(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166606
(43)【公開日】2023-11-21
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20231114BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20231114BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20231114BHJP
H01M 50/567 20210101ALI20231114BHJP
【FI】
H01M50/566
H01M50/176
H01M50/533
H01M50/567
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156419
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2019028970の分割
【原出願日】2019-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室屋 陽平
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
(72)【発明者】
【氏名】山中 友和
(57)【要約】
【課題】端子と集電体の接続部の信頼性の高い二次電池を提供する。
【解決手段】
正極端子407は、正極集電体406に設けられた集電体貫通孔406cに挿入され、正極集電体406に設けられたザグリ穴406d内でカシメられている。集電体貫通孔406cの径方向において、ザグリ穴406dの深さが集電体貫通孔406cから側面406d2に向けて徐々に大きくなるように底面406d1は傾斜しており、正極端子407においてカシメられた部分がザグリ穴406の縁部と溶接接続されている。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板及び負極板を有する電極体と、
開口を有し前記電極体を収容する外装体と、
端子取り付け孔を有し前記開口を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続された集電体と、
前記集電体に接続され、前記端子取り付け孔に挿入された端子と、を備えた二次電池であって、
前記集電体は集電体貫通孔を有し、前記集電体貫通孔の周囲にはザグリ穴が形成され、
前記ザグリ穴は底面と側面を有し、
前記端子は、前記集電体貫通孔に挿入され、前記ザグリ穴内でカシメられており、
前記集電体貫通孔の径方向において、前記ザグリ穴の深さが前記集電体貫通孔から前記側面に向けて徐々に大きくなるように前記底面は傾斜しており、
前記端子においてカシメられた部分が前記ザグリ穴の縁部と溶接接続された、
二次電池。
【請求項2】
前記端子においてカシメられた部分の先端が前記側面に接する請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記集電体貫通孔の縁部の角部のRが0.05mm以下である請求項1又は2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の駆動用電源において、アルカリ二次電池や非水電解質二次電池が使用されている。
【0003】
これらの二次電池では、開口を有する金属製の外装体と、その開口を封止する封口板により電池ケースが形成される。電池ケース内には、正極板、負極板及びセパレータからなる電極体が、電解質と共に収容される。封口板には正極端子及び負極端子が取り付けられる。正極端子は正極集電体を介して正極板に電気的に接続され、負極端子は負極集電体を介して負極板に電気的に接続される。
【0004】
端子と集電体の接続方法として、例えば集電体に貫通孔を設けて、この貫通孔に端子の一方端側を挿入し、端子の先端を集電体上にカシメることにより端子と集電体を接続する方法がある。例えば、特許文献1では、集電体の貫通孔の周囲にザグリ穴を設け、端子の先端部をザグリ穴内で拡径し、端子において拡径された部分とザグリ穴の縁部を溶接接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
