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特開2023-166387短時間作用型ヘパリンベースの抗凝集剤化合物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166387
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】短時間作用型ヘパリンベースの抗凝集剤化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/10 20060101AFI20231114BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20231114BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20231114BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231114BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231114BHJP
   C12P 19/04 20060101ALI20231114BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C08B37/10
A61K31/727
A61P7/02
A61K38/02
A61P43/00 121
C12P19/04
C12N9/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023129964
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2019549419の分割
【原出願日】2018-03-12
(31)【優先権主張番号】62/469,643
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジエン リウ
(72)【発明者】
【氏名】チャンジェ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ポ-ホン、シェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤングメイ シュウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗凝固活性を有する合成ヘパリン類似体、新しい合成ヘパリンを合成するための費用対効果の高い方法、更に抗凝固活性が必要な患者を治療する方法を提供する。
【解決手段】以下を含む合成ヘパリン類似体:(a)6~8個の糖単位を含む3-O-硫酸化オリゴ糖;(b)少なくとも1つの3-OST-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び(c)少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む合成ヘパリン類似体:
(a)6~8個の糖単位を含む3-O-硫酸化オリゴ糖;
(b)少なくとも1つの3-OST-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び
(c)少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3
S6S二糖単位。
【請求項2】
前記合成ヘパリン類似体が抗凝固活性を有する、請求項1に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項3】
前記合成ヘパリン類似体が、約5nM~約30nMの範囲のアンチトロンビンに対する結
合親和性を有する、請求項1又は2に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項4】
前記合成ヘパリン類似体が、IC50が約10ngml-1~約40ngml-1の範囲
の抗Xa活性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項5】
前記合成ヘパリン類似体が、以下から成る群から選択される構造を含む、請求項1~4の
いずれか一項に記載の合成ヘパリン類似体。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項6】
前記合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の合
成ヘパリン類似体。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項7】
前記合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の合
成ヘパリン類似体。
【化4】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項8】
前記合成ヘパリン類似体が、少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単
位を含み、GlcA-GlcNS3S6S二糖単位を含まない、請求項1~5のいずれか
一項に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項9】
前記合成ヘパリン類似体が、他のヘパリン化合物のクリアランス速度よりも約50%~約
100%速いクリアランス速度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の合成ヘパ
リン類似体。
【請求項10】
前記合成ヘパリン類似体が、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を引き起こさない、
請求項1~9のいずれか一項に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項11】
前記合成ヘパリン類似体の抗凝固活性が、20μg/ml又はそれ以下のアンデキサネッ
トアルファの存在下で、アンデキサネットアルファによって50%又はそれ以上の割合で
可逆的である、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成ヘパリン類似体。
【請求項12】
(1) 糖基質を提供する段階、
(2) この糖基質を所望の又は所定の長さの糖に伸長する段階、及び
(3) 3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)酵素の3-OST-3アイソ
フォームを使用して少なくとも1つの硫酸化反応を実行する段階、
から成り、これにより合成ヘパリン類似体が合成される、ヘパリン物類似体を合成する方
法。
【請求項13】
前記糖基質が少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S二糖単位を含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記糖基質がIdoA2S-GlcNS3S±6S二糖単位を含み、前記方法が更に6-
O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用する6-O-硫酸化段階を含み、こ
こで6-O-硫酸化段階の前に、3-OST-3による3-O-硫酸化が起こる、請求項
12に記載の方法。
【請求項15】
前記糖基質がGlcA-GlcNS3S6S二糖単位を含み、前記方法が更に6-O-ス
ルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用する6-O-硫酸化段階を含み、ここで6
-O-硫酸化段階の前に、3-OST-1による3-O-硫酸化が起こる、請求項12に
記載の方法。
【請求項16】
前記伸長段階が、グリコシルトランスフェラーゼを使用することを含む、請求項12~1
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記グリコシルトランスフェラーゼが、大腸菌K5のN-アセチルグルコサミニルトラン
スフェラーゼ(KFiA)及び/又はパスツレラ・ムルトシダ由来のヘパロサンシンター
ゼ-2(pmHS2)から成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記伸長段階が、グルクロン酸(GlcUA)、N-アセチル化グルコサミン(GlcN
Ac)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)から成る群から選
択される1又はそれ以上の単糖類を使用することを含む、請求項12~17のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項19】
前記合成ヘパリン類似体を合成する方法の収率が、約20%~約50%である、請求項1
2~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が抗凝固活性を有する、合成ヘパリン類似体。
【請求項21】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、約5nM~約30nMの範囲のアンチトロンビンに対す
る結合親和性を有する合成ヘパリン類似体。
【請求項22】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、IC50が約10ngml-1~約40ngml-1
範囲の抗Xa活性を有する、合成ヘパリン類似体。
【請求項23】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、以下から成る群から選択される構造を含む、合成ヘパリ
ン類似体。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項24】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる合成ヘパリン類似体。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項25】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる合成ヘパリン類似体。
【化4】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項26】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S6S二
糖単位を含み、GlcA-GlcNS3S6S二糖単位を含まない、合成ヘパリン類似体
【請求項27】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、他のヘパリン化合物のクリアランス速度よりも約50%
~約100%速いクリアランス速度を有する、合成ヘパリン類似体。
【請求項28】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体が、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を引き起こさな
い、合成ヘパリン類似体。
【請求項29】
請求項12~19のいずれか一項に記載の方法により生成された合成ヘパリン類似体であ
って、該合成ヘパリン類似体の抗凝固活性が、20μg/ml又はそれ以下のアンデキサ
ネットアルファの存在下で、アンデキサネットアルファによって50%又はそれ以上の割
合で可逆的である、合成ヘパリン類似体。
【請求項30】
抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)抗凝固療法を必要とする患者を提供する段階;
(b)該患者に抗凝固活性を有する合成ヘパリン類似体を投与する段階であって、該合成
ヘパリン類似体が、少なくとも1つの3-OST-3酵素により硫酸化された二糖単位;
及び少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3S
6S二糖単位を含む段階。
【請求項31】
更に、ヘパリン誘発性血小板減少症について患者を監視する段階、及び該患者がヘパリン
誘発性血小板減少症を患っている場合に、該患者に合成ヘパリン類似体の抗凝固活性を逆
転させる解毒剤を投与する段階を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記合成ヘパリン類似体の抗凝固活性を逆転させる解毒剤が、アンデキサネットアルファ
である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記患者がヒトである、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記合成ヘパリン類似体が、他のヘパリン化合物のクリアランス速度よりも約50%~約
100%速いクリアランス速度を有する、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法
【請求項35】
投与の4時間後に、前記合成ヘパリン類似体の抗凝固活性が、約10%未満である、請求
項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記患者が高い出血リスクを有する、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記合成ヘパリン類似体が、以下から成る群から選択される構造を含む、請求項30~3
6のいずれか一項に記載の方法。
【化1】
【化2】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項38】
前記合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる、請求項30~37のいずれか一項に記載
の方法。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項39】
前記合成ヘパリン類似体が以下の構造からなる、請求項30~38のいずれか一項に記載
の方法。
