(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166525
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】状態監視装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20231114BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20231114BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20231114BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G16Y20/10
G16Y40/10
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144332
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2020031869の分割
【原出願日】2020-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】鹿仁島 康裕
(57)【要約】
【課題】リアルタイムに監視対象の動作状態を判定することが可能な状態監視装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る状態監視装置において、第1取得手段は、監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する。第2取得手段は、監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する。第1検出手段は、動作タイミング情報に基づいて、時系列信号から第1動作区間信号を検出する。格納手段は、第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを格納する。第2検出手段は、第1動作区間信号のうち、テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出する。判定手段は、第2動作区間信号に基づいて監視対象の動作状態を判定する。テンプレートは、検出された第2動作区間信号に基づいて更新される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する第1取得手段と、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する第2取得手段と、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する第1検出手段と、
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する第1格納手段と、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出する第2検出手段と、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する判定手段と
を具備し、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
状態監視装置。
【請求項2】
前記テンプレートは、予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号の平均波形を含む請求項1記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記テンプレートは、定期的に更新され、
前記予め定められた期間に検出された複数の第2動作区間信号は、前記テンプレートが前回更新された後に検出された第2動作区間信号を含む
請求項2記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記テンプレートは、当該テンプレートと、当該テンプレートとの類似度に基づいて検出された第2動作区間信号との差分に基づいて判別されるタイミングで更新される請求項1~3のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記監視対象が正常な状態にあるときに検出された第2動作区間信号を学習することによって生成された学習済みモデルを格納する第2格納手段を更に具備し、
前記判定手段は、前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記学習済みモデルは、前記監視対象の動作状態が正常であると判定された場合に前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
請求項1~4のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記学習済みモデルは、予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号に基づいて更新される請求項5記載の状態監視装置。
【請求項7】
前記学習済みモデルは、定期的に更新され、
前記予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号は、前記学習済みモデルが前回更新された後に検出された第2動作区間信号を含む
請求項6記載の状態監視装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて異常度を算出し、当該異常度に基づいて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記学習済みモデルは、前記算出された異常度の分布の変化に基づいて判別されるタイミングで更新される
請求項5~7のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、第1時間間隔で更新される第1学習済みモデル及び第2時間間隔で更新される第2学習済みモデルを含み、
前記判定手段は、
前記第1学習済みモデルを用いて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記第2学習済みモデルを用いて前記監視対象の動作に用いられる当該監視対象の構成要素の状態を判定し、
前記第2時間間隔は、前記第1時間間隔よりも長い
請求項5記載の状態監視装置。
【請求項10】
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する第1取得手段と、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する第2取得手段と、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する第1検出手段と、
前記第1動作区間信号の波形の特徴に基づいて、前記第1動作区間信号から第2動作区間信号を検出する第2検出手段と、
前記監視対象が正常な状態にあるときに検出された第2動作区間信号を学習することによって生成された学習済みモデルを予め格納する格納手段と、
前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する判定手段と
を具備し、
前記学習済みモデルは、前記監視対象の動作状態が正常であると判定された場合に前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
状態監視装置。
【請求項11】
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する格納手段を備える状態監視装置が実行する方法であって、
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得するステップと、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得するステップと、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出するステップと、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出するステップと、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定するステップと
を具備し、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
方法。
【請求項12】
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する格納手段を備える状態監視装置のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得するステップと、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得するステップと、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出するステップと、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出するステップと、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定するステップと
を実行させ、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、状態監視装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のIoT(Internet of Things)の進展に伴い、各種センサを用いて取得される信号(データ)に基づいて監視対象の動作状態を監視する状態監視装置が開発されている。
【0003】
このような状態監視装置においては、監視対象の動作状態をリアルタイムに判定する必要があるが、当該リアルタイム性の向上及び当該動作状態を判定する際の精度の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、リアルタイムに監視対象の動作状態を判定することが可能な状態監視装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る状態監視装置は、第1取得手段と、第2取得手段と、第1検出手段と、第1格納手段と、第2検出手段と、判定手段とを具備する。前記第1取得手段は、監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する。前記第2取得手段は、前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する。前記第1検出手段は、前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する。前記格納手段は、第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する。前記第2検出手段は、前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出する。前記判定手段は、前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する。前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る状態監視装置の機能構成の一例を示すブロック図。
【
図2】状態監視装置のハードウェア構成の一例を示す図。
【
図3】状態監視装置が監視対象の動作状態を監視する際の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図4】ディスプレイに表示された判定結果の一例を示す図。
【
図5】第2動作区間信号検出処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】第2動作区間信号検出処理を概念的に示す図。
【
図7】本実施形態の比較例の動作について説明するための図。
【
図8】本実施形態に係る状態監視装置の動作を比較例の動作と対比して説明するための図。
【
図9】テンプレート更新処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図10】監視対象の経年劣化によって変化する異常度について説明するための図。
【
