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特開2023-166641構造体、ケーシング、振動デバイス、および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166641
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】構造体、ケーシング、振動デバイス、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20231115BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
F16F15/02 K
G06F3/01 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020172277
(22)【出願日】2020-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】519366237
【氏名又は名称】NatureArchitects株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 海
【テーマコード(参考)】
3J048
5E555
【Fターム(参考)】
3J048AC01
3J048BD00
3J048EA07
5E555AA08
5E555BA04
5E555BA05
5E555BA06
5E555BA20
5E555BB04
5E555BB05
5E555BB06
5E555BB20
5E555BC04
5E555CA12
5E555CA15
5E555CA17
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】振動を効果的に吸収可能な構造を提供する。
【解決手段】本開示の一態様によれば、構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の非稠密な単位構造体を具備し、
前記単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし前記第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
構造体。
【請求項2】
前記単位構造体は、吸収対象となる振動の伝播によって印加される外力に応じて弾性変形する、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される、請求項1または2に記載の構造体。
【請求項4】
前記単位構造体は、ラティス構造を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記単位構造体は、ウェーブスプリング型のラティス構造を含む、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
振動素子を収容可能なケーシングであって、
前記振動素子によって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体として構成され、
前記構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
前記単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし前記第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
ケーシング。
【請求項7】
振動素子と、
前記振動素子を収容するケーシングと
を具備し、
前記ケーシングは、前記振動素子によって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体として構成され、
前記構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
前記単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし前記第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
振動デバイス。
【請求項8】
振動デバイスと、
前記振動デバイスとは異なる電子部品と、
前記振動デバイスおよび前記電子部品を収容するケーシングと
を具備し、
前記ケーシングは、前記振動デバイスによって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体として構成され、
前記構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
前記単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし前記第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造体、ケーシング、振動デバイス、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な機械、または電気機器において、不要な振動・騒音の低減が試みられてきた。エンジンなどの駆動部によって動作する機械は、駆動部が発生させる振動が伝播して振動や騒音が発生する。かかる振動および騒音は、機械を構成する部品をより剛健となるように設計したり、振動や騒音を吸収するための部材を別途取り付けたりすることで減衰させることができる。しかしながら、機械の各部品をより剛健な設計にしたり、振動や騒音を吸収する部材を追加で設けたりすると、機械の大きさや重量が増大することになる。
【0003】
特許文献1には、トレーニングマシーンの脚に振動吸収装置を取り付けることでトレーニングマシーンを使用することで発生する上下方向の振動を吸収することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-118269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、振動を効果的に吸収可能な構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、振動を効果的に吸収可能な構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る構造体を含む対象構造体のT-B軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
