(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166409
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】NKG2D、CD16および腫瘍関連抗原に結合するタンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20231114BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023132099
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2020513796の分割
【原出願日】2018-09-07
(31)【優先権主張番号】62/555,110
(32)【優先日】2017-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/566,824
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519288755
【氏名又は名称】ドラゴンフライ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】チャン, グレゴリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】チュン, アン エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイニー, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ランディ, ブラッドリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】プリンツ, ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ, アシャ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】NKG2D受容体、CD16、および腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タンパク質、ならびにがんの処置に有用な医薬組成物および治療方法を提供する。
【解決手段】(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)に結合する第1の抗原結合部位と、(b)EpCAM、がん抗原125、ナトリウム/リン酸共輸送体2B、ネクチン細胞接着分子4、フコシル-GM1、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質8、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質9、溶質キャリアファミリー44メンバー4、およびシアリル化ルイスa抗原からなる群から選択される抗原に結合する第2の抗原結合部位と、(c)表面抗原分類16(CD16)に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位とを含むタンパク質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)に結合する第1の抗原結
合部位と、
(b)EpCAM、がん抗原125(CA125)、ナトリウム/リン酸共輸送体2B
(NaPi2b)、ネクチン細胞接着分子4(Nectin4)、フコシル-GM1(モ
ノシアロテトラヘキソシルガングリオシド)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイ
ナーゼドメイン含有タンパク質8(ADAM8)、ディスインテグリンおよびメタロプロ
テイナーゼドメイン含有タンパク質9(ADAM9)、溶質キャリアファミリー44メン
バー4(SLC44A4)、およびシアリル化ルイスa抗原(CA19-9)からなる群
から選択される抗原に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)表面抗原分類16(CD16)に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくは
その一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項2】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)EpCAMに結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項3】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)がん抗原125(CA125)、ナトリウム/リン酸共輸送体2B(NaPi2
b)、ネクチン細胞接着分子4(Nectin4)、フコシル-GM1(モノシアロテト
ラヘキソシルガングリオシド)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイ
ン含有タンパク質8(ADAM8)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼド
メイン含有タンパク質9(ADAM9)、溶質キャリアファミリー44メンバー4(SL
C44A4)、およびシアリル化ルイスa抗原(CA19-9)から選択される腫瘍関連
抗原に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項4】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2b(NaPi2b)から選択される腫
瘍関連抗原に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項5】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)腫瘍関連抗原Nectin4に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項6】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)多発性骨髄腫関連抗原フコシル-GM1に結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項7】
(a)NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、
(b)SLC44A4から選択されるT細胞関連腫瘍抗原に結合する第2の抗原結合部
位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項8】
前記第1の抗原結合部位が、ヒト、非ヒト霊長類、およびげっ歯動物におけるNKG2
Dに結合する、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記第1の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項
1から8のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じポリペプチド上に存在する
、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項
9または10に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じ
ポリペプチド上に存在する、請求項11に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記第1の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、前記第2の抗原結合部位の前記軽
鎖可変ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する、請求項11または12に
記載のタンパク質。
【請求項14】
(a)NKG2Dに結合するFab断片を含む第1の抗原結合部位と、
(b)EpCAMに結合する一本鎖可変断片(scFv)を含む第2の抗原結合部位と
、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項15】
前記scFvが、CD16に結合するのに十分な前記抗体Fcドメインもしくはその一
部分またはCD16に結合する前記第3の抗原結合部位に、Ala-SerまたはGly
-Ala-Serを含むヒンジを介して連結しており、前記scFvが、重鎖可変ドメイ
ンおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項14に記載のタンパク質。
【請求項16】
前記scFvが、前記抗体Fcドメインに連結している、請求項15に記載のタンパク
質。
【請求項17】
前記scFvの前記重鎖可変ドメインが前記scFvの前記軽鎖可変ドメインとジスル
フィド架橋を形成する、請求項14または15に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記ジスルフィド架橋が、前記重鎖可変ドメインのC44と前記軽鎖可変ドメインのC
100との間で形成されている、請求項17に記載のタンパク質。
【請求項19】
前記scFvが前記抗体Fcドメインに連結しており、前記scFvの前記軽鎖可変ド
メインが前記scFvの前記重鎖可変ドメインのN末端に位置しており、かつ、前記sc
Fvの前記重鎖可変ドメインに、可動性リンカー(GlyGlyGlyGlySer)4
((G4S)4)を介して連結しており、前記Fabが前記抗体Fcドメインに連結して
いる、請求項18に記載のタンパク質。
【請求項20】
前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽鎖可変ドメインに、可
動性リンカーを介して連結している、請求項15から19のいずれか一項に記載のタンパ
ク質。
【請求項21】
前記可動性リンカーが、(GlyGlyGlyGlySer)4((G4S)4)を含
む、請求項20に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽鎖可変ドメインのN末
端またはC末端に位置している、請求項15から21のいずれか一項に記載のタンパク質
。
【請求項23】
前記scFvの前記軽鎖可変ドメインが、前記scFvの前記重鎖可変ドメインのN末
端に位置している、請求項22に記載のタンパク質。
【請求項24】
前記Fab断片が、CD16に結合するのに十分な前記抗体Fcドメインもしくはその
一部分またはCD16に結合する前記第3の抗原結合部位に連結している、請求項14か
ら23のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項25】
前記Fab断片の重鎖部分が、重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、前記重
鎖可変ドメインが、前記CH1ドメインに連結している、請求項24に記載のタンパク質
。
【請求項26】
前記Fab断片が、前記抗体Fcドメインに連結している、請求項24または25に記
載のタンパク質。
【請求項27】
配列番号208および配列番号209から選択される配列を含む、請求項14から26
のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項28】
抗体Fcドメインに連結したscFvを含み、前記抗体Fcドメインに連結した前記s
cFvが、配列番号210および配列番号211から選択される配列によって表される、
請求項15から27のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項29】
配列番号212および配列番号213から選択される配列を含む、請求項15から27
のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項30】
配列番号210および配列番号211から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%
同一の配列を含む、請求項15から26のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項31】
配列番号210および配列番号211から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%
同一の配列を含む、請求項15から26のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項32】
配列番号210および配列番号211から選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%
同一の配列を含む、請求項15から26のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項33】
配列番号212および配列番号213から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%
同一の配列を含む、請求項15から32のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項34】
配列番号212および配列番号213から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%
同一の配列を含む、請求項15から32のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項35】
配列番号212および配列番号213から選択されるアミノ酸配列と少なくとも99%
同一の配列を含む、請求項15から32のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項36】
(a)NKG2Dに結合する一本鎖可変断片(scFv)を含む第1の抗原結合部位と
、
(b)EpCAMに結合する第2の抗原結合部位と、
(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD
16に結合する第3の抗原結合部位と
を含むタンパク質。
【請求項37】
EpCAMに結合するさらなる抗原結合部位をさらに含む、請求項36に記載のタンパ
ク質。
【請求項38】
EpCAMに結合する前記第2の抗原結合部位が、Fab断片である、請求項36また
は37に記載のタンパク質。
【請求項39】
EpCAMに結合する前記第2の抗原結合部位および前記さらなる抗原結合部位が、F
ab断片である、請求項37または38に記載のタンパク質。
【請求項40】
EpCAMに結合する前記第2の抗原結合部位および前記さらなる抗原結合部位が、s
cFvである、請求項36または37に記載のタンパク質。
【請求項41】
NKG2Dに結合する前記scFvの前記重鎖可変ドメインが、前記scFvの前記軽
鎖可変ドメインのN末端またはC末端に位置している、請求項36から40のいずれか一
項に記載のタンパク質。
【請求項42】
前記軽鎖可変ドメインが、NKG2Dに結合する前記scFvの前記重鎖可変ドメイン
のN末端に位置している、請求項41に記載のタンパク質。
【請求項43】
NKG2Dに結合する前記scFvが、CD16に結合するのに十分な前記抗体Fcド
メインもしくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位に連結している
、請求項36から42のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項44】
NKG2Dに結合する前記scFvが、CD16に結合するのに十分な前記抗体Fcド
メインもしくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位に、Ala-S
erまたはGly-Ala-Serを含むヒンジを介して連結している、請求項43に記
載のタンパク質。
【請求項45】
NKG2Dに結合する前記scFvが、CD16に結合するのに十分な前記抗体Fcド
メインもしくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位のC末端に、S
GSGGGGSを含む可動性リンカー(配列番号207)を介して連結している、請求項
43に記載のタンパク質。
【請求項46】
前記抗体FcドメインのC末端が、NKG2Dに結合する前記scFvの前記軽鎖可変
ドメインのN末端に連結している、請求項45に記載のタンパク質。
【請求項47】
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記scFvの前記重鎖可変ドメインと前記
scFvの前記軽鎖可変ドメインとの間でジスルフィド架橋が形成されている、請求項3
6から46のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項48】
前記ジスルフィド架橋が、前記重鎖可変ドメインのC44と前記軽鎖可変ドメインのC
100との間で形成されている、請求項47に記載のタンパク質。
【請求項49】
NKG2Dに結合する前記scFv内で、前記重鎖可変ドメインが、前記軽鎖可変ドメ
インに、可動性リンカーを介して連結している、請求項36から48のいずれか一項に記
載のタンパク質。
【請求項50】
前記可動性リンカーが、(GlyGlyGlyGlySer)4(G4S)4)を含む
、請求項49に記載のタンパク質。
【請求項51】
前記第2の抗原結合部位scFvおよび前記さらなる抗原結合部位scFvが、CD1
6に結合するのに十分な前記抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に結合
する前記第3の抗原結合部位に、Ala-Serを含むヒンジを介して連結している、請
求項40から50のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項52】
前記第2の抗原結合部位scFvおよび前記さらなる抗原結合部位scFvが、前記抗
体Fcドメインに、Ala-Serを含むヒンジを介して連結している、請求項40から
51のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項53】
前記第2の抗原結合部位および/または前記さらなる抗原結合部位の前記重鎖可変ドメ
インと前記軽鎖可変ドメインとの間でジスルフィド架橋が形成されている、請求項51ま
たは52に記載のタンパク質。
【請求項54】
前記ジスルフィド架橋が、前記重鎖可変ドメインのC44と前記軽鎖可変ドメインのC
100との間で形成されている、請求項53に記載のタンパク質。
【請求項55】
NKG2Dに結合する前記scFvが、重鎖可変ドメインのN末端に位置している軽鎖
可変ドメインを含み、前記軽鎖可変ドメインが、前記scFvの前記重鎖可変ドメインに
、可動性リンカー(GlyGlyGlyGlySer)4(G4S)4)を介して連結し
ており、NKG2Dに結合する前記scFvが、前記抗体Fcドメインに、Ala-Se
rまたはGly-Ala-Serを含むヒンジを介して連結している、請求項36から5
4のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項56】
配列番号203のアミノ酸配列を含むタンパク質。
【請求項57】
配列番号203および配列番号204のアミノ酸配列を含むタンパク質。
【請求項58】
配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むタンパク
質。
【請求項59】
配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含むタンパク
質。
【請求項60】
配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含むタンパク
質。
【請求項61】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号1、配列番号41、配列番号49、配列番号57
、配列番号59、配列番号61、配列番号69、配列番号77、配列番号85、および配
列番号93から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインを含
む、先行する請求項のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項62】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号41と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号42と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項63】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号49と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号50と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項64】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号57と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号58と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項65】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号59と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号60と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項66】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号61と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号62と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項67】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号69と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号70と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項68】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号77と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号78と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項69】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号85と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号86と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項70】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号93と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイン
と、配列番号94と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1から6
0のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項71】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号101と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号102と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1か
ら60のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項72】
前記第1の抗原結合部位が、配列番号103と少なくとも90%同一の重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号104と少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインとを含む、請求項1か
ら60のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項73】
前記第1の抗原結合部位が、単一ドメイン抗体である、請求項1から10のいずれか一
項に記載のタンパク質。
【請求項74】
前記単一ドメイン抗体が、VHH断片またはVNAR断片である、請求項73に記載の
タンパク質。
【請求項75】
前記第2の抗原結合部位が、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む、請求項
1から10または73から74のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項76】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインおよび前記軽鎖可変ドメインが、同じ
ポリペプチド上に存在する、請求項75に記載のタンパク質。
【請求項77】
前記第2の抗原結合部位がEpCAMに結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号115と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号119と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、2、または61から72のいずれかに記載のタンパク質。
【請求項78】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインが、
配列番号116のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR1配列、
配列番号117のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR2配列、および
配列番号118のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項77に記載のタンパク質。
【請求項79】
前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、
前記配列番号120のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR1配列、
前記配列番号121のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR2配列、および
前記配列番号122のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項78に記載のタンパク質。
【請求項80】
前記第2の抗原結合部位がEpCAMに結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号123と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号127と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、2、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項81】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインが、
配列番号124のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR1配列、
配列番号125のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR2配列、および
配列番号126のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項80に記載のタンパク質。
【請求項82】
前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、
配列番号128のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR1配列、
配列番号129のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR2配列、および
配列番号130のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項81に記載のタンパク質。
【請求項83】
前記第2の抗原結合部位がEpCAMに結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号131と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号135と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、2、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項84】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインが、
配列番号132のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR1配列、
