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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166524
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】医療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20231114BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20231114BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20231114BHJP
【FI】
A61F2/848
A61F2/07
A61F2/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144322
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2021178957の分割
【原出願日】2015-06-29
(31)【優先権主張番号】62/018,262
(32)【優先日】2014-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ、ピーター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、クロード オー.
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン、ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ゾール、ジョナサン
(57)【要約】
【課題】ステントを含む医療装置の組織への取り付けを向上させること。
【解決手段】医療装置は、(a)ステント構造体であって、両端と、その間の中央領域と、ステント構造体の周方向に延びる複数の要素と、有しており、複数の要素は複数のセルを画定するように構成されており、各セルは開放空間を取り囲む側面を含んでいる、ステント構造体と、(b)前記ステント構造体上に配置されたコーティング材料又は被覆材料と、(c)前記複数の要素、前記コーティング材料又は被覆材料の一部、或いはその両方に結合した結合材料と、を含んでおり、前記結合材料が各セルの開放空間内に存在していない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
(a)ステント構造体であって、両端と、その間の中央領域と、ステント構造体の周方向に延びる複数の要素と、有しており、複数の要素は複数のセルを画定するように構成されており、各セルは開放空間を取り囲む側面を含んでいる、ステント構造体と、
(b)前記ステント構造体上に配置されたコーティング材料又は被覆材料と、
(c)前記複数の要素、前記コーティング材料又は被覆材料の一部、或いはその両方に結合した結合材料と、を含んでおり、
前記結合材料が各セルの開放空間内に存在していない、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントを含む医療装置を組織に取り付けるための組成物、装置、キット、及び手順に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、例えば、様々な疾患及び状態による管腔の収縮に対抗するために、狭窄した又は弱い管腔(例えば、動脈、静脈、胆管、食道、腸、肺など)を処置するために使用される細いメッシュ管である。ステントは、金属、ポリマー、又は他の適切な材料から形成することができる。ステントは、生体安定性又は生体吸収性、薬物溶出性又は非薬物溶出性であり得る。ステントの最も一般的な使用は、冠動脈においてである。冠動脈ステント以外の他の一般的なタイプのステントとしては、特に、末梢ステント、尿管ステント(例えば、尿管の開存性を確実にするため)、胆管ステント(例えば、胆汁又は膵管の閉塞を処置するため)、食道ステント(例えば、食道の閉塞を処置するため)、腸内ステント(例えば、小腸又は結腸の閉塞を処置するため)、及び気道ステント(例えば、気管又は気管支の閉塞を処置するため)が挙げられる。
【0003】
場合によっては、ステントは被覆される。被覆ステントの被覆が多孔質である場合は、典型的には脈管構造に使用される、多くの場合ステントグラフトと呼ばれる。ステントグラフトは、腹部大動脈瘤及び弱くなった抹消動脈の処置に使用される。他の被覆ステントは、他の使用もあるが、特に、食道の悪性又は両性の狭窄、並びに様々な体管腔の漏れ及び/又は穿孔の処置に使用することができる。場合によっては、被覆ステントは、一時的に配置され、除去可能である。
【0004】
固定は、ステントが被覆されている、部分的に被覆されている、又は被覆されていないにかかわらず、ステントの配置にとって極めて重要である。なぜならば、そのようなインプラントが移動すると、処置に支障を来すことがあり、さらに合併症を起こすことがあるためである。
【0005】
特定の一例として、被覆された自己拡張型の金属又はポリマーステントの配置はこれまで、切除不能な食道癌の緩和療法の第一選択である。これらのステントはまた、良性(消化性、術後、腐食性)狭窄、食道の漏れ、穿孔、及びフィステルの管理に非常に有効である。殆どの場合、嚥下障害の迅速な緩和及び栄養物の十分な経口摂取を達成することができる。ステントが、食道から、例えば、胃又は小腸に移動して閉塞が起きると、患者は、激しい痛み及び熱に苦しみ、ステントを除去する追加の手術となることもある。同様のことが、他のGI及び気道ステントにも当てはまる。
【0006】
別の特定の例として、腹部大動脈瘤(AAA)ステントグラフトは、多くの場合、動脈瘤に対処するために使用され、動脈瘤は、弱い動脈壁によって特徴付けられる。時間が経つと、血圧及び他の因子が、この弱い領域をバルーンのように膨らませることがあり、この領域が最終的に肥大して破裂する可能性がある。AAAステントグラフトは、動脈瘤の上及び下の動脈に強く密着するように設計されている。グラフトは、弱くなった動脈よりも強く、血液が膨らみを押すことなく動脈を通過することを可能にする。ステントグラフトが移動すると、動脈瘤の上の密着が損なわれ得る。これにより、血液が動脈瘤嚢内に流れることがあり、動脈瘤嚢が成長して破裂する可能性がある。また、再介入が必要になることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2014/042875号
【特許文献2】国際公開第2009/036014号
【特許文献3】特表2011-523569号公報
【特許文献4】特表2002-523136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一部の態様によると、結合した結合材料を含む、ステントを含む装置が提供され、このステントを含む装置は、このステントを含む装置が管腔と接触している間にエネルギー源に曝露されると管腔に結合するように構成されている。
