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▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166390
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】半導体装置、電子機器
(51)【国際特許分類】
   G11C 11/54 20060101AFI20231114BHJP
   G06N 3/063 20230101ALI20231114BHJP
   G06N 3/065 20230101ALI20231114BHJP
   G06F 12/00 20060101ALI20231114BHJP
   G11C 11/405 20060101ALI20231114BHJP
   G06G 7/60 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231114BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G11C11/54
G06N3/063
G06N3/065
G06F12/00 560F
G11C11/405
G06G7/60
H01L27/088 E
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H01L27/04 C
H01L27/06 102A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023130363
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2020524940の分割
【原出願日】2019-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2018114294
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018144980
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】黒川 義元
(72)【発明者】
【氏名】井上 達則
(57)【要約】
【課題】積和演算が可能な半導体装置において、トランジスタ特性のばらつきを低減する。
【解決手段】駆動部と、補正部と、保持部と、を含む第1回路と、インバータ回路と、を有する半導体装置であって、第1回路は、第1回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、当該反転信号を第1回路の出力端子に出力する機能を有する。駆動部は、pチャネル型の第1トランジスタと、nチャネル型でバックゲートを有する第2トランジスタと、を有し、補正部は、第1トランジスタと第2トランジスタの一方または両方のしきい値電圧を補正する機能を有し、保持部は、第2トランジスタのバックゲートの電位を保持する機能を有する。第1回路の出力端子は、インバータ回路の入力端子に電気的に接続されている。第1回路の入力端子に信号が入力されてから、インバータ回路の出力端子から信号が出力されるまでの時間は、第2トランジスタのバックゲートの電位に依存する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路を有し、
前記回路は、駆動部と、補正部と、第1保持部と、を有し、
前記駆動部は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、を有し、
前記第2トランジスタは、pチャネル型トランジスタであって、
前記第1トランジスタは、第1ゲートと、第2ゲートと、を有するnチャネル型トランジスタであって、
前記駆動部は、前記回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、前記反転信号を前記回路の出力端子に出力する機能を有し、
前記補正部は、前記第1トランジスタ及び/又は前記第2トランジスタのしきい値電圧を補正する機能を有し、
前記第1保持部は、前記第1トランジスタの前記第2ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記補正部は、第1乃至第4スイッチと、第1容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子は、前記第1トランジスタの前記第1ゲートと、前記第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は、前記第1スイッチの第1端子と、前記回路の出力端子と、に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第1スイッチの第2端子と、前記第2スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第2端子は、前記第3スイッチの第1端子に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第2スイッチの第2端子と、前記第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第1容量素子の第2端子は、前記第3スイッチの第2端子と、前記第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第4スイッチの第2端子は、前記第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記補正部は、第3乃至第8スイッチと、第1容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子は、前記第2トランジスタのゲートと、第5スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第5スイッチの第2端子は、前記第1トランジスタの前記第1ゲートと、前記第7スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は、前記第1トランジスタの第1端子と、前記回路の出力端子と、
に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第2端子は、前記第3スイッチの第1端子と、前記第7スイッチの第2端子と、前記第8スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第6スイッチの第1端子と、前記第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第1容量素子の第2端子は、前記第3スイッチの第2端子と、前記第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第4スイッチの第2端子は、前記第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記補正部は、第1乃至第4スイッチと、第1容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子は、前記第1トランジスタの前記第1ゲートと、前記第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は、前記第1トランジスタの第1端子と、前記回路の出力端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第1スイッチの第1端子に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第2スイッチの第1端子に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第2端子は、前記第3スイッチの第1端子に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第2スイッチの第2端子と、前記第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第1容量素子の第2端子は、前記第3スイッチの第2端子と、前記第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第4スイッチの第2端子は、前記第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記補正部は、第8乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子は、前記第10スイッチの第1端子と、前記第1トランジスタの前記第1ゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は、前記第1トランジスタの第1端子と、前記第11スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第9スイッチの第1端子に電気的に接続され、
前記第10スイッチの第2端子は、前記第9スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第11スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第2端子と、に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記回路の出力端子に電気的に接続され、
前記第8スイッチは、前記第1トランジスタの第1端子と前記第2トランジスタの第1端子との間に電気的に接続される回路素子、又は前記第1トランジスタの第2端子に電気的される回路素子であり、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記補正部は、第1、第9、第10、第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子は、前記第10スイッチの第1端子と、前記第1トランジスタの前記第1ゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第1端子は、前記第1トランジスタの第1端子と、前記回路の出力端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第1スイッチの第1端子と、前記第9スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第10スイッチの第2端子は、前記第9スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第11スイッチの第1端子と、前記第2容量素子の第2端子と、に電気的に接続され、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項7】
請求項2又は請求項3において、
前記補正部は、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子と前記第2トランジスタのゲートとの間において、前記回路の入力端子と前記第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、前記第10スイッチの第2端子と前記第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、前記第2容量素子の第2端子と前記第2トランジスタの前記ゲートとが電気的に接続され、
前記第9スイッチの第1端子は、前記第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、
前記第9スイッチの第2端子は、前記第10スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第11スイッチの第1端子は、前記第2トランジスタの第2端子に電気的に接続され、
前記第11スイッチの第2端子は、前記第2容量素子の第2端子と、前記第2トランジスタの前記第1ゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項8】
請求項3において、
前記補正部は、第1スイッチと、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、
前記第1スイッチは、前記第2トランジスタの第2端子に電気的に接続され、
前記回路の入力端子と前記第2トランジスタのゲートとの間において、前記回路の入力端子と前記第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、前記第10スイッチの第2端子と前記第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、前記第2容量素子の第2端子と前記第2トランジスタのゲートとが電気的に接続され、
前記第9スイッチの第1端子は、前記第2トランジスタの第2端子と、前記第1スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第9スイッチの第2端子は、前記第10スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第11スイッチの第1端子は、前記第2容量素子の第2端子と、前記第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項9】
請求項4において、
前記補正部は、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、
前記回路の入力端子と前記第2トランジスタのゲートとの間において、前記回路の入力端子と前記第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、前記第10スイッチの第2端子と前記第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、前記第2容量素子の第2端子と前記第2トランジスタのゲートとが電気的に接続され、
前記第9スイッチの第1端子は、前記第2トランジスタの第2端子と、前記第1スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、
前記第9スイッチの第2端子は、前記第10スイッチの第2端子と、前記第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第11スイッチの第1端子は、前記第2容量素子の第2端子と、前記第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記第1保持部は、第3トランジスタと、第3容量素子と、を有し、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第3トランジスタの第1端子と、前記第3容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第3トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれか一において、
前記第1保持部は、第1インバータ回路と、第2インバータ回路と、を有し、
前記第1トランジスタの前記第2ゲートは、前記第1インバータ回路の入力端子と、前記第2インバータ回路の出力端子と、に電気的に接続され、
前記第1インバータ回路の出力端子は、前記第2インバータ回路の入力端子に電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記回路を2個含む第1回路を有し、
前記第1回路は、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、第2回路と、第3回路と、切り替え回路と、を有し、
前記切り替え回路は、第3乃至第5入力端子と、第3、第4出力端子と、を有し、
前記第1入力端子は、2個のうち一方の前記回路の入力端子に電気的に接続され、
2個のうち一方の前記回路の出力端子は、前記第3入力端子に電気的に接続され、
前記第3出力端子は、前記第1出力端子に電気的に接続され、
前記第2入力端子は、2個のうち他方の前記回路の入力端子に電気的に接続され、
2個のうち他方の前記回路の出力端子は、前記第4入力端子に電気的に接続され、
前記第4出力端子は、前記第2出力端子に電気的に接続され、
前記第2回路は、前記第1入力端子と2個のうち一方の前記回路の入力端子との間、2個のうち一方の前記回路の出力端子と前記第3入力端子との間、又は前記第3出力端子と前記第1出力端子との間のいずれか一に電気的に接続され、
前記第3回路は、前記第2入力端子と2個のうち他方の前記回路の入力端子との間、2個のうち他方の前記回路の出力端子と前記第4入力端子との間、又は前記第4出力端子と前記第2出力端子との間のいずれか一に電気的に接続され、
前記第2回路は、前記第2回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、前記反転信号を前記第2回路の出力端子に出力する機能を有し、
前記第3回路は、前記第3回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、前記反転信号を前記第3回路の出力端子に出力する機能を有し、
前記切り替え回路は、前記第5入力端子に入力された信号に応じて、前記第3入力端子と、前記第3出力端子又は前記第4出力端子の一方と、を電気的に接続させ、かつ前記第4入力端子と、前記第3出力端子又は前記第4出力端子の他方と、を電気的に接続させる機能を有する、半導体装置。
【請求項13】
請求項12において、前記第1回路を複数段、有し、
前段の前記第1回路の前記第1出力端子は、後段の前記第1回路の前記第1入力端子に電気的に接続され、
前段の前記第1回路の前記第2出力端子は、後段の前記第1回路の前記第2入力端子に電気的に接続され、
全ての前記第1回路の保持ノードのそれぞれには、対応する第1データに応じた電位が保持され、かつ全ての前記切り替え回路の前記第5入力端子のそれぞれには、対応する第2データに応じた第1信号が印加されている場合に、一段目の前記第1回路の前記第1入力端子と前記第2入力端子とにそれぞれ入力信号が入力されることによって、最終段の前記第1回路の前記第1出力端子と前記第2出力端子とから出力されるそれぞれの出力信号の時間差は、前記第1データと前記第2データの積和に応じた時間となる、半導体装置。
【請求項14】
請求項13において、第4回路を有し、
前記第4回路は、最終段の前記第1回路の前記第1出力端子と、前記第2出力端子と、に電気的に接続され、
前記第4回路は、前記出力信号の時間差に応じた信号を生成する機能を有する、半導体装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記第1トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一の半導体装置を有し、
前記半導体装置によってニューラルネットワークの演算を行う、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及び電子機器に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、方法、又は、製造方法に関するものである。又は、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、蓄電装置、撮像装置、記憶装置、信号処理装置、プロセッサ、電子機器、システム、それらの駆動方法、それらの製造方法、又はそれらの検査方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
現在、人間の脳の仕組みを模した集積回路の開発が盛んに進められている。当該集積回路は、脳の仕組みが電子回路として組み込まれており、人間の脳の「ニューロン」と「シナプス」に相当する回路を有する。そのため、そのような集積回路を、「ニューロモーフィック」や「ブレインモーフィック」と呼ぶこともある。当該集積回路は、非ノイマン型アーキテクチャを有し、処理速度の増加に伴って消費電力が大きくなるノイマン型アーキテクチャと比較して、極めて少ない消費電力で並列処理を行えると期待されている。
【0004】
「ニューロン」と「シナプス」とを有する神経回路網を模した情報処理のモデルは、人工ニューラルネットワーク(ANN)と呼ばれる。例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、及び非特許文献2には、ReRAM(Resistive Random Access Memory)を用いて、人工ニューラルネットワークを構成した演算装置について開示されている。特に、非特許文献1、及び非特許文献2には、当該演算装置を有する脳の仕組みを模した回路について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5885719号公報
【特許文献2】特開2017-228295号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. Miyashita et al., IEEE Asian Solid-State Circuits Conference, Nov. 7-9, 2016, S4-2(4077), pp.25-28.
【非特許文献2】D. Miyashita et al., IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL.52, NO.10, Oct. 2017, pp.2679-2689.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に、人工ニューラルネットワークでは、2つのニューロン同士を結合するシナプスの結合強度(重み係数という場合がある。)と、2つのニューロン間で伝達する信号と、を乗じる計算が行われる。特に、階層型の人工ニューラルネットワークでは、第1層の複数の第1ニューロンと第2層の第2ニューロンの一との間のそれぞれのシナプスの結合強度と、第1層の複数の第1ニューロンから第2層の第2ニューロンの一に入力されるそれぞれの信号と、を乗じて足し合わせる必要があり、人工ニューラルネットワークの規模に応じて、当該結合強度、当該信号を示すパラメータの数が決まる。つまり、人工ニューラルネットワークは、階層の数、ニューロン数などが多くなる程、「ニューロン」及び「シナプス」のそれぞれに相当する回路の数が多くなり、演算量も膨大になることがある。
【0008】
チップを構成する回路の数が増えると消費電力が高くなり、装置の駆動時に発生する発熱量も大きくなる。特に、発熱量が高くなるほど、チップに含まれている回路素子の特性に影響が出るため、チップを構成する回路は温度による影響を受けにくい回路素子を有することが好ましい。また、チップの作製工程において、複数の回路素子を形成するとき、当該回路素子の特性にばらつきが生じる場合があるため、チップを構成する回路は、回路素子の特性のばらつきを補正する機能を有することが好ましい。
【0009】
本発明の一態様は、階層型の人工ニューラルネットワークが構築された半導体装置などを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、消費電力が低い半導体装置などを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、環境の温度の影響を受けにくい半導体装置などを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、回路素子の特性のばらつきを補正する機能を有する半導体装置などを提供することを課題の一とする。また、本発明の一態様は、新規な半導体装置などを提供することを課題の一とする。
【0010】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び他の課題の全てを解決する必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様は、入力端子と出力端子と第1トランジスタを含む回路と、第6トランジスタと容量素子を含む第1保持部と、を有し、第1トランジスタは、第1ゲートと、第2ゲートと、を有し、第1トランジスタの第2ゲートは、第6トランジスタの第1端子と、容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第1保持部は、容量素子の第1端子に電位を保持する機能を有し、電位に応じて、回路の入力端子に入力信号が入力されてから、出力端子から出力信号が出力されるまでの時間が定まる機能を有する、半導体装置である。
【0012】
(2)また、本発明の一態様は、第1回路を有し、第1回路は、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、第2回路と、第3回路と、切り替え回路と、を有し、第2回路は、第1トランジスタを有し、第1トランジスタは、第1ゲートと、第2ゲートと、を有し、切り替え回路は、第3乃至第5入力端子を有し、第1入力端子は、第2回路の入力端子に電気的に接続され、第2入力端子は、第3回路の入力端子に電気的に接続され、第2回路の出力端子は、第3入力端子に電気的に接続され、第3回路の出力端子は、第4入力端子に電気的に接続され、第2回路は、第2回路の入力端子に入力された信号を補正して、第2回路の出力端子に補正された信号を出力する機能と、第1トランジスタの第2ゲートの電位に応じて、第2回路の入力端子に信号が入力されてから、第2回路の出力端子から補正された信号が出力されるまでの時間を変動させる機能と、を有し、第3回路は、第3回路の入力端子に入力された信号を補正して、第3回路の出力端子に補正された信号を出力する機能を有し、切り替え回路は、第5入力端子に入力された信号に応じて、第3入力端子と、第1出力端子又は第2出力端子の一方と、を電気的に接続させ、かつ第4入力端子と、第1出力端子又は第2出力端子の他方と、を電気的に接続させる機能を有する、半導体装置である。
【0013】
(3)また、本発明の一態様は、上記(2)の構成において、第1回路を複数段、有し、前段の第1回路の第1出力端子は、後段の第1回路の第1入力端子に電気的に接続され、前段の第1回路の第2出力端子は、後段の第1回路の第2入力端子に電気的に接続され、全ての第1回路の第1トランジスタの第2ゲートのそれぞれには、対応する第1データに応じた電位が印加され、かつ全ての切り替え回路の第5入力端子のそれぞれには、対応する第2データに応じた第1信号が印加されている場合に、一段目の第1回路の第1入力端子と第2入力端子とにそれぞれ入力信号が入力されることによって、最終段の第1回路の第1出力端子と第2出力端子とから出力されるそれぞれの出力信号の時間差は、第1データと第2データの積和に応じた時間となる、半導体装置である。
【0014】
(4)また、本発明の一態様は、上記(3)の構成において、第4回路を有し、第4回路は、最終段の第1回路の第1出力端子と、第2出力端子と、に電気的に接続され、第4回路は、出力信号の時間差に応じた信号を生成する機能を有する、半導体装置である。
【0015】
(5)また、本発明の一態様は、上記(2)乃至(4)のいずれか一の構成において、第2回路は、第2トランジスタと、第1保持部と、第1インバータ回路と、を有し、第1トランジスタは、nチャネル型トランジスタであって、第2トランジスタは、pチャネル型トランジスタであって、第2回路の入力端子は、第2トランジスタのゲートと、第1トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、第1インバータ回路の入力端子と、に電気的に接続され、第1インバータ回路の出力端子は、第2回路の出力端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続され、第1保持部は、第1トランジスタの第2ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置である。
【0016】
(6)また、本発明の一態様は、上記(2)乃至(4)のいずれか一の構成において、第2回路は、第2乃至第5トランジスタと、第1保持部と、第2保持部と、第1インバータ回路と、を有し、第1トランジスタ、及び第3トランジスタは、nチャネル型トランジスタであって、第2トランジスタは、pチャネル型トランジスタであって、第4トランジスタは、第3ゲートと、第4ゲートと、を有し、第2回路の入力端子は、第2トランジスタのゲートと、第4トランジスタの第3ゲートと、第1トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第3トランジスタの第1端子と、第5トランジスタの第1端子と、第1インバータ回路の入力端子と、に電気的に接続され、第3トランジスタの第2端子は、第1トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第5トランジスタの第2端子は、第4トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第1インバータ回路の出力端子は、第2回路の出力端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続され、第4トランジスタの第4ゲートは、第2保持部に電気的に接続され、第1保持部は、第1トランジスタの第2ゲートの電位を保持する機能を有し、第2保持部は、第4トランジスタの第4ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置である。
【0017】
(7)また、本発明の一態様は、上記(2)乃至(4)のいずれか一の構成において、第2回路は、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第1保持部と、第1インバータ回路と、を有し、第1トランジスタ、及び第3トランジスタのそれぞれは、nチャネル型トランジスタであって、第2トランジスタは、pチャネル型トランジスタであって、第2回路の入力端子は、第2トランジスタのゲートと、第3トランジスタのゲートと、第1トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第3トランジスタの第1端子と、第1インバータ回路の入力端子と、に電気的に接続され、第3トランジスタの第2端子は、第1トランジスタの第1端子と、に電気的に接続され、第1インバータ回路の出力端子は、第2回路の出力端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続され、第1保持部は、第1トランジスタの第2ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置である。
【0018】
(8)また、本発明の一態様は、上記(2)乃至(4)のいずれか一の構成において、第2回路は、負荷素子と、第1保持部と、第1インバータ回路と、を有し、第2回路の入力端子は、第1トランジスタの第1ゲートに電気的に接続され、負荷素子の第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、第1インバータ回路の入力端子と、に電気的に接続され、第1インバータ回路の出力端子は、第2回路の出力端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続され、第1保持部は、第1トランジスタの第2ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置である。
【0019】
(9)また、本発明の一態様は、上記(5)乃至(8)のいずれか一の構成において、第1保持部は、第6トランジスタと、容量素子と、を有し、第1トランジスタの第2ゲートは、第6トランジスタの第1端子と、容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第6トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置である。
【0020】
(10)また、本発明の一態様は、上記(5)乃至(8)のいずれか一の構成において、第1保持部は、第2インバータ回路と、第3インバータ回路と、を有し、第1トランジスタの第2ゲートは、第2インバータ回路の入力端子と、第3インバータ回路の出力端子と、に電気的に接続され、第2インバータ回路の出力端子は、第3インバータ回路の入力端子に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0021】
(11)また、本発明の一態様は、回路を有し、回路は、駆動部と、補正部と、第1保持部と、を有し、駆動部は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、を有し、第2トランジスタは、pチャネル型トランジスタであって、第1トランジスタは、第1ゲートと、第2ゲートと、を有するnチャネル型トランジスタであって、駆動部は、回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、反転信号を回路の出力端子に出力する機能を有し、補正部は、第1トランジスタ及び/又は第2トランジスタのしきい値電圧を補正する機能を有し、第1保持部は、第1トランジスタの第2ゲートの電位を保持する機能を有する、半導体装置である。
【0022】
(12)また、本発明の一態様は、上記(11)の構成において、補正部は、第1乃至第4スイッチと、第1容量素子と、を有し、回路の入力端子は、第1トランジスタの第1ゲートと、第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1スイッチの第1端子と、回路の出力端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第1端子は、第1スイッチの第2端子と、第2スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第2端子は、第3スイッチの第1端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第2スイッチの第2端子と、第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第1容量素子の第2端子は、第3スイッチの第2端子と、第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第4スイッチの第2端子は、第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0023】
(13)また、本発明の一態様は、上記(11)の構成において、補正部は、第3乃至第8スイッチと、第1容量素子と、を有し、回路の入力端子は、第2トランジスタのゲートと、第5スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第5スイッチの第2端子は、第1トランジスタの第1ゲートと、第7スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、回路の出力端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第2端子は、第3スイッチの第1端子と、第7スイッチの第2端子と、第8スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第6スイッチの第1端子と、第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第1容量素子の第2端子は、第3スイッチの第2端子と、第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第4スイッチの第2端子は、第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0024】
(14)また、本発明の一態様は、上記(11)の構成において、補正部は、第1乃至第4スイッチと、第1容量素子と、を有し、回路の入力端子は、第1トランジスタの第1ゲートと、第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、回路の出力端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタの第2端子は、第1スイッチの第1端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第1端子は、第2スイッチの第1端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2端子は、第3スイッチの第1端子に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第2スイッチの第2端子と、第1容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第1容量素子の第2端子は、第3スイッチの第2端子と、第4スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第4スイッチの第2端子は、第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0025】
(15)また、本発明の一態様は、上記(11)の構成において、補正部は、第8乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、回路の入力端子は、第10スイッチの第1端子と、第1トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、第11スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタの第2端子は、第9スイッチの第1端子に電気的に接続され、第10スイッチの第2端子は、第9スイッチの第2端子と、第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第11スイッチの第2端子と、第2容量素子の第2端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第1端子は、回路の出力端子に電気的に接続され、第8スイッチは、第1トランジスタの第1端子と第2トランジスタの第1端子との間に電気的に接続される回路素子、又は第1トランジスタの第2端子に電気的される回路素子であり、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0026】
(16)また、本発明の一態様は、上記(11)の構成において、補正部は、第1、第9、第10、第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、回路の入力端子は、第10スイッチの第1端子と、第1トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続され、第2トランジスタの第1端子は、第1トランジスタの第1端子と、回路の出力端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタの第2端子は、第1スイッチの第1端子と、第9スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第10スイッチの第2端子は、第9スイッチの第2端子と、第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第11スイッチの第1端子と、第2容量素子の第2端子と、に電気的に接続され、第1トランジスタの第2ゲートは、第1保持部に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0027】