図11】モデル更新処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図12】更新前モデル及び更新後モデルを用いて算出される異常度を対比して説明するための図。
【
図13】戻入品の第2動作区間信号に基づく学習済みモデルの更新処理の一例について説明するための図。
【
図14】戻入品の第2動作区間信号に基づく学習済みモデルの更新処理の別の例について説明するための図。
【
図15】第2実施形態に係る状態監視装置及びサーバ装置の動作の概要を示す図。
【
図16】余寿命推定処理を更に実行する場合の状態監視装置及びサーバ装置の動作の概要を示す図。
【
図17】余寿命推定処理において生成される劣化曲線の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る状態監視装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、状態監視装置10は、監視対象20及び情報処理装置30とそれぞれ通信可能に接続されている。なお、状態監視装置10は、例えば監視対象20と直接接続されている必要はなく、後述する監視対象20に取り付けられているセンサから信号を取得可能に構成されていてもよい。
【0009】
ここで、監視対象20は、例えば製造工場、プラント、建設現場、教育機関、医療機関または住宅設備等に設けられた装置を含む。本実施形態においては、監視対象20が例えば製造工場の生産ラインにおいて製品を金型でプレス加工する装置(プレス機)であるものとして主に説明する。
【0010】
状態監視装置10は、例えば監視対象20に取り付けられたセンサを用いて取得される信号に基づいて当該監視対象20の動作状態を判定する。状態監視装置10による判定結果は、情報処理装置30に出力される。
【0011】
情報処理装置30は、例えば状態監視装置10による判定結果を画像として出力可能なディスプレイまたは音声として出力可能なスピーカ等を備える電子機器であるが、状態監視装置10による判定結果に基づいて所定の処理を実行するものであればよい。すなわち、情報処理装置30は、例えば各種サービスの提供者に対して状態監視装置10による判定結果を出力(通知)可能なサーバ装置等であってもよいし、上記した生産ライン等に制御命令を出力可能な制御装置等であってもよいし、ルータのようなネットワーク機器への制御命令を出力可能なコントローラサーバ等であってもよい。
【0012】
なお、本実施形態において、状態監視装置10は、上記した情報処理装置30またはその他のサーバ装置等と比較して計算リソースの小さいIoT向けのエッジデバイス(端末)として実現されるものとする。
【0013】
図1に示す状態監視装置10は、時系列信号取得部11、動作タイミング情報取得部12、第1動作区間検出部13、第2動作区間検出部14、動作状態判定部15、テンプレート格納部16(第1格納部)及びモデル格納部17(第2格納部)を含む。
【0014】
時系列信号取得部11は、監視対象20の動作状態に関する信号(監視対象20の動作に起因する信号)を取得する機能部である。なお、上記した監視対象20に取り付けられているセンサは継続的に駆動しており、時系列信号取得部11は、当該センサから時系列信号を取得する。
【0015】
動作タイミング情報取得部12は、監視対象20の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する。
【0016】
第1動作区間検出部13は、動作タイミング情報取得部12によって取得された動作タイミング情報に基づいて、時系列信号取得部11によって取得された時系列信号から第1動作区間信号を検出する。
【0017】
第2動作区間検出部14は、第1動作区間検出部13によって検出された第1動作区間信号の波形の特徴に基づいて、当該第1動作区間信号から第2動作区間信号を検出する。
【0018】
動作状態判定部15は、第2動作区間検出部14によって検出された第2動作区間信号に基づいて、監視対象20の動作状態を判定する。なお、動作状態判定部15による判定結果には、例えば監視対象20が正常な状態にあること(以下、単に「正常」と表記)及び監視対象20が異常な状態にあること(以下、単に「異常」と表記)が含まれる。動作状態判定部15による判定結果は、上記した情報処理装置30に出力される。
【0019】
テンプレート格納部16には、第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に相当する波形(以下、テンプレート波形と表記)及び当該第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号の時間長(以下、テンプレート時間長と表記)が規定されたテンプレートが格納されている。なお、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートの詳細については後述する。
【0020】
モデル格納部17には、上記した動作状態判定部15による判定処理に用いられる学習済みモデル(統計モデル)が予め格納されている。なお、モデル格納部17に格納されている学習済みモデルの詳細については後述する。
【0021】
ここで、
図1に示すように、状態監視装置10には、サーバ装置40が更に通信可能に接続されている。サーバ装置40は、第2動作区間格納部41、テンプレート更新部42及びモデル更新部43を含む。
【0022】
第2動作区間格納部41には、状態監視装置10に含まれる第2動作区間検出部14によって検出された第2動作区間信号(波形)が格納(蓄積)される。
【0023】
テンプレート更新部42は、第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号に基づいて、上記したテンプレート格納部16に格納されているテンプレートを更新する機能部である。テンプレート更新部42によるテンプレートの更新処理の詳細については後述する。
【0024】
モデル更新部43は、第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号に基づいて、上記したモデル格納部17に格納されている学習済みモデルを更新する機能部である。モデル更新部43による学習済みモデルの更新処理の詳細については後述する。
【0025】
なお、本実施形態においては状態監視装置10がエッジデバイスとして実現されるものとして説明するが、当該状態監視装置10が十分な計算リソース等を有している場合には、上記したサーバ装置40に含まれる第2動作区間格納部41、テンプレート更新部42及びモデル更新部43は状態監視装置10に組み込まれていてもよい。
【0026】
図2は、
図1に示す状態監視装置10のハードウェア構成の一例を示す。状態監視装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104等を備える。なお、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104は、例えばバスを介して相互に接続される。
【0027】
CPU101は、状態監視装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU101は、不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。これらプログラムは、例えばオペレーティングシステム(OS)等を含む。
【0028】
不揮発性メモリ102は、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。主メモリ103は、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。
図2においては不揮発性メモリ102及び主メモリ103のみが示されているが、状態監視装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0029】
なお、本実施形態において、
図1に示す状態監視装置10に含まれる時系列信号取得部11、動作タイミング情報取得部12、第1動作区間検出部13、第2動作区間検出部14及び動作状態判定部15の一部または全ては、CPU101(つまり、状態監視装置10のコンピュータ)に所定のプログラム(以下、状態監視プログラムと表記)を実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この状態監視プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて状態監視装置10にダウンロードされてもよい。なお、これらの各部11~15の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0030】
また、
図1に示す状態監視装置10に含まれるテンプレート格納部16及びモデル格納部17は、不揮発性メモリ102または他の記憶装置等によって実現される。
【0031】
通信デバイス104は、上記した監視対象20(に取り付けられたセンサ)、情報処理装置30及びサーバ装置40等の外部装置と有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0032】
ここでは状態監視装置10のハードウェア構成について説明したが、当該状態監視装置10と通信可能に接続されるサーバ装置40においても当該状態監視装置10と概ね同様のハードウェア構成を有するものとする。すなわち、サーバ装置40に含まれる第2動作区間格納部41は、当該サーバ装置40に備えられる不揮発性メモリまたは他の記憶装置等によって実現されればよい。更に、サーバ装置40に含まれるテンプレート更新部42及びモデル更新部43の一部または全ては、当該サーバ装置40に備えられるCPU(つまり、サーバ装置40のコンピュータ)に所定のプログラムを実行させることによって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0033】
次に、
図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る状態監視装置10が監視対象20の動作状態を監視する際の処理手順の一例について説明する。
【0034】
ここで、本実施形態において、監視対象20には例えば第1及び第2センサが取り付けられているものとする。
【0035】
第1センサは、監視対象20の動作状態に関する信号を計測するためのセンサである。第2センサは、監視対象20の動作の開始を表す動作タイミング情報に相当する信号を計測するためのセンサである。第1及び第2センサによって計測される信号には、当該第1及び第2センサによって計測(測定)可能な任意の物理量が含まれる。
【0036】
具体的には、上記したように監視対象20が生産ラインにおいて製品を金型でプレス加工するプレス機である場合、第1センサとしては、例えば当該プレス加工時に生じる音を計測するマイクロフォンを用いることができる。また、第2センサとしては、例えば光または超音波等を用いて当該第2センサから金型までの距離を計測する測距センサを用いることができる。
【0037】
なお、上記した第1及び第2センサは、状態監視装置10が監視対象20の動作状態を監視する際には、継続的に駆動しているものとする。
【0038】
状態監視装置10が監視対象20を監視する場合、時系列信号取得部11は、継続的に駆動している第1センサによって計測された時系列信号の取得を開始する(ステップS1)。時系列信号取得部11は、以下のステップS2以降の処理が実行される間も時系列信号を継続して取得する。なお、上記したように第1センサがマイクロフォンである場合、時系列信号取得部11によって取得される時系列信号は、当該マイクロフォンによって連続的に計測された音の波形を含む信号である。
【0039】
次に、動作タイミング情報取得部12は、継続的に駆動している第2センサによって計測された信号を取得する。ここで、上記したように監視対象20がプレス機であり、第2センサが当該第2センサから当該プレス機におけるプレス加工に用いられる金型までの距離を計測する測距センサである場合、動作タイミング情報取得部12は、第2センサによって計測された信号に基づいて、例えば第2センサから金型が離れた(つまり、プレス機が動作し、金型が製品にプレスされる)ことを検知することができる。この場合、動作タイミング情報取得部12は、当該監視対象20(プレス機)の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得するものとする。なお、動作タイミング情報は、例えば第2センサから金型までの距離が予め定められた値以上になった場合に取得される。
【0040】