図2】本実施形態に係る構造体の詳細を示す図である。
図3】変形例1に係る構造体を含む対象構造体のT-B軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
図4】変形例2に係る振動デバイスの斜視図である。
図5】変形例2に係る振動デバイスのF-R軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
図6】変形例3に係る電子機器の斜視図である。
図7】変形例3に係る電子機器のF-R軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
以降の説明において、所定の姿勢にある対象物を基準として、上方(T方向)、下方(B方向)、前方(F方向)、後方(R方向)、左方向(SL方向)、および右方向(SR方向)を定義する。
【0011】
(1)構造体の構成
本実施形態の構造体の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る構造体を含む対象構造体のT-B軸に垂直な平面に関する断面図を示す。図2は、本実施形態に係る構造体の詳細を示す図である。
【0012】
本実施形態の構造体は、対象構造体に埋め込まれる。対象構造体は、他の構造体から加えられる外力によって、または自発的に振動する。構造体は、対象構造体の振動の外部への伝播を抑制する。
【0013】
一例として、図1に示すように、本実施形態の構造体111は、上下軸(T-B軸)に沿って延出する板状の対象構造体110に、左右方向(SL-SR方向)に亘って複数箇所に離散的に埋め込まれる。対象構造体110は前後方向(F-R方向)に振動し、構造体111はこの振動の外部への伝播を抑制する。構造体111は、対象構造体110の一部であるので、対象構造体110と同じ素材、例えば金属、樹脂、または植物素材を含有してもよい。対象構造体110は、1つの独立した構造体であってもよいし、別の構造体の一部を構成してもよい。
【0014】
図2に示すように、構造体111は、T-B軸に沿って例えば板状に延出する非稠密な構造である。具体的には、構造体111は、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、形状、素材、またはその他のパラメータを適宜設計することで、非対称な剛性特性を備えるように構成される。単位構造体は、例えば、ラティス構造を含む。すなわち、単位構造体は、3次元空間に離散的に配置された複数のノード(頂点)と、これら複数のノードから選択された複数組のノードペアを結ぶ複数のエッジ(枝)とを含み、ノードおよびエッジを除く部分は中空である。一例として、単位構造体は、ウェーブスプリング型のラティス構造を備えていてもよい。ここで、ウェーブスプリング型のラティス構造は、例えば、各エッジが波型曲線状であるラティス構造を含む。構造体111が複数の単位構造体を含む場合に、これらの単位構造体間でパラメータが異なっていてもよい。
【0015】
単位構造体は、当該単位構造体から見て(すなわち当該単位構造体を基準とする)第1の方向(例えば、前後方向(F-R方向))から印加される外力に対する剛性が、当該単位構造体から見て第1の方向とは異なる第2の方向(例えば上下方向(T-B方向)、左右方向(SL-SR方向)、またはそれらの組み合わせ)から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。そして、対象構造体110において、単位構造体の各々は、当該単位構造体から見て第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される。これにより、構造体111は、非稠密に構成したことによる剛性の低下を抑えながら、吸収対象となる振動を各単位構造体が振動の伝播によって印加される外力に応じて弾性変形することにより効果的に吸収することができる。
【0016】
(2)実施形態の概要
実施形態の概要について説明する。
【0017】
実施形態に係る構造体111は、図1および図2に示すように、対象構造体110の少なくとも一部として埋め込まれる。構造体111に含まれる各単位構造体は、対象構造体110の振動に伴って当該単位構造体に伝播する力を弾性変形により吸収することで、振動加速度を効果的に低減させる。これにより、対象構造体110から外部に伝播する振動が抑制されるので、対象構造体110において発生する騒音を低減することができる。他方、構造体111は、稠密構造に比べて体積当たりの質量は小さい。故に、対象構造体110に構造体111を設けることで、対象構造体の振動方向の厚みを相当量増加させた場合に比べて、質量の増加は抑えられる。
【0018】
以上説明したように、実施形態に係る構造体は、対象構造体の少なくとも一部として埋め込まれることにより、対象構造体の質量の増加は抑えつつ当該対象構造体から外部に伝播する振動と当該対象構造体において発生する騒音を低減できる。
【0019】
(3)変形例
本実施形態の変形例について説明する。
【0020】
(3-1)変形例1
変形例1について説明する。変形例1に係る構造体は、対象構造体に埋め込まれる数および配置において本実施形態と異なる。
【0021】
変形例1に係る構造体の構成について説明する。図3は、変形例1に係る構造体を含む対象構造体のT-B軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
【0022】
一例として、図3に示すように、変形例1の構造体111aは、上下軸(T-B軸)に沿って延出する板状の対象構造体110aに、左右方向に亘って連続的に埋め込まれる。対象構造体110aは前後方向(F-R方向)に振動し、構造体111aはこの振動の外部への伝播を抑制する。構造体111aは、対象構造体110aの一部であるので、対象構造体110aと同じ素材、例えば金属、樹脂、または植物素材を含有してもよい。対象構造体110aは、1つの独立した構造体であってもよいし、別の構造体の一部を構成してもよい。
【0023】
構造体111aは、実施形態において説明した構造体111(図2)と同様に、T-B軸に沿って例えば板状に延出する非稠密な構造である。具体的には、構造体111aは、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、形状、素材、またはその他のパラメータを適宜設計することで、非対称な剛性特性を備えるように構成される。単位構造体は、例えば、ラティス構造を含む。一例として、単位構造体は、ウェーブスプリング型のラティス構造を備えていてもよい。構造体111aが複数の単位構造体を含む場合に、これらの単位構造体間でパラメータが異なっていてもよい。
