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特開2023-16651ロッカアーム揺動軸位置可変式圧縮比連続可変装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016651
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ロッカアーム揺動軸位置可変式圧縮比連続可変装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 75/32 20060101AFI20230126BHJP
   F02B 75/04 20060101ALI20230126BHJP
   F02D 15/02 20060101ALI20230126BHJP
   F01B 9/02 20060101ALI20230126BHJP
   F16H 21/24 20060101ALI20230126BHJP
   F16H 21/20 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
F02B75/32 A
F02B75/04
F02D15/02 Z
F01B9/02
F16H21/24
F16H21/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021139413
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】512105989
【氏名又は名称】山内 幸作
(72)【発明者】
【氏名】山内 幸作
【テーマコード(参考)】
3G092
3J062
【Fターム(参考)】
3G092AA12
3G092DD04
3G092DG03
3G092EA25
3G092FA14
3J062AA02
3J062AA42
3J062AA43
3J062AB29
3J062AC07
3J062BA12
3J062BA25
3J062CB06
3J062CB14
3J062CB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ピストンとクランクを連結するコンロッドを分割し圧縮比を可変する機構における、コントロールリンク側でのシリンダ芯軸直角方向のアンバランスを解消すること。
【解決手段】ピストンロッド12の大端とコンロッド13の小端をロッカアーム21の両先端ピンに揺動自在に連接し、ピストン11とコンロッド13の小端の上、下死点ストローク方向を反対とし、ロッカアーム21の揺動軸位置を変えるものにおいて、四気筒90°2プレーンクランクと組合せるか、四気筒180°1プレーンクランクにてピストンストローク中間点時のコンロッド13の小端軸芯の位置が、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッド13を揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近となる様にシリンダ芯軸Yの角度、位置を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンピンにてピストンに揺動自在に軸支したピストンロッドの大端と、クランクのクランクピン軸に揺動自在に軸支したコンロッドの小端を、ロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対とし、クランクジャーナル軸芯と上死点時コンロッド小端軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸をピストンロッド大端上、下死点付近を通り略平行に配置、ロッカアーム中央部揺動軸をシリンダ芯軸方向に変位させて圧縮比を可変制御する圧縮比連続可変装置。
【請求項2】
請求項2の発明は請求項1の発明において、両外側気筒のクランクピン位相を180°ずらし、内側二気筒のクランクピン位相を外側気筒に対し90°ずらすと共に両内側気筒のクランクピン位相を180°ずらした、四気筒90°2プレーンクランクにてピストン側の往復運動部及び揺動部重量とコンロッド小端側の揺動部重量を慣性力でバランスさせると共に、コンロッド大端側を含むクランクの回転バランスをとる圧縮比連続可変装置。
【請求項3】
ピストンピンにてピストンに揺動自在に軸支したピストンロッドの大端と、クランクのクランクピン軸に揺動自在に軸支したコンロッドの小端を、ロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対としたものにおいて、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯位置が、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近となる様に、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対するシリンダ芯軸の角度、位置を設定し、ロッカアーム揺動軸を変位させて圧縮比を可変制御する圧縮比連続可変装置。
【請求項4】
請求項4の発明は請求項3の発明において、最高膨張圧力時付近でピストンロッド大端軸芯がシリンダ芯軸上となる様に、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対する、シリンダ芯軸の角度、位置を設定する圧縮比連続可変装置。
【請求項5】
請求項5の発明は請求項3の発明において、ロッカアーム揺動軸穴芯とコンロッド小端ピン軸芯を結んだ線上よりピストンロッド大端ピン軸芯をシリンダ側にずらした圧縮比連続可変装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、船舶、船外機等のエンジンで圧縮比を随時任意に連続無段階可変するものにおいて、ピストンピンにてピストンに揺動自在に軸支したピストンロッドの大端と、クランクのクランクピン軸に揺動自在に軸支したコンロッドの小端を、ロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対とし、ロッカアームの揺動軸位置を変えることで圧縮比を連続無段階可変するものである。
【0002】
