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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166669
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】被覆構造体
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20231115BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20231115BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
H02G3/04 056
A62C3/16 A
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077316
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】柳樂 大貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB07
3H024AC03
5G357BA01
5G357BB01
5G357BC07
(57)【要約】
【課題】耐熱保護性に優れた被覆構造体を提供する。
【解決手段】本発明の被覆構造体は、ケーブル支持体の被覆構造体であり、上記ケーブル支持体は、ラダー型であり、上記ケーブル支持体は、第1延焼防止シート、熱発泡性耐火シート、及び第2延焼防止シートの順に被覆されていることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル支持体の被覆構造体であり、
上記ケーブル支持体は、ラダー型であり、
上記ケーブル支持体は、第1延焼防止シート、熱発泡性耐火シート、及び第2延焼防止シートの順に被覆されていることを特徴とする被覆構造体。
【請求項2】
上記ケーブル支持体は、親桁部分に固定具を有し、
上記第1延焼防止シート、及び上記熱発泡性耐火シートが順に上記つめ部を貫通し固定されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆構造体。
【請求項3】
上記ケーブル支持体の長手方向において、
上記第1延焼防止シートどうしは重ね代部を有し、
上記熱発泡性耐火シートどうしは重ね代部を有し、
上記第2延焼防止シートどうしは重ね代部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆構造体。
【請求項4】
上記ケーブル支持体の長手方向において、
上記第1延焼防止シートどうしは重ね代部を有し、
上記熱発泡性耐火シートどうしは熱発泡性耐火テープで固定され、
上記第2延焼防止シートどうしは重ね代部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆構造体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な収納部材の被覆構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物等において、各種収納部材が使用されている。例えば、発電所、工場、工業用ビル、あるいは商業用ビル等の大規模施設では、電力ケーブルや通信ケーブル等の多数のケーブルをケーブル支持体に敷設(収納)し、各フロアに配線している。このような多数のケーブルを配線する場合、火災等により一部のケーブルが損傷するおそれがあるため、保護対策が必要とされている。
【0003】
このような保護対策としては、例えば、特許文献1には、ソリッド型のケーブル支持体(ケーブルトレイ)内あるいはケーブルの上に防火材料を充填または塗布する方法、特許文献2には、ラダー型のケーブル支持体(ケーブルラック)に防火シートを巻き付ける方法、またはこれらの組み合わせた方法(例えば、特許文献3)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-23523号公報
【特許文献2】特開平11-114084号公報
