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特開2023-166426デジタル通貨を使用して取引を円滑にするためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166426
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】デジタル通貨を使用して取引を円滑にするためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20231114BHJP
【FI】
G06Q20/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023133908
(22)【出願日】2023-08-21
(62)【分割の表示】P 2021529241の分割
【原出願日】2019-08-01
(31)【優先権主張番号】62/736,306
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/713,374
(32)【優先日】2018-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/752,174
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521047650
【氏名又は名称】リッジビュー デジタル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】RIDGEVIEW DIGITAL LLC
【住所又は居所原語表記】13750 Parc Drive, Palm Beach Gardens, FL 33410, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】メイブルム,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】メイブルム,ザッカリー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デジタル通貨を使用して、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の取引を円滑にするための、システムおよび方法を提供する。
【解決手段】デジタル通貨を使用して取引を円滑にする方法は、金融機関のプライベート分散型台帳に参加することと、デジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納し、ある金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金するための取引を受け、取引を表す新たなトランザクションブロックを生成することと、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に参加している他のコンピューティングノードに送信することと、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入することと、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル通貨を使用して、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の取引を円滑にするためのシステムであって、
コンピューティングノードを含み、前記コンピューティングノードは、金融機関のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、前記プライベート分散型台帳は、前記金融機関により発行され、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納し、前記コンピューティングノードは、
前記プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、
ある金額のデジタル通貨を、第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を受け、前記第1のエンティティと前記第2のエンティティは前記金融機関に関連し、前記コンピューティングノードはさらに、
前記プライベート分散型台帳に追加する前記取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成し、
前記プライベート分散型台帳に参加している前記1つ以上のコンピューティングノードに前記新たなトランザクションブロックを送信し、
前記1つ以上のコンピューティングノードから、前記新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し、
前記有効性表示に基づき、前記新たなトランザクションブロックを前記プライベート分散型台帳に挿入し、前記金額のデジタル通貨を前記第1のエンティティから前記第2のエンティティに送金する取引を完了するように構成される、
前記システム。
【請求項2】
前記取引には前記第1のエンティティの電子サインが含まれ、前記有効性表示には、前記第1のエンティティの前記電子サインの有効性表示を含み、前記コンピューティングノードはさらに、
前記1つ以上のコンピューティングノードから前記新たなトランザクションブロックの無効性表示を受信するように構成され、前記無効性表示は、前記第1のエンティティの前記電子サインの無効性表示を含み、前記コンピューティングノードはさらに、
前記無効性表示に基づき、前記取引を拒否し、前記新たなトランザクションブロックが前記プライベート分散型台帳に挿入されるのを防ぐように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記有効性表示は、前記第1のエンティティが前記取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨を有する表示を含み、前記コンピューティングノードはさらに、
前記1つ以上のコンピューティングノードから、前記新たなトランザクションブロックの無効性表示を受信し、
前記第1のエンティティが前記取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨を有していない表示を含む前記無効性表示に基づき、
前記第1のエンティティが、前記十分な金額のデジタル通貨に相当する利用可能な金額の法定通貨の利用権限を有することを確定し、
前記利用可能な金額の法定通貨を前記取引を完了するために必要な前記十分な金額のデジタル通貨に交換し、
前記プライベート分散型台帳に参加している前記1つ以上のコンピューティングノードに前記新たなトランザクションブロックを再送信するように構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2のエンティティが、前記取引が完了した時に、前記金額のデジタル通貨、または、前記金額のデジタル通貨と同等額の法定通貨を受領する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のエンティティは消費者であり、前記第2のエンティティは業者であり、前記第1のエンティティおよび前記第2のエンティティは前記金融機関の顧客である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記取引が、前記デジタル通貨での支払い用に構成されたデジタル通貨カード、モバイルアプリケーション、または、ウェブアプリケーションから開始される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
デジタル通貨を使用して、第1のエンティティと第2のエンティティとの間の取引を円滑にするためのシステムであって、
コンピューティングノードを含み、前記コンピューティングノードは、第1の金融機関のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、前記プライベート分散型台帳は、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納し、前記コンピューティングノードは、
前記プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、
ある金額のデジタル通貨を、第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を受け、前記第1のエンティティは前記第1の金融機関に関連し、前記第2のエンティティは第2の金融機関に関連し、前記コンピューティングノードはさらに、
前記プライベート分散型台帳に追加する前記取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成し、
前記プライベート分散型台帳に参加している前記1つ以上のコンピューティングノードに前記新たなトランザクションブロックを送信し、
前記1つ以上のコンピューティングノードから、前記新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し、前記有効性表示に基づき、
前記新たなトランザクションブロックを前記プライベート分散型台帳に挿入し、前記金額のデジタル通貨の引き出しを完了し、
前記金額のデジタル通貨を同等額の法定通貨に交換し、前記第2の金融機関に関連する前記第2のエンティティに送金するように構成される、
前記システム。
【請求項8】
前記デジタル通貨が、1つ以上の金融機関の1つ以上のデジタル通貨のデジタルウォレットに関連付けられ、
ユーザが保有する1つ以上の金融機関の1つ以上のデジタル通貨の、1つ以上の公開鍵と秘密鍵のペアを含み、
前記ユーザは公開鍵と秘密鍵のそれぞれのペアを使用して、前記公開鍵と秘密鍵のそれぞれのペアに対応する前記金融機関が発行した前記デジタル通貨を、受領および/または送金し得る、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
デジタル通貨は前記デジタルウォレットに格納されず、前記金融機関の前記デジタル通貨は、前記金融機関の前記プライベート分散型台帳に格納および維持される、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項10】
前記デジタルウォレットから前記デジタル通貨を使用するために、前記ユーザは、前記デジタル通貨に対応する前記秘密鍵の使用を許可し、前記デジタル通貨を含む取引に電子サインする、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項11】
前記デジタルウォレットに、コンピュータ、携帯電話、および/または、タブレット自体にインストールされたアプリケーション形式のソフトウェアが含まれる、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項12】
前記デジタルウォレットは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)を介して信頼できる第三者に接続され、前記公開鍵と秘密鍵の格納されたペアは、前記信頼できる第三者により管理される、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項13】
前記デジタルウォレットは、前記公開鍵と秘密鍵のペアを格納するためのハードウェアを含み、前記ハードウェアは、取引の電子サインをするために、ユーザが物理的に押すかタッチする必要があるボタンを含み、前記ハードウェアは、ユーザが取引の電子サインができる前に、前記ユーザが暗証番号(PIN)を入力することを要求する、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項14】
前記デジタルウォレットは、前記デジタルウォレットの使用に対して、消費者特典、ロイヤリティポイント、および/または、位置情報特典をユーザに提供し、ユーザの特典レベルは、前記デジタルウォレットに維持されるデジタル通貨の残高、および/または、1つ以上の取引しきい値を満たすことに基づき決定される、請求項8に記載のデジタルウォレット。
【請求項15】
第1の法定通貨に対して固定される第1のデジタル通貨を、第2の法定通貨に対して固定される第2のデジタル通貨に交換する方法であって、
ユーザから金融機関で、第1の法定通貨に対して固定されるある金額の第1のデジタル通貨を、第2の法定通貨に対して固定される同等額の第2のデジタル通貨に交換する依頼を受信するステップと、
前記受けた両替の依頼を、前記金融機関のプライベート分散型台帳に格納するステップと、
前記ユーザのデジタルウォレットから前記金額の前記第1のデジタル通貨を出金し、前記ユーザの前記デジタルウォレットに前記同等額の前記第2のデジタル通貨を入金するステップとを含む、
前記方法。
【請求項16】
前記受けた両替の依頼を完了するために、前記金融機関は、前記第1の法定通貨の第1のオムニバス口座から対応する金額の前記第1の法定通貨を出金し、対応する同等額の前記第2の法定通貨を前記第2の法定通貨の第2のオムニバス口座に入金する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記受けた両替の依頼はリアルタイムで実行され、現在の両替レートが前記依頼に適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記デジタルウォレットの前記ユーザは、前記第1の法定通貨と前記第2の法定通貨との間の両替レートに関連する1つ以上の通知書を設定し得て、前記両替の依頼は、前記1つ以上の通知書を受信することに基づき開始される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
デジタル通貨取引を円滑にするための決済機構であって、
コンピューティングノードを含み、前記コンピューティングノードは、前記決済機構のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、前記プライベート分散型台帳は、1つ以上のデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納し、前記コンピューティングノードは、
前記プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、
ある金額のデジタル通貨を第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットに送金する取引を受けるように構成され、
前記デジタル通貨は第1の金融機関によって発行され、法定通貨に対して固定され
前記第1のデジタルウォレットは前記第1の金融機関のユーザに属し、前記第2のデジタルウォレットは第2の金融機関のユーザに属し、
取引に関する情報が前記第1の金融機関の前記第1のデジタルウォレット、および/または、前記第2の金融機関の前記第2のデジタルウォレットに送信またはそれらから受信され、前記第1の金融機関のプライベート分散型台帳、および/または、前記第2の金融機関のプライベート分散型台帳に記録され、前記コンピューティングノードはさらに、