本発明の第一実施形態は、クランクジャーナル軸芯と上死点時コンロッド小端軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸をピストンロッド大端上、下死点付近を通り略平行に配置、ロッカアーム中央部揺動軸をシリンダ芯軸方向に変位させると共に、四気筒90°2プレーンクランクにてピストン側の往復運動部及び揺動部重量とコンロッド小端側の揺動部重量を慣性力でバランスさせると共に、コンロッド大端側を含むクランクの回転バランスをとることで、一次、二次振動までバランスが略取れると共に、ピストン側圧を大幅に低減できメカロス低減できるもので、クランク側部にシリンダを配置できクランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共に、シリンダヘッド高も低く抑えることができる。
【0003】
第二実施形態は、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯位置が、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近となるように、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対しシリンダ芯軸の角度、位置を設定するもので、ピストンストロークカーブがクランクピン上死点基準で余弦波に近づき、四気筒180°1プレーンクランク時の平均ピストンストロークカーブを略直線にでき、ピストンロッド大端側とコンロッド小端側の慣性力(アーム比に合った重量)差を小さくすれば振動面で優れたものにできると共に、ピストン側圧も第一実施形態よりは劣るが従来の単コンロッドクランク機構より低減でき、第一実施形態より製造しやすいクランクにできるメリットがあり、第一実施形態と同様にクランク側部にシリンダを配置できるので、クランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共に、シリンダヘッド高も低く抑えることができる。
【背景技術】
【0004】
自動車等に用いられる燃焼圧、回転数可変幅の大きな内燃機関では、運転条件に応じ圧縮比を連続自在に選択できると共にピストン側圧も低減すれば、熱効率向上、ポンピングロス低減が図れ燃費の良いエンジンとなるので、ピストンとクランクを連結するコンロッドを二分割し圧縮比を可変する機構が従来から提案されている。
一例として、単コンロッドクランク機構のコンロッドを二分割し、その対偶軸を揺動アームにて円弧状、或いは他の方法で類似した軌跡にてストロークさせるものにおいて、ピストン上死点高さは変えずに下死点時の対偶軸軸芯位置をシリンダ芯軸直角方向にずらすことで、ストロークを増やして圧縮比を高くし、圧縮比を可変することを特徴とする特許文献1が開示されている。
【特許文献1】特開昭62-35033号公報
又、クランクピンに回転自在に軸支したロッカアーム状のロアリンクの片方先端に、ピストンに揺動自在に軸支されたアッパリンクの大端を対偶にて揺動自在に軸支し、もう一方のロアリンク先端にコントロールリンク小端を対偶にて揺動自在に軸支すると共に、大端を揺動中心シャフトにて揺動自在に軸支し、その揺動中心シャフト軸芯位置を変えることで圧縮比を可変するものにおいて、クランクピン軸芯とロアリンク両端の対偶軸軸芯を一直線上に結び、(結んだ線をピストン上、下死点時でクランクジャーナル軸芯を通りシリンダ芯軸Yに直角な軸Xに対し略同一角度にすると共に、上、下死点時のコントロールリンク小端軸芯位置を略X軸上の同一位置とし、アッパリンク大端軸芯の最下点を略Y軸上とする)ことを特徴とする特許が開示され、後に( )内を、アッパリンクの大小端軸芯を結ぶ線が、高圧縮比側より低圧縮比側でY軸に対しより平行にすると、手続き補正された特許文献2が開示されている。(図12参照)
【特許文献2】特開2012-92843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、ストロークを増やすことで圧縮比を高くする機構故に圧縮比可変幅が非常に狭い。低圧縮比時にクランクジャーナル軸芯と上死点時対偶軸軸芯とを結ぶ直線上に下死点時対偶軸軸芯がくるストロークにすれば、ピストン側圧を大幅低減できると共に、上、下死点クランクピン位相差が180°となり、4気筒180°クランクとした場合一次クランクバランスが上、下死点付近は釣り合うが、ストローク中間点付近では対偶軸が円弧状ストローク故に小さな不釣り合いがでる。シリンダヘッド高、往復運動部重量を抑える為にクランク側リンク長を短くすれば連桿比が小さくなり、更にバランスが崩れ振動面で不利となる。しかも高圧縮比時の下死点時ではクランクピン位相がずれ上死点時との位相差が180°からずれるので、上、下死点付近でも一次クランクバランスが不釣り合いとなり、従来の単コンロッドクランク機構より振動面で大幅に不利となるもので、始動時及び低負荷時に圧縮比を少し上げればよく、低回転運転のディーゼルエンジン等に採用できるもので、一つのエンジンでHCCIから過給まで実行する為に2倍近くの圧縮比可変を必要とし、高回転も要求されるガソリンエンジンには到底採用できないものであった。
【0006】
又、特許文献2では、当初の請求範囲にクランクピン軸芯Pとロアリンク両端の対偶軸軸芯RB、CSを一直線上に結び、結んだ線がピストン上、下死点時でクランクジャーナル軸芯Ojを通るX軸に対し略同一角度になると共に、上、下死点時のコントロールリンク小端軸芯CSt,CSb位置を略X軸上の同一位置とし、アッパリンク大端軸芯の最下点RBbを略Y軸上とするとあるが、コントロールリンク小端が直線状にストロークするのであれば、180°クランクとした場合の平均ピストン頂面カーブが略直線状となり、バランスの良いエンジンとなるが、リンクであるので円弧状にストロークしピストンストローク中間付近のカーブに位相のずれが生じ、平均ピストンストロークカーブの波が大きくなってしまいバランスが崩れるので、図12の様に、最低圧縮比側で上、下死点時Pt,Pbのコントロールリンク小端軸芯位置CSt,CSbをX軸付近にすると共に、Ptから90°での小端軸芯CS90をシリンダから遠ざけ、270°での小端軸芯CS270をシリンダに近づけるように、コントロールリンク大端の揺動中心シャフト軸芯OC位置をY軸側に近づける等調整することで、図13の下側カーブの様に最低圧縮比側平均ピストンストロークカーブを略直線にできるが、最高圧縮比側ではコントロールリンク小端軸芯ストローク位置を、シリンダから遠ざける方向にX軸からずらすこととなり、平均ピストン頂面カーブの波が上側カーブの様に大きくなるが、単コンロッドクランク機構よりは非常に小さな波高であり振動面で優れたもので、シリンダヘッド高も低くできるものであった。
【0007】
しかし、ロアリンクのアーム比(クランクピンとコントロールリンク小端の軸芯スパン/アッパリンク大端とコントロールリンク小端の軸芯スパン)により、クランク半径rが単コンロッドクランク機構より小さくなるので、クランクピン軸とクランクジャーナル軸のオーバーラップが大きくなり剛性が向上するが、クランクピン軸に掛る荷重はアーム比により増加するので、クランクピン径、軸受容量を増やす必要があった。
