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特開2023-166478グリコシル化タンパク質の電気泳動のための脱グリコシル化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166478
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】グリコシル化タンパク質の電気泳動のための脱グリコシル化方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20231114BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20231114BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231114BHJP
【FI】
G01N27/447 301A
C12Q1/34 ZNA
G01N33/68
G01N27/447 301B
G01N27/447 325A
G01N27/447 315K
G01N27/447 331E
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023139726
(22)【出願日】2023-08-30
(62)【分割の表示】P 2022544080の分割
【原出願日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】62/963,646
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ イーミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハンター
(72)【発明者】
【氏名】ワン シャオ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】リールマン ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】カロー ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ワン イン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】糖タンパク質が分析され得る、高速、正確、および高度に再現性のある高スループット方法を提供する。
【解決手段】対象のタンパク質を含む試料を分析する方法であって、(a)試料を変性させるステップと、(b)試料を蛍光標識で標識して、標識された試料を生成する、標識するステップと、(c)標識された試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、(d)標識された試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(e)標識された試料の電気泳動を実施するステップとを含み、試料が、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(a)~(c)で変性され、標識され、かつクエンチされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のタンパク質を含む試料を分析する方法であって、
前記方法が、
(a)前記試料を変性させるステップと、
(b)前記対象のタンパク質を蛍光標識で標識して、標識された試料を生成する、標識するステップと、
(c)前記標識された試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、
(d)前記標識された試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化して、脱グリコシル化された標識された試料を生成する、脱グリコシル化するステップと、
(e)前記脱グリコシル化された標識された試料の電気泳動を実施するステップと
を含み、
前記試料が、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(a)~(c)で変性され、標識され、かつクエンチされる、
方法。
【請求項2】
前記対象のタンパク質が、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象のタンパク質が、少なくとも1つの付着グリカンを含むグリコシル化タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象のタンパク質が、抗原結合ドメインを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象のタンパク質が、抗体、抗体断片、またはscFvを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象のタンパク質が、Fcドメインおよび/または受容体融合タンパク質を含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象のタンパク質が、受容体融合タンパク質を含み、前記受容体融合タンパク質が、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象のタンパク質が、組換えヒトタンパク質である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの付着グリカンが、N結合している、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記エンドグリコシダーゼが、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、かつ/または
前記エンドグリコシダーゼが、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4からなる群から選択される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PNGase Fが、Rapid PNGase Fである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Rapid PNGase Fが、非還元性である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試料を脱グリコシル化するステップが、前記試料を約50℃で10分間加熱することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記試料を脱グリコシル化するステップが、
0.2~1.5mgの標識された対象のタンパク質と、エンドグリコシダーゼとを含む、反応混合物を形成すること
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのグリカンが、O結合型グリカンである、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記エンドグリコシダーゼが、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、かつ/または
前記エンドグリコシダーゼが、エンド-α-N-アセチルガラクトサミンダーゼ(O-グリコシダーゼ)を含む、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試料を蛍光標識で標識するステップが、前記試料を約35℃で10~30分間加熱することを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、還元性溶液または非還元性溶液を使用して変性される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が還元性溶液を使用して変性され、かつ前記還元性溶液がジチオスレイトール(DTT)を含む、または
前記試料が非還元性溶液を使用して変性され、かつ前記非還元性溶液がヨードアセトアミド(IAM)を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試料を変性させるステップが、前記試料を50℃~99℃の間で1~60分間加熱することを含む、
前記未反応蛍光標識をクエンチするステップが、停止溶液を添加することを含む、かつ/または
前記方法が、前記試料と同時に参照標準を分析するステップをさらに含む、
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記電気泳動が、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動(CE)、またはマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)からなる群から選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、20kDa未満の範囲内の遊離染料干渉の低減、および電気泳動図内のエンドグリコシダーゼピークの低減または非存在をもたらす、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、前記エンドグリコシダーゼピークが、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
対象のタンパク質の安定性を決定する方法であって、
前記方法が、
(a)ストレスを受けた試料を形成するために、前記対象のタンパク質を含む試料にストレスを加えるステップと、
(b)ストレスを受けた前記試料、および前記対象のタンパク質を含むストレスを受けていない試料を、変性させるステップと、
(c)前記ストレスを受けた試料中の対象のタンパク質および前記ストレスを受けていない試料中の対象のタンパク質を蛍光標識で標識して、標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料を生成する、標識するステップと、
(d)前記標識されたストレスを受けた試料および前記標識されたストレスを受けていない試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、
(e)前記標識されたストレスを受けた試料および前記標識されたストレスを受けていない試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化して、脱グリコシル化された標識されたストレスを受けた試料および脱グリコシル化された標識されたストレスを受けていない試料を生成する、脱グリコシル化するステップと、
(f)前記脱グリコシル化された標識されたストレスを受けた試料および前記脱グリコシル化された標識されたストレスを受けていない試料のマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施して、前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料の電気泳動図を生成する、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施するステップと、
(g)前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料からの前記電気泳動図を比較し、それによって、前記対象のタンパク質の安定性を決定する、比較するステップと
を含み、
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料が、ステップ(e)における脱グリコシル化の前に、ステップ(b)~(d)で変性され、標識され、かつクエンチされる、
方法。
【請求項25】
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料に熱的にストレスを加えること、少なくとも1回の凍結/解凍サイクル、前記試料を保存条件に曝露すること、前記試料を機械的に攪拌すること、前記試料を凍結乾燥および再水和すること、または前記試料を光、放射線、一重項酸素種、フリーラジカル、高pH条件、もしくは低pH条件に曝露することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料に熱的にストレスを加えることを含み、前記試料に熱的にストレスを加えることが、前記試料を約30℃~約45℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、もしくは少なくとも8週間保持することを含む、または
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料を保存条件に曝露することを含み、前記保存条件が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、もしくは少なくとも30か月間の約-80℃~-30℃の温度を含むか、もしくは少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、もしくは少なくとも18か月間の約2℃~8℃の温度を含む、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象のタンパク質が、少なくとも1つの付着グリカンを含むグリコシル化タンパク質である、請求項24~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料の前記電気泳動図を比較するステップが、ピーク数、高さ、位置、面積、またはそれらの組み合わせを比較することを含む、請求項24~27のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年1月21日に出願された米国仮特許出願第62/963,646号の優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、生化学、分子生物学、および電気泳動を介したタンパク質の分析の分野に関する。
【0003】
参照による配列表の援用
ここで電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。配列表のコンピュータ可読形式のコピー(ファイル名:REGE-019-001WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2020年12月22日、ファイルサイズ1キロバイト)。
【背景技術】
【0004】
背景
キャピラリーベースの電気泳動(CE)およびマイクロチップベースのキャピラリー電気泳動(MCE)は、タンパク質サイズに基づいて治療用タンパク質の完全性および純度を特性評価し、品質管理を提供するために使用される、製薬業界における一般的な分析方法である。標準的な業界推奨試料調製方法は、多くのタンパク質に効果的であるが、重度にグリコシル化されたタンパク質は、CEおよびMCEによる不十分な分離および定量により問題がある。加えて、MCEプロファイルにおける部分的にグリコシル化されたピークおよびグリコシル化されていないピークは、不純物ピークと重複し、定量化に干渉し得る。したがって、グリコシル化タンパク質を用いた作業の課題を克服し得る、追加の試料調製方法の必要性が当該技術分野に存在する。本発明は、CEおよびMCEなどの電気泳動方法による分析のためのタンパク質を調製するために使用され得る、重度にグリコシル化されたタンパク質を標識するための方法を提供する。
【発明の概要】
【0005】
概要
本開示は、対象のタンパク質を含む試料を分析する方法であって、試料を変性、蛍光標識、クエンチ、および脱グリコシル化するステップを含み、変性、標識、およびクエンチするステップが、脱グリコシル化の前に生じる、方法に関する。本開示の試料を分析する方法は、エンドグリコシダーゼによる電気泳動図ピークを低減または排除することができ、遊離染料干渉を低減し、それによって、それを通して糖タンパク質が分析され得る、高速、正確、および高度に再現性のある高スループット方法を提供することができる。
【0006】
本開示は、対象のタンパク質を含む試料を分析する方法であって、(a)試料を変性させるステップと、(b)試料を蛍光標識で標識して、標識された試料を生成する、標識するステップと、(c)標識された試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、(d)標識された試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(e)標識された試料の電気泳動を実施するステップとを含み、試料が、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(a)~(c)で変性され、標識され、かつクエンチされる、方法を提供する。
【0007】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化タンパク質である。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質は、少なくとも1つの付着グリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%は、グリカン(10%w/w)を含む。
【0008】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗体、抗体断片、またはscFvを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、受容体融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、受容体融合タンパク質は、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、受容体融合タンパク質は、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、組換えヒトタンパク質である。
【0009】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、グリコシル化部位は、Asn-X-Ser/Thrコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの付着グリカンは、N結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの付着グリカンは、グリコシル化タンパク質中のアスパラギンにN結合している。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、PNGase Fである。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、Rapid PNGase Fである。いくつかの実施形態では、Rapid PNGase Fは、非還元性である。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、還元性である。
【0010】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約35℃まで30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約50℃まで10~30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約50℃まで10分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化するステップは、0.2~1.5mgの、標識された対象のタンパク質と、Rapid PNGase Fの体積を除く10μLの反応体積中の、1~5μLのRapid PNGase Fとを含む、反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0.2mgの標識された対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、5μLのRapid PNGase Fを含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、緩衝液を含む。
【0011】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのグリカンは、O結合型グリカンである。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、エンド-α-N-アセチルガラクトサミンダーゼ(O-グリコシダーゼ)を含む。
【0012】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料を蛍光標識で標識するステップは、試料を約35℃まで10~30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を蛍光標識で標識するステップは、試料を約35℃まで15分間加熱することを含む。
【0013】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料は、還元性溶液を使用して変性される。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、ジチオスレイトール(DTT)を含む。いくつかの実施形態では、試料は、非還元性溶液を使用して変性される。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、ヨードアセトアミド(IAM)を含む。いくつかの実施形態では、試料を変性させるステップは、試料を40℃と99℃の間まで1分間~5時間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を変性させるステップは、試料を50℃と99℃の間まで1~60分間加熱することを含む。
