(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166584
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】免疫細胞捕捉デバイスおよびその製造および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61L 31/06 20060101AFI20231114BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231114BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20231114BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20231114BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231114BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231114BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231114BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231114BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231114BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231114BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231114BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231114BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231114BHJP
A61P 33/00 20060101ALI20231114BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20231114BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20231114BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20231114BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20231114BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20231114BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20231114BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20231114BHJP
C07K 14/535 20060101ALN20231114BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20231114BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20231114BHJP
A61K 39/02 20060101ALN20231114BHJP
A61K 39/12 20060101ALN20231114BHJP
【FI】
A61L31/06
C12M1/00 A
C12N5/078
C12Q1/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P3/10
A61P37/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P1/04
A61P31/04
A61P31/12
A61P33/00
A61P31/10
A61K35/17
A61L31/16
A61K35/15
A61L31/14
C12N15/117 Z
C07K14/47
C07K14/535
C07K14/705
A61K39/00 G
A61K39/00 H
A61K39/00 K
A61K39/02
A61K39/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023151662
(22)【出願日】2023-09-19
(62)【分割の表示】P 2021000075の分割
【原出願日】2016-04-08
(31)【優先権主張番号】62/146,205
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】オマール アブデル-ラーマン アリ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ. ムーニー
(57)【要約】
【課題】 免疫細胞捕捉デバイスおよびその製造および使用方法の提供。
【解決手段】本明細書に記載する実施形態は、希少細胞または対象の体内に低頻度で存在する細胞、例えば、抗原特異的細胞または疾患特異的細胞を識別および収集するためのデバイスを提供する。より具体的には、デバイスは免疫細胞の捕捉に有用であり、デバイスは、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場、複数の抗原、および免疫細胞動員剤を含有し、複数の抗原および免疫細胞動員剤がデバイス内に免疫細胞を誘引し、そして捕捉する。そのようなデバイスを含有する医薬組成物、キットおよびパッケージも提供する。さらなる実施形態は、デバイス、組成物およびキット/パッケージを製造する方法に関する。さらなる実施形態は、自己免疫疾患またはがんなどの疾患の診断または治療においてデバイス、組成物および/またはキットを使用する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2015年4月10日に出願された米国仮出願番号第62/146,205号に基づく優先権を主張しており、この仮出願の全体の内容は、参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
免疫系の細胞は、自己免疫疾患および新生物疾患の状況下での異種抗原と自己抗原の区別に中心的役割を果す。胸腺(中枢性)寛容のプロセスは、これらの二つの疾患状態間の恒常性のバランスを付与する基礎を免疫細胞に与える。一端では、高親和性自己抗原特異的T細胞が系から排除され、その結果、自己免疫が妨げられる。他端では、自己抗原を全く認識できない細胞がまた、排除され、これにより腫瘍細胞が確実に抑制される。この複雑なプロセスの結果、中等度の親和性で自己抗原を認識するT細胞のみが残され、増殖することを許されることになる。末梢寛容のこの発生は、潜在的に自己反応性のリンパ球を抑制することの中心である。なぜなら、非炎症性条件下で組織抗原に曝露される再循環リンパ球は、通常、寛容なアネルギー状態であるからである。しかし、感染および組織損傷によって惹起されるものなどの危険な刺激の存在下では、寛容性と自己免疫のバランスが壊されることがある。逆に、自己反応性細胞が免疫レパートリーから枯渇されると、免疫系は、レベルまたはパターンが変化した自己抗原を発現する腫瘍を認識することができないことがある。
【0003】
多くの自己免疫疾患は自己反応性T細胞応答によって媒介されることが今では認知されている。例えば、1型糖尿病に関して、自己反応性T細胞は、膵ベータ細胞の破壊に関係づけられている。同様に、多発性硬化症の病態生理は、多くの場合、神経細胞の自己反応性T細胞媒介標的化およびアポトーシスを特徴とする。しかし、自己免疫疾患の適切な診断および識別は困難を伴う。なぜなら、それらは、多くの検査室検査(通常、完全血球計算、包括的代謝パネル、急性相反応物質、免疫学的研究、血清学、フローサイトメトリー、サイトカイン分析、およびHLAタイピングを含む)を行う必要があることが多いからである。これらの検査は、厄介であり、実施するための費用が高い。
【0004】
細胞レベルで、免疫細胞核型分析に基づく自己免疫障害の診断は、組織破壊部位からの機能性T細胞にアクセスできないため同様に問題が多い。多くの疾患において、自己反応性細胞は、特異的免疫細胞の検出が技術的に困難であるような低い頻度(1:100,000細胞)で存在する。加えて、多くの場合、自己反応性細胞集団は、必ずしも疾患特異的でない。疾患特異的T細胞が単離された場合でさえ、それらの機能的能力に影響を与えずにそれらを凍結したり培養したりすることができないので、診断または治療用途でのそれらの使用は限定されている。
【0005】
同様に、がんに関して、既存の治療戦略は、宿主から抽出される抗原特異的T細胞の養子移入を一般に含む。そのような場合、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を腫瘍生検材料または末梢血から抽出し、抗原特異性またはホーミング能力を加えるように操作し、ex vivoで増殖させ、患者に注射して腫瘍細胞を標的にする。しかし、血液中のまたは罹病部位におけるこれらの細胞の量は、低頻度で理想的機能性を欠くものであることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、自己免疫障害およびがんを診断するために、ならびに自己免疫障害、がんおよび感染性疾患などのヒト疾患の治療のために分析することができる免疫細胞の単離を可能にする組成物および方法の未だ対処されていない需要がある。下で詳細に説明する本発明の実施形態は、これらの需要に対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、希少細胞または体内に低頻度で存在する細胞を識別および収集する問題の解決策を提供する。本明細書に記載する特定の実施形態は、そのような細胞の収集に有用である収集デバイス、細胞捕捉デバイスに関する。デバイスは、複数の抗原および任意選択で動員剤を含有するか、またはそれらでコーティングされている足場組成物を含み、それによってこのデバイスは免疫細胞などの標的細胞を誘引すること、そのような標的細胞に接着すること、およびそのような標的細胞を捕捉または隔離することができる。デバイスは、そのデバイス内に存在する抗原、動員剤または他の分子との直接的または間接的相互作用を含む様々な方法によって、これらの機能を果す。デバイスが使用される用途に依存して、デバイスは、それ自体の足場の物理的または化学的特性によって標的細胞の捕捉および生存を制御する。例えば、足場組成物は鑑別透過性であり、したがって足場のある特定の物理的領域内でしか細胞を通過させない。足場組成物の透過性は、例えば、より大きいまたはより小さい細孔経、密度、ポリマー架橋、剛性、靱性、延性または粘弾性のために材料を選択または設計することによって制御される。足場組成物は、物理的チャネルまたは通路を含有することができ、そこを通って標的細胞は、デバイスと相互作用し、そして/またはデバイスの特定の区画もしくは領域内に移動する。区画化を助長するために、足場組成物は、任意選択で、各々が異なる透過性を有する区画または層に組織化され、その結果、細胞が選別または濾過されて、細胞のある特定の亜集団のみにアクセスすることが可能になる。デバイス内の標的細胞集団の隔離はまた、足場組成物の分解、脱水もしくは再水和、酸素付加、化学的変化もしくはpH変化、または進行中の自己アセンブリによって制御することもできる。標的細胞、例えば免疫細胞は、それらの捕捉後、デバイス内に存在する刺激分子、サイトカインおよび他の補因子を利用してそのデバイス内で成長または増殖されうる。一部の実施形態では、デバイスに別様に侵入した非標的細胞は、ネガティブ選択剤を使用して拒否または除去されうる。
【0008】
本発明のデバイス内に捕捉される細胞は、主として免疫細胞である。ある特定の実施形態では、本発明はT細胞トラップに関する。他の実施形態では、本発明は、B細胞トラップに関する。さらに他の実施形態では、本発明は、トラップの組合せ、例えば、T細胞トラップとB細胞トラップの組合せに関する。本明細書に記載するトラップを、抗原提示細胞(APC)、例えば、自己反応性APCなどを捕捉するように構成することもできる。捕捉されうる自己反応性APCの例としては、例えば、樹状細胞(DC)、マクロファージ、またはこれらの組合せが挙げられる。他の実施形態では、複数のトラップ、例えば、リンパ球とAPCの両方の捕捉用に構成されているトラップを利用することができる。例えば、抗原特異的細胞または疾患特異的細胞、例えば、T細胞、樹状細胞(DC)またはマクロファージを、分析、再プログラミングまたは枯渇のために、別々にまたは一緒に捕捉することができる。捕捉された免疫細胞、例えば、リンパ球およびAPCは、疾患診断または免疫治療のための標的を識別および特徴付けるために、任意選択で、回収され、分析される。捕捉された細胞は、治療に使用されることになる組成物または製剤を開発するために再プログラムまたは増殖されることもある。
【0009】
したがって、一態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。抗原は、ポリマー足場上に吸収されていることもあり、またはポリマー足場によって封入されていることもある。
【0010】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に、複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を、複数の免疫細胞と結合することによって、誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0011】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、免疫細胞捕捉デバイスが生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、免疫細胞を殺滅または排除する作用物質を含有しない、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0012】
さらに別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、免疫細胞動員剤をさらに含む、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。免疫細胞動員剤は、例えば、T細胞動員剤、樹状細胞動員剤、もしくはマクロファージ動員剤、またはこれらの組合せでありうる。詳細には、免疫細胞動員剤は、ナチュラルキラー(NK)細胞動員剤、CD3+T細胞動員剤、CD4+T細胞動員剤、CD8+T細胞動員剤、CD8+T細胞動員剤、制御性T細胞(Treg)動員剤、またはこれらの組合せでありうる。関連態様では、免疫細胞動員剤は、増殖因子、サイトカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、インターフェロン、リンホカイン、もしくはケモカイン、またはそれらの断片、またはそれらの組合せでありうる。詳細には、免疫細胞動員剤は、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10 IL-12およびIL-17からなる群から選択されるインターロイキンでありうる。
【0013】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、デバイスへの免疫細胞の侵入を増進する作用物質を含む、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0014】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製がん抗原を含み、これらの複数のがん抗原が、デバイス内に複数のがん抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、がん抗原は、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン(midkin)、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rアルファ、IL13Rアルファ2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf 112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、Nestin、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード化核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0015】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製非自己抗原を含み、これらの複数の非自己抗原が、デバイス内に複数の非自己抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、非自己抗原は、ウイルス、細菌、原生動物、寄生虫および真菌からなる群から選択される病原体に由来する病原性抗原でありうる。さらにこの態様によると、病原体は、Mycobacterium bovis、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス、ポックスウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、流行性耳下腺炎の原因となるウイルス、狂犬病の原因となるウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、SARS CoV、MERS CoV、エンテロウイルス、Borrelia属種、Bacillus anthracis、Borrelia burgdorferi、Bordetella pertussis、Camphylobacter jejuni、Chlamydia属種、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Clostridium属種、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium diphtheriae、Coxiella属種、Enterococcus属種、Erlichia属種、Escherichia coli、Francisella tularensis、Haemophilus属種、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Lactobacillus属種、Legionella属種、Legionella pneumophila、Leptospirosis interrogans、Listeria属種、Listeria monocytogenes、Mycobacterium属種、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Mycoplasma属種、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria属種、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Pneumococcus属種、Pseudomonas属種、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella属種、Salmonella typhi、Salmonella enterica、Rickettsia属種、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Shigella属種、Staphylococcus属種、Staphylococcus aureus、Streptococcus属種、Streptococccus pnuemoniae、Streptococcus pyrogenes、Streptococcus mutans、Treponema属種、Treponema pallidum、Vibrio属種、Vibrio cholerae、Yersinia pestis、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Aspergillus属種、Aspergillus、funigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus calvatus、Candida属種、Candida albicans、Candida tropicalis、Cryptococcus属種、Cryptococcus neoformans、Entamoeba histolytica、Histoplasma capsulatum、Leishmania属種(speceis)、Nocardia asteroides、Plasmodium falciparum、Stachybotrys chartarum、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Toxoplasma属種、Trypanosoma brucei、Schistosoma mansoni、Fusarium属種、Trichophyton属種、Plasmodium属種、Toxoplasma属種、Entamoeba属種、Babesia属種、Trypanosoma属種、Leshmania属種、Pneumocystis属種、Pneumocystis jirovecii、Trichomonas属種、Giardia属種、Schisostoma属種、Cryptosporidium属種、Plasmodium属種、Entamoeba属種、Naegleria属種、Acanthamoeba属種、Balamuthia属種、Toxoplasma属種、Giardia属種、Trichomonas属種、Leishmania属種、およびTrypanosoma属種からなる群から選択することができる。