前記決済機構の前記プライベート分散型台帳での前記取引を表す新たなトランザクションブロックを格納し、
前記第1のデジタルウォレットと前記第2のデジタルウォレットを更新して、前記金額のデジタル通貨を前記第1のデジタルウォレットから前記第2のデジタルウォレットに送金するように構成される、
前記決済機構。
【請求項20】
前記決済機構が、前記第1のデジタルウォレットから前記第2のデジタルウォレットに前記金額のデジタル通貨を送金する前記取引に関して、前記第1の金融機関、および/または、前記第2の金融機関から通知される、請求項19に記載の決済機構。
【請求項21】
前記決済機構が、ある金額のデジタル通貨を、前記第1のデジタルウォレットから別のデジタルウォレットに送金する別の取引に関して、前記第1の金融機関から通知され、両方のデジタルウォレットは前記第1の金融機関のユーザに属する、請求項19に記載の決済機構。
【請求項22】
前記決済機構が、各金融機関の資産規模、債務格付け、および/または、財務健全性審査に基づいて金融機関をランク付けする階層構造を組み込んでいる、請求項19に記載の決済機構。
【請求項23】
前記第1の金融機関および前記第2の金融機関が最上位層に属し、定期的にまたは残高制限が超過した場合にそれらの間の取引を決済し、さらに、前記第1の金融機関が最上位層に属し、前記第2の金融機関が最下位層に属する場合は、個々の取引ベースで、または残高制限が超過した時に、それらの間の取引を決済する、請求項22に記載の決済機構。
【請求項24】
前記決済機構が、前記決済機構および前記第1および第2の金融機関の前記プライベート分散型台帳全体の前記取引を追跡するために、固有の取引番号を格納し、前記固有の取引番号は、前記決済機構、前記第1の金融機関、前記第2の金融機関、または、固有の取引番号を発行する独立したエンティティにより割り当てられる、請求項19に記載の決済機構。
【請求項25】
前記決済機構が、前記第1の金融機関と前記第2の金融機関との間の取引に関する紛争解決機関である、請求項19に記載の決済機構。
【請求項26】
前記決済機構が、前記第1の金融機関に関連する前記第1のエンティティと前記第2の金融機関に関連する前記第2のエンティティとの間の取引を円滑にするための手数料を課し、前記決済機構はいかなるデジタル通貨も保有しない、請求項19に記載の決済機構。
【請求項27】
前記決済機構が、前記第1の金融機関に関連する前記第1のエンティティと前記第1の金融機関に関連する第3のエンティティとの間の取引を円滑にするための手数料を課す、請求項19に記載の決済機構。
【請求項28】
前記決済機構が、前記第1の金融機関および前記第2の金融機関に、前記取引を完了する適切なタイミングを通知する、請求項19に記載の決済機構。
【請求項29】
前記決済機構が、1つ以上の「Know your customer」ポリシーを実行して、ユーザにデジタルウォレットを発行するプロセス、および/または、第三者がユーザの代わりにデジタル通貨の保有を委託されることを承認するプロセスを標準化する、請求項19に記載の決済機構。
【請求項30】
直接または前記第1の金融機関または前記第2の金融機関から、不正であるとか、違法な商品を購入するために使用されるとか、および/または、本質的に違法である取引に関する情報を受け取ると、前記決済機構は、前記情報に基づき前記取引を妨げ、前記決済機構は、取引に関与する前記第1のデジタルウォレットおよび/または前記第2のデジタルウォレットを、凍結および/または無効にし、さらなる違法行為および/または資金喪失の原因を防ぐ、請求項19に記載の決済機構。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ビットコイン等の暗号通貨は、日々人気が高まっている。これらの暗号通貨は、中央サーバ等の中央機関を必要とせず、金融取引を円滑にするブロックチェーン技術に依存している。しかし、このような取引を監視する中央機関がないため、不正取引の蔓延、暗号通貨価値の大幅な変動、暗号通貨を使用する取引に関する透明性の欠如など、暗号通貨採用者に様々な問題を引き起こした。一般的な金融機関では、これらの問題の少なくともいくつかのために、暗号通貨を採用することを躊躇してきた。一例では、金融機関のJP Morganの会長兼CEOであるJamie Dimon氏は、ビットコイン暗号通貨を「不正手段」と呼び、「まずいことになるだろう」と述べている。
【0002】
暗号通貨とは、売主と買主のような2つのエンティティ(entity)間で金融取引を実行するために使用できるデジタル資産である。暗号通貨を使用した金融取引は、暗号技術を使用して金融取引を保護する分散型コンピュータシステムを使用して円滑になる。分散型コンピュータシステムは、サーバ、コンピュータ、またはその他の適切なコンピューティングノード等の複数のコンピューティングノードを含み得る一方、分散型コンピュータシステムは、暗号通貨を使用して金融取引を監視する中央サーバ等の中央権限を有さない。代わりに、分散型コンピュータシステムのコンピューティングノードは、投票、または、合意に達する別の形式を使用して、特定の金融取引を承認または拒否する。暗号通貨は本質的に低い水準の規制を有し、中央機関により管理されていないため、取引を厳密に監視することはできない。これらの取引には実名は必要ないため、関係者は匿名のままとなる。しかし、暗号通貨のこのような匿名性の側面は、犯罪活動を助長する可能性がある。暗号通貨は、検出されることなく国境を越えて数百万ドル相当の暗号通貨を簡単に運ぶことができるため、犯罪者にとっても魅力的なものになっている。
【0003】
一例では、分散型コンピュータシステムは、暗号通貨を使用する金融取引のデータベースとして機能するブロックチェーンを介して、暗号通貨を使用する金融取引を円滑にする。ブロックチェーンは、ブロック、または、トランザクションブロックと呼ばれる、継続的に増加するレコードのリストであり、暗号技術を使用してリンクされ、保護される。新たな金融取引はそれぞれ、ブロックチェーンにトランザクションブロックとして追加され得る。例えば、新たな金融取引のブロックには、前のブロックの暗号化ハッシュ、タイムスタンプ、および、取引データが含まれ得る。暗号化ハッシュを使用して、前のブロック等、可変量のデータの固定長の数学的表現を生成する。金融取引を記録する場合、ブロックチェーンは通常、複数のコンピューティングノードを含む分散型コンピュータシステムにより管理され、新たな金融取引を受け、新たなトランザクションブロックを生成し、新たなトランザクションブロックを検証して、新たなトランザクションブロックをブロックヘッドに挿入する。新たな金融取引は、通常「支払者Xが受領者ZにY暗号通貨を送信」という形式でトランザクションブロックに記録される。一度記録されると、任意のトランザクションブロック内のデータは、後続のブロックを変更しない限り遡及的に変更することはできず、それには、分散コンピュータシステム内のコンピューティングノードの合意が必要となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、現在の暗号通貨が消費者に焦点を合わせていることを理解している。暗号通貨は多くの消費者に採用されているが、銀行やその他の官制金融機関等の一般的な金融機関では使用できない。金融機関は、金融取引を円滑にするために法定通貨を使用する。米ドル等の法定通貨は、政府が法定貨幣として宣言した通貨である。暗号通貨とは異なり、法定通貨は通常、短期間では価値に大きな変動がない。銀行やその他の官制金融機関等の金融機関は、金融機関のような中央機関を含む集中コンピュータシステムを使用し、金融取引を透過的に監視し、金融取引を受け、検証し、記録する。このような集中型コンピュータシステムにより、エンティティにより承認された攻撃等の不正な金融取引を防止して、金融機関の1人以上の口座保有者から通貨を回収し得る。例えば、集中型コンピュータシステムでは、取引の続行を許可する前に、試行された各取引を電子サインで承認する必要があり得る。このような取引は金融機関、および/または、集中コンピュータシステムにより規制されているため、取引は厳密に監視され、取引を実行するために関係者が身元を確認する必要がある。例えば、金融機関、および/または、集中型コンピュータシステムでは、1つ以上の関係機関が「Know your customer」(KYC)の手順に従い、身元を確認し、そして/または、違法行為の適非および潜在的リスクを評価する必要がある。このような要件により、不正取引やマネーロンダリング等の違法行為が減少する。
【0005】
いくつかの態様において、米ドル等の法定通貨に関して固定される金融機関固有のデジタル通貨を使用して、金融取引を円滑にするためのシステムと方法を本明細書で説明する。金融機関は、その金融機関専用の分散型台帳を実装し得る。このプライベート分散型台帳は、ブロック、または、トランザクションブロックと呼ばれる、継続的に増加するレコードのリストであり、暗号技術を使用してリンクされ、保護される。パブリック型ブロックチェーンとは異なり、プライベート分散型台帳は取引記録が公開されない。ただし、金融機関、および/または、その代理人は、対応するトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に追加することにより、新たな金融取引を記録し得る。例えば、新たな金融取引のブロックには、前のブロックの暗号化ハッシュ、タイムスタンプ、および、取引データが含まれ得る。暗号化ハッシュを使用して、前のブロックなど、可変量のデータの固定長の数学的表現を生成する。プライベート分散型台帳は、金融機関のデジタル通貨を使用して、金融機関の顧客間の取引を記録し得る。いくつかの実施形態では、他の金融機関もまた、前記金融機関のデジタル通貨を使用する取引に参加し得る。例えば、他の金融機関は、取引に関する情報を元の金融機関に送信し、プライベート分散型台帳に加え得る。別の例では、他の金融機関がプライベート分散型台帳の利用権限を許可される場合がある。他の金融機関は、元の金融機関と提携するか、元の金融機関により承認され、プライベート分散型台帳に取引を記録する特権を有し得る。
【0006】
いくつかの態様においては、金融機関はデジタル通貨取引を顧客に提供する一方で、デジタル通貨取引額を損益モデルで追跡することができる。例えば、金融機関は、銀行規制に準拠するために必要な準備預金に向け、デジタル通貨での預金を適用し得る。米国では、準備預金は、金融機関が資産の最小額を現金、つまり法定通貨を保持することを要求する連邦銀行規制の一部である。金融機関のデジタル通貨は、米ドル等の対応する法定通貨により裏付けられているため、金融機関は、準備預金を支払うために、対応する法定通貨と同等であるとしてデジタル通貨に依存し得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、デジタル通貨と、金融機関が帰する法定通貨、顧客が帰する法定通貨、またはこの用途に適した別の法定通貨に関連付け得る。
【0007】
少なくともいくつかの実施形態の利点は、金融機関、および/または、小売業者等の認定代理人のみがデジタル通貨を使用して取引を承認できるため、取引の透明性が提供されることである。少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、ビットコインブロックチェーン等のパブリック型ブロックチェーンに通常必要とされるプルーフオブワークの作成を排除できることである。プルーフオブワークは、取引を確認し、新たなトランザクションブロックをパブリック型ブロックチェーンに記録するために、パブリック型ブロックチェーンで使用されるアルゴリズムである。任意のエンティティ、個人、または組織が、パブリック型ブロックチェーンに新たなトランザクションブロックを記録できるため、プルーフオブワークアルゴリズムが必要となる。ただし、金融機関のデジタル通貨用のプライベート分散型台帳では、金融機関、および/または、認定代理人のみがプライベート分散型台帳にトランザクションブロックを記録できるため、プルーフオブワークアルゴリズムを使用してトランザクションブロックを検証する必要はない。
【0008】
少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、中央取引サーバを必要とせず、複数のサーバに分散されるプライベート分散型台帳にデジタル通貨取引を格納できるため、金融機関により多くの保障を提供できることである。これで、中央取引サーバが含まれる場合の単一障害点はなくなった。少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、金融機関のある顧客から別の顧客への高速で低コストの取引の提供である。いくつかの実装例では、業者は、金融機関のデジタル通貨を引き受け、それが法定通貨に裏付けられている(例えば、デジタル通貨は割り当てられた法定通貨に対して価値が変動しない)ことを確信しており、そして、すぐに資金を使用でき得る(例えば、クレジットカードおよびデビットカードの遅さおよび経費と比較して)。少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、業者および個人消費者等の顧客は、高速および低コスト取引のようなデジタル通貨の使用に関する利点を享受し、銀行は、損益モデルに預金を含めることができる等の法定通貨に関する利点を享受し得ることである。
【0009】
いくつかの実施形態では、金融機関の各顧客に、デジタル通貨口座が与えられる。デジタル通貨は、米ドル等の法定通貨に関して固定され得て、デジタル通貨は、ユーザのデジタル通貨口座とユーザの法定通貨口座との間で交換可能であり得る。顧客は、利息を得て、連邦預金保険公社(FDIC)から保険に基づく預金保護を受けることができる、当座預金口座等の一般的な法定通貨口座の利点を享受し得る。いくつかの実施形態では、顧客は、デジタル通貨口座を使用することで、高利回り等の追加のプロモーションを享受し得る。デジタル通貨を発行する金融機関は、このようなデジタル通貨口座を提供することにより、より多くの預金を獲得し得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、金融機関の顧客は、ある金額の法定通貨を金融機関のデジタル通貨に交換することを依頼することができる。金融機関は、顧客用に新しいデジタル通貨口座を作成し、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を口座に預け得る。または、金融機関は、顧客の既存のデジタル通貨口座に、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を預け得る。いくつかの実施形態では、顧客のデジタル通貨口座は、金融機関の顧客の法定通貨口座とは別ではあるが、関連している。金融機関は、その金融機関の、または、別の金融機関の顧客の法定通貨口座から、または、物理的な法定通貨か現金の形で、顧客から法定通貨を受領、または、取得し得る。
【0011】