これにより、動作タイミング情報取得部12は、第2センサによって計測された信号を監視することによって、監視対象20の動作が開始するタイミングである(つまり、動作タイミング情報が取得された)か否かを判定する(ステップS2)。
【0041】
監視対象20の動作が開始するタイミングでないと判定された場合(ステップS2のNO)、ステップS2の処理が繰り返される。
【0042】
一方、監視対象20の動作が開始するタイミングであると判定された場合(ステップS2のYES)、第1動作区間検出部13は、時系列信号取得部11によって取得された時系列信号を当該第1動作区間検出部13の内部に保持する(ステップS3)。
【0043】
次に、第1動作区間検出部13は、ステップS2において監視対象20の動作が開始するタイミングであると判定された後、所定時間(予め定められた時間)が経過したか否かを判定する。
【0044】
所定時間が経過していないと判定された場合(ステップS4のNO)、ステップS3に戻って処理が繰り返される。
【0045】
一方、所定時間が経過したと判定された場合(ステップS4のYES)、第1動作区間検出部13は、ステップS3において当該第1動作区間検出部13の内部に保持されている時系列信号を第1動作区間信号として検出する(ステップS5)。
【0046】
すなわち、本実施形態においては、時系列信号取得部11によって継続的に取得される時系列信号のうち、動作タイミング情報が取得された後、所定時間が経過するまでの区間の時系列信号が、第1動作区間信号として検出(取得)される。なお、所定時間は、例えば予め測定された監視対象20の動作時間に一定の時間をマージンとして上乗せした時間に相当する。
【0047】
ここで、上記した第1及び第2センサはそれぞれ独立して駆動されているため、動作タイミング情報は時系列信号に対して非同期である。このため、第1動作区間信号は、バッファを持たせることにより、動作タイミング情報が取得されたタイミングよりも少し前のタイミングから所定時間が経過するまでの時系列信号としてもよい。また、第1動作区間信号は、ディレイをもたせることにより、動作タイミング情報が取得されたタイミングよりも少し後のタイミングから所定時間が経過するまでの時系列信号としてもよい。
【0048】
ステップS5の処理が実行されると、第2動作区間検出部14は、ステップS5において検出された第1動作区間信号の波形の特徴に基づいて、当該第1動作区間信号から第2動作区間信号を検出する処理(以下、第2動作区間信号検出処理と表記)を実行する(ステップS6)。
【0049】
ここで、一般的に動作タイミング情報(第2センサ)のサンプリングの時間分解能は、時系列信号(第1センサ)のサンプリングの時間分解能よりも低い。このため、上記したステップS5においては動作タイミング情報に基づいて比較的粗いサンプリングの時間分解能で第1動作区間信号(概略動作区間信号)が検出され、ステップS6においては当該第1動作区間信号よりも細かいサンプリングの時間分解能で第2動作区間信号(詳細動作区間信号)が検出される。
【0050】
なお、ステップS6の第2動作区間信号検出処理においてはテンプレート格納部16に格納されているテンプレートが用いられるが、当該第2動作区間信号検出処理の詳細については後述する。
【0051】
次に、動作状態判定部15は、ステップS6において検出された第2動作区間信号及びモデル格納部17に格納されている学習済みモデルに基づいて、監視対象20の動作状態を判定する(ステップS7)。
【0052】
以下、ステップS7の処理について詳細に説明する。まず、本実施形態におけるモデル格納部17に格納されている学習済みモデル(以下、第1モデルと表記)は、例えば数理モデルまたは物理モデルであり、より具体的にはニューラルネットワークである。
【0053】
本実施形態において、第1モデルは、例えば監視対象20が正常な状態にある(監視対象20の状態がよい)ときの第2動作区間信号を用いて学習することによって生成される。なお、「監視対象20が正常な状態にあるとき」とは、例えば監視対象20の稼働開始時(監視対象20が納品されて最初に稼働する時)または当該監視対象20に対するメンテナンスが行われた直後等をいう。
【0054】
また、第1モデルの学習のための第2動作区間信号は、上記した状態監視装置10(第2動作区間検出部14)において取得されたものであってもよいし、当該状態監視装置10の外部で用意されたものであってもよい。なお、第1モデルの学習処理は処理量が多いため、当該第1モデルは、状態監視装置10(エッジデバイス)ではなく、外部のサーバ装置(例えば、サーバ装置40)等で生成されてもよい。
【0055】
ここで、本実施形態における第1モデルは、入力層と出力層が同じとなるように学習され、例えばオートエンコーダ(AE:Autoencoder)として機能する。このような第1モデルによれば、例えば当該第1モデルに対して入力される入力信号(入力データ)に対して、当該入力信号を再現するような出力信号(出力データ)が出力される。
【0056】
すなわち、第1モデルを用いた場合、監視対象20の動作状態が「正常」であれば、当該第1モデルからは入力信号(第2動作区間信号)と同一または類似する出力信号が出力される。一方、監視対象20の動作状態が「異常」であれば、第1モデルからは入力信号(第2動作区間信号)と類似しない出力信号が出力される。
【0057】
このため、動作状態判定部15は、ステップS6において検出された第2動作区間信号(時系列信号)を入力信号として第1モデルに入力し、当該第1モデルから出力された出力信号を得る。具体的には、例えば第2動作区間信号(入力信号)としてXt1、Xt2,…,Xtnが第1モデルに入力された場合、当該第1モデルからは出力信号としてYt1,Yt2,…,Ytnが出力される。なお、Xti(i=1,2,…,n)は第2動作区間信号に含まれる時刻tiにおける信号値である。一方、Yti(i=1,2,…,n)は、Xtiを第1モデルに入力した際に出力される信号値(出力信号)である。この場合におけるnは1以上の整数である。
【0058】
次に、動作状態判定部15は、第1モデルに対する入力信号と当該第1モデルから出力された出力信号との誤差(再構成誤差)に基づいて監視対象20の異常度を算出する。なお、異常度としては、例えば入力信号と出力信号との平均二乗誤差(MSE)を用いることができる。このように算出される異常度は、第1モデルの生成時(つまり、第1モデルが学習した第2動作区間信号が検出された時点)と比べて現在の監視対象20の動作状態が変化している(悪くなっている)ほど大きな値となる。
【0059】
動作状態判定部15は、上記した異常度が予め定められた値(異常閾値)未満である場合、監視対象20の動作状態が「正常」であると判定する。一方、動作状態判定部15は、異常度が予め定められた値(異常閾値)以上である場合、監視対象20の動作状態が「異常」であると判定する。
【0060】
本実施形態においては、上記したようにオートエンコーダとして機能する第1モデルを用いて監視対象20の動作状態を判定することができる。
【0061】
なお、ここではオートエンコーダとして機能する学習済みモデルを用いるものとして説明したが、例えば変分オートエンコーダ(VAE:Variational Autoencoder)として機能する学習済みモデルを用いる構成であっても構わない。この場合、変分オートエンコーダにおける潜在変数の再構成確率あるいは再構成誤差に基づいて異常度を算出することができる。
【0062】
更に、例えばLSTM(Long Short-Term Memory)構造を有する回帰型ニューラルネットワークを学習済みモデル(以下、第2モデルと表記)として用いてもよい。この場合、第2モデル(LSTM)は、予測モデルとして構築される。
【0063】
第2モデルは、上記した第1モデルと同様に、監視対象20が正常な状態にあるときの第2動作区間信号を用いて学習することによって生成される。また、第2モデルは、例えば第2動作区間信号(入力信号)が当該第2モデルに入力された場合に、当該第2モデルから出力信号として予測信号値が出力されるように学習される。
【0064】
すなわち、上記した第2モデル(予測モデル)に入力信号として例えばXti(Xt1,Xt2,…,Xtn)が入力された場合には、監視対象20の動作状態が「正常」であれば、当該第2モデルからは出力信号としてXti+1(つまり、Xtiの次の信号値)と同一または類似する予測信号値が出力される(つまり、出力信号が予測値と類似する)。一方、監視対象20の動作状態が「異常」であれば、第2モデルからは出力信号としてXti+1とは類似しない予測信号値が出力される(つまり、出力信号が予測値と類似しない)。
【0065】
上記したように第2モデルに例えばXtiが入力された場合、動作状態判定部15は、上記したXti+1と当該第2モデルから出力される予測信号値との誤差(予測誤差)を異常度として算出し、当該異常度に基づいて監視対象20の動作状態を判定することができる。なお、異常度としては、上記した平均二乗誤差(MSE)を用いることができる。このように算出される異常度は、第2モデルの生成時(つまり、第2モデルが学習した第2動作区間信号が検出された時点)と比べて現在の監視対象20の動作状態が変化している(悪くなっている)ほど大きな値となる。
【0066】
なお、ここでは学習済みモデルに対してステップS6において検出された第2動作区間信号が入力されるものとして説明したが、当該学習済みモデルの入力信号は、当該第2動作区間信号に対して前処理が施された信号であってもよい。具体的には、ステップS6において検出された第2動作区間信号に対して平均を0とし、かつ、分散を1にする標準化処理を実行することにより得られる信号を学習済みモデルに対する入力信号としてもよい。なお、標準化処理以外にも、例えば所定範囲外の値を取り除くような処理または周波数変換等の処理が実行されてもよい。
【0067】
上記したステップS7における判定結果は、状態監視装置10(動作状態判定部15)から例えば外部の情報処理装置30に出力される。なお、状態監視装置10から情報処理装置30に出力される判定結果は、例えば監視対象の動作状態(「正常」または「異常」)のみであってもよいし、上記した異常度(異常度合いを示す連続値)等を含むものであってもよい。
【0068】
状態監視装置10から外部の情報処理装置30に出力された判定結果は、例えば当該情報処理装置30(例えば、ディスプレイ等)に表示することができる。
図4は、情報処理装置30に表示された判定結果の一例である。なお、
図4においては、監視対象20が例えばプレス機であり、当該プレス機が動作する(製品を金型でプレス加工する)都度の当該監視対象20の動作状態の判定結果が表示された例を示している。具体的には、
図4においては、製品に対して付加されている加工番号と当該製品を金型でプレス加工した際に算出された異常度とが対応づけて表示されている。管理者は、
図4に示すような判定結果を確認することによって、所定の加工番号が付加された製品を金型でプレス加工する際に、監視対象20が「異常」と判定される動作をしていることを容易に把握することができる。
【0069】
次に、
図5のフローチャートを参照して、上記した第2動作区間信号検出処理(
図3に示すステップS6の処理)の処理手順の一例について説明する。
【0070】
まず、第2動作区間検出部14は、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートを取得する(ステップS11)。ステップS11において取得されるテンプレートには、上記したようにテンプレート波形(第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に相当する波形)及びテンプレート時間長(第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号の時間長)が規定されている。なお、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートは、例えば例えば監視対象20の稼働開始時等に当該監視対象20から取得された時系列信号に基づいて予め生成(用意)されているものとする。
【0071】
次に、第2動作区間検出部14は、ステップS11において取得されたテンプレートに基づいて、
図3に示すステップS5において検出された第1動作区間信号の所定の起点位置からテンプレート時間長を有する区間の時系列信号を切り出す(ステップS12)。なお、第1動作区間信号の起点位置は、例えば当該第1動作区間信号(時系列信号)の先頭である。
【0072】
