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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023166675
(43)【公開日】2023-11-22
(54)【発明の名称】報知装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20231115BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20231115BHJP
【FI】
G08B21/02
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077331
(22)【出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 直希
(72)【発明者】
【氏名】上野 洋
(72)【発明者】
【氏名】神川 晃幸
(72)【発明者】
【氏名】森 祐一郎
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA38
5C086BA22
5C086CA19
5C086CA25
5C086DA19
5C086FA01
5C086FA11
5C087AA11
5C087AA31
5C087DD14
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG19
5C087GG31
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】車両の内部に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる報知装置を提供する。
【解決手段】報知装置1は、車両8の内部に配置され、検出対象が出す少なくとも二酸化炭素を測定対象物質として測定する複数の測定センサを有する測定部2と、予め定められた条件下における測定対象物質を測定して参照値61となる測定量を出力する参照値測定部3と、予め定められた差分しきい値60を有し、参照値測定部3が出力した測定量から参照値61を定め、複数の測定センサごとの測定対象物質の測定量と参照値61との差分値を算出し、差分値と差分しきい値60とを比較することによって、車両8が停車状態にあり、かつ車両8のドアがロックされた状態における検出対象の存在を判定する判定部としての制御部6と、を備えて概略構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内部に配置され、検出対象が出す少なくとも二酸化炭素を測定対象物質として測定する複数の測定センサを有する測定部と、
予め定められた条件下における前記測定対象物質を測定して参照値となる測定量を出力する参照値測定部と、
予め定められた差分しきい値を有し、前記参照値測定部が出力した測定量から前記参照値を定め、複数の前記測定センサごとの前記測定対象物質の測定量と前記参照値との差分値を算出し、前記差分値と前記差分しきい値とを比較することによって、前記車両が停車状態にあり、かつ前記車両のドアがロックされた状態における前記検出対象の存在を判定する判定部と、
を備えた報知装置。
【請求項2】
前記測定部の前記測定センサは、前記測定対象物質の濃度を測定し、
前記判定部は、前記測定量の濃度の前記差分値が前記差分しきい値以上となった場合、前記車両の内部に前記検出対象が存在すると判定する、
請求項1に記載の報知装置。
【請求項3】
前記測定部の前記測定センサは、乗員が着座する座席の座部の少なくとも1つに配置される、
請求項2に記載の報知装置。
【請求項4】
前記参照値測定部は、前記車両が停止され、かつドアがアンロックからロックされた状態を前記予め定められた条件とする、
請求項3に記載の報知装置。
【請求項5】
前記判定部は、重量物が検出された前記座席に関する荷重情報を取得し、前記荷重情報に基づいて前記重量物が検出されない前記座席に配置された前記測定センサが検出した測定量から前記参照値を生成して前記検出対象が存在するか否かを判定する、
請求項4に記載の報知装置。
【請求項6】
さらに前記検出対象の存在が判定された場合、音及び光の少なくとも1つを用いた方法により報知を行う報知部を備えた、
請求項5に記載の報知装置。
【請求項7】
前記報知部は、前記車両の外のネットワークと接続され、ユーザの携帯端末に報知する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の報知装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記検出対象の大きさに応じた複数の前記差分しきい値を有し、複数の前記測定センサの前記測定対象物質の測定に基づいて呼吸のサイクルを判定し、前記呼吸のサイクルとピーク時の測定量との少なくとも一方に基づいて前記検出対象の大きさを判定し、判定した前記測定対象の大きさに応じた前記差分しきい値を切り替えて前記検出対象の存在を判定する、
