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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166670
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/00 20060101AFI20231115BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20231115BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C11/10
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077317
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱川 健史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暁雄
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA23
4F041BA34
4F041BA60
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA25
4F042CC02
4F042CC08
4F042DF05
4F042DF09
4F042DF29
4F042DF34
(57)【要約】
【課題】塗布動作のタクトタイムを短縮させることができる塗布装置を提供する。
【解決手段】基板を載置するステージと、前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、を備える塗布装置であって、前記塗布ユニットは、塗布液を吐出する塗布器と、この塗布器を支持する支持ユニットを有しており、前記支持ユニットは、塗布方向と直交する幅方向一方側に配置される支柱部と、前記支柱部から前記ステージを横切るように延びるビーム部とを有しており、前記塗布器は、前記ビーム部に取り付けられることにより、前記支持ユニットに片持ち梁構造で支持されている構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージの表面に載置された前記基板に対し一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、
を備える塗布装置であって、
前記塗布ユニットは、塗布液を吐出する塗布器と、この塗布器を支持する支持ユニットを有しており、
前記支持ユニットは、塗布方向と直交する幅方向一方側に配置される支柱部と、前記支柱部から前記ステージを横切るように延びるビーム部とを有しており、
前記塗布器は、前記ビーム部に取り付けられることにより、前記支持ユニットに片持ち梁構造で支持されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記支柱部は、塗布方向と直交する幅方向寸法が前記塗布器の幅方向寸法より大きい寸法で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記支持ユニットは、前記支持ユニットが塗布方向に走行するための複数のガイド部材上に搭載されており、前記ガイド部材の少なくとも1つは、前記支柱部よりも前記ステージに近接して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記支持ユニットは、その重心位置が前記支柱部の重心位置に比べて、幅方向両端に位置する前記ガイド部材間の中央に位置するように、前記支柱部が、前記幅方向両端に位置する前記ガイド部材間の中央に対して偏心させて設けられていることを特徴とする請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記支持ユニットを塗布方向に走行させる駆動部は、磁気吸引機構を有するリニアモータで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を吐出する塗布ユニットと基板とを相対的に移動させて、基板上に塗布膜を形成する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラスからなる基板上にレジスト液等の塗布液が塗布されたもの(塗布基板という)が使用されている。この塗布基板は、塗布液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。この塗布装置は、図5に示すように、基板Wを載置するステージ100と、塗布液を吐出する塗布ユニット101とを有しており、塗布ユニット101の塗布器102から塗布液を吐出させながら、基板Wと塗布ユニット101とを相対的に一方向に移動させることにより、均一厚さの塗布膜が形成された基板Wが形成されるようになっている。
【0003】