【0014】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、未反応蛍光標識をクエンチするステップは、停止溶液を添加することを含む。
【0015】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、方法は、試料と同時に参照標準を分析するステップをさらに含む。
【0016】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、電気泳動は、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動(CE)、またはマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、電気泳動は、MCEである。いくつかの実施形態では、MCEは、MCE機器を使用して実行される。
【0017】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、方法は、脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、20kDa未満の範囲内の遊離染料干渉の低減、および電気泳動図内のエンドグリコシダーゼピークの低減または非存在をもたらす。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼピークは、脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減される。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼピークは、脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、電気泳動図に存在しない。
【0018】
本開示は、対象のタンパク質の安定性を決定する方法であって、(a)対象のタンパク質を含む試料にストレスを加えるステップと、(b)ストレスを受けた試料、および対象のタンパク質を含むストレスを受けていない試料を、変性させるステップと、(c)ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識して、標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料を生成する、標識するステップと、(d)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、(e)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(f)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料のマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施して、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料の電気泳動図を生成する、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施するステップと、(g)ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料からの電気泳動図を比較し、それによって、対象のタンパク質の安定性を決定する、比較するステップとを含み、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料が、ステップ(e)における脱グリコシル化の前に、ステップ(b)~(d)で変性され、標識され、かつクエンチされる、方法を提供する。
【0019】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料にストレスを加えるステップは、試料に熱的にストレスを加えることを含む。いくつかの実施形態では、試料に熱的にストレスを加えることは、試料を約30℃~約45℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、または少なくとも8週間保持することを含む。
【0020】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料にストレスを加えるステップは、少なくとも1回の凍結/解凍サイクルを含む。
【0021】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料にストレスを加えるステップは、試料を保存条件に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、保存条件は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも8か月、少なくとも12か月、少なくとも18か月、少なくとも24か月、または少なくとも30か月間の約-80℃~-30℃の温度を含む。いくつかの実施形態では、保存条件は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも8か月、少なくとも12か月、または少なくとも18か月の約2℃~8℃の温度を含む。
【0022】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料にストレスを加えるステップは、試料を機械的に攪拌することを含む。
【0023】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、試料にストレスを加えるステップは、試料を凍結乾燥および再水和することを含む。
【0024】
試料にストレスを加えることが、試料を光、放射線、一重項酸素種、フリーラジカル、高pH条件、または低pH条件に曝露することを含む。
【0025】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化タンパク質である。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質は、少なくとも1つの付着グリカンを含む。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、または少なくとも10%は、グリカン(10%w/w)を含む。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも10%は、グリカン(10%w/w)を含む。
【0026】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗体、抗体断片、またはscFvを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、Fcドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、受容体融合タンパク質を含む。いくつかの実施形態では、受容体融合タンパク質は、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、受容体融合タンパク質は、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、組換えヒトタンパク質である。
【0027】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、グリコシル化部位は、Asn-X-Ser/Thrコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの付着グリカンは、N結合している。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの付着グリカンは、グリコシル化タンパク質中のアスパラギンにN結合している。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、PNGase Fである。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、Rapid PNGase Fである。いくつかの実施形態では、Rapid PNGase Fは、非還元性である。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、還元性である。
【0028】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約35℃まで30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約50℃まで10~30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップは、試料を約50℃まで10分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップは、0.2~1.5mgの、標識された対象のタンパク質と、Rapid PNGase Fの体積を除く10μLの反応体積中の、1~5μLのRapid PNGase Fとを含む、反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料のそれぞれについての反応混合物は、5μLのRapid PNGase Fを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料のそれぞれは、0.2mgの標識された対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料のそれぞれについての反応混合物は、緩衝液を含む。
【0029】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、少なくとも1つのグリカンは、O結合型グリカンである。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、エンド-α-N-アセチルガラクトサミンダーゼ(O-グリコシダーゼ)を含む。
【0030】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識するステップは、それぞれの試料を約35℃まで30分間加熱することを含む。
【0031】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料は、還元性溶液を使用して変性される。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、ジチオスレイトール(DTT)を含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料は、非還元性溶液を使用して変性される。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、ヨードアセトアミド(IAM)を含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を変性させるステップは、試料を40℃と99℃の間まで1分間~5時間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を変性させるステップは、試料を50℃と99℃の間まで1~60分間加熱することを含む。
【0032】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、未反応蛍光標識をクエンチするステップは、停止溶液を添加することを含む。
【0033】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、方法は、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料と同時に参照標準を分析するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料の電気泳動図を比較するステップは、ピーク数、高さ、位置、面積、またはそれらの組み合わせを比較することを含む。
[本発明1001]
対象のタンパク質を含む試料を分析する方法であって、
前記方法が、
(a)前記試料を変性させるステップと、
(b)前記試料を蛍光標識で標識して、標識された試料を生成する、標識するステップと、
(c)前記標識された試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、
(d)前記標識された試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、
(e)前記標識された試料の電気泳動を実施するステップと
を含み、
前記試料が、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(a)~(c)で変性され、標識され、かつクエンチされる、
方法。
[本発明1002]
前記対象のタンパク質が、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記対象のタンパク質が、グリコシル化タンパク質である、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
前記グリコシル化タンパク質が、少なくとも1つの付着グリカンを含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記対象のタンパク質が、抗原結合ドメインを含む、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記対象のタンパク質が、抗体、抗体断片、またはscFvを含む、本発明1005の方法。
[本発明1007]
前記対象のタンパク質が、Fcドメインを含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記対象のタンパク質が、受容体融合タンパク質を含む、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
前記受容体融合タンパク質が、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質である、本発明1008の方法。
[本発明1010]
前記受容体融合タンパク質が、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である、本発明1008または1009の方法。
[本発明1011]
前記対象のタンパク質が、組換えヒトタンパク質である、本発明1001~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記グリコシル化部位が、Asn-X-Ser/Thrコンセンサス配列を含む、本発明1002~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記少なくとも1つの付着グリカンが、N結合している、本発明1004~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記少なくとも1つの付着グリカンが、前記グリコシル化タンパク質中のアスパラギンにN結合している、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記エンドグリコシダーゼが、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、本発明1001~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記エンドグリコシダーゼが、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4からなる群から選択される、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記エンドグリコシダーゼが、PNGase Fである、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記PNGase Fが、Rapid PNGase Fである、本発明1017の方法。
[本発明1019]
前記Rapid PNGase Fが、非還元性である、本発明1018の方法。
[本発明1020]
前記試料を脱グリコシル化するステップが、前記試料を約50℃まで10分間加熱することを含む、本発明1017~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記試料を脱グリコシル化するステップが、
0.2~1.5mgの、標識された対象のタンパク質と、Rapid PNGase Fの体積を除く10μLの反応体積中の、1~5μLのRapid PNGase Fとを含む、反応混合物
を含む、本発明1001~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記反応混合物が、0.2mgの、標識された対象のタンパク質を含む、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記反応混合物が、5μLのRapid PNGase Fを含む、本発明1021の方法。
[本発明1024]
前記反応混合物が、緩衝液を含む、本発明1021~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記少なくとも1つのグリカンが、O結合型グリカンである、本発明1004~1011のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記エンドグリコシダーゼが、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、本発明1025の方法。
[本発明1027]
前記エンドグリコシダーゼが、エンド-α-N-アセチルガラクトサミンダーゼ(O-グリコシダーゼ)を含む、本発明1025または1026の方法。
[本発明1028]
前記試料を蛍光標識で標識するステップが、前記試料を約35℃まで10~30分間加熱することを含む、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
前記試料を蛍光標識で標識するステップが、前記試料を約35℃まで約15分間加熱することを含む、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記試料が、還元性溶液を使用して変性される、本発明1001~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
前記還元性溶液が、ジチオスレイトール(DTT)を含む、本発明1030の方法。
[本発明1032]
前記試料が、非還元性溶液を使用して変性される、本発明1001~1029のいずれかの方法。
[本発明1033]
前記非還元性溶液が、ヨードアセトアミド(IAM)を含む、本発明1032の方法。
[本発明1034]
前記試料を変性させるステップが、前記試料を40℃と99℃の間まで1分間~5時間加熱することを含む、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記試料を変性させるステップが、前記試料を50℃と99℃の間まで1~60分間加熱することを含む、本発明1001~1033のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記未反応蛍光標識をクエンチするステップが、停止溶液を添加することを含む、本発明1001~1035のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記試料と同時に参照標準を分析するステップをさらに含む、本発明1001~1036のいずれかの方法。
[本発明1038]
前記電気泳動が、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリー電気泳動(CE)、またはマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)からなる群から選択される、本発明1001~1037のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記電気泳動が、MCEである、本発明1001~1037のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記MCEが、MCE機器を使用して実行される、本発明1039の方法。
[本発明1041]
脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、20kDa未満の範囲内の遊離染料干渉の低減、および電気泳動図内のエンドグリコシダーゼピークの低減または非存在をもたらす、本発明1001~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、前記エンドグリコシダーゼピークが、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減される、本発明1041の方法。
[本発明1043]
