(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016665
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】生分解性組成物、生分解性ラップフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20230126BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230126BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230126BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20230126BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230126BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230126BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
C08L23/00 ZBP
B32B27/00 H
B32B27/32
C08K5/00
C08L67/00
B65D65/40 D BRQ
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021173147
(22)【出願日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】110126718
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲敬▼堯
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
3E086AB01
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3E086DA03
4F100AK03
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4J002BB031
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4J200BA17
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4J200DA18
4J200EA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、生分解性組成物、生分解性ラップフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】生分解性組成物は、50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、
1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、
0.1~5重量%の有機物分解補助剤と
を含むことを特徴とする、生分解性組成物。
【請求項2】
1~10重量%の加工助剤を更に含む、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリオレフィンエラストマーからなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項4】
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項5】
前記有機物分解補助剤は、ラクトース、ガラクトース、コハク酸エステル、リンゴ酸エステル、アスパラギン酸エステル及びフラノン誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性組成物。
【請求項6】
裏層と、
前記裏層上に形成された少なくとも1つの中間層と、
少なくとも1つの前記中間層上に形成された外層と
を備え、
前記裏層、少なくとも1つの前記中間層、及び前記外層のそれぞれは、生分解性組成物で形成されており、
前記生分解性組成物は、
50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、
1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、
0.1~5重量%の有機物分解補助剤と
を含むことを特徴とする、生分解性ラップフィルム。
【請求項7】
前記生分解性組成物は、1~10重量%の加工助剤を更に含む、請求項6に記載の生分解性ラップフィルム。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリオレフィンエラストマーからなる群から選択される、請求項6に記載の生分解性ラップフィルム。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項6に記載の生分解性ラップフィルム。
【請求項10】
前記有機物分解補助剤は、ラクトース、ガラクトース、コハク酸エステル、リンゴ酸エステル、アスパラギン酸エステル及びフラノン誘導体からなる群から選択される、請求項6に記載の生分解性ラップフィルム。
【請求項11】
生分解性組成物を含む樹脂組成物を提供する工程と、
前記樹脂組成物から複数のプラスチックマスターバッチを製造する工程と、
複数の前記プラスチックマスターバッチを用いて少なくとも一つの樹脂層を形成する工程と、
を含み、
前記生分解性組成物は、前記生分解性組成物を100重量%として、
50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、
1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、
0.1~5重量%の有機物分解補助剤と
を含むことを特徴とする、生分解性ラップフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記生分解性組成物は、1~10重量%の加工助剤を更に含む、請求項11に記載の生分解性ラップフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリオレフィンエラストマーからなる群から選択される、請求項11に記載の生分解性ラップフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項11に記載の生分解性ラップフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記有機物分解補助剤は、ラクトース、ガラクトース、コハク酸エステル、リンゴ酸エステル、アスパラギン酸エステル及びフラノン誘導体からなる群から選択される、請求項11に記載の生分解性ラップフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性組成物に関し、特に、生分解性組成物、生分解性ラップフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラップフィルムは、主に冷蔵庫の食品保存、電子レンジでの加熱、生鮮食品や調理済み食品の包装に使用されるプラスチック包装製品の一つであり、人々の日常の生鮮食品に欠かせない包装材料として、スーパーマーケットストア、家庭生活、及び工業生産などで食品の包装に広く使用されており、その機能性はますます注目を集めている。