この塗布装置の塗布ユニット101は、塗布液が吐出される塗布器102と、塗布器102を支持する支持ユニット103を有している。支持ユニット103は、いわゆるガントリと呼ばれる門型形状に形成されており、ステージ100における塗布方向と直交する幅方向の両側に支柱部103aと、これら両支柱部103aに掛け渡される棒状のビーム部103bとを有しており、このビーム部103bに塗布器102が取り付けられている。そして、支柱部103aには駆動装置104が設けられており、支持ユニット103全体がステージ100に対して移動するように形成されている。すなわち、両側に配置される支柱部103aを設けることにより剛性の高い支持ユニット103で塗布器102を支持させることにより、塗布ユニット101が移動することによる塗布器102への振動等の影響が抑えられ、均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている。
【0004】
また、塗布装置には、ステージ100の幅方向一方側にロボットハンド105が配置されており、このロボットハンド105により基板Wがステージ100上に搬入される。このとき、塗布ユニット101は、塗布器102がステージ100の塗布方向端部に設けられたメンテナンス装置106上に配置される位置で停止している。搬入された基板Wはリフトピン107で支持されており、リフトピン107が下降することによりステージ100上に基板Wが載置され吸着保持される。そして、塗布ユニット101が移動し、塗布器102が基板Wの塗布方向端部に位置した状態で停止する。そして、塗布器102から塗布液が吐出され、塗布器102と基板Wとが塗布液で連結されることによりビードが形成されると、ビードが形成された状態を保ちつつ、塗布ユニット101が移動することにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成される。そして、塗布ユニット101が他方側に移動し、ステージ100上の基板Wがリフトピン107で持ち上げられた状態でロボットハンド105が侵入することにより、リフトピン107からロボットハンド105に基板Wの受け渡しが行われ、基板Wが排出される(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-093125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記塗布装置では、塗布動作のタクトタイムを削減することが難しいという問題があった。すなわち、上記塗布装置では、塗布動作が開始されると、塗布ユニット101が塗布方向一方側端部の塗布開始位置から他方側端部の塗布終了位置まで移動し、基板W上に塗布膜が形成される。タクトタイムを削減するには、基板W上に塗布膜が形成された後、すぐにロボットハンド105を進入させて基板Wを排出したいが、塗布ユニット101がメンテナンス装置106へ移動する間、支持ユニット103の支柱部103aが存在することにより、ロボットハンド105がステージ100上に進入することができない。一方、塗布膜が形成された後、塗布ユニット101をそのまま通過させて、その位置で待機させている間、ロボットハンド105を進入させて基板Wを排出させることも考えられるが、その後、塗布ユニット101をメンテナンス装置106に移動させて初期化する必要があり、いずれにせよ、塗布ユニット101がメンテナンス装置106に移動するまでの間、待機が必要になることから、全体としてタクトタイムの短縮には繋がらないという問題があった。近年では、基板Wが塗布方向に長尺形状に形成されたものもあり、待機時間が長くなりタクトタイムへの影響が大きくなっていた。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、塗布動作のタクトタイムを短縮させることができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、を備える塗布装置であって、前記塗布ユニットは、塗布液を吐出する塗布器と、この塗布器を支持する支持ユニットを有しており、前記支持ユニットは、塗布方向と直交する幅方向一方側に配置される支柱部と、前記支柱部から前記ステージを横切るように延びるビーム部とを有しており、前記塗布器は、前記ビーム部に取り付けられることにより、前記支持ユニットに片持ち梁構造で支持されていることを特徴としている。
【0009】
上記塗布装置によれば、塗布液を吐出する塗布器が、幅方向一方側に配置される支持ユニットの支持部により片持ち梁構造で支持されているため、塗布膜が形成された後、すぐに基板を排出する動作を開始することにより、塗布動作のタクトタイムを短縮することができる。すなわち、塗布器が幅方向一方側に配置される支持部により支持されているため、幅方向他方側には支持部が存在していない。そのため、支持部が配置される側と反対側にロボットハンドを配置することにより、ロボットハンドの進入を阻害する支持部が存在しておらず、基板上に塗布膜が形成された後、塗布ユニットの位置にかかわらずロボットハンドを進入させて基板を排出することができる。これにより、塗布ユニットがメンテナンス装置の位置に移動するまでロボットハンドが待機する必要があった従来技術に比べて、ロボットハンドが任意のタイミングで進入することができ、塗布動作のタクトタイムを短縮することができる。
【0010】
また、前記支柱部は、塗布方向と直交する幅方向寸法が前記塗布器の幅方向寸法より大きい寸法で形成されている構成にしてもよい。
【0011】
この構成によれば、支柱部の剛性を十分に高めることができるため、塗布器を片持ち梁構造で支持した場合でも剛性不足から生じる塗布器の鉛直方向に変位する振動が抑えられ、形成された塗布膜に振動が起因する塗布ムラの発生を抑えることができる。