【特許文献3】特開平4-209422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1~3の方法では、火災等により長時間高温に曝された場合には、ケーブル支持体の変形が生じたり、ケーブルトレイ内部の温度が上昇してケーブルが損傷し、既定のケーブル性能を確保できなくなるおそれがある。特に、特許文献1のソリッド型のケーブル支持体(ケーブルトレイ)に対して、特許文献2、3のようなラダー型のケーブル支持体(ケーブルラック)の場合には、ケーブルが直接高温に曝されるおそれがあるため、よりいっそう耐熱保護性を高める必要があった。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、耐熱保護性等に優れるケーブル支持体の被覆構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、ラダー型のケーブル支持体に、特定の固定具により第1延焼防止シート、及び熱発泡性耐火シートが順に被覆された被覆構造体に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0009】
1.ケーブル支持体の被覆構造体であり、
上記ケーブル支持体は、ラダー型であり、
上記ケーブル支持体は、第1延焼防止シート、熱発泡性耐火シート、及び第2延焼防止シートの順に被覆されていることを特徴とする被覆構造体。
2.上記ケーブル支持体は、親桁部分に固定具を有し、
上記第1延焼防止シート、及び上記熱発泡性耐火シートが順に上記つめ部を貫通し固定されていることを特徴とする1.に記載の被覆構造体。
3.上記ケーブル支持体の長手方向において、
上記第1延焼防止シートどうしは重ね代部を有し、
上記熱発泡性耐火シートどうしは重ね代部を有し、
上記第2延焼防止シートどうしは重ね代部を有することを特徴とする1.または2.に記載の被覆構造体。
4.上記ケーブル支持体の長手方向において、
上記第1延焼防止シートどうしは重ね代部を有し、
上記熱発泡性耐火シートどうしは熱発泡性耐火テープで固定され、
上記第2延焼防止シートどうしは重ね代部を有することを特徴とする1.または2.に記載の被覆構造体。
【発明の効果】
【0010】
上記1.の被覆構造体は、ケーブル支持体の被覆構造体であり、該ケーブル支持体は、ラダー型であり、第1延焼防止シート、熱発泡性耐火シート、及び第2延焼防止シートの順に被覆されている。このような被覆構造体によれば、ケーブル支持体が高温にさらされた場合は、優れた耐熱保護性が得られる。
【0011】
上記2.の被覆構造体は、ラダー型のケーブル支持体の親桁部分につめ部を有する固定具を有し、該つめ部に第1延焼防止シート、及び熱発泡性耐火シートを貫通させて固定されていることを特徴とするものである。このような被覆構造体によれば、被覆が容易であり、かつケーブル支持体が高温にさらされた場合は、優れた耐熱保護性が得られる。さらに、ケーブル支持体内のケーブル等の布設代えを行う場合にも取り扱いが容易である。
【0012】
上記3.の被覆構造体は、ケーブル支持体の長手方向において、第1延焼防止シートどうし、熱発泡性耐火シートどうし、及び第2延焼防止シートどうしがそれぞれ重ね代部を有することを特徴とするものである。これにより、いっそう優れた耐熱保護性が得られる。
【0013】
上記4.の被覆構造体は、ケーブル支持体の長手方向において、第1延焼防止シートどうし及び第2延焼防止シートどうしはそれぞれ重ね代部を有し、かつ上記熱発泡性耐火シートどうしは熱発泡性耐火テープで固定されていることを特徴とするものである。これにより、いっそう優れた耐熱保護性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のケーブル支持体の一例を示す(I)斜視図、(II)横断面図である。
図2】本発明のケーブル支持体の一例を示す(I)斜視図、(II)横断面図である。
図3】本発明の固定具の一例を示す図である。
図4】本発明の被覆構造体の一例を示す斜視図である。
図5】本発明の被覆構造体の一例を示す横断面図である。
図6】本発明の被覆構造体の一例を示す横断面図である。
図7】本発明の被覆構造体の作製工程の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0015】
(1)ケーブル支持体
(1a)、(1b)親桁
(1c)子桁
(2)固定具
(2a)つめ部
(2b)プレート部
(3)延焼防止シート
(3a)第1延焼防止シート
(3b)第2延焼防止シート
(3x)重ね代部
(4)熱発泡性耐火シート
(4x)突き合わせ部
(5)ケーブル
(6)タッカー
(7)熱発泡性耐火テープ
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
[ケーブル支持体]
図1は、ケーブルが収納されたケーブル支持体の一例を示す(I)斜視図、(II)横断面図である。