【0016】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製自己抗原を含み、これらの複数の自己抗原が、デバイス内に複数の自己抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、自己抗原は、自己免疫応答の対象である細胞の可溶化物に由来しうる。さらにこの態様によると、抗原は、膵ベータ細胞抗原、神経細胞抗原、骨もしくは関節関連自己免疫疾患関連抗原、または胃腸疾患関連抗原でありうる。なお、さらに、この態様によると、抗原は、I型糖尿病に関連する抗原、多発性硬化症に関連する抗原、関節リウマチに関連する抗原、炎症性腸疾患に関連する抗原、またはクローン病に関連する抗原でありうる。
【0017】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場、複数の精製抗原、および別の作用物質を含み、別の作用物質が、RGDペプチド、CpGオリゴヌクレオチドもしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)サイトカイン、またはそれらの断片、またはそれらの組合せであり、複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。代替態様では、本発明は、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含むが、RGDペプチドも、CpGオリゴヌクレオチドも、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)サイトカインも、それらの断片も、それらの組合せも含有しないデバイスを提供する。
【0018】
別の態様では、本発明は、他の免疫細胞と比較してT細胞を優先的に誘引する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、デバイスは、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原は、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、デバイスは、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL-3、CCL-4、CCL-5(RANTES)、CCL-17、CCL-22、CXCL12およびXCL1からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む。なお、さらに、この態様によると、ケモカインは、
(a)CCL1(ヒトホモログについての受託番号:NM_002981.2;GI:523498696およびマウスホモログについての受託番号:NM 011329;GI:257153404)、
(b)CCL2(MCP-1)(ヒトホモログについての受託番号:NM_002982.3;GI:56119169およびマウスホモログについての受託番号:NM_011333.3;GI:141803162)、
(c)CCL3(ヒトホモログについての受託番号:NM_002983.2;GI:121582465およびマウスホモログについての受託番号:NM 011337.2;GI:126432552)、
(d)CCL4(ヒトホモログについての受託番号:NM 002984.3;GI:748585189 NM 013652.2およびマウスホモログについての受託番号:NM_013652.2;GI:126366031)、
(e)CCL5(RANTES)(ヒトホモログについての受託番号:NM_002985.2;GI:22538813およびマウスホモログについての受託番号:NM_013653.3;GI:164698427)、
(f)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびNM_011332.3;およびマウスホモログについての受託番号:NM_011332.3;GI:225735578)、
(g)CCL19(ヒトホモログについての受託番号:NM_006274.2;GI:22165424およびマウスホモログについての受託番号:NM 011888.2;GI:10518345)、
(h)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)、
(i)CXCL12(ヒトホモログについての受託番号:NM_199168.3;GI:291045298およびマウスホモログについての受託番号:NM_001277990.1;GI:489406389)、および
(j)XCL1(ヒトホモログについての受託番号:NM_002995.2;GI:312434026およびマウスホモログについての受託番号:NM 008510.1;GI:6678711)
からなる群から選択することができる。
【0019】
別の態様では、本発明は、他の免疫細胞と比較して樹状細胞(DC)を優先的に誘引する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、デバイスは、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原は、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、デバイスは、CCL2、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17、およびCCL22からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む。なお、さらに、この態様によると、ケモカインは、:
(a)CCL2(ヒトホモログについての受託番号:NM 002982.3;GI:56119169およびマウスホモログについての受託番号:NM 011333.3;GI:141803162)、
(b)CCL3(ヒトホモログについての受託番号:NM_002983.2;GI:121582465およびマウスホモログについての受託番号:NM_011337.2;GI:126432552)、
(c)CCL5(バリアント1)(ヒトホモログについての受託番号:NM 002985.2;GI:22538813およびマウスホモログについての受託番号:NM_013653.3;GI:164698427)、
(d)CCL7(ヒトホモログについての受託番号:NM_006273.3;GI:428673540およびマウスホモログについての受託番号:NM_013654.3;GI:226958664)、
(e)CCL8(ヒトホモログについての受託番号:NM_005623.2;GI:22538815およびマウスホモログについての受託番号:NM 021443.3;GI:255708468)、
(f)CCL13(ヒトホモログについての受託番号:NM_005408.2;GI:22538799およびマウスホモログについての受託番号:NM_011333.3;GI:141803162)、
(g)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびマウスホモログについての受託番号:NM 011332.3;GI:225735578)、および
(h)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)
からなる群から選択することができる。
【0020】
別の態様では、本発明は、他の免疫細胞と比較してT細胞と樹状細胞(DC)の両方を優先的に誘引する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、デバイスは、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原は、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、デバイスは、CCL17およびCCL22からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む。なお、さらに、この態様によると、ケモカインは、
(a)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびマウスホモログについての受託番号:NM 011332.3;GI:225735578)、および
(b)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)
からなる群から選択することができる。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場、複数の精製抗原、および複数の接着受容体を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。この態様によると、接着受容体は、LFA-1、MAdCAM-1、VCAM-1、CD28およびCTLA-4、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せからなる群から選択される、T細胞の接着受容体でありうる。なお、さらに、この態様によると、接着受容体は、
(a)LFA(ヒトホモログについての受託番号:NM 000211.4;GI:735367774およびマウスホモログについての受託番号:M60778.1;GI:198785)、
(b)MAdCAM-1(ヒトホモログについての受託番号:NM 130760.2 GI:109633021およびマウスホモログについての受託番号:D50434.2;GI:60391311)、
(c)VCAM-1(ヒトホモログについての受託番号:NM 001078.3;GI:315434269およびマウスホモログについての受託番号:X67783.1;GI:298116)、
(d)CD28(ヒトホモログについての受託番号:NM 006139.3;GI:340545506およびマウスホモログについての受託番号:BC064058.1;GI:39850201)、および
(e)CTLA-4(ヒトホモログについての受託番号:NM 005214.4;GI:339276048およびマウスホモログについての受託番号:U90270.1;GI:4099836)
からなる群から選択することができる。
【0022】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、約10μg~約2.0mgの抗原を含む、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、足場の乾燥重量1グラム当り約0.1μg~約400μgの抗原を含む、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉し、免疫細胞捕捉デバイスが、約40%~約90%の多孔度を有する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、約10μM~約500μMの直径を有する生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスであって、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、アルギネートもしくはその誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸(HA)、アガロース、多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアリルアミン(PAM)、ポリアクリレート、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー(polyoxamer)、ポリウロン酸、およびポリビニルピロリドンもしくはそのコポリマー、またはそのグラフトポリマーからなる群から選択される化合物を有する生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、免疫細胞捕捉デバイスを提供する。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、免疫細胞捕捉デバイスと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する、医薬組成物を提供する。この態様によると、医薬組成物を静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与または筋肉内投与用に製剤化することができる。なお、さらに、この態様によると、医薬組成物をマイクロニードルパッチとして皮下投与用に製剤化することができる。
【0028】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象の疾患を処置する方法を提供し、この方法は、免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場と、疾患に特異的である複数の精製抗原とを含み、これらの複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップ、および複数の免疫細胞を対象に投与することによって対象の疾患を処置するステップを含む。この態様によると、対象からのデバイスを外植することによって免疫細胞を収集することができる。なお、さらに、この態様によると、この治療方法は、複数の免疫細胞を増殖させることによって、疾患に特異的である免疫細胞の増殖された集団を生じさせるステップ、および免疫細胞の増殖された集団を対象に投与するステップを含みうる。この態様に従って処置されることになる対象は、好ましくはヒト対象である。なお、さらに、この態様による方法は、デバイスを対象に皮下または静脈内投与するステップを含みうる。治療的態様の一実施形態のもとで、複数の免疫細胞は、デバイスが対象に投与された約1日~約60日後に収集される。
【0029】
関連態様では、本発明は、それを必要とする対象のがんを処置する方法を提供し、この方法は、免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場およびがんに特異的である複数の精製抗原を含み、これらの複数のがん抗原が、がん抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、捕捉するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップ、および複数の免疫細胞を対象に投与することによって対象のがんを処置するステップを含む。この態様によると、この方法は、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺の前新生物性病変、結腸がん、黒色腫および膀胱がんからなる群から選択されるがんを処置するために使用することができる。この態様に従って処置されることになる対象は、好ましくはヒト対象である。
【0030】
さらに別の関連態様では、本発明は、それを必要とする対象の自己免疫疾患を処置する方法を提供し、この方法は、免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および自己免疫疾患に特異的である複数の精製抗原を含み、自己免疫疾患に特異的な複数の抗原が、抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップ、および複数の免疫細胞を対象に投与することによって対象の自己免疫疾患を処置するステップを含む。この態様によると、方法は、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患およびクローン病からなる群から選択される自己免疫疾患を処置するために使用することができる。なおこの態様に従って、捕捉される免疫細胞は、制御性T細胞またはサプレッサーT細胞を含みうる。この態様に従って処置されることになる対象は、好ましくはヒト対象である。
【0031】
さらに別の関連態様では、本発明は、それを必要とする対象の病原性疾患を処置する方法を提供し、この方法は、免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および病原性疾患に特異的である複数の精製抗原を含み、これらの複数の抗原が、病原性疾患に特異的な抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップ、および複数の免疫細胞を対象に投与することによって対象の病原性疾患を処置するステップを含む。この態様によると、病原体は、ウイルス、細菌、原生動物、寄生虫および真菌からなる群から選択される。この態様に従って処置されることになる対象は、好ましくはヒト対象である。
【0032】
別の態様では、本発明は、抗原に特異的である免疫細胞を得るための方法を提供する。この方法は、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場と複数の精製抗原とを含む免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、複数の抗原が、デバイス内の複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉するステップ、およびデバイス内に捕捉された免疫細胞を回収することによって、抗原に特異的な免疫細胞を得るステップを含む。デバイスを対象から外植して免疫細胞を収集してもよい。この態様に従って免疫細胞を得ることになる対象は、好ましくはヒト対象である。この態様によると、デバイスを対象に皮下または静脈内投与することができる。なおこの態様によると、デバイスを対象に投与した約1日~約60日後に複数の免疫細胞を収集することができる。
【0033】
別の態様では、本発明は、対象が自己免疫疾患を有するかどうかを決定する方法を提供する。この方法は、免疫細胞捕捉デバイスを対象に投与するステップであって、デバイスが、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場および自己免疫疾患に特異的である複数の精製抗原を含み、複数の抗原が、デバイス内に複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉するステップ、デバイス内に捕捉された免疫細胞を収集するステップであって、免疫細胞が自己免疫疾患に特異的であるステップ、およびデバイス内に捕捉された自己免疫疾患に特異的な免疫細胞の数を決定することによって、対象が自己免疫疾患を有するかどうかを決定するステップを含む。デバイスを対象から外植して免疫細胞を収集してもよい。この態様に従って免疫細胞を得ることになる対象は、好ましくはヒト対象である。この態様によると、デバイスを対象に皮下または静脈内投与することができる。なおこの態様によると、デバイスを対象に投与した約1日~約60日後に複数の免疫細胞を収集することができる。
【0034】
さらに別の態様では、本発明は、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場と複数の精製抗原とを含む免疫細胞捕捉デバイスを製造する方法であって、複数の抗原が、デバイス内の複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、かつ捕捉する方法を提供する。この方法は、複数の精製抗原を生理学的に適合性のポリマーとともにインキュベートしてポリマー-抗原混合物を生じさせるステップ、ポリマー-抗原混合物を凍結し、凍結乾燥させ、かつポロゲンと混合するステップ、混合物を圧縮成形してディスクを生成するステップ;ディスクを高圧CO2環境に付し、圧力を急速に低下させて、ポリマーを膨張させ、かつ融合させて、連通型足場構造にするステップ、およびこの構造を水に浸漬することによって足場構造からポロゲンを浸出させて多孔性物品を生じさせることによって、デバイスを製造するステップを含む。この態様によると、ポリマーは、ラクチドとグリコリドのコポリマー(PLG)またはアルギネートを含みうる。なお、さらに、この態様によると、ポロゲンは、NaClまたはスクロースである。
【0035】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の好ましい実施形態についての以下の説明から、および特許請求の範囲から明らかになる。引用する参考文献は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0036】
本明細書に記載する実施形態の様々な特徴および利点は、添付の図面に照らして考えるとよりよく分かるので、十分に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1Aは、PLGベースのT細胞トラップの表面マイクロコンピュータ断層撮影画像および断面SEM像を示す写真である。
図1Bは、OVA-T細胞トラップからのモデル抗原としてのオボアルブミン(OVA)タンパク質の累積放出を示す折れ線グラフである。
図1Cは、マウスの背部の皮下に14日間埋め込んだトラップの部位におけるMIP-1aおよびRANTESの局所サイトカイン濃度を示す棒グラフである。BおよびCにおける値は、平均および標準偏差(n=5)を表す。
図1A~Cは、モデルT細胞トラップの特徴付けを示す。
【
図2】
図2Aは、対照(対照)およびオボアルブミン(OVA:抗原)担持トラップから単離された細胞の一連の蛍光標識細胞選別(FACS)プロットである。細胞を抗CD8およびOVAクラスIテトラマーで染色した。ゲートは、OVA特異的、CD8(+)T細胞を表し、数は、ポジティブ細胞の百分率を提供する。トラップをOT-1マウスに14日間埋め込んだ。
図2Bは、トラップ(OVAトラップ)および対照(対照)に蓄積するCD8(+)OVAテトラマー(+)T細胞の動態を示す折れ線グラフである。足場をOT-1マウスに7、14および28週間埋め込んだ。
図2Cは、一連のFACSプロットである。0日目(DO)にCFA-OVAを接種したマウスに、OVAを含有するトラップ(OVAトラップ)および黒色腫細胞可溶化物(黒色腫トラップ)を7日目(D7)に埋め込み、その後、21日目(D21)にそれらのトラップをアッセイした。CD3(+)T細胞を単離し、OVAおよび黒色腫トラップから選別し、抗CD8、Trp2テトラマーおよびOVAテトラマーで染色した。FACSプロットのゲートは、OVAまたはTrp2テトラマー染色がポジティブのCD8(+)T細胞を表し、数は、示されているCD8 T細胞の百分率を表す。