【0010】
一部の態様では、本開示は、(a)ステント部品、(b)任意選択の被覆材料、及び(c)ステント部品、任意選択の被覆材料、又は両方に結合した結合材料を含む医療装置を特徴とし、この医療装置は、患者に植え込まれ、且つ、結合材料がエネルギー源からのエネルギーに曝露されたときに隣接した患者組織に結合するように構成されている。
【0011】
上記の態様のいずれとも組み合わせて使用することができる特定の実施形態では、結合材料が、組織半田材料を含む、結合材料が、組織半田及び感光性色素を含む、又は結合材料が、組織半田及びエネルギー吸収剤を含む。
【0012】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができる特定の実施形態では、結合材料は、キトサン、アルブミン、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、ナノペプチド、これらの誘導体、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される組織半田を含む。
【0013】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができる特定の実施形態では、結合材料は、組織半田及び感光性色素を含み、この感光性色素は、ローズベンガル色素、メチレンブルー色素、フルオレセイン色素、インドシアニングリーン、塩基性フクシン、フェン、キサンタン色素、リボフラビン色素、ルミクロム色素、フラビン、ルミフラビン色素、Reactive Black 5色素、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0014】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができる特定の実施形態では、結合材料は、組織半田及びエネルギー吸収剤を含み、このエネルギー吸収剤は、発色団、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)、金ナノロッド、金ナノシェル、金ナノケージ、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0015】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができる特定の実施形態では、結合材料は、組織半田及び合成ポリマーを含み、この合成ポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、及びこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0016】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができるさらなる態様では、結合材料は、(a)ステント部品の少なくとも一部、任意選択の被覆材料の少なくとも一部、若しくは両方の少なくとも一部に結合材料をコーティングすることによって、(b)結合材料を、ステント部品の少なくとも一部、任意選択の被覆材料の少なくとも一部、若しくは両方の少なくとも一部と一体にすることによって、又は、(c)これらの組み合わせによって医療装置に結合される。
【0017】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができるさらなる態様では、結合材料は、医療装置の中心ではなく、医療装置の端部に結合される、又は結合材料は、医療装置の長さに沿った一連のバンド又はアイランドとして設けられる。
【0018】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができるさらなる態様では、医療装置は、任意選択の被覆材料を含む。被覆材料は、例えば、ステント部品全体を被覆しても良いし、又はステント部品の一部のみを被覆しても良い。例えば、特定の実施形態では、ステント部品の端部のみを被覆材料で被覆しても良いし、又は被覆材料が、ステント部品が被覆材料によって被覆されていない領域を提供する複数の開口を備えても良い。特定の実施形態では、被覆材料は、ステント部品の一部のみを被覆し、結合材料は、被覆材料によって被覆されていないステント部品の領域でステント部品に結合される。
【0019】
上記の態様及び実施形態のいずれとも組み合わせて使用することができるさらなる態様では、医療装置は、任意選択の被覆材料を含み、この被覆材料は、エネルギー源からのエネルギーに対して十分に透過性であり、これにより、被覆材料に対して反管腔側に配置された結合材料を、被覆材料に対して管腔側に配置されたエネルギー源を用いて活性化させることができる。
【0020】
本開示の他の態様は、ステントを含む医療装置を管腔に取り付ける方法を提供し、この方法では、エネルギー源からのエネルギーが、ステントを含む医療装置に結合された結合材料に当てられ、これにより、結合材料が活性化されて、このステントを含む装置が、管腔に取り付けられる。特定の実施形態では、ステントを含む医療装置、例えば、上記の態様及び実施形態のいずれかに記載のステントを含む医療装置が、この方法に利用される。
【0021】
本開示のさらに他の態様は、以下のアイテム、(a)ステント部品、任意選択の被覆材料、及びこのステント部品、この任意選択の被覆材料、又は両方に結合した任意選択の結合材料を含む、ステントを含む医療装置、(b)固形又は液体形態の結合材料、(c)この医療装置を受け取って対象に配置するように構成された、結合されたエネルギー源を備える又は備えない外科装置、(d)結合されたエネルギー源を備える又は備えないガイドワイヤ、又は(e)スタンドアロン型エネルギー源のいずれか2つ以上の任意の組合せを含むキットを特徴とする。特定の実施形態では、ステントを含む医療装置、例えば、上記の態様及び実施形態のいずれかに記載のステントを含む医療装置が、このキットに利用される。
【0022】
本開示の利点は、組成物、装置、キット、及び手順が提供され、ステントを含む医療装置を、体管腔内に植え込み、結合材料を活性化させることができ、これにより、植え込み後の体管腔内でのこの装置の移動が、最小限になる又は防止されることである。
【0023】
本開示の別の利点は、組成物、装置、キット、及び手順が提供され、ステントを含む医療装置、特に、被覆ステントを、体管腔内に植え込み、結合材料を活性化させることができ、これにより、この装置が、体管腔に対して密着することである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示の一実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図2】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図3】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図4】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図5A】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図5B】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図6】本開示の別の実施形態による、半田を含むステントの概略図である。