本発明は、ケーブル支持体(1)の被覆構造体に関するものである。本発明のケーブル支持体(1)は、ラダー型(梯子型)のケーブル支持体(ケーブルラック)である。例えば、図1に示すような、一対の対向する親桁(1a)、(1b)間に、これら親桁親桁(1a)及び(1b)に略直交するように、複数の子桁(1c)が所定の間隔で取り付けられた構造を有するものである。子桁(1c)は、その両端部分を、親桁(1a)及び(1b)が互いに対向する面で挟むようにして、例えば、ボルト、溶接等により固定されている。ケーブル支持体(1)の材質は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛めっき鋼板、等が使用できる。
【0018】
図2は、ケーブルが収納されたケーブル支持体の別の一例を示す(I)斜視図、(II)横断面図である。
本発明のケーブル支持体(1)は、図2に示すように、親桁部分(好ましくは親桁の上部)に、固定具(2)を有することが好ましい。本発明では、親桁(1a)または親桁(1b)のいずれか一方(より好ましくは親桁(1a)及び親桁(1b)の両方)に、固定具(2)を有するように設置されていることが好ましい。さらに、親桁(1a)と親桁(1b)に設置された固定具(2)は、ケーブル支持体(1)の長手方向において対になる(対向する)ように設置されることが好適である。ケーブル支持体(1)の長手方向における固定具(2)の設置間隔(x)は、好ましくは50~300mm(より好ましくは80~250mm)である。
【0019】
本発明の固定具(2)は、つめ部(2a)を有するものであり、つめ部(2a)を折り曲げ、延焼防止シート及び熱発泡性シートを固定することができるものであればよい。その形状は特に限定されないが、図3に示すように、つめ部(2a)とプレート部(2b)を有するものが好ましい。このような固定具(2)は、プレート部(2b)をケーブル支持体(1)の親桁部に設置(固定)し、プレート部(2b)とつめ部(2a)の境界でつめ部を立ち上げて使用することができる。固定具(2)の材質は、耐熱性を有するものであり、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛めっき鋼板、等が使用できる。また、つめ部(2a)の形状は、少なくとも第1延焼防止シート(3a)と熱発泡性シート(4)を貫通し、つめ部(2a)の貫通部分を曲げ、第1延焼防止シート(3a)と熱発泡性シート(4)を固定化できるものであればよく、例えば、逆V字状、逆U字状、台形状、長方形状、針状、円柱状、円錐状、長方形状、等が挙げられる。つめ部の長さ(高さh)は、固定する延焼防止シート、及び熱発泡性耐火シートの厚み等によって適宜設定すればよいが、好ましくは10~100mm(より好ましくは20~80mm)である。
【0020】
固定具(2)をケーブル支持体(1)の親桁部分に設置(固定)する方法としては、例えば、接着剤、溶接等が挙げられる。本発明では、プレート部(2b)に接着剤を塗付し、貼着(圧着)して設置することが好ましい。また、つめ部(2a)が上方向となるよう設置されることが好ましい。なお、接着剤(3)としては、例えば、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、パラフィン等を主原料とした水分散型、水溶性型、溶剤型の接着剤等、公知のものを使用することができる。接着剤には、必要に応じて、難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤、等を添加することもできる。なお、本発明において、接着剤には粘着剤も包含される。
【0021】
[延焼防止シート]
本発明の延焼防止シート(3)は、難燃性、不燃性のシートであれば特に限定されず使用することができる。例えば、無機繊維を含む繊維層(シート、クロス、織布、不織布、織物等)が使用できる。無機繊維としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維、等が挙げられる。これらは1種または2種以上含むことができる。また、本発明の延焼防止シート(3)は、繊維層の片面及びまたは両面に、難燃性、不燃性の樹脂層が積層されたもの等を使用することもできる。
【0022】
特に、本発明の延焼防止シート(3)は、繊維層の少なくとも一方の面(より好ましくは両方の面)に難燃性樹脂層が積層されたシートが好適である。具体的には、ガラスクロス等の繊維層の両面に、難燃化ゴム等の難燃性樹脂層を積層したシートが好適である。
【0023】