請求項7に記載の報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、報知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、車内の人間や動物を検出する赤外線センサと、車内の温度を検出する温度センサと、車内の有害ガスを検出するガスセンサと、赤外線センサが車内の人間や動物を検出し、かつ温度センサの検出値及び/又はガスセンサの検出値がそれぞれの設定された安全範囲より外れた場合、異常を報知する報知手段とを備えた車内監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車内監視システムは、車内の温度が高温になりそこに人間や動物が取り残される状況が発生しても、車内が監視されるため危険が回避されて人間や動物の健康が損なわれることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-240535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車内監視システムは、車内の温度が高温になった場合や動物がゲージに入れられている場合、赤外線センサによる人間や動物の検出精度が低下する可能性がある。
【0006】
従って本発明の目的は、車両の内部に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる報知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車両の内部に配置され、検出対象が出す少なくとも二酸化炭素を測定対象物質として測定する複数の測定センサを有する測定部と、予め定められた条件下における測定対象物質を測定して参照値となる測定量を出力する参照値測定部と、予め定められた差分しきい値を有し、参照値測定部が出力した測定量から参照値を定め、複数の測定センサごとの測定対象物質の測定量と参照値との差分値を算出し、差分値と差分しきい値とを比較することによって、車両が停車状態にあり、かつ車両のドアがロックされた状態における検出対象の存在を判定する判定部と、を備えた報知装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の内部に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、報知装置が配置された車両内部の一例を示す図であり、図1(b)は、報知装置が配置された車両のシートの配列の一例を示す図である。
図2図2(a)は、報知装置のブロック図の一例であり、図2(b)は、報知装置が接続される車両システムの一例を示すブロック図である。
図3図3(a)は、二酸化炭素の濃度の一例について説明するための図であり、図3(b)は、変形例の測定センサの配置の一例の図である。
図4図4は、報知装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、報知装置の参照値の設定動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、報知装置のブロック図の一例であり、図6(b)及び図6(c)は、検出対象から吐出される二酸化炭素の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る報知装置は、車両の内部に配置され、検出対象が出す少なくとも二酸化炭素を測定対象物質として測定する複数の測定センサを有する測定部と、予め定められた条件下における測定対象物質を測定して参照値となる測定量を出力する参照値測定部と、予め定められた差分しきい値を有し、参照値測定部が出力した測定量から参照値を定め、複数の測定センサごとの測定対象物質の測定量と参照値との差分値を算出し、差分値と差分しきい値とを比較することによって、車両が停車状態にあり、かつ車両のドアがロックされた状態における検出対象の存在を判定する判定部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この報知装置は、参照値と測定量の差分値から検出対象の存在を判定するので、この構成を採用しない場合と比べて、車両の内部に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(報知装置1の概要)