【化4】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【請求項40】
請求項1~11のいずれか一項に記載の合成ヘパリン化合物を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469,643号の優先権を主
張し、本明細書にはその全体が参照により組み込まれる。
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金番号GM102137、HL094463、CA2078
24及びGM103390の下での米国政府の支援によってなされた。そのため米国政府は本発明に
一定の権利を有する。
【技術分野】
【0002】
この発明は、一般にヘパリン化合物の合成に関する。より詳細には、本発明は、短時間
作用型抗凝固活性を有するヘパリン化合物及び合成ヘパリン類似体の化学酵素的合成に関
する。
【背景技術】
【0003】
ヘパラン硫酸(HS)は、細胞表面及び細胞外マトリックスの至る所にある成分である。
ヘパラン硫酸は、胚発生及び血液凝固を含む広い範囲の生理学的及び病態生理学的機能を
統制し、ウイルス感染を促進することができる(Esko and Selleck (2002) Annu. Rev. Bi
ochem. 71, 435-471; Liu and Thorp (2002) Med. Res. Rev. 22, 1-25)。ヘパラン硫酸
(HS)は、与えられたプロセスに関係する特定のタンパク質と相互作用することによって
、その生物学的効果を発揮する(Capila and Lindhardt (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 4
1, 390-412)。ヘパラン硫酸(HS)は、N-スルホ基及びO-スルホ基の両方を含む1→4-結合
グルコサミン及びグルクロン酸/イズロン酸単位から成る高度に荷電した多糖である。ヘ
パラン硫酸(HS)内の特徴的な糖の配列は、その標的タンパク質に対するヘパラン硫酸(
HS)の結合特異性を決定することができる(Linhardt (2003) J. Med. Chem.46, 2551-256
4)。ヘパラン硫酸(HS)の特殊な形態であるヘパリンは、抗凝固薬として一般的に使用さ
れている。従って、ヘパリン化合物及びヘパラン硫酸(HS)の合成のための新規な方法は
、改善された抗凝固薬理学的効果を有する抗凝固薬や他のヘパラン硫酸(HS)関連薬物を
開発している人々の大きな関心を集めている。
ヘパリンは50年以上にわたって抗凝固薬として用いられてきた(Mackman, 2008)。現在
ヘパリンは3つの形で販売されている:分画されていない(UF)ヘパリン(平均分子量:
~14,000Da);低分子量(LMW)ヘパリン(平均分子量:~6,000Da);及び合成ULMWヘパリ
ン五糖ARIXTRA(R)(分子量:1508.3Da)。UFヘパリンは、その比較的短い半減期及び腎障
害のある患者に対する安全性のため、手術や腎臓透析で使用されている(Hirsh et al., 2
007)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘパラン硫酸(HS)のオリゴ糖及びそれに関連する抗凝固化合物の合成は、課題のまま残
っている。新しい合成ヘパリンを合成するための費用対効果の高い方法とアプローチが非
常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでは、本発明のいくつかの実施形態を示し、多くの場合、これらの実施形態の変形
例や置換例を示す。これらは、多数の様々な実施形態の単なる例示である。ある実施形態
の一又はそれ以上の代表的特徴への言及も同様に例示である。このような実施形態は、典
型的には、言及した(複数の)特徴の有無にかかわらず存在することができ、同様に、こ
れらの特徴は、ここに示されているかどうかにかかわらず、ここに開示する本発明の他の
実施形態に適用することができる。過度の繰り返しを避けるために、ここでは、これらの
特徴の全ての可能な組み合わせを示さない。
【0006】
いくつかの実施態様において、6~8個の糖単位を含む3-O-硫酸化オリゴ糖;少な
くとも1つの3-OST-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び少なくとも1つのI
doA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位を含む合成
ヘパリン類似体が提供される。いくつかの実施態様において、このような合成ヘパリン類
似体は抗凝固活性を有することができる。いくつかの実施態様において、このような合成
ヘパリン類似体は、約5nM~約30nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有す
ることができる。いくつかの実施態様において、このような合成ヘパリン類似体は、IC
50が約10ngml-1~約40ngml-1の範囲の抗Xa活性を有することができ
る。
【0007】
いくつかの態様において、提供される合成ヘパリン類似体は、少なくとも1つのIdo
A2S-GlcNS3S6S二糖単位を含み、GlcA-GlcNS3S6S二糖単位を
含まないことができる。いくつかの実施態様において、このような合成ヘパリン類似体の
クリアランス速度は、他のヘパリン化合物のクリアランス速度よりも約50%~約100
%速いことができる。いくつかの実施態様において、このような合成ヘパリン類似体は、
ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を引き起こさない。いくつかの実施態様において
、このような合成ヘパリン類似体は、20μg/ml又はそれ以下のアンデキサネットア
ルファの存在下で、アンデキサネットアルファによって50%又はそれ以上の割合で可逆
的である。
【0008】
いくつかの実施態様において、(1) 糖基質を提供する段階、(2) この糖基質を所望の又
は所定の長さの糖に伸長する段階、及び(3) 3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-O
ST)酵素の3-OST-3アイソフォームを使用して少なくとも1つの硫酸化反応を実
行する段階、から成り、これにより合成ヘパリン類似体が合成される、ヘパリン物類似体
を合成する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この糖基質は少なくとも1
つのIdoA2S-GlcNS3S二糖単位を含む。いくつかの実施態様において、この
糖基質はIdoA2S-GlcNS3S±6S二糖単位を含み、この方法は更に6-O-
スルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用する6-O-硫酸化段階を含み、ここで
6-O-硫酸化段階の前に、3-OST-3による3-O-硫酸化が起こる。いくつかの
実施態様において、この糖基質はGlcA-GlcNS3S6S二糖単位を含み、この方
法は更に6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用する6-O-硫酸化段
階を含み、ここで6-O-硫酸化段階の前に、3-OST-1による3-O-硫酸化が起
こる。
【0009】
いくつかの態様において、この伸長段階は、グリコシルトランスフェラーゼを使用する
ことを含む。いくつかの実施態様において、このグリコシルトランスフェラーゼは、大腸
菌K5のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KFiA)及び/又はパスツ
レラ・ムルトシダ由来のヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)から成る群から選択さ
れる。いくつかの実施態様において、この伸長段階は、グルクロン酸(GlcUA)、N
-アセチル化グルコサミン(GlcNAc)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン
(GlcNTFA)から成る群から選択される1又はそれ以上の単糖類を使用することを
含む。いくつかの実施態様において、この合成ヘパリン類似体を合成する方法の収率は、
約20%~約50%である。
【0010】
また、ここでは、抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法が提供され、この方法は
以下の段階を含む:(a)抗凝固療法を必要とする患者を提供する段階;(b)該患者に
抗凝固活性を有する合成ヘパリン類似体を投与する段階であって、該合成ヘパリン類似体
が、少なくとも1つの3-OST-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び少なくとも
1つのIdoA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位を
含む段階。いくつかの実施態様において、この方法は、更に、ヘパリン誘発性血小板減少
症について患者を監視する段階、及び該患者がヘパリン誘発性血小板減少症を患っている
場合に、該患者に合成ヘパリン類似体の抗凝固活性を逆転させる解毒剤を投与する段階を
含む。いくつかの実施態様において、この合成ヘパリン類似体の抗凝固活性を逆転させる
解毒剤は、アンデキサネットアルファである。いくつかの実施態様において、この患者は
ヒトである。
このような患者を治療する方法において、この合成ヘパリン類似体は、他のヘパリン化
合物よりも約50%~約100%速いクリアランス速度を持つことができる。投与の4時
間後に、この合成ヘパリン類似体の抗凝固活性は、約10%未満であることができる。こ
の方法において、この患者は高い出血リスクを有することができる。
またここでは、ここに開示する合成ヘパリン化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0011】
それを製造し及び/又はそれを使用する方法を含む、ここで開示される合成ヘパリン
類似体は、例えば、以下を含む構造を含むことができる:
【化5】
【化6】
(式中、Rは、水素原子、アルキル(-CH又は-CHCHなどであるがこれらに
限定されない。)、置換アルキル、アリール、及び置換アリール(P-ニトロフェニル基
などであるがこれらに限定されない。)から成る群から選択される。)
【0012】
したがって、本発明の目的は、合成ヘパリンの新しい形態を含む短時間作用型のヘパリ
ンベースの抗凝固化合物及び方法を提供することである。
この目的及び他の目的は、本発明によって全体的又は部分的に達成される。さらに、上
記の本発明の目的、本発明の他の目的及び利点は、以下の記載、図面及び実施例を研究し
た後に当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、以下の図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。図中の
構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、また強調されるものでもなく、本発明の原理を
(しばしば図式によって)説明するためのものです。これらの図面において、同様の参照
番号は異なる図面についても対応する部分を示す。添付図面で例証される実施形態を参照
することによって、本発明はさらに理解されることができる。例証された実施形態は、本
発明を実施するためのシステムの単なる例示であるが、本発明の操作の構成及び方法は、
両方とも、一般的には、図面及びその記載によって、その目的及び利点とともに、より容
易に理解されるであろう。これらの図面は、添付された特許請求の範囲又はその後補正さ
れた特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、
単に本発明を、明確にし、例示するものに過ぎない。
本発明をより完全に理解するために、以下の図面を参照されたい:
【0014】
図1図1図1A~1Cは、本明細書に開示され試験された六糖及び八糖の合成を示す。図1Aは,本明細書に開示される六糖類及び八糖類の概略図を示し、図1Bは、本明細書に開示される六糖及び八糖を合成する例示的な方法の概略図を示し、図1Cは、本明細書に開示される六糖及び八糖のIdoA2S残基のピラノース環の化学構造を示す。
図2図2Aは、高分解能陰イオン交換高速液体クロマトグラフ(HPLC)の結果を示すグラフである。図2Bは、本明細書に開示されるオリゴ糖の純度及び構造分析を実証するために化合物6について行われたエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)の結果を示す。
図3図3A~3Dは、GlcA-GlcNS3S6S-IdoA2S-二糖単位が存在することの、抗凝固活性に対する効果を示す結果のグラフである。
図4図4Aは、アンチトロンビン(AT)結合部位の化学構造の概略図を示し、図4Bは、複合体中のATの分子動力学(MD)シミュレーションの結果を示すグラフである。
図5図5A~5Cは、異なるサイズの構造的に均一なオリゴ糖を使用した3-OST-1及び3-OST-3に対する基質要件を示す。図5A及び5Bは、3-OST-1及び3-OST-3に対する基質要件を示す棒グラフであり、図5Cは、異なるサイズのオリゴ糖の化学構造を示す。
図6図6A~6Fは、それぞれ化合物1、2、3、4、5及び6の化学構造の概略図を示す。
図7図7Aは、本発明のヘパリン化合物が、C57BL/6Jマウスモデルにおいてフォンダパリヌクスよりも速いクリアランスを有することを実証するデータを示すグラフである。図7Bは、本発明のヘパリン化合物の抗Fxa活性が、アンデキサネットアルファ(AndexXa(R), Portola Pharmaceuticals, South San Francisco, California, USA)によって可逆的であることを実証するデータを示すグラフである。
図8図8A~8Cは、本発明の7-mer(7量体)ヘパラン硫酸(HS)化合物の分析の結果を示す。図8Aは、7-merが抗Xa活性を有することを示すデータのグラフであり、図8Bは、6-mer(6量体)、7-mer及び8-mer(8量体)の化学構造を模式的に比較する図であり、図8Cは、7-merを合成するための合成経路を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明は、より完全に説明され、そこでは、本発明のすべてではないがいくつか