【0003】
従来のラップフィルムは、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride,PVC)又はポリエチレン(polyethylene,PE)で製造されることが多い。ポリ塩化ビニル及びポリエチレンは、自然環境でほとんど分解されないため、環境問題を引き起こしてしまう。現在、光増感剤が添加され、且つ紫外線を利用して光増感剤にプラスチックのクラッキング反応を促進させるラップフィルムが少数市場に出回っている。しかし、光増感剤が添加されたラップフィルムは、太陽光のない環境に置かれる場合には、クラッキング反応が進行し得ない。
【0004】
故に、プラスチックの組成を改良することによって、ラップフィルムが効果的に自然分解されるようにすることにより上述した欠点を克服することは、この業界にとって解決しようとする重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、生分解性組成物、生分解性ラップフィルム及びその製造方法を提供する。前記生分解性組成物及び前記生分解性ラップフィルムは、生分解性を有することにより、使い捨てのプラスチックによる環境汚染の問題を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、生分解性組成物を提供することである。前記生分解性組成物は、50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、生分解性ラップフィルムを提供することである。前記生分解性ラップフィルムは、裏層と、少なくとも1つの中間層と、外層とを、備える。少なくとも1つの前記中間層は、前記裏層上に形成され、前記外層は、少なくとも1つの前記中間層上に形成される。なかでも、前記裏層、少なくとも1つの前記中間層、及び前記外層のそれぞれは、生分解性組成物で形成され、前記生分解性組成物は、50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、生分解性ラップフィルムの製造方法を提供することである。前記生分解性ラップフィルムの製造方法は、まず生分解性組成物を含む樹脂組成物を提供することと、次に前記樹脂組成物から複数のプラスチックマスターバッチを製造することと、最後に複数の前記プラスチックマスターバッチを用いて少なくとも一つの樹脂層を形成することと、を含み、前記生分解性組成物は、前記生分解性組成物を100重量%として、50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記生分解性組成物は、1~10重量%の加工助剤を含む。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride,PVC)、ポリエチレン(Polyethylene,PE)、ポリプロピレン(Polypropylene,PP)及びポリオレフィンエラストマー(Polyolefin elastomer,POE)からなる群から選択される。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)及びポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記有機物分解補助剤は、ラクトース、ガラクトース、コハク酸エステル、リンゴ酸エステル、アスパラギン酸エステル及びフラノン誘導体からなる群から選択される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の有利な効果として、本発明にかかる生分解性組成物及び生分解性ラップフィルムは、「前記生分解性組成物は、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む」という技術特徴により、生分解性組成物及び生分解性ラップフィルムに、生分解性を持たせることによって、現在の使い捨てのプラスチックによる環境汚染の問題を改善する。
【0014】
更に説明すると、生分解性を持つ前記生分解性ポリマーは、繰り返して取得できる天然資源(例えば、微生物、動物、植物)で製造されたポリマーであってもよい。前記生分解性ポリマーは、従来のプラスチックと同様の物理特性を有し、従来の石油ベースのプラスチックの代わりとして使用されることができ、従来のプラスチックより環境に優しい。
【0015】
注目すべきことは、前記有機物分解補助剤は、自然環境において微生物を引き付ける効果を有し、それによって、前記生分解性組成物に対する微生物分解速度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第二実施形態に係る生分解性ラップフィルムの製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の第三実施形態に係る生分解性ラップフィルムの断面模式図である。
【
図3】本発明に係る生分解性ラップフィルムの海水での分解の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0018】
以下、所定の具体的な実施態様によって「生分解性組成物、生分解性ラップフィルム及びその製造方法」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の様々な具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、様々な観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲が制限されることはない。
【0019】
理解すべきことは、本明細書では、「第一」、「第二」、「第三」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0020】
本文に使用される全ての技術及び科学用語は、別に定義しない限り、当業者が通常に理解する意味と同じ意味を有する。単数の形で現れる用語は、この用語の複数の形を含む。
【0021】
[第一実施形態]
本発明に係る第一実施形態では、生分解性組成物を提供する。前記生分解性組成物は、50~98.9重量%(wt%)のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。
