(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166639
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】新規フェノール化合物及び該化合物を含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 235/36 20060101AFI20231115BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20231115BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20231115BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
C07C235/36 CSP
C08K5/20
C08L77/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020171952
(22)【出願日】2020-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】宮武 俊明
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB51
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BV35
4J002AA001
4J002AC091
4J002AC121
4J002BB021
4J002BB031
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4J002FD010
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4J002GT00
(57)【要約】
【課題】高い耐着色性を有する、樹脂の耐熱性の向上に有効な新規フェノール化合物を提供する。
【解決手段】
式(1):
[式(1)中、Xは、式(2):
(式(2)中、*は、結合手を表す)で表され、R
1及びR
2は、互いに独立に、メチル基、エチル基又はn-プロピル基を表す]
で表されるフェノール化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式(1)中、Xは、式(2):
【化2】
(式(2)中、*は、結合手を表す)で表され、R
1及びR
2は、互いに独立に、メチル基、エチル基又はn-プロピル基を表す]
で表されるフェノール化合物。
【請求項2】
式(1)は、式(3):
【化3】
で表される、請求項1に記載のフェノール化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフェノール化合物及び樹脂を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂はポリアミドである、請求項3に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規フェノール化合物及び該化合物を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料は、製造時、加工時さらには使用時に、熱、酸素等の作用により劣化し、分子切断や分子架橋といった現象に起因する樹脂材料の強度物性の低下、流れ性の変化、着色、表面物性の低下等を伴い、商品価値が著しく損なわれることが知られている。
【0003】
このような熱、酸素等による劣化を防ぐ目的で、従来から各種フェノール系安定剤が開発され、これらを樹脂材料に添加することにより、樹脂材料を安定化できることが知られている。例えば特許文献1には、ヒンダードフェノール酸化防止剤化合物を含む熱及び紫外(UV)線安定化組成物が開示されている。また、特許文献2には、アルキルフェノールを用いる有機ポリマーに対する安定剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-518430号公報
【特許文献2】特開昭-142032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、例えば特許文献1及び2に記載されているような従来のフェノール系安定剤は、樹脂の耐熱性向上に対しては一定の効果を示す一方、フェノール系安定剤自体の耐着色性、特にNOxガスによる耐着色性が必ずしも十分ではない場合があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、高い耐着色性を有する、樹脂の耐熱性の向上に有効な新規フェノール化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
〔1〕式(1):
【化1】
[式(1)中、Xは、式(2):
【化2】
(式(2)中、*は、結合手を表す)で表され、R
1及びR
2は、互いに独立に、メチル基、エチル基又はn-プロピル基を表す]
で表されるフェノール化合物。
〔2〕式(1)は、式(3):
【化3】
で表される、〔1〕に記載のフェノール化合物。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載のフェノール化合物及び樹脂を含む、樹脂組成物。
〔4〕前記樹脂はポリアミドである、〔3〕に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い耐着色性を有する、樹脂の耐熱性の向上に有効な新規フェノール化合物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0010】
本発明のフェノール化合物は、式(1)で表される。
【化4】
【0011】
式(1)中、Xは、式(2):
【化5】
で表され、式(2)中の*は結合手を表す。
【0012】
本発明者らは、式(1)中のXが式(2)で表される場合、式(1)で表されるフェノール化合物(以降、フェノール化合物(1)ともいう)の耐着色性、特にNOxガスによる耐着色性が向上しやすいことを見出した。式(1)中のXを式(2)で表される構造とすることにより、フェノール化合物(1)の耐着色性を向上しやすい理由は明らかではないが、フェノール化合物(1)が式(2)で表される環状骨格を含むことにより分子の剛直性が増すため、NOxガスがフェノール化合物のパラ位に接近しづらく、着色性化合物の生成が抑制されるためであると考えられる。
また、本発明者らは、式(1)中のXが式(2)で表される化合物を樹脂に添加すると、樹脂の耐熱性を向上し得ることを見出した。これは、Xが式(2)で表され、環状構造を含むことにより、フェノール化合物(1)の耐熱性が向上する結果、高温下であっても樹脂中に添加したフェノール化合物(1)が蒸散及び/又は分解しにくく、樹脂中のフェノール化合物(1)の量が減少しにくいためであると考えられる。
【0013】
式(1)中、R1及びR2は、互いに独立に、メチル基、エチル基又はn-プロピル基を表し、R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。R1及びR2を嵩高くない基であるメチル基、エチル基又はn-プロピル基として、式(1)中のフェノール構造部分の嵩高さを低減することにより、フェノール化合物(1)の耐着色性(又は耐変色性)を向上しやすい。式(1)中のフェノール構造部分の嵩高さを低減することにより、フェノール化合物(1)の耐着色性を向上しやすい理由は明らかではないが、フェノール化合物(1)とNOxガスとの反応がフェノール化合物のメタ位で進行しやすい結果、フェノール化合物とNOxガスとがフェノール化合物のパラ位で反応することにより生じる着色性化合物の生成を抑制し得るためであると考えられる。