又、アッパリンク大端のストローク軌跡はY軸方向で略ピストンストローク、X軸方向で略クランク直径の楕円を描くので単コンロッドクランク機構並のピストン側圧になると共に、ピストンストローク中間点付近でのアッパリンク大端がX軸方向で大きくずれ(図12のRB90,RB270参照)、モーメントが発生するが4気筒180°クランクとすれば打ち消すことができるが、コントロールリンク小端の揺動折返し点(図12の点線時)でのクランクピン位相差がβだけ発生するので、小端の慣性力カーブのバランスが崩れたものとなり、X軸方向で振動が発生する欠点があった。
【0008】
本発明は、運転条件に応じ圧縮比を連続自在に選択できるものにおいて、シリンダヘッド高を低く、クランクジャーナル軸方向視エンジンプロフィルをコンパクトにでき、更にピストン側圧を大幅に低減しメカロスを低減できると共に、一次、二次振動まで略バランスをとることができ、メカロス及び振動共に特許文献2より優れ、圧縮比可変幅も大きくとれHCCI燃焼から過給まで可能にすると共に、無電力での圧縮比の固定、保持をも可能にする圧縮比連続可変装置を提供するもので、
第一実施形態に於ける本実施例では、ピストンロッド大端とコンロッド小端をロッカアームの両先端のピンに揺動自在に連接し、両先端ピン間の中心に揺動軸穴を設け偏芯カムシャフトにて揺動軸をシリンダ芯軸方向に変位させ圧縮比を可変制御するもので、高回転、高出力となる最低圧縮比時にて、クランクジャーナル軸芯と上、下死点時コンロッド小端軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸を平行に、ピストンロッド大端の揺動上、下死点時軸芯を通るように配置することでピストン側圧を大幅低減すると共に、ピストン及びコンロッド小端の上、下死点間隔を180°にでき、四気筒90°2プレーンクランクを用いピストン側の往復運動部(小端側)及び揺動部(大端側)重量とコンロッド小端側の揺動部重量をバランスさせると共に、コンロッド大端側を含むクランクの回転バランスをとることで、一次、二次バランスまで略とれ二次バランサ付の四気筒180°1プレーンクランク並に振動低減できている。
最高圧縮比側ではシリンダ芯軸に対しピストンロッド大端上、下死点時軸芯がずれると共に、コンロッド小端上、下死点時軸芯もシリンダ芯軸に平行な線よりずれてしまうので、上、下死点間隔が180°からずれて振動面で不利となるがずれは極僅かであり、最高圧縮比側は低回転、低出力領域なので問題ない。
【0009】
第二実施形態に於ける本実施例では、ピストンロッド大端とコンロッドの小端をロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接し、揺動軸と両先端ピン間スパンを違えた揺動軸穴位置とすることでピストンとコンロッド小端の直線方向ストロークを略同一とし、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯位置を、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近にすると共に、最高、最低圧縮比共に最高膨張圧力時付近(上死点後10~30°付近)で、ピストンロッド大端軸芯がシリンダ芯軸上になるように、ロッカアーム揺動軸穴芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸の角度、位置を設定し、偏芯カムシャフトにて揺動軸をシリンダ芯軸方向及び直角方向に変位させて圧縮比を可変制御することで、ピストンストロークカーブがクランクピン上死点基準で余弦波に近づき、四気筒180°1プレーンクランク時の平均ピストンストロークカーブを略直線にでき、ピストンロッド大端側とコンロッド小端側の慣性力(アーム比に合った重量)差を小さくすれば、振動面で優れたものにできると共に、ピストン側圧も第一実施形態より劣るが従来の単コンロッドクランク機構より低減でき、第一実施形態より製造しやすいクランクにできるメリットがある。
尚、ロッカアームの揺動軸穴と両先端ピン間スパンのアーム比を更に変えて、コンロッド小端の直線方向ストロークに対するピストンストロークを違えることもできる。
又、クランクとシリンダをできる限り近づけてクランクジャーナル軸方向視のエンジンプロフィルをコンパクトにする為に、ロッカアーム揺動軸穴芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線上よりコンロッド小端ピン軸芯をクランク側にずらすことで、クランクの側部にシリンダを配置できるので、クランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共にシリンダヘッド高も低く抑えている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決する為の請求項1の発明は、ピストンピンにてピストンに揺動自在に軸支したピストンロッドの大端と、クランクのクランクピン軸に揺動自在に軸支したコンロッドの小端を、ロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対とし、クランクジャーナル軸芯と上死点時コンロッド小端軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸をピストンロッド大端上、下死点付近を通り略平行に配置、ロッカアーム中央部揺動軸をシリンダ芯軸方向に変位させて圧縮比を可変制御することを特徴とする。
【0011】
従来例の特許文献1は、ピストン側圧を大幅低減できるが、圧縮比可変幅が非常に狭く広い圧縮比可変範囲が要求されるガソリンエンジンには採用困難なもので、シリンダヘッド高も高くなるものであった。特許文献2はシリンダヘッド高を低く出きると共に、圧縮比可変幅が広く取れ実用化に至った優れたものであるが、アッパリンク大端がクランクピン軌跡直径並の長楕円軌跡を描くので小端を軸に揺動し鞭打ち運動するので単コンロッドクランク並のピストン側圧が発生するものであった。
【0012】
図1の本発明第一実施形態実施例では、最低圧縮比時において上、下死点時コンロッド小端軸芯CStl,CSblとクランクジャーナル軸芯Ojを一直線に結ぶ線Y’lに対し、シリンダ芯軸Yを上、下死点時ピストンロッド大端軸芯RBtl,RBblを通りY’l線に平行に配置、ロッカアーム中央部揺動軸芯OSとコンロッド小端軸芯CSとピストンロッド大端軸芯RBを同じスパンとし一直線上に配置すると共に、ロッカアーム中央部揺動軸芯OSlをY’l線方向でCStl,CSblの中間点を通るY’l線の垂線上、Y’l線直角方向でY’l線とY軸の中央に配置し、最高圧縮比時にはロッカアーム中央部揺動軸芯OShをY’l線に平行にずらすことで、Y’l線に対する上死点時コンロッド小端軸芯CSthとクランクジャーナル軸芯Ojを結ぶ線Y’hの位相変化及び下死点時コンロッド小端軸芯CSbhのY’h線からのずれを極僅かに抑えると共に、Y軸に対する上、下死点時ピストンロッド大端軸芯RBth,RBbhのずれも極僅かにできピストン上、下死点間位相を略180°に、ピストンとコンロッド小端のストロークを略同じにしている。