脱グリコシル化後に標識された試料を使用して生成された電気泳動図と比較した場合に、前記エンドグリコシダーゼピークが、電気泳動図に存在しない、本発明1041の方法。
[本発明1044]
対象のタンパク質の安定性を決定する方法であって、
前記方法が、
(a)前記対象のタンパク質を含む試料にストレスを加えるステップと、
(b)ストレスを受けた前記試料、および前記対象のタンパク質を含むストレスを受けていない試料を、変性させるステップと、
(c)前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識して、標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料を生成する、標識するステップと、
(d)前記標識されたストレスを受けた試料および前記標識されたストレスを受けていない試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、
(e)前記標識されたストレスを受けた試料および前記標識されたストレスを受けていない試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、
(f)前記標識されたストレスを受けた試料および前記標識されたストレスを受けていない試料のマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施して、前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料の電気泳動図を生成する、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施するステップと、
(g)前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料からの前記電気泳動図を比較し、それによって、前記対象のタンパク質の安定性を決定する、比較するステップと
を含み、
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料が、ステップ(e)における脱グリコシル化の前に、ステップ(b)~(d)で変性され、標識され、かつクエンチされる、
方法。
[本発明1045]
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料に熱的にストレスを加えることを含む、本発明1044の方法。
[本発明1046]
前記試料に熱的にストレスを加えることが、前記試料を約30℃~約45℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、または少なくとも8週間保持することを含む、本発明1045の方法。
[本発明1047]
前記試料にストレスを加えるステップが、少なくとも1回の凍結/解凍サイクルを含む、本発明1044の方法。
[本発明1048]
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料を保存条件に曝露することを含む、本発明1044の方法。
[本発明1049]
前記保存条件が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、または少なくとも30か月間の約-80℃~-30℃の温度を含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
前記保存条件が、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、または少なくとも18か月間の約2℃~8℃の温度を含む、本発明1048の方法。
[本発明1051]
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料を機械的に攪拌することを含む、本発明1044の方法。
[本発明1052]
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料を凍結乾燥および再水和することを含む、本発明1044の方法。
[本発明1053]
前記試料にストレスを加えるステップが、前記試料を光、放射線、一重項酸素種、フリーラジカル、高pH条件、または低pH条件に曝露することを含む、本発明1044の方法。
[本発明1054]
前記対象のタンパク質が、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む、本発明1044~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
前記対象のタンパク質が、グリコシル化タンパク質である、本発明1044~1053のいずれかの方法。
[本発明1056]
前記グリコシル化タンパク質が、少なくとも1つの付着グリカンを含む、本発明1055の方法。
[本発明1057]
前記対象のタンパク質が、抗原結合ドメインを含む、本発明1044~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
前記対象のタンパク質が、抗体、抗体断片、またはscFvを含む、本発明1057の方法。
[本発明1059]
前記対象のタンパク質が、Fcドメインを含む、本発明1044~1058のいずれかの方法。
[本発明1060]
前記対象のタンパク質が、受容体融合タンパク質を含む、本発明1044~1059のいずれかの方法。
[本発明1061]
前記受容体融合タンパク質が、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質である、本発明1060の方法。
[本発明1062]
前記受容体融合タンパク質が、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である、本発明1060または1061の方法。
[本発明1063]
前記対象のタンパク質が、組換えヒトタンパク質である、本発明1044~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記グリコシル化部位が、Asn-X-Ser/Thrコンセンサス配列を含む、本発明1054~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記少なくとも1つの付着グリカンが、N結合している、本発明1056~1064のいずれかの方法。
[本発明1066]
前記少なくとも1つの付着グリカンが、前記グリコシル化タンパク質中のアスパラギンにN結合している、本発明1065の方法。
[本発明1067]
前記エンドグリコシダーゼが、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、本発明1044~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
前記エンドグリコシダーゼが、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4からなる群から選択される、本発明1044~1067のいずれかの方法。
[本発明1069]
前記エンドグリコシダーゼが、PNGase Fである、本発明1044~1067のいずれかの方法。
[本発明1070]
前記PNGase Fが、Rapid PNGase Fである、本発明1069の方法。
[本発明1071]
前記Rapid PNGase Fが、非還元性である、本発明1070の方法。
[本発明1072]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップが、前記試料を約50℃まで10分間加熱することを含む、本発明1044~1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を脱グリコシル化するステップが、
0.2~1.5mgの、標識された対象のタンパク質と、Rapid PNGase Fの体積を除く10μLの反応体積中の、1~5μLのRapid PNGase Fとを含む、それぞれの試料についての反応混合物
を含む、本発明1044~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料のそれぞれについての前記反応混合物が、5μLのRapid PNGase Fを含む、本発明1073の方法。
[本発明1075]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料のそれぞれが、0.2mgの、標識された対象のタンパク質を含む、本発明1073または1074の方法。
[本発明1076]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料のそれぞれについての前記反応混合物が、緩衝液を含む、本発明1073~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記少なくとも1つのグリカンが、O結合型グリカンである、本発明1044~1063のいずれかの方法。
[本発明1078]
前記エンドグリコシダーゼが、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する、本発明1077の方法。
[本発明1079]
前記エンドグリコシダーゼが、エンド-α-N-アセチルガラクトサミンダーゼ(O-グリコシダーゼ)を含む、本発明1077または1078の方法。
[本発明1080]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識するステップが、それぞれの試料を約35℃まで10~30分間加熱することを含む、本発明1044~1079のいずれかの方法。
[本発明1081]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識するステップが、それぞれの試料を約35℃まで約15分間加熱することを含む、本発明1044~1079のいずれかの方法。
[本発明1082]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料が、還元性溶液を使用して変性される、本発明1044~1081のいずれかの方法。
[本発明1083]
前記還元性溶液が、ジチオスレイトール(DTT)を含む、本発明1082の方法。
[本発明1084]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料が、非還元性溶液を使用して変性される、本発明1044~1081のいずれかの方法。
[本発明1085]
前記非還元性溶液が、ヨードアセトアミド(IAM)を含む、本発明1084の方法。
[本発明1086]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を変性させるステップが、前記試料を40℃と99℃の間まで1分間~5時間加熱することを含む、本発明1044~1085のいずれかの方法。
[本発明1087]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料を変性させるステップが、前記試料を50℃と99℃の間まで1~60分間加熱することを含む、本発明1044~1085のいずれかの方法。
[本発明1088]
前記未反応蛍光標識をクエンチするステップが、停止溶液を添加することを含む、本発明1044~1087のいずれかの方法。
[本発明1089]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料と同時に参照標準を分析するステップをさらに含む、本発明1044~1088のいずれかの方法。
[本発明1090]
前記ストレスを受けた試料および前記ストレスを受けていない試料の前記電気泳動図を比較するステップが、ピーク数、高さ、位置、面積、またはそれらの組み合わせを比較することを含む、本発明1044~1089のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】脱グリコシル化を伴わない方法A、標識前の脱グリコシル化の方法B、および標識後の脱グリコシル化の方法Cのためのプロトコルを示す図である。NR:非還元、R:還元、MC:マイクロチップキャピラリー電気泳動。
図2】脱グリコシル化を伴わないプロトコル(方法A、赤色で示される)およびタンパク質標識前の脱グリコシル化を伴うプロトコル(方法B、青色で示される)を使用した、非還元条件下でタンパク質1を使用して生成された電気泳動図である。数値ピークラベルは、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)によって測定された通りのタンパク質の分子量を示す。Rapid PNGase F(PNGase)ピークが、示される場合、電気泳動図に出現する。
図3】方法B(標識前の脱グリコシル化)を使用した、非還元条件下でタンパク質1を使用して生成された3つの電気泳動図を示す。タンパク質1試料は、時間なし(0、赤色、上)、2週間(青色、中央)、または4週間(黒色、下)の37℃における分析の前に熱ストレスで処理された。低分子量1ピーク(LMW1)のピークは、ストレスとともに増加し、PNGaseピークとマージした。
図4】脱グリコシル化を伴わないプロトコル(方法A、赤色で示される)およびタンパク質標識前の脱グリコシル化を伴うプロトコル(方法B、青色で示される)を使用した、還元条件下でタンパク質1を使用して生成された電気泳動図である。数値ピークラベルは、MCEによって測定された通りのタンパク質の分子量を示す。PNGase Fピークは、示されるように、方法Bの電気泳動図に出現する。灰色の影付きボックスは、遊離染料ピークを示す。
図5】タンパク質1が標識後に脱グリコシル化された(方法C)、タンパク質1を用いて生成された一対の電気泳動図である。上:脱グリコシル化反応は、1μLのRapid(商標)PNGaseを用いて、50℃において10分間、15分間、20分間、および30分間実行された。下:脱グリコシル化反応は、2μLのRapid(商標)PNGaseを用いて、50℃において10分間、15分間、20分間、および30分間実行された。
図6】50℃で10分間保持された反応における1、2、3、または4μLのRapid(商標)PNGase Fを用いた脱グリコシル化の結果を示す、方法Cおよびタンパク質1を使用して生成された電気泳動図である。挿入図は、増加した量のRapid(商標)PNGaseを伴うグリコシル化タンパク質の低減を示す矢印を伴って、タンパク質1の不完全に脱グリコシル化されたピーク(主要ピークの右側ショルダー)を示す。遊離染料ピークが、灰色の影付きボックスによって示される。MP:主要ピーク、LMW1:低分子量1ピーク。
図7】方法C(標識後の脱グリコシル化)および1、2、3、または4μLのRapid(商標)PNGase(上から下)で脱グリコシル化されたタンパク質1を使用して生成された一連の4つの電気泳動図である。低分子量(LMW)ピーク1~5、主要ピーク(MP)、および高分子量ピーク(HMW)が示されている。
図8】タンパク質を37℃で4週間(37C 4w、黒色)を保持することによって熱的にストレスを加えられたタンパク質1およびストレスを受けていないタンパク質1(t=0、赤色)を使用して方法C(標識後の脱グリコシル化)から生成された電気泳動図である。脱グリコシル化は、Rapid(商標)PNGase Fを使用して実行された。
図9】非還元条件下で、脱グリコシル化を伴って標識されたタンパク質2(方法C)、および脱グリコシル化を伴わずに標識されたタンパク質2(方法A)を比較する、タンパク質2を使用して生成された電気泳動図である。PNGase Fは、37KDaの予想サイズを有し、このピークは、存在しない。遊離染料ピークは、影付きボックスによって示される。
図10】非還元条件下で、標識後に脱グリコシル化で処理されたタンパク質3(青色、方法C)および脱グリコシル化を伴わないタンパク質3(赤色、方法A)を比較する、タンパク質3を使用して生成された電気泳動図である。数値ピークラベルは、MCEによって測定されたタンパク質およびタンパク質断片の分子量を示す。
図11】非還元条件下で、標識後に脱グリコシル化で処理されたタンパク質3(青色、方法C)および脱グリコシル化を伴わないタンパク質3(赤色、方法A)を比較する、電気泳動図である。数値ピークラベルは、MCEによって測定されたタンパク質およびタンパク質断片の分子量を示す。
図12】脱グリコシル化を伴わないタンパク質4(方法A、赤色)および標識後に脱グリコシル化されたタンパク質4(方法C、青色)を比較する、電気泳動図である。タンパク質4は、非還元(NR)条件を使用して変性された。数値ピークラベルは、MCEによって測定された分子量を示す。LMW:低分子量、DGMP:脱グリコシル化主要ピーク、GMP:グリコシル化主要ピーク。遊離染料ピークは、影付きボックスによって示される。
図13】脱グリコシル化を伴わずに標識されたタンパク質4(方法A、赤色)および標識後に脱グリコシル化されたタンパク質4(方法C、青色)を比較する、電気泳動図である。タンパク質4は、還元(R)条件を使用して変性された。LC:軽鎖、DHC:脱グリコシル化重鎖、GHC:グリコシル化重鎖。遊離染料ピークは、影付きボックスによって示される。
図14】方法Cおよびタンパク質1を使用して非還元条件下で生成されたタンパク質安定性に対する光ストレスの効果をアッセイする、3つの電気泳動図を示す。タンパク質1は、120万ルクス時間(MLH)累積曝露(青色、中央)および2.4MLH累積曝露(黒色、下)を伴って青味を帯びた白色(CW)蛍光ランプ光下で光ストレスを加えられ、ストレスを受けていないタンパク質1(赤色、上)と比較された。脱グリコシル化は、Rapid(商標)PNGase Fを使用して実行された。LMW:低分子量、MP:主要ピーク、HMW:高分子量。
図15】方法Cおよびタンパク質1を使用して非還元条件下で生成されたタンパク質安定性に対する光ストレスの効果をアッセイする、3つの電気泳動図を示す。タンパク質1は、200ワット時間/平方メートル(青色、中央)および400ワット時間/平方メートル(黒色、下)の積分近紫外線(UVA)エネルギー下で光ストレスを加えられ、ストレスを受けていないタンパク質1(赤色、上)と比較された。脱グリコシル化は、Rapid(商標)PNGase Fを使用して実行された。LMW:低分子量、MP:主要ピーク、HMW:高分子量。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本開示は、電気泳動を介した分析のための対象のタンパク質を含む試料を調製するための新しい方法を提供する。本明細書に提供される方法では、対象のタンパク質は、変性され、その後、蛍光染料を使用したタンパク質の共有結合標識、続いて、標識反応をクエンチすることが続く。標識後、標識されたタンパク質は、エンドグリコシダーゼなどの酵素と接触させ、さらなる精製を伴わずに対象のタンパク質からグリカンを除去する。標識前にタンパク質を脱グリコシル化する、電気泳動のためのグリコシル化タンパク質を調製する以前の方法とは異なり、本明細書に記載の方法は、質量に基づいてタンパク質およびペプチド種の明確な分離を可能にする。これらの方法はまた、マイクロチップ電気泳動(MCE)電気泳動図内で、脱グリコシル化で使用される酵素からの干渉および標識反応からの遊離染料を排除する。本方法は、高速で、高度に再現性があり、高スループットであり、グリコシル化タンパク質を分析するために成功裏に使用されている。理論に拘束されることを所望するものではないが、重度グリコシル化が、MCEまたはキャピラリー電気泳動(CE)分析プラットフォームにおけるタンパク質の遊走に干渉し、タンパク質分子量の不正確な測定および不精密な電気泳動図ピークをもたらすため、本明細書に記載の方法が重度にグリコシル化されたタンパク質に関して有利であると考えられる。本明細書に記載の方法は、CEおよびMCEなどの方法によって分析される任意のグリコシル化タンパク質に適用可能であるプラットフォームアプローチにおいて、およびタンパク質を特性評価するために、または品質管理目的のために、使用され得る。例えば、本明細書に記載の方法は、様々な温度における長期の保持時間または異なる配合物などの様々な条件を受けたときに対象のタンパク質の安定性を測定するために使用され得る。
【0036】
したがって、本開示は、(a)試料を変性させるステップと、(b)試料を蛍光標識で標識して、標識された試料を生成する、標識するステップと、(c)標識された試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、(d)標識された試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(e)標識された試料の電気泳動を実施するステップとを含み、試料が、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(b)および(c)で標識およびクエンチされる、電気泳動を使用した分析のための対象のタンパク質を含む試料を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、電気泳動は、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)であり、出力は、電気泳動図である。
【0037】
定義
本明細書において別段の示唆がない限り、または文脈から明確に相反しない限り、本明細書で請求される発明を記載する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)における「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」という用語、および類似の指示対象の使用は、単数および複数の両方を網羅すると解釈されるものである。
【0038】