図7A】本開示の一実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図7B】本開示の一実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図7C】本開示の一実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図8A】本開示の別の実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図8B】本開示の別の実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図8C】本開示の別の実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図9】本開示のさらに別の実施形態による、ステントを植え込む方法の概略図である。
図10】本開示の一実施形態による、エネルギー放出装置の概略図である。
図11】本開示の別の実施形態による、エネルギー放出装置の概略図である。
図12】本開示の別の実施形態による、エネルギー放出装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示は、ステントを含む医療装置、例えば、特に、裸ステント、薬物溶出ステント、部分被覆ステント、及び完全被覆ステントの対象、典型的には脊椎動物対象、より典型的には哺乳動物対象、例えば、ヒト対象、ペット、又は家畜の体管腔への植え込み及び固定に有用な方法、組成物、装置、及びキットに関連する。この装置は、例えば、管腔内での移動を防止し、且つ/又は、管腔との密着を形成する(例えば、被覆ステントの場合)ために、様々な管腔、例えば、他の管腔もあるが、特に、血管(例えば、動脈、静脈など)、胃腸管の管腔(例えば、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、結腸、胆管など)、女性泌尿器管腔(urogynecological lumen)(例えば、尿管、尿道、ファロピウス管など)、又は気道管腔(例えば、気管、気管支など)の中に植え込んで固定することができる。様々な実施形態では、ステントを含む装置は、以下の機能、他の機能もあるが、特に、体管腔の開存性を保持する機能、体管腔壁を強化する機能、体管腔壁に密着する機能、及び体管腔内への組織の内植を防止する機能の1つ以上を提供するために使用される。
【0026】
一態様によると、本開示は、(a)ステント部品、(b)任意選択の被覆材料、及び(c)結合材料を含む、体管腔内に植え込まれるように構成された、ステントを含む装置に関する。結合材料は、ステントを含む装置がエネルギーに曝露されたときに隣接した患者組織に結合できるように、ステントを含む装置の少なくとも一部に結合される(例えば、ステント部品、任意選択の被覆、又は両方に結合される)。例えば、結合材料は、以下の方策、特に、(a)結合材料をステント部品の全て又は一部にコーティングすることができる、(b)結合材料をステント部品の全て又は一部と一体にすることができる、(c)結合材料を、任意選択の被覆材料の全て又は一部にコーティングすることができる、又は(d)結合材料を、任意選択の被覆材料の全て又は一部と一体にすることができる、の1つ以上によって装置に結合することができる。
【0027】
ステントを含む装置は、体管腔、例えば、特に、血管、胃腸管の管腔、女性泌尿器管腔、又は気道管腔に適切な手順で導入される。次いで、エネルギーが結合材料に加えられ、これにより、この結合材料が活性化されてステントを含む装置が体管腔組織に付着される。
【0028】
利用される組織結合の機構によって、様々なエネルギー源を、装置の取り付けに使用することができる。エネルギー源は、例えば、熱源又は光源、例えば、レーザ又は発光ダイオード(LED)であり得る。赤外線及び近赤外線レーザ源としては、特に、二酸化炭素(CO2)、ツリウム-ホルミウム-クロム、ホルミウム、ツリウム、及びネオジム希土類ドープガーネット(それぞれTHC:YAG、Ho:YAG、Tm:YAG、及びNd:YAG)レーザ、及びガリウムアルミニウムヒ素ダイオード(GaAlAs系)レーザが挙げられる。可視光源としては、特に、カリウム-チタニルリン酸(KTP)周波数2倍Nd:YAGレーザ、及びアルゴンレーザが挙げられる。他のエネルギー源としては、無線周波数源(例えば、マイクロ波源)、放射線源(例えば、X線、γ線など)、又は局所生成プラズマが挙げられる。アルゴンプラズマは、アルゴンビームコアギュレータを含む様々な医療用途に現在使用されており、アルゴンビームコアギュレータは、アルゴンガスを電離してアルゴンプラズマを生成し、次いで、このプラズマを使用して熱エネルギーを近傍の組織に送達する。本開示では、アルゴンビームを、組織を結合するための熱源として使用することができる。
【0029】
特定の実施形態では、エネルギー源は、スタンドアロンユニットで提供される。他の実施形態では、エネルギー源は、別の装置と組み合わせられる。例えば、エネルギー源は、送達装置、例えば、ガイドワイヤ又はカテーテルと組み合わせることができる。
【0030】
一部の実施形態では、エネルギー源は、制御ユニットに接続され、この制御ユニットは、エネルギー源から放出されるエネルギーを制御する。好ましくは、エネルギーの量は、下層組織を著しく損傷させることなく結合材料を活性化させるのに十分な量である。一部の実施形態では、制御ユニットは、(例えば、物理的なボタン、タッチスクリーンなどによる)ユーザ入力に対応するように設計され、従って、医療提供者が処置パラメータを設定することができる。
【0031】
一部の実施形態では、エネルギー源は、(例えば、外科医の経験に基づいて、又は適切なエネルギー出力アルゴリズムに基づいて)センサを使用することなく制御される。他の実施形態では、センサは、結合部位に向けられるエネルギーの量についてのフィードバックを提供するためにエネルギー源と共に使用され、このフィードバックは、エネルギー源の出力を調整するために使用することができる。例えば、特定の実施形態では、センサは、結合部位の熱量を検出する温度センサである。これらの実施形態では、適切なソフトウェアを利用して、温度センサからの入力に基づいてエネルギー源の出力を調整することができる。センサは、例えば、エネルギー源と同じ装置に、又はエネルギー源を含む装置とは異なる装置に設けることができる。センサは、例えば、装置の送達に使用される(エネルギー源を備える又は備えない)医療装置に設けることができる。