(17)また、本発明の一態様は、上記(12)、又は(13)の構成において、補正部は、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、回路の入力端子と第2トランジスタのゲートとの間において、回路の入力端子と第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、第10スイッチの第2端子と第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、第2容量素子の第2端子と第2トランジスタのゲートとが電気的に接続され、第9スイッチの第1端子は、第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第9スイッチの第2端子は、第10スイッチの第2端子と、第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第11スイッチの第1端子は、第2トランジスタの第2端子に電気的に接続され、第11スイッチの第2端子は、第2容量素子の第2端子と、第2トランジスタの第1ゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0028】
(18)また、本発明の一態様は、上記(13)の構成において、補正部は、第1スイッチと、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、第1スイッチは、第2トランジスタの第2端子に電気的に接続され、回路の入力端子と第2トランジスタのゲートとの間において、回路の入力端子と第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、第10スイッチの第2端子と第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、第2容量素子の第2端子と第2トランジスタのゲートとが電気的に接続され、第9スイッチの第1端子は、第2トランジスタの第2端子と、第1スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第9スイッチの第2端子は、第10スイッチの第2端子と、第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第11スイッチの第1端子は、第2容量素子の第2端子と、第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0029】
(19)また、本発明の一態様は、上記(14)の構成において、補正部は、第9乃至第11スイッチと、第2容量素子と、を有し、回路の入力端子と第2トランジスタのゲートとの間において、回路の入力端子と第10スイッチの第1端子とが電気的に接続され、第10スイッチの第2端子と第2容量素子の第1端子とが電気的に接続され、第2容量素子の第2端子と第2トランジスタのゲートとが電気的に接続され、第9スイッチの第1端子は、第2トランジスタの第2端子と、第1スイッチの第1端子と、に電気的に接続され、第9スイッチの第2端子は、第10スイッチの第2端子と、第2容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第11スイッチの第1端子は、第2容量素子の第2端子と、第2トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0030】
(20)また、本発明の一態様は、上記(11)乃至(19)のいずれか一の構成において、第1保持部は、第3トランジスタと、第3容量素子と、を有し、第1トランジスタの第2ゲートは、第3トランジスタの第1端子と、第3容量素子の第1端子と、に電気的に接続され、第3トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置である。
【0031】
(21)また、本発明の一態様は、上記(11)乃至(19)のいずれか一の構成において、第1保持部は、第1インバータ回路と、第2インバータ回路と、を有し、第1トランジスタの第2ゲートは、第1インバータ回路の入力端子と、第2インバータ回路の出力端子と、に電気的に接続され、第1インバータ回路の出力端子は、第2インバータ回路の入力端子に電気的に接続されている、半導体装置である。
【0032】
(22)また、本発明の一態様は、上記(11)乃至(21)のいずれか一の構成において、回路を2個含む第1回路を有し、第1回路は、第1入力端子と、第2入力端子と、第1出力端子と、第2出力端子と、第2回路と、第3回路と、切り替え回路と、を有し、切り替え回路は、第3乃至第5入力端子と、第3、第4出力端子と、を有し、第1入力端子は、2個のうち一方の回路の入力端子に電気的に接続され、2個のうち一方の回路の出力端子は、第3入力端子に電気的に接続され、第3出力端子は、第1出力端子に電気的に接続され、第2入力端子は、2個のうち他方の回路の入力端子に電気的に接続され、2個のうち他方の回路の出力端子は、第4入力端子に電気的に接続され、第4出力端子は、第2出力端子に電気的に接続され、第2回路は、第1入力端子と2個のうち一方の回路の入力端子との間、2個のうち一方の回路の出力端子と第3入力端子との間、又は第3出力端子と第1出力端子との間のいずれか一に電気的に接続され、第3回路は、第2入力端子と2個のうち他方の回路の入力端子との間、2個のうち他方の回路の出力端子と第4入力端子との間、又は第4出力端子と第2出力端子との間のいずれか一に電気的に接続され、第2回路は、第2回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、反転信号を第2回路の出力端子に出力する機能を有し、第3回路は、第3回路の入力端子に入力された信号の反転信号を生成して、反転信号を第3回路の出力端子に出力する機能を有し、切り替え回路は、第5入力端子に入力された信号に応じて、第3入力端子と、第3出力端子又は第4出力端子の一方と、を電気的に接続させ、かつ第4入力端子と、第3出力端子又は第4出力端子の他方と、を電気的に接続させる機能を有する、半導体装置である。
【0033】
(23)また、本発明の一態様は、上記(22)の構成において、第1回路を複数段、有し、前段の第1回路の第1出力端子は、後段の第1回路の第1入力端子に電気的に接続され、前段の第1回路の第2出力端子は、後段の第1回路の第2入力端子に電気的に接続され、全ての第1回路の保持ノードのそれぞれには、対応する第1データに応じた電位が保持され、かつ全ての切り替え回路の第5入力端子のそれぞれには、対応する第2データに応じた第1信号が印加されている場合に、一段目の第1回路の第1入力端子と第2入力端子とにそれぞれ入力信号が入力されることによって、最終段の第1回路の第1出力端子と第2出力端子とから出力されるそれぞれの出力信号の時間差は、第1データと第2データの積和に応じた時間となる、半導体装置である。
【0034】
(24)また、本発明の一態様は、上記(23)の構成において、第4回路を有し、第4回路は、最終段の第1回路の第1出力端子と、第2出力端子と、に電気的に接続され、第4回路は、出力信号の時間差に応じた信号を生成する機能を有する、半導体装置である。
【0035】
(25)また、本発明の一態様は、上記(1)乃至(24)のいずれか一の構成において、第1トランジスタは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する、半導体装置である。
【0036】
(26)また、本発明の一態様は、上記(1)乃至(25)のいずれか一の半導体装置を有し、半導体装置によってニューラルネットワークの演算を行う、電子機器である。
【0037】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップや、パッケージにチップを収納した電子部品は半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置及び電子機器等は、それ自体が半導体装置であり、半導体装置を有している場合がある。
【0038】
また、本明細書等において、XとYとが接続されていると記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも、図又は文章に開示されているものとする。X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層など)であるとする。
【0039】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示素子、発光素子、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。
【0040】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(DA変換回路、AD変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅又は電流量などを大きく出来る回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。
【0041】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが機能的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。つまり、電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、単に、接続されている、とのみ明示的に記載されている場合と同じであるとする。
【0042】
また、例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。又は、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。又は、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0043】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0044】
また、本明細書等において、トランジスタは、ゲート、ソース、及びドレインと呼ばれる3つの端子を有する。ゲートは、トランジスタの導通状態を制御する制御端子である。ソース又はドレインとして機能する2つの端子は、トランジスタの入出力端子である。2つの入出力端子は、トランジスタの導電型(nチャネル型、pチャネル型)及びトランジスタの3つの端子に与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、言い換えることができるものとする。また、本明細書等では、トランジスタの接続関係を説明する際、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)、「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)という表記を用いる。なお、トランジスタの構造によっては、上述した3つの端子に加えて、バックゲートを有する場合がある。この場合、本明細書等において、トランジスタのゲート又はバックゲートの一方を第1ゲートと呼称し、トランジスタのゲート又はバックゲートの他方を第2ゲートと呼称することがある。更に、同じトランジスタにおいて、「ゲート」と「バックゲート」の用語は互いに入れ換えることができる。また、トランジスタが、3以上のゲートを有する場合は、本明細書等においては、それぞれのゲートを第1ゲート、第2ゲート、第3ゲートなどと呼称することがある。
【0045】
また、本明細書等において、ノードは、回路構成やデバイス構造等に応じて、端子、配線、電極、導電層、導電体、不純物領域等と言い換えることが可能である。また、端子、配線等をノードと言い換えることが可能である。
【0046】
また、本明細書等において、「電圧」と「電位」は、適宜言い換えることができる。「電圧」は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電位(接地電位)とすると、「電圧」を「電位」に言い換えることができる。グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。なお電位は相対的なものであり、基準となる電位によっては、配線等に与える電位を変化させる場合がある。
【0047】
一般的に、「電流」とは、正の荷電体の移動に伴う電荷の移動現象(電気伝導)として定義されているが、「正の荷電体の電気伝導が起きている」という記載は、「その逆向きに負の荷電体の電気伝導が起きている」と換言することができる。そのため、本明細書等において、「電流」とは、特に断らない限り、キャリアの移動に伴う電荷の移動現象(電気伝導)をいうものとする。ここでいうキャリアとは、電子、正孔、アニオン、カチオン、錯イオン等が挙げられ、電流の流れる系(例えば、半導体、金属、電解液、真空中など)によってキャリアが異なる。また、配線等における「電流の向き」は、正のキャリアが移動する方向とし、正の電流量で記載する。換言すると、負のキャリアが移動する方向は、電流の向きと逆の方向となり、負の電流量で表現される。そのため、本明細書等において、電流の正負(又は電流の向き)について断りがない場合、「素子Aから素子Bに電流が流れる」等の記載は「素子Bから素子Aに電流が流れる」等に言い換えることができるものとする。また、「素子Aに電流が入力される」等の記載は「素子Aから電流が出力される」等に言い換えることができるものとする。
【0048】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0049】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書等で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。例えば、「導電体の上面に位置する絶縁体」の表現では、示している図面の向きを180度回転することによって、「導電体の下面に位置する絶縁体」と言い換えることができる。
【0050】
また、「上」や「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上又は直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0051】
また、本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、場合によっては、又は、状況に応じて、「膜」、「層」などの語句を使わずに、別の用語に入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」又は「導電膜」という用語を、「導電体」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁層」「絶縁膜」という用語を、「絶縁体」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0052】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0053】
また、本明細書等において、「配線」、「信号線」、「電源線」などの用語は、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「配線」という用語を、「信号線」という用語に変更することが可能な場合がある。また、例えば、「配線」という用語を、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号線」「電源線」などの用語を、「配線」という用語に変更することが可能な場合がある。「電源線」などの用語は、「信号線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で「信号線」などの用語は、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、配線に印加されている「電位」という用語を、場合によっては、又は、状況に応じて、「信号」などという用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号」などの用語は、「電位」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0054】
本明細書等において、半導体の不純物とは、例えば、半導体層を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャリア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損を形成する場合がある。また、半導体がシリコン層である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素などがある。
【0055】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。又は、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。一例としては、電気的なスイッチ、機械的なスイッチなどを用いることができる。つまり、スイッチは、電流を制御できるものであればよく、特定のものに限定されない。
【0056】
電気的なスイッチの一例としては、トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなど)、ダイオード(例えば、PNダイオード、PINダイオード、ショットキーダイオード、MIM(Metal Insulator Metal)ダイオード、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ダイオード、ダイオード接続のトランジスタなど)、又はこれらを組み合わせた論理回路などがある。なお、スイッチとしてトランジスタを用いる場合、トランジスタの「導通状態」とは、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に短絡されているとみなせる状態をいう。また、トランジスタの「非導通状態」とは、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に遮断されているとみなせる状態をいう。なおトランジスタを単なるスイッチとして動作させる場合には、トランジスタの極性(導電型)は特に限定されない。
【0057】
機械的なスイッチの一例としては、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)のように、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)技術を用いたスイッチがある。そのスイッチは、機械的に動かすことが可能な電極を有し、その電極が動くことによって、導通と非導通とを制御して動作する。
【発明の効果】
【0058】
本発明の一態様によって、階層型の人工ニューラルネットワークが構築された半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、消費電力が低い半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、環境の温度の影響を受けにくい半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、回路素子の特性のばらつきを補正する機能を有する半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、新規な半導体装置などを提供することができる。
【0059】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。従って本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】(A)半導体装置の構成例を示すブロック図、(B)(C)半導体装置に含まれている回路の構成例を示すブロック図。
図2】(A)半導体装置が有する回路の構成例を示すブロック図、(B1)(B2)(C1)(C2)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図3】(A)(B)(C)(D)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図4】(A)(B)階層型のニューラルネットワークを説明する図。
図5】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示すブロック図。
図6】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図7】(A)(B)(C)(D)半導体装置が有する回路の動作例を示すタイミングチャート。
図8】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図9】半導体装置の構成例を示すブロック図。
図10】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図11】半導体装置の構成例を示すブロック図。
図12】(A1)(A2)(B)(C)(D)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図13】(A)(B)(C)(D)(E)(F)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図14】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図15】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示すブロック図。
図16】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図17】半導体装置が有する回路の動作例を示すタイミングチャート。
図18】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図19】半導体装置が有する回路の動作例を示すタイミングチャート。
図20】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図21】半導体装置が有する回路の動作例を示すタイミングチャート。
図22】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図23】半導体装置が有する回路の動作例を示すタイミングチャート。
図24】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図25】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図26】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図27】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図28】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図29】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図30】半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図31】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示す回路図。
図32】(A)(B)半導体装置が有する回路の構成例を示すブロック図。
図33】半導体装置の構成例を示すブロック図。
図34】半導体装置の構成例を示す断面図。
図35】半導体装置の構成例を示す断面図。
図36】(A)(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図37】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図38】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図39】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図40】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図41】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)(C)トランジスタの構造例を示す断面図。
図42】(A)トランジスタの構造例を示す上面図、(B)トランジスタの構造例を示す斜視図。
図43】(A)(B)トランジスタの構造例を示す断面図。
図44】(A)容量素子の構造例を示す上面図、(B)(C)容量素子の構造例を示す断面斜視図。
図45】(A)容量素子の構造例を示す上面図、(B)容量素子の構造例を示す断面図、(C)容量素子の構造例を示す断面斜視図。
図46】(A)半導体ウェハの一例を示す斜視図、(B)(C)(D)電子部品の一例を示す斜視図。
図47】電子機器の一例を示す斜視図。
図48】(A)(B)(C)電子機器の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0061】
人工ニューラルネットワーク(以後、ニューラルネットワークと呼称する。)において、シナプスの結合強度は、ニューラルネットワークに既存の情報を与えることによって、変化することができる。このように、ニューラルネットワークに既存の情報を与えて、結合強度を決める処理を「学習」と呼ぶ場合がある。
【0062】
また、「学習」を行った(結合強度を定めた)ニューラルネットワークに対して、何らかの情報を与えることにより、その結合強度に基づいて新たな情報を出力することができる。このように、ニューラルネットワークにおいて、与えられた情報と結合強度に基づいて新たな情報を出力する処理を「推論」又は「認知」と呼ぶ場合がある。
【0063】
ニューラルネットワークのモデルとしては、例えば、ホップフィールド型、階層型などが挙げられる。特に、多層構造としたニューラルネットワークを「ディープニューラルネットワーク」(DNN)と呼称し、ディープニューラルネットワークによる機械学習を「ディープラーニング」と呼称する場合がある。
【0064】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor又は単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタの活性層に金属酸化物を用いた場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有するトランジスタのチャネル形成領域を構成し得る場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)、略してOSと呼ぶことができる。また、OS FET、又はOSトランジスタと記載する場合においては、金属酸化物又は酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0065】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0066】
また、本明細書等において、各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0067】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)との少なくとも一つの内容に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことができる。
【0068】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0069】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)との少なくとも一つの図に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることができる。
【0070】
本明細書に記載の実施の形態について図面を参照しながら説明している。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態の発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、斜視図などにおいて、図面の明確性を期すために、一部の構成要素の記載を省略している場合がある。
【0071】
本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。
【0072】
また、本明細書の図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0073】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置である、ニューラルネットワークの演算を行う演算回路について説明する。
【0074】
<階層型のニューラルネットワーク>
初めに、階層型のニューラルネットワークについて説明する。階層型のニューラルネットワークは、一例としては、一の入力層と、一又は複数の中間層(隠れ層)と、一の出力層と、を有し、合計3以上の層によって構成されている。図4(A)に示す階層型のニューラルネットワーク100はその一例を示しており、ニューラルネットワーク100は、第1層乃至第R層(ここでのRは4以上の整数とすることができる。)を有している。特に、第1層は入力層に相当し、第R層は出力層に相当し、それら以外の層は中間層に相当する。なお、図4(A)には、中間層として第(k-1)層、第k層(ここでのkは3以上R-1以下の整数とする。)を図示しており、それ以外の中間層については図示を省略している。
【0075】
ニューラルネットワーク100の各層は、一又は複数のニューロンを有する。図4(A)において、第1層はニューロンN (1)乃至ニューロンN (1)(ここでのpは1以上の整数である。)を有し、第(k-1)層はニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)(ここでのmは1以上の整数である。)を有し、第k層はニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)(ここでのnは1以上の整数である。)を有し、第R層はニューロンN (R)乃至ニューロンN (R)(ここでのqは1以上の整数である。)を有する。
【0076】
なお、図4(A)には、ニューロンN (1)、ニューロンN (1)、ニューロンN (k-1)、ニューロンN (k-1)、ニューロンN (k)、ニューロンN (k)、ニューロンN (R)、ニューロンN (R)に加えて、第(k-1)層のニューロンN (k-1)(ここでのiは1以上m以下の整数である。)、第k層のニューロンN (k)(ここでのjは1以上n以下の整数である。)も図示しており、それ以外のニューロンについては図示を省略している。
【0077】
次に、前層のニューロンから次層のニューロンへの信号の伝達、及びそれぞれのニューロンにおいて入出力される信号について説明する。なお、本説明では、第k層のニューロンN (k)に着目している。
【0078】
図4(B)は、第k層のニューロンN (k)と、ニューロンN (k)に入力される信号と、ニューロンN (k)から出力される信号と、を示している。
【0079】
具体的には、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれの出力信号であるz (k-1)乃至z (k-1)が、ニューロンN (k)に向けて出力されている。そして、ニューロンN (k)は、z (k-1)乃至z (k-1)に応じてz (k)を生成して、z (k)を出力信号として第(k+1)層(図示しない。)の各ニューロンに向けて出力する。
【0080】
前層のニューロンから次層のニューロンに入力される信号は、それらのニューロン同士を接続するシナプスの結合強度(以後、重み係数と呼称する。)によって、信号の伝達の度合いが定まる。ニューラルネットワーク100では、前層のニューロンから出力された信号は、対応する重み係数を乗じられて、次層のニューロンに入力される。iを1以上m以下の整数として、第(k-1)層のニューロンN (k-1)と第k層のニューロンN (k)との間のシナプスの重み係数をw (k-1) (k)としたとき、第k層のニューロンN (k)に入力される信号は、式(1.1)で表すことができる。
【0081】
【数1】
【0082】
つまり、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれから第k層のニューロンN (k)に信号が伝達するとき、当該信号であるz (k-1)乃至z (k-1)には、それぞれの信号に対応する重み係数(w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k))が乗じられる。そして、第k層のニューロンN (k)には、w (k-1) (k)・z (k-1)乃至w (k-1) (k)・z (k-1)が入力される。このとき、第k層のニューロンN (k)に入力される信号の総和u (k)は、式(1.2)となる。
【0083】
【数2】
【0084】
ニューロンN (k)は、u (k)に応じて、出力信号z (k)を生成する。ここで、ニューロンN (k)からの出力信号z (k)を次の式で定義する。
【0085】
【数3】
【0086】
関数f(u (k))は、階層型のニューラルネットワークにおける活性化関数であり、ステップ関数、線形ランプ関数、シグモイド関数などを用いることができる。なお、活性化関数は、全てのニューロンにおいて同一でもよいし、又は異なっていてもよい。加えて、ニューロンの活性化関数は、層毎において、同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
ところで、各層のニューロンが出力する信号は、アナログ値としてもよいし、2値としてもよい。前者の場合、活性化関数として、線形ランプ関数、シグモイド関数を用いればよい。後者の場合、出力を-1又は1とするステップ関数を用いればよい。
【0088】
ニューラルネットワーク100は、第1層(入力層)に入力信号が入力されることによって、第1層(入力層)から最後の層(出力層)までの各層において順次に、前層から入力された信号を基に、式(1.1)乃至(1.3)を用いて出力信号を生成して、当該出力信号を次層に出力する動作を行う。最後の層(出力層)から出力された信号が、ニューラルネットワーク100によって計算された結果に相当する。
【0089】
<演算回路>
ここでは、ニューロンの活性化関数を、出力が-1又は1をとるステップ関数としたニューラルネットワーク100において、式(1.2)、及び式(1.3)の演算を行うことができる演算回路について説明する。
【0090】
図1(A)に示す演算回路110は、回路MPC[1]乃至回路MPC[m]と、回路ACTFと、変換回路TRFと、を有する半導体装置である。演算回路110は、図4(A)(B)における第k層のニューロンN (k)に入力される信号を処理して、ニューロンN (k)から出力される信号z (k)を生成する回路である。なお、本明細書等において、回路MPC[1]乃至回路MPC[m]のそれぞれを区別しない場合は、回路MPCと記載することとする。
【0091】
<<回路MPC>>
図1(B)は、回路MPCが有する端子を説明する図である。回路MPCは、一例としては、端子inpと、端子innと、端子outpと、端子outnと、端子wtと、端子xtと、を有する。
【0092】
回路MPCは、端子inpに入力された信号を端子outp又は端子outnの一方に出力し、端子innに入力された信号を端子outp又は端子outnの他方に出力する機能を有する。端子inp及び端子innに入力された信号の出力先は、一例としては、端子xtに入力される信号によって定めることができる。
【0093】
また、回路MPCは、一例としては、信号が端子inpに入力されてから端子outp又は端子outnの一方から出力するまでにかかる時間を可変する機能を有する。当該時間は、端子wtに入力される信号によって定めることができる。なお、以後、回路の入力端子に信号が入力されてから、回路の出力端子から信号が出力されるまでにかかる時間を入出力時間と呼称する。
【0094】
回路MPCの構成例を図2(A)に示す。図2(A)に示す回路MPCは、回路BF1と、回路BF2と、切り替え回路SCと、を有する。
【0095】
回路BF1の入力端子は端子inpに電気的に接続され、回路BF1の出力端子は切り替え回路SCの2つの入力端子の一方に電気的に接続されている。回路BF2の入力端子は端子innに電気的に接続され、回路BF2の出力端子は切り替え回路SCの2つの入力端子の他方に電気的に接続されている。切り替え回路SCの2つの出力端子の一方は端子outpに電気的に接続され、切り替え回路SCの2つの出力端子の他方は端子outnに電気的に接続されている。
【0096】
〔回路BF1〕
回路BF1は、回路BF1の入力端子に入力された信号を補正して、回路BF1の出力端子に出力する回路として機能する。回路BF1としては、例えば、インバータ回路を2個直列に接続した回路(バッファ回路)などを適用することができる。なお、インバータ回路の数は、2個に限定されない。ただし、入力と同じ論理値で出力するほうが回路を構成しやすいため、複数個の方が望ましい。インバータ回路の他には、NAND回路、NOR回路などを用いることも出来る。また、回路BF1としては、例えば、論理回路、信号変換回路、電位レベル変換回路などを適用できる場合がある。図2(A)では、回路BF1は、インバータ回路DINV1と、インバータ回路INV1と、を有している構成を示している。
【0097】
インバータ回路DINV1及びインバータ回路INV1のそれぞれは、入力された信号の反転信号を出力する機能を有する。特にインバータ回路DINV1は、端子wtに電気的に接続されており、端子wtに入力された信号に応じて、インバータ回路DINV1の駆動速度を決めることができる。つまり、インバータ回路DINV1の入出力時間を可変することができる。
【0098】
図2(B1)に、回路BF1の具体的な構成例を示す。一例としては、インバータ回路DINV1は、トランジスタTr01乃至トランジスタTr03と、容量素子C01と、を有し、インバータ回路INV1は、トランジスタTr04、トランジスタTr05と、を有する。また、一例としては、トランジスタTr01及びトランジスタTr04はpチャネル型トランジスタとし、トランジスタTr02と、トランジスタTr03と、トランジスタTr05と、はnチャネル型トランジスタとする。更に、一例としては、トランジスタTr02はバックゲートを有する構造のトランジスタとする。同様に、一例としては、トランジスタTr03はバックゲートを有する構造のトランジスタとしてもよい。または、一例としては、トランジスタTr03は、オフ電流の小さいトランジスタとすることが望ましい。具体例としては、トランジスタTr03は、OSトランジスタとすることが望ましい。トランジスタTr03以外のトランジスタについても、nチャネル型トランジスタについて、OSトランジスタを採用してもよい。
【0099】
例えば、本明細書等において、トランジスタとして、様々な構造のトランジスタを用いることが出来る。よって、用いるトランジスタの種類に限定はない。トランジスタの一例としては、単結晶シリコンを有するトランジスタ、または、非晶質シリコン、多結晶シリコン、微結晶(マイクロクリスタル、ナノクリスタル、セミアモルファスとも言う)シリコンなどに代表される非単結晶半導体膜を有するトランジスタなどを用いることが出来る。または、それらの半導体を薄膜化した薄膜トランジスタ(TFT)などを用いることが出来る。TFTを用いる場合、様々なメリットがある。例えば、単結晶シリコンの場合よりも低い温度で製造できるため、製造コストの削減、又は製造装置の大型化を図ることができる。製造装置を大きくできるため、大型基板上に製造できる。そのため、同時に多くの個数の表示装置を製造できるため、低コストで製造できる。または、製造温度が低いため、耐熱性の弱い基板を用いることができる。そのため、透光性を有する基板上にトランジスタを製造できる。または、透光性を有する基板上のトランジスタを用いて表示素子での光の透過を制御することが出来る。または、トランジスタの膜厚が薄いため、トランジスタを形成する膜の一部は、光を透過させることが出来る。そのため、開口率が向上させることができる。
【0100】
