(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166635
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】流体冷却式コールドプレート及び流体冷却式コールドプレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20231115BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231115BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167059
(22)【出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA15
5E322AA05
5E322AB01
5E322AB06
5E322AB11
5E322FA01
5F136BA30
5F136CB07
5F136CB08
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】薄型で冷却性能が高く安価な流体冷却式コールドプレートを提供することを目的とする。
【解決手段】コールドプレート16は、冷却流体が流れるスリット31が設けられた第1板状部材30と、第1板状部材30を挟んでスリット31を塞ぐように第1板状部材30に積層された1対の第2板状部材40と、スリット31に連通する流入口43及び流出口44と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却流体が流れるスリットが設けられた第1板状部材と、
前記第1板状部材を挟んで前記スリットを塞ぐように前記第1板状部材に積層された1対の第2板状部材と、
前記スリットに連通する流入口及び流出口と、を備えることを特徴とする流体冷却式コールドプレート。
【請求項2】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうちの少なくとも1種類を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項3】
前記第2板状部材の厚みは、前記第1板状部材よりも薄いことを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項4】
前記流入口及び前記流出口は、前記1対の第2板状部材のいずれかを厚み方向に貫通していることを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項5】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、レーザー溶接で接合されていることを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項6】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、接着剤を用いて接着されていることを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項7】
前記第1板状部材及び前記第2板状部材の接着面の平均粗さが、0.3μm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項8】
前記スリットは、蛇行した形状であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項9】
前記第1板状部材は、第3板状部材と、前記第3板状部材に積層された第4板状部材と、を含み、
前記スリットは、前記第3板状部材に設けられた第1スリットと、前記第4板状部材に設けられた第2スリットと、を含み、
前記第1スリットは、第1幹部と、前記第1幹部と交差する第1方向に前記第1幹部から分岐した複数の第1枝部と、を備え、
前記第2スリットは、第2幹部と、前記第1方向と反対の第2方向に前記第2幹部から分岐した複数の第2枝部と、を備え、
前記複数の第1枝部の各々と前記複数の第2枝部の各々とが1対1の関係で対向していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項10】
前記複数の第1枝部の各々と前記複数の第2枝部の各々とが1対1の関係で対向し、且つ、前記複数の第1枝部の各々が前記複数の第2枝部の各々に対してずれていることを特徴とする請求項9に記載の流体冷却式コールドプレート。
【請求項11】
第1板状部材にスリットを形成する工程と、
第2板状部材又は第1板状部材にスリットに連通する流入口及び流出口を形成する工程と、
第1板状部材を挟んでスリットを塞ぐように1対の第2板状部材を第1板状部材に接合する工程と、と備えることを特徴とする流体冷却式コールドプレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体冷却式コールドプレート及び流体冷却式コールドプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドのノズルを駆動する駆動回路を備えている。駆動回路は、動作に伴って熱を発生するが、過度の発熱は、駆動回路の性能低下を招く。また、駆動回路がインクジェットヘッドと一体に設けられる場合には、駆動回路の発熱がノズルの吐出精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0003】