本発明の一実施形態において、R1及びR2は、フェノール化合物(1)の耐着色性をより向上しやすい観点から、互いに独立に、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)は、式(3):
【化6】
で表される。式(3)で表される化合物は、耐着色性に優れ、また、添加した樹脂の耐熱性を向上しやすい。
【0015】
フェノール化合物(1)は、イソホロンジアミンと、式(4)で表されるカルボン酸、及び/又はその誘導体とを反応させることにより合成できる。式(4)で表されるカルボン酸及びその誘導体は、単独で又は2種以上組合せて用いてよい。式(4)で表されるカルボン酸の誘導体としては、カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【化7】
[式(4)中、Rは、式(1)中のR
1又はR
2と同じである]
【0016】
式(4)で表されるカルボン酸及びその誘導体の具体例としては、例えば、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸メチル等のカルボン酸エステル、酢酸-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸無水物等のカルボン酸無水物、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸クロリド等のカルボン酸ハロゲン化物等が挙げられる。これらのカルボン酸及びその誘導体は、単独で又は2種以上組合せて用いてもよい。
これらの中でも、加水分解性の観点からは、式(4)で表されるカルボン酸のエステルが好ましく、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸メチル等の式(4)のカルボン酸アルキルエステルがより好ましい。
【0017】
イソホロンジアミンと式(4)で表されるカルボン酸、及び/又はその誘導体との反応において、式(4)で表されるカルボン酸及び/又はその誘導体の使用量は、イソホロンジアミンに対してカルボン酸及び/又はその誘導体を不足なく反応させ、フェノール化合物(1)を得やすい観点から、イソホロンジアミン1モルに対して、好ましくは1.5~5モル、より好ましくは1.8~3モル、さらに好ましくは2~2.5モルであってよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、イソホロンジアミンと式(4)で表されるカルボン酸及びその誘導体との反応は、必要に応じて触媒の存在下で行ってよい。触媒としては、例えばジブチルスズオキシド、ジオクチルスズオキシド、ジドデシルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、メチルフェニルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロリド、スズジ(2-エチルヘキサノエート)、スズジクロリド等のスズ化合物が挙げられる。これらの触媒は、単独で又は2種以上組合せて用いてよい。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記反応を触媒の存在下で行う場合、触媒の添加量は、
適宜選択すればよく、例えばイソホロンジアミン1モルに対して、0.001~1モル、好ましくは0.01~0.8モル、より好ましくは0.1~0.5モルであってよい。前記反応を触媒の存在下で行う場合、触媒は、一度に添加しても複数回に分けて添加してもよい。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記反応は、溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応を阻害しない限り特に制限されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の含酸素系炭化水素;クロロホルム、四塩化炭素、モノクロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上組合せて用いてもよい。これらの中でも、沸点及び溶解性の観点から、トルエン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記反応温度は、好ましくは60~180℃、より好ましくは80~160℃である。前記反応は、空気下で行っても、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよいが、反応系内の水分を除去しやすい観点からは、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、前記反応は常圧下、加圧下、又は減圧下のいずれで行ってもよい。
【0022】
前記反応後、得られた反応生成物を、慣用の方法、例えば濾過、洗浄、濃縮、再沈殿、再結晶、シリカゲルカラムトグラフィー等の分離手段により、反応混合物から分離精製することにより、フェノール化合物(1)を得ることができる。
【0023】
本発明のフェノール化合物は、式(1)で表される構造を有するため、高い耐熱性を有しており、例えば本発明のフェノール化合物の窒素雰囲気下、30℃から600℃まで20℃/分で昇温する場合における10%質量減少温度は、373℃以上、50%質量減少温度は430℃以上であってよい。フェノール化合物(1)は、高い耐熱性を有し、前記質量減少温度が高いため、高温下であってもフェノール化合物(1)が蒸散及び/又は分解しにくく、樹脂を高温で加工した後であっても樹脂中のフェノール化合物(1)の量の減少を抑制しやすいため、フェノール化合物(1)を添加した樹脂の耐熱性を向上できる。フェノール化合物(1)の前記質量減少温度は、熱重量示差熱分析装置を用いて測定でき、例えば、実施例に記載の方法で測定できる。
【0024】
本発明のフェノール化合物は、例えば後述の比較例1及び2における化合物A-2及びA-3等の従来のフェノール系化合物と比較して、高い耐着色性を有しており、着色しにくい。これは、本発明のフェノール化合物は、式(1)で表される構造を有するため、従来のフェノール系化合物と比較して、着色性化合物を生成しにくいためであると考えられる。したがって、フェノール化合物(1)は、樹脂に添加しても樹脂を着色しにくい結果、従来のフェノール系化合物を添加した場合と比較して、樹脂の耐着色性も向上し得る。
【0025】
本発明のフェノール化合物は、高い耐着色性を有しており、樹脂の耐熱性及び耐着色性を向上し得る効果を有するため、樹脂安定剤の有効成分として有用である。フェノール化合物(1)を樹脂安定剤の有効成分として使用する場合において、樹脂安定剤は、フェノール化合物(1)として、式(1)で表される化合物を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0026】
本発明のフェノール化合物により安定化され得る、特に耐熱性及び耐着色性が向上し得る樹脂としては特に制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン(HD-PE)、低密度ポリエチレン(LD-PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、EEA(エチレン/アクリル酸エチル共重合)樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)等のポリスチレン類、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、塩素化ポリエチレン、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