なお、トランジスタの一例としては、化合物半導体(例えば、SiGe、GaAsなど)、又は酸化物半導体(例えば、Zn-O、In-Ga-Zn-O、In-Zn-O、In-Sn-O(ITO)、Sn-O、Ti-O、Al-Zn-Sn-O、In-Sn-Zn-Oなど)などを有するトランジスタを用いることが出来る。または、これらの化合物半導体、又は、これらの酸化物半導体を薄膜化した薄膜トランジスタなどを用いることが出来る。これらにより、製造温度を低くできるので、例えば、室温でトランジスタを製造することが可能となる。その結果、耐熱性の低い基板、例えばプラスチック基板又はフィルム基板などに直接トランジスタを形成することが出来る。なお、これらの化合物半導体又は酸化物半導体を、トランジスタのチャネル部分に用いるだけでなく、それ以外の用途で用いることも出来る。例えば、これらの化合物半導体又は酸化物半導体を配線、抵抗素子、画素電極、又は透光性を有する電極などとして用いることができる。それらをトランジスタと同時に成膜又は形成することが可能なため、コストを低減できる。
【0101】
なお、トランジスタの一例としては、インクジェット法又は印刷法を用いて形成したトランジスタなどを用いることが出来る。これらにより、室温で製造、低真空度で製造、又は大型基板上に製造することができる。よって、マスク(レチクル)を用いなくても製造することが可能となるため、トランジスタのレイアウトを容易に変更することが出来る。または、レジストを用いらずに製造することが可能なので、材料費が安くなり、工程数を削減できる。または、必要な部分にのみ膜を付けることが可能なので、全面に成膜した後でエッチングする、という製法よりも、材料が無駄にならず、低コストにできる。
【0102】
なお、トランジスタの一例としては、有機半導体やカーボンナノチューブを有するトランジスタ等を用いることができる。これらにより、曲げることが可能な基板上にトランジスタを形成することが出来る。有機半導体やカーボンナノチューブを有するトランジスタを用いた装置は、衝撃に強くすることができる。
【0103】
なお、トランジスタとしては、他にも様々な構造のトランジスタを用いることができる。例えば、トランジスタとして、MOS型トランジスタ、接合型トランジスタ、バイポーラトランジスタなどを用いることが出来る。トランジスタとしてMOS型トランジスタを用いることにより、トランジスタのサイズを小さくすることが出来る。よって、多数のトランジスタを搭載することができる。トランジスタとしてバイポーラトランジスタを用いることにより、大きな電流を流すことが出来る。よって、高速に回路を動作させることができる。なお、MOS型トランジスタとバイポーラトランジスタとを1つの基板に混在させて形成してもよい。これにより、低消費電力、小型化、高速動作などを実現することが出来る。
【0104】
なお、トランジスタの一例としては、チャネルの上下にゲート電極が配置されている構造のトランジスタを適用することができる。チャネルの上下にゲート電極が配置される構造にすることにより、複数のトランジスタが並列に接続されたような回路構成となる。よって、チャネル形成領域が増えるため、電流値の増加を図ることができる。または、チャネルの上下にゲート電極が配置されている構造にすることにより、空乏層ができやすくなるため、S値の改善を図ることができる。
【0105】
なお、トランジスタの一例としては、チャネル形成領域の上にゲート電極が配置されている構造、チャネル形成領域の下にゲート電極が配置されている構造、正スタガ構造、逆スタガ構造、チャネル形成領域を複数の領域に分けた構造、チャネル形成領域を並列に接続した構造、又はチャネル形成領域が直列に接続する構造などのトランジスタを用いることができる。または、トランジスタとして、プレーナ型、FIN型(フィン型)、TRI-GATE型(トライゲート型)、トップゲート型、ボトムゲート型、ダブルゲート型(チャネルの上下にゲートが配置されている)、など、様々な構成をとることが出来る。
【0106】
なお、トランジスタの一例としては、チャネル形成領域(もしくはその一部)にソース電極やドレイン電極が重なっている構造のトランジスタを用いることができる。チャネル形成領域(もしくはその一部)にソース電極やドレイン電極が重なる構造にすることによって、チャネル形成領域の一部に電荷が溜まることにより動作が不安定になることを防ぐことができる。
【0107】
なお、トランジスタの一例としては、LDD領域を設けた構造を適用できる。LDD領域を設けることにより、オフ電流の低減、又はトランジスタの耐圧向上(信頼性の向上)を図ることができる。または、LDD領域を設けることにより、飽和領域で動作する時に、ドレインとソースとの間の電圧が変化しても、ドレイン電流があまり変化せず、傾きがフラットな電圧・電流特性を得ることができる。
【0108】
例えば、本明細書等において、様々な基板を用いて、トランジスタを形成することが出来る。基板の種類は、特定のものに限定されることはない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
【0109】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形成してもよい。または、基板とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成や、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0110】
つまり、ある基板を用いてトランジスタを形成し、その後、別の基板にトランジスタを転置し、別の基板上にトランジスタを配置してもよい。トランジスタが転置される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0111】
なお、所定の機能を実現させるために必要な回路の全てを、同一の基板(例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、又はSOI基板など)に形成することが可能である。こうして、部品点数の削減によるコストの低減、又は回路部品との接続点数の低減による信頼性の向上を図ることができる。
【0112】
なお、所定の機能を実現させるために必要な回路の全てを同じ基板に形成しないことが可能である。つまり、所定の機能を実現させるために必要な回路の一部は、ある基板に形成され、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部は、別の基板に形成されていることが可能である。例えば、所定の機能を実現させるために必要な回路の一部は、ガラス基板に形成され、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部は、単結晶基板(又はSOI基板)に形成されることが可能である。そして、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部が形成される単結晶基板(ICチップともいう)を、COG(Chip On Glass)によって、ガラス基板に接続して、ガラス基板にそのICチップを配置することが可能である。または、ICチップを、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Film)、SMT(Surface Mount Technology)、又はプリント基板などを用いてガラス基板と接続することが可能である。このように、回路の一部が画素部と同じ基板に形成されていることにより、部品点数の削減によるコストの低減、又は回路部品との接続点数の低減による信頼性の向上を図ることができる。特に、駆動電圧が大きい部分の回路、又は駆動周波数が高い部分の回路などは、消費電力が大きくなってしまう場合が多い。そこで、このような回路を、画素部とは別の基板(例えば単結晶基板)に形成して、ICチップを構成する。このICチップを用いることによって、消費電力の増加を防ぐことができる。
【0113】
インバータ回路DINV1において、トランジスタTr01のゲートとトランジスタTr02のゲートは端子inpに電気的に接続され、トランジスタTr01の第1端子は配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr01の第2端子は、トランジスタTr02の第1端子に電気的に接続されている。トランジスタTr02の第2端子は、配線VSSLに電気的に接続され、トランジスタTr02のバックゲートは、トランジスタTr03の第1端子と、容量素子C01の第1端子と、に電気的に接続されている。トランジスタTr03の第2端子は、端子wtに電気的に接続され、トランジスタTr03のゲートは、配線SL01に電気的に接続されている。容量素子C01の第2端子は、配線VLに電気的に接続されている。また、トランジスタTr01の第2端子と、トランジスタTr02の第1端子は、インバータ回路INV1の入力端子に電気的に接続されている。
【0114】
インバータ回路INV1において、トランジスタTr04のゲートとトランジスタTr05のゲートは、インバータ回路INV1の入力端子に電気的に接続され、トランジスタTr04の第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr04の第2端子は、トランジスタTr05の第1端子に電気的に接続されている。トランジスタTr05の第2端子は、配線VSSLに電気的に接続されている。また、トランジスタTr04の第2端子とトランジスタTr05の第1端子は、インバータ回路INV1の出力端子に電気的に接続されている。
【0115】
配線VDDLは、高レベル電位である電圧VDDを供給する電圧線として機能し、配線VSSLは、低レベル電位である電圧VSSを供給する電圧線として機能する。なお、配線VSSLには、マイナスの電位が供給されてもよいし、プラスの電位が供給されてもよいし、0V(GND)の電位が供給されてもよい。また、配線VLは、定電圧を供給する電圧線として機能し、当該定電圧としては、VDD、VSS、又は接地電位などとすることができる。
【0116】
インバータ回路DINV1において、トランジスタTr03と、容量素子C01とは、保持部HCAに含まれている。保持部HCAは、端子wtから入力された信号に応じた電位を保持する機能を有する。なお、当該電位は2値を示す低レベル電位又は高レベル電位の一方、又はアナログ値を示す電位とすることができる。
【0117】
保持部HCAに含まれるトランジスタTr03はスイッチング素子として機能し、配線SL01からトランジスタTr03のゲートに電位を印加することによって、トランジスタTr03をオン状態又はオフ状態にすることができる。
【0118】
配線SL01に高レベル電位を与えて、トランジスタTr03をオン状態にすることによって、端子wtと容量素子C01の第1端子との間を導通状態にすることができる。このとき、回路MPCは端子wtから信号を受信することで、当該信号に応じた電位を容量素子C01の第1端子に書き込むことができる。そして、当該電位を容量素子C01の第1端子に書き込んだ後に、配線SL01に低レベル電位を与えて、トランジスタTr03をオフ状態にすることによって、保持部HCAに当該電位を保持することができる。
【0119】
保持部HCAにおいて、容量素子C01の第1端子に書き込んだ電位を長時間保持したい場合、トランジスタTr03は、OSトランジスタであることが好ましい。加えて、トランジスタTr03のチャネル形成領域は、インジウム、元素M(元素Mとしては、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどが挙げられる。)、亜鉛の少なくとも一を含む酸化物であることがより好ましい。トランジスタTr03は、特に実施の形態5に記載するトランジスタの構造であることが更に好ましい。
【0120】
OSトランジスタは、チャネル形成領域として機能する金属酸化物のバンドギャップが大きいため、オフ電流が極めて小さいという特性を有する。このため、トランジスタTr03として、OSトランジスタを用いることにより、トランジスタTr03がオフ状態における、容量素子C01の第1端子から端子wtへのリーク電流を非常に小さくすることができる。つまり、容量素子C01の第1端子の電位のリフレッシュ動作を少なくすることができるため、容量素子C01の第1端子の電位を保持するのに必要な消費電力を低減することができる。
【0121】
ところで、トランジスタTr02はバックゲートを有しているため、当該バックゲートに電位を与えることによって、トランジスタTr02のしきい値電圧を当該電位に応じて変動することができる。回路MPCでは、トランジスタTr02のバックゲートは、容量素子C01の第1端子に接続されているため、トランジスタTr02のしきい値電圧は、容量素子C01の第1端子の電位に応じて決まる。
【0122】
例えば、容量素子C01の第1端子の電位が高レベル電位である場合、トランジスタTr02のしきい値電圧は、マイナス側に変動するため、トランジスタTr02のソース-ドレイン間に流れる電流量は大きくなる。これにより、インバータ回路DINV1の入力端子に信号が入力されてから、出力端子から信号が出力するまでにかかる入出力時間が短くなる。
【0123】
また、例えば、容量素子C01の第1端子の電位が低レベル電位である場合、トランジスタTr02のしきい値電圧は、プラス側に変動するため、トランジスタTr02のソース-ドレイン間に流れる電流量は小さくなる。これにより、インバータ回路DINV1の入力端子に信号が入力されてから、出力端子から信号が出力するまでにかかる入出力時間が長くなる。
【0124】
具体的には、トランジスタTr02のゲートに印加する電位の範囲を-0.8V以上2.5V以下で動作させる場合、トランジスタTr02のバックゲートには、例えば、高レベル電位として1.5V以上の電位を与えればよく、低レベル電位として1.5V未満の電位を与えればよい。
【0125】
また、トランジスタTr03も、バックゲートを有してもよい。図2(B2)では、図2(B1)のインバータ回路DINV1において、トランジスタTr03がバックゲートを有する場合の回路構成を示している。なお、トランジスタTr03のバックゲートの電気的な接続先としては、例えば、トランジスタTr03のゲートとすることができる。トランジスタTr03のゲートとバックゲートを電気的に接続することによって、トランジスタTr03のオン状態のときに流れる電流を大きくすることができる。また、例えば、トランジスタTr03のバックゲートに、外部回路と電気的に接続するための配線を設けて、当該外部回路によってトランジスタTr03のバックゲートに電位を与えて、しきい値電圧を上げてもよい。このような構成にすることにより、外部回路によってトランジスタTr03のオフ電流を小さくすることができる。
【0126】
〔回路BF2〕
図2(A)では、回路BF2は、インバータ回路DINV2と、インバータ回路INV2と、を有している構成を示している。回路BF2は、回路BF1と同様に、回路BF2の入力端子に入力された信号を増幅して、回路BF2の出力端子に出力する増幅回路として機能する。そのため、回路BF2は、図2(B1)に示す回路BF1と同様の構成とすることができる。この場合、インバータ回路DINV2の容量素子C01の第1端子には、高レベル電位と低レベル電位の中間電位を保持するのが好ましい。そして、インバータ回路DINV1の容量素子C01の第1端子の電位を高レベル電位、又は低レベル電位にすることによって、回路BF1の入出力時間を、回路BF2の入出力時間よりも短く、又は長くすることができる。
【0127】
また、回路BF2は、図2(C1)に示す回路構成としてもよい。図2(C1)のインバータ回路DINV2は、トランジスタTr06及びトランジスタTr07を有し、インバータ回路INV2は、トランジスタTr08及びトランジスタTr09を有する。また、トランジスタTr06及びトランジスタTr08はpチャネル型トランジスタとし、トランジスタTr07及びトランジスタTr09はnチャネル型トランジスタとする。
【0128】
インバータ回路DINV2において、トランジスタTr06のゲートとトランジスタTr07のゲートは端子innに電気的に接続され、トランジスタTr06の第1端子は配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr06の第2端子は、トランジスタTr07の第1端子に電気的に接続されている。トランジスタTr07の第2端子は、配線VSSLに電気的に接続されている。また、トランジスタTr06の第2端子と、トランジスタTr07の第1端子は、インバータ回路INV2の入力端子に電気的に接続されている。
【0129】
インバータ回路INV2において、トランジスタTr08のゲートとトランジスタTr09のゲートは、インバータ回路INV2の入力端子に電気的に接続され、トランジスタTr08の第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr08の第2端子は、トランジスタTr09の第1端子に電気的に接続されている。トランジスタTr09の第2端子は、配線VSSLに電気的に接続されている。また、トランジスタTr08の第2端子とトランジスタTr09の第1端子は、インバータ回路INV2の出力端子に電気的に接続されている。
【0130】
つまり、インバータ回路DINV2の回路構成は、インバータ回路INV2と同じ回路構成とすることができる。または、トランジスタTr07にバックゲートを設け、当該バックゲートを配線VSSLに接続してもよい。
【0131】
また、上述したインバータ回路INV1、インバータ回路INV2、インバータ回路DINV2は、例えば、図2(C2)に示すインバータ回路INV1Aの構成に置き換えてもよい。インバータ回路INV1Aは、インバータ回路INV1、インバータ回路INV2、インバータ回路DINV2の回路構成において、トランジスタTr05(トランジスタTr07、トランジスタTr09)がバックゲートを有し、当該バックゲートがトランジスタTr05(トランジスタTr07、トランジスタTr09)の第2端子に電気的に接続されている構成となっている。
【0132】
〔切り替え回路SC〕
切り替え回路SCは、回路MPCにおける、端子inp又は端子innに入力された信号の出力先を端子outp又は端子outnのどちらか一方に選択する機能を有する。また、切り替え回路SCは、端子xtに電気的に接続され、端子xtに入力される信号(図1(A)における信号x (k-1)乃至x (k-1))に応じて、当該出力先を定めることができる。
【0133】
図3(A)に、切り替え回路SCの構成例を示す。切り替え回路SCは、スイッチS01乃至スイッチS04と、インバータ回路INV3と、を有する。
【0134】
スイッチS01の第1端子は、回路BF1の出力端子と、スイッチS03の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS01の第2端子は、端子outpに電気的に接続されている。スイッチS02の第1端子は、回路BF2の出力端子と、スイッチS04の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS02の第2端子は、端子outnに電気的に接続されている。スイッチS03の第2端子は端子outnに電気的に接続され、スイッチS04の第2端子は端子outpに電気的に接続されている。端子xtは、スイッチS01、スイッチS02のそれぞれの制御端子と、インバータ回路INV3の入力端子と、に電気的に接続され、インバータ回路INV3の出力端子は、スイッチS03、スイッチS04のそれぞれの制御端子と、に電気的に接続されている。
【0135】
なお、本明細書などにおいて、スイッチS01乃至スイッチS04のそれぞれは、制御端子に高レベル電位が印加されたときにオン状態となり、制御端子に低レベル電位が印加されたときにオフ状態となるものとする。
【0136】
次に、切り替え回路SCの動作について説明する。例えば、端子xtに高レベル電位が印加されることによって、スイッチS01及びスイッチS02はオン状態となり、スイッチS03及びスイッチS04はオフ状態となるため、切り替え回路SCは、回路BF1の出力端子と端子outpとの間が導通状態になり、回路BF2の出力端子と端子outnとの間が導通状態になるように動作する。また、例えば、端子xtに低レベル電位が印加されることによって、スイッチS03及びスイッチS04はオン状態となり、スイッチS01及びスイッチS02はオフ状態となるため、切り替え回路SCは、回路BF1の出力端子と端子outnとの間が導通状態になり、回路BF2の出力端子と端子outpとの間が導通状態になるように動作する。
【0137】
次に、切り替え回路SCの具体的な構成例について説明する。図3(B)は、図3(A)の切り替え回路SCに含まれているスイッチS01乃至スイッチS04をアナログスイッチA01乃至アナログスイッチA04に置き換えた回路構成となっている。
【0138】
また、図3(B)と異なる、図3(A)の切り替え回路SCの具体的な構成例として、図3(C)に示す回路構成とすることができる。図3(C)の切り替え回路SCは、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14と、インバータ回路INV3と、を有する。また、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14は、nチャネル型トランジスタとする。なお、スイッチS01乃至スイッチS04の制御端子は、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14のゲートに相当する。
【0139】
トランジスタTr11の第1端子は、回路BF1の出力端子と、トランジスタTr13の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr11の第2端子は、端子outpに電気的に接続されている。トランジスタTr12の第1端子は、回路BF2の出力端子と、トランジスタTr14の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr12の第2端子は、端子outnに電気的に接続されている。トランジスタTr13の第2端子は端子outnに電気的に接続され、トランジスタTr14の第2端子は端子outpに電気的に接続されている。端子xtは、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14のそれぞれのゲートに電気的に接続されている。なお、トランジスタTr13及びトランジスタTr14のそれぞれのゲートは、インバータ回路INV3を介して、端子xtに電気的に接続されている。
【0140】
また、図3(B)(C)と異なる、図3(A)の切り替え回路SCの具体的な構成例として、図3(D)に示す回路構成とすることができる。図3(D)の切り替え回路SCは、図3(C)と同様に、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14を有する。また、トランジスタTr11及びトランジスタTr12は、nチャネル型トランジスタとし、トランジスタTr13及びトランジスタTr14は、pチャネル型トランジスタとする。なお、スイッチS01乃至スイッチS04の制御端子は、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14のゲートに相当する。また、トランジスタTr11及びトランジスタTr12と、トランジスタTr13及びトランジスタTr14と、は極性が異なるため、図3(D)の切り替え回路SCは、インバータ回路INV3を有していない。
【0141】
また、切り替え回路SCを図3(A)乃至(D)に示す構成にすることによって、端子xtに入力される信号x (k-1)乃至x (k-1)のそれぞれは、低レベル電位、又は高レベル電位の信号とすることができる。
【0142】
また、回路MPCに適用する切り替え回路SCは、状況に応じて、図3(A)乃至(D)に示したいずれか一から選択することができる。また、回路MPCに適用する切り替え回路SCは、図3(A)乃至(D)に示した切り替え回路SCと異なる回路構成としてもよい。
【0143】
<<回路ACTF>>
図1(C)は、回路ACTFが有する端子を説明する図である。回路ACTFは、端子inpaと、端子innaと、端子outaと、を有する。
【0144】
回路ACTFは、端子inpaと端子innaと、のそれぞれに入力される信号(図1(A)における信号Sp[m]、Sn[m])の順番及び/又は時間差に応じて信号を生成して、当該信号を端子outaから出力する機能を有する。なお、当該信号は、図4(A)(B)におけるz (k)に相当する。
【0145】
例えば、回路ACTFは、端子inpaに入力される信号が端子innaに入力される信号よりも遅い場合に、低レベル電位を信号として端子outaから出力し、端子inpaに入力される信号が端子innaに入力される信号よりも速い場合に、高レベル電位を信号として端子outaから出力する構成にすることができる。換言すると、端子inpaに入力される電位の遷移が端子innaに入力される電位の遷移よりも遅い場合に、低レベル電位を信号として端子outaから出力し、端子inpaに入力される電位の遷移が端子innaに入力される電位の遷移よりも速い場合に、高レベル電位を信号として端子outaから出力する構成にすることができる。このとき、低レベル電位を-1、高レベル電位を1に対応する信号z (k)とすることで、回路ACTFは、ステップ関数の演算を行う回路に相当することができる。
【0146】
また、例えば、回路ACTFは、シグモイド関数、線形ランプ関数などアナログ値を出力する回路としてもよい。または、回路ACTFは、端子inpaと端子innaとに入力される信号のタイミングのズレに応じて、デジタル値、または、アナログ値を出力する機能を有していてもよい。
【0147】
つまり、回路ACTFは、ニューラルネットワーク100において、ニューロンの活性化関数の演算を行う機能を有する。
【0148】
なお、本実施の形態では、以後、回路ACTFはステップ関数の演算を行う回路として説明する。
【0149】
また、この場合、回路ACTFは、ステップ関数の演算を行う回路として、フリップフロップ回路を適用することができる。このような場合、回路ACTFは、端子innaに入力される信号が遷移したときに、端子inpaに入力されている信号を読み出して、端子outaに当該信号を出力する動作を行う。
【0150】
<<変換回路TRF>>
変換回路TRFは、ニューラルネットワーク100において、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれから出力される信号z (k-1)乃至z (k-1)を適切に変換して、変換したそれぞれの信号を回路MPC[1]乃至回路MPC[m]に送信する機能を有する。
【0151】
図1(A)では、信号z (k-1)乃至z (k-1)を信号x (k-1)乃至x (k-1)に変換して、信号x (k-1)乃至x (k-1)をそれぞれ回路MPC[1]乃至回路MPC[m]に送信している様子を図示している。
【0152】
なお、信号z (k-1)乃至z (k-1)のそれぞれは、前述のとおり、-1又は1の値であり、信号x (k-1)乃至x (k-1)は、前述した切り替え回路SCの説明のとおり、低レベル電位又は高レベル電位の信号とすることができるため、変換回路TRFは論理回路として構成することができる。
【0153】
なお、変換回路TRFが行う信号z (k-1)乃至z (k-1)の変換については後述する。
【0154】
<<回路MPC、回路ACTF、変換回路TRF等の変更例>>
図1の演算回路110が有する回路MPCは、上述した回路MPCの構成に限定されず、状況に応じて、回路MPCの回路構成が変更されていてもよい。例えば、本発明の一態様の半導体装置として、回路MPCは、図5(A)、及び図5(B)の構成を適用することができる。図5(A)に示す回路MPCは、図2(A)の回路BF1のインバータ回路DINV1とインバータ回路INV1との電気的な接続の順序が変更され、かつ図2(A)の回路BF2のインバータ回路DINV2とインバータ回路INV2との電気的な接続の順序が変更された構成となっている。また、図5(B)に示す回路MPCは、図2(A)の回路BF1のインバータ回路INV1と切り替え回路SCとの電気的な接続の順序が変更され、かつ図2(A)のインバータ回路INV2と切り替え回路SCとの電気的な接続の順序が変更された構成となっている。
【0155】
また、上述した回路MPC、回路ACTF、変換回路TRFなどに含まれるトランジスタは、OSトランジスタであることが好ましい。保持部HCAの説明において、トランジスタTr03として、OSトランジスタを適用するのが好ましいと言及したが、他のトランジスタについても、OSトランジスタを適用するのが好ましい。特に、他のトランジスタとしてOSトランジスタを適用する場合、OSトランジスタは、特に実施の形態5に記載するトランジスタの構造であることがより好ましい。ただし、本発明の一態様は、これに限定されない。
【0156】
また、回路MPC、回路ACTF、変換回路TRFなどに含まれるトランジスタは、OSトランジスタではなく、チャネル形成領域にシリコンを含むトランジスタ(以後、Siトランジスタと呼称する。)としてもよい。また、シリコンとしては、例えば、水素化アモルファスシリコン、微結晶シリコン、または多結晶シリコン等を用いることができる。また、OSトランジスタ、Siトランジスタ以外のトランジスタとしては、Geを活性層としたトランジスタ、ZnSe、CdS、GaAs、InP、GaN、SiGeなどの化合物半導体を活性層としたトランジスタ、カーボンナノチューブを活性層としたトランジスタ、有機半導体を活性層としたトランジスタ等を用いることができる。
【0157】
なお、OSトランジスタの半導体層の金属酸化物において、インジウムを含む金属酸化物(例えば、In酸化物)、あるいは亜鉛を含む金属酸化物(例えば、Zn酸化物)では、n型半導体は作製できているが、p型半導体は移動度及び信頼性の点で作製が難しい。そのため、演算回路110は、回路MPC、回路ACTF、変換回路TRFなどに含まれるnチャネル型トランジスタとしてOSトランジスタを適用し、pチャネル型トランジスタとしてSiトランジスタを適用した構成としてもよい。
【0158】
<動作方法>
ここでは、演算回路110の動作方法の一例について説明する。
【0159】
図6(A)は、本動作例で扱う回路MPC[i]の構成例を示している。回路MPC[i]は、回路BF1及び回路BF2として図2(B1)に図示した回路BF1を適用し、切り替え回路SCとして図3(A)に図示した切り替え回路SCを適用している。
【0160】
なお、図6(A)に示す回路BF2のインバータ回路DINV2が有する回路素子のそれぞれは、回路BF1のインバータ回路DINV1と区別するために、符号の最後に“m”を付記している。そのため、インバータ回路DINV2において、保持部HCAmは、保持部HCAに相当し、トランジスタTr01mはインバータ回路DINV1のトランジスタTr01に相当し、トランジスタTr02mはインバータ回路DINV1のトランジスタTr02に相当し、トランジスタTr03mはインバータ回路DINV1のトランジスタTr03に相当し、容量素子C01mはインバータ回路DINV1の容量素子C01に相当し、配線SL01mはインバータ回路DINV1の配線SL01に相当する。また、端子wtmは、容量素子C01mの第1端子に電位を書き込むための入力端子として機能する。
【0161】
また、図6に示す回路MPCでは、回路BF1の保持部HCAにおける端子wtは、配線DLに電気的に接続され、回路BF2の保持部HCAmにおける端子wtmは、配線DLmに電気的に接続されている。また、図6に示す回路MPCでは、回路BF1における配線SL01と回路BF2における配線SL01mとは、配線SWLに電気的に接続されている。
【0162】
また、本明細書などにおいて、トランジスタTr01乃至トランジスタTr05、トランジスタTr01m乃至トランジスタTr03m、トランジスタTr08、トランジスタTr09、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14は、特に断りの無い場合は、オン状態の場合は最終的に線形領域で動作する場合を含むものとする。すなわち、上述したそれぞれのトランジスタのゲート電圧、ソース電圧、及びドレイン電圧は、線形領域で動作する範囲での電圧に適切にバイアスされている場合を含むものとする。
【0163】
また、本明細書などにおいて、「低レベル電位」、「高レベル電位」という用語は、特定の電位を意味するものではなく、配線が異なれば、具体的な電位も異なる場合がある。例えば、回路MPCに入出力される信号に応じた低レベル電位、高レベル電位のそれぞれは、配線SL01に印加される低レベル電位、高レベル電位と異なる電位であってもよい。
【0164】
<<初期動作>>
初期動作として、端子xtには、信号x (k-1)に相当する電位が入力される。これによって、トランジスタTr11乃至トランジスタTr14のそれぞれは、信号x (k-1)に相当する電位に応じて、オン状態又はオフ状態となる。
【0165】
また、配線DLには重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が入力され、配線DLmには中間電位が入力される。その後、配線SWLに高レベル電位を印加して、トランジスタTr03、及びトランジスタTr03mをオン状態にする。この動作によって、容量素子C01の第1端子に重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が書き込まれ、容量素子C01mの第1端子に中間電位が書き込まれる。このため、トランジスタTr02のしきい値電圧は、重み係数w (k-1) (k)に応じて変動し、トランジスタTr02mのしきい値電圧は、中間電位に応じて変動する。最後に、配線SWLに低レベル電位を印加して、トランジスタTr03、及びトランジスタTr03mをオフ状態にすることによって、容量素子C01の第1端子及び容量素子C01mの第1端子のそれぞれの電位を保持することができる。
【0166】
<<演算動作>>
初期動作の後に、回路MPC[i](ここでのiは1以上m以下の整数とする。)の端子inpに信号Sp[i-1]、また端子innに信号Sn[i-1]が入力されることで、回路MPC[i]において演算動作が開始される。特に、iが1である場合、信号Sp[0]、Sn[0]のそれぞれは、時間差がほぼ無く(ほぼ同時に)、回路MPC[1]の端子inp、端子innに入力されるものとする。また、iが2以上であるとき、信号Sp[i-1]、Sn[i-1]は、回路MPC[i-1]から出力されているため、互いに時間差が生じていることがある。なお、演算動作の説明では、便宜的に、信号Sp[i-1]、Sn[i-1]は、時間差がほぼ無く(ほぼ同時に)、回路MPC[i]の端子inp、端子innに入力されるものとする。
【0167】
〔条件1〕
ここで、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が高レベル電位であり、かつ信号x (k-1)に相当する電位が高レベル電位である場合を考える。図7(A)は、その場合における端子inp、端子inn、端子outp、端子outnの電位の変動を示したタイミングチャートである。初めに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれに信号Sp[i-1]、Sn[i-1]として、高レベル電位が印加される。そして、時刻T1のときに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれの電位が高レベル電位に達したとする。
【0168】
このとき、回路MPC[i]の回路BF1の入力端子に信号Sp[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF1の出力端子から高レベル電位が出力される。同様に、回路MPC[i]の回路BF2の入力端子に信号Sn[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF2の出力端子から高レベル電位が出力される。なお、回路BF1のトランジスタTr02のバックゲートには高レベル電位が印加され、回路BF2のトランジスタTr02mのバックゲートには中間電位が印加されているため、回路BF1は、回路BF2よりも速く動作する。したがって、端子inp及び端子innに同時に信号が入力された場合、回路BF1は、回路BF2よりも先に出力信号を出力する。
【0169】
ところで、切り替え回路SCにおいて、端子xtには高レベル電位が印加されているため、回路BF1の出力端子と端子outpとの間は導通状態となり、回路BF2の出力端子と端子outnとの間は導通状態となる。すなわち、回路BF1からの出力信号は端子outpから出力され、回路BF2からの出力信号は端子outnから出力される。
【0170】
回路BF1からの出力信号は、回路BF2からの出力信号よりも速く出力されるため、図7(A)のとおり、時刻T2に端子outpの電位が高レベル電位となり、その後の時刻T3に端子outnの電位が高レベル電位となる。つまり、時刻T2に端子outpから出力信号としてSp[i]が出力され、時刻T3に端子outnから出力信号としてSn[i]が出力される。なお、図7(A)では、端子inpに信号Sp[i-1]が入力されてから、端子outpから信号Sp[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載し、端子innに信号Sn[i-1]が入力されてから、端子outnから信号Sn[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載している。
【0171】
〔条件2〕
また、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が低レベル電位であり、かつ信号x (k-1)に相当する電位が高レベル電位である場合を考える。図7(B)は、その場合における端子inp、端子inn、端子outp、端子outnの電位の変動を示したタイミングチャートである。図7(A)の場合と同様に、初めに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれに信号Sp[i-1]、Sn[i-1]として、高レベル電位が印加される。そして、時刻T1のときに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれの電位が高レベル電位に達したとする。
【0172】
このとき、回路MPC[i]の回路BF1の入力端子に信号Sp[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF1の出力端子から高レベル電位が出力される。同様に、回路MPC[i]の回路BF2の入力端子に信号Sn[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF2の出力端子から高レベル電位が出力される。なお、回路BF1のトランジスタTr02のバックゲートには低レベル電位が印加され、回路BF2のトランジスタTr02mのバックゲートには中間電位が印加されているため、回路BF1は、回路BF2よりも遅く動作する。したがって、端子inp及び端子innに同時に信号が入力された場合、回路BF1は、回路BF2よりも後に出力信号を出力する。
【0173】
ところで、切り替え回路SCにおいて、端子xtには高レベル電位が印加されているため、図7(A)の場合と同様に、回路BF1の出力端子と端子outpとの間は導通状態となり、回路BF2の出力端子と端子outnとの間は導通状態となる。すなわち、回路BF1からの出力信号は端子outpから出力され、回路BF2からの出力信号は端子outnから出力される。
【0174】
回路BF1からの出力信号は、回路BF2からの出力信号よりも遅く出力されるため、図7(B)のとおり、時刻T3に端子outnの電位が高レベル電位となり、その後の時刻T4に端子outpの電位が高レベル電位となる。つまり、時刻T3に端子outnから出力信号としてSn[i]が出力され、時刻T4に端子outpから出力信号としてSp[i]が出力される。なお、図7(B)では、端子inpに信号Sp[i-1]が入力されてから、端子outpから信号Sp[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載し、端子innに信号Sn[i-1]が入力されてから、端子outnから信号Sn[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載している。