電子機器の冷却については、従来、様々な提案が行われている。例えば、特許文献1には、鋳型内に埋設される複数の金属製配管同士の位置関係を維持すべく金属製配管に取り付ける固定金具を用いた流体冷却式コールドプレートの製造方法が記載されている。特許文献2には、樹脂部材における透光性を有する部分の少なくとも一部分と、金属部材の微細凹凸構造部分の少なくとも一部分とが、光硬化性層を介して接している物品に光を照射することで光硬化性層を硬化させるコールドプレートの製造方法が記載されている。特許文献3には、ジャケット本体と封止体とを摩擦攪拌接合する液冷ジャケットの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/167022号
【特許文献2】特開2019-136872号公報
【特許文献3】特開2017-42819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された製造方法では、鋳型に金属パイプを金具で位置決めしてアルミの溶湯を流し込むため、設備が大掛かりとなるうえに工数が多くなる。また、性能面では、冷媒と被冷却熱源との間に金属パイプとアルミ部が存在するので厚みが増して熱抵抗が大きくなり、熱交換効率が低下する。特許文献2に記載された製造方法では、光硬化性の接着剤は高価である。また、接着面に紫外線などの光を当てるため、光路の制約により流路構成の自由度が低く、性能向上が困難である。特許文献3に記載された製造方法では、攪拌摩擦接合の設備費がかさむ。また、接合速度が遅いため、工数が多くなる。また、接合線(溶接線)が直線、緩曲線又は円に限られるため、複雑な流路形成ができず、性能向上が困難である。
【0006】
また、アルミブロックにガンドリルで形成した穴に冷媒液を流すコールドプレートも考えられるが、ガンドリルで深い穴を空けるため、工数が多くなる。また、穴の半径方向の肉厚を十分に確保しておかなければ、ガンドリルの芯ズレにより半径方向に穴が開き、液漏れが発生するが、肉厚を厚くすると、熱抵抗が増えるため、性能が低下する。また、直線の流路しか形成できないため、性能向上が困難である。
【0007】
また、上記の4つの例では、いずれもコールドプレートの厚みが大きくなり、省スペース化が困難である。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、薄型で冷却性能が高く安価な流体冷却式コールドプレート及び流体冷却式コールドプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体冷却式コールドプレートは、冷却流体が流れるスリットが設けられた第1板状部材と、前記第1板状部材を挟んで前記スリットを塞ぐように前記第1板状部材に積層された1対の第2板状部材と、前記スリットに連通する流入口及び流出口と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうちの少なくとも1種類を用いて形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第2板状部材の厚みは、前記第1板状部材よりも薄くてもよい。
【0012】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記流入口及び前記流出口は、前記1対の第2板状部材のいずれかを厚み方向に貫通していてもよい。
【0013】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、レーザー溶接で接合されていてもよい。
【0014】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第1板状部材及び前記第2板状部材は、接着剤を用いて接着されていてもよい。
【0015】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第1板状部材及び前記第2板状部材の接着面の平均粗さが、0.3μm以上1μm以下であってもよい。
【0016】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記スリットは、蛇行した形状であってもよい。
【0017】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記第1板状部材は、第3板状部材と、前記第3板状部材に積層された第4板状部材と、を含み、前記スリットは、前記第3板状部材に設けられた第1スリットと、前記第4板状部材に設けられた第2スリットと、を含み、前記第1スリットは、第1幹部と、前記第1幹部と交差する第1方向に前記第1幹部から分岐した複数の第1枝部と、を備え、前記第2スリットは、第2幹部と、前記第1方向と反対の第2方向に前記第2幹部から分岐した複数の第2枝部と、を備え、前記複数の第1枝部の各々と前記複数の第2枝部の各々とが1対1の関係で対向していてもよい。
【0018】
本発明に係る流体冷却式コールドプレートにおいて、前記複数の第1枝部の各々と前記複数の第2枝部の各々とが1対1の関係で対向し、且つ、前記複数の第1枝部の各々が前記複数の第2枝部の各々に対してずれていてもよい。
【0019】