ステップS12の処理が実行されると、第2動作区間検出部14は、当該ステップS12において切り出された時系列信号(の波形の特徴点)とテンプレート波形(の特徴点)との類似度を算出する(ステップS13)。なお、ステップS13においては、類似度として例えば相互相関係数が算出される。また、当該ステップS12において切り出された時系列信号とテンプレート波形に対して、監視対象20における特徴的な周波数帯域を抽出するFIR(Finite Impulse Response)フィルタリング処理を施してから類似度を算出してもよい。
【0073】
図5に示す処理においては、上記した起点位置を予め定められた単位時間毎に(サンプリング周期単位の精度で)順次変化させて上記したステップS12及びS13の処理を繰り返す。
【0074】
次に、全ての起点位置についてステップS12及びS13の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS14)。
【0075】
全ての起点位置について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS14のNO)、ステップS12に戻って処理が繰り返される。
【0076】
一方、全ての移転位置について処理が実行されたと判定された場合(ステップS14のYES)、第2動作区間検出部14は、上記したステップS13において算出されたテンプレート波形との類似度が最も高い時系列信号を第2動作区間信号として検出する(ステップS15)。換言すれば、ステップS15においては、最も高い類似度が算出された際の起点位置から所定時間(テンプレート時間長)が経過するまでの時系列信号が第2動作区間信号として検出される。
【0077】
すなわち、
図5に示す処理によれば、第1動作区間信号から時間をずらしながら時系列信号を抽出し、当該抽出された時系列信号とテンプレートとの類似度を算出する処理が逐次的に実行される。これにより、算出された類似度が最も高い時系列信号を第2動作区間信号として検出することができる。
【0078】
図6は、
図5に示す第2動作区間信号検出処理を概念的に示す図である。
図6に示す例では、第1動作区間信号の先頭を0secとした場合に、0.1secの位置を起点位置として時系列信号を切り出した場合にテンプレート波形との類似度が最大となることが示されている。この場合には、類似度が最大となる第1動作区間信号の0.1secの位置を起点位置として第2動作区間信号が検出される。
【0079】
なお、本実施形態において、上記した
図5に示す処理が実行されることによって検出された第2動作区間信号は、サーバ装置40に送信され、当該第2動作区間信号が検出された日時等を示す情報に対応づけて当該サーバ装置40に含まれる第2動作区間格納部41に格納(蓄積)される。
【0080】
上記したように本実施形態においては、監視対象20の動作状態に関する時系列信号を第1センサ(例えば、マイクロフォン)から取得し、当該監視対象20の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得し、当該動作タイミング情報に基づいて時系列信号から第1動作区間信号を検出する。この場合、動作タイミング情報は、第1センサよりもサンプリングの時間分解能が低い第2センサ(例えば、測距センサ)を用いて取得される。また、第1センサから取得された時系列信号のうち、少なくとも動作タイミング情報が取得された後、予め定められた時間が経過するまでの区間の時系列信号が第1動作区間信号として検出される。
【0081】
更に、本実施形態においては、第1動作区間信号の波形の特徴に基づいて、第1動作区間信号から第2動作区間信号を検出し、当該第2動作区間信号に基づいて、監視対象20の動作状態を判定する。この場合、第2動作区間信号は上記したようにテンプレート格納部16に格納されているテンプレートを用いて検出され、監視対象20の動作状態はモデル格納部17に格納されている学習済みモデルを用いて判定される。
【0082】
本実施形態においては、このような構成により、リアルタイムに監視対象20の動作状態を判定することが可能となる。
【0083】
ここで、例えば
図7に示すように第1センサによって計測される時系列信号を用いて監視対象20を常時監視する構成(以下、本実施形態の比較例と表記)を想定する。なお、
図7に示す例では、時刻t11~t19までの各々の区間において時系列信号に基づいて監視対象20の動作状態を判定している。
【0084】
一般に、生産ラインにおいては製品が例えば数秒程度の間隔で連続的に流されるが、当該間隔は一定ではない場合が多い。また、ロットの終了や不良品が検知されること等により生産ラインにおける流れが一時中断する場合もある。
【0085】
例えば
図7に示す時刻t14~t16のように監視対象20の動作間隔が一時的に短くなると、監視対象20の1回の動作に起因する時系列信号(の波形)が時刻t14~t15の区間と時刻t15~t16の区間とに分断されるため、上記した比較例においては正確な動作状態の判定が困難となる。また、比較例によれば、例えば
図7に示す時刻t16~t17のように監視対象20が動作していない区間でも不要な処理(動作状態の判定処理)が実行される可能性がある。
【0086】
これに対して、本実施形態に係る状態監視装置10においては、
図8に示すように時刻t1~t7の各々から所定時間が経過するまでのそれぞれの区間の時系列信号(第2動作区間信号)を検出して監視対象20の動作状態を判定する。これによれば、上記した比較例(時系列信号を常時監視する構成)と比較して、例えば第2動作区間信号が検出された後、次の動作タイミング信号が取得されるまで動作状態の判定処理を実行する時間を確保することができるため、例えば当該判定処理において遅延が生じたような場合であっても、監視対象20の動作状態の判定(監視)のリアルタイム性を向上させる(維持する)ことができる。また、本実施形態においては、比較例と比較して処理量を低減させ、状態監視装置10における消費電力を削減することも可能である。更に、本実施形態においては動作タイミング情報を用いて確実に監視対象20における動作の開始を把握することによって、監視対象20の動作状態の監視漏れを回避することも可能である。
【0087】
また、上記した比較例においては監視対象20の動作状態を判定するための各区間における時系列信号に時間方向のばらつきが生じるが、本実施形態においては、当該ばらつきを小さくすることが可能であり、結果として動作状態の判定(つまり、異常判定)精度を向上させることができる。
【0088】
更に、比較例においては上記した時間方向のばらつきによる影響を抑制するために例えば時系列信号を振幅スペクトルまたはパワースペクトルに変換して利用し、時系列信号の位相情報を利用しない場合があるが、本実施形態においては、このような位相情報を含めることができるため、動作状態の判定精度を更に向上させることができる。
【0089】
なお、本実施形態においては動作タイミング情報に基づいて時系列信号取得部11によって継続的に取得されている時系列信号から第1動作区間信号が検出されるものとして説明したが、例えば動作タイミング情報が取得されたタイミングで第1センサを駆動し、第1動作区間信号を当該第1センサから取得する構成としてもよい。このような構成においては、第1動作区間信号が取得された(つまり、動作タイミング情報が取得された後、所定時間が経過した)場合に、第1センサの駆動は停止される。これによれば、第1センサを常時駆動しておく必要がないため、監視対象20の動作状態を監視する際の消費電力を低減することができる。
【0090】
ここで、本実施形態においてはテンプレートを用いる構成により、検出されるべき時系列信号と類似する第2動作区間信号を検出することができる。これによれば、適切な第2動作区間信号を検出することが可能であり、当該第2動作区間信号を用いた監視対象20の動作状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0091】
しかしながら、プレス機のような監視対象20は日々繰り返し動作するものであることから、当該プレス機には経年劣化が生じる。これにより、プレス機におけるプレス加工時に生じる音(第1動作区間信号)から検出される第2動作区間信号は、当該プレス機の動作状態が正常である場合であっても当該経年劣化に応じて変化する場合がある。
【0092】
上記したように第2動作区間信号として検出される時系列信号が経年劣化に応じて変化しているにもかかわらず、当該経年劣化による変化が生じる前の時系列信号(第2動作区間信号)に基づいて生成されたテンプレート(予め用意されているテンプレート)を用いて第2動作区間信号を検出することは、監視対象20の動作状態の判定精度を低下させる要因となり得る。すなわち、上記したようなテンプレートを継続的に使用した場合には経年劣化に追従した状態監視を行うことができない。
【0093】
このため、本実施形態においては、上記したサーバ装置40に含まれるテンプレート更新部42によってテンプレート格納部16に格納されているテンプレートを更新する構成を採用する。
【0094】
以下、
図9のフローチャートを参照して、テンプレートを更新する処理(以下、テンプレート更新処理と表記)の処理手順の一例について説明する。以下の説明においては、テンプレート更新処理が開始される時点で状態監視装置10に含まれるテンプレート格納部16に格納されているテンプレートを更新前テンプレートと称する。
【0095】
なお、ここではテンプレート更新処理がサーバ装置40に含まれるテンプレート更新部42によって実行されるものとして説明するが、当該テンプレート更新処理は状態監視装置10側で実行されても構わない。
【0096】
まず、テンプレート更新部42は、更新前テンプレートを更新するタイミング(以下、単にテンプレート更新タイミングと表記)であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0097】
なお、ステップS21においては、例えば予め定められた日時に到達した場合にテンプレート更新タイミングであると判定してもよいし、例えば状態監視装置10またはサーバ装置40の管理者等によってテンプレートの更新が指示された場合にテンプレート更新タイミングであると判定してもよい。
【0098】
更に、上記したようにテンプレート更新処理が実行される前に実行される
図5に示す処理(第2動作区間信号検出処理)においては更新前テンプレートを用いて第2動作区間信号が検出されているが、テンプレート更新タイミングは、当該更新前テンプレートと当該更新前テンプレートを用いて検出された第2動作区間信号との差分に基づいて判別されてもよい。すなわち、上記した
図5の処理が実行されることによって更新前テンプレートに規定されているテンプレート波形との類似度が最も高い時系列信号が第2動作区間信号として検出された場合であっても、当該第2動作区間信号(の波形)が当該更新前テンプレート(に規定されているテンプレート波形)と異なるような場合には、更新前テンプレートを更新する必要がある(つまり、テンプレート更新タイミングである)と判定されるものとする。
【0099】
具体的には、テンプレート更新部42は、例えばサンプリング周期単位で更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分振幅の絶対値を算出し、更新前テンプレートの時間長(サンプル数)分における当該差分振幅の絶対値の代表値(平均値、最大値または最小値等)を更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分として用いる。あるいは、当該差分振幅に対する所定時間長分の二乗和(パワー)や二乗和の対数(対数パワー)を更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分として用いてもよい。これによれば、更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分が予め定められた値(所定値)を超えている場合に、テンプレート更新タイミングであると判定することができる。
【0100】
なお、上記した更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分に基づくテンプレート更新タイミングの判別処理は、更新前テンプレート及び第2動作区間信号を複数の時間幅で区切って実行するようにしてもよい。この場合、特定の時間幅における更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分が所定値を超えた場合にテンプレート更新タイミングであると判定されてもよいし、区切られた複数の時間幅のうち、予め定められた数以上の時間幅において更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分が所定値を超えた場合にテンプレート更新タイミングであると判定されてもよい。
【0101】