いくつかの態様において、個人消費者や業者を含む金融機関の顧客は、ビットコイン等の暗号通貨に関するリスクなしにデジタル通貨を使用できる。例えば、業者は、価値が短期間で減少し得るリスクのため、従来のデジタル通貨を受け入れたくない可能性がある。個人消費者の観点から見ると、多くの個人がデジタル通貨を投資と考えていることが懸念されている。個人消費者は、価値が上がる可能性がある(ひいては、個人消費者が商品に対して「過払い」する)リスクのため、デジタル通貨での支払いを望まない可能性がある。つまり、個人消費者は通常、ビットコイン等の従来のデジタル通貨を、使用可能な通貨ではなく投資と見なすが、業者は、その価値が大きく変動する可能性があるため、通常、従来のデジタル通貨を危険であると見なす。価値が法定通貨に固定されているデジタル通貨は、これらの問題を解消し得る。従って、少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、個人消費者ならびに業者が、従来のデジタル通貨に関する上記の問題を回避しながら、デジタル通貨の利点を享受し得ることである。
【0012】
いくつかの実施形態では、金融機関は、金融機関の顧客、および/または、その金融機関により承認された他の金融機関の顧客に対し、そのデジタル通貨の使用の制限を選択することができる。金融機関により承認されていないエンティティが関与する取引の場合、自動決済機構(ACH(Automated Clearing House))等の従来の銀行間送金システムを使用し得る。ACHは、米国における法定通貨ベースの金融取引のための電子ネットワークである。金融機関のデジタル通貨の使用は、従来の銀行間送金システムで使用する場合でも有益であり得る。クレジットカードやデビットカードを使用する従来の取引とは異なり、デジタル通貨を使用する取引は、取引速度が速いため、即刻、または同営業日内に完了し得る。例えば、デビットカードを使用する従来の取引では、顧客の口座からすぐに引き落とされ得るが、業者は即刻代金を受領しない。
【0013】
いくつかの態様において、各金融機関は独自のデジタル通貨を発行し得る。金融機関は、2つ以上の異なる金融機関からのデジタル通貨を含む取引に対して、中央決済機構の利用を選択し得る。個人口座はすぐに借方記帳および貸方記帳され、金融機関は1日1回またはその他の頻度で銀行間取引を決済し得る。一実施例では、特定の銀行のデジタル通貨口座に資金を保持している店舗は、別の銀行から発行されたデジタル通貨を引き続き受け入れることができる。この取引は、2つの異なる金融機関からのデジタル通貨が関与する取引のために、中央決済機構を経由して清算され得る。
【0014】
少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、一般的な金融機関で法定通貨で資金を保持するのと同じ安全性を提供するデジタル通貨を、消費者に提供することである。短期的には、連邦政府がデジタル通貨を発行する可能性はほとんどない。米国では、デジタル通貨の価値を米ドルに結び付けることにより、デジタル通貨は対応する法定通貨である米ドルにより裏付けられる。さらに、暗号通貨資金が通常保持、および/または、売買される暗号通貨交換所とは異なり、金融機関は連邦政府により規制されている。一般的な暗号通貨交換所は、顧客が法定通貨や他の暗号通貨等の他の資産と暗号通貨を売買できるようにする、規制されていないビジネスである。いくつかの実施形態では、消費者は、法定通貨口座で提供される預金保証と同様に、デジタル通貨口座で預金保証を受け得る。米国では、連邦預金保険公社(FDIC)は米国政府の独立機関であり、FDICが保証する金融機関が破綻した場合に、預金消費者を被保険預金の損失から保護する。消費者は、モバイルアプリケーション、ウェブアプリケーション、または、物理的なデジタル通貨カードを使用してデジタル通貨で取引を実行し、法定通貨での取引と同様の不正保護を受け得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、消費者は、パスワード、生体認証、顔認証、指紋、アイスキャン、および他の適切な認証手段など、自分の身元を認証できる任意の手段を使用して取引を実行できる。いくつかの実施形態では、消費者は、テキストメッセージ、近距離無線通信対応装置、APPLE PAY(登録商標)、VENMO(登録商標)、PAYPAL(登録商標)等のモバイル支払いサービス(APPLE PAY(登録商標)は、Apple Inc.(米国California州Cupertino)、VENMO(登録商標)およびPAYPAL(登録商標)は、Paypal, Inc.(California州San Jose)の登録商標である)、および、他の適切な支払い手段等の任意の適切な支払い手段を使用することができる。
【0016】
少なくともいくつかの実施形態の別の利点は、誰でもがブロックチェーンに取引を入力でき、それが永続的である一般的な暗号通貨とは異なり、金融機関は、プライベート分散型台帳に取引を記録するのが、唯一の認定エンティティであるか、または、他の認定代理人を追加するかを決定できることである。いくつかの実施形態では、金融機関は、別の金融機関等の認定代理人に、プライベート分散型台帳の利用権限を許可し得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、認定代理人がプライベート分散型台帳に挿入するために取引を送信することを許可し得るが、金融機関自体のみが取引を記録することができる。金融機関は、誰がプライベート分散型台帳への利用権限を有するかを制御し、そのような利用権限を承認できるのは金融機関のみであるため、金融機関のデジタル通貨を使用する顧客に、高いレベルのセキュリティを提供し得る。いくつかの実施形態では、本明細書でさらに説明するように、例えば、それぞれのデジタル通貨を含む異なる金融機関間の取引を処理するために、金融機関は、中央決済機構により要求される一定の規定に準拠し得る。
【0017】
いくつかの態様では、デジタル通貨を使用して第1のエンティティと第2のエンティティとの間の取引を円滑にするためのシステムは、コンピューティングノードを含み、コンピューティングノードは、金融機関のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、プライベート分散型台帳は、金融機関により発行され、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、ある金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を受けるように構成され、ここで、第1のエンティティと第2のエンティティは金融機関に関係しており、コンピューティングノードはさらに、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す新たなトランザクションブロックを生成し、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを送信し、1つ以上のコンピューティングノードから新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し、その有効性表示に基づき、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入することで、ある金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を完了するように構成される。
【0018】
いくつかの実施形態では、取引には第1のエンティティの電子サインが含まれ、有効性表示には、第1のエンティティの電子サインの有効性表示を含み、コンピューティングノードは、1つ以上のコンピューティングノードから新たなトランザクションブロックの無効性表示を受信するようにさらに構成され、新たな無効性表示は、第1のエンティティの電子サインの無効性表示を含み、さらに、無効性表示に基づき、取引を拒否し、新たなトランザクションブロックがプライベート分散型台帳に挿入されるのを防ぐ。
【0019】
いくつかの実施形態では、有効性表示は、第1のエンティティが取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨を有する表示を含み、コンピューティングノードは、1つ以上のコンピューティングノードから新たなトランザクションブロックの無効性表示を受信するようにさらに構成され、第1のエンティティが取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨を有していない表示を含む無効性表示に基づき、第1のエンティティが十分な金額のデジタル通貨と同等の利用可能な金額の法定通貨の利用権限を確定し、利用可能な金額の法定通貨を取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨に交換し、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに再送信する。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2のエンティティは、取引が完了した時に、当該金額のデジタル通貨または当該金額のデジタル通貨と同等額の法定通貨を受領する。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のエンティティは消費者であり、第2のエンティティは業者であり、第1のエンティティおよび第2のエンティティは当該金融機関の顧客である。
【0022】
いくつかの実施形態では、取引は、デジタル通貨での支払い用に構成されたデジタル通貨カード、モバイルアプリケーション、または、ウェブアプリケーションから開始される。
【0023】
いくつかの態様では、デジタル通貨を使用して第1のエンティティと第2のエンティティとの間の取引を円滑にするためのシステムは、コンピューティングノードを含み、コンピューティングノードは、第1の金融機関のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、プライベート分散型台帳は、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、ある金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を受けるように構成され、ここで、第1のエンティティは第1の金融機関に関係し、第2のエンティティは第2の金融機関に関係しており、コンピューティングノードはさらに、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す新たなトランザクションブロックを生成し、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを送信し、1つ以上のコンピューティングノードから新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し、その有効性表示に基づき、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入することで、ある金額のデジタル通貨の引き出しを完了し、当該金額のデジタル通貨を同等額の法定通貨に交換して第2の金融機関に関係する第2のエンティティに送金するように構成される。
【0024】
いくつかの実施形態では、デジタル通貨は、1つ以上の金融機関の1つ以上のデジタル通貨のデジタルウォレットに関連付けられ、ユーザが保有する1つ以上の金融機関の1つ以上のデジタル通貨の、1つ以上の公開鍵と秘密鍵のペアを含み、ユーザは公開鍵と秘密鍵のそれぞれのペアを使用して、公開鍵と秘密鍵のそれぞれのペアに対応する金融機関が発行したデジタル通貨を、受領および/または送金し得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、デジタル通貨はデジタルウォレットに格納されず、金融機関のデジタル通貨は、金融機関のプライベート分散型台帳に格納および維持される。
【0026】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットからデジタル通貨を使用するためには、ユーザは、デジタル通貨に対応する秘密鍵の使用を許可し、デジタル通貨を含む取引に電子サインする。
【0027】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットに、コンピュータ、携帯電話、および/または、タブレット自体にインストールされたアプリケーション形式のソフトウェアが含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)を介して信頼できる第三者に接続され、公開鍵と秘密鍵の格納されたペアは、信頼できる第三者により管理される。
【0029】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、公開鍵と秘密鍵のペアを格納するためのハードウェアを含み、ハードウェアは、取引の電子サインをするために、ユーザが物理的に押すかタッチする必要があるボタンを含み、ハードウェアは、ユーザが取引の電子サインができる前に、ユーザが暗証番号(PIN)を入力することを要求する。
【0030】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、デジタルウォレットの使用に対して、消費者特典、ロイヤリティポイント、および/または、位置情報特典をユーザに提供し、ユーザの特典レベルは、デジタルウォレットに維持されるデジタル通貨の残高、および/または、1つ以上の取引しきい値を満たすことに基づき決定される。
【0031】
いくつかの態様では、第1の法定通貨に対して固定される第1のデジタル通貨を、第2の法定通貨に対して固定される第2のデジタル通貨に交換する方法は、ユーザから金融機関で、第1の法定通貨に対して固定されるある金額の第1のデジタル通貨を、第2の法定通貨に対して固定される同等額の第2のデジタル通貨に交換する依頼を受けるステップと、受信した両替の依頼を金融機関のプライベート分散型台帳に格納するステップと、ユーザのデジタルウォレットから当該金額の第1のデジタル通貨を出金し、ユーザのデジタルウォレットに同等額の第2のデジタル通貨を入金するステップとを含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、受けた両替の依頼を完了するために、金融機関は、第1の法定通貨の第1のオムニバス口座から対応する金額の第1の法定通貨を出金し、対応する同等額の第2の法定通貨を第2の法定通貨の第2のオムニバス口座に入金する。
【0033】
いくつかの実施形態では、受けた両替の依頼はリアルタイムで実行され、現在の両替レートが依頼に適用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、第1の法定通貨と第2の法定通貨との間の両替レートに関連する1つ以上の通知書を設定することができ、両替の依頼は、1つ以上の通知書を受信することに基づき開始される。
【0035】