端子を集電体に設けられたザグリ穴内でカシメる二次電池では、端子のカシメの条件によっては、端子においてカシメられた部分と集電体の間に大きな隙間が生じる場合がある。このような大きな隙間が生じた場合、端子と集電体との接続が不安定となる虞がある。
【0007】
図15に、集電体のベース部506aに設けられた集電体貫通孔506cに端子507を挿入し、端子507をベース部506a上にカシメる例を示す。
図15に示すように、端子507においてカシメられた部分507xと集電体のベース部506aに設けられたザグリ穴506dの底面の間に大きな隙間90が生じる可能性がある。また、端子507においてカシメられた部分507xと集電体のベース部506aに設けられたザグリ穴506dの側面の間に大きな隙間91が生じる可能性がある。そして、隙間90ないし隙間91が存在することにより、端子と集電体の接続部の信頼性が低下する虞がある。なお、端子507においてカシメられた部分507xとザグリ穴506dの側面の間に大きな隙間91が生じないように端子507においてカシメられた部分507xの長さを長くした場合、端子507においてカシメられた部分507xとザグリ穴506dの底面の間に大きな隙間90が生じやすくなる。特に端子507を一回のカシメにより集電体にカシメ固定する場合に隙間90が生じやすい。
【0008】
本開示は、端子と集電体の接続部の信頼性がより向上した二次電池を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一つの形態の二次電池は、
正極板及び負極板を有する電極体と、
開口を有し前記電極体を収容する外装体と、
端子取り付け孔を有し前記開口を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続された集電体と、
前記集電体に接続され、前記端子取り付け孔に挿入された端子と、を備えた二次電池であって、
前記集電体は集電体貫通孔を有し、前記集電体貫通孔の周囲にはザグリ穴が形成され、
前記ザグリ穴は底面と側面を有し、
前記端子は、前記集電体貫通孔に挿入され、前記ザグリ穴内でカシメられており、
前記底面において前記集電体貫通孔の周囲に凸部が設けられ、
前記端子においてカシメられた部分は前記凸部を覆い、
前記端子においてカシメられた部分が前記ザグリ穴の縁部と溶接接続されている。
【0010】
本開示の一つの形態の二次電池の構成によると、端子においてカシメられた部分とザグリ穴の底面の間、及び端子においてカシメられた部分とザグリ穴の側面の間に大きな隙間が生じることを効果的に抑制できる。よって、端子と集電体の接続部の信頼性が高い二次電池となる。なお、端子をザグリ穴内でカシメることにより、カシメられた端子がザグリ穴の底面及び側面の両方に接触するように変形し、端子においてカシメられた部分と集電体の間に隙間がより生じ難くなる。また、端子においてカシメられた部分がザグリ穴の縁部と溶接接続されることにより、端子と集電体がより強固に接続される。
【0011】
本開示の一つの形態の二次電池は、
正極板及び負極板を有する電極体と、
開口を有し前記電極体を収容する外装体と、
端子取り付け孔を有し前記開口を封口する封口板と、
前記正極板又は前記負極板に電気的に接続された集電体と、
前記集電体に接続され、前記端子取り付け孔に挿入された端子と、を備えた二次電池であって、
前記集電体は集電体貫通孔を有し、前記集電体貫通孔の周囲にはザグリ穴が形成され、
前記ザグリ穴は底面と側面を有し、
前記端子は、前記集電体貫通孔に挿入され、前記ザグリ穴内でカシメられており、
前記集電体貫通孔の径方向において、前記ザグリ穴の深さが前記集電体貫通孔から前記側面に向けて徐々に大きくなるように前記底面は傾斜しており、
前記端子においてカシメられた部分が前記ザグリ穴の縁部と溶接接続されている。
【0012】
本開示の一つの形態の二次電池の構成によると、端子においてカシメられた部分とザグリ穴の底面の間、及び端子においてカシメられた部分とザグリ穴の側面の間に大きな隙間が生じることを効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によると、端子と集電体の接続部の信頼性がより向上した二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る角形二次電池において、角形外装体の正面側壁及び電極体ホルダーの正面部を取り除いた図である。