延焼防止シート(3)の厚みは、好ましくは0.05~10mm(より好ましくは0.1~5mm)程度である。なお、本発明における第1延焼シート(3a)と第2延焼シート(3b)は上記から選ばれるものであれば、同種、異種いずれでもよい。
【0024】
[熱発泡性耐火シート]
本発明の熱発泡性耐火シート(4)は、火災等により周囲温度が所定の発泡温度に達すると発泡し、炭化断熱層を形成するものである。熱発泡性耐火シート(4)は、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤及び充填剤を含有するものが好適である。このうち、樹脂成分としては例えば、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂等、難燃剤としてはポリリン酸アンモニウム等、発泡剤としてはメラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等、炭化剤としてはペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、充填剤としては二酸化チタン等が挙げられる。
【0025】
各成分の配合比率は、好ましくは、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤50~1000重量部、発泡剤5~500重量部、炭化剤5~600重量部、及び充填剤10~300重量部である。熱発泡性耐火シート(4)の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm程度(より好ましく0.5~6mm)程度である。
【0026】
また、本発明の熱発泡性耐火シート(4)は、上記構成成分を含むシートのみから構成されていてもよいが、少なくとも一方の面に繊維層が積層されていることが好ましい。これにより、形成された炭化断熱層の脱落防止効果を高めることができる。また、上記固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させた熱発泡性耐火シート(4)の欠損を防止((貫通時及び経時的な裂け防止)においても有利であり、本発明の効果を安定して発揮することができる。
【0027】
このような繊維層としては、有機繊維、及び/または無機繊維等を含むシートが挙げられる。
有機繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維等、またはそれらの織布、不織布等が挙げられる。有機繊維は、150℃程度の温度領域で溶融して液体状態になるようなものであってもよいが、かかる温度領域で溶融しないものの方が好ましい。
【0028】
無機繊維としては、例えば、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ-アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等、またはそれらの織布、不織布等、さらに鉄、銅等の金属細線が挙げられる。このような無機繊維は、熱を加えても溶融せず、さらに補強材としても作用し、発泡した炭化断熱層を保持できる。
【0029】
図4は、本発明の被覆構造体の一例を示す斜視図である。また、図5は、本発明の被覆構造体の一例を示す横断面図である。
【0030】
本発明の被覆構造体は、図4図5に示すように、ラダー型のケーブル支持体(1)が第1延焼防止シート(3a)、熱発泡性耐火シート(4)、及び第2延焼防止シート(3b)の順に被覆されている。
【0031】
本発明の被覆構造体の施工方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
(第1工程)
第1工程は、ラダー型のケーブル支持体(1)の外周に第1延焼防止シート(3a)を巻き付けて被覆する工程である。本発明の被覆構造体では、第1延焼防止シート(3a)が被覆されることにより、火災時により高温に曝された場合に、ケーブル支持体(1)内部(ケーブル付近)への通気を遮断することができる。これにより、耐熱保護性を高めることができる。
【0032】
第1延焼防止シート(3a)の巻き付け方法は特に限定されないが、例えば、第1延焼防止シート(3a)は、ケーブル支持体(1)の底部(より好ましくは親桁の下部)より巻き始め、ケーブル支持体(1)の外周を覆う様に巻き付けられることが好ましい。ラダー型のケーブル支持体(1)に固定具(2)を有する場合、図6に示すように第1延焼防止シート(3a)は、固定具(2)のつめ部(2a)を貫通した状態で被覆される。これにより、第1延焼防止シート(3a)のズレ等を抑制することができ、本発明の効果を高めることができる。また、第1延焼防止シート(3a)の端部どうし(巻き始め部分と巻き終わり部分)は、突き合わせた状態でもよいが、本発明では重ね代部を有することが好ましく、端部どうしはタッカー等で固定することもできる。