図1(a)は、第1の実施の形態に係る報知装置が配置された車両内部の一例を示す図であり、図1(b)は、報知装置が配置された車両のシートの配列の一例を示す図である。図2(a)は、第1の実施の形態に係る報知装置のブロック図の一例であり、図2(b)は、報知装置が車両LAN(Local Area Network)を介して接続される車両システムの一例を示すブロック図である。図3(a)は、第1の実施の形態に係る二酸化炭素の濃度の一例について説明するための図であり、図3(b)は、変形例の測定センサの配置の一例の図である。図3(a)は、縦軸が二酸化炭素の濃度であり、横軸が時間である。また図3(a)は、時間t以前が、ユーザや検出対象などが存在している状態の濃度である測定量200の増加を示し、時間t以降が、検出対象のみが車室80に取り残された状態の測定量200の増加を示している。図3(a)の時間tにおける点線は、検出対象が車室80に取り残されなかった場合の測定量200を示している。
【0013】
なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。また図2(a)、図2(b)及び図6(a)では、主な信号や情報の流れを矢印で示している。
【0014】
報知装置1は、検出対象が車両8の内部、つまり車室80に取り残された場合、車両8の周囲、及び車両8のユーザに報知する装置である。車室80は、密閉空間であるため、呼気によって吐出される二酸化炭素の濃度が時間と共に増加する。報知装置1は、この二酸化炭素の濃度に基づいて検出対象を検出するように構成されている。この検出対象は、人間や動物といった生物である。
【0015】
報知装置1は、図1(a)~図2(b)に示すように、車両8の内部に配置され、検出対象が出す少なくとも二酸化炭素を測定対象物質として測定する複数の測定センサを有する測定部2と、予め定められた条件下における測定対象物質を測定して参照値61となる測定量を出力する参照値測定部3と、予め定められた差分しきい値60を有し、参照値測定部3が出力した測定量から参照値61を定め、複数の測定センサごとの測定対象物質の測定量と参照値61との差分値を算出し、差分値と差分しきい値60とを比較することによって、車両8が停車状態にあり、かつ車両8のドアがロックされた状態における検出対象の存在を判定する判定部としての制御部6と、を備えて概略構成されている。
【0016】
測定部2の測定センサは、測定対象物質の濃度を測定するように構成されている。また制御部6は、測定量の濃度の差分値が差分しきい値60以上となった場合、車両8の内部に検出対象が存在すると判定する。
【0017】
報知装置1は、検出対象の存在が判定された場合、音及び光の少なくとも1つを用いた方法により報知を行う報知部4を備えている。
【0018】
この報知部4は、図2(b)に示すように、車両8の外のネットワーク70と接続され、ユーザの携帯端末7に報知する。報知装置1は、これらの構成を採用しない場合と比べて、車両8の周囲に報知できると共に、車両8のユーザに早期に報知することができる。
【0019】
なお測定対象物質は、二酸化炭素に加えて、一例として、ストレス時に呼気として排出され易いアセトン、メチルメルカブタン、硫化水素及びジメチルサルファイドなどや、発汗時に排出される尿素などや、匂い、排気ガス、及び化粧品などに含まれる酸化スズなどの少なくとも1つであっても良い。
【0020】
さらに報知装置1は、外のネットワークに接続された人工知能(AI)を用いて、二酸化炭素以外のデータも合わせて高精度に、かつ早期に判定するように構成されても良い。当該データは、一例として、上記のストレス時に排出される物質などのデータである。
【0021】
報知装置1は、図2(b)に示すように、車両システム800と電磁気的に接続されている。車両システム800は、車両制御装置801と、駆動装置802と、シフト装置803と、ドアロック装置804と、ライト装置805と、警報装置806と、荷重センサ807と、外部通信装置808と、車両LAN809と、を備えている。
【0022】
車両制御装置801は、車両8の全体の制御を行うように構成されている。駆動装置802は、内燃機関及びモータの少なくとも一方を利用して車両8を走行させる駆動源である。シフト装置803は、パーキングポジション、ドライブポジション、ニュートラルポジション及びリバースポジションなどの操作位置を有し、ギア比などを変更する操作装置である。ドアロック装置804は、車両8のドアのロック、アンロックを行うアクチュエータを備えた装置である。ライト装置805は、車両8のヘッドライト、フォグライトなどを制御する装置である。警報装置806は、警報機などを制御する装置である。荷重センサ807は、車両8の運転席83~後部座席85に設けられ、これらの座席の座部にかかる荷重を検出するセンサである。外部通信装置808は、外のネットワークと通信を行う装置である。車両LAN809は、例えば、有線及び無線によって相互に信号や情報などの交換を可能とするCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車両用ネットワークである。
【0023】
(測定部2の構成)
