中の溶液および懸濁液、またはこれらの混合物、および粉末が含まれる。これらの液体または固体組成物は、任意に、本明細書に記載されるまたは当技術分野で既知の適切な薬学的に許容される賦形剤および/または添加剤を含有することができる。このような組成物は、例えば、局所的効果または全身的効果のために経口または鼻呼吸経路によって投与される。薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスを使用することによって噴霧される。噴霧された溶液は、例えば、噴霧装置から直接、取り付けられたフェイスマスクテントから、または断続的な陽圧呼吸模擬装置から吸入される。溶液、懸濁液または粉末組成物は、例えば、吸入器の使用などの適切な方法で製剤を送達する装置から、例えば、経口または経鼻的に投与される。
【0410】
本明細書で提供される医薬組成物は、経皮送達装置(「パッチ」)を介した経皮送達用に製剤化することができる。そのような経皮パッチは、本明細書で提供されるウイルスの連続的または非連続的な注入を提供するために使用される。医薬品を送達するための経皮パッチの構築および使用は、当技術分野で既知の方法に従って実施される(例えば、米国特許第5,023,252号参照)。このようなパッチは、本明細書で提供される担体細胞および/またはウイルスの連続的、脈動性、またはオンデマンド送達のために構築される。
【0411】
ウイルスの送達に使用できるコロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン(混合)、ミセル、リポソームおよびリポプレックスを含む脂質ベースの系が含まれる。例示的なコロイド系はリポソームである。臓器特異的または細胞特異的リポソームを、所望の組織ののみへの送達を達成するために使用することができる。リポソームの標的化は、一般に知られている方法を適用することによって、当業者が行うことができる。この標的化には、受動的標的化(リポソームが洞様毛細血管を含む臓器の細網内皮系(RES)の細胞に分布する自然な傾向を使用する)または能動的標的化(例えば、当業者に既知の方法によって、リポソームを特定のリガンド、例えば、抗体、受容体、糖、糖脂質およびタンパク質に結合することによる)が含まれる。モノクローナル抗体を使用して、例えば特定の細胞表面リガンドを介して、リポソームを特定の組織、例えば腫瘍組織に標的化することができる。
【0412】
2.組み合わせ
担体細胞、腫瘍溶解性ウイルス、ならびに少なくとも1つの発現されたウイルスコード化免疫調節性のおよび/または組換え治療用タンパク質の組み合わせが提供される。組み合わせは、第2のウイルスまたは他の治療薬もしくは診断薬などの第3または第4の薬剤を含むことができる。組み合わせは、本明細書で提供されるCAVES系を含有する医薬組成物を含有することができる。組み合わせはまた、例えば、抗ウイルス剤または化学療法剤などの、本明細書で提供される方法に従って処置または診断を行うための任意の薬剤を含むことができる。組み合わせはまた、ウイルスによってコードされる内因性または異種遺伝子からの遺伝子発現の調節に使用される化合物を含有することができる。
【0413】
本明細書で提供される組み合わせは、CAVES系と治療用化合物を含有することができる。本明細書で提供される組成物の治療用化合物は、例えば、抗がん化合物または化学療法化合物であることができる。例示的な治療用化合物には、限定されるものではないが、例えば、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、siRNA分子、酵素/プロEドラッグペア、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤、化学療法化合物、代謝拮抗化合物またはこれらのいずれかの組み合わせが含まれる。
【0414】
本明細書で提供されるCAVES系は、白金配位錯体などの抗がん化合物と組み合わせることができる。例示的な白金配位錯体には、例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、DWA2114R、NK121、IS3 295および254-Sが含まれる。例示的な化学療法剤には、限定されるものではないが、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、非糖含有クロロエチルニトロソウレア、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン、メグラミンGLA、バルルビシン、カルムスチン、ポリフェプロザン、MM1270、BAY 12-9566、RASファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、ロメテレキソール/LY264618、Glamolec、CI-994、TNP-470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトキサントロン、メタレット(Metaret)/スラミン、BB-94/バチマスタット、E7070、BCH-4556、CS-682、9-AC、AG3340、AG3433、インセル(Incel)/VX-710、VX-853、ZD0101、IS1641、ODN 698、TA 2516/マリマスタット、BB2516/マリマスタット、CDP 845、D2163、PD183805、DX8951f、Lemonal DP 2202、FK 317、ピシバニール/OK-432、バルルビシン/AD 32、ストロンチウム-89/メタストロン、テモダール/テモゾロミド、ユータキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、パキセクス(Paxex)/パクリタキセル、シクロパックス(Cyclopax)/経口パクリタキセル、ゼローダ/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR 1275/フラボピリドール、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS-182751/経口プラチナ、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール/レバミソール、カンプト/レバミソール、エニルウラシル/776C85/5FUエンハンサー、カンプトサール/イリノテカン、トムデックス/ラルチトレキセド、ロイスタチン/クラドリビン、カエリクス(Caelyx)/リポソームドキソルビシン、ミオセット/リポソームドキソルビシン、ドキシル/リポソームドキソルビシン、エバセット/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルモルビシン/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU 79553/ビス-ナフタルイミド、LU 103793/ドラスタチン、ジェムザール/ゲムシタビン、ZD 0473/AnorMED、YM 116、ヨウ素種、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシホスファミド(dexifosfamide)、イフェックス(Ifex)/メスネックス(Mesnex)/イホスファミド、ブモン(Vumon)/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プラチノール/シスプラチン、VePesid/エポシン/エトポホス/エトポシド、ZD 9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサン類似体、ニトロソウレア、メルファランおよびシクロホスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、エストラムスチンリン酸ナトリウム、エトポシド(VP16-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシウレア(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、酢酸リュープロリド(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o,p’-DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m-AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル-GAG;メチルグリオキサールビスグアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル-CCNU)、テニポシド(VM-26)および硫酸ビンデシンも含まれる。本明細書で提供される医薬組成物および組み合わせで使用するための追加の例示的な治療用化合物は、本明細書の他の場所で見出すことができる(例えば、例示的なサイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、siRNA分子、酵素/プロドラッグペア、代謝拮抗薬、シグナル伝達調節剤、抗がん抗生物質、抗がん抗体、血管新生阻害剤および化学療法化合物についてE節参照)。
【0415】
いくつかの例では、組み合わせが、例えば、ウイルスによってコードおよび発現される酵素の基質である化合物、または本明細書で提供されるもしくはウイルスと共同して作用することが当技術分野で既知の他の治療用化合物などの追加の治療用化合物を含むことができる。例えば、ウイルスは、プロドラッグをがん細胞を殺傷するための活性化学療法薬に変換する酵素を発現することができる。したがって、本明細書で提供される組み合わせは、プロドラッグなどの治療用化合物を含有することができる。例示的なウイルス/治療用化合物の組み合わせは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼをコードするウイルスとプロドラッグガンシクロビルを含むことができる。提供される組み合わせで使用するための追加の例示的な酵素/プロドラッグペアには、限定されるものではないが、水痘帯状疱疹チミジンキナーゼ/ガンシクロビル、シトシンデアミナーゼ/5-フルオロウラシル、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ/6-メチルプリンデオキシリボシド、ベータラクタマーゼ/セファロスポリン-ドキソルビシン、カルボキシペプチダーゼG2/4-[(2-クロロエチル)(2-メシルオキシエチル)アミノ]ベンゾイル-L-グルタミン酸、チトクロームP450/アセトアミノフェン、西洋ワサビペルオキシダーゼ/インドール-3-酢酸、ニトロレダクターゼ/CB1954、ウサギカルボキシルエステラーゼ/7-エチル-10-[4-(1-ピペリジノ)-1-ピペリジノ]カルボニルオキシカンプトテシン(CPT-11)、マッシュルームチロシナーゼ/ビス-(2-クロロエチル)アミノ-4-ヒドロキシフェニルアミノメタノン28、ベータガラクトシダーゼ/1-クロロメチル-5-ヒドロキシ-1,2-ジヒドロ-3H-ベンゾ[e]インドール、ベータグルクロニダーゼ/エピルビシン-グルクロニド、チミジンホスホリラーゼ/5’-デオキシ-5-フルオロウリジン、デオキシシチジンキナーゼ/シトシンアラビノシド、ベータラクタマーゼおよびリナメラーゼ/リナマリンが含まれる。組み合わせで使用するための追加の例示的なプロドラッグはまた、本明細書の他の場所に見出すこともできる(例えば、E節参照)。本明細書で提供される、または当技術分野で既知のさまざまな既知の組み合わせのいずれかを、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。
【0416】
いくつかの例では、組み合わせが、ウイルスの増殖または毒性を殺すまたは阻害することができる化合物を含むことができる。このような化合物を使用して、ウイルス感染から生じることができる1つ以上の有害な副作用を軽減することができる(例えば、米国特許出願公開第2009-016228A1号参照)。本明細書で提供される組み合わせは、感染症を処置するための抗生物質、抗真菌、抗寄生生物または抗ウイルス化合物を含有することができる。いくつかの例では、抗ウイルス化合物が、ウイルスの増殖または毒性を阻害する化学療法剤である。
【0417】
本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗生物質には、限定されるものではないが、セフタジジム、セフェピム、イミペネム、アミノグリコシド、バンコマイシンおよび抗シュードモナスβ-ラクタムが含まれる。本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗真菌剤には、限定されるものではないが、アムホテリシンB、ダプソン、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ミコナゾール、クロトリマゾール、ナイスタチンおよびこれらの組み合わせが含まれる。本明細書で提供される担体細胞およびウイルスと組み合わせて含めることができる例示的な抗ウイルス剤には、限定されるものではないが、シドフォビル、シドフォビルのアルコキシアルキルエステル(CDV)、環状CDV、および(S)-9-(3-ヒドロキシ-2ホスホニルメトキシプロピル)アデニン、5-(ジメトキシメチル)-2’-デオキシウリジン、イサチン-β-チオセミカルバゾン、N-メタノカルバチミジン、ブリブジン、7-デアザンプラノシンA、ST-246、Gleevec、2’-β-フルオロ-2’,3’-ジデオキシアデノシン、インジナビル、ネルフィナビル、リトナビル、ネビラピン、AZT、ddI、ddCおよびこれらの組み合わせが含まれる。典型的には、抗ウイルス剤との組み合わせは、組み合わせのウイルスに対して有効であることが知られている抗ウイルス剤を含有する。例えば、組み合わせは、ワクシニアウイルスと、シドフォビル、シドフォビルのアルコキシアルキルエステル、ガンシクロビル、アシクロビル、ST-246、Gleevecおよびこれらの誘導体などの抗ウイルス化合物を含有することができる。
【0418】
いくつかの例では、組み合わせが、検出可能な化合物を含むことができる。検出可能な化合物は、例えば、ウイルスまたは担体細胞によってコードおよび発現されるタンパク質またはRNAと相互作用する、および/またはこれに特異的に結合することができ、断層撮影、分光法、磁気共鳴または他の既知の技術によって検出可能なシグナルなどの検出可能なシグナルを提供することができるリガンド、基質または他の化合物を含むことができる。いくつかの例では、タンパク質またはRNAが外因性タンパク質またはRNAである。いくつかの例では、ウイルスまたは担体細胞によって発現されるタンパク質またはRNAが検出可能な化合物を修飾し、修飾された化合物が検出可能なシグナルを放出する。例示的な検出可能な化合物は、磁気共鳴、超音波、または放射性核種を含む断層撮影造影剤などの造影剤であることができる、またはこれを含有することができる。検出可能な化合物は、本明細書の他の場所で提供される、または当技術分野で既知のさまざまな化合物のいずれかを含むことができる。検出に使用されるウイルスまたは担体細胞によって発現することができる例示的なタンパク質と検出可能な化合物の組み合わせには、限定されるものではないが、ルシフェラーゼとルシフェリン、β-ガラクトシダーゼと(4,7,10-トリ(酢酸)-1-(2-β-ガラクトピラノシルエトキシ)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン)ガドリニウム(Egad)、および当技術分野で既知の他の組み合わせが含まれる。
【0419】
いくつかの例では、組み合わせが、ウイルスまたは担体細胞によってコードされる1つ以上の遺伝子の発現を調節する遺伝子発現調節化合物を含むことができる。遺伝子発現を調節する化合物は当技術分野で知られており、限定されるものではないが、転写活性化因子、誘導物質、転写抑制因子、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびsiRNAまたはリボザイムなどのRNA結合化合物を含む。当技術分野で既知のさまざまな遺伝子発現調節化合物のいずれかを、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。典型的には、本明細書で提供される組み合わせにウイルスと共に含まれる遺伝子発現調節化合物は、組み合わせのウイルスまたは担体細胞の転写因子またはRNAなどの遺伝子発現において活性である1つ以上の化合物に結合、これを阻害またはこれと反応することができる化合物である。例示的なウイルスまたは担体細胞/発現調節因子の組み合わせは、酵母GAL4 DNA結合ドメイン、単純ヘルペスウイルスタンパク質VP16の活性化ドメインに融合した突然変異ヒトプロゲステロン受容体を有し、アデノウイルス主要後期E1B TATAボックスの上流に一連のGAL4認識配列を含む合成プロモーターも含むキメラ転写因子複合体をコードするウイルスまたは担体細胞であることができ、ここでは化合物がRU486であることができる(例えば、Yuら(2002)Mol Genet Genomics 268:169-178参照)。当技術分野で既知の他のさまざまなウイルスまたは担体細胞/発現調節因子の組み合わせも、本明細書で提供される組み合わせに含めることができる。
【0420】
いくつかの例では、組み合わせがナノ粒子を含有することができる。ナノ粒子は、本明細書で提供される1つ以上の治療薬を運ぶように設計することができる。更に、ナノ粒子は、ナノ粒子を腫瘍細胞に標的化する分子を運ぶように設計することができる。1つの非限定的な例では、ナノ粒子を、放射性核種、および任意に、腫瘍関連抗原と免疫反応性の抗体でコーティングすることができる。
【0421】
いくつかの例では、組み合わせが、診断または処置のために、1つ以上の追加の治療用および/または診断用ウイルスあるいは他の治療用および/または診断用微生物(例えば、治療用および/または診断用細菌)を含有することができる。例示的な治療用および/または診断用ウイルスは当技術分野で既知であり、限定されるものではないが、治療用および/または診断用のポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレオウイルスを含む。例示的な腫瘍溶解性ウイルスは、本明細書中で上に記載されている。
【0422】
3.キット
本明細書で提供されるCAVES、医薬組成物または組み合わせは、キットとしてパッケージ化することができる。キットは、任意に、使用説明書、装置および追加の試薬などの1つ以上の構成要素、ならびに方法を実施するためのチューブ、容器および注射器などの構成要素を含むことができる。例示的なキットは、本明細書で提供されるCAVES系を含むことができ、任意に、使用説明書、対象における担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置、CAVESを対象に投与するための装置、または追加の薬剤もしくは化合物を対象に投与するための装置を含むことができる。
【0423】
一例では、キットは説明書を含むことができる。説明書は、典型的には、CAVES系、および任意に、キットに含まれる他の成分を説明する具体的な表現、ならびに担体細胞およびウイルスを投与するための、対象の適切な状態、適切な投与量および適切な投与方法を決定する方法を含む投与方法を含む。説明書はまた、処置期間にわたって対象をモニタリングするためのガイダンスを含むことができる。
【0424】
別の例では、キットが、対象中の担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置を含むことができる。対象中の担体細胞および/またはウイルスを検出するための装置は、例えば、ルシフェラーゼから放出される、または緑色もしくは赤色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質から蛍光を発せられる光を検出するための弱光イメージング装置、MRIまたはNMR装置などの磁気共鳴測定装置、PET、CT、CAT、SPECTまたは他の関連スキャナーなどの断層撮影スキャナー、超音波装置、あるいは対象内の担体細胞および/またはウイルスによって発現されるタンパク質を検出するために使用することができる他の装置を含むことができる。典型的には、キットの装置は、キットの担体細胞および/またはウイルスによって発現される1つ以上のタンパク質を検出することができるだろう。担体細胞、ウイルスおよび検出装置、例えば、ルシフェラーゼを発現する担体細胞もしくはウイルスと弱光イメージャー、または緑色もしくは赤色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質を発現する担体細胞もしくはウイルスと弱光イメージャーを含むさまざまなキットのいずれかを本明細書で提供されるキットに含めることができる。
【0425】
本明細書で提供されるキットはまた、CAVES系を対象に投与するための装置を含むことができる。医薬品、医薬組成物およびワクチンを投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを、本明細書で提供されるキットに含めることができる。例示的な装置には、限定されるものではないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。例えば、例えば静脈内注射によって全身送達されるCAVES系を、皮下注射針および注射器を含むキットに含めることができる。典型的には、キットのCAVESを投与するための装置は、キットの担体細胞とウイルスと適合性であり;例えば、高圧注射装置などの無針注射装置は、高圧注射によって損傷を受けないCAVESを含むキットに含めることができるが、典型的には、高圧注射によって損傷を受けるCAVESを含むキットには含まれない。
【0426】
本明細書で提供されるキットはまた、追加の薬剤または化合物を対象に投与するための装置を含むことができる。医薬品を対象に投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを、本明細書で提供されるキットに含めることができる。例示的な装置には、限定されるものではないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。典型的には、キットの化合物を投与するための装置は、化合物の所望の投与方法と適合性であるだろう。例えば、全身的または皮下に送達される化合物を、皮下注射針および注射器を含むキットに含めることができる。
【0427】
本明細書で提供されるキットはまた、電磁エネルギーなどのエネルギーを対象に印加するための任意の装置を含むことができる。このような装置には、限定されるものではないが、レーザー、発光ダイオード、蛍光ランプ、ダイクロイックランプおよびライトボックスが含まれる。キットはまた、内視鏡または光ファイバーカテーテルなどの、エネルギーの対象への内部曝露をもたらす装置を含むことができる。
【0428】
E.CAVESで投与される併用(追加)治療
腫瘍溶解性ウイルス発現/複製系を、ウイルス療法を必要とする対象に送達するための本明細書で提供されるCAVESを含有する本明細書で提供される組成物またはキットは、単独で、または他の療法もしくは処置と更に組み合わせて使用することができる。腫瘍溶解性ウイルスを改変するためのB節に記載されている治療用タンパク質、例えば治療用抗体および免疫チェックポイント阻害剤のいずれも、別々の処置に加えて、またはその代わりに投与することもできる。本明細書で提供される組み合わせまたは組成物を、他の治療薬もしくは薬理学的薬剤または手技などの処置と一緒に、その前に、断続的に、またはその後に、更に共製剤化または共投与することができる。例えば、このような薬剤には、限定されるものではないが、他の生物製剤、抗がん剤、小分子化合物、分散剤、麻酔薬、チェックポイント阻害剤、血管収縮剤、外科手術、放射線、化学療法剤、生物剤、ポリペプチド、抗体、ペプチド、小分子、遺伝子療法ベクター、ウイルスおよびDNA、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。このような薬剤はまた、副作用を改善、低減または防止するための1つ以上の薬剤を含むことができる。場合によっては、併用療法を、原発腫瘍を除去する、または処置前に対象を免疫抑制する1つ以上のがん処置と組み合わせて使用することができる。例えば、本明細書で提供される併用療法に加えて、追加の化学療法または放射線療法を使用することができる。このような追加の療法は、対象の免疫系を弱化する効果を有することができる。他の例では、外科的除去および/または免疫系弱化療法が必要でなくてもよい。その中で組み合わせることができる例示的な他の方法は、(例えば、腫瘍抑制化合物を投与することによって、もしくは腫瘍細胞特異的化合物を投与することによって)免疫系を弱化することなく腫瘍もしくは新生物細胞の増殖速度を低下させる化合物を投与すること、または血管新生阻害化合物を投与することを含む。
【0429】
第2の薬剤または処置の調製物は、一度に投与することができる、または時間間隔で投与するためにいくつかのより少ない用量に分割することができる。選択された薬剤/処置調製物は、処置時間の過程にわたって、例えば、数時間、数日、数週間または数ヶ月にわたって、1つ以上の用量で投与することができる。場合によっては、継続投与が有用である。正確な投与量および投与過程は、適応症および患者の忍容性に依存することが理解される。一般に、本明細書の第2の薬剤/処置のための投薬レジメンは、当業者に既知である。
【0430】
例えば、本明細書で提供される併用療法は、限定されるものではないが、免疫共刺激アゴニスト(例えば、B7ファミリー(CD28、ICOS);TNFRファミリー(4-1BB、OX40、GITR、CD40、CD30、CD27);LIGHT、LTα);BiTE;腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞、適応T細胞療法、例えばNK-92細胞株、およびTCRトランスジェニックT細胞;共刺激分子、一本鎖抗体を含む治療用抗体、アバスチン、アフリベルセプト、バニシズマブ、二抗体、抗体-薬物コンジュゲート、チェックポイント阻害剤(標的には、PD-1、PD-2、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、IDO 1および2、CTNNB1(β-カテニン)、SIRPα、VISTA、LIGHT、HVEM、LAG3、TIM3、TIGIT、ガレクチン-9、KIR、GITR、TIM1、TIM4、CEACAM1、CD27、CD40/CD40L、CD48、CD70、CD80、CD86、CD112、CD137(4-1BB)、CD155、CD160、CD200、CD226、CD244(2B4)、CD272(BTLA)、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、ICOS、A2aR、A2bR、HHLA2、ILT-2、ILT-4、gp49B、PIR-B、HLA-G、ILT-2/4およびOX40/OX-40L、MDR1、アルギナーゼ1、iNO、IL-10、TGF-β、pGE2、STAT3、VEGF、KSP、HER2、Ras、EZH2、NIPP1、PP1、TAK1およびPLK1aが含まれる);ならびに化学療法化合物および抗体を含む1つ以上と更に組み合わせて使用することができる。
【0431】
本明細書で提供されるウイルス療法に加えて投与するための例示的な化学療法化合物および抗体は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、光増感剤、毒素、抗がん抗生物質、化学療法化合物、放射性核種、血管新生阻害剤、シグナル伝達調節剤、代謝拮抗薬、抗がんワクチン、抗がんオリゴペプチド、有糸分裂阻害剤タンパク質、抗有糸分裂オリゴペプチド、抗がん抗体、抗がん抗生物質および免疫療法剤を含むことができる。
【0432】
本明細書の併用療法の投与後、投与と同時に、または投与前に投与することができる例示的な抗がん剤およびがん患者を処置するための薬剤としては、限定されるものではないが、アシビシン;アビシン;アクラルビシン;アコダゾール;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アレムツズマブ;アリトレチノイン(9-シス-レチノイン酸);アロプリノール;アルトレタミン;アルボシジブ;アンバゾン;アンボマイシン;アメタントロン;アミフォスチン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アナキシロン;アンシタビン;アントラマイシン;アパジコン;アルギメスナ(Argimesna);三酸化ヒ素;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アトリムスチン;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バノキサントロン;バタブリン;バチマスタット;BCG生;ベナキシビン;ベンダムスチン;ベンゾデパ;ベキサロテン;ベバシズマブ;ビカルタミド;ビエタセルピン;ビリコダル;ビサントレン;ビザントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼレシン;ブレオマイシン;ボルテゾミブ;ブレキナル;ブロピリミン;ブドチタン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カネルチニブ;カペシタビン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルボコン;カルモフール;カルムスチンとポリフェプロサン;カルムスチン;カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;セレコキシブ;セマドチン;クロラムブシル;シオテロネル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;クランフェヌル;クロファラビン;クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビンリポソーム;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダルベポエチンアルファ;ダウノルビシンリポソーム;ダウノルビシン/ダウノマイシン;ダウノルビシン;デシタビン;デニロイキン・ディフティトックス;デクスニグルジピン;デキソンナプラチン(Dexonnaplatin);デクスラゾキサン;デザグアニン;ジアジコン;ジブロスピジウム;ジエノゲスト;ジナリン;ジセルモリド(Disermolide);ドセタキセル;ドフェキダール(Dofequidar);ドキシフルリジン;ドキソルビシンリポソーム;ドキソルビシンHCL;ドキソルビシンHCLリポソーム注射;ドキソルビシン;ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エコムスチン;エダトレキサート;エドテカリン;エフロルニチン;エラクリダル;エリナフィド;エリオットB液;エルサミトルシン;エミテフール;エンロプラチン;エンプロマート;エンザスタウリン;エピプロピジン;エピルビシン;エポエチンアルファ;エプタロプロスト;エルブロゾール;エソルビシン;エストラムスチン;エタニダゾール;エトグルシド;リン酸エトポシド;エトポシドVP-16;エトポシド;エトプリン;エキセメスタン;エクシスリンド;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フロクスウリジン;フルダラビン;フルオロウラシル;5-フルオロウラシル;フルオキシメステロン;フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシン;ホストリエシン;ホトレタミン;フルベストラント;ガラルビシン;ガロシタビン;ゲムシタビン;ゲムツズマブ/オゾガマイシン;ゲロキノール;ギマテカン;ギメラシル;グロキサゾン;グルホスファミド;酢酸ゴセレリン;ヒドロキシウレア;イブリツモマブ/チウキセタン;イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;;イロマスタット;メシル酸イマチニブ;イメキソン;インプロスルファン;インジスラム;インプロコン;インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ;インターフェロンベータ;インターフェロンガンマ;インターフェロン;インターロイキン-2および他のインターロイキン(組換えインターロイキンを含む);イントプリシン;ヨーベングアン[131-I];イプロプラチン;イリノテカン;イルソグラジン;イキサベピロン;ケトトレキサート;L-アラノシン;ランレオチド;ラパチニブ;レドキサントロン;レトロゾール;ロイコボリン;リュープロリド;リュープロレリン(リュープロレリド);レバミゾール;レクサカルシトール(Lexacalcitol);リアロゾール;ロバプラチン;ロメトレキソール;ロムスチン/CCNU;ロムスチン;ロナファルニブ;ロソキサントロン;ラルトテカン;マホスファミド;マンノスルファン;マリマスタット;マソプロコール;マイタンシン;メクロレタミン;メクロレタミン/ナイトロジェンマスタード;酢酸メゲストロール;メゲストロール;メレンゲストロール;メルファラン;メルファランlL-PAM;メノガリル;メピチオスタン;メルカプトプリン;6-メルカプトプリン;メスナ;メテシンド;メトトレキサート;メトキサレン;メトミダート;メトプリン;メツレデパ;ミボプラチン;ミプロキシフェン;ミソニダゾール;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトフラキソン;ミトギリン;ミトグアゾン;ミトマルシン;マイトマイシンC;マイトマイシン;ミトナフィド;ミトキドン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン;ミトゾロミド;ミボブリン;ミゾリビン;モファロテン;モピダモール;ムブリチニブ;ミコフェノール酸;フェニルプロピオン酸ナンドロロン;ネダプラチン;ネルザラビン;ネモルビシン;ニトラクリン;ノコダゾール;ノフェツモマブ;ノガラマイシン;ノラトレキセド;ノルトピキサントロン;オクトレオチド;オプレルベキン;オルマプラチン;オルタタキセル;オテラシル;オキサリプラチン;オキシスラン;オキソフェナルシン;パクリタキセル;パミドロネート;パツビロン;ペガデマーゼ;ペグアスパラガーゼ;ペグフィルグラスチム;ペルデシン;ペリオマイシン;ペリトレキソール;ペメトレキセド;ペンタムスチン;ペントスタチン;ペプロマイシン;ペルホスファミド;ペリフォシン;ピコプラチン;ピナフィド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピルフェニドン;ピロキサントロン;ピクサントロン;プレビトレキセド;プリカミシド・ミトラマイシン(Plicamycid Mithramycin);プリカマイシン;プロメスタン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィマー;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン;プロパミジン;プロスピジウム;プミテパ;ピューロマイシン;ピラゾフリン;キナクリン;ラニムスチン;ラスブリカーゼ;リボプリン;リトロスルファン;リツキシマブ;ログレチミド;ロキニメクス;ルフォクロモマイシン;サバルビシン;サフィンゴール;サルグラモスチム;サトラプラチン;セブリプラチン;セムスチン;シムトラゼン;シゾフィラン;ソブゾキサン;ソラフェニブ;スパルフォセート;スパルフォシン酸;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;スピロプラチン;スクアラミン;ストレプトニグリン;ストレプトバリシン;ストレプトゾシン;スホスファミド;スロフェヌール;スニチニブリンゴ酸塩;6-チオグアニン(6-TG);タセジナリン;タルク;タリソマイシン;タリムスチン;タモキシフェン;タリキダル;タウロムスチン(Tauromustine);テコガラン;テガフール;テロキサントロン;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド/VM-26;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアミプリン;チアゾフリン;チロミソール;チロロン;チムコダー;チモナシク;チラパザミン;トピキサントロン;トポテカン;トレミフェン;トシツモマブ;トラベクテジン(エクテイナシジン743);トラスツズマブ;トレストロン;トレチノイン/ATRA;トリシリビン;トリロスタン;トリメトレキサート;四硝酸トリプラチン;トリプトレリン;トロホスファミド;ツブロゾール;ウベニメクス;ウラシルマスタード;ウレデパ;バルルビシン;バルスポダール;バプレオチド;ベルテポルフィン;ビンブラスチン;ビンクリスチン;ビンデシン;ビネピジン;ビンフルニン;ビンホルミド(Vinformide);ビングリシナート;ビンロイシノール(Vinleucinol);ビンロイロシン;ビノレルビン;ビンロシジン;ビントリプトール;ビンゾリジン;ボロゾール;キサントマイシンA(グアメサイクリン);ゼニプラチン;ジラスコルブ(Zilascorb)[2-H];ジノスタチン;ゾレドロネート;ゾルビシン;およびゾスキダル、例えば
【0433】
アルデスロイキン(例えば、PROLEUKIN(登録商標));アレムツズマブ(例えば、CAMPATH(登録商標));アリトレチノイン(例えば、PANRETIN(登録商標));アロプリノール(例えば、ZYLOPRIM(登録商標));アルトレタミン(例えば、HEXALEN(登録商標));アミフォスチン(例えば、ETHYOL(登録商標));アナストロゾール(例えば、ARIMIDEX(登録商標));三酸化ヒ素(例えば、TRISENOX(登録商標));アスパラギナーゼ(例えば、ELSPAR(登録商標));;BCG生(例えば、TICE(登録商標)BCG);ベキサロテン(例えば、TARGRETIN(登録商標));ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標));ブレオマイシン(例えば、BLENOXANE(登録商標));ブスルファン静注(例えば、BUSULFEX(登録商標));ブスルファン経口(例えば、MYLERAN(登録商標));カルステロン(例えば、METHOSARB(登録商標));カペシタビン(例えば、XELODA(登録商標));カルボプラチン(例えば、PARAPLATIN(登録商標));カルムスチン(例えば、BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチンとポリフェプロサン(例えば、GLIADEL(登録商標)Wafer);セレコキシブ(例えば、CELEBREX(登録商標));クロラムブシル(例えば、LEUKERAN(登録商標));シスプラチン(例えば、PLATINOL(登録商標));クラドリビン(例えば、LEUSTATIN(登録商標)、2-CdA(登録商標));シクロホスファミド(例えば、CYTOXAN(登録商標)、NEOSAR(登録商標));シタラビン(例えば、CYTOSAR-U(登録商標));シタラビンリポソーム(例えばDepoCyt(登録商標));ダカルバジン(例えば、DTIC-Dome):ダクチノマイシン(例えば、COSMEGEN(登録商標));ダルベポエチンアルファ(例えば、ARANESP(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(例えば、DANUOXOME(登録商標));ダウノルビシン/ダウノマイシン(例えば、CERUBIDINE(登録商標));デニロイキン・ディフティトックス(例えば、ONTAK(登録商標));デクスラゾキサン(例えば、ZINECARD(登録商標));ドセタキセル(例えば、TAXOTERE(登録商標));ドキソルビシン(例えば、ADRIAMYCIN(登録商標)、RUBEX(登録商標));ドキソルビシンHCLリポソーム注射を含むドキソルビシンリポソーム(例えば、DOXIL(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(例えば、DROMOSTANOLONE(登録商標)およびMASTERONE(登録商標)注射);エリオットB液(例えば、エリオットB液(登録商標));エピルビシン(例えば、ELLENCE(登録商標));エポエチンアルファ(例えば、EPOGEN(登録商標));エストラムスチン(例えば、EMCYT(登録商標));リン酸エトポシド(例えば、ETOPOPHOS(登録商標));エトポシドVP-16(例えば、VEPESID(登録商標));エキセメスタン(例えば、AROMASIN(登録商標));フィルグラスチム(例えば、NEUPOGEN(登録商標));フロクスウリジン(例えば、FUDR(登録商標));フルダラビン(例えば、FLUDARA(登録商標));5-FUを含むフルオロウラシル(例えば、ADRUCIL(登録商標));フルベストラント(例えば、FASLODEX(登録商標));ゲムシタビン(例えば、GEMZAR(登録商標));ゲムツズマブ/オゾガマイシン(例えば、MYLOTARG(登録商標));酢酸ゴセレリン(例えば、ZOLADEX(登録商標));ヒドロキシウレア(例えば、HYDREA(登録商標));イブリツモマブ/チウキセタン(例えば、ZEVALIN(登録商標));イダルビシン(例えば、IDAMYCIN(登録商標));イホスファミド(例えば、IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(例えば、GLEEVEC(登録商標));インターフェロンアルファ-2a(例えば、ROFERON-A(登録商標));インターフェロンアルファ-2b(例えば、INTRON A(登録商標));イリノテカン(例えば、CAMPTOSAR(登録商標));レトロゾール(例えば、FEMARA(登録商標));ロイコボリン(例えば、WELLCOVORIN(登録商標)、LEUCOVORIN(登録商標));レバミゾール(例えば、ERGAMISOL(登録商標));ロムスチン/CCNU(例えば、CeeBU(登録商標));メクロレタミン/ナイトロジェンマスタード(例えば、MUSTARGEN(登録商標));酢酸メゲストロール(例えば、MEGACE(登録商標));メルファラン/L-PAM(例えば、ALKERAN(登録商標));6-メルカプトプリンを含むメルカプトプリン(6-MP;例えば、PURINETHOL(登録商標));メスナ(例えば、MESNEX(登録商標));メトトレキサート;メトキサレン(例えば、UVADEX(登録商標));マイトマイシンC(例えば、MUTAMYCIN(登録商標)、MITOZYTREX(登録商標));ミトタン(例えば、LYSODREN(登録商標));ミトキサントロン(例えば、NOVANTRONE(登録商標));フェニルプロピオン酸ナンドロロン(例えば、DURABOLIN-50(登録商標));ノフェツモマブ(例えば、VERLUMA(登録商標));オプレルベキン(例えば、NEUMEGA(登録商標));オキサリプラチン(例えば、ELOXATIN(登録商標));パクリタキセル(例えば、PAXENE(登録商標)、TAXOL(登録商標));パミドロネート(例えば、AREDIA(登録商標);;ペガデマーゼ(例えば、ADAGEN(登録商標));ペグアスパラガーゼ(例えば、ONCASPAR(登録商標));ペグフィルグラスチム(例えば、NEULASTA(登録商標));ペントスタチン(例えば、NIPENT(登録商標));ピポブロマン(例えば、VERCYTE(登録商標));プリカマイシン/ミトラマイシン(例えば、MITHRACIN(登録商標));ポルフィマーナトリウム(例えば、PHOTOFRIN(登録商標));プロカルバジン(例えば、MATULANE(登録商標));キナクリン(例えば、ATABRINE(登録商標));ラスブリカーゼ(例えば、ELITEK(登録商標));リツキシマブ(例えば、RITUXAN(登録商標));サルグラモスチム(例えば、PROKINE(登録商標));ストレプトゾシン(例えば、ZANOSAR(登録商標));スニチニブリンゴ酸塩(例えば、SUTENT(登録商標));タルク(例えば、SCLEROSOL(登録商標));タモキシフェン(例えば、NOLVADEX(登録商標));テモゾロミド(例えば、TEMODAR(登録商標));テニポシド/VM-26(例えば、VUMON(登録商標));テストラクトン(例えば、TESLAC(登録商標));6-チオグアニン(6-TG)を含むチオグアニン;チオテパ(例えば、THIOPLEX(登録商標));トポテカン(例えば、HYCAMTIN(登録商標));トレミフェン(例えば、FARESTON(登録商標));トシツモマブ(例えば、BEXXAR(登録商標));トラスツズマブ(例えば、HERCEPTIN(登録商標));トレチノイン/ATRA(例えば、VESANOID(登録商標));ウラシルマスタード;バルビシン(例えば、VALSTAR(登録商標));ビンブラスチン(例えば、VELBAN(登録商標));ビンクリスチン(例えば、ONCOVIN(登録商標));ビノレルビン(例えば、NAVELBINE(登録商標));およびゾレドロネート(例えば、ZOMETA(登録商標))が挙げられる。
【0434】
本明細書において、治療法の投与後、投与と同時に、または投与前に投与することができる例示的なチェックポイント阻害剤には、限定されるものではないが、抗CTLA4剤、抗PF-1剤などが含まれ、その例示的なものは以下である:
【0435】
【表1】
【0436】
本明細書で提供されるウイルス療法のための組み合わせで投与される追加の処置は、1つ以上の免疫抑制薬、例えば、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン);カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリン、タクロリムス);mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス);メトトレキサート;レナリドマイド;アザチオプリン;メルカプトプリン;フルオロウラシル;シクロホスファミド;TNFα遮断抗体(例えば、インフリキシマブ/レミケード、エタネルセプト/エンブレル、アダリムマブ/ヒュミラ)およびフルダラビンを含むことができる。
【0437】
F.治療のためのCAVESの投与様式