【0032】
様々な結合材料を、本開示と共に使用することができる。
これに関連して、レーザ組織半田付けプロセスは、外科手術分野で公知であり、このプロセスでは、半田(一般的には生物学的ポリマー)を組織に塗布し、その後レーザを使用して半田を活性化させて結合を形成することによって組織が結合される。理論に拘束されることを望むものではないが、レーザ組織半田付けの機構が、熱誘導タンパク質変性-再生プロセスを含むようであることが報告されている。例えば、B.フォレル(B.Forer)ら著、「喉頭鏡116(Laryngoscope 116)」、2006年6月、p.1002~1006を参照されたい。
【0033】
半田材料は、本開示では結合材料として使用され、例えば、ステントを含む装置の材料が組織に結合されるように半田材料がステントを含む装置の材料(例えば、ステント部品の材料又は任意選択の被覆材料)及び組織に接触している間に半田材料に熱を加えることによってステントを含む装置の材料を組織に結合する。上記のように、熱を加えるための有益なエネルギー源としては、特に、光源(例えば、レーザなど)、無線周波数源(例えば、マイクロ波源など)、及びプラズマ源(例えば、アルゴンビームなど)が挙げられる。
【0034】
特に有益な半田材料は、比較的低い活性化温度を有し、且つ、生体吸収性である。例えば、半田は、使用される半田によって、時間経過により、典型的には、約4日~6カ月(例えば、4日~1週間~2週間~1か月~2カ月~3カ月~6カ月)(即ち、これらの数値のいずれか2つの数値間の範囲)の間に生体吸収され得る。生体吸収速度は、半田の化学的性質を調整することによって、この範囲内で、又はこの範囲よりも早く若しくは遅く、生体吸収されるように調整可能である。
【0035】
本開示と共に使用される特定の半田材料としては、生体起源の半田及び合成半田挙げられる。生体起源の半田の例としては、生体ポリマー、例えば、特に、ナノペプチドを含むポリペプチド及びタンパク質、例えば、アルブミン、コラーゲン、エラスチン、フィブリン、フィブリノゲン、トロンビン、プロトロンビンタンパク質誘導体、及び、特にキトサンを含む多糖をベースとする半田が挙げられる。一部の実施形態では、2つ、3つ、又は4つ以上の半田材料、例えば、上記の半田材料が利用される。特定の例としては、他にも多くの可能な組み合わせがあるが、特に、アルブミンとコラーゲンの組み合わせ、アルブミンとキトサンの組み合わせ、コラーゲンとキトサンの組み合わせ、アルブミン、コラーゲン、及びキトサンの組み合わせが挙げられる。
【0036】
添加することができる他のポリマーとしては、特に、水溶性又は生体吸収性ポリマー、例えば、合成水溶性又は生体吸収性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、チロシンベースのポリエステル、チロシンベースのポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエチレングリコール、ポリオルトエステル、プルロニック、例えば、エチレングリコールとプロピレングリコールのブロックコポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシ置換ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール置換(メタ)アクリレート、(メタクリル酸-b-ポリエーテル)、又はこれらのモノマーに由来するコポリマーが挙げられる。これらの水溶性又は生体吸収性ポリマーの1つ以上を、生体起源の半田、例えば、上記の半田と混合して、半田材料の特性を変更することができる。特定の例として、PLGAをアルブミンと混合してアルブミン半田の可撓性を高めることができる。
【0037】
一部の実施形態では、少なくとも1つのエネルギー吸収剤が、半田材料内の加熱効率及び/又は熱分布を向上させるために半田材料中に使用される。エネルギー吸収剤としては、発色団、例えば、他の材料もあるが、特に、光特異的色素、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、フルオレセイン、塩基性フクシン、及びフェン、ナノ金属、例えば、ナノ金(例えば、金ナノロッド、金ナノシェル、金ナノケージなど)、及びSPION(超常磁性酸化鉄ナノ粒子)が挙げられる。特定の例としては、他にも多数があるが、特に、ICGドープアルブミン、フルオレセイン色素ドープアルブミン、及びナノ金ドープアルブミンが挙げられる。ロッド、ナノシェル、及び他形状を含む金属(例えば、金など)又は半導体ナノ粒子を、半田材料に含めて、そのプラズモン周波数での励起によって加熱することができる。さらなる情報については、例えば、アレキサンダー・O.ゴヴォロフ(Alexander O.Govorov)ら著、「金属ナノ粒子での発熱(Generating heat with metal nanoparticles)」、ナノトゥデイ(Nano Today)、第2巻、2007年2月1日発行、p.30~38を参照されたい。
【0038】
光化学組織結合プロセスは、外科手術の分野で公知である。このプロセスは、感光性色素で染色された、密接に結合した組織表面(例えば、互いに接触して配置された染色組織表面)で起こる光化学反応を利用する。理論に拘束されることを望むものではないが、色素が、可視光の光子を吸収して、近接した組織表面の分子間の共有結合の形成を促進すると考えられる。例えば、色素の光活性化で生成される反応種は、潜在的な電子供与体及び電子受容体、例えば、タンパク質中のアミノ酸(例えば、トリプトファン、チロシン、及びシステインなど)と反応し得る。これに関連して、コラーゲンI型分子に架橋を形成する光化学法が報告された。バーバラ・P.チャン(Barbara P.Chan)ら著、ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(Journal of Surgical Research)、2002年、第108巻、p.77~84を参照されたい。
【0039】
本開示の特定の態様では、感光性色素を使用して、例えば、ステントを含む装置が組織に結合されるように、ステントを含む装置及び組織表面に密接に結合した感光性色素(例えば、半田材料と混合された、又はステントを含む装置及び組織に接触してこれらの間に配置された半田材料の表面にコーティングされた感光性色素)及び半田材料(例えば、特に、上記の半田材料を含む生体半田材料)に適切な波長の光を当てることによってステントを含む装置を組織表面に結合する。光放出エネルギー源、例えば、特に、低出力レーザ又は発光ダイオード(LED)を、このために使用することができる。
【0040】