の実施形態が説明される。実際、本発明は、多くの異なる形態で具体化することが可能で
、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。これらの実施
形態は、この開示が適用される法的要件を満たすように提供されているに過ぎない。
【0016】
グルコサミンの3-OH位置における硫酸化は、ヘパラン硫酸の構造ドメインを形成し
て、その生物学的機能を可能にするための少なくとも1つの重要な修飾である。ヒトゲノ
ムの7つの3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォームは、3-O-硫酸化ヘパラ
ン硫酸の生合成に関与する。ヘパラン硫酸に存在するまれな修飾として、3-O-硫酸化
オリゴ糖の利用可能性は非常に限られる。本明細書では、3つの六糖及び3つの八糖を含
む6つの3-O-硫酸化オリゴ糖を合成するための新規な化学酵素的合成アプローチを開
示する。酵素修飾順序を3-O-スルホトランスフェラーゼ3の基質特異性に対応するよ
うに再配置することにより、これらの合成が達成された。NMRを用いて2-O-硫酸化
イズロン酸のピラノース環の立体配座に対する3-O-硫酸化の影響を調べ、環の立体構
造と抗凝固活性の相関関係に対する3-O硫酸化の影響を調べた。このことから、アンチ
トロンビンと相互作用し、抗Xa因子活性を示す新規な八糖が見出された。興味深いこと
に、この八糖はラットモデルで承認された五糖薬であるフォンダパリヌクスよりも速いク
リアランス速度を示し、このことは、この八糖が出血リスクを減らす可能性のある潜在的
な短時間作用型抗凝固薬候補であることを示す。本発明の3-O-硫酸化オリゴ糖は、新
しいヘパラン硫酸ベースの治療薬も提供する。
【0017】
ヘパラン硫酸(HS)は、それぞれ硫酸化によって修飾される可能性のある、グルコサ
ミン(GlcN)残基に結合したグルクロン酸(GlcA)又はイズロン酸(IdoA)
残基の二糖繰り返し単位を含む多糖である。ヘパラン硫酸(HS)は、胚発生、炎症反応
、血液凝固、ウイルス/細菌感染の調節など、重要な生理学的及び病理学的機能を示す
-3。最も注目すべきことに、ヘパラン硫酸(HS)の高度に硫酸化された形態であるヘ
パリンは、血栓性疾患の患者の治療のために診療所で広く使用されている抗凝固薬である
【0018】
ヘパラン硫酸(HS)とヘパリンの機能選択性は、硫酸化のタイプとGlcA及びId
oA残基の位置によって、少なくとも部分的に、支配される。硫酸化は、IdoA(程
度は低いがGlcA)の2-OH位に、GlcN残基のN-、3-OH、6-OHの位置
に見られる。さらに、IdoA及びIdoA2S残基の立体配座には、チェア(
及びスキューボート()の立体配座の両方が採用されている。GlcA、Glc
A2S及びGlcN残基の立体配座は、チェア()の立体配座に存在する7,8
IdoA2S残基の立体配座の柔軟性により、アンチトロンビンに結合して抗凝固活性
を示すことが可能になり、線維芽細胞成長因子に結合して細胞の成長を調節すること10
が可能になる。
【0019】
ヘパラン硫酸(HS)のオリゴ糖の合成は依然として課題である。多くのオリゴ糖は、
純粋な有機合成アプローチで合成できるが、複雑な硫酸化パターンを持つ六糖よりも大き
なオリゴ糖を合成することは依然として非常に難しい。代替アプローチとして、グリコシ
ルトランスフェラーゼ、C5-エピメラーゼ及びスルホトランスフェラーゼなどのHS生
合成酵素を使用してヘパラン硫酸(HS)のオリゴ糖を合成する化学酵素的方法が存在す
16、17。この方法は、広範囲のオリゴ糖の高効率合成を提供できるが、特定のオリ
ゴ糖配列の合成は、HS生合成酵素の基質特異性の理解が不足しているため、まだ不可能
である。
【0020】
ヘパラン硫酸(HS)では3-O-硫酸化はまれにしか起こらないが、このタイプの硫
酸化はその生物学的機能と密接に関連すると考えられている。この3-O-硫酸化は、抗
凝固活性にとって重要であり19、単純ヘルペスウイルスの宿主細胞への侵入を促進して
感染を確立し20、軸索ガイダンスとニューロンの成長を調節し18、唾液腺発達の前駆
細胞の拡大を制御する。ヘパラン硫酸(HS)の生物活性に貢献する際に、3-O-硫
酸化グルコサミン(GlcNS3S±6S)残基がどのような役割を果たすかは、現在の
ところ正確には不明である。このGlcNS3S±6S残基は、他の単糖残基に囲まれて
ユニークな硫酸化糖配列ドメインを形成し、ヘパラン硫酸(HS)がその生物学的効果を
発揮できることが示されている。たとえば、五糖ドメインに存在するGlcNS3S±6
S残基により、ヘパラン硫酸(HS)はアンチトロンビン(AT)に結合することができ
る。GlcNS3S±6S残基を有する八糖は、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質Dと
相互作用する。3-OSTの7つのアイソフォームは、ヒトゲノムに存在し、さまざまに
異なる3-O硫酸化オリゴ糖の調製に使用される可能性がある26
【0021】
本明細書には、化学酵素的アプローチを使用して3-O-硫酸化オリゴ糖ライブラリー
を調製するための複数のスキームが開示される。本明細書では、-GlcA-GlcNS
3S6S-二糖単位を生成するためには3-OST-1修飾が6-O-硫酸化後にのみ可
能なので、-IdoA2S-GlcNS3S-又はIdoA2S-GlcNS3S6S-
二糖単位を含むオリゴ糖を合成するためには、3-OST-3修飾が6-O-硫酸化段階
に先行しなければならないことが実証される。四糖基質の3-OST-3と6-O-スル
ホ基との相互作用はなく、これは3-OST-3のオリゴ糖基質は6-O-硫酸化を必要
としないという結論と整合する。これとは対照的に、七糖基質の3-OST-1と6-O
-スルホ基との相互作用が観察され、これは3-OST-1に結合するには6-O-硫酸
化が必要であることを示唆する。本明細書で初めて開示された、3-OST-1と3-O
ST-3との間の明確でユニークな基質要件は、3-OSTの異なるアイソフォームによ
って修飾された3-O硫酸化、ヘパラン硫酸(HS)は、異なる経路を介して生合成され
ることを明らかにする。
【0022】
3-OST-1酵素が抗凝固剤ヘパラン硫酸(HS)の合成に関与するのに対し、3-
OST-3酵素がそうではないことは、広く受け入れられている34,35。これまでに
単離されたアンチトロンビン(AT)結合配列はすべて、3-OST-1酵素修飾の産物
である-GlcA-GlcNS3S6S-二糖反復単位を含んでいる33,39。この長
年保持されている信念は本開示により議論される。この議論は、ここで開示された方法に
よって展開されたオリゴ糖は、3-OST-3酵素修飾の産物であり、アンチトロンビン
(AT)に結合し、抗凝固活性を示すという発見に基づいている。これらの発見は、ヘパ
ラン硫酸(HS)が本発明の化合物(例えば、化合物5を含むがこれらに限定されない。
)の構造ドメインと同様の構造ドメインを有する限り、3-OST-3が抗凝固剤ヘパラ
ン硫酸(HS)を合成できることを示すものである。
【0023】
本明細書では、展開されたヘパラン硫酸(HS)化合物又はオリゴ糖のうちのいくつか
が予想外に速いクリアランスを有するという発見も開示される。このような化合物の迅速
なクリアランスは、出血リスクを低減した潜在的な新しい短時間作用型抗凝固薬候補を提
供する。主要な出血効果が発現する前に血液循環から速やかに除去され得る短時間作用型
抗凝固薬は、通常の又は健康な患者/被験者と比較して、出血リスクが高い、又は出血の
リスクが高まった患者に特に有益であろう。未分画ヘパリンは半減期が短い抗凝固剤であ
るが、懸念されるのは、この薬物がヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を引き起こし
、これが命にかかわる副作用であるということである42。12-mers(12量体)より小さ
い短いオリゴ糖43は血小板因子に結合しないため、ヘパリン誘発性血小板減少症(H
IT)のリスクを示さないことがわかっている。六糖類及び八糖類として、本発明の化合
物(例えば、化合物5を含む)は、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)のリスクが非
常に低いと予想される。
【0024】
本明細書に開示されるヘパラン硫酸(HS)化合物又は合成ヘパリン類似体は、いくつ
かの実施態様において、6~8の二糖単位を含む3-O-硫酸化オリゴ糖を含むことがで
き、少なくとも1つの二糖単位(少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S又はI
doA2S-GlcNS3S6S二糖単位)は3-OST-3酵素により硫酸化される。
本明細書の実施例に示すように、このような合成ヘパリン類似体は抗凝固活性を有し、こ
の抗凝固活性は、約5nM~約30nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性及
びIC50が約10ngml-1~約40ngml-1の範囲の抗Xa活性を含む。この
ような合成ヘパリン類似体の構造は、化合物1~11(特に、化合物1~6(図6A~6
F))によって例示される。
【0025】
本明細書でさらに議論されるように、いくつかの実施態様において、この合成ヘパリン
類似体は、特にヘパリン及びヘパリン様化合物と比較して、予想外に速いクリアランス速
度を有することができる。例えば、化合物5のクリアランス速度は、ラット又はマウスモ
デルのフォンダパリヌクスのクリアランス速度よりも少なくとも約50%、75%又は1
00%(又は約50%~約100%、約60%~約90%、約70%~約80%、約50
%~約75%、又は約75%~約100%)速い。このような速いクリアランスは、この
ような化合物を短時間作用型抗凝固剤化合物として適切であるようにすることができ、こ
れは特に出血のリスクがより高い患者及び/又は応用に適している。このような化合物が
、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)を引き起こさないこともまた示されている。
【0026】
この合成ヘパリン類似体を合成する方法は、本明細書において例示され(例えば、図1
A、1B及び8Cを参照)、さらに議論されるが、いくつかの態様において、(1) 糖基質
を提供する段階、(2) この糖基質を所望の又は所定の長さの糖に伸長する段階、及び(3)
3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)酵素の3-OST-3アイソフォーム
を使用して少なくとも1つの硫酸化反応を実行する段階、から成り、これにより合成ヘパ
リン類似体が合成される。この糖基質は、少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3
S二糖単位を含んでもよい。
【0027】
この合成ヘパリン類似体を合成するための開示された方法は、ヘパリン化合物の驚くほ
ど高い収率を提供することができる。限定ではなく例として、この合成ヘパリン類似体を
合成するための開示された方法は、約20%を超える、約30%を超える、約40%を超
える、約50%を超える、約20%~約50%、約30%~約50%、又は約40%~約
50%の収率を有することができる。
【0028】
この糖基質がIdoA2S-GlcNS3S±6S二糖単位を含む場合、このような方
法は、更に6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用する6-O-硫酸化
段階を含むことができ、そこでは3-OST-3による3-O-硫酸化は、6-O-硫酸
化段階の前に起こる。対照的に、糖基質がGlcA-GlcNS3S6S二糖単位を含む
場合、このような方法は、更に6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)を使用
する6-O-硫酸化段階を含むことができ、そこでは3-OST-1による3-O-硫酸
化は、6-O-硫酸化段階の前に起こる。
【0029】
現在開示されているヘパリン化合物及び合成ヘパリン類似体の開発は、またこれを用い
た治療及び患者の治療方法も提供する。例えば、いくつかの実施態様において、抗凝固療
法を必要とする患者を治療する方法が提供される。このような方法は、(a)抗凝固療法
を必要とする患者を提供する段階;及び(b)該患者に抗凝固活性を有する合成ヘパリン
類似体を投与する段階であって、該合成ヘパリン類似体が、少なくとも1つの3-OST
-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS
3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位を含む段階から成ることができる。
必要に応じて、ヘパリン誘発性血小板減少症についても患者を監視でき、もし検出された
場合、患者がヘパリン誘発性血小板減少症にかかっていれば、合成ヘパリン類似体の抗凝
固活性を逆転させるための解毒剤を患者に投与できる。このような抗凝固活性の逆転は、
例えば、20μg/ml又はそれ以下のアンデキサネットアルファの存在下で、アンデキ
サネットアルファ(AndexXa(R), Portola Pharmaceuticals, South San Francisco, Calif
ornia, USA)によって50%又はそれ以上の割合で達成することができる。
【0030】
したがって、本発明を開示するいくつかの実施形態によれば、抗凝固療法を必要とする
患者を治療する方法が提供される。いくつかの実施態様において、この方法は、(a)抗
凝固療法を必要とする患者を提供する段階;(b)該患者に抗凝固活性を有する合成ヘパ
リン類似体を投与する段階であって、該合成ヘパリン類似体が、少なくとも1つの3-O
ST-3酵素により硫酸化された二糖単位;及び少なくとも1つのIdoA2S-Glc