本明細書で提供される細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)は、治療のために、腫瘍を有するまたは新生物細胞を有する対象を含む対象に投与することができる。投与されるCAVESは、本明細書で提供されるCAVESまたは本明細書で提供される方法を使用して生成された任意の他のCAVESであることができる。いくつかの例では、CAVESで使用される担体細胞/細胞媒体が、幹細胞、免疫細胞またはがん細胞である自家細胞(すなわち、患者に由来する)または同種細胞(すなわち、患者に由来しない)である。担体細胞を、例えば、ウイルス増幅能力を増強し、抗ウイルス状態の誘導を遮断し、同種不活化/拒絶決定因子から保護し、補体から保護するように感作させることができる、または担体細胞を、例えば、インターフェロンによって誘導される抗ウイルス状態に応答しない、T細胞、NK細胞およびNKT細胞による同種認識を回避する、ヒトもしくはウイルス起源の免疫抑制因子を発現する、許容性が低い腫瘍細胞を腫瘍溶解性ウイルス感染に感作させるがんもしくは幹細胞由来因子を発現する、ならびに補体および中和抗体の機能を妨害する因子を発現するように操作することができる。いくつかの例では、投与されるウイルスは、弱毒化病原性、低毒性、腫瘍への優先的蓄積、腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化する能力、高い免疫原性、複製能力および外因性タンパク質(免疫調節タンパク質および免疫治療用タンパク質、例えばチェックポイント阻害剤に対する抗体、および共刺激分子のアゴニストを含む)を発現する能力、ならびにそれらの組み合わせなどの特徴を含むウイルスである。
【0438】
a.照射CAVESまたは非照射CAVESの投与
CAVESで使用される担体細胞を、腫瘍溶解性ウイルスによる感染の前または後に照射することができる。腫瘍溶解性ウイルス療法のための細胞担体として形質転換細胞を使用するためには、未感染細胞が投与後に新たな転移性増殖を確立するのを防がなければならない。これは、ウイルス感染の前または後、投与前の担体細胞のγ線照射によって達成することができ、γ照射は腫瘍形成能を除去するが、代謝活性を維持し、ウイルス産生/増幅および放出に影響を及ぼさない。例えば、担体細胞は、ウイルス感染の最大24時間前、またはウイルス感染の最大24時間後に照射することができる。
【0439】
放射線の量は、CAVESにおける担体細胞およびウイルスの性質を含むさまざまな因子のいずれかに応じて当業者が選択することができる。放射線量は、ウイルス感染、増幅および放出に影響を及ぼすことなく、担体細胞を不活化し、腫瘍形成を防止するのに十分であることができる。例えば、放射線の量は、約5Gy、10Gy、15Gy、20Gy、25Gy、30Gy、35Gy、40Gy、45Gy、50Gy、100Gy、120Gy、150Gy、200Gy、250Gy、500Gyまたはそれ以上であることができる。
【0440】
b.投与経路
CAVESは、対象に局所的または全身的に送達または投与することができる。例えば、投与様式には、限定されるものではないが、全身、非経口、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経皮、皮内、動脈内(例えば、肝動脈注入)、小胞内灌流、胸膜内、関節内、局所、腫瘍内、病変内、内視鏡的、多穿刺(例えば、天然痘ワクチンで使用される)、吸入、経皮、皮下、鼻腔内、気管内、経口、腔内(例えば、カテーテルを介した膀胱への投与、坐剤または浣腸による腸への投与))、膣、直腸、頭蓋内、前立腺内、硝子体内、耳、眼または局所投与が含まれる。
【0441】
当業者は、対象およびCAVESと適合性の任意の投与様式を選択することができ、これはまた、CAVESが標的細胞型または組織、例えば腫瘍および/または転移に到達および侵入する結果となる可能性が高い。投与経路は、疾患の性質、標的細胞または組織の特性(例えば、腫瘍の種類)、および投与される特定のCAVESを含むさまざまな因子のいずれかに応じて、当業者が選択することができる。標的部位への投与を、例えば、コロイド分散系として弾道送達(ballistic delivery)によって実施することができる、または全身投与を、動脈への注射によって実施することができる。
【0442】
c.装置
医薬品、医薬組成物およびワクチンを投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれも、CAVESを投与するために使用することができる。例示的な装置には、限定されるものではないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。例えば、Qaudra-Fuse(商標)多面注射針(Rex Medical、コンショホッケン、PA)を使用できる。
【0443】
典型的には、CAVESを投与するための装置は、CAVESと適合性であり;例えば、高圧注射装置などの無針注射装置を、高圧注射によって損傷を受けないCAVESを用いて使用することができ、典型的には、高圧注射によって損傷を受けるCAVESを用いては使用されない。追加の薬剤または化合物を対象に投与するための装置も本明細書で提供される。医薬品を対象に投与するための当技術分野で既知のさまざまな装置のいずれかを使用することができる。例示的な装置には、限定されるものではないが、皮下注射針、静脈留置針、カテーテル、無針注射装置、吸入器、および点眼器などの液体ディスペンサーが含まれる。典型的には、化合物を投与するための装置は、化合物の所望の投与方法と適合性であるだろう。例えば、全身的または皮下に送達される化合物は、皮下注射針および注射器で投与することができる。
【0444】
d.投与の投与量
投与レジメンは、さまざまな方法および量のいずれかであることができ、既知の臨床的因子に従って当業者が決定することができる。医学分野で既知のように、任意のある患者のための投与量は、対象の種、サイズ、体表面積、年齢、性別、免疫能力および健康全般、投与される特定のCAVES、投与の期間および経路、疾患の種類および段階、例えば、腫瘍サイズ、ならびに同時に投与される化学療法薬などの他の処置または化合物を含む多くの因子に依存することができる。上記の因子に加えて、このようなレベルは、当業者が決定できるように、ウイルスの感染力および増幅能、ならびにCAVESの性質によって影響されることができる。
【0445】
本方法では、CAVESの適切な最小投与量レベルおよび投与レジメンが、CAVESがウイルスを標的部位に送達し、ウイルスが腫瘍または転移において生存、増殖および複製するのに十分なレベルであることができる。一般に、100,000~10億個の未改変、感作、保護または遺伝子操作された同種または自家担体細胞が、0.01以上の感染多重度(MOI)で、本明細書で提供される共培養スクリーニングおよび分析方法に基づいて選択される腫瘍溶解性ウイルスを含む任意の適切な腫瘍溶解性ウイルスにエクスビボで感染してCAVESを作製する。例えば、担体細胞は、少なくとももしくは約0.01~少なくとももしくは約10.0のMOI、または少なくとももしくは約0.01、0.02、0.03、0.04もしくは0.05から少なくとももしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0もしくは5.0のMOI、例えば、少なくとももしくは約0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0もしくはそれ以上のMOIで感染される。次いで、感染した担体細胞を、少なくともまたは約6時間~少なくともまたは約72時間以上の時間インキュベートして、CAVESを生成する。例えば、CAVESを生成するためのインキュベーション時間は、少なくともまたは約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17または18時間~少なくともまたは約19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71または72時間またはそれ以上であることができる。いくつかの実施形態では、MOIは0.1であり、CAVESを生成するためのインキュベーション時間は、少なくともまたは約24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47または48時間またはそれ以上である。例えば、MOIは0.1であり、CAVESを生成するためのインキュベーション時間は約38~約42時間、例えば約38、39、40、41または42時間である。例示的な実施形態では、MOIは0.1であり、CAVESを生成するためのインキュベーション時間は約28時間であり、いくつかの実施形態では、MOIは0.5であり、CAVESを生成するためのインキュベーション時間は約18~約24時間、例えば約18、19、20、21、22、23または24時間である。前述の実施形態のいずれかにおいて、細胞担体は、幹細胞、例えば、MSC細胞もしくは培養されたAD-MSC(CD34+SA-ASCに由来する)、または上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)もしくは周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)などのSVF細胞もしくはその亜集団であることができる。更なる実施形態では、ウイルスはワクシニアウイルス(VACV)、例えばACAM1000またはACAM2000であり、いくつかの実施形態では、VACVは、配列番号70に示される配列を有するACAM2000であるか、または配列番号71に示される配列を有するCAL1ウイルスである。
【0446】
本明細書で提供される組成物および方法では、少なくともまたは約2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のpfu/細胞を産生する細胞担体/CAVESが選択される。例えば、少なくともまたは少なくとも約10、少なくともまたは少なくとも約100、少なくともまたは少なくとも約1,000以上のpfu/細胞を産生する細胞担体/CAVESが選択される。一般に、ウイルスは、投与サイクルにわたって少なくとも1回、少なくともまたは約またはちょうど1×105pfuである量で投与される。ウイルスを65kgのヒトに投与するための例示的な最小レベルは、少なくとも約1×105のプラーク形成単位(pfu)、少なくとも約5×105pfu、少なくとも約1×106pfu、少なくとも約5×106pfu、少なくとも約1×107pfu、少なくとも約1×108pfu、少なくとも約1×109pfu、または少なくとも約1×1010pfuを含むことができる。例えば、ウイルスは、投与サイクルにわたって少なくとも1回、少なくともまたは約またはちょうど1×105pfu、1×106pfu、1×107pfu、1×108pfu、1×109pfu、1×1010pfu、1x1011pfu、1×1012pfu、1×1013pfu、または1×1014pfuである量で投与される。
【0447】
e.レジメン
投与レジメンでは、CAVESの量を、単回投与として、または投与サイクルにわたって複数回投与することができる。したがって、本明細書で提供される方法は、対象へのCAVESの単回投与または対象へのCAVESの複数回投与を含むことができる。いくつかの例では、単回投与が、ウイルスを腫瘍内に送達および確立するのに十分であり、ウイルスが増殖し、対象の抗腫瘍応答を引き起こすまたは増強することができ;このような方法は、対象の抗腫瘍応答を引き起こすまたは増強するためにCAVESの追加の投与を必要とせず、例えば、腫瘍成長の阻害、転移成長もしくは形成の阻害、腫瘍サイズの減少、腫瘍もしくは転移の排除、新生物疾患の再発もしくは新たな腫瘍形成の阻害もしくは防止、または他のがん療法効果をもたらすことができる。
【0448】
他の例では、CAVESを、典型的には少なくとも1日時間的に隔てられた、異なる機会で投与することができる。例えば、CAVESを、投与の間に1日以上、2日以上、1週間以上または1ヶ月以上あけて、2回、3回、4回、5回または6回以上投与することができる。別々の投与は、以前の投与がウイルスを腫瘍または転移に送達するのに無効であった場合に、ウイルスを腫瘍または転移に送達する可能性を増加させることができる。別々の投与は、ウイルス増殖が起こることができる腫瘍もしくは転移上の位置を増加させることができる、または腫瘍に蓄積されるウイルスの力価を増加させることができ、これによって宿主の抗腫瘍免疫応答の誘発または増強において腫瘍からの抗原または他の化合物の放出の規模を増加させ、また任意にウイルスベースの腫瘍溶解または腫瘍細胞死のレベルを増加させることができる。CAVESの別々の投与は、ウイルス抗原に対する対象の免疫応答を更に拡大させることができ、これによってウイルスが蓄積した腫瘍または転移に対する宿主の免疫応答を拡大させ、宿主が抗腫瘍免疫応答を開始する可能性を増加させることができる。
【0449】
別々の投与が実施される場合、各投与は、他の投与の投与量と比較して同じまたは異なる投与量であることができる。一例では、全ての投与量が同じである。他の例では、第1の投与量が、1つ以上の後の投与量よりも多い投与量、例えば、後の投与量よりも少なくとも10倍多い、少なくとも100倍多い、または少なくとも1000倍多いことができる。第1の投与量が1つ以上の後の投与量よりも多い別々の投与の方法の一例では、全ての後の投与量が、第1の投与と比較して同じまたはより少ない量であることができる。
【0450】
別々の投与は、2、3、4、5または6回の投与を含む2回以上の任意の回数の投与を含むことができる。当業者は、治療方法をモニタリングするための当技術分野で既知の方法および本明細書で提供される他のモニタリング方法に従って、1つ以上の追加の投与を実施するための投与回数またはこれを実施することの望ましさを容易に決定することができる。したがって、本明細書で提供される方法は、CAVESの1回以上の投与を対象に提供する方法を含み、投与回数は、対象をモニタリングし、モニタリングの結果に基づいて、1回以上の追加の投与を提供するかどうかを決定することによって決定することができる。1つ以上の追加の投与を提供するかどうかの決定は、限定されるものではないが、腫瘍成長の徴候または腫瘍成長の阻害、新たな転移の出現または転移の阻害、対象の抗ウイルス抗体力価、対象の抗腫瘍抗体力価、対象の全体的な健康、対象の体重、腫瘍および/または転移のみにおけるウイルスの存在、ならびに正常組織または臓器におけるウイルスの存在を含む、さまざまなモニタリング結果に基づくことができる。
【0451】
投与の間の期間は、さまざま期間のいずれかであることができる。投与の間の期間は、投与回数、対象が免疫応答を開始する期間、対象が正常組織からウイルスを排除する期間、または腫瘍もしくは転移におけるウイルス増殖の期間に関して記載されるモニタリング工程を含む様々な因子のいずれかの関数であることができる。一例では、期間が、対象が免疫応答を開始する期間の関数であることができ;例えば、期間が、対象が免疫応答を開始する期間より長く、例えば、約1週間超、約10日超、約2週間超、または約1ヶ月超であることができ;別の例では、期間が、対象が免疫応答を開始する期間よりも短く、例えば、約1週間未満、約10日未満、約2週間未満、または約1ヶ月未満であることができる。別の例では、期間が、対象が正常組織からウイルスを排除する期間の関数であることができ;例えば、期間が、対象が正常組織からウイルスを排除する期間より長く、例えば、約1日超、約2日超、約3日超、約5日超、または約1週間超であることができる。別の例では、期間が、腫瘍または転移におけるウイルス増殖の期間の関数であることができ;例えば、期間が、検出可能なマーカーを発現するウイルスの投与後に腫瘍または転移において検出可能なシグナルが生じる期間よりも長く、例えば、約3日、約5日、約1週間、約10日、約2週間、または約1か月であることができる。
【0452】
例えば、ある量のCAVESは、投与サイクルにわたって2回、3回、4回、5回、6回または7回投与される。この量のCAVESを、サイクルの初日、サイクルの初日と2日目、サイクルの最初の3連続日のそれぞれ、サイクルの最初の4連続日のそれぞれ、サイクルの最初の5連続日のそれぞれ、サイクルの最初の6連続日のそれぞれ、またはサイクルの最初の7連続日のそれぞれに投与することができる。一般的に、投与サイクルは7日、14日、21日または28日である。患者の応答性または予後に応じて、投与サイクルが数ヶ月または数年にわたって繰り返される。
【0453】
一般に、CAVESの適切な最大投与量レベルまたは投与レジメンは、宿主に毒性でないレベル、3倍以上の脾腫を引き起こさないレベル、約1日後または約3日後または約7日後に正常組織または臓器にウイルスコロニーまたはプラークをもたらさないレベルである。
【0454】
G.処置方法および処置と連携したモニタリング
ウイルスの送達を促進するための本明細書で提供される細胞支援型ウイルス発現系、またはCAVESを投与して、増殖性または炎症性の疾患または状態を有する対象を処置することによる処置方法が本明細書で提供される。特に、状態は免疫特権細胞または組織に関連している。免疫特権細胞または組織に関連する疾患または状態には、例えば、癌性細胞、新生物、腫瘍、転移、がん幹細胞、および他の免疫特権細胞または組織、例えば創傷および創傷組織または炎症組織の処置(阻害など)を含む、増殖性の障害または状態が含まれる。このような方法の特定の例では、本明細書で提供されるCAVESが、全身送達のための静脈内投与によって投与される。他の例では、本明細書で提供されるCAVESが、腫瘍内注射によって投与される。実施形態では、対象が、がんを有する。本明細書で提供されるCAVESのいずれかは、それを必要とする対象にウイルス療法を提供するために使用することができ、それには、感作細胞媒体、保護細胞媒体、操作された細胞媒体および適合細胞媒体を含むCAVESが含まれ、これは、米国仮特許出願第62/680,570号および米国特許出願第16/536,073号に記載のマッチングアッセイによって更にスクリーニングされる感作/操作された細胞媒体を含むことができる。
【0455】
本明細書で提供されるCAVESは、単回注射によって、複数回注射によって、または連続的に投与することができる。例えば、CAVESは、静脈内ポンプ、シリンジポンプ、静脈内点滴または遅い注射を使用することを含む遅い注入によって投与することができる。例えば、CAVESの連続投与は、数分~数時間、例えば、ちょうどまたは約1分~1時間、例えば、20~60分の間に行うことができる。
【0456】
本明細書に記載される処置および検出方法を受けることができるがんには、転移するがんも含まれる。転移は、原発腫瘍から非隣接部位への、通常は血流またはリンパ管を介した細胞の拡散であり、続発性腫瘍成長を確立することが当業者によって理解される。処置が企図されるがんの例としては、限定されるものではないが、固形腫瘍および血液悪性腫瘍、例えば、脈絡膜および皮膚黒色腫を含む黒色腫、膀胱がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、肺がん、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、歯肉がん、舌がん、前立腺癌、腎臓がん(renal cancer)、骨がん、精巣がん、卵巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、リンパ腫、脳がん、結腸がん、直腸がん、絨毛がん、神経膠腫、癌腫、基底細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)がん、結合組織がん、消化器系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、胃がん(gastric cancer)、上皮内新生物、腎臓がん(kidney cancer)、喉頭がん、白血病、肝臓がん、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系のがん、肉腫、皮膚がん、胃がん(stomach cancer)、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳房腫瘍、肥満細胞腫、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、細気管支腺癌、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、肝細胞癌、中皮腫、星状細胞腫、神経膠芽腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、ミクログリオーマ、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管周囲細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血症、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎、肺癌腫、インスリノーマ、肉腫、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫、胃腺癌、肺扁平上皮癌、白血病、血管周囲細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、および転移しているかまたは転移のリスクがある任意の他の腫瘍または新生物が挙げられる。
【0457】
本明細書で提供される方法の対象は、哺乳動物または鳥類種を含む、動物または植物の対象などの任意の対象であることができる。例えば、動物対象は、限定されるものではないが、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ネコまたはイヌなどの飼育動物および家畜を含む、ヒトまたは非ヒト動物であることができる。特定の例では、動物対象がヒト対象である。特定の例では、ヒト対象が小児患者である。
【0458】
本明細書で提供される方法は、対象をモニタリングする工程、腫瘍をモニタリングする工程、および/または対象に投与されるCAVES/ウイルスをモニタリングする工程のうちの1つ以上を更に含むことができる。限定されるものではないが、腫瘍サイズのモニタリング、抗(腫瘍抗原)抗体力価のモニタリング、転移の存在および/またはサイズのモニタリング、対象のリンパ節のモニタリング、対象の体重または血液もしくは尿マーカーを含む他の健康指標のモニタリング、抗(ウイルス抗原)抗体力価のモニタリング、検出可能な遺伝子産物のウイルス発現のモニタリング、ならびに対象の腫瘍、組織または臓器におけるウイルス力価の直接モニタリングを含む、さまざまなモニタリング工程のいずれかを本明細書で提供される方法に含めることができる。
【0459】
モニタリングの目的は、対象の健康状態または対象の治療的処置の進行を評価するためであることができる、あるいは同じもしくは異なるCAVES/ウイルスの更なる投与が是認されるどうかを決定する、または化合物を対象にいつ投与するかもしくは投与するかしないかを決定するためであることができ、ここでは化合物が治療方法の有効性を増加させるように作用することができる、または化合物が対象に投与されたウイルスの病原性を低下させるように作用することができる。
【0460】
腫瘍および/または転移のサイズは、本明細書に記載される検出方法などの外部評価方法または断層撮影もしくは磁気イメージング方法を含む、当技術分野で既知のさまざまな方法のいずれかによってモニタリングすることができる。更に、例えば、遺伝子発現(例えば、ウイルス遺伝子発現)をモニタリングする本明細書で提供される方法を、腫瘍および/または転移のサイズをモニタリングするために使用することができる。
【0461】
いくつかの時点にわたる腫瘍サイズのモニタリングは、本明細書で提供される治療方法の有効性に関する情報を提供することができる。更に、腫瘍または転移のサイズの増加または減少のモニタリングはまた、対象における追加の腫瘍および/または転移の存在(すなわち、検出および/または診断)に関する情報を提供することができる。いくつかの時点にわたる腫瘍サイズのモニタリングは、本明細書で提供される処置などの対象における新生物疾患の処置の有効性を含む、対象における新生物疾患の発症に関する情報を提供することができる。
【0462】
本明細書で提供される方法はまた、CAVESの投与に応じて産生される抗体を含む、対象における抗体力価をモニタリングすることを含むことができる。例えば、本明細書で提供される方法で投与されるCAVES/ウイルスは、内因性ウイルス抗原に対する免疫応答を誘発することができる。本明細書で提供される方法で投与されるCAVES/ウイルスはまた、CAVES/ウイルスによって発現される外因性遺伝子に対する免疫応答を誘発することができる。本明細書で提供される方法で投与されるCAVES/ウイルスはまた、腫瘍抗原に対する免疫応答を誘発することができる。ウイルス抗原、ウイルスによって発現される外因性遺伝子産物、または腫瘍抗原に対する抗体力価のモニタリングを、ウイルスの毒性をモニタリングする方法、処置方法の有効性をモニタリングする方法、あるいは遺伝子産物または抗体を産生および/または収穫についてモニタリングする方法に使用することができる。
【0463】
一例では、抗体力価のモニタリングを使用して、ウイルスの毒性をモニタリングすることができる。ウイルスに対する抗体力価は、CAVES/ウイルスの対象への投与後の期間にわたって変化することができ、ある特定の時点では、低い抗(ウイルス抗原)抗体力価が高い毒性を示すことができ、他の時点では、高い抗(ウイルス抗原)抗体力価が高い毒性を示すことができる。本明細書で提供される方法で使用されるウイルスは、免疫原性であることができ、したがって、CAVES/ウイルスを対象に投与した直後に免疫応答を誘発することができる。
【0464】
一般に、対象の免疫系が強力な免疫応答を迅速に開始できるウイルスは、対象の免疫系が全ての正常な臓器または組織からウイルスを除去できる場合、低い毒性を有するウイルスであることができる。そのため、いくつかの例では、CAVES/ウイルスを対象に投与した直後のウイルス抗原に対する高い抗体力価が、ウイルスの低い毒性を示すことができる。対照的に、高度に免疫原性ではないウイルスは、強力な免疫応答を誘発することなく宿主生物に感染することができ、宿主に対するウイルスの高い毒性をもたらすことができる。したがって、いくつかの例では、CAVES/ウイルスを対象に投与した直後のウイルス抗原に対する高い抗体力価が、ウイルスの低い毒性を示すことができる。
【0465】
他の例では、抗体力価のモニタリングを使用して、処置方法の有効性をモニタリングすることができる。本明細書で提供される方法では、抗(腫瘍抗原)抗体力価などの抗体力価が、新生物疾患を処置するための治療方法などの治療方法の有効性を示すことができる。本明細書で提供される治療方法は、腫瘍および/または転移に対する免疫応答を引き起こすまたは増強することを含むことができる。したがって、抗(腫瘍抗原)抗体力価をモニターすることによって、腫瘍および/または転移に対する免疫応答を引き起こすまたは増強することにおける治療方法の有効性をモニタリングすることが可能である。
【0466】
本明細書で提供される治療方法はまた、腫瘍に蓄積することができ、抗ウイルスまたは抗細胞媒体/抗CAVES免疫応答を引き起こすまたは増強することができるCAVESを対象に投与することを含むことができる。したがって、宿主が腫瘍または転移に蓄積されたウイルスまたはCAVESに対する免疫応答を開始する能力をモニタリングすることが可能であり、これによって対象が抗腫瘍免疫応答も開始したことを示すことができる、または対象が抗腫瘍免疫応答を開始する可能性が高いことを示すことができる、または対象が抗腫瘍免疫応答を開始することができることを示すことができる。
【0467】
本明細書で提供される方法はまた、対象の健康をモニタリングする方法を含むことができる。本明細書で提供される方法のいくつかは、新生物疾患の治療方法を含む治療方法である。当技術分野で既知のように、対象の健康のモニタリングを使用して、治療方法の有効性を決定することができる。本明細書で提供される方法はまた、本明細書で提供されるCAVESを対象に投与する工程を含むことができる。対象の健康のモニタリングを使用して、対象に投与された場合のCAVES中のウイルスの病原性を決定することができる。当技術分野で既知のように、新生物疾患、感染性疾患または免疫関連疾患などの疾患をモニタリングするためのさまざまな健康診断方法のいずれかをモニタリングすることができる。例えば、対象の体重、血圧、脈拍、呼吸、色、温度または他の観察可能な状態が、対象の健康を示すことができる。更に、対象からのサンプル中の1つ以上の構成要素の存在または不在またはレベルが、対象の健康を示すことができる。典型的なサンプルは、血液および尿サンプルを含むことができ、ここでは1つ以上の構成要素の存在または不在またはレベルを、例えば、血液パネルまたは尿パネル診断試験を実施することによって決定することができる。対象の健康を示す例示的な構成要素には、限定されるものではないが、白血球数、ヘマトクリットまたは反応性タンパク質濃度が含まれる。
【0468】
H.処置されるがんの種類
本明細書で提供される系(CAVES)および方法は、固形腫瘍および血液悪性腫瘍を含む、あらゆる種類のがんまたは転移を処置するために使用することができる。本明細書に開示される方法によって処置することができる腫瘍には、限定されるものではないが、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞がん、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、CNSがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜がん、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、ならびに泌尿器系のがん、例えばリンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、黒色腫、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、神経芽細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、線維肉腫、および肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、リンパ腫、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、線維肉腫、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎、肺癌、インスリノーマ、リンパ腫、肉腫、唾液腺腫瘍、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌が含まれる。
【0469】
いくつかの実施形態では、腫瘍が、転移性黒色腫;食道および胃腺癌;胆管癌(任意のステージ);膵臓腺癌(任意のステージ);胆嚢がん(任意のステージ);高悪性度の粘液性虫垂がん(任意のステージ);高悪性度の胃腸神経内分泌がん(任意のステージ);中皮腫(任意のステージ);軟部組織肉腫;前立腺癌;腎細胞癌;肺小細胞癌;肺非小細胞癌;頭頸部扁平上皮癌;結腸直腸がん;卵巣癌;肝細胞癌;および神経膠芽腫から選択される。いくつかの実施形態では、腫瘍が、神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、中枢神経系腫瘍および黒色腫から選択される。
I.実施例
【0470】
以下の実施例は、例示目的でのみ含まれており、主題の範囲を制限することを意図したものではない。
【0471】
実施例1
ワクシニアウイルスは腫瘍選択性を有し、治療遺伝子を有する組換えウイルスを発現するための骨格として使用することができる
【0472】
この実施例は、ACAM2000を増幅することによって得られるワクシニアウイルスであるCAL1ウイルスが腫瘍選択性であり、治療遺伝子を発現する組換えウイルスを操作するために使用することができることを実証する。
【0473】
材料および方法
(1)ウイルスおよび細胞培養
CAL1を、CV-1細胞(Monathら、Int.J.of Infect.Dis.8(2004))を使用する以前に記載された方法に従って、ACAM2000から増幅した。TurboFP635が遺伝子間部位に挿入されているCAL2を、下記の実施例8に記載されるように、CAL1から遺伝子操作した。PC3、DU145、E006AA、およびHPrEC細胞は、ATCC(バージニア州マナッサス)から購入した。PC3細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)中で維持した。DU145細胞を、2mMのL-グルタミンおよび10%のFBSを補充した低グルコースのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で維持した。E006AA細胞を、10%FBSを補充したDMEM中で維持した。HPrEC細胞を、Prostate Epithelial Cell Growth Kitの添加によって6mM L-グルタミン、0.4%抽出物P、1.0μMエピネフリン、0.5ng/mL rh TGF-α、100ng/mLヒドロコルチゾン、5μg/mL rhインスリンおよび5μg/mLアポ-トランスフェリンを補充したProstate Epithelial Cell Basal Medium中で維持した。CV-1細胞を、1%抗生物質溶液(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア州)、2mM L-グルタミン、および10%熱不活性化FBSを補充した高グルコースDMEM中で維持した。37℃、5%CO2、加湿雰囲気のインキュベータ内で細胞を増殖させた。
【0474】
(2)ウイルス増幅アッセイ
細胞を、24ウェルディッシュに、2%FBSを含有する0.5mLの適切な培地において90%~100%の集密度で播種した。プレーティングの4~5時間後、MOI 0.01および0.1で細胞を複製してCAL1に同期感染させた。感染後24時間で、各細胞株の2つのMOIのウェルの感染細胞サンプルを1mLシリンジのゴムヘッドでこすり取ることによって採取し、1.5mLチューブに移し、プラークアッセイによる分析まで-20℃で保存した。同じ工程を48、72および96時間でディッシュに繰り返した。プラークアッセイを行う前に、サンプルを3回凍結融解した。
【0475】
(3)プラークアッセイ
CV-1細胞を、アッセイの1日前に24ウェルプレートに2×105細胞/ウェルで播種した。サンプルを、2%ウシ胎児血清(FCS)(DMEM2)を補充したダルベッコ改変イーグル培地で1:10に段階希釈し、200μLの各希釈物またはDMEM2のみを複製してウェルに分注した。1~2時間のインキュベーション後、1mLのカルボキシメチルセルロースオーバーレイ培地を各ウェルに添加し、プレートを37℃および5%CO2で48+/-6時間インキュベートした。クリスタルバイオレットを使用して、細胞を1~4時間染色した。染色が完了したら、染色液を吸引し、ウェルを水1mLで1分間2回洗浄し、風乾した。プラークを巨視的に、または必要に応じて顕微鏡評価によって定量した。
【0476】
(4)異種ヒト前立腺腫瘍モデル系におけるCAL1
4~6週齢の無胸腺ヌード雄性マウスに、2.5×106個のPC3細胞を右側腹部の皮下に接種した。腫瘍が約150mm3(100~200mm3の間)の平均体積に達したら、マウスを腫瘍サイズに基づいて無作為化し、1×106もしくは1×107PFUのCAL1処置群、またはPBSのみ(n=10/群)に層別化した。処置を腫瘍内に送達し、腫瘍サイズを14日間にわたって週に2回測定した。15日目に、動物を屠殺し、組織サンプル(例えば、血液、腫瘍、腎臓(対)、肝臓、肺、腸、前立腺、精巣、膀胱、脾臓、脳および心臓)を回収し、サンプルをプロテアーゼ阻害剤(cOmpleteTM Mini Protease Inhibitor Cocktail(カタログ番号11836153001 Roche)、Millipore Sigma、マサチューセッツ州バーリントン)と混合した後、液体窒素中で凍結保存した。
【0477】
(5)生体分布解析
凍結保存したサンプルを水浴中37℃で解凍し、激しくボルテックスして組織サンプルを破壊した。処置用量あたり5匹の動物(CAL1の1×106または1×107PFU)および3匹の模擬処置動物(陰性対照)からのサンプルを以下の分析に使用した。全てのサンプルを上記のプラークアッセイによって分析した。サンプルはまた、Qiagen(メリーランド州ゲルマンタウン)によるDNeasy Blood and Tissue kitプロトコルに従ってqPCR用に調製した。DNA定量キット、蛍光アッセイを使用して、サンプル(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)のDNA濃度を決定した。調製したサンプルを以下のqPCR分析に使用した。
【0478】
(6)リアルタイム半定量PCR
調製したPC3腫瘍異種移植片サンプルを、LightCycler(登録商標)装置(Roche,Penzberg,Germany)を使用して実施したリアルタイム半定量PCR(qPCR)によって分析した。Roche diagnostics SYBR Greenキットのマニュアルは、PowerUpTMSYBRTMGreen Master Mix(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)での使用に適合させた。最適な設定を、検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)が既知のVACV由来のA56R遺伝子を含有する参照プラスミドを用いた種々の設定でのPCR反応によって決定した。定量に加えて、鋳型増幅、マトリックス効果、または非特異的反応を区別するために、各実行の最後に融解曲線分析を行った。組織サンプルからの等量のDNAを反応に使用した。全ての実験反応を二連で行った。
【0479】
ACAM2000由来のA56R ORFの単一コピーを含むpUC57プラスミドを陽性対照として使用して、qPCRアッセイの標準曲線を作成し、A56Rプライマー:
5’-CATCATCTGGAATTGTCACTACTAAA-3’(配列番号91)および
5’-ACGGCCGACAATATAATTAATGC-3’(配列番号92)
を使用してcDNAを増幅した。
【0480】
定量は、オペレーターのマニュアル(Roche、ドイツ国ペンツベルク)に記載されているように、LightCycler(登録商標)Data Analysisソフトウェアバージョン3.45を使用して行った。
【0481】
(7)ガイドRNA
ガイドRNA(gRNA)標的配列(5’-CGAGGAAAAGCTGTAGTTAT-3’;配列番号95;配列番号1に示される配列を有するgRNA1の標的配列)(標的遺伝子間遺伝子座:ORF-157とORF-158の間)を、オンラインソフトウェア(dna20.com/eCommerce/cas9/input)を使用して分析した。gRNAを、ピューロマイシン(Vector Builder、テキサス州シェナンドア)に対する抗生物質耐性を有するレンチウイルスベクター中のU6プロモーターの制御下で構築した。
【0482】
(8)ドナーベクター
ドナーベクターの構築は実施例8に記載されている。ORF_157とORF_158との間の遺伝子間座(271bp)の右(555bp)および左(642bp)の相同領域(HR)を、ACAM2000 DNAゲノム配列(Genebank:AY313847)に基づいて選択した。目的の治療遺伝子の挿入を可能にするために、各HRの両端に複数のクローニング部位を追加した。TurboFP635には、ワクシニアウイルス初期後期プロモーター(pEL)およびワクシニアウターシグナルが隣接していた。構築した3つの断片(HR-left、TurboFP635、およびHR-right)を合成し(GeneWiz、カリフォルニア州サンディエゴ)、In-Fusion(登録商標)Cloning Kit(Takara Bio USA、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いてpUC18ベクターにクローニングした。ドナープラスミドをサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)。
【0483】
(9)Cas9HFcベクター
Cas9HF1配列を含むプラスミドを、核局在化を伴わずに、Vector Builder(テキサス州シェナンドア)によって合成した(Kleinstiverら、Nature 529:490-495(2016))。
【0484】
(10)トランスフェクションおよびウイルス感染
トランスフェクションの前日に、2×106個のCV-1細胞を6ウェルプレートに播種した。6μlのTurboFectin 8.0トランスフェクション試薬(Origene Technologies、メリーランド州ロックビル)を250μlのopti-DMEM(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)中で使用して、60~70%コンフルエントの細胞を、Cas9HFcおよびgRNAをコードするプラスミドのそれぞれ1μgでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、2%FBSを補充した高グルコースDMEM中、0.02のMOIで、CAL1 VACVに感染させた。ウイルス感染の2時間後、細胞をPBSで洗浄した。1.5mLのDMEMをウェルに添加し、プレートをCO2と共に37℃で30分間インキュベートした後、上記のドナーベクター2μgをトランスフェクトした。細胞を更に37℃、5%CO2および加湿雰囲気で24時間インキュベートした。感染細胞/トランスフェクト細胞の混合物を回収し、ウイルス精製およびスクリーニングまで-80℃で保存した。
【0485】
(11)ウイルス精製
感染細胞/トランスフェクト細胞の混合物を解凍し、次いで最大の大きさで30秒間、氷上で3回超音波処理して、細胞からウイルスを放出させた。プレートあたり2μlの放出されたウイルスを使用して、6ウェルプレート中の4つのコンフルエントなCV-1細胞層を感染させた。感染の2日後、4~6個の陽性(赤色)プラークを2倍蛍光顕微鏡下でピックアップし、200μlの無血清DMEMを含有するクライオバイアルに移した。精製プロセスを2~4回繰り返して純粋なクローンを得た。
【0486】
(12)PCR
以下の実施例8に記載したように、導入遺伝子の挿入を確認した。遺伝子間遺伝子座における導入遺伝子(TurboFP635)の挿入を確認するために、プライマー対を設計して遺伝子間領域全体を増幅した:
左右HRに位置するリバース5’-GACGAAGAAGCAAGAGATTGTGT-3’(配列番号41);およびフォワード5’-ACCGTTTCCATTACCGCCA-3’(配列番号42)のプライマー。
【0487】
精製クローンのPCR産物をサンガーシーケンシング(Retrogen、カリフォルニア州サンディエゴ)によって分析した。
【0488】
結果
(1)CAL1配列
元のクローンワクチンACAM2000をCV-1細胞を用いて増幅し、得られた誘導体をCAL1と命名した。次世代シーケンシング(NGS)を使用して、CAL1と親ACAM2000ワクチンとの間に遺伝的差異があるかどうかを決定した。結果は、公表されたACAM2000配列(配列番号70)、GBAY313847、CAL1(配列番号71)と比較した場合、i)CAL1ゲノムの位置32の逆方向末端反復配列(ITR)配列の非コード領域内に一塩基多型(SNP)を有し、ii)左ITRにおいて6bp短縮され、iii)右ITRにおいて197bp短縮されたことを示した。
【0489】
(2)CAL1の腫瘍選択性
前立腺癌由来のヒト腫瘍細胞株PC3、DU145およびE006AA、ならびに比較のために非腫瘍ヒト原発性前立腺上皮細胞株HPrECを用いて、CAL1ウイルスの増幅を測定した。CAL1を製造するために使用されたアフリカミドリザル腎臓細胞株CV-1を陽性対照として含めた。簡潔には、細胞を0.01および0.1のMOIでCAL1に感染させた。生ウイルス粒子の増幅を、24、48、72、および96時間でのプラークアッセイによって細胞株において調べた。96時間後、感染細胞におけるウイルス増幅を、腫瘍細胞(例えば、PC3、DU145、およびE006AA)と非腫瘍細胞(例えば、HPrEC)との間で比較および分析した。分析は、全てのヒト腫瘍細胞株が、非腫瘍細胞株と比較して、MOIおよび試験した全ての時間の両方でより高いウイルス増幅を示したことを示した。ヒト腫瘍細胞株E006AAは、CAL1の最も高いウイルス増幅を示した。PC3およびDU145腫瘍細胞は、同様のレベルのウイルス増幅を示し、PC3細胞における増幅は、DU145よりもわずかに(2倍未満)高かった。非腫瘍HPrEC細胞は、最も少ない量のCAL1の増幅を示した(DU145細胞の約5~10倍少ない、およびE006AA細胞の約50倍少ない)。これらの結果は、同じ組織に由来する初代(非腫瘍)細胞と比較して、腫瘍由来細胞株におけるCAL1の優先的増幅の所見を実証する。
【0490】
(3)CAL1の腫瘍内投与は腫瘍退縮を誘導する
異種ヒト前立腺腫瘍モデル系を使用して、CAL1の抗がん治療の可能性を分析した。簡潔には、2×106個の侵襲性の転移性ヒト前立腺癌PC3細胞を4~6週齢の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に皮下注射することによって、前立腺腫瘍を作製した。腫瘍の体積が平均で約150mm3と測定された場合(PC3細胞の注射の15日後;処置0日目)、マウスに、1×106または1×107PFUのCAL1、または対照としてPBSを腫瘍内注射した(n=10/処置)。注射後、腫瘍体積を実験期間中(処置後15日目まで)週に2回測定した。結果は、CAL1の腫瘍内単回注射がヒトPC3腫瘍成長の有意な阻害を誘導したことを示し、15日目に、1×106PFUのCAL1で約800mm3の腫瘍サイズおよび1×107PFUのCAL1で約550mm3の腫瘍サイズに対して、対照腫瘍サイズは約1450mm3と測定された。動物の免疫無防備状態のバックグラウンドにもかかわらず、治療有効性は、処置関連死亡率または安全性の低下に関連しないことが分かった。
【0491】
(4)腫瘍内注射されたCAL1は全身性ウイルス血症を引き起こさない