測定部2の測定センサは、乗員が着座する座席の座部の少なくとも1つに配置される。本実施の形態の車両8は、図1(b)に示すように、運転席83、助手席84、後部座席85を有している。測定センサは、この運転席83、助手席84、後部座席85の少なくとも1つに配置される。本実施の形態の測定センサは、一例として、第1の測定センサ21~第3の測定センサ23として運転席83、助手席84及び後部座席85に配置されるがこれに限定されない。例えば、測定センサは、図3(b)に示すように、車両8が中部座席86を有する場合、運転席83、助手席84、中部座席86及び後部座席85の少なくとも1つに配置されても良い。なお車両8は、さらに多くの座席を有しても良い。
【0024】
運転席83は、座部83a、シートバック83b及びヘッドレスト83cを有している。助手席84は、座部84a、シートバック84b及びヘッドレスト84cを有している。
【0025】
後部座席85は、一例として、3人がけの座席が1つとなっており、第1の座部85a~第3の座部85c、シートバック85d及びヘッドレスト85e~ヘッドレスト85gを有している。なお中部座席86は、後部座席85と同様の構成を有し、第1の座部86a~第3の座部86c、シートバック86d及びヘッドレスト86e~ヘッドレスト86gを有している。
【0026】
第1の測定センサ21は、図1(b)に示すように、運転席83の座部83aの前面830に配置されている。第2の測定センサ22は、助手席84の座部84aの前面840に配置されている。第3の測定センサ23は、後部座席85の中央の座部である第2の座部85bの前面850に配置されている。
【0027】
なお測定センサは、後部座席85の第1の座部85a~第3の座部85cのそれぞれの前面850に配置されても良い。また中部座席86がある場合、中部座席86の中央の座部である第2の座部86bの前面860に配置されても良いし、第1の座部86a~第3の座部86cのそれぞれの前面860に配置されても良い。
【0028】
第1の測定センサ21~第3の測定センサ23は、一例として、二酸化炭素の濃度を測定するNDIR(Non Dispersive InfraRed:非分散型赤外線)方式のセンサである。
【0029】
第1の測定センサ21~第3の測定センサ23は、測定した二酸化炭素の濃度を濃度情報S~濃度情報Sとして制御部6に出力する。
【0030】
ここで変形例として第1の測定センサ21は、運転席83のシートバック83b及びヘッドレスト83cの少なくとも1つに配置されても良い。また第2の測定センサ22は、助手席84のシートバック84b及びヘッドレスト84cの少なくとも1つに配置されても良い。さらに第3の測定センサ23は、シートバック85d及びヘッドレスト85e~ヘッドレスト85gの少なくとも1つに配置されても良い。
【0031】
(参照値測定部3の構成)
参照値測定部3は、一例として、図1(a)に示すように、乗員9の頭部90よりも高い位置に配置される。具体的には、参照値測定部3は、検出対象が車室80に取り残されても二酸化炭素の増加が抑制された場所に配置されることが好ましい。つまり報知装置1は、検出対象が車室80に取り残された場合、二酸化炭素の濃度が増加し易い場所に測定部2が配置され、二酸化炭素の濃度が増加し難い場所に参照値測定部3が配置される。
【0032】
なお参照値測定部3は、測定部2の第1の測定センサ21~第3の測定センサ23の少なくとも1つであっても良い。
【0033】
二酸化炭素は、空気中に含まれる酸素や窒素と比べて分子量が大きい。従って二酸化炭素は、酸素や窒素と比べて、天井81aよりも床81b側に溜まり易い。
【0034】
また二酸化炭素は、一例として、図3(a)に示すように、時間t以降において点線で示すように、検出対象などが車室80に存在しない場合、密閉された車室80では測定量200(二酸化炭素の濃度)が一定となる。そして二酸化炭素は、車室80に乳幼児などが取り残された場合、呼吸によって二酸化炭素が増加するので、濃度が増加する。
【0035】
以上より、参照値測定部3は、乗員9の頭部90よりも高い位置に配置される。また参照値測定部3は、乳幼児や小動物がヘッドレスト側よりも座部側に近い位置で二酸化炭素を吐出するので、二酸化炭素が溜まり易い座席の座部に配置される。特に乳幼児は、チャイルドシートに着座している場合、ヘッドレスト側よりも座部側に近い位置で二酸化炭素を吐出する。
【0036】
本実施の形態の参照値測定部3は、一例として、図1(b)に示すように、運転席83及び助手席84と後部座席85の間の天井81aの配置位置810に配置されているがこれに限定されず、ピラーなどであっても良いし、複数配置されても良い。複数配置された場合、参照値61は、平均であっても良いし、最も大きい測定量とされても良く、これに限定されない。また参照値測定部3は、一例として、図3(b)に示すように、車両8が中部座席86を備える場合、中部座席86と後部座席85の間の天井81aの配置位置811に配置されても良いし、配置位置810及び配置位置811に配置されても良い。