【0022】
更に説明すると、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride,PVC)、ポリエチレン(Polyethylene,PE)、ポリプロピレン(Polypropylene,PP)及びポリオレフィンエラストマー(Polyolefin elastomer,POE)からなる群から選択される。好ましくは、前記ポリオレフィン樹脂は、ポリ塩化ビニル又はポリエチレンである。説明すべきことは、前記ポリオレフィン樹脂の含有量は、50重量%より低くなると、前記生分解性組成物の可塑性が低減するため、その後の加工プロセスでの不便さが生じてしまう。好ましくは、前記ポリオレフィン樹脂の含有量は、70~85重量%であってもよい。しかしながら、これらの詳細はあくまでも、本実施形態に係る使用できる実施の例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0023】
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸(polylactide,PLA)、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoates,PHA)、ポリブチレンサクシネート(poly(butylene succinate),PBS)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone,PCL)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(poly(butylenes adipate-co-terephthalate),PBAT)及びポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)からなる群から選択され、好ましくは、前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリビニルアルコールである。特筆すべきことは、生分解性を持つ前記生分解性ポリマーは、繰り返して取得できる天然資源(例えば、微生物、動物、植物)で製造されたポリマーであってもよい。例えば、ポリ乳酸は、原料とする天然穀物から合成されたポリマーである。前記生分解性ポリマーは、従来のプラスチックと同様の物理特性を有し、従来の石油ベースのプラスチックの代わりとして使用されることができ、従来のプラスチックより環境に優しい。
【0024】
注目すべきことは、前記生分解性ポリマーの含有量は、50重量%より高くなると、前記生分解性組成物の可塑性及び靭性が低減する。好ましくは、前記生分解性ポリマーの含有量は、15~30重量%である。しかしながら、これらの詳細はあくまでも、本実施形態に係る使用できる実施の例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0025】
詳しく説明すると、前記有機物分解補助剤は、自然環境において微生物を引き付ける効果を有し、それによって、前記生分解性組成物に対する微生物分解速度を向上させる。本発明の一つの実施形態において、前記有機物分解補助剤は、ラクトース、ガラクトース、コハク酸エステル、リンゴ酸エステル、アスパラギン酸エステル及びフラノン誘導体からなる群から選択される。
【0026】
注目すべきことは、自然環境において微生物を引き付ける効果を有するため、前記有機物分解補助剤の含有量は、5重量%より高くなることは望ましくない。前記有機物分解補助剤の含有量が5重量%より高くなると、前記生分解性組成物で製造されたラップフィルムは、実際使用する際に細菌が増殖しやすくなる。好ましくは、前記有機物分解補助剤の含有量は、0.5重量%であってもよく、1重量%であってもよく、1.5重量%であってもよく、2重量%であってもよく、2.5重量%であってもよく、3重量%であってもよく、3.5重量%であってもよく、4重量%であってもよく、4.5重量%であってもよく、5重量%であってもよい。しかしながら、これらの詳細はあくまでも、本実施形態に係る使用できる実施の例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0027】
本発明の一つの実施形態において、前記生分解性組成物は、1~10重量%の加工助剤を更に含んでもよい。注目すべきことに、前記加工助剤は、ポリエステル原料を溶融押出する時の機械的なねじり力を低減させて、ポリマー分子鎖の切断を低減することができる。前記加工助剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート(pentaerythritol stearate,PETS)及びその類似物であってもよいと共に、高温において良好な熱安定性、低い揮発性及び優れた離型と流動性を有する。しかしながら、これらの詳細はあくまでも、本実施形態に係る使用できる実施の例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【0028】
[第二実施形態]
図1に示すように、本発明に係る第二実施形態では、生分解性ラップフィルムの製造方法を提供し、生分解性ラップフィルムの製造方法は、以下の工程を含む。
【0029】
まず、工程S100において、樹脂組成物を提供する。例えば、本発明の樹脂組成物は、生分解性組成物を含んでもよい。なかでも、前記生分解性組成物は、前記生分解性組成物を100重量%として、50~98.9重量%のポリオレフィン樹脂と、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む。本実施形態において、前記樹脂組成物は、本発明に係る第一実施形態の前記生分解性組成物を含んでも良い。
【0030】
次に、工程S102において、前記樹脂組成物から複数のプラスチックマスターバッチを製造する。即ち、押出機又は類似する装置により樹脂組成物から複数のプラスチックマスターバッチを製造する。
【0031】
最後に、工程S104において、複数の前記プラスチックマスターバッチを用いて少なくとも1つの樹脂層を形成する。例えば、複数の前記プラスチックマスターバッチを用いて、インフレーション又はキャスティング技術のプラスチックフィルム装置により、少なくとも1つの樹脂層を製造することができる。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。好ましくは、前記樹脂層の数は、3層又は3層以上である。
【0032】
[第三実施形態]
図2に示すように、本発明の第三実施形態において、生分解性ラップフィルムBを提供する。前記生分解性ラップフィルムBは、裏層10と、少なくとも1つの中間層20と、外層30とを備える。少なくとも1つの前記中間層20は、前記裏層10上に形成され、前記外層30は、少なくとも1つの前記中間層20上に形成される。本実施形態において、前記裏層10、少なくとも1つの前記中間層20、及び前記外層30のそれぞれは、本発明の第一実施形態に係る生分解性組成物で形成される。