【0033】
また、ケーブル支持体(1)の長手方向には、複数の延焼防止シート(3)を設けることができる。延焼防止シート(3)どうしの継ぎ目部分は、つき合わせても、重ね代部を有していてもよいが、重ね代部を有することが好ましい。重ね代部はタッカー等で固定することもできる。
【0034】
(第2工程)
第2工程は、第1延焼防止シート(3a)が被覆されたラダー型のケーブル支持体(1)に、熱発泡性耐火シート(4)を被覆し、上記第1延焼防止シート(3a)と熱発泡性耐火シート(4)を固定する工程である。本発明の被覆構造体では、熱発泡性耐火シート(4)が被覆されることにより、火災等により高温に曝された場合には、熱発泡性耐火シート(4)より形成される炭化断熱層の断熱効果によりケーブル支持体(1)内部へ熱が伝達するのを抑制することができる。
【0035】
熱発泡性耐火シート(4)の被覆方法は特に限定されないが、熱発泡性耐火シート(4)は、図5に示すように、ケーブル支持体(1)の上部(より好ましくは親桁の上部(固定具付近))より巻き始め、ケーブル支持体(1)の外周を覆う様に巻き付けられればよいが、本発明では、ケーブル支持体(1)の少なくとも側面と底面を覆う様に被覆されていればよい。
【0036】
また、ラダー型のケーブル支持体(1)に固定具(2)を有する場合、図6(I)に示すように熱発泡性耐火シート(4)の一方の端部をケーブル支持体(1)の親桁(1a)の上部に設置された固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させ、ケーブル支持体(1)の外周を覆う様に巻き付けながら、熱発泡性耐火シートを親桁(1b)の上部に設置された固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させて被覆する。熱発泡性耐火シート(4)のもう一方の端部は、シート端部どうしを突き合わせて固定、重ね代部を有するように固定、あるいは親桁(1a)の上部に設置された固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させて固定することができる。本発明では、熱発泡性耐火シート(4)を貫通させた後、つめ部(2a)を折り曲げて上記第1延焼防止シート(3a)と熱発泡性耐火シート(4)を固定する。また、熱発泡性耐火シート(4)の端部どうしを固定する場合、必要に応じて、タッカー、接着剤、熱発泡性耐火テープ等を使用することができる。
【0037】
また、本発明では図6(II)に示すように、熱発泡性耐火シート(4)の一方の端部をケーブル支持体(1)の親桁(1a)の上部に設置された固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させケーブル支持体(1)の側面と底面を覆う様に巻き付け、熱発泡性耐火シート(4)のもう一方の端部を親桁(1b)の上部に設置された固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させて、つめ部(2a)を折り曲げて上記第1延焼防止シート(3a)と熱発泡性耐火シート(4)を固定する態様も好ましい。
【0038】
図6に示すように熱発泡性耐火シート(4)が、固定具(2)のつめ部(2a)を貫通した状態で被覆されことにより、熱発泡性耐火シート(4)のズレや、火災等により形成された炭化断熱層の脱落等も抑制することができ、本発明の効果を高めることができる。
【0039】
また、ケーブル支持体(1)の長手方向には、複数の熱発泡性耐火シート(4)を設けることができる。熱発泡性耐火シート(4)どうしの継ぎ目部分は、つき合わせても、重ね代部を有していてもよい。さらに、熱発泡性耐火シート(4)どうしの継ぎ目部分は、タッカー、接着剤で固定、あるいは熱発泡性耐火テープで固定されることが好ましい。なお、熱発泡性耐火シート(4)は、所望の耐熱保護性に合わせて、2枚以上重ねて被覆することができる。なお、熱発泡性耐火テープは、熱発泡性耐火シート(4)の裏面に接着剤を積層したテープ状のものを使用することができる。
【0040】
(第3工程)