腫瘍選択性を決定し、正常組織に悪影響があるかどうかを評価するために、CAL1の生体内分布およびウイルス増幅能を分析した。上記の無胸腺ヌードマウスを処置の15日後に屠殺した。動物ごとに12個の組織サンプルを採取し(血液、腫瘍、脳、心臓、腎臓(対)、肝臓、肺、腸、膀胱、前立腺、精巣)、液体窒素中で凍結保存した。サンプルをプラークアッセイならびにリアルタイム半定量PCR(qPCR)によって検査した。ウイルスDNAまたは感染性粒子の存在を、1×106または1×107PFUのCAL1で処置された動物において分析し(各用量についてn=5)、ウイルス処置されていない動物を陰性対照として使用した(n=3)。分析により、動物の正常組織と比較して、CAL1で処置した全ての感染動物のPC3腫瘍中に有意な量のウイルスが明らかになった。具体的には、プラークアッセイは生きたウイルス粒子を示し、一方、qPCR分析は、処置されたPC3腫瘍において高レベルのウイルスDNAを示した。腫瘍組織中のウイルスの量は、試験した他の組織または器官のいずれよりも有意に高く(正常組織における0~300pfu/mgウイルスと比較した、処置されたPC3腫瘍における104~105pfu/mgウイルス;正常組織サンプル中のバックグラウンドレベルと比較したPC3腫瘍サンプルあたり106~108コピーのウイルスDNA)、腫瘍内投与後のCAL1の許容可能な安全性プロファイルを示した。
【0492】
(5)CAL1から操作されたウイルス株における治療可能性の増加
高忠実度細胞質ゾルCas9タンパク質(Kleinstiver,B.P.,ら、High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects.Nature 529(7587):490-495(2016);実施例8を参照)を有するCRISPR/Cas9システムを使用して、ORF_157とORF_158との間の遺伝子間領域に見出される92bp断片がTurboFP635によって置き換えられた組換えウイルスを操作した。PCRおよびサンガー配列決定により、得られた組換えウイルスにおけるTurboFP635の挿入が確認され、これをCAL2と命名した。更に、CV-1トランスフェクト細胞由来のクローンの顕微鏡分析は、TurboFP635が操作されたCAL2組換えVACVに首尾よく挿入されたことを示した。
【0493】
前立腺癌由来ヒト腫瘍細胞株PC3、DU145およびE006AAならびに非腫瘍ヒト初代前立腺上皮細胞株HPrECにおける、0.01または0.1のMOIでの細胞の同時感染、感染後24、48、72および96時間でのサンプルの収集、サンプルの凍結/解凍、CV-1細胞の1~2時間の感染、およびCV-1細胞上のプラークの定量によって、CAL1およびCAL2のウイルス増幅を比較した。CAL2を製造するために使用したCV-1細胞を陽性対照として使用した。ヒト腫瘍細胞株は、CAL1およびCAL2の両方について非常に高いウイルス増幅を示し、細胞あたりのプラーク形成単位のレベルは>10であった。試験した3つ全てのヒト腫瘍細胞株において、感染に使用したMOIに基づいてウイルス増幅の有意差は観察されなかった。HPrECは、試験したヒト腫瘍細胞株と比較して、CAL1およびCAL2で最小のウイルス増幅を示した。結果は、ORF_157とORF_158との間の遺伝子間部位への外因性遺伝子(例示的なTurboFP635など)の導入が、CAL1ウイルスの天然の腫瘍選択性を損なわないことを実証しており、CAL1およびCAL2はいずれも、同じ原発組織に由来する非腫瘍初代細胞と比較して、腫瘍細胞において同様の優先的増幅を示す。結果は、治療遺伝子を有する組換えウイルスを操作するための骨格として、CAL1を使用できることを示している。
【0494】
実施例2
ヒト血清およびイヌ血清によるワクシニアウイルスの不活性化
【0495】
腫瘍溶解性ウイルス、例えばワクシニアウイルス(VACVまたはVV)のヒトおよび動物へのインビボ投与後、補体系、および既存の免疫を有する患者の場合、中和抗体は、投与されたウイルスを不活性化し、ウイルス療法に対する免疫バリアを作り出す。以下に実証されるように、このバリアはヒトおよびイヌ血清中に存在するが、バリアの大きさは種によって異なる。
【0496】
A.ワクシニアウイルスの不活性化を測定するためのウイルスプラークアッセイ(VPA)
血清の存在下でのワクシニアウイルスの不活性化をウイルスプラークアッセイ(VPA)によって測定した。VPAは、サンプル中のウイルスのウイルス力価または濃度を測定するために使用される。例えば、VPAを使用して、種々の条件下でウイルス粒子増幅を定量することができ、例えば、ウイルスを血清に曝露した後の生きたウイルス回収率を、ウイルスを血清とインキュベートしない対照条件と比較することができる。
【0497】
ウイルス含有サンプルを-80℃で保存し、3回の凍結(-80℃)/解凍(+37℃)サイクルに供し、引き続いて3回、1分を隔てた1分間隔で氷冷水上で超音波処理する。超音波処理されたサンプルを、ワクシニアウイルス感染培地(2%FBS、L-グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補足したDMEM)で段階希釈する。プラークアッセイを、2連ウェルで24ウェルプレートで実施する。手短に言えば、200,000個のCV-1サル腎臓細胞を1ウェル当たり1mLのD10培地に一晩蒔く。上清を吸引し、ウイルス含有サンプルの10倍段階希釈液を200μL/ウェルでCV-1単層にアプライする。プレートを、20分毎に手動で振盪しながら37℃(インキュベータ)で1時間インキュベートする。1mLのCMC培地を細胞の上に静かに重層し、プレートを48時間インキュベートする。CMCオーバーレイ培地を、15gのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Sigma-Aldrich、C4888)をオートクレーブ処理し、ペニシリン/ストレプトマイシン、L-グルタミンおよび5%FBSを補足した1L DMEM中、RTで一晩攪拌しながら再懸濁することによって調製し、4℃で短期間保存する。室温で3~5時間、クリスタルバイオレット溶液(1.3%クリスタルバイオレット(Sigma-Aldrich、C6158)、5%エタノール(純エタノール、分子生物学グレード、VWR、71006-012)、30%ホルムアルデヒド(37%v/vホルムアルデヒド、Fisher、カタログ番号F79-9)および再蒸留水)でウェルの頂を覆うことによって細胞を固定し、引き続いてプレートを水道水で洗浄し、一晩乾燥させることによって、細胞を固定した後、プラークをカウントする。ウイルス力価を、サンプル当たりのプラーク形成単位(PFU)で計算する。
【0498】
B.ヒト血清はワクシニアウイルスに基づくがんワクチンを不活性化する
補体および中和抗体によるヒトにおけるVACVの不活性化を評価するために、健康なワクチン接種されていないドナーからのヒト血清(h1)および健康なワクチン接種ドナーからのヒト血清(h2)を、臨床的に適切な用量のプラーク精製ACAM2000(野生型チミジンキナーゼ(TK)陽性のVACVのWyeth株)とインキュベートした。h1からの血清は補体のみを含有し、h2からの血清は、ドナーがワクシニアウイルスを使用して天然痘に対するワクチン接種によって予め免疫されているため、補体および中和抗体を含有した。
【0499】
簡潔には、VACVの1×103プラーク形成単位(pfu)を、ドナーh1またはh2由来の90%ヒト血清を含有する100μLのDMEM培養培地と共に37℃で1時間インキュベートした。この濃度は、体重75kgで5リットルの血液を有する成人に静脈内注射した場合、5×107pfuの臨床的に関連するウイルス用量に相当する。DMEM培養培地のみ(血清なし)を対照として使用した。血清媒介ウイルス不活化に対する補体の特異的役割を評価するために、VACVを、補体が変性/非機能的であったドナーh1およびh2由来の熱不活化血清ともインキュベートした。
【0500】
血清との1時間のインキュベーション後、上記のようにプラークアッセイを実施し、CV-1細胞の単層中において、ウイルスを血清とインキュベートした場合に得られたPFUの量を、ウイルスを血清とインキュベートしなかった対照と比較することによって、対照(血清なしでインキュベートしたウイルス)と比較した回収された生ウイルスのパーセンテージを記録した。プラークアッセイにおける任意の所与の希釈物中に3%未満のヒト血清が存在するように連続希釈を行った。結果を下記表X1に示す。
【0501】
【表2】
【0502】
結果は、非ワクチン接種(h1)およびワクチン接種(h2)ドナー由来のヒト血清がVACV株ACAM2000を不活性化することを示す。これは、特に腫瘍溶解性ウイルスが静脈内(I.V.)または腫瘍内(I.T.)に投与される場合、ヒト血清が治療有効性に対して重要な障壁を示すことを示す。補体に加えて中和抗体を含有したワクチン接種ドナーh2由来の血清は、中和抗体を含有しなかったh1由来の血清よりも高度にVACVを不活性化した。
【0503】
補体タンパク質を変性させ、補体活性を破壊するh1およびh2血清の熱不活性化は、熱不活性化されなかったh1およびh2血清と比較して、ウイルス不活性化の程度を有意に低下させた。これにより、補体系が血清誘導性ウイルス不活化において役割を果たすことが確認される。中和抗体を含有しないh1血清の熱不活性化後、回収された生VACVのパーセンテージは、非熱不活性化h1血清から回収されたVACVのパーセンテージよりも高かった。対照的に、補体および中和抗体を含有するワクチン接種ドナーh2由来の血清の熱不活性化は、回収された生VACVのわずかな増加しかもたらさなかった。したがって、中和抗体および/または他の血清成分の存在は、補体に加えて、血清誘導性VACV不活性化においても役割を果たす。
【0504】
これらの結果は、VACVがインビボ投与後にヒト血清によって不活性化されることを実証しており、腫瘍溶解性ウイルスによる送達および処置の有効性を提供または増強するために、VACVを保護する系の必要性を実証している。
【0505】
C.イヌ血清はワクシニアウイルスに基づくがんワクチンを不活性化する
ヒトで見られる効果と同様に、イヌに注射されたウイルスワクチンは、送達および処置の有効性を低下させる初期の免疫障壁に遭遇する。イヌにおけるVACVの不活性化に対する血清の影響を調べるために、L14またはCAL14と互換的に呼ばれる株、蛍光タンパク質TurboFP635(TK挿入)をコードする遺伝子操作されたVACV LIVP株を、3種の異なるイヌ由来の血清サンプルとインキュベートした。
【0506】
1×103pfuのCAL14を、異なる3ドナー(c1、c2およびc3)由来の90%イヌ血清を含有する100μLのDMEMと共に37℃で1時間インキュベートした。この濃度は、体重25kgで2リットルの血液を有するイヌへの2×107pfuのVACVの静脈内注射に相当する。ドナーh1およびh2由来のヒト血清とインキュベートしたウイルス(上記)を陽性対照として使用し、DMEM培養培地のみとインキュベートしたウイルス(血清なし)を陰性対照として使用した。ウイルスの血清媒介不活化における補体の役割を分析するために、CAL14をイヌおよびヒトドナーからの熱不活化血清ともインキュベートした。1時間のインキュベーション後、対照(血清なしでインキュベートしたウイルス)と比較して回収された生ウイルスのパーセンテージを、上記のプラークアッセイを使用して記録した。結果を下記表X2に示す。
【0507】
【表3】
【0508】
非血清対照(DMEM+CAL14ウイルス)と比較して、血清インキュベーション後に回収された生ウイルスの割合は、全てのヒトおよびイヌ血清サンプルで減少した。これらの結果は、ヒトおよびイヌの血清がCAL14ワクシニアウイルスを不活化することを示している。全ての血清サンプルの熱不活性化はウイルス不活性化の程度を低下させ、イヌおよびヒトで例示されるように、補体系がウイルスの血清媒介不活性化において役割を果たすことを実証する。イヌ血清は、インビボウイルス投与(I.V.またはI.T.)後にVACVを最初に不活性化し、イヌ患者およびヒト患者における送達および処置の有効性を高めるために、VACVを保護する系の必要性を実証している。
【0509】
実施例3
ワクシニアウイルスのヒトおよびイヌ血清誘発不活性化に対するヒトおよびイヌ間葉系幹細胞の保護効果
【0510】
インビボで投与された腫瘍溶解性ウイルスの血清による初期不活性化は、腫瘍溶解性ウイルス療法に対する障害をもたらす。この不活性化は、ウイルスの注射用量を増加させることによって、および/または補体阻害剤で患者を全身的に処置することによって、部分的に補償または対処することができる。しかしながら、これらのアプローチは、望ましくない副作用および毒性をもたらすことができる。
【0511】
腫瘍溶解性ウイルスを、間葉系幹細胞(MSC)などの担体細胞において送達することによって、血液または腫瘍微小環境に存在する補体および他の不活性化剤から保護することができる。全リポ吸引物に由来するヒト間質血管細胞群(SVF)は、外膜上脂肪間質細胞(SA-ASC)、ならびに培養中に増殖してワクシニアおよび他のウイルスのための担体細胞の供給源として使用することができる脂肪由来間葉系間質細胞および/または幹細胞(AD-MSC)を生成することができる他の集団を含有する。VACVを血清誘導不活性化から保護するための細胞ベースの担体としての新鮮なSVFおよびAD-MSCの使用をヒトおよびイヌにおいて評価した。
【0512】
A.SVFの調製
全リポ吸引物由来のSVFは、細胞の広範な処理の必要性を軽減し、工程数を最小限にし、それによって汚染のリスクを低減する。SVFは、脂肪組織に由来する単核細胞を含有し、脂肪をリポ吸引し、酵素消化に供する単純な単離手順によって取得される。ヒトSVFは、細胞培養プラスチックに付着して増殖することができるCD34+SA-ASCを含むいくつかの異なる細胞集団を含む(以下に記載されるAD-MSCの生成)。SVF調製物におけるMSC SA-ASC(AD-MSC前駆体)の存在量を考慮すると、SVFは、ワクシニアウイルスなどの腫瘍溶解性ウイルスのための細胞担体を提供するために使用することができる。
【0513】
脂肪細胞および脂肪間質血管細胞群を単離および調製するために、以下のプロトコルを使用した。pH7.4に滴定された0.5%のリドカインと1:400,000のエピネフリンおよび8.4%のHCO3を含有する局所麻酔(一般的に、総量60ccで5ccのHCO3)を、脂肪が除去される対象に投与する。次いで、対象は、Cell Surgical Network(登録商標)(CSN;カリフォルニア州ビバリーヒルズ)からTime Machine(登録商標)の商標で販売されている細胞採取、ならびに閉鎖系採取および処理システムを使用して、脂肪吸引処置を受けた。このシステムは、脂肪処理ユニット(脂肪吸引用の気密シリンジ)および2.5~3mmカニューレを含む。脂肪吸引後、バチトラシン軟膏およびBandaid(登録商標)包帯を圧縮包帯と共に創傷上に固定した。
【0514】
ADSCを含有する間質血管細胞群(SVF)を、以下のプロトコルに従って閉鎖系で調製した:
a.CSN Time Machine(登録商標)(登録商標)などの脂肪幹細胞を採取および処理するための閉鎖系は、脂肪の採取物を60cc TP-101シリンジ(単回使用滅菌気密脂肪処理シリンジ)に抽出する
b.2800rpmで3分間遠心分離する
c.TP-109閉鎖系を介して遊離脂肪酸および壊死組織片(局所/血液)を除去する
d.25ccの濃縮脂肪をTP-102シリンジ(SVF処理シリンジ)に移す
e.12.5 Wunsch単位の酵素(1 Wunsch単位=1000コラーゲン分解単位(CDU))を含有する予熱(38℃)した25ccのRoche T-MAX(登録商標)Time Machine Accelerator(GMPグレードコラゲナーゼ)を添加する
f.38℃で30~45分間インキュベートする
g.200gで4分間遠心分離する
h.底部3~10ccを除く上清液を除去する
i.コラゲナーゼ残渣を除去するための洗浄液として50cc D5LR(乳酸加リンゲル液および5%デキストロース)を添加し、200gで4分間遠心分離する
j.更に2回繰り返し、合計3回洗浄する
k.3~10ccのペレット収集物-これは間質血管細胞群である-を残して、全ての上清液を除去する
l.100ミクロンフィルタを通してSVFをラベル付き20ccシリンジに移す
m.SVFサンプルを収集し、細胞数、生存率を特定し、凝集も壊死組織片もないことを確認する。
n.細胞を10mLのD5LRに再懸濁し、アリコートを血小板抽出物を補充した輸送培地で1:6に希釈する。
【0515】
B.AD-MSCの調製
培養中の選別されていないSVF細胞を使用して、MSCを作製することができる。CD34+SA-ASCは、細胞培養プラスチックに迅速に付着し、活性化されると、急速に増殖し、AD-MSCを生成する。AD-MSCを作製するために、SVF細胞を、2mMグルタミンおよび5%刺激(血小板抽出物)を補充したDMEMを用いた組織培養処理プラスチック中で、37℃、5%CO2および加湿雰囲気において培養した。組織培養処理プラスチックに付着したSA-ASCおよび他のMSC前駆体を、そして翌日に付着していない全ての細胞を除去した。
【0516】
培地を吸引し、組織培養プラスチックに付着したMSCを完全培地で1回洗浄した。次いで、上記のような新鮮な完全培地を加え、MSCを更に、37℃、5%CO2および加湿雰囲気において1週間~2週間培養した。2~3日後、付着した細胞は間葉表現型(現在はAD-MSCと呼ばれる)を獲得し、細胞は指数関数的に増殖し始めた。1~2週間後、継代0培養物を作製し、これは、ミニリポソーム化から得られた20~100mLの脂肪(脂肪組織)に由来する。生成される細胞の総数は患者に依存し、最初に培養に入れられたSVF細胞の量に基づいて変化するが、典型的には、2~10mLのSVF調製物で開始する場合、1×106~1×108個の細胞の範囲であり、これはミニリポソーム化から得られた20~100mLの脂肪組織に由来する。細胞を更に成長させ、最大1×1010~1×1014個の細胞に達することができる。
【0517】
C.ヒト血清不活性化からウイルスを保護し、腫瘍細胞への送達を促進するための担体細胞としてのヒトSVF
ヒト血清による不活性化からVACVを保護し、保護されたVACVを腫瘍細胞に送達する新鮮なヒトSVF細胞(SVF)の能力を評価した。2名の異なる健常ドナー(#1および#2)から新たに単離されたSVF細胞に、SVF調製物中に存在する全ての細胞を考慮に入れて、感染多重度(MOI)1でCAL14ワクシニアウイルスを添加した。細胞およびウイルスを、20RPMで連続的に回転させながら、37℃で1時間インキュベートした。次いで、SVF/ウイルス混合物を、37℃の水浴中で30分間、自己設定で2mMグルタミンおよび20%ヒト血清を補充したDMEMと共にインキュベートし、次いで細胞をPBSで4回洗浄して任意の遊離ウイルスを除去した。遊離ウイルス(細胞に搭載されていない)を対照としてヒト血清と同じ濃度で30分間インキュベートした。血清とインキュベートしなかった遊離ウイルスを陽性対照として使用した。
【0518】
ヒト血清とのインキュベーション後、40,000個のSVF細胞(MOI1)に搭載した40,000pfuの遊離CAL14ウイルスまたは40,000pfuのCAL14ウイルスを、24ウェルプレート中のA549ヒト肺癌細胞単層に0.1のMOIで添加し、加湿雰囲気中、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。処理の24時間後、A549細胞におけるウイルスコード化TurboFP635タンパク質の発現を、赤色フィルターを使用してTurboFP635タンパク質発現(TRITCチャネル)を検出するKEYENCE All-in-one BZ-X700シリーズ蛍光顕微鏡での蛍光顕微鏡法によって検出し、発現レベルを、腫瘍細胞におけるウイルス増幅の量の直接的な尺度として使用した。
【0519】
【表4】
【0520】
結果は、検出された蛍光の減少によって証明されるように、遊離ウイルスが両方のドナー由来のヒト血清によって不活性化され、腫瘍細胞において増幅されなかったことを実証している。一方、SVF細胞に搭載されたワクシニアウイルスは、血清不活性化から保護され、腫瘍細胞に効率的に送達され、そこで、CAL14ウイルスによってコードされるTurboFP635蛍光タンパク質の発現を観察することによってウイルス複製を検出した。血清(陽性対照)とインキュベートしなかった遊離ウイルスは、腫瘍細胞において強力なウイルス増幅を示し、遊離ウイルス+血清サンプルで観察された蛍光の減少が、血清によるウイルス不活性化によるものであり、遊離ウイルスが腫瘍細胞に送達されなかったか、または腫瘍細胞で複製できなかったためではないことが確認された。
【0521】
したがって、高量のSA-ASC(間葉系幹細胞前駆体)を含有する、脂肪吸引から得られたSVFは、ウイルスを保有し、ヒト血清による中和/不活性化からそれらを保護し、それらを標的腫瘍細胞に効率的に送達することができる。
【0522】
D.ワクシニアウイルスのヒト血清不活性化および腫瘍細胞への送達に対するヒトAD-MSC細胞の保護効果
ヒト血清による不活化からVACVを保護し、腫瘍細胞にウイルスを送達する培養ヒトAD-MSC細胞の能力を評価した。CAL14 VVを1のMOIで健康なヒトドナー由来のAD-MSC細胞と混合し、20RPMで連続的に回転させながら37℃で1時間インキュベートした。次いで、AD-MSC/ウイルス混合物を、同種環境において、健常ドナーからの20%血清と30分間インキュベーションした。次いで、細胞をPBSで4回洗浄して、任意の遊離ウイルスを除去した。遊離ウイルスを対照としてヒト血清と同じ濃度で30分間インキュベートし、血清とインキュベートしなかった遊離ウイルスを陽性対照として使用した。
【0523】
ヒト血清とのインキュベーション後、様々な処理(遊離ウイルスまたはMSC/VV)を24ウェルプレート中のA549腫瘍細胞単層に加えた。40,000個のAD-MSC細胞(MOI1)に搭載した40,000pfuの遊離CAL14ウイルスまたは40,000pfuのCAL14ウイルスを、24ウェルプレート中のA549ヒト肺癌細胞単層に0.1のMOIで添加し、加湿雰囲気中、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。処理の24時間後、A549細胞におけるウイルスコード化TurboFP635タンパク質の発現を、赤色フィルターを使用してTurboFP635タンパク質発現(TRITCチャネル)を検出するKEYENCE All-in-one BZ-X700シリーズ蛍光顕微鏡での蛍光顕微鏡法によって検出し、発現レベルを、腫瘍細胞におけるウイルス増幅の量の直接的な尺度として使用した。
【0524】
【表5】
【0525】
結果は、検出された蛍光の著しい減少によって証明されるように、遊離ウイルスが両方のドナー由来のヒト血清によって不活性化され、腫瘍細胞において増幅されなかったことを実証している。比較すると、AD-MSC細胞に搭載されたワクシニアウイルスは、血清不活性化から保護され、腫瘍細胞に効率的に送達され、そこで、CAL14ウイルスによってコードされるTurboFP635蛍光タンパク質の発現を観察することによってウイルス複製を検出した。血清とインキュベートしなかった遊離ウイルス(陽性対照)は、腫瘍細胞において強力なウイルス増幅を示し、遊離ウイルス+血清サンプルで観察された蛍光の減少が、血清によるウイルス不活性化によるものであり、遊離ウイルスが腫瘍細胞に送達されなかったか、または腫瘍細胞で複製できなかったためではないことが確認された。
【0526】
したがって、培養されたAD-MSCは、ウイルスを保有し、それらをヒト血清による中和/不活化から保護し、それらを標的腫瘍細胞に効率的に送達することができる。
【0527】
E.イヌ血清によるワクシニアウイルスの不活性化に対するイヌAD-MSCの保護効果
ヒトにおけるように、イヌ腫瘍へのワクシニアウイルスの送達の成功に対する血清の負の影響は、注射用量を増加させることによって、または動物を補体阻害剤で全身的に処置することによって減少させることができ、これは望ましくない毒性副作用をもたらすことができる。したがって、培養イヌMSCがワクシニアウイルスを保有し、血清不活化から保護する能力を評価した。
【0528】
異なる2イヌドナー(MSC3およびMSC4)由来の脂肪由来MSC(AD-MSC)にCAL14ワクシニアウイルスを1のMOIで添加し、混合物を20RPMで連続回転させながら37℃で1時間インキュベートした。次いで、1,000個の細胞中に1,000pfuのワクシニアウイルスを搭載したMSCを、DMEM補充培地中90%イヌ血清と共に、加湿雰囲気下、37℃、5%CO2で1時間、最終容量100μL(細胞1,000個あたり)でインキュベートした。この濃度は、25kgのイヌに2リットルの血液を注射した2×107pfuのワクシニアウイルスの用量に相当する。比較のために、1,000pfuの遊離CAL14ウイルス(非保護)も、同じ条件下で90%イヌ血清とインキュベートした。対照として、ウイルス搭載MSCおよび遊離ウイルスをそれぞれ、血清非含有DMEMと同じ条件下で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーション期間後、回収されたワクシニアウイルスの、非血清非含有ウイルス対照に対する割合を、上記のようにCV-1細胞単層におけるプラークアッセイによってpfuで定量した。プラークアッセイにおける任意の所与の希釈において3%未満のイヌ血清を有するように連続希釈を行った。各生感染細胞は1つのプラークを産生し、各生遊離ワクシニアウイルス粒子は1つのプラークを形成する。結果を下記表X3に示す。
【0529】
【表6】
【0530】
結果は、血清の不在下(無血清DMEMを有する対照)では、遊離ウイルスおよびMSC搭載ウイルスは不活化されなかったことを示す。しかしながら、イヌ血清の存在下では、遊離の保護されていないウイルスは有意に不活化されたが、血清とのインキュベーションの前にMSC上にウイルスを搭載することにより、ウイルスに対するいくらかの保護がもたらされた。これらの結果は、脂肪由来イヌMSCがワクシニアウイルスを隠ぺいし、イヌ血清誘導不活化から保護することができることを示している。
【0531】
F.培養イヌAD-MSCはワクシニアウイルスの腫瘍細胞への送達を増強することができる
培養されたイヌMSCがワクシニアウイルスを隠し、血清によって誘導される不活化から保護することができることを明らかにして、MSCが保護されたウイルスを腫瘍細胞に送達する能力を評価した。CAL14ワクシニアウイルスを3匹の異なるイヌ(MSC1、MSC2およびMSC3)由来のイヌ脂肪由来MSC(AD-MSC)に1のMOIで搭載し、上記のように90%イヌ血清と1時間インキュベートした。同じ条件下で、遊離ワクシニアウイルス(非保護)をイヌ血清とインキュベートした。血清とのインキュベーション後、ウイルス搭載細胞または遊離ウイルスを、0.5のMOIでA549腫瘍細胞単層に添加した。A549含有ウェル中の最終血清濃度は2%であった。対照として、ワクシニアウイルス処理物のそれぞれを無血清DMEM中でインキュベートした。腫瘍細胞との72時間のインキュベーション後、腫瘍細胞によって増幅されたワクシニアウイルスの量を、上記のようにCV-1細胞単層におけるプラークアッセイによって定量した。結果を下記表XXに示す。
【0532】
【表7】
【0533】
結果は、イヌ血清に事前に曝露した遊離ワクシニアウイルス(MSCによって保護されていない)で処理した腫瘍細胞が、血清に事前に曝露していない遊離ワクシニアウイルスと比較してウイルス増幅の減少を示したことを示す。これらの結果は、イヌ血清によるウイルスの観察された初期不活性化を裏付けている。一方、ワクシニアウイルスを搭載し、イヌ血清に予め曝露した3匹のイヌMSCのいずれかで処理した腫瘍細胞は、効率的なワクシニアウイルス増幅を示し、これは非不活化遊離ウイルス(DMEMとインキュベートし、血清なしの対照)のものに匹敵した。これらの結果は、培養されたイヌMSCを使用して、ワクシニアウイルスを血清不活化から保護し、腫瘍細胞に効率的に送達することができることを示す。
【0534】
実施例4
ACAM2000の送達および増幅に関連するSVF細胞集団
【0535】
ワクシニアウイルスのSVF系送達系を特徴付けるために、ウイルスを保有し、腫瘍細胞に送達するSVF由来の特異的細胞集団を調べた。
【0536】
A.ACAM2000を搭載するSFV細胞集団
3人の異なるヒト非がんドナー(RMSD042、BHSD060およびRMSD043)からのSVFを、20RPMで連続的に回転させながら、1のMOIで37℃で1時間、ACAM2000と共にインキュベートした。SVF細胞にACAM2000を搭載した後、細胞をCD235a、CD45、CD34、CD31およびCD146のそれぞれに対する抗体のパネルで標識し、ヨウ化プロピジウム(PI)で生存率について染色した。次いで、細胞表面マーカーCD235a、CD45、CD34、CD31およびCD146の発現に基づいて、ならびに国際脂肪治療科学連合(IFATS)および国際細胞療法学会(ISCT)(Bourinら(2013)Cytotherapy 15:641-648)の勧告に従って、FACSAria(商標)Fusionフローサイトメーター(BD Biosciences、カリフォルニア州サンノゼ)を使用してフローサイトメトリーによってSVF細胞を選別した。生細胞(ヨウ化プロピジウム(PI)陰性)のみを選別した。7つの異なる細胞集団:赤血球(CD235a+);培養中の主要なMSC前駆体である上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-);培養中のMSC前駆体でもある周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-);顆粒球(CD235a-/CD45中/高、側方散乱(SSC)高);リンパ球(CD235a-/CD45高、SSC低);単球(CD235a-/CD45高SSC培地);および内皮前駆細胞(CD235a-/CD45-/CD34+/CD146+/CD31+)を同定し、選別した。3つのSVFサンプル中の主な細胞集団の組成(%)を表X4に示す。3つのSVFサンプル中の主な単核細胞集団およびそれぞれのパーセンテージを表X5に示す。
【0537】
【表8】
【0538】
【表9】
【0539】
次に、SVFから選別した個々の細胞集団をA549腫瘍細胞単層の上に播種し、カルボキシメチルセルロース(CMC)層と共に3日間インキュベートし、これにより、選別した感染細胞によって形成されたプラークを定量化することができた。3日間のインキュベーション後、A549単層に形成されたプラーク数を固定およびクリスタルバイオレットによる染色後に測定して、ACAM2000を保有していた各選別された集団からの細胞の数を決定した。以下の表X6に示すように、5種の異なる細胞集団をフローサイトメトリーによって選別したところ、ACAM2000を有することが分かった。ACAM2000を保有する3つのSVF画分からの主な細胞集団は、SA-ASC(MSC前駆体)および周皮細胞として同定された。
【0540】
【表10】
【0541】
B.ACAM2000増幅を可能にするSVF細胞集団
上記の実施例3に記載されるように、SVFはワクシニアウイルスを血清誘導性不活化から保護することができる。更なる調査により、ワクシニアウイルスを保有するSVF細胞集団の主な単核細胞としてSA-ASC(MSC)および周皮細胞が同定された。次に、ワクシニアウイルスを効率的に増幅可能なSVF細胞集団を決定した。
【0542】
新鮮なSVF調製物からの主な単核細胞集団を上記のように選別した。次いで、SA-ASC(MSC前駆体)、周皮細胞、顆粒球、リンパ球および単球の個々の生選別された集団をCTS(商標)CELLstart(商標)Substrate(ThermoFisher Scientific)でコーティングした48ウェルプレートに播種し、加湿雰囲気中37℃、5%CO2で10%FBSおよび2mMグルタミンを補充したDMEM中で培養した。選別した細胞を直ちに、細胞培養物中で1のMOIで5日間、TurboFP635標識ワクシニアウイルス(CAL14)に感染させた。蛍光顕微鏡法を使用して、ウイルス増幅の指標として蛍光タンパク質発現を検出した。
【0543】
TurboFP635の蓄積は、2日目から始めて、細胞培養プラスチックに付着し、培養中で増殖したSA-ASC選別細胞に由来するAD-MSC細胞においてのみ見出された。有意な蛍光蓄積が、AD-MSCにおける感染の5日後に検出された。これらのデータは、SVFから作製され、数日間培養されたAD-MSCがワクシニアウイルスの増幅を可能にし、腫瘍部位に送達することができる治療用ウイルス粒子の数を増加させ、したがって治療効果を高めることを示す。
【0544】
実施例5
培養されたヒトMSCおよびイヌMSCは、ワクシニアウイルスの増幅およびウイルスコード化タンパク質の発現を促進する
【0545】
上記の実施例に示されるように、ワクシニアウイルスを隠し、保護し、腫瘍細胞に送達するための新鮮なSVFおよび培養脂肪由来MSC(AD-MSC)の使用は、ワクシニアウイルス単独を治療に使用するよりも改善をもたらす。また、本明明細書で提供され、また示されるように(例えば、実施例7を参照)、腫瘍溶解性ウイルスの治療効果は、ウイルスが腫瘍部位への送達前にキャリアMSCによって増幅されると、更に増大することができる。
【0546】
上記のように、培養物中の選別されていないSVF細胞は、MSC培養物を生成することができる。CD34+SA-ASCは、細胞培養プラスチックに迅速に付着し、活性化されると急速に増殖し、ワクシニアウイルス担体細胞の数を増加させる。培養されたヒトMSCおよびイヌMSCは、ワクシニアウイルスを血清不活化から保護し、ウイルスを腫瘍細胞に送達することができることが実施例3に示される。上記の実施例4に記載されているように、CD34+SA-ASCは、ワクシニアウイルスを保有するSVFから単離された主要な細胞集団として同定され、MSC間葉表現型を獲得した培養物に入ると、ワクシニアウイルスを増幅する。
【0547】
次に、ヒトおよびイヌの拡大MSC(AD-MSC)もまた、ウイルスを血清不活性化から保護し、ウイルスを腫瘍細胞に送達することに加えて、ウイルスを増幅することが明らかにされた。AD-MSCによるワクシニアウイルスの増幅レベルを評価するために、遺伝子操作されたCAL14 VVを使用した。
【0548】
A.ヒト培養脂肪由来MSC(AD-MSC)におけるウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現
【0549】
最初に、ヒトAD-MSCが、感染細胞における蛍光を検出することによって、蛍光性のウイルスコードされたTurboFP635タンパク質の発現および蓄積を許容するかどうかを判定した。これを行うために、3名の異なるドナー(#1、#2および#3)由来のヒト脂肪由来AD-MSCを、2種類の異なる濃度のCAL14ワクシニアウイルスと、0.1のMOIまたは1のMOIで、2%ウシ胎児血清(FBS)および2mMグルタミンを補充したDMEM中で3時間、加湿雰囲気下37℃、5%CO2で混合した。3時間後、遊離ウイルスを含有する細胞培養培地を除去し、10%FBSおよび2mMグルタミンを補充した新鮮なDMEMと48時間交換した。感染の48時間後、蛍光シグナルを分析した。CAL14ウイルスに感染しなかった3名のドナー由来のMSCを対照として使用した。
【0550】
蛍光顕微鏡法の結果は、3名全てのドナー由来のMSCが蛍光タンパク質の発現を可能にしたことを示し、これは活性なウイルス増幅も示している。発現された蛍光タンパク質の量は、3種のMSCサンプル間で変動した。ドナー#2由来のMSCは0.1および1のMOI値の両方において最高レベルの蛍光を示し、一方、ドナー#3由来のMSCは最低レベルの蛍光を示し、ドナー#1由来のMSCは中間レベルの蛍光を示した。したがって、一部のドナー由来のMSCは、他のドナーよりも高いワクシニアウイルス増幅および/またはウイルスタンパク質発現能を示す。未処理MSCサンプルでは蛍光は観察されなかった。
【0551】
次いで、MSCによって増幅されて培養培地(上清)に放出されたワクシニアウイルスの量、ならびに増幅されたが細胞によって放出されなかったウイルス粒子の数を、上記のようにプラークアッセイによって定量した。結果(表X7)は、細胞および上清中のウイルスの存在によって示されるように、3名全てのドナー由来のMSCがワクシニアウイルスを増幅および放出したことを示す。3人のドナー由来のMSCは、ウイルスを増幅し、様々な程度に放出した:MSCドナー#2由来の細胞は、24時間および48時間で最高レベルの蛍光を示し、48時間で最高レベルのウイルスを分泌した(表X7)。全体として、MSCドナー#2由来の細胞は48時間で最も高い総ウイルス増幅レベルを示したが、MSCドナー#1由来の細胞は最も低い総ウイルス増幅レベルを示した。これらの結果は、異なるドナー由来のMSCが、様々なレベルのワクシニアウイルス増幅および/またはウイルスコード化タンパク質発現を示すことを示している。低レベルおよび高レベルのウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現が有利であることができ、低レベルのウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現を有するMSCは、静脈内(I.V.)投与の際に循環においてより長く生存することができ、一方、より高レベルのウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現を有するMSCは、より高用量のワクシニアウイルスを腫瘍細胞に送達することができる。
【0552】
【表11】
【0553】
B.イヌ培養脂肪由来MSC(AD-MSC)におけるウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現
実施例3に示されるように、イヌ培養MSCは、ワクシニアウイルスを血清不活性化から保護し、それを腫瘍細胞に送達することができ、保護されていないウイルスと比較して治療有効性を改善する。次に、イヌ培養MSCは、腫瘍部位への送達前に効率的なウイルス増幅を可能にし、それにより、それらの治療有用性が更に改善されることが明らかにされた。
【0554】
CAL14 VVを使用して、蛍光シグナルを分析することによって、感染したイヌMSCにおけるウイルスコード化蛍光TurboFP635タンパク質の発現および蓄積を評価した。3匹の異なるドナー(#1、#2および#3)由来のMSCに、2%ウシ胎児血清(FBS)および2mMグルタミンを補充したDMEM中で3時間、加湿雰囲気下37℃、5%CO2にて、0.1のMOIまたは1のMOIで、2種類の異なる濃度のCAL14ワクシニアウイルスを搭載した。3時間後、遊離ウイルスを含有する細胞培養培地を除去し、10%FBSおよび2mMグルタミンを補充した新鮮なDMEMと48時間交換した。感染の48時間後、蛍光シグナルを分析した。ウイルスに感染しなかった3匹のイヌドナー由来のMSCを対照として使用した。3匹全てのイヌ由来のMSCが蛍光タンパク質の発現を示したことが明らかにされ、このことは、活性なウイルス増幅を示した。ヒトMSCで得られた結果と同様に、ウイルスコード化蛍光タンパク質の発現が3種のイヌMSCサンプル間で変動することが見出され、このことは、いくつかのイヌMSCがワクシニアウイルスを他のものよりも大きく増幅することを示している。0.1および1のMOI値の両方において、ドナー#3由来のMSCは最高レベルの蛍光を示し、ドナー#1由来のMSCは最低レベルを示した。ドナー#2由来のMSCは、1のMOIでより大きい中間レベルの蛍光を示した。未処理MSC対照は、いかなる蛍光も示さなかった。
【0555】
次いで、イヌMSCによって増幅されて培養培地(上清)に放出されたワクシニアウイルスの量、ならびに増幅されたが放出されなかったウイルス粒子の数を、上記のようにプラークアッセイによって評価した。結果を下記表X8に示す。3匹全てのイヌ由来のMSCは、感染後48時間でウイルスを増幅および放出したが、程度は様々であることが見出された。イヌドナー#3由来のMSCは、48時間で最も多量のウイルスを分泌し、24時間および48時間で最も高いレベルの蛍光を示した。イヌドナー#2由来のMSCは、48時間で最も高い全体的なレベルのウイルス増幅を示した。イヌドナー#1由来のMSCは、最低レベルのウイルス増幅および蛍光タンパク質発現を示した。これらの結果は、各MSC株が様々なレベルのウイルス増幅ならびにウイルスコード化タンパク質の発現および分泌を示すことを示している。高レベルおよび低レベルのウイルス増幅およびウイルスタンパク質発現/分泌の両方が有利であることができ、より低いレベルのウイルス増幅およびタンパク質発現を有するワクシニアウイルスを保有するMSC(MSC1)は、静脈内(I.V.)注射された場合、循環中により長く生存することができ、一方、より高いレベルのウイルス分泌を有するMSC(MSC2、MSC3)は、腫瘍内(I.T.)注射された場合、より速くワクシニアウイルスを送達することができる。
【0556】
【表12】
【0557】
実施例6
ワクシニアウイルスを搭載した細胞の保存
【0558】
処理の標準化は、ワクシニアウイルスを搭載した大量のMSCの作製を必要とする。治療剤(すなわち、生きている生物学的治療剤/生物学的製剤)の性質のために、保存および分配の要件は厳しい。ウイルス搭載MSCは、長期間の保存後に治療有効性を保つ条件下で分注し、保存しなければならない。国内流通の場合、生物学的薬剤/治療薬は、その効力および安定性を維持する温度で2~3日間維持しなければならず、一方、国際流通の場合、その期間は典型的には7~10日間である。腫瘍溶解性ウイルス搭載細胞は、長期間の保存を提供するため、便利で容易に利用可能な「既製品」治療薬を提供する。
【0559】
A.4℃または液体窒素での保存後のワクシニアウイルス搭載MSCにおけるタンパク質発現レベルの評価
2種のワクシニアウイルス、CAL2-eGFP(eGFPを発現するCAL1組換え株)およびL3-TurboFP635(TurboFP635を発現するLister組換え株)を搭載した脂肪由来MSCに対する4℃(例えば、輸送の場合)および液体窒素(-196℃;長期保存のための凍結保存となる)での保存の効果を評価した。イヌ脂肪由来MSC(MSC4)に、WT1-eGFP(すなわち、CAL2-eGFP)とL3-TurboFP635との1:1の比および1のMOIの混合物を用いて、20RPMで連続的に回転させながら、37℃で2時間にわたって搭載させた。次いで、細胞をPBSで2回洗浄して、遊離ウイルスを除去した。ウイルス搭載MSCサンプルを3つの部分に分けた:a)対照として、保存せずに、感染直後に6ウェルプレートに播種した10万個の生細胞(「新鮮な細胞」);b)4℃で2日間保存した後、6ウェルプレートに播種した10万個の生細胞;c)500万細胞/mLの細胞凍結保存培地(Cryostor(登録商標)CS10、BioLife Solutions)の濃度で凍結させ、液体窒素中で2日間保存し、次いでDMEM中で解凍し、6ウェルプレートに播種した10万個の生存細胞。それらをプレートに播種する直前の細胞の生存率パーセントは、a)、b)およびc)についてそれぞれ96%、80%および82%であった。細胞を37℃で48時間培養した。3つ全ての条件からのMSCが1時間未満でプラスチックに付着し、このことは、高い程度の細胞生存率を示している。3つの部分のいずれにおいても細胞付着時に蛍光シグナルは検出されず、保存中のウイルス増幅がないことを示した。播種の48時間後、全ての蛍光チャネル(eGFPを発現するCAL2ウイルスについては緑色、TurboFP635を発現するL3ウイルスについては赤色)について1秒間曝露して蛍光シグナルを分析した。
【0560】
蛍光顕微鏡法の結果は、それぞれCAL2およびL3ウイルスによってコードされる蛍光タンパク質eGFPおよびTurboFP635の発現レベルが、新鮮なMSCおよび液体窒素中で保存されたMSCにおいて類似していたことを示しており、このことは、細胞が、ウイルスを増幅するそれらの能力に影響を及ぼすことなく、長期保存のために凍結保存することができることを示している。4℃で保存されたMSCは、比較してより低い程度のウイルスタンパク質発現を示し、ウイルス増幅レベルの低下を示した。
【0561】
B.4℃または液体窒素での保存後のワクシニアウイルス搭載MSCにおけるウイルス増幅の評価
上記の3種のサンプル(a、bおよびc)のそれぞれにおける生きているウイルス粒子の量を、24時間後および48時間後に上記のようにプラークアッセイによって定量した。以下の表X9に要約される結果は、新鮮な細胞と比較した場合、液体窒素中での保存が、担体MSC4細胞の固有の増幅能に影響を及ぼさないことを示した。ウイルス搭載細胞を4℃で2日間保存しても、ワクシニアウイルスは、新鮮細胞および凍結保存細胞と比較して、増幅することができたが、その程度は低下した。したがって、ウイルス搭載細胞を凍結保存し、簡便な「既製品」の治療薬を生成することができる。
【0562】
【表13】
【0563】
C.液体窒素中での保存後の腫瘍細胞へのワクシニアウイルス搭載MSCの送達
次に、CAL2-eGFPおよびL3-TurboFP635を搭載させ、液体窒素中で保存したイヌMSC4細胞が、解凍後にそれらの治療能を維持したかどうかを判定した。細胞にウイルスを搭載させ、上記のように液体窒素中で2日間凍結した。凍結バイアルを37℃で解凍し、サンプルを直ちに、10%ウシ胎児血清(FBS)および2mMグルタミンを補充したDMEMで洗浄した。10万個の生存細胞を、1×106個のMTH52cイヌ乳癌細胞を含む6ウェルプレートに添加し、加湿雰囲気中、37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。対照として、新鮮な(非凍結)イヌ脂肪由来MSC4細胞を上記のように新たに搭載させた。次いで、細胞をPBSで2回洗浄して遊離ウイルスを除去し、凍結細胞と同じ条件下で100,000個の生存非凍結細胞をイヌ腫瘍細胞に添加した。蛍光シグナルを緑色チャネルおよび赤色チャネルで48時間後に分析して、それぞれCAL2-eGFPおよびL3-TurboFP635を検出した。
【0564】
結果は、液体窒素中で凍結されたウイルス搭載MSCが、新鮮な非凍結ウイルス搭載MSCと同様の量のワクシニアウイルスをイヌ腫瘍単層に送達したことを示し、液体窒素中でのウイルスを搭載した担体細胞の長期保存が実現可能であることを実証している。その結果、生きた生物学的処置を凍結保存することができ、標準化および配布が可能になり、より多くのがん患者での使用が容易になる。
【0565】
実施例7
ワクシニアウイルスを保有する間葉系幹細胞のエクスビボ培養は腫瘍細胞によって提示される免疫系の障壁を克服し、治療有効性を増加させる
【0566】