【0037】
この参照値測定部3は、第1の測定センサ21~第3の測定センサ23と同じNDIR方式のセンサである。参照値測定部3は、測定した二酸化炭素の濃度を濃度情報Sとして制御部6に出力する。
【0038】
(報知部4の構成)
報知部4は、一例として、制御部6から出力された報知信号Sに基づいて報知音を出力する。この報知音は、車両8の中に検出対象が取り残されていることを周囲に報知するものである。報知部4は、光によって報知を行う場合、ライト装置805を用いて報知を行う。また報知部4は、報知音とライト装置805の点灯と消灯の組み合わせで報知するように構成されても良い。
【0039】
なお変形例として報知部4は、車両LAN809を介して車両8が有する音声出力装置などを用いて報知するように構成されても良い。また報知部4は、例えば、車両LAN809を介してライト装置805を点灯及び消灯させて報知するように構成されても良い。さらに報知部4は、車両8の車高調整が可能である場合、車高を変えることによる振動などで報知するように構成されても良い。
【0040】
(通信部5の構成)
通信部5は、車両LAN809を介して車両制御装置801などと情報や信号を相互に交換可能に構成されている。なお通信部5は、ユーザの携帯端末7と通信可能に構成されても良い。
【0041】
(制御部6の構成)
制御部6は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部6が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。また制御部6は、その内部にクロック信号を生成する手段を有し、このクロック信号に基づいて動作を行う。
【0042】
制御部6は、差分しきい値60と、参照値61と、を有する。差分しきい値60は、測定センサが検出した二酸化炭素の濃度と参照値61との差分値dに関するしきい値である。制御部6は、差分値dが差分しきい値60以上となった場合、差分しきい値60以上となった差分値dが算出された測定センサが配置された座席に検出対象が存在すると判定する。
【0043】
参照値61は、測定センサが検出した二酸化炭素の濃度の基準となるものである。二酸化炭素の濃度は、車室80が密閉されているので、車室80に検出対象などの生物が存在しない場合、一定となる。そこで制御部6は、予め定められた条件が成立した際、二酸化炭素の濃度を参照値61とすると共に、検出対象の存在の有無の判定を開始する。
【0044】
・参照値61を定めるための予め定められた条件について
制御部6は、予め定められた条件下で測定された二酸化炭素の濃度を参照値61と定める。
【0045】
制御部6は、車両8が停車状態にあり、かつドアがアンロックからロックされた状態を予め定められた条件とする。具体的には、制御部6は、一例として、シフト装置803が停車の際の操作位置であるパーキングポジションやニュートラルポジションであること、及びシフト装置803がパーキングポジションやニュートラルポジションにされた後、車両8のドアがアンロックからロックされたことである。
【0046】
つまり制御部6は、ユーザが車両8を停車させ、車両8の外に出たことをトリガとしてその際の二酸化炭素の濃度を参照値61とする。図3(a)に示す時間t~時間tまでは、車室80に少なくともユーザ及び検出対象が存在するため、二酸化炭素の濃度が増加する。また時間t以降では、点線で示すように、車室80に生物が存在しない場合、二酸化炭素の濃度は、一定となる。しかし検出対象が取り残された場合、二酸化炭素は、時間tまでよりも増加率が小さいながらも濃度が増加する。
【0047】
車両制御装置801は、シフト装置803から出力されたシフト信号S10、及びドアのアンロック、及びロックに応じてドアロック装置804から出力されたドアロック信号S11を取得し、車両LAN809を介して報知装置1にトリガ信号となる車両情報Sを出力する。
【0048】
制御部6は、車両情報Sの入力により、予め定められた条件が成立したと判定した場合、参照値61を生成する。そして制御部6は、参照値61の生成をトリガとして、参照値61と測定部2が測定した濃度との差分値dが差分しきい値60以上となるか監視する。図3(a)では、一例として、時間tにおいて差分値dが差分しきい値60以上となっているものとしている。つまり制御部6は、時間tにおいて検出対象を検出し、報知を行う。
【0049】
以下に本実施の形態の報知装置1の動作の一例について図4のフローチャートに従って説明する。
【0050】
(動作)
報知装置1の制御部6は、参照値61を生成するための予め定められた条件が成立するか監視する。制御部6は、ステップ1の「Yes」が成立する、つまり車両LAN809及び通信部5を介して車両情報Sが入力して予め定められた条件が成立したと判定すると(Step1:Yes)、参照値測定部3から濃度情報Sを取得して参照値61を設定する(Step2)。