本明細書において別段の示唆がない限り、本明細書において値の範囲の列挙は単に、当該範囲内にある各別個の値を個々に言及するための簡潔表現法としての機能を果たすことが意図されており、各別個の値は、それが個々に本明細書において列挙されているように本明細書内に組み込まれる。
【0039】
「約」という用語の使用は、記述される値のおよそ±10%の範囲内で上回るか、または下回るかのいずれかの値を記述することが意図されている。他の実施形態では、値は、記述される値のおよそ±5%の範囲内で上回るか、または下回るかのいずれかの値の範囲であり得る。他の実施形態では、値は、記述される値のおよそ±2%の範囲内で上回るか、または下回るかのいずれかの値の範囲であり得る。他の実施形態では、値は、記述される値のおよそ±1%の範囲内で上回るか、または下回るかのいずれかの値の範囲であり得る。先行する範囲は、文脈で明白となることが意図されており、さらなる限定は示唆されない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」とは、ペプチド結合によって相互に継合された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。タンパク質には、ポリペプチドおよびペプチドが含まれ、また、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、アルキル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化などの修飾も含まれ得る。タンパク質は、タンパク質系薬剤を含む科学的または商業的な対象のものであり得、タンパク質は、とりわけ、酵素、リガンド、受容体、抗体、およびキメラまたは融合タンパク質を含む。タンパク質は、周知の細胞培養法を使用して様々なタイプの組換え細胞によって産生され、一般的に遺伝子操作技術(例えば、キメラタンパク質をコードする配列、またはコドン最適化配列、イントロンレス配列など)によって細胞に導入され、そこでエピソームとして存在するか、または細胞ゲノムに統合され得る。
【0041】
本明細書において別段の示唆がない限り、または文脈から明確に相反しない限り、本明細書に記載のすべての方法は、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより詳細に解説することが意図されており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に限定を加えるものではない。本明細書において、請求されていない要素を、本発明の実施に必須の要素であると示唆すると解釈されるべき文言はない。
【0042】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により具体的かつ個別に組み込まれた場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
変性
本開示は、試料中の対象のタンパク質を変性させる方法を提供する。タンパク質を変性させることは、ペプチド結合を破壊するには不十分な条件下での、二次および三次タンパク質構造の破壊を伴い、一次構造はインタクトのまま残す。
【0044】
還元条件および非還元条件の両方の下で対象のタンパク質を変性させる方法は、本開示の範囲内である。
【0045】
タンパク質還元剤は、ジスルフィド結合を破壊する薬剤である。これらのジスルフィド結合は、単一のポリペプチド内、または別個のポリペプチド上でコードされるタンパク質の複数のサブユニット間にあり得る。サブユニット間のジスルフィド結合を破壊することは、個別に分析されるマルチサブユニットタンパク質の個々のサブユニットの分析を可能にする。還元剤は、当業者に公知であろう。例示的な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT、CAS 3483-12-3)、ベータ-メルカプトエタノール(BME、2BME、2-ME、b-mer、CAS 60-24-2)、2-アミノエタンチオール(シスタミン-HClとも呼ばれる2-MEA-HCl、CAS 156-57-0)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、(TCEP、CAS 5961-85-3)、システイン塩酸塩(Cys-HCl、CAS 52-89-1)、または2-メルカプトエタンスルホン酸ナトリウム塩(MESNA)を含むが、これらに限定されない。チオール系還元剤がペプチドおよびタンパク質ジスルフィド結合の固相還元を可能にするように固定化されている樹脂を含有する、固定化還元剤カラムなどのタンパク質結合を還元するための他の方法が、当該技術分野で公知である。ポリペプチド間の化学相互作用を還元するための好適である酸化剤を含む還元剤も想定される。
【0046】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、還元性溶液を使用して変性される。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、135~155mMのジチオスレイトール(DTT)を含有する。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、リン酸ナトリウムおよびドデシル硫酸リチウムをさらに含む。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、0.69%のドデシル硫酸リチウム(LDS)、69mMのリン酸ナトリウム、および142mMのジチオスレイトールを含むか、または本質的にそれらからなる。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、40~120mMのDTT、40~80mMのリン酸ナトリウム、および0.5%~2.0%のLDSを含有する。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、60~100mMのDTT、50~70mMのリン酸ナトリウム、および0.75%~1.5%のLDSを含有する。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、約80mMのDTT、約60mMのリン酸ナトリウム、および約1.2%のLDSを含有する。いくつかの実施形態では、還元性溶液は、体積で約1:4の比率において対象のタンパク質を含む試料に添加される。
【0047】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、非還元性溶液を使用して、すなわち、対象のタンパク質中のジスルフィド結合を保存する条件下で変性される。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、ヨードアセトアミド(IAM)を含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、100~200mMのヨードアセトアミドを含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、リン酸ナトリウムおよびドデシル硫酸リチウム(LDS)をさらに含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、166mMのヨードアセトアミド(IAM)を含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、166mMのヨードアセトアミド、0.81%のドデシル硫酸リチウム、および81mMのリン酸ナトリウムを含むか、または本質的にそれらからなる。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、100~300mMのヨードアセトアミド、40~80mMのリン酸ナトリウム、および0.5%~2.0%のLDSを含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、150~250mMのヨードアセトアミド、50~70mMのリン酸ナトリウム、および0.75%~1.5%のLDSを含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、約200mMのヨードアセトアミド、約60mMのリン酸ナトリウム、および約1.2%のLDSを含む。いくつかの実施形態では、非還元性溶液は、体積で約1:4の比率において対象のタンパク質を含む試料に添加される。
【0048】
いくつかの実施形態では、試料を変性させることは、還元性または非還元性溶液を試料に添加することと、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液を加熱することとを含む。いくつかの実施形態では、試料は、熱によって変性される。例えば、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、30℃と99℃の間、30℃と90℃の間、30℃と80℃の間、30℃と70℃の間、30℃と60℃の間、30℃と50℃の間、30℃と40℃の間、40℃と99℃の間、40℃と90℃の間、40℃と80℃の間、40℃と70℃の間、40℃と60℃の間、40℃と50℃の間、50℃と99℃の間、50℃と90℃の間、50℃と80℃の間、50℃と70℃の間、または50℃と60℃の間まで加熱され得る。いくつかの実施形態では、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、1分間~12時間、1分間~10時間、1分間~5時間、1分間~4時間、1分間~3時間、1分間~2時間、1分間~60分間、1分間~30分間、1分間~15分、1分間~10分間、1分間~5分間、5分間~60分間、5分間~30分間、5分間~15分間、5分間~10分間、10分間~60分間、10分間~45分間、10分間~30分間、または10分間~15分間加熱され得る。いくつかの実施形態では、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、40℃と99℃の間まで1分間~60分間加熱され得る。いくつかの実施形態では、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、50℃と99℃の間まで1分間~60分間加熱され得る。さらなる例として、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、60℃と85℃の間まで5分間~30分間加熱され得る。代替的に、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、75℃まで10分間加熱され得る。いくつかの実施形態では、組み合わせられた試料および還元性または非還元性溶液は、70℃まで10分間加熱され得る。
【0049】
脱グリコシル化
本開示は、試料中の対象のタンパク質を脱グリコシル化する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、本明細書に記載の方法を使用して蛍光標識で標識された後に脱グリコシル化される。脱グリコシル化は、エンドグリコシダーゼなどの酵素を使用して実施され得る。
【0050】
糖タンパク質は、アミノ酸側鎖に共有結合したオリゴ糖鎖(グリカン)を含有するタンパク質である。これらのオリゴ糖鎖は、共翻訳または翻訳後修飾においてタンパク質に付着している。
【0051】
本明細書で使用される場合、「多糖類」および「オリゴ糖」と同義的に使用され得る「グリカン」という用語は、グリコシド結合単糖類を含むか、またはそれからなる化合物を指す。グリカンという用語はまた、炭水化物が単糖類である場合でさえも、糖タンパク質または糖脂質に結合された炭水化物を指すために使用され得る。https://en.wikipedia.org/wiki/Carbohydratehttps://en.wikipedia.org/wiki/Glycolipidhttps://en.wikipedia.org/wiki/Oligosaccharideグリカンは、単糖類のO-グリコシド結合を含み得る。グリカンは、単糖類のホモまたはヘテロポリマーであり得、直鎖または分枝鎖であり得る。例示的なグリカンは、とりわけ、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)、ガラクトース、シアル酸、およびフコースの単量体を含み得る。
【0052】
グリカンは、N結合またはO結合のいずれかを介して対象のタンパク質に結合され得、対象のタンパク質は、N結合型グリカン、O結合型グリカン、またはN結合型およびO結合型グリカンの組み合わせを含むことができる。本明細書で参照される場合、「N結合型グリカン」または「N結合型グリコシル化」は、タンパク質のアスパラギン(Asn)アミノ酸のアミド窒素などの窒素原子への糖単量体または多糖類の付着を指す。本明細書で使用される場合、「O結合型グリカン」または「O結合型グリコシル化」は、タンパク質のセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)アミノ酸の酸素原子への糖単量体または多糖類の付着を指す。例示的O結合型グリカンには、O-N-アセチルガラクトサミン(O-GalNAc)、O-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)、O-マンノース、O-ガラクトース、O-フコース、およびO-グルコースが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
エンドグリコシダーゼは、オリゴ糖中の内部グリコシド結合を加水分解する酵素である。オリゴ糖が糖タンパク質の一部である場合、それによって、オリゴ糖は、糖タンパク質から放出される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「エンドグリコシダーゼ」は、糖タンパク質または糖脂質からグリカンを放出する酵素を指す。エンドグリコシダーゼは、末端残基ではない残基間の多糖類変化を切断し得、したがって、その同族タンパク質コンジュゲートから長鎖炭水化物を放出することが可能である。例示的なエンドグリコシダーゼとしては、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、エンドグリコシダーゼF3、O-グリコシダーゼ、およびエンド-β-ガラクトシダーゼが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、N結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。N結合型グリカンを標的とする例示的なエンドグリコシダーゼとしては、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase F)、エンドグリコシダーゼH(Endo H)、エンドグリコシダーゼS(Endo S)、エンドグリコシダーゼD、エンドグリコシダーゼF1、エンドグリコシダーゼF2、およびエンドグリコシダーゼF4が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態、例えば、対象のタンパク質がN結合型グリカンを含む、実施形態では、エンドグリコシダーゼは、PNGase Fである。
【0056】
いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、O結合型グリカンの脱グリコシル化を触媒する。O結合型グリカンを標的とする例示的なエンドグリコシダーゼの例としては、エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(O-グリコシダーゼ)が含まれるが、これに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、エンドグリコシダーゼは、PNGAse Fである。PNGase Fは、N結合型糖タンパク質中の高マンノースのハイブリッド複合オリゴ糖の最も内側のN-アセチル-D-グルコサミン(GlcNAc)とアスパラギン残基との間で切断するアミダーゼである。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、組換えである。いくつかの実施形態では、PNGase Fは、Rapid(商標)PNGase Fである。Rapid(商標)PNGase Fは、当該技術分野で公知であり、New England Biolabsおよび他のベンダーから入手可能である。いくつかの実施形態では、Rapid(商標)PNGase Fは、対象のタンパク質中のジスルフィド結合を保存する非還元形式である。いくつかの実施形態では、Rapid(商標)PNGase Fは、対象のタンパク質中のジスルフィド結合を保存しない還元形式である。
【0058】
いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、0.1~3.0mgの標識された対象のタンパク質を含む、反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0.1~2.0mgの標識された対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0.1~1.5mgの対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0.5~1.5mgの対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、0.2mgの標識された対象のタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、酵素の体積を除く10μLの反応体積中の、1~7μLのRapid(商標)PNGase F酵素を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、酵素の体積を除く10μLの反応体積中の、1~5μLのRapid(商標)PNGase F酵素を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、標識された対象のタンパク質を含む、10μLの体積に添加された1μL、2μL、3μL、4μL、5μL、6μL、または7μLのRapid(商標)PNGase F酵素を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、酵素の体積を除く10μLの反応体積中の、5μLのRapid(商標)PNGase F酵素を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、標識された対象のタンパク質を含む10μLの体積に添加された5μLのRapid(商標)PNGase F酵素を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、追加の緩衝液、例えば、PNGase F酵素の作用を促進する反応緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、追加の緩衝液を含まない。
【0059】
いくつかの実施形態、例えば、エンドグリコシダーゼがPNGase Fである実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、試料を25℃~65℃まで100~60分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、試料を30℃~50℃まで20~40分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、試料を35℃まで30分間加熱することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態、例えば、エンドグリコシダーゼがRapid(商標)PNGase Fである実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、試料を50℃まで10~30分間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、試料を脱グリコシル化することは、試料を50℃まで10分間加熱することを含む。
【0061】
タンパク質標識
本開示は、対象のタンパク質を標識する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、脱グリコシル化の前に標識される。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、蛍光染料などの蛍光標識で標識される。任意の好適な標識が、本開示の範囲内であると想定される。
【0062】
本明細書で使用される場合、「検出可能な標識」または「標識」とは、対象のタンパク質などの標的物質の識別および/または定量を促進するために使用される化学物質を指す。例示的標識には、直接的に観察もしくは測定されるか、または間接的に観察もしくは測定され得る標識が含まれる。そのような標識には、放射線計数装置で測定され得る放射性標識、分光光度計で視覚的に観察もしくは測定され得る色素、染料、または他の色素原、光電子増倍管ベースの機器もしくは写真フィルムによって測定され得る化学発光標識、スピン標識分析器で測定され得るスピン標識、および出力シグナルが好適な分子付加体の励起によって生成され、染料によって吸収されるか、または標準的な蛍光光度計もしくは撮像システムで測定され得る光を用いた励起によって可視化され得る、蛍光部分を含むが、これらに限定されない。標識は、リン光体もしくは蛍光体などの発光物質、生体発光物質、出力シグナルがシグナル化合物の化学修飾によって生成される化学発光物質、金属含有物質、または酵素であり得、無色の基質からの着色生成物の形成または好適な前駆体からの自発的化学発光生成物の形成などの酵素依存性の二次世代のシグナルが生じる。標識という用語はまた、標識分子が、後に添加されると、検出可能なシグナルを生成するために使用されるように、標識分子に選択的に結合し得る「タグ」またはハプテンも指し得る。