【
図2】実施形態に係る角形二次電池の上面図である。
【
図3】(a)は実施形態に係る正極板の平面図である。(b)は実施形態に係る負極板の平面図である。
【
図4】正極端子、外部側絶縁部材、封口板、内部側絶縁部材、及び正極集電体の組立て前の斜視図である。
【
図5】実施形態に係る正極集電体の電極体側の面を示す図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】封口板の長手方向に沿った正極端子の近傍の断面図であり、正極端子を外部側絶縁部材の貫通孔、封口板の端子取り付け孔、内部側絶縁部材の貫通孔、及び正極集電体の集電体貫通孔に挿入した後の断面図である。
【
図8】正極端子を正極集電体上にカシメた後の断面図であって、封口板の長手方向に沿った正極端子の近傍の断面図である。
【
図9】(a)は
図8におけるIX近傍の拡大図であり、レーザー溶接前の状態を示す。(b)は
図8におけるIX近傍の拡大図であり、レーザー溶接後の状態を示す。
【
図10】正極端子と正極集電体の接続部の近傍の平面図であり、レーザー溶接後の状態を示す図である。
【
図11】変形例1に係る正極端子と正極集電体の断面図であり、正極端子においてカシメられた部分の近傍の断面図である。
【
図12】変形例2に係る正極端子と正極集電体の断面図であり、正極端子においてカシメられた部分の近傍の断面図である。
【
図13】変形例3に係る正極端子と正極集電体の断面図であり、正極端子においてカシメられた部分の近傍の断面図である。
【
図14】変形例4に係る正極端子と正極集電体の断面図であり、正極端子においてカシメられた部分の近傍の断面図である。
【
図15】参考例に係る正極端子と正極集電体の断面図であり、正極端子においてカシメられた部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態に係る二次電池としての角形二次電池について、図面を参照しながら説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0016】
まず、一実施形態に係る角形二次電池100の構成を説明する。
図1及び
図2に示すように、角形二次電池100は、上方に開口を有する角形外装体1と、当該開口を封口する封口板2を備える。角形外装体1及び封口板2により電池ケース200が構成される。角形外装体1及び封口板2はそれぞれ金属製であり、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。角形外装体1内には、帯状の正極板と帯状の負極板とが帯状のセパレータを挟んで巻回された偏平状の巻回型の電極体3が非水電解質(図示省略)と共に収容される。角形外装体1と電極体3の間には樹脂製の絶縁シート14が配置されている。封口板2には電池ケース200内の圧力が所定値以上となると破断し、電池ケース200内のガスを電池ケース200外に排出するガス排出弁15が設けられている。また、封口板2に設けられた電解質注液孔16が、封止部材17により封止されている。
【0017】
図3(a)に示すように、正極板4は、金属製の正極芯体4aと、正極芯体4aの両面に形成された正極活物質層4bを有する。正極板4は、幅方向の端部に、長手方向に沿って、正極芯体4aの両面に正極活物質層4bが形成されていない正極芯体露出部を有する。正極芯体4aは、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。正極活物質層4bは、正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物等を用いることができる。また、正極活物質層4bは、バインダー及び導電材を含むことが好ましい。バインダーとしては樹脂製のバインダーが好ましく、例えばポリフッ化ビニリデン等を用いることができる。導電部材としてはカーボンブラック等の炭素部材が好ましい。
【0018】