図2Dは、OVAトラップおよび黒色腫トラップから単離したOVA特異的およびTrp2特異的T細胞の数を示す棒グラフである。BおよびDにおける値は、平均および標準偏差(n=5)を表す。
**P<0:01。
図2A~Dは、トラップが抗原指向性ホーミングによるT細胞の判別に有用であることを実証する。
【
図3】
図3Aは、膵ベータ細胞可溶化物抗原を担持したトラップからのタンパク質の累積放出を示す折れ線グラフである。
図3Bは、T細胞トラップが埋め込まれている間のNODマウスの膵島内へのT細胞浸潤度を示す概略図である。NODマウスが9、12および15週齢になったらトラップを埋め込み、2週間後にアッセイした。
図3Cは、11、14および17週齢NODマウスから単離した、対照から回収したCD3(+)T細胞のレベル(青色塗りつぶし)および3細胞トラップから回収したCD3(+)T細胞のレベル(白抜き赤線)を表示する、一連のFACSヒストグラムである。
図3Dは、11、14および17週齢のNODマウスから外植した、対照(対照)および細胞担持トラップ(トラップ)から単離したCD3(+)細胞の総数を示す、折れ線グラフである。
図3Eは、CD3(+)CD4(+)およびCD3(+)CD8(+)T細胞であるトラップおよび対照から単離した全細胞の百分率を示す棒グラフである。A、DおよびEにおける値は、平均および標準偏差(n=5)を表す。
**P<0:01。これらの図は、非肥満糖尿病マウスにおける糖尿病進行中のT細胞捕捉を実証する。
【
図4】
図4Aは、抗原担持トラップおよび対照から回収したT細胞を用いて培養したベータ細胞標的のIL-2 ELISPOTアッセイ結果の写真である。11、14および17週齢のNODマウスへの埋め込みの14日後にT細胞を回収した。各ウェルは、単一のマウスから回収したT細胞からの反応を表す。
図4Bは、トラップから抽出したT細胞によって生成されたIL-2ポジティブスポットの数(1600個のT細胞に正規化した)と脾臓からのものとの比較を示す折れ線グラフである。抗原担持トラップ(トラップ)、対照足場(対照)、トラップを埋め込んだマウスの脾臓(脾臓-トラップ)、または対照足場を埋め込んだマウスの脾臓(脾臓-対照)からのT細胞とともに培養したベータ細胞が入っているウェルにおけるスポットを現像し、定量した。MHCクラスI H2(Kd)(3細胞I(D))またはMHCクラスII I-A(g7)(3細胞G7)のどちらかを過剰発現するようにベータ細胞標的を改変した。T細胞(T細胞のみ)およびベータ細胞(3細胞)を単独で対照としてアッセイした。Bにおける値は、平均および標準偏差を表す。これらの図は、トラップがベータ細胞特異的T細胞の濃縮に有効であることを実証する。
【
図5】
図5Aは、ブランク(対照)およびオボアルブミン(抗原)担持トラップへのCD3(+)T細胞侵入を示すヒストグラムである。ブランク(対照)およびオボアルブミン(抗原)担持トラップに侵入するCD8(+)OVAテトラマー(+)T細胞を示すドットプロット。ゲートおよび数は、トラップから単離したOVA(+)細胞傷害性T細胞のパーセントを表す。
図5Bは、ブランク(対照)およびオボアルブミン担持(トラップ)アルギネートクリオゲル中に捕捉されたCD3(+)T細胞の数を示す棒グラフである。
図5Cは、ブランク(対照)および抗原担持(トラップ)アルギネートクリオゲル中に捕捉されたCD8(+)OVA(+)T細胞の数を示す棒グラフである。BおよびCにおける値は、平均および標準偏差(n=4)を表す。
*P<0.05。
図5A~Cに示されているデータは、抗原ルアーを含有するアルギネートクリオゲルトラップへのT細胞捕捉および保持成功を実証する。抗原のみを有するトラップで十分であり、アジュバントとしてのGM-CSFおよびCpGの抗原への追加はT細胞侵入を増進する。
【
図6】
図6A~Dは、in vivoでのがん特異的T細胞の動員を示す。
図6Aは、(OT-1マウスに14日間埋め込んだ)対照(対照)およびオボアルブミン(OVA;抗原)担持トラップから単離した細胞のFACSプロットを示す。細胞を抗CD8およびOVAクラスIテトラマーで染色した。ゲートは、OVA特異的、CD8(+)T細胞を表し、数は、ポジティブ細胞の百分率を提供する。
図6Bは、トラップ(OVAトラップ)および対照(対照)に蓄積するCD8(+)OVAテトラマー(+)T細胞の動態を示す。足場をOT-1マウスに7、14および28週間埋め込んだ。
図6Cは、CD3(+)T細胞のFACS分析を示す。0日目(D0)にCFA-OVAをマウスに接種し、OVAを含有するトラップ(OVAトラップ)および黒色腫細胞可溶化物を含有するトラップ(黒色腫トラップ)を7日目(D7)に埋め込んだ。その後、21日目(D21)にそれらのトラップをアッセイした。CD3(+)T細胞を単離し、OVAおよび黒色腫トラップから選別し、抗CD8、Trp2テトラマーおよびOVAテトラマーで染色した。FACSプロットのゲートは、OVAまたはTrp2テトラマー染色がポジティブのCD8(+)T細胞を表し、数は、示されているようなCD8 T細胞の百分率を表す。
図6Dは、OVAトラップおよび黒色腫トラップから単離したOVA特異的およびTrp2特異的T細胞の数を示す。BおよびDにおける値は、平均および標準偏差(n=5)を表す。
**P<0:01。
【
図7】
図7は、トラップからの細胞の移入後の糖尿病発生率の動態を示す。15週齢NODマウスにブランクPLG足場(対照)またはベータ細胞可溶化物を含有する足場(トラップ)のどちらかを埋め込んだ。17週の時点で、対照およびトラップ足場から抽出した2×10
6の細胞とともに未処置NODマウスからの脾細胞(脾臓)をNOD-SCIDマウスに静脈内注射した。マウスの血漿グルコースレベルを週1回モニターし、250mg/dLより高いグルコースレベルを連続2週間記録したらマウスを糖尿病と見なした(n=8または9)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明は、希少細胞または体内に低頻度で存在する細胞を識別および収集する問題の解決策を提供する。本明細書に記載する特定の実施形態は、そのような細胞の収集に有用である収集デバイス、例えば細胞トラップに関する。デバイスは、複数の抗原および任意選択で動員剤を取り込むか、またはそれらでコーティングされている足場組成物を含み、それによってこのデバイスは標的細胞を誘引すること、標的細胞に接着すること、および標的細胞を捕捉または隔離することができる。デバイスは、そのデバイス内に存在する抗原、動員剤または他の分子との直接的または間接的相互作用を含む様々な方法によって、これらの機能を果す。デバイスが使用される用途に依存して、デバイスは、それ自体の足場の物理的または化学的特性によって標的細胞の捕捉および生存を制御する。例えば、足場組成物は鑑別透過性であり、したがって足場のある特定の物理的領域内でしか細胞を通過させない。足場組成物の透過性は、例えば、より大きいまたはより小さい細孔経、密度、ポリマー架橋、剛性、靱性、延性または粘弾性のために材料を選択または設計することによって制御される。足場組成物は、物理的チャネルまたは通路を含有することができ、そこを通って標的細胞は、デバイスと相互作用するか、そして/またはデバイスの特定の区画もしくは領域内に移動する。区画化を助長するために、足場組成物は、任意選択で、各々が異なる透過性を有する区画または層に組織化され、その結果、細胞が選別または濾過されて、細胞のある特定の亜集団のみにアクセスすることが可能になる。デバイス内の標的細胞集団の隔離はまた、足場組成物の分解、脱水もしくは再水和、酸素付加、化学もしくはpH変化、または進行中の自己組織化によって制御することができる。標的細胞は、それらの捕捉後、デバイス内に存在する刺激分子、サイトカインおよび他の補因子を利用してそのデバイス内で増殖または増殖されうる。他の事例では、デバイスに別様に侵入した非標的細胞は、ネガティブ選択剤を使用して拒絶または拒否されうる。
【0039】
本発明のデバイス内に捕捉される細胞は、主として免疫細胞である。ある特定の実施形態では、本発明はT細胞トラップに関する。他の実施形態では、本発明は、B細胞トラップに関する。さらに他の実施形態では、本発明は、トラップの組合せ、例えば、T細胞トラップとB細胞トラップの組合せに関する。本明細書に記載するトラップを、抗原提示細胞(APC)、例えば、自己反応性APCなどを捕捉するように構成することもできる。捕捉されうる自己反応性APCの例としては、例えば、樹状細胞(DC)、マクロファージ、またはこれらの組合せが挙げられる。他の実施形態では、複数のトラップ、例えば、リンパ球とAPCの両方の捕捉用に構成されているトラップを利用することができる。例えば、抗原特異的細胞または疾患特異的細胞、例えば、T細胞、樹状細胞(DC)またはマクロファージを、分析、再プログラミングまたは枯渇のために、別々にまたは一緒に捕捉することができる。捕捉された免疫細胞、例えば、リンパ球およびAPCは、疾患診断または免疫治療のための標的を識別および特徴付けるために、任意選択で、回収され、分析される。捕捉された細胞は、治療に使用されることになる組成物または製剤を開発するために再プログラムまたは増殖されることもある。
【0040】
本発明をさらに下記のサブセクションでより詳細に説明する。
I.免疫細胞を動員および捕捉するためのデバイス
【0041】
一態様では、本発明は、細胞捕捉デバイスを提供する。デバイスは、生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場、複数の抗原および任意選択で、免疫細胞を誘引する1つまたは複数の動員剤を含有する。
【0042】
一実施形態では、デバイスは、生理学的に適合性のおよび任意選択で生分解性のポリマーで構成されている足場を含有する。デバイスに利用可能であるポリマーの例は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許出願公開第2011/0020216号を参照されたく、この特許文献の全内容は参照により本明細書に組み込まれている。そのようなポリマーの代表例としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリカーボネート、ポリシアノアクリレート、ポリウレタン、ポリアクリレート、およびこれらのブレンドまたはコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。生分解性足場は、生分解性材料、例えば、コラーゲン、アルギネート、多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、またはポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、または絹を含みうる。一実施形態では、足場または足場デバイスは、完全または部分生分解性である生体適合性ポリマーマトリックスを含みうる。ヒドロゲルは、好適なポリマーマトリックス材料の一例である。ヒドロゲルを形成することができる材料の例としては、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、天然および合成多糖類、ポリアミノ酸、例えばポリペプチド、特にポリ(リシン)、ポリエステル、例えばポリヒドロキシブチレートおよびポリ-ε-カプロラクトン、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、例えばポリ(4-アミノメチルスチレン)、プルロニックポリオール、ポロキサマー(polyoxamer)、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)、ならびに上記のもののコポリマー(グラフトコポリマーを含む)が挙げられる。別の実施形態では、足場は、様々な合成ポリマーおよび天然起源のポリマー、例えば、これらに限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、アガロース、およびラミニンリッチゲル、から作製することができる。生分解性構造の場合、その組成物は、物理的もしくは化学的作用、例えば、水和、熱もしくはイオン交換のレベルによって、または細胞の作用、例えば、近隣もしくは在住細胞による酵素、ペプチドもしくは他の成分の同化作用によって分解される。稠度は、軟質/柔軟(例えばゲル)からガラス状、ゴム状、脆性、靭性、弾性、剛性まで様々である。構造は、細孔を含有し、ナノ多孔性、ミクロ多孔性もしくはマクロ多孔性であり、細孔のパターンは、任意選択で、均質であるか、不均質であるか、整列しているか、反復しているか、またはランダムである。
【0043】
一実施形態では、ポリマーは、ヒドロゲル形成剤、例えば、グリコリドおよび/またはアルギネートである。アルギネートは、分子量、分解速度および足場形成方法を調節することによって特定の用途用に配合することができる、汎用多糖類系ポリマーである。カップリング反応を使用して、細胞接着配列RGDなどの生体活性エピトープをポリマー骨格に共有結合させることができる。グリコリド/アルギネートポリマーは、様々な足場タイプにすることができる。注射可能ヒドロゲルは、カルシウムイオンなどの架橋剤の添加によって低MWアルギネート溶液から形成することができ、その一方でマクロ多孔性足場は、高MWアルギネートディスクの凍結乾燥によって形成される。足場の配合の違いが足場分解動態を左右する。アルギネート足場からのモルフォゲンまたは他の生体活性物質の放出速度は、足場の配合によって、空間的および時間的に管理された様式でモルフォゲンをもたらすように調節される。この放出調節は、全身性副作用および複数回の注射の必要をなくすばかりでなく、インプラント部位の宿主細胞および足場に播種された移植細胞を活性化する微小環境を作り出すために使用することもできる。
【0044】
足場組成物を作製する方法は、当技術分野において公知である。例えば、Martinsenら(Biotech.& Bioeng.、33巻(1989年)79~89頁)、Matthewら(Biomaterials、16巻(1995年)265~274頁)、Atalaら(JUrology、152巻(1994年)641~643頁)、およびSmidsrod(TIBTECH 8巻(1990年)71~78頁)を参照されたく、前記参考文献の開示は、それら全体が参照によって本明細書に組み込まれている。
【0045】
例示的デバイスは、比較的低分子量のグリコリドまたはアルギネート、好ましくは、溶解後、例えばアルギネートまたは多糖類が1000~80,000ダルトンの分子量に低減されるヒトによるクリアランスの腎域値であるサイズの、グリコリドまたはアルギネートを利用する。好ましくは、分子量は、1000~60,000ダルトン、特に好ましくは1000~50,000ダルトンである。高グルロネート含有量のアルギネート材料の使用も有用である。グルロネート単位は、マンヌロネート単位とは対照的に、ポリマーをゲル化するための二価カチオンによるイオン架橋用の部位を提供するからである。例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,642,363号には、アルギネートなどの多糖類を含有するポリマーを製造および使用する方法が開示されている。
【0046】
本発明の足場は多孔性であることができ、したがって、足場は、抗原提示を持続することができ、免疫細胞を誘引し、かつ捕捉することができる。一実施形態では、デバイスは、細孔が10nm~500μmの直径を有する多孔性足場を含有する。これらの実施形態では、本発明は、細孔が約10nm未満(例えば、約0.5nm、約1nm、約3nm、約5nm、約7nm、約9nm、およびそれ超)の直径を有する、ナノ多孔性足場を含むデバイスを利用する。別の実施形態では、足場はミクロ多孔性であり、細孔は約100nm~20μmの範囲(例えば、約200nm、約500nm、約700nm、約1μm、約2μm、約5μm、約7μm、約10μm、約12μm、約15μm、約17μm、約20μmまたはそれ超)の直径を有する。別の実施形態では、足場はマクロ多孔性であり、細孔の直径は、約20μm~500μm(例えば、30μm、50μm、70μm、100μm、200μm、300μm、400μm、またはそれ超)である。特に、細孔の直径は、約100μmより大きく、好ましくは約400μmより大きい。例示実施形態では、足場はマクロ多孔性であり、直径約200~500μmの細孔が整列している。
【0047】
所望の細孔経および細孔整列を有するポリマーマトリックスを製造する方法は、当技術分野において、例えば、米国特許出願公開第2011/0020216号および米国特許第6,511,650号において説明されており、前記特許文献中の関係のある開示は参照により本明細書に組み込まれている。
II.抗原
【0048】
本発明のデバイスは、1つまたは複数の抗原を含み、抗原は、天然に存在する化合物、合成によって生産された化合物、または組換え化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、小分子、ハプテン、炭水化物または他の作用物質であってもよく、これらの断片またはそれらの組合せを含む。より具体的には、抗原は、ペプチドもしくはタンパク質またはこれらの免疫学的に活性な断片である。一実施形態において、本明細書に記載する抗原は、精製されている。精製化合物は、目的の化合物を重量(乾燥重量)で少なくとも60%含有する。詳細には、抗原は、少なくとも純度75%、好ましくは少なくとも純度90%、および最も好ましくは少なくとも純度99%である。純度は、任意の適切な標準法によって、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定される。
【0049】
抗原は、自己抗原であってもよく、または非自己抗原であってもよい。
【0050】
非自己抗原の代表例には、例えば、ウイルス、細菌、原生動物、寄生虫および真菌からなる群から選択される病原体に由来する抗原が含まれる。これらの実施形態では、非自己抗原は、Mycobacterium bovis、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス、ポックスウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、風疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、流行性耳下腺炎の原因となるウイルス、狂犬病の原因となるウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、SARS CoV、MERS CoV、エンテロウイルス、Borrelia属種、Bacillus anthracis、Borrelia burgdorferi、Bordetella pertussis、Camphylobacter jejuni、Chlamydia属種、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Clostridium属種、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium diphtheriae、Coxiella属種、Enterococcus属種、Erlichia属種、Escherichia coli、Francisella tularensis、Haemophilus属種、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Lactobacillus属種、Legionella属種、Legionella pneumophila、Leptospirosis interrogans、Listeria属種、Listeria monocytogenes、Mycobacterium属種、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Mycoplasma属種、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria属種、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Pneumococcus属種、Pseudomonas属種、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella属種、Salmonella typhi、Salmonella enterica、Rickettsia属種、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Shigella属種、Staphylococcus属種、Staphylococcus aureus、Streptococcus属種、Streptococccus pnuemoniae、Streptococcus pyrogenes、Streptococcus mutans、Treponema属種、Treponema pallidum、Vibrio属種、Vibrio cholerae、Yersinia pestis、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Aspergillus属種、Aspergillus、funigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus calvatus、Candida属種、Candida albicans、Candida tropicalis、Cryptococcus属種、Cryptococcus neoformans、Entamoeba histolytica、Histoplasma capsulatum、Leishmania属種、Nocardia asteroides、Plasmodium falciparum、Stachybotrys chartarum、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Toxoplasma属種、Trypanosoma brucei、Schistosoma mansoni、Fusarium属種、Trichophyton属種、Plasmodium属種、Toxoplasma属種、Entamoeba属種、Babesia属種、Trypanosoma属種、Leshmania属種、Pneumocystis属種、Pneumocystis jirovecii、Trichomonas属種、Giardia属種、Schisostoma属種、Cryptosporidium属種、Plasmodium属種、Entamoeba属種、Naegleria属種、Acanthamoeba属種、Balamuthia属種、Toxoplasma属種、Giardia属種、Trichomonas属種、Leishmania属種、およびTrypanosoma属種に由来しうる。