NS3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位を含む段階を含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、本発明は、抗凝固活性が有利な疾患又は障害の治療及び
/又は予防に使用するための、抗凝固活性を有する合成ヘパリン類似体を提供し、この合
成ヘパリン類似体は、3-OST-3酵素によって硫酸化された少なくとも1つの二糖単
位、及び少なくとも1つのIdoA2S-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS
3S6S二糖単位を含む。限定ではなく例として、このような疾患又は障害には、深部静
脈血栓症のリスクが高い患者及び個人(癌患者を含む)が含まれ得る。
【0032】
さらに別の実施形態では、本発明は、抗凝固活性が有利である疾患又は障害の治療及び
/又は予防のための医薬組成物を製造するための、抗凝固活性を有する合成ヘパリン類似
体の使用法を提供し、この方法において、この合成ヘパリン類似体は、3-OST-3酵
素によって硫酸化された少なくとも1つの二糖単位、及び少なくとも1つのIdoA2S
-GlcNS3S又はIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位を含む。
【0033】
合成ヘパリン類似体又はヘパラン硫酸(HS)化合物の例は、例えば、図1A及び6A
から6Fのものを含めて、本明細書に開示されている。示される構造において、「R」は
、プロトン(-H)、-CH、-CHCH、又はP-ニトロフェニルに類似した他
の置換基を含むことができる。このような置換基には、アルキル又は低級アルキルを含む
こともできる。いくつかの実施態様において、このP-ニトロフェニルに類似した他の置
換基は、アリール又は置換アリールを含むことができる。代替として又は追加的に、いく
つかの実施態様において、「R」は検出可能なタグ又は検出可能な部分を含むことができ
る。
【0034】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、
本発明を限定することを意図するものではない。
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、本発明の説明を容易
にするために、以下の定義が示されている。
本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、以下で別途定義されない限り
、当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を持つように意図されている。本明
細書で使用される技術への言及は、それらの技術の変形又は当業者に明らかな同等技術の
置換を含む、当技術分野で一般に理解される技術を指すものとする。以下の用語は、当業
者によって十分に理解されると考えられるが、本発明の説明を容易にするために、以下の
定義を示す。
本発明を説明する際、多くの技術及び段階が開示されていることが理解されるであろう
。これらのそれぞれには個別の利点があり、それぞれ他で開示された技術の1又はそれ以
上、又は場合によってはすべてと組み合わせて使用することもできる。
したがって、この説明は、明瞭性のため、不必要な方法で個々の段階のあらゆる可能な
組み合わせを繰り返すことを控える。それでも、明細書及び請求項は、そのような組み合
わせが完全に本発明及び請求項の範囲内であることを理解して読まれるべきである。
【0035】
長年にわたる特許法協定に従い、原文の"不定冠詞-ある(a, an)""定冠詞-その(th
e)"は、クレイムを含む本出願で用いられる場合、"1又は2以上"を意味する。従って、
例えば、"ある細胞"は、複数のこのような細胞の複数を含む、などである。
もし別途示されなければ、明細書及び請求の範囲で用いられる構成要素の量、反応条件
、等々を表す全ての数は、用語"約"で全ての事例において修正されると理解すべきである
。従って、それと反対に示されない場合は、本明細書及び添付した請求の範囲に述べられ
た数字的なパラメーターは、本明細書に開示された対象物により見出された好ましい特性
によって変わりうる近似的なものである。
本明細書で使用する「約」という用語は、値又は組成物の量、用量、配列同一性(例え
ば、2以上のヌクレオチド又はアミノ酸配列を比較する場合)、質量、重量、温度、時間
、体積、濃度、パーセンテージなどに言及する場合、特定の値から、一部の実施形態では
±20%、一部の実施形態では±10%、一部の実施形態では±5%、一部の実施形態では±1
%、一部の実施形態では±0.5%、及び部の実施形態では±0.1%の変動を包含することを
意味し、このような変動は、開示された方法を実行するため、又は開示された組成物を採
用するために適当である。
【0036】
用語「comprising(から成る)」は、「including(含む)」、「containing(含む)
」又は「characterized by(により特徴付けられる)」と同様に、包含的又は制約が無く、
付加的な、非列挙の要素又は方法段階を排除しない。「comprising(から成る)」は、名
付けられた要素は存在するが、他の要素も加えることが可能であり、それでも特許請求の
範囲内の構成物を形成することができることを意味する技術用語である。
用語「consisting of(のみから成る)」は、請求の範囲に明記してない全ての要素、
段階又は内容物を除外する。成句「consist of(のみから成る)」が、プレアンブルに直
ちに続かないで、請求の範囲の本体に現れる場合、示された要素のみに限定されるが、他
の要素は、全体として請求の範囲から排除されない。
用語「consisting essentially of(本質的に、から成る)」は、請求範囲を、明記した
材料又は段階に限定して、さらに請求範囲の発明事項の基本的及び新規の特徴に実質的に
影響しない材料又は段階を限定する。
用語「comprising(から成る)"、「consisting of(のみから成る)」及び「consisti
ng essentially of(本質的に、から成る)」に関して、これらの3種の用語の1種が本明
細書で用いられた時、本発明は、他の2種の用語のいずれかの使用を含めることができる

本明細書で使用される用語「及び/又は」は、物を列挙するときに使用される場合、単
独で又は組み合わせて存在する物を示す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」と
いう表現は、個別にA、B、C、及びDを含むだけでなく、A、B、C、及びDの任意の及び全て
の組み合わせ並びにサブコンビネーションを含む。
【0037】
本明細書で用いるように、用語"アルキル基"は、線状の(即ち"直鎖の")、分枝状の、
又は環状の、飽和又は少なくとも部分的にまたある場合は完全に不飽和な(即ち、アルケ
ニル基及びアルキニル基)炭化水素鎖を包含するC1~20を表し、例えば、メチル基、
エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、
ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテ
ニル基、ヘキセニル基、オクテニル機、ブタジエニル基、プロピニル基、メチルプロペニ
ル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル機、ヘプチニル基及びアレニル基が挙げら
れる。"分枝した"とは、メチル基、エチル基、又はプロピル基のような、低級アルキル基
が直鎖状のアルキル鎖に付加したアルキル基を表す。"低級アルキル基"は、例えば、1,
2,3,4,5,6,7,又は8炭素原子のような、1~約8までの炭素原子、を有する
アルキル基(即ち、C1-8アルキル基)を表す。"高級アルキル基"は、例えば、10,
11,12,13,14,15,16,17,18,19,又は20炭素原子、の様な約
10~約20の炭素原子を持つアルキル基を表す。或る実施態様において、"アルキル基"
は、特に、C1~8直鎖アルキル基を表す。別な実施態様において、"アルキル基"は、特
に、C1~8分岐鎖アルキル基を表す。
【0038】
アルキル基は、任意に、1又は2以上の、同一又は異なってもよいアルキル基置換基に
より置換できる("置換アルキル基")。"アルキル基の置換基"としては、アルキル基、置
換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、水酸基、アリールオキシル基、ア
ルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチ
オ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基及びシクロアルキル基が挙げ
られるが、これらに制限されない。任意に、アルキル鎖にそって1又は2以上の酸素原子
、イオウ原子又は置換又は非置換の窒素原子を挿入できるが、ここで窒素置換基は、水素
原子、低級アルキル基(以下"アルキルアミノアルキル基"と呼ぶ)又はアリール基である

この様に、本明細書で用いられるように、用語"置換アルキル基"は、ここで定義された
ように、1又は2以上の原子又はアルキル基の官能基が、他の原子又は官能基で置き換え
られたアルキル基を含み、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリー
ル基、置換アリール基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ
基、ジアルキルアミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基が挙げられる。
【0039】
本明細書で用いる用語"アリール基"は、互いに縮合し、共有結合で連結した、又はメチ
レン基又はエチレン基部分のような、しかしこれらに制限されない、共通の官能基に結合
した単一の芳香族環、又は、多環の芳香族環であることができる芳香族置換基を指す。共
通の連結基はまた、ベンゾフェノンの場合のようなカルボニル基、又はジフェニルエーテ
ルにおけるような酸素分子、又はジフェニルアミンにおけるような窒素分子でもあること
ができる。用語"アリール基"は、特に、複素環式芳香族化合物を含む。芳香族環は、例え
ば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルアミン
基及びベンゾフェノン基からなる。特別な実施態様において、用語"アリール基"は、約5
~約10の炭素原子、例えば、5,6,7,8,9又は10炭素原子、からなる環状芳香
族を意味し、また5-及び6-員環炭化水素及び複素環式芳香族環を含む。
【0040】
アリール基は同一又は異なる1又は2以上のアリール基置換基で任意に置換しうる("
置換アリール基")。"アリール基の置換基"としては、アルキル基、置換アルキル基、ア
リール基、置換アリール基、アラルキル機、水酸基、アルコキシル基、アリールオキシル
基、アラルキルオキシル基、カルボキシル基、アシル基、ハロ基、ニトロ基、アルコキシ
カルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アシルオキシ
ル基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、
ジアルキルカルバモイル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキレン基及び-NR
'R''基を含み、ここでR'及びR''は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換
アルキル基、アリール基、置換アリール基及びアラルキル基であってもよい。
【0041】
従って、本明細書で用いられたように、用語"置換アリール基"は、本明細書で定義され
たようなアリール基を含み、前記アリール基の1又は2以上の原子又は官能基は、他の原
子又は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、置換アリー
ル基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルア
ミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基を含む、官能基と置き換えうる。
アリール基の特別な例としては、シクロペンタジエニル基、フェニル基、フラン基、チ
オフェン基、ピロール基、ピラン基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンジミダゾール基
、イソチアゾール基、イソキサゾール基、ピラゾール基、ピラジン基、トリアジン基、ピ
リミジン基、キノリン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、等々が挙げ
られるが、これらに制限されない。
【0042】
本明細書で用いる、次のような化学式で表される構造:
【化7】
は、環状構造を表し、例えば、置換基Rを含む、3-炭素、4-炭素、5-炭素、6-炭
素等々の脂肪族及び/又は芳香族環状化合物を表わすが、ここでR基は、存在しても、存
在しなくともよく、存在する場合は、1又は2以上のR基は各々、環状構造の1又は2以
上の可能な炭素原子上で置換されるものであるが、上記の環状化合物に制限されない。R
基が存在するか否か及びR基の数は、整数n値で決められる。各R基は、もし1以上なら
ば、他のR基上ではなく、環状構造の可能な炭素原子上で置換される。例えば、nが0~
2の整数である構造:
【化8】
は、以下の化合物群:
【化9】
等々を含むが、これらに制限されない。
【0043】
"環状"及び"シクロアルキル"は、例えば、3,4,5,6,7,8,9又は10個の炭
素原子のような、約3~約10個の炭素原子の非芳香族型モノ又はマルチ環状系を指す。
シクロアルキル基は任意に部分的に不飽和であることができる。シクロアルキル基は、ま
た任意に、本明細書で定義したようにアルキル基置換基、オキソ及び/又はアルキレンで
任意に置換されてもよい。環状アルキル鎖に沿って、1又は2以上の酸素原子、イオウ原
子、又は、窒素置換基が水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換