いくつかの態様では、デジタル通貨取引を円滑にするための決済機構(Clearing House)は、コンピューティングノードを含み、このコンピューティングノードは、決済機構のプライベート分散型台帳に参加する1つ以上のコンピューティングノードに接続され、プライベート分散型台帳は、1つ以上のデジタル通貨における取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持し、ある金額のデジタル通貨を第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットに送金する取引を受けるように構成され、ここで、デジタル通貨は第1の金融機関によって発行され、法定通貨に対して固定され、第1のデジタルウォレットは第1の金融機関のユーザに属し、第2のデジタルウォレットは第2の金融機関のユーザに属し、さらに、取引に関する情報が第1の金融機関の第1のデジタルウォレット、および/または、第2の金融機関の第2のデジタルウォレットに送信またはそれらから受信され、第1の金融機関のプライベート分散型台帳、および/または、第2の金融機関のプライベート分散型台帳に記録され、コンピューティングノードはさらに、決済機構のプライベート分散型台帳での取引を表す新たなトランザクションブロックを格納し、第1のデジタルウォレットと第2のデジタルウォレットを更新して、当該金額のデジタル通貨を第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットに送金するように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、決済機構は、第1のデジタルウォレットから第2のデジタルウォレットに当該金額のデジタル通貨を送金する取引に関して、第1の金融機関および/または第2の金融機関から通知される。
【0037】
いくつかの実施形態では、決済機構は、ある金額のデジタル通貨を第1のデジタルウォレットから別のデジタルウォレットに送金する別の取引に関して第1の金融機関から通知され、ここに、両方のデジタルウォレットは第1の金融機関のユーザに属する。
【0038】
いくつかの実施形態では、決済機構は、ある金額のデジタル通貨を第2のデジタルウォレットから別のデジタルウォレットに送金する別の取引に関して第2の金融機関から通知され、ここに、両方のデジタルウォレットは第2の金融機関のユーザに属する。
【0039】
いくつかの実施形態では、決済機構は、各金融機関の資産規模、債務格付け、および/または、財務健全性審査に基づいて金融機関をランク付けするための階層構造を組み込んでいる。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1の金融機関および第2の金融機関は、最上位層に属し、定期的にまたは残高制限を超過した場合にそれらの間の取引を決済し、さらに、第1の金融機関が最上位層に属し、第2の金融機関は最下位層に属する場合は、個々の取引ベースで、または残高制限を超過した場合に、それらの間の取引を決済する。
【0041】
いくつかの実施形態では、決済機構は、決済機構および第1および第2の金融機関のプライベート分散型台帳全体の取引を追跡するために、固有の取引番号を格納し、固有の取引番号は、決済機構、第1の金融機関、第2の金融機関、または、固有の取引番号を発行する独立したエンティティにより割り当てられる。
【0042】
いくつかの実施形態では、決済機構は、第1の金融機関と第2の金融機関との間の取引に関する紛争解決機関である。
【0043】
いくつかの実施形態では、決済機構は、第1の金融機関に関連する第1のエンティティと第2の金融機関に関連する第2のエンティティとの間の取引を円滑にするための手数料を課し、この場合、決済機構はいかなるデジタル通貨も保有しない。
【0044】
いくつかの実施形態では、決済機構は、第1の金融機関に関連する第1のエンティティと、第1の金融機関に関連する第3のエンティティとの間の取引を円滑にするための手数料を課す。
【0045】
いくつかの実施形態では、決済機構は、第1の金融機関および第2の金融機関に、取引を完了する適切なタイミングを通知する。
【0046】
いくつかの実施形態では、決済機構は、1つ以上の「Know your customer」ポリシーを実行して、ユーザにデジタルウォレットを発行するプロセス、および/または、第三者がユーザの代わりにデジタル通貨の保有を委託されることを承認するプロセスを標準化する。
【0047】
いくつかの実施形態では、直接または第1の金融機関または第2の金融機関から、不正であるとか、違法な商品を購入するために使用されるとか、および/または、本質的に違法である取引に関する情報を受け取ると、決済機構は、その情報に基づき取引を妨げ、ここに決済機構は、取引に関与する第1のデジタルウォレットおよび/または第2のデジタルウォレットを、凍結および/または無効にし、さらなる違法行為および/または資金喪失の原因を防ぐ。
【0048】
いくつかの態様において、法定通貨に対して固定されたデジタル通貨を、商品を表すデジタル化された資産に交換するための方法は、ユーザから金融機関において、法定通貨に対して固定されたある金額のデジタル通貨を商品を表すデジタル化された資産の等価部分と交換する依頼を受けるステップと、受けた商品交換の依頼を金融機関のプライベート分散型台帳に格納するステップと、ユーザのデジタルウォレットから当該金額のデジタル通貨を出金し、ユーザのデジタルウォレットに商品を表すデジタル化された資産の等価部分を入金するステップとを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、商品には、金、銀、プラチナ、銅、石油、天然ガス、トウモロコシ、大豆、小麦、ココア、コーヒー、綿、または砂糖が含まれる。
【0050】
前述の概念、および、以下でより詳細に説明する他の概念のすべての組み合わせ(このような概念が相互に矛盾しないという条件で)は、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられることを理解されたい。特に、本開示の最後に記載の請求項の組み合わせはすべて、本明細書に開示された本発明の主題の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
以下の図を参照して、技術の様々な非限定的実施形態を説明する。図は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではないことを理解されたい。
【0052】
図1】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用して取引を円滑にする例示的なシステムのブロック図を示す。
図2】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用して取引を円滑にする例示的なシステムの別のブロック図である。
図3】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用する代表的な取引の例示的な図を示す。
図4】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用して取引を円滑にする代表的なプロセス図である。
図5】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、トランザクションブロックが無効であると確定された時に実行される代表的なプロセス図である。
図6】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用してデジタルウォレットを作成、および/または、使用する代表的なプロセス図である。
図7】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタルウォレットを使用したデジタル通貨での代表的な取引の例示的な図を示す。
図8】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、プライベート分散型台帳のコンピューティングノードの実装例を示す。
図9】本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、プライベート分散型台帳の1つ以上の機能を実行するコンピュータシステムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
いくつかの態様において、米ドル等の法定通貨に対して固定される金融機関固有のデジタル通貨を使用して、金融取引を円滑にするためのシステムと方法を本明細書で説明する。金融機関は、その金融機関専用の分散型台帳を実装し得る。プライベート分散型台帳は、ブロック、または、トランザクションブロックと呼ばれる、継続的に増加するレコードのリストであり、暗号技術を使用してリンクされ、保護される。新たな金融取引はそれぞれ、分散型台帳にトランザクションブロックとして追加され得る。例えば、新たな金融取引のブロックには、前のブロックの暗号化ハッシュ、タイムスタンプ、および、取引データが含まれ得る。暗号化ハッシュを使用して、前のブロックなど、可変量のデータの固定長の数的表現を生成する。プライベート分散型台帳は、金融機関のデジタル通貨を使用して、金融機関の顧客間の取引を記録し得る。
【0054】
いくつかの態様において、銀行等同じ金融機関に関連する2つのエンティティ、例えば、顧客および店舗の間で、購入取引が円滑になる。銀行は、銀行のデジタル通貨での取引用デジタル通貨カードを発行し得る。銀行の顧客は、同様にその銀行に資金を保持している店舗を訪問し得る。顧客は、銀行のデジタル通貨カードを供して、銀行のデジタル通貨を使用し商品の支払いを行い得る。いくつかの実施形態では、銀行は、銀行のデジタル通貨カードを取り扱い、銀行のサーバに通知して取引を完了(例えば、取引をプライベート分散型台帳に記録することにより)できる装置を提供する。いくつかの実施形態では、VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、AMEX(登録商標)、SQUARE(登録商標)、または、別の支払い会社により、デジタル通貨カードを扱うことができる機器が提供される(VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、AMEX(登録商標)、およびSQUARE(登録商標)は、それぞれ、Visa Inc.(米国California州Foster City)、Mastercard Incorporated(米国New York州Purchase)、American Express Company(米国New York州New York)、および、Square, Inc.(California州San Francisco)の登録商標である)。機器は、取引に関する情報を支払い会社の処理センタに中継し、次に処理センタは銀行に通知し得る。その後、銀行のサーバが取引を完了し得る(例えば、プライベート分散型台帳に取引を記録することにより)。いくつかの実施形態では、中央決済機構は、決済機構のプライベート分散型台帳に取引を記録し得る。いくつかの実施形態では、取引は、金融機関のプライベート分散型台帳に記録され、その後、決済機構のプライベート分散型台帳に記録のために中継され得る。いくつかの実施形態では、取引は、金融機関のプライベート分散型台帳、および、決済機構のプライベート分散型台帳に同時に記録され得る。いくつかの実施形態では、取引は、決済機構のプライベート分散型台帳に記録され、決済機構により承認されると、金融機関のプライベート分散型台帳に記録され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、デジタル通貨は、顧客のデジタル通貨口座から店舗のデジタル通貨口座に送金される。店舗が法定通貨で取引の完了を望む場合、銀行は受領したデジタル通貨を米ドル等の法定通貨に交換し、その法定通貨を、銀行の店舗の法定通貨口座に預け得る。
【0056】
いくつかの態様において、資金移動取引は、銀行等同じ金融機関に関連する2つのエンティティ、例えば2つの顧客間で円滑になる。例えば、銀行の顧客が、同じ銀行の別の顧客へ、ある金額のデジタル通貨のデジタル送金を依頼する場合がある。いくつかの実施形態では、金融機関は、複数のコンピューティングノードにわたり格納されたプライベート分散型台帳を有する。プライベート分散型台帳は、金融機関により発行され、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。コンピューティングノードは、金融機関の第1の顧客から第2の顧客に、ある金額のデジタル通貨を送金する取引を受ける。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成する。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを送信する。コンピューティングノードは、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信する。表示が有効である場合、コンピューティングノードは新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し、取引を完了する。
【0057】
図1は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、同じ金融機関に関連する第1のエンティティ102と第2のエンティティ104との間の、デジタル通貨を使用した取引を円滑にする例示的なシステム100のブロック図を示す。コンピューティングノード106は、他のコンピューティングノード110、112に接続されている。コンピューティングノード106、110、112は、銀行等の金融機関のプライベート分散型台帳108のコピーを格納および維持する。プライベート分散型台帳108は、デジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は金融機関により発行される。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は法定通貨に対して固定される。
【0058】