感光性色素の特定の例としては、キサンテン色素、例えば、ローズベンガル、メチレンブルー、及びフルオレセイン、リボフラビン色素(例えば、リボフラビン-5-リン酸塩)、ルミクロム色素、ルミフラビン色素、Reactive Black 5、チアジン色素、ナフタルイミド(例えば、1,8-ナフタルイミド)、エリスロシン、N-ヒドロキシピリジン-2-(1H)-チオン(N-HTP)、プロトポルフィリンI~プロトポルフィリンIX、コプロポルフィリン、ウロポルフィリン、メソポルフィリン、ヘマトポルフィリン及びサフィリン、クロロフィリス(chlorophylis)、例えば、バクテリオクロロフィルA、Photofrin(登録商標)、合成ジポルフィリン及びジクロリン(dichlorin)、金属置換基を含む又は含まないフタロシアニン、様々な置換を含む又は含まないクロロアルミニウムフタロシアニン、O-置換テトラフェニルポルフィリン、3,1-メソテトラキス(O-プロピオンアミドフェニル)ポルフィリン、バーディン(verdin)、プルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、エチオプルプリン、ヒドロポルフィリン、テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリンシリーズのバクテリオクロリン(例えば、プロトポルフィリンI~プロトポルフィリンIX、コプロポルフィリン、ウロポルフィリン、メソポルフィリン、ヘマトポルフィリン、及びサフィリン)、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ-1-アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ-1-アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、メタ-テトラヒドロキシフェニルコリン(meta-tetrahydroxphenylchlorin)、ベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン一酸誘導体、ベンゾポルフィリンのテトラシアノエチレン付加物、ベンゾポルフィリンのジメチルアセチレンジカルボン酸付加物、Diels-Adler付加物、ベンゾポルフィリンの一酸環「a」誘導体、スルホン化アルミニウムPC、スルホン化AlPc、ジスルホン化、テトラスルホン化誘導体、スルホン化アルミニウムナフタロシアニン、金属置換を含む又は含まず、且つ、様々な置換を含む又は含まないナフタロシアニン、クロロフィリス(chlorophylis)、バクテリオクロロフィルA、アントラセンジオン、アントラピラゾール、アミノアントラキノン、フェノキサジン色素、フェノチアジン誘導体、カルコゲナピリリウム(chalcogenapyrylium)色素、カチオニックセレナ及びテルラピリリウム(tellurapyrylium)誘導体、環置換カチオニックPC、フェオホルビド誘導体、天然ポルフィリン、ヘマトポルフィリン、ALA誘発性プロトポルフィリンIX、内因性代謝前駆体、5-アミノレブリン酸、ベンゾナフトポルフィラジン(benzonaphthoporphyrazine)、カチオニックイミニウム塩、テトラサイクリン、ルテチウムテキサフィリン、テキサフィリン、スズ-エチオ-プルプリン、ポルフィセン、ベンゾフェノチアジニウム(benzophenothiazinium)、エオシン、エリスロシン、シアニン、メロシアニン540、セレニウム置換シアニン、フラビン、リボフラビン、プロフラビン、キノン、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフタルジイミド(naphthaldiimide)、ビクトリアブルー、トルイジンブルー、ジアンソロキノン(dianthroquinone)(例えば、ヒペリシン)、フラーレン、ローダミン、及びこれらの感光性誘導体(photosensitive derivative)が挙げられる。
【0041】
熱ではなく光を使用する利点は、熱により組織の損傷(細胞死)を引き起こすリスクが低いことである。装置と組織の結合を達成するために、熱ではなく光を使用する別の利点は、不均等な熱の分布による合併症が低減又は排除され得ることである。
【0042】
加えて、波長特異的吸収剤、例えば、発色団の使用は、発色団含有領域と周囲組織との間の吸収差を可能にする。1つの利点は、正確な集束を必要としない、標的による選択的な放射線の吸収である。さらに、発色団含有領域の高い吸収性により、より低い出力レベルを使用することができ、組織の損傷が軽減される。
【0043】
ステントを含む装置は、自己拡張型装置及びバルーン拡張型装置を含む。ステントを含む装置のステント部品は、金属又はポリマー、生体安定性又は生体吸収性であり得る。特定の実施形態では、ステント部品は、特に、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、及びElgiloy(コバルト、クロム、及びニッケルを含む合金)から選択される金属から形成される。特定の他の実施形態では、ステント部分は、特に、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリカプロラクトン、及びポリジオキサノンから選択される生体分解性ポリマーから形成される。特定のさらなる実施形態では、ステント部分は、生体分解性金属、例えば、特に、鉄、鉄合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金から形成される。
【0044】
ステントストラットは、ストラット間のセルに跨がらないコーティング材料でコーティングすることができる(コーティングステント)。ステントストラットは、ステントストラット間のセルに跨る被覆材料によって被覆することができる(被覆ステント)。
【0045】
既に述べられたように、本開示に従って使用されるステントを含む装置は、裸ステント、薬物溶出ステント(薬物溶出コーティングを有し得る)、及び被覆材料によって部分的に又は完全に被覆されたステントを含む。被覆材料としては、無孔性被覆材料(例えば、固体薄膜)並びに多孔性薄膜(例えば、発泡ポリテトラフルオロエチレン又はePTFE)及び繊維系被覆を含む多孔性被覆材料が挙げられる。これに関連して、本開示に使用されるステント被覆は、様々な繊維系建造技術を用いて形成することができ、且つ、例えば、織布ステント被覆及び不織布ステント被覆(例えば、編物、編組、コイル、不規則巻き、スパンボンドなど)を含む。
【0046】