上に示されるように、担体細胞(例えば、MSCなど)は、ワクシニアウイルスを血清によって誘導される不活化から保護することができる。自己および同種の状況では、感染した担体細胞は、液性免疫および細胞媒介性免疫によって認識され、排除される。したがって、臨床シナリオでは、ウイルスを増幅またはそれらのコードされたタンパク質を発現させ、送達される用量および処置の有効性を低下させる前に、免疫系によって細胞担体を排除することができる。この実施例は、この問題に対する解決策を実証する。ウイルス増幅、およびそれに伴う1つ以上のウイルス免疫調節タンパク質の発現を容易にする時間にわたって、細胞担体をエクスビボでウイルスと共にインキュベートすることができ、これは体液性免疫および細胞媒介性免疫に対する追加の保護を提供する。例示的なワクシニアウイルスウイルス免疫調節タンパク質を以下の表X10に示す:
【0567】
【表14】
【0568】
A.ウイルス搭載MSCの生存性および機能性に対する長時間のインキュベーション時間の効果
蛍光タンパク質TurboFP635をコードする遺伝子操作されたCAL1株であるワクシニアウイルス株CAL2-Opt1を、2mMグルタミンを添加したDMEM中のヒト脂肪由来MSC(AD-MSC)と共に、37℃で懸濁液中、20RPMの連続回転で1、2、6および24時間、MOI 1でインキュベートした。次いで、AD-MSCを、下記に記載されるように、感染の1、2、6、および24時間後に収集し、凍結保存して、処理ロットを作製した。感染の1時間後および2時間後に収集した処理ロットをそれぞれMSC/VV-1およびMSC/VV-2と命名した。処理の6時間後および24時間後に収集された処理ロットは、ウイルスが免疫調節物質をMSCにおいて発現するのに十分な時間を有し(すなわち、腫瘍送達部位ではなく細胞媒体中のエクスビボ)、本明細書で「CAVES」(細胞支援型ウイルス発現系)と呼ばれるこれらのロットを、それぞれCAVES-6およびCAVES-24と命名した。
【0569】
MSC/VV-1処理ロットを作製するために、VVと共に1時間インキュベートした細胞をPBSで2回洗浄し、Cryostor(登録商標)CS10中で凍結保存し、バイアルとして液体窒素中で1週間保存した。MSC/VV-2処理ロットを作製するために、VVと共に2時間インキュベートした細胞をPBSで2回洗浄し、Cryostor(登録商標)CS10中で凍結保存し、バイアルとして液体窒素中で1週間保存した。CAVES-6およびCAVES-24処理ロットを作製するために、AD-MSCを連続回転で2時間VVとインキュベートし、次いで、加湿雰囲気中37℃、5%CO2で2mMグルタミンおよび5%血小板抽出物を補充したDMEM中で培養した。播種の4時間後または22時間後、細胞をトリプシン処理し、PBSで2回洗浄し、Cryostor(登録商標)CS10中で凍結保存し、バイアルとして液体窒素中で1週間保存した。
【0570】
凍結バイアルを37℃で解凍し、内容物を直ちに、10%ウシ胎児血清(FBS)および2mMグルタミンを補充したDMEMで洗浄した。細胞生存率をトリパンブルーによって分析し、全ての処理ロットについて90%超であると決定した。次いで、蛍光顕微鏡法を使用して、CAVES-24処理ロットで解凍直後に検出されたTurboFP635の発現を評価し、ウイルスコード化タンパク質が既に合成されて細胞内に存在していたことを示した。これは腫瘍溶解性ウイルスの治療有効性を高めることができ、これは、任意のウイルスコード化免疫調節物質が既に発現され、それによって細胞およびウイルスを患者の免疫系から保護し、腫瘍におけるウイルスの初期拡散を促進するだけでなく、ウイルスによってコードされる任意の治療用タンパク質が腫瘍細胞感染時に既に存在し、ウイルス増幅およびタンパク質合成が腫瘍部位で起こる(開始される)よりも即時または実質的に速い治療効果をもたらすことができるためである。これらの結果は、CAVESが、凍結保存および解凍後にウイルスコード化タンパク質を合成する能力を維持することができることを示している。
【0571】
B.MSC/VVおよびCAVES処理ロットの治療有効性に対する補体阻害の効果
MSC/VVおよび/またはCAVESが補体阻害に対して抵抗性であるかどうかを評価するために、MSC/VV-1、MSC/VV-2、CAVES-6またはCAVES-24の50,000個の細胞(1のMOIでMSC/VVおよびCAVESを作製するために使用された50,000pfuの遊離ワクシニアウイルス(VV)に等しい)を、2mMグルタミンおよび10%熱不活性化ウシ胎児血清(D10)、90%熱不活性化ウシ胎児血清(D90)または90%ヒト血清(H90)を補充した100μlのDMEM溶液中でインキュベートした。対照として、50,000個の遊離CAL1-Opt1遊離ウイルスを同じ条件下でインキュベートした。1時間のインキュベーション期間の後、90%熱不活化ウシ胎児血清または10%熱不活化ウシ胎児血清とのインキュベーションから回収されたものに対する、90%ヒト血清とのインキュベーション後に回収されたワクシニアPFU(プラーク形成ウイルス)またはcPFU(感染細胞プラーク形成単位)のパーセンテージを、CV-1細胞の単層およびカルボキシメチルセルロース(CMC)培地層を使用する標準的なプラークアッセイによって定量化し、各生感染細胞は1プラーク(細胞プラーク形成単位、cPFU)を産生し、各生遊離ワクシニアウイルス粒子は1プラークを形成する。細胞単層の固定およびCrystal Violetによる染色後にプラークを計数した。
【0572】
【表15】
【0573】
結果は、CAVESが、遊離ウイルスまたは1~2時間のより短い時間にわたってMSCとインキュベートされたウイルスと比較して、ヒト血清の存在下でのウイルスの補体不活性化に対するより大きな保護を提供することを実証している。CAVES-24では、ヒト血清とのインキュベーション後に回収されたプラークの量は、90%熱不活化ウシ胎児血清とのインキュベーション後に回収された量と同じであり、CAVES-24が補体不活化に対する完全な保護を提供することを示している。
【0574】
C.CAVESは腫瘍細胞における腫瘍溶解性ウイルスの治療効果を増強する
CAVES-6およびCAVES-24がワクシニアウイルスを血清誘導性不活性化から保護することができることを実証して、前立腺腫瘍細胞(PC3)に保護されたウイルスを送達するCAVESの能力を、培養条件下、20%ヒト血清の一定存在下で評価した。
【0575】
MSC/VV処理およびCAVES処理を解凍し、PBS中で1回洗浄した。MSC/VV-1、MSC/VV-2、CAVES-6またはCAVES-24の5,000個の細胞を、500,000個のPC3ヒト前立腺癌細胞(MOI 0.01)を含有する24ウェルプレートに加え、20%ヒト血清ありまたはなしで、10%FBSを補充したDMEMと共にインキュベートした。対照として、5,000種の遊離CAL2-Opt1ウイルスを同じ条件下でPC3細胞に添加した。
【0576】
処理の24時間後、PC3細胞におけるウイルス発現の指標として、PC3細胞におけるウイルスコード化TurboFP635タンパク質の発現を蛍光顕微鏡法によって検出した。結果は、血清の不在下で、遊離ウイルスで処理したPC3細胞が、ウイルスコード化TurboFP635タンパク質を増幅したことを示している(0.60強度/ピクセル)。20%ヒト血清の存在下では、腫瘍細胞におけるウイルスコード化タンパク質の蛍光活性の劇的な低下によって示されるように、遊離ウイルスは不活性化された(0.18強度/ピクセル、70%阻害)。一方、ウイルスをMSCに搭載させ、1時間、2時間、6時間または24時間インキュベートした場合、ウイルスの治療効果は、20%ヒト血清の存在下でインタクトのままであった。MSC/VVおよびCAVES処理の効力は、ヒト血清の不在下を除いて同等の条件と比較した場合、20%ヒト血清の存在下では低下しなかった。
【0577】
【表16】
【0578】
ウイルスのヒト血清媒介不活化に対するMSC/VVおよびCAVESの保護効果に加えて、MSC/VVおよびCAVESは遊離ウイルスよりも、PC3細胞においてより高いレベルのTurboFP635発現を示すことが見出され、腫瘍細胞への腫瘍溶解性ウイルスの効率的な移入およびウイルスの増幅時のヘッドスタートを示した(最初にMSCにおいて、続いてPC3細胞において)。CAVES-24は、同じ条件下で有意に高いレベルのTurboFP635発現を示し、CAVES-24による処理が短期間で腫瘍細胞への腫瘍溶解性ウイルスの効率的な移入をもたらし、遊離ウイルス単独、MSC/VV-1またはMSC/VV-2よりも処置有効性のかなりの改善を提供することができることを示している。20%ヒト血清を含有する条件下でのインビトロでのCAVES-24処理の相対的治療効力は、遊離ウイルスによる処理と比較した場合、5000%超であった。
【0579】
【表17】
【0580】
D.MSC/VVおよびCAVESは末梢血単核細胞(PBMC)の存在下で腫瘍溶解性ウイルスを送達および増幅する
末梢血単核細胞(PBMC)の存在下で腫瘍溶解性ウイルスを送達および増幅するMSC/VVおよびCAVESの能力をインビトロで測定した。簡潔には、上記のMSC/VVおよびCAVES処理ロットを解凍し、PBS中で1回洗浄した。MSC/VV-1、MSC/VV-2、CAVES-6またはCAVES-24の20,000個の細胞を、同種異系の設定で2名の異なる健常ドナー由来の250,000個のヒトPBMCを含有する96ウェルプレートに加え、10%FBS、HEPES、2mMグルタミンおよびピルビン酸塩を補充したRPMIと共にインキュベートした。
【0581】
播種の2、24および48時間後、ウイルスコードTurboFP635タンパク質の発現を、MSC細胞におけるウイルス増幅の指標として蛍光顕微鏡法によって検出した。結果は、PBMCの不在下において、MSC/VV-2が、解凍および播種の2時間以内にCAVES-24において達成される蛍光レベルと同様の蛍光レベルを達成するために24時間を必要としたことを示す。これらの結果は、CAVES-24がMSC/VVよりも効率的な処理であることを再度明らかにする。MSC/VV-2における蛍光シグナルの増幅は、ドナー1由来のPBMCが存在する場合には阻害されたが、ドナー2由来のPBMCが存在する場合には阻害されず、ドナー1由来のPBMCの存在下でのMSC/VV-2の同種異系拒絶を示した。しかしながら、ドナー1または2のいずれか由来のPBMCが存在する場合、CAVES-24蛍光シグナル増幅は阻害されなかった(播種後24時間で測定)。これらのデータは、CAVESが同種異系PBMCの存在下での増幅を可能にすることを示す。
【0582】
【表18】
【0583】
データは、CAVESが腫瘍溶解性ウイルスを体液性免疫および細胞媒介性免疫から保護し、更に腫瘍内部へのウイルスの初期拡散を促進することによって腫瘍溶解性ウイルス療法を増幅および増強することを示す。
【0584】
E.インキュベーションおよび/または凍結後の投与前のウイルス粒子/細胞およびゲノムコピー
細胞あたりのウイルス粒子の数を、3回の凍結(-80℃)/解凍(+37℃)サイクルによって細胞(MSCまたはCAVES)を破壊した後、1分間間隔で3回、氷冷水上で超音波処理した後、プラークアッセイによって分析した。超音波処理はウイルス粒子を損傷し、精度に影響を及ぼすことができるので、ウイルスゲノム/細胞の数(以下を参照)も測定した。
【0585】
MOI=1のCAL1ウイルスおよび脂肪由来MSCを用いて調製された凍結MSC/CAL1(2時間)、CAVES(24時間)またはCAVES(48時間)(時間はインキュベーションの長さを表す)におけるCAL1ウイルス粒子の量は以下の通りであった:
【0586】
【表19】
【0587】
MOI=0.1のCAL2ウイルスおよび脂肪由来MSCを使用して調製した凍結CAVES(24時間のインキュベーション後)中のCAL2ウイルス粒子(CAL2-OX40LまたはCAL2-41BBL)の量は以下の通りであった:
【0588】
【表20】
【0589】
上記のPFU/細胞値は、感染細胞またはCAVESの破壊および超音波処理後の感染能力を有するウイルス粒子の量を反映する。これらの結果は、CAVESが、より短いインキュベーション時間で、会合したMSCおよびウイルスと比較して20~50倍多い感染能力を有するウイルス粒子を含有することを実証している。
【0590】
処理ロットの特性評価(MSC/VVおよびCAVES)
MSCおよびワクシニアウイルスによって作製された処理ロットを更に特性評価するために、1処理あたりの細胞(MSC)あたりのウイルスゲノムDNAコピーの量を分析した。ワクシニアウイルスを搭載したMSC(MSC/VV)およびCAVESの新たな凍結ストックを作製した。未改変増幅/増殖ACAM2000(CAL-01)を含有するか、または組換えCAL-02.m1およびCAL-02.m2を含有する処理も生成した。
【0591】
【表21】
【0592】
CAL-01を含むMSC/VVおよびCAVESの調製
ワクシニアウイルス株CAL-01を、細胞培養物中、5%FBS、1%増殖因子および2mMグルタミンを補充したDMEM中のヒト脂肪由来MSC(AD-MSC)と共に37℃で2時間(1または10のMOI)、24時間(MOI 1)または42時間(MOI 0.1)インキュベートした。AD-MSCを、下記に記載されるように、感染の2時間後、24時間後または42時間後に収集し、凍結保存して、処理ロットを作製した。感染2時間後に収集した処理ロットを上記のMSC/VV-2(MOIが1または10)と命名した。24または42時間で収集した処理ロットを、それぞれCAVES-24およびCAVES-42と命名した。MSC/VV-2またはCAVES-24またはCAVES-42処理ロットを作製するために、VVと共に2、24または42時間インキュベートした細胞をPBSで2回洗浄し、Cryostor(登録商標)CS10中で凍結保存し、バイアルとして液体窒素中で保存した。
【0593】
CAL-02を含むMSC/VVおよびCAVESの調製
ワクシニアウイルス株CAL-02.m1またはCAL-02.m2を、細胞培養物中、5%FBS、1%増殖因子および2mMグルタミンを補充したDMEM中のヒト脂肪由来MSC(AD-MSC)と共に24時間(MOI 1)または42時間(MOI 0.1)インキュベートした。次いで、AD-MSCを、上記に記載されるように、感染の24時間後または42時間後に収集し、凍結保存して、処理ロットを作製した。24または42時間で収集した処理ロットを、それぞれCAVES-02.m1-24およびCAVES-02.m2-24またはCAVES-02.m1-42およびCAVES-02.m2-42と命名した。
【0594】
CAVES-02.m1-24およびCAVES-02.m2-24またはCAVES-02.m1-42およびCAVES-02.m2-42処理ロットを作製するために、VVと共に24または42時間インキュベートした細胞をPBSで2回洗浄し、Cryostor(登録商標)CS10中で凍結保存し、バイアルとして液体窒素中で保存した。
【0595】
処理ロットでの細胞あたりのウイルスゲノムDNAコピーの定量
凍結バイアルを37℃で解凍し、内容物を直ちにPBSで洗浄した。細胞生存率をトリパンブルーによって分析し、全ての処理ロットについて70%超であると決定した。細胞あたりのウイルスゲノム含有量を定量的リアルタイムPCRによって決定した
【0596】
Quick-gDNA(商標)Blood MidiPrep(カリフォルニア州ザイモリサーチ)を用いてDNAを抽出した。ヒト細胞に対するウイルスDNAコピーのコピー数を、PowerUp(商標)SYBR(登録商標)Green Master Mix(Thermo Fisher Scientific、カリフォルニア州)および以下のプライマーを使用してqPCRによって定量した:ウイルスについてのプライマー:A56R-F(CAT CAT CTG GAA TTG TCA CTA CTA AA;配列番号91)、A56R-R(ACG GCC GAC AAT ATA ATT AAT GC;配列番号92)およびヒト細胞(MSC)のためのプライマー:GAPDH1-F(GGG AAG GTG AAG GTC GGAGT;配列番号93)、GAPDH1-R(TCC ACT TTA CCA GAG TTA AAA GCAG;配列番号94)。QuantStudio 6フレックスリアルタイムPCRシステム(ThermoFisher Scientific)およびQuantStudioリアルタイムPCRソフトウェアv1.3を使用してデータを記録および分析した。
【0597】
細胞あたりのウイルスDNAのゲノムコピーを表X12に示す。提示されるデータは、全てのヒト細胞が2コピーのGAPDH1を有することを考慮している。
【0598】
【表22】
【0599】
細胞あたりのウイルスDNAのゲノムコピーは、細胞内の複製サイクルを潜在的に終了させることができ、ウイルス粒子が形成されると注射時に放出され始めることができるウイルスの数の直接的な指標を提供する。データは、CAVES処理が、MSC/CAL1について約5コピー未満またはそれ未満であるのと比較して、最低1000コピーのウイルスDNAを含有することを示す。これは、細胞内のウイルス増幅サイクルがMSC/CAL1-2hと比較してより進行していることを示している。0.1対1のMOIでは、CAVES中のウイルスDNAのゲノムコピー数は数1000~約10,000である。
【0600】
実施例8
治療可能性が増加した組換え腫瘍溶解性ウイルスの操作
【0601】
本明細書の組成物および方法に従って送達するための腫瘍溶解性ウイルスの治療可能性を高めるために、治療遺伝子をコードする組換えウイルスを構築した。ウイルスコード化治療用タンパク質は、更なる治療効果を発揮することができる。実施例7に記載のように組換えウイルスを使用してCAVESを生成する場合、対象への投与前に発現されるコードされた治療用タンパク質は、そのような処置を必要とする対象への投与時に直接作用することができる。
【0602】
ワクシニアウイルスは、腫瘍細胞において治療遺伝子を発現させるためのプラットフォームとして使用されてきた。治療遺伝子は、一般に、1つ以上のウイルス遺伝子の発現を破壊し、それによってウイルスを減弱させ、腫瘍選択性を改善する方法でウイルスゲノムに挿入される。そのような弱毒化ウイルスは、腫瘍細胞において効率的に複製する能力を失うことが多い。天然に弱毒化されたウイルスでは、更なる弱毒化がそれらの治療可能性を低下させることができる。
【0603】
この実施例は、得られた組換えウイルスにおいて機能的ウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)を変化させることなく治療遺伝子を挿入することができる、ACAM2000ワクシニアウイルスの新しい配置部位を記載する。ORF_157とORF_158との間のギャップ(271bp;配列番号3)の小さい中間断片(92bp)を、目的の遺伝子によって置き換えるように選択した。以下に記載されるように、目的の遺伝子を、CRISPR/Cas9HFc(高忠実度Cas9)システムを使用してORF_157とORF_158との間のこの遺伝子間領域に導入した。
【0604】
1.細胞培養
アフリカミドリザル腎線維芽細胞CV-1細胞を、1%抗生物質溶液(Life Technologies)、2mM L-グルタミン(Life Technologies)および10%熱不活性化ウシ胎児血清(Mediatech)を添加したダルベッコ改変イーグル高グルコース培地で培養した。37℃、5%CO2および加湿雰囲気のインキュベータ内で細胞を増殖させた。
【0605】
2.ORF_157とORF_158との間の遺伝子間遺伝子座を標的化するためのガイドRNA
CRISPR/Cas9(配列番号1)に対するガイドRNA(gRNA)配列を、オンラインソフトウェア(dna20.com/eCommerce/Cas9/input)を使用して選択した。ガイドRNAを、レンチウイルスベクター(レンチベクター)中のU6プロモーターの制御下で構築した。ピューロマイシンに対する抗生物質耐性をレンチベクター骨格に含めた(テキサス州ShenandoahのVectorBuilder,Inc.から入手したベクター;配列番号2)。
【0606】
3.組換えVACVを生成するためのドナーベクターの構築
ORF_157とORF_158との間の遺伝子間遺伝子座の左右の相同領域(HR)を、ACAM2000ワクシニアウイルスゲノム配列(GenBankアクセッション番号:AY313847;配列番号70)に基づいて選択した。ORF_157とORF_158との間の遺伝子間遺伝子座は271bp配列(配列番号3)であり、一方、2つのHRは、遺伝子間遺伝子座の右側の555bp配列(配列番号4)および左側の642bp配列(配列番号5)である。遺伝子間遺伝子座内には、目的の治療遺伝子によって置き換えられた92bpの配列(配列番号6)がある。
【0607】
TurboFP635発現カセットのためのドナーベクター(ベクター1)
TurboFP635を発現するVACVのためのドナーベクターを構築するために、以下のDNA断片を合成した(Genewiz,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ):
(a)(上流)MCS1(マルチクローニングサイト1、MfeI、PstI)→HR(左)(配列番号7)(下流);
(b)(上流)MCS2(マルチクローニングサイト2、SacI、NcoI、BmtI)→loxP→VACV初期/後期プロモーター上流(pEL)に隣接する遠赤色蛍光タンパク質TurboFP635をコードするDNAおよびワクシニア転写終結シグナル→loxP→MCS3(マルチクローニングサイト3、BamHI、SphI、EcoRV、SwaI、NotI、SacI)(下流)(配列番号8);ならびに
(c)HR(右)(配列番号4)。
【0608】
in-fusionクローニングキット(Takara Bio USA,Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて、断片を(a)→(b)→(c)の順に(上流→下流)pUC18ベクター(配列番号72)にクローニングし、ベクターpIg-loxP-TurboFP635(配列番号9)を得た。得られたドナープラスミドの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。
【0609】
抗VEGF scAbを発現する組換えVACVを生成するためのドナーベクター(ベクター3)
ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号11)、および検出を容易にするためのFLAGタグをコードするDNA(配列番号29)をコードするDNAに連結されたVEGFに対する一本鎖抗体をコードするDNA(scAb(VEGF);配列番号10)を挿入することにより構築した。IgK-scAb(VEGF)-FLAG配列を、ワクシニアウイルス(例えば、idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニア後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pL→IgK→scAb(VEGF)→FLAG配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.によって合成した。(配列番号12)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0610】
ヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体(hNIS)およびTurboFP635を発現する組換えVACVを生成するためのドナーベクター(ベクター4)
ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、ワクシニア初期プロモーター(pE)の制御下にヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体(hNIS)をコードするDNA(配列番号14)を挿入することによって構築した(配列番号15)。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pE→hNIS配列(上流→下流)を含む得られたベクターをGenewiz,Inc.により合成した。(配列番号13)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0611】
チェックポイント阻害剤および選択遺伝子(TurboFP635)を発現する組換えVACVを作製するためのドナーベクター
(1)ヒトCTLA-4に対する一本鎖抗体およびTurboFP635(ベクター5)
ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号18)、および検出を容易にするためのFLAGタグをコードするDNA(配列番号29)をコードするDNAに連結されたヒトCTLA-4(h-scAb(CTLA-4))に対する一本鎖抗体をコードするDNA(配列番号16または17)を挿入することにより構築した。IgK-h-scAb(CTLA-4)配列を、ワクシニアウイルス(idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)の制御下に置いた(配列番号74)。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→h-scAb(CTLA-4))→FLAG配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.によって合成した。(配列番号30、h-scAb(CTLA-4)に対する配列番号17の配列を使用)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0612】
(2)マウスCTLA-4に対する一本鎖抗体およびTurboFP635(ベクター6)
ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド、および検出を容易にするためのFLAGタグをコードするDNA(配列番号29)をコードするDNA(配列番号18)に連結されたマウスCTLA-4(m-scAb(CTLA-4))に対する一本鎖抗体をコードするDNA(配列番号21)を挿入することにより構築した。IgK-m-scAb(CTLA-4)配列を、ワクシニアウイルス(idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)の制御下に置いた(配列番号74)。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→m-scAb(CTLA-4))→FLAG配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.によって合成した。(配列番号31)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0613】
(3)OX40L(マウス-ベクター7、イヌ-ベクター8およびヒト-ベクター9)およびTurboFP635
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を線形化し、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)(配列番号74)の制御下にマウスOX40L(配列番号22)、イヌOX40L(配列番号23)またはヒトOX40L(配列番号24)をコードするDNAを挿入することによって構築した。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→OX40L(マウス、イヌまたはヒト)配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.によって合成した。(マウス(ベクター7)、イヌ(ベクター8)およびヒト(ベクター9)OX40Lについてそれぞれ配列番号32、33および34)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0614】
(4)4-1BBL(マウス-ベクター10、イヌ-ベクター11およびヒト-ベクター12)およびTurboFP635
【0615】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を線形化し、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)(配列番号74)の制御下にマウス4-1BBL(配列番号25)、イヌ4-1BBL(配列番号26)またはヒト4-1BBL(配列番号27)をコードするDNAを挿入することによって構築した。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→4-1BBL(マウス、イヌまたはヒト)配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.によって合成した。(マウス(ベクター10)、イヌ(ベクター11)およびヒト(ベクター12)4-1BBLについてそれぞれ配列番号35、36および37)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0616】
2つの治療遺伝子および選択遺伝子をコードするドナーベクター(TurboFP635)
(1)4-1BBLおよびOX40L(マウス-ベクター13、イヌ-ベクター14、ヒト-ベクター15)
【0617】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を線形化し、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)(配列番号74)の制御下に、マウス4-1BBL(配列番号25)、イヌ4-1BBL(配列番号26)またはヒト4-1BBL(配列番号27)をコードするDNA、およびワクシニア初期/後期プロモーター(pEL)(配列番号74)の制御下に、マウスOX40L(配列番号22)、イヌOX40L(配列番号23)またはヒトOX40L(配列番号24)をコードするDNAを挿入することによって構築した。マウス、イヌまたはヒトの4-1BBLおよびOX40L(loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→4-1BBL→pEL→OX40L)をコードする得られたベクターを、それぞれベクター13、14および15と命名した。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0618】
(2)VEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF))およびOX40L(マウス-ベクター16、ヒト-ベクター17)
【0619】
2つの治療遺伝子をコードするドナーベクター:(a)IgKシグナルペプチドをコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下にあるVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF));(b)ワクシニアウイルス初期/後期プロモータープロモーター(pEL;配列番号74)プロモーターの制御下にあるマウスOX40LまたはヒトOX40Lを構築した。
【0620】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を直線化し、以下を挿入することによって構築した:(1)抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号11)をコードするDNAおよび検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNAに連結されたVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF);配列番号10)をコードするDNA;(2)マウスOX40L(配列番号22)またはヒトOX40L(配列番号24)をコードするDNA。IgK-scAb(VEGF)-FLAG配列を、ワクシニアウイルス(例えば、idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニア後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。マウスまたはヒトOX40L遺伝子を、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。scAb(VEGF)とマウスまたはヒトOX40Lとをコードする得られたベクターを、それぞれベクター16および17と命名した。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0621】
(3)VEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF))および4-1BBL(マウス-ベクター18、ヒト-ベクター19)
【0622】
以下の2つの治療遺伝子をコードするドナーベクターを構築した:(a)IgKシグナルペプチドをコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下にあるVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF));(b)ワクシニアウイルス初期/後期(pEL;配列番号74)プロモーターの制御下にあるマウス4-1BBLまたはヒト4-1BBL。
【0623】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を直線化し、以下を挿入することによって構築した:(1)抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号11)をコードするDNAおよび検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNAに連結されたVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF);配列番号10)をコードするDNA;(2)マウス4-1BBL(配列番号25)またはヒト4-1BBL(配列番号27)をコードするDNA。IgK-scAb(VEGF)-FLAG配列を、ワクシニアウイルス(例えば、idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニア後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。マウス4-1BBLまたはヒト4-1BBL遺伝子を、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。scAb(VEGF)とマウスまたはヒト4-1BBLとをコードする得られたベクターを、それぞれベクター18および19と命名した。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0624】
(4)VEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF))およびhNIS(ベクター20)
以下の2つの治療遺伝子をコードするドナーベクター(ベクター20)を構築した:(a)IgKシグナルペプチドをコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下にあるVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF));(b)ワクシニアウイルス初期/後期プロモータープロモーター(pEL;配列番号74)の制御下にあるヒトNIS(hNIS)。
【0625】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を直線化し、以下を挿入することによって構築した:(1)抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号11)をコードするDNAおよび検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNAに連結されたVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF);配列番号10)をコードするDNA;(2)ヒトhNIS(配列番号14)をコードするDNA。IgK-scAb(VEGF)-FLAG配列を、ワクシニアウイルス(例えば、idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。ヒトhNIS遺伝子を、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pL→IgK→scAb(VEGF)→FLAG→pEL→hNIS配列(上流→下流)を含む得られたベクター(ベクター20)を、Genewiz,Inc.によって合成した。(配列番号38)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0626】
(5)VEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF))およびAQP1(Vector 21)
以下の2つの治療遺伝子をコードするドナーベクター(ベクター21)を構築した:(a)IgKシグナルペプチドをコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下にあるVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF));(b)ワクシニアウイルス初期/後期プロモータープロモーター(pEL;配列番号74)の制御下にあるヒトヒトアクアポリン1(AQP1)。ヒトAQP1を最初にオープンリーディングフレーム(ORF)cDNA(Origene Technologies、メリーランド州ロックビル)から増幅した(配列番号28)。
【0627】
ドナーベクター(ベクター21)は、SphI制限酵素を使用してベクター1を直線化し、以下を挿入することによって構築した:(1)抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナルペプチド(配列番号11)をコードするDNAおよび検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNAに連結されたVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF);配列番号10)をコードするDNA;(2)ヒトAQP1(配列番号28)をコードするDNA。IgK-scAb(VEGF)-FLAG配列を、ワクシニアウイルス(例えば、idtdna.com/CodonOpt)における発現のためにコドン最適化し、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。ヒトAQP1遺伝子を、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pL→IgK→scAb(VEGF)→FLAG→pEL→AQP1(human)配列(上流→下流)を含む得られたベクター(ベクター21)を、Genewiz,Inc.によって合成した。(配列番号39)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。
【0628】
4.Cas9HFcのクローニング
Cas9HF1プラスミドをAddgene(マサチューセッツ州ケンブリッジ;プラスミド#72247)から得た。Cas9HFサイトゾルコード遺伝子(Cas9HFc)を、核局在化シグナルなしでCMVプロモーター(配列番号40)の制御下でpST1374(Addgene Plasmid ID#13426)にクローニングするか、またはCMVプロモーター(配列番号40)の制御下でVectorBuilder,Inc.(テキサス州シェナンドア)によるプラスミド構築物中において合成した。
【0629】
5.治療遺伝子をコードする組換え腫瘍溶解性ウイルス
トランスフェクションおよびウイルス感染
トランスフェクションの前日に2×106個のCV-1細胞を6ウェルプレートに播種して、60~70%の培養密度を達成した。6μlのTurboFectin 8.0トランスフェクション試薬(Origene Technologies、メリーランド州ロックビル)を250μlのopti-DMEM(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)中で使用して、60%~70%コンフルエントの細胞を、Cas9HFcおよびガイドRNAをコードするプラスミドのそれぞれ1μgでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、2%FBSを補充したDMEM高グルコース中、0.02のMOIでレシピエントワクシニアウイルス(ACAM2000)に感染させた。ウイルス感染の2時間後、細胞をPBSで1回洗浄した。1.5mlのDMEM増殖培地を添加し、細胞を37℃のCO2インキュベータに30分間入れた後、上記の中から選択されたドナープラスミド2μgでトランスフェクトした。細胞を更に37℃、5%CO2および加湿雰囲気で24時間インキュベートした。感染細胞と上清の混合物を採取し、ウイルス精製およびスクリーニングのために-80℃で保存した。
【0630】
ウイルス精製
感染細胞を解凍し、次いで、氷上で最大の強さで、30秒間、3回オン/オフで超音波処理して、細胞からウイルスを放出させた。6ウェルプレート中のコンフルエントなCV-1細胞の4つの単層を、プレートあたり2μl放出ウイルスの放出ウイルスで感染させた。感染の2日後、4~5個の緑色プラーク(陽性、eGFPの発現を反映)および対照陰性プラーク(eGFPを発現していない)を2倍蛍光顕微鏡下で同定し、200μlの無血清DMEMを含有するクライオバイアルに収集し、純粋なクローンが得られるまで2~4回プラーク精製を行った。所望の治療遺伝子(複数可)が組換えウイルスの適切な遺伝子座(ORF_157とORF_158との間)に挿入されていることを、PCRおよびサンガー配列決定によって確認し、その詳細を以下に示す。
【0631】
PCRおよびサンガー配列決定
レシピエントウイルスの遺伝子間遺伝子座における導入遺伝子の挿入を確認するために、プライマー対を設計して遺伝子間領域を増幅した:
リバースプライマー:5’GACGAAGAAGCAAGAGATTGTGT 3’(配列番号41)
フォワードプライマー:5’ACCGTTTCCATTACCGCCA 3’(配列番号42)。
【0632】
2つのプライマーの標的配列(相補体)は、ワクシニアウイルスのHR-左およびHR-右にそれぞれ位置する。Cre/Lox組換え前の元のウイルスからのアンプリコンは、HR左およびHR右に位置するプライマーであることができる。元の非組換えウイルスからのPCRアンプリコンは長さが230bpであり、新しい組換えウイルスアンプリコンは、挿入された導入遺伝子のサイズに、これとは別の骨格からの140bpを加えたものに等しい。全ての精製クローン由来のPCR産物の配列をサンガーシーケンシング(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)によって確認した。
【0633】
実施例9
CAVESは組換え腫瘍溶解性ウイルスの治療可能性を高める
【0634】
実施例7に示すように、CAVESは、体液性免疫および細胞媒介性免疫からウイルスを保護することによって、ならびに、治療効果がウイルス複製/ウイルス遺伝子の発現がインビボで開始されるために遅延にさらされるのではなく即時であるように、処置が施される前にウイルスコード化タンパク質、例えば免疫調節タンパク質の発現を提供することによって、ワクシニアウイルスの治療効果を増強する。したがって、CAVESは、治療用タンパク質をコードし、投与前にCAVES中でそれらを発現する組換えウイルスを使用して、投与直後に治療用タンパク質を送達するために使用することができる。ウイルスコード化治療用タンパク質は、投与直後に初期治療効果を発揮することができ、腫瘍感染または腫瘍におけるウイルス増幅に依存しない。更に、初期治療効果は、腫瘍微小環境の性質とは無関係に発揮することができる。ウイルスコード化治療用タンパク質の初期発現がインビボで起こる場合、発現の程度は、腫瘍微小環境の性質、例えば腫瘍微小環境中の栄養素へのタンパク質合成機構のアクセスに依存することが多い。CAVESは既に発現されたウイルスコード化治療用タンパク質(細胞媒体と腫瘍溶解性ウイルスとの例えば6時間以上のインキュベーションに起因して)を含有しているので、治療用タンパク質は、腫瘍微小環境におけるタンパク質合成とは無関係な様式で投与時に有効であることができる。例えば、CAVES-24またはCAVES-48(それぞれ24時間または48時間一緒にインキュベートした細胞媒体および腫瘍溶解性ウイルス)の治療効果は、例えば2時間にわたってウイルスが搭載されたMSC(ここでは、ウイルスコード化治療用タンパク質の合成が始まっていないかまたは非常に限定されている)と比較してより強力であることができる。
【0635】
この実施例は、治療用タンパク質をコードする操作された腫瘍溶解性ウイルス(実施例8に記載のように調製)を用いたCAVES-48(すなわち、48時間一緒にインキュベートした細胞媒体および腫瘍溶解性ウイルス)のエクスビボ生成が、所望のウイルスコード化治療用タンパク質(複数可)のウイルス増幅および発現を提供することを実証する。次いで、CAVES-48を凍結保存するか、処置部位への輸送のために冷蔵する(1~2日間)か、または直ちに投与することができる。
【0636】
組換えウイルス
以下の治療遺伝子:ヒトOX40L(hOX40L)、マウスOX40L(mOX40L)、ヒト4-1BBL(h4-1BBL)、マウス4-1BBL(m4-1BBL)およびヒトCTLA-4に対する一本鎖抗体(scAb-hCTLA-4)を含む組換えウイルスを実施例8に記載のように調製した。CAL-01のORF_157とORF_158との間の92bpギャップは、前述の治療遺伝子のうちの1つの上流のレポーター遺伝子としてTurboFP635によって置き換えられた。CAL-01に基づく新しい組換えウイルスは、この例では接頭辞「CAL-02」で呼ばれる。
【0637】
【表23】
【0638】