【0175】
〔条件3〕
また、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が高レベル電位であり、かつ信号x (k-1)に相当する電位が低レベル電位である場合を考える。図7(C)は、その場合における端子inp、端子inn、端子outp、端子outnの電位の変動を示したタイミングチャートである。図7(A)の場合と同様に、初めに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれに信号Sp[i-1]、Sn[i-1]として、高レベル電位が印加される。そして、時刻T1のときに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれの電位が高レベル電位に達したとする。
【0176】
このとき、回路MPC[i]の回路BF1の入力端子に信号Sp[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF1の出力端子から高レベル電位が出力される。同様に、回路MPC[i]の回路BF2の入力端子に信号Sn[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF2の出力端子から高レベル電位が出力される。なお、回路BF1のトランジスタTr02のバックゲートには高レベル電位が印加され、回路BF2のトランジスタTr02mのバックゲートには中間電位が印加されているため、回路BF1は、回路BF2よりも速く動作する。したがって、端子inp及び端子innに同時に信号が入力された場合、回路BF1は、回路BF2よりも先に出力信号を出力する。
【0177】
ところで、切り替え回路SCにおいて、端子xtには低レベル電位が印加されているため、回路BF1の出力端子と端子outnとの間は導通状態となり、回路BF2の出力端子と端子outpとの間は導通状態となる。すなわち、回路BF1からの出力信号は端子outnから出力され、回路BF2からの出力信号は端子outpから出力される。
【0178】
回路BF1からの出力信号は、回路BF2からの出力信号よりも速く出力されるため、図7(C)のとおり、時刻T2に端子outnの電位が高レベル電位となり、その後の時刻T3に端子outpの電位が高レベル電位となる。つまり、時刻T2に端子outnから出力信号としてSn[i]が出力され、時刻T3に端子outpから出力信号としてSp[i]が出力される。なお、図7(C)では、端子inpに信号Sp[i-1]が入力されてから、端子outnから信号Sn[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載し、端子innに信号Sn[i-1]が入力されてから、端子outpから信号Sp[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載している。
【0179】
〔条件4〕
また、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位が低レベル電位であり、かつ信号x (k-1)に相当する電位が低レベル電位である場合を考える。図7(D)は、その場合における端子inp、端子inn、端子outp、端子outnの電位の変動を示したタイミングチャートである。図7(A)の場合と同様に、初めに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれに信号Sp[i-1]、Sn[i-1]として、高レベル電位が印加される。そして、時刻T1のときに、回路MPC[i]の端子inp、端子innのそれぞれの電位が高レベル電位に達したとする。
【0180】
このとき、回路MPC[i]の回路BF1の入力端子に信号Sp[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF1の出力端子から高レベル電位が出力される。同様に、回路MPC[i]の回路BF2の入力端子に信号Sn[i-1]として高レベル電位が印加されるため、回路MPC[i]の回路BF2の出力端子から高レベル電位が出力される。なお、回路BF1のトランジスタTr02のバックゲートには低レベル電位が印加され、回路BF2のトランジスタTr02mのバックゲートには中間電位が印加されているため、回路BF1は、回路BF2よりも遅く動作する。したがって、端子inp及び端子innに同時に信号が入力された場合、回路BF1は、回路BF2よりも後に出力信号を出力する。
【0181】
ところで、切り替え回路SCにおいて、端子xtには低レベル電位が印加されているため、回路BF1の出力端子と端子outnとの間は導通状態となり、回路BF2の出力端子と端子outpとの間は導通状態となる。すなわち、回路BF1からの出力信号は端子outnから出力され、回路BF2からの出力信号は端子outpから出力される。
【0182】
回路BF1からの出力信号は、回路BF2からの出力信号よりも遅く出力されるため、図7(D)のとおり、時刻T3に端子outpの電位が高レベル電位となり、その後の時刻T4に端子outnの電位が高レベル電位となる。つまり、時刻T3に端子outpから出力信号としてSp[i]が出力され、時刻T4に端子outnから出力信号としてSn[i]が出力される。なお、図7(D)では、端子inpに信号Sp[i-1]が入力されてから、端子outnから信号Sn[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載し、端子innに信号Sn[i-1]が入力されてから、端子outpから信号Sp[i]が出力されるまでの入出力時間をTと記載している。
【0183】
上述の条件1乃至条件4において、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準として、端子outpから信号Sp[i]が出力される時間差をT[i]とする(図7(A)乃至(D)では、|T[i]|としている)。T[i]は、条件1乃至条件4の記載のとおり、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位と、信号x (k-1)に相当する電位と、に応じて決まる。
【0184】
例えば、信号x (k-1)に応じた電位が高レベル電位であるときにおいて、重み係数w (k-1) (k)が大きいほど(重み係数w (k-1) (k)に応じた電位が高いほど)、T[i]は小さくなり、また、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準としたときT[i]は負の値をとる。また、重み係数w (k-1) (k)が小さいほど(重み係数w (k-1) (k)に応じた電位が低いほど)、T[i]は大きくなり、また、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準としたときT[i]は正の値をとる。
【0185】
また、例えば、信号x (k-1)に応じた電位を高レベル電位であるとき、回路BF2に対する回路BF1の入出力時間の差はそのまま出力され、信号x (k-1)に応じた電位が低レベル電位であるとき、回路MPC[i]は、回路BF2に対する回路BF1の入出力時間の差は-1倍されて出力される。具体的には、条件1(図7(A)のタイミングチャート)において、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準として、端子outpから信号Sp[i]が出力される時間差をT[i]としたとき、条件3(図7(C)のタイミングチャート)において、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準として、端子outpから信号Sp[i]が出力される時間差は-T[i]となる。
【0186】
ところで、現実的には、切り替え回路SCにおいても、信号が入力されてから出力されるまで遅延が生じるため、端子outnから信号Sn[i]が出力される時間を基準として、端子outpから信号Sp[i]が出力される時間差T[i]には、当該遅延の時間が含まれている。なお、本実施の形態では当該遅延を無視して説明するものとする。
【0187】
上記のとおり、回路MPC[i]は、回路MPC[i]に信号Sp[i-1]、Sn[i-1]が入力されることで、重み係数w (k-1) (k)に相当する電位と、信号x (k-1)に相当する電位と、に応じた時間差T[i]を、回路MPC[i]から出力される2つの信号Sp[i]、Sn[i]に付与する。
【0188】
<<回路MPCを複数個、接続した場合の演算動作>>
ここで、図1(A)のとおり、回路MPCをm個、接続した場合の演算回路110の動作について説明する。回路MPC[i]は、重み係数w (k-1) (k)と、信号x (k-1)と、に応じた時間差T[i]を、回路MPC[i]から出力される2つの信号Sp[i]、Sn[i]に付与するため、回路MPC[1]に同時に信号Sp[0]、Sn[0]を与えることで、回路MPC[1]乃至回路MPC[m]の各回路において生じる時間差が累積される。
【0189】
回路MPC[i-1]から出力された2つの信号Sp[i-1]、Sn[i-1]の時間差をT[i-1]とし、回路MPC[i]から出力された2つの信号Sp[i]、Sn[i]の時間差をT[i]とすると、T[i]とT[i-1]との関係式は、次の式で表すことができる。
【0190】
【数4】
【0191】
g(w (k-1) (k))は、重み係数を変数として、回路MPC[i]における回路BF1と回路BF2とのそれぞれから出力される信号の時間差を出力する関数である。なお、切り替え回路SCにおける遅延時間を考慮する場合、式(1.4)に当該遅延時間を示す項を加えればよい。
【0192】
式(1.4)は、回路MPC[i-1]から出力された2つの信号Sp[i-1]、Sn[i-1]の時間差T[i-1]に対して、回路MPC[i]に保持されている重み係数w (k-1) (k)に応じた時間差であるg(w (k-1) (k))を足して、その値に切り替え回路SCの効果として信号x (k-1)の値を乗じた内容となっている。
【0193】
なお、T[1]は、次の式で表される。
【0194】
【数5】
【0195】
ここで、式(1.4)及び式(1.5)の漸化式を解いてT[m]について求めると、式(1.6)となる。但し、式(1.6)のΠは、総乗を示す多項演算子である。
【0196】
【数6】
【0197】
ここで、Πx (k-1)をz (k-1)に置き換えることを考える。
【0198】
【数7】
【0199】
Πx (k-1)をz (k-1)に置き換えることによって、式(1.6)、及び式(1.7)より、T[m]は、重み係数に依る関数g(w (k-1) (k))と信号z (k-1)との積和で表すことができる。つまり、式(1.2)を演算回路110によって計算することができる。
【0200】
次に、Πx (k-1)をz (k-1)に置き換えるためのx (k-1)とz (k-1)との関係式、及び信号z (k-1)乃至z (k-1)を信号x (k-1)乃至x (k-1)に変換する変換回路TRFについて説明する。
【0201】
初めに、zi+1 (k-1)を考える。zi+1 (k-1)は、式(1.7)を用いることによって次の式に表される(但し、ここでのiは1以上m-1以下の整数とする)。
【0202】
【数8】
【0203】
次に、式(1.7)と式(1.8)との辺々を割ることによって、次の式が得られる。
【0204】
【数9】
【0205】
また、i=mのとき、x (k-1)は、式(1.7)より次の式となる。
【0206】
【数10】
【0207】
式(1.9)、及び式(1.10)の関係を満たすことによって、式(1.6)において、Πx (k-1)をz (k-1)に置き換えることができる。
【0208】
次に、式(1.9)、及び式(1.10)の関係を満たすように、信号z (k-1)乃至z (k-1)を信号x (k-1)乃至x (k-1)に変換する変換回路TRFについて説明する。
【0209】
式(1.9)に示されているz (k-1)、zi+1 (k-1)は、それぞれ第(k-1)層のニューロンN (k-1)、ニューロンNi+1 (k-1)から出力された信号である。演算回路110では、ニューロンの活性化関数を、出力が-1又は1をとるステップ関数としているため、信号x (k-1)がとる値も-1又は1となる。そのため、x (k-1)は、z (k-1)とzi+1 (k-1)との排他的論理和の否定をとることによって表現することができる。
【0210】
図8(A)(B)のそれぞれには、信号z (k-1)乃至z (k-1)を信号x (k-1)乃至x (k-1)に変換する変換回路TRFの構成例を図示している。
【0211】
図8(A)に示す変換回路TRFは、一致回路(排他的論理和の否定回路)E[1]乃至一致回路E[m-1]を有する。なお、図8(A)では、一致回路E[1]、一致回路E[2]、一致回路E[i]、一致回路E[m-2]、一致回路E[m-1]のみ図示しており、それ以外の一致回路については図示を省略している。
【0212】
一致回路E[i](ここでのiは1以上m-1以下の整数である。)について説明する。一致回路E[i]の第1端子には信号z (k-1)が入力され、一致回路E[i]の第2端子には信号zi+1 (k-1)が入力される。また、一致回路E[i]の出力端子から信号x (k-1)が出力される。
【0213】
また、図8(A)に示す変換回路TRFは、信号z (k-1)が入力されることで、信号z (k-1)を信号x (k-1)としてそのまま出力している。
【0214】
図8(A)に示す変換回路TRFを構成することによって、式(1.9)、式(1.10)の関係式を満たすように、信号z (k-1)乃至z (k-1)の信号x (k-1)乃至x (k-1)への変換を行うことができる。
【0215】
なお、演算回路110が有する変換回路TRFは図8(A)に示す回路構成に限定されず、状況に応じて、図8(A)に示す変換回路TRFの構成を変更してもよい。
【0216】
例えば、演算回路110が有する変換回路TRFとして、図8(B)に示す変換回路TRFを適用してもよい。図8(B)の変換回路TRFは、図8(A)の変換回路TRFに一致回路E[m]を加えた構成となっている。
【0217】
具体的には、一致回路E[m]の第1端子には信号z (k-1)が入力され、一致回路E[m]の第2端子には低レベル電位に相当する信号SigLが入力される。また、一致回路E[m]の出力端子から信号x (k-1)が出力される。図8(B)の変換回路TRFを構成することによって、図8(A)の変換回路と同様の動作を行うことができる。
【0218】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0219】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した演算回路110の別の構成例について説明する。
【0220】
<演算回路110の構成例>
図1(A)に示した演算回路110において、回路MPCは、例えば、マトリクス状に配置することができる。このような演算回路の構成例を図9に示す。
【0221】
演算回路120は、回路MPCがマトリクス状に配置されたアレイ部ALPと、複数の回路ACTFを含む回路AFPと、回路TSGと、回路WLDと、回路SWLDと、変換回路TRFと、を有する。
【0222】
アレイ部ALPは、n×m個の回路MPCを有し、回路MPCはアレイ部ALPにおいてn行m列のマトリクス状に配置されている。なお、図9では、j行i列(ここでのjは1以上n以下の整数であって、iは1以上m以下の整数である。)に位置する回路MPCを、回路MPC[j,i]と表記している。但し、図9では、回路MPC[1,1]、回路MPC[1,m]、回路MPC[n,1]、回路MPC[n,m]のみ図示しており、それ以外の回路MPCについては図示を省略している。
【0223】
回路AFPは、n個の回路ACTFを有し、それぞれの回路ACTFは回路AFPにおいて1列に配置されている。なお、図9では、j行に位置する回路ACTFを、回路ACTF[j]と表記している。但し、図9では、回路ACTF[1]、回路ACTF[n]のみ図示しており、それ以外の回路ACTFについては図示を省略している。
【0224】
アレイ部ALP及び回路AFPにおいて、j行に着目すると、回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]は、隣接しあう回路MPC同士で、端子outpと端子inpとが電気的に接続され、かつ端子outnと端子innとが電気的に接続されている。そして、回路MPC[j,m]の端子outp及び端子outnは、それぞれ回路ACTF[j]の端子inpa及び端子innaに電気的に接続されている。また、回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]のそれぞれの端子xtは、変換回路TRFに電気的に接続されている。
【0225】
つまり、演算回路120のアレイ部ALPのある1行の回路MPCと回路ACTFに着目することで、当該1行の回路MPCと回路ACTFは、図1に示した演算回路110とみなすことができる。
【0226】
アレイ部ALPが有する回路MPCは、実施の形態1で説明した端子wt、端子wtm、端子xt、端子inp、端子inn、端子outp、端子outnに加え、端子stを有する。端子stは、実施の形態1で説明した配線SL01と電気的に接続される端子とする。
【0227】
回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]のそれぞれの端子stは、配線SWL[j]に電気的に接続されている。配線SWL[j]は、実施の形態1における配線SWLに相当し、図9では、配線SWL[1]と配線SWL[n]が図示されている。また、回路MPC[1,i]乃至回路MPC[n,i]のそれぞれの端子wtは、配線DL[i]に電気的に接続されている。配線DL[i]は、実施の形態1における配線DLに相当し、図9では、配線DL[1]と配線DL[m]が図示されている。更に、回路MPC[1,i]乃至回路MPC[n,i]のそれぞれの端子wtmは、配線DLm[i]に電気的に接続されている。配線DLm[i]は、実施の形態1における配線DLmに相当し、図9では、配線DLm[1]と配線DLm[m]が図示されている。
【0228】
回路TSGは、回路MPC[1,1]乃至回路MPC[n,1]のそれぞれの端子inp、端子innに入力するための信号を生成する回路である。
【0229】
回路WLDは、配線DL[1]乃至配線DL[m]に重み係数に応じた電位を与える機能と、配線DLm[1]乃至配線DLm[m]に中間電位を与える機能と、を有する。
【0230】
回路SWLDは、当該重み係数に応じた電位を保持するための保持部を選択するための回路である。具体的には、回路SWLDは、配線SWL[j]を介して、回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]が有する保持部HCA及びHCAmのそれぞれのトランジスタTr03及びトランジスタTr03mのゲートに電位を与える機能を有する。
【0231】
例えば、回路MPC[j,i]の保持部HCA、保持部HCAmのそれぞれに電位を保持する場合、回路WLDによって、配線DL[i]、配線DLm[i]のそれぞれに保持する電位を印加し、回路SWLDによって、配線SWL[j]に高レベル電位を印加して、回路MPC[j,i]の保持部HCA及びHCAmのそれぞれのトランジスタTr03及びトランジスタTr03mをオン状態にすることで、容量素子C01及び容量素子C01mの第1端子に配線DL[i]、配線DLm[i]のそれぞれの電位を書き込むことができる。また、容量素子C01及び容量素子C01mの第1端子に電位を書き込んだ後は、回路SWLDによって、配線SWL[j]に低レベル電位を印加して、回路MPC[j,i]の保持部HCA及びHCAmのそれぞれのトランジスタTr03及びトランジスタTr03mをオフ状態にすることで、保持部HCA、保持部HCAmにそれぞれ書き込まれた電位を保持することができる。
【0232】
変換回路TRFについては、実施の形態1で説明した変換回路TRFの記載を参酌する。なお、図9では、変換回路TRFに信号z (k-1)と信号z (k-1)が入力されている様子を示している。また、変換回路TRFに入力された信号z (k-1)乃至z (k-1)が変換されて出力される信号x (k-1)乃至x (k-1)は、アレイ部ALPが有する回路MPCに送られる。特に、信号x (k-1)は、回路MPC[1,i]乃至回路MPC[n,i]の端子xtに送られる。
【0233】
図9に示す演算回路120を構成することによって、複数の演算を同時に行うことができる。実施の形態1では、図1の演算回路110は、図4(B)のニューロンN (k)が出力する信号z (k)を求める回路と説明したが、図9に示す演算回路120を用いることにより、ニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)のそれぞれが出力する信号z (k)乃至信号z (k)を同時に求めることができる。
【0234】
詳細に説明すると、第k層のニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)のそれぞれには、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれから出力された信号z (k-1)乃至z (k-1)の全てが入力される。これは、変換回路TRFから出力された信号x (k-1)乃至x (k-1)が、アレイ部ALPが有する回路MPCに送られることに相当する。そして、第(k-1)層のニューロンN (k-1)と第k層のニューロンN (k)との重み係数に応じた電位を回路MPC[j,i]の保持部HCAに保持することによって、第k層のニューロンN (k)から出力される信号z (k)を、回路ACTF[j]から出力することができる。なお、図9では、回路ACTF[1]から信号z (k)を出力し、回路ACTF[n]から信号z (k)を出力する様子を図示している。
【0235】
なお、本発明の一態様の半導体装置は、図9に示す演算回路120に限定されない。図9に示す演算回路120は、図6に示す回路MPC[i]をマトリクス状に配置した場合の構成であるが、図10に示す回路MPC[i]をマトリクス状に配置した場合も演算回路を構成することができる。図10の回路MPC[i]は、回路BF1の保持部HCAにおける端子wtと、回路BF2の保持部HCAmにおける端子wtmと、が配線DLに電気的に接続されている点と、回路BF1における配線SL01が配線SWLに電気的に接続されている点と、回路BF2における配線SL01mが配線SWLmに電気的に接続されている点で図6の回路MPC[i]と異なっている。
【0236】
図9の演算回路120と同様に、図10の回路MPC[i]をn×m個のマトリクス状に配置して演算回路を構成した例を図11に示す。図11に示す演算回路130は、回路MPCが有する一部の端子、及び当該一部の端子に接続されている配線が、図9の演算回路120と異なっている。
【0237】
アレイ部ALPが有する回路MPCは、図10に示した端子wt、端子wtm、端子xt、端子inp、端子inn、端子outp、端子outnに加え、端子stと端子stmを有する。端子stは、回路BF1における配線SL01と電気的に接続される端子であり、端子stmは、回路BF2における配線SL01mと電気的に接続される端子である。なお、端子wtと端子wtmは、図10において、互いに電気的に接続されているため、図11では端子wtmの図示を省略し、端子wtmは端子wtと同一の端子とみなして説明する。
【0238】
回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]のそれぞれの端子stは、配線SWL[j]に電気的に接続されている。配線SWL[j]は、図10における配線SWLに相当し、図11では、配線SWL[1]と配線SWL[n]が図示されている。また、回路MPC[j,1]乃至回路MPC[j,m]のそれぞれの端子stmは、配線SWLm[j]に電気的に接続されている。配線SWLm[j]は、図10における配線SWLmに相当し、図11では、配線SWLm[1]と配線SWLm[n]が図示されている。更に、回路MPC[1,i]乃至回路MPC[n,i]のそれぞれの端子wtは、配線DL[i]に電気的に接続されている。配線DL[i]は、図10における配線DLに相当し、図11では、配線DL[1]と配線DL[m]が図示されている。
【0239】
つまり、演算回路120は、回路MPCが有する2個の保持部HCAに保持するための電位を別々の配線で入力し、トランジスタTr03及びトランジスタTr03mのオン状態とオフ状態の切り替えを1本の配線で行う構成であり、演算回路130は、回路MPCが有する2個の保持部HCAに保持するための電位を1本の配線で入力し、トランジスタTr03及びトランジスタTr03mのオン状態とオフ状態の切り替えを別々の配線で行う構成となっている。
【0240】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0241】
(実施の形態3)
本実施の形態では、インバータ回路DINV1、インバータ回路DINV2の別の構成例について説明する。
【0242】
なお、本実施の形態の説明で用いる図12(A1)(A2)(B)(C)(D)、図13(A)(B)(C)(D)(E)(F)では、インバータ回路DINV1を図示しているが、インバータ回路DINV2についてもインバータ回路DINV1と同様の回路を適用することができる。上述のとおり、インバータ回路DINV2として、インバータ回路DINV1と同様の回路を適用することができるため、回路BF2として、回路BF1と同様の回路構成を適用することができる。
【0243】
<構成例1>
図12(A1)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)に示した回路BF1のインバータ回路DINV1の構成を変更した回路となっている。
【0244】
図12(A1)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)に示したインバータ回路DINV1にトランジスタTr04を加えた構成となっている。なお、トランジスタTr04は、バックゲートを有するトランジスタである。また、トランジスタTr02は、図2(B1)に示したインバータ回路DINV1と異なり、バックゲートを有さず、そのため、容量素子C01の第1端子と電気的に接続されていない。
【0245】
トランジスタTr04の第1端子はトランジスタTr02の第2端子に電気的に接続され、トランジスタTr04の第2端子は配線VSSLに電気的に接続され、トランジスタTr04のゲートは、端子inpに電気的に接続され、トランジスタTr04のバックゲートは、容量素子C01の第1端子と、トランジスタTr03の第1端子と、に電気的に接続されている。
【0246】
つまり、図12(A1)のインバータ回路DINV1は、トランジスタTr01及びトランジスタTr02による、図2(B1)に示したインバータ回路INV1と同様の構成を有し、トランジスタTr04を介して、低レベル電位の入力する構成となっている。図12(A1)のインバータ回路DINV1の駆動速度は、トランジスタTr04のバックゲートに与えられる電位に応じて決めることができる。また、トランジスタTr04のバックゲートの電位は、図2(B1)のインバータ回路DINV1と同様に、トランジスタTr03と、容量素子C01と、によって保持することができる。
【0247】
なお、本発明の一態様は、図12(A1)に示したインバータ回路DINV1に限定されず、状況に応じて、回路構成を変更してもよい。例えば、図12(A2)に示すインバータ回路DINV1は、図12(A1)のインバータ回路DINV1のトランジスタTr04の接続を変更した構成となっている。具体的には、トランジスタTr04の第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr04の第2端子は、トランジスタTr01の第1端子に電気的に接続されている。図12(A2)のインバータ回路DINV1も、図12(A1)のインバータ回路DINV1と同様に、トランジスタTr04のバックゲートの電位をトランジスタTr03と、容量素子C01と、によって保持して、かつトランジスタTr04のバックゲートの電位に応じてインバータ回路DINV1の駆動速度を決めることができる。
【0248】
<構成例2>
図12(B)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)に示すインバータ回路DINV1の保持部HCAを保持部HCBに変更した構成となっている。
【0249】
保持部HCBは、インバータ回路SINV1と、インバータ回路SINV2と、を有する。インバータ回路SINV1の入力端子は、端子wtと、インバータ回路SINV2の出力端子と、トランジスタTr02のバックゲートと、に電気的に接続され、インバータ回路SINV1の出力端子は、インバータ回路SINV2の入力端子に電気的に接続されている。
【0250】
また、インバータ回路SINV1と、インバータ回路SINV2と、のそれぞれの高電源電位入力端子は、配線VSS1Lに電気的に接続され、インバータ回路SINV1と、インバータ回路SINV2と、のそれぞれの低電源電位入力端子は、配線VSS2Lに電気的に接続されている。
【0251】
配線VSS1Lは、電圧VSS1を供給する電圧線として機能する。配線VSS2Lは、電圧VSS1よりも低い電位VSS2を供給する電圧線として機能する。なお、電圧VSS1は、例えば、電圧VSS以下の値とすることができる。
【0252】
保持部HCBは、図12(B)に示すとおり、インバータ回路SINV1、及びインバータ回路SINV2によるインバータループの構成を有しているため、端子wtに入力された信号に応じた電位に応じて、トランジスタTr02のバックゲートの電位をVSS1又はVSS2の一方として保持することができる。
【0253】
つまり、図12(B)に示すインバータ回路DINV1の保持部HCBは、重み係数として2値のデータを保持することができる。そのため、回路MPCが有する回路BF1として、図12(B)に示す回路BF1を適用する場合、端子wtに入力される重み係数は2値のデータであることが好ましい。
【0254】
したがって、トランジスタTr02のバックゲートに与えられる電位がVSS1、又はVSS2の一方であるため、図12(B)のインバータ回路DINV1の駆動速度は2種類となる。具体的には、トランジスタTr02のバックゲートに与えられる電位がVSS1であるとき、トランジスタTr02のバックゲートに与えられる電位がVSS2であるときよりも、インバータ回路DINV1の駆動速度は速くなる。
【0255】
<構成例3>
図12(C)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)に示した回路BF1のインバータ回路DINV1の構成を変更した回路となっている。具体的には、図12(C)に示すインバータ回路DINV1は、トランジスタTr01として、バックゲートを有するトランジスタTr01pを適用している。トランジスタTr01pとしては、例えば、SOI(Silicon On Insulator)構造のpチャネル型トランジスタを適用することができる。また、トランジスタTr02は、バックゲートを有していなくてもよい。
【0256】
トランジスタTr01pのバックゲートは、容量素子C01の第1端子と、トランジスタTr03の第1端子と、に電気的に接続されている。このような構成にすることによって、図12(C)のインバータ回路DINV1は、図2(B1)のインバータ回路DINV1と同様に、入出力時間を変化させることができる。
【0257】
<構成例4>
図12(D)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)に示した回路BF1のインバータ回路DINV1の構成を変更した回路となっている。具体的には、図12(D)に示すインバータ回路DINV1は、トランジスタTr01を有さず、負荷素子LEと、トランジスタTr02と、トランジスタTr03と、容量素子C01と、を有する構成となっている。
【0258】
負荷素子LEの第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、負荷素子LEの第2端子は、トランジスタTr02の第1端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続されている。それ以外の接続構成については、図2(B1)のインバータ回路DINV1の接続構成の説明を参酌する。
【0259】
負荷素子LEとしては、例えば、抵抗素子を用いることができる。図13(A)に示すインバータ回路DINV1は、負荷素子LEとして、抵抗素子R01を適用した構成となっている。
【0260】
また、負荷素子LEとしては、例えば、ダイオードを用いることができる。図13(B)に示すインバータ回路DINV1は、負荷素子LEとして、ダイオードD01を適用した構成となっている。
【0261】
また、負荷素子としては、例えば、トランジスタTr02と同じnチャネル型トランジスタを用いることができる。図13(C)に示すインバータ回路DINV1は、負荷素子LEとして、ゲートと第1端子とが電気的に接続された(ダイオード接続となっている)トランジスタTr15を適用した構成となっている。
【0262】
また、図13(D)に示すインバータ回路DINV1は、負荷素子LEとして、ゲートと第2端子とが電気的に接続されたトランジスタTr15を適用した構成となっている。
【0263】
また、図13(C)(D)において、負荷素子LEとして適用したトランジスタTr15は、バックゲートを有するトランジスタとしてもよい。更に、ゲートとバックゲートとが電気的に接続されたトランジスタを用いることによって、当該トランジスタのオン電流を高くすることができる。図13(E)(F)のそれぞれは、図13(C)(D)に示したトランジスタTr05にバックゲートを設け、かつトランジスタTr15のゲートとバックゲートとが電気的に接続された構成となっている。
【0264】
<構成例5>
図14(A)に示す回路BF1は、図2(B1)に示した回路BF1のインバータ回路DINV1の構成を変更した回路となっている。具体的には、図14(A)に示すインバータ回路DINV1は、図2(B1)の回路BF1の保持部HCAとして、保持部HCA1及び保持部HCA2を有する回路構成となっている。
【0265】
図14(A)の回路BF1は、図2(B1)の回路BF1が有する回路素子に加え、トランジスタTr02aと、スイッチS05と、スイッチS05aと、を有する。特に、トランジスタTr02aは、バックゲートを有するトランジスタとする。また、保持部HCA1及び保持部HCA2は、図2(B1)の回路BF1の保持部HCAと同様の回路構成を有する。なお、図14(A)において、保持部HCA1では、トランジスタTr03、容量素子C01と記載し、保持部HCA2では、保持部HCA1の回路素子と区別するため、トランジスタTr03a、容量素子C01aと記載している。
【0266】
スイッチS05は、図2(B1)の回路BF1におけるトランジスタTr01の第2端子とトランジスタTr02の第1端子との間に、電気的に接続される。具体的には、トランジスタTr01の第2端子は、スイッチS05の第1端子とインバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr02の第1端子は、スイッチS05の第2端子に電気的に接続される。また、スイッチS05の制御端子は、配線SL02に電気的に接続されている。
【0267】
スイッチS05aの第1端子は、トランジスタTr01の第2端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続され、スイッチS05aの第2端子は、トランジスタTr02aの第1端子に電気的に接続され、スイッチS05aの制御端子は、配線SL02aに電気的に接続されている。また、トランジスタTr02aの第2端子は、配線VSSLに電気的に接続され、トランジスタTr02aのゲートは、端子inpと、トランジスタTr01のゲートと、トランジスタTr02のゲートと、に電気的に接続されている。トランジスタTr02aのバックゲートは、保持部HCA2に含まれるトランジスタTr03aの第1端子と、容量素子C01aの第1端子と、に電気的に接続されている。トランジスタTr03aの第2端子は、端子wtaに電気的に接続され、トランジスタTr03aのゲートは、配線SL01に電気的に接続され、容量素子C01aの第2端子の第2端子は、配線VLに電気的に接続されている。
【0268】
上述のとおり、トランジスタTr03aのゲートは、トランジスタTr03のゲートと同様に、配線SL01に電気的に接続されている。このため、トランジスタTr03及びトランジスタTr03aのスイッチング制御は、配線SL01によって行われる。この場合、トランジスタTr03及びトランジスタTr03aのスイッチング制御が同時に行われるため、保持部HCA1及び保持部HCA2に保持する電位が入力される端子wt、及び端子wtaは別々の配線によって接続される必要がある。そのため、図14(A)の回路BF1は、端子wtは、配線DLに電気的に接続され、端子wtaは配線DLmに電気的に接続されている構成としている。
【0269】
配線SL02からスイッチS05の制御端子に電位を印加することによって、スイッチS05をオン状態又はオフ状態にすることができる。同様に、配線SL02aからスイッチS05aのゲートに電位を印加することによって、スイッチS05aをオン状態又はオフ状態にすることができる。
【0270】
トランジスタTr03aは、トランジスタTr03と同様に、スイッチング素子として機能し、配線SL01aからトランジスタTr03aのゲートに電位を印加することによって、トランジスタTr03aをオン状態又はオフ状態にすることができる。
【0271】
端子wtaには、端子wtと同様に、重み係数に相当する電位が入力される。つまり、保持部HCA1、及び保持部HCA2のそれぞれは、保持部HCAと同様に、対応する重み係数に相当する電位を保持することができる。つまり、図14(A)の回路BF1は、2つの重み係数に相当する電位を保持することができる。
【0272】
演算回路110の全ての回路MPCに含まれる回路BF1として、図14(A)の回路BF1を適用することによって、重み係数を切り替えて、演算を行うことができる。例えば、演算回路110の回路MPC[1]乃至回路MPC[m]に含まれる回路BF1のそれぞれの保持部HCA1に重み係数w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k)に相当する電位を保持し、保持部HCA2に重み係数w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k)(hは、1以上n以下でjでない整数とする。)に相当する電位を保持し、端子xtには、信号z (k-1)乃至z (k-1)に応じた信号x (k-1)乃至x (k-1)が入力されているものとする。このとき、配線SL02に高レベル電位を印加してスイッチS05をオン状態とし、配線SL02aに低レベル電位を印加してスイッチS05aをオフ状態とすることで、演算回路110は、重み係数w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k)と信号z (k-1)乃至z (k-1)との積和と活性化関数の演算を行うことができる。また、配線SL02に低レベル電位を印加してスイッチS05をオフ状態とし、配線SL02aに高レベル電位を印加してスイッチS05aをオン状態とすることで、演算回路110は、重み係数w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k)と信号z (k-1)乃至z (k-1)との積和と活性化関数の演算を行うことができる。
【0273】
演算回路110の全ての回路MPCに含まれる回路BF1として、図14(A)の回路BF1を適用することによって、重み係数を切り替えることで、それぞれの重み係数に対応する演算を行うことができる。また、図14(A)の回路BF1では、保持部HCAとして、保持部HCA1と保持部HCA2を図示したが、インバータ回路DINV1は3個以上の保持部を有してもよい。また、ニューラルネットワークで扱う重み係数を1ビット(2値)とする場合、例えば、保持部HCA1に高レベル電位を保持し、保持部HCA2に低レベル電位を保持して、状況に応じて重み係数を切り替えながら演算を行うことができる。