また、本発明に係る流体冷却式コールドプレートの製造方法は、第1板状部材にスリットを形成する工程と、第2板状部材又は第1板状部材にスリットに連通する流入口及び流出口を形成する工程と、第1板状部材を挟んでスリットを塞ぐように1対の第2板状部材を第1板状部材に接合する工程と、と備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薄型で冷却性能が高く安価な流体冷却式コールドプレート及び流体冷却式コールドプレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るインクの供給路を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る作像ユニットの平面図である。
【
図4A】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図5A】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図5B】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの斜視図である。
【
図6A】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートの斜視図である。
【
図6B】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートの斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートの分解図である。
【
図8A】本発明の第1実施形態に係るコールドプレートとドライバーICとの位置関係を示す斜視図である。
【
図8B】本発明の第1実施形態に係るスリットとドライバーICとの位置関係を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るコールドプレートの分解図である。
【
図10A】本発明の第2実施形態に係るコールドプレートの斜視図である。
【
図10B】本発明の第2実施形態に係る1対の第1板状部材を積層した様子を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るスリットの内部の冷却流体の流れを示す斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るスリットの内部の冷却流体の流れを示す斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態の第1変形例に係るコールドプレートの斜視図である。
【
図14A】本発明の第2実施形態の第2変形例に係るコールドプレートの斜視図である。
【
図14B】本発明の第2実施形態の第3変形例に係るコールドプレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しつつ本発明の第1実施形態に係るプリンター1(インクジェット記録装置)について説明する。
【0023】
最初に、プリンター1の全体の構成について説明する。
図1は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。
図2は、インクの供給路を模式的に示す図である。
図3は、作像ユニット6の平面図である。
図4A、4Bは、インクジェットヘッド12の斜視図である。以下、
図1における紙面手前側をプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0024】
プリンター1は、インクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。プリンター1は、直方体状の本体ハウジング3を備える。本体ハウジング3内の下部には、普通紙、コート紙等の枚葉のシートSが収容される給紙カセット4と、給紙カセット4からシートSを送り出す給紙ローラー5が設けられている。給紙カセット4の上方には、シートSを吸着して搬送する搬送ユニット7が設けられている。搬送ユニット7の上方には、インクジェット方式の作像ユニット6が設けられている。本体ハウジング3の右上部には、画像が形成されたシートSを排出する排出ローラー対8と、排出されたシートSが積載される排出トレイ9が設けられている。
【0025】
搬送ユニット7は、多数の通気孔(図示省略)が設けられ、複数のローラー22a乃至22eに巻き掛けられた無端の搬送ベルト21と、多数の通気孔が設けられ、上面が搬送ベルト21の内面に接触する搬送板23と、搬送板23の通気孔を介して空気を吸引することでシートSを搬送ベルト21に吸着させる吸引部24と、を備える。モーター等の駆動部(図示省略)によりローラー22aが駆動されることで、搬送ベルト21がY1方向に回転し、搬送ベルト21に吸着されたシートSがY1方向に搬送される。
【0026】
作像ユニット6は、ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11M(ヘッドユニット11と総称する)を備え、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する。ヘッドユニット11Y、11Bk、11C、11Mには、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクコンテナ20Y、20Bk、20C、20M(インクコンテナ20と総称する)が接続されている。