上記したように更新前テンプレートと第2動作区間信号との差分に基づいてテンプレート更新タイミングが判別される場合、当該差分によっては更新前テンプレートが長期間更新されない可能性がある。このため、例えば前回のテンプレート更新タイミング(つまり、テンプレート格納部16に格納されていた過去のテンプレートが更新前テンプレートに更新されたタイミング)から予め定められた期間が経過した場合には、テンプレート更新タイミングであると判定されるようにしてもよい。なお、前回のテンプレート更新タイミングについては、
図9に示す処理の実行に応じて例えばサーバ装置40内で管理されているものとする。
【0102】
ステップS21においてテンプレート更新タイミングでないと判定された場合(ステップS21のNO)、テンプレート更新タイミングであると判定されるまでステップS21の処理が繰り返される。
【0103】
一方、ステップS21においてテンプレート更新タイミングであると判定された場合(ステップS21のYES)、テンプレート更新部42は、第2動作区間格納部41に格納されている第2動作区間信号を取得する(ステップS22)。
【0104】
ここで、第2動作区間格納部41には、例えば第2動作区間信号が検出された日時に対応づけて当該第2動作区間信号が格納されている。この場合、ステップS22においては、例えば前回のテンプレート更新タイミングから予め定められた期間が経過する間に検出された第2動作区間信号(つまり、前回のテンプレート更新タイミングから予め定められた期間が経過する間に該当する日時に対応づけて第2動作区間格納部41に格納されている第2動作区間信号)が第2動作区間格納部41から取得されるものとする。
【0105】
なお、ステップS22において取得される第2動作区間信号は、ステップS21においてテンプレート更新タイミングであると判定された時点から直近の予め定められた期間内(つまり、過去一定期間の間)に検出された第2動作区間信号であってもよい。また、ステップS22において取得される第2動作区間信号は、前回のテンプレート更新タイミングから今回のテンプレート更新タイミング(ステップS21においてテンプレート更新タイミングであると判定された時点)までの間に検出された第2動作区間信号であってもよい。
【0106】
ここでは動作状態が「正常」であると判定された際の第2動作区間信号及び動作状態が「異常」であると判定された際の第2動作区間信号の両方を取得するものとして説明するが、ステップS22においては、動作状態が「正常」であると判定された際の第2動作区間信号を取得する(つまり、動作状態が「異常」であると判定された際の第2動作区間信号は排除する)ようにしてもよい。ただし、第2動作区間格納部41に格納されている第2動作区間信号は動作状態が「正常」と判定された際のものが多いため、動作状態が「正常」であると判定された際の第2動作区間信号及び動作状態が「異常」であると判定された際の第2動作区間信号の両方を取得する構成である場合であっても、後述する平均化処理によって動作状態が「異常」であると判定された際の第2動作区間信号の影響を低減することができる。
【0107】
次に、テンプレート更新部42は、ステップS22において取得された第2動作区間信号に基づいて、新たなテンプレート(以下、更新後テンプレートと表記)を生成する(ステップS23)。ステップS23においては、例えばステップS22において取得された第2動作区間信号(波形)の平均波形で規定されたテンプレートが更新後テンプレートとして生成される。
【0108】
なお、更新後テンプレートは、ステップS22において取得された第2動作区間信号のうちの一部を用いて生成されてもよい。具体的には、ステップS22において取得された第2動作区間信号を例えば1クラスSVM(One Class Support Vector Machine)などを用いて、セントロイド(中心的または代表的な波形)との距離が大きい(つまり、類似性が低い)第2動作区間信号を除外して、更新後テンプレートを生成するようにしてもよい。あるいは、ステップS22において取得された第2動作区間信号を複数のグループにクラスタリングし、セントロイド(中心的または代表的な波形)との距離が大きい(つまり、類似性が低い)グループに属する第2動作区間信号を除外して、更新後テンプレートを生成するようにしてもよい。
【0109】
ステップS23において生成された更新後テンプレートは、状態監視装置10に送信され、当該状態監視装置10に含まれるテンプレート格納部16に格納される。これにより、テンプレート格納部16に格納されている更新前テンプレートが更新後テンプレートに更新される(ステップS24)。
【0110】
上記した
図9に示す処理が実行されることによって更新前テンプレートが更新後テンプレートに更新された場合には、後に実行される
図3(及び
図5)に示す処理においては更新後テンプレートを用いて第2動作区間信号が検出される。
【0111】
なお、
図9に示す処理が実行された後に、更新後テンプレートの正当性を検証するようにしてもよい。この検証処理においては、例えば更新後テンプレートを用いて有効な振幅の波形(第2動作区間信号)を検出することができ、かつ、当該第2動作区間信号間にばらつきが少ない場合には、当該更新後テンプレートに正当性があると判定することができる。更に、検証処理は、更新後テンプレート(に規定されているテンプレート波形)と当該更新後テンプレートを用いて検出された第2動作区間信号(の波形)との差分に基づいて実行されてもよい。これによれば、更新後テンプレートと第2動作区間信号との差分が予め定められた所定値未満である場合に、当該更新後テンプレートに正当性があると判定することができる。
【0112】
このような検証処理において更新後テンプレートに正当性がないと判定された場合には、当該更新後テンプレートを破棄し、更新前テンプレートを継続して使用するようにしてもよいし、更新後テンプレートを生成した際に用いられた第2動作区間信号とは異なる第2動作区間信号を用いて更新後テンプレートを生成する処理(つまり、ステップS22~S24の処理)を再度実行するようにしてもよい。
【0113】
また、
図9において説明したテンプレート更新タイミングは一例である。すなわち、本実施形態において、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートは、定期的に更新されればよく、上記した以外のタイミングで更新されても構わない。
【0114】
上記したように本実施形態においては、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートを定期的に更新することにより、経年劣化に追従した状態監視を実現することができる。
【0115】
ここでは、テンプレートを更新する場合について説明したが、モデル格納部17に格納されている学習済みモデルについても同様のことが考えられる。すなわち、経年劣化が生じた監視対象20の動作状態を判定するために、当該経年劣化による変化が生じる前の第2動作区間信号を学習することによって生成された学習済みモデルを用いた場合には、当該監視対象20の動作状態の判定精度が低下する(つまり、経年劣化に追従した状態監視を行うことができない)場合がある。
【0116】
ここで、
図10を参照して、監視対象20に生じる経年劣化によって変化する異常度について説明する。なお、上記したように監視対象20の動作状態は異常度に基づいて判定されるが、モデル格納部17に格納されている学習済みモデルが上記した第1モデルである場合には、当該異常度は、当該第1モデルに対する入力信号と当該第1モデルから出力された出力信号との誤差に基づいて算出される。
【0117】
図10に示す異常度群201は、監視対象20が正常な状態にあるときに算出される異常度を示している。一方、異常度群202は、監視対象20が異常な状態にあるときに算出される異常度を示している。なお、異常度群201及び202は、モデル格納部17に格納されている1つ(同一)の学習済みモデルを用いて算出されているものとする。
【0118】
図10に示す異常度群201及び202によれば、監視対象20が正常な状態にあるときであっても異常な状態にあるときであっても、時間が経過する(つまり、経年劣化が進行する)ほど異常度が高く算出される傾向にあることが示されている。
【0119】
ここで、状態監視装置10の運用が開始されてから例えば日時T1までの期間であれば、監視対象20が正常な状態にあるときには異常度群201は異常閾値未満であり、監視対象20が異常な状態にあるときには異常度群202は異常閾値以上であるため、当該監視対象20の動作状態を適切に判定することができる。
【0120】
しかしながら、日時T1を過ぎると、監視対象20が正常な状態にあるときであっても、監視対象20の経年劣化により異常度群201が異常閾値以上となり、監視対象20の動作状態が「異常」であると判定されることになる。
【0121】
すなわち、本実施形態においては、上記した監視対象20に経年劣化が生じた場合であっても異常閾値に基づいて適切に当該監視対象20の動作状態を判定することができるように、モデル格納部17に格納されている学習済みモデルを更新する必要がある。
【0122】
以下、
図11のフローチャートを参照して、学習済みモデルを更新する処理(以下、モデル更新処理と表記)の処理手順の一例について説明する。以下の説明においては、モデル更新処理が開始される時点で状態監視装置10に含まれるモデル格納部17に格納されている学習済みモデルを更新前モデルと称する。
【0123】
なお、ここではモデル更新処理がサーバ装置40に含まれるモデル更新部43によって実行されるものとして説明するが、当該モデル更新処理は状態監視装置10側で実行されても構わない。
【0124】
まず、モデル更新部43は、更新前モデルを更新するタイミング(以下、単にモデル更新タイミングと表記)であるか否かを判定する(ステップS31)。
【0125】
なお、ステップS31においては、例えば予め定められた日時に到達した場合にモデル更新タイミングであると判定してもよいし、例えば状態監視装置10またはサーバ装置40の管理者等によって更新前モデルの更新が指示された場合にモデル更新タイミングであると判定してもよい。
【0126】
更に、上記したようにモデル更新処理が実行される前に実行される
図3に示す処理においては更新前モデルを用いて算出される異常度に基づいて監視対象20の動作状態が判定されるが、モデル更新タイミングは、当該異常度の分布(統計)の変化に基づいて判別されてもよい。この場合、モデル更新部43は、例えば縦軸を頻度、横軸を異常度としたヒストグラム(更新前モデルを用いて算出された異常度の分布を表すヒストグラム)を作成し、当該ヒストグラム(以下、対象ヒストグラムと表記)を基準となるヒストグラム(以下、基準ヒストグラムと表記)と比較することによって、モデル更新タイミングを判別する。
【0127】
なお、基準ヒストグラムは、例えば更新前モデルの1つ前の学習済みモデル(つまり、更新前モデルに更新される前の学習済みモデル)を用いていた際に算出された異常度の分布を表すものであってもよいし、監視対象20の稼働開始時等に算出された異常度の分布を表すものであってもよい。
【0128】
この場合、モデル更新部43は、対象ヒストグラム及び基準ヒストグラムを比較することによって得られる平均値または分散値等の統計量の変化量が予め定められた値(規定値)を超えている場合に、モデル更新タイミングであると判定することができる。なお、例えば対象ヒストグラム及び基準ヒストグラムにおける分布間距離(例えば、KL距離またはピアソン距離等)が規定値を超えた場合に、モデル更新タイミングであると判定される構成であってもよい。
【0129】
上記したように対象ヒストグラム及び基準ヒストグラムに基づいてモデル更新タイミングが判別される場合、異常度の分布の変化(量)によっては更新前モデルが長期間更新されない可能性がある。このため、例えば前回のモデル更新タイミング(つまり、モデル格納部17に格納されていた過去の学習済みモデルが更新前モデルに更新されたタイミング)から予め定められた期間が経過した場合には、モデル更新タイミングであると判定されるようにしてもよい。なお、前回のモデル更新タイミングについては、
図11に示す処理の実行に応じて例えばサーバ装置40内で管理されているものとする。
【0130】
なお、モデル更新タイミングは上記したテンプレート更新タイミングと同期させてもよく、
図9に示すステップS31においてテンプレート更新タイミングであると判定されたタイミングで、モデル更新タイミングであると判定されてもよい。
【0131】
ステップS31においてモデル更新タイミングでないと判定された場合(ステップS31のNO)、モデル更新タイミングであると判定されるまでステップS31の処理が繰り返される。
【0132】