図3(b)に示すように、負極板5は、金属製の負極芯体5aと、負極芯体5aの両面に形成された負極活物質層5bを有する。負極板5は、幅方向の端部に、長手方向に沿って、負極芯体5aの両面に負極活物質層5bが形成されていない負極芯体露出部が形成されている。負極芯体5aは、銅又は銅合金製であることが好ましい。負極活物質層5bは、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば、黒鉛や非晶質炭素等の炭素材料、シリコンや酸化シリコン等のシリコン材料等を用いることができる。負極活物質層5bは、バインダーを含むことが好ましい。バインダーとしては樹脂製のバインダーが好ましく、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメシルセルロース(CMC)を含むことが好ましい。負極活物質層5bは必要に応じて導電材を含んでもよい。
【0019】
巻回型の電極体3は、一方の端部に巻回された正極芯体露出部を有し、他方の端部に巻回された負極芯体露出部を有する。巻回された正極芯体露出部は、正極芯体4aが積層された正極芯体積層部40を構成する。巻回された負極芯体露出部は、負極芯体5aが積層された負極芯体積層部50を構成する。
【0020】
正極芯体積層部40には正極集電体6が接続されている。正極集電体6は封口板2に取り付けられた正極端子7と接続されている。封口板2と正極集電体6の間には樹脂製の内部側絶縁部材10が配置されている。封口板2と正極端子7の間には樹脂製の外部側絶縁部材11が配置されている。内部側絶縁部材10及び外部側絶縁部材11により、正極集電体6及び正極端子7は封口板2と電気的に絶縁されている。正極集電体6及び正極端子7は、金属製であり、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることが好ましい。
【0021】
負極芯体積層部50には負極集電体8が接続されている。負極集電体8は封口板2に取り付けられた負極端子9と接続されている。封口板2と負極集電体8の間には樹脂製の内部側絶縁部材12が配置されている。封口板2と負極端子9の間には樹脂製の外部側絶縁部材13が配置されている。内部側絶縁部材12及び外部側絶縁部材13により、負極集電体8及び負極端子9は封口板2と電気的に絶縁されている。負極集電体8及び負極端子9は、金属製であり、例えば、銅又は銅合金製であることが好ましい。また、負極端子9は、銅又は銅合金からなる部分と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分を有することが好ましい。そして、銅又は銅合金からなる部分を銅又は銅合金からなる負極集電体8と接続し、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部分が封口板2よりも外部側に露出するようにすることが好ましい。
【0022】
正極端子7は、封口板2よりも電池外部側に配置される鍔部7aと、鍔部7aの一方の面に形成された挿入部7bを有する。挿入部7bが封口板2に設けられた端子取り付け孔を貫通し、正極集電体6に接続される。負極端子9は、封口板2よりも電池外部側に配置される鍔部9aと、鍔部9aの一方の面に形成された挿入部(図示省略)を有する。挿入部が封口板2に設けられた端子取り付け孔(図示省略)を貫通し、負極集電体8に接続される。
【0023】
正極集電体6は、封口板2と電極体3の間に配置されるベース部6aと、ベース部6aの端部から電極体3側に延びるリード部6bを有する。ベース部6aに正極端子7が接続されている。リード部6bが正極芯体積層部40に接合されている。負極集電体8は、封口板2と電極体3の間に配置されるベース部8aと、ベース部8aの端部から電極体3側に延びるリード部8bを有する。ベース部8aに負極端子9が接続されている。リード部8bが負極芯体積層部50に接合されている。
【0024】
[封口板への各部品取り付け]
以下に、封口板2への正極集電体6、正極端子7、負極集電体8及び負極端子9の封口板2への取り付け方法を説明する。
【0025】
図4は、正極端子7、外部側絶縁部材11、封口板2、内部側絶縁部材10、及び正極