配列番号133のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR2配列、および
配列番号134のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項83に記載のタンパク質。
【請求項85】
前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、
配列番号136のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR1配列、
配列番号137のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR2配列、および
配列番号138のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項84に記載のタンパク質。
【請求項86】
前記第2の抗原結合部位がEpCAMに結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号139と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号143と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、2、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項87】
前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可変ドメインが、
配列番号140のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR1配列、
配列番号141のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR2配列、および
配列番号142のアミノ酸配列と同一の重鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項86に記載のタンパク質。
【請求項88】
前記第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが、
配列番号144のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR1配列、
配列番号145のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR2配列、および
配列番号146のアミノ酸配列と同一の軽鎖CDR3配列
を含むアミノ酸配列を含む、請求項87に記載のタンパク質。
【請求項89】
前記第2の抗原結合部位がCA125に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号155と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号159と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、3、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項90】
前記第2の抗原結合部位がCA125に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖可
変ドメインが配列番号163と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2の
抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号167と少なくとも90%同一のアミノ
酸配列を含む、請求項1、3、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項91】
前記第2の抗原結合部位がNaPi2bに結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重鎖
可変ドメインが配列番号171と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第2
の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号175と少なくとも90%同一のアミ
ノ酸配列を含む、請求項1、4、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク質
。
【請求項92】
前記第2の抗原結合部位がNectin4に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重
鎖可変ドメインが配列番号179と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第
2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号183と少なくとも90%同一のア
ミノ酸配列を含む、請求項1、5、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク
質。
【請求項93】
前記第2の抗原結合部位がフコシル-GM1に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記
重鎖可変ドメインが配列番号187と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記
第2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号191と少なくとも90%同一の
アミノ酸配列を含む、請求項1、6、または61から72のいずれか一項に記載のタンパ
ク質。
【請求項94】
前記第2の抗原結合部位がSLC44A4に結合し、前記第2の抗原結合部位の前記重
鎖可変ドメインが配列番号195と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み、前記第
2の抗原結合部位の前記軽鎖可変ドメインが配列番号199と少なくとも90%同一のア
ミノ酸配列を含む、請求項1、7、または61から72のいずれか一項に記載のタンパク
質。
【請求項95】
前記抗体Fcドメインが、ヒトIgG1抗体のヒンジおよびCH2ドメインを含む、請
求項1から94のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項96】
前記Fcドメインが、ヒトIgG1抗体のアミノ酸234~332と少なくとも90%
同一のアミノ酸配列を含む、請求項95に記載のタンパク質。
【請求項97】
前記Fcドメインが、ヒトIgG1のFcドメインと少なくとも90%同一のアミノ酸
配列を含み、Q347、Y349、L351、S354、E356、E357、K360
、Q362、S364、T366、L368、K370、N390、K392、T394
、D399、S400、D401、F405、Y407、K409、T411、K439
からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なる、請求項96に記載のタ
ンパク質。
【請求項98】
NKG2Dに10nMのKDまたはそれよりも弱い親和性で結合する、請求項1から9
6のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項99】
先行する請求項のいずれか一項に記載のタンパク質および薬学的に許容される担体を含
む製剤。
【請求項100】
請求項1から98のいずれか一項に記載のタンパク質を発現する1つまたは複数の核酸
を含む細胞。
【請求項101】
請求項1から98のいずれか一項に記載のタンパク質に腫瘍およびナチュラルキラー細
胞を曝露することを含む、腫瘍細胞死を直接的および/または間接的に増強する方法。
【請求項102】
請求項1から98のいずれか一項に記載のタンパク質または請求項99に記載の製剤を
患者に投与することを含む、がんを処置する方法。
【請求項103】
前記第2の結合部位がEpCAMに結合する場合、前記がんが、頭頸部がん、卵巣がん
、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝がん、食道がん、および肺
がんからなる群から選択される、請求項102に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年9月7日に出願された米国仮特許出願第62/555,110号
、および2017年10月2日に出願された米国仮特許出願第62/566,824号の
利益および優先権を主張しており、そのそれぞれの開示全体は、すべての目的のためにそ
の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
配列表
【0002】
本出願は、ASCIIフォーマットで電子提出された配列表を含み、その全体が参照に
より本明細書に組み込まれる。前記ASCIIコピーは2018年9月6日に作成され、
DFY-038WO_SL.txtという名称であり、321,395バイトのサイズで
ある。
【0003】
本発明は、NKG2D、CD16、および腫瘍関連抗原に結合する多重特異性結合タン
パク質に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは、この疾患を処置するための文献に報告されている相当の研究努力および科学進
歩にもかかわらず、重大な健康問題であり続けている。最も頻繁に診断されるがんの中に
は、前立腺がん、乳がん、肺がん、および結腸直腸がんが含まれる。前立腺がんは、男性
におけるがんの最も一般的な形態である。乳がんは依然として女性における主要な死因で
ある。多発性骨髄腫、白血病、およびリンパ腫を含む血液および骨髄がんもまた、頻繁に
診断されるがんの種類である。これらのがんに対する現在の処置選択肢は、すべての患者
に効果的というわけではなく、および/または実質的な有害副作用を有する可能性がある
。他の種類のがんも、既存の治療選択肢を使用して処置することが依然として困難である
。
【0005】
がん免疫療法は、それらが非常に特異的であり、患者自身の免疫系を使用してがん細胞
の破壊を促進することができるので望ましい。二重特異性T細胞エンゲージャーなどの融
合タンパク質は、腫瘍細胞の破壊を促進するために腫瘍細胞およびT細胞に結合する、文
献に記載されているがん免疫療法である。ある特定の腫瘍関連抗原およびある特定の免疫
細胞に結合する抗体は文献に記載されている。例えば、WO2016/134371およ
びWO2015/095412を参照されたい。
【0006】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、先天性免疫系の構成要素であり、循環リンパ球の約
15%を構成する。NK細胞は実質的にすべての組織に浸潤し、最初は、事前感作を必要
とせずに腫瘍細胞を効果的に殺傷するそれらの能力によって特徴付けられた。活性化され
たNK細胞は、細胞傷害性T細胞と同様の手段によって、すなわち、パーフォリンおよび
グランザイムを含有する細胞傷害性顆粒を介して、ならびに死受容体経路を介して、標的
細胞を殺傷する。活性化されたNK細胞はまた、標的組織への他の白血球の動員を促進す
るIFN-ガンマおよびケモカインなどの炎症性サイトカインを分泌する。
【0007】
NK細胞は、それらの表面における様々な活性化受容体および阻害受容体を介してシグ
ナルに応答する。例えば、NK細胞が健康な自己細胞に遭遇すると、それらの活性は、キ
ラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)の活性化によって阻害される。あるいはNK
細胞が外来細胞またはがん細胞に遭遇すると、それらは、それらの活性化受容体(例えば
、ナチュラルキラーグループ2メンバーD(NKG2D)、NCR、DNAM1)を介し
て活性化される。NK細胞はまた、それらの表面におけるCD16受容体を介していくつ
かの免疫グロブリンの定常領域によって活性化される。活性化に対するNK細胞の全体的
な感受性は、刺激シグナルおよび阻害シグナルの合計に依存する。
【0008】
上皮細胞接着分子(EpCAM)は、上皮におけるCa2+非依存性ホモタイプ細胞間
接着を媒介する膜貫通糖タンパク質である。EpCAMは、細胞シグナル伝達、遊走、増
殖、および分化にも関与する。さらに、EpCAMには、c-myc、e-fabp、な
らびにサイクリンAおよびEを上方調節する能力により腫瘍を形成させる潜在性がある。
EpCAMは上皮および上皮由来の新生物においてもっぱら発現されるので、EpCAM
を、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝
がん、食道がん、および肺がんなどの種々のがんの診断マーカーとして使用することがで
きる。EpCAMは、腫瘍形成および癌の転移において役割を果たすようであり、したが
って、EpCAMはまた、潜在的な予後マーカーとしておよび免疫療法戦略の潜在的な標
的としての機能を果たし得る。
【0009】
CA125は、ムチン16としても公知であり、ムチンファミリー糖タンパク質のメン
バーである。CA-125は、卵巣がん、子宮体がん、および膵がんを含む特定の種類の
がんを有する一部の患者の血液において上昇し得る腫瘍マーカーまたはバイオマーカーと
して適用されている。CA-125は、ナチュラルキラー細胞の応答を抑制し、それによ
り、がん細胞を免疫応答から保護することを含むいくつかの異なる機構によって、および
、細胞成長を可能にし、細胞運動性を促進することによって、腫瘍形成および腫瘍増殖の
進行において役割を果たすことが示されている。
【0010】
ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2b(NaPi2b)は、Na+共輸送による
リン酸の細胞内への能動的輸送に関与する。例えば、NaPi2bは、腸の刷子縁膜にお
ける主要なリン酸輸送タンパク質であり、肺胞におけるサーファクタントの合成において
役割を有する。NaPi2bはまた、肺がん、卵巣がん、および甲状腺がんなどの様々な
がんにおいて発現される抗原でもある。
【0011】
Nectin4は、Ca2+非依存性細胞接着に関与する細胞接着分子のファミリーで
あるネクチンファミリーのメンバーである。ネクチンは、遍在的に発現され、例えば、上
皮の接着結合またはニューロン組織の化学的シナプスなど、広範囲の組織における接着の
役割を有する。ネクチンはまた、腫瘍関連抗原でもあり、膀胱がん、乳がん、卵巣がん、
膵がん、結腸直腸がん、および肺がんなどのがんにおいて発現される。
【0012】
ガングリオシドは、細胞シグナル伝達プロセスならびに細胞間相互作用および細胞マト
リックス間相互作用の両方をモジュレートすることを通じて、成長、分化、遊走、および
アポトーシスを含む多くの生理的プロセスに関係づけられている。GM1はガングリオシ
ドであり、フコシル-GM1は、非還元末端において末端ガラクトースがα-1,2-フ
コシル化された独特の構造を有するガングリオシドである。フコシル-GM1は、非常に
少数の正常組織において発現されるが、小細胞肺がん、神経芽細胞腫、肝がんなどの様々
ながんに存在する。したがって、フコシル-GM1は、腫瘍マーカーおよび小細胞肺がん
、神経芽細胞腫、肝がんの抗体免疫療法における標的抗原としての候補と考えられている
。
【0013】
ADAM(ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)タンパク質は、膜に結合
した分子のタンパク質エクトドメインシェディングにおいて優勢な役割を有する。ADA
Mタンパク質は、発生の間の細胞間シグナル伝達および恒常性の重要な調節因子として現
れ、その調節が変更されるがんなどの病理に寄与すると考えられている。ADAM8は、
ADAMファミリーのメンバーであり、膵がん、乳がん、肺がん、および腎がんにおいて
過剰発現される。ADAM9は、EGF、FGFR2iiib、Tie-2、Flk-1
、EphB4、CD40、VCAM-1、およびVE-カドヘリンなどの、腫瘍形成およ
び血管新生において重要な役割を有するいくつもの分子を切断し、放出することが示され
ている。ADAM9は、腎がん、乳がん、肺がん、肝がん、膵がん、黒色腫、子宮頸がん
、前立腺がん、骨肉腫、および脳がんにおいて過剰発現される。
【0014】
SLC44A4は、CTL4としても公知であり、コリン輸送体様タンパク質(CTL
1-5)として公知の溶質キャリアタンパク質のファミリーのメンバーである。SLC4
4A4は、コリン輸送に関与することは示されていないが、アセチルコリン合成および輸
送ならびにビタミンB1のリン酸化された形態であるチアミンピロリン酸の取り込みに関
連付けられている。SLC44A4は、通常、分泌性上皮細胞の頂端表面に発現されるが
、様々な上皮腫瘍、中でも、膵がん、前立腺がん、および胃がんにおいて著しく上方調節
される。
CA19-9は、炭水化物抗原シアリルルイスaの一般用語である。CA19-9は、
膵がん、結腸直腸がん、胆管癌、および肝がんなどの消化器のがんにおいて過剰発現され
る。したがって、CA19-9は、これら上記のがんの診断のために最も頻繁に適用され
る血清腫瘍マーカーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第2016/134371号
【特許文献2】国際公開第2015/095412号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、腫瘍関連抗原(表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択される
)、ならびにナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体に結
合する多重特異性結合タンパク質を提供する。かかるタンパク質は2種以上のNK活性化
受容体と会合することができ、天然リガンドのNKG2Dへの結合を遮断し得る。ある特
定の実施形態では、タンパク質は、ヒトならびにげっ歯動物およびカニクイザルなどの他
の種においてNK細胞を刺激し得る。本発明の様々な態様および実施形態を以下にさらに
詳細に記載する。
【0017】
したがって、本発明の一態様は、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位と、EpC
AM、がん抗原125(CA125)、ナトリウム/リン酸共輸送体2B(NaPi2b
)、ネクチン細胞接着分子4(Nectin4)、フコシル-GM1(モノシアロテトラ
ヘキソシルガングリオシド)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイン
含有タンパク質8(ADAM8)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメ
イン含有タンパク質9(ADAM9)、溶質キャリアファミリー44メンバー4(SLC
44A4)、ならびにシアリル化ルイスa抗原(CA19-9)から選択される抗原に結
合する第2の抗原結合部位と、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメイン、その一
部分、またはCD16に結合する第3の抗原結合部位とを組み込んだタンパク質を提供す
る。抗原結合部位は各々、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメイン(例えば、
抗体のように配列されるか、またはscFvを形成するために一緒に融合される)を組み
込んでいてもよいか、または抗原結合部位の1つもしくは複数は、ラクダ科抗体のような
VHH抗体もしくは軟骨魚類に見出されるもののようなVNAR抗体などの単一ドメイン
抗体であってもよい。
【0018】
本発明は、NKG2D受容体、CD16、ならびに、EpCAM、がん抗原125(C
A125)、ナトリウム/リン酸共輸送体2B(NaPi2b)、ネクチン細胞接着分子
4(Nectin4)、フコシル-GM1(モノシアロテトラヘキソシルガングリオシド
)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質8(ADA
M8)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイン含有タンパク質9(A
DAM9)、溶質キャリアファミリー44メンバー4(SLC44A4)、ならびにシア
リル化ルイスa抗原(CA19-9)から選択される抗原に結合する多重特異性結合タン
パク質を提供する。
【0019】
本開示のいくつかのタンパク質は、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインも
しくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部位に連結したFab断片を
含む。
【0020】
本開示のいくつかのタンパク質は、Fab断片を含み、ここで、Fab断片の重鎖部分
は重鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含み、重鎖可変ドメインはCH1ドメインに
連結している。
【0021】
本開示のいくつかのタンパク質は、抗体Fcドメインに連結したFab断片を含む。
【0022】
一態様では、本発明は、(a)NKG2Dに結合するFab断片を含む第1の抗原結合
部位と、(b)EpCAMに結合する一本鎖可変断片(scFv)を含む第2の抗原結合
部位と、(c)CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分また
はCD16に結合する第3の抗原結合部位とを含むタンパク質を提供する。本発明は、N
KG2Dに結合する第1の抗原結合部位がFab断片であり、腫瘍関連抗原EpCAMに
結合する第2の抗原結合部位がscFvであるタンパク質を提供する。
【0023】
本開示に記載のある特定のタンパク質は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを
含み、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD1
6に結合する第3の抗原結合部位に、Ala-SerまたはGly-Ala-Serを含
むヒンジを介して連結した、EpCAMを標的とするscFvを含む。本開示のいくつか
のタンパク質は、抗体Fcドメインに連結した、EpCAMを標的とするscFvを含む
。本開示のいくつかのタンパク質は、EpCAMを標的とするscFvの重鎖可変ドメイ
ンを含み、この重鎖可変ドメインは、scFvの軽鎖可変ドメインとジスルフィド架橋を
形成している。
【0024】
本開示のいくつかのタンパク質は、重鎖可変ドメインのC44と軽鎖可変ドメインのC
100との間でジスルフィド架橋が形成されている、EpCAMを標的とするscFvを
含む。
【0025】
本開示のいくつかのタンパク質は、抗体Fcドメインに連結した、EpCAMを標的と
するscFvを含み、ここで、scFvの軽鎖可変ドメインは、scFvの重鎖可変ドメ
インのN末端に位置しており、scFvの重鎖可変ドメインに、可動性リンカー(Gly
GlyGlyGlySer)4(G4S)4)(配列番号206)を介して連結しており
、NKG2Dに結合するFab断片は、抗体Fcドメインに連結している。
【0026】
本開示のいくつかのタンパク質は、EpCAMを標的とするscFvを含み、ここで、
重鎖可変ドメインは、scFvの軽鎖可変ドメインのN末端またはC末端に位置している
。
【0027】
本開示のいくつかのタンパク質は、EpCAMを標的とするscFvを含み、ここで、
軽鎖可変ドメインは、scFvの重鎖可変ドメインのN末端に位置している。
【0028】
本発明の一態様では、(a)NKG2Dに結合する一本鎖可変断片(scFv)を含む
第1の抗原結合部位と、(b)EpCAMに結合する第2の抗原結合部位と、(c)CD
16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に結合す
る第3の抗原結合部位とを含むタンパク質が提供される。ある特定の実施形態では、本開
示のタンパク質は、EpCAMに結合するさらなる抗原結合部位をさらに含む。ある特定
の実施形態では、本開示に記載のタンパク質の第2の抗原結合部位は、EpCAMに結合
するFab断片である。ある特定の実施形態では、本開示に記載のタンパク質の第2のお
よびさらなる抗原結合部位は、EpCAMに結合するFab断片である。
【0029】
ある特定の実施形態では、本開示に記載のタンパク質の第2のおよびさらなる抗原結合
部位は、EpCAMに結合するscFvである。ある特定の実施形態では、NKG2Dに
結合するscFvの重鎖可変ドメインは、scFvの軽鎖可変ドメインのN末端またはC
末端に位置している。ある特定の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、NKG2Dに結合
するscFvの重鎖可変ドメインのN末端に位置している。
【0030】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合するscFvは、CD16に結合するのに
十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に結合する第3の抗原結合部
位に連結している。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合するscFvは、CD1
6に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に結合する
第3の抗原結合部位に、Ala-Ser(例えば、EpCAM、CA125、NaPi2
b、Nectin4、フコシル-GM1、ADAM8、ADAM9、SLC44A4、も
しくはCA19-9に結合するさらなる抗原結合部位を含むTriNKETにおいて)ま
たはGly-Ala-Ser(例えば、EpCAM、CA125、NaPi2b、Nec
tin4、フコシル-GM1、ADAM8、ADAM9、SLC44A4、もしくはCA
19-9に結合するさらなる抗原結合部位を含まないTriNKETにおいて)を含むヒ
ンジを介して連結している。ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合するscFvは
、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメインもしくはその一部分またはCD16に
結合する第3の抗原結合部位のC末端に、G4Sを含む可動性リンカーを介して連結して
いる。ある特定の実施形態では、抗体FcドメインのC末端は、NKG2Dに結合するs
cFvの軽鎖可変ドメインのN末端に連結している。
【0031】
ある特定の実施形態では、NKG2Dに結合するscFv内で、scFvの重鎖可変ド
メインとscFvの軽鎖可変ドメインとの間でジスルフィド架橋が形成されている。ある
特定の実施形態では、ジスルフィド架橋は、重鎖可変ドメインのC44と軽鎖可変ドメイ
ンのC100との間で形成されている。
【0032】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号210および配列番号211から選択され
る配列を含む。
【0033】
本開示のいくつかのタンパク質は、抗体Fcドメインに連結したscFvを含み、ここ
で、抗体Fcドメインに連結したscFvは、配列番号208および配列番号209から
選択される配列によって表される。
【0034】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号205および配列番号213の配列を含む
。
【0035】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号210および配列番号211から選択され
るアミノ酸配列と少なくとも90%同一の配列を含む。
【0036】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号210および配列番号211から選択され
るアミノ酸配列と少なくとも95%同一の配列を含む。
【0037】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号210および配列番号211から選択され
るアミノ酸配列と少なくとも99%同一の配列を含む。
【0038】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号203のアミノ酸配列を含む。
【0039】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号203および配列番号204のアミノ酸配
列を含む。
【0040】
本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも90%
同一のアミノ酸配列を含む。本開示のいくつかのタンパク質は、配列番号203のアミノ
酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。本開示のいくつかのタンパク質は
、配列番号203のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0041】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、例えば、配列番号
1と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、9
6%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一のアミノ酸配列を有すること、
および/または配列番号1のCDR1配列(配列番号105)、CDR2配列(配列番号
106)、およびCDR3配列(配列番号107)と同一のアミノ酸配列を組み込むこと
により、配列番号1に関連する重鎖可変ドメインを組み込んでいてもよい。配列番号1に
関連する重鎖可変ドメインを様々な軽鎖可変ドメインと連結して、NKG2D結合部位を
形成することができる。例えば、配列番号1に関連する重鎖可変ドメインを組み込んだ第
1の抗原結合部位は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、
22、24、26、28、30、32、34、36、38、および40に関連する配列の