【0051】
あるいは、デバイスは、任意選択で、疾患または障害に関連づけられるか、または関連している、複数の自己抗原を含有する。好ましくは、自己抗原は、特に、ヒト疾患または障害に関連している。一実施形態では、自己抗原は関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、炎症性腸疾患またはクローン病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、側頭動脈炎などからなる群から選択される自己免疫障害に関連している。1型糖尿病、多発性硬化症、クローン病および関節リウマチなどに関連している、特定のタイプの抗原は、それらの断片を含めて、文献において特徴付けられている。例えば、関節リウマチ関連抗原は、47kDaタンパク質(RA-A47)である。例えば、Hattoriら、J Bone Miner Metab.、18巻(6号):328~34頁(2000年)を参照されたい。クローン病の場合、抗原は、細菌フラジェリンでありうる。Lodesら、J Clin Invest.113巻(9号)1296~306頁(2004年)を参照されたい。同様に、主要ミエリンタンパク質、例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびプロテオリピドタンパク質(PLP)は、多発性硬化症(MS)の過程に重要である可能性が高い。deRosboら、J Clin Invest.92巻(6号):2602~260頁(1993年)を参照されたい。1型糖尿病に関しては、複数の自己抗原、例えば、プレプロインスリン(PPI)、膵島特異的グルコース-6-ホスファターゼ(IGRP)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD65)、インスリノーマ抗原-2(IA-2)、クロモグラニンAおよび熱ショックタンパク質60が関与しうる。Roepら、Cold Spring Harb Perspect Med、2巻(4号)、2012年(PMID: 22474615)を参照されたい。
【0052】
別の実施形態では、自己抗原は、がんと関連している。がん抗原の代表的なタイプとしては、例えば、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rアルファ、IL13Rアルファ2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、Nestin、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード化核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
III.足場組成物と抗原の組合せ
【0053】
共有結合性および非共有結合性相互作用を含む任意の公知方法を使用して、抗原を足場組成物と組み合わせることができる。非共有結合性相互作用のタイプとしては、例えば、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、π効果、疎水性相互作用などが挙げられる。抗原を共有結合性相互作用によって足場組成物に付着または繋留することもできる。足場/表面に抗原を結合させる方法、例えば、表面吸収、物理的固定化、例えば、相変化を使用して足場材料内に物質を捕捉する物理的固定化は、当技術分野において公知である。1つの特異的実施形態では、タンパク質を含有する抗原組成物を、それが水性相または液相中にあるうちに足場組成物と混合し、環境条件(例えば、pH、温度、イオン濃度)を変化させると、その液体がゲル化または凝固することによって抗原を捕捉する。あるいは、アルキル化剤またはアシル化剤による共有結合的カップリングを使用して、規定された高次構造にある足場上での抗原の安定した長期提示をもたらすことができる。ペプチド/タンパク質をポリマーと共有結合によりカップリングさせるための例示的な試薬および方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,001,395号を参照されたく、本発明に関係する前記特許文献の内容は参照により本明細書に組み込まれている。他の実施形態では、抗原を足場に封入する。抗原を好適な足場、例えばPLGAマイクロスフェアに封入する方法は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許第6,913,767号およびWO/1995/011010を参照されたく、本発明に関係する前記特許文献の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0054】
直接的結合または間接的結合によって免疫細胞と相互作用するように抗原を製剤化することができる。直接的結合のタイプには、例えば、抗原と同種受容体、例えばB細胞受容体またはT細胞受容体との会合またはカップリングが含まれる。間接的結合は、1つまたは複数の二次的作用物質または細胞型の介在によって起こりうる。例えば、抗原は、先ずB細胞または抗原提示細胞(APC)と結合し、処理(例えば、分解)され、そして細胞表面の主要組織適合性複合体(MHC)上に提示されることがあり、標的細胞集団、例えばT細胞がそれと結合する。あるいは、抗原は他の介在細胞を動員することがあり、そのような細胞が様々なサイトカイン、増殖因子、ケモカインなどを分泌し、するとそれらが標的免疫細胞集団をデバイスに誘引する。メカニズムが何であれ、述べた成分は、協調して機能して、免疫細胞を本発明のデバイスに動員し、かつ隔離する。
【0055】
抗原は、細胞可溶化物、分画された細胞可溶化物、回収したての細胞、生体液(血液、血清、腹水を含む)、組織抽出物などに由来することがある。一実施形態では、抗原は、所望の免疫細胞、例えばB細胞またはT細胞、が結合する標的細胞の可溶化物に由来する。これらの実施形態では、細胞可溶化物中の抗原を先ず分画し、その後、細胞トラップに担持する。可溶化物は、自己免疫疾患特異的細胞、例えば、I型糖尿病に関連する膵臓ベータ細胞、多発性硬化症に関連する神経細胞、関節リウマチに関連する骨/関節抗原、炎症性腸疾患またはクローン病に関連する抗原に由来することがある。あるいは、可溶化物は、がん細胞、例えば、腫瘍試料もしくは組織培養物から得られる個々の細胞に由来することもあり、または生検材料もしくは組織学的調製物から得られるバルクの腫瘍細胞に由来することもある。
IV.動員剤
【0056】
本発明のデバイスは、1つまたは複数の動員剤も含有することができる。動員剤は、T細胞動員剤、B細胞動員剤、樹状細胞動員剤およびマクロファージ動員剤からなる群から選択される作用物質、またはこれらの組合せでありうる。
【0057】
一実施形態では、デバイスは、T細胞動員剤を含有する。T細胞動員剤の非限定的な例としては、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL-3、CCL-4、CCL-5(RANTES)、CCL-17、CCL-22、CXCL12およびXCL1、またはそれらの断片、それらのバリアント、もしくはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。上述のT細胞動員剤の様々なホモログは、それらの機能的断片、またはそれらのバリアントを含めて、当技術分野において公知である。ホモログの代表例としては、ハエ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、サル、ヒトなどからの関連タンパク質が挙げられる。ホモログは、好ましくは、表1に示すNCBI受託番号を有する上述の動員剤のヒトまたはマウスホモログを含む。
【表1-1】
【表1-2】
【0058】
デバイスは、上述の動員剤、例えば、表1に収載した少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたはそれより多数の動員剤のあらゆる組合せを含有することもできる。関連実施形態では、デバイスは、表1に収載したすべての動員剤を含有する。
【0059】
他の実施形態では、本発明は、樹状細胞もしくはマクロファージまたはこれらの組合せを動員するためのデバイスを提供する。樹状細胞/マクロファージ動員剤の非限定的な例としては、CCL2、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17およびCCL22、またはそれらの機能的断片、それらのバリアント、もしくはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。樹状細胞/マクロファージ動員剤のホモログの代表例としては、ハエ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、サル、ヒトなどからの関連タンパク質が挙げられる。ホモログは、好ましくは、表2に示すNCBI受託番号を有する上述の動員剤のヒトまたはマウスホモログを含む。
【表2-1】
【表2-2】
【0060】
DC/マクロファージ動員のための上述のデバイスは、上述の動員剤、例えば、表2に収載した少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、またはそれより多数の動員剤のあらゆる組合せを含有することができる。関連実施形態では、デバイスは、表2に収載したすべての動員剤を含有する。
【0061】
関連実施形態では、本発明は、B細胞を動員するためのデバイスを提供する。B細胞動員剤の非限定的な例としては、SDF-1、BLC、BCL-2およびBCA-1またはそれらの機能的断片、それらのバリアント、もしくはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。B細胞動員剤のホモログの代表例としては、ハエ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、サル、ヒトなどにおける上述のタンパク質のホモログが挙げられる。ホモログは、好ましくは、表3に示すNCBI受託番号を有する上述の動員剤のヒトまたはマウスホモログを含む。
【表3-1】
【表3-2】
【0062】
B細胞を動員するための上述のデバイスは、上述の動員剤、例えば、表3に収載した少なくとも2つ、少なくとも3つ、もしくは4つすべての動員剤、それらのバリアント、またはそれらの断片のあらゆる組合せを含有することができる。好ましくは、デバイスは、表3に収載したすべての動員剤、またはそれらの断片を含有する。
【0063】
さらなる実施形態は、複数の免疫細胞、例えば、T細胞とDC/マクロファージの組合せ、T細胞とB細胞の組合せ、B細胞とDC/マクロファージの組合せなどを動員することができる作用物質を含有するデバイスに関する。したがって、一実施形態では、本発明は、T細胞と樹状細胞/マクロファージの両方を動員するデバイスであって、表1からの少なくとも1つの作用物質および表2からの少なくとも1つの作用物質から選択される動員剤を含むデバイスを提供する。関連実施形態では、本発明は、B細胞と樹状細胞/マクロファージの両方を動員するデバイスであって、表2からの少なくとも1つの作用物質および表3からの少なくとも1つの作用物質から選択される動員剤を含むデバイスを提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、T細胞とB細胞の両方を動員するデバイスであって、表1からの少なくとも1つの作用物質および表3からの少なくとも1つの作用物質から選択される動員剤を含むデバイスを提供する。
【0064】
免疫細胞の組合せを動員することができるデバイスでは、上述の表からの動員剤の様々な組合せおよび部分的組合せを利用することができる。例えば、T細胞とDC/マクロファージの両方を動員するように計画されたデバイスは、表1からの少なくとも1つの作用物質と表2からの2つの作用物質、表1からの2つの作用物質と表2からの1つの作用物質、表1および2からの2つの作用物質などを含有することがある。同様に、B細胞とDC/マクロファージの両方を動員するように計画されたデバイスは、表2からの少なくとも1つの作用物質と表3からの2つの作用物質、表2からの2つの作用物質と表3からの1つの作用物質、表2および3からの2つの作用物質などを含有することがあり、T細胞とB細胞の両方を動員するように計画されたデバイスは、表1からの少なくとも1つの作用物質と表3からの2つの作用物質、表1からの2つの作用物質と表3からの1つの作用質、表1および3からの2つの作用物質などを含有することがある。したがって、1つの代表的な実施形態では、デバイスは、CCL17、CCL22、そのバリアントもしくはそれらの断片、またはそれらの組合せを含み、T細胞と樹状細胞/マクロファージの組合せの動員に適合している。動員剤のホモログ(その断片またはバリアントを含む)の代表例としては、ハエ、マウス、ラット、ブタ、ウシ、サル、ヒトなどからの関連タンパク質が挙げられる。ホモログは、好ましくは、表2に示すNCBI受託番号を有する上述の動員剤のヒトまたはマウスホモログを含む。
【0065】
デバイス/トラップを、他の造血細胞、例えば血小板、赤血球などと比較して、ある特定のタイプの免疫細胞の組合せ、例えばリンパ球とAPCの組合せ、の優先的に動員に適合させることもできる。そのようなデバイスは、表1、2および3に収載した動員剤のあらゆる組合せを含有することができる。
【0066】
本発明のデバイスは、単一の細胞型または単一の細胞亜型の優先的動員、例えば、T細胞の優先的動員、特に、Treg細胞またはNK細胞のサブセットの優先的動員に適合している。優先的動員は、デバイス内(または動員剤を持っていない対照トラップ内)の他の型の免疫細胞と比較してデバイス内の特定の型の免疫細胞(例えば、T細胞、B細胞、DC/マクロファージ)の1つまたは複数の少なくとも10%増、少なくとも20%増、少なくとも30%増、少なくとも50%増、少なくとも75%増、少なくとも100%増、少なくとも2倍増、少なくとも5倍増、少なくとも8倍増、少なくとも10倍増、またはそれ超増加する蓄積を特徴とする。免疫細胞の組合せ、例えばT細胞とDC/マクロファージの組合せ、の動員に適合しているデバイスでは、動員される細胞の全百分率が、デバイス内(または対照トラップ内)の他の型の免疫細胞より、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも2倍(すなわち200%)、少なくとも5倍、少なくとも8倍、少なくとも10倍、またはそれ超大きい優先的動員を特徴とする。特に、優先的動員は、他の免疫細胞と比較して目的の細胞の数の1~10倍増加を特徴とする。
V.さらなる作用物質
【0067】
本発明の実施形態は、複数のさらなる作用物質を含む、免疫細胞を捕捉するためのデバイスをさらに提供する。そのような実施形態では、さらなる作用物質は、増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せを含みうる。
【0068】
増殖因子/サイトカインの代表例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ウシ胎仔ソマトロピン(foetal Bovine Somatotrophin)(FBS)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝癌由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、T細胞増殖因子(TCGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF-αもしくはTGF-β)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wnt、胎盤増殖因子(PGF)、もしくはそれらの機能的断片、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0069】
インターロイキンの代表的なタイプとしては、IL-1(T細胞、B細胞、NK細胞およびマクロファージを活性化する)、IL-2(B細胞およびNK細胞を活性化する)、IL-3(非リンパ系細胞を刺激する)、IL-4(活性化B細胞、休止T細胞およびマスト細胞の増殖因子)、IL-5(活性化B細胞の分化用)、IL-6(形質細胞およびT細胞の増殖因子)、IL-7(B細胞/前駆T細胞およびNK細胞の増殖因子)、IL-10(マクロファージ、B細胞、マスト細胞、Th1/Th2細胞を活性化する)、IL-12(T細胞およびNK細胞を活性化する)、IL-17(Th細胞を活性化する)が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞の活性を調節する能力を特徴とするインターロイキンの機能的断片も利用することができる。インターロイキン分子の代表的なタイプを、それらのヒトおよび/またはマウスホモログのNCBI受託番号を含めて、表4に提供する。
【表4】
【0070】
任意選択で、デバイスは、シグナル伝達剤としての機能を果すこともできる接着分子を含有することができる。接着シグナル伝達分子の代表例としては、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン、トロンボスポンジン1、ビトロネクチン、エラスチン、テネイシン、アグリカン、アグリン、骨シアロタンパク質、軟骨基質タンパク質、フィブリノーゲン(fibronogen)、フィブリン、フィビュリン、ムチン、エンタクチン、オステオポンチン、プラスミノーゲン、レストリクチン(restrictin)、セルグリシン、SPARC/オステオネクチン、バーシカン、フォン・ヴィルブランド因子、多糖ヘパリン硫酸、コネキシン、コラーゲン、RGD(Arg-Gly-Asp)およびYIGSR(Try-Ile-Gly-Ser-Arg)ペプチドおよび環状ペプチド、グリコサミノグリカン(GAG)、ヒアルロン酸(HA)、コンドロイチン-6-硫酸(condroitin-6-sulfate)、インテグリンリガンド、セレクチン、カドヘリン、および免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、中性細胞接着分子(NCAM)、細胞内接着分子(ICAM)、血管接着分子(VCAM-1)、血小板・内皮細胞接着分子(PECAM-1)、L1、およびCHL1が挙げられる。本発明のデバイスへの標的細胞の結合を調節する能力を特徴とする接着分子の機能的断片も利用することができる。特に、接着分子は、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を含有するペプチドまたは環状ペプチドを含み、RGDは、細胞付着リガンドとして公知であり、様々な天然細胞外マトリックス分子において見いだされる。そのような修飾を有するポリマーマトリックスは、本発明の足場に細胞接着特性を与え、細胞増殖および分化を支持するばかりでなく、哺乳動物細胞系の長期生存を維持する。ポリマーマトリックスとカップリングされうる接着分子は、当業者に一般に公知であり、そして本実施例において説明する合成方法を使用して得られる。例えば、Hiranoら、Advanced Materials、17~25頁(2004年);Hermansonら、Bioconjugate Techniques、152~185頁(1996年);MassiaおよびHubbell、J. Cell Biol.114巻:1089~1100頁(1991年);Mooneyら、J. Cell Phys.151巻:497~505頁(1992年);およびHansenら、Mol.Biol.Cell 5巻:967~975頁(1994年)を参照されたく、前記参考文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0071】
標的細胞型に依存して、標的細胞に特異的である接着シグナル伝達分子を利用することは、好ましいことでありうる。したがって、一実施形態では、デバイスは、T細胞の動員に有用である接着受容体を含有する。他の実施形態では、デバイスは、樹状細胞/マクロファージの動員に有用である接着受容体を含有する。さらに、別の実施形態では、デバイスは、B細胞の動員に有用である接着受容体を含有する。
【0072】
これらの実施形態では、デバイスは、T細胞特異的接着分子、例えば、LFA-1、MAdCAM-1、VCAM-1、CD28およびCTLA-4またはそのバリアント、それらの断片、もしくはそれらの組合せからなる群から選択される受容体を含有することができる。そのようなT細胞特異的接着分子のヒトおよびマウスホモログの代表例を表5に提供する。
【表5】
【0073】
同様に、DC/マクロファージまたはB細胞を動員するためのデバイスを、DC/マクロファージまたはB細胞に特異的な接着分子を含有するように構成することができる。B細胞特異的接着分子の代表例としては、例えば、N-CAM(タイプ2)、ラミニンまたはフィブロネクチンなどが挙げられる。マクロファージまたは樹状細胞に特異的である接着分子の代表例としては、例えば、ICAM-1またはVCAM-1が挙げられる。必要に応じて、上述の表1~5からの動員剤および接着分子のサブセットを含有するようにデバイスを特異的に構成することができる。例えば、T細胞と樹状細胞の両方を動員するためのデバイスを、(ケモカインのリストからの)CCL17とCCL22と(接着分子のリストからの)VCAM-1の組合せを含有するように構成することができる。同様に、Tリンパ球とBリンパ球の両方を動員するためのデバイスを、1つまたは複数のインターロイキンおよび/またはサイトカインが任意選択で組み込まれている様々な動員剤および接着分子を選択的に組み込むことによって構成することができる。
VI.免疫細胞の特異的亜型を動員するためのデバイス
【0074】