被覆材料は、様々な合成ポリマー及び天然ポリマーから選択することができる。ステントを含む装置の被覆を形成するための有益なポリマーは、特に、以下から選択することができる。(a)特にポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むポリシロキサン(即ち、シリコーン)、(b)1つ以上の水素原子がフッ素、例えば、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロペン)(PVDF-HFP)で置換されているC2~C8アルケンのホモポリマー及びコポリマーを含むフルオロポリマー、(c)ポリアミド、例えば、特に、ナイロン、(d)例えば、特に、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル、(e)ポリウレタン、例えば、特に、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン、及びポリアルケン系ポリウレタン(例えば、ポリイソブチレン系ポリウレタン)、(f)C2~C8アルケンのホモポリマー及びコポリマー、例えば、特に、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、(g)トリオキサンのホモポリマー(例えば、ポリオキシメチレン又はアセタールとしても知られているポリトリオキサン)及びトリオキサンのコポリマー(例えば、トリオキサンとジオキサンのコポリマー)を含むポリオキシアルキレン、並びに(h)1つ以上のポリスチレンブロック及び1つ以上のポリアルケンブロックを含むブロックコポリマー、例えば、特に、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(SIBS)又はポリ(スチレン-b-エチレン/ブチレン-b-スチレン)(SEBS)を含むスチレンコポリマー、例えば、アルケン-スチレンコポリマー。
【0047】
繊維系ステント被覆の繊維幅(例えば、円形繊維の直径)は、様々にすることができる。特定の実施形態では、本開示のステントを含む装置は、例えば、他の値もあるが、特に、1μm~500μm(例えば、1μm~2.5μm~5μm~10μm~25μm~50μm~100μm~250μm~500μmの範囲)(即ち、これらの数値のいずれか2つの数値間の範囲)の範囲の繊維幅を有し得る。特定の実施形態では、繊維は、例えば、線維の表面積、従って繊維と結合材料のコーティングとの間の接触面積を増加させるために表面の特徴を備えることができる。
【0048】
本開示による多孔性ステント被覆はまた、広範囲の細孔径を有し得る。様々な実施形態では、本開示のステントを含む装置は、1μm~100μm(例えば、1μm~2.5μm~5μm~10μm~25μm~50μm~100μmの範囲)(即ち、これらの数値のいずれか2つの数値間の範囲)の範囲の細孔径の領域(area pore sizes)を有し得る。
【0049】
結合材料は、様々な方式でステントを含む装置に結合させることができる。例えば、結合材料は、裸ステント部品の全て若しくは一部にコーティングとして塗布する、コーティングされたステント(例えば、薬物溶出ステント)の全て若しくは一部にコーティングとして塗布する、又は部分的若しくは完全に被覆されたステントの全て又は一部にコーティングとして塗布することができる。別の例として、結合材料は、ステント部品材料(特にポリマーステント材料)の全て若しくは一部に含浸させて混合する、ステントコーティング材料の全て若しくは一部に含浸させて混合する、ステント被覆材料の全て若しくは一部に含浸させて混合する、又はこれらの組み合わせで混合することができる。別の例として、結合材料の層(例えば、シート)は、ステント部品材料の全て若しくは一部に積層する、ステントコーティング材料の全て若しくは一部に積層する、ステント被覆材料の全て若しくは一部に積層する、又はこれらの組み合わせで積層することができる。ステント被覆材料は、このステント被覆材料がステント部品に結合する前又は後で、結合材料を用いてコーティングする、含浸させる、且つ/又は積層することができる。
【0050】
結合材料は、例えば、ステントを含む装置の全長に亘って存在しても良いし、又は、例えば、ステントを含む装置の端部に結合した、ステントを含む装置の長さに沿った特定の点のみに存在しても良い。これにより、ステントを含む装置の大部分から結合材料をなくすことができ、これにより、他にも利点はあるが、結合材料の消費が減少する。
【0051】
結合材料は、様々な技術を用いて別の材料に含浸させ、且つ/又はコーティングすることができ、このような様々な技術は、例えば、浸漬技術、吹き付け技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、静電技術、塗布技術から選択することができ、この塗布技術では、結合材料が、例えば、適切な塗布装置、例えば、噴霧器、ブラシ、ローラ、ペン、又はプリンタ(例えば、スクリーン印刷装置、インクジェットプリンタなど)の使用によって、他ではなくステントを含む装置の特定の領域に選択的に塗布される。
【0052】
結合材料がステント、(任意選択の)被覆材料、又は両方に接着しない場合は、(a)結合材料及び(b)ステント、(任意選択の)被覆材料、又は両方に結合する中間層を、例えば、つなぎ層として使用することができる。特定の実施形態では、中間層は、結合材料に加えられるエネルギーに対して透過性であり得る。
【0053】
既に述べられたように、本開示の様々な実施形態は、ステント部品が、例えば、金属又はポリマー、生体安定性又は生体吸収性、自己拡張型又はバルーン膨張型であるステントを含む装置に関連する。
【0054】
一部の実施形態では、ステント部品は、全体を結合材料から形成することができる。
一部の実施形態では、ステント部品は、結合材料で部分的に又は完全にコーティング又は含浸される。
【0055】
一部の実施形態では、結合材料は、生体吸収性とすることができ、例えば、組込み後にはステント部品及び/又は任意選択の被覆材料しか残らない(例えば、ステント又は任意選択の被覆材料が生体安定性又は生体吸収性である場合)。上記のように、生体吸収速度は、例えば、数日~数週間~数か月に調整することができる。
【0056】
一部の実施形態では、ステント部品要素(例えば、ステントワイヤ、ステントストラットなど)は、セルが開いたまま残るように結合材料でコーティングすることができる。1つの特定の実施形態が図1に示されており、図1は、ステント100を示し、このステント100の構造要素は、結合材料120で完全にコーティングされているが、ステントセル110cは開いたままである。
【0057】
他の実施形態では、結合材料は、ステントセルを被覆することができる。特定の実施形態が図2に示されており、図2は、ステント100の概略図であり、ステント100のステントセルは、結合材料120で被覆されている。結合材料は、例えば、構造要素110の外面(反管腔側(abluminal))のみ、構造要素110の内面(管腔側(luminal))のみに存在しても良いし、又は構造要素110を完全に閉じても良い。
【0058】
一部の実施形態では、ステントは、結合材料で部分的にコーティング又は含浸される。特定の一実施形態が図3に示されており、図3は、ステント100を示し、結合材料120が、ステントの端部のみで構造要素110に塗布されている。別の特定の実施形態が図4に示されており、結合材料120が、ステント100の長さに沿って間隔を置いて構造要素110に塗布されている。図3及び図4に示されている実施形態では、結合材料120は、ステントセルの少なくとも一部に跨がっている。結合材料120は、例えば、構造要素110の外面(反管腔側)のみ、構造要素110の内面(管腔側)のみに存在しても良いし、又は構造要素110を完全に閉じても良い。他の実施形態では、構造要素は、ステントセルが開いたまま残るように結合材料でコーティングされる。