本発明により、ピストンロッド大端上、下死点がシリンダ芯軸付近で円弧状にストロークすることで、ピストン側圧を大幅低減しメカロス低減できると共に、ロッカアーム中央部揺動軸位置をY軸方向に変えることで、ピストンロッド大端の円弧状ストロークをY軸付近にてY軸方向位置を可変でき、ピストン側圧を増加させることなく幅広く圧縮比を可変できる。又、クランク側部にシリンダを配置でき、クランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共に、シリンダヘッド高も低く抑えることができる。
【0013】
又、請求項2の発明は請求項1の発明において、両外側気筒のクランクピン位相を180°ずらし、内側二気筒のクランクピン位相を外側気筒に対し90°ずらすと共に両内側気筒のクランクピン位相を180°ずらした、四気筒90°2プレーンクランクにてピストン側の往復運動部及び揺動部重量とコンロッド小端側の揺動部重量を慣性力でバランスさせると共に、コンロッド大端側を含むクランクの回転バランスをとることを特徴とする。
【0014】
従来例の特許文献1は、往復運動部増加、単コンロッドクランク機構の様に連桿比による振動の発生により、高回転が要求されるガソリンエンジンには採用困難なものであり、特許文献2は、振動面でアッパリンク側は略バランスがとれる優れたものであるが、コントロールリンク側にアンバランスが残り、アッパリンク大端も長楕円軌跡を描くので小端を軸に揺動し鞭打ち運動し振動するものであった。
ピストンの往復運動をクランクの回転運動に単コンロッドにて変換する機構では、連桿比を無限大にすればピストンストロークカーブがクランクピン位相基準で余弦波となり、180°クランクでの平均ピストンストロークカーブを直線にできるが、連桿比を大きくとることに限界があり二次クランクバランスが取れないものであった。
コンロッドを二分割しその対偶軸をストロークさせる機構としても、対偶軸の上下死点時軸芯がシリンダ芯軸付近となるものでは、単コンロッドクランク機構と同様にクランク側コンロッドの連桿比による二次のアンバランスが発生してしまい、180°クランクでの平均ピストンストロークカーブが大きな波となる。
【0015】
図1,3の本発明第一実施形態実施例では、請求項1において、クランクピン位相を#1気筒に対し回転方向(時計回り)に、#2気筒を90°、#3気筒を270°(#2気筒を270°、#3気筒を90°としても可)、#4気筒を180°ずらした、四気筒90°2プレーンクランクとし、ピストン側の往復運動部(小端側)及び揺動部(大端側)を合せた重量とコンロッド小端側の揺動部重量をバランスさせると共に、コンロッド大端側を含めたクランクの回転バランスをとっている。
ピストンロッド大端及びコンロッド小端が直線ストロークするのであれば上、下死点に対しストロークカーブが対称となり、図6の90°回転毎の慣性力簡略説明図の様に、一次(黒塗の長い棒グラフ)、二次(中空の短い棒グラフ≒一次の1/連桿比)共にバランスがとれるが、ピストン側は小端側が直線ストローク、大端側が円弧状ストロークの慣性力が合成されるのに対し、コンロッド小端側は円弧状ストロークの慣性力が発生するのでY軸直角方向で僅かな差がでると共に、Y軸方向は上、下死点時は直線ストロークの場合と同様にバランスがとれるが、それ以外では円弧状ストロークの為上、下死点に対しストロークカーブが非対称となり、小さな慣性力差がでて偶力アンバランスが発生するが、一次、二次共に略バランスがとれ二次バランサ付の四気筒180°1プレーンクランクに近い振動低減ができる。
【0016】
尚、本実施形態では、コンロッド小端の円弧状ストロークをロッカアームによりピストンロッド大端を逆方向ストロークに変換するので、ピストンも同様なストロークとなり、連桿比によりストローク中間点より上死点側のクランク回転位相間隔より下死点側の位相間隔が単コンロッドクランク機構と同様に広くなる。
図14グラフの一点鎖線の様に4気筒180°1プレーンクランク単コンロッドクランク機構では平均ピストンストロークカーブの波が一回転に二回発生してしまうが、本実施形態ではピストン(実線)とコンロッド小端(点線)が逆方向にストロークすることで、180°ずれた気筒のピストンとコンロッド小端のストロークカーブが、ストローク中間点に対し略鏡対称(ピストンはピストンロッドを介して直線ストロークしているのでピストンロッド大端の円弧状ストローク=コンロッド小端円弧状ストロークとは僅かにずれる為完全な鏡対称にはならない)なカーブを描くので平均ピストンストロークカーブが略直線となる。但し、ピストンとコンロッド小端はY軸とY’線のスパンで逆方向にストロークするので偶力が発生してしまうが、請求項2のクランクを採用することで偶力を打消すことができ一次、二次共に略バランスさせている。
又、本実施例ではロッカアーム中央部揺動軸芯OSとコンロッド小端軸芯CSとピストンロッド大端軸芯RBを同スパン(アーム比1)としコンロッド小端とピストンのストロークを略同一としており、ピストン側の往復運動部(小端側)及び揺動部(大端側)を合せた重量とコンロッド小端側の揺動部重量を重量でバランスさせているが、アーム比を変えてコンロッド小端ストロークに対するピストンストロークを違えることも可能で、ピストン側の往復運動部(小端側)及び揺動部(大端側)を合せた重量とコンロッド小端側の揺動部重量を慣性力でバランスさせれば良い。
【0017】
又、請求項3の発明は、ピストンピンにてピストンに揺動自在に軸支したピストンロッドの大端と、クランクのクランクピン軸に揺動自在に軸支したコンロッドの小端を、ロッカアーム両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対としたものにおいて、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯位置が、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近となる様に、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対するシリンダ芯軸の角度、位置を設定し、ロッカアーム揺動軸を変位させて圧縮比を可変制御することを特徴とする。
【0018】