本発明のデバイスは、細胞において発現される細胞表面マーカーと特異的に結合する作用物質を使用することによって細胞の1つまたは複数の亜集団の優先的動員用に構成することもできる。例えば、T細胞に関して、デバイスをヘルパーT細胞(TH細胞;CD4+を鑑別的に発現する)、細胞傷害性T細胞(Tc細胞;CD8+を鑑別的に発現する)、メモリーT細胞(Tm細胞;CD45たROを鑑別的に発現する)、サプレッサーT細胞(Ts細胞)、制御性T細胞(Treg;FOXP3+Treg細胞およびFOXP3-Tregとしてさらに特徴づけられる)、ナチュラルキラーT細胞(NK細胞;CD1d+を鑑別的に発現する)、粘膜関連インバリアント(MAIT;MR1を鑑別的に発現する)、ガンマデルタT細胞、(γδT細胞;1本のγ鎖および1本のδ鎖を含有するTCRを含む)の優先的動員に適合させることができる。細胞表面マーカーと結合するそのような作用物質としては、例えば、ハプテン、ペプチド、リガンド、抗体などを挙げることができる。単離物を1つまたは複数の細胞亜型に関して濃縮する他の慣用の技法を、任意選択で、in situまたはex situで使用してもよい。
【0075】
同様に、B細胞に関して、デバイスを、その中で発現される細胞表面マーカーと選択的に結合する作用物質を使用して特異的B細胞亜型の優先的動員用に構成することができる。優先的に捕捉されうるB細胞亜型の代表例としては、形質芽細胞、形質細胞(CD27+/CD138+/CD319+を鑑別的に発現する)、メモリーB細胞(Airoldiら、Clin Cancer Research、2004年10巻;144頁に開示されているマーカーの組合せを鑑別的に発現する)、濾胞(FO)B細胞(高レベルのCD23を発現するがCD1またはCD5についてネガティブである)、辺縁帯(MZ)B細胞(CD21、CD1、CD9についてポジティブ、しかしCD23、CD5およびCD11bについてネガティブ)、B-1細胞(マーカープロファイル、例えば、CD20+CD27+CD43+CD70-を有する)、B-2細胞(FO B細胞およびMZ B細胞に類似)、制御性B(Breg)細胞(例えば、マーカープロファイルCD24+/CD38+を有する)などが挙げられる。
【0076】
デバイスを、抗原提示細胞の様々な亜型を優先的に動員するように適合させることもできる。例えば、樹状細胞に関して、デバイスを、形質細胞様樹状細胞(pDC)と比較して骨髄樹状細胞(mDC、発生頻度が高いmDC-1および発生頻度が低いmDC-2を含む)の動員に適合させることができ、またはその逆もしかりである。マクロファージに関して、デバイスは、M2(すなわち、活性化マクロファージ)と比較してM1(すなわち、「キラー」マクロファージ)の優先的動員に適合させることができ、またはその逆もしかりである。これら2つの違いは、当技術分野において認知されている。例えば、M1亜型は、高レベルのIL-12および低レベルのIL-10を分泌し、逆のことがM2亜型について言える。腫瘍関連マクロファージは、主としてM2表現型のものであり、腫瘍増殖を能動的に促進するようである。
【0077】
デバイスを疾患に特異的である免疫細胞の動員に適合させることもできる。例えば、特定のタイプの自己免疫疾患に特異的である複数のT細胞を動員することができる。したがって、一実施形態では、自己免疫障害の診断に有用であるデバイスを、障害に関係づけられる免疫細胞に特異的である動員剤を含有するように構成することができる。そのような動員剤は、例えば、制御性T細胞(Treg)、サプレッサーT細胞(Ts)またはこれらの組合せに特異的でありうる。関連実施形態では、がんの診断に有用であるデバイスを、がん特異的T細胞型、例えば、細胞傷害性T細胞(Tc)、ナチュラルキラー細胞(NK)またはこれらの組合せを優先的に動員するための動員剤を含有するように構成することができる。
【0078】
ある特定の実施形態では、デバイスは、疾患特異的細胞のパニングに有用である。そのようなデバイスは、例えば、疾患進行を直接促進する細胞を含みうる。多くの自己免疫疾患に関して、疾患は、特異的細胞集団、例えば、T1Dの場合には膵臓のベータ細胞および多発性硬化症の場合には神経細胞の標的化殺滅によって媒介および促進されうる。他の自己免疫疾患の場合、疾患は、特異的エピトープ、例えば、関節リウマチに関してはリウマトイド因子(RF)およびシトルリン化ペプチド(ACPA)ならびにクローン病に関しては腸内細菌叢に存在する抗原などの標的化攻撃によって誘発されうる。細胞の標的化破壊は、一般に、特定の免疫細胞型または亜型に関わる。したがって、細胞標的の性質および特性に基づいて、それらに特異的である免疫細胞を、本発明のデバイスを使用して優先的に捕捉することができる。
【0079】
上述の実施形態では、疾患特異的免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージなどが結合する抗原をデバイスに備えさせる。これらの自己免疫細胞を捕捉することができ、任意選択で、非自己免疫表現型に再プログラムすることができる。T細胞を多能性に再プログラムする方法は、当技術分野において公知である。Nishimuraら、Stem Cell 12巻、114~126頁(2013年);Themeliら、Nature Biotechnology 31巻、928~933頁(2013年)を参照されたい。ある特定の事例では、特に、がん特異的T細胞に関して、再プログラム細胞を、がんを標的とするように若返らせることができる。あるいは、自己免疫疾患に特異的であるT細胞に関して、捕捉細胞を排除(身体から除去)または殺滅することができる。
VII.デバイスを製造する/使用する方法
【0080】
本発明のデバイスは、抗原提示を持続するように設計された多孔性デバイスである。デバイスの代表例を
図1Aおよび1Bに示す。図面に示されているように、細孔によってT細胞侵入および増殖のためのスペースが確保される。多孔性足場を作製する方法は、当技術分野において説明されている。例えば、米国特許出願公開第2011/0020216号、同第2013/0202707号、同第2011/0020216号、および米国特許第8,067,237号を参照されたく、前記特許文献の開示は参照により本明細書に組み込まれている。例えば、(実施例において詳細に説明するような)ガス発泡プロセス(gas forming process)を使用してラクチドとグリコリドのコポリマー(PLG)でPLG細胞トラップを生じさせるようにトラップを作製してもよい。抗原をPLGポリマーに、ポリマーの組成物とその抗原をインキュベートすることによって、物理的に吸着させる。あるいは、標準的な二重エマルジョンを使用して、抗原を封入するPLGマイクロスフェアを製造してもよい。次いで、PLG-抗原スフェアを凍結させ、そして凍結乾燥させ、そしてポロゲンまたは細孔形成剤と混合し、そして圧縮成形する。得られたディスクを高圧CO
2環境の中で放置して平衡させ、そして圧力を急激に低下させることでポリマー粒子を膨張させ、そして融合させて、連通型足場構造にする。ポロゲンを水への浸漬によって足場から浸出させて、多孔度約90%である、抗原を含んだ細胞トラップを得る。多孔度は、慣用の方法によって、例えば、ポロゲンの濃度を変えることによって、および/または他のバイオポリマーを足場剤として使用することによって、変更することができる。得られるデバイス多孔度は、40%~99%、好ましくは50%~90%、特に好ましくは60%~80%またはそれ超である。
デバイス埋め込み/取り出し
【0081】
デバイスは、当技術分野において公知の任意の手段、例えば、静脈内投与、埋め込み、例えば、皮下埋め込み、またはマイクロニードルパッチとしての埋め込み、腹腔内投与、または筋肉内注射によって埋め込むことができる。目的の細胞が多孔性マトリックス中に移動するのに十分である埋め込み期間は、2時間~数ヶ月、例えば、0.5日、1日、2日、5日、7日、14日、25日、30日、35日、38日、45日、50日、60日またはそれ超の日数でありうる。埋め込み期間は、少なくとも1日でもよく、その時間中、体組織への滞留後にデバイスから1×109~1×1010個の細胞が蓄積し、そして/または抽出される。
【0082】
複数のデバイスを対象に埋め込んでもよい。一実施形態では、少なくとも1、少なくとも3、少なくとも10、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも300、少なくとも500、少なくとも1000、またはそれより多くのデバイスを対象に埋め込む。デバイスの適用は、均質である(例えば、各デバイスが同じ抗原を含有する)こともあり、または変動的である(例えば、複数のデバイスが異なる抗原を含有する)こともある。
【0083】
デバイスを細胞の単離、特徴付け、分析および/または増殖/再プログラミングのために身体から取り出す必要はない。一実施形態では、インプラントの部位からデバイスを物理的に取り出すことなく細胞を取り出す。一実施形態では、デバイスの周辺にある細胞、例えば、デバイスの半径約1μm、約2μm、約5μm、約10μm、約20μm、約60μm、約100μm、約300μm、約0.5mm、約1.0mm、約3.0mm、5.0mm、約10mm、50mmなど以内に位置する細胞を取り出すことができ、任意選択で増殖または再プログラムすることができる。細胞を細胞選別技術(FACSもしくはMACS)によって、または分割技術によって、例えばFICOLL勾配を使用して精製して、より均質な細胞集団を得ることもできる。別の実施形態では、デバイス上に付着しているか、またはデバイス内に位置する細胞を、デバイスを取り出すことなく、取り出すことができ、任意選択で増殖または再プログラムすることができる。埋め込まれたデバイスから細胞を取り出す方法は、当技術分野において公知である。そのような方法は、例えば、化学的または酵素的処理を含みうる。例えば、低投薬量での異なる種類の界面活性剤の組合せ、例えば、非イオン性界面活性剤(Triton X-100)と陰イオン性界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)の組合せは、膜を破壊することができ、インプラントから細胞を取り出すのに役立つことができる。あるいは、結合組織酵素、例えば、コラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼを使用して、細胞を分離することができる。トラップを繊細な機械的破壊(例えば、乳鉢(mortor)および乳棒(pistal)、または組織のホモジナイズ)に付して、在住細胞の取り出しを増進することもできる。インプラントと生細胞の後の再定着への干渉を回避するために、組織マトリックス内の一切の残留界面活性剤または酵素を排除するためのさらなるステップを行うことができるだろう。同様のアプローチが、参照により組み込まれている米国特許出願公開第2008/0131966号に記載されている。
【0084】
別の実施形態では、デバイスをインプラントの部位から取り出す。当技術分野において公知の任意の方法によってデバイスを取り出すことができる。取り出しに役立つように、デバイスは、そのデバイスを損傷することなくそのデバイスの機械的取り出しを可能にする短いワイヤまたは小さいリップを有することもある。細胞を回収するためにデバイスを部分的に取り出してもよく、または完全に取り出してもよい。
【0085】
デバイスの取り出し後、捕捉細胞を当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、多孔性マトリックスへの細胞付着を消化することによって回収することができる。これは、例えば、トリプシン含有緩衝液を、デバイスを通して流すことによって果すことができる。その後、捕捉細胞を当技術分野において公知の任意の方法によってデバイスから追い出すことができる。好ましい実施形態では、デバイスは、例えばデバイスを通る陽圧の印加によって裂くことができる膜によって覆われた排出口を有し、それによってデバイスからの捕捉細胞の排出が可能になる。あるいは、細胞が捕捉されている多孔性マトリックスをデバイスから追い出すことができ、その後、当技術分野において公知の任意の方法によって多孔性膜から捕捉細胞を分離することができる。好ましい実施形態では、デバイスは、例えばデバイスを通る陽圧の印加によって裂くことができる膜によって覆われた排出口を有し、それによって細胞が捕捉されている多孔性マトリックスのデバイスからの排出が可能になる。
【0086】
捕捉細胞をデバイスから回収すると、目的の捕捉細胞を他の捕捉細胞から分離することができる。これは、当技術分野において公知の任意の手段、例えば、捕捉細胞と、他の捕捉細胞上に存在するが目的の捕捉細胞上には存在しない表面マーカーに対する結合パートナーを有するマイクロビーズとを併せることによって、行うことができる。他の捕捉細胞が結合しているマイクロビーズを除去すると、目的の捕捉細胞のみが残る。別の実施形態では、捕捉細胞と、目的の捕捉細胞上に存在するが他の捕捉細胞上には存在しない表面マーカーに対する結合パートナーを有するマイクロビーズとを併せることによって、目的の捕捉細胞を他の捕捉細胞から分離することができる。目的の捕捉細胞はマイクロビーズと結合するので目的の捕捉細胞を取り出すことができる。例えば、T細胞表面受容体またはマーカーと特異的に結合するが、B細胞とも、樹状細胞とも、マクロファージとも特異的に結合しない結合パートナーを使用することによって、T細胞を取り出してもよい。
【0087】
あるいは、他の侵入細胞と結合することができるが、目的の細胞と結合することができない結合パートナーであって、マイクロビーズと(共有結合により、または非共有結合により)結合させることができる結合パートナーを使用してもよい。例えば、そのような結合パートナーとしては、アプタマー、または好ましくは、結合部位がそのような侵入細胞の表面に存在するが目的の細胞の表面には存在しない細胞表面マーカーに好ましくは特異的である抗体もしくは抗体断片を挙げることができる。あるいは、目的の細胞に特異的である結合パートナーを使用する逆のアプローチを使用してもよい。例えば、目的の捕捉細胞がマクロファージである場合、好ましいマイクロビーズは、マクロファージ特異的細胞表面受容体に特異的な抗体を有する。当業者は、目的の任意の特定の細胞についての結合パートナーまたはその組合せを処方し得る。
【0088】
アプタマーは、タンパク質または小分子などの特定の標的分子と結合する、一本鎖オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドアナログである。したがって、アプタマーは、抗体のオリゴヌクレオチドアナログである。RNAと一本鎖DNA、またはDNAアナログ、の両方のアプタマーが公知である。事実上いかなる特定の標的とも結合するアプタマーを、SELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment))と呼ばれる半反復プロセスを使用することによって選択することができる。
【0089】
抗体または抗体断片は、ポリクローナル、モノクローナル、または組換え体でもよく、任意の動物、例えば、齧歯動物もしくはヒト、または動物の混合、例えばヒト化マウスのものでもよい。
【0090】
任意のタイプのマイクロビーズを使用して、他の捕捉細胞を結合することができる。例えば、マイクロビーズは、目的の捕捉細胞をペレット化しない遠心条件下でペレット化される重い粒子でありうる。あるいは、マイクロビーズは、目的の捕捉細胞をペレット化する遠心条件下でペレット化されない浮遊性粒子でありうる。好ましい実施形態では、マイクロビーズは、磁性ビーズである。
【0091】
単離された細胞をさらなる分析に付してもよい。そのようなさらなる分析は、細胞の定量、またはmRNAもしくはタンパク質発現の分析を含みうる。例えば、目的の捕捉細胞を定量して、所与の量の組織中の目的の捕捉細胞の数の近似値を求めて、目的の捕捉細胞の数と他の捕捉細胞の量を比較することができる。目的の捕捉細胞は、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、顕微鏡観察によって定量することができる。
【0092】
好ましくは、細胞数測定技術、例えば蛍光標識細胞選別(FACS)を使用して、捕捉細胞を分析のために分離および/または選別する。これを、上に記載した複数の抗体または他の結合分子、および他の二次的作用物質を使用して果すことができる。当技術分野において公知の方法を使用して捕捉細胞の表現型を決定してもよい。Autissierら、J Immunol Methods.360巻(1~2号):119~128頁(2010年)を参照されたい。例えば、T細胞は、CD4またはCD8などの細胞表面マーカーを特徴とし、この細胞表面マーカーによって識別される。樹状細胞は、CD11cの発現を特徴とし、この発現によって識別される。マクロファージは、CD11cおよび/またはCD68の発現を特徴とし、この発現によって識別される。例示的なマーカー(ポジティブ識別するためおよびまた他の細胞を排除するため両方のもの)としては、CD11c(DCを選択するためのもの)、Gr-1(マクロファージを選択するためのもの)、CD204(マクロファージを選択するためのもの)、CD16(単球を選択するため、および非単球細胞、すなわち、単球表現型も細胞表面マーカー表現型も有さない細胞をネガティブ選択する(例えば除外する)ためのもの)、CD45(造血細胞、例えば免疫細胞を選択するためのもの)、CD49b[ナチュラルキラー(NK細胞)はもちろん、このマーカーを発現するT細胞のサブセットも選択するためのもの]、CD3(T細胞を選択するためのもの)、CD4(T細胞)、CD8(T細胞)、CD19およびB220が挙げられる。
【0093】
一部の好ましい実施形態では、目的の捕捉細胞におけるmRNAまたはタンパク質発現を決定する。例えば、捕捉細胞のT細胞およびB細胞受容体をシークエンシングして、自己免疫に対する疾患および薬物標的の抗原特異性を識別することができる。関連実施形態では、その後、目的の捕捉細胞のmRNAまたはタンパク質発現を、他の対象からの他の細胞型または同一細胞における同じ遺伝子(単数もしくは複数)の発現と比較することができる。1つより多くの遺伝子のmRNAまたはタンパク質発現の分析が所望される場合、マイクロアレイ技術を利用することができる。この十分に確証されている技術は、多くの遺伝子のmRNAまたはタンパク質発現パターンを同時に分析することができ、その結果、例えば、目的の捕捉細胞の全ゲノムと他の細胞の全ゲノムとの比較が可能になる。デバイスから回収される生体材料の量が分析に不十分である場合には、遺伝子発現の決定前に目的の捕捉細胞からのmRNAを増殖することができる。そのような増殖は、当技術分野において公知の任意の方法によって、例えば、逆転写およびcDNA増幅によって行うことができる。
抗原特異的細胞
【0094】
一部の実施形態では、診断または治療上の使用に好適である組成物を製剤化するために抗原特異的捕捉細胞またはそれらの亜集団(例えば、抗原特異的T細胞またはB細胞)を操作する。操作の例としては、例えば、活性化、分裂、分化、成長、増殖、再プログラミング、アネルギー、静止、老化、アポトーシスまたは殺滅が挙げられる。細胞を操作するためにデバイスから物理的に取り出す必要はない。したがって、一実施形態では、細胞をin situで(例えば、インプラント部位でまたは近傍で)操作する。他の実施形態では、細胞をex situで(例えば、インプラントとは異なる部位で)操作する。
【0095】
一部の実施形態では、複数の抗原を任意選択で抗原提示細胞(またはそのようなAPCを誘引する抗原)とともに含有するデバイスを提供することによって、抗原特異的細胞、例えばT細胞をin situで操作する(例えば、活性化し、そして/または増殖させる)。他の実施形態では、細胞培養で、任意選択で抗原提示細胞と一緒に抗原(例えば、自己免疫抗原)とインキュベートすることによって、抗原特異的細胞を操作する。活性化されると、細胞は、多くの遺伝子産物の転写および発現に至る複雑な細胞シグナル伝達カスケードを経る。所望の抗原特異性を有する細胞を識別および単離するために、活性化細胞に特異的な遺伝子産物をさらに分析してもよい。
(a)T細胞
【0096】
本明細書に記載する実施形態は、抗原特異的T細胞をex situで操作する方法に関する。本明細書に記載するこの技法をin situでのプロセス実施用に変更することができることを特筆しておく。T細胞を含む試料を特定の抗原とともにインキュベートし、これに起因して、目的の抗原に特異的なT細胞の活性化が生ずる。T細胞含有試料を抗原とともに約1日~約7日間インキュベートしてもよい。その後、上で説明したように活性化されたT細胞の遺伝子産物を発現するT細胞を選択することによって、抗原特異的T細胞を単離する。目的の抗原は、自己抗原、もしくは非自己抗原、またはそれらの断片である可能性がある。目的の抗原は、目的の2つまたはそれより多くの個々の抗原の組合せであることもある。
【0097】
活性化T細胞を識別またはネガティブ選択するための遺伝子産物は、細胞表面マーカーもしくはサイトカイン、またはそれらの組合せであることがある。活性化T細胞を識別するための細胞表面マーカーとしては、CD69、CD4、CD8、CD25、HLA-DR、CD28およびCD134が挙げられるが、これらに限定されない。CD69は、BおよびTリンパ球、NK細胞ならびに顆粒球上で見いだされる早期活性化マーカーである。CD25は、IL-2受容体であり、活性化T細胞およびB細胞のマーカーである。CD4は、TCR共受容体であり、胸腺細胞(thymocte)、TH1型およびTH2型T細胞、単球ならびにマクロファージのマーカーである。CD8もTCR共受容体であり、細胞傷害性T細胞のマーカーである。CD134は、活性化CD4+T細胞でしか発現されない。
【0098】