【0059】
一部の実施形態では、ステントを含む装置が提供され、ステント部品は、被覆材料で部分的に又は完全に被覆される。他と同様に、ステント部品は、金属又はポリマー、生体安定性又は生体吸収性、自己拡張型又はバルーン膨張型であり得る。被覆材料は、生体安定性又は生体吸収性、多孔性又は無孔性であり得る。被覆材料は、織布又は不織布繊維構造であり得る。被覆材料は、ステント部品を完全に又は部分的に被覆することができる。
【0060】
次に、部分的に又は完全に被覆されたステントは、結合材料で部分的に又は完全にコーティングすることができる。例えば、部分的に又は完全に被覆されたステントは、内面(管腔側)ではなく外面(反管腔側)上の結合材料でコーティングすることができる。部分的に又は完全に被覆されたステントは、ステントの端部若しくはその近傍において、又はその他の戦略的領域において結合材料でコーティングすることができる。部分的に又は完全に被覆されたステントは、ステント部品上ではなく被覆上の結合材料でコーティングすることができる。
【0061】
特定の一実施形態が、図5Aに概略的に示され、ステント部分の中心領域のみが、被覆材料130で被覆されている。結合材料120は、被覆材料130で被覆されていない領域におけるステントの端部で構造要素110に塗布されている。図示されている実施形態では、結合材料120は、ステントセルに跨がっており、この場合は、結合材料120は、例えば、構造要素110の外面(反管腔側)のみ、構造要素110の内面(管腔側)のみに存在しても良いし、又は構造要素110を完全に閉じても良い。他の実施形態では、構造要素は、ステントセルが開いたまま残るように結合材料でコーティングされる。
【0062】
別の特定の実施形態が、図5Bに概略的に示されており、ステント全体が、被覆材料130で被覆され、且つ、結合材料120は、ステントの端部で被覆材料に塗布されている。特定の実施形態では、被覆材料は、加えられる結合エネルギーに対して透過性である材料から形成することができ、これにより、被覆材料に対して管腔側(即ち、ステントの内側)に配置されたエネルギー源からの結合エネルギーが、被覆材料の外面(反管腔側)の結合材料に到達することができる。中間層(不図示)が、結合材料120と被覆材料130との間に配置される場合は、中間材料も同様に、加えられる結合エネルギーに対して透過性である材料から形成することができる。
【0063】
例えば、図6に示されている特定の実施形態では、被覆材料130は、エネルギーが被覆を通過して結合材料120を活性化させるのを可能にする様々なサイズの開口を有し得る。結合材料120は、図示されているように孔に跨ることができ、一部の実施形態では、被覆材料130の全て又は一部に塗布することもできる。一部の実施形態では、構造要素110は、結合材料でコーティングされるが、ステントセルは開いたままである。
【0064】
一部の実施形態では、結合材料は、ステントを含む装置とは独立した部位に塗布され、この場合、ステントを含む装置は、送達時に結合材料に結合しても良いし(例えば、図1図6を参照されたい)、又は、送達時に結合材料を含まなくても良い。これらの実施形態では、結合材料を組織に塗布し、続いてステントを含む装置が送達されても良いし、又は、ステントを含む装置を送達し、続いて結合材料を塗布しても良い。装置及び結合材料の導入後に、装置及び結合材料が、適切なエネルギー源を用いて照射される。
【0065】
独立して塗布される結合材料は、固形、液体形態、又はこれらの組み合わせで塗布することができる。固形で独立して付着される場合、結合材料は、例えば、装置を膨張させることによって(例えば、バルーンを膨張させることによって)管腔壁に押圧することができる半径方向の膨張に適した装置(例えば、バルーン)に取り付けられたパッチの形態、又は薄膜若しくはテープにすることができる。液体形態で独立して付着される場合、結合材料は、例えば、適切な装置、例えば、カテーテルを用いて付着される液体、ペースト、又はゲル(例えば、半田材料及び/又は感光色素を含む有機又は水性の液体、ペースト、又はゲル)の形態にすることができる。例えば、結合材料は、ステントを含む装置の配置の前にカテーテルによって体管腔に塗布しても良いし、又は結合材料は、カテーテルによる配置の後にステントを含む装置に付着させても良い。次いで、結合材料及びステントを含む装置は、例えば、付着カテーテル又は別の手段に組み込まれたエネルギー源を用いて、適切なエネルギー源によって照射される。
【0066】
特定の実施形態では、結合材料は、ステントを含む装置を植え込まずに体管腔に塗布することができる。固形で付着される場合は、結合材料は、例えば、半径方向の拡張に適した装置に取り付けられたパッチの形態、又は薄膜若しくはテープにすることができる。管腔壁に押圧されたら、結合材料を、エネルギーに曝露することによってこの壁に接合することができる。これを使用して、例えば、管腔の断裂を修復及び/又は閉鎖することができる。他の実施形態では、液体形態の結合材料を使用して、管腔の断裂を修復及び/又は閉鎖することができる。
【0067】
既に述べられたように、様々なエネルギー源を本開示に利用することができる。一部の実施形態では、エネルギー源は、それ自体の独立した装置と共に提供されるが、他の実施形態では、エネルギー源は、送達装置に組み込むことができる。様々な実施形態では、エネルギー源は、装置の側面から半径方向外側にエネルギーを誘導するように適合される。特定の場合には、エネルギー源は、(例えば、手動又は機械的に)回転可能であり、エネルギーを一周誘導することができる(即ち、360度の照射)。一周の照射はまた、例えば、(例えば、複数のLED、複数の光ファイバーなどによって)装置の全周囲からエネルギーを誘導することによっても達成することができる。特定の実施形態では、エネルギーは、透過性材料、例えば、他も可能であるが、特に、透過性中空カテーテルシャフト又は透過性バルーンによってエネルギー源から誘導される。
【0068】
エネルギー源が、それ自体の独立した装置と共に提供される実施形態では、エネルギー源は、例えば、オーバーザワイヤ若しくはモノレールカテーテルに組み込んでも良いし、又はエネルギー源は、例えば、送達カテーテルの管腔を介して挿入しても良い。図10に例示されている一実施形態では、発光装置340は、この装置から外側に放射する複数の発光素子340e、例えば、複数のLED又は光ファイバー先端部を備えることができる。
【0069】