これらの樹脂の中でも、熱可塑性樹脂、とりわけポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック等が好ましく、より好ましくはポリアミドである。
【0028】
ポリアミドは、ポリマー鎖にアミド結合を有するものであって、加熱溶融できるものであればよい。ポリアミドはいずれの方法で製造されたものでもよく、例えばジアミン類とジカルボン酸類との縮合反応、アミノカルボン酸類の縮合反応、ラクタム類の開環重合等の方法によって製造されたものが挙げられる。ポリアミドとしては、例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ポリ-ビス(p-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド、ナイロン46等の脂肪族ポリアミド;ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロンM5T等の半芳香族ポリアミド;ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66とナイロン6との共重合体であるナイロン66/6、ナイロン6/12等の共重合体;ナイロン6Tとナイロン66との共重合体である6T/66ナイロン等が挙げられる。
【0029】
フェノール化合物(1)を樹脂安定剤の有効成分として樹脂に添加する場合のフェノール化合物(1)の添加量は、安定化効果が得られる限り制限されないが、フェノール化合物(1)の樹脂安定剤としての作用を高めやすい観点からは、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であってよい。また、樹脂の着色を抑制しやすい観点及びフェノール化合物(1)のブリードアウトを抑制しやすい観点からは、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であってよい。
【0030】
本発明のフェノール化合物を樹脂に添加して、樹脂安定剤の有効成分として使用する場合、樹脂に添加するフェノール化合物(1)の形態は特に制限されず、例えば粉体状であっても、粉体状のフェノール化合物(1)を結着及び/又は凝集等により顆粒化させた造粒物の形態であってもよい。また、本発明のフェノール化合物は、樹脂安定剤の有効成分として使用する場合、必要に応じて添加剤と共に樹脂に添加してもよい。フェノール化合物(1)と共に樹脂に添加し得る添加剤としては、後述の本発明の樹脂組成物に含まれ得る添加剤等が挙げられる。
【0031】
本発明は、本発明のフェノール化合物及び樹脂を含む樹脂組成物も提供する。本発明の樹脂組成物は、フェノール化合物(1)が高い耐着色性を有し、樹脂の耐熱性及び耐着色性を向上し得る安定剤として作用するため、優れた耐熱性及び耐着色性を有する。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、本発明のフェノール化合物及び樹脂を含んでいればよく、樹脂組成物に含まれる樹脂としては、本発明のフェノール化合物により安定化され得る上述の樹脂が挙げられる。樹脂組成物に含まれる樹脂は、樹脂組成物の用途に応じて、上述の樹脂から適宜選択でき、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。本発明の一実施形態において、本発明の樹脂組成物に含まれる樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂、とりわけポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチック等が好ましく、より好ましくはポリアミドである。
【0033】
本発明の樹脂組成物において、フェノール化合物(1)の含有量は、フェノール化合物(1)の樹脂安定剤としての作用を高めやすい観点からは、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であってよい。また、樹脂の着色を抑制しやすい観点及びフェノール化合物(1)のブリードアウトを抑制しやすい観点からは、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であってよい。
【0034】
本発明の樹脂組成物は、フェノール化合物(1)及び樹脂に加えて、必要に応じてさらに添加剤を含んでよい。添加剤としては、例えばフェノール化合物(1)を除くフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ヒドロキシアミン、中和剤、滑剤、造核剤、充填剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、アンチブロッキング剤、界面活性剤、加工助剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で又は2種以上組合せて用いてよい。
【0035】
フェノール化合物(1)を除くフェノール系酸化防止剤としては、例えば、アルキル化モノフェノール、アルキルチオメチルフェノール、ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン、トコフェロール、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール及びその誘導体、O-、N-及びS-ベンジル誘導体、ヒドロキシベンジル化マロネート誘導体、芳香族ヒドロキシベンジル誘導体、トリアジン誘導体、ベンジルホスホネート誘導体、アシルアミノフェノール誘導体、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価又は多価アルコールとのエステル、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組合せて用いてよい。
【0036】
アルキル化モノフェノールとしては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-イソブチルフェノール、2,6-ジシクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクダデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、2,6-ジ-ノニル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチル-6-(1'-メチルウンデシル-1'-イル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(1'-メチルヘプタデシル-1'-イル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(1'-メチルトリデシル-1'-イル)フェノール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
アルキルチオメチルフェノールとしては、例えば、2,4-ジオクチルチオメチル-6-t-ブチルフェノール、2,4-ジオクチルチオメチル-6-メチルフェノール、2,4-ジオクチルチオメチル-6-エチルフェノール、2,6-ジドデシルチオメチル-4-ノニルフェノール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0038】
ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノンとしては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、2,6-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)アジペート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0039】