【0012】
また、前記支持ユニットは、前記支持ユニットが塗布方向に走行するための複数のガイド部材上に搭載されており、前記ガイド部材の少なくとも1つは、前記支柱部よりも前記ステージに近接して設けられている構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、支持ユニットが複数のガイド部材上に搭載されているため、1つのガイド部材上に搭載される場合に比べて剛性が高くなる。また、複数のガイド部材の少なくとも1つは、支柱部が設けられる領域よりもステージに側に近接して設けられているため、塗布器が塗布方向を中心軸とするモーメントを低減することができ、塗布器が鉛直方向に変位する振動を抑え、塗布ムラが発生するのを抑えることができる。
【0014】
また、前記支持ユニットは、その重心位置が前記支柱部の重心位置に比べて、幅方向両端に位置する前記ガイド部材間の中央に位置するように、前記支柱部が、前記幅方向両端に位置する前記ガイド部材間の中央に対して偏心させて設けられている構成にしてもよい。
【0015】
この構成によれば、支持ユニットを支持するためのそれぞれのガイド部材に生じる反力、及び、反力の偏りについて、支柱部の重心がガイド部材間の中央に位置する場合に比べて低減させることができる。支持ユニット全体の剛性を高めることができ、支持ユニット全体の塗布方向回りのモーメントに対する強度についても向上させることができる。
【0016】
また、前記支持ユニットを塗布方向に走行させる駆動部は、磁気吸引機構を有するリニアモータで形成されている構成にしてもよい。
【0017】
この構成によれば、リニアモータの磁気吸引機構により支持ユニットが駆動部側に磁力により吸引されるため、塗布器が鉛直方向(駆動部から離れる方向)に変位する振動の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の塗布装置によれば、塗布動作のタクトタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態における塗布装置の正面図である。
図2】上記塗布装置における側面図である。
図3】上記塗布装置における塗布ユニットの拡大図である。
図4】塗布装置の処理動作を示す図であり、(a)はステージに基板が搬入される前の状態を示す図、(b)はロボットハンドが進入しステージ上に基板が搬入された状態を示す図、(c)は塗布動作において塗布器が塗布高さに下降した状態を示す図、(d)塗布膜が形成後、ロボットハンドに基板の受け渡しが行われた状態を示す図、(e)基板がステージから搬出された状態を示す図である。
図5】従来の塗布装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図2は、本発明の一実施形態における塗布装置の外観を概略的に示す図であり、図1は、正面図、図2は、側面図である。
【0021】
塗布装置1は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜Mを形成するものであり、基台2と、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。そして、ロボットハンド9により、ステージ21に基板Wが供給されると、塗布ユニット30から基板W上に塗布液が吐出され、塗布液が吐出された状態で塗布ユニット30が移動することにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成される。
【0022】
なお、以下の説明では、この塗布ユニット30が移動する方向(塗布方向)をX軸方向、これと水平面上で直交する方向(幅方向)をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0023】
本実施形態における基板Wは、幅方向寸法が50~100mmであり、塗布方向寸法が1500~1800mmの長尺形状の基板Wである。すなわち、塗布方向寸法が幅方向寸法の2倍以上の基板であり、この基板Wは、例えば、ガラス、フィルム等で形成されており、可撓性を有している。
【0024】
基台2は、平板形状に形成されており、この基台2上にステージ21、塗布ユニット30、メンテナンス装置8(図2参照)が載置された状態で設けられている。すなわち、ステージ21とメンテナンス装置8がX軸方向に並べて配置されており、このステージ21からY軸方向に離れた位置に塗布ユニット30がX軸方向に走行可能に設けられている。すなわち、塗布ユニット30は、ステージ21とメンテナンス装置8とに走行可能に構成されている。
【0025】
ステージ21は、基板Wを載置して保持するものである。ステージ21は、直方体形状に形成されており、基板Wを載置させる載置面21a(ステージ21の表面)がほぼ平坦状に形成されている。具体的には、X軸方向に延びる形状を有しており、載置面21aに基板Wが載置されると、長尺状の基板Wが載置面21aの沿う平坦な姿勢で保持できるように形成されている。
【0026】