ヒト脂肪由来MSCに、2%ウシ胎児血清(FBS)、1%抗生物質(等量アンピシリンおよびストレプトマイシン)および2mMグルタミンを補充した1mlのDMEM中、37℃のCO2インキュベータにおいて、20RPMで連続的に回転させながら、0.1のMOIで上に列挙した組換えウイルスの1つを2時間かけて搭載させた。次いで、細胞を、10mlの新鮮な増殖培地(5%Stemulate(登録商標)のプールされたヒト血小板溶解物、1%の抗生物質および2mMのグルタミン)を満たした10cmの丸型ディッシュに加えた。ウイルスと細胞の混合物をCO2インキュベータ中37℃で最大2日間更にインキュベートした。細胞を1×PBSで洗浄し、1.5mlのTrypLE酵素(Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)で6分間剥離した。次いで、全ての細胞を回収し、500gで5分間遠心分離した。細胞を1×PBSで再度洗浄し、実施例6および7に記載されるように凍結保存した。
【0639】
細胞表面での治療用タンパク質の発現を確認するために、種々の組換えウイルスと48時間インキュベートしたAD-MSCを、表X13に列挙した蛍光標識抗体またはアイソタイプ対照を用いて染色した。sc-hCTLA4をFLAGタグと融合し、sc-hCTLA4をFLAGタグ抗体を用いて検出した。
【0640】
【表24】
【0641】
CAVES-48を標識した後、治療用タンパク質の細胞表面発現を、インタクトな細胞においてフローサイトメトリーによって分析した。陽性細胞(CAVES-48)のパーセンテージを以下の表X14に列挙する。
【0642】
【表25】
【0643】
データは、生成されたCAVESの細胞膜に治療用タンパク質が存在したことを示している。OX40Lおよび4-1BBLは細胞膜リガンドであり、したがって、これらのタンパク質は高レベルで細胞膜中に見出されるはずであるが、sc-hCTLA4は分泌型として発現されるため、細胞膜に高レベルで保持されない。したがって、FLAGタグ付き抗体を使用するサイトゾル検出を行って、治療用sc-hCTLA4タンパク質を含有する細胞の割合を分析した。sc-hCTLA4についての陽性シグナル伝達MSCの割合は、CAL-02.h3ウイルスとのわずか48時間のインキュベーションで87.7%まで増加した。
【0644】
結果は、CAVES-48の生成が、腫瘍微小環境、初期抗ウイルスバリア、またはウイルス増幅およびウイルスコード化タンパク質合成の腫瘍細胞許容性とは無関係に、投与時に即時効果を有することができるウイルスコード化治療遺伝子の発現を可能にすることを実証している。
【0645】
実施例10
CAVESは腫瘍に対する腫瘍溶解性ウイルスの治療有効性を高める
【0646】
(1)前立腺癌
ネイキッドCAL1ウイルスおよびMSC/CAL1の抗がん治療効果を、異種(ヒト)前立腺腫瘍モデル系において腫瘍内送達されたCAVES-24hおよびCAVES-40hのそれぞれと比較した。VVを搭載したMSC(2時間)またはCAVESの凍結ストックを作製し、実施例6および7に記載されるように、-80℃または液体窒素中で保存した。
【0647】
CAVES(MSCとの24時間または40時間のインキュベーション)は、ネイキッドCAL1ウイルスまたはMSCと短期間(MSCとの2時間のインキュベーション)インキュベーションされたCAL1ウイルスと比較して、増大した治療効力を示す。
【0648】
異種動物モデルにおけるMSC/CAL1(2時間のインキュベーション)およびネイキッドCAL1(凍結保存ロット)の各々と比較して、凍結保存された1×106個のCAVES(24時間または48時間のインキュベーション)の治療効果を分析するために、前立腺腫瘍を、2×106個の侵襲性の転移性ヒト前立腺癌PC3細胞を4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に皮下注射することによって作製した。腫瘍が150mm3の平均体積に達したとき(腫瘍細胞接種の2週間後)、マウスに以下の処置の1つを腫瘍内注射した:1×106pfuネイキッドCAL1ウイルス(n=6);または1×107pfuネイキッドCAL1ウイルス(n=5);またはCAL1(MOI=10)を2時間搭載した1×106MSCを(n=7);またはCAVES-24h(CAL1 MOI=1で調製;n=7);またはCAVES-40h(CAL1 MOI=0.1で調製;n=6)もしくはPBS(n=6)。実験期間中、腫瘍体積を週2回測定した。単一の腫瘍内注射の場合、データは、MSCを含有する処置がウイルス単独よりも治療的に効率的であったことを示し、CAVESは、MSC/CAL1 2時間またはネイキッドウイルスと比較して最も効率的な処置であった。CAVES-40hは、100倍少ないウイルスを使用して処置を製造したにもかかわらず、最も効率的な処置であった。
【0649】
【表26】
【0650】
使用されるウイルスの量の関数としてのCAVESの治療有効性
CAVESを作製するときに細胞に添加されるCAL1ウイルスの量の関数として凍結保存CAVESの治療有効性を更に分析するために、以下の3つのCAVESを調製した:
SNV-1a:脂肪由来幹細胞(MOI 0.1、38~42時間)とインキュベートした1×107pfuのCAL1ウイルス
SNV-1b:脂肪由来幹細胞(MOI 0.1、38~42時間)とインキュベートした1×106pfuのCAL1ウイルス
SNV-1c:脂肪由来幹細胞(MOI 0.1、38~42時間)とインキュベートした1×105pfuのCAL1ウイルス
【0651】
インキュベーションは、37℃のCO2インキュベータ内で行った。回収時に、全ての細胞を60%を超える生存率で感染させた。CryoStore10(またはCryoStore5)を用いて、1000万細胞/mlの濃度でCAVESを凍結保存した。凍結保存CAVESを、プラークアッセイを使用してPFU/細胞について試験し、約3~10pfu/細胞、細胞あたり2000~5000DNAコピーの最小値で選択した。
【0652】
前立腺腫瘍を、4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に2×106個の侵襲性の転移性ヒト前立腺癌PC3細胞を皮下移植することによって作製した。腫瘍が150mm3の平均体積に達したとき(腫瘍細胞接種の2週間後)、マウスに以下の処置の1つを腫瘍内(0日目)注射した(全ての処置についてn=8):
処置なし(対照-PBS)
1×106pfuネイキッドCAL1ウイルス;
1×107pfuネイキッドCAL1ウイルス;
1×106SNV-1a;
1×106SNV-1b;
1×106 SNV-1c
【0653】
実験期間中、腫瘍体積を週2回(15日まで)測定した。単一の腫瘍内注射について、データは、15日目に対照が腫瘍体積の約20倍の増加を示したことを実証した。比較すると、1×106pfuのネイキッドCAL1ウイルスによる処置は、15日目に腫瘍体積の12倍の増加をもたらし、1×107pfuのネイキッドCAL1ウイルスによる処置は、15日目に腫瘍体積の7.5倍の増加をもたらした。CAVESは腫瘍進行の遅延においてより大きな有効性を示し、SNV-1aによる処置は15日目に腫瘍体積の約6.5倍の増加を示し、SNV-1bは15日目に腫瘍体積の約5倍の増加を示し、SNV-1cは15日目に腫瘍体積の約3.5~4倍の増加しか示さなかった。したがって、結果は、より低いpfu(1×105pfu、すなわちSNV-1c)を使用して作製されたCAVESが、より高いpfu(1×107pfu、すなわちSNV-1aおよび1×106pfu、すなわちSNV-1b)を使用して作製されたCAVESによる処置と比較して、治療可能性が増加したことを更に実証している。以下の表は、対照またはネイキッドウイルスによる処置と比較して、CAVESによる処置後の有意に小さい腫瘍体積を示す:
【0654】
【表27】
【0655】
腫瘍移植の13日後にCAVES処置を開始し、CAVES処置開始の14日後に腫瘍体積を測定した場合、同様の結果が観察された。結果を以下の表に示す:
【0656】
【表28】
【0657】
CAVES(SNV-1c)による処置はヒト前立腺癌における腫瘍退縮を誘導する
腫瘍進行を遅らせることに加えて、SNV-1cによる処置は腫瘍退縮を誘導することが見出された。侵襲性の転移性PC3細胞を、62歳の男性白人由来のグレードIV前立腺腺癌の骨転移から開始した(ATCC(登録商標)CRL-1435TM)。前立腺腫瘍を、4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に2×106個の侵襲性の転移性ヒト前立腺癌PC3細胞を皮下注射することによって作製した。腫瘍が150mm3の平均体積に達したとき(腫瘍細胞接種の2週間後)、マウスに以下の処置の1つを腫瘍内(0日目)注射した(1つの処置群についてn=5):無処置(対照-PBS)または1×106SNV-1c。
【0658】
実験期間中、腫瘍体積を週2回(15日まで)測定した。単一の腫瘍内注射について、データは、15日目に対照が約1150mm3の平均腫瘍体積を示したことを実証した。比較すると、SNV-1cによる処置は、15日目に約500mm3の平均腫瘍体積をもたらした。更に、処置後30日目までに、SNV-1c処置動物の腫瘍は約250mm3に縮小した。結果は、CAVESが腫瘍成長を遅らせることに加えて、腫瘍を縮小させることによって腫瘍を処置できることを実証している。
【0659】
腫瘍内注射されたSNV-1cは全身性ウイルス血症を引き起こさない
腫瘍選択性を決定し、正常組織に悪影響があるかどうかを評価するために、SNV-1cの生体内分布およびウイルス増幅能を分析した。上記の無胸腺ヌードマウスを処置の15日後に屠殺した。動物ごとに11個の組織サンプルを採取し(血液、腫瘍、脳、心臓、腎臓(対)、肝臓、肺、膀胱、前立腺、精巣、脾臓)、液体窒素中で凍結保存した。ウイルスDNAまたは感染性粒子の存在を検出するために、サンプルをプラークアッセイならびにリアルタイム半定量的PCR(qPCR)によって検査した。分析により、実質的に全てのウイルスが腫瘍に局在し、非腫瘍組織では検出可能なウイルスがなかったことが明らかになった。
【0660】
免疫正常の前立腺癌インビボモデルにおいて、SNV-1c処置は、腫瘍進行を阻害し、適応免疫細胞集団を動員する
SNV-1cの治療有効性を、前立腺癌の2つの免疫正常マウスモデルにおいて試験した:TRAMPC2(増殖の遅い腫瘍)およびRM1(増殖の速い腫瘍)。TRAMP-C2および細胞株は、1996年の、PB-Tag C57BL/6(TRAMP)マウス(ATCC-CRL-2731)の前立腺における異種の32週の原発腫瘍に由来した。RM1は、泌尿生殖洞マウス前立腺再構成(ATCC(登録商標)CRL-3310TM)から発生したRas+Myc誘導性前立腺癌である。前立腺腫瘍を、4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に2×106個のTRAMPC2またはRM1前立腺癌細胞を皮下注射することによって作製した。TRAMPC2の場合、CAVES処置の20日前に腫瘍細胞を右側腹部の皮下に移植した。RM1については、CAVES処置の5日前に腫瘍細胞を右側腹部の皮下に移植した。CAVES処置を、1×106 SNV-1cを2日毎に3回腫瘍内注射することによって開始した。対照動物は処置をしなかった(PBS)(n=5/処置群)。
【0661】
データは、TRAMPC2腫瘍への腫瘍内注射の開始後27日目に、対照動物が約500mm3の平均腫瘍体積を示したことを実証した。比較すると、SNV-1cによる処置は、27日目に検出可能な腫瘍をほとんどまたは全く示さなかった。結果を以下の表に詳述する。
【0662】
【表29】
【0663】
急速に成長するRM1腫瘍について、データは、腫瘍内注射後7日目に、対照動物が約2500mm3の平均腫瘍体積を示したことを実証した。比較すると、SNV-1cによる処置は、約1000mm3の腫瘍体積をもたらしたことを示した。結果を以下の表に詳述する。
【0664】
【表30】
【0665】
更に、RM1腫瘍では、SNV-1cによる処置が適応T細胞集団の動員を増加させ、それによって治療有効性を更に増加させることが分かった。SNV-1cによる処置は、細胞/g腫瘍および生細胞におけるパーセンテージとして測定した場合、CD8+細胞傷害性T細胞集団の持続的増加およびCD4+集団のいくらかの増加を提供した。NK細胞集団では増加は観察されなかった。CD8+T細胞集団の改善された頻度は、改善された総CD8/Treg比(対照サンプルの約2と比較して、SNV-1c処置サンプルでは約6)および改善されたCD4 Teff/Treg比(対照サンプルの約0.6と比較して、SNV-1c処置サンプルでは約1.5)に関連する。
【0666】
(2)他のがんモデル
SNV-1cの治療有効性を試験し、いくつかの他のがんモデルにおいて有効であることが分かった。
【0667】
マウス結腸がんモデル(CT26)
結腸腫瘍を、2×106個のCT26細胞を4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に皮下注射することによって作製した。CT26は、N-ニトロソ-N-メチルウレタン(NNMU)誘導未分化結腸癌細胞株である。これをクローン化して、CT26.WT(ATCC CRL-2638)と呼ばれる細胞株を作製した。腫瘍細胞の注射の7日後、マウスに、1×106 SNV-1c、1×107ネイキッドCAL1ウイルスを2日間ごとに3回腫瘍内注射したか、または未処置のままにした(PBSの腫瘍内注射)(n=8/処置群)。
【0668】
データは、CT26腫瘍への腫瘍内注射の開始後15日目に、対照動物が1250~1500mm3の平均腫瘍体積を示したことを実証した。比較すると、ネイキッドウイルスによる処置は、15日目に約1000mm3の平均腫瘍体積をもたらした。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、15日目の平均腫瘍体積は約200mm3であった。
【0669】
更に、SNV-1cは、マウスの左側腹部へのCT26腫瘍細胞の導入によって形成された遠隔の、処置しなかった腫瘍の腫瘍進行を遅延させることがわかった(SNV-1cの腫瘍内注射は右側腹部の腫瘍内であった)。SNV-1cの腫瘍内注射による処置では、15日目(上記のように、1250~1500mm3の対照に対して)での右側腹部の平均腫瘍体積が約200mm3であっただけでなく、注射されていない左側腹部の平均腫瘍体積も、1250~1500mm3の対照値に対して約500mm3に過ぎなかった。結果は、例示的なCAVES、SNV-1cによる処置が、直接(近位で)処置された腫瘍と遠隔腫瘍の両方に対して有効であることを示している。結果を以下の表に詳述する。
【0670】
【表31】
【0671】
腫瘍移植の13日後にCAVES処置を開始し、CAVES処置開始の20日後に腫瘍体積を測定した場合、同様の結果が観察された。結果を以下の表に示す:
【0672】
【表32】
【0673】
マウス黒色腫モデル
黒色腫腫瘍を、2×106個のB16-F10細胞(メラノーママウス腫瘍モデルATCC(登録商標) CRL-6475(商標))を4週~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部および左側腹部に皮下注射することによって生じさせた。腫瘍細胞の注射の8日後、マウスの右側腹部に、1×106 SNV-1cまたは1×107ネイキッドCAL1ウイルスを2日間ごとに3回腫瘍内注射した(処置群あたりn=8)。
【0674】
データは、B16腫瘍への腫瘍内注射後11日目に、ネイキッドウイルス処置動物が約1400mm3の平均右側腹部腫瘍体積を示したことを実証した。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、11日目の平均腫瘍体積は約600mm3であった。結果を以下の表に詳述する。
【0675】
【表33】
【0676】
SNV-1cは、マウスの左側腹部へのB16-F10黒色腫細胞の導入によって形成された遠隔の、処置しなかった腫瘍の腫瘍進行を遅延させることがわかった(SNV-1cの腫瘍内注射は右側腹部の腫瘍内であった)。SNV-1cの単回腫瘍内注射による処置では、11日目で右脇腹の平均腫瘍体積が約600mm3であっただけでなく、注射されていない左脇腹の平均腫瘍体積もまた、約1600mm3の対照(ネイキッドウイルス処置)値に対して約700mm3に過ぎなかった。結果は、SNV-1cが、直接(近位で)処置された腫瘍および遠隔腫瘍の両方に対して有効であり、ネイキッドウイルスによる処置と比較して両方でより有効であることを示す。
【0677】
VEGFに対する一本鎖抗体をコードするCAL2組換えウイルスを使用してCAVES(SNV-2c:脂肪由来幹細胞を、CAL1ウイルスの代わりに1×105pfuのCAL2ウイルスとともにインキュベートすることによって作製されたもの)を調製した場合、SNV-2c CAVESの治療有効性は、腫瘍進行の更に大きな阻害によって示されるように、SNV-1cよりも増強されることが分かった。結果を以下の表に示す:
【0678】
【表34】
【0679】
乳がんモデル
SNV-1cの治療有効性を、2つの乳がんモデル:マウス乳がんモデル(EMT-6)およびヒトトリプルネガティブ乳がんモデル(MDA-MB-231)において試験した。EMT6は、過形成性乳腺肺胞小結節の移植後にBALB/cCRGLマウスに生じた移植可能なマウス乳癌から確立された。得られた腫瘍株(KHJJと命名)をBALB/cKaマウスで増殖させ、25回目の動物継代後に組織培養に適合させ、細胞株をEMTと命名した。EMT6は、1971年にスタンフォード大学で単離されたEMTのクローン単離体である(ATCC(登録商標) CRL-2755(商標))。MDA-MB-231細胞株は、エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体の発現、ならびにHER2増幅を欠く高侵襲性、侵襲性および低分化トリプルネガティブ乳がん細胞株であり、これは、転移性乳腺癌を有する51歳の白人女性の胸水から確立された。
【0680】
CAVE処置の4日前に、4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部および左側腹部に2×106個のEMT-6乳がん細胞を皮下注射することによって腫瘍を作製した。次いで、1×106 SNV-1cを、右側腹部のみに2日間ごとに3回腫瘍内注射した。MDA-MB-231トリプルネガティブ乳がんについては、CAVE処置の27日前に、細胞を左右の側腹部に皮下移植した。次いで、1×106個のSNV-1cを右側腹部に1回腫瘍内注射した。対照には、1×107個のネイキッドCAL1ウイルスまたはPBSによる腫瘍内注射を含めた(n=8/処置群)。
【0681】
EMT-6乳がんモデルのデータは、腫瘍内注射後14日目に、対照(PBS処置)動物が約950mm3の平均右側腹部腫瘍体積を示したことを実証した。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、14日目の平均腫瘍体積は約350mm3であった。18日目の結果を以下の表に詳細に示す:
【0682】
【表35】
【0683】
更に、SNV-1cは、マウスの左側腹部への乳房腫瘍細胞の導入によって形成された遠隔の、処置しなかった腫瘍の腫瘍進行を遅延させることがわかった(SNV-1cの腫瘍内注射は右側腹部の腫瘍内であった)。SNV-1cの単回腫瘍内注射による処置では、14日目で右脇腹の平均腫瘍体積が約350mm3であっただけでなく、注射されていない左脇腹の平均腫瘍体積もまた、約950mm3の対照(ネイキッドウイルス処置)値に対して約450mm3に過ぎなかった。結果は、SNV-1cが、直接(近位で)処置された腫瘍および遠隔腫瘍の両方に対して有効であり、ネイキッドウイルスによる処置と比較して両方でより有効であることを示す。
【0684】
同様に、トリプルネガティブ乳がんモデル(MDA-MB-231)について、単一の腫瘍内注射の場合、乳がんモデルのデータは、腫瘍内注射後14日目に、ネイキッドウイルス処置動物が約950mm3の平均右側腹部腫瘍体積を示したことを実証した。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、14日目の平均腫瘍体積は約350mm3であった。46日目の結果を以下の表に詳述する。
【0685】
【表36】
【0686】
SNV-1cは、マウスの左側腹部への乳房腫瘍細胞の導入によって形成された遠隔の、処置しなかった腫瘍の腫瘍進行を遅延させることがわかった(SNV-1cの腫瘍内注射は右側腹部の腫瘍内であった)。SNV-1cの単回腫瘍内注射による処置では、14日目で右脇腹の平均腫瘍体積が約350mm3であっただけでなく、注射されていない左脇腹の平均腫瘍体積もまた、約375mm3の対照(ネイキッドウイルス処置)値に対して約150mm3に過ぎなかった。結果は、SNV-1cが、トリプルネガティブ乳がんモデルにおいて直接(近位で)処置された腫瘍および遠隔腫瘍の両方に対して有効であることを示している。
【0687】
結果は、免疫調節タンパク質が発現されるのに十分な時間にわたる腫瘍溶解性ウイルスとMSCなどの幹細胞とのインキュベーションが、腫瘍溶解性ウイルスの治療効果を有意に改善することを実証している。この改善は、ウイルス単独、およびウイルスを細胞と実質的に短い時間(2~4時間、またはウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質が発現されなかった時間)インキュベートした場合と比較して有意である。
【0688】
同系腫瘍モデルにおいてCAVEsの局所投与は、局所および遠隔の腫瘍免疫浸潤を誘導し、局所処置された腫瘍および遠隔の処置されなかった腫瘍の乳癌腫瘍進行を効率的に阻害する(アブスコパル効果)。
【0689】
CAVESが局所治療効果および局所投与後の全身状態の治療効果の両方を誘導するかどうかを分析するために、両側性腫瘍マウスモデルにおける処置の治療効果を試験した。Balb/cマウスに両脇腹にEMT6乳癌腫瘍細胞を接種し、腫瘍が50mm3のサイズに達したら、マウスを無作為に分け、合計3回の処置を300万のCAVESで行い、1日おきに右腫瘍に直接投与した。左腫瘍は処置しなかった。CAVESを、0.1のMOIで幹細胞をCAL1ウイルスに感染させることによって作製し、感染の28時間後に採取した。以下の表に提供されるデータ(右腫瘍は局所処置を受けた;左腫瘍は処置しなかった)は、左右両方の腫瘍において対照動物と比較して20日目の腫瘍進行の遅延によって示されるように、CAVESによる処置が有意な局所ならびに全身の治療効果(アブスコパル効果)を誘導したことを示す。
【0690】
【表37】
【0691】
次いで、処置された腫瘍(右)および遠隔の処置されなかった腫瘍(左)の両方における免疫浸潤を分析した。処置の5日後、5匹の対照動物および5匹の処置動物の腫瘍を切除し、酵素消化してTIL(腫瘍浸潤リンパ球)を単離した。更に、TILを表面免疫表現型検査およびその後の細胞内Foxp3染色に供した。対照腫瘍および処置腫瘍における免疫細胞浸潤を評価するために、ならびに処置されなかった遠隔腫瘍で観察された治療的アブスコパル効果の基本的機構を調べるために、マルチパラメータフローサイトメトリー分析を行った。ダブレット識別および死細胞のゲートアウトに続いて、CD45+CD11b-low/med TILの腫瘍浸潤集団をCD3-NKp46+NK細胞、CD3+NKp46+NKT細胞およびCD3+NKp46-T細胞に更に細分化した。T細胞を単一陽性CD4+またはCD8+T細胞に更に分離し、CD25およびFoxp3の発現に基づいてCD4+T細胞区画を更に分析して、それぞれCD25+Foxp3-CD4+TeffおよびCD25+Foxp3+Tregを定量した。
【0692】
以下の表に示すように、フローサイトメトリー分析は、全浸潤CD4およびCD8 T細胞の割合の統計学的に有意な処置関連比例的増加、ならびにCD4+CD25+Foxp3+Tregの割合の減少を実証した。T細胞区画の変化は、Tregに対するCD25+Foxp3-CD4+TeffおよびTregに対するCD8 T細胞の比の改善と更に関連していた。TME(腫瘍微小環境)におけるこれらの変化は、腫瘍溶解を促進する条件と一致しており、適応抗腫瘍免疫の増強をもたらす。更に、免疫浸潤物の割合または比の同様の好ましい変化が、処置された腫瘍(右)および遠隔の処置されなかった腫瘍(左)の両方で観察され、観察された強力なアブスコパル効果の基本的機構を提供した。
【0693】
【表38】
【0694】
実施例11
治療可能性が増加した組換え腫瘍溶解性ウイルスを操作する代替方法
【0695】
実施例8では、CRISPR/Cas9HFc(高忠実度Cas9)系を使用して、治療遺伝子をコードする組換えワクシニアウイルス(VACV)を作製することを記載する。あるいは、Cre-Lox法を使用して組換えウイルスを作製することができる。
【0696】
2つの適合しないLox配列、loxM3(配列番号49)およびloxM7(配列番号51)を含むレシピエントVACVを構築した。CRISPR/Cytosolic Cas9HF法を用いて、不適合Lox配列を、CAL1ゲノムのORF_157とORF_158との間の遺伝子間座に導入した。Lox配列の導入は遺伝子間遺伝子座にあるので、得られたレシピエントVACV、ならびに目的の治療遺伝子をコードする最終産物組換えウイルスは、それらのORFの全てがインタクトであり、それらの元の治療可能性を保持する。
【0697】
レシピエントVACVへの所望の治療遺伝子の挿入を、細胞質組換え媒介カセット交換法(RMCE)によって行ったが、これには、(i)目的の治療遺伝子およびレシピエントVACVに存在する同じ2つの適合しないLox配列を含有するドナープラスミド/ベクター;ならびに(ii)サイトゾルCRE(Creリコンビナーゼ酵素)の発現のためのベクターの使用が必要である。所望の組換えウイルスの選択は、レシピエントVACVに選択遺伝子を導入することによって達成された(得られた組換えウイルスは、組換えウイルス中の選択遺伝子の存在に基づいて選択される)。
【0698】
レシピエントおよび組換えVACVを生成するためのドナーベクターの構築
ORF_157とORF_158との間の遺伝子間遺伝子座の左右の相同領域(HR)を、ACAM2000ワクシニアウイルスゲノム配列(GenBankアクセッション番号:AY313847;配列番号70)に基づいて選択した。ORF_157とORF_158との間の遺伝子間遺伝子座は271bp配列(配列番号3)であり、一方、2つのHRは、遺伝子間遺伝子座の右側の555bp配列(配列番号4)および左側の642bp配列(配列番号5)である。遺伝子間遺伝子座内には、目的の治療遺伝子によって置き換えられる92bpの配列(配列番号6)がある。オンラインソフトウェア(dna20.com/eCommerce/cas9/input)を使用して、92bp遺伝子間領域内の標的DNAに特異的に結合するように、2つのガイドRNA、gRNA1(配列番号1)およびgRNA2(配列番号43)を選択した。ガイドRNAを別々のベクター(それぞれgRNA1およびgRNA2に対して配列番号2および配列番号48)に導入した。各ガイドRNAを、レンチウイルスベクター(レンチベクター)中のU6プロモーターの制御下で構築した。ピューロマイシンに対する抗生物質耐性を各レンチベクター骨格に含めた(テキサス州ShenandoahのVectorBuilder,Inc.から入手したベクター)。
【0699】
第一世代レシピエントVACVのためのドナーベクター(ベクター22)
第一世代レシピエントVACVのためのドナーベクターを構築するために、以下のDNA断片を合成した(Genewiz,Inc.、カリフォルニア州サンディエ)):
(a)(上流)HR(左)→loxM3(配列番号49)(下流);
(b)上流のVACV初期/後期プロモーター(pEL)および下流のワクシニア転写終結シグナルに隣接する増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするDNA(配列番号50);および
(c)(上流)loxM7(配列番号51)→HR(右)(下流)。
【0700】
in-fusionクローニングキット(Takara Bio USA,Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)を用いて、断片を(a)→(b)→(c)の順に(上流→下流)pUC18ベクター(配列番号72)にクローニングした。治療遺伝子の将来の挿入を可能にするために、各HRの両端に複数のクローニング部位を追加した。loxM3配列の直後に制限酵素部位SpeI、XmaI、SmaI、NheIおよびBmtIを付加し、loxM7配列の直前に制限酵素部位SphI、MscI、NotI、AgeI、SwaIおよびAflIIを付加した。得られたベクター(ベクター22;loxM3→pEL→eGFP→loxM7)の配列を(配列番号44)と示す。
【0701】
TurboFP635蛍光タンパク質をコードするレシピエントVACVのドナーベクター(ベクター2)
VACV初期/後期プロモーター(pEL)の制御下にあり、loxM3(上流)およびloxM7(下流)配列に隣接するTurboFP635蛍光タンパク質をコードするDNAを、VectorBuilder,Inc.(テキサス州シェナンドア)によってpUC18プラスミド(配列番号72)に導入した。得られたベクター(ベクター2)、pUC-loxM3-pEL-TurboFP635-loxM7の配列を(配列番号45)として示す。
【0702】
細胞質CREリコンビナーゼをコードするベクター
哺乳動物のコドン最適化され、CMVプロモーターの制御下にあるバクテリオファージP1由来の細胞質Creリコンビナーゼ(CRE)をコードするDNAを、VectorBuilder,Inc.(テキサス州シェナンドア)によってレンチウイルスベクターに挿入した(ベクター23;配列番号46)。細胞質CreリコンビナーゼをコードするレシピエントVACVを調製するために、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(pEL)の制御下でeGFPをコードするDNAおよびワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(pEL)の制御下でバクテリオファージP1由来の哺乳動物コドン最適化細胞質CreリコンビナーゼをコードするDNAを、pUC18プラスミド(配列番号72)に挿入することによってドナーベクターを構築した。loxM3配列をeGFP発現カセットの上流に挿入し、loxM7配列をCreリコンビナーゼ発現カセットの下流に挿入した。pUC18にloxM3→pEL→eGFP→pEL→CRE→loxM7(上流→下流)挿入物を含む得られたベクター(ベクター24)をVectorBuilder,Inc.によって合成した(ベクター24;配列番号47)。
【0703】
(1)第一世代レシピエントワクシニアウイルス(R1-VACV)
第1世代のレシピエントワクシニアウイルスを得るために、トランスフェクションの前日に2×106個のCV-1細胞を6ウェルプレートに播種した。60~80%コンフルエントなCV-1細胞を、6μlのターボフェクチン8.0トランスフェクション試薬(Origene Technologies、メリーランド州ロックビル)を使用して、1μgのCas9HFc(細胞質ゾル高忠実度Cas9)プラスミドおよび1μgのガイドRNA1でトランスフェクトした。Cas9HF1プラスミドをAddgene(マサチューセッツ州ケンブリッジ;プラスミド#72247)から得た。Cas9HFサイトゾルコード遺伝子(Cas9HFc)を、核局在化シグナルなしでCMVプロモーター(配列番号40)の制御下でpST1374(Addgene Plasmid ID#13426)にクローニングするか、またはCMVプロモーター(配列番号40)の制御下でVectorBuilder,Inc.(テキサス州シェナンドア)によるプラスミド構築物中において合成した。オフターゲット効果を最小限に抑えるために、高忠実度Cas9タンパク質をいくつかの改変と共に使用した(Mali,ら(2013)Nat Methods 10(10):957-963)。VACVのライフサイクル全体が細胞質で起こるので、高忠実度Cas9タンパク質の核局在化シグナル(NLS)を除去し、CMVプロモーターの制御下の細胞質ゾルの高忠実度Cas9(Cas9HFc)を得た。Cas9HFcおよびgRNAトランスフェクションの翌日、細胞を、2%FBSを補充したDMEM高グルコース中、0.02のMOIでWTI(CAL1)ウイルスに感染させた。ウイルス感染の2時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、次いで、2μgのドナーベクター(ベクター22)でトランスフェクトした。細胞を37℃、5%CO2および加湿雰囲気で24時間インキュベートした。感染細胞と上清の混合物を採取し、ウイルス精製のため-80℃で保存した。
【0704】
ウイルス精製のため、感染細胞を解凍し、次いで、氷上で最大の強さで30秒間、3回オン/オフで超音波処理して、細胞からウイルスを放出させた。6ウェルプレート中のコンフルエントなCV-1細胞の4つの単層を、プレートあたり2μl放出ウイルスの放出ウイルスで感染させた。感染の2日後、4~5個の緑色プラーク(陽性、eGFPの発現を反映)および対照陰性プラーク(eGFPを発現していない)を2倍蛍光顕微鏡下で同定し、200μlの無血清DMEMを含有するクライオバイアルに収集し、純粋なクローンが得られるまで2~4回プラーク精製を行った。ORF_157とORF_158との間の遺伝子間領域の92塩基対を置換することによるレシピエントVACV(WT1またはCAL1)におけるloxM3→pEL→eGFP→loxM7配列の挿入を、PCRおよびサンガー配列決定によって確認し、その詳細を以下に示す。
【0705】
(2)治療遺伝子をコードする組換えウイルスの作製
Cre/loxシステムを使用して目的の遺伝子を発現する組換えワクシニアウイルスを作製する概念を、赤色蛍光タンパク質TurboFP635(上述のベクター2)をコードするドナープラスミドを使用して試験した。60~80%コンフルエントなCV-1細胞を、Creリコンビナーゼをコードする1μgのプラスミド(ベクター23)でトランスフェクトした。24時間後、細胞を0.02のMOIでレシピエントウイルスR1-VACV(上記)に感染させた。感染の2時間後、細胞をPBSで洗浄し、2μgのベクター2でトランスフェクトした。細胞質CREリコンビナーゼタンパク質の存在下では、R1-VACVおよびベクター2の対応するloxM3およびloxM7配列の間にRMCEが生じた。ウイルス感染の24時間後に組換え混合物を回収し、ウイルス精製のため-80℃で保存した。
【0706】
ウイルス精製のため、感染細胞を解凍し、次いで、氷上で最大の強さで30秒間、3回オン/オフで超音波処理して、細胞からウイルスを放出させた。6ウェルプレート中のコンフルエントなCV-1細胞の4つの単層を、プレートあたり2μl放出ウイルスの放出ウイルスで感染させた。感染の2日後、赤色プラーク(陽性、TurboFP635の発現を反映)を48hpiでの蛍光顕微鏡下で同定および選択した(緑色プラークは、形質転換されておらず、依然としてeGFPタンパク質を発現するウイルスを示す)。1回の凍結融解サイクルの後、溶解物を、2回目のプラーク精製のために6ウェルプレート中のCV-1の単層に添加した。純粋なクローンが得られるまで、プラーク精製を2~4回繰り返した。新たな組換えVACV(R1-VACV2)は、eGFPの代わりにTurboFP635蛍光タンパク質を発現する別のレシピエントウイルスとして働くことができる。CRMEを使用した組換えワクシニアウイルス作製の効率は、CRISPR/Cas9法の効率と同等またはそれより高かった。
【0707】
ORF_157とORF_158との間の遺伝子間領域の92塩基対を置換することによるレシピエントVACV(WT1またはCAL1)におけるloxM3→pEL→TurboFP635→loxM7配列の挿入を、PCRおよびサンガー配列決定によって確認し、その詳細を以下に示す。この方法を使用して、ベクター2を上記のベクター5~21の中から選択されるベクターの1つで置き換えることによって、様々な治療用タンパク質を発現する組換えワクシニアウイルスを得た。以下の表X15およびX16は、本明細書で提供されるウイルスおよびCAVESを生成するための例示的なベクターを要約する。
【0708】
【表39】

【表40】
【0709】
【表41】
【0710】
PCRおよびサンガー配列決定
レシピエントウイルスの遺伝子間遺伝子座における導入遺伝子の挿入を確認するために、プライマー対を設計して遺伝子間領域を増幅した:
リバースプライマー:5’GACGAAGAAGCAAGAGATTGTGT 3’(配列番号41)
フォワードプライマー:5’ACCGTTTCCATTACCGCCA 3’(配列番号42)。
【0711】
2つのプライマーの標的配列(相補体)は、ワクシニアウイルスのHR-左およびHR-右にそれぞれ位置する。Cre/Lox組換え前の元のウイルスからのアンプリコンは、HR左およびHR右に位置するプライマーであり得る。元の非組換えウイルスからのPCRアンプリコンは長さが230bpであり得、新しい組換えウイルスアンプリコンは、挿入された導入遺伝子のサイズに骨格からの140bpを加えたものに等しいサイズを有し得る。全ての精製クローン由来のPCR産物の配列をサンガーシーケンシング(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)によって確認した。
【0712】
実施例12
抗アポトーシス遺伝子の欠失ならびにマーカーおよび/または治療遺伝子の挿入によるCAL-01/CAL-02ウイルスの弱毒化
【0713】
CAL-01およびCAL-02ワクシニアウイルス骨格は、ウイルスF1L遺伝子をノックアウトすることによって弱毒化することができる。VACVタンパク質F1Lは、感染後早期に発現され、VACV株の間で広く保存されている26kDaのタンパク質である。F1Lは、内因性ミトコンドリアのアポトーシスの強力な阻害剤である。マーカー遺伝子(例えば、TurboFP635またはeGFP)および/または治療遺伝子をF1L遺伝子座に導入することができる。実施例8に記載されるCRISPR/Cas9HFcシステムを使用して、マーカーおよび/または治療遺伝子をコードする組換えワクシニアウイルス(VACV)を作製した。
【0714】
F1Lをコードする遺伝子は、CAL-01のORF_050(ACAM2000;GenBank:アクセッション番号:AY313847.1;配列番号70)に位置する。F1L機能を排除するために、F1L中の645bp断片(配列番号52)を除去し、loxM7-pEL-eGFP-loxM7-MCS(SphI、EcoRI、NotI、AgeI、SwaI、AflII)で置き換える(配列番号53)。
【0715】
1.F1L標的化のためのガイドRNA(ORF_50)
ORF_50中のF1Lを標的化するためのガイドRNA(gRNA)配列(配列番号54および55)を、オンラインソフトウェア(dna20.com/eCommerce/cas9/input)を使用して選択した。ガイドRNAを、レンチウイルスベクター中のU6プロモーターの制御下で構築して、レンチプラスミド(配列番号56)を得た(VectorBuilder,Inc.から取得したベクター)。
【0716】
2.F1LをeGFPで置換するドナーベクターの構築
ORF_050の左(配列番号57)および右(配列番号58)の相同領域(HR)を、ACAM2000ワクシニアウイルスゲノム配列(GenBankアクセッション番号:AY313847;配列番号70)に基づいて選択した。F1Lの代わりにeGFPを発現するVACVのためのドナーベクターを構築するために、以下のDNA断片を合成した(Genewiz,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ):
(a)529bp相同左領域(配列番号57);
(b)loxM7に隣接し、CRE/loxリコンビナーゼによって必要に応じて切除することができる、VACV初期/後期プロモータ(pEL)の制御下にある選択マーカー遺伝子(eGFP)、(loxM7-pEL-eGFP-loxM7-MCS、配列番号53);および
(c)619bpの相同な右領域(配列番号58)。
【0717】
断片を(a)→(b)→(c)の順序で(上流→下流)pUC57(アンピシリン)ベクター(配列番号73)にクローニングした。
【0718】
3.F1LをeGFPおよび抗VEGFと置換するドナーベクターの構築
F1Lの代わりにeGFPおよび抗VEGF抗体を発現するVACVのためのドナーベクターを構築するために、以下のDNA断片を合成した(Genewiz,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ):
(a)529bp相同左領域(配列番号57);
(b)(上流)VACV初期/後期プロモーター(pEL)の制御下にあり、loxM7に隣接し、CRE/loxリコンビナーゼによって必要に応じて切除することができる選択マーカー遺伝子(eGFP)、およびVACV後期プロモーター(pL)の制御下にあるVEGFに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF))(下流)(loxM7-pEL-eGFP-loxM7-pL-scAb(VEGF)、配列番号69);および
(c)619bpの相同な右領域(配列番号58)。
【0719】
断片を(a)→(b)→(c)の順序で(上流→下流)pUC57(アンピシリン)ベクター(配列番号73)にクローニングした。
【0720】
ACAM2000遺伝子座における改変の組み合わせを含む組換えウイルス
CAL-02ウイルス(ORF_157とORF_158との間に挿入された治療遺伝子を含む組換えウイルス)を、F1L遺伝子座に組換え挿入遺伝子を含むように更に改変し、接頭辞「CAL-03」で参照した。
【0721】
【表42】
【0722】
実施例13
抗インターフェロンガンマ遺伝子(B8R)の欠失ならびにマーカーおよび/または治療遺伝子の挿入によるCAL-01/CAL-02ウイルスの弱毒化
【0723】
VACV株WR遺伝子B8Rは、IFNγに結合する分泌タンパク質(B8)をコードする。タンパク質B8は、マウスおよびヒトのIFNγ受容体(IFN-R)ならびに粘液腫ウイルスタンパク質M-T7に類似しており、IFNγの可溶性アンタゴニストとして作用する。主に同じ種由来のIFNγに結合する細胞IFN-Rとは異なり、B8は、ヒト、ウシ、ラットおよびウサギのIFNγに高い親和性で結合することができ、マウスのIFNγに低い親和性で結合することができる。この例では、B8R遺伝子を欠失させ、マーカー遺伝子(TurboFP635)をその場所に導入する。B8をコードする遺伝子は、CAL-01のORF_201(ACAM2000;GenBank:アクセッション番号:AY313847.1;配列番号70)に位置する。B8R(配列番号59)中の785bp断片を欠失させ、loxP-pEL-TurboFP635-loxP-MCS(EcoRI、NotI、AgeI、SwaI、AflII)で置き換える(配列番号60)。TurboFP635発現カセットは、Cre/loxシステムを使用して必要に応じて切除することができる。
【0724】
1.B8Rを標的化するためのガイドRNA(ORF_201)
ORF_201中のB8Rを標的化するためのガイドRNA(gRNA)配列(配列番号61および62)を、オンラインソフトウェア(dna20.com/eCommerce/cas9/input)を使用して選択した。ガイドRNAを、レンチウイルスベクター中のU6プロモーターの制御下で構築して、レンチプラスミド(配列番号63)を得た(VectorBuilder,Inc.から取得したベクター)。
【0725】
2.B8RをTurboFP635で置換するドナーベクターの構築
B8Rの代わりにTurboFP635を発現するVACVのためのドナーベクターを構築するために、以下のDNA断片を合成した(Genewiz,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ):
(a)624bp相同左領域(配列番号64);
(b)loxPに隣接し、必要に応じてloxP/CREリコンビナーゼ(loxP-pEL-TurboFP635-loxP-MCS、配列番号60)によって切除することができる、VACV初期/後期プロモーター(pEL)の制御下にある選択マーカー(TurboFP635);および
(c)624bpの相同な右領域(配列番号65)。
【0726】
断片を(a)→(b)→(c)の順序で(上流→下流)pUC57(アンピシリン)ベクター(配列番号73)にクローニングした。
【0727】
実施例14
血管新生を阻害する組換え腫瘍溶解性ウイルスの操作
【0728】
血管内皮増殖因子(VEGF)、ならびにそれらの受容体(VEGFR)、およびアンジオポエチン(ANGPT)は、血管発生および血管形成において役割を果たす。VEGFは、血小板由来増殖因子ファミリーのものと同様の高度に保存された受容体結合シスチン-ノットモチーフを有する増殖因子のサブファミリーである。VEGFは、血管形成と血管新生の両方に関与するシグナル伝達タンパク質である。血管内皮増殖因子A(VEGF-A)は、元々血管透過性因子(VPF)として知られており、血管の形成を刺激する細胞によって産生されるシグナルタンパク質である。
【0729】
内皮細胞は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)のファミリーに属する3つの異なるVEGFRを発現する。それらは、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)およびVEGFR-3(Flt-4)と命名される。それらの発現は、ほぼ排他的に内皮細胞に限定されるが、VEGFR-1は単球上にも見出すことができる。全てのVEGFRは、7種の免疫グロブリン様細胞外ドメイン、単一の膜貫通領域および細胞内分割チロシンキナーゼドメインを有する。VEGFR-2は、Flt-1受容体よりもVEGFに対する親和性が低いが、シグナル伝達活性が高い。内皮細胞における分裂促進活性は主にVEGFR-2によって媒介され、それらの増殖をもたらす。
【0730】
この実施例は、抗血管新生または血管正常化遺伝子、例えばVEGFに対する一本鎖抗体をコードする組換えウイルスの構築を記載する。固形腫瘍は、一般に、免疫抑制性であり、抗腫瘍T細胞活性を損なう低酸素微小環境を生成する異常な脈管構造を特徴とする。腫瘍溶解性ウイルス(OV)は腫瘍内の血管遮断を開始することができるが、取り込み後、その後の用量のOVの取り込みおよび/または腫瘍への免疫細胞の輸送は、そのような遮断によって損なわれることができる。
【0731】
腫瘍は、VEGFなどの因子を分泌することによって低酸素誘発性の酸素および栄養素欠乏に対抗し、それによって血管新生の形態を開始するが、結果として生じる血管は、がん治療などの治療薬の腫瘍コアへの送達を妨げる構造的異常に悩まされる。VEGFなどの血管新生促進因子を阻害するか、または抗血管新生因子をアップレギュレートする分子を使用する「血管正常化」は、これらのシグナルの適切なバランスを回復させ、腫瘍血管系を修復し、それによって治療の有効性を高めることができる。したがって、本明細書で提供されるCAVES/SNV組成物で使用される組換えウイルスは、抗血管新生因子、または抗血管新生因子をアップレギュレートする因子を組換え発現するように改変することができる。