【0274】
また、重み係数の切り替えを行うスイッチS05及びスイッチS05aを設ける箇所は、図14(A)の回路BF1の構成に限定されない。例えば、図14(B)に示す回路BF1のとおり、スイッチS05及びスイッチS05aを設ける箇所を、図14(A)と異なる位置にすることができる。図14(B)の回路BF1において、スイッチS05は、トランジスタTr02の第2端子と、配線VSSLと、の間に設けられ、スイッチS05aは、トランジスタTr02aの第2端子と、配線VSSLと、の間に設けられている。このような構成にすることによって、図14(B)の回路BF1は、図14(A)の回路BF1と同様の動作を行うことができる。
【0275】
なお、本発明の一態様に係る半導体装置に含まれる回路は、図12(A1)(A2)(B)(C)、(D)、図13(A)乃至(F)、図14(A)(B)に示した回路の構成に限定されず、状況に応じて、図12(A1)(A2)(B)(C)、(D)、図13(A)乃至(F)、図14(A)(B)に示した回路を変更した構成としてもよい。また、本発明の一態様に係る半導体装置に含まれる回路は、図12(A1)(A2)(B)(C)、(D)、図13(A)乃至(F)、図14(A)(B)に示した回路のそれぞれを組み合わせた構成としてもよい。
【0276】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0277】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した回路MPCにおいて、トランジスタTr01、及び/又はトランジスタTr02のしきい値電圧の補正を行うことができるインバータ回路DINV1(インバータ回路DINV2)の構成例について説明する。
【0278】
図15(A)は、先の実施の形態で説明した回路MPCが有する回路BF1(回路BF2)に適用できる回路の一例を示したブロック図である。図15(A)の回路BF1(BF2)は、駆動部DRVと補正部CORと保持部HCA(保持部HCAm)とを含むインバータ回路DINV1(インバータ回路DINV2)と、インバータ回路INV1(インバータ回路INV2)と、を有する。
【0279】
駆動部DRVは、トランジスタTr01と、トランジスタTr02と、を有する。先の実施の形態で説明したとおり、トランジスタTr01はpチャネル型トランジスタであり、トランジスタTr02はバックゲートを有するnチャネル型トランジスタである。
【0280】
補正部CORは、トランジスタTr01及び/又はトランジスタTr02のしきい値電圧を補正する機能を有する。そのため、補正部CORは、駆動部DRVに電気的に接続されている。また、補正部CORは、配線CLに電気的に接続されており、配線CLは、補正部CORを動作させるために、補正部CORに対して必要な信号を供給する機能を有する。なお、配線CLは、1本ではなく、複数の配線として示す場合がある。
【0281】
保持部HCA(保持部HCAm)は、先の実施の形態で説明したとおり、トランジスタTr02のバックゲートの電位を保持する機能を有する。そのため、保持部HCA(保持部HCAm)は、駆動部DRVに電気的に接続されている。なお、保持部HCA(保持部HCAm)と駆動部DRVとを電気的に接続する配線に、補正部CORが電気的に接続されている場合がある。つまり、保持部HCA(保持部HCAm)は、補正部CORに電気的に接続される場合がある。
【0282】
なお、保持部HCA(保持部HCAm)の詳細については、先の実施の形態の記載を参酌する。
【0283】
ところで、図15(A)に図示したインバータ回路DINV1(インバータ回路DINV2)(厳密には、インバータ回路の機能を有する駆動部DRV)、及び/又はインバータ回路INV1(インバータ回路INV2)は、例えば、NAND回路、NOR回路、XOR回路、又はこれらを組み合わせた回路などに置き換えることができる(以後、NAND回路、NOR回路、XOR回路、又はこれらを組み合わせた回路をまとめて論理回路と呼称する。)。図15(B)は、図15(A)とは異なる、先の実施の形態で説明した回路MPCが有する回路BF1(回路BF2)に適用できる回路の一例を示したブロック図であり、駆動部DRVが論理回路LGC1に置き換えられ、インバータ回路INV1(インバータ回路INV2)が論理回路LGC2に置き換えられている。論理回路LGC1、論理回路LGC2のそれぞれは、該当する回路に入力された信号に対する反転信号を生成して出力する機能を有し、その一例が先述したインバータ回路とすることができる。
【0284】
例えば、論理回路LGC1、及び/又は論理回路LGC2として、NAND回路を適用する場合、NAND回路の2入力端子の一方に固定電位として高レベル電位を入力することで、NAND回路をインバータ回路として機能することができる。また、例えば、論理回路LGC1、及び/又は論理回路LGC2として、NOR回路を適用する場合、NOR回路の2入力端子の一方に固定電位として低レベル電位を入力することで、NOR回路をインバータ回路として機能することができる。また、例えば、論理回路LGC1、及び/又は論理回路LGC2として、XOR回路を適用する場合、XOR回路の2入力端子の一方に固定電位として高レベル電位を入力することで、XOR回路をインバータ回路として機能することができる。
【0285】
上述の通り、本明細書等に記載されているインバータ回路は、NAND回路、NOR回路、XOR回路、又はこれらを組み合わせた回路などの論理回路に置き換えることができる。そのため、本明細書などにおいて、「インバータ回路」という用語は、広義的に「論理回路」と呼称することができる。
【0286】
以下に、図15(A)(B)に示した回路BF1(回路BF2)の具体的な構成例について説明する。なお、回路BF2は回路BF1と同様の構成にすることができるため、以後の説明に用いる図面では、回路BF1を表す符合としてBF1(BF2)と記載している。また、回路BF2が有する構成要素で、回路BF1の有する構成要素と符号が異なるものについては、回路BF1の構成要素を示す符号の付近の括弧内に記載している。
【0287】
なお、以後の説明では、特に断らない限り、回路BF1について取り扱う。そのため、回路BF2について考える場合、図面に記載されている括弧内の符号を参照して、以下に説明する回路BF1の構成要素の符号を、括弧内の符号に置き換えて説明することができる。
【0288】
<構成例1>
図15(A)の回路BF1の構成例を図16(A)に示す。図16(A)に示す回路BF1は、トランジスタTr02のしきい値電圧を補正する機能を有する。
【0289】
図16(A)の回路BF1において、補正部CORは、スイッチS51乃至スイッチS54と、容量素子C21と、を有する。
【0290】
駆動部DRVのトランジスタTr01の第2端子は、スイッチS51の第1端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続され、スイッチS51の第2端子は、駆動部DRVのトランジスタTr02の第1端子と、スイッチS52の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS52の第2端子は、トランジスタTr02のバックゲートと、容量素子C21の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr02の第2端子は、スイッチS53の第1端子と、配線VSSLと、に電気的に接続されている。容量素子C21の第2端子は、スイッチS53の第2端子と、スイッチS54の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS54の第2端子は、保持部HCAのトランジスタTr03の第1端子と、保持部HCAの容量素子C01の第1端子と、に電気的に接続されている。また、回路MPCの端子inpは、トランジスタTr01とトランジスタTr02とのそれぞれのゲートに電気的に接続されている。
【0291】
上記以外の接続構成については、先の実施の形態で説明した回路BF1(特に、図2(B1)など)の内容を参酌する。
【0292】
スイッチS51乃至スイッチS54の制御端子には、それぞれ配線SL51乃至配線SL54が電気的に接続されている。つまり、配線SL51乃至配線SL54のそれぞれに所定の電圧を印加することによって、スイッチS51乃至スイッチS54のそれぞれはオン状態又はオフ状態の一方にすることができる。なお、本明細書などにおいて、スイッチS51乃至スイッチS54のそれぞれは、制御端子に高レベル電位が印加されたときにオン状態となり、制御端子に低レベル電位が印加されたときにオフ状態となるものとする。また、配線SL51乃至配線SL54は、図15(A)における配線CLに相当する。
【0293】
なお、スイッチS51乃至スイッチS54としては、例えば、アナログスイッチ、トランジスタなどの電気的なスイッチを適用することができる。また、スイッチS51乃至スイッチS54としては、例えば、機械的なスイッチを適用してもよい。特に、スイッチS52にトランジスタを適用する場合、当該トランジスタは、OSトランジスタとすることが好ましい。容量素子C21の第1端子の電位、及びトランジスタTr02のバックゲートの電位を長時間保持するのが好ましいため、スイッチS52はオフ電流の小さいOSトランジスタとするのが好適である。また、スイッチS52以外のスイッチについても、OSトランジスタを採用してもよい。
【0294】
また、スイッチS52の第2端子と、トランジスタTr02のバックゲートと、容量素子C21の第1端子と、の電気的接続点をノードnd1と呼称する。加えて、容量素子C21の第2端子と、スイッチS53の第2端子と、スイッチS54の第1端子と、の電気的接続点をノードnd3と呼称する。更に、トランジスタTr03の第1端子と、容量素子C01の第1端子と、スイッチS54の第2端子と、の電気的接続点をノードnd2と呼称する。
【0295】
なお、本発明の一態様の半導体装置に含まれる回路BF1は、図16(A)の回路BF1に限定されず、状況に応じて、図16(A)の回路BF1の変更した構成にすることができる。例えば、図16(A)の回路BF1ではトランジスタTr01の第2端子とトランジスタTr02の第1端子との間にスイッチS51が設けられているが、図16(B)に示す回路BF1のとおり、スイッチS51を配線VDDLとトランジスタTr01の第1端子との間に設けてもよい。なお、図16(B)では、配線CLの符号を省略している。
【0296】
次に、図16(A)(B)の回路BF1における、トランジスタTr02のしきい値電圧を補正するための動作の例について説明する。
【0297】
図17は、図16(A)(B)の回路BF1の、トランジスタTr02のしきい値電圧の補正を行う動作例を示したタイミングチャートであり、時間T11から時刻T16までの間、及びその周辺の時刻における、端子inp、配線SL51乃至配線SL54、配線SL01、ノードnd1乃至ノードnd3の電位の変化を示している。
【0298】
なお、本動作例では、配線VSSLが与える電圧VSSは、一例として、0Vとして説明する。
【0299】
時刻T11から時刻T12までの間では、トランジスタTr02のしきい値電圧の補正の動作における、回路BF1の初期化が行われる。具体的には、端子inpには、電圧VSSが与えられ、配線SL51乃至配線SL53には高レベル電位が与えられ、配線SL54及び配線SL01には低レベル電位が与えられる。
【0300】
このため、スイッチS51乃至スイッチS53はオン状態となり、スイッチS54及びトランジスタTr03はオフ状態となる。
【0301】
トランジスタTr01のゲートには、VSSとして0Vが入力されており、これによって、トランジスタTr01はオン状態となるものとする。
【0302】
また、スイッチS51及びスイッチS52がオン状態となっているため、配線VDDLと容量素子C21の第1端子との間が導通状態になる。これによって、ノードnd1の電位は、VDDとなる。加えて、スイッチS53がオン状態となっているため、容量素子C21の第2端子と、配線VSSLと、の間が導通状態になる。これによって、ノードnd3の電位は、VSS(=0V)となる。つまり、容量素子C21の第1端子と第2端子との間の電圧は、VDDとなる。
【0303】
なお、このときのトランジスタTr02のゲートにはVSSとして0Vが入力され、トランジスタTr02の第2端子にはVSSとして0Vが入力され、トランジスタTr02の第1端子にはVDDが入力されているため、トランジスタTr02の第1端子はドレインとして機能し、トランジスタTr02の第2端子はソースとして機能する。
【0304】
このとき、トランジスタTr02のゲート-ソース間の電圧VGSは0Vとなる。また、トランジスタTr02のバックゲートにはVDDが入力されており、トランジスタTr02のしきい値電圧はマイナス側にシフトされているため、トランジスタTr02はオン状態となっている。
【0305】
時刻T12から時刻T13までの間において、配線SL51の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS51がオフ状態となる。これにより、容量素子C21の第1端子に充電された正の電荷は、トランジスタTr02がオフ状態になるまで、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間を介して配線VSSLに流れる。換言すると、トランジスタTr02がオフ状態になるまで、配線VSSLから、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間を介して、容量素子C21の第1端子に負の電荷が流れる。
【0306】
この過程によって、ノードnd1の電位はVDDから低下していき、トランジスタTr02のしきい値電圧がプラス側にシフトしていく。最終的に、トランジスタTr02のしきい値電圧が、トランジスタTr02の電圧VGS(=0V)に達したときにトランジスタTr02がオフ状態となるため、このときのノードnd1の電位が容量素子C21の第1端子に保持される。なお、このときのトランジスタTr02のバックゲート-ソース間の電圧、つまり容量素子C21の第1端子と第2端子との間の電圧をVBGSとする。
【0307】
時刻T13から時刻T14までの間において、配線SL52の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS52がオフ状態となる。これによって、ノードnd1は、電気的に浮遊状態となり、ノードnd1の電位は容量素子C21によって保持される。
【0308】
この動作によって、トランジスタTr02のバックゲート-ソース間(容量素子C21の第1端子と第2端子との間)の電圧は、トランジスタTr02のしきい値電圧が0Vとなる、電圧VBGSに設定される。
【0309】
時刻T14から時刻15までの間において、配線SL53の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS53がオフ状態となる。これにより、容量素子C21の第2端子と配線VSSLとの間が非導通状態となる。
【0310】
また、時刻T14から時刻15までの間において、配線SL01に高レベル電位が与えられるため、トランジスタTr03がオン状態となる。なお、このとき端子wtには、重み係数に相当する電位Vが入力されているものとする。そのため、容量素子C01によって、ノードnd2に、端子wtから入力された電位Vが保持される。なお、本動作例では、電位Vは、一例として、0V未満の電位として扱う。
【0311】
時刻T15から時刻T16までの間において、配線SL54の電位が高レベル電位に変化して、スイッチS54がオン状態となる。これにより、端子wtと容量素子C21の第2端子との間が導通状態となり、容量素子C21の第2端子(ノードnd3)に、端子から入力された電位Vが印加される。
【0312】
このとき、ノードnd1は電気的に浮遊状態となっているため、ノードnd3の電位が変動することで、容量素子C21の容量結合によって、ノードnd1の電位も変動する。ノードnd1の電位の変動量は、容量結合係数によって決まり、当該容量結合係数はトランジスタTr02のゲート容量、ノードnd1の周辺の配線の寄生容量などによって決まる。本動作例では、説明の煩雑さを避けるため、ノードnd1の電位の変動量もノードnd3の電位の変動量も同値として説明する。これは、当該容量結合係数を1としていることに相当する。
【0313】
容量結合係数を1としているため、ノードnd3の電位がVSS(=0V)からVに上昇することで、ノードnd1の電位は、VBGS+Vとなる。なお、本動作例では、Vは負の電位であるため、ノードnd1の電位は、VBGSよりもV低い電位となる。
【0314】
時刻T16以降において、配線SL01の電位が低レベル電位に変化して、トランジスタTr03がオフ状態となる。これによって、ノードnd2及びノードnd3の電位は、容量素子C01、及び容量素子C21によって保持される。つまり、ノードnd1の電位であるVBGS+Vも保持される。
【0315】
図16(A)(B)の回路BF1は、図17のタイミングチャートに示した時刻T11から時刻T16まで、及び時刻T16以降の動作を行うことによって、トランジスタTr02のしきい値電圧をほぼ0に補正した上で、トランジスタTr02のバックゲートに重み係数に相当する電位を入力することができる。そのため、複数の回路BF1を作製した時に発生する、それぞれのトランジスタTr02のしきい値電圧のばらつきを抑制することができ、これにより、それぞれのトランジスタTr02のバックゲートに、重み係数に相当する電位をより正確に入力することができる。
【0316】
<構成例2>
トランジスタTr02のしきい値電圧を補正する機能を有する回路BF1として、構成例1とは異なる構成例を図18に示す。
【0317】
図18の回路BF1において、補正部CORは、スイッチS53乃至スイッチS58と、容量素子C21と、を有する。
【0318】
駆動部DRVのトランジスタTr01の第2端子は、インバータ回路INV1の入力端子と、駆動部DRVのトランジスタTr02の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr01のゲートは、スイッチS55の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS55の第2端子は、トランジスタTr02のゲートと、スイッチS57の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS57の第2端子は、トランジスタTr02の第2端子と、スイッチS53の第1端子と、スイッチS58の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS58の第2端子は、配線VSSLに電気的に接続されている。トランジスタTr02のバックゲートは、スイッチS56の第1端子と、容量素子C21の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS56の第2端子は、配線Vref1Lに電気的に接続されている。容量素子C21の第2端子は、スイッチS53の第2端子と、スイッチS54の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS54の第2端子は、保持部HCAのトランジスタTr03の第1端子と、保持部HCAの容量素子C01の第1端子と、に電気的に接続されている。また、回路MPCの端子inpは、トランジスタTr01のゲートと、スイッチS55の第1端子と、に電気的に接続されている。
【0319】
上記以外の接続構成については、先の実施の形態で説明した回路BF1(特に、図2(B1)など)の内容を参酌する。
【0320】
スイッチS53乃至スイッチS58の制御端子には、それぞれ配線SL53乃至配線SL58が電気的に接続されている。つまり、配線SL53乃至配線SL58のそれぞれに所定の電圧を印加することによって、スイッチS53乃至スイッチS58のそれぞれはオン状態又はオフ状態の一方にすることができる。なお、本明細書などにおいて、スイッチS53乃至スイッチS58のそれぞれは、制御端子に高レベル電位が印加されたときにオン状態となり、制御端子に低レベル電位が印加されたときにオフ状態となるものとする。また、配線SL53乃至配線SL58は、図15(A)における配線CLに相当する。
【0321】
なお、スイッチS53乃至スイッチS58としては、例えば、構成例1で説明したスイッチS51乃至スイッチS54と同様に、アナログスイッチ、トランジスタなどを適用することができる。また、スイッチS53乃至スイッチS58としては、例えば、機械的なスイッチを適用してもよい。特に、スイッチS56にトランジスタを適用する場合、当該トランジスタは、OSトランジスタとすることが好ましい。容量素子C21の第1端子の電位、及びトランジスタTr02のバックゲートの電位を長時間保持するのが好ましいため、スイッチS56はオフ電流の小さいOSトランジスタとするのが好適である。また、スイッチS56以外のスイッチについても、OSトランジスタを採用してもよい。
【0322】
配線Vref1Lは、所定の定電圧Vref1を与える配線である。当該定電圧としては、例えば、トランジスタTr02のバックゲートに入力することで、トランジスタTr02のしきい値電圧をマイナス方向にシフトさせる電圧とすることが好ましい。
【0323】
また、本構成例において、スイッチS56の第1端子と、トランジスタTr02のバックゲートと、容量素子C21の第1端子と、の電気的接続点をノードnd1と呼称する。また、構成例1と同様に、容量素子C21の第2端子と、スイッチS53の第2端子と、スイッチS54の第1端子と、の電気的接続点をノードnd3と呼称する。更に、トランジスタTr03の第1端子と、容量素子C01の第1端子と、スイッチS54の第2端子と、の電気的接続点をノードnd2と呼称する。
【0324】
次に、図18の回路BF1における、トランジスタTr02のしきい値電圧を補正するための動作の例について説明する。
【0325】
図19は、図18の回路BF1の、トランジスタTr02のしきい値電圧の補正を行う動作例を示したタイミングチャートであり、時間T21から時刻T26までの間、及びその周辺の時刻における、端子inp、配線SL53乃至配線SL58、配線SL01、ノードnd1乃至ノードnd3の電位の変化を示している。
【0326】
なお、本動作例では、配線VSSLが与える電圧VSSは、一例として、0Vとして説明する。
【0327】
時刻T21から時刻T22までの間では、トランジスタTr02のしきい値電圧の補正の動作における、回路BF1の初期化が行われる。具体的には、端子inpには、電圧VSSが与えられ、配線SL53、配線SL56乃至配線SL58には高レベル電位が与えられ、配線SL54、配線SL55、及び配線SL01には低レベル電位が与えられる。
【0328】
このため、スイッチS53、スイッチS56乃至スイッチS58はオン状態となり、スイッチS54、スイッチS55、及びトランジスタTr03はオフ状態となる。
【0329】
トランジスタTr01のゲートには、VSSとして0Vが入力されており、これによって、トランジスタTr01はオン状態となるものとする。
【0330】
また、スイッチS56がオン状態となっているため、配線Vref1Lと容量素子C21の第1端子との間が導通状態となる。これによって、ノードnd1の電位は、Vref1となる。加えて、スイッチS53及びスイッチS58がオン状態となっているため、容量素子C21の第2端子と、配線VSSLと、の間が導通状態となる。これによって、ノードnd3の電位は、VSS(=0V)となる。つまり、容量素子C21の第1端子と第2端子との間(トランジスタTr02のバックゲート-ソース間)の電圧は、Vref1となる。
【0331】
加えて、スイッチS57及びスイッチS58がオン状態となっているため、配線VSSLとトランジスタTr02のゲートとの間が導通状態となる。これによって、トランジスタTr02のゲート及び第2端子のそれぞれには、VSSとして0Vが入力される。トランジスタTr02の第1端子にはVDDが印加されているため、トランジスタTr02の第1端子はドレインとして機能し、トランジスタTr02の第2端子はソースとして機能する。
【0332】
このとき、トランジスタTr02のゲート-ソース間の電圧VGSは0Vとなる。また、トランジスタTr02のバックゲートにはVref1が入力されており、トランジスタTr02のしきい値電圧はマイナス側にシフトされているため、トランジスタTr02はオン状態となっている。
【0333】
時刻T22から時刻T23までの間において、配線SL58の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS58がオフ状態となる。これにより、容量素子C21の第2端子に充電された負の電荷は、トランジスタTr02がオフ状態になるまで、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間を介して配線VDDLに流れる。換言すると、トランジスタTr02がオフ状態になるまで、配線VDDLから、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間を介して、容量素子C21の第2端子に正の電荷が流れる。
【0334】
この過程によって、ノードnd3の電位はVSSから上昇していく。そのため、トランジスタTr02のバックゲート-ソース間の電圧はVref1から低下していき、トランジスタTr02のしきい値電圧がプラス側にシフトしていく。最終的に、トランジスタTr02のしきい値電圧が、トランジスタTr02の電圧VGS(=0V)に達したときにトランジスタTr02がオフ状態となるため、このときのノードnd3の電位が容量素子C21の第2端子に保持される。なお、このときのトランジスタTr02のバックゲート-ソース間の電圧、つまり容量素子C21の第1端子と第2端子との間の電圧をVBGSとする。また、このときのノードnd3の電位は、Vref1-VBGSとなる。
【0335】
時刻T23から時刻T24までの間において、配線SL56の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS56がオフ状態となる。これによって、ノードnd1は、電気的に浮遊状態となり、ノードnd1の電位Vref1は容量素子C21の第1端子によって保持される。
【0336】
この動作によって、トランジスタTr02のバックゲート-ソース間(容量素子C21の第1端子と第2端子との間)の電圧が、トランジスタTr02のしきい値電圧が0Vとなる電圧VBGSに設定される。
【0337】
時刻T24から時刻25までの間において、配線SL53及び配線SL57の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS53及びスイッチS57がオフ状態となる。加えて、配線SL55、及び配線SL58の電位が高レベル電位に変化して、スイッチS55、及びスイッチS58がオン状態となる。これにより、端子inpとトランジスタTr01のゲートとの間、及び端子inpとトランジスタTr02のゲートとの間は、それぞれ導通状態となる。また、トランジスタTr02の第2端子と配線VSSLとの間は導通状態となる。
【0338】
また、時刻T24から時刻25までの間において、配線SL01に高レベル電位が与えられるため、トランジスタTr03がオン状態となる。なお、このとき端子wtには、重み係数に相当する電位Vが入力されているものとする。そのため、容量素子C01によって、ノードnd2に、端子wtから入力された電位Vが保持される。なお、本動作例では、電位Vは、一例として、0V未満の電位として扱う。
【0339】
時刻T25から時刻T26までの間において、配線SL54の電位が高レベル電位に変化して、スイッチS54がオン状態となる。これにより、端子wtと容量素子C21の第2端子との間が導通状態となり、容量素子C21の第2端子(ノードnd3)に、端子から入力された電位Vが印加される。
【0340】
このとき、ノードnd1は電気的に浮遊状態となっているため、ノードnd3の電位が変動することで、容量素子C21の容量結合によって、ノードnd1の電位も変動する。本動作例では、構成例1と同様に、容量素子C21の容量結合係数を1として考える。そのため、ノードnd1の電位の変動量は、ノードnd3の電位の変動量と同じとして説明する。
【0341】
容量結合係数を1としているため、ノードnd3の電位がVref1-VBGSからVref1-VBGS+Vに上昇することで、ノードnd1の電位は、VBGS+Vとなる。なお、本動作例では、Vは負の電位であるため、ノードnd1の電位は、VBGSよりもV低い電位となる。
【0342】
時刻T26以降において、配線SL01の電位が低レベル電位に変化して、トランジスタTr03がオフ状態となる。これによって、ノードnd2及びノードnd3の電位は、容量素子C01、及び容量素子C21によって保持される。つまり、ノードnd1の電位であるVBGS+Vも保持される。
【0343】
図18の回路BF1は、図19のタイミングチャートに示した時刻T21から時刻T26まで、及び時刻T26以降の動作を行うことによって、構成例1と同様に、トランジスタTr02のしきい値電圧をほぼ0に補正した上で、トランジスタTr02のバックゲートに重み係数に相当する電位を入力することができる。そのため、複数の回路BF1を作製した時に発生する、それぞれのトランジスタTr02のしきい値電圧のばらつきを抑制することができ、これにより、それぞれのトランジスタTr02のバックゲートに、重み係数に相当する電位をより正確に入力することができる。
【0344】
<構成例3>
図15(A)の回路BF1の構成例を図20(A)に示す。図20(A)に示す回路BF1は、トランジスタTr01のしきい値電圧を補正する機能を有する。
【0345】
図20(A)の回路BF1において、補正部CORは、スイッチS58乃至スイッチS61と、容量素子C22と、を有する。
【0346】
駆動部DRVのトランジスタTr01の第1端子は、スイッチS59の第1端子と、配線VDDLと、に電気的に接続され、スイッチS59の第2端子は、容量素子C22の第1端子と、スイッチS60の第1端子と、に電気的に接続されている。容量素子C22の第2端子は、トランジスタTr01のゲートと、スイッチS61の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr01の第2端子は、スイッチS61の第2端子と、スイッチS58の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS58の第2端子は、駆動部DRVのトランジスタTr02の第1端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続され、スイッチS60の第2端子は、端子inpと、トランジスタTr02のゲートと、に電気的に接続されている。
【0347】
上記以外の接続構成については、先の実施の形態で説明した回路BF1(特に、図2(B1)など)の内容を参酌する。
【0348】
スイッチS58乃至スイッチS61の制御端子には、それぞれ配線SL58乃至配線SL61が電気的に接続されている。つまり、配線SL58乃至配線SL61のそれぞれに所定の電圧を印加することによって、スイッチS58乃至スイッチS61のそれぞれはオン状態又はオフ状態の一方にすることができる。なお、本明細書などにおいて、スイッチS58乃至スイッチS61のそれぞれは、制御端子に高レベル電位が印加されたときにオン状態となり、制御端子に低レベル電位が印加されたときにオフ状態となるものとする。また、配線SL58乃至配線SL61は、図15(A)における配線CLに相当する。
【0349】
なお、スイッチS58乃至スイッチS61としては、例えば、アナログスイッチ、トランジスタなどを適用することができる。また、スイッチS58乃至スイッチS61としては、例えば、機械的なスイッチを適用してもよい。特に、スイッチS61にトランジスタを適用する場合、当該トランジスタは、OSトランジスタとすることが好ましい。容量素子C22の第2端子の電位、及びトランジスタTr01のゲートの電位を長時間保持するのが好ましいため、スイッチS61はオフ電流の小さいOSトランジスタとするのが好適である。また、スイッチS61以外のスイッチについても、OSトランジスタを採用してもよい。
【0350】
また、トランジスタTr01のゲートと、容量素子C22の第2端子と、スイッチS61の第1端子と、の電気的接続点をノードnd4と呼称する。加えて、トランジスタTr03の第1端子と、容量素子C01の第1端子と、トランジスタTr02のバックゲートと、の電気的接続点をノードnd2と呼称する。
【0351】
なお、本発明の一態様の半導体装置に含まれる回路BF1は、図20(A)の回路BF1に限定されず、状況に応じて、図20(A)の回路BF1の変更した構成にすることができる。例えば、図20(A)の回路BF1では、トランジスタTr01の第2端子とトランジスタTr02の第1端子との間に設けられたスイッチS58を、図20(B)に示す回路BF1のとおり、配線VSSLとトランジスタTr02の第2端子との間に設けてもよい。なお、図20(B)では、配線CLの符号を省略している。
【0352】
次に、図20(A)(B)の回路BF1における、トランジスタTr01のしきい値電圧を補正するための動作の例について説明する。
【0353】
図21は、図20(A)(B)の回路BF1の、トランジスタTr01のしきい値電圧の補正を行う動作例を示したタイミングチャートであり、時間T31から時刻T35までの間、及びその周辺の時刻における、端子inp、配線SL58乃至配線SL61、配線SL01、ノードnd2、及びノードnd4の電位の変化を示している。
【0354】
なお、本動作例では、配線VSSLが与える電圧VSSは、一例として、0Vとして説明する。
【0355】
時刻T31から時刻T32までの間では、トランジスタTr01のしきい値電圧の補正の動作における、回路BF1の初期化が行われる。具体的には、端子inpには、電圧VDDが与えられ、配線SL58、配線SL59、及び配線SL61には高レベル電位が与えられ、配線SL60、及び配線SL01には低レベル電位が与えられる。
【0356】
このため、スイッチS58、スイッチS59、及びスイッチS61はオン状態となり、スイッチS60及びトランジスタTr03はオフ状態となる。
【0357】
トランジスタTr02のゲートには、VDDが入力されており、これによって、トランジスタTr02はオン状態となるものとする。
【0358】
また、スイッチS58、スイッチS61及びトランジスタTr02がオン状態となっているため、配線VSSLとトランジスタTr01のゲートとの間、配線VSSLとトランジスタTr01の第2端子との間、配線VSSLと容量素子C22の第2端子との間、は導通状態となる。これによって、ノードnd4の電位は、VSS(=0V)となる。加えて、スイッチS59がオン状態となっているため、容量素子C22の第1端子と、配線VDDLと、の間が導通状態となる。これによって、容量素子C22の第1端子と第2端子との間の電圧は、VDDとなる。
【0359】
なお、このときのトランジスタTr01のゲートにはVSSとして0Vが入力され、トランジスタTr01の第2端子にはVSSとして0Vが入力され、トランジスタTr02の第1端子にはVDDが入力されているため、トランジスタTr01の第1端子はソースとして機能し、トランジスタTr01の第2端子はドレインとして機能する。
【0360】
このとき、トランジスタTr01のゲート-ソース間の電圧VGSは-VDDとなっているため、トランジスタTr01はオン状態となっている。
【0361】
時刻T32から時刻T33までの間において、配線SL58の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS58がオフ状態となる。これにより、容量素子C22の第2端子に充電された負の電荷は、トランジスタTr01がオフ状態になるまで、トランジスタTr01の第1端子-第2端子間を介して配線VDDLに流れる。換言すると、トランジスタTr01がオフ状態になるまで、配線VDDLから、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間を介して、容量素子C22の第2端子に正の電荷が流れる。
【0362】
この過程によって、ノードnd4の電位はVSSから上昇していき、トランジスタTr01の電圧VGSが上昇していく。最終的に、トランジスタTr01の電圧VGSが、トランジスタTr01のしきい値電圧に達したときに、トランジスタTr01がオフ状態になるため、このときのノードnd4の電位が容量素子C22の第2端子に保持される。なお、トランジスタTr01のしきい値電圧をVthとすると、このときのノードnd4の電位は、VDD+Vthとなる。そのため、容量素子C22の第1端子と第2端子との間の電圧は、Vthとなる。
【0363】
時刻T33から時刻T34までの間において、配線SL61の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS61がオフ状態となる。これによって、ノードnd4は、電気的に浮遊状態となり、ノードnd4の電位は容量素子C22によって保持される。
【0364】
この動作によって、トランジスタTr01のゲート-ソース間(容量素子C22の第1端子と第2端子との間)の電圧が、トランジスタTr01のしきい値電圧Vthに設定される。
【0365】
時刻T34から時刻35までの間において、配線SL58及び配線SL60の電位が高レベル電位に変化して、スイッチS58及びスイッチS60がオン状態となる。加えて、配線SL59の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS59がオフ状態となる。これにより、トランジスタTr02のゲートと容量素子C22の第1端子との間が導通状態となる。また、図20(A)の場合において、トランジスタTr01の第2端子とトランジスタTr02の第1端子の間が導通状態となり、図20(B)の場合において、トランジスタTr02の第2端子と配線VSSLとの間が導通状態となる。
【0366】
また、時刻T34から時刻35までの間において、配線SL01に高レベル電位が与えられるため、トランジスタTr03がオン状態となる。なお、このとき端子wtには、重み係数に相当する電位Vが入力されているものとする。そのため、容量素子C01によって、ノードnd2に、端子wtから入力された電位Vが保持される。そして、トランジスタTr02のバックゲートに電位Vが入力される。なお、本動作例では、電位Vは、一例として、0V未満の電位として扱う。
【0367】
時刻T35以降において、配線SL01の電位が低レベル電位に変化して、トランジスタTr03がオフ状態となる。これによって、ノードnd2の電位Vは、容量素子C01、によって保持される。
【0368】
図20(A)(B)の回路BF1は、図21のタイミングチャートに示した時刻T31から時刻T35まで、及び時刻T35以降の動作を行うことによって、トランジスタTr01のしきい値電圧をほぼ0に補正することができる。そのため、複数の回路BF1を作製した時に発生する、それぞれのトランジスタTr01のしきい値電圧のばらつきを抑制することができる。
【0369】
<構成例4>
トランジスタTr01のしきい値電圧を補正する機能を有する回路BF1として、構成例3とは異なる構成例を図22に示す。
【0370】
図22の回路BF1において、補正部CORは、スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62と、容量素子C22と、を有する。
【0371】
スイッチS51の第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、スイッチS51の第2端子は、駆動部DRVのトランジスタTr01の第1端子と、スイッチS59の第1端子と、に電気的に接続されている。スイッチS59の第2端子は、容量素子C22の第1端子と、スイッチS60の第1端子と、に電気的に接続され、容量素子C22の第2端子は、トランジスタTr01のゲートと、スイッチS62の第1端子と、に電気的に接続され、スイッチS62の第2端子は、配線Vref2Lに電気的に接続されている。トランジスタTr01の第2端子は、駆動部DRVのトランジスタTr02の第1端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続され、スイッチS60の第2端子は、トランジスタTr02のゲートと、端子inpと、に電気的に接続されている。