コンピューティングノード106は、ある金額のデジタル通貨を、第1のエンティティ102から第2のエンティティ104に送金する取引を受け得る。例えば、第1のエンティティと第2のエンティティは、同じ金融機関に関連する顧客であり得る。第1のエンティティは、金融機関の第1のエンティティのデジタル通貨口座から当該金額のデジタル通貨の送金を依頼し得る。コンピューティングノード106は、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成し得る。コンピューティングノード106は、プライベート分散型台帳に参加しているコンピューティングノード110、112に新たなトランザクションブロックを送信し得る。コンピューティングノード106は、1つ以上のコンピューティングノード110、112から、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し得る。有効性表示に基づき、コンピューティングノード106は、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し得る。コンピューティングノード106、コンピューティングノード112、または、別の適切なコンピューティングノードは、当該金額のデジタル通貨を第2のエンティティに送金することにより取引を完了し得る。例えば、デジタル通貨は、金融機関の第2のエンティティのデジタル通貨口座に送金され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の金融機関が、中央決済機構の利用を選択し得る。決済機構は、1つ以上の金融機関のデジタル通貨を含むすべての取引を記録するための独自のプライベート分散型台帳を実装し得る。取引は、取引に関与する各金融機関のプライベート分散型台帳、および、決済機構のプライベート分散型台帳に記録され得る。例えば、決済機構のプライベート分散型台帳には、異なる金融機関のユーザ間の取引(同じ金融機関のユーザ間の取引を含む)を含み得るが、各金融機関のプライベート分散型台帳には、同じ金融機関のユーザ間の取引、または、金融機関のユーザが取引の当事者として関与する取引のみを含み得る。決済機構は、決済機構のプライベート分散型台帳158のコピーを格納および維持するコンピューティングノード(例えば、コンピューティングノード156、160および/または162(図1の例示的なシステム150参照)、または、他の適切なコンピューティングノード)を使用させられ得る。決済機構の詳細について、以下に説明する。
【0059】
いくつかの態様において、異なる金融機関に関連する2つのエンティティ、例えば、顧客および店舗の間で、購入取引が円滑になる。銀行等の金融機関は、銀行のデジタル通貨での取引用デジタル通貨カードを発行し得る。銀行の顧客は、別の銀行に資金を保持している店舗を訪問し得る。銀行の顧客は、デジタル通貨カードを供して、銀行のデジタル通貨を使用し商品の支払いを行い得る。いくつかの実施形態では、銀行は、例えば図6および図7に関連して、本明細書で説明するようなデジタルウォレットを提供する。銀行の顧客は、デジタルウォレットを使用して、銀行のデジタル通貨を使用し商品の支払いを行い得る。いくつかの実施形態では、銀行は、銀行のデジタル通貨カード、および/または、デジタルウォレットを取り扱い、銀行のサーバに通知して取引を完了(例えば、取引をプライベート分散型台帳に記録し、別の銀行にある店舗の口座に支払額を送金することにより)できる装置を提供する。いくつかの実施形態では、VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、AMEX(登録商標)、SQUARE(登録商標)、または、別の支払い会社により提供される機器は、デジタル通貨カードを扱うことができる(VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、AMEX(登録商標)、およびSQUARE(登録商標)は、それぞれ、Visa Inc.(米国California州Foster City)、Mastercard Incorporated(米国New York州Purchase)、American Express Company(米国New York州New York)、および、Square, Inc.(California州San Francisco)の登録商標である)。機器は、取引に関する情報を支払い会社の処理センタに中継し、次に処理センタは銀行に通知し得る。その後、銀行のサーバが取引を完了し得る(例えば、プライベート分散型台帳に取引を記録し、別の銀行にある店舗の口座に支払額を送金することにより)。
【0060】
いくつかの実施形態では、デジタル通貨は、米ドル等の法定通貨に交換され、その後、別の銀行にある店舗の口座に送金される。いくつかの実施形態では、店舗がデジタル通貨で取引の完了を望む場合、店舗の銀行は、受領した法定通貨を別の銀行のデジタル通貨に交換し、それを店舗のデジタル通貨口座に預け得る。いくつかの実装例では、店舗のデジタル通貨口座に受領したデジタル通貨は、顧客のデジタル通貨口座から送金されたデジタル通貨と異なる。これは、2つの銀行が発行するデジタル通貨が異なり、互換性がない可能性があるためである。例えば、いくつかの実装例では、各金融機関は、自社のデジタル通貨で取引を記録するために、自社のプライベート分散型台帳を保持し得る。ただし、ある銀行の1つのデジタル通貨口座から別の銀行の他のデジタル通貨への送金は、米ドル等の法定通貨への中間換算を介してなされ得る。
【0061】
いくつかの態様において、資金移動取引は、異なる金融機関に関連する2つのエンティティ、例えば2つの顧客間で円滑になる。例えば、金融機関の顧客が、別の金融機関の顧客にデジタル通貨を送金する取引を開始し得る。いくつかの実施形態では、デジタル通貨取引は、引き出しとして記録され、法定通貨に交換され、第2の顧客に引き渡される。いくつかの実施形態では、金融機関は、複数のコンピューティングノードにわたり格納されたプライベート分散型台帳を有する。プライベート分散型台帳は、金融機関により発行され、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。コンピューティングノードは、金融機関の第1の顧客から別の金融機関の第2の顧客に、ある金額のデジタル通貨を送金する取引を受ける。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成する。コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを送信する。コンピューティングノードは、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信する。表示が有効である場合、コンピューティングノードは新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し、当該金額のデジタル通貨の引き出しを完了する。コンピューティングノードは、当該金額のデジタル通貨を同等額の法定通貨に交換し、第2の顧客に送金する。
【0062】
図2は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、異なる金融機関に関連する第1のエンティティ202と第2のエンティティ204との間の、デジタル通貨を使用した取引を円滑にする例示的なシステム200の別のブロック図である。コンピューティングノード206は、他のコンピューティングノード210、212に接続されている。コンピューティングノード206、210、212は、銀行等の金融機関のプライベート分散型台帳208のコピーを格納および維持する。プライベート分散型台帳108は、デジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は金融機関の1つにより発行される。デジタル通貨を発行する金融機関は、他の金融機関と提携し、他の金融機関にプライベート分散型台帳の利用権限を提供し得る。代替的または追加的に、デジタル通貨を発行する金融機関は、プライベート分散型台帳への外部の利用権限を制限し、本明細書に記載されている中央決済機構、または、自動決済機構(ACH)等の従来の銀行間送金システムを使用して取引を完了し得る。ACHは、米国における法定通貨ベースの金融取引のための電子ネットワークである。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は法定通貨に対して固定される。
【0063】
コンピューティングノード206は、ある金額のデジタル通貨を、第1のエンティティ202から第2のエンティティ204に送金する取引を受け得る。例えば、第1のエンティティと第2のエンティティは、異なる金融機関に関連する顧客であり得る。第1のエンティティは、金融機関の第1のエンティティのデジタル通貨口座から当該金額のデジタル通貨の送金を依頼し得る。コンピューティングノード206は、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成し得る。コンピューティングノード206は、プライベート分散型台帳に参加しているコンピューティングノード210、212に新たなトランザクションブロックを送信する。コンピューティングノード206は、1つ以上のコンピューティングノード210、212から、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信し得る。有効性表示に基づき、コンピューティングノード206は、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し得る。コンピューティングノード206、コンピューティングノード212、または、別の適切なコンピューティングノードは、第1のエンティティのデジタル通貨口座からの当該金額のデジタル通貨の引き出しを完了し得る。コンピューティングノード206、コンピューティングノード212、または、別の適切なコンピューティングノードは、当該金額のデジタル通貨を同等額の法定通貨に交換し、第2のエンティティに送金し得る。交換は、デジタル通貨を同等の法定通貨に変換する機能を備えた交換サーバ214から依頼しうる。
【0064】
図3は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用する代表的な取引300、および、350の例示的な図を示す。代表的な取引300および350の実施形態において、金融機関306または356は、デジタル通貨を発行し、オムニバス口座304または354を作成、および/または、デジタル通貨をオムニバス口座304または354に預けることができる唯一のエンティティである。いくつかの実施形態では、金融機関は、顧客のオムニバス口座を作成する前に、顧客が「Know your customer」(KYC)の手順に従い、身元を確認し、そして/または、違法行為の適非および潜在的リスクを評価することを要求し得る。このような要件により、不正取引やマネーロンダリング等の違法行為が減少する。代表的な取引300および350は、デジタル通貨を、デジタルウォレットまたは別の適切なデジタル通貨口座に預ける取引を説明しているが、説明した技法は、デジタルウォレットまたは別の適切なデジタル通貨口座から、デジタル通貨を引き出す取引に等しく適用し得る。
【0065】
取引300において、金融機関306の顧客は、彼または彼女の法定通貨口座302からのある金額の法定通貨を、金融機関のデジタル通貨に交換することを依頼する。金融機関306は、顧客の法定通貨口座302から法定通貨を受領または取得する。金融機関306は、受領した金額の法定通貨をオムニバス口座308に預け得る(以下にさらに詳細を示す)。金融機関306は、顧客用に新たなデジタルウォレット304を作成し、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を口座に預け得る。または、金融機関306は、顧客の既存のデジタルウォレット304に、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を預け得る。いくつかの実施形態では、顧客のデジタルウォレット304は、金融機関306の顧客の法定通貨口座302とは別ではあるが、関連している。
【0066】
取引において、デジタル通貨は金融機関356により発行されるが、前記金融機関356は、他の金融機関に前記金融機関のデジタル通貨の利用権限を提供するため、協力機関358等の別の金融機関と提携する。協力機関358の顧客は、彼または彼女の法定通貨口座352からのある金額の法定通貨を、前記金融機関のデジタル通貨に交換することを依頼する。金融機関356は、協力機関358の顧客の法定通貨口座352から、法定通貨を受領または取得する。金融機関356は、受領した金額の法定通貨をオムニバス口座360に預け得る(以下にさらに詳細を示す)。金融機関356は、顧客用に新たなデジタルウォレット354を作成し、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を口座に預け得る。または、金融機関356は、顧客の既存のデジタルウォレット354に、当該金額の法定通貨と同等額のデジタル通貨を預け得る。いくつかの実施形態では、顧客のデジタルウォレット354は、協力機関358の顧客の法定通貨口座352、および/または、金融機関356の法定通貨口座とは別ではあるが、関連している。いくつかの実施形態では、金融機関356は、自動決済機構(ACH)等の従来の銀行間送金システムを使用して、協力機関358との法定通貨取引を完了する。ACHは、米国における法定通貨ベースの金融取引のための電子ネットワークである。
【0067】
図4は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用して取引を円滑にする代表的なプロセス400の図である。いくつかの実施形態では、このプロセスは、金融機関のプライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに接続されたコンピューティングノード上で実行される。いくつかの実施形態では、プライベート分散型台帳は、デジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は金融機関により発行される。いくつかの実施形態では、デジタル通貨は法定通貨に対して固定される。いくつかの実施形態では、コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持する。
【0068】
アクト402にて、プロセスが開始される。
【0069】
アクト404では、コンピューティングノードは、ある金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を受ける。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のエンティティおよび第2のエンティティは、同じ金融機関に関連している。いくつかの実施形態では、第1のエンティティはある金融機関に関連し、第2のエンティティは別の金融機関に関連する。いくつかの実施形態では、第1のエンティティは消費者であり、第2のエンティティは業者である。いくつかの実施形態では、第1のエンティティおよび第2のエンティティは、同じ金融機関の顧客である。
【0071】
いくつかの実施形態では、取引は、デジタル通貨での支払い用に構成されたデジタル通貨カードから開始される。いくつかの実施形態では、取引は、デジタル通貨での支払い用に構成されたモバイルアプリケーション、または、ウェブアプリケーションから開始される。
【0072】
アクト406では、コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に追加する取引を表す、新たなトランザクションブロックを生成する。
【0073】
アクト408では、コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを送信する。
【0074】
アクト410では、コンピューティングノードは、1つ以上のコンピューティングノードから、新たなトランザクションブロックの有効性表示を受信する。
【0075】
アクト412では、コンピューティングノードは、ブロックが有効であるかどうかを確定する。図5および関連する説明により、トランザクションブロックが無効であると確定されたときに実行される代表的なプロセスに関するさらなる詳細を提供する。