ステージ21には、供給された基板Wを昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の載置面21aには複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン25(図4参照)が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピン25を突出させた状態(図4(b)参照)で基板Wが搬入されるとリフトピン25の先端部分が基板Wに当接して基板Wを保持することができる。そして、その状態からリフトピン25を下降させてピン孔に収容させることにより、基板Wをステージ21の載置面21aに載置することができるようになっている(図4(c))。
【0027】
また、このステージ21には、基板保持手段が設けられており、この基板保持手段により基板Wが保持されるようになっている。基板保持手段は、基板Wを吸着して保持するものである。具体的には、基板保持手段は、ステージ21の載置面21aに形成される吸引溝と吸引孔とを有しており、この吸引溝及び吸引孔により吸引力を発生させて基板Wを載置面21aに保持できるようになっている。すなわち、ステージ21の載置面21aには、所定の深さで形成される吸引溝がX軸方向及びY軸方向にほぼ等間隔で並んで配置されており、それぞれが互いに交差するように格子状に配置されている。また、吸引溝が交差する部分には、吸引孔が設けられており、この吸引孔と真空ポンプが配管を通じて連結されている。そして、真空ポンプを作動させることにより、吸引孔に吸引力が発生し、吸引溝を通じて載置面21a全体に亘って吸引力が発生するようになっている。
【0028】
塗布ユニット30は、基板W上に塗布液を吐出することにより塗布膜Mを形成するものである。塗布ユニット30は、塗布液を吐出する塗布器31と、塗布器31を支持する支持ユニット40を有している。そして、塗布ユニット30は、塗布器31が支持された状態でX軸方向に移動するように形成されている。すなわち、塗布器31がステージ21上に載置された基板Wと対向した状態で塗布器31から塗布液を吐出しつつ、移動することにより基板W上に均一厚さの塗布膜Mが形成されるようになっている。
【0029】
塗布器31は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜Mを形成するものである。この塗布器31は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向(X軸方向)とほぼ直交するY軸方向(幅方向)に延びるように設けられている。この塗布器31には、ステージ21と対向する面に長手方向に延びるスリットノズル31aが形成されており、塗布器31に供給された塗布液がスリットノズル31aから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズル31aから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズル31aの長手方向に亘って基板W上に一定厚さの塗布膜M(図2参照)が形成されるようになっている。
【0030】
支持ユニット40は、塗布器31の姿勢を保ちつつ、塗布器31を支持するためのものである。支持ユニット40は、支柱部41と、この支柱部41から水平方向に延伸されるビーム部42とを有している。
【0031】
支柱部41は、一方向に延びる柱状部材であり、ステージ21から離れた位置に設けられている。具体的には、支柱部41は、ステージ21から塗布方向と直交する幅方向(Y軸方向)一方側に離れて配置されており、基台2上に鉛直方向に延びるように設けられている。本実施形態では、基台2上に平板状のベース43が設けられており、支柱部41は、ベース43上に直立して設けられている。
【0032】
ビーム部42は、棒状部材であり塗布器31を支持するものである。ビーム部42は、支柱部41によりY軸方向に延びる姿勢で支持されており、ステージ21を横切る長さに形成されている。すなわち、ビーム部42は、支柱部41により片持ち梁構造により支持されている。そして、ビーム部42には塗布器31が取り付けられており、塗布器31のスリットノズル31aがステージ21の載置面21aに向く姿勢で支持されている。
【0033】
また、ビーム部42は、支柱部41に支持された状態で昇降動作するように構成されている。具体的には、この支柱部41にはZ軸方向に延びるレール44と、このレール44に沿ってスライド45するスライダ45が設けられており、これらのスライダ45とビーム部42とが連結されている。そして、スライダ45にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダがZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、ビーム部42が昇降動作することにより、塗布器31が、ステージ21に保持された基板Wに対して接離可能に支持されている。
【0034】
また、支柱部41は、幅方向寸法Sが塗布器31の幅方向寸法Tより大きい寸法で形成されている。本実施形態では、図3に示すように、支柱部41の幅方向寸法Sは、塗布器31の幅方向寸法Tの2倍以上大きい寸法で形成されている。これにより、塗布器31及びビーム部42は、片持ち梁構造であっても十分な強度で支持することができるようになっている。この支柱部41の幅方向寸法Sは、支柱部41の幅方向における最大寸法値であり、塗布器31の幅方向寸法Tは、塗布器31単体の長手方向における最大寸法値である。
【0035】