【0372】
上記以外の接続構成については、先の実施の形態で説明した回路BF1(特に、図2(B1)など)の内容を参酌する。
【0373】
スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62と、の制御端子には、それぞれ配線SL51、配線SL59、配線SL60、及び配線SL62が電気的に接続されている。つまり、配線SL51、配線SL59、配線SL60、及び配線SL62のそれぞれに所定の電圧を印加することによって、スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62のそれぞれはオン状態又はオフ状態の一方にすることができる。なお、本明細書などにおいて、スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62のそれぞれは、制御端子に高レベル電位が印加されたときにオン状態となり、制御端子に低レベル電位が印加されたときにオフ状態となるものとする。また、配線SL51、配線SL59、配線SL60、配線SL62は、図15(A)における配線CLに相当する。
【0374】
なお、スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62としては、例えば、アナログスイッチ、トランジスタなどを適用することができる。また、スイッチS51、スイッチS59、スイッチS60、及びスイッチS62としては、例えば、機械的なスイッチを適用してもよい。特に、スイッチS62にトランジスタを適用する場合、当該トランジスタは、OSトランジスタとすることが好ましい。容量素子C22の第2端子の電位、及びトランジスタTr01のゲートの電位を長時間保持するのが好ましいため、スイッチS62はオフ電流の小さいOSトランジスタとするのが好適である。また、スイッチS62以外のスイッチについても、OSトランジスタを採用してもよい。
【0375】
配線Vref2Lは、所定の定電圧Vref2を与える配線である。当該定電圧としては、例えば、VDDよりも低い電位であることが好ましく、Vref2-VDDがトランジスタTr01のしきい値電圧未満となるような電位であることがより好ましい。また、Vref2は、接地電位としてもよい。
【0376】
また、トランジスタTr01のゲートと、容量素子C22の第2端子と、スイッチS62の第1端子と、の電気的接続点をノードnd4と呼称し、スイッチS51の第2端子と、スイッチS59の第1端子と、トランジスタTr01の第1端子と、の電気的接続点をノードnd5と呼称する。加えて、構成例3と同様に、トランジスタTr03の第1端子と、容量素子C01の第1端子と、トランジスタTr02のバックゲートと、の電気的接続点をノードnd2と呼称する。
【0377】
次に、図22の回路BF1における、トランジスタTr01のしきい値電圧を補正するための動作の例について説明する。
【0378】
図23は、図22の回路BF1の、トランジスタTr01のしきい値電圧の補正を行う動作例を示したタイミングチャートであり、時間T41から時刻T45までの間、及びその周辺の時刻における、端子inp、配線SL51、配線SL59、配線SL60、配線SL62、配線SL01、ノードnd2、及びノードnd4の電位の変化を示している。
【0379】
なお、本動作例では、配線VSSLが与える電圧VSSは、一例として、0Vとして説明する。
【0380】
時刻T41から時刻T42までの間では、トランジスタTr01のしきい値電圧の補正の動作における、回路BF1の初期化が行われる。具体的には、端子inpには、電圧VDDが与えられ、配線SL51、配線SL59、及び配線SL62には高レベル電位が与えられ、配線SL60、及び配線SL01には低レベル電位が与えられる。
【0381】
このため、スイッチS51、スイッチS59、及びスイッチS62はオン状態となり、スイッチS60及びトランジスタTr03はオフ状態となる。
【0382】
トランジスタTr02のゲートには、VDDが入力されており、これによって、トランジスタTr02はオン状態となるものとする。
【0383】
また、スイッチS62がオン状態となっているため、配線Vref2Lと容量素子C22の第2端子との間、配線Vref2LとトランジスタTr01のゲートとの間、は導通状態となる。これによって、ノードnd4の電位は、Vref2となる。加えて、スイッチS51及びスイッチS59がオン状態となっているため、配線VDDLと容量素子C22の第1端子との間は導通状態となる。これによって、容量素子C22の第1端子と第2端子との間の電圧は、VDD-Vref2となる。更に、トランジスタTr02がオン状態となっているため、配線VSSLとトランジスタTr01の第2端子との間が導通状態となる。
【0384】
上記をまとめると、トランジスタTr01のゲートにはVref2が入力され、トランジスタTr01の第2端子にはVSSとして0Vが入力され、トランジスタTr02の第1端子にはVDDが入力されているため、トランジスタTr01の第1端子はソースとして機能し、トランジスタTr01の第2端子はドレインとして機能する。
【0385】
このとき、トランジスタTr01のゲート-ソース間の電圧VGSはVref2-VDDとなっているため、トランジスタTr01はオン状態となっている。
【0386】
時刻T42から時刻T43までの間において、配線SL51の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS51がオフ状態となる。これにより、容量素子C22の第1端子に充電された正の電荷は、トランジスタTr01がオフ状態になるまで、トランジスタTr01の第1端子-第2端子間を介して配線VSSLに流れる。換言すると、トランジスタTr01がオフ状態になるまで、配線VSSLから、トランジスタTr02の第1端子-第2端子間、及びトランジスタTr01の第1端子-第2端子間を介して、容量素子C22の第1端子に負の電荷が流れる。
【0387】
この過程によって、ノードnd5の電位はVDDから低下していき、トランジスタTr01の電圧VGSが上昇していく。最終的に、トランジスタTr01の電圧VGSが、トランジスタTr01のしきい値電圧に達したときに、トランジスタTr01がオフ状態になるため、このときのノードnd5の電位が容量素子C22の第1端子に保持される。なお、トランジスタTr01のしきい値電圧をVthとすると、このときのノードnd5の電位は、Vref2-Vthとなる。そのため、容量素子C22の第1端子と第2端子との間の電圧は、Vthとなる。
【0388】
時刻T43から時刻T44までの間において、配線SL62の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS62がオフ状態となる。これによって、ノードnd4は、電気的に浮遊状態となり、ノードnd4の電位は容量素子C22の第2端子によって保持される。
【0389】
この動作によって、トランジスタTr01のゲート-ソース間(容量素子C22の第1端子と第2端子との間)の電圧が、トランジスタTr01のしきい値電圧Vthに設定される。
【0390】
時刻T44から時刻45までの間において、配線SL51及び配線SL60の電位が高レベル電位に変化して、スイッチS51及びスイッチS60がオン状態となる。加えて、配線SL59の電位が低レベル電位に変化して、スイッチS59がオフ状態となる。これにより、端子inpと容量素子C22の第1端子との間は導通状態となる。また、トランジスタTr01の第1端子と配線VDDLとの間は導通状態となる。
【0391】
また、時刻T44から時刻45までの間において、配線SL01に高レベル電位が与えられるため、トランジスタTr03がオン状態となる。なお、このとき端子wtには、重み係数に相当する電位Vが入力されているものとする。そのため、容量素子C01によって、ノードnd2に、端子wtから入力された電位Vが保持される。そして、トランジスタTr02のバックゲートに電位Vが入力される。なお、本動作例では、電位Vは、一例として、0V未満の電位として扱う。
【0392】
時刻T45以降において、配線SL01の電位が低レベル電位に変化して、トランジスタTr03がオフ状態となる。これによって、ノードnd2の電位Vは、容量素子C01、によって保持される。
【0393】
図22の回路BF1は、図23のタイミングチャートに示した時刻T41から時刻T45まで、及び時刻T45以降の動作を行うことによって、トランジスタTr01のしきい値電圧をほぼ0に補正することができる。そのため、複数の回路BF1を作製した時に発生する、それぞれのトランジスタTr01のしきい値電圧のばらつきを抑制することができる。
【0394】
<構成例5>
構成例1及び構成例2ではトランジスタTr02のしきい値電圧を補正する機能を有する回路BF1について、また構成例3及び構成例4ではトランジスタTr01のしきい値電圧を補正する機能を有する回路BF1について、説明したが、構成例1乃至構成例4を組み合わせることによって、トランジスタTr01及びトランジスタTr02のそれぞれのしきい値電圧を補正する機能を有する回路BF1を構成することができる。
【0395】
例えば、構成例1で説明した図16(A)の回路BF1と、構成例3で説明した図20(A)の回路BF1と、を組み合わせた構成の例を図24に示す。なお、図24に示す回路BF1のスイッチS58は、図16(A)の回路BF1の補正部CORのスイッチS51の代替としても機能することができる。つまり、図24の回路BF1は、図16(A)の回路BF1に含まれるスイッチS51と、図20(A)の回路BF1に含まれるスイッチS58と、が同一のスイッチとなるように構成されている。図24の回路BF1を、先の実施の形態の回路MPCに適用することによって、回路BF1に含まれるトランジスタTr01及びトランジスタTr02のそれぞれのしきい値電圧の補正を行うことができる。また、この場合、配線SL52乃至配線SL54、配線SL58乃至配線SL61は、図15(A)における配線CLに相当する(図24に配線CLの符号は図示していない。)。
【0396】
また、例えば、構成例2で説明した図18の回路BF1と、構成例3で説明した図20(A)の回路BF1と、を組み合わせた構成の例を図25に示す。図25に示す回路BF1を、先の実施の形態の回路MPCに適用することによって、回路BF1に含まれるトランジスタTr01及びトランジスタTr02のそれぞれのしきい値電圧の補正を行うことができる。また、この場合、配線SL54乃至配線SL61は、図15(A)における配線CLに相当する(図25に配線CLの符号は図示していない。)。
【0397】
また、例えば、構成例1で説明した図16(B)の回路BF1と、構成例4で説明した図22の回路BF1と、を組み合わせた構成の例を図26に示す。なお、図26に示す回路BF1は、図16(B)の回路BF1に含まれるスイッチS51と、図22の回路BF1に含まれるスイッチS51と、が同一のスイッチで構成されている。図26の回路BF1を、先の実施の形態の回路MPCに適用することによって、回路BF1に含まれるトランジスタTr01及びトランジスタTr02のそれぞれのしきい値電圧の補正を行うことができる。また、この場合、配線SL51乃至配線SL54、配線SL59、配線SL60、配線SL62は、図15(A)における配線CLに相当する(図26に配線CLの符号は図示していない。)。
【0398】
また、例えば、構成例2で説明した図18の回路BF1と、構成例4で説明した図22の回路BF1と、を組み合わせた構成の例を図27に示す。図27に示す回路BF1を、先の実施の形態の回路MPCに適用することによって、回路BF1に含まれるトランジスタTr01及びトランジスタTr02のそれぞれのしきい値電圧の補正を行うことができる。また、この場合、配線SL51、配線SL53乃至配線SL60、配線SL62は、図15(A)における配線CLに相当する(図27に配線CLの符号は図示していない。)。
【0399】
<構成例6>
構成例5では、本実施の形態で説明した構成例1又は構成例2と、構成例3又は構成例4と、を組み合わせた例を示したが、本発明の一態様は、これらに限定されない。例えば、構成例1乃至構成例4は、実施の形態3で説明した、インバータ回路DINV1と組みわせることができる。
【0400】
例えば、構成例1で説明した図16(A)の回路BF1と、実施の形態3で説明した図12(B)のインバータ回路DINV1と、を組み合わせることで、図28に示す回路BF1を構成することができる。図28に示す回路BF1は、図16(A)の保持部HCAを、図12(B)の保持部HCBと、トランジスタTr03と、を組み合わせた回路に、置き換えた構成となっている。
【0401】
図28において、インバータ回路SINV1の出力端子は、インバータ回路SINV2の入力端子に電気的に接続され、インバータ回路SINV2の出力端子は、スイッチS54の第2端子と、インバータ回路SINV1の入力端子と、トランジスタTr03の第1端子に電気的に接続され、トランジスタTr03の第2端子は、端子wtに電気的に接続されている。
【0402】
トランジスタTr03は、図16(A)の回路BF1に含まれるトランジスタTr03と同様に、端子wtから入力された重み係数に応じた電位を保持するためのスイッチング素子として機能する。なお、場合によっては、図12(B)のインバータ回路DINV1のように、図28のインバータ回路DINV1にトランジスタTr03を設けなくてもよい。
【0403】
保持部HCBについては、実施の形態3の図12(B)の説明の記載を参酌する。
【0404】
図28では、図16(A)の保持部HCAを、図12(B)の保持部HCBと、トランジスタTr03と、を組み合わせた回路を示したが、別の一例として、図18の回路BF1に含まれているHCAを、図12(B)の保持部HCBと、トランジスタTr03と、を組み合わせた回路としてもよい(図29参照)。
【0405】
また、例えば、構成例1で説明した図16(A)の回路BF1と、実施の形態3で説明した図14(A)のインバータ回路DINV1と、を組み合わせることで、図30に示す回路BF1を構成することができる。図30に示す回路BF1は、実施の形態3の図14(A)の回路BF1と同様に、2個の重み係数を保持して、状況に応じて重み係数の切り替えを行うことができる回路構成となっている。
【0406】
図30の回路BF1は2個の重み係数を切り替える構成となっているため、図30の回路BF1に含まれる駆動部DRVは、図16(A)の回路BF1の駆動部DRVに、トランジスタTr02aを加えた構成となっている。また、インバータ回路DINV1は、トランジスタTr02aのしきい値電圧を補正するため、補正部CORと同様の回路構成の補正部CORaを有する。更に、インバータ回路DINV1は、重み係数に応じた電位を2個保持するため、図16(A)のインバータ回路DINV1に含まれる保持部HCAと同様の回路構成である、保持部HCA1と保持部HCA2とを有する。
【0407】
なお、図30において、保持部HCA1に含まれている回路素子は、図16(A)のインバータ回路DINV1の保持部HCAに含まれている回路素子と同じ符号で示している。一方、保持部HCA2に含まれている回路素子は、保持部HCA1と区別するため、図16(A)のインバータ回路DINV1の保持部HCAに含まれている回路素子の符号に“a”を付して示している。
【0408】
また、補正部CORaに含まれている回路素子も、補正部CORに含まれている回路素子と区別するため、その符号に“a”を付して示している。
【0409】
また、図30では、図15(A)(B)、図16(A)(B)、図18図20(A)(B)、図22図24乃至図29と異なり、回路BF2の構成要素を示す括弧及び括弧内の符号を省略しているが、図30の回路BF1は、回路BF2にも適用することができる。
【0410】
トランジスタTr01の第2端子は、スイッチS05の第1端子と、スイッチS05aの第1端子と、インバータ回路INV1の入力端子と、に電気的に接続されている。スイッチS05の第2端子は、補正部CORのスイッチS51の第1端子に電気的に接続され、スイッチS05aの第2端子は、補正部CORaのスイッチS51aの第1端子に電気的に接続されている。スイッチS51、及びスイッチS51aは、保持部HCA1と保持部HCA2のそれぞれに保持されている重み係数を選択する機能を有する。例えば、保持部HCA1に保持されている重み係数を用いる場合、スイッチS05をオン状態、スイッチS05aをオフ状態にし、保持部HCA2に保持されている重み係数を用いる場合、スイッチS05をオフ状態、スイッチS05aをオン状態にすればよい。なお、トランジスタTr02、トランジスタTr02aのそれぞれのしきい値電圧の補正を行う場合、スイッチS51、及びスイッチS51aのそれぞれを同時にオン状態にすることができる。
【0411】
スイッチS51aの制御端子は、配線SL51に電気的に接続され、スイッチS52aの制御端子は、配線SL52に電気的に接続され、スイッチS53aの制御端子は、配線SL53に電気的に接続され、スイッチS54aの制御端子は、配線SL54に電気的に接続されている。つまり、補正部CORaのスイッチS51a乃至スイッチS54aのスイッチング動作は、補正部CORのスイッチS51乃至スイッチS54のそれぞれと同様に動作するため、トランジスタTr02aのしきい値電圧の補正は、トランジスタTr02のしきい値電圧の補正と同時に行うことができる。
【0412】
<構成例7>
構成例1乃至構成例6に示した回路BF1は、図15(A)の回路BF1に適用できる回路構成について説明したが、構成例1乃至構成例6で説明した駆動部DRV、及び/又はインバータ回路INV1を、図15(B)の回路BF1の構成例のとおり、インバータ回路の機能を有する論理回路LGC1、論理回路LGC2に置き換えてもよい。
【0413】
例えば、構成例1で説明した図16(A)に示す駆動部DRV、及びインバータ回路INV1のそれぞれを論理回路LGC1、論理回路LGC2に置き換えた回路構成を図31(A)に示す。なお、図31(A)において、論理回路LGC1は、一例としてNAND回路の構成としている。
【0414】
図31(A)において、論理回路LGC1は、トランジスタTr01、トランジスタTr02、トランジスタTr41、トランジスタTr42を有し、これらのトランジスタによってNAND回路が構成されている。具体的には、トランジスタTr01の第1端子は配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr01の第2端子はトランジスタTr41の第1端子と、論理回路LGC2の入力端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr01のゲートは端子inpと、トランジスタTr02のゲートと、に電気的に接続されている。トランジスタTr41の第2端子はスイッチS51の第1端子に電気的に接続され、トランジスタTr41のゲートはトランジスタTr42のゲートと、配線VALと、に電気的に接続されている。トランジスタTr42の第1端子は配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr42の第2端子は論理回路LGC2の入力端子に電気的に接続されている。スイッチS51の第2端子は、トランジスタTr02の第1端子に電気的に接続されている。
【0415】
上記以外の接続構成については、図16(A)の説明を参酌する。
【0416】
配線VALは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、高レベル電位であることが好ましい。配線VALを、高レベル電位を供給する配線とすることで、図31(A)の論理回路LGC1は、インバータ回路として機能することができる。
【0417】
また、図31(A)の回路BF1に含まれているトランジスタTr02の周辺の接続構成は、図16(A)の回路BF1のトランジスタTr02の周辺の接続構成と同様である。つまり、図31(A)の回路BF1は、図16(A)の回路BF1と同様に、論理回路LGC1に含まれているトランジスタTr02のしきい値電圧を補正することができる。
【0418】
また、例えば、図30(A)では、論理回路LGC1をNAND回路の構成としたが、NOR回路の構成としてもよい。図31(B)の回路BF1は、一例として、論理回路LGC1をNOR回路とした構成となっている。
【0419】
図31(B)において、論理回路LGC1は、トランジスタTr01、トランジスタTr02、トランジスタTr43、トランジスタTr44を有し、これらのトランジスタによってNOR回路が構成されている。具体的には、トランジスタTr01の第1端子は配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr01の第2端子はトランジスタTr43の第1端子に電気的に接続され、トランジスタTr01のゲートは端子inpと、トランジスタTr02のゲートと、に電気的に接続されている。トランジスタTr43の第2端子はスイッチS51の第1端子と、論理回路LGC2の入力端子と、トランジスタTr44の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタTr43のゲートはトランジスタTr44のゲートと、配線VBLと、に電気的に接続されている。トランジスタTr02の第1端子はスイッチS51の第2端子に電気的に接続され、トランジスタTr02の第2端子は、トランジスタTr44の第2端子に電気的に接続されている。スイッチS51の第2端子は、トランジスタTr02の第1端子に電気的に接続されている。
【0420】
上記以外の接続構成については、図16(A)の説明を参酌する。
【0421】
配線VBLは、定電圧を供給する配線として機能する。当該定電圧としては、低レベル電位であることが好ましい。配線VBLを、低レベル電位を供給する配線とすることで、図31(B)の論理回路LGC1は、インバータ回路として機能することができる。
【0422】
また、図31(B)の回路BF1に含まれているトランジスタTr02の周辺の接続構成は、図16(A)の回路BF1のトランジスタTr02の周辺の接続構成と同様である。つまり、図31(B)の回路BF1は、図16(A)の回路BF1と同様に、論理回路LGC1に含まれているトランジスタTr02のしきい値電圧を補正することができる。
【0423】
上述の通り、図15(A)の駆動部DRV、及び/又はインバータ回路INV1を、図15(B)の回路BF1の構成例のとおり、インバータ回路の機能を有する論理回路LGC1、論理回路LGC2に置き換えても、図15(B)の回路BF1は、図15(A)の回路BF1と同様の機能を有することができる。そのため、本明細書等に記載されている、インバータ回路DINV1(インバータ回路DINV2)(厳密には、インバータ回路の機能を有する駆動部DRV)、及び/又はインバータ回路INV1(インバータ回路INV2)は、NAND回路、NOR回路などの論理回路として構成することができる。また、インバータ回路DINV1(インバータ回路DINV2)(インバータ回路の機能を有する駆動部DRV)、及び/又はインバータ回路INV1(インバータ回路INV2)は、NAND回路、NOR回路、XOR回路などを組み合わせた論理回路としてもよい。
【0424】
<演算回路の構成例>
ここでは、構成例1乃至構成例7で説明した回路BF1を、実施の形態1で説明した回路MPCに適用し、実施の形態2で説明した演算回路120のように、回路MPCをマトリクス状に配置した演算回路の例について説明する。
【0425】
初めに、構成例1で説明した図16(A)の回路BF1(回路BF2)を適用した回路MPCと、回路MPCに電気的に接続されている配線の構成例について説明する。図32(A)に示す回路MPCは、図16の回路BF1と、回路BF1と同様の構成である回路BF2と、を有している。
【0426】
図32(A)では、回路MPCに含まれているインバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2に、それぞれ補正部CORを図示している。それぞれの補正部CORには、配線SL51乃至配線SL54を電気的に接続することができ、このような接続構成にすることによって、インバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2のそれぞれに含まれているトランジスタTr02(図示しない。)のしきい値電圧の補正を同時に行うことができる。
【0427】
また、図32(A)では、配線SL51乃至配線SL54をまとめて、配線CLと示している。配線CLは、一例として、列方向に延在することができる。また、別の例として、図32(B)に示すとおり、配線CLは、行方向に延在してもよい。また、別の例として、配線SL51乃至配線SL54の一部を列方向に延在させ、残りを行方向に延在させてもよい(図示しない。)。
【0428】
なお、図32(A)(B)では、構成例1の図16(A)の回路BF1(回路BF2)を回路MPCに適用した回路構成を示しているため、配線CLとして配線SL51乃至配線SL54を図示しているが、別の構成例で説明した回路BF1(回路BF2)を回路MPCに適用した場合、その配線CLに相当する配線は、配線SL51乃至配線SL54と異なる場合がある。例えば、構成例3の図20(A)の回路BF1(回路BF2)を回路MPCに適用した場合、配線SL51、配線SL59乃至配線SL61が配線CLに相当し、また、例えば、構成例5の図26の回路BF1(回路BF2)を回路MPCに適用した場合、配線SL51乃至配線SL54、配線SL59、配線SL60、配線SL62が配線CLに相当することになる。
【0429】
インバータ回路DINV1に電気的に接続されている端子wtは、配線DLに電気的に接続され、インバータ回路DINV2に電気的に接続されている端子wtは、配線DLmに電気的に接続されている。また、インバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2に電気的に接続されている配線SL01は、配線SWLに電気的に接続されている。
【0430】
また、配線DL及び/又は配線DLmは、一例として、列方向に延在することができる。加えて、配線SWLは、一例として、行方向に延在することができる。なお、図32(A)(B)に示す回路MPCの配線DL、配線DLm、配線SWLが延設されている向きは、図9に示す回路MPCに接続されている配線DL、配線DLm、配線SWLの延設されている向きと同様である。
【0431】
また、図32(A)(B)の回路MPCは、一例として、図11に示す回路MPCのとおり、配線DLを列方向に延在させ、配線SWL、配線SWLmを行方向に延在させた構成とすることができる。この場合、図32(A)(B)の回路MPCは、端子wt及び端子wtmを配線DLに電気的に接続し、インバータ回路DINV1の配線SL01を配線SWLに電気的に接続し、インバータ回路DINV2の配線SL01を配線SWLmに電気的に接続した構成とすればよい(図示しない。)。なお、詳細な接続構成については、図11の説明の記載を参酌する。
【0432】
次に、図32(A)の回路MPCをマトリクス状に配置した、演算回路の構成例を図33に示す。
【0433】
演算回路140は、実施の形態2で説明した図9の演算回路120の構成において、図32(A)の回路MPCを適用し、回路CODを別途設けた構成となっている。そのため、図33に示している複数の回路ACTFを含む回路AFPと、回路TSGと、回路WLDと、回路SWLDと、変換回路TRFと、については、実施の形態2の記載を参酌する。
【0434】
アレイ部ALPは、図9の演算回路120と同様に、n×m個の回路MPCを有し、回路MPCはアレイ部ALPにおいてn行m列のマトリクス状に配置されている。なお、図9では、j行i列(ここでのjは1以上n以下の整数であって、iは1以上m以下の整数である。)に位置する回路MPCを、回路MPC[j,i]と表記している。但し、図33では、回路MPC[1,1]、回路MPC[1,m]、回路MPC[n,1]、回路MPC[n,m]のみ図示しており、それ以外の回路MPCについては図示を省略している。
【0435】
また、図33では、便宜上、端子ctを、回路MPC[1,1]乃至回路MPC[n,m]のそれぞれに図示している。端子ctは、回路MPC[1,1]乃至回路MPC[n,m]のそれぞれに含まれているインバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2の補正部CORに信号を供給するための端子として機能する。
【0436】
回路MPC[1,i]乃至回路MPC[n,i]のそれぞれの端子ctは、配線CL[i]に電気的に接続されている。配線CL[i]は、構成例1乃至構成例7における配線CLに相当し、図33では、配線CL[1]と配線CL[m]が図示されている。
【0437】
回路CODは、回路MPC[1,1]乃至回路MPC[n,m]のそれぞれに含まれているインバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2の補正部CORを動作するために、配線CL[1]乃至配線CL[m]に所定の信号を与える機能を有する。回路CODは、図16(A)の動作例で説明したとおり、配線CL[1]乃至配線CL[m]のそれぞれに含まれている配線SL51乃至配線SL54に所定の信号を与えることによって、回路MPC[1,1]乃至回路MPC[n,m]のそれぞれに含まれているインバータ回路DINV1及びインバータ回路DINV2のトランジスタTr02のしきい値電圧を補正することができる。
【0438】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0439】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に適用可能なOSトランジスタの構成例について説明する。
【0440】
<半導体装置の構成例>
図34に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。図36(A)はトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、図36(B)はトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、図36(C)はトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0441】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、これを半導体装置、特に演算回路110のトランジスタTr03などに用いることにより、長期にわたり書き込んだデータを保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度が少ない、あるいは、リフレッシュ動作を必要としないため、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0442】
本実施の形態で説明する半導体装置は、図34に示すようにトランジスタ300、トランジスタ500、容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ300、及びトランジスタ500の上方に設けられている。なお、容量素子600は、回路BF1における容量素子C01などとすることができる。
【0443】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ300は、例えば、上記実施の形態におけるトランジスタに適用することができる。
【0444】
トランジスタ300は、図36(C)に示すように、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0445】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0446】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、又はドレイン領域となる低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0447】
低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、又はホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0448】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0449】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0450】
なお、図34に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路とする場合、図35に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
【0451】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0452】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0453】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0454】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0455】
また、絶縁体324には、基板311、又はトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0456】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0457】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であればよい。
【0458】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0459】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子600、又はトランジスタ500と接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0460】
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0461】
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図34において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0462】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0463】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0464】
絶縁体354、及び導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、図34において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0465】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0466】
絶縁体364、及び導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、図34において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0467】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0468】
絶縁体374、及び導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、図34において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0469】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0470】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、及び導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0471】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0472】
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板311、又はトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0473】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0474】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0475】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0476】
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0477】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0478】
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0479】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0480】
図36(A)(B)に示すように、トランジスタ500は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516及び導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542a及び導電体542bと、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面及び側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0481】
また、図36(A)(B)に示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、図36(A)(B)に示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、図36(A)(B)に示すように、絶縁体580、導電体560、及び絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0482】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0483】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、図34図36(A)(B)に示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0484】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542a及び導電体542bは、それぞれソース電極又はドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0485】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542a及び導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0486】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0487】