図7の本発明第二実施形態実施例では、最高圧縮比時において上、下死点時コンロッド小端軸芯CSth,CSbhとクランクジャーナル軸芯Ojを結ぶ線Y’hが一直線となるよう、ロッカアーム揺動軸芯OShをY’h線方向でCSth,CSbhの中間点を通るY’h線の垂線上のシリンダ側とし、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯CSchが、上死点時クランクピン軸芯Pth位相から90、270°回転した位相(P90h,P270h)で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡(LP90,LP270)の中央付近となるように、ロッカアーム揺動軸芯OShとピストンロッド大端ピン軸芯RBchを結んだ線に対するシリンダ芯軸Yの角度、位置を設定すると共に、最低圧縮比時においても図8の様に、上、下死点時コンロッド小端軸芯CStl,CSblとクランクジャーナル軸芯Ojを結ぶ線Y’lが一直線となるよう、ロッカアーム揺動軸芯OSlを、Y’l線方向でCStl,CSblの中間点を通るY’l線の垂線上のシリンダ側で、OShよりY軸から離し上死点時ピストンロッド小端軸芯RStlを、最高圧縮比上死点時ピストンロッド小端軸芯RSthよりシリンダヘッド合せ面から下げることで圧縮比を下げると共に、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯CSclも、上死点時クランクピン軸芯Ptl位相から90、270°回転した位相(P90l,P270l)で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡(LP90,LP270)の中央付近となるようにしている。
本発明により、ピストンストロークカーブがクランクピン上死点基準で余弦波に近づき、四気筒180°1プレーンクランク時の平均ピストンストロークカーブを略直線にでき、ピストンロッド大端側とコンロッド小端側の慣性力(アーム比に合った重量)差を小さくすれば、振動面で優れたものにできると共に、ピストン側圧も第一実施形態より劣るが従来の単コンロッドクランク機構より低減でき、第一実施形態より製造しやすいクランクに出きるメリットがあり、第一実施形態と同様にクランクの側部にシリンダを配置できるので、クランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共にシリンダヘッド高も低く抑えることができる。
【0019】
又、請求項4の発明は請求項3の発明において、最高膨張圧力時付近でピストンロッド大端軸芯がシリンダ芯軸上となる様に、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対する、シリンダ芯軸の角度、位置を設定することを特徴とする。
【0020】
図7,8の本発明第二実施形態実施例では、Y軸に対し上死点時ピストンロッド大端軸芯RBth,RBtlをロッカアーム揺動軸芯OSh,OSl側とし、最高、最低圧縮比共に最高膨張圧力時付近(上死点後10~30°付近)で、ピストンロッド大端軸芯RBがY軸上となる様にすることで、ピストン側圧が下死点側で請求項1の発明より劣るが最高膨張圧力時付近でピストン側圧を極小にできると共に、従来の単コンロッドクランク機構より低減でき、請求項1の発明より製造しやすいクランクに出きるメリットがある。
【0021】
又、請求項5の発明は請求項3の発明において、ロッカアーム揺動軸穴芯とコンロッド小端ピン軸芯を結んだ線上よりピストンロッド大端ピン軸芯をシリンダ側にずらしたことを特徴とする。
【0022】
図7の本発明第二実施形態実施例では、ロッカアーム揺動軸芯OSとピストンロッド大端軸芯RBを結んだ線に対し、OSとコンロッド小端軸芯CSを結んだ線をα°だけシリンダ側にずらし、シリンダをクランク側に寄せている。クランクの側部にシリンダを配置できるので、クランクジャーナル軸方向視でエンジンプロフィルをコンパクトにできると共にシリンダヘッド高も低く抑えられる。
【発明の効果】
【0023】
特許文献2の様にシリンダヘッド高を低く出きると共に、圧縮比可変幅が広く取れ振動面でもアッパリンク側では略バランスがとれ実用化に至った優れたものがあるが、コントロールリンク側にアンバランスが残り、アッパリンク大端も長楕円軌跡を描くので小端を軸に揺動し鞭打ち運動する欠点があった。
特許文献1は単純な機構にて圧縮比可変を可能にするものだが、圧縮比可変幅が非常に狭く、往復運動部増加、単コンロッドクランク機構の様に連桿比による振動の発生により、広い圧縮比可変範囲、高回転が要求されるガソリンエンジンでは採用困難なものであった。
本発明は、運転条件に応じ圧縮比を連続自在に選択できるものにおいて、シリンダヘッド高を低く、クランクジャーナル軸方向視エンジンプロフィルをコンパクトにでき、更にピストン側圧を大幅に低減しメカロスを低減できると共に、小さな偶力アンバランスが残るが一次、二次振動までバランスを略とることができ、メカロス及び振動共に特許文献2より優れ、圧縮比可変幅も大きくとれHCCI燃焼から過給まで可能にすると共に、無電力での圧縮比の固定、保持をも可能にする圧縮比連続可変装置を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による圧縮比連続可変装置は、自動車、船舶、船外機等に搭載される各種ガソリン、ディーゼル、HCCIエンジン等の動力装置に適用可能であり、以下図面にて実施例を詳細説明する。
【0025】
第一実施形態は、ピストンロッド大端とコンロッド小端をロッカアームの両先端のピンに揺動自在に連接、ピストンとコンロッド小端の上、下死点ストローク方向を反対とし、クランクジャーナル軸芯と上死点時コンロッド小端軸芯を結んだ線に対し、シリンダ芯軸をピストンロッド大端上、下死点付近を通り略平行に配置、ロッカアーム中央部揺動軸をシリンダ芯軸方向に変位させて圧縮比を可変制御するもので、クランク機構10、圧縮比可変機構20、圧縮比制御機構30を含む。
【0026】
クランク機構10は、#1気筒のクランクピン位相に対し、回転方向(時計回り)に#2気筒を90°、#3気筒を270°、(#2気筒を270°、#3気筒を90°としても可)#4気筒を180°ずらした四気筒90°2プレーンクランクのクランクシャフト15が、アッパ、ロアクランクケース2、3に半割のジャーナルメタル軸受15-1によりジャーナル軸15bにて回転自在に軸支され、クランクケースのジャーナル軸受部両側側面とカウンタウエイト部15w及び変速機係合ボス部15cの側面間に、半割シム15-2を挿入し厚さを調整することで適正隙間にて軸方向規制されており、反対側のクランクシャフト段付軸に、カムシャフト、オイルポンプに動力を伝達するカムシャフトドライブスプロケット15d、オイルポンプドライブスプロケット15eが設けられている。図1、2に於いて本実施例ではシリンダ方向(時計回り)に回転させているが、可変ストローク全域に亘って上死点及び下死点のクランク位相が略変化せず、上下死点間と下上死点間のクランク角も略180°一定なので、反時計回りとすることも可能で、上死点後のピストン下降速度を単コンロッドクランク機構より僅かではあるが上げることができる。(図1~3参照)