集電体6のベース部6aの斜視図である。封口板2に設けられた端子取り付け孔2aの周囲において、封口板2の電池外部側に外部側絶縁部材11を配置し、封口板2の内面側に内部側絶縁部材10及び正極集電体6のベース部6aを配置する。次に、正極端子7の挿入部7bを電池外部側から、外部側絶縁部材11の貫通孔、封口板2の端子取り付け孔2a、内部側絶縁部材10の貫通孔及びベース部6aの集電体貫通孔6cに挿入し、正極端子7の挿入部7bの先端側をベース部6a上にカシメる。これにより、正極端子7、外部側絶縁部材11、封口板2、内部側絶縁部材10及び正極集電体6が一体的に固定される。なお、正極端子7の先端のカシメられた部分をベース部6aに溶接してもよい。
【0026】
同様に、封口板2に設けられた端子取り付け孔(図示省略)の周囲において、封口板2の電池外部側に外部側絶縁部材13を配置し、封口板2の電池内部側に内部側絶縁部材12及び負極集電体8のベース部8aを配置する。次に、負極端子9を電池外部側から、外部側絶縁部材13の貫通孔、封口板2の端子取り付け孔、内部側絶縁部材12の貫通孔及びベース部8aの貫通孔に挿入し、負極端子9の先端側をベース部8a上にカシメる。これにより、負極端子9、外部側絶縁部材13、封口板2、内部側絶縁部材12及び負極集電体8が一体的に固定される。なお、負極端子9の先端のカシメられた部分をベース部8aに溶接してもよい。
【0027】
[角形二次電池100の組立て]
封口板2に取り付けられた正極集電体6と正極芯体積層部40を接合し、封口板2に取り付けられた負極集電体8と負極芯体積層部50を接合する。そして、電極体3を絶縁シート14で覆い、絶縁シート14で覆われた電極体3を角形外装体1に挿入する。そして、封口板2を角形外装体1にレーザー溶接により溶接し、角形外装体1の開口を封口板2で封口する。封口板2の電解質注液孔16から非水電解質を電池ケース200内に注入した後、電解質注液孔16を封止部材17で封止する。これにより角形二次電池100となる。
【0028】
[端子と集電体の接続部]
端子と集電体の接続部の詳細な構成を、正極側を例に説明する。負極側も同様の構成とすることができる。
【0029】
図5は正極集電体6のベース部6aの電極体3側の面を示す図である。
図6は
図5におけるVI-VI線に沿った断面図である。
図5及び
図6に示すように、正極集電体6のベース部6aは、正極端子7の挿入部7bが挿入される集電体貫通孔6cを有する。集電体貫通孔6cの周囲にはザグリ穴6dが設けられている。なお、
図9(a)に示すように、ザグリ穴6dは底面6d1と側面6d2を有する凹部である。なお、
図9(a)において上方が、電極体3側である。ザグリ穴6dの底面6d1において集電体貫通孔6cの周囲には縁部に沿って凸部6eが設けられている。平面視で凸部6eは環状であることが好ましい。但し、必ずしも環状である必要はない。平面視において環状の一部が切り欠かれた形状の凸部6eとしてもよい。例えば、平面視で弧状の凸部6eが複数形成されていてもよい。平面視で凸部6eは線状であることが好ましい。また、凸部6eの表面を曲面とすることができる。
【0030】
ザグリ穴6dの周囲には円弧状の溝部6fが設けられることが好ましい。溝部6fが設けられることにより、ザグリ穴6dの側面6d2の形状が安定化する。ザグリ穴6dと溝部6fは、それぞれの形状に対応した凹凸を有する金型を用いてプレス加工により同時に形成されることが好ましい。これにより、ザグリ穴6dの縁部近傍の金属が外周側に流れることを抑制できるため、ザグリ穴6dの縁部に形成される角部のRが大きくなることを確実に防止できる。なお、溝部6fは必須の構成ではなく、設けなくてもよい。
【0031】
図7は、正極端子7の挿入部7bを、外部側絶縁部材11の貫通孔、封口板2の端子取り付け孔2a、内部側絶縁部材10の貫通孔、及び正極集電体6のベース部6aの集電体貫通孔6cに挿入した後の状態を示す断面図である。
図7は、正極端子7の挿入部7bをカシメる前の状態を示す図である。
図7は、集電体貫通孔6cの中心を通る断面であり、封口板2の長手方向に沿った断面の断面図である。
図7において上方が電極体3側である。
【0032】
図8は、
図7が示す断面と対応する断面の断面図であり、正極端子7の挿入部7bをカシメた後の状態を示す図である。
【0033】
図9(a)は