導電体503は、酸化物530、及び導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0488】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503a及び導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0489】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一又は、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0490】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0491】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体505は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0492】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、及び絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0493】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0494】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm以上、又は3.0×1020atoms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0495】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0496】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0497】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、又は(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0498】
特に、不純物、及び酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0499】
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0500】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体と、酸化シリコン又は酸化窒化シリコンと、を組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520を得ることができる。
【0501】
なお、図36(A)(B)のトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0502】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、実施の形態6で説明するCAAC-OS、CAC-OSであることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0503】
酸化物530においてチャネル形成領域にとして機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0504】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0505】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530a又は酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0506】
また、酸化物530a及び酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530a及び酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0507】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0508】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530a及び酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0509】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0510】
酸化物530b上には、ソース電極、及びドレイン電極として機能する導電体542a、及び導電体542bが設けられる。導電体542a、及び導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0511】
また、図36(A)では、導電体542a、及び導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0512】
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0513】
また、図36(A)に示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、及び領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0514】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア密度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0515】
絶縁体544は、導電体542a、及び導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、及び導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0516】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン又は、マグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコン又は窒化シリコンなども用いることができる。
【0517】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、及び導電体542bが耐酸化性を有する材料、又は、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0518】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、及び水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0519】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0520】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0521】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0522】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0523】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0524】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、図36(A)(B)では2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0525】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0526】
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0527】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、及び導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0528】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0529】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0530】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0531】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0532】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0533】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0534】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0535】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、及び導電体540bを配置する。導電体540a及び導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540a及び導電体540bは、後述する導電体546、及び導電体548と同様の構成である。
【0536】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0537】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0538】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0539】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548等が埋め込まれている。
【0540】
導電体546、及び導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0541】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0542】
また、導電体546、及び導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、及び導電体610は、同時に形成することができる。
【0543】
導電体612、及び導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0544】
図34では、導電体612、及び導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0545】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0546】
導電体620、及び絶縁体630上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0547】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。又は、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
【0548】
<トランジスタの構造例>
なお、本実施の形態に示す半導体装置のトランジスタ500は、上記の構造に限られるものではない。以下、トランジスタ500に用いることができる構造例について説明する。なお、下記に説明するトランジスタは、上記に説明したトランジスタの変形例であるため、下記の説明では、異なる点を主に説明し、同一の点については省略することがある。
【0549】
<<トランジスタの構造例1>>
図37(A)乃至(C)を用いてトランジスタ500Aの構造例を説明する。図37(A)はトランジスタ500Aの上面図である。図37(B)は、図37(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図37(C)は、図37(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図37(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0550】
図37(A)乃至(C)に示すトランジスタ500Aは、図36(A)に示したトランジスタ500に、層間膜として機能する絶縁体511と、配線として機能する導電体505と、を加えた構成となっている。
【0551】
また、図37(A)乃至(C)に示すトランジスタ500Aでは、酸化物530c、絶縁体550、及び導電体560が、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体544を介して配置される。また、酸化物530c、絶縁体550、及び導電体560は、導電体542a、及び導電体542bとの間に配置される。
【0552】
絶縁体511としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)又は(Ba,Sr)TiO(BST)などの絶縁体を単層又は積層で用いることができる。又はこれらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0553】
例えば、絶縁体511は、水又は水素などの不純物が、基板側からトランジスタ500Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体511は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体511として酸化アルミニウムや窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体511よりも基板側からトランジスタ500A側に拡散するのを抑制することができる。
【0554】
例えば、絶縁体512は、絶縁体511よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0555】
導電体505は、絶縁体512に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体505の上面の高さと、絶縁体512の上面の高さは同程度にできる。なお導電体505は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体505を2層以上の多層構造としてもよい。なお、導電体505は、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0556】
絶縁体514、及び絶縁体516は、絶縁体511又は絶縁体512と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体514は、水又は水素などの不純物が、基板側からトランジスタ500Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水素、水などの不純物が絶縁体514よりも基板側からトランジスタ500A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体516は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0557】
また、絶縁体522は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体522がバリア性を有することで、トランジスタ500Aの周辺部からトランジスタ500Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0558】
また、酸化物530cは、絶縁体580に設けられた開口部内に、絶縁体544を介して設けられることが好ましい。絶縁体544がバリア性を有する場合、絶縁体580からの不純物が酸化物530へと拡散することを抑制することができる。
【0559】
また、導電体542a、及び導電体542b上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、又は水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体544を成膜する際に、導電体542a、及び導電体542bが酸化することを抑制することができる。
【0560】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0561】
バリア層を有することで、導電体542a、及び導電体542bの材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体542a、及び導電体542bに、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、又は加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0562】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、絶縁体580に設けられた開口部内に、酸化物530c、及び絶縁体544を介して設けられることが好ましい。
【0563】
また、導電体540a、及び導電体540bの材料としては、導電体503と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0564】
例えば、導電体540a、及び導電体540bとしては、例えば、水素、及び酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0565】
上記構造を有することで、オン電流が大きい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。又は、オフ電流が小さい酸化物半導体を有するトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。又は、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0566】
<<トランジスタの構造例2>>
図38(A)乃至(C)を用いてトランジスタ500Bの構造例を説明する。図38(A)はトランジスタ500Bの上面図である。図38(B)は、図38(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図38(C)は、図38(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図38(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0567】
トランジスタ500Bはトランジスタ500Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ500Aと異なる点について説明する。
【0568】
トランジスタ500Bは、導電体542a(導電体542b)と、酸化物530cと、絶縁体550と、導電体560と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0569】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、導電体560a、及び導電体560a上の導電体560bを有する。導電体560aは、導電体503aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0570】
導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体560bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体560aを有することで、導電体560bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0571】
また、導電体560の上面及び側面と、絶縁体550の側面と、酸化物530cの側面と、を覆うように、絶縁体544を設けることが好ましい。
【0572】
絶縁体544を設けることで、導電体560の酸化を抑制することができる。また、絶縁体544を有することで、絶縁体580が有する水、及び水素などの不純物がトランジスタ500Bへ拡散することを抑制することができる。
【0573】
また、トランジスタ500Bのコンタクトプラグは、トランジスタ500Aのコンタクトプラグの構成と異なっている。トランジスタ500Bでは、コンタクトプラグとして機能する導電体546a(導電体546b)と、絶縁体580との間に、バリア性を有する絶縁体576a(絶縁体576b)が配置されている。絶縁体576a(絶縁体576b)を設けることで、絶縁体580の酸素が導電体546と反応し、導電体546が酸化することを抑制することができる。
【0574】
また、バリア性を有する絶縁体576a(絶縁体576b)を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体546a(導電体546b)に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステンや、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、又は加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0575】
<<トランジスタの構造例3>>
図39(A)乃至(C)を用いてトランジスタ500Cの構造例を説明する。図39(A)はトランジスタ500Cの上面図である。図39(B)は、図39(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図39(C)は、図39(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図39(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0576】
トランジスタ500Cはトランジスタ500Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ500Aと異なる点について説明する。
【0577】
図39(A)乃至(C)に示すトランジスタ500Cは、導電体542aと酸化物530bの間に導電体547aが配置され、導電体542bと酸化物530bの間に導電体547bが配置されている。ここで、導電体542a(導電体542b)は、導電体547a(導電体547b)の上面及び導電体560側の側面を越えて延在し、酸化物530bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体547a、及び導電体547bは、導電体542a、及び導電体542bに用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体547a、及び導電体547bの膜厚は、少なくとも導電体542a、及び導電体542bより厚いことが好ましい。
【0578】
図39に示すトランジスタ500Cは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ500Aよりも、導電体542a、及び導電体542bを導電体560に近づけることができる。又は、導電体542aの端部及び導電体542bの端部と、導電体560を重ねることができる。これにより、トランジスタ500Cの実質的なチャネル長を短くし、オン電流の向上と、周波数特性の向上と、を図ることができる。
【0579】
また、導電体547a(導電体547b)は、導電体542a(導電体542b)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、導電体540a(導電体540b)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体547a(導電体547b)がストッパとして機能し、酸化物530bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0580】
また、図39に示すトランジスタ500Cは、絶縁体544の上に接して絶縁体545を配置する構成としている。絶縁体544としては、水又は水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体580側からトランジスタ500Cに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体545としては、絶縁体544に用いることができる絶縁体を用いることができる。また、絶縁体544としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムチタン、窒化チタン、窒化シリコン又は窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0581】
また、図39に示すトランジスタ500Cは、図37に示すトランジスタ500Aと異なり、導電体503を単層構造としている。この場合、パターン形成された導電体503の上に絶縁体516となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体503の上面が露出するまでCMP法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体503の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体503上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体503の上に形成される、絶縁層の平坦性を良好にし、酸化物530b及び酸化物530cの結晶性の向上を図ることができる。
【0582】
<<トランジスタの構造例4>>
図40(A)乃至(C)を用いてトランジスタ500Dの構造例を説明する。図40(A)はトランジスタ500Dの上面図である。図40(B)は、図40(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図40(C)は、図40(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図40(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0583】
トランジスタ500Dは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0584】
図40(A)乃至(C)に示すトランジスタ500Dは、トランジスタ500、トランジスタ500A乃至トランジスタ500Cと異なり、導電体542a、及び導電体542bを設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531a及び領域531bを有する。領域531a又は領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0585】
また、トランジスタ500Dは、図39に示したトランジスタ500Cと同様に、導電体505を設けずに、第2のゲートとしての機能を有する導電体503を配線としても機能させている。また、酸化物530c上に絶縁体550を有し、絶縁体550上に金属酸化物552を有する。また、金属酸化物552上に導電体560を有し、導電体560上に絶縁体570を有する。また、絶縁体570上に絶縁体571を有する。
【0586】
金属酸化物552は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体550と、導電体560との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物552を設けることで、導電体560への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。
【0587】
なお、金属酸化物552は、第1のゲートの一部としての機能を有してもよい。例えば、酸化物530として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物552として用いることができる。その場合、導電体560をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物552の電気抵抗値を低下させて導電層、つまりOC電極とすることができる。
【0588】
また、金属酸化物552は、ゲート絶縁膜の一部としての機能を有する場合がある。したがって、絶縁体550に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物552は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁膜として機能する絶縁層の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0589】
トランジスタ500Dにおいて、金属酸化物552を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、ゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、ゲート絶縁膜の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0590】
金属酸化物552を有することで、ゲート電極として機能する場合は、導電体560からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ500Dのオン電流の向上を図ることができる。又は、ゲート絶縁膜として機能する場合は、絶縁体550と、金属酸化物552との物理的な厚みにより、導電体560と、酸化物530との間の距離を保つことで、導電体560と酸化物530との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体550、及び金属酸化物552との積層構造を設けることで、導電体560と酸化物530との間の物理的な距離、及び導電体560から酸化物530へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0591】
具体的には、酸化物530に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物552として用いることができる。又は、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又は、マグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0592】
特に、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁層である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物552は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0593】
絶縁体570は、水又は水素などの不純物、及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム又は酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体570よりも上方からの酸素で導電体560が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体570よりも上方からの水又は水素などの不純物が、導電体560、及び絶縁体550を介して、酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0594】
絶縁体571はハードマスクとして機能する。絶縁体571を設けることで、導電体560の加工の際、導電体560の側面が概略垂直、具体的には、導電体560の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0595】
なお、絶縁体571に、水又は水素などの不純物、及び酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体570は設けなくともよい。
【0596】
絶縁体571をハードマスクとして用いて、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、及び酸化物530cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物530b表面の一部を露出させることができる。
【0597】
また、トランジスタ500Dは、露出した酸化物530b表面の一部に領域531a及び領域531bを有する。領域531a又は領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0598】
領域531a及び領域531bの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、又はプラズマ処理などを用いて、露出した酸化物530b表面にリン又はボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0599】
また、酸化物530b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物530bに拡散させて領域531a及び領域531bを形成することもできる。
【0600】
不純物元素が導入された酸化物530bの一部の領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域531a及び領域531bを「不純物領域」又は「低抵抗領域」という場合がある。
【0601】
絶縁体571及び/又は導電体560をマスクとして用いることで、領域531a及び領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域531a及び/又は領域531bと、導電体560が重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域とソースドレイン領域(領域531a又は領域531b)の間にオフセット領域が形成されない。領域531a及び領域531bを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0602】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域とソースドレイン領域の間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体575の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体575も絶縁体571などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物530bの絶縁体575と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0603】
また、トランジスタ500Dは、絶縁体570、導電体560、金属酸化物552、絶縁体550、及び酸化物530cの側面に絶縁体575を有する。絶縁体575は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体575に用いると、後の工程で絶縁体575中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体575は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0604】
また、トランジスタ500Dは、絶縁体575、酸化物530上に絶縁体544を有する。絶縁体544は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水又は水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体544として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0605】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体544が酸化物530及び絶縁体575から水素及び水を吸収することで、酸化物530及び絶縁体575の水素濃度を低減することができる。
【0606】
<<トランジスタの構造例5>>
図41(A)乃至(C)を用いてトランジスタ500Eの構造例を説明する。図41(A)はトランジスタ500Eの上面図である。図41(B)は、図41(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図41(C)は、図41(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図41(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0607】
トランジスタ500Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0608】
図41(A)乃至(C)では、トランジスタ500Dと同様に、導電体542a、及び導電体542bを設けずに、露出した酸化物530b表面の一部に領域531a及び領域531bを有する。領域531a又は領域531bの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物530bと、絶縁体544の間に、絶縁体573を有する。
【0609】
図41に示す、領域531a、及び領域531bは、酸化物530bに下記の元素が添加された領域である。領域531a、及び領域531bは、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0610】
具体的には、酸化物530b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、酸化物530bの一部の領域を低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物530が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域531a及び領域531bが形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0611】
なお、酸化物530bの一部の領域を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、又はリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス元素等を用いてもよい。希ガス元素の代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0612】
特に、アモルファスシリコン、低温ポリシリコンなどが半導体層に含まれるSiトランジスタの製造ラインの装置において、ホウ素、及びリンを添加することができるため、当該製造ラインの装置を用いることにより酸化物530bの一部を低抵抗化することができる。つまり、Siトランジスタの製造ラインの一部を、トランジスタ500Eの作製工程に用いることができる。
【0613】
続いて、酸化物530b、及びダミーゲート上に、絶縁体573となる絶縁膜、及び絶縁体544となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体573となる絶縁膜、及び絶縁体544となる絶縁膜を積層して設けることで、領域531a又は領域531bと、酸化物530cと、絶縁体550と、が重畳する領域を設けることができる。