【0027】
コンロッド13の大端に半割のコンロッドメタル軸受13-2、コンロッドキャップ13-1をボルト13-3にて締結することでクランクピン穴を形成し、クランクピン軸15aにコンロッドをクランクジャーナル軸方向規制、回転自在に軸支している。コンロッド小端は、圧縮比可変偏芯カムシャフト22の偏芯軸部に揺動自在に軸支されたロッカアーム21の、揺動穴芯を通る一直線上に同スパンで設けたコの字状の両二股先端穴の、コンロッド側先端穴に圧入固定された小端ピン13-4にて揺動自在に軸支されると共に、二股両内側面にて挟み込むことでコンロッド小端、ロッカアームが互いに軸方向規制されている。又、二股先端穴ボス部にはバランサウエイト部21aを設け、ピストン側の往復運動部(小端側)及び揺動部(大端側)を合せた重量とコンロッド小端側の揺動部重量をバランスさせている。(図1~3参照)
【0028】
最低圧縮比時におけるY’l線に対し平行で、RBtl,RBblを通る線上にY軸を配置したシリンダ1に、ピストン11がストローク自在に挿入され、クランクジャーナル軸に平行に配置したピストンピン11-1に、ピストンロッド12が揺動自在に軸支され、その大端はロッカアームのピストンロッド側二股先端穴に圧入固定された大端ピン12-1にて揺動自在に軸支されると共に、二股両内側面にて挟み込むことでピストンロッド大端、ロッカアームが互いに軸方向規制されている。
尚、ピストンロッド大端部、ロッカアーム揺動軸部、コンロッド小端部はロッカアーム、大端ピン、小端ピンに設けたオイル通路により、オイルギャラリ、クランクケース中央部オイル通路、圧縮比可変偏芯カムシャフトの中心穴を経由して供給されるオイルにて潤滑されている。(図1~4参照)
【0029】
圧縮比可変機構20は、ロッカアーム中央部揺動軸芯(圧縮比可変偏芯カムシャフトの偏芯軸軸芯)OS位置がY軸(Y’l線)に対し略平行に変位する様に、圧縮比可変偏芯カムシャフトのジャーナル軸芯OCを設定し、圧縮比可変範囲におけるピストン上、下死点位相差を略180°に、上、下死点時ピストンロッド大端軸芯のY軸からのずれも極小に抑えて、シリンダに対するピストン頂面位置高さを変えて圧縮比を可変するもので、ロッカアームはアッパ、ロアクランクケース合せ面上にOCを配置した圧縮比可変偏芯カムシャフトの偏芯軸に揺動自在に軸支されると共に、揺動穴両端面をスラストワッシャ21-1、サークリップ21-2にて適切なスラストクリアランスで挟み込み軸方向規制している。(図1~4参照)
【0030】
圧縮比制御機構30は、ロッカアームを揺動自在に軸支する圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸の位相可変及び固定保持を行う圧縮比制御アーム37を、カムチェーン室側の圧縮比可変偏芯カムシャフトに設け、ノックボルト37-1にて位相及び軸方向位置を決め、ノックボルトの先端ネジ部を圧縮比制御アームネジ穴に締付け、その後にナット37-2を締付け弛み止めし、圧縮比可変偏芯カムシャフトと共に揺動自在としている。圧縮比可変偏芯カムシャフトは変速機室側のアッパクランクケース及び偏芯カムシャフトに設けた溝にCリング22-2をはめ込みカムシャフトの軸方向を規制している。(図3~5参照)
【0031】
ジョイント35は、圧縮比制御アームの先端穴に回転自在に挿入されたジョイントピン36と、圧縮比可変雄送りネジ34のジョイントホルダ部34aの穴に、回転自在に挿入されたジョイントピン36の両側端部に、圧縮比制御アーム先端及び圧縮比可変雄送りネジのジョイントホルダ部両側面部を挟み込むように圧入されており、圧縮比制御アーム及び圧縮比可変雄送りネジに対し、ジョイントをジョイントピン軸方向規制、揺動自在に軸支すると共に、圧縮比可変雄送りネジの軸直角方向を規制し、ジョイントホルダ部が雌ネジから離れた時の倒れを防止すると共に、雄ネジの回転を止めて雌ネジの回転により雄ネジが雌ネジに対し軸方向に出入りすることで、圧縮比制御アームを揺動している。圧縮比可変雄送りネジに噛合い雄送りネジを軸方向に出し入れする圧縮比可変雌送りネジ33は、Y軸及びクランクジャーナル軸に直角に設けたアッパクランクケースの穴に回転自在に軸支されると共に、圧縮比可変雌送りネジ穴端面と制御モータホルダ32の合せ面とで、軸端に設けたドリブンギャ部33aの両側面を挟み込み軸方向規制している。(図4,5参照)
【0032】
回転軸を送りネジの軸に平行に配置した圧縮比制御モータ31のドライブピニオンギャ部31aを、圧縮比可変雌送りネジのドリブンギャに噛合せモータの動力を雌送りネジに伝達しており、圧縮比制御モータはOリング31-2にて液封しボルト31-1にて制御モータホルダと共にアッパクランクケースに固定されており、制御モータホルダの一部はボルト32-1にてアッパクランクケースに固定されている。(図5参照)
【0033】
圧縮比制御モータの正逆回転による圧縮比可変雄送りネジの前後進により、圧縮比可変偏芯カムシャフトに固定された圧縮比制御アームが、気筒毎にロッカアームを揺動自在に軸支した圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸の位相を変えることで圧縮比を可変している。圧縮比可変偏芯カムシャフトの変速機室側ジャーナル軸側部ケースはプラグ2-1にて液封し、軸方向反対側先端中心穴部には-溝付軸22-1が圧入されており、-溝にアッパ、ロアクランクケースにOリング41-2にて液封しボルト41-1にて締結された、圧縮比可変偏芯カムシャフト位相検知センサ41の-突起を臨ませて、圧縮比可変偏芯カムシャフトの位相を検知することで、圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸軸心OS位置を求めてピストン頂面位置を知り圧縮比を制御している。(図3~5参照)
【0034】
第二実施形態は、ピストンストローク中間点時のコンロッド小端軸芯位置が、上死点時クランクピン軸芯位相から90、270°回転した位相で、クランクピンを軸にコンロッドを揺動させた時の小端軸芯の円弧状軌跡の中央付近となる様に、ロッカアーム揺動軸芯とピストンロッド大端ピン軸芯を結んだ線に対する、シリンダ芯軸の角度、位置を設定するもので、クランク機構10、圧縮比可変機構20、圧縮比制御機構30を含む。
【0035】