トコフェロールとしては、例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
ヒドロキシル化チオジフェニルエーテルとしては、例えば、2,2'-チオビス(6-t-ブチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-チオビス(4-オクチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3,6-ジ-t-アミルフェノール)、4,4'-(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィド、及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0041】
アルキリデンビスフェノール及びその誘導体としては、例えば、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス[4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール)]、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'-エチリデンビス(4-イソブチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス[6-(α-メチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、2,2'-メチレンビス[4,6-(α,α-ジメチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、4,4'-メチレンビス(6-t-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,6-ビス(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-3-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコール ビス[3,3-ビス-3'-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2-(3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-メチルベンジル)-6-t-ブチル-4-メチルフェニル]テレフタレート、1,1-ビス(3,5-ジメチル-2-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-n-ドデシルメルカプトブタン、1,1,5,5-テトラ(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ペンタン、2-t-ブチル-6-(3'-t-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル アクリレート、2,4-ジ-t-ペンチル-6-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]フェニル アクリレート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
O-、N-及びS-ベンジル誘導体としては、例えば、3,5,3',5'-テトラ-t-ブチル-4,4'-ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル-4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルメルカプトアセテート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシベンジル化マロネート誘導体としては、例えば、ジオクタデシル-2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート、ジオクタデシル-2-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル-2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0044】
芳香族ヒドロキシベンジル誘導体としては、例えば、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン、2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)フェノール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0045】
トリアジン誘導体としては、例えば、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-n-オクチルチオ-4,6-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-n-オクチルチオ-4,6-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-フェノキシ)-1,3,5-トリアジン、トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルエチル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス[2-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシシンナモイルオキシ)エチル]イソシアヌレート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0046】
ベンジルホスホネート誘導体としては、例えば、ジメチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルベンジルホスホネート、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸モノエステルのカルシウム塩及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0047】
アシルアミノフェノール誘導体としては、例えば、4-ヒドロキシラウリル酸アニリド、4-ヒドロキシステアリン酸アニリド、オクチル-N-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)カルバネート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸、β-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸又は3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸とエステルを形成し得る一価又は多価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、チオエチレングリコール、スピログリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N'-ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3-チアウンデカノール、3-チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4-ヒドロキシメチル-1-ホスファ-2,6,7-トリオキサビシクロ[2,2,2]オクタン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0049】