図8におけるIX近傍の拡大図であり、正極端子7においてカシメられた部分7xと正極集電体6のベース部6aをレーザー溶接する前の状態を示す図である。
図9(b)は
図8におけるIX近傍の拡大図であり、正極端子7においてカシメられた部分7xと正極集電体6のベース部6aをレーザー溶接した後の状態を示す図である。
【0034】
ベース部6aのザグリ穴6dの底面6d1に凸部6eが設けられていることにより、正極端子7においてカシメられた部分7xとベース部6aの間に大きな隙間が生じることを効果的に抑制できる。したがって、正極端子7とベース部6aがより強固に接続される。また、正極端子7においてカシメられた部分7xとベース部6aのザグリ穴6dの縁部を安定的に溶接接続できる。よって、正極端子7とベース部6aの接続部の信頼性が高い。
【0035】
図10は、正極端子7においてカシメられた部分7xと正極集電体6のベース部6aをレーザー溶接した後の状態を示す図であり、正極端子7においてカシメられた部分7xと正極集電体6のベース部6aの平面図である。
図10に示すように、正極集電体6のベース部6aに設けられたザグリ穴6dの縁部と正極端子7においてカシメられた部分7xが溶接接続され、溶接部60が形成される。なお溶接部60は複数の点状に形成されてもよいし、線状に形成されてもよい。また、溶接部60は環状に形成されてもよい。平面視において、集電体貫通孔6cの中心と溶接部60を結ぶ直線上に凸部6eを設けることが好ましい。
【0036】
[変形例1]
図11は変形例1に係る角形二次電池における正極端子107と正極集電体のベース部106aの接続部近傍の拡大断面図である。
図11は
図9(a)と対応する断面図である。
図11は、正極端子107においてカシメられた部分107xと正極集電体のベース部106aをレーザー溶接する前の状態を示す。変形例1では、正極集電体のベース部106aに設けられたザグリ穴106dの形状が、上述の実施形態と異なる。
【0037】
正極集電体のベース部106aには、集電体貫通孔106cが設けられている。集電体貫通孔106cの周囲にはザグリ穴106dが形成されている。ザグリ穴106dは底面106d1と側面106d2を有する。底面106d1において集電体貫通孔106cの周囲には凸部106eが設けられている。ザグリ穴106dの周囲には溝部106fが設けられている。
【0038】
正極端子107は、集電体貫通孔106cに挿入され、先端がザグリ穴106d内でカシメられている。正極端子107においてカシメられた部分107xは、凸部106eを覆い、底面106d1と側面106d2に接触する。凸部106eが設けられているため、正極端子107においてカシメられた部分107xとベース部106aの間に大きな隙間が生じ難い。
【0039】
変形例1の正極集電体では、集電体貫通孔106cの縁部に角部106xが形成されている。角部106xのRは0.05mm以下であることが好ましい。これにより、正極端子107が正極集電体のベース部106aにより強固に圧接される。よって、正極端子107と正極集電体のベース部106aがより強固に接続される。なお、正極端子107においてカシメられた部分107xとザグリ穴106dの縁部をレーザー等により溶接接続することが好ましい。
【0040】
集電体貫通孔106cの内側面が、凸部106eの一つの側面となっている。また、凸部106eの先端部(
図11中の上端部)には平坦面が形成されている。凸部106eは、側面106d2と離れた位置に配置されている。
【0041】
[変形例2]
図12は変形例2に係る角形二次電池における正極端子207と正極集電体のベース部206aの接続部近傍の拡大断面図である。
図12は
図9(a)と対応する断面図である。
図12は、正極端子207においてカシメられた部分207xと正極集電体のベース部206aをレーザー溶接する前の状態を示す。変形例2では、正極集電体のベース部206aに設けられたザグリ穴206dの形状が、上述の実施形態と異なる。
【0042】
正極集電体のベース部206aには、集電体貫通孔206cが設けられている。集電体貫通孔206cの周囲にはザグリ穴206dが形成されている。ザグリ穴206dは底面206d1と側面206d2を有する。底面206d1において集電体貫通孔206cの周囲には凸部206eが設けられている。凸部206eは曲面部を有する。凸部206eは、側面206d2から離れた位置に配置されている。ザグリ穴206dの周囲には溝部206fが設けられている。