【0033】
更に説明すると、前記生分解性ラップフィルムBは、3層又は3層以上の構造であってもよいと共に、前記生分解性ラップフィルムBの厚さは、5~30マイクロメーター(μm)であってもよい。本発明の一つの実施形態において、前記生分解性ラップフィルムBの三層構造は、
図3に示すようなA/B/A三層構造であってもよく、Aは裏層10及び外層30であり、Bは中間層20である。本発明の一つの実施形態において、A層及びB層の生分解性組成物の組成は、同じであっても相違していてもよい。しかしながら、これらの詳細はあくまでも、本実施形態に係る使用できる実施の例に過ぎず、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例0034】
表1に示すように、以下にて、複数の本発明に係る生分解性ラップフィルムの具体的な実施例及び特性の評価を示す。
【0035】
実施例1:実施例1のA層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、50重量%であり、生分解性ポリマーはポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、生分解性ポリマーの含有量は、45重量%であり、有機物分解補助剤は、ガラクトース及びコハク酸エステルであり、有機物分解補助剤の含有量は、5重量%である。実施例1のB層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、50重量%であり、生分解性ポリマーはポリ乳酸であり、生分解性ポリマーの含有量は、44重量%であり、有機物分解補助剤は、ガラクトース及びコハク酸エステルであり、有機物分解補助剤の含有量は、1重量%であり、また、加工助剤は防曇剤であり、その含有量は5重量%である。また、加工助剤は、B層(中間層)に添加され、それによって、加工助剤が外部環境と接触することを回避することにより、加工助剤の機能を維持することができる。
【0036】
実施例1の試験結果において、そのMD引張強さは760kg/cm2であり、TD引張強さは380kg/cm2であり、MD伸び率は370%であり、TD伸び率は920%である。ヘイズ値は1.8%であり、光沢度は133%であり、粘着度は4.1g/30mmであると共に、曇り止め性が優れていた。
【0037】
実施例2:実施例2のA層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、90重量%であり、生分解性ポリマーはポリ乳酸(PLA)及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)であり、生分解性ポリマーの含有量は、8重量%であり、有機物分解補助剤は、ガラクトース及びコハク酸エステルであり、有機物分解補助剤の含有量は、2重量%である。実施例2のB層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、90重量%であり、生分解性ポリマーはポリ乳酸であり、生分解性ポリマーの含有量は、4重量%であり、有機物分解補助剤は、ガラクトース及びコハク酸エステルであり、有機物分解補助剤の含有量は、1重量%であり、また、加工助剤は防曇剤であり、その含有量は5重量%である。また、加工助剤は、B層(中間層)に添加され、それによって、加工助剤が外部環境と接触することを回避することにより、加工助剤の機能を維持することができる。
【0038】
実施例2の試験結果において、そのMD引張強さは830kg/cm2であり、TD引張強さは420kg/cm2であり、MD伸び率は435%であり、TD伸び率は810%である。ヘイズ値は1.5%であり、光沢度は142%であり、粘着度は3.8g/30mmであると共に、曇り止め性が優れていた。
【0039】
比較例1:比較例1のA層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、100重量%であると共に、生分解性ポリマー及び有機物分解補助剤を含まない。比較例1のB層の組成において、ポリオレフィン樹脂はPEであり、ポリオレフィン樹脂の含有量は99重量%であり、加工助剤は防曇剤であり、加工助剤の含有量は1重量%である。
【0040】
比較例1の試験結果において、そのMD引張強さは710kg/cm2であり、TD引張強さは370kg/cm2であり、MD伸び率は410%であり、TD伸び率は780%である。ヘイズ値は1.3%であり、光沢度は149%であり、粘着度は3.5g/30mmであると共に、曇り止め性が優れていた。
【0041】
以上の結果により、実施例1及び実施例2の生分解性ラップフィルムは、比較例1のラップフィルムに比べると、より優れたMD引張強さ、TD引張強さ、TD伸び率、ヘイズ値及び粘着度を有する。三つの例において、実施例2の生分解性ラップフィルムは、最適なラップフィルムの物理的特徴を有する。
【0042】
【0043】
[分解性試験]
実施例1の生分解性ラップフィルムの海水での分解率を測定する。本試験は、実施例1の生分解性ラップフィルムを、海水で30日放置する。
【0044】
表2及び
図3に示すように、本発明に係る生分解性ラップフィルムは、海水で分解され得る。
【0045】
【0046】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る生分解性組成物及び生分解性ラップフィルムは、「前記生分解性組成物は、1~49.9重量%の生分解性ポリマーと、0.1~5重量%の有機物分解補助剤とを含む」という技術特徴によって、生分解性組成物及び生分解性ラップフィルムに生分解性を持たせることにより、現在の使い捨てのプラスチックによる環境汚染の問題を改善する。
【0047】
更に説明すると、生分解性を持つ前記生分解性ポリマーは、繰り返して取得できる天然資源(例えば、微生物、動物、植物)で製造されたポリマーであってもよい。前記生分解性ポリマーは、従来のプラスチックと同様の物理特性を有し、従来の石油ベースのプラスチックの代わりとして使用されることができ、従来のプラスチックより環境に優しい。
【0048】
注目すべきことに、前記有機物分解補助剤は、自然環境において微生物を引き付ける効果を有し、それによって、前記生分解性組成物に対する微生物分解速度を向上させる。
【0049】
以上に開示した内容は、単に本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
前記生分解性ポリマーは、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリビニルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の生分解性ラップフィルム。