β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミドとしては、例えば、N,N'-ビス[3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、N,N'-ビス[3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヘキサメチレンジアミン、N,N'-ビス[3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]トリメチレンジアミン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0050】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3'-チオジプロピオネート、トリデシル 3,3'-チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3'-チオジプロピオネート、ラウリル ステアリル 3,3'-チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス (3-ラウリルチオプロピオネート)及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0051】
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリル ペンタエリスリトール ジホスファイト、ジイソデシル ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4'-ジフェニレンジホスホナイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) 2-エチルヘキシル ホスファイト、2,2'-エチリデンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル) フルオロ ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル) エチル ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル) メチル ホスファイト、2-(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)-5-エチル-5-ブチル-1,3,2-オキサホスホリナン、2,2',2''-ニトリロ[トリエチル-トリス(3,3',5,5'-テトラ-t-ブチル-1,1'-ビフェニル-2,2'-ジイル) ホスファイト、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えばサリシレート誘導体、2-ヒドロキシベンゾフェノン誘導体、2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組合せて用いてよい。
【0053】
サリシレート誘導体としては、例えば、フェニル サリシレート、4-t-ブチルフェニル サリシレート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、4-t-オクチルフェニル サリシレート、ビス(4-t-ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、ヘシサデシル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、オクタデシル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート、2-メチル-4,6-ジ-t-ブチルフェニル 3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシベンゾエート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0054】
2-ヒドロキシベンゾフェノン誘導体としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0055】
2-(2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3',5'-ジ-t-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5'-t-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3'-s-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-4'-オクチルオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3',5'-ジ-t-アミル-2'-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2'-ヒドロキシ-3',3'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[(3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシフェニル)-5'-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[3'-t-ブチル-5'-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]-2'-ヒドロキシフェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[3'-t-ブチル-3'-ヒドロキシ-5'-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル]-5-クロロベンゾトリアゾール、2-[3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル] ベンゾトリアゾール、2-[3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5-(2-オクチルオキシカルボニルエチル)フェニル] ベンゾトリアゾール、2-[3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-[2-(2-エチルヘキシルオキシ)カルボニルエチル]フェニル] ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル] ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3'-ドデシル-2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2-[3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-(2-イソオクチルオキシカルボニルエチル)フェニル] ベンゾトリアゾールの混合物、2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2'-メチレンビス[4-t-ブチル-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、ポリ(3~11)(エチレングリコール)と2-[3'-t-ブチル-2'-ヒドロキシ-5'-(2-メトキシカルボニルエチル)フェニル] ベンゾトリアゾールとの縮合物、ポリ(3~11)(エチレングリコール)とメチル 3-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネートとの縮合物、2-エチルヘキシル 3-[3-t-ブチル-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、オクチル 3-[3-t-ブチル-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、メチル 3-[3-t-ブチル-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート、3-[3-t-ブチル-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0056】