クランク機構10は、四気筒180°1プレーンクランクのクランクシャフト15が、アッパ、ロアクランクケース2、3に半割のジャーナルメタル軸受15-1によりジャーナル軸15bにて回転自在に軸支され、クランクケースのジャーナル軸受部両側側面とカウンタウエイト部15w及び変速機係合ボス部15cの側面間に、半割シム15-2を挿入し厚さを調整することで適正隙間にて軸方向規制されており、反対側のクランクシャフト段付軸に、カムシャフト、オイルポンプに動力を伝達するカムシャフトドライブスプロケット15d、オイルポンプドライブスプロケット15eが設けられている。図7、8に於いて本実施例ではシリンダ方向(時計回り)に回転させているが、可変ストローク全域に亘って上死点及び下死点のクランク位相が略変化せず、上下死点間と下上死点間のクランク角も略180°一定なので、反時計回りとすることも可能で上死点後のピストン下降速度を余弦波に近づけることができる。(図7~9参照)
【0036】
コンロッド13の大端に半割のコンロッドメタル軸受13-2、コンロッドキャップ13-1をボルト13-3にて締結することでクランクピン穴を形成し、クランクピン軸15aにコンロッドをクランクジャーナル軸方向規制、回転自在に軸支している。コンロッド小端は、圧縮比可変偏芯カムシャフト22の偏芯軸部に揺動自在に軸支され、揺動軸穴芯とコンロッド側先端穴芯を通る線に対しピストンロッド側穴芯をシリンダ側にα°分傾けた線上で、クランクピン回転直径とピストンストロークを略同一とする為に、コンロッド側に対しピストンロッド側スパンを長くしたロッカアーム21の、コの字状二股コンロッド側先端穴に圧入固定された小端ピン13-4にて揺動自在に軸支されると共に、二股両内側面にて挟み込むことでコンロッド小端、ロッカアームが互いに軸方向規制されている。尚、本実施例ではクランクピン回転直径とピストンストロークを略同一としているが、ピストン側とコンロッド小端側の慣性力を大差なくバランスでき振動面で許容できれば違えても良い。(図7~9参照)
【0037】
最大膨張圧力時でのピストン側圧を最大限低減できる様に、上死点後10~30°付近でピストンロッド大端穴芯がY軸上となるように、Ojに対しY軸をオフセットして配置したシリンダ1に、ピストン11がストローク自在に挿入され、クランクジャーナル軸に平行に配置したピストンピン11-1にピストンロッド12が揺動自在に軸支され、その大端はロッカアームのピストンロッド側二股先端穴に圧入固定された大端ピン12-1にて揺動自在に軸支されると共に、二股両内側面にて挟み込むことでピストンロッド大端、ロッカアームが互いに軸方向規制されている。
尚、ピストンロッド大端部、ロッカアーム揺動軸部、コンロッド小端部はロッカアーム、大端ピン、小端ピンに設けたオイル通路により、オイルギャラリ、クランクケース中央部オイル通路、圧縮比可変偏芯カムシャフトの中心穴を経由して供給されるオイルにて潤滑されている。(図7~10参照)
【0038】
圧縮比可変機構20は、ロッカアーム揺動軸芯(圧縮比可変偏芯カムシャフトの偏芯軸軸芯)OS位置を、Y’h線に対しY’l線をY軸から遠ざける方向に傾けると共に、コンロッド小端上、下死点時の中間点を通るY’軸の略垂線上でY軸から遠ざかる様に、圧縮比可変偏芯カムシャフトジャーナル軸芯OC位置を設定することで、圧縮比可変範囲における上死点時ピストンロッド大端軸芯のY軸からのずれ差を極小に抑えると共に、ピストン上、下死点位相差を略180°にて、シリンダに対するピストン頂面位置高さを変えて圧縮比を可変するもので、ロッカアームはアッパ、ロアクランクケース合せ面上にOCを配置した圧縮比可変偏芯カムシャフトの偏芯軸に揺動自在に軸支されると共に、揺動穴両端面をスラストワッシャ21-1、サークリップ21-2にて適切なスラストクリアランスで挟み込み軸方向規制している。(図7~10参照)
【0039】
圧縮比制御機構30は、ロッカアームを揺動自在に軸支する圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸の位相可変及び固定保持を行う圧縮比制御アーム37を、カムチェーン室側の圧縮比可変偏芯カムシャフトに設け、ノックボルト37-1にて位相及び軸方向位置を決め、ノックボルトの先端ネジ部を圧縮比制御アームネジ穴に締付け、その後にナット37-2を締付け弛み止めし、圧縮比可変偏芯カムシャフトと共に揺動自在としている。圧縮比可変偏芯カムシャフトは変速機室側のアッパクランクケース及び偏芯カムシャフトに設けた溝にCリング22-2をはめ込みカムシャフトの軸方向を規制している。(図9~11参照)
【0040】
ジョイント35は、圧縮比制御アームの先端穴に回転自在に挿入されたジョイントピン36と、圧縮比可変雄送りネジ34のジョイントホルダ部34aの穴に、回転自在に挿入されたジョイントピン36の両側端部に、圧縮比制御アーム先端及び圧縮比可変雄送りネジのジョイントホルダ部両側面部を挟み込むように圧入されており、圧縮比制御アーム及び圧縮比可変雄送りネジに対し、ジョイントをジョイントピン軸方向規制、揺動自在に軸支すると共に、圧縮比可変雄送りネジの軸直角方向を規制し、ジョイントホルダ部が雌ネジから離れた時の倒れを防止すると共に、雄ネジの回転を止めて雌ネジの回転により雄ネジが雌ネジに対し軸方向に出入りすることで、圧縮比制御アームを揺動している。圧縮比可変雄送りネジに噛合い雄送りネジを軸方向に出し入れする圧縮比可変雌送りネジ33は、Y軸及びクランクジャーナル軸に直角に設けたアッパクランクケースの穴に回転自在に軸支されると共に、圧縮比可変雌送りネジ穴端面と制御モータホルダ32の合せ面とで、軸端に設けたドリブンギャ部33aの両側面を挟み込み軸方向規制している。(図9~11参照)
【0041】
回転軸を送りネジの軸に平行に配置した圧縮比制御モータ31のドライブピニオンギャ部31aを、圧縮比可変雌送りネジのドリブンギャに噛合せモータの動力を雌送りネジに伝達しており、圧縮比制御モータはOリング31-2にて液封しボルト31-1にて制御モータホルダと共にアッパクランクケースに固定されており、制御モータホルダの一部はボルト32-1にてアッパクランクケースに固定されている。(図11参照)
【0042】
圧縮比制御モータの正逆回転による圧縮比可変雄送りネジの前後進により、圧縮比可変偏芯カムシャフトに固定された圧縮比制御アームが、気筒毎にロッカアームを揺動自在に軸支した圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸の位相を変えることで圧縮比を可変している。圧縮比可変偏芯カムシャフトの変速機室側ジャーナル軸側部ケースはプラグ2-1にて液封し、軸方向反対側先端中心穴部には-溝付軸22-1が圧入されており、-溝にアッパ、ロアクランクケースにOリング41-2にて液封しボルト41-1にて締結された、圧縮比可変偏芯カムシャフト位相検知センサ41の-突起を臨ませて、圧縮比可変偏芯カムシャフトの位相を検知することで、圧縮比可変偏芯カムシャフト偏芯軸軸心OS位置を求めてピストン頂面位置を知り圧縮比を制御している。(図9~11参照)