一方、ステップS31においてモデル更新タイミングであると判定された場合(ステップS31のYES)、モデル更新部43は、第2動作区間格納部41に格納されている第2動作区間信号を取得する(ステップS32)。
【0133】
ここで、上記したように第2動作区間格納部41には例えば第2動作区間信号が検出された日時に対応づけて当該第2動作区間信号が格納されているが、当該第2動作区間信号には、当該第2動作区間信号に基づいて動作状態判定部15によって判定された監視対象20の動作状態(つまり、動作状態判定部15による判定結果である「正常」または「異常」)が更に対応づけられているものとする。この場合、ステップS32においては、例えば前回のテンプレート更新タイミングから予め定められた期間が経過する間に検出された第2動作区間信号であって、「正常」に対応づけられている第2動作区間信号が第2動作区間格納部41から取得されるものとする。
【0134】
ここでは日時に対応づけて第2動作区間信号が格納されているものとして説明したが、第2動作区間信号が検出された日時等を把握することができる態様であればよく、例えば第2動作区間信号にUNIX(登録商標)時間等のシステム時刻に基づいてミリ秒あるいはマイクロ秒単位でのタイムスタンプを付与して格納するようにしてもよい。
【0135】
なお、ステップS32において取得される第2動作区間信号は、ステップS31においてモデル更新タイミングであると判定された時点から直近の予め定められた期間内(つまり、過去一定期間の間)に検出された第2動作区間信号であってもよい。また、ステップS32において取得される第2動作区間信号は、前回のモデル更新タイミングから今回のモデル更新タイミング(ステップS31においてモデル更新タイミングであると判定された時点)までの間に検出された第2動作区間信号であってもよい。
【0136】
次に、モデル更新部43は、ステップS32において取得された第2動作区間信号に基づいて、更新後モデルを生成する(ステップS33)。なお、この更新後モデルは、ステップS32において取得された第2動作区間信号を学習することによって生成される新たな学習済みモデルであってもよいし、当該第2動作区間信号を更新前モデルに更に学習させることによって生成される学習済みモデル(つまり、第2動作区間信号に基づいて更新された更新前モデル)であってもよい。
【0137】
ステップS33において生成された更新後モデルは、状態監視装置10に送信され、当該状態監視装置10に含まれるモデル格納部17に格納される。これにより、モデル格納部17に格納されている更新前モデルが更新後モデルに更新される(ステップS34)。
【0138】
上記した
図11に示す処理が実行されることによって更新前モデルが更新後モデルに更新された場合には、後に実行される
図3に示す処理においては更新後モデルを用いて監視対象20の動作状態が判定される。
【0139】
なお、詳細な説明については省略するが、
図11に示す処理が実行された後に、第2動作区間格納部41から取得される「正常」に対応づけられている第2動作区間信号に加えて「異常」に対応づけられている第2動作区間信号を用いて、例えばクロスバリデーション(交差検証)等によって更新後モデルの正当性を検証するようにしてもよい。
【0140】
また、
図11において説明したモデル更新タイミングは一例である。すなわち、本実施形態において、モデル格納部17に格納されている学習済みモデルは、定期的に更新されればよく、上記した以外のタイミングで更新されても構わない。
【0141】
図12は、例えば状態監視装置10の運用が開始される時点で用意されている学習済みモデル(以下、初期モデル)を継続して用いて算出された異常度と本実施形態において説明したように定期的に更新される更新後モデルを用いて算出された異常度との対比を表している。
図12によれば、初期モデルを用いる場合には監視対象20の経年劣化に応じて異常度が徐々に増加しているのに対して、定期的に更新される更新後モデルを用いる場合には、当該経年劣化に応じた異常度の増加を抑制し、安定した異常度が算出されることが示されている。
【0142】
すなわち、本実施形態においては、学習済みモデルを定期的に更新することにより、経年劣化に追従した状態監視を実現することができる。
【0143】
ここで、上記したように監視対象20が例えば製造工場の生産ラインにおいて製品を金型でプレス加工するプレス機であり、本実施形態に係る状態監視装置10が当該製品の出荷検査において用いられる場合を想定する。この場合、状態監視装置10(動作状態判定部15)において監視対象20の動作状態が「正常」であると判定されることは当該監視対象20の動作(つまり、プレス機におけるプレス加工)によって生産された製品が正常であることに相当する。しかしながら、監視対象20の動作状態が「正常」であると判定されたことによって製品が一旦出荷された場合であっても、当該製品に生じている初期不良等によって当該製品が返品されるような事態が生じる場合がある。このような場合には、返品された製品(以下、戻入品と表記)を金型でプレス加工する際に生じた音の波形を含む時系列信号から検出された第2動作区間信号(以下、戻入品の第2動作区間信号と表記)を考慮して学習済みモデル(更新前モデル)を更新するようにしてもよい。なお、第2動作区間格納部41には第2動作区間信号が格納(蓄積)されているが、監視対象20であるプレス機がプレス加工した戻入品(に付加されている加工番号)と当該戻入品の第2動作区間信号とは、第2動作区間格納部41において対応づけて管理されているものとする。
【0144】
以下、
図13を参照して、戻入品の第2動作区間信号に基づく学習済みモデルの更新処理について説明する。
【0145】
図13においては、状態監視装置10において監視対象20(プレス機)の動作状態が「正常」であると判定されて出荷された製品(以下、正常品と表記)及び監視対象20の動作状態が「異常」であると判定されて出荷されなかった製品(以下、異常品と表記)の分布を概念的に表している。なお、
図13に示されている異常閾値303は、学習済みモデルを用いて正常品及び異常品を判定するための値(境界)を表している。
【0146】
ここで、戻入品301aは、
図13の上段に示す異常閾値303に基づいて監視対象20の動作状態が「正常」と判定されることによって一旦出荷されるが、その後、初期不良等によって返品された製品である。この場合、学習済みモデル(更新前モデル)は、第2動作区間格納部41に格納されている戻入品301aの第2動作区間信号(出荷時稼働音)を除外し、他の正常品301の第2動作区間信号を追加学習する。これによれば、戻入品を除外することで「正常」のヒストグラムの分布の分散が小さくなり、異常閾値303を調整することで、
図13の下段に示すように、戻入品301a(の異常度)が異常閾値303未満とならないような新たな学習済みモデル(つまり、更新後モデル)を生成することができる。このような構成によれば、正常品301の分散を小さくすることによりマージンをもって閾値を設定しやすくすることができるため、単に異常閾値を調整するよりも監視対象20の動作状態の判定精度を向上させることが可能となる。
【0147】
なお、
図13においては正常のみのデータで学習する教師なし学習によって学習済みモデルを更新する場合について説明したが、正常のデータに加えて少量の異常のデータを用いた学習(ここではこれ以降、一部教師あり学習と表記する)によって学習済みモデルを更新するようにしてもよい。すなわち、上記した
図13においては戻入品301aの第2動作区間信号(出荷時稼働音)を学習から除外するものとして説明したが、戻入品301aの第2動作区間信号(出荷時稼働音)に一定の傾向が観測できる場合は、当該戻入品301aの第2動作区間信号を追加学習に用いるようにしてもよい。この場合には、
図14に示すように戻入品301aを正常品から離すように学習を行うことで当該戻入品301aの異常度を大きくできる。なお、一部教師あり学習には、異常品の場合は正常品から距離を離すように損失関数を工夫する手法または(deep) metric learningと称される手法を用いてもよい。
【0148】
なお、
図11に示すステップS31においてはモデル更新タイミングについていくつかの例を用いて説明したが、上記したような戻入品の第2動作区間信号に基づく学習済みモデルの更新処理が実行される場合には、戻入品の数が規定の数に達した時点でモデル更新タイミングであると判定するようにしてもよい。
【0149】
本実施形態においては第2動作区間信号を検出するために用いられるテンプレート及び監視対象20の動作状態を判定するために用いられる学習済みモデルを更新する構成について説明したが、本実施形態に係る状態監視装置10は、テンプレート及び学習済みモデルの少なくとも一方を更新する構成であってもよい。
【0150】
また、本実施形態においては、監視対象20の動作状態に関する信号を計測するための第1センサがマイクロフォンであるものとして説明したが、第1センサは、マイクロフォン以外であってもよい。マイクロフォン以外の第1センサとしては、例えば加速度センサ、振動センサ及びAE(Acoustic Emission)センサ等を用いることができる。この場合、例えばプレス機がプレス加工する際に生じる加速度、振動及びAEを計測することができる。
【0151】
更に、監視対象20の種類によっては、第1センサは、例えばドップラーセンサまたは測距センサであってもよい。第1センサとしてドップラーセンサを用いる場合、当該ドップラーセンサから監視対象20に向けて電波を放射し、当該監視対象20からの反射波を当該ドップラーセンサにおいて検出することにより、当該監視対象20の位置または動きを計測することができる。また、第1センサとして測距センサを用いる場合、例えば光または超音波等を用いて、当該測距センサと監視対象20との間の距離(すなわち、監視対象20の位置または動き)を計測することができる。
【0152】
なお、ここで説明した第1センサは一例であり、第1センサは例えば監視対象20が動作する際に生じる音、振動、光及び電波のうちの少なくとも1つ(の信号)を計測するものであればよい。また、上記したように様々なセンサを第1センサとして用いることが可能であるが、いずれのセンサを第1センサとして用いるかは監視対象20(の種類)に応じて適宜選択されればよい。
【0153】
更に、本実施形態においては、監視対象20の動作の開始を表す動作タイミング情報に相当する信号を計測するための第2センサが測距センサであるものとして説明したが、第2センサは、加速度センサであってもよい。この場合、動作タイミング情報取得部12は、加速度センサによって計測される加速度に応じて監視対象20の姿勢または動きに関する動作タイミング情報を取得することができる。
【0154】
また、第2センサは、ドップラーセンサまたは測距センサであってもよい。第2センサとしてドップラーセンサを用いる場合、動作タイミング情報取得部12は、当該ドップラーセンサによって計測される監視対象20の位置または動きに関する動作タイミング情報を取得することができる。また、第2センサとして測距センサを用いる場合、当該測距センサによって計測される当該測距センサと監視対象20との間の距離に関する動作タイミング情報を取得することができる。
【0155】
また、本実施形態においては、動作タイミング情報を取得するために第2センサを用いるものとして説明したが、動作タイミング情報は監視対象20の動作の開始を表すものであればよい。このため、例えば監視対象20が所定のプログラムにより動作を制御されている場合には、当該監視対象20の動作を制御するための信号を動作タイミング情報として取得する構成であってもよい。
【0156】
なお、本実施形態においては状態監視装置10が例えば製造工場の生産ラインにおけるプレス機においてプレス加工される製品の出荷検査に用いられるものとして説明したが、当該状態監視装置10に含まれるテンプレート格納部16に格納されているテンプレート及びモデル格納部17に格納されている学習済みモデルは、出荷後の製品の定期検査を行う他の装置等と共有する(つまり、テンプレート及び学習済みモデルを製造工場以外の場所で利用する)ようにしてもよい。これによれば、監視対象20に対するより長期的な状態監視を実現することができる。
【0157】
また、本実施形態において説明した監視対象20の異常度は当該監視対象20の劣化度と考えることも可能である。この場合、上記した製品の定期検査の結果(監視対象20の劣化度)は、当該製品の査定(つまり、価格の算出)等に利用されても構わない。
【0158】
また、上記したプレス機においてプレス加工される製品が複数の構成要素(部品)で構成されているような場合には、当該構成要素毎に劣化度を算出し、当該構成要素毎に算出された劣化度を総合的に勘案した劣化度(異常度)を算出する構成としてもよい。