光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系光安定剤、アクリレート系光安定剤、ニッケル系光安定剤、オキサミド系光安定剤、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン系光安定剤等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組合せて用いてよい。
【0057】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、ビス(1-アクロイル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)デカンジオエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル メタクリレート、4-[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]-1-[2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、2-メチル-2-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)プロピオンアミド、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカンとの混合エステル化物、ジメチル サクシネートと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの重縮合物、ポリ[(6-モルホリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)]、N,N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2-ジブロモエタンとの重縮合物、N,N',4,7-テトラキス[4,6-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4,7-ジアザデカン-1,10ジアミン、N,N',4-トリス[4,6-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、N,N',4,7-テトラキス[4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、N,N',4-トリス[4,6-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0058】
アクリレート系光安定剤としては、例えば、エチル α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、イソオクチル α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル α-カルボメトキシシンナメート、メチル α-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート、ブチルα-シアノ-β-メチル-p-メトキシシンナメート、メチル α-カルボメトキシ-p-メトキシシンナメート及びN-(β-カルボメトキシ-β-シアノビニル)-2-メチルインドリン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0059】
ニッケル系光安定剤としては、例えば、2,2'-チオビス-[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]のニッケル錯体、ニッケルジブチルジチオカルバメート、モノアルキルエステルのニッケル塩、ケトキシムのニッケル錯体及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0060】
オキサミド系光安定剤としては、例えば、4,4'-ジオクチルオキシオキサニリド、2,2'-ジエトキシオキサニリド、2,2'-ジオクチルオキシ-5,5'-ジ-t-ブチルアニリド、2,2'-ジドデシルオキシ-5,5'-ジ-t-ブチルアニリド、2-エトキシ-2'-エチルオキサニリド、N,N'-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)オキサミド、2-エトキシ-5-t-ブチル-2'-エトキシアニリド、2-エトキシ-5,4'-ジ-t-ブチル-2'-エチルオキサニリド及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0061】
2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン系光安定剤としては、例えば、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2,4-ジヒドロキシフェニル-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-プロピルオキシフェニル)-6-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(4-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-ブチルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-ヒドロキシ-4-(2-ヒドロキシ-3-オクチルオキシプロポキシ)フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0062】
金属不活性化剤としては、例えば、N,N'-ジフェニルオキサミド、N-サリチラル-N'-サリチロイルヒドラジン、N,N'-ビス(サリチロイル)ヒドラジン、N,N'-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジン、3-サリチロイルアミノ-1,2,4-トリアゾール、ビス(ベンジリデン)オキサリルジヒドラジド、オキサニリド、イソフタロイルジヒドラジド、セバコイルビスフェニルヒドラジド、N,N'-ビス(サリチロイル)オキサリルジヒドラジド、N,N'-ビス(サリチロイル)チオプロピオニルジヒドラジド及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0063】
過酸化物スカベンジャーとしては、例えば、β-チオジプロピオン酸のエステル、メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジブチルジチオカルバミン酸の亜鉛塩、ジオクタデシルジスルフィド、ペンタエリスリトール テトラキス(β-ドデシルメルカプト)プロピオネート及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0064】