エネルギー源が送達装置に組み込まれる実施形態の一例として、エネルギー源は、例えば、発光する光ファイバーコア345eをガイドワイヤに設けることによって、図11に示されているようにガイドワイヤ345に組み込むことができる。コアからの光は、適切な光学素子を用いて、光がコアから出る点で半径方向に分散させることができる。特定の他の実施形態では、エネルギーの進路は、送達カテーテルに組み込まれる。例えば、送達カテーテルは、この送達カテーテルから外側に放射する複数のLED又は光ファイバー先端部を備えることができる。一部の実施形態では、エネルギー源は、バルーンカテーテルと共に設けられ、この場合は、エネルギー源360eは、図12に示されているようにバルーンカテーテル360のバルーン365の先端側に取り付けることができる。エネルギー源はまた、バルーンの基端側又はバルーンの内部に配置しても良い。バルーンの内部に配置される場合は、バルーンは、照射されるエネルギーに対して透過性である材料から形成される。エネルギー源をバルーンの内部に設ける1つの利点は、バルーンが、エネルギー源を体管腔内で中心に維持するのに寄与することである。もちろん、バルーン以外の機構、例えば、送達シース又はステントを使用して、エネルギー源を中心に配置することもできる。
【0070】
ここで、本開示に従ってステントを送達するための手順の一実施形態が、図7A図7Cを用いて説明される。初めに、ガイドワイヤ310が、図7Aに示されているように体管腔200内に配置される。次いで、ステントが、ガイドワイヤ310を介して送達される。例えば、ステントは、ステント送達の分野で公知の送達装置、例えば、ステントが外側カテーテルシース330と内側カテーテル部材320との間に配置され、シース330が引き戻されると送達部位に送達され、図7Bに示されているようにステントの自己拡張をもたらす装置を用いて送達することができる。しかしながら、他の既知の手順とは異なり、本実施形態のステントは、ステント要素110が、ステントの端部の結合材料120でコーティングされたステントである。図示されている実施形態では、ステントが送達された後に、送達カテーテルが引き戻されて、エネルギー放出素子340eを備える装置340が、ガイドワイヤ310を介して導入され、結合材料120の活性化、及びステントの体管腔200の組織への固定が可能となる。他の実施形態では、エネルギー源は、送達カテーテルに含めることができる。
【0071】
ここで、本開示に従ってステントを送達する手順の別の実施形態が、図8A図8Cを用いて説明される。この実施形態では、第1のバルーン355を有する第1のカテーテル350が、図8Aに示されているように体管腔200内に配置され、例えば、血管であり得る体管腔200内の流れを遮断する。次いで、図8Bに示されているように、第1のカテーテル350を介して前進された第2のカテーテル360に装着されたステント100が部位に送達される。図示されている実施形態では、ステント100の全長は、結合材料を備えている。図8Cに示されているように、第2のカテーテル360は、膨張時に体管腔200内のステント100を拡張する第2のバルーン365を有する。ステントの拡張後、第2のカテーテル360のバルーン365内のエネルギー源を使用して、ステント100の結合材料を活性化することができ、ステントを体管腔200の組織へ固定することが可能となる。他の実施形態では、エネルギー源は、別の装置を介して導入される。
【0072】
ここで、本開示に従ってステントを送達する手順のさらに別の実施形態が、図9を用いて説明される。この実施形態では、ステント要素110及びステント被覆130を有する自己拡張型又はバルーン拡張型ステントが、適切な送達技術を用いて(例えば、引き戻し可能なシースを備えるカテーテル、バルーンカテーテルなどによって)体管腔200に送達される。続いて、カテーテル370が、結合材料をステントに送達するために使用される。例えば、図9に示されているように、結合材料120は、送達カテーテル370の1つ以上の管腔370lから液体形態で送達することができる。結合材料120の塗布後、ステント及び組織が、この実施形態ではカテーテル370に設けられた適切なエネルギー源370eによって照射され、これにより結合材料120が活性化されて、ステントが体管腔200の組織に結合される。他の実施形態では、エネルギー源は、別の装置によって挿入される。
【0073】
特定の実施形態では、本開示のステントを含む装置は、他にも可能な薬剤があるが、特に、治療薬及びイメージング剤を含む様々な追加の薬剤を含み得る。このような薬剤は、例えば、ステント部品材料の全て若しくは一部のコーティングに含める又はステント部品材料の全て若しくは一部に組み込む、結合材料の全て若しくは一部のコーティングに含める若しくは合材料の全て若しくは一部に組み込む、且つ/又は任意選択の被覆材料の全て若しくは一部のコーティングに含める若しくは任意選択の被覆材料の全て若しくは一部の組み込むことができる。
【0074】
「治療薬」、「薬物」、「生物活性剤」、「薬剤」、「薬学的に活性な薬剤」、及び他の関連する語は、本明細書では同義的に使用することができる。治療薬は、抗再狭窄剤、抗過形成剤(anti-hyperplasic agent)、及び抗肉芽組織剤(anti-granulation tissue agent)を含む。治療薬は、単独で、又は組み合わせて使用することができる。
【0075】
本開示のステントを含む装置と共に使用される追加の薬剤は、(a)特に、金属、金属塩と酸化物(特にビスマス塩と酸化物)、及びヨウ化化合物を含む、X線透視法と共に使用される造影剤、(b)有機及び無機エコー源性粒子(即ち、反射超音波エネルギーの増加をもたらす粒子)又は有機及び無機エコールーセント粒子(即ち、反射超音波エネルギーの減少をもたらす粒子)を含む、超音波イメージングと共に使用される造影剤、及び(c)比較的大きい磁気モーメントを有する成分、例えば、God(III)、MN(II)、Fe(III)、及びこれらを含む(キレートを含む)化合物、例えば、ジエチレントリアミンペン酢酸でキレート化されたガドリニウムイオンを含む造影剤を含む、磁気共鳴映像法(MRI)と共に使用される造影剤、を含むイメージング剤も含む。
【0076】
様々な実施形態では、ステントを含む装置は、1つ以上の前述の追加の薬剤を1wt%未満~50wt%以上を含み得る。
本開示の別の態様では、ステントを含む装置の手順に有用な医療キットが提供される。この医療キットは、処置を行うのに有用な全構成要素の全て又はサブセットを含み得る。例えば、医療キットは、以下のアイテム、(a)結合した結合材料を含まない又は含む、ステントを含む装置、(b)例えば、液体形態又は固形の結合材料、(c)1つ以上の医療装置(例えば、ガイドワイヤ、ステント送達装置、及び/又は結合材料を塗布するために使用される装置)、(d)(例えば、スタンドアロンユニット内の又は外科器具に結合された)エネルギー源、(e)適切な包装材料、並びに、(f)(i)保存情報及び(ii)ステントを含む装置を対象にどのように植え込むかについての取扱説明の1つ以上を含む印刷物、のいずれか2つ、3つ、又は4つ以上の任意の組合せを含み得る。
【0077】
様々な実施形態が、本明細書で具体的に例示され、説明されたが、本開示の改良及び変更が、本発明の趣旨及び意図する範囲から逸脱することなく、上記の教示に含まれ、且つ、添付の特許請求の範囲内であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12