【0051】
制御部6は、第1の測定センサ21~第3の測定センサ23から濃度情報S~濃度情報Sを取得して参照値61との差分値dをそれぞれ算出する(Step3)。制御部6は、参照値61の生成をトリガとして検出対象の存在の判定を開始する。
【0052】
制御部6は、ステップ4の「Yes」が成立する、つまりいずれかの測定センサの差分値dが差分しきい値60以上となった場合(Step4:Yes)、報知信号Sを生成して報知部4に出力し、報知を開始する(Step5)。
【0053】
制御部6は、ステップ6の「Yes」が成立する、つまりドアのロックが解除された場合(Step6:Yes)、報知を終了する(Step7)。
【0054】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る報知装置1は、車室80に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる。具体的には、報知装置1は、参照値61を生成するための参照値測定部3を有し、測定された濃度と参照値61との差分値dに基づいて検出対象の存在の有無を検出するように構成されている。報知装置1は、この構成を採用しない場合と比べて、車室80の温度の上昇や太陽光などの影響が抑制され、車室80に取り残された検出対象の検出精度を向上させることができる。
【0055】
報知装置1は、ユーザが車両8の外に出たことをトリガとして参照値61を生成するので、参照値が固定されている場合と比べて、より精度の高い検出対象の検出を行うことができる。
【0056】
ユーザは、駆動装置を停止しない状態で検出対象を車室80に取り残す可能性があるので、予め定められた条件として駆動装置の停止を入れた場合、この状態における検出対象の存在を検出できなくなる。しかし報知装置1は、車両8が停車状態にあり、かつドアがアンロックからロックされた状態を予め定められた条件としているので、駆動装置を停止しない状態で取り残した場合も検出対象を検出することができる。
【0057】
報知装置1は、測定した二酸化炭素の濃度と参照値61との差分値dを用いるので、呼気量が少ない乳幼児や小動物を精度良く検出することができる。
【0058】
報知装置1は、二酸化炭素の濃度を測定するので、検出対象の取り残しの報知のみならず、濃度が高くなった際、換気を促す報知を行うことができる。
【0059】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、重量物が検出された座席以外の測定センサの測定量を参照値に設定する点で他の実施の形態と異なっている。
【0060】
なお以下に記載する実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0061】
報知装置1の制御部6は、重量物が検出された座席に関する荷重情報を取得し、荷重情報に基づいて重量物が検出されない座席に配置された測定センサが検出した測定量から参照値61を生成して検出対象が存在するか否かを判定するように構成されている。本実施の形態では、測定部2の第1の測定センサ21~第3の測定センサ23のいずれかが参照値測定部3として参照値61となる濃度を測定する。
【0062】
荷重情報は、車両制御装置801が出力する車両情報Sに含まれている。車両制御装置801は、図2(a)に示すように、荷重センサ807から出力される荷重情報S12に基づいて車両情報Sを生成する。荷重センサ807は、運転席83の座部84a~後部座席85の座部(座部85a~座部85c)に配置され、座部にかかる荷重を検出して荷重情報S12として車両制御装置801に出力する。なお荷重センサ807は、一例として、予め定められた荷重しきい値以上の荷重が検出された場合、荷重の値を含む荷重情報S12を生成して出力する。
【0063】
また変形例として報知装置1は、一例として、運転席83の座部84a~後部座席85の座部(第1の座部85a~第3の座部85c)に配置された複数の荷重センサを備えて構成されても良い。
【0064】
制御部6は、一例として、車両情報Sに基づいて後部座席85の第1の座部85aに荷重が検出された場合、後部座席85に配置された第3の測定センサ23以外の第1の測定センサ21又は第2の測定センサ22が測定した濃度を参照値61として定める。本実施の形態では、運転席83に配置された第1の測定センサ21が測定した濃度を参照値61とする。
【0065】
なお後部座席85に荷重センサが配置されていない場合、一例として、運転席83の第1の測定センサ21が検出した濃度を参照値61とする。また制御部6は、荷重が検出されなかった場合、予め定められた座席の測定センサとして運転席83の第1の測定センサ21を用いて参照値61を設定する。
【0066】