いずれか1つから選択される軽鎖可変ドメインをさらに組み込んでいてもよい。例えば、
第1の抗原結合部位は、配列番号1と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一
のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび配列番号2、4、6、8、10、12、
14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、お
よび40から選択される配列のいずれか1つと少なくとも90%(例えば、90%、91
%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100
%)同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを組み込んでいる。
【0042】
代替的に、第1の抗原結合部位は、配列番号41に関連する重鎖可変ドメインと、配列
番号42に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1の抗原結
合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号41と少なくとも90%(例えば、90%、91
%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは10
0%)同一であってよく、かつ/または配列番号41のCDR1配列(配列番号43)、
CDR2配列(配列番号44)、およびCDR3配列(配列番号45)と同一のアミノ酸
配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列
番号42と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号42のCDR1配列(配列番号46)、CDR2配列(配列番号47)、お
よびCDR3配列(配列番号48)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0043】
他の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号49に関連する重鎖可変ドメイン
と、配列番号50に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1
の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号49と少なくとも90%(例えば、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もし
くは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号49のCDR1配列(配列番号
51)、CDR2配列(配列番号52)、およびCDR3配列(配列番号53)と同一の
アミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメイン
は、配列番号50と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、
かつ/または配列番号50のCDR1配列(配列番号54)、CDR2配列(配列番号5
5)、およびCDR3配列(配列番号56)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。
【0044】
代替的に、第1の抗原結合部位は、例えば、配列番号57と少なくとも90%(例えば
、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%
、または100%)同一のアミノ酸配列と、配列番号58と少なくとも90%(例えば、
90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、
または100%)同一のアミノ酸配列とを有することにより、それぞれ、配列番号57に
関連する重鎖可変ドメインと、配列番号58に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んで
いてもよい。
【0045】
別の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号59に関連する重鎖可変ドメイン
と、配列番号60に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第1
の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号59と少なくとも90%(例えば、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もし
くは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号59のCDR1配列(配列番号
109)、CDR2配列(配列番号110)、およびCDR3配列(配列番号111)と
同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ド
メインは、配列番号60と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であって
よく、かつ/または配列番号60のCDR1配列(配列番号112)、CDR2配列(配
列番号113)、およびCDR3配列(配列番号114)と同一のアミノ酸配列を組み込
んでいてもよい。
【0046】
一部の実施形態では、NKG2Dに結合する第1の抗原結合部位は、配列番号61に関
連する重鎖可変ドメインと、配列番号62に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでい
てもよい。例えば、第1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号61と少なくと
も90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%
、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号61の
CDR1配列(配列番号63)、CDR2配列(配列番号64)、およびCDR3配列(
配列番号65)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合
部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号62と少なくとも90%(例えば、90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100
%)同一であってよく、かつ/または配列番号62のCDR1配列(配列番号66)、C
DR2配列(配列番号67)、およびCDR3配列(配列番号68)と同一のアミノ酸配
列を組み込んでいてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号69に関連する重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号70に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第
1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号69と少なくとも90%(例えば、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、も
しくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号69のCDR1配列(配列番
号71)、CDR2配列(配列番号72)、およびCDR3配列(配列番号73)と同一
のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメイ
ンは、配列番号70と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく
、かつ/または配列番号70のCDR1配列(配列番号74)、CDR2配列(配列番号
75)、およびCDR3配列(配列番号76)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいても
よい。
【0048】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号77に関連する重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号78に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第
1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号77と少なくとも90%(例えば、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、も
しくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号77のCDR1配列(配列番
号79)、CDR2配列(配列番号80)、およびCDR3配列(配列番号81)と同一
のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメイ
ンは、配列番号78と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく
、かつ/または配列番号78のCDR1配列(配列番号82)、CDR2配列(配列番号
83)、およびCDR3配列(配列番号84)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいても
よい。
【0049】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号85に関連する重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号86に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第
1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号85と少なくとも90%(例えば、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、も
しくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号85のCDR1配列(配列番
号87)、CDR2配列(配列番号88)、およびCDR3配列(配列番号89)と同一
のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメイ
ンは、配列番号86と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく
、かつ/または配列番号86のCDR1配列(配列番号90)、CDR2配列(配列番号
91)、およびCDR3配列(配列番号92)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいても
よい。
【0050】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、配列番号93に関連する重鎖可変ドメイ
ンと、配列番号94に関連する軽鎖可変ドメインとを組み込んでいてもよい。例えば、第
1の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番号93と少なくとも90%(例えば、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、も
しくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号93のCDR1配列(配列番
号95)、CDR2配列(配列番号96)、およびCDR3配列(配列番号97)と同一
のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメイ
ンは、配列番号94と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく
、かつ/または配列番号94のCDR1配列(配列番号98)、CDR2配列(配列番号
99)、およびCDR3配列(配列番号100)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいて
もよい。
【0051】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、例えば配列番号101と少なくとも90
%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列と、配列番号102と少なくとも90
%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列とを有することにより、それぞれ、配
列番号101に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号102に関連する軽鎖可変ドメイ
ンとを組み込んでいてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、第1の抗原結合部位は、例えば配列番号103と少なくとも90
%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列と、配列番号104と少なくとも90
%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98
%、99%、または100%)同一のアミノ酸配列とを有することにより、それぞれ、配
列番号103に関連する重鎖可変ドメインと、配列番号104に関連する軽鎖可変ドメイ
ンとを組み込んでいてもよい。
【0053】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、EpCAMに結合することができ、配列
番号115に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号119に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号115と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号115のCDR1配列(配列番号116)、CDR2配列(配列番号117
)、およびCDR3配列(配列番号118)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号119と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号119のC
DR1配列(配列番号120)、CDR2配列(配列番号121)、およびCDR3配列
(配列番号122)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、EpCAMに結合することができ、配列
番号123に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号127に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号123と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号123のCDR1配列(配列番号124)、CDR2配列(配列番号125
)、およびCDR3配列(配列番号126)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号127と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号127のC
DR1配列(配列番号128)、CDR2配列(配列番号129)、およびCDR3配列
(配列番号130)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0055】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、EpCAMに結合することができ、配列
番号131に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号135に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号131と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号131のCDR1配列(配列番号132)、CDR2配列(配列番号133
)、およびCDR3配列(配列番号134)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号135と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号135のC
DR1配列(配列番号136)、CDR2配列(配列番号137)、およびCDR3配列
(配列番号138)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0056】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、EpCAMに結合することができ、配列
番号139に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号143に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号139と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号139のCDR1配列(配列番号140)、CDR2配列(配列番号141
)、およびCDR3配列(配列番号142)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号143と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号143のC
DR1配列(配列番号144)、CDR2配列(配列番号145)、およびCDR3配列
(配列番号146)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0057】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、CA125に結合することができ、配列
番号155に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号159に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号155と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号155のCDR1配列(配列番号156)、CDR2配列(配列番号157
)、およびCDR3配列(配列番号158)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号159と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号159のC
DR1配列(配列番号160)、CDR2配列(配列番号161)、およびCDR3配列
(配列番号162)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0058】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、CA125に結合することができ、配列
番号163に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号167に関連する軽鎖可変ドメイ
ンを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列番
号163と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/ま
たは配列番号163のCDR1配列(配列番号164)、CDR2配列(配列番号165
)、およびCDR3配列(配列番号166)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよ
い。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号167と少なくとも9
0%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号167のC
DR1配列(配列番号168)、CDR2配列(配列番号169)、およびCDR3配列
(配列番号170)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0059】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、NaPi2bに結合することができ、配
列番号171に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号175に関連する軽鎖可変ドメ
インを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配列
番号171と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、9
5%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/
または配列番号171のCDR1配列(配列番号172)、CDR2配列(配列番号17
3)、およびCDR3配列(配列番号174)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいても
よい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号175と少なくとも
90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、
98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号175の
CDR1配列(配列番号176)、CDR2配列(配列番号177)、およびCDR3配
列(配列番号178)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0060】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、Nectin4に結合することができ、
配列番号179に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号183に関連する軽鎖可変ド
メインを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配
列番号179と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ
/または配列番号179のCDR1配列(配列番号180)、CDR2配列(配列番号1
81)、およびCDR3配列(配列番号182)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいて
もよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号183と少なくと
も90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%
、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号183
のCDR1配列(配列番号184)、CDR2配列(配列番号185)、およびCDR3
配列(配列番号186)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0061】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、フコシル-GM1に結合することができ
、配列番号187に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号191に関連する軽鎖可変
ドメインを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、
配列番号187と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、か
つ/または配列番号187のCDR1配列(配列番号188)、CDR2配列(配列番号
189)、およびCDR3配列(配列番号190)と同一のアミノ酸配列を組み込んでい
てもよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号191と少なく
とも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号19
1のCDR1配列(配列番号192)、CDR2配列(配列番号193)、およびCDR
3配列(配列番号194)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0062】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、SLC44A4に結合することができ、
配列番号195に関連する重鎖可変ドメインおよび配列番号199に関連する軽鎖可変ド
メインを組み込んでいてもよい。例えば、第2の抗原結合部位の重鎖可変ドメインは、配
列番号195と少なくとも90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ
/または配列番号195のCDR1配列(配列番号196)、CDR2配列(配列番号1
97)、およびCDR3配列(配列番号198)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいて
もよい。同様に、第2の抗原結合部位の軽鎖可変ドメインは、配列番号199と少なくと
も90%(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%
、98%、99%、もしくは100%)同一であってよく、かつ/または配列番号199
のCDR1配列(配列番号200)、CDR2配列(配列番号201)、およびCDR3
配列(配列番号202)と同一のアミノ酸配列を組み込んでいてもよい。
【0063】
一部の実施形態では、第2の抗原結合部位は、第1の抗原結合部位に存在する軽鎖可変
ドメインのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを組み込んでい
る。
【0064】
一部の実施形態では、タンパク質は、CD16に結合するのに十分な抗体Fcドメイン
の一部を組み込んでおり、ここで、抗体Fcドメインは、ヒンジおよびCH2ドメイン、
ならびに/またはヒトIgG抗体のアミノ酸配列234~332と少なくとも90%同一
のアミノ酸配列を含む。
【0065】
本開示のいくつかのタンパク質は、NKG2Dに10nMのKDまたはそれよりも弱い
親和性で結合する。
【0066】
これらのタンパク質の1つを含有する製剤;これらのタンパク質を発現する1つまたは
複数の核酸を含有する細胞、およびこれらのタンパク質を使用して腫瘍細胞死を増強する
方法も提供される。
【0067】
本発明の別の態様は、患者におけるがんを処置する方法を提供する。方法は、治療有効
量の本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質を、それを必要とする患者に投与するこ
とを含む。多重特異性結合タンパク質を使用して処置される例示的ながんとしては、例え
ば、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、肝
がん、食道がん、および肺がんが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】
図1は、ヘテロ二量体の多重特異性抗体(三重特異性結合タンパク質(TriNKET))の図である。各アームは、NKG2D結合ドメイン、または腫瘍関連抗原結合ドメインのいずれかを表し得る。一部の実施形態では、NKG2D結合ドメインと腫瘍関連抗原結合ドメインは共通の軽鎖を共有し得る。
【0069】
【
図2】
図2は、ヘテロ二量体の多重特異性抗体の図である。NKG2D結合ドメインまたは腫瘍関連抗原結合ドメインのいずれかは、scFvフォーマットを取り得る(右アーム)。
【0070】
【
図3】
図3は、ELISAアッセイにおけるヒト組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0071】
【
図4】
図4は、ELISAアッセイにおけるカニクイザル組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0072】
【
図5】
図5は、ELISAアッセイにおけるマウス組換えNKG2Dに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合親和性を示す線グラフである。
【0073】
【
図6】
図6は、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)倍率を示すフローサイトメトリーによる、ヒトNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示す棒グラフである(FOB)。
【0074】
【
図7】
図7は、バックグラウンドに対する平均蛍光強度(MFI)倍率を示すフローサイトメトリーによる、マウスNKG2Dを発現するEL4細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の結合を示す棒グラフである(FOB)。