【0063】
多数の標識が、当業者に知られており、微粒子、蛍光染料、ハプテン、酵素ならびにそれらの発色性、蛍光性および化学発光物質、ならびにその内容が参照により組み込まれる、Richard P.HauglandによるMolecular Probes Handbook Of Fluorescent Probes And Research Chemicals 6th Ed.(1996)、ならびにそれぞれ1999年11月および2001年5月にCD Romで発行されたその後続の第7版および第8版更新に説明されている他の標識を含むが、これらに限定されない。
【0064】
例示的な蛍光標識としては、蛍光染料が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「蛍光染料」とは、光を吸収し、より長い波長において発光する、非タンパク質分子を指す。例示的な蛍光染料としては、Alexa Fluor(登録商標)染料、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルロダミンイソチオシアネート(TRITC)、DyLight蛍光、Cy染料、IRDye、HiLyte染料、スルホン化および/またはペグ化クマリン染料、スルホン化および/またはペグ化キサンテン染料、スルホン化またはペグ化シアニン染料、ならびにスルホン化および/またはペグ化ピレン染料が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
追加の検出可能な標識には、Dyomics DY-631 NHSエステルが含まれるが、これに限定されない。使用され得る他の検出可能な標識としては、他の染料、フルオロフォア、発色団、質量タグ、量子ドット、および同等物、ならびに参照によりその全体で本明細書に組み込まれる米国特許第6,924,372号に開示されるものが含まれる。
【0066】
例示的な蛍光標識には、緑色蛍光タンパク質などの生物学的フルオロフォア、および量子ドットなどのナノスケール結晶も含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
さらなる例示的な蛍光標識は、Pico Protein Reagent Kit(Protein Pico Assay Reagent Kitとも称される、部品番号760498)の一部として、Perkin Elmerから入手可能である。いくつかの実施形態では、蛍光標識は、Perkin Elmer Pico標識染料を含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質を標識することは、体積で約1:1の比率において、4~20μMのPico染料溶液を、対象のタンパク質を含む試料に添加することを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質を標識することは、4μM、5μM、6μM、10μM、12μM、14μM、15μM、16μM、18μM、20μM、または25μMのPico染料溶液を、対象のタンパク質を含む試料に添加することを含む。いくつかの実施形態では、Pico染料溶液は、体積で約1:5の染料対試料、体積で1:4の染料対試料、体積で1:3の染料対試料、体積で1:2の染料対試料、体積で1:1、体積で2:1の染料対試料、体積で3:1の染料対試料、体積で4:1の染料対試料、または体積で5:1の染料対試料の比率において、対象のタンパク質を含む試料に添加される。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質を標識することは、体積で約1:1の比率において、16μMのPico染料溶液を、対象のタンパク質を含む試料に添加することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、試料および染料を加熱することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、蛍光標識または染料は、対象のタンパク質に共有結合している。いくつかの実施形態では、蛍光標識は、アミン反応性基を含み、対象のタンパク質中の遊離アミンに共有結合している。いくつかの実施形態では、標識は、高親和性相互作用を通して対象のタンパク質に非共有結合している。
【0069】
タンパク質標識のための追加の好適なキットが、当業者に公知であろう。例示的なキットとしては、MedChemExpressからの抗体/タンパク質標識キット-FITC、および(高速)Alexa Fluor(登録商標)コンジュゲーションキットが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
任意の共有結合した蛍光標識、および蛍光標識を付着させる任意の方法は、本方法の範囲内であると想定される。
【0071】
いくつかの実施形態では、試料および染料は、約30℃と40℃の間まで約5~40分間加熱される。いくつかの実施形態では、試料および染料は、約30℃と40℃の間まで約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、または約40分間加熱される。いくつかの実施形態では、試料および染料は、約35℃まで約5分、約10分、約15分、約20分、約25分、約30分、約35分、または約40分間加熱される。いくつかの実施形態では、試料および染料は、約35℃まで約15分間加熱される。この加熱ステップは、変性した標識された対象のタンパク質を含む試料を生成することができる。過剰な標識は、例えば、スピンフィルターを使用することによって、任意に試料から除去され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、標識反応は、脱グリコシル化反応の前に停止される(クエンチする)。例えば、蛍光標識がPerkin Elmer Pico標識染料である実施形態では、標識反応は、等量のPerkin Elmer Pico停止緩衝液を標識反応に添加することによって停止され得る。いくつかの実施形態では、標識反応は、5μL、6μL、7μL、8μL、9μL、10μL、11μL、12μL、13μL、14μL、15μL、16μL、17μL、18μL、19μL、または20μLの適切な停止溶液を標識反応に添加することによって、クエンチされる。いくつかの実施形態では、染料は、Perkin Elmer Pico標識染料であり、標識反応は、5μLのPerkin Elmer Pico停止溶液を標識反応に添加することによってクエンチされる。さらなる例示的な停止緩衝液は、例えば、標識がアミン反応性蛍光染料を含む場合、1.5Mのヒドロキシルアミン(pH8.5)を含む。当業者は、様々な染料標識反応のための適切な停止緩衝液を選択することが可能であろう。理論に拘束されることを所望するものではないが、標識反応をクエンチすることは、後続の脱グリコシル化ステップに使用されるエンドグリコシダーゼ酵素の標識を防止すると考えられる。これは、標識された試料を可視化するために使用される電気泳動図内の標識されたエンドグリコシダーゼピークを防止または低減する。
【0073】
対象のタンパク質
本開示は、電気泳動を使用した分析のための対象のタンパク質を含む試料を調製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化されている。いくつかの実施形態では、方法は、対象のタンパク質を標識することを含み、その後に、脱グリコシル化が続く。
【0074】
N結合型またはO結合型グリコシル化などの翻訳後修飾を含むすべての対象のタンパク質は、本開示の範囲内であると想定される。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、原薬、製剤化された原薬、または医薬品であり得る、治療用抗体などの治療用タンパク質である。
【0075】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗体、抗体断片、または一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗体、抗体断片、またはscFvである。
【0076】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、組換えヒトタンパク質を含む。例えば、対象のタンパク質は、ヒト抗体もしくは抗体断片、またはヒト化抗体もしくは抗体断片を含むことができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「抗体」とは、4つのポリペプチド鎖、すなわち、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVRまたはVH)および重鎖定常領域を有する。重鎖定常領域は、3つのドメイン、すなわち、CH1、CH2、およびCH3を含有する。各軽鎖は、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)からなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列された3つのCDRおよび4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。「抗体」という用語は、任意のアイソタイプまたはサブクラスのグリコシル化および非グリコシル化免疫グロブリンの両方の言及を含む。「抗体」という用語は、抗体を発現するためにトランスフェクトされた宿主細胞から単離された抗体などの組換え手段によって調製、発現、作成、または単離される抗体分子を含む。抗体という用語はまたは、1つを超えるエピトープに結合し得るヘテロ四量体免疫グロブリンを含む、二重特異性抗体も含む。二重特異性抗体は、概して、参照により本出願に組み込まれる、米国特許第8,586,713号に記載されている。
【0078】
抗体の「抗原結合部分」(または「抗体断片」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。「抗体結合部分」という用語内に包含される結合断片の例としては、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって結合された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546)、(vi)単離されたCDR、ならびに(vii)VLおよびVH領域がペアリングして一価分子を形成する、単一タンパク質鎖を形成するように合成リンカーによって継合された、Fv断片の2つのドメイン、すなわち、VLおよびVHからなる、scFvが挙げられる。ダイアボディなどの一本鎖抗体の他の形態も、「抗体」という用語の下に包含される(例えば、Holliger et al.(1993)PNAS USA 90:6444-6448、Poljak et al.(1994)Structure 2:1 121-1 123を参照)。
【0079】
なおもさらに、抗体またはその抗原結合部分は、1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの抗体または抗体部分の共有結合性または非共有結合性会合によって形成される、より大きな免疫接着分子の一部であり得る。そのような免疫付着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047-1058)が含まれる。FabおよびF(ab’)2断片などの抗体部分は、抗体全体のパパインまたはペプシン消化を介したものなどの従来の技法を使用して、抗体全体から調製され得る。さらに、抗体、抗体部分、および免疫接着分子は、当該技術分野で一般的に知られている標準的な組換えDNA技術を使用して取得され得る(Sambrook et al.,1989を参照)。
【0080】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列由来の可変および定常領域を有する抗体を含む。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為もしくは部位特異的な変異誘導によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。
【0081】
「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されているか、または別様にヒトにおいて自然に産生される抗体バリアントとのその類似性を増加させるように修飾されている、抗体を含む。
【0082】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許出願公開US2015/0203579A1に記載されているような抗PD1抗体)、抗プログラム細胞死リガンド-1(例えば、米国特許出願公開US2015/0203580A1に記載されているような抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンジオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9,402,898号に記載されているような抗ANG2抗体)、抗アンジオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9,018,356号に記載されているような抗AngPtl3抗体)、抗血小板由来成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,265,827号に記載されているような抗PDGFR抗体)、抗Erb3抗体、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9,302,015号に記載されているような抗PRLR抗体)、抗補体C5抗体(例えば、米国特許出願公開US2015/0313194A1に記載されているような抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗表皮成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,132,192号に記載されているような抗EGFR抗体、または米国特許出願公開US2015/0259423A1に記載されているような抗EGFRvIII抗体)、抗プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン-9抗体(例えば、米国特許第8,062,640号または米国特許第9,540,449号に記載されているような抗PCSK9抗体)、抗成長および分化因子-8抗体(例えば、米国特許第8,871,209号または第9,260,515号に記載されているような抗GDF8抗体)、抗グルカゴン受容体(例えば、米国特許出願公開第US2015/0337045A1号または第US2016/0075778A1号に記載されているような抗GCGR抗体)、抗VEGF抗体、抗IL1R抗体、インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第US2014/0271681A1号または米国特許第8,735,095号もしくは第8,945,559号に記載されているような抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7,582,298号、第8,043,617号または第9,173,880号に記載されているような抗IL6R抗体)、抗IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗インターロイキン33(例えば、米国特許第9,453,072号または第9,637,535号に記載されているような抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許出願公開第9,447,173号に記載されているような抗-RSV抗体)、抗分化クラスター3(例えば、米国特許第9,447,173号および第9,447,173号、ならびに米国特許出願第62/222,605号に記載されているような抗CD3抗体)、抗分化クラスター20(例えば、米国特許第9,657,102号および第US20150266966A1号、ならびに米国特許第7,879,984号に記載されているような抗CD20抗体)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗分化クラスター48(例えば、米国特許第9,228,014号に記載されているような抗CD48抗体)、抗Fel d1抗体(例えば、米国特許第9,079,948号に記載されているような)、抗中東呼吸器症候群ウイルス(例えば、米国特許出願公開第US2015/0337029A1号に記載されているような抗MERS抗体)、抗エボラウイルス抗体(例えば、米国特許出願公開第US2016/0215040号に記載されているような)、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3抗体(例えば、抗LAG3抗体または抗CD223抗体)、抗神経成長因子抗体(例えば、米国特許出願公開第US2016/0017029号ならびに米国特許第8,309,088号および第9,353,176号に記載されているような抗NGF抗体)、および抗タンパク質Y抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、抗CD3×抗CD20二重特異性抗体(米国特許出願公開第US2014/0088295A1号および第US20150266966A1号に記載されているような)、抗CD3×抗Mucin 16二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗Muc16二重特異性抗体)、および抗CD3×抗前立腺特異的膜抗原二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗PSMA二重特異性抗体)からなる群から選択される。
【0083】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、アブシキシマブ(abciximab)、アダリムマブ(adalimumab)、アダリムマブ-atto(adalimumab-atto)、ado-トラスツズマブ(ado-trastuzumab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、アリロクマブ(alirocumab)、アテゾリズマブ(atezolizumab)、アベルマブ(avelumab)、バシリキシマブ(basiliximab)、ベリムマブ(belimumab)、ベンラリズマブ(benralizumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、ベズロトクスマブ(bezlotoxumab)、ブリナツモマブ(blinatumomab)、ブレンツキシマブベドチン(brentuximab vedotin)、ブロダルマブ(brodalumab)、カナキヌマブ(canakinumab)、カプロマブペンデチド(capromab pendetide)、セルトリズマブペゴル(certolizumab pegol)、セミプリマブ(cemiplimab)、セツキシマブ(cetuximab)、デノスマブ(denosumab)、ジヌツキシマブ(dinutuximab)、デュピリマブ(dupilumab)、デュルバルマブ(durvalumab)、エクリズマブ(eculizumab)、エロツズマブ(elotuzumab)、エミシズマブ-kxwh(emicizumab-kxwh)、エムタンシンアリロクマブ(emtansinealirocumab)、エビナクマブ(evinacumab)、エボロクマブ(evolocumab)、ファシヌマブ(fasinumab)、ゴリムマブ(golimumab)、グセルクマブ(guselkumab)、イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan)、イダルシズマブ(idarucizumab)、インフリキシマブ(infliximab)、インフリキシマブ-abda(infliximab-abda)、インフリキシマブ-dyyb(infliximab-dyyb)、イピリムマブ(ipilimumab)、イキセキズマブ(ixekizumab)、メポリズマブ(mepolizumab)、ネシツムマブ(necitumumab)、ネスバクマブ(nesvacumab)、ニボルマブ(nivolumab)、オビルトキサキシマブ(obiltoxaximab)、オビヌツズマブ(obinutuzumab)、オクレリズマブ(ocrelizumab)、オファツムマブ(ofatumumab)、オララツマブ(olaratumab)、オマリズマブ(omalizumab)、パニツムマブ(panitumumab)、ペムブロリズマブ(pembrolizumab)、ペルツズマブ(pertuzumab)、ラムシルマブ(ramucirumab)、ラニビズマブ(ranibizumab)、ラキシバクマブ(raxibacumab)、レスリズマブ(reslizumab)、リヌクマブ(rinucumab)、リツキシマブ(rituximab)、サリルマブ(sarilumab)、セクキヌマブ(secukinumab)、シルツキシマブ(siltuximab)、トシリズマブ(tocilizumab)、トシリズマブ(tocilizumab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、トレボグルマブ(trevogrumab)、ウステキヌマブ(ustekinumab)、およびベドリズマブ(vedolizumab)からなる群から選択される。