【0732】
抗血管新生因子の挿入部位は、ACAM2000ワクシニアウイルスにおいて以前に記載された位置部位(ORF157とORF158との間;実施例8を参照)であり、得られた組換えウイルスにおいて機能的ウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)を変化させることなく治療遺伝子を挿入することができる。ORF_157とORF_158との間のギャップの小さい中間断片(92bp)(271bp;配列番号3)を、目的の遺伝子によって置き換えるように選択した。以下に記載されるように、目的の遺伝子を、CRISPR/Cas9HFc(高忠実度Cas9)システムを使用してORF_157とORF_158との間のこの遺伝子間領域に導入した。VEGF、VEGFRおよび/またはANGPTを標的とする以下の血管新生阻害組換え腫瘍溶解性ウイルスを構築した。
【0733】
血管形成阻害剤および選択遺伝子(TurboFP635)を発現する組換えVACVを作製するためのドナーベクター
【0734】
(1)TurboFP635およびVEGFR-2に対する一本鎖抗体
別々のプロモーターの制御下で、マーカー遺伝子TurboFP635と共に、VEGFR-2受容体に対する一本鎖抗体(ワクシニアウイルスに対してコドン最適化)を発現させるためのドナーベクターを構築した。ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、VEGFR-2に対する一本鎖抗体の重鎖をコードするDNA(scAb(VEGFR-2)HC;配列番号77)とVEGFR-2に対する一本鎖抗体の軽鎖をコードするDNA(scAb(VEGFR-2)LC;配列番号79)をリンカー配列(配列番号78)で連結して挿入することにより構築した。scAb(VEGFR-2)組換え配列を、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列(配列番号76)をコードするDNA、検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNA、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結した。IgK-scAb(VEGFR-2)HC-Linker-scAb(VEGFR-2)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)、または代わりに後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635 →loxP →pEL→IgK→scAb(VEGFR-2)HC →Linker→scAb(VEGFR-2)LC→FLAG→ターミネーター配列(上流→下流)を含む得られたベクターをGenewiz,Inc.により合成した(配列番号81)。ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。あるいは、IgK-scAb(VEGFR-2)HC-Linker-scAb(VEGFR-2)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下で、および/またはFLAGタグなしで構築することができる。
【0735】
(2)TurboFP635およびヒトIgG1のFc部分に融合されたヒトVEGFR1およびVEGFR2の細胞外ドメインの部分を含む組換え融合タンパク質
細胞外ドメイン配列は、2つの異なるVEGFR、VEGFR-1(Flt-1としても知られている)およびVEGFR-2(KDRまたはFlk-1としても知られている)に由来する。VEGFRの各々は、それらの細胞外領域内の7つの免疫グロブリン(Ig)ドメインから構成され、Igドメイン2および3はVEGFに対する結合エネルギーの大部分に寄与する。この構築物は、血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、血管内皮増殖因子B(VEGF-B)、および血管内皮増殖因子と相同な胎盤に見られる増殖因子である胎盤増殖因子(PGF)に結合することを標的とする。VEGFR-1は、VEGF-A、VEFG-BおよびPGFの細胞表面受容体として作用し、VEGFR-2は、VEGF-Aならびに血管内皮増殖因子CおよびD(それぞれVEGF-CおよびVEGF-D)の細胞表面受容体として作用する。
【0736】
別のプロモーターの制御下で、マーカー遺伝子TurboFP635と共に、ヒトIgG1のFc部分に融合したVEGFR-1およびVEGFR-2細胞外ドメインの一部を含むワクシニアウイルスコドン最適化融合タンパク質(「融合タンパク質」)を発現させるためのドナーベクターを構築した。ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列(配列番号76)をコードするDNA、および検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNA、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結された融合タンパク質(配列番号82)をコードするDNAを挿入することにより構築した。IgK-融合タンパク質-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→融合タンパク質→FLAG→ターミネーター配列(上流→下流)を含む得られたベクターを、Genewiz,Inc.により合成した。(配列番号83)ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。あるいは、IgK-scAb(VEGF-A融合タンパク質)-FLAG-ターミネーター配列は、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下で、および/またはFLAGタグなしで構築することができる。
【0737】
(3)TurboFP635 ANGPT2に対する一本鎖抗体
ANGPT2は、アンジオポエチン1(ANGPT1)および内皮TEKチロシンキナーゼ(TIE-2、TEK)のアンタゴニストをコードする。ANGPT2は、ANGPT1の血管リモデリング能力を破壊し、内皮細胞アポトーシスを誘導することができる。
【0738】
別々のプロモーターの制御下で、マーカー遺伝子TurboFP635と共に、ANGPT2に対する一本鎖抗体(ワクシニアウイルスに対してコドン最適化)を発現させるためのドナーベクターを構築した。ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、ANGPT2に対する一本鎖抗体の重鎖をコードするDNA(scAb(ANGPT2)HC;配列番号84)とANGPT2に対する一本鎖抗体の軽鎖をコードするDNA(scAb(ANGPT2)LC;配列番号85)をリンカー配列(配列番号78)で連結して挿入することにより構築した。scAb(ANGPT2)組換え配列を、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列(配列番号76)をコードするDNA、検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNA、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結した。IgK-scAb(ANGPT2)HC-Linker-scAb(ANGPT2)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→scAb(ANGPT2)HC →Linker→scAb(ANGPT2)LC→FLAG→ターミネーター配列(上流→下流)を含む得られたベクターをGenewiz,Inc.により合成した(配列番号86)。ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。あるいは、IgK-scAb(ANGPT2)HC-Linker-scAb(ANGPT2)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下で、および/またはFLAGタグなしで構築することができる。
【0739】
(4)TurboFP635およびVEGF-Aに対する一本鎖抗体
別々のプロモーターの制御下で、マーカー遺伝子TurboFP635と共に、VEGF-Aに対する一本鎖抗体(ワクシニアウイルスに対してコドン最適化)を発現させるためのドナーベクターを構築した。ドナーベクターは、SphI制限酵素を用いてベクター1を線状化し、VEGF-Aに対する一本鎖抗体の重鎖をコードするDNA(scAb(VEGF-A)HC;配列番号87)とVEGF-Aに対する一本鎖抗体の軽鎖をコードするDNA(scAb(VEGF-A)LC;配列番号88)をリンカー配列(配列番号78)で連結して挿入することにより構築した。scAb(VEGF-A)組換え配列を、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列(配列番号76)をコードするDNA、検出を容易にするFLAGタグ(配列番号29)をコードするDNA、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結した。IgK-scAb(VEGF-A)HC-リンカー-scAb(VEGF-A)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。loxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→scAb(VEGF-A)HC →Linker→scAb(VEGF-A)LC→FLAG→ターミネーター配列(上流→下流)を含む得られたベクターをGenewiz,Inc.により合成した(配列番号89)。ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。あるいは、IgK-scAb(VEGF-A)HC-Linker-scAb(VEGF-A)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下で、および/またはFLAGタグなしで構築することができる。
【0740】
2つの一本鎖抗体および選択遺伝子(TurboFP635)をコードするドナーベクター
【0741】
(1)VEGF-Aに対する一本鎖抗体、および反対方向のANGPT2に対する一本鎖抗体
血管新生の2つの阻害剤:VEGF-Aに対する一本鎖抗体およびANGPT-2に対する一本鎖抗体(ワクシニアウイルスに最適化されたコドン)を発現するためのドナーベクターであって、それぞれ独立してpEL(配列番号74)またはpL(配列番号20)プロモーターによって制御され、マーカー遺伝子TurboFP635と共に別々のプロモーターの制御下で制御されるドナーベクターを構築した。例示的なドナーベクターは、(a)IgKシグナル配列、FLAGタグおよびターミネーター配列をコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下にあるVEGF-Aに対する一本鎖抗体(scAb(VEGF-A));ならびに(b)(a)とは反対の配向で、IgKシグナル配列、FLAGタグおよびターミネーター配列をコードするDNAに連結され、ワクシニアウイルス初期/後期プロモーター(パネル;配列番号74)の制御下にある、ANGPT2に対する一本鎖抗体(scAb(ANGPT2))をコードする。
【0742】
ドナーベクターは、SphI制限酵素を使用してベクター1を線状化し、以下を挿入することによって構築した:(1)リンカー配列(配列番号78)で連結され、更に、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列をコードするDNA(配列番号76)、検出を容易にするFLAGタグをコードするDNA(配列番号29)、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結されているVEGF-Aに対する一本鎖抗体の重鎖をコードするDNA(scAb(VEGF-A)HC;配列番号87)およびVEGF-Aに対する一本鎖抗体の軽鎖をコードするDNA(scAb(VEGF-A)LC;配列番号88);(2)リンカー配列(配列番号78)で連結され、更に、抗体の細胞分泌を促進するIgKシグナル配列をコードするDNA(配列番号76)、検出を容易にするFLAGタグをコードするDNA(配列番号29)、およびターミネーター配列(配列番号80)に連結されている、ANGPT2に対する一本鎖抗体の重鎖をコードするDNA(scAb(ANGPT2)HC;配列番号84)およびANGPT2に対する一本鎖抗体の軽鎖をコードするDNA(scAb(ANGPT2)LC;配列番号85)。IgK-scAb(VEGF-A)HC-リンカー-scAb(VEGF-A)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。IgK-scAb(ANGPT2)HC-Linker-scAb(ANGPT2)LC-FLAG-ターミネーター配列を、ワクシニアウイルスにおける発現のためにコドン最適化し(例えば、idtdna.com/CodonOpt)、ワクシニア初期/後期プロモーター(pEL;配列番号74)の制御下に置いた。IgK-scAb(VEGF-A)HC-リンカー-scAb(VEGF-A)LC-FLAG-ターミネーター配列およびIgK-scAb(ANGPT2)HC-リンカー-scAb(ANGPT2)LC-FLAG-ターミネーター配列を反対の向きに挿入した。得られたloxP→pEL→TurboFP635→loxP→pEL→IgK→scAb(VEGF-A)HC→リンカー→scAb(VEGF-A)LC→FLAG→ターミネーター←ターミネーター←FLAG←scAb(ANGPT2)LC←リンカー←scAb(ANGPT2)HC←IgK←pEL配列(上流→下流)を含むベクターをGenewiz,Inc.で合成した(配列番号90)。ベクターの配列をサンガーシーケンシングによって確認した(Retrogen,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)。TurboFP635カセットを選択遺伝子として使用することができ、loxP/CREリコンビナーゼを使用して必要に応じて切除することができる。あるいは、IgK-scAb(VEGF-A)HC-リンカー-scAb(VEGF-A)LC-FLAG-ターミネーター配列とIgK-scAb(ANGPT2)HC-リンカー-scAb(ANGPT2)LC-FLAG-ターミネーター配列の両方を、ワクシニアウイルス後期プロモーター(pL;配列番号20)の制御下で、および/またはFLAGタグなしで構築することができる。
【0743】
実施例15
CAVESはチェックポイント阻害剤の治療有効性を増強する
【0744】
この実施例は、本明細書で提供されるCAVES組成物が、併用療法として投与された場合に、チェックポイント阻害剤などの他の治療剤の治療有効性を増加させることができることを実証する。
【0745】
マウス結腸がんモデル(CT26)
結腸腫瘍を、2×106個のCT26細胞を4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に皮下注射することによって作製した。腫瘍細胞の注射の8日後、マウスを以下のように処置した:
(1)1×106 SNV-1cを腫瘍内注射(0日目);
(2)抗PD1(200ug/動物、i.p.、クローンRMP1-14、Bio X Cell)の全身投与によって処置;
(3)1×106 SNV-1cを腫瘍内注射し(0日目)、2日目に抗PD1を全身投与;または
(4)PBSで腫瘍内処置した対照マウス(処置群あたりn=8)。
【0746】
単一の腫瘍内注射について、データは、CT26腫瘍への腫瘍内注射後17日目に、対照動物が約2000mm3の平均腫瘍体積を示したことを実証した。比較すると、抗PD1での処置は、17日目に約1450mm3の平均腫瘍体積をもたらした。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行のわずかにより大きな減速をもたらし、17日目の平均腫瘍体積は約1200mm3であった。抗PD1およびSNV-1cの両方で処置したマウスは相乗的利益を示し、17日目の平均腫瘍体積は約900mm3であった。
【0747】
別の実験では、2×106個のCT26結腸がんマウス細胞を免疫正常BALB/cマウスの右側腹部に皮下注射した。腫瘍接種の10日後、マウスを抗マウスPD1(動物あたり200ug、クローンRMP1-14、Bio X細胞)と組み合わせた1×106個のCAVESまたはCAVESの単回用量で3回、2日ごとに処置した。CAVESを、0.1のMOIで幹細胞をCAL1ウイルスに感染させることによって作製し、感染の28時間後に採取した。CAVES注射の2日後に抗PD1を腹腔内投与した。以下の表のデータは、CAVES処置と組み合わせた場合に抗PD1治療有効性が増強されたことを示す。
【0748】
【表43】
【0749】
前立腺癌モデル
前立腺腫瘍を、2×106個のRM1前立腺癌細胞を4~6週の無胸腺ヌードマウスの右側腹部に皮下注射することによって作製した。腫瘍細胞の注射の20日後、マウスを以下のように処置した:
(1)1×106 SNV-1cを腫瘍内注射(0日目);
(2)抗PD1(200ug/動物、i.p.、クローンRMP1-14、Bio X Cell)の全身投与によって処置;
(3)1×106 SNV-1cを腫瘍内注射し(0日目)、2日目に抗PD1を全身投与;
(4)1×106 SNV-3cを腫瘍内注射:脂肪由来幹細胞(MOI=0.2、28時間)と共にインキュベートした1×105pfu CAL3ウイルス(実施例12を参照)
(5)1×106 SNV-3cを腫瘍内注射し(0日目)、2日目に抗PD1を全身投与;または
(6)PBSで腫瘍内注射した対照マウス(処置群あたりn=8)。
【0750】
単一の腫瘍内注射について、データは、CT26腫瘍への腫瘍内注射後10日目に、対照動物が腫瘍体積の平均約45~50倍の増加を示したことを実証した。抗PD1単独で処置した動物の腫瘍体積の平均増加倍数は、対照のものと同様であった。SNV-1cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、腫瘍体積の平均倍増加は約16倍であった。比較すると、抗PD1およびSNV-1cの両方で処置したマウスは、約24~25倍の腫瘍体積の平均倍増加を示した。
【0751】
抗血管新生因子を発現するウイルスを含有するSNV-3c組成物は、抗PD1の治療効果を高めるのにより有効であることが分かった。SNV-3cによる処置は、腫瘍進行の有意な遅延をもたらし、10日目に約12倍の腫瘍体積の平均倍増加をもたらした。抗PD1およびSNV-3cの両方で処置したマウスは、腫瘍進行のより大きな減速を示し、腫瘍体積の平均倍増加は10日目に約7倍であった。
【0752】
したがって、本明細書で提供される組成物を、有効性を高めるために、他の抗がん剤処置および薬剤、例えばチェックポイント阻害剤との併用療法で使用することができる。
【0753】
修正は当業者に明らかであるため、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されることが意図される。
【配列表】
2023166382000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物または組み合わせであって、
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、
(b)上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)と、を含み、
組成物が細胞およびウイルスの混合物であり、組み合わせが2つの別々の組成物であり、一方の組成物がウイルスを含み、他方の組成物が細胞を含む、組成物または組み合わせ。
【請求項2】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、請求項1に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項3】
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項2に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項4】
前記ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、請求項3に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項5】
腫瘍溶解性ウイルスと上外膜脂肪間質細胞が共に製剤化されている、請求項1~4のいずれかに記載の組成物または組み合わせ。
【請求項6】
腫瘍溶解性ウイルスと上外膜脂肪間質細胞が別々の組成物に存在する、請求項1~4のいずれかに記載の組成物または組み合わせ。
【請求項7】
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置するために使用するための、請求項16のいずれかに記載の組成物または組み合わせ。
【請求項8】
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、請求項7に記載の組成物または組み合わせ。
【請求項9】
対象における固形腫瘍または血液悪性腫瘍の処置に使用するための組み合わせであって、
(a)幹細胞であって、
前記幹細胞が腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記幹細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、幹細胞と、
(b)前記対象においてT細胞応答を活性化する物質であって、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む物質を含む組成物と、を含む、組み合わせ
【請求項10】
(b)において、前記物質が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含む、請求項9に記載の組み合わせ。
【請求項11】
(b)において、前記物質がPD-1経路の阻害剤を含む、請求項9に記載の組み合わせ。
【請求項12】
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、請求項911のいずれかに記載の組み合わせ
【請求項13】
がんの処置に使用するための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
担体細胞腫瘍溶解性ウイルスおよび前記ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を含み、
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、
細胞支援型ウイルス発現系。
【請求項14】
前記腫瘍溶解性ウイルスが、配列番号71に示される核酸配列またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むワクシニアウイルスである、請求項1~12のいずれかに記載の組成物または組み合わせ
【請求項15】
対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失されたまたは中断されたF1L遺伝子座を含む改変されたゲノムを含み、F1L遺伝子が発現されない、改変ACAM2000ウイルス。
【請求項16】
改変されたゲノムを含む、改変ACAM2000ウイルスであって
(a)対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;および/または
(b)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されないF1L遺伝子座;および/または
(c)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座;および/または
(d)オープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;および/または
(e)以下の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の1つ以上における少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)、
を含む、改変ACAM2000ウイルス。
【請求項17】
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子を含む、請求項16に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項18】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
請求項17に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項19】
以下の1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175に少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、前記1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の前記切断型領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を更に含む、請求項15に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項20】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
請求項19に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項21】
前記対応する未改変ACAM2000が、配列番号70または配列番号71に示される核酸配列を含む、請求項1520のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項22】
応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子;および/または
対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つのマーカー遺伝子、
を含む、請求項15~21のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項23】
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択され
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
請求項22に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項24】
チミジンキナーゼ(TK)、赤血球凝集素(HA)、インターフェロンアルファ/ベータ遮断薬受容体または免疫調節物質の中から選択される少なくとも1つの不活性化遺伝子を更に含む、請求項1523のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項25】
EEV(細胞外エンベロープウイルス)産生を増強するために更に改変されている、請求項1524のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項26】
EEV産生増強のための更なる改変が、A34Rタンパク質をコードする遺伝子における突然変異である、請求項25に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【請求項27】
前記突然変異が、突然変異K151Eを含むA34Rタンパク質をコードする、請求項26に記載の改変ACAM2000ウイルス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
そのような処置を必要とする対象に本明細書で提供される系を投与することを含む処置の方法も本明細書で提供される。この系は、単独で、または例えば、限定されるものではないが、チェックポイント阻害剤、CAR-T細胞、共刺激分子、治療用抗体、二重抗体(bi-antibodies)および抗体-薬物コンジュゲートを含む他の免疫腫瘍療法などと組み合わせて投与することができる。
さらに、下記項に記載ものが本明細書で提供される:
[項1]
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルスではなく、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、腫瘍細胞または免疫細胞ではなく、かつ
前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされ、前記ウイルスと前記担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現する、細胞支援型ウイルス発現系。
[項2]
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、麻疹ウイルスではなく、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる幹細胞であり、かつ
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現する、細胞支援型ウイルス発現系。
[項3]
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性および/または免疫特権特性を増強するために処理もしくは改変されているか、またはその両方であり、かつ任意に、前記細胞が、細胞におけるウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、細胞支援型ウイルス発現系。
[項4]
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記腫瘍溶解性ウイルスが、アデノウイルスではなく、
前記担体細胞が、幹細胞であり、
前記担体細胞が、ウイルスによってコードされ、ウイルスと担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、かつ
前記担体細胞が前記腫瘍溶解性ウイルスに感染した後、腫瘍溶解性ウイルスが6時間以上インキュベートされた、細胞支援型ウイルス発現系。
[項5]
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項4に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項6]
ウイルスを含有する前記担体細胞が、0.001~10の感染多重度(MOI)で前記細胞を感染させることによって産生された、上記項4または上記項5に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項7]
凍結保存される、上記項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項8]
少なくとも24時間冷蔵された、上記項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項9]
前記組成物の温度が、-20℃~-80℃または約-20℃~約-80℃である、上記項1~6のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項10]
5℃~-200℃の温度で少なくとも24時間保存されており、前記担体細胞が約100または50または10未満のウイルス粒子を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、上記項1~7のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項11]
約-80℃~-200℃またはその間の温度で少なくとも24時間保存されている、上記項7、9および10のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項12]
ウイルスが、TK+であるワクシニアウイルスである、上記項1~11のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項13]
ウイルスが弱毒化されている、上記項1~11のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項14]
担体細胞を含む細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)であって、
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記担体細胞が、前記ウイルスが複製することができる細胞であり、
前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされ、前記ウイルスと前記担体細胞との会合によって発現される少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現し、かつ
前記CAVESが、凍結保存されているか、または凍結保護剤を含有する組成物中にある、細胞支援型ウイルス発現系。
[項15]
前記ウイルスがアデノウイルスではない、上記項14に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項16]
前記組成物の温度が、ちょうどまたは約-200℃~-20℃である、上記項14または上記項5に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項17]
CAVESが、凍結保存のためのDMSOおよびグリセロールの一方または両方を含む組成物中にある、上記項7または上記項14に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項18]
腫瘍溶解性ウイルスを有する前記担体細胞が、わずか最大10個のウイルス粒子/細胞の感染多重度(MOI)で前記細胞を前記ウイルスに感染させることによって産生される、上記項1~14のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項19]
前記MOIが0.001~10である、上記項18に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項20]
前記MOIが、少なくとも0.1または少なくとも0.3または少なくとも0.5である、上記項19に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項21]
前記担体細胞が、約900または約1000コピーから約10,0000または約11,000コピーまでの前記腫瘍溶解性ウイルスゲノムを含む、上記項1~19のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項22]
100未満のウイルスゲノム/細胞を含む、上記項1~19のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項23]
5℃~-200℃の温度で少なくとも24時間保存されており、前記担体細胞が、約900または約1000コピーから約10,0000または約11,000コピーまでの前記腫瘍溶解性ウイルスゲノムを含む、上記項1~22のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項24]
前記担体細胞が約100または50または10未満のウイルス粒子を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、上記項1~23のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項25]
前記担体細胞が1から200未満のウイルス粒子/細胞を含有し、前記ウイルス粒子の数が、前記細胞を超音波処理し、プラーク形成単位を測定することによって評価され得る、上記項1~24のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項26]
前記担体細胞が、1個から200個未満のウイルス粒子/細胞を含有する、上記項1~24のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項27]
前記細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、
および/または前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
上記項1、2、および7~26のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項28]
前記細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、ならびに
前記細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理または改変されている、
上記項1~27のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項29]
前記担体細胞が、腫瘍溶解性ウイルス増幅に許容性であり、腫瘍内で蓄積する、および/またはウイルスを対象の腫瘍に送達するのに十分な時間、前記対象の免疫系によって認識されない、上記項1~28のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項30]
前記担体細胞が、処理または改変された幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞から選択される、上記項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項31]
前記担体細胞が胚性上皮細胞または線維芽細胞である、上記項1~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項32]
前記担体細胞が免疫細胞である、上記項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項33]
前記免疫細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、上記項32に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項34]
前記担体細胞が、血液悪性腫瘍細胞株からの改変細胞または処理細胞である、上記項3~29のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項35]
前記細胞株が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、上記項34に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項36]
前記担体細胞が幹細胞である、上記項1~32のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項37]
前記幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される、上記項36に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項38]
前記幹細胞が間葉系細胞から選択される、上記項36に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項39]
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、上記項38に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項40]
前記細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞、成体骨髄細胞および間葉系幹細胞の中から選択される、上記項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項41]
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、上記項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項42]
前記間葉系幹細胞が脂肪間質細胞から単離される、上記項41に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項43]
担体細胞が脂肪間質細胞を含む、上記項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項44]
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されたMSCである、上記項1~36のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項45]
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、上記項1~44のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項46]
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、上記項1~45のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項47]
前記間葉系細胞が脂肪間質細胞に由来する、上記項38に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項48]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、上記項1~47のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項49]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、上記項1~48のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項50]
前記担体細胞および腫瘍溶解性ウイルスが、対象への投与前または保存前に、前記ウイルスによってコードされる前記免疫調節性もしくは治療用タンパク質が発現されるのに十分な時間、および/または前記ウイルスが少なくとも1回の複製サイクルを経るのに十分な時間、インビトロで共培養される、上記項1~49のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項51]
前記担体細胞およびウイルスが、腫瘍溶解性ウイルス免疫調節タンパク質が発現され、前記ウイルスが少なくとも1回の複製サイクルを経るのに十分な時間共培養される、上記項50に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項52]
前記細胞が、処置される前記対象にとって自家である、上記項1~51のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項53]
前記細胞が、処置される前記対象に対して同種異系である、上記項1~51のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項54]
前記ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マラバウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、上記項1~53のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項55]
前記ウイルスが麻疹ウイルスである、上記項1および3~54のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項56]
前記ウイルスがレトロウイルスである、上記項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項57]
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、上記項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項58]
前記ワクシニアウイルスがTK+である、上記項57に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項59]
前記ウイルスが弱毒化されている、上記項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項60]
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、上記項54に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項61]
前記ウイルスがACAM1000またはACAM2000である、上記項60に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項62]