ポリアミド安定剤としては、例えば、ヨウ化物又はリン化合物の銅又は2価のマンガン塩及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0065】
ヒドロキシアミンとしては、例えば、N,N-ジベンジルヒドロキシアミン、N,N-ジエチルヒドロキシアミン、N,N-ジオクチルヒドロキシアミン、N,N-ジラウリルヒドロキシアミン、N,N-ジテトラデシルヒドロキシアミン、N,N-ジヘキサデシルヒドロキシアミン、N,N-ジオクタデシルヒドロキシアミン、N-ヘキサデシル-N-オクタデシルヒドロキシアミン、N-ヘプタデシル-N-オクタデシルヒドロキシアミン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0066】
中和剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト(塩基性マグネシウム・アルミニウム・ヒドロキシ・カーボネート・ハイドレード)、メラミン、アミン、ポリアミド、ポリウレタン及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0067】
滑剤としては、例えばパラフィン、ワックス等の脂肪族炭化水素、炭素数8~22の高級脂肪酸、炭素数8~22の高級脂肪酸金属(Al、Ca、Mg、Zn)塩、炭素数8~22の脂肪族アルコール、ポリグリコール、炭素数4~22の高級脂肪酸と炭素数4~18の脂肪族1価アルコールとのエステル、炭素数8~22の高級脂肪族アマイド、シリコーン油、ロジン誘導体及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0068】
造核剤としては、例えば、ナトリウム 2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、[リン酸-2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)]ジヒドロオキシアルミニウム、ビス[リン酸-2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)]ヒドロオキシアルミニウム、トリス[リン酸-2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)]アルミニウム、ナトリウム ビス(4-t-ブチルフェニル)ホスフェート、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸金属塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム、1,3:2,4-ビス(O-ベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(O-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4-ビス(O-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-O-3,4-ジメチルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデンソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3:2,4-ビス(O-3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-O-p-クロロベンジリデン-2,4-O-3,4-ジメチルベンジリデンソルビトール、1,3-O-3,4-ジメチルベンジリデン-2,4-O-p-クロロベンジリデンソルビトール、1,3:2,4-ビス(O-p-クロロベンジリデン)ソルビトール及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0069】
充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、珪酸塩、ガラス繊維、アスベスト、タルク、カオリン、マイカ、硫酸バリウム、カーボンブラック、カーボンファイバー、ゼオライト及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0070】
樹脂組成物が添加剤を含む場合、添加剤の含有量の総量は、特に制限されないが、例えば、樹脂組成物に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であってよく、また、樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であってよい。
【0071】
本発明の樹脂組成物を製造する方法は特に制限されず、例えば混合撹拌装置等を用いて、樹脂組成物を構成する成分、具体的には本発明のフェノール化合物及び樹脂、並びに場合により添加剤を均一に混合することにより製造できる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、樹脂の耐熱性及び耐着色性を向上し、樹脂を安定化する作用を有するフェノール化合物(1)を含むため、優れた耐熱性及び耐着色性を有する。
【実施例0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>
〔化合物A-1の合成〕
3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸メチル500.0g(2.00モル)、イソホロンジアミン170.0g(1.00モル)、ジブチルスズオキシド49.8g(0.20モル)、トルエン500mlを4つ口フラスコに仕込んだのち、窒素雰囲気下、還流状態で62.5時間撹拌した。反応開始から14.5時間後に19.4g(0.08モル)、34.5時間後に30.3g(0.12モル)のジブチルスズオキシドを追加した。反応にはディーンスターク装置を使用し、ディーンスターク管内にトルエンが溜まる度にトルエンを抜き出し、同量のトルエンを反応液に加えた。反応終了後、反応液に15Lのヘキサンを加え、析出した固体を濾取した。乾燥させた濾物を1.4Lのアセトンに溶解させ、水220mlを加え20分撹拌した。析出した析出物を濾去し、濾液を濃縮した後、濾液の濃縮物を900mLのクロロホルムに溶解させ、6M塩酸による酸洗浄を2回、10%水酸化ナトリウム水溶液によるアルカリ洗浄を3回、水洗を2回実施した。再度、6M塩酸による酸洗浄を行ったところ、3層に分離したため、中層にヘキサンを加え、固体を析出させた。析出した固体を6M塩酸で3回洗浄し、水洗しながら濾過した。濾物をクロロホルムに溶解させ、水を分離し、有機層を濃縮、乾燥することで粗生成物を183.0g得た。さらに、粗生成物をシリカゲルカラムで精製し、式(A-1)で表される化合物を収率26%、純度96%で得た。
【0075】
【化8】
1H-NMR(DMSO-d
6、400MHz):δ0.86(s、3H、CH
3)、δ0.90(s、3H、CH
3)、δ0.97(s,3H、CH
3)、δ1.33(s、18H、C(CH
3)
3)、δ2.12(s、6H、Ar
CH
3
)、δ2.22(t、J=8.0Hz、2H、NHCO
CH
2
CH
2)、δ2.33(t、J=8.4Hz、2H、NHCO
CH
2
CH
2)、δ2.55-2.70(m、4H、Ar
CH
2
CH
2CO)、δ2.79(d、J=8.0Hz、2H、NH
CH
2
C(CH
2)
2(CH
3))、δ3.75-3.90(m、1H、CONH
CH(CH
2)
2)、δ6.73(d、J=2.0Hz、1H、Ar)、δ6.75(d、J=2.0Hz、1H、Ar)、δ6.81(d、J=2.0Hz、1H、Ar)、δ6.82(d、J=2.0Hz、1H、Ar)、δ7.43(t、J=6.0Hz、0.15H、CO
NHCH
2、trans)、δ7.53(d、J=8.0Hz、0.15H、CO