【0614】
具体的には、絶縁体544となる絶縁膜上に絶縁体580となる絶縁膜を設けた後、絶縁体580となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体580となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体573の一部も除去するとよい。従って、絶縁体580に設けられた開口部の側面には、絶縁体544、及び絶縁体573が露出し、当該開口部の底面には、酸化物530bに設けられた領域531a、及び領域531bのそれぞれの一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、及び導電体560となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体580が露出するまでCMP処理などにより、酸化物530cとなる酸化膜、絶縁体550となる絶縁膜、及び導電体560となる導電膜の一部を除去することで、図41に示すトランジスタを形成することができる。
【0615】
なお、絶縁体573、及び絶縁体544は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0616】
図41に示すトランジスタには、導電体542a、及び導電体542bが設けられていないため、コストの低減を図ることができる。
【0617】
<<トランジスタの構造例6>>
また、図36では、ゲートとしての機能を機能する導電体560が、絶縁体580の開口の内部に形成されている構造例について説明したが、例えば、当該導電体の上方に、当該絶縁体が設けられた構造を用いることもできる。このようなトランジスタの構造例を、図42図43に示す。
【0618】
図42(A)はトランジスタの上面図であり、図42(B)はトランジスタの斜視図である。また、図42(A)におけるL1-L2の断面図を図43(A)に示し、W1-W2の断面図を図43(B)に示す。
【0619】
図42図43に示すトランジスタは、バックゲートとしての機能を有する導電体BGEと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体BGIと、酸化物半導体Sと、ゲート絶縁膜としての機能を有する絶縁体FGIと、フロントゲートとしての機能を有する導電体FGEと、配線としての機能を有する導電体WEと、を有する。また、導電体PEは、導電体WEと、酸化物S、導電体BGE、又は導電体FGEと、を接続するためのプラグとしての機能を有する。なお、ここでは、酸化物半導体Sが、3層の酸化物S1、S2、S3によって構成されている例を示している。
【0620】
<容量素子の構造例>
図44では、図34に示す半導体装置に適用できる容量素子600の一例として容量素子600Aについて示している。図44(A)は容量素子600Aの上面図であり、図44(B)は容量素子600Aの一点鎖線L3-L4における断面を示した斜視図であり、図44(C)は容量素子600Aの一点鎖線W3-L4における断面を示した斜視図である。
【0621】
導電体610は、容量素子600Aの一対の電極の一方として機能し、導電体620は、容量素子600Aの一対の電極の他方として機能する。また、絶縁体630は、一対の電極に挟まれる誘電体として機能する。
【0622】
容量素子600は、導電体610の下部において、導電体546と、導電体548とに電気的に接続されている。導電体546と、導電体548は、別の回路素子と接続するためのプラグ、又は配線として機能する。また図44では、導電体546と、導電体548と、をまとめて導電体540と記載している。
【0623】
また、図44では、図を明瞭に示すために、導電体546及び導電体548が埋め込まれている絶縁体586と、導電体620及び絶縁体630を覆っている絶縁体650と、を省略している。
【0624】
なお、図34図35図44に示す容量素子600はプレーナ型であるが、容量素子の形状はこれに限定されない。例えば、容量素子600は、図45に示すシリンダ型の容量素子600Bとしてもよい。
【0625】
図45(A)は容量素子600Bの上面図であり、図45(B)は容量素子600Bの一点鎖線L3-L4における断面図であり、図45(C)は容量素子600Bの一点鎖線W3-L4における断面を示した斜視図である。
【0626】
図45(B)において、容量素子600Bは、導電体540が埋め込まれている絶縁体586上の絶縁体631と、開口部を有する絶縁体651と、一対の電極の一方として機能する導電体610と、一対の電極の他方として機能する導電体620と、を有する。
【0627】
また、図45(C)では、図を明瞭に示すために、絶縁体586と、絶縁体650と、絶縁体651と、を省略している。
【0628】
絶縁体631としては、例えば、絶縁体586と同様の材料を用いることができる。
【0629】
また、絶縁体631には、導電体540に電気的に接続されるように導電体611が埋め込まれている。導電体611は、例えば、導電体330、導電体518と同様の材料を用いることができる。
【0630】
絶縁体651としては、例えば、絶縁体586と同様の材料を用いることができる。
【0631】
また、絶縁体651は、前述の通り、開口部を有し、当該開口部は導電体611に重畳している。
【0632】
導電体610は、当該開口部の底部と、側面と、に形成されている。つまり、導電体621は、導電体611に重畳し、かつ導電体611に電気的に接続されている。
【0633】
なお、導電体610の形成方法としては、エッチング法などによって絶縁体651に開口部を形成し、次に、スパッタリング法、ALD法などによって導電体610を成膜する。その後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などによって、開口部に成膜された導電体610を残して、絶縁体651上に成膜された導電体610を除去すればよい。
【0634】
絶縁体630は、絶縁体651上と、導電体610の形成面上と、に位置する。なお、絶縁体630は、容量素子において、一対の電極に挟まれる誘電体として機能する。
【0635】
導電体620は、絶縁体651の開口部が埋まるように、絶縁体630上に形成されている。
【0636】
絶縁体650は、絶縁体630と、導電体620と、を覆うように形成されている。
【0637】
図45に示すシリンダ型の容量素子600Bは、プレーナ型の容量素子600Aよりも静電容量の値を高くすることができる。そのため、例えば、上記の実施の形態で説明した容量素子C01、C01mなどとして、容量素子600Bを適用することによって、長時間、容量素子の端子間の電圧を維持することができる。
【0638】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0639】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物の構成について説明する。
【0640】
<金属酸化物の構成>
明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。なお、CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能、又は材料の構成の一例を表す。
【0641】
CAC-OS又はCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OS又はCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(又はホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OS又はCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0642】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0643】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0644】
また、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OS又はCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0645】
すなわち、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、又は金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0646】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0647】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0648】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0649】
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0650】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0651】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0652】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0653】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0654】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0655】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0656】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア密度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上とすればよい。
【0657】
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0658】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0659】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0660】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0661】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0662】
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0663】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0664】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0665】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0666】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0667】
(実施の形態7)
本実施の形態は、上記実施の形態に示す半導体装置などが形成された半導体ウェハ、及び当該半導体装置が組み込まれた電子部品の一例を示す。
【0668】
<半導体ウェハ>
初めに、半導体装置などが形成された半導体ウェハの例を、図46(A)を用いて説明する。
【0669】
図46(A)に示す半導体ウェハ4800は、ウェハ4801と、ウェハ4801の上面に設けられた複数の回路部4802と、を有する。なお、ウェハ4801の上面において、回路部4802の無い部分は、スペーシング4803であり、ダイシング用の領域である。
【0670】
半導体ウェハ4800は、ウェハ4801の表面に対して、前工程によって複数の回路部4802を形成することで作製することができる。また、その後に、ウェハ4801の複数の回路部4802が形成された反対側の面を研削して、ウェハ4801の薄膜化してもよい。この工程により、ウェハ4801の反りなどを低減し、部品としての小型化を図ることができる。
【0671】
次の工程としては、ダイシング工程が行われる。ダイシングは、一点鎖線で示したスクライブラインSCL1及びスクライブラインSCL2(ダイシングライン、又は切断ラインと呼ぶ場合がある)に沿って行われる。なお、スペーシング4803は、ダイシング工程を容易に行うために、複数のスクライブラインSCL1が平行になるように設け、複数のスクライブラインSCL2が平行になるように設け、スクライブラインSCL1とスクライブラインSCL2が垂直になるように設けるのが好ましい。
【0672】
ダイシング工程を行うことにより、図46(B)に示すようなチップ4800aを、半導体ウェハ4800から切り出すことができる。チップ4800aは、ウェハ4801aと、回路部4802と、スペーシング4803aと、を有する。なお、スペーシング4803aは、極力小さくなるようにするのが好ましい。この場合、隣り合う回路部4802の間のスペーシング4803の幅が、スクライブラインSCL1の切りしろと、又はスクライブラインSCL2の切りしろとほぼ同等の長さであればよい。
【0673】
なお、本発明の一態様の素子基板の形状は、図46(A)に図示した半導体ウェハ4800の形状に限定されない。例えば、矩形の形状の半導体ウェハあってもよい。素子基板の形状は、素子の作製工程、及び素子を作製するための装置に応じて、適宜変更することができる。
【0674】
<電子部品>
次に、チップ4800aが組み込まれた電子部品の例を、図46(C)、(D)を用いて説明を行う。
【0675】
図46(C)に電子部品4700および電子部品4700が実装された基板(実装基板4704)の斜視図を示す。図46(C)に示す電子部品4700は、リード4701と、上述したチップ4800aと、を有し、ICチップ等として機能する。特に、本明細書などにおいて、上記実施の形態で説明した演算回路110など半導体装置を含む電子部品4700をブレインモーフィックプロセッサ(BMP)と呼称する。
【0676】
電子部品4700は、例えば、リードフレームのリード4701とチップ4800a上の電極とを金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続するワイヤーボンディング工程と、エポキシ樹脂等によって封止するモールド工程と、リードフレームのリード4701へのメッキ処理と、パッケージの表面への印字処理と、を行うことで作製することができる。また、ワイヤーボンディング工程は、例えば、ボールボンディングや、ウェッジボンディングなどを用いることができる。また、図46(C)では、電子部品4700のパッケージにQFP(Quad Flat Package)を適用しているが、パッケージの態様はこれに限定されない。
【0677】
電子部品4700は、例えばプリント基板4702に実装される。このようなICチップが複数組み合わされて、それぞれがプリント基板4702上で電気的に接続されることで実装基板4704が完成する。
【0678】
図46(D)に電子部品4730の斜視図を示す。電子部品4730は、SiP(System in Package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品4730は、パッケージ基板4732(プリント基板)上にインターポーザ4731が設けられ、インターポーザ4731上に半導体装置4735、および複数の半導体装置4710が設けられている。
【0679】
電子部品4730では、半導体装置4710を有する。半導体装置4710としては、例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置、広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)などとすることができる。また、半導体装置4735は、CPU、GPU、FPGA、記憶装置などの集積回路(半導体装置)を用いることができる。
【0680】
パッケージ基板4732は、セラミック基板、プラスチック基板、またはガラスエポキシ基板などを用いることができる。インターポーザ4731は、シリコンインターポーザ、樹脂インターポーザなどを用いることができる。
【0681】
インターポーザ4731は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ4731は、インターポーザ4731上に設けられた集積回路をパッケージ基板4732に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼ぶ場合がある。また、インターポーザ4731に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板4732を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSV(Through Silicon Via)を用いることも出来る。
【0682】
インターポーザ4731としてシリコンインターポーザを用いることが好ましい。シリコンインターポーザでは能動素子を設ける必要が無いため、集積回路よりも低コストで作製することができる。一方で、シリコンインターポーザの配線形成は半導体プロセスで行なうことができるため、樹脂インターポーザでは難しい微細配線の形成が容易である。
【0683】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0684】
また、シリコンインターポーザを用いたSiPやMCMなどでは、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0685】
また、電子部品4730と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ4731上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品4730では、半導体装置4710と半導体装置4735の高さを揃えることが好ましい。
【0686】
電子部品4730を他の基板に実装するため、パッケージ基板4732の底部に電極4733を設けてもよい。図46(D)では、電極4733を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板4732の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極4733を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板4732の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0687】
電子部品4730は、BGAおよびPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、またはQFN(Quad Flat Non-leaded package)などの実装方法を用いることができる。
【0688】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0689】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置を有する電子機器の一例について説明する。なお、図47には、当該半導体装置を有する電子部品4700(BMP)が各電子機器に含まれている様子を図示している。
【0690】
[携帯電話]
図47に示す情報端末5500は、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)である。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0691】
情報端末5500は、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0692】
[ウェアラブル端末]
また、図47には、ウェアラブル端末の一例としてスマートウォッチ5900が図示されている。スマートウォッチ5900は、筐体5901、表示部5902、操作ボタン5903、操作子5904、バンド5905などを有する。
【0693】
ウェアラブル端末は、先述した情報端末5500と同様に、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、ウェアラブル端末を装着した人の健康状態を管理するアプリケーション、目的地を入力することで最適な道を選択して誘導するナビゲーションシステムなどが挙げられる。
【0694】
[情報端末]
また、図47には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0695】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0696】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図47に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0697】
[電化製品]
また、図47には、電化製品の一例として電気冷凍冷蔵庫5800が図示されている。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0698】
電気冷凍冷蔵庫5800に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0699】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0700】
[ゲーム機]
また、図47には、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200が図示されている。携帯ゲーム機5200は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0701】
更に、図47には、ゲーム機の一例である据え置き型ゲーム機7500が図示されている。据え置き型ゲーム機7500は、本体7520と、コントローラ7522を有する。なお、本体7520には、無線または有線によってコントローラ7522を接続することができる。また、図47に示していないが、コントローラ7522は、ゲームの画像を表示する表示部、ボタン以外の入力インターフェースとなるタッチパネルやスティック、回転式つまみ、スライド式つまみなどを備えることができる。また、コントローラ7522は、図47に示す形状に限定されず、ゲームのジャンルに応じて、コントローラ7522の形状を様々に変更してもよい。例えば、FPS(First Person Shooter)などのシューティングゲームでは、トリガーをボタンとし、銃を模した形状のコントローラを用いることができる。また、例えば、音楽ゲームなどでは、楽器、音楽機器などを模した形状のコントローラを用いることができる。更に、据え置き型ゲーム機は、コントローラを使わず、代わりにカメラ、深度センサ、マイクロフォンなどを備えて、ゲームプレイヤーのジェスチャー、及び/又は音声によって操作する形式としてもよい。
【0702】
また、上述したゲーム機の映像は、テレビジョン装置、パーソナルコンピュータ用ディスプレイ、ゲーム用ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの表示装置によって、出力することができる。
【0703】
携帯ゲーム機5200に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0704】
更に、携帯ゲーム機5200に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0705】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0706】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0707】
図47では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機及び家庭用の据え置き型ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様の電子機器はこれに限定されない。本発明の一態様の電子機器としては、例えば、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0708】
[移動体]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0709】
図47には移動体の一例である自動車5700が図示されている。
【0710】
自動車5700の運転席周辺には、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などの様々な情報を提供するインストゥルメントパネルが備えられている。また、運転席周辺には、それらの情報を示す表示装置が備えられていてもよい。
【0711】
特に当該表示装置には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーなどで遮られた視界、運転席の死角などを運転手に提供することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。
【0712】
上記実施の形態で説明した半導体装置は人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置を自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該半導体装置を道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。当該表示装置には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0713】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のコンピュータを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0714】
[カメラ]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、カメラに適用することができる。
【0715】
図47には、撮像装置の一例であるデジタルカメラ6240が図示されている。デジタルカメラ6240は、筐体6241、表示部6242、操作ボタン6243、シャッターボタン6244等を有し、また、デジタルカメラ6240には、着脱可能なレンズ6246が取り付けられている。なお、ここではデジタルカメラ6240を、レンズ6246を筐体6241から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ6246と筐体6241とが一体となっていてもよい。また、デジタルカメラ6240は、ストロボ装置や、ビューファインダー等を別途装着することができる構成としてもよい。
【0716】
デジタルカメラ6240に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、低消費電力のデジタルカメラ6240を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0717】
更に、デジタルカメラ6240に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有するデジタルカメラ6240を実現することができる。人工知能を利用することによって、デジタルカメラ6240は、顔、物体など被写体を自動的に認識する機能、又は当該被写体に合わせたピント調節、環境に合わせて自動的にフラッシュを焚く機能、撮像した画像を調色する機能などを有することができる。
【0718】
[ビデオカメラ]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、ビデオカメラに適用することができる。
【0719】
図47には、撮像装置の一例であるビデオカメラ6300が図示されている。ビデオカメラ6300は、第1筐体6301、第2筐体6302、表示部6303、操作キー6304、レンズ6305、接続部6306等を有する。操作キー6304及びレンズ6305は第1筐体6301に設けられており、表示部6303は第2筐体6302に設けられている。そして、第1筐体6301と第2筐体6302とは、接続部6306により接続されており、第1筐体6301と第2筐体6302の間の角度は、接続部6306により変更が可能である。表示部6303における映像を、接続部6306における第1筐体6301と第2筐体6302との間の角度に従って切り替える構成としてもよい。
【0720】
ビデオカメラ6300で撮影した映像を記録する際、データの記録形式に応じたエンコードを行う必要がある。人工知能を利用することによって、ビデオカメラ6300は、エンコードの際に、人工知能によるパターン認識を行うことができる。このパターン認識によって、連続する撮像画像データに含まれる人、動物、物体などの差分データを算出して、データの圧縮を行うことができる。
【0721】
[PC用の拡張デバイス]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、PC(Personal Computer)などの計算機、情報端末用の拡張デバイスに適用することができる。
【0722】
図48(A)は、当該拡張デバイスの一例として、持ち運びのできる、演算処理が可能なチップが搭載された、PCに外付けする拡張デバイス6100を示している。拡張デバイス6100は、例えば、USB(Universal Serial Bus)などでPCに接続することで、当該チップによる演算処理を行うことができる。なお、図48(A)は、持ち運びが可能な形態の拡張デバイス6100を図示しているが、本発明の一態様に係る拡張デバイスは、これに限定されず、例えば、冷却用ファンなどを搭載した比較的大きい形態の拡張デバイスとしてもよい。
【0723】
拡張デバイス6100は、筐体6101、キャップ6102、USBコネクタ6103及び基板6104を有する。基板6104は、筐体6101に収納されている。基板6104には、上記実施の形態で説明した半導体装置などを駆動する回路が設けられている。例えば、基板6104には、チップ6105(例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置、電子部品4700、メモリチップなど。)、コントローラチップ6106が取り付けられている。USBコネクタ6103は、外部装置と接続するためのインターフェースとして機能する。
【0724】
拡張デバイス6100をPCなどに用いることにより、当該PCの演算処理能力を高くすることができる。これにより、処理能力の足りないPCでも、例えば、人工知能、動画処理などの演算を行うことができる。
【0725】
[放送システム]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、放送システムに適用することができる。
【0726】
図48(B)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図48(B)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0727】
図48(B)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0728】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図48(B)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0729】
上述した放送システムは、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0730】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0731】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0732】
[認証システム]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、認証システムに適用することができる。
【0733】
図48(C)は、掌紋認証装置を示しており、筐体6431、表示部6432、掌紋読み取り部6433、配線6434を有している。
【0734】
図48(C)には、掌紋認証装置が手6435の掌紋を取得する様子を示している。取得した掌紋は、人工知能を利用したパターン認識の処理が行われ、当該掌紋が本人のものであるかどうかの判別を行うことができる。これにより、セキュリティの高い認証を行うシステムを構築することができる。また、本発明の一態様に係る認証システムは、掌紋認証装置に限定されず、指紋、静脈、顔、虹彩、声紋、遺伝子、体格などの生体情報を取得して生体認証を行う装置であってもよい。
【0735】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0736】
MPC:回路、MPC[1]:回路、MPC[i]:回路、MPC[m]:回路、ACTF:回路、TRF:変換回路、BF1:回路、BF2:回路、SC:切り替え回路、DINV1:インバータ回路、DINV2:インバータ回路、INV1:インバータ回路、INV1A:インバータ回路、INV2:インバータ回路、INV3:インバータ回路、SINV1:インバータ回路、SINV2:インバータ回路、HCA:保持部、HCAm:保持部、HCA1:保持部、HCA2:保持部、HCB:保持部、LGC1:論理回路、LGC2:論理回路、E[1]:一致回路、E[2]:一致回路、E[i]:一致回路、E[m-2]:一致回路、E[m-1]:一致回路、E[m]:一致回路、inp:端子、inn:端子、outp:端子、outn:端子、wt:端子、wtm:端子、wta:端子、xt:端子、st:端子、stm:端子、ct:端子、inpa:端子、inna:端子、outa:端子、SL01:配線、SL01m:配線、SL01a:配線、SL02:配線、SL02a:配線、SL51:配線、SL52:配線、SL53:配線、SL54:配線、SL55:配線、SL56:配線、SL57:配線、SL58:配線、SL59:配線、SL60:配線、SL61:配線、SL62:配線、DL:配線、DLm:配線、SWL:配線、SWLm:配線、CL:配線、VDDL:配線、VSSL:配線、VSS1L:配線、VSS2L:配線、VL:配線、Vref1L:配線、Vref2L:配線、VAL:配線、VBL:配線、WLD:回路、AFP:回路、SWLD:回路、TSG:回路、COD:回路、Tr01:トランジスタ、Tr01m:トランジスタ、Tr01p:トランジスタ、Tr02:トランジスタ、Tr02m:トランジスタ、Tr02a:トランジスタ、Tr03:トランジスタ、Tr03m:トランジスタ、Tr03a:トランジスタ、Tr04:トランジスタ、Tr05:トランジスタ、Tr06:トランジスタ、Tr07:トランジスタ、Tr08:トランジスタ、Tr09:トランジスタ、Tr11:トランジスタ、Tr12:トランジスタ、Tr13:トランジスタ、Tr14:トランジスタ、Tr15:トランジスタ、Tr41:トランジスタ、Tr42:トランジスタ、Tr43:トランジスタ、Tr44:トランジスタ、C01:容量素子、C01m:容量素子、C01a:容量素子、C21:容量素子、C22:容量素子、LE:負荷素子、S01:スイッチ、S02:スイッチ、S03:スイッチ、S04:スイッチ、S05:スイッチ、S05a:スイッチ、S51:スイッチ、S51a:スイッチ、S52:スイッチ、S52a:スイッチ、S53:スイッチ、S53a:スイッチ、S54:スイッチ、S54a:スイッチ、S55:スイッチ、S56:スイッチ、S57:スイッチ、S58:スイッチ、S59:スイッチ、S60:スイッチ、S61:スイッチ、S62:スイッチ、A01:アナログスイッチ、A02:アナログスイッチ、A03:アナログスイッチ、A04:アナログスイッチ、N (1):ニューロン、N (1):ニューロン、N (k-1):ニューロン、N (k-1):ニューロン、N (k-1):ニューロン、N (k):ニューロン、N (k):ニューロン、N (k):ニューロン、N (R):ニューロン、N (R):ニューロン、BGI:絶縁体、FGI:絶縁体、BGE:導電体、FGE:導電体、PE:導電体、WE:導電体、SCL1:スクライブライン、SCL2:スクライブライン、100:ニューラルネットワーク、110:演算回路、120:演算回路、130:演算回路、140:演算回路、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、500:トランジスタ、500A:トランジスタ、500B:トランジスタ、500C:トランジスタ、500D:トランジスタ、500E:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、510:絶縁体、511:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、531a:領域、531b:領域、540:導電体、540a:導電体、540b:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、545:絶縁体、546:導電体、546a:導電体、546b:導電体、547a:導電体、547b:導電体、548:導電体、550:絶縁体、552:金属酸化物、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、570:絶縁体、571:絶縁体、573:絶縁体、574:絶縁体、575:絶縁体、576a:絶縁体、576b:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、600A:容量素子、600B:容量素子、610:導電体、611:導電体、612:導電体、620:導電体、621:導電体、630:絶縁体、631:絶縁体、650:絶縁体、651:絶縁体、4700:電子部品、4701:リード、4702:プリント基板、4704:実装基板、4710:半導体装置、4730:電子部品、4731:インターポーザ、4732:パッケージ基板、4733:電極、4735:半導体装置、4800:半導体ウェハ、4800a:チップ、4801:ウェハ、4801a:ウェハ、4802:回路部、4803:スペーシング、4803a:スペーシング、5200:携帯ゲーム機、5201:筐体、5202:表示部、5203:ボタン、5300:デスクトップ型情報端末、5301:本体、5302:ディスプレイ、5303:キーボード、5500:情報端末、5510:筐体、5511:表示部、5600:TV、5650:アンテナ、5670:電波塔、5675A:電波、5675B:電波、5680:放送局、5700:自動車、5800:電気冷凍冷蔵庫、5801:筐体、5802:冷蔵室用扉、5803:冷凍室用扉、5901:筐体、5902:表示部、5903:操作ボタン、5904:操作子、5905:バンド、6100:拡張デバイス、6101:筐体、6102:キャップ、6103:USBコネクタ、6104:基板、6105:チップ、6106:コントローラチップ、6240:デジタルカメラ、6241:筐体、6242:表示部、6243:操作ボタン、6244:シャッターボタン、6246:レンズ、6300:ビデオカメラ、6301:第1筐体、6302:第2筐体、6303:表示部、6304:操作キー、6305:レンズ、6306:接続部、6431:筐体、6432:表示部、6433:掌紋読み取り部、6434:配線、6435:手、7520:本体、7522:コントローラ
図1
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