アリール基である置換、又は非置換の窒素原子を任意に挿入でき、このようにして複素環
式基を提供する。代表的な単環式シクロアルキル環には、シクロペンチル基、シクロヘキ
シル基、及びシクロヘプチル基が含まれる。多環シクロアルキル環には、アダマンチル基
、オクタヒドロナフチル基、デカリン、樟脳、カンファン及びノラダマンチルが含まれる
【0044】
用語"複素環"は、約3~約14原子の非芳香族又は芳香族、単環式又は多環式の環系を
指し、これらの原子の少なくとも1つはヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)で
ある。用語"N-複素環"は、ヘテロ原子の少なくとも1つが窒素原子である複素環を指す
。N-複素環の例には、アゼチジン、ピロリジン、ピロール、ピロリン、ピペリジン、ピ
リジン、ピペラジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、モルホリン、及びチアジンが
含まれるが、これらに限定されない。
"アラルキル基"はアリール-アルキル-基を指し、ここでアリール基及びアルキル基は
既述の通りであり、置換アリール基及び置換アルキル基を含む。アラルキル基の例として
は、ベンジル基、フェニルエチル基、又はナフチルメチル基がある。
本明細書で用いるように、用語"アシル基"は、そのカルボキシル基の-OH基が他の置
換基に置き変えられた有機酸基を表す(例えば、RC(=O)-で代表されるように、R
は、本明細書で定義されたようなアルキル基、置換アルキル基、アラルキル基、アリール
基又は置換アリール基である。)。従って、用語"アシル基"は、特に、アセチルフラン基
及びフェナシル基のようなアリールアシル基を含む。アシル基の特別な例は、アセチル基
及びベンゾイル基である。
【0045】
"N-アシル"は、構造-N-C(=O)-R(式中、Rはアシル基に関して定義された
のと同様である。)を有する基を指す。これらの基は、またアミドとも呼ばれる。修飾さ
れたN-アシル基には、このN-アシルの酸素がS又はNHで置換された化合物を含み、
また窒素原子に加えて、第2のヘテロ原子に、カルボニル基(すなわち、-C(=O)-
)が結合した化合物が含まれる。例えば、第2の窒素原子にカルボニル基が結合して尿素
結合(すなわち、-NH-C(=O)-NH-R)を形成することができる。
用語"アミノ"は、-NH、-NHR、及びNR基(式中、各Rは、独立して、アル
キル、置換アルキル、アリール、置換アリール、又はアラルキルである。)を指し、また
N-複素環(例えば、モルホリンなど)中のアミノ及びアンモニウム官能基を指す。
本明細書で使用される用語"アミノ"は、-NH、-NH(R)、及びN(R
基などの四級アンモニウムカチオンを提供する置換基も指すことができる。(式中、
各Rは独立してアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール又はアラルキルである
。)。
【0046】
用語"エステル"は、-O-C(=O)-R基(式中、Rはアルキル、置換アルキル、ア
ラルキル、アリール、又は置換アリールであってもよい。)を含む部分を指す。いくつか
の実施態様において、このRは、アミノ置換基を含むことができ、このエステルはアミノ
エステルである。
用語"アミド"は、-N(R')-C(=O)-R基(式中、Rはアルキル、置換アルキ
ル、アラルキル、アリール又は置換アリールから選択され、R'は水素原子、アルキル、
置換アルキル、アラルキル、アリール、又は置換アリールである。)を含む部分を指す。
本明細書で使用される"尿素"という用語は、-N(R')-C(=O)-N(R')-基
(式中、各R'は独立して水素原子、アルキル、置換アルキル、アラルキル、アリール、
又は置換アリールである。)を含む部分を指す。
用語"ヒドロキシル"は、-OH基を指す。
用語"独立して選択される"が用いられる場合、指定された置換基(例えば、R及びR
基のようなR基又はX基及びY基)は同一又は異なる。例えば、R及びRともに置
換アルキル基である、又はRは水素原子であり、Rは置換アルキル基である等々。
【0047】
患者
ここで開示される本発明の原理が、組成物及び方法が用語"患者"に含まれることが意図
されている哺乳動物を含むすべての無脊椎動物及び脊椎動物に有効であることを示してい
ることを理解すべきであるが、治療され、スクリーニングされ、試験され、又はサンプル
採取される患者は、望ましくはヒト患者である。さらに、哺乳動物は、スクリーニングが
望ましいあらゆる哺乳動物種、特に農業及び家畜哺乳動物種を含むと理解される。
その開示された方法、化合物及び治療は、温血脊椎動物の検査、スクリーニング及び/
又は治療に特に有用である。したがって、本発明は、哺乳類及び鳥類に関する。
【0048】
より具体的には、本明細書で提供されるのは、ヒトなどの哺乳動物、及び絶滅の危機に
あるため(シベリアトラなど)、経済的重要性があるため(人間が消費するために農場で
飼育された動物)、及び/又は人間にとって社会的重要性のため(ペット又は動物園で飼
われている動物)重要な哺乳類、例えば、人間以外の肉食動物(猫や犬など)、豚類(ブ
タ、食肉用の成長した豚、イノシシ)、反芻動物(畜牛、去勢牛、羊、キリン、鹿、ヤギ
、バイソン、ラクダなど)、馬、などを検査し、スクリーニングし、及び/又は治療する
ことである。また、鳥の治療も提供され、これには、絶滅の危機にあり動物園で飼われて
いる鳥類、また家禽、より具体的には七面鳥、鶏、アヒル、ガチョウ、ホロホロ鳥などの
飼いならされた家禽(これらは人間にとって経済的にも重要であるので)の治療を含む。
したがって、本明細書で提供されるのは、家畜豚(ブタ、食肉用の成長した豚)、反芻動
物、馬、家禽などを含むがこれらに限定されない家畜の治療である。
【0049】
いくつかの実施態様において、本発明に従って使用される患者は、治療及び/又は診断
を必要とする患者である。いくつかの実施態様において、患者は、抗凝固療法を必要とし
てもよく、又はこれに関連する状態又は表現型であってもよい。いくつかの実施態様にお
いて、抗凝固療法を必要とする患者は、出血のリスクが高い患者であってもよい。
【0050】
製剤
本発明の組成物は、いくつかの実施形態において、薬学的に許容される担体を含む組成
物を含む。患者へ投与するためのアデノウイルスベクターを調製するために、任意の適切
な医薬製剤を使用することができる。
適切な製剤には、例えば、水性及び非水性滅菌注射液が含まれてもよく、これは、抗酸
化剤、緩衝液、静菌剤、殺菌性抗生物質、及び製剤を患者レシピエントの体液と等張にす
る溶質、並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでもよい水性及び非水性滅菌懸濁液を含むことが
できる。この製剤は、単位用量又は複数用量の容器(例えば、密封されたアンプルとバイ
アル)で提供でき、また使用直前に滅菌液体キャリア(例えば、注射用の水)を追加する
ことだけが必要な冷凍又は凍結乾燥状態で保存できる。いくつかの例示的な成分は、SD
S、マンニトール又は他の糖、及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
本発明の製剤は、上記で特に言及した成分に加えて、問題となる製剤の種類を考慮して
、当技術分野で慣用されている他の薬剤を含むことができることを理解されたい。例えば
、発熱物質を含まない滅菌水溶液及び非水溶液を使用できる。
【0051】
投与
本発明の組成物の投与は当業者に知られている任意の方法によることができ、それには
、静脈内投与、滑液嚢内投与、経皮投与、筋肉内投与、皮下投与、局所投与、直腸投与、
膣内投与、腫瘍内投与、経口投与、頬側投与、経鼻投与、非経口投与、吸入、及びガス注
入が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施態様において、本発明の組成物の
投与に適した方法には、静脈内投与が含まれるが、これに限定されない。また代替として
、組成物を、他の任意の方法で治療を必要とする部位に堆積させてもよい。本発明の組成
物の投与の特定の様式は、様々な要因に依存する。
【0052】
投与量
本発明の組成物の有効な投与量が、それを必要とする患者に投与される。"治療有効量"
とは、測定可能な反応(例えば、抗凝固)を引き起こすのに十分な組成物の量である。い
くつかの実施態様において、治療有効量は、凝固を防止する(即ち、抗凝固)のに十分な
量である。いくつかの実施態様において、治療有効量は、抗凝固療法を必要とする患者の
健康、幸福度、予後及び/又は生存率を改善するのに十分な量である。
本発明の組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者の所望の治療応答を
達成するのに有効な量の活性化合物を投与するように変更可能である。選択された用量レ
ベルは、治療組成物の活性、投与経路、他の薬物又は治療との組み合わせ、治療状態の重
症度、及び治療されている患者の状態及び以前の病歴に依存してもよい。しかし、所望の
治療効果を達成するのに必要なレベルよりも低いレベルで組成物の投与量で開始し、所望
の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、当業者の裁量の範囲内である。
当業者は、本明細書に提示される本発明の開示をよく調べた後、特定の製剤、組成物に
使用される投与方法及び症状の重症度を考慮して、個々の患者に対する用量を調整するこ
とができる。投与量のさらなる計算において、患者の身長と体重、症状の重症度と病期、
及び追加の有害な身体状態の存在を考慮することができる。このような調整又は変動、並
びにこのような調整又は変動を行う時期及び方法の評価は、医学の当業者にとってよく知
られたことである。
【実施例0053】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態をさらに説明するために含まれている。しか
し、当業者は、本開示に照らして、開示された特定の実施形態において多くの変更を行う
ことができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様な又は似たような結果を得
ることができることを理解すべきである。
【0054】
材料及び方法
酵素の発現と精製
SF9細胞(Invitrogen)中で、Sf-900TM III SFM (Life Technologies)を用いて、6-
O-スルホトランスフェラーゼ1(6-OST-1)及び6-O-スルホトランスフェラーゼ3
(6-OST-3)の発現を行った。2.0×106 cells/mlの濃度の昆虫細胞に、マウス6-OST-1及
びヒト6-OST-3を発現する組換えウイルスを感染させ、27℃のシェーカー中で96時間
インキュベートした。この培養液を4,000 rpmで10分間遠心分離して、この細胞をペレ
ット化した。次に、1mMのフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF、95%エタノー
ル中で100mMストック溶液を新たに作成した。)、Triton X-100 及び 0.2%グリセロール
を含む上清を、8,000 rpmで30分間遠心分離し、1.5μMメンブレンでろ過した。次に、
得られた培地を、等容量の0.05% Triton-100及び 2%グリセロールを含む40 mM3-(N-
モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH 7.0)と混合した。ヘパリントヨパ
ールゲル(東ソーバイオサイエンス)カラムを使用して、2つの緩衝液(緩衝液Aは、20
mM MOPS, pH 7.0, 100 mM NaCl, 2%グリセロール、及び0.1%還元triton X-100 (Sigma)
を含み、緩衝液Bは、20 mM MOPS, pH 7.0, 1 M NaCl, 2%グリセロール、及び0.1%還元tr
iton X-100を含む。)で6-OST-1及び3を精製した。この培地を装填した後、4 mL
/minの流速において、280nmにおける吸光度がベースラインに達するまで、カラムを緩衝
液Aを使用して洗浄した。60分で0-100%Bのグラジエント溶出を適用し、1.5 mL
/minの流速で100%Bを用いてカラムを60分間溶出した。酵素の精製は4℃で行った
【0055】
BL21細胞を使用して大腸菌中で3-OST-1及び3-OST-3の発現を行った
。この形質転換細胞を、3-OST-1及び3-OST-3用に、50μg/Lのカナマイシ
ンを含むLB培地で増殖させ、OD600が0.6~0.8に達するまで37℃でインキ
ュベートした。最終濃度0.2 mMのイソプロピルチオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し
て、3-OST-1及び3の発現を誘導した。この細菌培養物を22℃で一晩振とうを維
持した。3,400 rpmで15分間回転することによりこの細菌細胞を回収した。この細胞を
、25 mM Tris, pH 7.5, 30 mM イミダゾール、及び 500 mM NaCl.を含む緩衝液25mLに再
懸濁した。この懸濁液を超音波処理し、14,000 rpmで30分間遠心分離した。精製する前
に、この上清を0.45μm膜でろ過した。ニッケルアガロース(GE Healthcare)カラムを使用
して、2つの緩衝液(緩衝液Cは、25 mM Tris, pH 7.5, 30 mM イミダゾール、及び 500
mM NaClを含み、 緩衝液Dは、25 mM Tris, pH 7.5, 300 mMイミダゾール、及び 500 mM
NaClを含む。)を用いてタンパク質を精製した。この培地を装填した後、2 mL/minの流
速において、280nmにおける吸光度がベースラインに達するまで、カラムを緩衝液Cを使
用して洗浄した。次に、緩衝液Dを適用してタンパク質を溶出した。
【0056】
オリゴ糖(化合物1~6)の化学酵素合成
化合物1~3の合成は、六糖(GlcNS-GlcA-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-GlcA-pNP)("NS2S 6-me
r基質"と呼ぶ)から開始した。
化合物1を合成するために、この基質(25mg)を、総容量100 mLの、50 mM MOPS(PH 7.