【0043】
正極端子207は、集電体貫通孔206cに挿入され、先端がザグリ穴206d内でカシメられている。正極端子207においてカシメられた部分207xは凸部206eを覆い、底面206d1と側面206d2に接触する。凸部206eが設けられているため、正極端子207においてカシメられた部分207xとベース部206aの間に大きな隙間が生じ難い。
【0044】
変形例2の正極集電体では、凸部206eが集電体貫通孔206cの縁部から離れた位置に形成されている。また、集電体貫通孔206cの縁部に角部206xが形成されている。角部206xのRは0.05mm以下であることが好ましい。これにより、正極端子207が正極集電体のベース部206aにより強固に圧接される。よって、正極端子207と正極集電体のベース部206aがより強固に接続される。なお、正極端子207においてカシメられた部分207xとザグリ穴206dの縁部をレーザー等により溶接接続することが好ましい。
【0045】
[変形例3]
図13は変形例3に係る角形二次電池における正極端子307と正極集電体のベース部306aの接続部近傍の拡大断面図である。
図13は
図9(a)と対応する断面図である。
図13は、正極端子307においてカシメられた部分307xと正極集電体のベース部306aをレーザー溶接する前の状態を示す。変形例3では、正極集電体のベース部306aに設けられたザグリ穴306dの形状が、上述の実施形態と異なる。
【0046】
正極集電体のベース部306aには、集電体貫通孔306cが設けられている。集電体貫通孔306cの周囲にはザグリ穴306dが形成されている。ザグリ穴306dは底面306d1と側面306d2を有する。底面306d1において集電体貫通孔306cの周囲には凸部306eが設けられている。凸部306eは先端部(
図13中では上端部)に平坦面を有する。凸部306eは、側面306d2から離れた位置に配置されている。ザグリ穴306dの周囲には溝部306fが設けられている。
【0047】
正極端子307は、集電体貫通孔306cに挿入され、先端がザグリ穴306d内でカシメられている。正極端子307においてカシメられた部分307xは凸部306eを覆い、底面306d1と側面306d2に接触する。凸部306eが設けられているため、正極端子307においてカシメられた部分307xとベース部306aの間に大きな隙間が生じ難い。
【0048】
変形例3の正極集電体では、凸部306eが集電体貫通孔306cの縁部から離れた位置に形成されている。また、集電体貫通孔306cの縁部に角部306xが形成されている。角部306xのRは0.05mm以下であることが好ましい。これにより、正極端子307が正極集電体のベース部306aにより強固に圧接される。よって、正極端子307と正極集電体のベース部306aがより強固に接続される。なお、正極端子307においてカシメられた部分307xとザグリ穴306dの縁部をレーザー等により溶接接続することが好ましい。
【0049】
[変形例4]
図14は変形例4に係る角形二次電池における正極端子407と正極集電体のベース部406aの接続部近傍の拡大断面図である。
図14は
図9(a)と対応する断面図である。
図14は、正極端子407においてカシメられた部分407xと正極集電体のベース部406aをレーザー溶接する前の状態を示す。変形例4では、正極集電体のベース部406aに設けられたザグリ穴406dの形状が、上述の実施形態と異なる。
【0050】
正極集電体のベース部406aには、集電体貫通孔406cが設けられている。集電体貫通孔406cの周囲にはザグリ穴406dが形成されている。ザグリ穴406dは底面406d1と側面406d2を有する。ザグリ穴406dの周囲には溝部406fが設けられている。
【0051】
正極端子407は、集電体貫通孔406cに挿入され、先端がザグリ穴406d内でカシメられている。正極端子407においてカシメられた部分407xは、底面406d1と側面406d2に接触する。集電体貫通孔406cの径方向(