【0027】
ヘッドユニット11は、1つ以上のインクジェットヘッド12、例えば、千鳥に配置された複数のインクジェットヘッド12を備える(
図3乃至4B)。インクジェットヘッド12は、前後方向を長手方向とする直方体状の筐体13と、筐体13の底部に設けられたノズルプレート14と、を備える。ノズルプレート14は、前後方向(搬送ベルト21の搬送方向と交差する搬送ベルト21の幅方向)に並ぶ多数のノズルを備え、各ノズルの吐出口がノズルプレート14の下面に設けられている(図示省略)。各ノズルには圧電素子が設けられ(図示省略)、筐体13の内部には圧電素子を駆動するドライバーIC15が設けられている。
【0028】
プリンター1は、
図2に示されるインク供給路を備える。同図では、1色のインクに対応する供給路が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、4系統の同様の供給路が設けられている。プリンター1は、インクコンテナ20が装着されるコンテナ装着部51と、インクを濾過するフィルター52と、インクコンテナ20からフィルター52を介してインクを吸引するポンプ53と、ポンプ53から送り出されたインクを貯留するサブタンク54と、サブタンク54に貯留されたインクをヘッドユニット11に供給するポンプ55と、を備える。ポンプ55は、インクジェットヘッド12に設けられたソケット12Sに接続される。
【0029】
本体ハウジング3の内部には、給紙カセット4から搬送ユニット7を経て排出トレイ9に至る搬送路10が設けられている。搬送路10には、シートSを搬送する複数の搬送ローラー対17が設けられている。作像ユニット6よりも搬送方向上流側には、レジストローラー対18が設けられている。
【0030】
プリンター1の各部は、制御部2によって制御される。制御部2は、プロセッサーとメモリーとを備える。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。メモリーは、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶媒体を含む。プロセッサーは、メモリーに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで各種処理を実施する。なお、制御部2は、ソフトウェアを用いない集積回路によって実現されてもよい。
【0031】
プリンター1の基本的な画像形成動作は、次のとおりである。外部のコンピューター等からプリンター1に画像形成ジョブが入力されると、給紙ローラー5が給紙カセット4から搬送路10にシートSを送り出し、回転が停止されたレジストローラー対18がシートSの斜行を補正する。レジストローラー対18が所定のタイミングで搬送ユニット7にシートSを送り出すと、搬送ユニット7が搬送ベルト21にシートSを吸着してY1方向に搬送する。制御部2がシートSの搬送と同期させてインクジェットヘッド12の各ノズルに対応する階調データを駆動回路に供給すると、駆動回路が階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給することでノズルからインク滴が吐出され、シートSに画像が形成される。排出ローラー対8は、画像が形成されたシートSを排出トレイ9に排出する。
【0032】
[インクジェットヘッド]
次に、インクジェットヘッド12の構成について詳細に説明する。
図4A乃至5Bは、インクジェットヘッド12の斜視図である。
【0033】
[インクジェットヘッド]
筐体13とノズルプレート14は、ステンレス鋼等の金属で形成されている。筐体13の上部には、制御部2からのケーブル(図示省略)が接続されるコネクター12Cが設けられている。ノズルプレート14の前後両端部には、ポンプ55からの配管が接続されるソケット12Sが設けられている。
【0034】
ノズルプレート14に設けられた各ノズルには、圧電素子(図示省略)が設けられている。筐体13の内部には、圧電素子を駆動するドライバーIC15(Integrated Circuit、図示省略)が設けられている。制御部2は、各ノズルに対応する画素毎の階調データをドライバーIC15に供給し、ドライバーIC15は、階調データに応じた駆動信号を圧電素子に供給する。
【0035】
ドライバーIC15は、動作に伴って発熱するが、この熱がインクの粘度、圧電素子の性能等に影響を与えるおそれがある。そこで、筐体13の外部への放熱を促進するために、ドライバーIC15が筐体13の左右の側板の内面に取り付けられている。また、筐体13の外側には、左右の側板を挟んでドライバーIC15と対向するように、一対のコールドプレート16(流体冷却式コールドプレートの一例)が設けられている。コールドプレート16の内部には、冷却流体が流れる流路が設けられており、ドライバーIC15が発生する熱が筐体13を介して冷却流体に移動することで、ドライバーIC15が冷却される。筐体13とコールドプレート16との間に、高熱伝導性を有するゲルシートが設けられていてもよい。冷却流体は、液体でも気体でもよいが、冷却流体として液体を用いれば、冷却効率を高くすることができる。液体としては、水や不凍液などを用いることができる。不凍液は、例えば、グリコールや、アルコールを主成分とするものを用いることができる。気体としては、窒素や空気などを用いることができる。
【0036】
[コールドプレート]