0)、10 mM MnCl2、7 mM MgCl2、及び2 mL 3-OST-3(0.11 mg/mL)を含む緩衝液中で1.8
mM 3'-ホスホアデノシン5'-ホスホ硫酸(PAPS)と共にインキュベートした。この反応混
合物を37℃一晩インキュベートした。少量の反応混合物を陰イオン交換HPLC(TSKgel DNA
-NPR-カラム(4.6 mM x 7.5 cm、2.5μm、東ソーバイオサイエンスから入手))に注入す
ることにより、反応の完了を監視した。反応が60%未満の場合、更に3-OST-3酵素とPAPS
を追加し、反応混合物を37℃でさらに18~24時間維持した。反応が完了した場合、反応混
合物をQ-セファロースクロマトグラフィー(GE Healthcare)にかけた。
【0057】
化合物2を合成するために、化合物1(5 mg)を、総容量100 mLの、100 mM MOPS(pH 7.
0)及び6- OST-1及び3の1 mLの酵素カクテルを含む緩衝液中で6-OST-1、6-OST-3酵素及び
1.3 mM PAPSと共に37℃で一晩インキュベートした。少量の反応混合物を陰イオン交換HPL
Cに注入することにより、反応の完了を監視し、生成物をQ-セファロースにより精製した

化合物3を合成するために、化合物2(4 mg)を、総容量100 mLの、18 mM MOPS(pH 7.0
)、5 mM MnCl2、5 mM MgCl2、及び6 mL 3-OST-1(4μg/ mL)を含む緩衝液中で1.3 mM P
APSと共にインキュベートした。この反応混合物を37℃一晩インキュベートした。少量の
反応混合物を陰イオン交換HPLCに注入することにより、反応の完了を監視し、生成物をQ-
セファロースにより精製した。
【0058】
化合物4~6の合成は、八糖(GlcNS-GlcA-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-IdoA2S-GlcNS-GlcA-pNP
)(NS2S 8-mer基質と呼ぶ)を出発物質として使用した。
化合物4を合成するため、この基質30 mgを、総容量90 mLの、33 mg MOPS(pH 7.0)、1
0 mM MnCl2、5 mM MgCl2、及び4 mL 3-OST-3(0.11 mg/mL)を含む緩衝液中で、2 mM PAP
Sと共にインキュベートした。この反応混合物を37℃で一晩インキュベートした。少量の
反応混合物を陰イオン交換HPLCに注入することにより、反応の完了を監視した。反応が60
%未満の場合、更に3-OST-3酵素とPAPSを追加し、反応混合物を37℃でさらに18~24時間
維持した。反応が完了したら、反応混合物をQ-セファロースクロマトグラフィー(GE Hea
lthcare)にかけた。
【0059】
化合物5の合成のために、化合物4(22 mg)を、総容量100 mLの、100 mM MOPS(pH 7.0
)及び6- OST-1及び3の混合物3 mLを含む緩衝液中で6-OST-1、6-OST-3酵素及び0.8 mM PA
PSと共に37℃で一晩インキュベートした。少量の反応混合物を陰イオン交換HPLCに注入す
ることにより、反応の完了を監視し、生成物をQ-セファロースにより精製した。
化合物6を合成するために、化合物5(6.5 mg)を、総容量100 mLの、18 mM MOPS(pH 7
.0)、5 mM MnCl2、5 mM MgCl2、及び4.5 mL 3-OST-1(4μg/mL)を含む緩衝液中で及び1
.3 mM PAPSと共にインキュベートした。この反応混合物を37℃一晩インキュベートした。
少量の反応混合物を陰イオン交換HPLCに注入することにより、反応の完了を監視し、生成
物をQ-セファロースにより精製した。
【0060】
3-OST-1及び3-OST-3の基質特異性
3-OST-1及び3-OST-3の基質要件を決定するために、異なるサイズの構造的に均一な複数
のオリゴ糖を使用した。これらのオリゴ糖には、N-硫酸化及び2-O-硫酸化6-mer~12-mer
(6-mer2S~12-mer2S)及びN-硫酸化、2-O-硫酸化及び6-O-硫酸化6-mer~12-mer (6-mer2
S6S~12-mer2S6S)が含まれる。これらのオリゴ糖は化学酵素的方法1により調製され、
それらの構造は図5Cに示されている。
オリゴ糖(0.033 mM)を、50 mM MOP(pH 7.0)、10 mM MnCl2、5 mM MgCl2、2.5μL3-
OST-1又は3-OST-3、及び[35S] PAPS(1-3 x 105 cpm)と混合した30μMのPAPSを含む100
μL反応緩衝液中で37℃で1時間インキュベートした。この反応混合物に、1.4 mM EDTA、5
0 mM酢酸ナトリウム、及び150 mM NaClを含む900μLの3 M尿素を加えて反応を停止した。
次いで、この反応混合物をDEAEカラムを用いて精製した。
【0061】
異なる複数のオリゴ糖基質に対する3-OST-3の速度論的分析
酵素反応速度は、N-硫酸化及び2-O-硫酸化のオリゴ糖のために精製3-OST-3 30μL又はN
-硫酸化、2-O-硫酸化及び6-O-硫酸化のオリゴ糖のために精製3-OST-3 60μLの混合物を
インキュベートすることによって特徴付けた。PAPS(120μM)を、硫酸ドナーとしての1×1
05cpmの[35S] PAPS及び0~200μMの様々な濃度のオリゴ糖と、37℃で1時間混合した。3
5S標識オリゴ糖生成物を精製するために、反応液をDEAEカラムに入れた。35S標識オリゴ
糖生成物の量を基質濃度に対してプロットし、Sigma Plotソフトウェアを使用してMichal
is-Mentenグラフのカーブフィッティングを行い、Km及びVmax値を得た。
【0062】
Q-セファロースによる化合物1~6の精製
硫酸化オリゴ糖の精製を、Q-Sepharoseカラムを用いて行った。移動相Aは25 mMトリス
、pH 7.5であり、移動相Bは、25 mMトリス及び1 M NaCl、pH 7.5が含む。溶出勾配は、1
mL/minの流量で合成されたオリゴ糖の硫酸基数に基づく。310 nm及び260 nmにおける吸収
をスキャンして記録した。精製後、サンプルを、5mMリン酸ナトリウム(pH 7.5)を含む
緩衝液に対して1000 MWCO膜を使用して、2回透析した。
【0063】
合成オリゴ糖のHPLC分析
TSKgel DNA-NPR-カラムを用いて、反応の完了度と精製後の合成オリゴ糖の純度を検出
した。移動相Aは25 mMトリス、pH 7.5であり、移動相Bは、25 mMトリス及び1 M NaCl、pH
7.5であった。勾配段階は、0.4 mL/minの流量で100分間で0-100%Bであった。310 nm及
び260 nmにおける吸収を使用して、溶離液をモニターした。
【0064】
オリゴ糖のESI-MS分析
合成されたオリゴ糖の分子量構造を、ESI-MS(Thermo LCQ-Deca)により決定した。ESI
-MS分析は、負イオンモードで、次のパラメーターを使用して行った:Iスプレー電圧3.0
kV、曲線状の脱溶媒線温度120℃、質量範囲300~1000。
【0065】
3-O-[34S]硫酸化化合物3の調製
3-O-[34S]硫酸化化合物4を合成するために、基質NS2S 8-mer(2 mg)を、38 mM MOPS(
pH 7.0)、10 mM MnCl2、5 mM MgCl2、及び6 mL 3-OST-3を含む総容量20 mLの緩衝液中で
、3-OST-3酵素(0.11 mg/mL)及び0.1 mM [34S] PAPSと共にインキュベートした。この反
応混合物を37℃一晩インキュベートした。生成物の精製を、Q-セファロースカラムを使用
して行った。
【0066】
3-OST-3修飾八糖のタンデムMS分析
タンデム質量スペクトル分析を、負イオンモードのThermo LTQ-FT機器上で、次のパラ
メーターを使用して取得した:Iスプレー電圧3.5 kV、毛管電圧-40 kV、チューブレンズ-
50 V、毛細管温度275℃。タンデム質量の場合、選択されたプリカーサーイオンは、次の
パラメーターで実行された:IsoWidth(m/z):3.0、標準化衝突エネルギー(%):50.0
、Act.Q:0.250、Act.時間:30、最大注入時間(ms):500.000。MS及びMS/MSデータは、
Xcalibur 2.2ソフトウェアを使用して記録し処理された。
【0067】
NMRによる化合物1~6の構造解析
NMR実験は、Topsin 3.2ソフトウェアを備えたBruker Avance 700 MHz及び850 MHz分光
計により298 Kで行なった。複数のサンプル(0.5~3.0 mg)をそれぞれ0.5 ml D2O(99.9
96%、Sigma-Aldrich)に溶解し、3回凍結乾燥して交換可能なプロトンを除去した。これ
らのサンプルを0.5 ml D2Oに再溶解し、NMRマイクロチューブ(外径5 mM、Norrell)に移
した。化学シフトは、外部の2,2-ジメチル-2-シラペンタン-5-スルホン酸ナトリウム塩(
DSS、Sigma. Co.)を基準とする。重水素化EDTA(Sigma. Co.)を加えて、常磁性イオン
による影響を除去した。1D 1H-NMR実験"zg"パルスシーケンスは、64スキャン及び取得時
間3.8秒で実行された。1D 13C-NMR実験"zgdc30"パルスシーケンスは、10,000回のスキャ
ン及び取得時間1.0秒で実行された。2D1H-13C HSQC実験"hsqcgpph"パルスシーケンスは、
48スキャン、512インクリメント、緩和遅延1.5秒、取得時間120ミリ秒で実行された。2D
スペクトルはGARPカーボンデカップリングを用いて記録された。取得開始前に48回のダミ
ースキャンを使用した。f2で合計2048ポイントが収集された。13Cトランスミッターオフ
セットは90.0 ppmに設定された。
【0068】
分子動力学の前処理
アンチトロンビン(AT)-五糖複合体(PDB ID:3EVJ)の既存の結晶構造を、システム
の開始構造として採用した47。アミノ酸残基25-33及び396はこの結晶構造で解析されてい
なかったため、Modellerへのキメラインターフェイスを用いて生成した48-51。N-グリカ
ンは、フォンダパリヌクスリガンドから遠位(>15Å)にあるため、除去された。この元
のリガンドは、さまざまなシミュレーション用に修正され、キメラを用いて手動で調整さ
れた。アミノ酸及び炭水化物残基のパラメーターは、ff14SB7及びGLYCAM06(J-1)力場か
ら得た53, 54。システムはNa +イオンで中和され、複合体の周囲12Åの切り捨てられた8
面体ボックス内のTIP3P水モデルで溶媒和された。
【0069】
分子動力学プロトコル
AMBER14のpmemd.cudaモジュールを使用して、エネルギーの最小化とMDシミュレーショ