NHCH(CH
2)
2、trans)、δ7.58(d、J=8.0Hz、0.85H、CO
NHCH(CH
2)
2、cis)、δ7.68(t、J=6.0Hz、0.85H、CO
NHCH
2、cis)、δ7.82(s、2H、Ar
OH)
ESI-MS(positive) m/z: 607.5([M+H
+])
【0076】
〔樹脂組成物B-1の製造〕
ナイロン6樹脂(ユニチカ(株)製「A1030 BRL」)100質量部に、得られた化合物A-1を0.3質量部加え、ドライブレンドした。次いで、ブレンド物を30mmφの二軸押出機(フリージアマクロス(株)製「NAS-30」)を用いて250℃、スクリュー回転数100rpmの条件で造粒し、ペレット状の樹脂組成物B-1を得た。得られた樹脂組成物B-1をプレス機(関西ロール(株)製「PEW-5040」)を用いて、260℃で溶融5分、260℃、100kgfで加圧5分、60℃で冷却3分の条件で熱プレスし、40×40×1mmのシートを作製した。
【0077】
<比較例1>
〔化合物A-2の合成〕
3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸メチル260.1g(1.04モル)、ヘキサメチレンジアミン60.4g(0.52モル)、ジブチルスズオキシド25.9g(0.10モル)、トルエン300mlを4つ口フラスコに仕込んだのち、窒素雰囲気下、還流状態で13時間撹拌した。反応にはディーンスターク装置を使用し、ディーンスターク管内にトルエンが溜まる度にトルエンを抜き出し、同量のトルエンを反応液に加えた。反応終了後、反応液に3Lのヘキサンを加え、析出した塊状物を濾取した。得られた濾物を乾燥、粉砕した後、120℃に昇温したオイルバスで、630mLのトルエンに加熱溶解させた。トルエン溶液にヘキサンを19L加え、得られた粉状固体を濾取し、濾物を酢酸エチルで洗浄、乾燥して、式(A-2)で表される化合物を189.0g、収率66%、純度95%で得た。
【0078】
【0079】
〔樹脂組成物B-2の製造〕
化合物A-1を化合物A-2に代えた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物B-2を製造し、シートを作製した。
【0080】
<比較例2>
〔化合物A-3の合成〕
3-(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオン酸メチル500.2g(1.71モル)、イソホロンジアミン145.5g(0.85モル)、ジブチルスズオキシド42.8g(0.17モル)、トルエン500mlを4つ口フラスコに仕込んだのち、窒素雰囲気下、還流状態で20時間撹拌した。反応にはディーンスターク装置を使用し、ディーンスターク管内にトルエンが溜まる度にトルエンを抜き出し、同量のトルエンを反応液に加えた。反応終了後、反応液に12.5Lのヘキサンを加え、析出した固体を濾取した。得られた濾物を2.5Lのクロロホルムに溶解させ、6M塩酸による酸洗浄を2回、水洗を1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液によるアルカリ洗浄を2回実施した後、再度水洗を2回実施した。有機層を濃縮し、得られた濃縮物を少量の酢酸エチルに溶解させた後、該酢酸エチル溶液に30倍量のヘキサンを加え固体を析出させた。析出した固体をヘキサンで洗浄、乾燥して式(A-3)で表される化合物を194.0g、収率37%、純度96%で得た。
【0081】
【0082】
〔樹脂組成物B-3の製造〕
化合物A-1を化合物A-3に代えた以外は、実施例1と同様に樹脂組成物B-3を製造し、シートを作製した。
【0083】
<比較例3>
ナイロン6樹脂に化合物A-1を添加することなく、実施例1と同様に樹脂組成物B-4を製造し、シートを作製した。
【0084】
〔化合物の耐熱性の評価(TG-DTA)〕
実施例1及び比較例1で得られた化合物A-1及びA-2を熱重量示差熱分析装置((株)島津製作所製 「DTG-60H」)を用いて、窒素雰囲気下、30℃から600℃まで20℃/分で昇温し、質量減少が10%、15%、30%、50%及び70%に到達する温度をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。温度が高い程、耐熱性に優れることを意味する。
【0085】
【0086】
〔化合物の耐着色性の評価(NOx試験)〕
実施例1及び比較例1、2で得られた化合物の耐着色性の評価を以下のようにして行った。
(1)底部に窒素酸化物(NOxガス)注入口としてシリコン栓口を有する15Lのガラス容器を試験容器として用いた。該試験容器内に、サンプルとして実施例1及び比較例1、2で得られた粉末状の化合物1.5gを、アルミニウム製カップに入れた状態で静置した。
(2)前記試験容器とは別の容器において、50%の硫酸水溶液に1g/mlの亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下し、窒素酸化物を発生させた。
(3)発生した窒素酸化物をシリンジで450mL抜き取り、抜き取った窒素酸化物を試験容器内に注入することにより、試験容器内を3%のNOxガス雰囲気に調製した。
(4)3%のNOxガス雰囲気下、室温で1時間静置した後、試験容器からサンプルを取出した。曝露前後のサンプルの明度(L*)を色素計(コニカミノルタ(株)製 「CM-5」)を用いて測定した。さらに、曝露後の色相を目視で確認し、以下の基準で評価した。
A(優):着色無し
B(良):淡い着色
C(不可):着色
曝露前後の明度差(ΔL*=L*(曝露後)-L*(曝露前))及び色相の観察結果を表2に示す。ΔL*の絶対値が小さい程、耐着色性に優れることを意味する。
【0087】
【0088】
実施例1では、化合物全体に淡黄色の淡い着色がみられた。一方、比較例1及び2では、化合物全体にそれぞれ黄色及び黄緑色の強い着色がみられた。
【0089】
〔樹脂組成物の耐熱性及び酸化耐性の評価(ギヤオーブンライフ)〕
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のシートを150℃のギヤオーブン中で保管した。24時間ごとにシートの状態を目視で観察し、シートに亀裂が生じるまでの時間を測定した。亀裂が生じるまでの時間が長いほど、耐熱性及び酸化耐性に優れることを意味する。結果を表3に示す。
【0090】
【0091】
〔樹脂組成物の耐着色性の評価(NOx試験)〕
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のシートの耐着色性の評価を以下のようにして行った。
(1)底部に窒素酸化物(NOxガス)注入口としてシリコン栓口を有する15Lのガラス容器を試験容器として用いた。該試験容器内に、サンプルとして実施例1及び比較例1、2で得られた樹脂組成物のシートを吊るして固定した。
(2)前記試験容器とは別の容器において、50%の硫酸水溶液に1g/mlの亜硝酸ナトリウム水溶液を滴下し、窒素酸化物を発生させた。
(3)発生した窒素酸化物をシリンジで9.75mL抜き取り、抜き取った窒素酸化物を試験容器内に注入して、試験容器内を650ppmのNOxガス雰囲気に調製した。
(4)650ppmのNOxガス雰囲気下、室温で2週間静置した後、試験容器からサンプルを取出した。曝露前後のサンプルのYI(イエローインデックス)を色素計(コニカミノルタ(株)製 「CM-5」)を用いて測定した。曝露前後のYI差(ΔYI=YI(曝露後)-YI(曝露前))を表4に示す。ΔYIが小さい程、高い耐黄変性を有し、耐着色性に優れることを意味する。
【0092】
【0093】
表1~4に示されるように、実施例1で得られた化合物A-1及び化合物A-1を含む樹脂組成物B-1は、比較例で得られた化合物及び樹脂組成物と比較して、耐熱性及び耐着色性に優れることが確認された。