【0024】
単位構造体は、当該単位構造体から見て第1の方向(例えば、前後方向(F-R方向))から印加される外力に対する剛性が、当該単位構造体から見て第1の方向とは異なる第2の方向(例えば上下方向(T-B方向)、左右方向(SL-SR方向)、またはそれらの組み合わせ)から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。そして、構造体111aにおいて、単位構造体の各々は、当該単位構造体から見て第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される。これにより、構造体111aは、非稠密に構成したことによる剛性の低下を抑えながら、吸収対象となる振動を各単位構造体が振動の伝播によって印加される外力(例えば、前後方向(F-R方向)に沿って加わる力)によって弾性変形することにより効果的に吸収することができる。
【0025】
以上説明したように、変形例1に係る構造体は、対象構造体の少なくとも一部として埋め込まれることにより、対象構造体の質量の増加は抑えつつ当該対象構造体から外部に伝播する振動と当該対象構造体において発生する騒音を低減できる。
【0026】
(3-3)変形例2
変形例2は、振動の伝播する方向および領域を制限可能な振動デバイスの例である。
【0027】
図4は、変形例2に係る振動デバイスの斜視図である。図5は、変形例2に係る振動デバイスのF-R軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
【0028】
振動デバイス40は、例えば、振動アクチュエータ、またはハプティクスデバイス、などである。図4に示すように、振動デバイス40は、本体に相当する振動素子41と、ケーシング42とを備える。
【0029】
振動素子41は、その外表面の少なくとも一部がケーシング42に接するように、当該ケーシング42に収容される。振動素子41は、図示されないホスト(例えば、プロセッサ)からの駆動信号に応じて振動を発生するように構成される。振動素子41が発生した振動は、ケーシング42を介して振動デバイス40の外部に伝播する。
【0030】
ケーシング42は、内部空間を有しており、当該内部空間に振動素子41を収容可能である。図5に示すように、ケーシング42は、振動素子41によって発生する振動が伝播する領域の一部が構造体43として構成される。これにより、振動素子41によって発生する振動は、当該振動素子41からケーシング42のうち構造体43に該当しない部分を介して当該部分と接する振動伝播対象に伝播する。振動伝播対象は、人間または他の生物の身体、またはテーブルなどの物体表面であり得る。ケーシング42の素材は、例えば、樹脂、金属、および植物素材の少なくとも1つを含むことができる。
【0031】
構造体43は、実施形態において説明した構造体111(図2)と同様に、SL-SR軸に沿って延出する非稠密な構造である。具体的には、構造体43は、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、形状、素材、またはその他のパラメータを適宜設計することで、非対称な剛性特性を備えるように構成される。単位構造体は、例えば、ラティス構造を含む。一例として、単位構造体は、ウェーブスプリング型のラティス構造を備えていてもよい。構造体43が複数の単位構造体を含む場合に、これらの単位構造体間でパラメータが異なっていてもよい。
【0032】
単位構造体は、当該単位構造体から見て第1の方向(例えば、T方向またはB方向)から印加される外力に対する剛性が、当該単位構造体から見て第1の方向とは異なる第2の方向(例えばSL方向、SR方向、F方向またはR方向)から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。そして、構造体43において、単位構造体の各々は、当該単位構造体から見て第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される。これにより、構造体43は、非稠密に構成したことによる剛性の低下を抑えながら、振動素子41からの振動を各単位構造体が振動の伝播によって印加される外力に応じて弾性変形することにより効果的に吸収することができる。
【0033】
構造体43を含むケーシング42は、例えば、3Dプリンタによる造形、射出成型、粉末圧縮成型、レーザー加工、および切削加工の少なくとも1つを利用して製造され得る。
【0034】
以上説明したように、変形例2に係る振動デバイスによれば、振動の伝播する方向および領域を制限できる。一例として、この振動デバイスによって発生する振動は、当該振動デバイスのケーシングと振動伝播対象との接触面の全体に分散するのではなく、当該接触面の一部に集中する。これにより、大きな振動を生み出すことのできない低出力の振動素子を用いたとしても、振動伝播対象を効果的に振動させて、振動伝播対象としての人間に触覚刺激を与えたり、人間に振動音による聴覚刺激を与えたりすることができる。
【0035】
(3-4)変形例3
変形例3は、振動の伝播する方向および領域を制限可能な電子機器の例である。
【0036】
図6は、変形例3に係る電子機器の斜視図である。図7は、変形例3に係る電子機器のF-R軸に垂直な平面に関する断面図を示す。
【0037】
電子機器50は、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス(例えばスマートウォッチ)、ビデオゲーム機器、またはビデオゲーム用の入力装置(コントローラ)、などである。図6に示すように、電子機器50は、振動デバイス51と、電子部品52と、ケーシング53とを備える。
【0038】
振動デバイス51は、その外表面の少なくとも一部がケーシング53に接するように、当該ケーシング53に収容される。振動デバイス51は、電子部品52に含まれる図示されないホスト(例えば、プロセッサ)からの駆動信号に応じて振動を発生するように構成される。振動デバイス51が発生した振動は、ケーシング53を介して電子機器50の外部に伝播する。
【0039】
電子部品52は、例えば、記憶部、プロセッサ、入出力インタフェース、通信インタフェース、入力装置(例えば、ボタン、タッチパネル、キーパッド、など)、および出力装置(例えば、ディスプレイ、スピーカ、ランプ、など)の少なくとも1つを含み得る。
【0040】