次に、コールドプレート16の構成について詳細に説明する。
図6A、6Bは、コールドプレート16の斜視図である。
図7は、コールドプレート16の分解図である。
図8Aは、コールドプレート16とドライバーIC15との位置関係を示す斜視図である。
図8Bは、スリット31とドライバーIC15との位置関係を示す斜視図である。ここでは、インクジェットヘッド12の筐体13の右側に設けられたコールドプレート16について説明する。左側のコールドプレート16は、左右反転した構造を有する以外は右側のコールドプレート16と同様に構成されている。
【0037】
コールドプレート16は、冷却流体が流れるスリット31が設けられた第1板状部材30と、第1板状部材30を挟んでスリット31を塞ぐように第1板状部材30に積層された1対の第2板状部材40と、スリット31に連通する流入口43及び流出口44と、を備える。
【0038】
第1板状部材30及び第2板状部材40は、前後方向を長手方向とする長方形状の板状部材である。第1板状部材30及び第2板状部材40は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうちのいずれかを用いて形成されている。第1板状部材30と第2板状部材40の材料が異なっていてもよい。例えば、冷却性能を高めるためには、第2板状部材40の厚みが薄い方がよいが、その場合、耐腐食性や剛性が不足するおそれがあるため、耐腐食性や剛性を補う添加物を含む材料を使用することが考えられる。
【0039】
第2板状部材40の厚みは、第1板状部材30よりも厚い。第1板状部材30の厚みは、例えば、2mm以上3mm以下である。第2板状部材40の厚みは、例えば、0.3mm以上0.5mm以下である。
【0040】
第1板状部材30には、スリット31が設けられている。スリット31の第1端部311は、第1板状部材30の前端部側に設けられ、スリット31の第2端部312は、第1板状部材30の後端部側に設けられている。スリット31が左右方向に貫通していることは言うまでもない。スリット31は、レーザーカット、切削、打ち抜き、エッチング等により形成される。
【0041】
冷却性能を高めるには、スリット31の長さが長いほどよい。そのため、
図7に示されるように、スリット31は蛇行した形状を有することが望ましい。また、流路抵抗を抑制するには、スリット31の曲がりが少ないほどよい。そのため、
図7に示されるように、第1板状部材30の長手方向に沿った複数の直線状のスリット31Sの端部同士を円弧状のスリット31Bで結合した形状が望ましい。なお、スリット31の形状は、
図7の例以外の形状でもよい。例えば、1本の直線状のスリット31が設けられていてもよい。また、スリット31の第1端部311と第2端部312の両方が、第1板状部材30の前端部側に設けられていてもよく、両方が後端部側に設けられていてもよい。
【0042】
第1板状部材30の前端部及び後端部には、左右方向に貫通したねじ穴32が設けられている。ねじ穴32の内面には、ねじ山が形成されている。第2板状部材40には、第1板状部材30のねじ穴32に対応するねじ穴42が設けられている。1対の第2板状部材40のうち、左側の第2板状部材40には、第1板状部材30のスリット31の第1端部311、第2端部312に対応する位置に、それぞれ流入口43、流出口44が設けられている。流入口43及び流出口44は、左右方向(厚み方向の一例)に貫通している。第1板状部材30及び第2板状部材40の前後両端部には、後述するステー71が挿入される貫通穴35、45が設けられている。
【0043】
流入口43と流出口44には、口金61が設けられるが、第2板状部材40が薄肉の部材であるため、口金61の取り付けが困難である。そのため、第2板状部材40の前端部と後端部の左方には、取付部材62が設けられる。取付部材62は、第2板状部材40よりも厚肉の板状の金属部材である。取付部材62には、口金61が取り付けられる口金ねじ穴63と、第1板状部材30のねじ穴32に対応するねじ穴64が設けられている。口金61の外周面には、ねじ山が形成されている。取付部材62と第2板状部材40との間には、コム製のガスケット66が設けられる。ガスケット66には、取付部材62の口金ねじ穴63とねじ穴64に対応する貫通穴67が設けられている。取付部材62及びガスケット66には、ステー71の干渉を回避するための切欠65、68が設けられている。
【0044】
図7に示されるように、第1板状部材30を挟んで1対の第2板状部材40が積層される。1対の第2板状部材40のうち、流入口43及び流出口44が設けられた第2板状部材40が左側に配置され、もう一方の第2板状部材40が右側に配置される。第1板状部材30及び第2板状部材40は、レーザー溶接で接合される。
【0045】
左側の第2板状部材40の左面にガスケット66が配置され、ガスケット66の左面に取付部材62が配置され、取付部材62とガスケット66が、ねじ70を用いて第1板状部材30と第2板状部材40に締結される。口金61は、取付部材62の口金ねじ穴63に締結される。このようにして組み立てられたコールドプレート16が、筐体13の右側面に対向させて配置される。また、上記のコールドプレート16を左右反転した構造を有するコールドプレート16が、筐体13の左側面に対向させて配置される。
【0046】