【0159】
なお、上記した本実施形態においては、監視対象20が製造工場の生産ラインにおいて用いられるプレス機であるものとして主に説明したが、当該監視対象20は、例えばファンやモータなどの回転機、切削機、電動機、変速発動機等の他の装置であってもよい。更に、監視対象20は、上記した製造構造、プラント、建設現場、教育機関、医療機関または住宅設備等に設けられた装置以外であってもよく、例えば屋外、屋内及び社内等の空間であってもよいし、例えば人物及び動物等の生体であってもよい。
【0160】
本実施形態においては、監視対象20(装置)の動作が開始するタイミングで時系列信号(第1及び第2動作区間信号)を検出して当該監視対象20の動作状態を判定するものとして説明したが、監視対象20が空間である場合には、例えば当該空間における環境が変化したタイミングで時系列信号を検出して、当該環境の状態等を判定することができる。また、監視対象20が生体である場合には、当該生体が所定の動作を行うタイミングで例えばカメラ映像や心電センサにより脈波形や心電波形等の時系列信号を検出して当該生体の状態を判定することができる。
【0161】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。前述した第1実施形態においては状態監視装置が監視対象の動作状態を判定するものとして説明したが、本実施形態は、監視対象の動作状態及び当該監視対象の動作に用いられる当該監視対象の構成要素(ハードウェア部品)の状態を判定する点で、当該第1実施形態とは異なる。
【0162】
具体的には、監視対象が例えば製造工場の生産ラインにおいて製品を金型でプレス加工するプレス機であるものとすると、本実施形態に係る状態監視装置は、当該プレス機(プレス加工)の動作状態(つまり、加工異常)と、当該プレス加工に用いられる金型の状態(つまり、金型異常)とを判定する構成を有する。
【0163】
なお、本実施形態に係る状態監視装置等の機能構成については、前述した第1実施形態と同様であるので、適宜、
図1を用いて説明する。
【0164】
以下、
図15を参照して、本実施形態に係る状態監視装置10及びサーバ装置40の動作の概要について説明する。なお、前述した第1実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略し、ここでは第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0165】
まず、前述した
図3に示すステップS1~S6の処理が実行された場合、状態監視装置10に含まれる第2動作区間検出部14は、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートを用いて第2動作区間信号を検出する(ステップS41)。
【0166】
ここで、本実施形態において、モデル格納部17には監視対象20の動作状態を判定するための学習済みモデルA(第1学習済みモデル)及び監視対象20の構成要素の状態を判定するための学習済みモデルB(第2学習済みモデル)がそれぞれ格納されているものとする。
【0167】
この場合、状態監視装置10に含まれる動作状態判定部15は、ステップS41において検出された第2動作区間信号をモデル格納部17に格納されている学習済みモデルAに入力し、当該学習済みモデルAから出力された出力信号を得ることによって、監視対象20の異常度を算出する(ステップS42)。
【0168】
ステップS42の処理が実行されると、動作状態判定部15は、当該ステップS42において算出された異常度が異常閾値以上であるか否かに基づいて、監視対象20の動作状態を判定する(ステップS43)。ステップS43における判定結果(監視対象20の動作状態)は、情報処理装置30に出力される。
【0169】
なお、ステップS42及びS43の処理は前述した
図3に示すステップS7において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0170】
上記した監視対象20(プレス機)の動作状態を判定する処理(つまり、ステップS42及びS43の処理)は、前述した第1実施形態において説明したように、監視対象20であるプレス機が製品をプレス加工する度(つまり、第2動作区間信号が検出される度)に実行される。
【0171】
一方、監視対象20の構成要素(金型)は耐久性があるため、当該構成要素の状態に関しては、プレス加工毎に判定する必要はない。このため、監視対象20の構成要素の状態を判定する処理は予め定められた期間毎(例えば、1日毎)に実行されるものとする。
【0172】
具体的には、例えば1日毎に監視対象20の構成要素の状態を判定する場合、動作状態判定部15は、ステップS41において1日の間に検出された複数の第2動作区間信号を取得し、当該複数の第2動作区間信号の各々をモデル格納部17に格納されている学習済みモデルBに入力する。動作状態判定部15は、学習済みモデルBから第2動作区間信号毎に出力された出力信号を得ることによって、監視対象20の構成要素(ここでは、プレス加工に用いられる金型)の異常度を算出する(ステップS44)。このステップS44においては、1日の間に検出された複数の第2動作区間信号の各々に対応する複数の異常度が算出される。なお、異常度の算出処理については上記したステップS42と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0173】
次に、動作状態判定部15は、ステップS44において算出された複数の異常度の平均値(総和平均)を算出する(ステップS45)。
【0174】
ステップS45の処理が実行されると、動作状態判定部15は、当該ステップS45において算出された異常度の平均値が異常閾値以上であるか否かに基づいて、監視対象20の構成要素の状態を判定する(ステップS46)。ステップS45における判定結果は(監視対象20の構成要素の状態)は、情報処理装置30に出力される。なお、ステップS46の処理は上記したステップS43の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0175】
ここで、ステップS41において検出された第2動作区間信号は、前述した第1実施形態において説明したように、サーバ装置40に含まれる第2動作区間格納部41に格納(蓄積)される。
【0176】
本実施形態においては、このように第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号を用いてモデル格納部17に格納されている学習済みモデルAを更新する(ステップS47)。このステップS47においては、前述した
図11に示すステップS32~S34の処理が実行されるものとする。
【0177】
なお、上記したように学習済みモデルAは監視対象20(プレス機)の動作状態を判定するために用いられるが、当該監視対象20の動作状態は上記したようにプレス機が製品をプレス加工する度に判定される。この場合、製品をプレスする機構は回数を重ねることで変化(経年劣化)を受けやすく、また、プレスする機構に対するメンテナンスが定期的にまたは状況に応じて行われることでプレス機自体が変化する。このため、このような監視対象20の動作状態を判定するために用いられる学習済みモデルAは高い頻度で更新することが好ましい。よって、本実施形態における学習済みモデルAの更新処理(ステップS47の処理)は、例えば日単位で(つまり、1日に1回のタイミングで)実行されるものとする。なお、ステップS47の処理が実行される時間間隔(タイミング)は予め設定されていればよい。
【0178】
ここでは、学習済みモデルAを更新する場合について説明したが、学習済みモデルBについても同様に、第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号を用いて更新される(ステップS48)。このステップS48においては、上記した学習済みモデルAの場合と同様に、
図11に示すステップS32~S34の処理が実行されるものとする。
【0179】
なお、学習済みモデルBは監視対象20の構成要素(金型)の状態を判定するために用いられるが、金型自体に経年劣化が生じるには長期間かかる場合が多く、1か月に1回の定期メンテナンスを行う等、メンテナンスの頻度が少ない。また、監視対象20の構成要素の状態は上記した監視対象20の動作状態よりも低い頻度で(例えば、1日毎に)判定されるため、このような監視対象20の構成要素の状態を判定するために用いられる学習済みモデルBは、学習済みモデルAほど高い頻度で更新する必要はない。このため、本実施形態における学習済みモデルBの更新処理(ステップS48の処理)は、例えば年単位で(つまり、1年に1回のタイミングで)実行されるものとする。なお、ステップS48の処理が実行される時間間隔(タイミング)は予め設定されていればよい。
【0180】
すなわち、本実施形態における学習モデルの更新タイミングは、監視対象20の更新のタイミングまたは当該監視対象20に用いられる部品の交換のタイミング等に応じて定められていてもよい。
【0181】
ここでは詳しい説明については省略するが、第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号は、テンプレート格納部16に格納されているテンプレートを更新するために用いることも可能である(ステップS49)。なお、ステップS49においては、前述した
図9に示す処理が実行されればよい。
【0182】
上記したように本実施形態においては、第1時間間隔で更新される学習済みモデルAを用いて監視対象20の動作状態を判定し、第2時間間隔で更新される学習済みモデルBを用いて監視対象20の構成要素の状態を判定する。上記したように例えば監視対象20がプレス機であり、当該監視対象20の構成要素が当該プレス機におけるプレス加工に用いられる金型であるような場合には、学習済みモデルBを更新する第2時間間隔は学習済みモデルAを更新する第1時間間隔よりも長く設定される。すなわち、本実施形態においては、監視対象20の動作状態を判定するために用いられる学習済みモデルAと当該監視対象20の構成要素の状態を判定するために用いられる学習済みモデルBとが異なる時間間隔で更新される構成により、例えば日単位で更新される学習済みモデルAを用いた監視対象20の動作状態に対する監視と年単位で更新される学習済みモデルBを用いた監視対象20の構成要素の状態に対する監視とを両立するとともに、それぞれの経年劣化に応じた状態監視を実現することが可能となる。
【0183】
なお、本実施形態においてはモデル格納部17に学習済みモデルA及び学習済みモデルBが格納されているものとして説明したが、例えば状態監視装置10の運用が開始される時点ではモデル格納部17には1つの学習済みモデル(初期モデル)のみが格納されていてもよい。この場合、モデル格納部17に格納されている初期モデルを第1時間間隔で更新した学習済みモデル(更新後モデル)を学習済みモデルAとして用い、モデル格納部17に格納されている初期モデルを第2時間間隔で更新した学習済みモデル(更新後モデル)を学習済みモデルBとして用いればよい。
【0184】
ここで、
図15においては異常度の平均値に基づいて監視対象20の構成要素の状態を判定するものとして説明したが、
図16に示すように、ステップS51として、例えば当該構成要素の余寿命を推定する処理(以下、余寿命推定処理と表記)を更に実行する構成とすることも可能である。
【0185】
なお、余寿命推定処理は、ステップS46の処理が実行された結果、監視対象20の第2動作状態が「正常」であると判定された場合に実行されるものとする。
図16には示されていないが、監視対象20の構成要素の状態が「異常」であると判定された場合には、余寿命推定処理(ステップS51の処理)は実行されず、当該判定結果が情報処理装置30に出力されればよい。
【0186】
以下、余寿命推定処理について具体的に説明する。なお、余寿命推定処理は状態監視装置10に含まれる動作状態判定部15によって実行される。この余寿命推定処理において、上記したステップS45において算出される異常度(平均値)は監視対象20の構成要素の劣化度として用いる。
【0187】
まず、余寿命推定処理においては、ステップS45において算出された異常度(つまり、学習済みモデルBを用いて算出された異常度)に基づいて劣化曲線を生成する。具体的には、過去に算出された異常度を含む各異常度と当該異常度が算出された時点での監視対象20の稼働時間との対応関係から劣化曲線を生成する。なお、監視対象20の稼働時間は、状態監視装置10内で管理されていればよいが、例えば外部システムから入力されてもよいし、監視対象20に取り付けられている例えば第1センサが動作している時間を計測することによって生成されてもよい。更に、監視対象20の稼働時間は、第2動作区間格納部41に格納された第2動作区間信号に対応づけられている日時(第2動作区間信号が検出された日時)等に基づいて取得されてもよい。