ケーシング53は、内部空間を有しており、当該内部空間に振動デバイス51および電子部品52を収容可能である。図7に示すように、ケーシング53は、振動デバイス51によって発生する振動が伝播する領域の一部が構造体54として構成される。これにより、振動デバイス51によって発生する振動は、当該振動デバイス51からケーシング53のうち構造体54に該当しない部分を介して当該部分と接する振動伝播対象に伝播する。振動伝播対象は、人間または他の生物の身体、またはテーブルなどの物体表面であり得る。ケーシング53の素材は、例えば、樹脂、金属、および植物素材の少なくとも1つを含むことができる。
【0041】
構造体54は、実施形態において説明した構造体111(図2)と同様に、SL-SR軸に沿って延出する非稠密な構造である。具体的には、構造体111は、1以上の非稠密な単位構造体を備える。単位構造体の各々は、形状、素材、またはその他のパラメータを適宜設計することで、非対称な剛性特性を備えるように構成される。単位構造体は、例えば、ラティス構造を含む。一例として、構造体54は、ウェーブスプリング型のラティス構造を備えていてもよい。構造体54が複数の単位構造体を含む場合に、これらの単位構造体間でパラメータが異なっていてもよい。
【0042】
単位構造体は、当該単位構造体から見て第1の方向(例えば、T方向またはB方向)から印加される外力に対する剛性が、当該単位構造体から見て第1の方向とは異なる第2の方向(例えばSL方向、SR方向、F方向またはR方向)から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される。そして、構造体54において、単位構造体の各々は、当該単位構造体から見て第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される。これにより、構造体54は、非稠密に構成したことによる剛性の低下を抑えながら、振動デバイス51からの振動を各単位構造体が振動の伝播によって印加される外力に応じて弾性変形することにより効果的に吸収することができる。
【0043】
構造体54を含むケーシング53は、例えば、3Dプリンタによる造形、射出成型、粉末圧縮成型、レーザー加工、および切削加工の少なくとも1つを利用して製造され得る。
【0044】
以上説明したように、変形例3に係る電子機器によれば、振動の伝播する方向および領域を制限できる。一例として、この電子機器によって発生する振動は、当該電子機器のケーシングと振動伝播対象との接触面の全体に分散するのではなく、当該接触面の一部に集中する。これにより、大きな振動を生み出すことのできない低出力の振動デバイスを用いたとしても、振動伝播対象を効果的に振動させて、振動伝播対象としての人間に触覚刺激を与えたり、人間に振動音による聴覚刺激を与えたりすることができる。
【0045】
(4)その他の変形例
実施形態および変形例の説明では、構造体に含まれる1以上の単位構造体の各々が、当該単位構造体を基準とする第1の方向が振動の伝播方向を向くように配列されると説明した。しかしながら、かかる配列は、単位構造体の好適な配列の一例に過ぎない。単位構造体の設計(各方向に割り当てる剛性)および配列は、当該単位構造体が吸収対象となる振動を効果的に吸収できるように、当該振動の伝播方向、周波数、強度および位相などに応じて適宜定めることができる。一例として、単位構造体の設計および配列は、当該単位構造体に異なる方向から伝播する振動が重ね合わせを通じて互いに打ち消し合うように定められてもよい
【0046】
実施形態または各変形例において説明した単位構造体の各々を、当該単位構造体を基準とする第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列することにより、実施形態および各変形例で説明した例に限らず種々の振動を吸収可能な構造体を提供することが可能である。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例は、組合せ可能である。
【0048】
(5)付記
実施形態で説明した事項を、以下に付記する。
【0049】
(付記1)
1以上の非稠密な単位構造体を具備し、
単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
構造体(111,111a,43,54)。
【0050】
(付記2)
単位構造体は、吸収対象となる振動の伝播によって印加される外力に応じて弾性変形する、付記1に記載の構造体。
【0051】
(付記3)
単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向が吸収対象となる振動の伝播方向を向くように配列される、付記1または2に記載の構造体。
【0052】
(付記4)
単位構造体は、ラティス構造を含む、付記1から3のいずれかに記載の構造体。
【0053】
(付記5)
単位構造体は、ウェーブスプリング型のラティス構造を含む、付記4に記載の構造体。
【0054】
(付記6)
振動素子(41)を収容可能なケーシング(42)であって、
振動素子によって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体(43)として構成され、
構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
ケーシング。
【0055】
(付記7)
振動素子(41)と、
振動素子を収容するケーシング(42)と
を具備し、
ケーシングは、振動素子によって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体(43)として構成され、
構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
振動デバイス(40)。
【0056】
(付記8)
振動デバイス(51)と、
振動デバイスとは異なる電子部品(52)と、
振動デバイスおよび電子部品を収容するケーシング(53)と
を具備し、
ケーシングは、振動デバイスによって発生する振動が伝播する領域の一部が当該振動を吸収する構造体(54)として構成され、
構造体は、1以上の非稠密な単位構造体を備え、
単位構造体の各々は、当該単位構造体を基準とする第1の方向から印加される外力に対する剛性が当該単位構造体を基準とし第1の方向とは異なる第2の方向から印加される外力に対する剛性よりも低くなるように構成される、
電子機器(50)。
【符号の説明】
【0057】
40 :振動デバイス
41 :振動素子
42 :ケーシング
43 :構造体
50 :電子機器
51 :振動デバイス
52 :電子部品
53 :ケーシング
54 :構造体
110 :対象構造体
111 :構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7