また、支柱部41が載置されるベース43には、駆動部5が設けられている。この駆動部5により支持ユニット40がX軸方向に移動できるようになっている。具体的には、基台2上には、X軸方向に延びる2本のレール51(本発明のガイド部材)が設けられており、ベース43がスライダ52を介してレール51にスライド自在に取り付けられている。そして、基台2にはリニアモータ55が取り付けられている。本実施形態では、ベース43の幅方向中央位置に取り付けられており、リニアモータ55を駆動制御することにより、ベース43に取り付けられた支柱部41、ひいては塗布ユニット30がレール51に沿ってX軸方向に移動し、任意の位置で停止できるようになっている。本実施形態では、塗布器31がステージ21とメンテナンス装置8のそれぞれの位置に停止することができ、塗布器31がステージ21と対向する姿勢でステージ21上を移動できるようになっている。
【0036】
また、本実施形態では、レール51は、支柱部41の幅方向寸法よりも大きい寸法を有するように設けられている。図3に示す例では、ベース43は、ステージ21側に張り出す延長部43aを有しており、2本のレール51のうち1本が延長部43a直下に設けられている。そして、レール51は、ベース43の幅方向両端部に設けられており、支柱部43は、2本のレール51の中央位置から外側(塗布器31と反対側)に所定量偏心させた位置に配置されている。すなわち、支持ユニット40全体の重心位置Gsが、支柱部41の重心位置G2に比べて、2本のレール51の中央に近い位置に位置するように支柱部41を偏心させて配置させている。すなわち、支持ユニット40の重心位置Gsは、ビーム部42の重心G1と支柱部41の重心G2から、図3におけるGsの位置に存在しており、この重心位置Gsは、支柱部41の重心G2に比べて、2本のレール51の中央付近に位置している。これにより、支持ユニット40を支持するためのそれぞれのレール51に生じる反力、及び、反力の偏りが、支柱部41の重心G2が2本のレール51を支柱部41直下に配置させる場合に比べて低減させることができる。したがって支持ユニット40全体の剛性を高めることができ、支持ユニット40全体の塗布方向(X軸方向)回りのモーメントに対する強度についても向上させることができる。これにより、塗布器31が片持ち梁構造で支持する構成であっても、剛性不足から塗布器31が鉛直方向(Z軸方向)に振動することを回避し、強固に支持することができ、塗布器が鉛直方向に変位する振動を抑え、塗布ムラが発生するのを抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態では、駆動部5のリニアモータ55として、磁気吸引機構を有するリニアモータ55が使用されている。すなわち、コアレスタイプのリニアモータでは、上下の固定子の間に可動子が磁気的に保持されている。そのため、可動子が固定子の間で磁気的に非接触で支持されるため、微小な隙間により支柱部41がZ方向に変位することが許容され、塗布器31が振動する要因となる。本実施形態では、磁気吸引機構を有するコア付きタイプのリニアモータ55が使用されることにより塗布器31の振動を抑えることができる。具体的には、リニアモータ55の可動子55aが支柱部41に取り付けられており、ベース43に固定子55bが取り付けられていることにより、可動子55aと固定子55bとが磁気的に吸引されつつ、リニアモータ55の駆動力が発生する。そのため、支柱部41がベース43から離れるような変位が発生しにくくなり、支柱部41とベース43との位置関係がほぼガタツキなく一定に保たれる。これにより、支柱部41が僅かにZ方向に変位することを回避できるため、塗布器31が鉛直方向(Z軸方向)に振動することを極力抑えることができるようになっている。このように、塗布器31が片持ち梁構造で支持されていても、剛性不足、ガタツキ等から塗布器31が鉛直方向(Z軸方向)に振動することを回避して、塗布器31が振動することによる塗布ムラが発生するのを抑えることができる。
【0038】
また、ステージ21のX軸方向に離れた位置には、メンテナンス装置8が配置されている。メンテナンス装置8は、塗布器31を清掃、初期化するものである。すなわち、所定量の塗布液を吐出した後、拭き取り部材で塗布器31のスリットノズル31aが拭き取られることにより、塗布器31内の塗布液がスリットノズル31aの先端部分にまで長手方向に渡って均一に充填されている状態が形成される。これにより、スリットノズル31aの清掃と、次の塗布膜Mを形成するための初期化が行われる。
【0039】
次に、この塗布装置1の処理動作について、図2、及び、図4(a)~図4(e)を参照しながら説明する。
【0040】
まず、塗布器31の初期化と、基板Wの搬入が行われる。具体的には、図2に示すように、塗布ユニット30がメンテナンス装置8上に塗布器31が位置するように移動し、この位置において塗布器31が初期化される。すなわち、塗布器31のスリットノズル31aから所定量の塗布液が吐出され、拭き取り部材でスリットノズル31aに付着した余分な塗布液が拭き取られることにより、スリットノズル31aの先端部分にまで塗布液が充填された状態が形成される。
【0041】