前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質の発現が、前記ウイルスが前記担体細胞に感染後、前記ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または治療用タンパク質が発現される、または前記担体細胞が増殖することができる、もしくは前記ウイルスが複製することができる条件下で、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58または59時間超インキュベートすることによって達成された、上記項1~57のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項63]
前記ウイルスにコードされる免疫調節タンパク質および/または治療用タンパク質の発現が、前記担体細胞を感染後6時間または6時間超にわたって前記ウイルスと共にインキュベートすることによって達成された、上記項62に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項64]
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項63に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項65]
前記ウイルスを有する前記担体細胞を、前記タンパク質の発現および前記ウイルスの複製に十分な時間、感染後にインキュベートした、上記項1~62のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項66]
インキュベーション後、前記ウイルスを含有する前記担体細胞を-5℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、上記項62または上記項60に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項67]
前記CAVESまたは前記CAVESを含有する組成物を-5℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、上記項1~66のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項68]
前記CAVESまたは前記CAVESを含有する組成物を-80℃~-200℃で少なくとも24時間保存した、上記項1~66のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項69]
前記ウイルスが、前記担体細胞表面に提示される免疫調節タンパク質を発現する、上記項1~68のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項70]
前記免疫調節性ウイルスタンパク質が、VCP(C3L)、B5R、HA(A56R)、B18R/B19RおよびB8Rの中から選択される、上記項61に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項71]
前記担体細胞が、脂肪間質細胞からの間葉系細胞である幹細胞であり、
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであり、かつ
前記ウイルスを含む前記担体細胞が、前記ウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質もしくは治療用タンパク質が発現される条件下、または前記担体細胞が増殖することができる、もしくは前記ウイルスが複製することができる条件下で前記細胞を前記ウイルスと6時間以上インキュベートすることによって産生された、
上記項1~69のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項72]
前記インキュベーションを、6時間~翌日まで、24時間まで、26時間まで、3時間まで、3日間まで、4日間まで、5日間まで、または6時間~1週間の間の任意の時間実施した、上記項71に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項73]
前記条件が、約25℃~40℃の温度での細胞培養培地中でのインキュベーションを含む、上記項62~71のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項74]
前記ウイルスが、上記項280~310のいずれかに記載のものの中から選択されるワクシニアウイルスである、上記項1~73のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項75]
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスから選択されるワクシニアウイルスであり、
a)配列番号71に示される核酸配列またはそれと少なくとも95%の配列同一性を有する配列と、
b)対応するワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子または検出可能なマーカー遺伝子と、
c)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されない遺伝子座と、
d)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座と、
e)以下の1つ以上の改変:
(i)対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子、
(ii)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されない遺伝子座、および/または
(ii)対応する未改変ワクシニアウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座と
を含む、上記項1~73のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項76]
前記対応する未改変ワクシニアウイルスが、配列番号70または配列番号71に示される核酸配列を含む、上記項75a)~e)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項77]
前記改変が、対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の前記遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子を含む、上記項75b)、e)および上記項76のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項78]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、上記項77に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項79]
前記治療遺伝子が、OX40LまたはCD40Lである共刺激因子である、上記項78に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項80]
前記改変が、対応する未改変ワクシニアウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の前記遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、上記項75b)およびe)、ならびに上記項76~78のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項81]
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、上記項80に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項82]
前記改変が、対応する未改変ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であるため、B8R遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
上記項75d)~f)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項83]
前記改変が、対応する未改変ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であるため、F1L遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
上記項75c)、e)、およびf)のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項84]
少なくとも1つの治療遺伝子をコードする、上記項82または上記項83に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項85]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、上記項84に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項86]
少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、上記項82~85のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項87]
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、上記項86に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項88]
少なくとも1つの治療遺伝子が抗がん抗体である、上記項75b)およびf)ならびに上記項76~87のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項89]
前記抗がん抗体が抗VEGF抗体または抗CTLA-4抗体である、上記項88に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項90]
前記抗がん抗体が一本鎖抗体である、上記項88または上記項89に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項91]
前記抗体の分泌を促進するためのIgKシグナルペプチドをコードする核酸を更に含む、上記項88~90のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項92]
前記抗体の検出を容易にするためのFLAGタグをコードする核酸を更に含む、上記項88~91のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項93]
前記ウイルスが、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)、OX40Lおよび4-IBBLの中から選択される治療用生成物および/または検出可能なマーカー遺伝子をコードする遺伝子を含む、上記項75b)およびe)ならびに上記項76~87のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項94]
前記未改変ワクシニアウイルスがACAM2000またはACAM1000である、上記項74および76~93のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項95]
前記未改変ワクシニアウイルスがACAM2000である、上記項94に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項96]
前記細胞が、前記組成物が投与される対象の腫瘍に由来する、上記項3~75のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項97]
治療用生成物をコードする、上記項96に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項98]
前記治療用生成物が、サイトカイン、ケモカイン、共刺激因子、プロドラッグ活性化因子、および治療用抗体のうちの1つ以上である、上記項97に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項99]
前記治療用生成物が、GM-CSF、IL2、IL10、IL12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、TNF、MIP1a、FLt3L、IFN-b、IFN-g、CCl5、CCl2、CCl19、CXCl11、OX40L、41BBL、CD40L、B7.1/CD80、GITRL、LIGHT、CD70、BITE、ならびにVEGFA、VEGFB、PGF、VEGFR2、PDGFR、Ang-1、Ang-2、ANGPT1、ANGPT2、HGF、lacZ、シトシンデアミナーゼ酵素、およびヒトナトリウム・ヨウ素共輸送体に対する一本鎖抗体のうちの1つ以上である、上記項98に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項100]
前記治療用生成物が免疫チェックポイント阻害剤である、上記項98に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項101]
前記免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、またはLAG-3に対する抗体である、上記項100に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項102]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、血管新生を阻害または減少させる治療用生成物をコードする、上記項1~96のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項103]
前記コードされた治療用生成物が、ヒトIgG1のFc部分、抗アンジオポエチン-2(ANGPT)一本鎖抗体、およびそれらの組み合わせに、任意に直接または間接的に連結されている、抗VEGFもしくは抗VEGFR一本鎖抗体、VEGFRまたはその細胞外ドメインの中から選択される、上記項97に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項104]
薬学的に許容される媒体中に上記項1~103のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を含む医薬組成物。
[項105]
凍結保存される、上記項104に記載の医薬組成物。
[項106]
希釈せずに直接投与するために製剤化される、上記項104または上記項105に記載の医薬組成物。
[項107]
単回投与量として製剤化される、上記項104~106のいずれかに記載の医薬組成物。
[項108]
前記薬学的に許容される媒体が非経口投与に適している、上記項104~107のいずれかに記載の医薬組成物。
[項109]
腫瘍内、腹腔内、静脈内、皮下、経口、粘膜、または直腸投与用に製剤化される、上記項104~108のいずれかに記載の医薬組成物。
[項110]
全身投与用に製剤化される、上記項104~109のいずれかに記載の医薬組成物。
[項111]
前記ウイルスが、前記担体細胞表面に提示される免疫調節タンパク質を発現する、上記項1~103のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項112]
前記ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項111に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項113]
前記免疫調節性ウイルスタンパク質が、VCP(C3L)、B5R、HA(A56R)、B18R/B19RおよびB8Rの中から選択される、上記項111または上記項112に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項114]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、腫瘍溶解性のワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レンチウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、マラバウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、上記項1~110のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項115]
前記ウイルスが治療用生成物をコードする、上記項1~114のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項116]
前記治療用生成物がポリペプチドまたは核酸である、上記項115に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項117]
前記治療用生成物がポリペプチドである、上記項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項118]
前記治療用生成物が二本鎖RNAである核酸である、上記項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項119]
前記細胞がT細胞である、上記項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項120]
前記治療用生成物が抗がん剤である、上記項116に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項121]
前記治療用生成物が抗体またはその抗原結合断片である、上記項115~120のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項122]
前記治療用生成物が、抗CTLA4、抗PD-1もしくは抗PD-L1抗体またはその抗原結合断片である、上記項121に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項123]
前記治療用生成物が、免疫チェックポイント阻害剤または免疫経路を調節する生成物である、上記項115~121のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項124]
凍結保存組成物中にある、上記項1~123のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項125]
前記凍結保存組成物が、1つ以上のグリセロール、DMSOまたは他の凍結保存剤を含む、上記項124に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項126]
上記項1~103および111~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)またはそれらの複数を含む医薬組成物。
[項127]
非経口投与用に製剤化される、上記項126に記載の医薬組成物。
[項128]
局所投与または全身投与のために製剤化される、上記項126に記載の医薬組成物。
[項129]
経口、静脈内、腫瘍内、直腸、皮下または粘膜投与用に製剤化される、上記項126~128のいずれかに記載の医薬組成物。
[項130]
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置する方法であって、上記項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を投与すること、または上記項126~129のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
[項131]
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置する方法であって、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させることと、
b)前記ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を産生するのに十分な時間、細胞が増殖するおよび/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスとインキュベートまたは共培養することと、
c)前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置するために、前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を前記対象に投与することと、を含む、方法。
[項132]
前記MOIが、0.001~10、または0.1~10、または0.1、または0.3未満、または0.1未満、または0.5未満である、上記項131に記載の方法。
[項133]
前記担体細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれを超えてインキュベートまたは共培養される、上記項130~132のいずれかに記載の方法。
[項134]
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養する、上記項130~133のいずれかに記載の方法。
[項135]
前記細胞およびウイルスが、少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、もしくは7日間、インキュベートまたは共培養される、上記項130~134のいずれかに記載の方法。
[項136]
前記細胞およびウイルスをインキュベーションまたは共培養した後、得られた細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を保存する、上記項130~135のいずれかに記載の方法。
[項137]
保存が、-5℃~-200℃の温度で、または冷蔵庫内で、または液体窒素もしくはCO2中で実施される、上記項136に記載の方法。
[項138]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が凍結保存される、上記項136または137に記載の方法。
[項139]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が少なくとも24時間保存される、上記項136~138のいずれかに記載の方法。
[項140]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12年またはそれより長く保存される、上記項136~139のいずれかに記載の方法。
[項141]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、インキュベーションまたは共培養(工程b)後および投与(工程c)前に保存される、上記項131~140のいずれかに記載の方法。
[項142]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、約またはちょうど-5℃~-200℃の温度で冷蔵または凍結または保存される、上記項130~141のいずれかに記載の方法。
[項143]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、約-80℃~-200℃の温度で保存されるか、または液体窒素もしくはCO2中で保存される、上記項142に記載の方法。
[項144]
前記担体細胞が免疫細胞ではなく、および/または腫瘍細胞ではない、上記項130~143のいずれかに記載の方法。
[項145]
前記担体細胞が、免疫細胞、または腫瘍細胞、または腫瘍細胞株、または幹細胞である、上記項130~143のいずれかに記載の方法。
[項146]
前記担体細胞が幹細胞である、上記項130~145のいずれかに記載の方法。
[項147]
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するために処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、ならびに/または
前記担体細胞が、前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するように処理および/または改変されている、上記項130~146のいずれかに記載の方法。
[項148]
前記担体細胞が、幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される処理または改変された担体細胞から選択される、上記項130~147のいずれかに記載の方法。
[項149]
前記担体細胞が胚性上皮細胞または線維芽細胞である、上記項130~147のいずれかに記載の方法。
[項150]
前記担体細胞が免疫細胞である、上記項130~147のいずれかに記載の方法。
[項151]
前記担体細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、上記項130~147のいずれかに記載の方法。
[項152]
前記担体細胞が、血液悪性腫瘍細胞株からの改変細胞または処理細胞であり、前記細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するために、および/または前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するために、処理もしくは改変されている、または処理および改変の両方がされている、上記項130~147のいずれかに記載の方法。
[項153]
前記担体細胞が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、上記項130~152のいずれかに記載の方法。
[項154]
前記担体細胞が幹細胞である、上記項130~152のいずれかに記載の方法。
[項155]
前記幹細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される幹細胞である、上記項130~154に記載の方法。
[項156]
幹細胞が間葉系細胞から選択される、上記項155に記載の方法。
[項157]
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、上記項156に記載の方法。
[項158]
前記担体細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞および成体骨髄細胞、間葉系幹細胞の中から選択される、上記項130~157のいずれかに記載の方法。
[項159]
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、および筋サテライト細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、上記項130~158のいずれかに記載の方法。
[項160]
間葉系幹細胞が脂肪間質細胞から単離される、上記項159に記載の方法。
[項161]
前記担体細胞が脂肪間質細胞を含む、上記項130~160のいずれかに記載の方法。
[項162]
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されるMSCである、上記項130~161のいずれかに記載の方法。
[項163]
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、上記項130~162のいずれかに記載の方法。
[項164]
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、上記項130~163のいずれかに記載の方法。
[項165]
前記間葉系細胞が脂肪間質細胞に由来する、上記項164に記載の方法。
[項166]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、上記項130~164のいずれかに記載の方法。
[項167]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、上記項130~166のいずれかに記載の方法。
[項168]
前記細胞が、処置される対象に対して同種異系である、上記項130~167のいずれかに記載の方法。
[項169]
前記細胞が、処置される対象に対して自家である、上記項130~167のいずれかに記載の方法。
[項170]
前記ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、マラバウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルスおよびシンドビスウイルスの中から選択される、上記項130~169のいずれかに記載の方法。
[項171]
前記ウイルスが麻疹ウイルスである、上記項170に記載の方法。
[項172]
前記ウイルスがレンチウイルスであるレトロウイルスである、上記項170に記載の方法。
[項173]
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、上記項170に記載の方法。
[項174]
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、上記項170に記載の方法。
[項175]
前記ウイルスがACAM1000またはACAM2000である、上記項174に記載の方法。
[項176]
前記ウイルスがワクシニアウイルスであり、
前記担体細胞が脂肪間質細胞由来の幹細胞である、
上記項130~175のいずれかに記載の方法。
[項177]
前記CAVESが、前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質を発現する、上記項130~176のいずれかに記載の方法。
[項178]
前記がんが固形腫瘍を含む、上記項130~177のいずれかに記載の方法。
[項179]
前記がんが血液悪性腫瘍である、上記項130~177のいずれかに記載の方法。
[項180]
前記対象が、肺がん、膵がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、白血病、リンパ腫および腎臓がんの中から選択される固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを有する、上記項130~179のいずれかに記載の方法。
[項181]
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、上記項180に記載の方法。
[項182]
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、上記項130~181のいずれかに記載の方法。
[項183]
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、上記項182に記載の方法。
[項184]
前記産物が抗体またはその抗原結合部分である、上記項183に記載の方法。
[項185]
前記対象がヒトである、上記項130~184のいずれかに記載の方法。
[項186]
前記対象が非ヒト動物である、上記項130~184のいずれかに記載の方法。
[項187]
前記対象が、農場または動物園の動物である、上記項130~184のいずれかに記載の方法。
[項188]
前記対象がイヌまたはネコである、上記項130~184のいずれかに記載の方法。
[項189]
前記対象が、ウシ、ウマ、ヤギ、ラバ、シマウマ、キリン、ゴリラ、ボノボ、ロバ、ブタ、ラマ、チンパンジーまたはアルパカである、上記項187に記載の方法。
[項190]
前記対象が小児ヒトである、上記項130~185のいずれかに記載の方法。
[項191]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が腫瘍内、静脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、関節内、または眼内注射によって投与される、上記項130~190のいずれかに記載の方法。
[項192]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が筋肉内または皮下投与によって投与される、上記項130~190のいずれかに記載の方法。
[項193]
別の抗がん処置または治療を施すことを含む、上記項130~192のいずれかに記載の方法。
[項194]
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、上記項193に記載の方法。
[項195]
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を施すことを含む、上記項194に記載の方法。
[項196]
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を施すことを含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、上記項130~195のいずれかに記載の方法。
[項197]
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、上記項196に記載の方法。
[項198]
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、上記項196または上記項197に記載の方法。
[項199]
前記処置がPD-1経路の阻害剤の投与を含む、上記項196~198のいずれかに記載の方法。
[項200]
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、上記項199に記載の方法。
[項201]
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、上記項199に記載の方法。
[項202]
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を投与することを含む、上記項196~198のいずれかに記載の方法。
[項203]
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、上記項196~198のいずれかに記載の方法。
[項204]
共刺激分子に対するアゴニスト抗体を投与することを含む処置を含む、上記項130~203のいずれかに記載の方法。
[項205]
前記共刺激分子が、CD28、OX40、CD40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、上記項204に記載の方法。
[項206]
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、上記項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または上記項126~129のいずれかに記載の医薬組成物。
[項207]
対象において、固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、上記項1~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または上記項126~129のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
[項208]
上記項206または上記項207に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用であって、前記細胞支援型ウイルス発現系が、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させること;および
b)前記腫瘍溶解性ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して前記CAVESを産生するのに十分な時間にわたって細胞が増殖および/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記腫瘍溶解性ウイルスと共にインキュベートまたは共培養すること、によって製造される、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項209]
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、上記項208に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項210]
前記担体細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上の時間インキュベートまたは共培養することによって製造された、上記項206~209のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項211]
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養した、上記項206~210のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項212]
前記細胞およびウイルスを少なくともまたは最大1、2、3、4、5、6、または7日間、インキュベートまたは共培養した、上記項206~211のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項213]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が使用のために保存される、上記項206~212のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項214]
前記保存が、-5℃~-200℃の温度で、または冷蔵庫で、または液体窒素もしくはCO2中で行われる、上記項213に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項215]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が凍結保存される、上記項213または214に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項216]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が少なくとも24時間保存される、上記項213~215のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項217]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月間、または最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12年もしくはそれ以上にわたって保存される、上記項213~216のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項218]
前記得られる細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、前記担体細胞と前記腫瘍溶解性ウイルスとのインキュベーション後に保存される、上記項213~217のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項219]
前記細胞が、約またはちょうど-5℃~-200℃の温度で保存または冷蔵または凍結される、上記項206~218のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項220]
前記細胞が、約-80℃~-200℃の温度で保存されるか、または液体窒素もしくはCO2中で保存される、上記項219に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項221]
前記担体細胞が免疫細胞および/または腫瘍細胞ではない、上記項206~220のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項222]
前記担体細胞が、免疫細胞、または腫瘍細胞、または腫瘍細胞株、または幹細胞である、上記項206~220のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項223]
前記担体細胞が幹細胞である、上記項206~222のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項224]
前記担体細胞が、ヒト対象に投与するために前記細胞の免疫抑制特性または免疫特権特性を増強するように、処理もしくは改変される、または処理および改変の両方がされる、ならびに/または
前記担体細胞が、前記細胞内の前記ウイルスの増幅を増強するように処理および/または改変されている、
上記項206~223のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項225]
前記担体細胞が、幹細胞、免疫細胞および腫瘍細胞の中から選択される処理または改変された細胞から選択される、上記項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項226]
前記担体細胞が、胚性上皮細胞または線維芽細胞である、上記項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項227]
前記担体細胞が免疫細胞である、上記項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項228]
前記担体細胞が、顆粒球、肥満細胞、単球、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球、腫瘍特異的抗原を標的化するT細胞受容体(TCR)トランスジェニック細胞、および腫瘍特異的抗原を標的化するCAR-T細胞の中から選択される、上記項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項229]
前記担体細胞が、ヒト対象への投与のための前記細胞の免疫抑制特性もしくは免疫特権特性を増強するために、および/または前記細胞における前記ウイルスの増幅を増強するために、処理もしくは改変されているか、または処理および改変の両方されている、血液悪性腫瘍細胞株に由来する改変もしくは処理された細胞である、上記項206~224のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項230]
前記担体細胞が、ヒト白血病、T細胞白血病、骨髄単球性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、赤白血病、骨髄単芽球性白血病、悪性非ホジキンNKリンパ腫、骨髄腫/形質細胞腫、多発性骨髄腫およびマクロファージ細胞株の中から選択される細胞株である、上記項206~229のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項231]
前記担体細胞が幹細胞である、上記項206~229のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項232]
前記担体細胞が、成体幹細胞、胚性幹細胞、胎児幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、全能性幹細胞、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞、複能性幹細胞、少能性幹細胞、単能性幹細胞、脂肪間質幹細胞、内皮幹細胞(例えば、内皮前駆細胞、胎盤内皮前駆細胞、血管新生内皮細胞、周皮細胞)、成体末梢血幹細胞、筋芽細胞、小型幼若幹細胞、皮膚線維芽細胞幹細胞、組織/腫瘍関連線維芽細胞、上皮幹細胞、および胚性上皮幹細胞の中から選択される幹細胞である、上記項206~231のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項233]
前記幹細胞が間葉系細胞から選択される、上記項232に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項234]
前記間葉系細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離される/それに由来する、上記項233に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項235]
前記担体細胞が、内皮前駆細胞、神経幹細胞、成体骨髄細胞および間葉系幹細胞の中から選択される、上記項206~234のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項236]
前記細胞が、成体骨髄、脂肪組織、血液、歯髄、新生児臍帯、臍帯血、胎盤の間葉系細胞、胎盤由来接着性間質細胞、胎盤由来脱落膜間質細胞、子宮内膜再生細胞、胎盤二能性内皮/間葉系前駆細胞、羊膜または羊水間葉系幹細胞、羊水由来前駆細胞、ホウォートンゼリー間葉系幹細胞、骨盤帯幹細胞、絨毛膜絨毛間葉系間質細胞、皮下白色脂肪間葉系幹細胞、周皮細胞、洞周囲細網細胞、毛包由来幹細胞、造血幹細胞、骨膜由来間葉系幹細胞、側板間葉系幹細胞、脱落乳歯幹細胞、歯根膜幹細胞、歯小嚢前駆細胞、歯乳頭由来幹細胞、筋サテライト細胞、および他のそのような細胞から単離されるまたはそれに由来する間葉系幹細胞である、上記項206~235のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項237]
前記間葉系幹細胞が、脂肪間質細胞から単離される、上記項236に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項238]
前記担体細胞が脂肪間質細胞を含む、上記項206~237のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項239]
前記細胞が、臍帯血、末梢血、筋肉、軟骨もしくは羊水、またはそれらの混合物から単離されたMSCである、上記項206~238のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項240]