活性化T細胞をネガティブ選択するための細胞表面マーカーとしては、CD36、CD40、およびCD44が挙げられるが、これらに限定されない。CD28は、T細胞受容体経路とは無関係の刺激性T細胞活性化経路として作用し、CD4+およびCD8+細胞上で発現される。CD36は、膜糖タンパク質であり、血小板、単球および内皮細胞のマーカーである。CD40は、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞のマーカーである。CD44は、マクロファージおよび他の貪食細胞のマーカーである。T細胞のサブセットは、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞(例えば、CD8に対してCD4)の細胞表面遺伝子産物の発現についてのポジティブ選択、ネガティブ選択、またはこれらの組合せを使用することによって単離することができる。本発明の活性化T細胞を識別するためのサイトカインには、TH1型T細胞(細胞媒介応答)およびTH2型T細胞(抗体応答)によって産生されるサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。活性化TH1型T細胞を識別するためのサイトカインとしては、IL-2、ガンマインターフェロン(γIFN)および組織壊死因子アルファ(TNFα)が挙げられるが、これらに限定されない。活性化TH2型T細胞を識別するためのサイトカインとしては、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13が挙げられるが、これらに限定されない。T細胞のサブセットは、ヘルパーT細胞または細胞傷害性T細胞(例えば、IL4に対してγIFN)のサイトカイン遺伝子産物の発現についてのポジティブ選択、ネガティブ選択、またはこれらの組合せを使用することによって単離することもできる。
【0099】
目的の抗原に特異的な活性化TH1型T細胞は、CD69、CD4、CD25、IL-2、IFNγ、TNFαまたはこれらの組合せを発現する細胞を識別することによって単離することができる。目的の抗原に特異的な活性化TH1型T細胞は、IFNγまたはTNFαと一緒にCD69およびCD4を発現する細胞を識別することによって単離することもできる。目的の抗原に特異的な活性化TH2型T細胞は、CD69、CD4、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13またはこれらの組合せを発現する細胞を識別することによって単離することができる。目的の抗原に特異的な活性化TH1型T細胞とTH2型T細胞の組合せは、CD69、CD4、CD25、IL-2、IFNγ、TNFαまたはこれらの組合せを発現する細胞、およびCD69、CD4、IL-4、IL-5、IL-10、IL-13またはこれらの組合せを発現する細胞を識別することによって単離することができる。
【0100】
本発明の活性化T細胞のポジティブまたはネガティブ選択に使用される遺伝子産物は、蛍光標識細胞選別(FACS)、磁気細胞選別、パニングおよびクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない、抗体を利用する当業者に公知の免疫選択技術によって識別することができる。活性化T細胞上の2つまたはそれより多くのマーカーの免疫選択は、各ステップによって1つまたは複数のマーカーがポジティブ選択またはネガティブ選択される1または複数のステップで行うことができる。FACSを使用して1ステップで2つまたはそれより多くのマーカーの免疫選択を行う場合、2つまたはそれより多くの異なる抗体を異なるフルオロフォアで標識することができる。あるいは、上で説明したように、マイクロビーズを使用して細胞を選別することができる。
【0101】
細胞表面発現遺伝子産物については、抗体をその遺伝子産物と直接結合させることができ、細胞選択に使用することができる。低濃度で発現される細胞表面遺伝子産物については、磁気蛍光リポソームを細胞選択に使用することができる。低い発現レベルでの従来の蛍光標識抗体は、細胞表面発現遺伝子産物の存在を検出するために十分な感受性がないことがある。目的の特異性を有する抗体にフルオロフォア含有リポソームをコンジュゲートすることによって細胞表面マーカーの検出を可能にすることができる。
【0102】
サイトカインなどの細胞内遺伝子産物については、細胞を透過処理した後、抗体を使用することができる。あるいは、透過処理による細胞の殺滅を回避するために、細胞内遺伝子産物を、それが最終的に細胞から分泌される場合、それが細胞膜を通って分泌されるときに細胞表面の「捕獲」抗体を使用して検出することができる。捕獲抗体は、(i)目的の分泌遺伝子産物および(ii)細胞表面タンパク質という2つの異なる抗原に特異的である、二重抗体でありうる。細胞表面タンパク質は、特にT細胞または一般にリンパ球上に存在する、任意の表面マーカー(例えば、CD45)でありうる。捕獲抗体は、先ず細胞表面タンパク質と結合し、次いで、目的の細胞内遺伝子産物が膜を通って分泌されるとその遺伝子産物と結合することによって、細胞表面に遺伝子産物を保持することができる。その後、捕捉遺伝子産物に特異的な標識抗体を使用して捕捉遺伝子産物と結合することができ、それによって活性化T細胞の選択が可能になる。ある特定の形態のサイトカインが低濃度で細胞表面において発現されることも判明した。例えば、γIFNは、低濃度で細胞表面において細胞内γIFN発現のものと同様の動態で提示される(Assenmacherら、Eur J. Immunol、1996年、26巻:263~267頁)。細胞表面で発現されるサイトカインの形態については、従来の蛍光標識抗体またはフルオロフォア含有リポソームを目的のサイトカインの検出に使用することができる。当業者は、活性化T細胞に特異的な細胞外および細胞内遺伝子産物を検出および選択する他の技法を認識し得る。
【0103】
本発明によって単離されるT細胞は、全血から少なくとも40%~90%濃縮されうる。T細胞は、全血から少なくとも95%濃縮されることもある。T細胞は、全血から少なくとも98%濃縮されることもある。T細胞は、全血から少なくとも99.5%濃縮されることもある。同様の方法をB細胞のin situまたはex situ操作で使用することができる。
(b)B細胞
【0104】
抗原特異的B細胞は、上述の方法をほんの少し変えたものを使用して得ることができる。例えば、DYNABEAD-M-450を使用して疾患特異的抗原とカップリングさせることができ、次いでそれを、本発明のデバイスで捕捉された細胞を含有する組成物とともにインキュベートする。任意選択で、捕捉細胞をスクリーニングプロセスに付して、例えば、B細胞に特異的である細胞表面マーカーと結合する作用物質を使用して、試料を濃縮することができる。次いで、B細胞を抗原とカップリングしたDYNABEADSとともにインキュベートし、約7~10日間培養してロゼット細胞を生じさせる。分泌された抗体を、例えば、疾患特異的抗原と結合するそれらの能力に基づいて分析することによって、ロゼット細胞を任意選択で分類する。ポジティブと識別されるクローンを、慣用の技法を使用してハイブリドーマを産生するように形質転換することができる。
【0105】
本明細書に記載する実施形態は、目的の抗原に特異的である単離された細胞にさらに関し、これらの細胞は、上で説明した方法によって単離される。単離された細胞は、モノクローナル細胞であることもあり、またはポリクローナル抗原特異的免疫細胞、例えば抗原特異的T細胞であることもある。
【0106】
本発明の実施形態は、本発明のデバイス内に捕捉された免疫細胞の数を決定することによって抗原特異的免疫細胞の相対頻度を決定する方法にさらに関する。好ましくは、抗原特異的免疫細胞は、T細胞またはB細胞である。特に好ましくは、抗原特異的免疫細胞は、T細胞である。
疾患/障害の診断
【0107】
本明細書に記載する実施形態は、対象の疾患または障害を検出または診断する方法にさらに関する。一実施形態では、疾患は、がんである。別の実施形態では、疾患は、自己免疫障害である。第3の実施形態では、疾患は、病原性疾患である。
【0108】
これらの実施形態では、疾患を有する対象を、デバイス内の抗原が疾患に特異的である本発明のデバイスを対象に先ず投与することによって診断することができる。その後、デバイスを、ある期間、例えば、0.5日、1日、2日、5日、7日、14日、25日、30日、35日、38日、45日、50日、60日またはそれより長い期間、対象体内に留まらせ、上述の技法の1つまたは複数を使用してデバイスに収容された細胞を分析する。例えば、自己免疫疾患に関して、分析される細胞は、T細胞、B細胞、抗原提示細胞、またはこれらの組合せを含みうる。がん診断に関して、分析される細胞は、T細胞またはB細胞を含みうる(my include)。病原性疾患に関して、分析される細胞は、抗原提示細胞を含みうる。
【0109】
分析ステップは、任意の慣用の方法を使用して行うことができる。したがって、一実施形態では、分析ステップは、自己免疫疾患に特異的である免疫細胞の数を決定することを含みうる。任意の慣用の技法を使用して、例えば、抗原をコーティングした表面に細胞試料を担持し、特異的に結合していない細胞を洗い流し、検出剤(例えば、抗原特異的細胞上に位置する細胞表面エピトープと結合する抗体)を使用して抗原特異的細胞(結合細胞を放出することによって遊離形態であるか、または結合形態である)の数を定量して、免疫細胞の抗原結合特異性を決定することができる。別の実施形態では、分析ステップは、抗原特異的免疫細胞の物理的または生物学的特性の決定を含みうる。物理的特性の例としては、例えば、サイズ、形状、反射率、形態、密度が挙げられる。生物学的特性の例としては、例えば、特定の細胞表面マーカーの発現、サイトカインの分泌、特定の抗原または作用物質に対する反応性、遺伝子発現パターンが挙げられる。
【0110】
分析ステップを、分析ステップの結果を目的のパラメータと相関させる相関ステップと結びつけることができる。パラメータの代表的なタイプとしては、存在(または疾患の非存在)、疾患のタイプ(例えば、攻撃型対非攻撃型自己免疫障害(aggressive vs. non-aggressive autoimmune disorder);ドラッガブル対ノンドラッガブル疾患(druggable vs. non-druggable disease)、例えば、抗生物質感受性対抗生物質耐性細菌感染症、免疫療法抵抗性対免疫療法感受性のがん)、病期、疾患の(経時的な)進行/退行などが挙げられる。一実施形態では、パラメータは、(二値項で表わすことができる)疾患の存在または非存在に関する。別の実施形態では、パラメータは、(名義尺度、例えば、ステージI~IV(ステージIVが最高である)で表わすことができる)疾患の病期分類に関する。さらに別の実施形態では、パラメータは、疾患発生のオッズまたは尤度、例えば、最小20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、2倍、3倍、5倍、10倍、20倍またはそれ超に関する。
【0111】
上述の診断方法では、パラメータをベースライン値と比較することがある。ベースライン値は、例えば健常対象集団で、予め定められている値でありうる。例えば、目的の抗原が関節リウマチ(RA)抗原である場合、健常対象のRA特異的抗体(またはT細胞)のベースラインレベルを相関ステップで使用することができる。あるいは、好適な対照、例えば、足場のみを含有するデバイス(すわち、抗原、動員剤もしくは両方についてネガティブ)または無作為もしくは非疾患特異的抗原を含有するデバイスを使用して、ベースライン値を実験的に識別することができる。当業者は、慣用の技法を使用して、様々な対象群間の相関関係を示し、そして/または推論結果を導くことができる。
【0112】
例えば、一実施形態では、疾患特異的抗原(例えば、Mycobacterium bovisに由来するMBP70)を含有するデバイスを、病原体に曝露された疑いがある対象群、および健常(または無作為)対象群に、所与の期間(例えば、2週間)埋め込む。別途、各群の少数の対象に(無作為または非MBP抗原を含有する)対照デバイスを与える。デバイスを外植し、実験群(例えば、MBP70+デバイスが埋め込まれた疑わしい群)および対照群における抗原特異的T細胞の数を測定し、比較する。疑わしい群から回収したデバイスにおいて対照群から回収したものより(例えば、統計的有意性の点で)多い抗原特異的T細胞が検出された場合、陽性診断を下す。加えて、その診断に依存して、疑わしい群を治療剤で処置することができる。処置される対象における抗原特異的T細胞の数を経時的に比較することができ、健常対象に存在するものと比較することもできる。これらの結果に基づいて、研究者は、治療の有効性に関して推論することができるだろうし、疾患の治療による進行/退行を経時的にモニターすることもできるだろう。同様のプロトコルをがん患者および自己免疫疾患に罹患している対象の診断、モニタリングおよび管理に使用することができる。
【0113】
対象は、動物、好ましくは哺乳類または鳥類である。特に好ましくは、対象は、ヒト、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、水牛およびウマからなる群から選択される。最も好ましくは、対象はヒトである。
【0114】
いずれの免疫細胞を疾患または障害の診断に使用してもよい。好ましくは、リンパ球、例えば、T細胞、B細胞、樹状細胞もしくはAPC、例えばマクロファージ、またはこれらの組合せを用いて診断を行う。診断にT細胞を使用することは特に好ましい。
【0115】
上述の方法を使用していずれの疾患または障害を検出してもよい。特に好ましくは、疾患は、関節リウマチ、狼瘡、セリアック病、炎症性腸疾患またはクローン病、シェーグレン症候群、リウマチ性多発筋痛、多発性硬化症、強直性脊椎炎、1型糖尿病、円形脱毛症、血管炎、側頭動脈炎などからなる群から選択される自己免疫疾患である。他の実施形態では、疾患は、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺の前新生物性病変、結腸がん、黒色腫および膀胱がんからなる群から選択されるがんである。
【0116】
さらに別の実施形態では、疾患は、細菌性疾患、ウイルス性疾患および真菌性疾患からなる群から選択される病原性疾患またはこれらの組合せである。
【0117】
したがって、本発明の実施形態は、自己免疫疾患、がん疾患または病原性疾患に特異的である抗原を含有する本発明のデバイスを投与すること、およびそのデバイス内に収容された免疫細胞を分析することによる、対象の自己免疫疾患、がんまたは病原性疾患の検出または診断に関する。免疫細胞を回収するために任意選択でデバイスを外植してもよい。検出/分析ステップをin situで実施することが可能であることもある。
【0118】
関連実施形態は、対象の疾患の進行をモニターする方法に関する。この方法は、疾患に特異的である抗原を含有する本発明のデバイスを対象に投与するステップ、およびそのデバイス内に収容された免疫細胞を分析するステップを含む。デバイス内に捕捉された免疫細胞の数/型は、疾患の進行に関して重要な手がかりを提供することができる。あるいは、対象が治療的介入を受けた場合、類似の方法を使用して疾患の治療および/または疾患管理をモニターすることができる。
【0119】
上述の方法を使用して、自己免疫障害、がん、病原性疾患などの進行/治療をモニターすることができる。好ましくは、診断方法で使用される免疫細胞は、T細胞またはB細胞である。
【0120】
自己免疫障害に関して、疾患の進行は、自己反応性T細胞の数および/または型を分析することによってモニターすることができる。分析の結果に依存して、症状の重症度を最小にするように介入および/治療方法を計画することができる。他の場合、食事、栄養および/または他の生活習慣変更に関する提言を対象に行うことを含む予防的方法を行うことができる。
疾患の治療のための新規組成物およびワクチンの生産
【0121】
本明細書に記載する実施形態は、疾患を処置するための新規組成物を考案および生産する方法にさらに関する。この方法は、疾患特異的抗原を含有する本発明のデバイスを対象に投与するステップであって、続いてこれが疾患に特異的である免疫細胞を捕捉するステップ、任意選択で、デバイス内に捕捉された免疫細胞を単離、濃縮および増殖するステップ、およびその後、免疫細胞を対象に投与して戻すステップを含む。あるいは、そのような免疫細胞に由来する産物を対象に投与することができる。免疫細胞に由来する産物の例としては、核酸(そのような核酸を含有するベクターおよび細胞を含む)、ペプチド、タンパク質、抗体、サイトカインなどが挙げられる。
【0122】
好ましくは、疾患は、自己免疫疾患である。この実施形態のもとで、上述の方法によって単離された(および任意選択で、本明細書に記載するように培養で増殖された)自己反応性T細胞をin situまたはex situで不活性化することができる。T細胞を不活性化する方法は、当技術分野において公知である。例としては、化学的不活性化または照射が挙げられるが、これらに限定されない。自己反応性T細胞を、不活性化前または後のどちらかに、凍結保存を含むがこれに限定されない当業者に公知の多数の技法を使用して保存することができる。下で説明するように、自己免疫患者の自己反応性T細胞を枯渇させるためにワクチンとしてこの組成物を使用することができる。
【0123】
一実施形態では、ワクチンは、Vβ-Dβ-Jβ遺伝子使用の均質な(「モノクローナル」)または不均質な(「ポリクローナル」)パターンを含む自己反応性T細胞を含みうる。臨床研究は、自家モノクローナルT細胞の接種を受けた自己免疫患者が自己反応性T細胞に対する免疫の漸減を示しうることを示す。場合によっては、再出現する自己反応性T細胞は、異なるクローン集団が起源であることがあり、これは、T細胞が、進行中の疾患過程に関連する、クローンシフトまたはエピトープ拡大を被ることがあることを示唆している。クローンシフトまたはエピトープ拡大は、自己反応性T細胞によって媒介される自己免疫疾患では問題でありうる。複数の自己免疫性T細胞集団を枯渇することができるポリクローナル自己反応性T細胞を含むワクチンは、クローンシフトまたはエピトープ拡大に伴う問題を回避することができる。
【0124】
本明細書に記載する実施形態は、上述の方法によって生産される組成物およびワクチンにさらに関する。組成物は、当技術分野において周知の方法を使用して生産することができる医薬組成物でありうる。当業者は、疾患または障害の処置において前臨床および臨床治療として使用される医薬組成物を、認知されている診断および処置原理を利用して生産することができる。
疾患の治療
【0125】
本明細書に記載する実施形態は、対象の疾患または障害を処置する方法にさらに関する。一実施形態では、疾患は、がんである。別の実施形態では、疾患は、自己免疫障害である。第3の実施形態では、疾患は、病原性疾患である。
【0126】
これらの実施形態では、疾患を有する対象を、デバイス内の抗原が疾患に特異的である本発明のデバイスを対象に先ず投与することによって処置することができる。その後、デバイスを、ある期間、例えば、0.5日、1日、2日、5日、7日、14日、25日、30日、35日、38日、45日、50日、60日またはそれより長い期間、対象体内に留まらせ、上述の技法の1つまたは複数を使用してデバイスに収容された細胞を操作する。例えば、自己免疫疾患に関して、操作される細胞は、T細胞、B細胞、抗原提示細胞、またはこれらの組合せを含みうる。がん処置に関して、操作される細胞は、T細胞またはB細胞を含みうる。病原性疾患に関して、操作される細胞は、抗原提示細胞を含みうる。操作の例としては、例えば、活性化、分裂、分化、成長、増殖、再プログラミング、アネルギー、静止、老化、アポトーシス、殺滅などが挙げられる。細胞を操作するためにデバイスから物理的に取り出す必要はない。したがって、一実施形態では、細胞をin situで(例えば、インプラント部位でまたは近傍で)操作する。他の実施形態では、細胞をex situで(例えば、インプラント部位とは異なる部位で)操作する。
【0127】
したがって、本発明の実施形態は、対象のがんを処置する方法を提供する。この方法は、複数の抗原ががんに特異的である本発明のデバイスを対象に投与するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップであって、複数の免疫細胞が複数の抗原に特異的であるステップ、および複数の免疫細胞またはそれらに由来する産物を対象に投与することによってがんを処置するステップを含む。
【0128】
がん抗原の代表例としては、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rアルファ、IL13Rアルファ2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、Nestin、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード化核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
好ましくは、免疫細胞は、上述の抗原の1つまたは複数と特異性をもって結合するT細胞またはB細胞である。本発明のがん治療方法の実施に有用である細胞産物には、例えば、全細胞を含めて、B細胞のハイブリドーマ、安定したT細胞系、B細胞またはそれらのハイブリドーマに由来する抗体、がん抗原と結合する受容体(抗原を提示するMHC分子と結合する受容体)(それらの断片を含む)、受容体またはそれらの抗原結合ドメインをコードする核酸、抗体をコードする核酸が含まれる。
【0130】
本発明の実施形態は、対象の病原性疾患を処置する方法を提供する。この方法は、複数の抗原が病原性疾患に特異的である本発明のデバイスを対象に投与するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップであって、複数の免疫細胞が複数の抗原に特異的であるステップ、および複数の免疫細胞またはそれらに由来する産物を対象に投与することによって病原性疾患を処置するステップを含む。場合によっては、免疫細胞またはそれらに由来する組成物を予防的に、例えば、対象の疾患症状の発症前に投与してもよい。
【0131】
上述の実施形態に従って処置することができる病原性疾患は、細菌性疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、またはこれらの組合せを含む。
【0132】
本発明の病原性疾患の処置に有用である細胞産物には、例えば、全細胞を含めて、B細胞のハイブリドーマ、安定したT細胞系、B細胞またはそれらのハイブリドーマに由来する抗体、病原性抗原と結合する受容体(および/または病原性抗原を提示するMHC分子と結合する受容体)、そのような抗体または受容体の断片、受容体、抗体またはそれらの抗原結合ドメインをコードする核酸が含まれる。
【0133】
本発明の実施形態は、対象の自己免疫疾患を処置する方法を提供する。この方法は、複数の抗原が自己免疫疾患に特異的である本発明のデバイスを対象に投与するステップ、デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップであって、複数の免疫細胞が複数の抗原に特異的であるステップ、および複数の免疫細胞またはそれらの制御因子を対象に投与することによって自己免疫疾患を処置するステップを含む。