【0043】
本発明案では、第一、第二実施形態共に制御モータと圧縮比可変機構の動力伝達機構の一部に非可逆伝達機構である送りネジを設け、無電力にて圧縮比を一定保持し電力消費を抑え燃料消費を低減している。
送りネジとしては、台形ネジ、角ネジ、鋸歯ネジ等が考えられるが、ネジ部を確実な非可逆伝動とする為には、ネジリード角を使用材質の動摩擦係数以下にするのが良く、最低限静摩擦係数以下にする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下本実施例は、図1~6が第一実施形態、図7~11が第二実施形態を示し、最低、最高圧縮比時に於ける圧縮比連続可変装置が収まるクランクケースブロック部にて主に説明し、動弁カムチェーン関係及びオイルポンプ、補機類は図示、説明共に省略すると共に、各図では必要に応じて一部図面化を省略している。
図1,8は最低圧縮比上死点時を、図2,7は最高圧縮比上死点時を示し、二点鎖線は下死点時を示す。本実施例で説明する圧縮比連続可変装置は、第一実施形態が四気筒90°2プレーンクランク、第二実施形態が四気筒180°1プレーンクランクであるが、本発明は四気筒に限らず単気筒から多気筒まで採用可能である。
【0045】
図1】最低圧縮比10上死点時を示す断面図(図3のA-A線に沿う断面図)である。
図2】最高圧縮比18上死点時を示す断面図(図3のA-A線に沿う断面図)である。
図3図1のB-B線に沿う断面図である。
図4図1のC-C線に沿う断面図である。
図5図3のD-D線に沿う断面図である。
図6】四気筒90°2プレーンクランクにおける90°回転毎の慣性力簡略説明図である。上、下死点以外は上、下死点に対しストロークカーブが非対称となり、小さな慣性力差が生じる。
図7】最高圧縮比18上死点時を示す断面図(図9のE-E線に沿う断面図)である。
図8】最低圧縮比10上死点時を示す断面図(図9のE-E線に沿う断面図)である。
図9図7のF-F線に沿う断面図である。
図10図7のG-G線に沿う断面図である。
図11図9のH-H線に沿う断面図である。
図12】特許文献2最低圧縮比8での上、下死点及び90°270°回転時の各軸芯を直線で結んだジオメトリ図である。
図13図12ジオメトリを最低圧縮比8とし、OC位置をシリンダの反対側にずらし最高圧縮比14とした、最高、最低圧縮比のピストンストローク例である。クランク位相はY軸に平行な線からの時計回り角度を、ピストン頂面位置はOjからの高さを示す。細線カーブが最高、太線カーブが最低圧縮比時を示し、点線カーブが従来の単コンロッドクランク(連稈比3.5)とした時を示し、一点鎖線カーブが上死点クランクピン位相基準での余弦カーブを示す。一点鎖線横線は上、下死点の平均ピストン頂面高さを、横線付近の小カーブは180°クランク時の平均ピストンストローク頂面カーブを示す。
図14】#1,4気筒における第一実施形態最低圧縮比10でのY軸方向ピストンストロークカーブ(実線)及びコンロッド小端ストロークY’軸方向カーブ(破線)と、同一連桿比での従来の単コンロッド180°1プレーン四気筒クランク時のピストンストロークカーブ(一点鎖線)を示す。ストローク中間点付近の小カーブは平均ストロークカーブを示し、略直線の点線カーブはピストンストロークと逆方向にストロークするコンロッド小端ストロークを合せて平均したものである。#2,3気筒は90°ずれて同じカーブを描き、最高圧縮比18時も最低圧縮比時と略同一のカーブとなるので省略する。クランク位相はY’軸からの時計回り角度を、ピストン頂面位置はストローク中間点からの高さを示す。
図15】第二実施形態最高圧縮比18でのピストンストローク例である。クランク位相はY’軸からの時計回り角度を、ピストン頂面位置はX軸からの高さを示す。実線が本発明を、点線が連桿比3.5での単コンロッド四気筒180°1プレーンクランク時を、一点鎖線が余弦カーブを示す。ストローク中間付近の直線、小カーブは平均ストロークカーブを示す。
図16】第二実施形態最低圧縮比10でのピストンストローク例である。
【符号の説明】
【0046】
1 シリンダ
1-1 シリンダガスケット
2 アッパクランクケース
2-1 プラグ
3 ロアクランクケース
10 クランク機構
11 ピストン
11-1 ピストンピン
11-2 サークリップ
12 ピストンロッド
12-1 大端ピン
12-2 プラグ
13 コンロッド
13-1 コンロッドキャップ
13-2 コンロッドメタル軸受
13-3 ボルト
13-4 小端ピン
13-5 プラグ
15 クランクシャフト 15a クランクピン軸
15b ジャーナル軸
15w カウンタウエイト部
15c 変速機係合ボス部
15d カムシャフトドライブスプロケット
15e オイルポンプドライブスプロケット
15-1 ジャーナルメタル軸受
15-2 半割シム
15-3 オイルシール
15-4 プラグ
20 圧縮比可変機構
21 ロッカアーム 21a バランサウエイト部
21-1 スラストワッシャ
21-2 サークリップ
22 圧縮比可変偏芯カムシャフト
22-1 -溝付軸
22-2 Cリング
30 圧縮比制御機構
31 圧縮比制御モータ 31a ドライブピニオンギヤ部
31-1 ボルト
31-2 Oリング
32 制御モータホルダ
32-1 ボルト
33 圧縮比可変雌送りネジ 33a ドリブンギヤ部
34 圧縮比可変雄送りネジ 34a ジョイントホルダ部
35 ジョイント
36 ジョイントピン
37 圧縮比制御アーム
37-1 ノックボルト
37-2 ナット
41 圧縮比可変偏芯カムシャフト位相検知センサ
41-1 ボルト
41-2 Oリング
CS コンロッド(コントロールリンク)小端軸芯
L Pを揺動軸とした時のCSの円弧状軌跡
Oj クランクジャーナル軸芯
OS ロッカアーム(中央部)揺動軸芯
OC 圧縮比可変偏芯カムシャフトジャーナル(揺動中心シャフト)軸芯
P クランクピン軸芯
RB ピストンロッド(アッパリンク)大端軸芯
RS ピストンロッド(アッパリンク)小端軸芯
Y シリンダ芯軸
Y’ OjとCStを結ぶ直線
X Y軸に直角な軸
h 最高圧縮比時
l 最低圧縮比時
t 上死点時
b 下死点時
c ストローク中間点時
r クランク半径
90,270 Ptからのクランクピン位相
α OSとCSを結ぶ線とOSとRBを結ぶ線の角度
β CSの揺動折返し点でのクランクピン位相差
図1
図2
図3
図4
図5
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図16