ンを実行した52。タンパク質骨格のCα原子は、プロセスのすべての段階でデカルト拘束
(10 kcal/molÅ2)で制限されていた。2つのシミュレーションでは、1C4又は2S0立体配
座を維持するためにIdoA2S残基d(図4A)の内部拘束が必要であり、前述の設定に従って
実行された55。残りの24,000サイクルで共役勾配に切り替える前に、最初の1000サイクル
で最急降下法を使用してシステムを最小化した。アンチトロンビン(AT)-オリゴ糖複合
体の安定した配置の生成を支援するために、さまざまな原子拘束で2つの最小化を実行し
た。最初、すべての溶質原子は抑制されていた。その後、リガンドの拘束とタンパク質の
側鎖が取り除かれた。静電相互作用をパーティクル-メッシュ エワルド アルゴリズムで
処理し56、非結合相互作用の8Aカットオフを採用した。SHAKEアルゴリズムを水素含有結
合に適用して、2 fsの積分時間段階が可能になった。カップリング時定数1 psのBerendse
nサーモスタットを使用して、システムを60 ps以上に渡ってNVT条件下で300 Kに加熱し、
NPT条件下で合計50 nsの間平衡化した。同じくNPT条件下で、さらに追加の150 nsの間、
平衡化後のデータセットを収集した。
【0070】
シミュレーションデータ分析
相互作用エネルギーを、MPBSA.py.MPIモジュールを使用して、単一軌道分子力学-一般
化Born Solvent Accessible Surface Area(MM-GBSA)法で計算した57。この分析の前に
、すべての水分子とイオンを各複合体から除去し、脱溶媒和エネルギーからの寄与をGB暗
黙溶媒和モデルによって近似した(igb=2)58。このシミュレーションを5 nsのビン(bin
)に分割し、各ビン内に均等に分布した100個のスナップショットのアンサンブルから、
平均相互作用エネルギーの寄与を計算した。GraphPad Prism for Windowsバージョン5.04
を用いて統計分析を行った。t検定分析による
【数1】
に基づいて有意性を決定した。Visual Molecular Dynamicsプログラムを用いて画像を作
成した59
【0071】
インビトロの抗FXa活性測定
Xa因子(Enzyme Research Laboratories, South Bend, IN)を、1 mg/mLのウシ血清アル
ブミン(BSA)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で60 nMに希釈した。1 mg/mL BSAを含む
PBS中で0.65μMの濃度のヒトアンチトロンビン(AT)(Cutter Biologicalから入手)を
調製した。発色基質S-2765(Diapharma)を水に溶解して、1mg/mLストック溶液を作成し
た。PBS中で様々な濃度(10~200 nM)の複数のオリゴ糖を作成した。この溶液は、60μL
のアンチトロンビン(AT)と15μLのサンプル溶液の混合物であり、これを撹拌し、室温
で2分間インキュベートした。次いでこれにXa因子(90μL)を添加し、室温で4分間イン
キュベートし、その後30μLのS-2765を添加した。この反応混合物の405 nmにおける吸光
度を2分間連続して測定した。IC50値の計算は、サンプル濃度と初期反応速度の関数とし
てプロットした。
【0072】
インビボの抗FXa効果の測定
すべての研究は、実験動物の管理と使用に関する公衆衛生サービスのガイドラインに従
って、ノースカロライナ大学の施設内動物管理使用委員会(IACUC)承認プロトコルの下
で実施した。16匹の400-gルイスラットを4つのグループに均等に分けた。各グループに、
エンドトキシンを含まないフォンダパリヌクス(0.46μMkg-1)、化合物11(0.43μMkg-1
)、化合物5(0.42μMkg-1)、又は生理食塩水を静脈内投与した。次に、化合物の投与直
前に1つのサンプルを採取しておき、化合物を投与した後、指定の時点(0.5、1、2、4、8
時間)に採血した。化合物の注入直前に1つのサンプルを採取しておき、化合物注入の0.5
、1、2、4、8時間後に、対側大腿骨/伏在静脈から0.8 mLの血液を採取し、150 mMクエン
酸塩に入れた。これらのサンプルを遠心分離して、約400μLの血漿を得た。これらの血液
サンプルをFXa活性分析にかけた。体液量を維持するために生理食塩水を定期的に皮下投
与した。
【0073】
薬物で処理した動物からのオリゴ糖のクリアランスの決定
各化合物について作成した検量線を使用して、反応混合物中の化合物の濃度を読み取り
、対応する各FXa活性割合(%)を得た。各時点で各グループ中の4匹のラット間の平均血漿
濃度と標準偏差を計算した。これらの値を使用して、時間に対する血漿濃度のグラフをプ
ロットした。
【0074】
実施例1
GlcNS3S及びGlcNS3S6S残基を持つオリゴ糖の化学酵素的合成
本研究において、六糖(化合物1~3、図1A)及び八糖(化合物4~6、図1A)の合成を達
成した。2つの3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)アイソフォーム、3-OST-1及び3-O
ST-3を使用して、GlcNS3S±6S残基を異なる糖配列に導入した。3-OST-1酵素は、硫酸化を
導入し、非還元末端のGlcA残基に結合するGlcNS3S6S残基を形成し、-GlcA-GlcNS3S6S-の
二糖単位を形成する。一方、3-OST-3酵素は、硫酸化を導入し、非還元末端のIdoA2S残基
に結合するGlcNS3S残基を形成し、-IdoA2S-GlcNS3S-の二糖単位を形成する。3-OST-1は、
多くの研究でオリゴ糖の合成に使用されてきたが16,17,27,28、3-OST-3を使用して-IdoA2
S-GlcNS3S-二糖単位を含むオリゴ糖を合成することは報告されていない。
【0075】
本明細書において、3-OST-3と3-OST-1とが異なる基質要件を有するという発見を開示す
る。3-OST-1酵素は、既に6-O-硫酸化されたオリゴ糖基質を硫酸化するが、6-O-硫酸化さ
れていないオリゴ糖基質に対して非常に低い反応性しか示さない(図5A及び5B)。これは
上述の結論と一致する16。対照的に、3-OST-3は、6-O-硫酸化されていないオリゴ糖を優
先的に硫酸化するが(図5A及び5B)、これら6-O-硫酸化されたオリゴ糖基質の3-OST-3修
飾に対する反応性は低い(図5A、5B及び5C)。動力学的分析の結果は、3-OST-3は
、6-O-硫酸化されていないオリゴ糖基質に対してより高い触媒効率(kcat/Kmの値によっ
て決定される)を持つことを示す(表1)。
【0076】
【表1】
【0077】
3-OST-1及び3-OST-3に対する基質要件が異なるという発見は、本明細書
に開示されるように、異なる3-O硫酸化糖順序を持つ複数のオリゴ糖を合成するために
2つの異なるスキームの開発をもたらした。IdoA2S-GlcNS3S±6S二糖単位を含むオリゴ糖
(それぞれ図6A、6B、6D及び6Eに示す化合物1、2、4及び5)の合成について、3-OST-1に
よる3-O-硫酸化は6-O-硫酸化段階の前に導入される(図1B)。一方、GlcA-GlcNS3S6S二糖
単位を含むオリゴ糖の合成については、3-OST-3による3-O-硫酸化は6-O-硫酸化段階の後
で行われる(図1B)(図6C及び6Fに示す化合物3及び6)。アンチトロンビン(AT)結合ド
メインは、-GlcNS(又はAc)6S-GlcA-GlcNS3S±6S-IdoA2S-GlcA-GlcNS6S-の五糖単位を含
み、そこの3-O-硫酸化は、高い結合親和性に必要でありうる24,29。本研究で試験したオ
リゴ糖のうち、化合物8と11のみがこの五糖単位を含む。
【0078】
実施例2
オリゴ糖の構造及び立体配座解析
化合物1~6の純度測定及び構造分析を実施した。化合物6(図6F)の分析の代表的な
データを図 2A及び2Bに示す。化合物6は、高分解能陰イオン交換HPLCで単一ピークとして
溶出され、この化合物が純粋であることを示す(図2A)。化合物6の分子量は、エレクト
ロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により2449.43±0.74と決定された。これは分子
量の計算値2448.92に非常に近い(図2B)。化合物6の1 H-NMRスペクトルは、8つのアノマ
ープロトンを明確に示し、生成物が八糖であることが確認される。化合物6の13 C-NMR及
び完全なNMR帰属をそれぞれ補足図25及び補足表1に示す。化合物4の3-O-スルホ基を特定
するために、タンデムMS分析を実施した。この分析において、安定した同位体標識[34S]
スルホ基が3-OST-3酵素によって導入され、化合物4の残基dに3-O-スルホ基が存在するこ
とを明確に特定できた。化合物4は化合物5と6の中間体であるので、化合物4のタンデムMS
分析は、化合物5及び6のIdoA2S-GlcNS3S6S二糖単位の特定にも役立った。
【0079】
IdoA2S残基のピラノース環は、チェア型(1C4及び4C1)及びスキューボート型(2S0
を含む異なる立体配座間で相互変換する(図1C)。隣接するIdoA2S残基の立体配座に対
する3-O硫酸化の影響を調べた。立体配座解析は、3結合プロトン-プロトン結合定数(3JH
-H)を測定することにより、NMRにより完了した30。GlcNS3S6S残基のない六糖のIdoA2S残
基(化合物7)と比較すると、3-O-硫酸化により、六糖中のIdoA2S残基の2SO配座異性体の
数が増加する(化合物1~3、表2及び図1A)。化合物3において、IdoA2S残基はほぼ排他
的に2S0立体配座を示す。八糖(化合物4~6、表2及び図1A)の場合、残基c及びeと呼ばれ
る2つのIdoA2S残基が存在する。2S0の数(割合)に対する3-O硫酸化の影響は様々である
。たとえば、3-O-硫酸化は、GlcNS3S6S残基のない8糖のIdoA2S残基(化合物10)と比較し
て、化合物5に示されるように、両方の側面IdoA2S残基の2S0の集団の数(割合)を増加さ
せる。化合物11においては、残基fの3-O硫酸化により、隣接するIdoA2S残基(残基e)の2
S0の集団の数(割合)は増加するが、化合物10の対応する残基と比較して、離れたIdoA2S
残基(残基c)には影響しない。化合物6においては、残基d及びfの3-O硫酸化により、残
基eの2S0の集団の数(割合)が増加するが、化合物5の対応する残基と比較して、残基cの
2S0の集団の数(割合)が71%から58%に減少した(表2)。これらの観察は、3-O-硫酸化
が、IdoA2S残基の立体配座への影響を介してヘパラン硫酸(HS)の構造を調節することを
示唆する。
【0080】
【表2】
【0081】
実施例3
-GlcNS3S6S-IdoA2S-二糖単位の存在は、抗凝固活性に影響を与える。