【0084】
対象のタンパク質は、当該技術分野で公知である任意の手段によって作成または単離され得る。これらは、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたタンパク質(例えば、抗体)などの組換え手段を含む。対象のタンパク質である抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離される(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)か、または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子のスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作成、もしくは単離される、組換え型組み合わせヒト抗体ライブラリーから単離され得る。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する。ある特定の実施形態では、組換えヒト抗体は、インビトロで変異誘発(またはヒトIg配列についてトランスジェニックである動物が使用される場合は、インビボで体細胞の変異誘発)を受け、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VHおよびVL配列に由来し、それに関連する一方で、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー内には自然に存在し得ない、配列である。
【0085】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、断片結晶化可能(Fc)ドメインを含む。例えば、対象のタンパク質は、受容体-Fc融合タンパク質または可溶性TCR-Fc融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、受容体-Fc融合タンパク質は、トラップタンパク質である。
【0086】
融合タンパク質は、本質的に別様にともに見出されないタンパク質の2つ以上の部分を含む。例えば、「Fc融合タンパク質」は、受容体リガンド結合ドメインなどの別の異種ドメインに融合される、免疫グロブリン分子のFc部分を含むことができる。抗体由来ポリペプチド(Fcドメインを含む)の様々な部分に融合された異種ポリペプチドを含む、融合タンパク質の調製は、例えば、Ashkenazi et al.,Proc. Natl. Acad. ScL USA 88: 10535,1991、Byrn et al.,Nature 344:677,1990、およびHollenbaugh et al.,“Construction of Immunoglobulin Fusion Proteins”,in Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pages 10.19.1 - 10.19.11,1992に記載されている。「受容体Fc融合タンパク質」は、いくつかの実施形態では、ヒンジ領域を含み、その後に免疫グロブリンのCH2およびCH3ドメインが続く、Fc部分に結合された受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含む。いくつかの実施形態では、Fc融合タンパク質は、1つ以上のリガンドに結合する2つ以上の明確に異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc-融合タンパク質は、インターロイキン1(IL-1)トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合されたIL-1 R1細胞外領域に融合されたIL-1 RAcPリガンド結合領域を含有するリロナセプト、米国特許第6,927,004号参照)、または血管内皮細胞成長因子A(VEGF)トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合されたVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合されたVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含有する、アフリベルセプト、米国特許第7,087,411号および第7,279,159号参照)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、受容体融合タンパク質などの融合タンパク質である。受容体融合タンパク質には、特に、トラップタンパク質およびミニトラップタンパク質が含まれ得る。
【0088】
「融合タンパク質」という用語は、任意に、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を通して生成される、その個々のペプチド骨格を介した共有結合によって結合された2つ以上のタンパク質またはその断片を含む、分子を指す。
【0089】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、トラップタンパク質またはミニトラップタンパク質である。いくつかの実施形態では、トラップタンパク質は、標的タンパク質に結合し、その活性に拮抗するか、またはそれを調節するためにデコイ受容体として作用することが可能である、操作された治療用タンパク質である。例示的なトラップタンパク質は、任意に、リンカー、二量体形成または多量体形成ドメイン、および切断部位などの追加のドメインを含む、ヒトIgG定常領域に融合されたその標的タンパク質(例えば、Flt-1のVEGF受容体Igドメイン2およびIgドメイン3)に対する受容体の結合ドメインを模倣する、1つ以上の受容体成分を含む。いくつかの実施形態では、トラップタンパク質は、例えば、ミニトラップの組織浸透を補助し得るタンパク質切断を通して、切断されるか、または縮小サイズである(ミニトラップ)。トラップタンパク質の非限定的な例としては、IL-1トラップ(例えば、ひいてはhlgGlのFcに融合される、IL-1R1細胞外領域に融合されたIL-lRAcPリガンド結合領域を含有するリロナセプト)(例えば、配列番号1)(米国特許第6,927,004号参照)、またはVEGFトラップ(例えば、ひいてはhlgGlのFcに融合される、VEGF受容体FlklのIgドメイン3に融合されたVEGF受容体FltlのIgドメイン2を含有するアフリベルセプトが挙げられる。例えば、それぞれの内容が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第7,087,411号、第7,279,159号参照、また、エタネルセプト(TNFトラップ)については米国特許第5,610,279号も参照されたい。
【0090】
タンパク質産生
本明細書に記載の方法によってアッセイされる対象のタンパク質は、当該技術分野で公知である任意の方法によって産生され得る。例えば、対象のタンパク質は、細胞培養によって産生され得る。細胞培養は、細胞および培養培地が最初に培養管に供給され、培養の終了前に定期的な細胞および/または生成物の回収の有りまたは無しで、追加の培養栄養素が、個別の増分で培養中にゆっくりと培養物に供給される、「流加細胞培養」または「流加培養」であり得る。流加培養は、定期的に全培養物(細胞および培地を含み得る)が除去され、新たな培地で置き換えられる、「半連続的流加培養」が含まれる。流加培養が、単純な「バッチ培養」とは区別される一方で、細胞培養のためのすべての構成要素(動物細胞およびすべての培養栄養素を含む)は、バッチ培養における培養プロセスの開始時に培養管に供給される。流加培養は、標準的な流加培養プロセス中に培養管から上清が除去される限りにおいては、「かん流培養」とは異なり得る一方で、かん流培養では、細胞は、例えば、ろ過により培養物中に残され、培養培地は、連続的または断続的に導入され、培養管から除去される。しかしながら、流加細胞培養物中の検証目的のための試料の除去が企図される。流加培養プロセスは、最大作動量および/または最大タンパク質産生に達したと決定されるまで継続され、その後、タンパク質が回収される。
【0091】
細胞培養は、通常は特定の増殖期で細胞を継続的に増殖させるために使用される技法である、「連続的細胞培養」であり得る。例えば、細胞の定常供給が必要とされる場合、または特定の対象のタンパク質の産生が必要とされる場合、細胞培養は、特定の増殖期に維持を必要とし得る。したがって、条件は、細胞をその特定の相に維持するために継続的に監視され、状況に応じて調整されなければならない。
【0092】
細胞は、細胞培養培地中で培養される。「細胞培養培地」および「培養培地」という用語は、典型的には、炭水化物エネルギー源、必須アミノ酸(例えばフェニルアラニン、バリン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、リシン、およびヒスチジン)ならびに非必須アミノ酸(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、プロリン、セリンおよびチロシン)、微量元素、エネルギー源、脂質、ビタミンなどの細胞の増殖を強化するために必要な栄養素を供給する、哺乳動物細胞を増殖させるために使用される栄養溶液を指す。細胞培養培地は、細胞増殖を支援する原材料を供給する抽出物、例えば、血清またはペプトン(加水分解物)を含有し得る。培地は、動物由来抽出物の代わりに酵母由来抽出物または大豆抽出物を含有し得る。化学的に規定された培地とは、化学的構成要素がすべて判明している(すなわち、公知の化学的構造を有する)細胞培養培地を指す。化学的に規定された培地は、例えば、血清または動物由来ペプトンなどの動物由来構成要素を完全に含まない。一実施形態では、培地は、化学的に規定された培地である。
【0093】
「細胞株」とは、細胞の連続的な継代または継代培養を通した特定の系統に由来する1つまたは複数の細胞を指す。「細胞」という用語は、「細胞集団」と同義的に使用される。「細胞」という用語は、組換え核酸配列の発現に好適な任意の細胞を含む。細胞には、細菌細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、非ヒト動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、酵母細胞、または例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合物などの原核生物および真核生物の細胞が含まれる。ある特定の実施形態では、細胞は,ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。他の実施形態では、細胞は、以下の細胞から選択される:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK21)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo25、HB 8065、HL-60、リンパ球、例えば、Jurkat(Tリンパ球)またはDaudi(Bリンパ球)、A431(表皮)、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT細胞、幹細胞、腫瘍細胞、および前述の細胞に由来する細胞株。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(登録商標)細胞)を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、CHO細胞である。他の実施形態では、細胞は、CHO K1細胞である。
【0094】
細胞は、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーション、および同等物を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の任意の方法を使用して、対象のタンパク質をコードする異種ポリヌクレオチドで形質転換され得る。
【0095】
「異種ポリヌクレオチド」という用語は、対象のタンパク質をコードする配列を含み得る、野生型細胞では見出されない異種ヌクレオチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を指す。例示的な異種ポリヌクレオチドは、プラスミド、ファージおよびウイルス粒子を含むがこれらに限定されない、対象のタンパク質をコードする配列を含むベクターを含む。任意に、ベクターは、特定の核酸分子の細胞への移入を可能にする。適切な細胞に導入されると、発現ベクターは、対象のタンパク質の発現を指示するために必要な遺伝子要素を含有する。例示的なベクターは、対象のタンパク質をコードする配列に動作可能に結合される転写プロモーター要素(すなわち、発現制御配列)を含むことができる。ベクターは、DNAもしくはRNAのいずれか、または2つの組み合わせ(例えば、DNA-RNAキメラ)から構成され得る。任意に、ベクターは、ポリアデニル化配列、1つ以上の制限部位、ならびにホスホトランスフェラーゼまたはハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼなどの1つ以上の選択可能マーカーを含み得る。加えて、選択される細胞型および採用されるベクターに応じて、複製の起源、追加の核酸制限部位、エンハンサー、および転写の誘導性を付与する配列などの他の遺伝的要素もまた、ベクターに組み込まれ得る。適切なベクターおよび形質転換方法の選択が、当業者には明らかであろう。
【0096】
グリコシル化
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化されている。グリコシル化は、N結合型グリコシル化、O結合型グリコシル化、またはそれらの組み合わせを含むことができる。細胞培養で産生される多くの対象のタンパク質およびポリペプチドは、オリゴ糖鎖(グリカン)を含む共有結合炭水化物構造を含有する、糖タンパク質である。これらのオリゴ糖鎖は、N結合またはO結合のいずれかを介して小胞体およびゴルジ装置内のタンパク質に結合される。オリゴ糖鎖は、糖タンパク質の質量のかなりの部分を含み得る。オリゴ糖鎖は、糖タンパク質の正しい折り畳みの促進、タンパク質-タンパク質相互作用の媒介、安定性の付与、有利な薬力学および/または薬物動態特性の付与、タンパク質消化の阻害、糖タンパク質の適切な分泌経路への標的化、ならびに糖タンパク質の1つもしくは複数の特定の器官への標的化を含む、役割を果たすことができる。
【0097】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、N結合型グリコシル化を含む。一般的に、N結合型オリゴ糖鎖は、小胞体の内腔内の新生移行タンパク質に付加される。オリゴ糖は、Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であり得る、Asn-X-Ser/Thrまたはいくつかの事例ではAsn-X-Cysなどの標的コンセンサス配列内に含有されるアスパラギン残基の側鎖上のアミノ基に付加される。初期オリゴ糖鎖は通常、小胞体中の特定のグリコシダーゼ酵素によってトリミングされ、2つのN-アセチルグルコサミンおよび3つのマンノース残基からなる短い分岐コアオリゴ糖をもたらす。
【0098】
小胞体における初期処理の後、糖タンパク質は、細胞表面に分泌される前にさらに処理を受け得る。N結合型オリゴ糖鎖は、マンノース残基の付加によって修飾され、高マンノースオリゴ糖をもたらし得る。代替的に、N-アセチルグルコサミンの1つ以上の単糖単位が、コアマンノースサブユニットに付加され、複雑なオリゴ糖を形成し得る。ガラクトースが、N-アセチルグルコサミンサブユニットに付加され得、シアル酸サブユニットが、ガラクトースサブユニットに付加され、シアル酸、ガラクトース、またはN-アセチルグルコサミン残基のいずれかで終端する鎖をもたらし得る。加えて、フコース残基が、コアオリゴ糖のN-アセチルグルコサミン残基に付加され得る。これらの付加のそれぞれは、特定のグリコシルトランスフェラーゼによって触媒される。
【0099】
N結合型グリコシル化経路によって修飾されることに加えて、糖タンパク質はまた、ゴルジ装置で処理されるにつれて特定のセリンまたはトレオニン残基へのO結合型オリゴ糖鎖の付加によって修飾され得る。O結合型オリゴ糖の残基は、一度に1つずつ付加され、各残基の付加は、特定の酵素によって触媒される。N結合型グリコシル化とは対照的に、O結合型グリコシル化のためのコンセンサスアミノ酸配列は、あまり明確に定義されていない。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、O結合型グリコシル化を含む。いくつかの実施形態では、O結合型グリコシル化は、対象のタンパク質のセリン(Ser)またはトレオニン(Thr)アミノ酸への糖分子の付着を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化タンパク質である。いくつかの実施形態では、グリコシル化タンパク質は、少なくとも1つの付着グリカンを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1個の付着グリカン、少なくとも2個の付着グリカン、少なくとも3個の付着グリカン、少なくとも4個の付着グリカン、少なくとも5個の付着グリカン、少なくとも6個の付着グリカン、少なくとも7個の付着グリカン、少なくとも8個の付着グリカン、少なくとも9個の付着グリカン、少なくとも10個の付着グリカン、少なくとも11個の付着グリカン、少なくとも12個の付着グリカン、少なくとも15個の付着グリカン、少なくとも20個の付着グリカン、または少なくとも25個の付着グリカンを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の付着グリカンを有する。いくつかの実施形態では、グリカンは、N結合している。いくつかの実施形態では、グリカンは、O結合している。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、NおよびO結合型グリカンの両方を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、グリコシル化タンパク質である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1つのグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1個のグリコシル化部位、少なくとも2個のグリコシル化部位、少なくとも3個のグリコシル化部位、少なくとも4個のグリコシル化部位、少なくとも5個のグリコシル化部位、少なくとも6個のグリコシル化部位、少なくとも7個のグリコシル化部位、少なくとも8個のグリコシル化部位、少なくとも9個のグリコシル化部位、少なくとも10個のグリコシル化部位、少なくとも10個のグリコシル化部位、少なくとも11個のグリコシル化部位、少なくとも12個のグリコシル化部位、少なくとも15個のグリコシル化部位、少なくとも20個のグリコシル化部位、または少なくとも25個のグリコシル化部位を含む。いくつかの実施形態では、少なくともグリコシル化部位は、N結合型グリコシル化部位、例えば、N結合型グリコシル化コンセンサス配列内のアスパラギンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのグリコシル化部位は、O結合型グリコシル化部位、例えば、セリンまたはトレオニンである。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質は、少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位および少なくとも1つのO結合型グリコシル化部位の両方を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、グリカンは、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも0.5%、1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、または少なくとも75%(5%重量/重量もしくはw/w)を含む。いくつかの実施形態では、グリカンは、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも5%(5%w/w)を含む。いくつかの実施形態では、グリカンは、グリコシル化タンパク質の総重量の少なくとも10%(10%w/w)を含む。グリカンから構成されるタンパク質重量の割合を決定する方法は、当業者に容易に明らかであり、アミノ酸配列に由来する予想重量を本明細書に記載の電気泳動分析方法によって決定される実際の重量と比較することを含むが、これに限定されない。
【0103】
参照標準
いくつかの実施形態では、参照標準は、対象のタンパク質を含む試料と同時に同じ調製方法を受け、対象のタンパク質を含む試料と同時に分析される。いくつかの実施形態では、方法は、対象のタンパク質の1つ以上の特性を参照標準と比較することを含む。例えば、方法は、対象のタンパク質および参照標準の電気泳動図を比較することを含むことができる。