次に、ステージ21上に基板Wが搬入される。具体的には、図4(a)に示すように、塗布装置1の支柱部41と反対側に配置されたロボットハンド9に基板Wが載置されると、ステージ21に設けられたリフトピン25が上昇した状態で待機する。そして、ロボットハンド9がステージ21上に進入し、下降することにより、ロボットハンド9からリフトピン25に基板Wの受け渡しが行われる(図4(b))。基板Wの受け渡しが行われると、ロボットハンド9は、元の位置に退避する。そして、リフトピン25が下降することにより、基板Wがステージ21の載置面21aに載置され、図示しない位置決め部材により基板Wの位置決めが行われる。その後、基板保持手段により、基板Wがステージ21上に位置決めされた状態で吸着保持される。
【0042】
次に、塗布処理が行われる。具体的には、塗布器31が基板Wの塗布開始位置に位置するように塗布ユニット30が移動し、塗布器31が基板Wとの高さが塗布膜Mの形成に適切な高さ位置となるまで下降し(図4(c))、スリットノズル31aから塗布液が吐出されることにより、スリットノズル31aと基板Wとの間にビードBが形成される。この状態で塗布ユニット30がX軸方向(塗布方向)に移動することにより基板W上に塗布膜Mが形成される。そして、図2の破線で示すように、塗布器31が基板Wの終端部に位置する状態で、ビードBの液切り処理が行われ、その後、塗布器31が上昇することにより、塗布処理が完了する。
【0043】
次に、塗布器31の初期化と共に基板Wの搬出が行われる。具体的には、塗布処理が完了した塗布ユニット30は、初期化を行うために塗布器31がメンテナンス装置8に位置するように移動する。一方、塗布ユニット30が移動開始すると共に、基板Wの搬出処理が行われる。具体的には、リフトピン25が上昇することにより、基板Wを搬出位置に位置させる。この状態でロボットハンド9が進入し、基板Wの底面側から上昇することにより、リフトピン25からロボットハンド9に基板Wが受け渡される(図4(d))。
【0044】
このとき、本実施形態における塗布装置1では、塗布器31の初期化と基板Wの搬出は、同時に行うことができる。すなわち、従来では、塗布器31は塗布精度への影響から両端支持構造が採用されていたため、ロボットハンド9の進入には支柱部41の位置に影響を受ける。そのため、塗布処理が完了し、塗布ユニット30が基板Wの終端部に位置する状態では、支柱部41の存在によりロボットハンド9が進入することができず、支柱部41がステージ21からX軸方向に離れるまで待機する必要がある。一方、本実施形態では、塗布ユニット30は、塗布器31を片持ち梁構造で保持しているため、幅方向において、支柱部41と反対側に配置されるロボットハンド9は、支柱部41の位置にかかわらず、ステージ21内に進入することができる。したがって、基板W上に塗布膜Mが形成されると、すぐにロボットハンド9を進入させて(図4(c))、基板Wの排出を完了させることができる(図4(e))。
【0045】
このように、上記実施形態における塗布装置1によれば、塗布液を吐出する塗布器31が、幅方向一方側に配置される支持ユニット40の支持部により片持ち梁構造で支持されているため、塗布膜Mが形成された後、すぐに基板Wを排出する動作を開始することにより、塗布動作のタクトタイムを短縮することができる。すなわち、塗布器31が幅方向一方側に配置される支持部により支持されているため、幅方向他方側には支持部が存在していない。そのため、支持部が配置される側と反対側にロボットハンド9を配置することにより、ロボットハンド9の進入を阻害する支持部が存在しておらず、基板W上に塗布膜Mが形成された後、塗布ユニット30の位置にかかわらずロボットハンド9を進入させて基板Wを排出させることができる。これにより、塗布ユニット30がメンテナンス装置8の位置に移動するまでロボットハンド9が待機する必要があった従来技術に比べて、ロボットハンド9が任意のタイミングで進入することができ、塗布動作のタクトタイムを短縮することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、支柱部41は、幅方向寸法が塗布器31の幅方向寸法より大きい寸法で形成されている例について説明したが、コストは高くなるものの、剛性の高い材料で支柱部41を形成することにより、支柱部41の幅方向寸法を塗布器31の幅方向寸法以下の構成にすることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、支持ユニット40が走行するためのガイド部材(レール51)が2本使用する例について説明したが、剛性が確保されれば、1本でもよく、3本以上使用するものであってもよい。特に複数本のガイド部材を使用する場合、上述の通り延長部43aを設け、支柱部41が設けられる領域よりもステージ側に近接するようにレールを配置することにより、塗布器31が塗布方向を中心軸とするモーメントを低減することができる。
【0048】
また、上記実施形態では、リニアモータ55として磁気吸引機構を有するコア付きタイプのリニアモータ55を使用する例について説明したが、剛性の影響が塗布ムラに影響なければ、コアレスタイプのリニアモータ55を使用するものでもよく、リニアモータ55の代わりにボールネジ等の他の駆動部5を用いるものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 塗布装置
9 ロボットハンド
21 ステージ
30 塗布ユニット
31 塗布器
40 支持ユニット
41 支柱部
43 延長部
51 レール(ガイド部材)
55 リニアモータ
B ビード
図1
図2
図3
図4
図5