【0075】
【
図8】
図8は、天然リガンドのULBP-6と競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0076】
【
図9】
図9は、天然リガンドのMICAと競合することによる、組換えヒトNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0077】
【
図10】
図10は、天然リガンドのRae-1デルタと競合することによる、組換えマウスNKG2D-Fcに対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の特異的結合親和性を示す線グラフである。
【0078】
【
図11】
図11は、ヒトNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-アルファ陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNKG2Dの活性化を示す棒グラフである。
【0079】
【
図12】
図12は、マウスNKG2D-CD3ゼータ融合タンパク質を発現するTNF-アルファ陽性細胞のパーセンテージを定量することにより、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNKG2Dの活性化を示す棒グラフである。
【0080】
【
図13】
図13は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0081】
【
図14】
図14は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるヒトNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0082】
【
図15】
図15は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0083】
【
図16】
図16は、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)によるマウスNK細胞の活性化を示す棒グラフである。
【0084】
【
図17】
図17は、腫瘍細胞に対するNKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の細胞傷害効果を示す棒グラフである。
【0085】
【
図18】
図18は、示差走査型蛍光定量法によって測定された、NKG2D結合ドメイン(クローンとして列記されている)の融解温度を示す棒グラフである。
【0086】
【
図19】
図19A~19Cは、CD16結合およびNKG2D結合を使用したNK細胞の相乗的活性化の棒グラフである。
図19Aは、CD107aのレベルを示し、
図19Bは、IFN-γのレベルを示し、
図19Cは、CD107aおよびIFN-γのレベルを示す。グラフは、平均(n=2)±SDを示している。データは、5名の異なる健康なドナーを使用した、5つの独立した実験を代表するものである。
【0087】
【
図20】
図20は、IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体であるTriomab形態における三重特異性結合タンパク質(TriNKET)の図である。このキメラは、2つの親抗体に由来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。Triomab形態は、ラット抗体の1/2およびマウス抗体の1/2を含有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0088】
【
図21】
図21は、ノブイントゥホール(KIH:knobs-into-hole)技術を用いるKiH共通の軽鎖形態におけるTriNKETの図である。KiHは、標的1および2に結合する2つのFab断片、およびヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。KiHフォーマットにおけるTriNKETは、2つの異なる重鎖と、両方の重鎖と対合する共通の軽鎖とを含有する、標的1および標的2に結合する2つのFab断片を有するヘテロ二量体構築物であり得る。
【0089】
【
図22】
図22は、自然起源の可動性リンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるTriNKETの図である。DVD-Ig(商標)とは、抗原2を標的とする可変ドメインが、抗原1を標的とするFab断片の可変ドメインのN末端に融合しているホモ二量体構築物である。DVD-Ig(商標)形態は通常のFcを含有する。
【0090】
【
図23】
図23は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つのFab断片を含有するヘテロ二量体構築物である、直交性Fab界面(オルト-Fab)形態におけるTriNKETの図である。軽鎖(LC)-重鎖(HC)対合は、直交界面によって確実になっている。ヘテロ二量体化は、Fcにおける変異によって確実になっている。
【0091】
【
図24】
図24は、2-in-1 IgフォーマットにおけるTriNKETの図である。
【0092】
【
図25】
図25は、Fcに融合した標的1および標的2に結合する2つの異なるFab断片を含有するヘテロ二量体構築物である、ES形態におけるTriNKETの図である。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリング変異によって確実になっている。
【0093】
【
図26】
図26は、Fab断片アーム交換形態におけるTriNKET、すなわち、重鎖および結合した軽鎖(半分子)を別の分子の重鎖-軽鎖対とスワップすることによりFabアームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体の図である。Fabアーム交換形態(cFae)は、標的1および2に結合する2つのFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である。
【0094】
【
図27】
図27は、標的1および2に結合する2つのFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体である、SEED Body形態におけるTriNKETの図である。
【0095】
【
図28】
図28は、2つの異なるHCのヘテロ二量体化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるTriNKETの図である。LuZ-Y形態は、Fcに融合した標的1および2に結合する2つの異なるscFabを含有するヘテロ二量体である。ヘテロ二量体化は、FcのC末端に融合したロイシンジッパーモチーフによって確実になっている。
【0096】
【
図29】
図29は、Cov-X-Body形態におけるTriNKETの図である。
【0097】
【
図30-1】
図30Aおよび30Bは、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるTriNKETの図である。抗原1を標的とする1つのFab断片はカッパLCを含有し、抗原2を標的とする第2のFab断片はラムダLCを含有する。
図30Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、
図30Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【
図30-2】
図30Aおよび30Bは、ヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcに融合した2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、κλ-Body形態におけるTriNKETの図である。抗原1を標的とする1つのFab断片はカッパLCを含有し、抗原2を標的とする第2のFab断片はラムダLCを含有する。
図30Aは、κλ-Bodyの一形態の例示的な図であり、
図30Bは、別のκλ-Bodyの例示的な図である。
【0098】
【
図31】
図31は、どちらもFcドメインに融合した、標的1に結合するFab断片と、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体構築物である。ヘテロ二量体化は、Fcドメインにおける変異によって確実になっている。
【0099】
【
図32】
図32は、抗原1および2に結合する2つの異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを含有するヘテロ二量体構築物である、DuetMabである。Fab断片1および2は、軽鎖および重鎖の正確な対合を確実にする特異なS-S架橋を含有する。
【0100】
【
図33】
図33は、標的1および2に結合する2つの異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化変異によって安定化されたFcを有するヘテロ二量体構築物である、CrossmAbである。CLドメインおよびCH1ドメインと、VHドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH1は、VLと一列をなして融合しており、CLは、VHと一列をなして融合している。
【0101】
【
図34】
図34は、抗原2に結合するFab断片が、抗原1に結合するFab断片のHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit-Igである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【0102】
【
図35】
図35は、腫瘍関連抗原に結合するscFv、NKG2Dを標的とするFab、およびCD16に結合するヘテロ二量体化した抗体定常領域/ドメイン(「CDドメイン」)を含有する三重特異性抗体(TriNKET)(scFv-Fabフォーマット)を例示する。この抗体フォーマットは、本明細書ではF3’-TriNKETと称される。
【0103】
【
図36】
図36は、NKG2Dに結合するscFv第1の抗原結合部位、腫瘍関連抗原(例えば、EpCAM)に結合する第2の抗原結合部位、腫瘍関連抗原(例えば、EpCAM)に結合するさらなる腫瘍関連抗原結合部位、およびCD16に結合するヘテロ二量体化した抗体定常領域を含む、例示的な三重特異性抗体(TriNKET)を例示する。これらの抗体フォーマットは、本明細書ではF4-TriNKETと称される。
【0104】
【
図37】
図37は、TriNKETおよびmAbが、H747ヒト結腸直腸がん細胞上に発現されるEpCAMに結合することを示す線グラフである。
【0105】
【
図38】
図38は、TriNKETおよびmAbが、HCC827ヒト肺がん細胞上に発現されるEpCAMに結合することを示す線グラフである。
【0106】
【
図39】
図39は、TriNKETおよびmAbが、HCT116ヒト結腸直腸がん細胞上に発現されるEPCAMに結合することを示す線グラフである。
【0107】
【
図40】
図40Aおよび
図40Bは、2名の異なるドナー由来の休止ヒトNK細胞を用いた、H747細胞のTriNKET媒介殺滅を示す線グラフである。エフェクター対標的比は10:1であった。
【0108】
【
図41】
図41Aおよび
図41Bは、2名の異なるドナー由来の休止ヒトNK細胞を用いた、HCC827細胞のTriNKET媒介殺滅を示す線グラフである。エフェクター対標的比は10:1であった。
【0109】
【
図42】
図42Aおよび
図42Bは、2名の異なるドナー由来の休止ヒトNK細胞を用いた、MCF7細胞のTriNKET媒介殺滅を示す線グラフである。エフェクター対標的比は10:1であった。
【0110】
【
図43】
図43Aおよび
図43Bは、2名の異なるドナー由来の休止ヒトNK細胞を用いた、HCT116細胞のTriNKET媒介殺滅を示す線グラフである。エフェクター対標的比は10:1であった。
【発明を実施するための形態】
【0111】
詳細な説明
本発明は、がん細胞におけるEPCAMならびにナチュラルキラー細胞におけるNKG
2D受容体およびCD16受容体に結合してナチュラルキラー細胞を活性化させる多重特
異性結合タンパク質、かかる多重特異性結合タンパク質を含む医薬組成物、ならびに、が
んの処置などのためにかかる多重特異性タンパク質および医薬組成物を使用する治療方法
を提供する。本発明の様々な態様を複数のセクションに分けて以下に記述する。しかしな
がら、1つの特定のセクションに記載される本発明の態様は、いずれかの特定のセクショ
ンに限定されるものではない。
【0112】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語および句を以下に定義する。
【0113】
本明細書で使用される場合、「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は
、「1つまたは複数」を意味し、文脈が不適切でない限り、複数を含む。
【0114】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原結合に関与する免疫
グロブリン分子の一部分を指す。ヒト抗体において、抗原結合部位は、重(「H」)鎖お
よび軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重
鎖および軽鎖のV領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「フレームワーク領域」
または「FR」として公知である、より保存された隣接するストレッチの間に介在してい
る「超可変領域」と称される。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンにお
ける超可変領域の間におよびそれに隣接して天然に見出されるアミノ酸配列を指す。ヒト
抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域および重鎖の3つの超可変領域は、抗原結合
表面を形成するように三次元空間において互いに対して配置される。抗原結合表面は、結
合した抗原の三次元表面と相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3つの超可変領域は、
「相補性決定領域」または「CDR」と称される。ラクダおよび軟骨魚類などのある特定
の動物において、抗原結合部位は、「単一ドメイン抗体」を提供する単一抗体鎖によって
形成される。抗原結合部位は、インタクトな抗体中、抗原結合表面を保持する抗体の抗原
結合断片中、またはscFvなどの組換えポリペプチド中に存在し、ペプチドリンカーを
使用して単一ポリペプチドにおいて重鎖可変ドメインを軽鎖可変ドメインに連結すること
ができる。
【0115】
本明細書で使用される場合、「腫瘍関連抗原」という用語は、がんに関連するタンパク
質、糖タンパク質、ガングリオシド、炭水化物、脂質を含むがこれらに限定されない、任
意の抗原を意味する。このような抗原は、悪性細胞において、または腫瘍関連血管、細胞
外マトリックス、間葉系間質、もしくは免疫浸潤物におけるような腫瘍微小環境中で発現
され得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「対象」および「患者」という用語は、本明細書に記載の
方法および組成物によって処置される生物を指す。かかる生物には、好ましくは、限定さ
れないが、哺乳動物(例えば、ネズミ、サル、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)が含
まれ、より好ましくはヒトが含まれる。
【0117】
本明細書中で使用される場合、「有効量」という用語は、有益なまたは所望の結果をも
たらすのに十分な化合物(例えば、本発明の化合物)の量を指す。有効量は、1回または
複数回の投与、適用または投薬量で投与されてもよく、特定の製剤または投与経路に限定
されることを意図しない。本明細書中で使用される場合、「処置する」という用語は、何
らかの効果、例えば、状態、疾患、障害などの好転をもたらす、減少、低減、モジュレー
ト、改善もしくは除去、またはそれらの症状の改善を含む。
【0118】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」という用語は、組成物を、in vivo
またはex vivoでの診断的使用または治療的使用に特に適切にする、活性剤と、不
活性または活性な担体との組合せを指す。
【0119】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生
理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水または水/油エマルションなど)、お
よび種々の種類の湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを指す。組成物はまた、安定
剤および保存剤を含んでもよい。担体、安定剤およびアジュバントの例に関しては、例え
ば、Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第15版、Mack Publ.Co.、Eas
ton、PA[1975年]を参照されたい。
【0120】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、対象に投与する
と、本発明の化合物またはその活性代謝産物もしくは残留物を提供することができる、本
発明の化合物の任意の薬学的に許容される塩(例えば、酸または塩基)を指す。当業者に
公知であるように、本発明の化合物の「塩」は、無機または有機の酸および塩基から誘導
され得る。例示的な酸には、限定されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸
、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエ
ン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、
ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが含
まれる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体では薬学的に許容されないが、本発明の化
合物およびそれらの薬学的に許容される酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製
に利用され得る。
【0121】
例示的な塩基には、限定されないが、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)水酸化物、
アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)水酸化物、アンモニアおよび式NW4
+(式
中、WはC1~4アルキルである)の化合物などが含まれる。
【0122】
例示的な塩には、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギ
ン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノ
ウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ド
デシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、フルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸
、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、
2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-
ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫
酸塩、フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸
塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、ウンデカン酸塩などが含まれる。塩の他の
例には、Na+、NH4
+およびNW4
+(式中、WはC1~4アルキル基である)など
の適切なカチオンと配合された本発明の化合物のアニオンが含まれる。
【0123】
治療的使用のために、本発明の化合物の塩は、薬学的に許容されると意図される。しか
しながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩も、例えば、薬学的に許容される化合
物の調製または精製において使用することができる。
【0124】
組成物が特定の成分を有する、含む(including)、もしくは含む(comp
rising)と記載されているか、またはプロセスおよび方法が特定のステップを有す
る、含む(including)、もしくは含む(comprising)と記載されて
いる説明全体にわたって、さらに、列挙された成分から本質的になる、またはそれからな
る本発明の組成物が存在すること、ならびに列挙されたプロセスステップから本質的にな
る、またはそれからなる本発明によるプロセスおよび方法が存在することが意図される。
【0125】
一般的事項として、パーセンテージを特定する組成物は、特に明記しない限り、重量に
よる。さらに、変数が定義を伴わない場合、変数の以前の定義が優先する。
I.タンパク質
【0126】
本発明は、ナチュラルキラー細胞におけるNKG2D受容体およびCD16受容体、な
らびに表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原に結合す
る多重特異性結合タンパク質を提供する。多重特異性結合タンパク質は、本明細書に記載
の医薬組成物および治療方法において有用である。ナチュラルキラー細胞におけるNKG
2D受容体およびCD16受容体に多重特異性結合タンパク質が結合すると、表11に提
示されている抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞の破壊
に向けてのナチュラルキラー細胞の活性が増強される。腫瘍関連抗原を発現する細胞に多
重特異性結合タンパク質が結合すると、がん細胞をナチュラルキラー細胞に近接させるた
め、ナチュラルキラー細胞によるがん細胞の直接的および間接的な破壊が容易になる。い
くつかの例示的な多重特異性結合タンパク質のさらなる記載を以下に提供する。
【0127】
多重特異性結合タンパク質の第1の構成成分は、NK細胞、γδT細胞およびCD8+
αβT細胞を含み得るがこれらに限定されない、NKG2D受容体を発現する細胞に結合
する。多重特異性結合タンパク質は、NKG2Dに結合すると、ULBP6(UL16結
合タンパク質6)およびMICA(主要組織適合性遺伝子複合体クラスI鎖関連A)など
の天然リガンドがNKG2Dに結合することおよびNKG2D受容体を活性化することを
遮断し得る。
【0128】
多重特異性結合タンパク質の第2の構成成分は、表11に提示されている抗原のいずれ
か1つから選択される腫瘍関連抗原に結合する。例えば急性骨髄性白血病およびT細胞白
血病などの白血病において見出すことができる腫瘍関連抗原を発現する細胞。
【0129】
多重特異性結合タンパク質の第3の構成要素は、ナチュラルキラー細胞、マクロファー
ジ、好中球、好酸球、マスト細胞、および濾胞性樹状細胞を含む白血球の表面にあるFc
受容体であるCD16を発現する細胞に結合する。
【0130】
本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質は、様々なフォーマットをとることができ
る。例えば、1つのフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第1の免疫グロブリン
軽鎖、第2の免疫グロブリン重鎖、および第2の免疫グロブリン軽鎖を含む、ヘテロ二量
体の多重特異性抗体(
図1)である。第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のFc(ヒンジ
-CH2-CH3)ドメインと、第1の重鎖可変ドメインと、必要に応じて第1のCH1
重鎖ドメインとを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の軽鎖可変ドメインおよび第
1の軽鎖定常ドメインを含む。第1の免疫グロブリン軽鎖は、第1の免疫グロブリン重鎖
と一緒に、NKG2Dに結合する抗原結合部位を形成する。第2の免疫グロブリン重鎖は
、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、第2の重鎖可変ドメインと、必要
に応じて第2のCH1重鎖ドメインとを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2の軽鎖
可変ドメインおよび第2の軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン軽鎖は、第2
の免疫グロブリン重鎖と一緒に、表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択さ
れる腫瘍関連抗原に結合する抗原結合部位を形成する。第1のFcドメインおよび第2の
Fcドメインは一緒にCD16に結合することができる(
図1)。一部の実施形態では、
第1の免疫グロブリン軽鎖は、第2の免疫グロブリン軽鎖と同一である。
【0131】
別の例示的なフォーマットは、第1の免疫グロブリン重鎖、第2の免疫グロブリン重鎖
、および免疫グロブリン軽鎖を含む、ヘテロ二量体の多重特異性抗体(
図2)に関する。
第1の免疫グロブリン重鎖は、対合し、NKG2Dに結合する、または表11に提示され
ている抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原に結合する重鎖可変ドメインおよ
び軽鎖可変ドメインから構成される一本鎖可変断片(scFv)に、リンカーまたは抗体
ヒンジのいずれかを介して融合した第1のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインを含
む。第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のFc(ヒンジ-CH2-CH3)ドメインと、
第2の重鎖可変ドメインと、必要に応じてCH1重鎖ドメインとを含む。免疫グロブリン
軽鎖は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを含む。第2の免疫グロブリン重鎖は
、免疫グロブリン軽鎖と対合し、NKG2Dに結合する、または表11に提示されている
抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原に結合する。第1のFcドメインおよび
第2のFcドメインは、一緒にCD16に結合することができる(
図2)。
【0132】
1つまたは複数のさらなる結合モチーフが、必要に応じてリンカー配列を介して、定常
領域CH3ドメインのC末端に融合され得る。ある特定の実施形態では、抗原結合モチー
フは、四価分子または三価分子を形成する一本鎖またはジスルフィド安定化可変領域(s
cFv)である。
【0133】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、IgG様形状を維持する三機能性
の二重特異性抗体である、Triomab形態である。このキメラは、2つの親抗体に由
来する2つの半抗体からなり、各半抗体が1本の軽鎖および1本の重鎖を有する。
【0134】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ノブ・イントゥ・ホール(KIH
)技術を用いるKiH共通軽鎖(LC)形態である。KIHは、ヘテロ二量体化を促進す
るために、CH3ドメインを工学操作して各重鎖に「ノブ」または「ホール」のいずれか
を作出することを伴う。「ノブ・イントゥ・ホール(KiH)」Fc技術の背後にある概
念は、小さな残基を嵩高の残基で置換することにより、1つのCH3ドメイン(CH3A
)に「ノブ」(例えば、EU付番でT366WCH3A)を導入することであった。この
「ノブ」に適応するように、他方のCH3ドメイン(CH3B)において、ノブに最も近
い隣接残基をより小さな残基に置き換えること(すなわち、T366S/L368A/Y
407VCH3B)により、相補的な「ホール」表面が作出された。「ホール」突然変異
は、構造情報に基づくファージライブラリスクリーニング(Atwell S、Ridgway JB、We
lls JA、Carter P.、Stable heterodimers from remodeling the domain interf
ace of a homodimer using a phage display library、J Mol Biol(1997
年)270巻(1号):26~35頁)によって最適化された。KiH Fc変異体のX
線結晶構造(Elliott JM、Ultsch M、Lee J、Tong R、Takeda K、Spiess Cら、Ant
iparallel conformation of knob and hole aglycosylated half-antibody homo
dimers is mediated by a CH2-CH3 hydrophobic interaction. J Mol Biol
(2014年)426巻(9号):1947~57頁、Mimoto F、Kadono S、Katada
H、Igawa T、Kamikawa T、Hattori K. Crystal structure of a novel asymmet
rically engineered Fc variant with improved affinity for FcγRs. Mol
Immunol(2014年)58巻(1号):132~8頁)は、CH3ドメイン間のコア
界面では、立体的相補性によって推進される疎水性相互作用がヘテロ二量体化に熱力学的
に有利に働くが、ノブ-ノブおよびホール-ホールの界面は、それぞれ立体障害および好