【0104】
本明細書で使用される場合、「参照標準」とは、当該技術分野で公知の方法を使用して以前に分析されており、その特性が公知である、タンパク質を含む試料を指す。公知の特性は、参照標準(例えば、予測される分子量)のアミノ酸配列から決定するか、または実験的に決定することができる(例えば、電気泳動図プロファイル)。これらの特性には、予想分子量および実験的に決定される分子量、本明細書に記載の方法または当該技術分野で公知の方法を使用して生成された電気泳動図、等電点、吸光係数(対象のタンパク質が所与の波長における光をどの程度強く吸収するかという尺度)、グリコシル化部位の数、および付着グリカンの分子量が含まれ得るが、これらに限定されない。参照標準は、1つ以上の特性において対象のタンパク質と類似し得る。例えば、対象のタンパク質および参照標準の両方は、モノクローナル抗体であるか、またはFcドメインを含むか、類似分子量であるか、もしくは同等物であり得る。
【0105】
いくつかの実施形態では、参照標準は、対象のタンパク質を含む。例えば、参照標準は、以前に特性評価され、分解を防止するために制御された条件下で保存されている、試料とは別個の対象のタンパク質のバッチに由来し得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、本開示は、(a)試料および参照標準を変性させるステップと、(b)対象のタンパク質および参照標準を蛍光標識で標識して、標識された試料および標識された参照標準を生成する、標識するステップと、(c)対象のタンパク質および参照標準の標識反応をクエンチするステップと、(d)標識された試料および標識された参照標準をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(e)標識された試料および標識された参照標準の電気泳動を実施するステップとを含み、試料および参照標準は、ステップ(d)における脱グリコシル化の前に、ステップ(b)および(c)で標識およびクエンチされる、電気泳動を使用した分析のための対象のタンパク質および参照標準を含む試料を調製する方法を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態では、電気泳動は、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)であり、出力は、電気泳動図である。いくつかの実施形態では、方法は、対象のタンパク質および参照標準の主要ピーク強度を決定することと、対象のタンパク質の主要ピークおよび参照標準の主要ピークの強度値を比較することとを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質または参照標準の主要ピークは、グリコシル化されている。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質または参照標準の主要ピークは、グリコシル化されておらず、すなわち、本明細書に記載の方法を使用して標識した後に脱グリコシル化されている。いくつかの実施形態では、主要ピークを決定することは、主要ピークの高さを決定することを含む。いくつかの実施形態では、主要ピークを決定することは、主要ピークの面積を決定することを含む。いくつかの実施形態では、主要ピークを決定することは、その移動時間によって割られたピーク面積である、主要ピークの時間補正面積を決定することを含む。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質の主要ピーク強度は、参照標準の主要ピーク強度の50%~150%、50%~140%、50%~130%、50%~120%、50%~110%、50%~100%、50%~90%、60%~150%、70%~150%、80%~150%、90%~150%、100%~150%、110%~150%、120%~150%、130%~150%、140%~150%、60%~140%、70%~140%、70%~130%、70%~120%、70%~110%、80%~140%、80%~130%、80%~120%、80%~110%、80%~100%、90%~140%、90%~130%、90%~120%、90%~110%、または90%~100%以内である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質の主要ピーク強度は、参照標準の主要ピーク強度の60%~140%、70%~130%、80%~120%、または90%~110%以内である。いくつかの実施形態では、対象のタンパク質の主要ピーク強度は、参照標準の主要ピーク強度の70%~130%以内である。参照標準に対して対象のタンパク質の主要ピーク強度を決定することは、CEまたはMCE機器による適切な分離、およびデータ品質を確実にすることができる。
【0108】
電気泳動
本明細書では、電気泳動を使用した本明細書に記載の方法を使用して調製された対象のタンパク質を含む試料を分析する方法が提供される。
【0109】
タンパク質を分析するための電気泳動ベースの方法には、ドデシル(ラウリル)硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ドデシル硫酸リチウムの存在下でのポリアクリルアミドゲル電気泳動、自由流動電気泳動、等電点電気泳動、キャピラリーゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動(CE)、およびマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)などのゲルベースの方法が含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、電気泳動は、CEである。いくつかの実施形態では、CEは、ドデシル硫酸リチウム(LDS)緩衝液を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、電気泳動は、MCEである。「MCE」または「マイクロチップキャピラリー電気泳動」および「キャピラリー電気泳動(CE)」という用語は、試料中の分析物を分離するために使用される、キャピラリー電気泳動(CE)およびそのマイクロ流体対応物(MCE)を指す。MCE技術が、対象のタンパク質、タンパク質試料中の不純物を分離、識別、および定量化し、タンパク質断片などの対象のタンパク質の分解産物を分析するために使用され得る。CEおよびMCEは、電圧が試料に印加されたときの電気泳動移動度に基づいて、分析物を分離する。ゲルマトリックス(例えば、ゲル電気泳動)の存在は、サイズならびに電荷に基づいて分析物を分離するであろう。試料中の不純物としては、タンパク質凝集体、タンパク質断片、タンパク質多量体、およびアッセイ汚染物質が含まれるが、これらに限定されない。
【0112】
MCEでは、変性した標識された対象のタンパク質が、希釈され、MCEに供されて、マイクロチップキャピラリー電気泳動システム上で希釈タンパク質試料が分離され、電気泳動図が生成される。複数の試料が同じマイクロチップ上で同時に実行され得るため、MCEベースの方法は、高スループットアプローチに容易に適合可能である。さらに、MCEは、迅速であり、最小限の試料量を使用する。
【0113】
本明細書で使用される場合、電気泳動図は、CEまたはMCEなどの電気泳動方法から生じるプロットである。電気泳動図は、対象のタンパク質および不純物に対応するピークを含有する。
【0114】
電気泳動図を分析する方法は、当該技術分野で公知であり、個々のピーク下の位置、サイズ、および面積を比較することを含む。電気泳動図のピーク面積(ピーク下面積)を計算する方法は、当該技術分野で公知であり、例えば、積分してピーク下面積を推定することを含む。ピーク面積は、Empowerなどのソフトウェアを使用して計算され得る。
【0115】
開示されるMCEアッセイを行うための器具が、市販されている。いくつかの実施形態では、開示されるMCEアッセイは、LabChip GXII、LabChip GXII Touch(商標)、LabChip GXII Touch(商標)HT、およびProtein Express Assay LabChip(LabChip(登録商標)HT Protein Express Chip)を使用して実施される。
【0116】
開示されるCEアッセイを行うための器具も、市販されている。例えば、CEアッセイは、PA800 Plus Pharmaceutical Analysis SystemなどのBeckman Coulterキャピラリー電気泳動システムを使用して実施され得る。
【0117】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、方法は、タンパク質標準分子量ラダーを標識および実行し、対象のタンパク質のサイズを評価することをさらに含む。タンパク質分子量ラダーは、当業者に公知となり、ThermoFisherから入手可能なPageRuler、Mark12、BenchMark、PageRuler High Range、およびPageRuler Low Range、ならびにPerkinElmerから入手可能なProtein Pico Assay Reagent KitからのHT PICO Protein Expressラダーを含む。対象のタンパク質のサイズに基づく適切なラダーの選択が、当業者に明らかであろう。
【0118】
用途
本開示は、本明細書に記載の標識、脱グリコシル化、および電気泳動の方法を使用して、対象のタンパク質を特性評価する方法を提供する。
【0119】
対象のタンパク質を分析することは、CEまたはMCEによって生成される電気泳動図中の1つ以上のピークの数、位置、高さ、幅、強度、サイズ、または面積を特性評価することを含むことができるが、これに限定されない。
【0120】
電気泳動図中のピークの数および位置を特性評価することは、例えば、主要ピークの分子量よりも少ない分子量を伴うピークとして、対象のタンパク質の分解産物が試料中に存在するかどうかを決定することができる。対象の非脱グリコシル化タンパク質ならびに本明細書に記載の方法を使用して脱グリコシル化および標識された対象のタンパク質から生成されたピークの比較は、対象のタンパク質の脱グリコシル化主要ピークが、対象のタンパク質のグリコシル化主要ピークよりも低い分子量を有するため、対象のタンパク質のグリコシル化形態が試料中に存在するかどうかを決定することができる。
【0121】
本開示の方法は、様々な条件下で対象のタンパク質の安定性をアッセイするために使用され得る。これらには、原薬または医薬品として製剤化された対象のタンパク質のための保存条件が含まれる。例えば、対象のタンパク質を含む参照試料とそのストレスを受けた試料との間のピーク数およびピーク面積の比較は、経時的に、および高もしくは低pHまたは光への曝露などの様々な条件下で、対象のタンパク質の安定性を決定するために使用され得る。
【0122】
したがって、本開示は、本明細書に記載の対象のタンパク質を標識および脱グリコシル化する方法を使用して、対象のタンパク質の安定性を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象のタンパク質を含む試料にストレスを加えるステップと、(b)ストレスを受けた試料、および対象のタンパク質を含むストレスを受けていない試料を、変性させるステップと、(c)ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料を蛍光標識で標識して、標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料を生成する、標識するステップと、(d)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料中の未反応蛍光標識をクエンチするステップと、(e)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料をエンドグリコシダーゼで脱グリコシル化するステップと、(f)標識されたストレスを受けた試料および標識されたストレスを受けていない試料のマイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施して、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料の電気泳動図を生成する、マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)を実施するステップと、(g)ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料からの電気泳動図を比較するステップとを含み、ストレスを受けた試料およびストレスを受けていない試料は、ステップ(e)における脱グリコシル化の前に、ステップ(c)および(d)で標識およびクエンチされる。
【0123】
化学物質、pH、放射線、光、凍結・解凍サイクル、凍結乾燥、および熱を含むがこれらに限定されない、試料中の対象のタンパク質にストレスを加える任意の方法は、本開示の方法の範囲内であると想定される。
【0124】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質にストレスを加えることは、試料に熱的にストレスを加えることを含む。試料に熱的にストレスを加えることは、原薬または製剤化された医薬品として製剤化された対象のタンパク質のための保存条件をシミュレートすることを含み、すなわち、ストレスを受けた試料は、それぞれ、約-80℃~-30℃または約2℃~約8℃で保持される。他の実施形態では、試料に熱的にストレスを加えることは、試料のための取扱および輸送条件をシミュレートすることを含む。他の実施形態では、試料に熱的ストレスを加えることは、例えば、試料が曝露される温度を上昇させることによって、試料の強制分解を誘発することを含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、対象のタンパク質を含む試料にストレスを加えることは、試料に熱的にストレスを加えることを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、25℃~45℃で試料を保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、2℃、4℃、6℃、8℃、10℃、12℃、14℃、16℃、18℃、20℃、22℃、24℃、26℃、28℃、30℃、32℃、35℃、37℃、または40℃で試料を保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、37℃で試料を保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、22℃~26℃で試料保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、30℃で試料を保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、約25℃~45℃でタンパク質を保持することを含む。いくつかの実施形態では、熱ストレスは、ストレスを受けた試料を少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間、7か月間、8か月間、9か月間、10か月間、11か月間、または1年間保持することを含む。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料は、2週間保持される。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた試料は、4週間保持される。
【0126】
いくつかの実施形態では、試料に熱的にストレスを加えることは、試料を約25℃~約45℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、または少なくとも8週間保持することを含む。いくつかの実施形態では、試料に熱的にストレスを加えることは、試料を約30℃~約45℃で少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、または少なくとも8週間保持することを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、少なくとも1回の凍結/解凍サイクルを含む。例えば、液体試料から始めて、試料が凍結するまで温度を下げ、次いで、分析前に試料を液体となる温度に戻す。
【0128】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、試料を保存条件に曝露することを含む。いくつかの実施形態では、保存条件は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、少なくとも24か月間、または少なくとも30か月間の約-80℃~-30℃の温度を含む。いくつかの実施形態では、保存条件は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも8か月間、少なくとも12か月間、または少なくとも18か月間の約2℃~8℃の温度を含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、例えば、Vortexまたは磁気攪拌器を使用して、試料を機械的に攪拌することを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、試料を凍結乾燥および再水和することを含む。対象のタンパク質を含む試料を凍結乾燥する方法は、当業者に公知となり、例えば、凍結乾燥および噴霧乾燥を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、試料を光、放射線、一重項酸素種、フリーラジカル、高pH条件、または低pH条件に曝露することを含む。例示的な低pH条件には、特に、試料を7.0未満のpH、例えば、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.0、1.5、または1.0未満のpHに曝露することを含む。例示的な高pH条件には、特に、試料を、7.0を超えるpH、例えば、8.0、8.5、9.0、9.5、または10.0を超えるpHに曝露することを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、試料にストレスを加えることは、試料を光に曝露することを含む。光への曝露は、任意の波長、または任意の波長範囲の光を含むことができる。例示的な実施形態では、試料は、青味を帯びた白色蛍光灯または近紫外線光に曝露される。例示的な青味を帯びた白色蛍光灯は、約4,100~約4,500ケルビン(K)の相関色温度(CCT)を有する混合波長の光を含む。いくつかの態様では、青味を帯びた白色蛍光灯は、4,100KのCCTを有する。いくつかの態様では、試料を光に曝露することは、試料を、青味を帯びた白色光の約50万、60万、70万、80万、90万、100万、110万、120万、130万、140万、150万、160万、170万、180万、190万、200万、210万、220万、230万、240万、250万、260万、270万、280万、290万、または300万ルクス時間の累積曝露に曝露することを含む。いくつかの態様では、試料を光に曝露することは、試料を、青味を帯びた白色光の約120万または約240万ルクス時間の累積曝露に曝露することを含む。例示的な近紫外線光は、約300nm~約400nmの波長を有する。いくつかの態様では、近紫外線光は、約100ワット時/平方メートル~約600ワット時/平方メートルの集積エネルギーを有する。いくつかの態様では、近紫外線光は、約100、200、300、400、500、または600ワット時/平方メートルの集積エネルギーを有する。
【0133】
参照試料とそのストレスを受けたバージョンとの間の主要ピーク面積の低減は、例えば、分解を通した主要ピークにおける対象のタンパク質の低減を示し得る。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた対象のタンパク質の主要ピークの面積は、ストレスを受けていない対象のタンパク質の主要ピークと比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6 少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%低減される。同様に、参照試料と比較したストレスを受けた参照試料中の低分子量ピークの面積の増加は、対象のタンパク質の分解産物を表す低分子量種の存在量が増大するにつれて、対象のタンパク質の分解を示し得る。いくつかの実施形態では、ストレスを受けた対象のタンパク質の少なくとも1つの低分子量ピークの面積は、ストレスを受けていない対象のタンパク質の少なくとも1つの低分子量ピークと比較して、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6 少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%増加される。
【0134】
キットおよび製造品
本開示は、本明細書に記載の脱グリコシル化および標識の方法で使用される、1つ以上の開示される緩衝液、酵素、染料、および参照標準を含む、キットを提供する。キットは、成分用の容器を含むことができる。緩衝液は、溶液または凍結乾燥形態であり得る。いくつかの実施形態では、キットは、凍結乾燥製剤用の希釈剤または再構成溶液を含有する第2の容器と、任意に、溶液もしくは再構成の使用、および/または凍結乾燥緩衝液もしくは粉末成分の使用のための説明書を含む。