変形例として制御部6は、参照値測定部3が測定部2と独立に備えられている場合、荷重が検出された座席以外の測定センサを用いて参照値61を設定し、荷重が検出されない場合、参照値測定部3が測定した測定量を参照値61として設定する。
【0067】
以下では、本実施の形態の報知装置1の参照値61の設定動作の一例について図5のフローチャートに従って説明する。
【0068】
(動作)
報知装置1の制御部6は、車両LAN809及び通信部5を介して車両情報Sが入力すると参照値61を生成するための条件が成立するか監視すると共に、荷重が検出されたかを監視する。
【0069】
制御部6は、ステップ10の「Yes」が成立する、つまり予め定められた条件が成立する(Step10:Yes)と共に、荷重が検出された場合(Step11:Yes)、荷重が検出されなかった座席の測定センサの濃度を参照値61に設定し(Step12)、参照値61の設定を終了する。
【0070】
ここでステップ11において制御部6は、荷重が検出されなかった場合(Step11:No)、予め定められた座席の測定センサが検出した濃度を参照値61に設定する(Step13)。
【0071】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態の報知装置1は、荷重が検出された場合、検出されなかった座席の測定センサを用いて参照値61を設定するので、この構成を採用しない場合と比べて、検出対象が吐出する二酸化炭素の影響を受け難い参照値61を設定することができる。
【0072】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、検出対象の大きさを判定して差分しきい値を切り替える点で他の実施の形態と異なっている。
【0073】
図6(a)は、第3の実施の形態に係る報知装置のブロック図の一例であり、図6(b)及び図6(c)は、検出対象から吐出される二酸化炭素の一例を示す図である。図6(b)及び図6(c)は、縦軸が二酸化炭素の吐出量であり、横軸が時間である。図6(a)は、一例として、検出対象が大きい場合である。図6(b)は、一例として、検出対象が小さい場合である。
【0074】
報知装置1の制御部6は、図6(a)に示すように、検出対象の大きさに応じた複数の差分しきい値を有している。制御部6は、複数の測定センサの測定対象物質の測定に基づいて呼吸のサイクルを判定し、呼吸のサイクルとピーク時の測定量との少なくとも一方に基づいて検出対象の大きさを判定し、判定した測定対象の大きさに応じた差分しきい値60を切り替えて検出対象の存在を判定するように構成されている。
【0075】
本実施の形態の報知装置1は、図6(a)に示すように、複数の差分しきい値として第1の差分しきい値60a及び第2の差分しきい値60bを有している。
【0076】
検出対象は、図6(b)及び図6(c)に示すように、呼吸に応じて二酸化炭素を吐出する。検出対象が大きい場合、検出対象が小さい場合と比べて、1回に吐出する二酸化炭素の吐出量が多い。差分しきい値が固定である場合、検出対象が小さいと差分値dが当該差分しきい値以上となるまでの時間は、検出対象が大きい場合と比べて、長くなる。この時間は、短い方が良い。
【0077】
また一般的に検出対象が大きい方が呼吸のサイクルが長く、小さい方が短い。従って制御部6は、二酸化炭素の濃度から呼吸のサイクルとピーク時の濃度との少なくとも一方に基づいて検出対象の大小を判定し、第1の差分しきい値60a又は第2の差分しきい値60bを切り替える。第1の差分しきい値60aは、検出対象が大きい場合に使用される差分しきい値である。第2の差分しきい値60bは、検出対象が小さい場合に使用される差分しきい値である。第1の差分しきい値60aは、第2の差分しきい値60bよりも大きい差分しきい値となる。
【0078】
なお制御部6は、検出対象の大きさに応じてさらに複数の差分しきい値を切り替えるように構成されても良い。
【0079】
(第3の実施の形態の効果)
本実施の形態の報知装置1は、検出対象の大小によって差分しきい値を切り替えるので、この構成を採用しない場合と比べて、早期に、かつ高い検出精度で検出対象を検出して報知することができる。
【0080】
以上述べた少なくとも1つの実施の形態の報知装置1によれば、(車両の内部に取り残された検出対象の検出精度を向上させることが可能となる。
【0081】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…報知装置、2…測定部、3…参照値測定部、4…報知部、6…制御部、7…携帯端末、8…車両、21~23…第1の測定センサ~第3の測定センサ、60…差分しきい値、60a…第1の差分しきい値、60b…第2の差分しきい値、61…参照値、83…運転席、83a…座部、84…助手席、84a…座部、85…後部座席、85a~85c第1の座部~第3の座部、200…測定量
図1
図2
図3
図4
図5
図6