ましい相互作用の妨害が原因でホモ二量体化に有利に働かないことを示した。
【0135】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、自然起源の可動性リンカーを介し
て2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をも
たらす、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig(商標))形態におけるもので
ある。
【0136】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、直交性Fab界面(オルト-Fa
b)形態におけるものである。オルト-Fab IgGアプローチ(Lewis SM、Wu X、
Pustilnik A、Sereno A、Huang F、Rick HLら、Generation of bispecific IgG
antibodies by structure-based design of an orthogonal Fab interface. Na
t. Biotechnol.(2014年)32巻(2号):191~8頁)では、構造に基づく領
域デザインにより、一方のFab断片におけるLCおよびHCVH-CH1の界面にのみ
相補的突然変異が導入され、他方のFabが変化することはない。
【0137】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2-in-1 Igフォーマット
におけるものである。一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合し
た標的1および標的2に結合する2つの異なるFab断片を含有するヘテロ二量体構築物
である、ES形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける静電的ステアリ
ング変異によって確実になっている。
【0138】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化変異によって安定
化されたFcに融合した2つの異なるFab断片を有するヘテロ二量体構築物である、κ
λ-Body形態におけるものである。抗原1を標的とするFab断片1はカッパLCを
含有し、抗原2を標的とする第2のFab断片はラムダLCを含有する。
図30Aは、κ
λ-Bodyの一形態の例示的な図であり、
図30Bは、別のκλ-Bodyの例示的な
図である。
【0139】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fabアーム交換形態(重鎖およ
び結合した軽鎖(半分子)を別の分子の重鎖-軽鎖対とスワップすることによりFabア
ームを交換した結果、二重特異性抗体となった抗体)である。
【0140】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、SEED Body形態における
ものである。SEED(strand-exchange engineered do
main)プラットフォームは、天然抗体の治療用途を広げる可能性がある非対称かつ二
重特異性抗体様の分子を生成するためにデザインされた。このタンパク質工学操作プラッ
トフォームは、保存されたCH3ドメインにおける免疫グロブリンの構造的に関連した配
列の交換に基づく。SEEDデザインは、AGおよびGA SEED CH3ドメインの
ホモ二量体化を回避しつつ、AG/GAヘテロ二量体の効果的な生成を可能にする(Muda
M.ら、Protein Eng. Des. Sel.(2011年、24巻(5号):447~54頁)
)。
【0141】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、2つの異なるHCのヘテロ二量体
化を誘導するためにロイシンジッパーを使用する、LuZ-Y形態におけるものである(
Wranik, BJ.ら、J. Biol. Chem.(2012年)、287巻:43331~9頁)。
【0142】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Cov-X-Body形態におけ
るものである。二重特異性CovX-Bodyでは、分枝状のアゼチジノンリンカーを使
用して2つの異なるペプチドをひとつに結合させ、温和な条件下にてスキャフォールド抗
体に部位特異的様式で融合させる。機能的活性に関与するのはファルマコフォアだが、抗
体スキャフォールドは長い半減期およびIg様の分布をもたらす。最適化された、または
独特の二重特異性抗体を生成するために、ファルマコフォアは化学的に最適化するか、ま
たは他のファルマコフォアに置き換えることができる(Doppalapudi VRら、PNAS(20
10年)、107巻(52号);22611~22616頁)。
【0143】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、Fcに融合した、標的1に結合す
るFab断片と、標的2に結合するscFabとを含む、Oasc-Fabヘテロ二量体
形態におけるものである。ヘテロ二量体化は、Fcにおける突然変異によって確実になっ
ている。
【0144】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原1および2に結合する2つの
異なるFab断片、ならびにヘテロ二量体化突然変異によって安定化されたFcを含有す
るヘテロ二量体構築物である、DuetMab形態におけるものである。Fab断片1お
よび2は、LCおよびHCの正確な対合を確実にする特異なS-S架橋を含有する。
【0145】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、ヘテロ二量体化によって安定化さ
れたFcに融合した、標的1および2に結合する2つの異なるFab断片を有するヘテロ
二量体構築物である、CrossmAb形態におけるものである。CLドメインおよびC
H1ドメインと、VHドメインおよびVLドメインとが切り換わっており、例えば、CH
1は、VLとインラインで融合しており、CLは、VHとインラインで融合している。
【0146】
一部の実施形態では、多重特異性結合タンパク質は、抗原2に結合するFabが、抗原
1に結合するFab断片のHCのN末端に融合しているホモ二量体構築物である、Fit
-Ig形態におけるものである。この構築物は、野生型Fcを含有する。
【0147】
表1は、組み合わさってNKG2Dに結合することができる重鎖可変ドメインおよび軽
鎖可変ドメインのペプチド配列を列記する。NKG2D結合ドメインは、NKG2Dに対
するそれらの結合親和性が変動し得るにもかかわらず、すべてがヒトNKG2DおよびN
K細胞を活性化する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0148】
代替的に、US9,273,136において説明されているように、配列番号101に
よって表される重鎖可変ドメインを配列番号102によって表される軽鎖可変ドメインと
対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化1】
【0149】
代替的に、US7,879,985において説明されているように、配列番号103に
よって表される重鎖可変ドメインを配列番号104によって表される軽鎖可変ドメインと
対合させて、NKG2Dに結合することができる抗原結合部位を形成してもよい。
【化2】
【0150】
表2は、組み合わさってEpCAMに結合することができる重鎖可変ドメインおよび軽
鎖可変ドメインのペプチド配列を列記する。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0151】
代替的に、EpCAMに結合することができる新規の抗原結合部位は、配列番号147
によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定
することができる。
【化3】
【0152】
腫瘍関連抗原CA125に結合することができる抗原結合部位は、配列番号148によ
って定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定する
ことができる。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0153】
腫瘍関連抗原NaPi2bに結合することができる抗原結合部位は、配列番号149に
よって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定す
ることができる。
【化10】
【0154】
腫瘍関連抗原Nectin4に結合することができる抗原結合部位は、配列番号150
によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定
することができる。
【化11】
【0155】
腫瘍関連抗原フコシル-GM1に結合することができる抗原結合部位は、モノシアロテ
トラヘキソシルガングリオシドへの結合についてスクリーニングすることによって同定す
ることができる。
【0156】
腫瘍関連抗原ADAM8に結合することができる抗原結合部位は、配列番号151によ
って定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定する
ことができる。
【化12】
【0157】
腫瘍関連抗原ADAM9に結合することができる抗原結合部位は、配列番号152によ
って定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定する
ことができる。
【化13】
【化14】
【0158】
腫瘍関連抗原SLC44A4に結合することができる抗原結合部位は、配列番号153
によって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定
することができる。
【化15】
【0159】
腫瘍関連抗原CA19-9に結合することができる抗原結合部位は、配列番号154に
よって定義されるアミノ酸配列への結合についてスクリーニングすることによって同定す
ることができる。
【化16】
【0160】
代替的に、表3は、組み合わさって、CA125(アバゴボマブ、ソフィツズマブ)、
NaPi2b(リファスツズマブ)、Nectin4(エンホルツマブ)、フコシル-G
M1(米国特許出願公開第20130142789号に記載、具体的な配列が参照により
本明細書に組み込まれる)、またはSLC44A4(国際出願公開第WO2010111
018号に記載、具体的な配列が参照により本明細書に組み込まれる)に結合することが
できる重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのペプチド配列を列記する。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0161】
2本のポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を可能にする変異も含む抗体定常領域に連結し
たscFvの例を以下に列記する。抗NKG2D抗体由来の重鎖可変ドメイン(VH)お
よび軽鎖可変ドメイン(VL)を含有するscFvを本開示の多重特異性タンパク質の調
製に使用する。各配列は、ヘテロ二量体化変異を含有するVL-(G4S)4-VH-ヒ
ンジ(ASまたはGAS)-Fcを表す(下線)。VLおよびVHは、100VL-44
VHS-S架橋(下線)を含有し、腫瘍を標的とするまたはNKG2Dに結合する任意の
抗体に由来するものであってよい。柔軟性と最適な幾何学的形状との間のバランスをとる
ためにAla-Ser(AS、太字および下線)をエルボーヒンジ領域配列に含める。あ
る特定の実施形態では、さらなるGlyをAS配列のN末端に付加し、それにより、Gl
y-Ala-Serの配列(GAS、太字および下線)を有するヒンジを生成することが
できる。ある特定の実施形態では、さらなる配列Thr-Lys-GlyをヒンジのAS
配列に付加することができる。以下の段落に列記されている配列において(G4S)4リ
ンカーに下線が引かれている。
【0162】
本開示のTriNKETは、配列番号203の配列を含む第1のポリペプチド(F4-
EpCAMFc-AJchainB-NKG2D結合scFv)と、配列番号204の配
列を含む第2のポリペプチド(抗EpCAM HC-ヒンジ-Fc)とを含むNKG2D
結合F4-TriNKET-EpCAMである。NKG2D結合F4-TriNKET-
EpCAMは、それぞれが配列番号214の配列を含む抗EpCAM V
L定常ドメイン
を含む2本のEpCAMを標的とする軽鎖も含む。例えば、
図36の構造において、Fa
b断片がEpCAMを標的とする場合、NKG2D結合F4-TriNKET-EpCA
Mは、TriNKETの1つのアームを形成する配列番号203および配列番号214、
ならびにTriNKETの第2のアームを形成する配列番号204および配列番号214
を含む。
【0163】
アームの各々は、EpCAM結合Fab断片を含み、EpCAM結合Fab断片は、重
鎖可変ドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖部分であって、重鎖可変ドメインとCH
1ドメインが連結している重鎖部分と、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメイン(配列
番号214)を含む軽鎖部分とを含む。第1のアームにおいて(例えば、F4-EpCA
MFc-AJchainB-NKG2D結合scFvにおいて)、CH1ドメインはFc
ドメインに連結し、FcドメインはNKG2Dを標的とするscFvに連結して、配列番
号203の配列を含むポリペプチドが形成される。第2のアームにおいて、CH1ドメイ
ンはFcドメインに連結して、配列番号204の配列を含むポリペプチドが形成される。
【0164】
例えば、F4-EpCAMFc-AJchainB-NKG2D結合scFv(配列番
号203)は、EpCAMを標的とする重鎖可変ドメイン(V
H)(配列番号139)と
、Fcドメイン(ヒンジ-CH2-CH3)に連結したCH1ドメインとを含み、これは
、FcのC末端においてNKG2Dに結合する一本鎖可変断片(scFv)に連結してい
る。配列番号203内のFcドメインは、S354C置換を含み、これは別のFcドメイ
ンにおけるY349C置換とジスルフィド結合を形成する(配列番号204、下記)。配
列番号203内のFcドメインは、Q347R置換、D399V置換、およびF405T
置換を含む。NKG2Dに結合するscFvは、配列番号205のアミノ酸配列によって
表され、(G4S)
4リンカー、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号
206)を介して重鎖可変ドメイン(V
H)に連結した軽鎖可変ドメイン(V
L)を含む
。配列番号205内に含まれるV
LおよびV
Hは、V
L-(G4S)
4-V
Hとして連結
しており、V
LおよびV
Hは、100V
L-44V
HS-S架橋を含有する(それぞれG
100C置換およびG44C置換に起因する)(システイン残基は太字のイタリック体で
あり、下線が引かれている)。配列番号203に表される通り、FcドメインのC末端は
scFvのN末端(配列番号205)に、短いSGSGGGGSリンカー(配列番号20
7)を介して連結している。
NKG2D結合scFv
【化17】
F4-EpCAMFc-AJchainB-NKG2D結合scFv
【化18】
【0165】
抗EpCAM HC-ヒンジ-Fc(配列番号204)は、EpCAMを標的とする重
鎖可変ドメインおよびFcドメイン(ヒンジ-CH2-CH3)に連結したCH1ドメイ
ンを含む。配列番号204内のFcドメインは、Y349C置換を含み、これは、NKG
2Dに結合するscFvに連結したFcのCH3ドメイン(配列番号203)におけるS
354C置換とジスルフィド結合を形成する。配列番号204において、Fcドメインは
、K360E置換およびK409W置換も含む。
抗EpCAM V
H-CH1-Fc
【化19】
【0166】
抗EpCAM V
L定常ドメイン(配列番号214)は、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖
定常ドメインを含む、EpCAMを標的とする軽鎖部分を含む。
抗EpCAM V
L定常ドメイン
【化20】
【0167】
例示的な実施形態では、NKG2D結合scFv断片に連結したFcドメインは、K3
60EおよびK409Wの変異を含み、EPCAM Fab断片に連結したFcドメイン
は、ヘテロ二量体を形成するための適合した変異Q347R、D399V、およびF40
5Tを含む。
【0168】
例示的な実施形態では、NKG2D結合scFvに連結したFcドメインは、CH3ド
メインにおけるY349C置換を含み、これは、NKG2D結合scFvに連結していな
いFcドメインにおけるS354C置換とジスルフィド結合を形成する。
【0169】
本開示の別のTriNKETは、NKG2D結合F3’-TriNKET-EPCAM
であり、その配列を以下に記載する(CDR(Kabat付番)に下線が引かれている)
。
【0170】
本開示の一部のTriNKETは、A49-F3’-TriNKET-EPCAMの形
態であり、その配列を以下に提供する(CDR(Kabat付番)に下線が引かれている
)。
【0171】
A49-F3’-TriNKET-EPCAMは、Gly-Ala-Serを含むヒン
ジを介してFcドメインに連結した、EPCAMに結合する一本鎖可変断片(scFv)
(配列番号208および209は、かかるEPCAM結合scFvポリペプチドの例示的
な配列である)(例えば、配列番号210および配列番号211)と、重鎖可変ドメイン
(配列番号85)およびCH1ドメインを含む重鎖部分、ならびに軽鎖可変ドメイン(配
列番号86)および軽鎖定常ドメインを含む軽鎖部分を含むNKG2D結合Fab断片(
「A49」)であって、重鎖可変ドメインがCH1ドメインに連結しており、CH1ドメ
インがFcドメインに連結している、NKG2D結合Fab断片(「A49」)とを含む
。EpCAMを標的とするFabに連結したFcドメインは、K360E置換およびK4
09W置換を含むFabとヘテロ二量体を形成するためのQ347R置換、D399V置
換、およびF405T置換を含む(例えば、下記の配列番号212を参照されたい)。
【0172】
本開示のEPCAM結合scFvは、(G4S)
4リンカーで軽鎖可変ドメインに連結
した重鎖可変ドメインを含み得る(V
LがV
HのN末端側にある場合V
L(G4S)
4V
HまたはLHと表され、V
HがV
LのN末端側にある場合、V
H(G4S)
4V
Lまたは
HLと表される)。配列番号208および209は、かかるEPCAM結合scFvポリ
ペプチドの例示的な配列である。scFv(配列番号208または209)内に含まれる
V
LおよびV
Hは、100V
L-44V
HS-S架橋(それぞれG100C置換およびG
44C置換に起因する)を含有する(以下の配列においてシステイン残基は太字のイタリ
ック体であり、下線が引かれている)。(G4S)
4は、配列番号208および配列番号
209において太字の下線が引かれた配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(
配列番号206)である。
EPCAM(MT110LH)scFv
【化21】
EPCAM(MT100HL)scFv
【化22】
【0173】
配列番号210および配列番号211は、Gly-Ala-Serを含むヒンジ(太字
、下線)を介してFcドメインに連結することができるEPCAM結合scFvの2つの
配列を表す。scFvに連結したFcドメインは、Q347R置換、D399V置換、お
よびF405T置換を含む。
EPCAM(MT110LH)scFv-Fc
【化23】
EPCAM(MT110HL)scFv-Fc
【化24】
【0174】
配列番号212は、NKG2D結合部位の重鎖可変ドメイン(配列番号85)、および
Fcドメインに連結したCH1ドメインを含む、Fab断片の重鎖部分を表す。配列番号
212内のFcドメインは、CH3ドメインにおけるY349C置換を含み、これは、E
pCAMに結合するscFvに連結したFcにおけるS354C置換とジスルフィド結合
を形成する(例えば、配列番号210および配列番号211)。配列番号212において
、Fcドメインは、K360E置換およびK409W置換も含む。
A49-V
H
【化25】
A49 V
H-CH1-Fc
【化26】
【0175】
配列番号213は、NKG2D結合部位の軽鎖可変ドメイン(配列番号86)、および
軽鎖定常ドメインを含むFab断片の軽鎖部分を表す。
A49-V
L
【化27】
A49 LC V
L定常ドメイン
【化28】
【0176】
例示的な実施形態では、NKG2D結合Fab断片に連結したFcドメインは、Q34
7R、D399V、およびF405Tの変異を含み、EPCAM scFvに連結したF
cドメインは、ヘテロ二量体を形成するための適合した変異K360EおよびK409W
を含む。例示的な実施形態では、NKG2D結合Fab断片に連結したFcドメインは、
CH3ドメインにおけるS354C置換を含み、これは、EPCAM結合scFvに連結
したFcにおけるY349C置換とジスルフィド結合を形成する。
【0177】
Fcドメイン内で、CD16結合はヒンジ領域およびCH2ドメインによって媒介され
る。例えば、ヒトIgG1内で、CD16との相互作用は主に、アミノ酸残基Asp26
5~Glu269、Asn297~Thr299、Ala327~Ile332、Leu
234~Ser239、およびCH2ドメインにおける炭水化物残基N-アセチル-D-
グルコサミンに焦点が当てられている(Sondermannら、Nature、406巻(6793号)
:267~273頁を参照されたい)。既知のドメインに基づいて、突然変異は、ファー
ジディスプレイライブラリもしくは酵母表面ディスプレイcDNAライブラリを使用する
ことなどによって、CD16に対する結合親和性を増強もしくは低減させるように選択さ
れ得るか、または相互作用の既知の三次元構造に基づいてデザインされ得る。
【0178】
ヘテロ二量体抗体重鎖の構築は、同じ細胞内で2つの異なる抗体重鎖配列を発現させる
ことによって達成することができ、これにより、各抗体重鎖のホモ二量体の構築およびヘ
テロ二量体の構築をもたらすことができる。ヘテロ二量体の選択的構築の促進は、US1
3/494870、US16/028850、US11/533709、US12/87
5015、US13/289934、US14/773418、US12/811207
、US13/866756、US14/647480およびUS14/830336に示
されているように、各抗体重鎖定常領域のCH3ドメイン内に異なる突然変異を組み込む
ことによって達成することができる。例えば、突然変異は、ヒトIgG1に基づき、これ
らの2つの鎖が互いに選択的にヘテロ二量体化することを可能にする第1のポリペプチド
および第2のポリペプチド内にアミノ酸置換の異なる対を組み込んでいるCH3ドメイン
内で作製され得る。以下に例示したアミノ酸置換の位置は、Kabatにおけるように、
すべてEUインデックスに従って番号付けしている。
【0179】
1つの状況では、第1のポリペプチドにおけるアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、アル
ギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)またはトリプトファン(W)か
ら選択される、より大きなアミノ酸で置換し、第2のポリペプチドにおける少なくとも1
つのアミノ酸置換は、元のアミノ酸を、より大きなアミノ酸置換(突出)が、より小さな
アミノ酸置換(空洞)の表面に適合するように、アラニン(A)、セリン(S)、トレオ
ニン(T)、またはバリン(V)から選択される、より小さなアミノ酸で置換する。例え
ば、一方のポリペプチドはT366W置換を組み込むことができ、他方のポリペプチドは
、T366S、L368A、およびY407Vを含む3つの置換を組み込むことができる
。
【0180】
本発明の抗体重鎖可変ドメインは、必要に応じて、CH1ドメインを有するまたは有さ
ないヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含むIgG定常領域などの、抗体定常領域と
少なくとも90%同一であるアミノ酸配列と連結され得る。一部の実施形態では、定常領
域のアミノ酸配列は、ヒトIgG1定常領域、IgG2定常領域、IgG3定常領域、ま
たはIgG4定常領域などの、ヒト抗体定常領域と少なくとも90%同一である。一部の
他の実施形態では、定常領域のアミノ酸配列は、ウサギ、イヌ、ネコ、マウス、またはウ
マなどの別の哺乳動物由来の抗体定常領域と少なくとも90%同一である。1つまたは複
数の突然変異が、ヒトIgG1定常領域と比較して、例えば、Q347、Y349、L3
51、S354、E356、E357、K360、Q362、S364、T366、L3
68、K370、N390、K392、T394、D399、S400、D401、F4
05、Y407、K409、T411および/またはK439において定常領域に組み込
まれ得る。例示的な置換には、例えば、Q347E、Q347R、Y349S、Y349
K、Y349T、Y349D、Y349E、Y349C、T350V、L351K、L3
51D、L351Y、S354C、E356K、E357Q、E357L、E357W、
K360E、K360W、Q362E、S364K、S364E、S364H、S364
D、T366V、T366I、T366L、T366M、T366K、T366W、T3
66S、L368E、L368A、L368D、K370S、N390D、N390E、
K392L、K392M、K392V、K392F、K392D、K392E、T394
F、T394W、D399R、D399K、D399V、S400K、S400R、D4
01K、F405A、F405T、Y407A、Y407I、Y407V、K409F、
K409W、K409D、T411D、T411E、K439D、およびK439Eが含
まれる。
【0181】
ある特定の実施形態では、ヒトIgG1定常領域のCH1に組み込まれ得る突然変異は
、アミノ酸V125、F126、P127、T135、T139、A140、F170、
P171、および/またはV173であり得る。ある特定の実施形態では、ヒトIgG1
定常領域のCκに組み込まれ得る突然変異は、アミノ酸E123、F116、S176、
V163、S174、および/またはT164であり得る。
【0182】
あるいは、アミノ酸置換は以下の表4にされる置換のセットから選択され得る。
【表4】
【0183】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表5に示される置換のセットから選択され得る。
【表5】
【0184】
代替的に、アミノ酸置換は以下の表6に示される置換のセットから選択され得る。
【表6】
【0185】
代替的に、各ポリペプチド鎖における少なくとも1つのアミノ酸置換は表7から選択さ
れ得る。
【表7】
【0186】
代替的に、以下の表8の置換のセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択しても
よく、ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置(複数可)は、任意の公知の負に
帯電したアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置(複
数可)は、任意の公知の正に帯電したアミノ酸によって置き換えられる。
【表8】
【0187】
代替的に、以下の表9のセットから少なくとも1つのアミノ酸置換を選択してもよく、
ここで「第1のポリペプチド」欄に示される位置(複数可)は、任意の公知の正に帯電し
たアミノ酸によって置き換えられ、「第2のポリペプチド」欄に示される位置(複数可)
は、任意の公知の負に帯電したアミノ酸によって置き換えられる。
【表9】
【0188】
代替的に、アミノ酸置換は、以下の表10のセットから選択され得る。
【表10】
【0189】
代替的にまたは加えて、ヘテロ多量体タンパク質の構造安定性は、第1または第2のポ
リペプチド鎖のいずれかにS354Cを導入し、反対のポリペプチド鎖にY349Cを導
入することによって増大させることができ、これにより、2つのポリペプチドの界面内に
人工ジスルフィド架橋を形成する。
【0190】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T366位において異なり、抗体定常領域の他方のポリペ
プチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T366、L368お
よびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なる。
【0191】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T366、L368およびY407からなる群から選択さ
れる1つまたは複数の位置において異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミ
ノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T366位において異なる。
【0192】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、E357、K360、Q362、S364、L368、K
370、T394、D401、F405、およびT411からなる群から選択される1つ
または複数の位置において異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列
は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、Y349、E357、S364、L368、K
370、T394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つま
たは複数の位置において異なる。
【0193】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、Y349、E357、S364、L368、K370、T