【0076】
アクト414では、トランザクションブロックが有効であると確定したことに基づき、コンピューティングノードは、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し、当該金額のデジタル通貨を第1のエンティティから第2のエンティティに送金する取引を完了する。いくつかの実施形態では、第2のエンティティは、取引が完了した時に、当該金額のデジタル通貨を受領する。いくつかの実施形態では、第2のエンティティは、取引が完了した時に、当該金額のデジタル通貨と同等額の法定通貨を受領する。
【0077】
いくつかの実施形態では、アクト414では、トランザクションブロックが有効であると確定したことに基づき、コンピューティングノードは、新たなトランザクションブロックをプライベート分散型台帳に挿入し、第1のエンティティから第2のエンティティへの当該金額のデジタル通貨の引き出しを完了するが、ここで、第1のエンティティと第2のエンティティは異なる金融機関に関連している。コンピューティングノードは、当該金額のデジタル通貨を同等額の法定通貨に交換し、別の金融機関の第2のエンティティに送金する。
【0078】
アクト416にて、プロセスが終了する。
【0079】
図5は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、トランザクションブロックが無効であると確定された時に実行される代表的なプロセス500の図である。いくつかの実施形態では、このプロセスは、金融機関のプライベート分散型台帳に参加している、1つ以上のコンピューティングノードに接続された、コンピューティングノード上で実行される。いくつかの実施形態では、プライベート分散型台帳は、金融機関により発行され、法定通貨に対して固定されるデジタル通貨での取引を表す1つ以上のトランザクションブロックを格納する。いくつかの実施形態では、コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳のコピーを格納および維持する。
【0080】
アクト502では、コンピューティングノードは、第1のエンティティの電子サインが有効であるかどうかを確定する。
【0081】
アクト504では、第1のエンティティの電子サインが無効であると確定されたことに基づき、コンピューティングノードは、取引を拒否し、新たなトランザクションブロックがプライベート分散型台帳へ挿入されるのを防ぐ。
【0082】
アクト506では、第1のエンティティの電子サインが有効であると確定されたことに基づき、コンピューティングノードは、第1のエンティティが取引を完了するのに必要な十分な金額のデジタル通貨を有するかどうかを確定する。
【0083】
アクト508では、第1のエンティティが取引を完了するために必要な十分な金額のデジタル通貨を有していないと確定することに基づき、コンピューティングノードは、第1のエンティティが十分な金額のデジタル通貨と同等の利用可能な金額の法定通貨の利用権限を有すると確定する。
【0084】
アクト510では、コンピューティングノードは、利用可能な金額の法定通貨を、取引を完了するのに必要な十分な金額のデジタル通貨に交換する。
【0085】
いくつかの実施形態では、金融機関は、第1のエンティティ、例えば金融機関のユーザからの許可に基づき、同等の法定通貨の利用可能性の決定、および/または、同等の法定通貨のデジタル通貨への交換を許可する。例えば、金融機関は、取引時にユーザに許可を依頼し得る。別の例では、金融機関は、ユーザのオムニバス口座が金融機関により開設または更新された時など、取引の前の時点でユーザに許可を依頼し得る。いくつかの実施形態では、金融機関のすべてのユーザが、同等の法定通貨からデジタル通貨への自動的な決定および交換の利点の利用権限を有するわけではない。利用権限を許可されるユーザは、ユーザの信用度、ユーザと金融機関との関係の期間、ユーザの口座の時間平均残高、および/または、その他の適切な指標に基づき決定され得る。
【0086】
アクト512では、コンピューティングノードは、プライベート分散型台帳に参加している1つ以上のコンピューティングノードに新たなトランザクションブロックを再送信する。いくつかの実施形態では、コンピューティングノードは、プロセス400(図4)のアクト410に戻り、再送信されたトランザクションブロックの処理を続ける。
【0087】
いくつかの態様において、各金融機関が独自のデジタル通貨を発行し得る一方で、これら金融機関は、複数の金融機関のデジタル通貨を格納するデジタルウォレットの利用を選択し得る。例えば、デジタルウォレットは、1つ以上の金融機関のデジタル通貨の、それぞれの公開鍵と秘密鍵を格納し得る。公開鍵と秘密鍵は、それぞれの機関が発行したデジタル通貨を受領、または、送金するために使用し得る。例えば、購入取引では、買い手と売り手の両方がそれぞれのデジタルウォレットを有し得る。買い手と売り手は、希望する金融機関の口座で、それぞれのデジタルウォレットを受領し得る。買い手は、特定の機関が発行したデジタル通貨の秘密鍵を使用して、買い手のデジタルウォレットから売り手のデジタルウォレットに、ある金額のデジタル通貨を送金し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、様々なデジタル通貨の複数の公開鍵と秘密鍵のペアを含み得るが、デジタルウォレットはいずれのデジタル通貨自体も格納し得ない。代わりに、各金融機関のデジタル通貨は、それぞれの金融機関のプライベート分散型台帳に格納および維持され得る。デジタルウォレットからデジタル通貨を使用するためには、ユーザは、対応する秘密鍵の使用を許可し、取引に電子サインして取引のブロックをプライベート分散型台帳に格納(例えば、関連するデジタル通貨を使用)し得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットには、コンピュータ、携帯電話、タブレット、または、別の適切なユーザの装置自体にインストールされたアプリケーション形式のソフトウェアが含まれ得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、アプリケーションプログラミングインタフェース(APIを介して、GOOGLE(登録商標)、APPLE(登録商標)、VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、AMEX(登録商標)、または、別の適切なエンティティのような信頼できる第三者に接続され得る(GOOGLE(登録商標)、APPLE(登録商標)、VISA(登録商標)、MASTERCARD(登録商標)、および、AMEX(登録商標)は、それぞれ、Google LLC(米国California州Mountain View)、Apple Inc.(米国California州Cupertino)、Visa Inc.(米国California州Foster City)、Mastercard Incorporated(米国New York州Purchase)、および、American Express Company(米国New York州New York)の登録商標である)。ユーザの秘密鍵は、信頼できる第三者機関によって管理され得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、ユーザの秘密鍵を格納するハードウェアを含み得る。ハードウェアには、取引に電子サインするために、ユーザが物理的に押すかタッチする必要があるボタンが含まれ得る。代替的または追加的に、ハードウェアは、ユーザが取引の電子サインができる前に、ユーザがPINを入力することを要求し得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、デジタルウォレットの使用に対して、消費者特典、ロイヤリティポイント、または、他の適切なインセンティブをユーザに提供し得る。例えば、デジタルウォレットは、ポイント、ホテルの宿泊、マイル、キャッシュバック、または、その他の適切な特典の形で、クレジットカードと同様の特典を提供し得る。いくつかの実施形態では、デジタル通貨を発行する金融機関は、それらのデジタル通貨を用いて、口座に独自の関係を構築し得る。例えば、金融機関は、ホテルの特典プログラム、航空会社の特典プログラム、または、その他の適切な特典プログラムにつながるインセンティブを提供し得る。いくつかの実施形態では、ユーザの特典レベルは、ユーザのデジタルウォレットに維持されるデジタル通貨の残高、1つ以上の取引しきい値を満たすこと、または、他の適切な手段に基づき決定され得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、ユーザに位置情報特典を提供し得る。例えば、ユーザが特定の店舗に入ると、デジタルウォレットを使用して店舗から購入した場合、デジタルウォレットは商品に対して、1つの値段で2つ買えるセールを提供する場合がある。
【0090】
図6は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタル通貨を使用してデジタルウォレットを作成、および/または、使用する代表的なプロセスの図である。602で、金融機関の顧客は、金融機関の口座に法定通貨、例えば米ドル(USD)を預け得る。
【0091】
604では、金融機関は顧客の口座を開設し、顧客の法定通貨を口座に預け得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、金融機関の一部または全てのユーザの口座を開設するにあたり、決済機構により事前認証され得る。例えば、金融機関は、金融機関を評価する決済機構の規定に基づき、ランク付けされ得る。金融機関が上位ランクを付けられると、金融機関は、決済機構から受領する一定の規定に基づき、一部または全てのユーザの口座を開設することを許可され得る。例えば、金融機関は、信用に値し、金融機関との関係のしきい値の年数を有し、口座全体に時間平均残高のしきい値を有し、および/または、他の適切な指標に準拠する金融機関の、ユーザの口座を開設することが可能になる。追加的または代替的に、金融機関は、ユーザを承認し、金融機関の一部または全てのユーザに対して特定の取引を実行することを、決済機構により事前認証され得る。金融機関が上位ランクを付けられると、金融機関は、決済機構から受領する一定の規定に基づき、一部または全てのユーザの取引を実行することを許可され得る。
【0092】
606では、顧客は自分の法定通貨の一部、例えば100ドルを、金融機関により発行されたデジタル通貨、例えば$AA100SC(つまり、金融機関AAにより発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)に交換する依頼をし得て、ここで、SCは標準コイン、安定したコイン、または、法定通貨に対して固定されているデジタル通貨の別の適切な参考となるものを指し得る。
【0093】
608で、金融機関は、顧客から依頼された交換に関する情報を記載した通知を決済機構に送信し、決済機構による、顧客および/または取引の承認を受け得る。例えば、決済機構は、「Know your customer」ポリシーを実行して、顧客にデジタルウォレットを発行するプロセス、および/または、第三者が顧客の代わりにデジタル通貨の保有を委託されることを承認するプロセスを標準化する。いくつかの実施形態では、金融機関は、ユーザを承認し、金融機関の一部または全てのユーザに対して特定の取引を実行することを、決済機構により事前認証され得る。金融機関が上位ランクを付けられると、金融機関は、決済機構から受領する一定の規定に基づき、一部または全てのユーザの取引を実行することを許可され得る。例えば、金融機関は、ほとんどまたは全てのユーザに対して両替取引を実行でき得るが、商品取引は、信用に値し、金融機関との関係のしきい値の年数を有し、口座全体に時間平均残高のしきい値を有し、および/または、他の適切な指標に準拠するユーザに対してのみ実行でき得る。
【0094】
610で、金融機関は、デジタル通貨のプライベート分散型台帳に取引を記録し、法定通貨をユーザの口座からオムニバス口座に送金し得る(以下にさらに詳細を示す)。
【0095】
612では、金融機関は同等のデジタル通貨を発行し、そのデジタル通貨をユーザのデジタルウォレットに送金し得る。ユーザ用にデジタルウォレットが存在しない実施形態では、金融機関は、デジタル通貨をユーザのデジタルウォレットに送金する前に、デジタルウォレットの作成を依頼し得る。
【0096】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、金融機関により発行され、法定通貨、例えば、米ドル(USD)に対して固定されたデジタル通貨、および、別の金融機関により発行され、同じ法定通貨に対して固定された別のデジタル通貨を保有し得る。例えば、デジタルウォレットには、$AA100SC(つまり、金融機関AAにより発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)、および、$BB100SC(つまり、金融機関BBにより発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)が含まれ得る。顧客のデジタルウォレットは、デジタルウォレットの利用を選択した金融機関の複数のタイプのデジタル通貨を保有し得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、法定通貨、例えば、米ドル(USD)に対して固定されたデジタル通貨、および、異なる法定通貨、例えば、ユーロ(EUR)に対して固定された別のデジタル通貨を保有し得る。これらのデジタル通貨は、同一の金融機関により発行される場合もあり、また、異なる金融機関により発行される場合もある例えば、デジタルウォレットには、$AA100SC(つまり、金融機関AAにより発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)、および、 $AA100SC(つまり、金融機関AAにより発行され、EURに対して固定されたデジタル通貨)が含まれ得る。別の例では、デジタルウォレットには、$AA100SC(つまり、金融機関AAにより発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)、および、 $BB100SC(つまり、金融機関BBにより発行され、EURに対して固定されたデジタル通貨)が含まれ得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、ユーザのデジタルウォレットは、例えば、デジタル通貨を入金し送金するための階層化またはランク付けシステムを実施する、1つ以上の規定を含み得る。これらのルールは、1つ以上の金融機関、1人以上のユーザ、デジタルウォレットを使用してデジタル通貨取引を処理する決済機構(以下にさらに詳細を示す)、または、別の承認されたソースから受領し得る。例えば、ユーザの主要金融機関が「ティア1-A」ステータスに指定され、その結果、ユーザがユーザの主要金融機関により発行されたデジタル通貨を入金したり保持したりすることを希望し得る。