本発明の被覆構造体は、第3工程して、最外周に第2延焼防止シート(3b)を巻き付けて被覆する。本発明の被覆構造体では、第2延焼防止シート(3b)が被覆されることにより、火災時により高温に曝された場合、熱発泡性耐火シート(4)より形成された炭化断熱層の脱落等を抑制することができるとともに、炭化断熱層の断熱効果を向上させ、本発明の効果を高めることができる。
【0041】
第2延焼防止シート(3b)は、上記第1延焼防止シート(3a)と同様の方法で巻き付けて被覆すればよい。例えば、第2延焼防止シート(3b)は、ケーブル支持体(1)の底部(より好ましくは親桁の下部)より巻き始め、ケーブル支持体(1)の外周を覆う様に巻き付けられることが好ましい。また、第2延焼防止シート(3b)の端部どうし(巻き始め部分と巻き終わり部分)は、突き合わせた状態でもよいが、本発明では重ね代部を有することが好ましく、端部どうしはタッカー等で固定することもできる。なお、本発明において、第2延焼防止シート(3b)を上記固定具(2)のつめ部(2a)に貫通させた場合、熱橋現象を生じるおそれがあるため、第2延焼防止シート(3b)は上記固定具(2)のつめ部を貫通しない態様が好ましい。
【実施例0042】
以下に具体的な実施例を示す。
(延焼防止シート)
ガラスクロスの両面に不燃性ゴムが被覆された延焼防止シート(厚み0.4mm、幅450mm、長さ20m)として使用した。なお、長さは、必要に応じてカットして使用するものである。
(熱発泡性耐火シートの製造)
アクリル樹脂100重量部、メラミン90重量部、ジペンタエリスリトール90重量部、ポリリン酸アンモニウム320重量部、酸化チタン100重量部を主成分する混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練して熱発泡性耐火シート用混練物を調製後、ガラス不織布(目付け50g/m、厚さ0.38mm)上に混練物を積層し圧延ローラーによってシート状に加工し、膜厚1.5mmの熱発泡性耐火シート(幅450mm、長さ20m)を作製した。なお、長さは、必要に応じてカットして使用するものである。
【0043】
(試験例1)
ケーブルを敷設したステンレス鋼製のラダー型ケーブル支持体(以下「ケーブルラック」という。寸法:幅600mm×高さ100mm×長さ1200mm、子桁間隔:300mm)の親桁の上部に図3に示す固定具(つめ部の長さ:40mm)を接着剤にて200mm間隔で固定した。
図7(I)に示すように、第1延焼防止シート(3a)をケーブルラックに1周巻き、第1延焼防止シート(3a)端部どうしはタッカー(6)で固定した。このとき、第1延焼防止シート(3a)は、固定具(2)のつめ部を貫通し、ケーブルラックの長手方向においては、第1延焼防止シート(3a)どうしが100mmの重ね代部(3x)を有するように被覆した。
次いで、図7(II)に示すように、熱発泡性耐火シート(4)の一端を固定具(2)のつめ部を貫通させ、ケーブルラックの側面と底面を覆うように巻き、熱発泡性耐火シート(4)のもう一方の端部を固定具(2)のつめ部に貫通させた。このとき、ケーブルラックの長手方向においては、熱発泡性耐火シート(4)どうしは突き合わせて被覆(突き合わせ部(4x))され、突き合わせ部は熱発泡性耐火テープ(7)(幅20mm)で固定した。さらに、熱発泡性耐火シート(4)3枚を同様に被覆し、合計4枚の熱発泡性耐火シート(4)をつめ部に貫通させた後、つめ部を全て折り曲げて上記第1延焼防止シート(3a)と4枚の熱発泡性耐火シート(4)を固定した。
さらに、図7(III)に示すように、第2延焼防止シート(3b)をケーブルラックに1周巻き、第2延焼防止シート(3b)端部どうしはタッカー(6)で固定した。このとき、ケーブルラックの長手方向においては、第2延焼防止シート(3b)どうしが100mmの重ね代部(3x)を有するように被覆し被覆構造体1を作製した。
【0044】
(試験例2)
試験例1で作製した被覆構造体において、熱発泡性耐火シート(4)をケーブルラックの長手方向において、熱発泡性耐火シート(4)どうしが50mmの重ね代部(4x)を有するように被覆し、重ね代部を接着剤で固定した以外は、同様にして被覆構造体2を作製した。
【0045】
(評価)
上記被覆構造体1、2を試験体とし、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行った。その結果、被覆構造体1、2ともに均一な炭化断熱層が形成され、良好な耐熱保護性能を示した。また、被覆構造体1、2ともに第1延焼防止シート裏面及びケーブルの温度上昇が140K以下であることを確認した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7