図6A、6Bに示されるように、組み立て後のコールドプレート16においては、取付部材62の下端部が第1板状部材30及び第2板状部材40の下端よりも下方に突出している。取付部材62の下端部がノズルプレート14の上面に突き当てられ、ノズルプレート14とコールドプレート16との間に間隙が形成されることで、ノズルプレート14とコールドプレート16との熱の移動が抑制される。左右のコールドプレート16の第1板状部材30及び第2板状部材40の貫通穴35、45にステー71が挿入され、ステー71によって左右のコールドプレート16が連結される。
【0047】
図4Aに示されるように、インクジェットヘッド12の前側では、左右のコールドプレート16の口金61が対向している。このうち、右側のコールドプレート16の口金61は流入口43に連通しており、冷却流体を送り出すポンプ(図示省略)に接続される。左側のコールドプレート16の口金61は流出口44に連通しており、冷却流体を冷却する熱交換器(図示省略)に接続される。また、
図5Aに示されるように、インクジェットヘッド12の後側でも、左右のコールドプレート16の口金61が対向しているが、両者は中継管72で接続されている。この構成により、右側の口金61から流入した冷却流体が右側のコールドプレート16のスリット31を通過した後、中継管72を経由して左側のコールドプレート16のスリット31を通過して左側の口金61から流出する。
【0048】
前述のとおり、ドライバーIC15は、筐体13の左右の側板を介してコールドプレート16と対向している。例えば、筐体13の右側では、コールドプレート16とドライバーIC15とが
図8Aに示される位置関係で対向している。同図では、筐体13の側板の図示は省略されている。左側の第2板状部材40を省いて図示すると、スリット31とドライバーIC15とが
図8Bに示されるように対向している。
【0049】
以上説明した本実施形態に係るコールドプレート16によれば、薄型で冷却性能が高く安価な流体冷却式コールドプレートを提供することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るコールドプレート16によれば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金は熱伝導性が高いため、流体冷却式コールドプレートの冷却性能を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るコールドプレート16によれば、第2板状部材40の厚みが第1板状部材30よりも薄いことで第2板状部材40の熱容量が小さくなるため、流体冷却式コールドプレートの冷却性能を高めることができる。
【0052】
また、本実施形態に係るコールドプレート16によれば、流入口43及び流出口44を第1板状部材30に設ける場合と比べて、加工が容易であり、且つ、流体冷却式コールドプレートの気密性を高めることができる。
【0053】
また、本実施形態に係るコールドプレート16によれば、第1板状部材30及び第2板状部材40がレーザー溶接で接合されているから、他の溶接方法を用いる場合と比べて安価に流体冷却式コールドプレートを製造することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るコールドプレート16によれば、第1板状部材30及び第2板状部材40の接着面の平均粗さが、0.3μm以上1μm以下であるから、溶接の際の溶けがよい。また、接着面に沿った冷却流体の流れが適度に乱されることで接着面から冷却流体への熱の移動が促進される。
【0055】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るコールドプレート75(流体冷却式コールドプレートの一例)について説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態と同様の第2板状部材40、口金61、取付部材62、ガスケット66を備えるが、これらの部材についての説明と図示は省略する。
図9は、コールドプレート75の分解図である。
図10Aは、コールドプレート75の斜視図である。
図10Bは、第3板状部材80と第4板状部材90を積層した様子を示す斜視図である。
図11、12は、第1スリット81、第2スリット91の内部の冷却流体の流れを示す斜視図である。
【0056】
第1板状部材30は、第3板状部材80と、第3板状部材80に積層された第4板状部材90と、を含み、スリット31は、第3板状部材80に設けられた第1スリット81と、第4板状部材90に設けられた第2スリット91と、を含み、第1スリット81は、第1幹部81Sと、第1幹部81Sと交差する第1方向に第1幹部81Sから分岐した複数の第1枝部81Bと、を備え、第2スリット91は、第2幹部91Sと、第1方向と反対の第2方向に第2幹部91Sから分岐した複数の第2枝部91Bと、を備え、複数の第1枝部81Bの各々と複数の第2枝部91Bの各々とが1対1の関係で対向している。具体的には以下のとおりである。
【0057】
第3板状部材80及び第4板状部材90は、前後方向を長手方向とする長方形状の板状部材である。第3板状部材80及び第4板状部材90は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金のうちのいずれかを用いて形成されている。第3板状部材80及び第4板状部材90の材料は、第2板状部材40の材料と異なっていてもよい。第3板状部材80及び第4板状部材90の厚みは、例えば、1mm以上1.5mm以下である。