図14中では左右方向)において、ザグリ穴406dの深さが集電体貫通孔406cから側面406d2に向けて徐々に大きくなるように、底面406d1は傾斜している。このため、正極端子407においてカシメられた部分407xとベース部406aの間に大きな隙間が生じ難い。
【0052】
図14に示すように、集電体貫通孔406cと底面406d1がなす角が90°よりも小さいことが好ましい。これにより、正極端子407が正極集電体のベース部406aにより強固に圧接される。よって、正極端子407と正極集電体のベース部406aがより強固に接続される。
【0053】
変形例4の正極集電体では、集電体貫通孔406cの縁部に角部406xが形成されている。角部406xのRは0.05mm以下であることが好ましい。これにより、正極端子407が正極集電体のベース部406aにより強固に圧接される。よって、正極端子407と正極集電体のベース部406aがより強固に接続される。なお、正極端子407においてカシメられた部分407xとザグリ穴406dの縁部をレーザー等により溶接接続することが好ましい。
【0054】
[その他]
集電体貫通孔の平面視の形状は楕円形又はトラック形状であることが好ましい。そして、端子の挿入部の封口板に対して平行な方向の断面形状を、集電体貫通孔の平面視の形状と同様の形状とすることが好ましい。これにより、封口板に対して端子が回転することを抑制できる。なお、集電体貫通孔の平面視の形状は真円であってもよい。
【0055】
ザグリ穴の平面視の形状は楕円形又はトラック形状であることが好ましい。このような構成であると、端子の挿入部がザグリ穴内でカシメられることにより、集電体に対して端子が回転することをより確実に防止できる。なお、ザグリ穴の平面視の形状は真円であってもよい。
【0056】
ザグリ穴の深さは限定されないが、例えば、0.2~1.0mmであることが好ましく、0.2~0.5mmであることがより好ましく、0.2~0.4mmであることがさらに好ましい。
【0057】
集電体貫通孔の径方向において、ザグリ穴の幅(集電体貫通孔の縁部からザグリ穴の側面までの距離)は、0.5~3.0mmであることが好ましく、0.5~2.0mmであることがより好ましく、0.5~1.3mmであることがさらに好ましい。
【0058】
集電体貫通孔の径方向において、凸部の幅は、0.3~2.0mmであることが好ましく、0.5~1.5mmであることがより好ましく、0.6~1.0mmであることがさらに好ましい。
【0059】
凸部の高さは、ザグリ穴の深さよりも小さいことが好ましい。凸部の高さは、ザグリ穴の深さの0.1~0.5倍であることがより好ましい。
【0060】
本開示の発明は、端子を一回のカシメにより集電体にカシメ固定する場合に特に効果的である。
【符号の説明】
【0061】
100・・・角形二次電池
200・・・電池ケース
1・・・角形外装体
2・・・封口板
2a・・・端子取り付け孔
3・・・電極体
4・・・正極板
4a・・・正極芯体
4b・・・正極活物質層
40・・・正極芯体積層部
5・・・負極板
5a・・・負極芯体
5b・・・負極活物質層
50・・・負極芯体積層部
6・・・正極集電体
6a・・・ベース部
6b・・・リード部
6c・・・集電体貫通孔
6d・・・ザグリ穴
6d1・・・底面
6d2・・・側面
6e・・・凸部
6f・・・溝部
7・・・正極端子
7a・・・鍔部
7b・・・挿入部
7x・・・カシメられた部分
8・・・負極集電体
8a・・・ベース部
8b・・・リード部
9・・・負極端子
9a・・・鍔部
10・・・内部側絶縁部材
11・・・外部側絶縁部材
12・・・内部側絶縁部材
13・・・外部側絶縁部材
14・・・絶縁シート
15・・・ガス排出弁
16・・・電解質注液孔
17・・・封止部材
106a、206a、306a、406a・・・ベース部
106c、206c、306c、406c・・・集電体貫通孔
106d、206d、306d、406d・・・ザグリ穴
106d1、206d1、306d1、406d1・・・底面
106d2、206d2、306d2、406d2・・・側面
106e、206e、306e・・・凸部
106f、206f、306f、406f・・・溝部
106x、206x、306x、406x・・・角部
107、207、307、407・・・正極端子
107x、207x、307x、407x・・・カシメられた部分