別の例では、階層化またはランク付けシステムが、金融機関をランク付けする決済機構から受領した規定に基づき実施され得る。決済機構には、デジタル通貨を発行する1つ以上の金融機関、および/または、このような金融機関のランクに適したその他のエンティティが含まれ得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、逆の階層順序でデジタル通貨を送金し得る。例えば、ユーザが100ドル相当のデジタル通貨を送金したい場合、デジタルウォレットは、デジタルウォレット内の利用可能なデジタル通貨から、最下位層の金融機関により発行されたデジタル通貨を選択し得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、ユーザがそのデジタル通貨を受領および/または拒否することを望み得る、1つ以上の金融機関を指定し得る。代替的または追加的に、ユーザは、そのデジタル通貨を受領可能ではあるが、受領時に法定通貨に変換する必要がある1つ以上の金融機関を指定し得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、デジタルウォレット内のデジタル通貨を、法定通貨または別のデジタル通貨へ変換することを依頼しうる。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、金融機関に、その金融機関のデジタル通貨を法定通貨に交換するように依頼し得る。例えば、金融機関の顧客は、その金融機関により発行されたデジタル通貨、例えば$AA100SCを、同等の法定通貨、例えば$100に変換するように依頼し得る。金融機関は、この取引をプライベート分散型台帳に記録し、同等の法定通貨を顧客に発行し得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、金融機関に、別の金融機関のデジタル通貨を法定通貨に交換するように依頼し得る。例えば、金融機関AAの顧客は、別の金融機関BBにより発行されたデジタル通貨、例えば$BB100SCを、同等の法定通貨、例えば$100に変換するように依頼し得る。金融機関AAは、同等の法定通貨を消費者へ発行するために、取引をそのプライベート分散型台帳に記録し、取引を決済機構に送信し(以下にさらに詳細を示す)、および/または、取引を金融機関BBに送信し得る。いくつかの実施形態では、金融機関BBの階層に基づき、金融機関AAは、自身の準備金から顧客に同等の法定通貨を発行し(例えば、金融機関BBが高ランクである場合)、2つの金融機関が定期的に口座を決済する時に金融機関BBから法定通貨を受領し得る。あるいは、金融機関AAは、顧客に同等の法定通貨を発行する前に、金融機関BBから法定通貨を受領するのを待ち得る(例えば、金融機関BBが低ランクである場合)。
【0101】
いくつかの実施形態では、別の金融機関により発行されたデジタル通貨を受領する金融機関は、取引を完了する適切なタイミングを決定するために、階層化またはランク付けシステムを適用し得る(例えば、ティア1~ティア5)。例えば、最上位層、例えばティア1、の金融機関は、月に1回、または、一定の限度に達した時に、金融機関間のすべての取引を決済し得る。別の例では、最上位層、例えばティア1、の金融機関が、最下位層、例えばティア5、の金融機関と取引を開始する場合、最上位層の金融機関は最下位層の金融機関に、即刻取引を完了しデジタル通貨を送金することを要求し得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは金融機関に対し、法定通貨に対して固定されたその金融機関のデジタル通貨を、別の法定通貨に対して固定されたデジタル通貨に交換するように依頼し得る。例えば、ユーザは金融機関に対し、$AA100SC(つまり、金融機関により発行され、USDに対して固定されたデジタル通貨)を、 $AA86.33SC(つまり、金融機関により発行され、EURに対して固定されたデジタル通貨)に、現在の交換レートに基づき交換するように依頼し得る。金融機関は、この両替をプライベート分散型台帳に記録し、依頼されたデジタル通貨をユーザのデジタルウォレットに送金し得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、すべての自社の顧客に発行されたデジタル通貨に対応する各法定通貨のオムニバス口座を維持し得る。両替取引を完了するために、金融機関は、法定通貨のオムニバス口座からある金額の法定通貨、例えばUSDを出金し、同等額の交換した通貨、例えばEURを、交換した通貨のオムニバス口座に入金し得る。
【0103】
いくつかの実施形態では、金融機関は、オムニバス口座において、金融機関によりそれまでに発行された金額のデジタル通貨と同等額の法定通貨を維持し得る。オムニバス口座を使用して、発行されたデジタル通貨を裏付けし得る。このような法定通貨口座に、預金保険を適用でき得る。例えば、米国では、連邦預金保険公社(FDIC)は米国政府の独立機関であり、FDICが保証する金融機関が破綻した場合に、預金消費者を被保険預金の損失から保護する。金融機関は、発行されたデジタル通貨の所有権を追跡し、各口座保有者の同等の法定通貨の補償を取得し得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレットは、どの国がデジタルウォレット内のデジタル通貨に関して金融機関に保険をかけているかの表示を含み得る。例えば、デジタルウォレットは、どの国がデジタルウォレット内のデジタル通貨に関して金融機関に保険をかけているかに関する、色および/またはコードの表示を含み得る。いくつかの実施形態では、両替取引に関する政府の規制を満たすために、オムニバス口座(および、任意選択で、上述のKYC手順に加えて)を使用し得る。例えば、米国では、通貨監督庁(OCC)が両替に関する規制を施行している。このように、金融機関は、その金融機関により発行されたデジタル通貨を裏付けるために使用される各法定通貨のオムニバス口座を維持し得て、オムニバス口座の所有権はデジタル通貨の各保有者に関連付けられる。
【0104】
いくつかの実施形態では、デジタルウォレットのユーザは、両替取引を実行するための適切なタイミングを決定するため、法定通貨交換レートに関連する1つ以上の通知書を設定し得る。たとえば、ユーザは、米ドルで裏付けされたデジタル通貨を、ユーロで裏付けされたデジタル通貨に交換することに関心を持ち得る。別の例では、ユーザは、米ドルで裏付けられたデジタル通貨を、金、銀、プラチナ、銅、石油、天然ガス、トウモロコシ、大豆、小麦、ココア、コーヒー、綿、砂糖、または、別の適切な商品等の商品に交換することに関心を持ち得る。この商品は、デジタル化された資産として、たとえばトークンの形で表され、デジタル取引に含まれたり、ユーザのデジタルウォレットに格納されたりし得る。例えば、商品がデジタル化された資産は、ユーザのデジタルウォレットの別の領域に格納され得る。デジタル化された資産の価値は、商品の価値に基づいて変動する可能性があるため、ユーザのデジタルウォレットは、現在の価値や、取引時の価値を示し、そして/または、デジタル化された資産の価値が商品の価値に基づき変動し得ることをユーザに示し得る。
【0105】
ユーザは、有利な交換レート、および/または、有利な交換レートの範囲につき通知書を設定し得る。通知書を受信すると、ユーザは両替または商品交換の取引を開始し得る。代替的または追加的に、ユーザは、通知書の受信時に、デジタルウォレットに自動的に両替または商品交換の取引を開始させ得る。いくつかの実施形態では、ユーザが両替または商品交換の取引を、受ける、および/または、開始できることを、金融機関が調整し、承認または拒否し得る。例えば、金融機関は、取引が個人的用途または投資目的に関してかどうかを、ユーザに示すように要求し得る。金融機関は、ユーザが両替または商品交換の取引を、受ける、および/または、開始できることを、承認または拒否するときに、この情報を考慮に入れ得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、そのすべての顧客に両替または商品交換の取引機能を提供し得る。いくつかの実施形態では、金融機関は、各顧客個別に承認した後に、顧客に両替または商品交換の取引機能を提供し得る。いくつかの実施形態では、制御メカニズムとして、デジタル通貨の受領者(例えば、小売業者、ビジネスユーザ、友人など)は、彼らの金融機関の国により裏付けられたデジタル通貨のみを受領することが要求され得る。ただし、受領者のユーザは、金融機関によって許可されている場合、別の法定通貨または商品に裏付けされたデジタル通貨での支払いを受け入れることを選択し得る。
【0106】
いくつかの態様において、それぞれのデジタル通貨を発行する金融機関は、中央決済機構の利用を選択し得る。決済機構は、2つの異なる金融機関のデジタル通貨を含むすべての取引を記録するための、独自のプライベート分散型台帳を実装し得る。取引は、取引に関与する各金融機関のプライベート分散型台帳、および、決済機構のプライベート分散型台帳に記録され得る。例えば、決済機構のプライベート分散型台帳には、異なる金融機関のユーザ間の取引(同じ金融機関のユーザ間の取引を含む)を含み得るが、各金融機関のプライベート分散型台帳には、同じ金融機関のユーザ間の取引、または、金融機関のユーザが取引の当事者として関与する取引のみを含み得る。いくつかの実施形態では、取引は、金融機関のプライベート分散型台帳に記録され、その後、決済機構のプライベート分散型台帳に記録のために中継され得る。いくつかの実施形態では、取引は、金融機関のプライベート分散型台帳、および、決済機構のプライベート分散型台帳に同時に記録され得る。いくつかの実施形態では、取引は、決済機構のプライベート分散型台帳に記録され、決済機構により承認されると、金融機関のプライベート分散型台帳に記録され得る。いくつかの実施形態では、決済機構は、金融機関のプライベート分散型台帳のように、決済機構のプライベート分散型台帳158のコピーを格納および維持するコンピューティングノード(例えば、コンピューティングノード156、160および/または162(図1の例示的なシステム150参照))を使用させられ得る。プライベート分散型台帳は、デジタル通貨での取引を表し、2つ以上の異なる金融機関が関与する1つ以上のトランザクションブロックを格納し得る。一実施例では、取引が2つの異なる金融機関からのデジタル通貨を含む取引として決済機構を通して決済され得るので、特定の銀行のデジタル通貨口座に資金を保持している店舗は、別の銀行から発行されたデジタル通貨を受領できる。
【0107】
いくつかの実施形態では、決済機構は、2つの金融機関の間の取引を記録し、取引を完了する適切なタイミングを金融機関に通知し得る。決済機構は、各金融機関の資産規模、債務格付け、財務健全性審査、および/または、他の適切な基準に基づいて、金融機関をランク付けするための階層構造を組み込み得る。いくつかの実施形態では、取引を完了するための2つのステップ、清算および決済が存在する。清算とは、支払人(送金金融機関)と受取人(受領金融機関)との間での、情報の転送と確認である。決済とは、支払人の金融機関と受取人の金融機関との間でのデジタル通貨の実際の送金である。決済により、取引に関して、支払人金融機関の債務が、受取人金融機関に対し履行される。例えば、最上位層の金融機関は、月に1度のみ、または、残高制限を超えた場合に、それらの間のすべての取引を決済し得る。別の例では、最上位層の金融機関と最下位層の金融機関との間の取引は、個別の取引ベースで、または、残高制限を超過した場合に決済し得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、個々の取引はそれぞれ、決済機構および関係する金融機関のプライベート分散型台帳全体の取引を追跡するために使用し得る、固有の取引番号を受領し得る。たとえば、ある金融機関から別の金融機関へのデジタル通貨の送金を伴う取引において、取引は、各金融機関のプライベート分散型台帳と決済機構のプライベート分散型台帳に個々に記録され得る。取引の個々の記録は、取引に割り当てられた固有の取引番号を使用して追跡し得る。固有の取引番号は、金融機関、決済機構、または、このような固有の取引番号の発行に適した別のエンティティのいずれかにより割り当てられ得る。いくつかの実施形態では、決済機構は、金融機関の間の取引に関する紛争解決機関である。紛争解決を支援するために、決済機構は、割り当てられた固有の取引番号を使用して、プライベート分散型台帳から取引を引き出し得る。
【0109】
いくつかの実施形態では、決済機構は、異なる金融機関の顧客間、および/または、金融機関内の顧客間の取引を円滑にするための手数料を課し得るが、決済機構自体は、デジタル通貨を保有し得ない。代わりに、決済機構は、取引を完了するための適切なタイミングを、金融機関に通知し得る。いくつかの実施形態では、決済機構は、「Know your customer」ポリシーを実行して、顧客にデジタルウォレットを発行するプロセス、および/または、第三者が顧客の代わりにデジタル通貨の保有を委託されることを承認するプロセスを標準化する。いくつかの実施形態では、取引に関与する金融機関の1つからの指示により、決済機構は特定の取引を制限することができる。例えば、金融機関が、不正な取引、違法な商品の購入に使用される取引、またはその他の違法行為に関する情報を受信し得る。同様に、決済機構自体がそのような情報を受信し、その情報に基づいて特定の取引を制限し得る。別の例では、金融機関、および/または、決済機構は、さらなる違法行為、および、資金喪失の原因を防ぐため、取引に関与する一方または両方のデジタルウォレットを、凍結および/または無効にし得る。
【0110】
図7は、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、デジタルウォレットを使用したデジタル通貨での代表的な取引700および750の例示的な図を示す。取引700において、金融機関706の顧客は、そのデジタルウォレット702から、ある金額のデジタル通貨、例えば、$AA100SCを、金融機関706の別の顧客のデジタルウォレット704に送金することを依頼する。取引は、決済機構708のプライベート分散型台帳に記録され得て、デジタルウォレット702および704は更新され得て、そしてデジタル通貨、例えば、$AA100SCは、デジタルウォレット702からデジタルウォレット704に送金され得る。いくつかの実施形態では、決済機構708が、金融機関706のプライベート分散型台帳に記録される取引を送信し得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレット702、704の一方または両方は、金融機関706のプライベート分散型台帳に記録される取引を送信し得る。金融機関は、その金融機関のオムニバス口座における、同等の法定通貨の保有者を更新し得る。これにより、送金されたデジタル通貨の新しい所有者を、FDIC保険または地域に基づくその他の適切な保険で保護するための所有権情報、または、その他の適切な情報が更新され得る。いくつかの実施形態では、決済機構708は、デジタル通貨をデジタルウォレット702からデジタルウォレット704に送金するように依頼された取引を、金融機関706により通知される。この場合、決済機構708のプライベート分散型台帳、および/または、金融機関706のプライベート分散型台帳は、本明細書に記載の技術に従って取引を反映するように更新され得る。いくつかの実施形態では、異なる金融機関の2人のユーザのデジタルウォレット間の取引について、一方または両方の金融機関が、決済機構708に取引を通知し得る。この場合、決済機構708のプライベート分散型台帳、および/または、両方の金融機関のプライベート分散型台帳が、本明細書に記載の技術に従って取引を反映するように更新され得る。