前記担体細胞が、脂肪間質細胞の間質血管細胞群(SVF)に由来する、上記項206~239のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項241]
前記細胞が、上外膜脂肪間質細胞を培養してAD-MSCを産生することによる、前記上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する幹細胞である、上記項206~240のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項242]
前記間葉系幹細胞が、脂肪間質細胞に由来する、上記項241に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項243]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、上記項206~240のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項244]
前記担体細胞が、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する脂肪培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)である、上記項206~243のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項245]
前記細胞が処置される対象に対して同種異系である、上記項206~244のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項246]
前記細胞が処置される対象に対して自家である、上記項206~244のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項247]
ウイルスが、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レオウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、コクサッキーウイルス、セムリキ森林ウイルス、セネカバレーウイルス、ニューカッスル病ウイルス、センダイウイルス、デングウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、パルボウイルス、レトロウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ラブドウイルス、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、テナガザル白血病ウイルス、およびシンドビスウイルスの中から選択される、上記項206~246のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項248]
前記ウイルスが、麻疹ウイルスである、上記項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項249]
前記ウイルスが、レンチウイルスであるレトロウイルスである、上記項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項250]
前記ウイルスが、ワクシニアウイルスであるポックスウイルスである、上記項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項251]
前記ウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、上記項247に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項252]
前記ウイルスが、ACAM1000またはACAM2000である、上記項251に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項253]
前記ウイルスのゲノムが、配列番号70または71に示されるヌクレオチドの配列を含む、上記項252に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項254]
前記ウイルスがワクシニアウイルスであり、かつ
前記担体細胞が脂肪間質細胞由来の幹細胞である、
上記項206~252のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項255]
前記担体細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートし、前記インキュベーションを、前記ウイルスが前記細胞に感染し、コードされたタンパク質を発現する条件下で行う、上記項254に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項256]
前記インキュベーションが、10、12、14、16または20時間以下である、上記項255に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項257]
前記CAVESが前記ウイルスによってコードされる免疫調節タンパク質を発現する、上記項206~254のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項258]
前記がんが固形腫瘍を含む、上記項206~257のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項259]
前記がんが血液悪性腫瘍である、上記項206~258のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項260]
前記処置される対象が、肺がん、膵がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、白血病、リンパ腫および腎臓がんの中から選択される固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを有する、上記項206~259のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項261]
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、上記項259に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項262]
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、上記項206~261のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項263]
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、上記項262に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項264]
前記産物が抗体またはその抗原結合部分である、上記項262または上記項187に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項265]
前記処置される対象がヒトである、上記項193~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項266]
前記処置される対象が非ヒト動物である、上記項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項267]
前記処置される対象が、農場または動物園の動物である、上記項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項268]
前記処置される対象が、イヌまたはネコである、上記項206~264のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項269]
前記処置される対象が、ウシ、ウマ、ヤギ、ラバ、シマウマ、キリン、ゴリラ、ボノボ、ロバ、ブタ、ラマ、チンパンジー、またはアルパカである、上記項187に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項270]
前記処置される対象が小児ヒトである、上記項206~265のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項271]
前記CAVESが、腫瘍内、静脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、関節内、または眼内注射による投与用である、上記項206~270のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項272]
前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)が、筋肉内または皮下投与用である、上記項206~270のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項273]
別の異なる抗がん処置または治療と組み合わせた、上記項206~272のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項274]
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、上記項209に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項275]
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を含む、上記項274に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項276]
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、上記項206~275のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項277]
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含む、上記項276に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項278]
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3から選択される陰性共刺激分子に対するものである、上記項276または上記項213に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項279]
前記処置がPD-1経路の阻害剤を含む、上記項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項280]
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、上記項279に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項281]
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、上記項279に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項282]
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を含む、上記項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項283]
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する抗体を遮断することを含む、上記項276~278のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項284]
共刺激分子、CAR-Tおよび/またはTILに対するアゴニスト抗体を含む処置を含む、上記項206~283のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項285]
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD40、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、上記項284に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項286]
配列番号71に示されるヌクレオチドの配列を有するゲノムを含む、ワクシニアウイルス。
[項287]
対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子を含む、改変ACAM2000ウイルス。
[項288]
対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失されたまたは中断されたF1L遺伝子座を含み、F1L遺伝子が発現されない、改変ACAM2000ウイルス。
[項289]
対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失されたまたは中断されたB8R遺伝子座を含み、B8R遺伝子が発現されない、改変ACAM2000ウイルス。
[項290]
以下の1つ以上の改変を含む、改変ACAM2000ウイルス:
(a)対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;
(b)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であって、F1L遺伝子が発現されないF1L遺伝子座;および/または
(c)対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であって、B8R遺伝子が発現されない遺伝子座。
[項291]
対応する未改変ACAM2000ウイルスにおいて、以下の1つ以上の改変を含む、改変ACAM2000ウイルス:
オープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子;および/または
以下の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の1つ以上における少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)。
[項292]
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム174(ORF_174)とオープンリーディングフレーム175(ORF_175)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子またはマーカー遺伝子を含む、上記項291に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項293]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
上記項292に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項294]
以下の1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175に少なくとも1つの切断型オープンリーディングフレーム(ORF)を含み、前記1つ以上の遺伝子座:ORF72、ORF73、ORF156、ORF157、ORF158、ORF159、ORF160、ORF174およびORF175の前記切断型領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を更に含む、上記項291に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項295]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管形成阻害剤の中から選択され;
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、
上記項294に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項296]
前記対応する未改変ACAM2000が、配列番号70または配列番号71に示される核酸配列を含む、上記項287~295のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項297]
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子を含む、上記項287、290、または296に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項298]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光感作薬、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、上記項297に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項299]
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスのオープンリーディングフレーム157(ORF_157)とオープンリーディングフレーム158(ORF_158)との間の遺伝子間領域に挿入された少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、上記項287、290、291、296または297のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項300]
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、上記項299に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項301]
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座であるため、B8R遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したB8R遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
上記項289、290、または296のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項302]
前記改変が、対応する未改変ACAM2000ウイルスの部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座であるため、F1L遺伝子が発現されず、
前記改変ウイルスが、部分的または完全に欠失したF1L遺伝子座の領域に挿入された少なくとも1つの治療遺伝子および/またはマーカー遺伝子を含む、
上記項288、290、または296のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項303]
少なくとも1つの治療遺伝子を含む、上記項301または302に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項304]
前記治療遺伝子(複数可)が、免疫チェックポイント阻害剤、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗剤、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の中から選択される、上記項303に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項305]
少なくとも1つのマーカー遺伝子を含む、上記項301~304のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項306]
前記マーカー遺伝子(複数可)が、緑色蛍光タンパク質(GFP)、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、TurboFP635およびホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)の中から選択される、上記項305に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項307]
少なくとも1つの治療遺伝子が抗がん抗体である、上記項287および290~306のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項308]
前記抗がん抗体が抗VEGF抗体または抗CTLA-4抗体である、上記項307に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項309]
前記抗がん抗体が一本鎖抗体である、上記項307または上記項308に記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項310]
前記抗体の分泌を促進するためのIgKシグナルペプチドをコードする核酸を更に含む、上記項307~309のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項311]
前記抗体の検出を容易にするためのFLAGタグをコードする核酸を更に含む、上記項307~309のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項312]
少なくとも1つの検出可能なマーカー遺伝子および/または治療用生成物をコードする遺伝子が、ナトリウム・ヨウ素共輸送体(NIS)、OX40L、または4-IBBLである、上記項287および290~311のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項313]
チミジンキナーゼ(TK)、赤血球凝集素(HA)、インターフェロンアルファ/ベータ遮断薬受容体または免疫調節物質の中から選択される少なくとも1つの不活性化遺伝子を更に含む、上記項1に記載のACAM2000ウイルスまたは上記項387~312のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項314]
EEV(細胞外エンベロープウイルス)産生を増強するために更に改変されている、上記項1に記載のACAM2000ウイルスまたは上記項287~313のいずれかに記載の改変ACAM2000ウイルス。
[項315]
EEV産生増強のための更なる改変が、A34Rタンパク質をコードする遺伝子における突然変異である、上記項314に記載のACAM2000ウイルスまたは改変ACAM2000ウイルス。
[項316]
前記突然変異が、突然変異K151Eを含むA34Rタンパク質をコードする、上記項315に記載のACAM2000ウイルスまたは改変ACAM2000ウイルス。
[項317]
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置する方法であって、腫瘍溶解性ウイルス、および脂肪間質細胞を含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記脂肪間質細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される、方法。
[項318]
対象において固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置する方法であって、腫瘍溶解性ウイルス、および上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)由来の培養脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[項319]
前記細胞および腫瘍溶解性ウイルスが、前記対象への投与前にインビトロで共培養される、上記項317または上記項318に記載の方法。
[項320]
前記細胞が、腫瘍溶解性ウイルス免疫調節タンパク質が発現されるのに十分な時間、またはウイルスが少なくとも一回の複製サイクルを受けるのに十分な時間、共培養される、上記項319に記載の方法。
[項321]
前記脂肪間葉系幹細胞(AD-MSC)が、上外膜脂肪間質細胞を培養して前記AD-MSCを産生することにより、上外膜脂肪間質細胞(CD34+SA-ASC)に由来する、上記項318に記載の方法。
[項322]
前記細胞およびウイルスが、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上にわたって共培養される、上記項319または上記項320記載の方法。
[項323]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、上記項317~322のいずれかに記載の方法。
[項324]
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項323に記載の方法。
[項325]
前記ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、上記項324に記載の方法。
[項326]
前記腫瘍が固形腫瘍である、上記項317~325のいずれかに記載の方法。
[項327]
前記対象が、肺がん、膵臓がん、乳がん、結腸がん、頭頸部がん、肝臓がん、黒色腫、および腎臓がんの中から選択されるがんを有する、上記項317~326のいずれかに記載の方法。
[項328]
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、上記項326に記載の方法。
[項329]
前記腫瘍溶解性ウイルスが異種遺伝子産物をコードする、上記項317~328のいずれかに記載の方法。
[項330]
前記異種遺伝子産物が抗がん治療薬である、上記項329に記載の方法。
[項331]
前記産物が抗体である、上記項330に記載の方法。
[項332]
前記対象がヒトである、上記項317~331のいずれかに記載の方法。
[項333]
前記対象が小児患者である、上記項332に記載の方法。
[項334]
前記細胞が前記対象に対して自家である、上記項317~333のいずれかに記載の方法。
[項335]
前記細胞が前記対象に対して同種異系である、上記項317~333のいずれかに記載の方法。
[項336]
前記ウイルスが、腫瘍内注射、静脈内注射、腹腔内注射、髄腔内注射、脳室内注射、関節内注射または眼内注射によって投与される、上記項317~335のいずれかに記載の方法。
[項337]
前記細胞が、腫瘍内注射、静脈内注射、腹腔内注射、髄腔内注射、脳室内注射、関節内注射または眼内注射によって投与される、上記項317~336のいずれかに記載の方法。
[項338]
別の抗がん処置または治療を施すことを含む、上記項317~337のいずれかに記載の方法。
[項339]
前記他のがん処置または治療が、免疫療法である、上記項338に記載の方法。
[項340]
前記免疫療法が、チェックポイント阻害剤、またはチェックポイントもしくは免疫抑制経路を阻害する処置を施すことを含む、上記項339に記載の方法。
[項341]
前記対象内でT細胞応答を活性化する処置を施すことを含み、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、上記項317~338のいずれかに記載の方法。
[項342]
前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、上記項341に記載の方法。
[項343]
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、PD-L1、およびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、上記項341または上記項342に記載の方法。
[項344]
前記処置がPD-1経路の阻害剤の投与を含む、上記項341~343のいずれかに記載の方法。
[項345]
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、上記項344に記載の方法。
[項346]
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、上記項344に記載の方法。
[項347]
前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体、または抗PD-1抗体を投与することを含む、上記項341~343のいずれかに記載の方法。
[項348]
前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する遮断抗体を投与することを含む、上記項341~343のいずれかに記載の方法。
[項349]
共刺激分子に対するアゴニスト抗体を投与することを含む処置を含む、上記項317~348のいずれかに記載の方法。
[項350]
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、上記項349に記載の方法。
[項351]
組成物または組み合わせであって、
(a)腫瘍溶解性ウイルスと、
(b)上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)または周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)と、を含み、
組成物が細胞およびウイルスの混合物であり、組み合わせが2つの別々の組成物であり、一方の組成物がウイルスを含み、他方の組成物が細胞を含む、組成物または組み合わせ。
[項352]
前記腫瘍溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、上記項351に記載の組成物または組み合わせ。
[項353]
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項352に記載の組成物または組み合わせ。
[項354]
前記ワクシニアウイルスが、Dryvax、ACAM1000、ACAM2000、Lister、EM63、LIVP、Tian Tan、Copenhagen、Western Reserve、Modified Vaccinia Ankara(MVA)、New York City Board of Health、Dairen、Ikeda、LC16M8、Copenhagen、Tashkent、Wyeth、IHD-J、IHD-W、Brighton、Dairen IおよびConnaughtの株の中から選択されるポックスウイルスである、上記項353に記載の組成物または組み合わせ。
[項355]
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を処置するために使用するための、上記項351~354のいずれかに記載の組成物または組み合わせ。
[項356]
前記固形腫瘍または血液悪性腫瘍が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌の中から選択される、上記項355に記載の組成物または組み合わせ。
[項357]
対象における固形腫瘍または血液悪性腫瘍の処置に使用するための併用療法であって、
(a)幹細胞であって、
前記幹細胞が腫瘍溶解性ウイルスを含み、
前記幹細胞が、上外膜脂肪間質細胞(SA-ASC;CD235a-/CD45-/CD34+/CD146-/CD31-)および周皮細胞(CD235a-/CD45-/CD34-/CD146+/CD31-)から選択される脂肪間質細胞である、幹細胞と、
(b)前記対象においてT細胞応答を活性化する処置であって、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含むか、または活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む処置と、を含む、併用療法。
[項358]
(b)において、前記処置が、陰性共刺激分子に対する遮断抗体を含む、上記項357に記載の組み合わせ。
[項359]
前記遮断抗体が、CTLA-1、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTAおよびLAG-3の中から選択される陰性共刺激分子に対するものである、上記項358に記載の使用のための組み合わせ。
[項360]
(b)において、前記処置がPD-1経路の阻害剤を含む、上記項357~359のいずれかに記載の組み合わせ。
[項361]
前記PD-1経路の阻害剤が、PD-1および可溶性PD-1リガンドに対する抗体の中から選択される、上記項360に記載の使用のための組み合わせ。
[項362]
前記PD-1経路の阻害剤が、AMP-244、MEDI-4736、MPDL328 OAおよびMIH1から選択される抗体である、上記項360に記載の使用のための組み合わせ。
[項363]
(b)において、前記処置が、抗CTLA-4抗体、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体を含む、上記項357~359のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
[項364]
(b)において、前記処置が、PD-L1およびCTLA-4の中から選択される陰性共刺激分子に対する抗体を遮断することを含む、上記項357または上記項358に記載の組み合わせ。
[項365]
(b)において、前記処置が共刺激分子に対するアゴニスト抗体を含む、上記項357~364のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項366]
前記共刺激分子が、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27およびHVEMの中から選択される、上記項365に記載の組み合わせ。
[項367]
(a)が(b)の後に使用するためのものである、上記項357~366のいずれかに記載の併用療法。
[項368]
(a)が(b)の前に使用するためのものである、上記項357~366のいずれかに記載の併用療法。
[項369]
前記腫瘍内の細胞のアポトーシスを誘導する処置を更に含み、前記処置が、放射線療法、化学療法、免疫療法、光線療法、またはそれらの組み合わせの中から選択される、上記項357~368のいずれか一項に記載の使用のための併用療法。
[項370]
アポトーシスを誘導する前記処置が放射線療法を含む、上記項369に記載の併用療法。
[項371]
腫瘍微小環境を改変するための処置を更に含み、前記処置がサイトカイン遮断薬を含む、上記項357~370のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項372]
前記溶解性ウイルスが、ポックスウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、ニューカッスル病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ムンプスウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、レオウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ハンタウイルス、粘液腫ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)およびレンチウイルスの中から選択される、上記項357~371のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項373]
前記腫瘍溶解性ウイルスがワクシニアウイルスである、上記項357~371のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項374]
前記幹細胞が、TLRアゴニスト静脈内免疫グロブリン(IVIG);単球馴化培地;好中球細胞外トラップ曝露末梢血単核細胞からの上清;グラム陽性菌から単離されたペプチドグリカン;マイコバクテリアから単離されたリポアラビノマンナン;酵母細胞壁から単離されたザイモサン;ポリアデニル-ポリウリジン酸;ポリ(IC);リポ多糖;モノホスホリルリピドA;フラジェリン;ガルディキモド;イミキモド;R848;CpGモチーフを含有するオリゴヌクレオシド;および23SリボソームRNAから選択される薬剤と組み合わせて投与されるか;または
前記幹細胞が、IVIGで前処理された単球、T細胞、T細胞刺激に曝露されたT細胞またはナチュラルキラー細胞と共培養されている、上記項357~373のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項375]
前記使用が、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、前立腺腫瘍、癌腫、基底細胞癌、胆道がん、膀胱がん、骨がん、脳がん、中枢神経系(CNS)のがん、神経膠腫腫瘍、子宮頸がん、脈絡膜癌、結腸および直腸がん、結合組織がん、消化器系がん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、頭頸部がん、胃がん、上皮内新生物、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、卵巣がん、膵臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、直腸がん、腎臓がん、呼吸器系がん、肉腫、皮膚がん、胃がん、精巣がん、甲状腺癌、子宮がん、泌尿器系のがん、リンパ肉腫、骨肉腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、脳腫瘍、腺扁平上皮癌、カルチノイド肺腫瘍、気管支腺腫瘍、気管支腺癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、線維腫、粘液軟骨腫、肺肉腫、神経肉腫、骨腫、乳頭腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、バーキットリンパ腫、小膠細胞腫、破骨細胞腫、口腔新生物、線維肉腫、生殖器扁平上皮癌、伝染性性病腫瘍、精巣腫瘍、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、血管外皮細胞腫、組織球腫、緑色腫、顆粒球性肉腫、角膜乳頭腫、角膜扁平上皮癌、血管肉腫、胸膜中皮腫、基底細胞腫瘍、胸腺腫、胃腫瘍、副腎癌、口腔乳頭腫症、血管内皮腫、嚢胞腺腫、濾胞性リンパ腫、腸リンパ肉腫、肺扁平上皮癌、白血病、血管外皮細胞腫、眼新生物、包皮線維肉腫、潰瘍性扁平上皮癌、包皮癌、結合組織新生物、肥満細胞腫、肝細胞癌、肺腺腫症、肺肉腫、ラウス肉腫、細網内皮症、腎芽細胞腫、B細胞リンパ腫、リンパ性白血病、網膜芽細胞腫、肝新生物、リンパ肉腫、形質細胞様白血病、浮袋肉腫(魚類)、乾酪性リンパ節炎(caseous lymphadenitis)、肺癌、インスリノーマ、神経腫、膵島細胞腫瘍、胃MALTリンパ腫および胃腺癌を処置するためのものである、上記項357~374のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項376]
前記使用が、神経膠芽腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、神経芽細胞腫、中枢神経系腫瘍、膵臓腺癌、または黒色腫を処置するためのものである、上記項357~375のいずれかに記載の使用のための併用療法。
[項377]
前記幹細胞が自家である、上記項357~376のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
[項378]
前記幹細胞が同種異系である、上記項357~376のいずれかに記載の使用のための組み合わせ。
[項379]
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処理または改変されている、上記項1~103および111~125のいずれかに記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項380]
前記担体細胞が、c-myc、v-myc、E6/E7、hTERT、野生型または改変SV40大型腫瘍抗原、loxPおよび/またはtetRの1つ以上を発現するように改変されている、上記項379に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項381]
薬学的に許容される媒体中に上記項379または上記項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を含む医薬組成物。
[項382]
凍結保存される、上記項381に記載の医薬組成物。
[項383]
希釈せずに直接投与するために製剤化される、上記項381または上記項382に記載の医薬組成物。
[項384]
単回投与量として製剤化される、上記項381~383のいずれかに記載の医薬組成物。
[項385]
前記薬学的に許容される媒体が非経口投与に適している、上記項381~384のいずれかに記載の医薬組成物。
[項386]
固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、上記項379または上記項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)。
[項387]
対象において、固形腫瘍または血液悪性腫瘍を含むがんを処置するために使用するための、上記項379または上記項380に記載の細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または上記項381~385のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
[項388]
上記項386または上記項387に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用であって、前記細胞支援型ウイルス発現系が、
a)10以下の感染多重度(MOI)で腫瘍溶解性ウイルスを細胞に感染させること;および
b)前記腫瘍溶解性ウイルスが前記ウイルスのゲノムにコードされる治療用または免疫調節タンパク質を発現して前記CAVESを産生するのに十分な時間にわたって細胞が増殖および/または複製することができる条件下で、前記細胞を前記ウイルスと共にインキュベートまたは共培養すること、によって製造される、細胞支援型ウイルス発現系または前記細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項389]
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、上記項388に記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項390]
前記細胞およびウイルスを少なくとも6時間インキュベートまたは共培養した、上記項386~389のいずれかに記載の使用のための細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)または細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)の使用。
[項391]
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処置または修飾され、
前記改変された担体細胞集団の増殖が、CAVESの調製前および/または対象へのCAVESの投与前の第1の時点(複数可)で活性化され、
前記担体細胞集団の増殖が、第1の時点(複数可)の後で、前記対象への前記CAVESの投与前の第2の時点に不活性化される、上記項130~205のいずれかに記載の方法。
[項392]
細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を作製する方法であって、
ウイルスによる細胞の感染のための担体細胞および腫瘍溶解性ウイルスを、ウイルスがコードされたタンパク質を発現する条件下で、0.001~10のMOIで6時間以上最大48時間未満インキュベートし、それにより担体細胞は、前記ウイルスが前記担体細胞と会合することによってウイルスによってコードされる少なくとも1つの免疫調節タンパク質または組換え治療用タンパク質を発現して、細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を製造すること;
前記細胞支援型ウイルス発現系細胞を回収すること;および
それらを低温で凍結保存培地中に保存して、保存された細胞支援型ウイルス発現系(CAVES)を製造すること、を含む、方法。
[項393]
前記MOIが、0.001~10、0.1~10、0.1~1、0.1から1未満、0.1~0.5または0.1である、上記項392に記載の方法。
[項394]
前記インキュベーション時間が、少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、35、36、40時間またはそれ以上である、上記項392または上記項393に記載の方法。
[項395]
前記インキュベーション時間が少なくとも6時間である、上記項394に記載の方法。
[項396]
前記担体細胞が、条件付き不死化のために処理または改変されている、上記項392~395のいずれかに記載の方法。
[項397]
前記担体細胞が、c-myc、v-myc、E6/E7、hTERT、野生型または改変SV40大型腫瘍抗原、loxPおよび/またはtetRの1つ以上を発現するように改変されている、上記項396に記載の方法。
[項398]
前記ウイルスが、免疫チェックポイント阻害剤、共刺激因子、サイトカイン、増殖因子、光増感剤、放射性核種、毒素、代謝拮抗物質、シグナル伝達調節剤、抗がん抗体および血管新生阻害剤の1つ以上をコードまたは含むように処理または改変される、上記項392~397のいずれかに記載の方法。
【外国語明細書】