394、D401、F405およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の
位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、
IgG1定常領域のアミノ酸配列と、E357、K360、Q362、S364、L36
8、K370、T394、D401、F405、およびT411からなる群から選択され
る1つまたは複数の位置において異なる。
【0194】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、L351、D399、S400およびY407からなる群
から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T366、N39
0、K392、K409およびT411からなる群から選択される1つまたは複数の位置
において異なる。
【0195】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T366、N390、K392、K409およびT411
からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域
の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、L35
1、D399、S400およびY407からなる群から選択される1つまたは複数の位置
において異なる。
【0196】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、Q347、Y349、K360およびK409からなる群
から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、Q347、E35
7、D399およびF405からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異
なる。
【0197】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、Q347、E357、D399およびF405からなる群
から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、Y349、K36
0、Q347およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異
なる。
【0198】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、K370、K392、K409およびK439からなる群
から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、D356、E35
7およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なる。
【0199】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、D356、E357およびD399からなる群から選択さ
れる1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポリペプチド
鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、K370、K392、K40
9およびK439からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なる。
【0200】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、L351、E356、T366およびD399からなる群
から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、Y349、L35
1、L368、K392およびK409からなる群から選択される1つまたは複数の位置
において異なる。
【0201】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、Y349、L351、L368、K392およびK409
からなる群から選択される1つまたは複数の位置において異なり、ここで、抗体定常領域
の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、L35
1、E356、T366およびD399からなる群から選択される1つまたは複数の位置
において異なる。
【0202】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、S354C置換によって異なり、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、Y349C置換に
よって異なる。
【0203】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、Y349C置換によって異なり、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、S354C置換に
よって異なる。
【0204】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、K360E置換およびK409W置換によって異なり、抗
体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列
と、O347R置換、D399V置換およびF405T置換によって異なる。
【0205】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、O347R置換、D399V置換およびF405T置換に
よって異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領
域のアミノ酸配列と、K360E置換およびK409W置換によって異なる。
【0206】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T366W置換によって異なり、抗体定常領域の他方のポ
リペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T366S置換、
T368A置換およびY407V置換によって異なる。
【0207】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T366S置換、T368A置換およびY407V置換に
よって異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG1定常領
域のアミノ酸配列と、T366W置換によって異なる。
【0208】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T350V置換、L351Y置換、F405A置換および
Y407V置換によって異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は
、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T350V置換、T366L置換、K392L置
換およびT394W置換によって異なる。
【0209】
一部の実施形態では、抗体定常領域の一方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、IgG
1定常領域のアミノ酸配列と、T350V置換、T366L置換、K392L置換および
T394W置換によって異なり、抗体定常領域の他方のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は
、IgG1定常領域のアミノ酸配列と、T350V置換、L351Y置換、F405A置
換およびY407V置換によって異なる。
【0210】
上記の多重特異性タンパク質は、当業者に周知の組換えDNA技術を使用して作製され
得る。例えば、第1の免疫グロブリン重鎖をコードする第1の核酸配列を第1の発現ベク
ターにクローニングすることができ、第2の免疫グロブリン重鎖をコードする第2の核酸
配列を第2の発現ベクターにクローニングすることができ、免疫グロブリン軽鎖をコード
する第3の核酸配列を第3の発現ベクターにクローニングすることができ、第1、第2お
よび第3の発現ベクターを一緒に宿主細胞に安定にトランスフェクトして多量体タンパク
質を産生することができる。
【0211】
多重特異性タンパク質の最も高い収率を達成するために、第1、第2および第3の発現
ベクターの異なる比率を調べて宿主細胞へのトランスフェクションのための最適比率を決
定することができる。トランスフェクション後、限界希釈、ELISA、FACS、顕微
鏡法、またはClonepixなどの当技術分野において公知の方法を使用して、細胞バ
ンク生成のために単一クローンを単離することができる。
【0212】
クローンは、バイオリアクタスケールアップに適した条件下で培養することができ、多
重特異性タンパク質の発現を維持することができる。多重特異性タンパク質は、遠心分離
、深層濾過、細胞溶解、均質化、凍結融解、親和性精製、ゲル濾過、イオン交換クロマト
グラフィー、疎水性相互作用交換クロマトグラフィー、およびミックスモードクロマトグ
ラフィーを含む、当技術分野において公知の方法を使用して単離され、精製され得る。
II.多重特異性タンパク質の特徴
【0213】
本明細書に記載の多重特異性タンパク質は、NKG2D結合部位、CD16結合部位、
および表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原を含む。
一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、NK細胞などのNKG2Dおよび/また
はCD16を発現する細胞と、表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択され
る腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞に同時に結合する。多重特異性タンパク質がNK細胞
に結合すると、腫瘍細胞の破壊に向けてのNK細胞の活性が増強され得る。
【0214】
【0215】
一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、表11に提示されている抗原のいずれ
か1つから選択される腫瘍関連抗原に、対応するモノクローナル抗体(すなわち、多重特
異性タンパク質に組み込まれているものと同じ腫瘍関連抗原結合部位を含有するモノクロ
ーナル抗体(表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択される))と同様の親
和性で結合する。一部の実施形態では、多重特異性タンパク質は、表11に提示されてい
る抗原のいずれか1つから選択される腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞の殺滅に関して、
対応するモノクローナル抗体よりも効果的である。
【0216】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合部位および表11に提示されている抗原のい
ずれか1つから選択される腫瘍関連抗原に対する結合部位を含む本明細書に記載の多重特
異性タンパク質は、腫瘍関連抗原を発現する細胞と共培養すると初代ヒトNK細胞を活性
化させる。NK細胞の活性化は、CD107a脱顆粒およびIFN-γサイトカイン産生
量の増加によって示される。さらに、表11に提示されている抗原のいずれか1つから選
択される腫瘍関連抗原に対する対応するモノクローナル抗体と比較して、多重特異性タン
パク質は、腫瘍関連抗原を発現する細胞の存在下でヒトNK細胞の優れた活性化を示し得
る。
【0217】
ある特定の実施形態では、NKG2D結合部位および表11に提示されている抗原のい
ずれか1つから選択される腫瘍関連抗原に対する結合部位を含む本明細書に記載の多重特
異性タンパク質は、腫瘍関連抗原を発現する細胞と共培養して休止ヒトNK細胞およびI
L-2活性化ヒトNK細胞の活性を増強する。
【0218】
ある特定の実施形態では、表11に提示されている抗原のいずれか1つから選択される
腫瘍関連抗原に結合する対応するモノクローナル抗体と比較して、多重特異性タンパク質
は、腫瘍関連抗原を発現する腫瘍細胞を標的とすることに関して利点をもたらす。本明細
書に記載の多重特異性結合タンパク質は、腫瘍成長の低減およびがん細胞の殺滅に関して
、より効果的であり得る。
【0219】
ある特定の実施形態では、EpCAMを標的とするF4-TriNKET(例えば、N
KG2D結合F4-TriNKET-EpCAM)は、EpCAMを標的とする親mAb
よりも効果的に標的細胞を死滅させた。ある特定の実施形態では、F4-TriNKET
はまた、F3’-TriNKET(例えば、NKG2D結合F3’-TriNKET-E
pCAM)よりも強力に標的細胞を死滅させ、これは、F4-TriNKETが標的細胞
により強力に結合することを反映し得る。
III.治療用途
【0220】
本発明は、本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質および/または本明細書に記載
の医薬組成物を使用してがんを処置するための方法を提供する。本方法は、それを必要と
する患者に、治療有効量の本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質を投与することに
より、EPCAMを発現する様々ながんを処置するために使用され得る。
【0221】
この治療方法は、処置されるがんによって特徴付けられ得る。例えば、ある特定の実施
形態では、がんは、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
、胸腺腫、腺様嚢胞癌、胃腸がん、腎がん、乳がん、神経膠芽腫、肺がん、卵巣がん、脳
がん、前立腺がん、膵がん、または黒色腫である。
【0222】
ある特定の他の実施形態では、がんは、固形腫瘍である。ある特定の他の実施形態では
、がんは、結腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮体がん、食道がん、白血病、肝がん、
直腸がん、胃がん、精巣がん、または子宮がんである。さらに他の実施形態では、がんは
、血管化腫瘍、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、黒色腫、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫(
例えば、血管肉腫または軟骨肉腫)、喉頭がん、耳下腺がん、胆道がん(bilary tract c
ancer)、甲状腺がん、末端黒子型黒色腫、日光角化症、急性リンパ性白血病、急性骨髄
性白血病、腺様嚢胞癌(adenoid cycstic carcinoma)、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、
肛門管がん、肛門がん、肛門直腸がん、星細胞系腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、胆
管がん、骨がん、骨髄がん、気管支がん、気管支腺癌、カルチノイド、胆管癌、軟骨肉腫
(chondosarcoma)、脈絡叢乳頭腫(choriod plexus papilloma)/癌、慢性リンパ球性
白血病、慢性骨髄性白血病、明細胞癌、結合組織がん、嚢胞腺腫、消化器系がん、十二指
腸がん、内分泌系がん、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌
、内皮細胞がん、上衣がん、上皮細胞がん、ユーイング肉腫、眼および眼窩のがん、女性
性器がん、限局性結節性過形成、胆嚢がん、胃前庭部がん、胃底部がん、ガストリノーマ
、神経膠芽腫、グルカゴノーマ、心臓がん、血管芽腫(hemangiblastoma)、血管内皮腫
、血管腫、肝腺腫、肝腺腫症、肝胆道がん、肝細胞癌、ホジキン病、回腸がん、インスリ
ノーマ、上皮内新生物(intaepithelial neoplasia)、上皮間扁平上皮新生物(interepi
thelial squamouscell neoplasia)、肝内胆管がん、浸潤性扁平上皮癌、空腸がん、関節
がん、カポジ肉腫、骨盤がん、大細胞癌、大腸がん、平滑筋肉腫、悪性黒子黒色腫、リン
パ腫、男性生殖器がん、悪性黒色腫、悪性中皮腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、髄膜がん、中皮
がん、転移性癌、口腔がん(mouth cancer)、粘表皮癌、多発性骨髄腫、筋肉がん、鼻道
がん(nasal tract cancer)、神経系がん、神経上皮腺癌 結節性黒色腫、非上皮性皮膚
がん、非ホジキンリンパ腫、燕麦細胞癌、乏突起神経膠がん(oligodendroglialcancer)
、口腔がん(oral cavity cancer)、骨肉腫、漿液性乳頭腺癌、陰茎がん、咽頭がん、下
垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、直腸がん、腎細胞癌、呼吸器系がん、網膜芽細
胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、副鼻腔がん、皮膚がん、小細胞癌、小腸がん、平滑
筋がん、軟部組織がん、ソマトスタチン分泌腫瘍、脊椎がん、扁平上皮癌、横紋筋がん、
中皮下がん、表在拡大型黒色腫、T細胞白血病、舌がん、未分化癌、尿管がん、尿道がん
、膀胱がん、泌尿器系がん、子宮頸部がん、子宮体がん、ぶどう膜黒色腫、膣がん、疣状
癌、ビポーマ、外陰部がん、高分化癌、またはウィルムス腫瘍である。
【0223】
ある特定の他の実施形態では、がんは、B細胞リンパ腫またはT細胞リンパ腫などの非
ホジキンリンパ腫である。ある特定の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、びまん性大
細胞型B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ
腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性
辺縁帯B細胞リンパ腫、脾性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細
胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、または原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫などのB細
胞リンパ腫である。ある特定の他の実施形態では、非ホジキンリンパ腫は、前駆Tリンパ
芽球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リン
パ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸症型T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎
様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、または末梢T細胞リンパ腫などのT細胞リン
パ腫である。
【0224】
処置されるがんは、がん細胞の表面で発現する特定の抗原の存在に従って特徴付けられ
得る。ある特定の実施形態では、がん細胞は、EpCAMに加えて、以下:CD2、CD
19、CD20、CD30、CD38、CD40、CD52、CD70、EGFR/ER
BB1、IGF1R、HER3/ERBB3、HER4/ERBB4、MUC1、TRO
P2、cMET、SLAMF7、PSCA、MICA、MICB、TRAILR1、TR
AILR2、MAGE-A3、B7.1、B7.2、CTLA4、およびPD1のうちの
1つまたは複数を発現し得る。
【0225】
一部の他の実施形態では、第2の結合部位がEpCAMに結合する場合、処置されるが
んは、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、胃がん、
肝がん、食道がん、および肺がんから選択される。一部の他の実施形態では、第2の結合
部位が、がん抗原125(CA125)、ナトリウム/リン酸共輸送体2B(NaPi2
b)、ネクチン細胞接着分子4(Nectin4)、フコシル-GM1(モノシアロテト
ラヘキソシルガングリオシド)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼドメイ
ン含有タンパク質8(ADAM8)、ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼド
メイン含有タンパク質9(ADAM9)、溶質キャリアファミリー44メンバー4(SL
C44A4)、およびシアリル化ルイスa抗原(CA19-9)から選択される抗原に結
合する場合、処置されるがんは、卵巣がん、子宮体がん、膵がん、肺がん、甲状腺がん、
膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、小細胞肺がん、神経芽細胞腫、肝がん、腎がん、黒色
腫、子宮頸がん、前立腺がん、骨肉腫、脳がん、胃がん、胆管癌から選択される。
IV.併用療法
【0226】
本発明の別の態様は併用療法を提供する。本明細書に記載の多重特異性結合タンパク質
は、がんを処置するためにさらなる治療剤と組み合わせて使用することができる。
【0227】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る例示的な治療剤には、例えば、
放射線、マイトマイシン、トレチノイン、リボムスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン
、エトポシド、クラドリビン、ミトブロニトール、メトトレキサート、ドキソルビシン、
カルボコン、ペントスタチン、ニトラクリン、ジノスタチン、セトロレリクス、レトロゾ
ール、ラルチトレキセド、ダウノルビシン、ファドロゾール、フォテムスチン、チマルフ
ァシン、ソブゾキサン、ネダプラチン、シタラビン、ビカルタミド、ビノレルビン、ベス
ナリノン、アミノグルテチミド、アムサクリン、プログルミド、酢酸エリプチニウム、ケ
タンセリン、ドキシフルリジン、エトレチナート、イソトレチノイン、ストレプトゾシン
、ニムスチン、ビンデシン、フルタミド、ドロゲニル、ブトシン、カルモフール、ラゾキ
サン、シゾフィラン、カルボプラチン、ミトラクトール、テガフール、イホスファミド、
プレドニムスチン、ピシバニール、レバミゾール、テニポシド、インプロスルファン、エ
ノシタビン、リスリド、オキシメトロン、タモキシフェン、プロゲステロン、メピチオス
タン、エピチオスタノール、ホルメスタン、インターフェロン-アルファ、インターフェ
ロン-2アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ
)、コロニー刺激因子-1、コロニー刺激因子-2、デニロイキンディフティトックス、
インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出因子、ならびにその同種受容体に対して特
異な結合、および増加したまたは減少した血清半減期を示し得る上述の薬剤の変形型が含
まれる。
【0228】
がんを処置する際の併用療法の一部として使用され得る薬剤のさらなるクラスは免疫チ
ェックポイント阻害剤である。例示的な免疫チェックポイント阻害剤には、(i)細胞傷
害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4)、(ii)プログラム細胞死タンパク質1(P
D1)、(iii)PDL1、(iv)LAG3、(v)B7-H3、(vi)B7-H
4、および(vii)TIM3のうちの1つまたは複数を阻害する薬剤が含まれる。CT
LA4阻害剤であるイピリムマブは、黒色腫を処置するために米国食品医薬品局によって
承認されている。
【0229】
がんを処置する際に併用療法の一部として使用され得るさらに他の薬剤は、非チェック
ポイント標的を標的とするモノクローナル抗体薬剤(例えば、ハーセプチン)および非細
胞傷害剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)である。
【0230】
抗がん剤のさらに他のカテゴリーには、例えば、(i)ALK阻害剤、ATR阻害剤、
A2Aアンタゴニスト、塩基除去修復阻害剤、Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤、
ブルトン型チロシンキナーゼ阻害剤、CDC7阻害剤、CHK1阻害剤、サイクリン依存
性キナーゼ阻害剤、DNA-PK阻害剤、DNA-PKおよびmTORの両方の阻害剤、
DNMT1阻害剤、DNMT1阻害剤+2-クロロ-デオキシアデノシン、HDAC阻害
剤、ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、IDO阻害剤、JAK阻害剤、mTOR阻害
剤、MEK阻害剤、MELK阻害剤、MTH1阻害剤、PARP阻害剤、ホスホイノシチ
ド3-キナーゼ阻害剤、PARP1およびDHODHの両方の阻害剤、プロテアソーム阻
害剤、トポイソメラーゼ-II阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGFR阻害剤、な
らびにWEE1阻害剤から選択される阻害剤;(ii)OX40、CD137、CD40
、GITR、CD27、HVEM、TNFRSF25、またはICOSのアゴニスト;な
らびに(iii)IL-12、IL-15、GM-CSF、およびG-CSFから選択さ
れるサイトカインが含まれる。
【0231】
本発明のタンパク質はまた、原発病巣の外科的除去の補助として使用され得る。
【0232】
多重特異性結合タンパク質およびさらなる治療剤の量ならびに投与の相対的タイミング
は、所望の併用療法効果を達成するために選択され得る。例えば、このような投与を必要
とする患者に併用療法を投与する場合、組み合わせる治療剤、または治療剤を含む1つも
しくは複数の医薬組成物は、例えば、連続的に、併せて、一緒に、同時になどの任意の順
序で投与され得る。さらに、例えば、多重特異性結合タンパク質は、さらなる治療剤がそ
の予防効果または治療効果を発揮する時間の間投与されてもよく、またはその逆であって
もよい。
V.医薬組成物
【0233】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に記載のタンパク質を含有する医薬組成物を特徴
とする。組成物は、種々の薬物送達系で使用されるように製剤化することができる。適切
な製剤を作るために、1種または複数の生理学的に許容される賦形剤または担体を組成物
に含めることもできる。本開示で使用される好適な製剤は、Remington's Pharmaceutica
l Sciences、Mack Publishing Company、Philadelphia、Pa.、第17版、1985年
に見出される。薬物送達のための方法に関する簡潔な概説については、例えば、Langer(
Science、249巻:1527~1533頁、1990年)を参照されたい。
【0234】
医薬組成物は、治療有効量の、抗原(表11に列記されている)部位を含む多重特異性
結合タンパク質を含有し得る。
【0235】
本開示の静脈内薬物送達製剤は、バッグ、ペン、または注射器に含有されてもよい。あ
る特定の実施形態では、バッグはチューブおよび/または針を含むチャネルに接続されて
もよい。ある特定の実施形態では、製剤は凍結乾燥製剤または液体製剤であってもよい。
ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライ(凍結乾燥)されてもよく、約12~6
0個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤はフリーズドライさ
れてもよく、45mgのフリーズドライされた製剤が1個のバイアルに含有されてもよい
。ある特定の実施形態では、約40mg~約100mgのフリーズドライされた製剤が1
個のバイアルに含有されてもよい。ある特定の実施形態では、12、27、または45個
のバイアルからのフリーズドライされた製剤は、静脈内薬物製剤中に治療用量のタンパク
質を得るために組み合わされてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であっ
てもよく、約250mg/バイアル~約1000mg/バイアルとして保存されてもよい
。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約600mg/バイアルと
して保存されてもよい。ある特定の実施形態では、製剤は液体製剤であってもよく、約2
50mg/バイアルとして保存されてもよい。
【0236】
タンパク質は、製剤を形成する緩衝溶液中に治療有効量のタンパク質を含む液体水性医
薬製剤中に存在し得る。
【0237】
これらの組成物は従来の滅菌技術によって滅菌されてもよく、または濾過滅菌されても
よい。得られた水溶液はそのままで使用するためにパッケージ化されてもよく、または凍
結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製物は投与前に滅菌水性担体と組み合わされる。
調製物のpHは、典型的に、3から11の間、より好ましくは5から9の間または6から
8の間、最も好ましくは7から8の間、例えば7~7.5である。得られた固形の組成物
は複数の単回用量単位でパッケージ化されてもよく、各々は一定量の上述の1つまたは複
数の薬剤を含有する。固形の組成物はまた、柔軟な量のための容器にパッケージ化されて
もよい。
【0238】
ある特定の実施形態では、本開示は、マンニトール、クエン酸一水和物、クエン酸ナト
リウム、リン酸二ナトリウム二水和物、リン酸二水素ナトリウム二水和物、塩化ナトリウ
ム、ポリソルベート80、水、および酸化ナトリウムと組み合わせて本開示のタンパク質
を含む、延長された貯蔵寿命を有する製剤を提供する。
【0239】
ある特定の実施形態では、pH緩衝溶液中に本開示のタンパク質を含む水性製剤が調製
される。本発明の緩衝液は、約4~約8、例えば、約4.5~約6.0、もしくは約4.