【0058】
第3板状部材80、第4板状部材90には、それぞれ櫛形の第1スリット81、第2スリット91が設けられている。第1スリット81及び第2スリット91は、レーザーカット、切削、打ち抜き、エッチング等により形成される。
【0059】
第1スリット81は、前後方向を長手方向とする直線状の第1幹部81Sと、第1幹部81Sから下方に分岐した複数の直線状の第1枝部81Bと、を備える。第1幹部81Sの前端部は、最も前側の第1枝部81Bよりも前側に位置する。第2スリット91は、前後方向を長手方向とする直線状の第2幹部91Sと、第2幹部91Sから上方に分岐した第1枝部81Bと同数の直線状の第2枝部91Bと、を備える。第2幹部91Sの後端部は、最も後側の第2枝部91Bよりも後側に位置する。第2幹部91Sの長さは、第1幹部81Sと等しい。第2枝部91Bの長さは、第1枝部81Bと等しい。左側の第2板状部材40には、第1幹部81Sの前端部に対応する位置に、流入口43が設けられている。右側の第2板状部材40には、第2幹部91Sの後端部に対応する位置に、流出口44が設けられている。
【0060】
図10Bに示されるように、第3板状部材80と第4板状部材90を積層した場合、複数の第1枝部81Bの各々と複数の第2枝部91Bの各々とが1対1の関係で対向するが、第1枝部81Bの各々が第2枝部91Bの各々に対して、それぞれ、第1枝部81Bの幅の3分の1乃至3分の2程度、後方にずれた位置にある。また、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対して、若干上方にずれた位置にある。そのため、
図11、12に示されるように、流入口43から流入した冷却流体が、第1幹部81Sから複数の第1枝部81Bへと分岐し、複数の第1枝部81Bの各々から対向する第2枝部91Bへと流入し、複数の第2枝部91Bから第2幹部91Sへと合流し、流出口44から流出する。
【0061】
以上説明した本実施形態に係るコールドプレート75によれば、流入口43と流出口44との間に並列の流路が形成される。並列の流路を形成する場合、1枚の第1板状部材30で形成しようとすると並列の流路間の部分が他の部分から切り離されてしまい、第2板状部材40との接合作業が複雑化してしまうが、本実施形態に係るコールドプレート75によれば、並列の流路間の部分が切り離されることがないから、容易に並列の流路を形成することができる。
【0062】
また、本実施形態に係るコールドプレート75によれば、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対してずれていない場合と比べて、冷却流体と第3板状部材80及び第4板状部材90との接触面積が増えるから、冷却性能を高めることができる。
【0063】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0064】
図13は、第2実施形態の第1変形例に係るコールドプレート75の斜視図である。第2実施形態では、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対して前後方向及び上下方向にずれている例が示されたが、同図に示されるように、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対してずれていなくてもよい。この構成によれば、容易に並列の流路を形成することができる。
【0065】
図14Aは、第2実施形態の第2変形例に係るコールドプレート75の斜視図である。同図に示されるように、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対して前後方向だけにずれていてもよい。また、
図14Bは、第2実施形態の第3変形例に係るコールドプレート75の斜視図である。同図に示されるように、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対して上下方向だけにずれていてもよい。第2変形例及び第3変形例によれば、第1枝部81Bが第2枝部91Bに対してずれていない場合と比べて、冷却流体と第3板状部材80及び第4板状部材90との接触面積が増えるから、冷却性能を高めることができる。
【0066】
上記実施形態では、第1板状部材30と第2板状部材40がレーザー溶接で接合される例が示されたが、第1板状部材30と第2板状部材40は、接着剤を用いて接着されてもよい。この場合も、第1板状部材30及び第2板状部材40の接着面の平均粗さが0.3μm以上1μm以下であることで、接着剤のなじみがよくなる。
【0067】
上記実施形態では、第2板状部材40に流入口43と流出口44が設けられている例が示されたが、第1板状部材30に流入口43と流出口44が設けられていてもよい。例えば、第1板状部材30の厚みよりも小さい径のドリルで第1板状部材30の端面からスリット31の第1端部311及び第2端部312に連通する穴を形成することで流入口43と流出口44が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
16 コールドプレート
30 第1板状部材
31 スリット
40 第2板状部材
43 流入口
44 流出口
75 コールドプレート
80 第3板状部材
81 第1スリット
81S 第1幹部
81B 第1枝部
90 第4板状部材
91 第2スリット
91S 第2幹部
91B 第2枝部