【0135】
本明細書に記載のキットは、緩衝液、希釈剤、およびフィルターのうちの1つ以上を含む、開示されるMCEアッセイを実施するために必要な追加の試薬をさらに含み得る。緩衝液および試薬は、ボトル、バイアル、または試験管内にあり得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、キットは、取扱説明書を含む。
【0137】
本説明は、多数の例示的な構成、方法、パラメータ、および同等物を記載する。しかしながら、そのような説明は、本開示の範囲への限定として意図されるものではなく、代わりに例示的実施形態の説明として提供されることが認識されるべきである。
【実施例0138】
実施例1:試薬
材料および機器
【0139】
(表1)材料(同等の品物も使用することができる)
【0140】
(表2)化学物質(同等の品物も使用することができる)
【0141】
(表3)機器
【0142】
(表4)試薬溶液
【0143】
(表5)MCE方法の概要
【0144】
(表6)実施例で使用されたタンパク質の概要
【0145】
実施例2:脱グリコシル化を伴わないマイクロチップキャピラリー電気泳動のためのプロトコル(方法A)
このプロトコルは、純度および不純物レベルを推定するためのGXII機器を使用した非還元(NR)および還元(R)マイクロチップキャピラリー電気泳動(MCE)による試験タンパク質の分析のための調製方法を説明する。これらの方法は、タンパク質特性評価またはタンパク質試料中の断片化のレベルの決定に使用される。これらの従来的な方法は、脱グリコシル化を伴わずに実行される。
【0146】
手順
この手順のための情報のみのフローの経路については、図1を参照されたい。
【0147】
(1)変性。タンパク質参照標準または被験物質を水で約0.2~2.0mg/mLまで希釈する。96ウェルプレート内で、4:1の体積比(体積は様々であり得る)でタンパク質試料および非還元(NR)/還元(R)性溶液を添加する。プレートをポリプロピレンシールで密封し、プレートをタンパク質特異的変性温度(典型的には、50~99℃)で、最適化された時間(典型的には、1~60分)の間加熱する。
【0148】
(2)標識。表4に記載されるように、5μMの染料を調製する。1:1の体積比(体積は様々であり得る)で5μMの染料を変性タンパク質溶液に添加する。サーモサイクラー内の96ウェルプレートを35℃で30分間加熱する。標識反応をクエンチするために、105μLの希釈停止溶液(表4に従って調製される)および5μLの標識タンパク質を新しい96ウェルプレートに添加し、よく混合する。
【0149】
(3)GX-IIで実行する。MCE機器およびマイクロチップを準備し、製造業者の指示に従って測定を実施する。
【0150】
実施例3:タンパク質標識の前に脱グリコシル化を伴うマイクロチップキャピラリー電気泳動のためのプロトコル(方法B)
この方法は、MCE測定を受ける前に脱グリコシル化される必要のある糖タンパク質に適用される。別段の指定がない限り、すべてのプロトコル、化学物質、試薬、および分析は、実施例1~2に記載されるものと同じである。
【0151】
(表7)追加の試薬
【0152】
手順
(1)脱グリコシル化。0.1%のRapiGest SFを用いて、合計100μgのタンパク質試料を90μLまで希釈する。タンパク質重量は、UVベースの方法によって決定することができる。10μLのNEB PNGase Fストックを添加し、100μLの脱グリコシル化混合物を作製し、ボルテックスし、沈降させる。400回転/分(rpm)で振とうしながら、加熱ブロック上で、混合物を37℃で3時間インキュベートする。
【0153】
(2)変性。実施例2に記載されるように、上述の脱グリコシル化試料の変性を進める。
【0154】
(3)標識。実施例2に記載されるように、変性された試料の標識を進める。
【0155】
(4)GX-IIで実行する。MCE機器およびマイクロチップを準備し、製造業者の指示に従って測定を実施する。
【0156】
実施例4:タンパク質標識の後に脱グリコシル化を伴うマイクロチップキャピラリー電気泳動のためのプロトコル(方法C)
この方法は、MCE測定を受ける前に脱グリコシル化される必要のある糖タンパク質に適用される。別段の指定がない限り、すべてのプロトコル、化学物質、試薬、および分析は、実施例1~3に記載されるものと同じである。
【0157】
タンパク質標識後の脱グリコシル化のためのプロトコルの図は、図1で見ることができる。
【0158】
(表8)追加の試薬
【0159】
手順
(1)変性。実施例2に記載されるように試料を希釈し、変性させる。
【0160】
(2)標識。表4に記載されるように、5μMの染料を調製する。5μMの染料および上述の変性タンパク質溶液を1:1の体積比で混合する。例えば、試料の体積が10μLである場合、10μLの5μM染料を添加する。96ウェルプレートをポリプロピレンシールで密封し、サーモサイクラー内で35℃で30分間加熱する。標識反応をクエンチするために、未使用の96ウェルプレートを用意する。試料実行設定に従って、2.5μLの停止緩衝液(Pico Protein Reagent Kitからの橙色キャップバイアル、キットからの元の溶液を使用する)を空のプレートのウェルに添加する。2.5μLの標識された試料を、停止溶液を含有するプレートウェルに移す。各ウェルに混合試料をピペットで注入し、少なくとも3分間保持する。
【0161】
(3)脱グリコシル化。各ウェルに、3μLのMilliQ水および2μLの5x Rapid(商標)PNGase緩衝液(NEBからの非還元形式)を添加し、10μLの反応体積を作製する。各ウェルに、1~4μLのRapid(商標)PNGase(NEBからの非還元形式)を添加する。96ウェルプレートをポリプロピレンシールで密封し、サーモサイクラー内で50℃で10~30分間加熱する。脱グリコシル化後、各ウェルに17μLの試料緩衝液(Pico Protein Reagent Kitからの白色キャップバイアル)および80μLのMilliQ水を添加する。
【0162】
(4)GX-IIで実行する。MCE機器およびマイクロチップを準備し、製造業者の指示に従って測定を実施する。
【0163】
実施例5:重度にグリコシル化されたシアル酸含有タンパク質を使用したタンパク質標識前の脱グリコシル化なしおよび脱グリコシル化の比較
タンパク質1は、ペプチド質量によってサイズが49kDaであり、8つの予測されるN-グリコシル化部位を有する、ジスルフィド結合組換え融合タンパク質である(注:すべての部位がグリコシル化されていると予想されるわけではない)。
【0164】
1つの目標は、研究安定性試験および品質管理(QC)試験のために、重度にグリコシル化されたシアル酸含有タンパク質(例えば、タンパク質1)の低分子量(LMW)断片を特性評価および監視するためのマイクロチップキャピラリー電気泳動ベースの方法を開発することであった。
【0165】
タンパク質1の特性が、以下の表9に示される。
【0166】
(表9)タンパク質1の分子特性
略語:インタクトMS、インタクトタンパク質質量分析;SEC-MALS、サイズ排除クロマトグラフィー多重角度レーザー光散乱。
【0167】
脱グリコシル化を伴わないプロトコル(方法A、実施例2)および標識前に脱グリコシル化を伴うプロトコル(方法B、実施例3)の比較が、図1に示される。方法Aおよび方法Bによって生成されたタンパク質1の電気泳動図の比較は、それぞれ、非還元(NR)条件については図2に、還元(R)条件については図4に示される。NR条件については、方法A(脱グリコシル化を伴わない)の結果として、ピーク分離能を伴わない(すなわち、主要、高分子量(HMW)、および低分子量(LMW)ピークの分離がない)電気泳動図中の広範なピークが存在した。加えて、ピーク位置は、直交法に基づいて約64kDaと予想されたものよりもはるかに高い分子量(MW)領域(70~120kDa)に出現した。MCEアッセイは、タンパク質がグリコシル化されている場合に、より大きな誤差を伴ってサイズを不正確に推定し得る(Engel et al.in Electrophoresis,2015 Aug;36(15):1754-8によって説明されている)。加えて、20kDaを下回る任意のLMWピークをマスクし得る、<20kDaにおける遊離染料ピーク干渉があった。
【0168】
対照的に、脱グリコシル化が標識前に生じる方法B(実施例3)の結果として、ピーク間のピーク分解能およびベースライン分離(主要、HMW、LMWピーク)が存在する。主要ピークは、予想MW(約49kDa)の近くに出現した。プロトコルは、安定性を示し、より正確に分子サイズを決定する。しかしながら、方法Bのプロトコルはまた、アッセイの全体的なスループットを制限する、3時間の脱グリコシル化も必要とする。さらに、PNGaseピーク(約36kDa)は、LMW1および2ピーク(タンパク質1の断片からの不純物ピーク)に干渉する。特に、熱的にストレスを受けたタンパク質1試料については、LMW1ピークは、増加および拡大し、PNGaseピークとマージする(図3)。別の近くのアーチファクトは、<20kDaにおける遊離染料ピーク干渉である。これらのアーチファクトの組み合わせは、不純物を定量化するときに不正確な積分につながり得、アッセイの安定性を示す能力を制限する。
【0169】
類似の観察が、還元条件(図4)について見出され、糖タンパク質の脱グリコシル化は、主要、LMW、およびHMWピークの正確なサイズ決定、分離、および分解能のために必要とされる。
【0170】
実施例6:重度にグリコシル化されたシアル酸含有タンパク質を使用したタンパク質標識後の脱グリコシル化
標識前(方法B)および標識後(方法C)に脱グリコシル化を伴うプロトコルの比較が、図1に示される。
【0171】
標識後に脱グリコシル化を伴うプロトコルを開発するために、グリコシル化ピークの非完全除去が最初に30分間の脱グリコシル化反応で観察されたため、脱グリコシル化反応条件が最適化された。温度、時間、濃度、および緩衝条件は、タンパク質1の最適な脱グリコシル化を決定するために変更された。
【0172】
タンパク質1のNR電気泳動図内の不完全に脱グリコシル化されたピークを除去するための最適化は、プロトコルにいくつかの改善を生じた。これらは、NEB Rapid(商標)PNGase Fを使用し、50℃の高温で脱グリコシル化を10分間実施すること(従来のPNGase Fを使用することは、37℃で3時間のインキュベーションを必要とする)と、エンドグリコシダーゼ濃度を増加させることと、NEB PNGaseキットからグリコタンパク質緩衝液を添加することとを含んだ。
【0173】
実験は、増加する反応時間には脱グリコシル化の明らかな改善がないことを示した。図5は、50℃で1μLまたは2μLのRapid(商標)PNGase F(非還元形式、NEB P0711)とともにタンパク質1を使用して生成された電気泳動図を示し、反応時間は、10~30分まで様々である。図5から分かるように、10分を超える反応時間では、明らかな改善(すなわち、不完全に脱グリコシル化されたピークの低減)はなかった。
【0174】
Rapid(商標)PNGase F濃度を増加させることは、脱グリコシル化を改善した。標識後の脱グリコシル化のためのプロトコルを使用して、1、2、3、または4μLのRapid(商標)PNGase Fを、脱グリコシル化反応に添加し、反応を、50℃で10分間進行させた。結果は、図6および図7に示される。図6の挿入図から分かるように、Rapid(商標)PNGase Fの濃度を増加させることは、タンパク質1の不完全な脱グリコシル化のショルダーピークを減少させる。
【0175】
1~4μLのRapid(商標)PNGase Fを添加することは、ロバストな結果を提供した。1、2、3、または4μLのRapid(商標)PNGase Fを使用して脱グリコシル化された参照タンパク質1を使用して生成された電気泳動図が、図7に示される。示されたピークの下の面積は、Empowerを使用して積分され、結果は、以下の表10に提供される。
【0176】
(表10)異なる量のRapid(商標)PNGase Fを使用して生成されたタンパク質1ピークの積分
【0177】
%RSDは、相対標準偏差率を表す。
【0178】
積分結果は、より高いRapid(商標)PNGase F濃度を伴って観察された、主要ピーク後のショルダーピークの減少(不完全に脱グリコシル化されたタンパク質1)があったが、主要ピーク(MP)の総積分率は、約3μLにおいて最も高い値を有することを示した。1μL~4μLのPNGaseから、MPの%RSDは、0.33%であり、反応当たり1~4μLのRapid(商標)PNGase F濃度を使用することがロバストな結果を提供することを示唆した。この傾向に従って、より多くのRapid(商標)PNGaseを使用することは、類似結果を提供すると予想される。
【0179】
脱グリコシル化が標識後に起こる方法Cは、このMCEアッセイが、精密であることおよび安定性を示すことの両方を可能にする。タンパク質1は、タンパク質溶液を37℃で4週間保持することによってストレスを受け(「RS」、すなわちストレスを受けていない参照標準、と比較した、表11および12のストレスを受けた参照標準、すなわち「SRS」、「37℃4w」)、標識後の脱グリコシル化のプロトコルおよび本明細書に記載のMCEを使用してアッセイされた。このストレスを受けたタンパク質1は、ストレスを受けていないタンパク質1(0またはt0に等しい時間、すなわち、37℃の保持がない)と比較された。電気泳動図が、ストレスを受けたタンパク質1およびストレスを受けていないタンパク質1について生成され(図8)、示されたピークが、Empowerを使用して積分された。測定は、3回の反復(S1~S3)で繰り返された。結果は、以下の表11および12に示される。
【0180】
(表11)標識プロトコル後に脱グリコシル化を使用したストレスを受けた(SRS)タンパク質1およびストレスを受けていない(RS)タンパク質1の比較
【0181】
(表12)ストレスを受けたタンパク質1およびストレスを受けていないタンパク質1(N=3)の相対標準偏差率(%RSD)
【0182】
RSおよびSRSの3回の反復測定は、複数のLMWピークおよびHMWピークが、実行間で一貫して識別されたことと、LMWおよびMPピークについて1%未満のRSDで積分されたこととを示した。すべての変化は、RSからSRSまで有意であった。方法Cによって調製されたストレスを受けたタンパク質1およびストレスを受けていないタンパク質1の電気泳動図の比較(図8)は、この方法が精密であり、安定性を示すことを示した。
【0183】
PNGase Fを用いた脱グリコシル化が染料標識の前に実施される場合(方法B)、PNGase Fピークは、電気泳動図プロファイルで可視的であり、LMW1およびLMW2ピークに干渉する。長い脱グリコシル化時間(3時間)が使用され、遊離染料干渉(<20kDa)が存在する。
【0184】
Rapid(商標)PNGase Fを用いた脱グリコシル化が染料を用いた標識後に実施される(方法C)場合、いずれのPNGaseピークも電気泳動図で可視的ではない。(例えば、10分で)高速かつ完全な脱グリコシル化が存在する。MP、HMW、およびLMWピークの分解能は、約10kDa領域までの最小限の遊離染料干渉とともに達成される(例えば、図8では、LMW5ピークは、11kDaであり、遊離染料ピークアーチファクトからベースライン分解される)。
【0185】
要約すると、方法Cなどの染料標識後に脱グリコシル化を使用するMCE方法は、良好な分解能を有し、安定性を示し、高スループットであり、再現性があり、PNGase F ピーク干渉および遊離染料干渉からのアッセイアーチファクトを回避する。方法はまた、良好な精度、線形性、およびロバスト性も示す。これらのアッセイは、品質管理目的のために好適であるプレートベースの高スループット形式で使用され得る。
【0186】
実施例7:タンパク質2を使用した脱グリコシル化の有りおよび無しで生成されたMCE結果の比較
タンパク質2は、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号1)のリンカーによって結合されたリガンド結合ドメインを含む一本鎖融合タンパク質を含む、一本鎖組換え(Fab’)2様タンパク質である。タンパク質は、48kDaの予測分子量(ペプチド骨格)を有する。タンパク質2は、8個のN-グリコシル化部位を有する。
【0187】
タンパク質2のMCE電気泳動図が、非還元条件および還元条件の両方の下で、脱グリコシル化を伴わないプロトコル(方法A、実施例2)および標識後に脱グリコシル化を伴うプロトコル(方法C、実施例4)を使用して生成された。図9から分かるように、脱グリコシル化がないと、理論値(約48kDa)よりもはるかに大きい、MW領域(90~140kDa)に出現する分離を伴わない広範なピークのみがあった。反対に、脱グリコシル化は、予想MW(48kDa)の近くの主要ピークおよび明確に分解されたLMWピークを生じた。さらに、PNGaseピーク(約36kDa)は、電気泳動図に出現しなかった。
【0188】
実施例8:タンパク質3を使用した脱グリコシル化の有りおよび無しで生成されたMCE結果の比較
タンパク質3は、組換えシステインプロテアーゼによって特定の部位で切断された組換えヒトIgG 1 Fcサブユニットである。タンパク質は、23kDaの予測分子量を有する。タンパク質は、1つのN-グリコシル化部位を有する。
【0189】
MCE電気泳動図が、非還元条件下で、脱グリコシル化を伴わないプロトコル(方法A、実施例2)および標識後に脱グリコシル化を伴うプロトコル(方法C、実施例4)を使用して生成された。結果は、図10で見ることができる。非脱グリコシル化プロファイルでは、元の試料中の非グリコシル化集団(MP1、左)およびグリコシル化集団(MP2、右)を表す、2つの主要ピーク(MP)が見出された。脱グリコシル化プロファイルでは、非グリコシル化ピークのみが観察され、いくつかのHMWピークが分解された。同じ比較が、還元条件下でも実施された(図11)。
【0190】
実施例9:モノクローナル抗体の安定性評価
タンパク質4は、145kDaの分子量および2つのN結合型グリコシル化部位を有するヒトIgG4系モノクローナル抗体である。
【0191】
MCE電気泳動図が、脱グリコシル化を伴わないプロトコル(図12および13の方法A)を使用して、ならびに標識後に脱グリコシル化を伴うプロトコル(図12および13の方法C)を使用して調製されたタンパク質4試料について生成された。タンパク質は、非還元条件(図12)および還元条件(図13)の両方の下で変性を使用してアッセイされた。図13から分かるように、脱グリコシル化は、グリカンの除去の結果として、より低い分子量においてグリコシル化主要ピーク(GMP)を脱グリコシル化主要ピーク(DGMP)にシフトさせる。図13では、脱グリコシル化は、脱グリコシル化重鎖(DGHC)ピークおよびグリコシル化重鎖(FGHC)ピークを比較することによって分かるように、重鎖(HC)ピークのサイズを縮小する。
【0192】
実施例10:光ストレスを受けたタンパク質1の安定性評価
タンパク質1は、120万および240万ルクス時間(MLH)の累積曝露を伴う青味を帯びた白色(CW)蛍光ランプの光の下で(図14)、または200および400ワット時間/平方メートルのエネルギーを伴う積分近紫外線(UVA)の下で(図15)、タンパク質溶液を曝露することによって光ストレスを加えられた。試料は、実施例1および4に記載されるように、標識後の脱グリコシル化のプロトコル(方法C)およびMCEを使用してアッセイされた。ストレスを受けたタンパク質1試料は、ストレスを受けていないタンパク質1対照(同じ条件下でインキュベートされたが、アルミニウムホイルで覆われた)と比較された。電気泳動図が、ストレスを受けたタンパク質1およびストレスを受けていないタンパク質1について生成され、示されたピークが、Empowerを使用して積分された。結果は、表13に示される。CWおよびUVA曝露の両方は、LMWピークのわずかな増加およびHMWピークの有意な増加につながり、これは、共有結合二量体および多量体の光開始形成に起因し得る。結果は、この方法が、安定性を示し、ストレス条件下でのタンパク質の断片化および共有結合HMW形成を評価することができることを示す。
【0193】
(表14)標識プロトコル後に脱グリコシル化を使用した光ストレスを受けたタンパク質1および光ストレスを受けていないタンパク質1の比較(方法C)
【0194】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Regeneron Pharmaceuticals, Inc.
<120> Deglycosylation Methods for Electrophoresis of Glycosylated
Proteins
<150> US 62/963,646
<151> 2020-01-21
<160> 1
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 30
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> linker
<400> 1
Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly
1 5 10 15
Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser
20 25 30
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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【配列表】
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