ヘパラン硫酸(HS)のオリゴ糖は、アンチトロンビン(AT)と相互作用することにより
抗凝固活性を発揮する。したがって、抗FXa活性を示すオリゴ糖はATに結合する筈である
。GlcNS3S6S残基を取り囲む糖残基の、AT結合及び抗FXa活性に対する効果を調べた。これ
らのデータは、-GlcNS3S6S-IdoA2S-二糖単位(即ち、GlcNS3S6S残基の還元末端にIdoA2S
が位置する)の存在が、抗凝固活性の決定に果たす役割を明らかにすることができる(表
3)。化合物2及び8は、6つの残基、8つのスルホ基、1つのIdoA2S及び2つのGlcA残基を有
するが、化合物8のみが抗FXa活性を示した(図3A及び表3)。予想されたとおり、アンチ
トロンビン(AT)は化合物8に強く結合するが(Kd値7±2 nM)、ATは化合物2には結合し
ない(表3)。これらの化合物は、構造的に、IdoA2S残基の位置が異なる。化合物8におい
ては、3-O硫酸化グルコサミン(GlcNS3S6S)残基の還元末端にIdoA2S残基が隣接し、化合
物8は-GlcNS3S6S-IdoA2S-二糖単位を持つ。一方、化合物2のGlcNS3S6Sはその残基の還元
末端にGlcA残基が隣接し、-GlcNS3S6S-GlcA-二糖単位を有する。
【0082】
【表3】
【0083】
ここでの発見は、2SO構造が抗凝固活性に影響を与えるという以前に発表された結論と
一致する9。化合物8中のIdoA2S残基は2SO立体配座を示す。一方、化合物2においては、こ
の位置は4C1立体配座をとるGlcA残基によって占められている。アンチトロンビン(AT)
とフォンダパリヌクスとの複合体のX線結晶構造とNMR溶液構造は、IdoA2S残基が複合体の
2SO立体配座に存在することを示す31,32。IdoA2S残基が2SO立体配座を示すIdoA残基で置
換された、IdoA含有6量体(6-mer)は、抗FXa活性を示した30(表3)。しかし、IdoA2S残基
4C1立体配座を示すGlcA2S残基で置換されたGlcA2S含有6量体は、抗FXa活性を示さなか
った8(表2)。化合物3は、この6量体(6-mer)は2つのGlcNS3S6S残基で構成されているた
め、強い抗FXa活性を示し(図3A及び表3)、同様の五糖ドメインを含む八糖について以前
に公開された結果と一致した32。化合物3の残基d及びcは、-GlcNS3S6S-IdoA2S-二糖単位
を構成する。
【0084】
実施例4
アンチトロンビン(AT)結合ドメイン中のGlcA残基はIdoA2S残基で置換可能である
これらの研究により、新しいAT結合糖配列が明らかにされた。現在知られているAT結合
配列は、二糖-GlcA-GlcNS3S±6S-単位を含んでいる33。ヘパラン硫酸(HS)中の-GlcA-Gl
cNS3S6S-二糖単位を-IdoA2S-GlcNS3S6S-二糖単位で置換することは、AT結合親和性を無効
にすると認識されていた34,35。8-merの抗FXa活性及びAT結合分析からのデータは、この
主張に明らかに異議を唱えた。IdoA2S-GlcNS3S6S-(-GlcA-GlcNS3S6S-ではない)二糖単
位を含む化合物5は、強い抗FXa活性を示す(表3)。等温滴定熱量測定(ITC)を使用した
AT結合親和性分析も、化合物5がアンチトロンビン(AT)にしっかりと結合することを実
証した(図3B及び表3)。化合物6は、この8量体は-GlcA-GlcNS3S6S-二糖単位を含むので
、抗FXa活性と高いAT結合親和性を示す(表3)。
【0085】
化合物5の抗凝固活性は、更に、ラットモデルを使用したインビボ実験で確認された。
そのために、化合物5を投与し、その抗FXa効果をフォンダパリヌクス及び以前に抗凝固性
の8糖であることが報告された化合物11と比較した17。その結果は、化合物5が、薬物投与
後30分以内に、フォンダパリヌクス及び化合物11の抗FXa効力に匹敵する効力を有するこ
とを実証した(図3C)。しかし、化合物5の抗FXa効果は4時間後に減少した。その一方で
フォンダパリヌクス及び化合物11の抗FXa効果は8時間後も持続した(図3C)。血液サンプ
ル中の薬物濃度を取得して、各化合物のインビボでのクリアランス速度を決定した(図3D
)。フォンダパリヌクス及び化合物11と比較して、化合物5は最初の2時間で素早く動物か
ら除去された。
【0086】
アンチトロンビン(AT)結合部位中の残基d(図4A)の構造的乱雑性は、様々な修飾
ヘパラン硫酸(HS)五糖との複合体におけるアンチトロンビン(AT)の分子動力学(MD
)シミュレーションにより裏付けられている。この計算技術は、アンチトロンビン(AT)
とフォンダパリヌクスの共結晶構造内でAT結合に必須であることが知られている部分を置
換することによって最初に検証された24,36。結合の自由エネルギーの計算により、残基c
上の3-O硫酸塩を除去すること又は残基bをGlcAで置換することは、相互作用エネルギーが
それぞれ29%と17%大幅に弱められたことで示されたように、複合体を不安定化すること
が確認され、実験データと定性的に一致した。これとは対照的に、GlcA(残基d)を1C4立
体配座中のIdoA2Sで置換しても、自由エネルギーに影響はなかった(図4B)。興味深いこ
とに、2SO立体配座中のIdoA2S残基による置換は結合エネルギーをわずかに12%増強し(
図4B)、これは、残基dが2SO立体配座のIdoA2Sであるならば、より安定したアンチトロン
ビン(AT) /五糖複合体の可能性を示す。両方の立体配座のIdoA2Sは、フォンダパリヌク
スのシミュレーションにおいてGlcA残基について見出されたように、このタンパク質に関
してカルボキシル部分の同様の位置を維持することができた。以上をまとめると、これら
の分子動力学(MD)データは、残基dをIdoA2S残基で置換してもアンチトロンビン(AT)へ
の結合親和性が低下しないという結論を支持し、化合物5が、アンチトロンビン(AT)の
標準的な五糖配列を欠くにもかかわらず、如何に活性な抗凝固剤として作用するかを説明
する。
【0087】
実施例5
7-mer ヘパラン硫酸(HS)化合物の分析
ここで開示された合成方法を使用して、7-merのヘパラン硫酸(HS)化合物又はヘパリン
類似体を展開した。図8Bにその構造が示されている7-merを、抗Xa活性について試験し、
その抗Xa活性を実証した(図8A)。図8Bは、そこに示すように、7-merの化学構造を6-m
er及び8-merと概略的に比較する。限定ではなく例として、7-merを合成するための少なく
とも1つの合成経路を図8Cに示す。いくつかの実施態様において、合成に関連するコスト
の削減を可能にするので、7-merなどの比較的短いオリゴ糖を有することが好ましい場合
がある。
【0088】
実施例6
結果の議論
本明細書には、化学酵素的アプローチを使用して3-O-硫酸化オリゴ糖ライブラリーを調
製する複数のスキームが開示される。本明細書において、-IdoA2S-GlcNS3S-又はIdoA2S-G
lcNS3S6S-二糖単位を含むオリゴ糖を合成するためには、3-OST-3修飾が6-O-硫酸化段階に
先行しなければならず、一方、-GlcA-GlcNS3S6S-二糖単位を生成するためには、3-OST-1
修飾が 6-O-硫酸化後にのみ起きなければならないことが示されている。この発見は、3-O
ST-1/ 七糖/PAP37及び3-OST-3/四糖/PAP38の三元共結晶構造によってサポートされて
いる。3-OST-3と四糖基質の6-O-スルホ基との間に相互作用はなく、このことは3-OST-3の
オリゴ糖基質は6-O-硫酸化を必要としないという結論と整合する。これとは対照的に、3-
OST-1と七糖基質の6-O-スルホ基との間に相互作用が観察され、3-OST-1に結合するには6-
O-硫酸化が必要であることを示す。3-OST-1と3-OST-3との間のこの明確でユニークな基質
要件は、3-OSTの異なるアイソフォームによって修飾された3-O硫酸化ヘパラン硫酸(HS)
は異なる経路を経由して生合成される可能性を提起する。
【0089】
3-OST-1酵素が抗凝固剤ヘパラン硫酸(HS)の合成に関与するのに対し、3-OST-3酵素は
そうではないことは広く受け入れられてきた34,35。これまでに単離されたAT結合配列は
、すべて3-OST-1酵素修飾の産物である-GlcA-GlcNS3S6S-二糖反復単位で構成されていた3
3,39。3-OST-3酵素修飾の生成物である化合物5は-GlcA-GlcNS3S6S-二糖単位を含まないが
、ATに結合して抗凝固活性を示す。これらの発見は、このヘパラン硫酸(HS)が化合物5
の構造ドメインと同様の構造ドメインを含む限り、3-OST-3が抗凝固剤ヘパラン硫酸(HS
)を合成できることを示唆する。
【0090】
化合物5の迅速なクリアランスは、出血リスクが低減された潜在的な新しい短時間作用
型抗凝固薬候補を提供する。主要な出血効果が発現する前に循環系から急速に除去される
ことができる短時間作用型の抗凝固薬は、出血リスクの高い患者に特に有益である41。未
分画ヘパリンは半減期が短い抗凝固剤であるが、この薬物がヘパリン誘発性血小板減少症
(HIT)を引き起こすこと(これは命にかかわる副作用である)が懸念される42。12単量
体(12-mers)より小さい短オリゴ糖は血小板因子4に結合しないため43、ヘパリン誘発性血
小板減少症(HIT)のリスクを示さないことがわかっている。したがって、化合物5は八糖
として、HITのリスクが非常に低いと予想される。3-O-硫酸化オリゴ糖が入手可能である
ことは、糖の硫酸化/立体配座と生物学的機能との間のカジュアルな関係を調査する機会
も開く。これは、ヘパラン硫酸(HS)の構造と機能との関係を詳細に調べるための大きな
前進である。ヘパラン硫酸(HS)3-OSTは7つの異なるアイソフォームで存在する。本研究
においては、異なる3-O-硫酸化オリゴ糖配列を調製するために、3-OST-1及び3-OST-3に異
なる化学酵素スキームが必要であることを実証する。この研究の結論は、他の人達を、異
なる3-OSTアイソフォームを使用した化学酵素法の開発に導き、これは3-O-硫酸化グルコ
サミン残基を含むより広範な硫酸化パターンを持つより複雑なヘパラン硫酸(HS)糖類の
調製を可能にする。これらの研究は、ヘパラン硫酸(HS)のオリゴ糖ライブラリを充実さ
せ、ヘパラン硫酸(HS)関連の研究を支援する。
【0091】
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図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5AB
図5C
図6AB
図6CD
図6EF
図7
図8A
図8B
図8C
【手続補正書】
【提出日】2023-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の一発明。
【外国語明細書】