8~約5.5の範囲のpHを有してもよく、または約5.0~約5.2のpHを有しても
よい。上記に列挙したpHの中間の範囲も、本開示の一部であることが意図される。例え
ば、上限および/または下限として上記に列挙した値のいずれかの組合せを使用する値の
範囲が含まれることが意図される。pHをこの範囲内に制御する緩衝液の例には、酢酸塩
(例えば、酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムなど)、グルコン酸塩、
ヒスチジン、クエン酸塩および他の有機酸緩衝液が含まれる。
【0240】
ある特定の実施形態では、製剤は、pHを約4~約8の範囲に維持するためにクエン酸
塩およびリン酸塩を含有する緩衝系を含む。ある特定の実施形態では、pHの範囲は、約
4.5~約6.0、または約pH4.8~約5.5、または約5.0~約5.2のpH範
囲であってもよい。ある特定の実施形態では、緩衝系には、クエン酸一水和物、クエン酸
ナトリウム、リン酸二ナトリウム二水和物、および/またはリン酸二水素ナトリウム二水
和物が含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝系は、約1.3mg/mLのクエン酸(
例えば、1.305mg/mL)、約0.3mg/mLのクエン酸ナトリウム(例えば、
0.305mg/mL)、約1.5mg/mLのリン酸二ナトリウム二水和物(例えば、
1.53mg/mL)、約0.9mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和物(例えば
、0.86)、および約6.2mg/mLの塩化ナトリウム(例えば、6.165mg/
mL)を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系は、1~1.5mg/mLのクエン酸、
0.25~0.5mg/mLのクエン酸ナトリウム、1.25~1.75mg/mLのリ
ン酸二ナトリウム二水和物、0.7~1.1mg/mLのリン酸二水素ナトリウム二水和
物、および6.0~6.4mg/mLの塩化ナトリウムを含む。ある特定の実施形態では
、製剤のpHは水酸化ナトリウムを用いて調整される。
【0241】
トニシファイヤー(tonicifier)として作用し、抗体を安定化させることができるポリ
オールも、製剤に含めることができる。ポリオールは、製剤の所望の等張性に関して変化
し得る量で製剤に添加される。ある特定の実施形態では、水性製剤は等張性であってもよ
い。添加されるポリオールの量も、ポリオールの分子量に関して変化し得る。例えば、二
糖(トレハロースなど)と比較して、少量の単糖(例えば、マンニトール)が添加されて
もよい。ある特定の実施形態では、等張化剤として製剤に使用され得るポリオールはマン
ニトールである。ある特定の実施形態では、マンニトール濃度は約5~約20mg/ml
であってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約7.5~15mg/
mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約10~14mg
/mlであってもよい。ある特定の実施形態では、マンニトールの濃度は約12mg/m
lであってもよい。ある特定の実施形態では、ポリオールソルビトールを製剤に含めるこ
とができる。
【0242】
洗剤または界面活性剤もまた、製剤に添加してもよい。例示的な洗剤としては、ポリソ
ルベート(例えば、ポリソルベート20、80など)またはポロクサマー(例えば、ポロ
クサマー188)などの非イオン性洗剤が挙げられる。添加される洗剤の量は、製剤化さ
れた抗体の凝集を低減させ、かつ/または製剤中の微粒子の形成を最低限に抑え、かつ/
または吸着を低減させるようなものである。ある特定の実施形態では、製剤は、ポリソル
ベートである界面活性剤を含み得る。ある特定の実施形態では、製剤は、洗剤のポリソル
ベート80またはTween 80を含有し得る。Tween 80は、ポリオキシエチ
レン(20)ソルビタンモノオレエートを表すために使用される用語である(Fiedler、L
exikon der Hifsstoffe、Editio Cantor Verlag Aulendorf、第4版、1996年を
参照されたい)。ある特定の実施形態では、製剤は、約0.1mg/mLから約10mg
/mLの間のポリソルベート80、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間を
含有し得る。ある特定の実施形態では、約0.1%のポリソルベート80が製剤に添加さ
れ得る。
【0243】
実施形態では、本開示のタンパク質産物は、液体製剤として製剤化される。液体製剤は
、ゴム栓で閉じ、アルミニウムクリンプシールクロージャで密封した、USP/Ph E
urいずれかのタイプI 50Rバイアルにおいて、10mg/mLの濃度で提供され得
る。栓は、USPおよびPh Eurに準拠したエラストマーで作られていてもよい。あ
る特定の実施形態では、60mLの採取容量を可能にするために、バイアルに61.2m
Lのタンパク質産物溶液が充填され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は、0.9
%の生理食塩水で希釈され得る。
【0244】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、安定化レベルで糖と組み合わせた10
mg/mL濃度溶液として調製され得る。ある特定の実施形態では、液体製剤は水性担体
中で調製され得る。ある特定の実施形態では、安定剤は、静脈内投与に望ましくないまた
は不適切な粘度をもたらし得る量以下の量で添加され得る。ある特定の実施形態では、糖
は、二糖、例えば、スクロースであり得る。ある特定の実施形態では、液体製剤はまた、
緩衝剤、界面活性剤、および保存剤のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0245】
ある特定の実施形態では、液体製剤のpHは薬学的に許容される酸および/または塩基
の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される酸は塩酸で
あり得る。ある特定の実施形態では、塩基は水酸化ナトリウムであり得る。
【0246】
凝集に加えて、脱アミドは、発酵、採取/細胞清澄化、精製、薬物物質/薬物製品貯蔵
の間および試料分析の間に発生し得るペプチドおよびタンパク質の一般的な産物のバリア
ントである。脱アミドは、加水分解を受け得るスクシンイミド中間体を形成するタンパク
質からのNH3の喪失である。スクシンイミド中間体は、親ペプチドの17ダルトンの質
量減少をもたらす。その後の加水分解は、18ダルトンの質量増加をもたらす。スクシン
イミド中間体の単離は、水性条件下での不安定性に起因して困難である。したがって、脱
アミドは、典型的に1ダルトンの質量増加として検出可能である。アスパラギンの脱アミ
ドは、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかを生じる。脱アミドの速度に
影響を及ぼすパラメータには、pH、温度、溶媒誘電率、イオン強度、一次配列、局所ポ
リペプチド立体配座および三次構造が含まれる。ペプチド鎖におけるAsnに隣接するア
ミノ酸残基は、脱アミド化速度に影響を及ぼす。タンパク質配列におけるAsnに続くG
lyおよびSerは、脱アミドに対してより高い感受性を生じる。
【0247】
ある特定の実施形態では、本開示の液体製剤は、タンパク質産物の脱アミノを阻止する
ためのpHおよび湿度の条件下で保存され得る。
【0248】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒
であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(
SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水
)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0249】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加する
ことができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易に
することができる。
【0250】
静脈内(IV)製剤は、患者が、移植後に入院しており、IV経路を介してすべての薬
物を受けている場合などの特定の場合に好ましい投与経路であり得る。ある特定の実施形
態では、液体製剤は、投与前に0.9%の塩化ナトリウム溶液により希釈される。ある特
定の実施形態では、注射のための希釈された薬物製品は等張であり、静脈内注入による投
与に適している。
【0251】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加するこ
とができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミ
ンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では
、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート
、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはア
ンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0252】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減させるために本明細書における製剤に添加する
ことができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の生産を容易に
することができる。
【0253】
本明細書における目的の水性担体は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に安全かつ無毒
であり)、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な担体には、注射用滅菌水(
SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水
)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0254】
本開示のタンパク質は、タンパク質および凍結乾燥保護剤を含む凍結乾燥製剤として存
在することもできる。凍結乾燥保護剤は糖、例えば二糖であり得る。ある特定の実施形態
では、凍結乾燥保護剤は、スクロースまたはマルトースであり得る。凍結乾燥製剤はまた
、緩衝剤、界面活性物質、増量剤、および/または保存剤のうちの1つまたは複数を含ん
でもよい。
【0255】
凍結乾燥された薬物製品の安定化に有用なスクロースまたはマルトースの量は、少なく
とも1:2のタンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比であり得る。ある特定の
実施形態では、タンパク質対スクロースまたはマルトースの重量比は1:2~1:5であ
り得る。
【0256】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥前の製剤のpHは、薬学的に許容される酸および/
または塩基の添加によって設定され得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される
酸は塩酸であり得る。ある特定の実施形態では、薬学的に許容される塩基は水酸化ナトリ
ウムであり得る。
【0257】
凍結乾燥前に、本開示のタンパク質を含有する溶液のpHは6から8の間に調整され得
る。ある特定の実施形態では、凍結乾燥した薬物製品についてのpH範囲は7~8であり
得る。
【0258】
ある特定の実施形態では、塩または緩衝成分は10mM~200mMの量で添加するこ
とができる。塩および/または緩衝液は薬学的に許容され、「塩基形成」金属またはアミ
ンを用いて種々の公知の酸(無機および有機)から誘導される。ある特定の実施形態では
、緩衝液はリン酸緩衝液であり得る。ある特定の実施形態では、緩衝液は、グリシネート
、炭酸、クエン酸緩衝液であってもよく、これらの場合、ナトリウム、カリウムまたはア
ンモニウムイオンが対イオンとして機能し得る。
【0259】
ある特定の実施形態では、「増量剤」を添加することができる。「増量剤」は、凍結乾
燥混合物に質量を付加し、凍結乾燥ケーキの物理的構造に寄与する(例えば、開放気孔構
造を維持する本質的に均一な凍結乾燥ケーキの製造を容易にする)化合物である。例示的
な増量剤には、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコールおよびソルビトールが
含まれる。本発明の凍結乾燥製剤はこのような増量剤を含有し得る。
【0260】
保存剤は必要に応じて、細菌作用を低減するために本明細書における製剤に添加するこ
とができる。保存剤の添加は、例えば、多数回使用(複数回投与)製剤の製造を容易にす
ることができる。
【0261】
ある特定の実施形態では、凍結乾燥薬物製品は水性担体で構成され得る。本明細書にお
ける目的の水性担体は、薬学的に許容され(例えば、ヒトへの投与に安全かつ無毒であり
)、凍結乾燥後、液体製剤の調製に有用であるものである。例示的な希釈剤には、注射用
滅菌水(SWFI)、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生
理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー液またはデキストロース溶液が含まれる。
【0262】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥薬物製品は、注射用滅菌水、USP(SW
FI)または0.9%の塩化ナトリウム注射液、USPのいずれかで再構成される。再構
成の間、凍結乾燥粉末は溶液に溶解する。
【0263】
ある特定の実施形態では、本開示の凍結乾燥タンパク質製品は、約4.5mLの注射用
水に構成され、0.9%の生理食塩水溶液(塩化ナトリウム溶液)により希釈される。
【0264】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者に毒性を生じず、特定
の患者、組成物、および投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効である活性
成分の量を得るように変化し得る。
【0265】
特定の用量は、各患者に対して均一な用量、例えば、50~5000mgのタンパク質
であってもよい。代替的に、患者の用量は、患者のおおよその体重または表面積に合わせ
られ得る。適切な投薬量を決定する際の他の要因には、処置または予防される疾患または
状態、疾患の重症度、投与経路、ならびに患者の年齢、性別および医学的状態が含まれ得
る。処置のための適切な投薬量を決定するために必要な計算のさらなる改良は、特に、本
明細書に開示される投薬量情報およびアッセイを考慮して当業者によって慣用的になされ
る。投薬量はまた、適切な用量応答データと併せて使用される投薬量を決定するための公
知のアッセイの使用によって決定することができる。個々の患者の投薬量は、疾患の進行
がモニターされるにつれて調節されてもよい。患者における標的化可能な構築物または複
合物の血中レベルは、有効濃度に達するか、または有効濃度を維持するように投薬量が調
節される必要があるかどうかを調べるために測定され得る。どの標的化可能な構築物およ
び/または複合物、ならびにそれらの投薬量が、所与の個体に対して効果的である可能性
が高いかを決定するために薬理ゲノム学が使用され得る(Schmitzら、Clinica Chimica
Acta 308巻:43~53頁、2001年;Steimerら、Clinica Chimica Acta
308巻:33~41頁、2001年)。
【0266】
一般に、体重に基づく投薬量は、約0.01μg~約100mg/kg体重、例えば、
約0.01μg~約100mg/kg体重、約0.01μg~約50mg/kg体重、約
0.01μg~約10mg/kg体重、約0.01μg~約1mg/kg体重、約0.0
1μg~約100μg/kg体重、約0.01μg~約50μg/kg体重、約0.01
μg~約10μg/kg体重、約0.01μg~約1μg/kg体重、約0.01μg~
約0.1μg/kg体重、約0.1μg~約100mg/kg体重、約0.1μg~約5
0mg/kg体重、約0.1μg~約10mg/kg体重、約0.1μg~約1mg/k
g体重、約0.1μg~約100μg/kg体重、約0.1μg~約10μg/kg体重
、約0.1μg~約1μg/kg体重、約1μg~約100mg/kg体重、約1μg~
約50mg/kg体重、約1μg~約10mg/kg体重、約1μg~約1mg/kg体
重、約1μg~約100μg/kg体重、約1μg~約50μg/kg体重、約1μg~
約10μg/kg体重、約10μg~約100mg/kg体重、約10μg~約50mg
/kg体重、約10μg~約10mg/kg体重、約10μg~約1mg/kg体重、約
10μg~約100μg/kg体重、約10μg~約50μg/kg体重、約50μg~
約100mg/kg体重、約50μg~約50mg/kg体重、約50μg~約10mg
/kg体重、約50μg~約1mg/kg体重、約50μg~約100μg/kg体重、
約100μg~約100mg/kg体重、約100μg~約50mg/kg体重、約10
0μg~約10mg/kg体重、約100μg~約1mg/kg体重、約1mg~約10
0mg/kg体重、約1mg~約50mg/kg体重、約1mg~約10mg/kg体重
、約10mg~約100mg/kg体重、約10mg~約50mg/kg体重、約50m
g~約100mg/kg体重である。
【0267】
用量は、1日に1回もしくは複数回、1週間に1回もしくは複数回、1ヶ月に1回もし
くは複数回または1年に1回もしくは複数回、またはさらに2~20年に1回与えられ得
る。当業者は、体液または組織中の標的化可能な構築物または複合体の測定された滞留時
間および濃度に基づいて投薬のための反復率を容易に推定することができる。本発明の投
与は、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、胸膜内、髄腔内、腔内であってもよく、
カテーテルを介する潅流によってでもよく、または直接的な病巣内注射によってでもよい
。これは、1日に1回または複数回、1週間に1回または複数回、1ヶ月に1回または複
数回、および1年に1回または複数回、投与され得る。
【0268】
上記の説明は本発明の複数の態様および実施形態を記載している。本出願は特に、態様
および実施形態のすべての組合せおよび置換を意図する。
【実施例0269】
ここで概して記載されている本発明は、以下の実施例を参照することによってより容易
に理解され、これらの実施例は本発明のある特定の態様および実施形態の例示の目的のた
めにのみ含まれ、本発明を限定することを意図していない。
(実施例1)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dに結合する
NKG2D結合ドメインは精製した組換えNKG2Dに結合する
【0270】
ヒト、マウス、またはカニクイザルNKG2D細胞外ドメインの核酸配列を、ヒトIg
G1 Fcドメインをコードする核酸配列と融合させ、発現させる哺乳動物細胞に導入し
た。精製後、NKG2D-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させた。非
特異的結合を防ぐためにウシ血清アルブミンでウェルをブロッキングした後、NKG2D
結合ドメインを滴定し、NKG2D-Fc融合タンパク質を予め吸着させたウェルに添加
した。一次抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートし、Fc交差反応
を回避するためにヒトカッパ軽鎖特異的に認識する二次抗体を使用して検出した。西洋ワ
サビペルオキシダーゼの基質である3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TM
B)をウェルに添加して結合シグナルを可視化し、その吸光度を450nMにて測定し、
540nMにて補正した。NKG2D結合ドメインクローン、アイソタイプ対照または陽
性対照(配列番号101~104から選択される重鎖および軽鎖可変ドメイン、またはe
Bioscienceにて入手可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-
5を含む)を各ウェルに添加した。
【0271】
アイソタイプ対照は組換えNKG2D-Fcタンパク質に対してわずかな結合を示した
が、陽性対照が組換え抗原に対して最も強く結合した。クローン毎に親和性は異なったが
、すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒト、マウス、およ
びカニクイザルの組換えNKG2D-Fcタンパク質のすべてで結合を示した。概して、
各抗NKG2Dクローンは、ヒト(
図3)およびカニクイザル(
図4)の組換えNKG2
D-Fcに同様の親和性で結合したが、マウス(
図5)の組換えNKG2D-Fcに対す
る親和性は比較的低かった。
NKG2D結合ドメインはNKG2Dを発現する細胞に結合する
【0272】
EL4マウスリンパ腫細胞株を、ヒトまたはマウスのNKG2D-CD3ゼータシグナ
ル伝達ドメインキメラ抗原受容体を発現するように工学操作した。NKG2D結合クロー
ン、アイソタイプ対照または陽性対照を100nM濃度にて使用して、EL4細胞におい
て発現した細胞外NKG2Dを染色した。フルオロフォアコンジュゲート抗ヒトIgG二
次抗体を使用して抗体結合を検出した。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、親
EL4細胞と比較したNKG2D発現細胞の平均蛍光強度(MFI)を使用してバックグ