【0134】
自己免疫疾患に関して、活性免疫細胞ではなく(これらは自己反応性であるので)、むしろ静止、老化または不活性化免疫細胞を投与するほうが好ましいこともある。好ましくは、免疫細胞は、T細胞である。あるいは、免疫細胞の制御因子を投与してもよい。そのような制御因子としては、例えば、サプレッサーT細胞または制御性T細胞を挙げることができる。
【0135】
したがって、一部の実施形態では、本発明は、デバイス内の複数の抗原が自己免疫疾患に特異的である本発明のデバイスを、それを必要とする対象に投与するステップ、デバイス内に捕捉された複数の制御性またはサプレッサーT細胞を収集するステップであって、複数の制御性またはサプレッサーT細胞が抗原に特異的であるステップ、および複数の制御性T細胞もしくはサプレッサーT細胞またはそれらに由来する産物を対象に投与することによって自己免疫疾患を処置するステップによって、自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
【0136】
自己免疫疾患の治療の実施に有用である細胞産物には、例えば、自己反応性細胞と結合する抗体および受容体、サプレッサーまたは制御性T細胞内に位置する制御タンパク質が、そのような分子をコードする核酸配列を含めて、含まれる。
【0137】
上で説明した治療実施形態では、約5×102細胞/ml~約1×109細胞/mlを含む全細胞濃度で細胞を製剤化することができる。T細胞の好ましい用量は、約2×106細胞~約9×107細胞の範囲である。
【0138】
本発明の実施形態は、上述の組成物の1つまたは複数を投与することによる疾患の治療にさらに関する。組成物は、それらの所与の目的を果す任意の手段によって投与される医薬組成物でありうる。例えば、投与は、非経口、皮下、静脈内、動脈内、皮内、筋肉内、腹腔内、経皮、経粘膜、脳内、髄腔内または脳室内経路によってもよい。あるいは、または同時に、投与は、経口経路によってもよい。医薬組成物をボーラス注入によってまたは長期にわたる漸次灌流によって非経口投与してもよい。
【0139】
投与される投薬量は、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、もしあれば併用処置の種類、処置の頻度、ならびに所望される効果の性質に依存しうる。医薬組成物の投与の用量範囲は、例えば、自己反応性T細胞が枯渇され、そして/または自己免疫疾患が有意に予防、抑制もしくは処置される、所望の効果を生じさせるのに十分な大きさでありうる。用量は、望ましくない交差反応、全身性免疫抑制、アナフィラキシー反応などのような有害副作用を引き起こすほど大きくてはならない。
疾患に関連する免疫細胞のレパートリーの決定
【0140】
本明細書において開示する実施形態は、疾患に罹患している対象における1つもしくは複数の免疫細胞受容体、またはその部分、をコードする核酸のレパートリーを決定する方法にさらに関する。方法は、本発明のデバイスによって捕捉された細胞から得られる1つまたは複数の免疫細胞受容体をコードする核酸を増幅させるステップを含む。好ましくは、免疫細胞は、T細胞またはB細胞であり、免疫細胞受容体は、それぞれ、T細胞受容体(TCR)およびB細胞受容体(BCR)である。全細胞可溶化物から標的核酸構築物を標的化および増幅する方法は、当技術分野において公知である。参照によって組み込まれているMaryanskiら、Immunity、4巻、47~55頁、1996年を参照されたい。
【0141】
これらの実施形態では、対象は、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)もしくはクローン病(CD)、またはおよび他の胃腸自己免疫状態に罹患している。デバイスから収集された細胞集団を、上述の疾患に関連する様々な抗原でさらに選択することができ、抗原プライミングによって選択された免疫細胞のレパートリーを、それらにおいて発現される細胞表面受容体の配列に基づいて特徴付けることができる。1つの代表的方法では、免疫細胞はT細胞であり、疾患抗原、例えばT1Dに関連する抗原、との結合に関与するT細胞受容体の配列に基づいて免疫細胞を特徴付ける。 病原体および/またはそれらの様々な株の分析のための細胞の捕捉
【0142】
免疫系は、身体からの病原体の検出および除去に様々なプレーヤーを使用する。例えば、病原体は、マクロファージによって取り込まれることがあり、マクロファージはそれらを消化し、処理して、それらを細胞表面の主要組織適合複合体(MHC)分子上に提示し、その結果、リンパ球はそれらを認識することができる。したがって、本発明の実施形態は、病原体に特異的である免疫細胞の分析による病原体の検出および分析を提供する。病原体は、細菌、ウイルス、真菌、またはこれらの組合せでありうる。
【0143】
それ故、上述の実施形態に従って、本発明は、目的の病原体に特異的である免疫細胞、例えば、T細胞、B細胞、マクロファージまたは樹状細胞を動員するトラップを提供する。特に、免疫細胞は、病原体抗原と結合するT細胞またはB細胞である。あるいは、免疫細胞は、抗原提示細胞、例えば、樹状細胞またはマクロファージである。これらの実施形態では、病原体に特異的である複数の抗原を含有するデバイスを、ある期間(例えば、1週間~3週間)にわたって対象に投与し、そのデバイス内に収容される免疫細胞を病原性抗原への特異性および/または結合について分析する。細胞を、抗原に含有される特定のエピトープに対するそれらの反応性に基づいて、さらに亜集団に分けてもよい。任意選択で、細胞を病原性疾患の治療用の免疫組成物に製剤化してもよい。好ましくは、免疫組成物は、樹状細胞組成物である。
【0144】
病原体および病原性抗原の代表リストを、それらのNCBI/GI受託番号を含めて、表6に提供する。
【0145】
関連実施形態では、本発明は、新たな細菌抗原に特異的である免疫細胞を捕捉するためのデバイスを提供する。例えば、MPB70およびMPB83は、マイコバクテリアに関して十分に研究されており、一般に十分に理解されている。しかし、それらは、M.tuberculosisではそれほど豊富に発現されない(Mycobacterium bovisでのほうが高度に発現される)ため、M.tuberculosisの病原性におけるそれらの関与はあまり解明されていない。本発明のデバイスを実装して、免疫細胞および/またはそれらの産物によって特異的に標的とされうる関連株中の新たな/肝要な病原性抗原を識別することができる。例えば、Mycobacterium bovisに由来するMPB70およびMPB83タンパク質を含有するデバイスを対象に埋め込んで免疫細胞集団を単離することができ、その免疫細胞集団をM.tuberculosisとの交差反応性について試験することができる。交差反応性に関与する受容体および分子を決定するために、交差反応する免疫細胞を分類することができる。このようにして、新規標的およびそれらと結合する治療剤を識別することができる。
【表6】
VIII.キット
【0146】
ある特定の実施形態では、本発明は、1つのまたは別個の区画に本発明のデバイスを含むキットを提供する。キットは、さらなる成分、例えば、ゲル化剤、皮膚軟化薬、界面活性剤、保湿剤、粘度増加剤、乳化剤を、1つまたは複数の区画にさらに含むことがある。キットは、診断または治療用途用のデバイスを処方するための説明書を任意選択で含むことがある。キットは、様々な障害および/または疾患の治療または診断の際に構成要素を個々にまたは一緒に使用するための説明書も含むことがある。
【0147】
関連実施形態では、本発明は、目的の捕捉細胞を選択、培養、増殖、維持および/または移植するための試薬と一緒に本発明のデバイスを含むキットを提供する。T細胞、B細胞および抗原提示細胞用の細胞選択キット、培養キット、増殖キット、移植キットの代表例は、当技術分野において公知である。例えば、目的の標的細胞がB細胞である場合、DYNABEADS、MACSビーズ(Miltenyi Biosciences)を使用してそのような細胞を最初に選別し、ROSETTESEP培地(Stem Cell Technologies)で維持し、CELLEXVIVOヒトB細胞増殖キット(R&D Systems)で増殖させることができる。FICOLL(登録商標)勾配を含むがこれに限定されない当業者に公知の遠心分離技術を使用することによって、試料中の細胞を濃縮することができる。試料中の細胞を、それらの遺伝子産物の発現のために、ポジティブ選択、ネガティブ選択、またはこれらの組合せを使用することによって濃縮することもできる。
【0148】
以下の実施例によって本発明をさらに例証するが、以下の実施例を限定とみなすべきではない。本出願を通して言及するすべての参考文献、特許および公開特許出願の全内容はもちろん図および配列表も、本明細書中での参照により本明細書に組み込まれている。
【実施例0149】
(実施例1)
デバイス作製および特徴付け
上述の方法に従って、デバイス用のポリマー足場を、抗原提示を維持するように設計した。要するに、デバイス作製は、次のように行った:ラクチドとグリコリドのコポリマー(PLG)(Alkermes、Cambridge、MA)をガス発泡プロセスにおいて使用して、PLG足場を形成した。抗原をPLGポリマー上に物理的に吸着させるために、ガス発泡微粒子浸出を使用して、トラップとして使用するための足場を作製した。
図1Aは、PLGで製造したモデルデバイスの断面走査電子顕微鏡(SEM)像の顕微鏡写真を示す(右側の写真は、細孔の拡大図を示す)。あるいは、アルギネートなどの他のポリマーをデバイスの構造要素として使用してもよい。細孔によってT細胞侵入および増殖のためのスペースが確保される。
図1Bは、OVA-T細胞トラップが、オボアルブミン(OVA)タンパク質(モデル抗原)を放出することができることを示す。
【0150】
さらに、デバイスを14日間にわたってマウスの背部に皮下的に埋め込んだ。
図1Cは、埋め込み部位でのMIP-1aおよびRANTESの局所サイトカイン濃度を示す棒グラフである。BおよびCにおける値は、平均および標準偏差(n=5)を表す。対象と比較して、各サイトカインの局所サイトカイン濃度がトラップ埋め込み部位で有意に高かったことが分かる。通常、抗原特異的T細胞には、対応する抗原を提示する炎症組織に入り、T細胞受容体(TCR)抗原認識に基づいて増殖する能力がある。抗原を提示するT細胞トラップを皮下投与すると、それらは局所MIP-1aおよびRANTES産生を促進し、これは炎症および自己免疫病変部位と似ている。トラップは、抗原(または抗原の混合物)を含有し、抗原は、T細胞上の特異的TCRと会合して粘着性になりデバイス内に残存する。この抗原相互作用はまたデバイス内でT細胞を増殖させ、その結果、その局所領域のこれらの細胞が濃縮される。
(実施例2)
デバイスの埋め込み
【0151】
モデル抗原、オボアルブミン(OVA)を担持したトラップ、および対照トラップを、OVA特異的T細胞プールが既に存在するOT-1マウスに埋め込んだ。14日後、足場を外植し、細胞を回収し、CD8およびOVAテトラマーについて染色した。OVAを含有するトラップは、OVA特異的T細胞が濃縮され(
図2A)、対照と比較しておよそ5~8倍多いT細胞を有した(
図2B)。OVA抗原または黒色腫抗原どちらかの、固有の抗原ミックスを含有する2つの異なるトラップをマウスに埋め込んだとき、T細胞は、同種抗原が担持されたトラップ内に優先的に蓄積した(
図2C)。OVA特異的T細胞は、OVAトラップ内に有意に蓄積したが、Trp2(黒色腫抗原)特異的T細胞は、黒色腫トラップ内に有意に蓄積した(
図2Cおよび
図2D)。OVAおよび黒色腫特異的細胞は、対応する抗原を含有しないトラップ内には本質的に無かった(
図2Cおよび
図2D)。
(実施例3)
糖尿病進行中のT細胞の捕捉
【0152】
抗原特異的捕捉を当技術分野において認知されている1型糖尿病マウスモデルで実証した。PLG足場にベータ細胞可溶化物を担持することによって糖尿病T細胞トラップを作製した(
図3A)。次いで、これらのトラップを9、12および15週齢の非肥満糖尿病(NOD)マウスに2週間にわたって埋め込み、そのときT細胞侵入についてアッセイした(
図3B)。NODマウスでは、
図3Bに示されているように膵島炎または膵島のT細胞侵入が歳に伴って予想通りに増加する。詳細には、トラップは、対照と比較してT細胞を有意に蓄積することが判明し、侵入は、膵臓の膵島炎と相関した(
図3Bおよび
図3D)。トラップ内のT細胞の総数が糖尿病の進行に伴って増加するばかりでなく、T細胞集団も濃縮された。対照と比較してトラップ内のT細胞の数に3~5倍の差があった。
(実施例4)
捕捉T細胞の特徴付け
【0153】
11、14および17週齢のNODマウスへの埋め込みの14日後にT細胞を回収した。回収したT細胞とともに膵ベータ細胞標的を培養した。ELISPOTアッセイを使用してIL-2分泌を測定した。結果を
図4Aに示す。ELISPOTによって立証されたとおり、トラップから単離したT細胞の有意なサブセット(T細胞の12%)はin vitroでベータ細胞標的に応答性であることが判明した(
図4A)。対照的に、対照トラップは、膵ベータ細胞に応答性であるT細胞を全く持っていなかった。トラップは、対照トラップおよびマウスの脾臓と比較して高められたレベルのベータ細胞特異的T細胞を含有した。これは、血液中のT細胞レベルと比較して多いT細胞数および高められた特異性をトラップから得ることができたことを示す。トラップ内のT細胞を分析し、血中レベルのマーカーとしての脾臓内のT細胞と比較した。トラップ内で識別された糖尿病特異的細胞は、血中濃度と比較しておおよそ4000%濃縮されていた(
図4B)。
(実施例5)
がん特異的T細胞の捕捉および回収
【0154】
多孔性足場に疾患の抗原および他の分子パターンを担持した。トラップの1セットは、OVA抗原の固有の混合物を含有し、他のセットは、黒色腫抗原の固有の混合物を含有した。抗原に特異的であるT細胞は、同種抗原が担持されたトラップ内に優先的に蓄積することが判明した(
図5C)。より具体的には、OVA特異的T細胞は、OVAトラップ内に有意に蓄積したが、Trp2(黒色腫抗原)特異的T細胞は、黒色腫トラップ内に有意に蓄積した(
図5D)。逆に、OVAおよび黒色腫特異的細胞は、対応する抗原を含有しないトラップには無かった(
図5Cおよび
図5D)。これらの結果は、足場に供給する抗原に基づいて抗原特異的T細胞を捕捉し、回収することができることを示す。
(実施例6)
宿主への機能性T細胞の移入
【0155】
T細胞トラップおよびブランク足場を15週齢NODマウスに14日間皮下的に埋め込んだ。その後、細胞をこれらの足場から単離し、2×106細胞を後眼窩注射によってNOD SCIDマウスに移入した。17週齢NODマウスからの脾細胞も陽性対照としてNOD-SCIDレシピエントに注射した。細胞移入後、血糖を測定することによってマウスを糖尿病の発症についてモニターした。
【0156】
NOD由来脾細胞を受けたNOD-SCIDマウスは、細胞注射後15週間の時点で糖尿病を発症し始め、20週目までに88%が糖尿病になった(
図6)。マウスの20%が9週目までに糖尿病になり、20週間の時点でマウスの100%が糖尿病であったので、捕捉細胞は、より速い動態で糖尿病を誘導した。対照足場から抽出された細胞は、SCIDマウスにおいて糖尿病を誘導することが全くできなかった。これらのデータは、宿主に移入することができる機能性のT細胞をトラップが特異的に動員できることを示す。
【0157】
総合すれば、実施例5および6は、疾患の抗原および分子パターンが担持されている本発明の多孔性足場を使用してT細胞をin situで産生および/または回収することができることを実証する。これらの結果は、抗原特異性T細胞が、ホーミングして疾患の主要部位で増殖するしくみに似た形で、in vivoで誘引され、そして回収することができるこれらのトラップで生成されることを示す。これらの細胞をin vivoで生成し、そしてまたトラップからの増殖因子/サイトカインの送達によってさらに増殖幅させることができる。驚くべきことに、かつ予期せぬことに、捕捉された疾患特異的T細胞の機能性は、宿主への養子移入後に維持されることが判明した。
(実施例7)
臨床または分析用の細胞の捕捉
【0158】
上述の製造プロセスを使用してT細胞トラップ、B細胞トラップおよび/または樹状細胞トラップを構築する。例えば、T細胞トラップは、表1に示したような種々のケモカイン/サイトカインを利用することができる。同じく、樹状細胞/マクロファージのための例示的なトラップは、表2に示したサイトカイン/ケモカインを利用することができる。同様に、B細胞トラップは、表3に示した様々なサイトカイン/ケモカインを含むことができる。各タイプのトラップに、さらなる作用物質、例えば、インターロイキン、増殖因子、封鎖剤、接着受容体、または他の化合物/分子などを任意選択で利用することができる。表4は、T細胞、B細胞またはDC/マクロファージトラップに任意選択で利用することができるインターロイキンのリストを提供する。表5は、T細胞接着受容体のリストを提供する。
【0159】
抗原の担持は、T細胞をDCと区別するために有効なホーミング剤である。したがって、これらの免疫細胞を分析して、病因を解明し、抗原などの治療標的を識別する。疾患を引き起こすT細胞は、自己免疫の病変にしか集中しないので、今のところアクセスしにくい。本明細書に記載するトラップ技術は、これらの細胞を収集する手段を提供する。
【0160】
上で説明したように少なくとも1日、最大で14日またはそれ超までの間、デバイスを対象に埋め込む。細胞はデバイス内で増殖することができ、免疫細胞が担持されたデバイスを大体1~28日、またはそれより長く、例えば、30日、60日、3カ月、6カ月、9カ月、12カ月、18カ月、24カ月、36カ月、48カ月またはそれ超、外植することができる。デバイスを定期的にモニターすることができる。
均等物
【0161】
当業者は、慣用の実験以上を使用することなく、本明細書に記載する特定の実施形態および方法の多くの均等物を認識するか、またはそのような均等物を確認することができる。そのような均等物は、後続の特許請求の範囲に記載の範囲によって包含されることが意図される。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
免疫細胞捕捉デバイスであって、
生理学的に適合性の多孔性ポリマー足場、および
複数の精製抗原
を含み、前記複数の抗原が、前記デバイス内の前記複数の抗原に特異的な複数の免疫細胞を誘引し、捕捉する、免疫細胞捕捉デバイス。
(項目2)
前記抗原が、前記ポリマー足場上に吸収されている、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記抗原が、前記ポリマー足場によって封入されている、項目1に記載のデバイス。
(項目4)
前記複数の抗原が、前記複数の免疫細胞上の受容体に結合する、項目1に記載のデバイス。
(項目5)
免疫細胞を殺滅または排除する作用物質を含有しない、項目1に記載のデバイス。
(項目6)
免疫細胞動員剤をさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目7)
前記免疫細胞動員剤が、T細胞動員剤、樹状細胞動員剤およびマクロファージ動員剤からなる群から選択される作用物質、またはそれらの組合せを含む、項目6に記載のデバイス。
(項目8)
前記免疫細胞動員剤が、ナチュラルキラー(NK)細胞動員剤、CD3+T細胞動員剤、CD4+T細胞動員剤、CD8+T細胞動員剤、CD8+T細胞動員剤、制御性T細胞(Treg)動員剤からなる群から選択される作用物質、またはそれらの組合せを含む、項目6に記載のデバイス。
(項目9)
前記免疫細胞動員剤が、増殖因子、サイトカイン、インターロイキン、接着シグナル伝達分子、インテグリンシグナル伝達分子、インターフェロン、リンホカイン、もしくはケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せである、項目6に記載のデバイス。
(項目10)
前記インターロイキンが、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-10、IL-12およびIL-17からなる群から選択される、項目9に記載のデバイス。
(項目11)
前記デバイスへの前記免疫細胞の侵入を増進する作用物質をさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目12)
前記複数の抗原が、がん抗原である、項目1に記載のデバイス。
(項目13)
前記がん抗原が、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、チロシナーゼ、ミッドカイン、BAGE、CASP-8、β-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、CA-125、CDK-1、CDK4、ESO-1、gp75、gp100、MART-1、MUC-1、MUM-1、p53、PAP、PSA、PSMA、ras、trp-1、HER-2、TRP-1、TRP-2、IL13Rアルファ、IL13Rアルファ2、AIM-2、AIM-3、NY-ESO-1、C9orf112、SART1、SART2、SART3、BRAP、RTN4、GLEA2、TNKS2、KIAA0376、ING4、HSPH1、C13orf24、RBPSUH、C6orf153、NKTR、NSEP1、U2AF1L、CYNL2、TPR、SOX2、GOLGA、BMI1、COX-2、EGFRvIII、EZH2、LICAM、Livin、Livinβ、MRP-3、Nestin、OLIG2、ART1、ART4、B-サイクリン、Gli1、Cav-1、カテプシンB、CD74、E-カドヘリン、EphA2/Eck、Fra-1/Fosl 1、GAGE-1、ガングリオシド/GD2、GnT-V、β1,6-N、Ki67、Ku70/80、PROX1、PSCA、SOX10、SOX11、サバイビン、UPAR、WT-1、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)、アデノシンデアミナーゼ結合タンパク質(AD Abp)、シクロフィリンb、結腸直腸関連抗原(CRC)-C017-1A/GA733、T細胞受容体/CD3-ゼータ鎖、腫瘍抗原のGAGEファミリー、RAGE、LAGE-I、NAG、GnT-V、RCASl、α-フェトプロテイン、pl20ctn、Pmel117、PRAME、脳グリコーゲンホスホリラーゼ、SSX-I、SSX-2(HOM-MEL-40)、SSX-I、SSX-4、SSX-5、SCP-I、CT-7、cdc27、大腸腺腫症タンパク質(APC)、フォドリン、PlA、コネキシン37、Ig-イディオタイプ、pl5、GM2、GD2ガングリオシド、腫瘍抗原のSmadファミリー、lmp-1、EBVコード化核抗原(EBNA)-I、UL16結合タンパク質様転写物1(Mult1)、RAE-1タンパク質、H60、MICA、MICB、およびc-erbB-2、またはこれらの免疫原性ペプチド、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、項目12に記載のデバイス。