【0188】
ここで、
図17は、余寿命推定処理において生成される劣化曲線の一例を示す。
図17に示す劣化曲線401は、上記した各異常度と当該異常度が算出された時点での監視対象20の稼働時間とをプロットすることによって推定される将来の監視対象20の稼働時間に対する異常度の推移(の予測)を表している。なお、このような劣化曲線401は、例えば異常度と監視対象20の稼働時間とのプロットに対して関数フィッティングを行うことによって生成される。
【0189】
なお、関数フィッティングにおいては、多項式曲線、指数関数、円錐曲線、三角関数等の種々の曲線を仮定し、各々の運用において最適な曲線と関数における係数を決定するものとする。また、全てのプロットを1つの関数でフィッティングするのではなく、部分的に異なる関数でフィッティングするようにしてもよい。具体的には、ある時点までは直線を表す関数でフィッティングし、当該時点以降は指数関数でフィッティングするようなことが可能である。
【0190】
余寿命推定処理においては、上記したように生成された劣化曲線401の傾きまたは傾きの変化率を算出し、当該算出された傾きまたは傾きの変化率が所定値を超える劣化曲線401上の点を故障点(故障が発生するタイミング)として推定する。これによれば、劣化曲線401に基づいて故障点に対応する監視対象20の稼働時間(故障稼働時間)を特定することができるため、当該故障稼働時間から監視対象20の現在の稼働時間を減算した時間を監視対象20の構成要素の余寿命として算出することができる。
【0191】
上記した余寿命推定処理が実行されることによって算出された監視対象20の構成要素の余寿命は、状態監視装置10から情報処理装置30に出力される。これによれば、管理者は、監視対象20の構成要素の状態が「正常」である場合であっても、当該構成要素の余寿命を把握することができる。
【0192】
ここでは、監視対象20の構成要素の余寿命を算出する場合について説明したが、
図16に示すステップS43の処理の後に、監視対象20自体の余寿命を推定する処理を実行しても構わない。
【0193】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、リアルタイムに監視対象の動作状態を判定することが可能な状態監視装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【0194】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0195】
10…状態監視装置、11…時系列信号取得部、12…動作タイミング情報取得部、13…第1動作区間検出部、14…第2動作区間検出部、15…動作状態判定部、16…テンプレート格納部、17…モデル格納部、20…監視対象、30…情報処理装置、40…サーバ装置、41…第2動作区間格納部、42…テンプレート更新部、43…モデル更新部、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…主メモリ、104…通信デバイス。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する第1取得手段と、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する第2取得手段と、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する第1検出手段と、
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する第1格納手段と、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出する第2検出手段と、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する判定手段と
を具備し、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新され、
前記第2センサは、測距センサであり、
前記第2取得手段は、前記測距センサによって計測された距離が予め定められた値以上になった場合に前記動作タイミング情報を取得する
状態監視装置。
【請求項2】
前記テンプレートは、予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号の平均波形を含む請求項1記載の状態監視装置。
【請求項3】
前記テンプレートは、定期的に更新され、
前記予め定められた期間に検出された複数の第2動作区間信号は、前記テンプレートが前回更新された後に検出された第2動作区間信号を含む
請求項2記載の状態監視装置。
【請求項4】
前記テンプレートは、当該テンプレートと、当該テンプレートとの類似度に基づいて検出された第2動作区間信号との差分に基づいて判別されるタイミングで更新される請求項1~3のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項5】
前記監視対象が正常な状態にあるときに検出された第2動作区間信号を学習することによって生成された学習済みモデルを格納する第2格納手段を更に具備し、
前記判定手段は、前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記学習済みモデルは、前記監視対象の動作状態が正常であると判定された場合に前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号に基づいて更新される
請求項1~4のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項6】
前記学習済みモデルは、予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号に基づいて更新される請求項5記載の状態監視装置。
【請求項7】
前記学習済みモデルは、定期的に更新され、
前記予め定められた期間内に検出された複数の第2動作区間信号は、前記学習済みモデルが前回更新された後に検出された第2動作区間信号を含む
請求項6記載の状態監視装置。
【請求項8】
前記判定手段は、前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて異常度を算出し、当該異常度に基づいて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記学習済みモデルは、前記算出された異常度の分布の変化に基づいて判別されるタイミングで更新される
請求項5~7のいずれか一項に記載の状態監視装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、第1時間間隔で更新される第1学習済みモデル及び第2時間間隔で更新される第2学習済みモデルを含み、
前記判定手段は、
前記第1学習済みモデルを用いて前記監視対象の動作状態を判定し、
前記第2学習済みモデルを用いて前記監視対象の動作に用いられる当該監視対象の構成要素の状態を判定し、
前記第2時間間隔は、前記第1時間間隔よりも長い
請求項5記載の状態監視装置。
【請求項10】
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する第1取得手段と、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する第2取得手段と、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する第1検出手段と、
前記第1動作区間信号の波形の特徴に基づいて、前記第1動作区間信号から第2動作区間信号を検出する第2検出手段と、
前記監視対象が正常な状態にあるときに検出された第2動作区間信号を学習することによって生成された学習済みモデルを予め格納する格納手段と、
前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号を入力信号として前記学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力される出力信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する判定手段と
を具備し、
前記学習済みモデルは、前記監視対象の動作状態が正常であると判定された場合に前記第2検出手段によって検出された第2動作区間信号に基づいて更新され、
前記第2センサは、測距センサであり、
前記第2取得手段は、前記測距センサによって計測された距離が予め定められた値以上になった場合に前記動作タイミング情報を取得する
状態監視装置。
【請求項11】
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する格納手段を備える状態監視装置が実行する方法であって、
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得するステップと、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得するステップと、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出するステップと、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出するステップと、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定するステップと
を具備し、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新され、
前記第2センサは、測距センサであり、
前記動作タイミング情報を取得するステップは、前記測距センサによって計測された距離が予め定められた値以上になった場合に前記動作タイミング情報を取得するステップを含む
方法。
【請求項12】
第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する格納手段を備える状態監視装置のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得するステップと、
前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得するステップと、
前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出するステップと、
前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出するステップと、
前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定するステップと
を実行させ、
前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新され、
前記第2センサは、測距センサであり、
前記動作タイミング情報を取得するステップは、前記測距センサによって計測された距離が予め定められた値以上になった場合に前記動作タイミング情報を取得するステップを含む
プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
実施形態に係る状態監視装置は、第1取得手段と、第2取得手段と、第1検出手段と、第1格納手段と、第2検出手段と、判定手段とを具備する。前記第1取得手段は、監視対象の動作状態に関する時系列信号を第1センサから取得する。前記第2取得手段は、前記第1センサとは異なる第2センサによって計測される物理量の変化に基づいて、前記監視対象の動作の開始を表す動作タイミング情報を取得する。前記第1検出手段は、前記動作タイミング情報に基づいて、前記時系列信号から第1動作区間信号を検出する。前記格納手段は、第2動作区間信号として検出されるべき時系列信号に関するテンプレートを予め格納する。前記第2検出手段は、前記第1動作区間信号のうち、前記テンプレートとの類似度に基づいて特定される区間の時系列信号を第2動作区間信号として検出する。前記判定手段は、前記第2動作区間信号に基づいて前記監視対象の動作状態を判定する。前記テンプレートは、前記検出された第2動作区間信号に基づいて更新される。前記第2センサは、測距センサである。前記第2取得手段は、前記測距センサによって計測された距離が予め定められた値以上になった場合に前記動作タイミング情報を取得する。