【0111】
取引750において、金融機関756の顧客は、そのデジタルウォレット752から、ある金額のデジタル通貨、例えば、$AA100SCを、別の金融機関758の顧客のデジタルウォレット754に送金することを依頼する。取引は、決済機構760のプライベート分散型台帳に記録され得て、デジタルウォレット752および754は更新され得て、そしてデジタル通貨、例えば、$AA100SCは、デジタルウォレット752からデジタルウォレット754に送金され得る。いくつかの実施形態では、この取引は2つの金融機関にまたがるので、決済機構760は、2つの金融機関の間の仲介者として機能する。いくつかの実施形態では、決済機構760が、金融機関756、758のプライベート分散型台帳に記録される取引を送信し得る。いくつかの実施形態では、デジタルウォレット752、754の一方または両方は、金融機関756、758のプライベート分散型台帳に記録される取引を送信し得る。いくつかの実施形態では、取引は、デジタルウォレット752、754の一方または両方のプライベート分散型台帳に記録され得る。このステップは、例えば、決済機構760が存在しない場合に、取引を検証するための保護手段として機能し得るいくつかの実施形態では、決済機構760は、そのプライベート分散型台帳に取引を記録し、その後、金融機関756、758の一方または両方に、それぞれのプライベート分散型台帳に取引を記録するように通知し得る。いくつかの実施形態では、金融機関756は、その金融機関のオムニバス口座における、同等の法定通貨の保有者を更新し得る。これにより、送金されたデジタル通貨の新しい所有者を保護するために、FDIC保険情報またはその他の適切な保険情報が更新され得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、金融機関758の顧客が、金融機関756のデジタル通貨、例えば、$AA100SCを、法定通貨、例えば100ドルに変換し、金融機関758の顧客の口座に預け入れることを依頼し得る。決済機構760は、取引を円滑にするために、2つの金融機関の間の仲介者として機能し得る。決済機構760は、金融機関756に代わり、デジタル通貨が顧客によって保有されていることを確認し、取引を(デジタル通貨を発行する)金融機関756に通知し得る。いくつかの実施形態では、金融機関756のデジタル通貨、例えば、$AA100SCは、依頼された法定通貨、例えば、100ドルに、直接交換され得る。いくつかの実施形態では、金融機関756のデジタル通貨、例えば、$AA100SCは、最初に、金融機関758の同等のデジタル通貨、例えば、$BB100SCに変換され、その後、依頼された法定通貨、例えば、100ドルに交換され得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、決済機構760は、一般に、金融機関758等の金融機関のゲートウェイとして機能し、それぞれの金融機関の顧客により保持されている金融機関756により発行されたデジタル通貨の残高を追跡し得る。いくつかの実施形態では、決済機構760は、取引を完了する適切なタイミングを決定するために、階層化またはランク付けシステムを適用し得る(例えば、ティア1~ティア5)。決済機構760は、各金融機関の資産規模、債務格付け、財務健全性審査、および/または、他の適切な基準に基づいて、金融機関をランク付けするための階層構造を組み込み得る。例えば、最上位層、例えばティア1、の金融機関は、月に1回、または、一定の制限に達した時に、それらの間のすべての取引を決済し得る。別の例では、最上位層、例えばティア1、の金融機関が、最下位層、例えばティア5、の金融機関と取引を開始する場合、最上位層の金融機関は最下位層の金融機関に、即刻取引を完了しデジタル通貨を裏付けする法定通貨を送金する要求をし得る。別の例では、決済機構760は、上位層の金融機関が関与する取引の促進には、手数料を貸し付けし定期的に徴収し得る一方、決済機構760は、下位層の金融機関が関与する取引の促進には、手数料の即時支払いを依頼し得る。
【0114】
従来、金融機関間の法定通貨の送金は、決済機構銀行間支払いシステム(CHIPS)、または、Fedwireを使用して実行し得る。CHIPSは、大規模な取引を行うための、米国の民営決済機構である。Fedwireは、米国連邦準備銀行が運営する即時グロス決済資金送金システムであり、金融機関が参加者間で電子的に資金を送金できる。CHIPSとFedwireは、速度と最小取引金額が異なるが、どちらのシステムも法定通貨を直接処理し、一方の当事者からもう一方の当事者に法定通貨の支払いを行う。ただし、決済機構760が扱う通貨は、金融機関間の取引を円滑にするための決済機構の手数料に関連するもののみである。従来のCHIPSタイプ、または、Fedwireタイプのシステムとは異なり、決済機構760は、金融機関間の取引を円滑化する間、デジタル通貨または法定通貨を保有または処理しない。説明した通り、決済機構は、従来のシステムと比較して、第三者とのやり取りを制限し、金融機関間により高い効率を提供し、それにより時間と費用を節約し得る。
【0115】
他の実施形態は、本出願の不可欠な部分を形成する添付の付属書Aに記載されている。付属書Aの態様は、単独で、または、本明細書に記載する他の態様と組み合わせて使用し得る。
【0116】
コンピュータ構成例
説明するシステムおよび方法の一実装例を、図8に示す。具体的に、図8に、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、プライベート分散型台帳のコンピューティングノードの実装例を示す。具体的に、システム800は、新たな金融取引(例えば、要素804)のためのトランザクションブロックを生成するように動作可能な1つ以上のプロセッサ801を含み得る。このような情報は、メモリ内に格納することも、記憶媒体に維持することもできる。いくつかの実施形態では、プロセッサ801は、取引に関与する1つ以上のエンティティ、取引の金額、取引のタイムスタンプ、および、他の適切な取引情報を含む取引情報802を受信し得る。いくつかの実施形態では、プロセッサ801は、説明したシステムおよび方法の少なくともいくつかに従って実行される新たな金融取引ごとに、プライベート分散型台帳803から1つ以上のトランザクションブロックを、受信および/または生成し得る。プロセッサ801は、説明したシステムおよび方法の少なくともいくつかを実行するように構成され、取引情報802、および/または、プライベート分散型台帳803に基づき、トランザクションブロック804を生成し得る。
【0117】
本明細書で提供される本開示の任意の実施形態に関連して使用され得るコンピュ―タ装置900の例示的な実装を、図9に示す。具体的に、図9に、本明細書に記載した技術のいくつかの実施形態による、プライベート分散型台帳に参加するコンピューティングノードの1つ以上の機能を実行するコンピュータシステムの例を示す。コンピュータ装置900は、1つ以上のプロセッサ901、および、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ902、および、1つ以上の不揮発性記憶媒体903)を含む、1つ以上の製造品を含み得る。プロセッサ901は、任意の適切な方法で、メモリ902、および、不揮発性記憶装置903へのデータの書き込み、および、データの読み取りを制御し得る。本明細書に記載の機能のいずれかを実行するために、プロセッサ901により実行されるプロセッサ実行可能命令を格納する、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体として機能し得る、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ903)に格納された、1つ以上のプロセッサ実行可能命令を、プロセッサ901が実行し得る。
【0118】
「プログラム」または「ソフトウェア」という用語は、本明細書では一般的な意味で使用され、コンピュータまたは他のプロセッサにプログラムして、上記に説明した実施形態の様々な態様を実施するために使用できる任意のタイプのコンピュータコード、または、プロセッサ実行可能命令のセットを指す。さらに、一態様によれば、実行時に本明細書で提供される開示の方法を実行する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータまたはプロセッサ上に属する必要はなく、異なるコンピュータまたはプロセッサ間でモジュール方式で分散され、本明細書で提供される開示の様々な態様を実施し得ることを理解されたい。
【0119】
プロセッサ実行可能命令は、プログラムモジュールなど、1つ以上のコンピュータ、または、他の装置により実行される多くの形式であり得る。一般的に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実行したり、特定の抽象データ型を実装したりする、手順、プログラム、目的、構成要素、データ構造等が含まれる。典型的には、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望される通りに、組み合わされ、または、分散され得る。
【0120】
また、データ構造は、任意の適切な形式で、1つ以上の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体に格納され得る。簡単に説明すれば、データ構造は、データ構造内の場所によって関連付けられたフィールドを有するように示され得る。このような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝達する非一時的なコンピュータ可読媒体内の場所を有するフィールドに、記憶域を割り当てることにより達成し得る。しかしながら、任意の適切な機構を使用して、データ要素間の関係を確立するポインタ、タグ、または他の機構の使用を含む、データ構造のフィールド内の情報間の関係の確立もし得る。
【0121】
本明細書で定義、および、使用されるすべての定義は、辞書の定義、および/または、定義された用語の通常の意味を、規制するものであると理解されたい。
【0122】
本明細書で参照される、「応答する」という用語は、結果として開始されるか、または、~によって引き起こされることを指し得る。第1の例として、第2の行為に応答して実行される第1の行為には、第1の行為と第2の行為との間の中間ステップを含むことがある。第2の例としては、第2の行為に応答して実行される第1の行為は、第1の行為と第2の行為との間の中間ステップを含まないこともある。
【0123】
本明細書および特許請求において使用される、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト中に具体的に挙げられている、それぞれの要素、および、すべての要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、また、要素のリスト内の要素の組み合わせを除外するものではないと理解されたい。この定義により、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で特定される要素以外の要素が、特定される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意に存在し得る。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同様に「AまたはBの少なくとも1つ」、または同様に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つの、任意で複数のAを含み、Bが存在しない(および任意でB以外の要素を含む)ことを示し、別の実施形態では、少なくとも1つの、任意で複数のBを含み、Aが存在しない(および任意でA以外の要素を含む)ことを示し、さらに別の実施形態では、少なくとも1つの、任意で複数のAを含み、少なくとも1つの、任意で複数のBを含む(および任意で他の要素を含む)等を示すことができる。
【0124】
本明細書および特許請求において使用される「および/または」という句は、結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか、または、両方」を意味すると理解されたい。「および/または」で挙げられた複数の要素は、結合された要素の「1つ以上」と、同じ意味に解釈されたい。「および/または」節によって特定される要素以外の他の要素が、特定される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意で存在し得る。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」を使用することは、「含む」等の開放形式の言葉と組み合わせて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意でB以外の要素を含む)を示し、別の実施形態では、Bのみ(任意でA以外の要素を含む)を示し、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(任意選択で他の要素を含む)等を示す。
【0125】
請求項における、請求項要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、それ自体では、ある請求項要素の別の請求項要素に対してのいかなる優先、上位、または順序を、また、方法の行為が実行される一時的な順序を意味するものではない。このような用語は、特定の名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称(序数用語の使用以外)を有する別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用される。
【0126】
本明細書で使用されている語法および用語は、説明を目的としたものであり、限定的なものと見なされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、および、これらの変形を使用することにより、その後に列挙する項目および追加項目を包含することを意味する。
【0127】
本明細書に記載された技術のいくつかの実施形態を詳細に説明したので、様々な改造および改善が当業者は容易に考案するであろう。このような改造および改善は、本開示の精神および適応範囲内にあることを意図する。従って、前述の説明は単なる例であり、限定することを意図するものではない。技術は、以下の特許請求の範囲、および、それに相当するものによって定義される場合にのみ制限される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】