(項目14)
前記複数の抗原が、非自己抗原である、項目1に記載のデバイス。
(項目15)
前記非自己抗原が、ウイルス、細菌、原生動物、寄生虫および真菌からなる群から選択される病原体に由来する病原性抗原である、項目14に記載のデバイス。
(項目16)
前記病原体が、Mycobacterium bovis、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス、ポックスウイルス、天然痘ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デング熱ウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、JCウイルス、ラブドウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パピローマウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、流行性耳下腺炎の原因となるウイルス、狂犬病の原因となるウイルス、レオウイルス、風疹ウイルス、トガウイルス、オルソミクソウイルス、レトロウイルス、ヘパドナウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、SARS CoV、MERS CoV、エンテロウイルス、Borrelia属種、Bacillus anthracis、Borrelia burgdorferi、Bordetella pertussis、Camphylobacter jejuni、Chlamydia属種、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Clostridium属種、Clostridium tetani、Clostridium botulinum、Clostridium perfringens、Corynebacterium diphtheriae、Coxiella属種、Enterococcus属種、Erlichia属種、Escherichia coli、Francisella tularensis、Haemophilus属種、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Lactobacillus属種、Legionella属種、Legionella pneumophila、Leptospirosis interrogans、Listeria属種、Listeria monocytogenes、Mycobacterium属種、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium leprae、Mycoplasma属種、Mycoplasma pneumoniae、Neisseria属種、Neisseria meningitidis、Neisseria gonorrhoeae、Pneumococcus属種、Pseudomonas属種、Pseudomonas aeruginosa、Salmonella属種、Salmonella typhi、Salmonella enterica、Rickettsia属種、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Shigella属種、Staphylococcus属種、Staphylococcus aureus、Streptococcus属種、Streptococccus pnuemoniae、Streptococcus pyrogenes、Streptococcus mutans、Treponema属種、Treponema pallidum、Vibrio属種、Vibrio cholerae、Yersinia pestis、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Aspergillus属種、Aspergillus、funigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus calvatus、Candida属種、Candida albicans、Candida tropicalis、Cryptococcus属種、Cryptococcus neoformans、Entamoeba histolytica、Histoplasma capsulatum、Leishmania属種、Nocardia asteroides、Plasmodium falciparum、Stachybotrys chartarum、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、Toxoplasma属種、Trypanosoma brucei、Schistosoma mansoni、Fusarium属種、Trichophyton属種、Plasmodium属種、Toxoplasma属種、Entamoeba属種、Babesia属種、Trypanosoma属種、Leshmania属種、Pneumocystis属種、Pneumocystis jirovecii、Trichomonas属種、Giardia属種、Schisostoma属種、Cryptosporidium属種、Plasmodium属種、Entamoeba属種、Naegleria属種、Acanthamoeba属種、Balamuthia属種、Toxoplasma属種、Giardia属種、Trichomonas属種、Leishmania属種、およびTrypanosoma属種からなる群から選択される、項目15に記載のデバイス。
(項目17)
前記抗原が、自己抗原である、項目1に記載のデバイス。
(項目18)
前記抗原が、自己免疫応答の対象である細胞の可溶化物に由来する、項目17に記載のデバイス。
(項目19)
前記抗原が、膵ベータ細胞抗原、神経細胞抗原、骨もしくは関節関連自己免疫疾患関連抗原、または胃腸疾患関連抗原である、項目17に記載のデバイス。
(項目20)
前記膵ベータ細胞抗原が、I型糖尿病に関連する抗原であり、前記神経細胞抗原が、多発性硬化症に関連する抗原であり、前記骨または関節関連抗原が、関節リウマチに関連する抗原であり、前記胃腸疾患関連抗原が、炎症性腸疾患またはクローン病に関連する抗原である、項目19に記載のデバイス。
(項目21)
RGDペプチド、CpGオリゴヌクレオチドもしくは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)サイトカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目22)
RGDペプチドも、CpGオリゴヌクレオチドも、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)サイトカインも、それらの断片も、それらの組合せも含有しない、項目1に記載のデバイス。
(項目23)
他の免疫細胞と比較してT細胞を優先的に誘引し、CCL1、CCL2(MCP-1)、CCL-3、CCL-4、CCL-5(RANTES)、CCL-17、CCL-22、CXCL12およびXCL1からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目24)
前記ケモカインが、
(a)CCL1(ヒトホモログについての受託番号:NM_002981.2;GI:523498696およびマウスホモログについての受託番号:NM 011329;GI:257153404)、
(b)CCL2(MPC-1)(ヒトホモログについての受託番号:NM_002982.3;GI:56119169およびマウスホモログについての受託番号:NM_011333.3;GI:141803162)、
(c)CCL3(ヒトホモログについての受託番号:NM_002983.2;GI:121582465およびマウスホモログについての受託番号:NM 011337.2;GI:126432552)、
(d)CCL4(ヒトホモログについての受託番号:NM 002984.3;GI:748585189 NM 013652.2およびマウスホモログについての受託番号:NM_013652.2;GI:126366031)、
(e)CCL5(RANTES)(ヒトホモログについての受託番号:NM_002985.2;GI:22538813およびマウスホモログについての受託番号:NM_013653.3;GI:164698427)、
(f)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびNM_011332.3;およびマウスホモログについての受託番号:NM_011332.3;GI:225735578)、
(g)CCL19(ヒトホモログについての受託番号:NM_006274.2;GI:22165424およびマウスホモログについての受託番号:NM 011888.2;GI:10518345)、
(h)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)、
(i)CXCL12(ヒトホモログについての受託番号:NM_199168.3;GI:291045298およびマウスホモログについての受託番号:NM_001277990.1;GI:489406389)、および
(j)XCL1(ヒトホモログについての受託番号:NM_002995.2;GI:312434026およびマウスホモログについての受託番号:NM 008510.1;GI:6678711)
からなる群から選択されるケモカインである、項目23に記載のデバイス。
(項目25)
他の免疫細胞と比較して樹状細胞(DC)またはマクロファージを優先的に誘引し、CCL2、CCL3、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17およびCCL22からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目26)
前記ケモカインが、
(a)CCL2(ヒトホモログについての受託番号:NM 002982.3;GI:56119169およびマウスホモログについての受託番号:NM 011333.3;GI:141803162)、
(b)CCL3(ヒトホモログについての受託番号:NM_002983.2;GI:121582465およびマウスホモログについての受託番号:NM_011337.2;GI:126432552)、
(c)CCL5(バリアント1)(ヒトホモログについての受託番号:NM 002985.2;GI:22538813およびマウスホモログについての受託番号:NM_013653.3;GI:164698427)、
(d)CCL7(ヒトホモログについての受託番号:NM_006273.3;GI:428673540およびマウスホモログについての受託番号:NM_013654.3;GI:226958664)、
(e)CCL8(ヒトホモログについての受託番号:NM_005623.2;GI:22538815およびマウスホモログについての受託番号:NM 021443.3;GI:255708468)、
(f)CCL13(ヒトホモログについての受託番号:NM_005408.2;GI:22538799およびマウスホモログについての受託番号:NM_011333.3;GI:141803162)、
(g)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびマウスホモログについての受託番号:NM 011332.3;GI:225735578)、および
(h)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)
からなる群から選択されるケモカインである、項目25に記載のデバイス。
(項目27)
他の免疫細胞と比較してT細胞と樹状細胞(DC)の両方を優先的に誘引し、CCL17およびCCL22からなる群から選択されるケモカイン、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せをさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目28)
前記ケモカインが、
(a)CCL17(ヒトホモログについての受託番号:NM_002987.2;GI:22538801およびマウスホモログについての受託番号:NM 011332.3;GI:225735578)、および
(b)CCL22(ヒトホモログについての受託番号:NM_002990.4;GI:300360575およびマウスホモログについての受託番号:NM_009137.2;GI:154240695)
からなる群から選択されるケモカインである、項目27に記載のデバイス。
(項目29)
LFA-1、MAdCAM-1、VCAM-1、CD28およびCTLA-4、もしくはそれらの断片、またはそれらの組合せからなる群から選択される、T細胞の複数の接着受容体をさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目30)
前記接着受容体が、
(a)LFA(ヒトホモログについての受託番号:NM 000211.4;GI:735367774およびマウスホモログについての受託番号:M60778.1;GI:198785)、
(b)MAdCAM-1(ヒトホモログについての受託番号:NM 130760.2 GI:109633021およびマウスホモログについての受託番号:D50434.2;GI:60391311)、
(c)VCAM-1(ヒトホモログについての受託番号:NM 001078.3;GI:315434269およびマウスホモログについての受託番号:X67783.1;GI:298116)、
(d)CD28(ヒトホモログについての受託番号:NM 006139.3;GI:340545506およびマウスホモログについての受託番号:BC064058.1;GI:39850201)、および
(e)CTLA-4(ヒトホモログについての受託番号:NM 005214.4;GI:339276048およびマウスホモログについての受託番号:U90270.1;GI:4099836)
からなる群から選択される、項目29に記載のデバイス。
(項目31)
約10μg~約2.0mgの前記抗原を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目32)
前記足場の乾燥重量1グラム当り約0.1μg~約400μgの前記抗原を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目33)
約40%~約90%の多孔度を有する、項目1に記載のデバイス。
(項目34)
前記多孔性ポリマー足場が、約10μM~約500μMの直径を有する細孔を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目35)
前記多孔性ポリマー足場が、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、アルギネートもしくはその誘導体、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸(HA)、アガロース、多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアリルアミン(PAM)、ポリアクリレート、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー(polyoxamer)、ポリウロン酸、およびポリビニルピロリドンもしくはそのコポリマー、またはそのグラフトポリマーからなる群から選択される化合物を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目36)
項目1に記載のデバイスと薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
(項目37)
静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、または筋肉内投与用に製剤化される、項目36に記載の医薬組成物。
(項目38)
マイクロニードルパッチとして皮下投与用に製剤化される、項目37に記載の医薬組成物。
(項目39)
それを必要とする対象の疾患を処置する方法であって、
前記複数の抗原が前記疾患に特異的である項目1に記載のデバイスを、対象に投与するステップ、
前記デバイス内に捕捉された複数の免疫細胞を収集するステップであって、前記複数の免疫細胞が前記複数の抗原に特異的であるステップ、および
前記複数の免疫細胞を前記対象に投与することによって前記対象の前記疾患を処置するステップを含む方法。
(項目40)
前記対象からの前記デバイスを外植するステップをさらに含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記複数の免疫細胞を増殖することによって、前記疾患に特異的である免疫細胞の増殖された集団を生じさせるステップ、および
免疫細胞の前記増殖された集団を前記対象に投与するステップをさらに含む、項目39に記載の方法。
(項目42)
前記疾患が、がんであり、前記デバイスが、前記がんに特異的である抗原を含む、項目39に記載の方法。
(項目43)
前記がんが、頭頸部がん、乳がん、膵臓がん、前立腺がん、腎がん、食道がん、骨がん、精巣がん、子宮頸がん、胃腸がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肺の前新生物性病変、結腸がん、黒色腫および膀胱がんからなる群から選択される、項目39に記載の方法。
(項目44)
前記疾患が、自己免疫疾患であり、前記デバイスが、前記自己免疫疾患に特異的である抗原を含む、項目39に記載の方法。
(項目45)
前記自己免疫疾患が、I型糖尿病、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患およびクローン病からなる群から選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記疾患が、病原体によって引き起こされ、前記デバイスが、前記病原体に特異的である抗原を含む、項目39に記載の方法。
(項目47)
前記病原体が、ウイルス、細菌、原生動物、寄生虫および真菌からなる群から選択される、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記対象がヒトである、項目39に記載の方法。
(項目49)
前記デバイスが前記対象に皮下投与される、項目39に記載の方法。
(項目50)
前記デバイスが、前記対象に静脈内投与される、項目39に記載の方法。
(項目51)
前記デバイスが前記対象に投与された約1日~約60日後に前記複数の免疫細胞が収集される、項目39に記載の方法。
(項目52)
抗原に特異的な免疫細胞を得る方法であって、
項目1に記載のデバイスを対象に投与するステップ、および
前記デバイス内に捕捉された免疫細胞を回収することによって、前記抗原に特異的な免疫細胞を得るステップ
を含む方法。
(項目53)
前記対象からの前記デバイスを外植するステップをさらに含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記対象がヒトである、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記デバイスが前記対象に皮下投与される、項目52に記載の方法。
(項目56)
前記デバイスが、前記対象に静脈内投与される、項目52に記載の方法。
(項目57)
前記デバイスが前記対象に投与された約1日~約60日後に前記複数の免疫細胞が収集される、項目52に記載の方法。
(項目58)
対象が自己免疫疾患を有するかどうかを決定する方法であって、
前記複数の抗原が前記自己免疫疾患に特異的である項目1に記載のデバイスを、対象に投与するステップ、
前記デバイス内に捕捉された免疫細胞を収集するステップであって、前記免疫細胞が前記自己免疫疾患に特異的であるステップ、および
前記デバイス内に捕捉された前記自己免疫疾患に特異的な免疫細胞の数を決定することによって、対象が自己免疫疾患を有するかどうかを決定するステップ
を含む方法。
(項目59)
前記対象からの前記デバイスを外植するステップをさらに含む、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記対象がヒトである、項目58に記載の方法。
(項目61)
前記デバイスが前記対象に皮下投与される、項目58に記載の方法。
(項目62)
前記デバイスが、前記対象に静脈内投与される、項目58に記載の方法。
(項目63)
前記デバイスが前記対象に投与された約1日~約60日後に前記複数の免疫細胞が収集される、項目58に記載の方法。
(項目64)
項目1に記載のデバイスを製造する方法であって、
複数の精製抗原を生理学的に適合性のポリマーとともにインキュベートしてポリマー-抗原混合物を生じさせるステップ、
前記ポリマー-抗原混合物を凍結し、凍結乾燥させ、ポロゲンと混合するステップ、
前記混合物を圧縮成形してディスクを生成するステップ、
前記ディスクを高圧CO2環境に付し、圧力を急速に低下させて、前記ポリマーを膨張させ、かつ融合させて、連通型足場構造にするステップ、および
前記構造を水に浸漬することによって前記足場構造から前記ポロゲンを浸出させて多孔性物品を生じさせることによって、前記デバイスを製造するステップ
を含む方法。
(項目65)
前記ポリマーが、ラクチドとグリコリドのコポリマー(PLG)またはアルギネートである、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記ポロゲンが、NaClまたはスクロースである、項目64に記載の方法。