ラウンドに対する倍率(FOB)を計算した。
【0273】
すべてのクローンによって産生されたNKG2D結合ドメインが、ヒトおよびマウスの
NKG2Dを発現するEL4細胞に結合した。陽性対照抗体(配列番号101~104か
ら選択される重鎖および軽鎖可変ドメイン、またはeBioscienceにおいて入手
可能な抗マウスNKG2DクローンMI-6およびCX-5を含む)が最も良好なFOB
結合シグナルをもたらした。各クローンのNKG2D結合親和性は、ヒトNKG2Dを発
現する細胞(
図6)とマウスNKG2Dを発現する細胞(
図7)との間で同様であった。
(実施例2)
NKG2D結合ドメインはNKG2Dへの天然リガンドの結合を遮断する
ULBP-6との競合
【0274】
組換えヒトNKG2D-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特
異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルをブロッキングした。飽和濃度
のULBP-6-His-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインク
ローンを添加した。2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、NKG2D-Fc
でコーティングされたウェルに結合したままであったULBP-6-His-ビオチンを
、西洋ワサビペルオキシダーゼとコンジュゲートしたストレプトアビジンおよびTMB基
質によって検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バック
グラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの
特異的結合を、ウェル中のNKG2D-Fcタンパク質への結合を遮断されたULBP-
6-His-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号101~
104から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)および種々のNKG2D結合
ドメインはNKG2DへのULBP-6の結合を遮断したが、アイソタイプ対照はULB
P-6との競合をほとんど示さなかった(
図8)。ULBP-6配列は配列番号108に
より表される
【化29】
MICAとの競合
【0275】
組換えヒトMICA-Fcタンパク質をマイクロプレートのウェルに吸着させ、非特異
的結合を低減させるためにウシ血清アルブミンでウェルをブロッキングした。NKG2D
-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキ
ュベーションおよび洗浄後、MICA-Fcでコーティングされたウェルに結合したまま
であったNKG2D-Fc-ビオチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質
を使用して検出した。吸光度を450nMにて測定し、540nMにて補正した。バック
グラウンドを差し引いた後、NKG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの
特異的結合を、MICA-Fcでコーティングされたウェルへの結合を遮断されたNKG
2D-Fc-ビオチンのパーセンテージから計算した。陽性対照抗体(配列番号101~
104から選択される重鎖および軽鎖可変ドメインを含む)および種々のNKG2D結合
ドメインはNKG2DへのMICAの結合を遮断したが、アイソタイプ対照はMICAと
の競合をほとんど示さなかった(
図9)。
Rae-1デルタとの競合
【0276】
組換えマウスRae-1デルタ-Fc(R&D Systemsから購入した)をマイ
クロプレートのウェルに吸着させ、非特異的結合を低減させるためにウシ血清アルブミン
でウェルをブロッキングした。マウスNKG2D-Fc-ビオチンをウェルに添加し、続
いてNKG2D結合ドメインを添加した。インキュベーションおよび洗浄後、Rae-1
デルタ-Fcでコーティングされたウェルに結合したままであったNKG2D-Fc-ビ
オチンを、ストレプトアビジン-HRPおよびTMB基質を使用して検出した。吸光度を
450nMにて測定し、540nMにて補正した。バックグラウンドを差し引いた後、N
KG2D-Fcタンパク質へのNKG2D結合ドメインの特異的結合を、Rae-1デル
タ-Fcでコーティングされたウェルへの結合を遮断されたNKG2D-Fc-ビオチン
のパーセンテージから計算した。陽性対照(配列番号101~104から選択される重鎖
および軽鎖可変ドメイン、またはeBioscienceにおいて入手可能な抗マウスN
KG2DクローンMI-6およびCX-5を含む)ならびに種々のNKG2D結合ドメイ
ンクローンはマウスNKG2DへのRae-1デルタの結合を遮断したが、アイソタイプ
対照抗体はRae-1デルタとの競合をほとんど示さなかった(
図10)。
(実施例3)
NKG2D結合ドメインクローンはNKG2Dを活性化させる
【0277】
CD3ゼータシグナル伝達ドメインをコードする核酸配列に、ヒトおよびマウスNKG
2Dの核酸配列を融合させて、キメラ抗原受容体(CAR)構築物を得た。次に、ギブソ
ンアセンブリを使用してNKG2D-CAR構築物をレトロウイルスベクターにクローニ
ングし、レトロウイルス産生のためにexpi293細胞にトランスフェクトした。8μ
g/mLのポリブレンと共にNKG2D-CARを含有するウイルスにEL4細胞を感染
させた。感染の24時間後、EL4細胞中のNKG2D-CARの発現レベルをフローサ
イトメトリーによって分析し、細胞表面で高レベルのNKG2D-CARを発現するクロ
ーンを選択した。
【0278】
NKG2D結合ドメインがNKG2Dを活性化させるかどうかを判定するために、それ
らをマイクロプレートのウェルに吸着させ、抗体断片でコーティングされたウェルにおい
てNKG2D-CAR EL4細胞をブレフェルジン-Aおよびモネンシンの存在下で4
時間にわたって培養した。NKG2D活性化の指標である細胞内TNFα産生をフローサ
イトメトリーによってアッセイした。陽性対照で処置した細胞に対してTNFα陽性細胞
のパーセンテージを正規化した。すべてのNKG2D結合ドメインがヒトNKG2D(図
11)およびマウスNKG2D(
図12)の両方を活性化させた。
(実施例4)
NKG2D結合ドメインはNK細胞を活性化させる
初代ヒトNK細胞
【0279】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血バフィコートから末梢血単核細胞(PBMC)
を単離した。磁気ビーズを用いたネガティブセレクションを使用してPBMCからNK細
胞(CD3
-CD56
+)を単離し、単離されたNK細胞の純度は典型的には>95%で
あった。次に、単離されたNK細胞を、100ng/mLのIL-2を含有する培地中で
24~48時間にわたって培養した後、それらを、NKG2D結合ドメインを吸着させた
マイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジュゲート抗CD107a抗体、
ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中で培養した。培養後、CD3、
CD56およびIFN-γに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用したフロー
サイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3
-CD56
+細胞におけるCD
107aおよびIFN-γの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した。CD107
a/IFN-γ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化受容体の会合
による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよび陽性対照(
例えば、重鎖可変ドメインは配列番号101または配列番号103によって表され、軽鎖
可変ドメインは配列番号102または配列番号104によって表される)では、アイソタ
イプ対照よりも高いパーセンテージのNK細胞がCD107a
+およびIFN-γ
+にな
ることが示された(
図13および
図14は、NK細胞の調製のために異なるドナーのPB
MCをそれぞれ使用した、2つの独立した実験からのデータを表す)。
初代マウスNK細胞
【0280】
C57Bl/6マウスから脾臓を得、70μmのセルストレイナーを通して押しつぶし
て、単一細胞懸濁液を得た。細胞をペレット化し、ACK溶解緩衝剤(Thermo F
isher Scientificから購入した、#A1049201;155mM塩化
アンモニウム、10mM炭酸水素カリウム、0.01mM EDTA)に再懸濁して赤血
球を除去した。残りの細胞を100ng/mLのhIL-2と共に72時間にわたって培
養し、その後採取し、NK細胞単離の用意をした。次に、磁気ビーズを用いたネガティブ
ディプリーション(negative depletion)技術を使用し、典型的には>90%の純度で脾
臓細胞からNK細胞(CD3
-NK1.1
+)を単離した。精製されたNK細胞を、10
0ng/mLのmIL-15を含有する培地中で48時間にわたって培養した後、NKG
2D結合ドメインを吸着させたマイクロプレートのウェルに移し、フルオロフォアコンジ
ュゲート抗CD107a抗体、ブレフェルジン-A、およびモネンシンを含有する培地中
で培養した。NKG2D結合ドメインでコーティングされたウェルにおいて培養した後、
CD3、NK1.1およびIFN-γに対するフルオロフォアコンジュゲート抗体を使用
したフローサイトメトリーによってNK細胞をアッセイした。CD3
-NK1.1
+細胞
におけるCD107aおよびIFN-γの染色を分析して、NK細胞の活性化を評価した
。CD107a/IFN-γ二重陽性細胞の増加は、1つの受容体ではなく2つの活性化
受容体の会合による、より良好なNK細胞の活性化を示す。NKG2D結合ドメインおよ
び陽性対照(eBioscienceにおいて入手可能な抗マウスNKG2DクローンM
I-6およびCX-5から選択される)は、アイソタイプ対照よりも高いパーセンテージ
のNK細胞がCD107a
+およびIFN-γ
+になることを示した(
図15および
図1
6は、NK細胞の調製のために異なるマウスをそれぞれ使用した、2つの独立した実験か
らのデータを表す)。
(実施例5)
NKG2D結合ドメインは標的腫瘍細胞の細胞傷害性を可能にする
【0281】
ヒトおよびマウス初代NK細胞活性化アッセイは、NKG2D結合ドメインとのインキ
ュベーション後、NK細胞における細胞傷害性マーカーの増加を実証した。これが腫瘍細
胞溶解の増加につながるかどうかに対処するために、各NKG2D結合ドメインが単一特
異性抗体に発達させる細胞ベースのアッセイを利用した。Fc領域を1つの標的化アーム
として使用し、一方、Fab断片領域(NKG2D結合ドメイン)はNK細胞を活性化す
るための別の標的化アームとして働いた。ヒト起源であり、高レベルのFc受容体を発現
するTHP-1細胞を腫瘍標的として使用し、Perkin Elmer DELFIA
細胞傷害性キットを使用した。THP-1細胞をBATDA試薬で標識し、105/mL
にて培養培地に再懸濁した。次に、標識したTHP-1細胞をNKG2D抗体と組み合わ
せ、マイクロタイタープレートのウェル中で37℃にて3時間、マウスNK細胞を単離し
た。インキュベーション後、20μLの培養上清を取り出し、200μLのユーロピウム
溶液と混合し、暗所で15分間振盪しながらインキュベートした。時間分解蛍光モジュー
ル(励起337nM、発光620nM)を備えたPheraStarプレートリーダーに
よって蛍光を経時的に測定し、キットの指示に従って特異的溶解を計算した。
【0282】
Fcとコンジュゲートした陽性対照のULBP-6(NKG2Dに対する天然リガンド
である)は、マウスNK細胞によるTHP-1標的細胞の特異的溶解の増加を示した。N
KG2D抗体も、THP-1標的細胞の特異的溶解を増加させたが、アイソタイプ対照抗
体は特異的溶解の低減を示した。点線は、抗体を添加していないマウスNK細胞によるT
HP-1細胞の特異的溶解を示す(
図17)。
(実施例6)
NKG2D抗体は高い熱安定性を示す
【0283】
NKG2D結合ドメインの融解温度を、示差走査型蛍光定量法を使用してアッセイした
。外挿した見かけの融解温度は典型的なIgG1抗体と比較して高い(
図18)。
(実施例7)
NKG2DおよびCD16の架橋によるヒトNK細胞の相乗的活性化
初代ヒトNK細胞活性化アッセイ
【0284】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血バフィコートから末梢血単核細胞(PBMC)
を単離した。ネガティブ磁気ビーズ(StemCell #17955)を使用してPB
MCからNK細胞を精製した。NK細胞は、フローサイトメトリーによって決定して>9
0%のCD3-CD56+であった。次に、細胞を、活性化アッセイに使用する前に10
0ng/mLのhIL-2(Peprotech #200-02)を含有する培地中で
48時間増やした。抗体を、滅菌PBS 100μL中2μg/mL(抗CD16、Bi
olegend #302013)および5μg/mL(抗NKG2D、R&D #MA
B139)の濃度にて4℃で一晩、96ウェル平底プレート上にコーティングし、続いて
ウェルを十分に洗浄して過剰の抗体を除去した。脱顆粒の評価のために、IL-2活性化
NK細胞を、100ng/mLのヒトIL-2(hIL2)および1μg/mLのAPC
コンジュゲート抗CD107a mAb(Biolegend #328619)を補充
した培養培地に5×105個の細胞/mLにて再懸濁した。次に、1×105個の細胞/
ウェルを、抗体でコーティングされたプレート上に添加した。タンパク質輸送阻害剤であ
るブレフェルジンA(BFA、Biolegend #420601)およびモネンシン
(Biolegend #420701)を、それぞれ1:1000および1:270の
最終的希釈度にて添加した。蒔いた細胞を、37℃にて4時間にわたって5%CO2中で
インキュベートした。IFN-γの細胞内染色のために、NK細胞を、抗CD3(Bio
legend #300452)および抗CD56 mAb(Biolegend #3
18328)で標識し、続いて固定し、透過処理し、抗IFN-γ mAb(Biole
gend #506507)で標識した。NK細胞を、生CD56+CD3-細胞におい
てゲーティングした後、フローサイトメトリーによってCD107aおよびIFN-γの
発現について分析した。
【0285】
受容体の組合せの相対的効力を調査するため、プレート結合刺激により、NKG2Dま
たはCD16の架橋および両受容体の共架橋を行った。
図19(
図19A~19C)に示
したように、CD16およびNKG2Dの組み合わせた刺激は、CD107aのレベル(
脱顆粒)(
図19A)および/またはIFN-γ産生(
図19B)の大きな上昇をもたら
した。点線は、各受容体の個々の刺激の相加効果を表す。
抗CD16、抗NKG2Dまたは両方のモノクローナル抗体の組合せを用いた4時間の
プレート結合刺激の後、IL-2活性化NK細胞のCD107aレベルおよび細胞内IF
N-γ産生を分析した。グラフは、平均(n=2)±Sdを示している。
図19Aは、C
D107aのレベルを示し、
図19Bは、IFN-γのレベルを示し、
図19Cは、CD
107aおよびIFN-γのレベルを示す。
図19A~19Cに示したデータは、5名の
異なる健康なドナーを使用した、5つの独立した実験を代表するものである。
(実施例8)
三重特異性結合タンパク質(TriNKET)に媒介される標的細胞の細胞傷害性の増
強
ヒトがん抗原を発現した細胞へのTriNKETまたはmAbの結合の評価
【0286】
EPCAMを発現するヒトがん細胞株を使用して、F4フォーマットおよびF3’フォ
ーマットの、EPCAMを標的とするクローンMT110に由来するTriNKETの腫
瘍抗原結合を評価した。ヒト細胞株H747、HCC827およびHCT116を使用し
て、TriNKETおよびmAbのEPCAMを発現した細胞への結合を評価した。Tr
iNKETまたはmAbを希釈し、それぞれの細胞とインキュベートした。フルオロフォ
アコンジュゲート抗ヒトIgG二次抗体を使用して結合を検出した。細胞をフローサイト
メトリーによって分析し、EPCAMを発現した細胞に対する結合MFIをヒト組換えI
gG1で染色した対照に対して正規化してバックグラウンド値に対する倍率を得た。
【0287】
図37は、本開示の三重特異性結合タンパク質(TriNKET)(A49-F4-T
riNKET-MT110およびA49-F3’-TriNKET-MT110)および
親モノクローナル抗体(mAb)のEpCAMを発現するH747ヒト結腸直腸がん細胞
への結合を示す。
図38は、本開示の三重特異性結合タンパク質(TriNKET)(A
49-F4-TriNKET-MT110およびA49-F3’-TriNKET-MT
110)および親モノクローナル抗体(mAb)のEpCAMを発現するHCC827ヒ
ト肺がん細胞への結合を示す。
図39は、本開示の三重特異性結合タンパク質(TriN
KET)(A49-F4-TriNKET-MT110およびA49-F3’-TriN
KET-MT110)および親モノクローナル抗体(mAb)のEpCAMを発現するH
CT116ヒト結腸直腸がん細胞への結合を示す。全体的な結合は、F4-TriNKE
Tでは、MT110 EPCAM結合体が組み込まれたF3’-TriNKETと比較し
てより強力であった。
初代ヒトNK細胞の細胞傷害性アッセイ
【0288】
密度勾配遠心分離を使用し、ヒト末梢血バフィコートからPBMCを単離した。単離さ
れたPBMCを洗浄し、NK細胞単離のために用意した。磁気ビーズを用いたネガティブ
セレクション技術を使用してNK細胞を単離した。達成された単離されたNK細胞の純度
は、典型的には90%よりも高いCD3-CD56+であった。単離されたNK細胞をサ
イトカインなしで一晩インキュベートし、翌日、細胞傷害性アッセイに使用した。
DELFIA細胞傷害性アッセイ
【0289】
目的の標的を発現するヒトがん細胞株を培養物から採取し、HBSで洗浄し、BATD
A試薬(Perkin Elmer、AD0116)で標識するために成長培地に106
個の細胞/mLにて再懸濁した。製造業者の指示に従って標的細胞を標識した。標識後、
細胞をHBSで3回洗浄し、0.5×105個の細胞/mLにて培養培地に再懸濁した。
バックグラウンドウェルを用意するために、標識した細胞のアリコートを取っておき、細
胞を培地からスピンアウトした。培地100μLを、ペレット化した細胞を乱さないよう
に3連でウェルに注意深く添加した。100μLのBATDA標識細胞を96ウェルプレ
ートの各ウェルに添加した。ウェルを標的細胞からの自然放出のために保存し、1%のT
riton-Xの添加による標的細胞の溶解のために用意した。目的の腫瘍標的に対する
モノクローナル抗体またはTriNKETを培養培地で希釈し、50μLの希釈したmA
bまたはTriNKETを各ウェルに添加した。休止NK細胞を培養物から採取し、洗浄
し、所望のエフェクター細胞と標的細胞の比に応じて培養培地に1.0×105~2.0
×106個の細胞/mLにて再懸濁した。50μLのNK細胞をプレートの各ウェルに添
加して合計200μLの培養体積にした。アッセイの展開前にプレートを37℃にて5%
CO2で2~4時間にわたってインキュベートした。
【0290】
2~3時間培養した後、プレートをインキュベーターから取り出し、細胞を200×g
で5分間の遠心分離によってペレット化した。20μLの培養上清を、製造業者から提供
された清浄なマイクロプレートに移し、200μLの室温ユーロピウム溶液を各ウェルに
添加した。プレートを光から保護し、プレートシェーカーにおいて250rpmにて15
分にわたってインキュベートした。プレートを、SpectraMax(登録商標)i3
X機器(Molecular Devices)を使用して読み取り、パーセント特異的
溶解を計算した(特異的溶解%=(実験的放出-自然放出)/(最大放出-自然放出))
×100)。
【0291】
図40Aおよび
図40Bは、H747ヒトがん細胞に対する、2名の異なる健康なドナ
ー由来の休止ヒトNK細胞のTriNKET媒介細胞傷害性である。
図41Aおよび
図4
1Bは、HCC827ヒトがん細胞に対する、2名の異なる健康なドナー由来の休止ヒト
NK細胞のTriNKET媒介細胞傷害性である。
図42Aおよび
図42Bは、MCF7
ヒトがん細胞に対する、2名の異なる健康なドナー由来の休止ヒトNK細胞のTriNK
ET媒介細胞傷害性である。
図43Aおよび
図43Bは、HCT116ヒトがん細胞に対
する、2名の異なる健康なドナー由来の休止ヒトNK細胞のTriNKET媒介細胞傷害
性である。EPCAMを標的とするF4-TriNKETは、EPCAMを標的とする親
mAbよりも効果的に標的細胞を死滅させた。F4-TriNKETはまた、F3’-T
riNKETよりも強力に標的細胞を死滅させ、これは、F4-TriNKETの標的細
胞への結合がより強力であることを反映するものであり得る。
参照による組込み
【0292】
本明細書で参照される特許文書および科学論文の各々の開示全体は、すべての目的のた
めに参照により組み込まれる。
等価物
【0293】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱せずに他の特定の形態で実現されても
よい。したがって、前述の実施形態は、本明細書で記載している本発明を限定するのでは
なく、すべての点で例示的であるとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は
、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲
の等価の意味および範囲に入るすべての変更はその中に包含されることが意図される。